(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152772
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】硬化膜付き基板、感光性樹脂組成物、硬化膜付き基板の製造方法および表示装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20231005BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20231005BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231005BHJP
H10K 77/10 20230101ALI20231005BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20231005BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20231005BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G03F7/027 513
G03F7/027 515
G03F7/004 505
G03F7/004 501
H10K50/10
H10K77/10
G02B5/20
G02B5/20 101
G09F9/30 365
G09F9/33
G09F9/30 349C
G09F9/30 349B
G09F9/30 308Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032639
(22)【出願日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2022059188
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今野 高志
【テーマコード(参考)】
2H148
2H225
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
2H148AA00
2H148AA18
2H148BD11
2H148BE33
2H148BE36
2H148BE37
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2H148BF12
2H148BF15
2H148BF16
2H148BG01
2H148BH14
2H225AC36
2H225AC54
2H225AC57
2H225AC58
2H225AC72
2H225AD06
2H225AE14P
2H225AE15P
2H225AN32P
2H225AN39P
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2H225AN61P
2H225AP03P
2H225BA01P
2H225BA05P
2H225BA16P
2H225BA22P
2H225BA33P
2H225BA35P
2H225CA24
2H225CB05
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2H225CC13
3K107AA01
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3K107CC33
3K107CC43
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3K107FF15
3K107FF18
5C094BA25
5C094BA27
5C094BA32
5C094DA06
5C094EB01
5C094ED03
5C094ED15
(57)【要約】
【課題】基板をハゼ折りしてもクラックや割れが生じにくく、一方で現像性および密着性も良好な硬化膜付き基板を提供すること。
【解決手段】ハゼ折りおよび元の形状への変形を繰り返し行うことが可能な可撓性基板と、前記可撓性基板の表面に形成された硬化膜と、を有する硬化膜つき基板。前記硬化膜は、膜厚が1~30μmの、エチレン性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を含有する感光性樹脂組成物の硬化膜であり、かつ、ハゼ折り試験において屈曲させる空間距離(ギャップ)を10mmとしたときに、前記硬化膜にクラックまたは剥離が発生しない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性基板と、
前記可撓性基板の表面に形成された硬化膜と、
を有する硬化膜付き基板であって、
前記硬化膜は、膜厚が1~30μmの、エチレン性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を含有する感光性樹脂組成物の硬化膜であり、
かつ、ハゼ折り試験において屈曲させる空間距離(ギャップ)を10mmとしたときに、前記硬化膜にクラックまたは剥離が発生しない、硬化膜付き基板。
【請求項2】
前記硬化膜は、光学濃度(OD値)が0.1~4.0/μmである、請求項1に記載の硬化膜付き基板。
【請求項3】
請求項1に記載の硬化膜付き基板を製造するために用いる感光性樹脂組成物であって、
芳香族系骨格を主鎖に有するエチレン性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)と
分子中にエチレン性不飽和基を有するポリオール化合物(a)、分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(b)、およびジイソシアネート化合物(c)を反応させて得られるウレタン系アルカリ可溶性樹脂(B)とを含む、感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(C)少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、
(D)光重合開始剤と、
(E)遮光材と、
を含む、請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(A)成分と(B)成分の配合割合は、質量比(A)/(B)で、5/95~95/5であり、(A)成分および(B)成分の合計量は、固形分の全質量に対して2質量%以上84質量%以下である、
請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(A)成分および(B)成分のそれぞれの重量平均分子量(Mw)が、
(A)成分は1,000以上40,000以下、
(B)成分は1,000以上50,000以下であり、
かつ、それぞれの酸価が
(A)成分は30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下、
(B)成分は10mgKOH/g以上180mgKOH/g以下である、
請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
(A)前記エチレン性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、
(B)前記ウレタン系アルカリ可溶性樹脂と、
(C)少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、
(D)光重合開始剤と、
(E)遮光材と、
(F)エポキシ樹脂と
を含む、請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(F)成分は、重量平均分子量(Mw)が200以上20,000以下であり、エポキシ当量(EEW)が100g/eq以上10,000g/eq以下である、請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(F)成分は、芳香族系骨格を主鎖に有する、請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記(F)成分の含有量は、固形分の全質量に対して0.4質量%以上20質量%以下である、請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項3~10のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を、可撓性基板に塗布して、塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を位置選択的に露光する工程と、
前記露光された塗布膜を現像してパターンを形成する工程と、
前記パターンを形成された塗布膜をベークする工程と、
を含む硬化膜付き基板の製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載の硬化膜付き基板を備える、表示装置。
【請求項13】
請求項11に記載の製造方法で製造された硬化膜付き基板を備える、表示装置。
【請求項14】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)光源またはレーザー発光ダイオード(LED)光源を備える、請求項13に記載の表示装置。
【請求項15】
量子ドットまたは蛍光体化合物を含む波長変換層を備える、請求項14に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化膜付き基板、感光性樹脂組成物、硬化膜付き基板の製造方法および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイなどの画像表示装置には、カラーフィルター、ブラックマトリックス、保護膜および波長変換層などの各種機能層として、感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜が用いられている。
【0003】
近年、ベンダブルフォンやフォルダブルフォンのように屈曲させたり元の形状に戻したりという変形を繰り返し行える画像表示装置の開発が進められている。そのため、感光性樹脂組成物にも、繰り返しの屈曲および元の形状へ戻す変形に耐え得る硬化膜を作製できることが求められている(たとえば、特許文献1~特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09-325493号公報
【特許文献2】特開2017-84153号公報
【特許文献3】特開2017-126003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
屈曲等の変形が可能な基板に形成された硬化膜には、それ自体が屈曲できる柔軟性と、屈曲時に基板から剥離しにくくするための密着性とが求められる。特に、ベンダブルフォンやフォルダブルフォンへの適用を考慮すると、屈曲部を90°以上に曲げるハゼ折りにも耐え得る柔軟性および密着性を備えた硬化膜が求められる。しかし、これらの両方を十分に満たす硬化膜は、得られていない。また、硬化膜の用途に応じては、遮光性を高めるための遮光材などの樹脂ではない成分が硬化膜内に多量に配合されることがある。これらの成分の割合が高くなると、硬化膜はより硬くなり、かつ脆くなるため、屈曲時にクラックや剥離などが生じやすくなる。一方で、これらを改善しようとすると、現像時の解像度や直線性が低下したり、基板への密着性が低下したりするため、繰り返しの屈曲に耐えうる硬化膜は得られていなかった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、基板をハゼ折りしてもクラックや割れが生じにくく、一方で密着性も良好な硬化膜付き基板、硬化膜付き基板を製造するための感光性樹脂組成物および製造方法、ならびに当該硬化膜付き基板を有するおよび表示装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、下記[1]~[2]の硬化膜つき基板に関する。
[1]可撓性基板と、
前記可撓性基板の表面に形成された硬化膜と、
を有する硬化膜付き基板であって、
前記硬化膜は、膜厚が1~30μmの、エチレン性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を含有する感光性樹脂組成物の硬化膜であり、
かつ、ハゼ折り試験において屈曲させる空間距離(ギャップ)を10mmとしたときに、前記硬化膜にクラックまたは剥離が発生しない、硬化膜付き基板。
[2]前記硬化膜は、光学濃度(OD値)が0.1~4.0/μmである、[1]に記載の硬化膜付き基板。
【0008】
本発明の他の態様は、下記[3]~[10]の感光性樹脂組成物に関する。
[3][1]または[2]に記載の硬化膜付き基板を製造するために用いる感光性樹脂組成物であって、
芳香族系骨格を主鎖に有するエチレン性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)と
分子中にエチレン性不飽和基を有するポリオール化合物(a)、分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(b)、およびジイソシアネート化合物(c)を反応させて得られるウレタン系アルカリ可溶性樹脂(B)とを含む、感光性樹脂組成物。
[4](C)少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、
(D)光重合開始剤と、
(E)遮光材と、
を含む、[3]に記載の感光性樹脂組成物。
[5](A)成分と(B)成分の配合割合は、質量比(A)/(B)で、5/95~95/5であり、(A)成分および(B)成分の合計量は、固形分の全質量に対して2質量%以上84質量%以下である、
[3]または[4]に記載の感光性樹脂組成物。
[6](A)成分および(B)成分のそれぞれの重量平均分子量(Mw)が、
(A)成分は1,000以上40,000以下、
(B)成分は1,000以上50,000以下であり、
かつ、それぞれの酸価が
(A)成分は30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下、
(B)成分は10mgKOH/g以上180mgKOH/g以下である、
[3]~[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[7](A)前記エチレン性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、
(B)前記ウレタン系アルカリ可溶性樹脂と、
(C)少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、
(D)光重合開始剤と、
(E)遮光材と、
(F)エポキシ樹脂と
を含む、[3]~[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[8]前記(F)成分は、重量平均分子量(Mw)が200以上20,000以下であり、エポキシ当量(EEW)が100g/eq以上10,000g/eq以下である、[7]に記載の感光性樹脂組成物。
[9]前記(F)成分は、芳香族系骨格を主鎖に有する、[7]または[8]に記載の感光性樹脂組成物。
[10]前記(F)成分の含有量は、固形分の全質量に対して0.4質量%以上20質量%以下である、[7]~[9]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0009】
本発明の他の態様は、下記[11]に記載の硬化膜付き基板の製造方法に関する。
[11][3]~[10]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を、可撓性基板に塗布して、塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を位置選択的に露光する工程と、
前記露光された塗布膜を現像してパターンを形成する工程と、
前記パターンを形成された塗布膜をベークする工程と、
を含む硬化膜付き基板の製造方法。
【0010】
本発明の他の態様に関する表示装置は、下記[12]~[15]の硬化膜付き基板に関する。
[12][1]または[2]に記載の硬化膜付き基板を備える、表示装置。
[13][11]に記載の製造方法で製造された硬化膜付き基板を備える、表示装置。
[14]有機エレクトロルミネッセンス(EL)光源またはレーザー発光ダイオード(LED)光源を備える、[13]に記載の表示装置。
[15]量子ドットまたは蛍光体化合物を含む波長変換層を備える、[14]に記載の表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板をハゼ折りしてもクラックや割れが生じにくく、一方で密着性も良好な硬化膜付き基板、硬化膜付き基板を製造するための感光性樹脂組成物および製造方法、ならびに当該硬化膜付き基板を有するおよび表示装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態は、可撓性基板と、当該可撓性基板に形成された硬化膜と、を有する硬化膜付き基板に関する。
【0013】
可撓性基板は、屈曲部を90°以上に曲げるハゼ折りによる屈曲(以下、特に断りなく「屈曲」というときは、ハゼ折りによる変形を意味する。)および元の形状(屈曲していない平板状の形状)への変形を繰り返し行うことができる基板であればよい。ここでいう元の形状への変形ができるとは、繰り返し屈曲した後でも折り目などがつかないことをいう。可撓性基板は、空間距離(ギャップ)10mmでハゼ折りによる屈曲および元の形状への変形を繰り返し行うことができる基板であって、ポリイミドなどの樹脂フィルムやコーニング社製Willow glass、AGC社製Dragontrailといったフレキシブルガラスとすることができる。可撓性基板は、230℃で30分加熱した場合の熱収縮率が20%以下であることがよく、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。なお、可撓性基板は、その表面にITOや金などの透明電極が蒸着あるいはパターニングされていてもよい。
【0014】
可撓性基板は、硬化膜つき基板が装着される装置が変形(屈曲)するときに、当該変形に応じた形状への変形(屈曲)が可能である。たとえば、可撓性基板は、ハゼ折りにした際の端部間の空間距離が10mmの屈曲が可能であることが好ましく、5mmの屈曲が可能であることがより好ましく、1mmの屈曲が可能であることが特に好ましい。そして、上記硬化膜付き基板は、可撓性基板をこれらの空間距離で屈曲させたときに、硬化膜にクラックまたは剥離が発生しないか、あるいは発生してもその数が顕著に少ないことを特徴とする。具体的には、上記硬化膜付き基板は、空間距離を10mmとして可撓性基板をハゼ折りしたときに、硬化膜にクラックまたは剥離が発生しない。また、上記硬化膜付き基板は、空間距離を5mmとして可撓性基板をハゼ折りしたときに、硬化膜にクラックまたは剥離が発生しないことが好ましい。また、上記硬化膜付き基板は、空間距離を1mmとして可撓性基板をハゼ折りしたときに、観察範囲内において、硬化膜にクラックまたは剥離が1~2個であることがより好ましく、クラックまたは剥離が発生しないことがさらに好ましい。
【0015】
なお、上記屈曲時のクラックおよび剥離は、予め現像により開口が形成された、幅1cm、長さ12cmの試験片について、硬化膜付き基板の硬化膜を内側にして、上記空間距離(ギャップ)を設けて90°に折り畳み・拡げるハゼ折り試験を50回行った後、顕微鏡を用いて1200μm×1200μmの範囲内で観察したときに確認されるクラックおよび剥離の数である。測定の信頼性を高めるため、任意に選択した16か所の範囲内を観察して確認されるクラックおよび剥離の数の平均値を、上記屈曲時のクラックおよび剥離の数としてもよい。
【0016】
硬化膜は、樹脂を硬化させてなる膜であればよい。硬化膜は、感光性樹脂の硬化膜でもよいし、熱硬化性樹脂の硬化膜でもよいが、微細なパターン形成を可能とする観点からは、感光性樹脂の硬化膜であることが好ましい。
【0017】
硬化膜は、膜の用途に応じた特性を付与されていてもよい。たとえば、ブラックマトリックスやカラーフィルターとするときは、膜厚1μmあたりの光学濃度(OD)が0.1/μm以上4.0/μm以下であることが好ましい。硬化膜の光学濃度は、用途に応じた遮光材を硬化膜に添加することで、調整することができる。
【0018】
なお、光学濃度(OD)を高めるためには、多くの遮光材を硬化膜中に添加する必要がある。そして、遮光材の量が多くなると、硬化膜の靭性が低下し、屈曲時にクラックや剥離を生じやすくなる。これに対し、クラックや剥離を抑制するため硬化膜の柔軟性を高めようとすると、現像性が低下して微細なパターン形成が困難になったり、基板への硬化膜の密着性が低下したりする。これに対し、たとえば硬化膜を構成する樹脂の主鎖に芳香環を含ませることなどにより、現像性や密着性の低下を抑制しつつ、硬化膜の柔軟性を高めて屈曲時のクラックや剥離の発生を抑制することができる。
【0019】
本明細書において、硬化膜の光学濃度(OD)は、マクベス透過濃度計(X-rite社製「X-rite 361T(V)」)を用いて測定した値とすることができる。
【0020】
硬化膜の膜厚は、1μm以上30μm以下であることが好ましく、1μm以上15μm以下であることがより好ましく、1μm以上10μm以下であることがさらに好ましく、3μm以上10μm以下であることが特に好ましく、5μm以上10μm以下であることが特に好ましく、7μm以上10μm以下であることが特に好ましい。
【0021】
本実施形態では、カラーフィルターのブラックマトリックス層や有機ELディスプレイに用いられる遮光性画素分割層のような、厚み1μm未満のような厚みが薄い層のみならず、LED用の遮光層のような、厚み1μm以上や3μm以上となる厚い層であっても、屈曲時にクラックや剥離が生じにくい。従来、膜厚が1μm以上の硬化膜では曲率10mmの屈曲時にクラックが発生し、膜厚が3μm以上の硬化膜では曲率10mmの屈曲時にクラックのみならず硬化膜の剥離が発生していた。これに対し、後述する、エチレン性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を含む、感光性樹脂組成物から形成した硬化膜付き基板は、硬化膜の膜厚が1μm以上だったり3μm以上だったりしても、クラックや剥離の発生が抑制される。
【0022】
一方で、膜厚が30μm以上であると、ビアホールなどのホール形状を開口させやすい。後述する、エチレン性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を含む、感光性樹脂組成物であれば、膜厚が30μm以下であれば、200μm×200μmの四角形形状の開口を精度よく形成することができ、膜厚が15μm以下であれば、100μm×200μmの四角形形状の開口を精度よく形成することができ、膜厚が10μm以下であれば、100μm×100μmの四角形形状の開口を精度よく形成することができる。
【0023】
本明細書において、硬化膜の膜厚は、段差計(KLA-Tencor社製「テンコールP-17」)を用い、測定範囲500μm、走査速度50μm/秒、サンプリングレート20Hzの条件で測定される硬化膜の平均厚さ(μm)とすることができる。
【0024】
硬化膜は、たとえばエチレン性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を含む、感光性樹脂組成物を露光して硬化させて得ることができる。上記エチレン性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂は、エチレン性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)と、ウレタン系アルカリ可溶性樹脂(B)とを含むことが好ましい。
【0025】
(A)成分および(B)成分は、1分子中にエチレン性不飽和基と、アルカリ可溶性を発現するための酸性基を有することが好ましく、エチレン性不飽和基とカルボキシ基とを有することがより好ましい。(A)成分および(B)成分は、重合性不飽和基を有するため、感光性樹脂組成物に優れた光硬化性を与え、また硬化時に分子量が大きくなりバインダーとしての作用を発揮する。また、(A)成分および(B)成分は、酸性基を有するため、現像性およびパターニング特性(パターン線幅、パターン直線性)などの樹脂硬化膜の物性を向上させる。
【0026】
このとき、芳香族系骨格を主鎖に有する(A)成分を用いて硬化膜を作製すると、嵩高い芳香環により硬化膜中にわずかな空間が生じる。この空間により、硬化膜中で樹脂の分子が伸縮しやすくなるため、硬化膜に所定の柔軟性が付与されると考えられる。一方で、芳香族系骨格を主鎖に有するアルカリ可溶性樹脂は、現像性が高く、かつ硬化後の密着性も高い。そのため、芳香族系骨格を主鎖に有する(A)成分を用いて硬化膜を作製することにより、硬化膜が柔軟になって屈曲時にクラックや剥離が生じにくく、一方で現像性および密着性が高い硬化膜が得られるものと考えられる。
【0027】
上記芳香族系骨格は特に限定されず、ビスフェノールAおよびビスフェノールFなどに由来するビスフェノール骨格、ビスフェノールフルオレン基、ビスクレゾールフルオレン基およびビスナフトールフルオレン基などのフルオレン基を有する骨格、およびノボラック骨格などとすることができる。上記ノボラック骨格は、フェノールとアルデヒドとの縮合反応により得られるものであればよい。上記フェノールの例には、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、トリメチルフェノール、ブチルフェノール、スチレン化フェノール、クミルフェノール、ナフトール、カテコール、レゾルシノール、ビフェノール、ナフタレンジオール、ビスフェノールA、およびビスフェノールFなどが含まれる。上記アルデヒドの例には、ホルムアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、およびサリチルアルデヒドなどが含まれる。なお、ノボラック骨格には、これらアルデヒドのかわりにキシリレンジメタノール、キシリレンジクロライド、ビスクロロメチルナフタレン、およびビスクロロメチルビフェニルなどを用いて得られるアラルキル型のノボラック骨格も含まれる。これらのノボラック骨格のうち、フェノールノボラック構造、クレゾールノボラック構造、トリメチルフェノールノボラック構造、ビフェノールノボラック構造、ナフトールノボラック構造、およびナフトールアラルキル構造が好ましい。
【0028】
(A)成分は、エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物を、さらに多塩基酸カルボン酸またはその無水物と反応させて得られる不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。上記不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の製造時に、ヒドロキシ基と多塩基酸カルボン酸との反応でポリエステルが生成する。(A)成分は、前記ポリエステルの平均の重合度が2~500程度の低分子量の樹脂であることが好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の総称であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基およびメタクリロイル基の総称であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの総称であり、いずれもこれらの一方または両方を意味する。
【0029】
上記エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物の例には、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、ビスナフトールフルオレン型エポキシ化合物、ジフェニルフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、(o,m,p-)クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ナフタレン骨格を含むフェノールノボラック化合物(例えば、NC-7000L:日本化薬株式会社製)、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、トリスフェノールメタン型エポキシ化合物(例えば、EPPN-501H:日本化薬株式会社製)、テトラキスフェノールエタン型エポキシ化合物などが含まれる。これらの芳香環を有するエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸と反応させてエポキシ(メタ)アクリレートとし、さらに多塩基酸カルボン酸またはその無水物と反応させてカルボキシ基を導入することで、芳香族系骨格を主鎖に有する(A)成分を得ることができる。
【0030】
なお、所期の特性が得られる限りにおいて、(A)成分は芳香族系骨格を主鎖に有さない不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂であってもよい。
【0031】
(A)成分は、重量平均分子量(Mw)が1,000以上40,000以下の化合物であることが好ましく、2,000以上20,000以下の化合物であることがより好ましい。(A)成分のMwがより高いほど、樹脂硬化膜の密着性および柔軟性を高め、かつ架橋密度を調整しやすくなる。一方で、(A)成分のMwがより低いほど、溶媒への(A)成分の溶解性が高まり、かつ感光性樹脂組成物中の他の成分との相溶性を高めて、樹脂硬化膜の白濁抑止性、平坦性およびパターニング性を高めることができる。
【0032】
(A)成分は、同様の観点から、酸価が30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0033】
本明細書において、各成分の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)(たとえば、「HLC-8420GPC」(東ソー株式会社製))で求めたスチレン換算値とすることができる。また、酸価は、電位差滴定装置(たとえばm「COM-1600」(平沼産業株式会社製))を用いて求めた値とすることができる。ただし、モノマーなどの、構造から分子量が計算できる化合物については、構造から計算して得た値をその化合物の分子量としてもよい。
【0034】
また、ウレタン系アルカリ可溶性樹脂(B)成分を用いて硬化膜を作製すると、主鎖にウレタン結合含有アルキル鎖を持つ化合物が硬化膜中に導入されるため、硬化膜に柔軟性が付与されるとともに、伸縮性が向上することから屈曲時に発生する硬化膜と下地基材との間の歪みが小さくなるため密着性も高くなると考えられる。さらに、当該樹脂はアルカリ可溶性を付与するためにカルボキシル基が導入されていることから、(B)成分を用いて硬化膜を作製することにより、硬化膜が柔軟になって屈曲時にクラックや剥離が生じにくく、一方で現像性および密着性が高い硬化膜が得られるものと考えられる。
【0035】
上記ウレタン系アルカリ可溶性樹脂は、分子中にエチレン性不飽和結合を有するポリオール化合物(a)、分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(b)、ジイソシアネート化合物(c)を反応させて得られるウレタン化合物である。
【0036】
この(B)成分の製造に使用される分子中にエチレン性不飽和結合を有するポリオール化合物(a)としては、例えば、分子中に2個以上のアルコール性水酸基及び2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物であるエポキシアクリレート化合物を挙げることができる。代表的なエポキシ(メタ)アクリレート化合物としては、一般式(I)で表されるエポキシ化合物に、(メタ)アクリル酸を反応させて得られる化合物を例示することができる。
【0037】
【化1】
但し、一般式(I)において、R
1、R
2、R
3及びR
4は、独立に水素原子、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を示し、Xは、-CO-、-SO
2―、-C(CF
3)
2―、-Si(CH
3)
2-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-O-、又は、フルオレン-9,9-ジイル基又は単結合を示し、mの平均値が0~10、好ましくは0~4の範囲である。
【0038】
一般式(I)のエポキシ化合物を与えるビスフェノール類としては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)エーテル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)フルオレン、4,4’-ビフェノール、3,3’-ビフェノール等を挙げられる。これらのビスフェノール類は、1種類の化合物のみを用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。この中でも、一般式(I)におけるXがプロパン-2,2-ジイル基であるビスフェノール類を好ましく用いることができる。
【0039】
一般式(I)の化合物は、上記ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させて得られる(m)個以上のアルコール性水酸基及び2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物である。この反応の際には、一般にジグリシジルエーテル化合物のオリゴマー化を伴い、mは個々の分子においては0~10の整数であり、通常は複数の値の分子が混在するため平均値0~10(整数とは限らない)となるが、好ましいmの平均値は0~4である。mの平均値が上限値を超えると、当該エポキシ化合物使用して合成したアルカリ可溶性樹脂を用いた感光性樹脂組成物としたときに組成物の粘度が大きくなりすぎて塗工がうまく行かなくなったり、アルカリ可溶性を十分に付与できずアルカリ現像性が非常に悪くなったりする。
【0040】
エポキシ(メタ)アクリレートの製造に使用されるエポキシ化合物の一般式(I)の化合物以外の例としては、一般式(I)の化合物のベンゼン環が水素化されてシクロヘキサン環となった化合物群や、分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物にエピクロルヒドリンを反応させて得られたエポキシ化合物群を挙げることができる。
【0041】
分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物にエピクロルヒドリンを反応させて得られたエポキシ化合物については、例えば一般式(II)の化合物を挙げることができる。
【0042】
【0043】
但し、一般式(II)において、Y及びZはベンゼン骨格、ナフタレン骨格、又はビフェニル骨格を示し、Gはグリシジル基を示す。lは1又は2、nは平均値で1~5の数を示す。
【0044】
エポキシ(メタ)アクリレートに使用されるエポキシ化合物のエポキシ当量は100~2,000であるのが良く、エポキシ当量が100未満であると、(A)の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂としたときの分子量が小さく成膜が困難になる可能性があり、膜がもろくなってしまう恐れがある。また、エポキシ当量が2,000を超える場合、1分子あたりの重合性不飽和基の含有率が小さくなり、感光性樹脂としての感度が十分に得られない。
【0045】
次に、(B)成分の製造に使用される分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(b)としては、分子中に2個のアルコール性水酸基と1個以上のカルボキシル基を同時に有する化合物であれば、特に限定されるものではないが、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸を好ましく用いることができる。また、3官能以上のポリオール化合物と多塩基酸無水物との反応生成物等も挙げることができる。これらカルボキシル基を有するジオール化合物は、1種類の化合物のみを用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。(b)成分は、炭素数1~5の3価のアルキル基と、2個のアルコール性水酸基と、1個のカルボキシル基を同時に有する化合物であることが好ましい。
【0046】
次に、(B)成分の製造に使用されるジイソシアネート化合物(c)としては、分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されるものではないが、柔軟性等に優れたウレタン化合物にするためには、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、アリレンスルホンエーテルジイソシアネート、ノルボルナン-ジシアネートメチル等を挙げることができ、これらの中でも、イソホロンジイソシアネートやトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを好ましく用いることができる。これらの化合物を単独で用いてもよいし、2種以上の化合物を同時に用いてもよい。
【0047】
(B)成分を製造するときの、(a)、(b)、(c)各成分の仕込みの組成は、(a)成分がエチレン性不飽和結合を有するジオール化合物である場合には、モル比[(a)+(b)]/(c)の値が1~3であることが好ましく、1~2であることがより好ましい。モル比を1以上とすることで、反応により得られる化合物の末端にイソシアネート基が残存することによるゲル化を抑制することができる。モル比を5以下とすることで、得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の分子量を十分に大きくして、感光性樹脂組成物としたときの感度を高めたり、成膜時にタック性の問題を生じにくくしたりすることができる。
【0048】
なお、(c)成分の一部を、分子中にエチレン性不飽和結合又はカルボキシル基を有しないジオール化合物(d)に置き換えて反応させた(B)成分とすることも可能である。(d)成分の例としては、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール化合物や、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール等の脂環式ジオールなどを挙げることができる。
【0049】
(B)成分の反応条件としては、無溶剤又はアルコール性水酸基を有さない溶剤中(例えば、エチレングリコール等から製造されるグリコールエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエステル類など)に、(a)、(b)、必要に応じて(d)成分を所定量仕込んで混合、撹拌している反応器内に、(c)成分を徐々に加えた後、反応温度40~120℃、反応時間は凡そ5~60時間反応させることにより(B)成分である、エチレン性不飽和結合を有するアルカリ可溶性樹脂を得ることができる。
【0050】
得られたエチレン性不飽和結合を有するアルカリ可溶性樹脂の基本骨格は、例えば、(a)成分が一般式(I)で表されるエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させたエポキシ(メタ)アクリレートである場合には、一般式(III)および一般式(IV)で表すことができる。このとき得られるアルカリ可溶性樹脂は、この2つの構造が基本的にはランダムに結合した樹脂であり、一部構造の異なる骨格を含んでいてもよい。
【0051】
【0052】
但し、一般式(III)において、R5は独立に水素原子またはメチル基を示し、Jは一般式(I)で表されるエポキシ化合物のエポキシ基を除いた残基を示し、Lは(c)成分のイソシアネート基を除いた残基を示し、pは10~100の数を示す。
【0053】
【0054】
但し、一般式(IV)において、Lは(c)成分のイソシアネート基を除いた残基を示し、Mは(b)成分に由来する炭素数1~5の3価のアルキル基を示し、qは10~100の数を示す。
【0055】
さらに、この反応で得られたエチレン不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂中に残存する末端アルコール性水酸基に、酸無水物(e)を反応させることにより、(B)成分の酸価を調整することができる。
【0056】
この酸価の調整に用いられる酸無水物(e)としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、テトラヒドロ無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水トリメリット酸等を挙げることができる。
【0057】
(B)成分は、重量平均分子量(Mw)が1,000以上50,000以下の化合物であることが好ましく、2,000以上40,000以下の化合物であることがより好ましい。(B)成分のMwがより高いほど、樹脂硬化膜の柔軟性および密着性を高め、かつ架橋密度を調整しやすくなる。一方で、(B)成分のMwがより低いほど、溶媒への(B)成分の溶解性が高まり、かつ感光性樹脂組成物中の他の成分との相溶性を高めて、樹脂硬化膜の白濁抑止性、平坦性およびパターニング性を高めることができる。
【0058】
(B)成分は、同様の観点から、酸価が10mgKOH/g以上180mgKOH/g以下であることが好ましく、40mgKOH/g以上180mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0059】
(A)+(B)成分の含有量は、固形分の全質量に対して2質量%以上84質量%以下であることが好ましく、3質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、4質量%以上76質量%以下であることがさらに好ましい。(A)+(B)成分の上記含有量が2質量%以上であると、被着体に対する樹脂硬化膜の接着性が高まりやすい。また、84質量%以下であると、現像速度が十分に速くなって開口パターンが得やすくなる。
【0060】
(A)成分と(B)成分との配合割合は、質量比(A)/(B)で、5/95~95/5であることが好ましく、11/89~89/11であることがより好ましい。(A)成分の配合割合が5/95以上であると、硬化膜の架橋密度がより高まり、密着性がより高まる。また、塗布膜の酸価が高すぎることがないため、アルカリ現像液に対する溶解性が過剰に高くなりにくく、マスク線幅に対して忠実な線幅を再現できるとともにパターンエッジをシャープにし、かつ、パターンの欠落を抑制することができる。(A)成分の配合割合が95/5以下であると、硬化膜に十分な柔軟性が付与される。また、塗布膜の酸価が低くなりにくく、アルカリ現像液に対する溶解性が十分に高まるため、硬化膜の現像性(解像性、たとえばパターンの直線性)がより高まる。
【0061】
感光性樹脂組成物は、(C)少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、(D)光重合開始剤、(E)遮光材および(F)エポキシ樹脂などを含んでいてもよい。
【0062】
(C)成分(少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物)は、感光性樹脂組成物の露光感度を高め、かつ硬化時に適度な架橋構造を形成して基板への硬化膜の密着性を高め、かつ硬化膜の現像性(解像性、たとえばパターンの直線性)を高める。なお、(C)成分は遊離のカルボキシ基を有しない。
【0063】
(C)成分の具体例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、エチレン性二重結合を有する化合物として(メタ)アクリル基を有する樹枝状ポリマー等が含まれる。
【0064】
上記樹枝状ポリマーの例には、多官能(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基の中の炭素-炭素二重結合の一部に多価メルカプト化合物を付加して得られる樹枝状ポリマーを例示することができる。具体的には、下記一般式(V)で表される多官能(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基と下記一般式(VI)で表される多価メルカプト化合物を反応させて得られる樹枝状ポリマーなどが含まれる。
【0065】
【0066】
(式(V)中、R6は水素原子またはメチル基であり、R7はR8(OH)kのk個のヒドロキシ基の内r個のヒドロキシ基を式中のエステル結合に供与した残り部分である。好ましいR8(OH)kは、炭素数2~8の非芳香族の直鎖または分枝鎖の炭化水素骨格に基づく多価アルコールであるか、当該多価アルコールの複数分子がアルコールの脱水縮合によりエーテル結合を介して連結してなる多価アルコールエーテルであるか、またはこれらの多価アルコールまたは多価アルコールエーテルとヒドロキシ酸とのエステルである。kおよびrは独立に2~20の整数を表すが、k≧rである。)
【0067】
【0068】
(式(VI)中、R9は単結合または2~6価の炭素数1~6の炭化水素基であり、sはR9が単結合であるときは2であり、R9が2~6価の基であるときはR9の価数と同じである。)
【0069】
一般式(V)で表される多官能(メタ)アクリレートの例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。
【0070】
一般式(VI)で表される多価メルカプト化合物の例には、トリメチロールプロパントリ(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリ(メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールトリ(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メルカプトプロピオネート)等が含まれる。
【0071】
硬化膜の架橋密度を高めて密着性を高める観点からは、(C)成分は、3個以上のエチレン性不飽和結合を有することが好ましく、5個以上のエチレン性不飽和結合を有することがより好ましい。エチレン性不飽和結合の数が多い(C)成分を使用して密着性を高めても、(A)および(B)成分に記述の樹脂を用いることで、硬化膜中で樹脂の分子が伸縮しやすくなり、基板の屈曲に耐え得る柔軟性が硬化膜に付与されると考えられる。
【0072】
同様の観点から、(C)成分のアクリル当量は、50以上300以下であることが好ましく、80以上200以下であることがより好ましい。
【0073】
(C)成分の含有量は、固形分の全質量に対して2質量%以上33質量%以下であることが好ましく、4質量%以上32質量%以下であることがより好ましい。(C)成分の上記含有量が2質量%以上であると、十分に架橋することができ、樹脂硬化膜として造膜が可能となる。また、(B)成分の上記含有量が33質量%以下であると、被着体に対する樹脂硬化膜の密着性が低下しにくい。
【0074】
(A)+(B)成分と(C)成分との配合割合は、質量比((A)+(B))/(C)で、95/5~20/80であることが好ましく、90/10~25/75であることがより好ましい。(A)+(B)成分の配合割合が95/5以上であると、硬化膜に十分な柔軟性が付与される。また、塗布膜の酸価が低くなりにくく、アルカリ現像液に対する溶解性が十分に高まるため、硬化膜の現像性(解像性、たとえばパターンの直線性)がより高まる。(A)+(B)成分の配合割合が20/80以下であると、硬化膜の架橋密度がより高まり、密着性がより高まる。また、塗布膜の酸価が高すぎることがないため、アルカリ現像液に対する溶解性が過剰に高くなりにくく、形成されたパターンが目標とする線幅より細くなることや、パターンの欠落を抑制することができる。
【0075】
また、(A)+(B)成分の含有量と(C)成分の含有量との合計量は、固形分の全質量に対して2質量%以上98質量%以下であることが好ましく、4質量%以上96質量%以下であることがより好ましい。上記合計量が4質量%以上であると、樹脂硬化膜としての造膜が容易である。一方、上記合計量が96質量%以下であると、(E)成分及び(F)成分の配合割合を十分に高くできるため、屈曲性および遮光性を十分に高めることができる。
【0076】
なお、(C)成分は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
(D)成分(光重合開始剤)は、重合性不飽和結合を有し付加重合可能な化合物の重合を開始させ得る化合物であれば、特に限定されるものではない。(D)成分の例には、アセトフェノン化合物、トリアジン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、チオキサントン化合物、イミダゾール化合物、アシルオキシムエステル化合物などの光重合開始剤が含まれる。なお、本明細書において、光重合開始剤は増感剤を含む意味で使用される。
【0078】
アセトフェノン化合物の例には、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマーなどが含まれる。
【0079】
トリアジン化合物の例には、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0080】
ベンゾイン化合物の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン-tert-ブチルエーテルなどが含まれる。
【0081】
ベンゾフェノン化合物の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4,4‘-ビス(N,N-ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどが含まれる。
【0082】
チオキサントン化合物の例には、チオキサントン、2-クロロチオキサン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどが含まれる。
【0083】
イミダゾール化合物の例には、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルイミダゾール2量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5-トリアリールイミダゾール2量体などが含まれる。
【0084】
オキシムエステル化合物の例には、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-ビシクロヘプチル-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-ビシクロヘプタンカルボキシレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-トリシクロデカンカルボシキレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-アダマンタンカルボシキレート、1-[4-(フェニルスルファニル)フェニル]オクタン-1,2-ジオン=2-o-ベンゾイルオキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]エタノン-o-アセチルオキシム、(2-メチルフェニル)(7-ニトロ-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル)-アセチルオキシム、エタノン,1-[7-(2-メチルベンゾイル)-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-(-9,9-ジブチル-7-ニトロ-9H-フルオレン-2-イル)-1-o-アセチルオキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、1,2-オクタンジエン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-アセテート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-O-アセテート、4-エトキシ-2-メチルフェニル-9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾロ-3-イル-O-アセチルオキシムなどが含まれる。
【0085】
これらのうち、(D)成分は、オキシムエステル化合物系(ケトオキシムを含む)光重合開始剤が好ましい。オキシムエステル化合物系光重合開始剤は、感度が高いため、遮光材(E)の含有量が多いときなどにも、十分な感光性を担保することができ、硬化膜の現像性(解像性)を十分に高めることができる。
【0086】
オキシムエステル化合物系光重合開始剤の例には、一般式(VII)または一般式(VIII)で表されるオキシムエステル化合物系光重合開始剤が含まれる。
【0087】
【0088】
式(VII)中、R10、R11は、それぞれ独立に、C1~C15のアルキル基、C6~C18のアリール基、C7~C20のアリールアルキル基またはC4~C12の複素環基であり、R12はC1~C15のアルキル基、C6~C18のアリール基またはC7~C20のアリールアルキル基である。ここで、アルキル基およびアリール基はC1~C10のアルキル基、C1~C10のアルコキシ基、C1~C10のアルカノイル基、ハロゲンで置換されていてもよく、アルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合を含んでいてもよい。また、アルキル基は直鎖、分岐または環状のいずれのアルキル基であってもよい。
【0089】
【0090】
式(VIII)中、R13およびR14はそれぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であるか、炭素数4~10のシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基もしくはアルキルシクロアルキル基であるか、または炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基である。R15は独立して炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基であり、当該アルキル基またはアルケニル基中の-CH2-基の一部が-O-基で置換されていてもよい。さらに、これらR13~R15の基中の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0091】
また、(D)成分は、365nmにおけるモル吸光係数が10000L/mol・cm以上であることが好ましい。このような光重合開始剤は、感度が高いため、アクリル当量が比較的大きい(C)成分を含む感光性樹脂組成物でも、十分な感光性を担保することができ、感光性樹脂組成物の現像性(解像性)を十分に高めることができる。このような光重合開始剤の例には、Omnirad1312(IGM Resins B.V.社製、「Omnirad」は同社の登録商標)、およびアデカアークルズNCI-831(株式会社ADEKA製、「アデカアークルズ」は同社の登録商標)などが含まれる。
【0092】
本明細書において、光重合開始剤のモル吸光係数は、紫外可視赤外分光光度計「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、0.001重量%濃度のアセトニトリル溶液の吸光度を、光路長1cm石英セル中にて測定し求めた値とすることができる。
【0093】
また、それ自体では光重合開始剤や増感剤として作用しないが、上述の化合物と組み合わせて用いることにより、光重合開始剤や増感剤の能力を増大させ得るような化合物を添加してもよい。そのような化合物の例には、ベンゾフェノンと組みわせて使用すると効果のあるアミン系化合物が含まれる。上記アミン系化合物の例には、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルパラトルイジン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノンなどが含まれる。
【0094】
(D)成分の含有量は、固形分の全質量に対して0.04質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。(D)成分の含有量が0.04質量%以上であると、適度な光重合の速度を有するので、十分な感度を担保できる。また、(D)成分の含有量が30質量%以下であると、マスク線幅に対して忠実な線幅を再現できるとともにパターンエッジをシャープにすることができる。
【0095】
なお、(D)成分は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
(E)成分(遮光材)は、硬化膜の用途に応じた所望の色調を付与するために、添加される。たとえば、硬化膜がブラックマトリックスであるときは、黒色顔料や、2種類以上の有機顔料を混合してなる混色有機顔料を用いればよい。感光性樹脂組成物中の分散性を高める観点から、(E)成分は、平均粒子径(レーザー回折・散乱法粒径分布計または動的光散乱法粒径分布計測定された平均粒子径)が1nm以上1000nm以下であることが好ましい。
【0097】
上記黒色顔料の例には、ペリレンブラック、シアニンブラック、アニリンブラック、ラクタムブラックといった有機黒色顔料、カーボンブラック、チタンブラック及び、例えば、Zr、Nb、V、Mn、Fe、Ni、Sn、Agからなる金属群から選ばれる1種又は2種以上の金属元素を含む金属酸化物または金属窒素物、金属酸窒素物である金属顔料といった無機黒色顔料などが含まれる。
【0098】
上記有機顔料の例には、アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾメチン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、スレン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料などが含まれる。
【0099】
上記有機顔料の具体例には、カラーインデックス名で以下のナンバーのものが含まれるが、これに限定されない。
ピグメント・レッド2、3、4、5、9、12、14、22、23、31、38、112、122、144、146、147、149、166、168、170、175、176、177、178、179、184、185、187、188、202、207、208、209、210、213、214、220、221、242、247、253、254、255、256、257、262、264、266、272、279等
ピグメント・オレンジ5、13、16、34、36、38、43、61、62、64、67、68、71、72、73、74、81等
ピグメント・イエロー1、3、12、13、14、16、17、55、73、74、81、83、93、95、97、109、110、111、117、120、126、127、128、129、130、136、138、139、150、151、153、154、155、173、174、175、176、180、181、183、185、191、194、199、213、214等
ピグメント・グリーン7、36、58等
ピグメント・ブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、60、80等
ピグメント・バイオレット19、23、37等
【0100】
(E)成分の含有量は、所望の遮光度によって任意に決めることができるが、感光性樹脂組成物中の固形分の全質量に対して0.5質量%以上80質量%以下であることが好ましく、1質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。(E)成分の含有量が、固形分の全質量に対して0.5質量%以上であれば、厚膜時において遮光性を十分に得ることができる。(E)成分の含有量が、固形分の全質量に対して80質量%以下であると、本来のバインダーとなる感光性樹脂の含有量が減少することがないため、所望する現像特性および膜形成能を得ることができる。
【0101】
(E)成分は、溶剤に分散させた分散体として他の配合成分と混合するのが通常であり、その際には分散剤を添加することができる。分散剤は、顔料(遮光成分)分散に用いられている公知の化合物(分散剤、分散湿潤剤、分散促進剤等の名称で市販されている化合物等)等を特に制限なく使用することができる。
【0102】
分散剤の例には、カチオン性高分子系分散剤、アニオン性高分子系分散剤、ノニオン性高分子系分散剤、顔料誘導体型分散剤(分散助剤)が含まれる。
【0103】
(E)成分は基本的に粉状で硬質な材料であり、硬化膜の柔軟性を低下させて屈曲時にクラックや剥離を生じさせやすい。このようなときにも、(A)および(B)成分や後述する(F)成分として、芳香族系骨格を主鎖に有する樹脂を用いることで、硬化膜中で樹脂の分子が伸縮しやすくして、基板の屈曲に耐え得る柔軟性が硬化膜に付与されると考えられる。
【0104】
なお、(E)成分は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0105】
(F)成分(エポキシ樹脂)は、硬化膜の現像性、密着性、耐薬品性および耐水性を高める。ここで、本発明者らの知見によると、(F)成分として、芳香族系骨格を主鎖に有するエポキシ化合物を用いることで、硬化膜の柔軟性を高めて屈曲時のクラックや剥離の発生を抑制することができる。これは、嵩高い芳香環により硬化膜中にわずかな空間が生じ、硬化膜中で樹脂の分子が伸縮しやすくなることにより、硬化膜に所定の柔軟性が付与されるためだと考えられる。
【0106】
芳香族系骨格を主鎖に有するエポキシ化合物の例には、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、ビスクレゾールフルオレン型エポキシ化合物、ビスナフトールフルオレン型エポキシ化合物、ジフェニルフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、(o,m,p-)クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン骨格を含むフェノールノボラック化合物(例えば、NC-7000L:日本化薬株式会社製)、ビフェニル型エポキシ化合物(例えば、jER YX4000:三菱ケミカル株式会社製、「jER」は同社の登録商標)、ビフェニル骨格を含むフェノールノボラック化合物(例えば、NC-3000:日本化薬株式会社製)、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、トリスフェノールメタン型エポキシ化合物(例えば、EPPN-501H:日本化薬株式会社製)、およびテトラキスフェノールエタン型エポキシ化合物などが含まれる。
【0107】
これらのうち、屈曲時のクラックや剥離の発生をより抑制する観点からは、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、およびビフェニル骨格を含むフェノールノボラック化合物が好ましく、ビフェニル型エポキシ化合物およびビフェニル骨格を含むフェノールノボラック化合物がより好ましい。
【0108】
(F)成分の重量平均分子量(Mw)は、200以上20,000以下であることが好ましく、500以上15,000以下であることがより好ましく、1,000以上10,000以下であることがさらに好ましい。(F)成分は、Mwがより高いほど硬化膜が柔軟になり屈曲時のクラックや剥離が発生しにくくなり、Mwがより低いほど現像性が向上する。これらのバランスをとる観点から、上記範囲が好ましい。
【0109】
(F)成分のエポキシ当量(EEW)は、100g/eq以上10,000g/eq以下であることが好ましく、110g/eq以上7,500g/eq以下であることがより好ましく、150g/eq以上5,000g/eq以下であることがさらに好ましい。(F)成分は、EEWがより大きいほど(A)および(B)成分との反応による現像性の低下を抑制することができ、EEWがより小さいほどエポキシ化合物の分子量を小さくして現像性を向上させることができる。また、(F)成分は、EEWがより小さいほど、反応性が高くなって、残存した未反応部位による硬化ムラが硬化膜中に残存しにくくなる。そのため、硬化ムラによる靱性の低下が生じにくくなり、クラックや剥離をより発生しにくくすることができる。これらのバランスをとる観点から、上記範囲が好ましい。
【0110】
なお、本明細書において、(F)成分のエポキシ当量は、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-過塩素酸溶液で滴定して求めることができる。
【0111】
(F)成分の含有量は、固形分の全質量に対して0.4質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。(F)成分は、含有量がより多いほど、(F)成分の添加による特性の改善効果(特には、現像性および密着性を向上させつつ、屈曲時にクラックや剥離を発生しにくくする効果)が顕著となる。また、(F)成分は、含有量を過剰にしないことで、良好な現像性を維持することができる。これらのバランスをとる観点から、上記範囲が好ましい。
【0112】
(F)成分を使用するときには、硬化剤および硬化促進剤を併用してもよい。
【0113】
硬化剤の例には、エポキシ樹脂の硬化に寄与するアミン系化合物、多価カルボン酸系化合物およびその酸無水物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンジアミド、ルイス酸錯化合物等が含まれる。
【0114】
硬化促進剤の例には、エポキシ樹脂の硬化促進に寄与する三級アミン、四級アンモニウム塩、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、イミダゾール類等が含まれる。
【0115】
なお、(F)成分、硬化剤および硬化促進剤は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0116】
感光性樹脂組成物は、(G)カップリング剤および(H)界面活性剤を含んでもよい。
【0117】
(G)成分(カップリング剤)の例には、3-(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、および3-ウレイドプロピルトリエトキシシランなどが含まれる。
【0118】
(H)成分(界面活性剤)の例には、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびシロキサン系界面活性剤などが含まれる。
【0119】
感光性樹脂組成物は、(H)溶剤を含む。
【0120】
(I)成分の例には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α-もしくはβ-テルピネオール等のテルペン類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類などが含まれる。(H)成分は、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0121】
(I)成分の含有量は、目標とする粘度によって変化するが、感光性樹脂組成物の全質量に対して30質量%以上90質量%以下であることが好ましい。(I)成分の含有量が30質量%以上であると、基板上に感光性樹脂組成物を塗布しやすい粘度とすることができ、90質量%以下であると、基板上に感光性樹脂組成物を塗布した後の乾燥に要する時間を短縮することができる。
【0122】
感光性樹脂組成物は、これらの成分に加えて、その他の樹脂成分、重合禁止剤および酸化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、およびレオロジー調整剤等の添加剤を含んでもよい。
【0123】
その他の樹脂成分の例には、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、およびメラミン樹脂等が含まれる。
【0124】
熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物等が含まれる。
【0125】
充填剤の例には、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等が含まれる。
【0126】
紫外線吸収剤の例には、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物などが含まれる。
【0127】
感光性樹脂組成物は、上述の各成分を混合することにより得ることができる。
【0128】
感光性樹脂組成物は、上述の可撓性基板に塗布して塗布膜を形成し、上記塗布膜を位置選択的に露光して硬化させ、上記露光により硬化した塗布膜を現像してパターンを形成し、上記パターンを形成された塗布膜をベーク(後硬化)することで、上述した硬化膜付き基板とすることができる。
【0129】
感光性樹脂組成物の塗布は、公知の塗布方法により行うことができる。上記塗布方法の例には、公知の溶液浸漬法、スプレー法、ローラーコート機、ランドコート機、スリットコート機やスピナー機を用いる方法などが含まれる。これらの方法によって、上記感光性樹脂組成物を所望の厚さに塗布することができる。
【0130】
このようにして形成された塗布膜は、露光前に乾燥することが好ましい。塗布膜の乾燥は、公知の乾燥方法により行うことができる。上記乾燥方法の例には、オーブン、熱風送風機、ホットプレート、赤外線ヒータ等による加熱、真空乾燥およびこれらの組み合わせが含まれる。乾燥時の加熱温度および加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択することができ、たとえば、60~110℃で、1~5分間行われることが好ましい。
【0131】
上記露光は、上述の塗布膜の一部にフォトマスクを介して放射線を照射する方法で行うことができる。この露光により、塗布膜のパターンに対応した部分を光硬化させる。
【0132】
上記フォトマスクは公知のものを用いることができる。フォトマスクの例には、ハーフトーンマスク、グレートーンマスク等の多階調マスクが含まれる。グレートーンマスクは、透光性を有する基板上に、遮光部および回折格子が形成される。回折格子はスリット、ドット、メッシュ等の光透過領域の間隔が、露光に用いる光の解像度限界以下の間隔であり、当該構成により、光の透過率を制御する。ハーフトーンマスクは、透光性を有する基板上に、遮光部および半透過部が形成される。半透過部により露光に用いる光の透過率を制御する。
【0133】
露光に用いる露光装置およびその露光照射条件は適宜選択できる。照射される放射線の例には、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線およびX線などが含まれる。上記放射線の中では、紫外線であることが好ましい。また、放射線を照射する装置には、公知の露光装置(超高圧水銀灯、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、遠紫外線灯等)を用いることができる。また、照射する放射線の波長は250nm以上400nm以下であることが好ましい。放射線の露光量は、10mJ/cm2以上1000mJ/cm2以下であることが好ましい。
【0134】
露光後には、放射線が照射された塗布膜をアルカリ現像し、未露光部の塗布膜を除去する。
【0135】
塗布膜の現像方法の例には、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、およびパドル(液盛り)現像法などが含まれる。なお、上記現像は、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて行うことができる。
【0136】
現像に適した現像液の例には、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等が含まれる。これらの中では、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩を0.04~5質量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて23~30℃の温度で行うことが好ましい。なお、現像工程では、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いることができる。
【0137】
その後、現像後の露光部(塗布膜)を熱処理して、本硬化させる(ポストベーク)。
【0138】
現像後の露光部(塗布膜)を加熱する方法は、公知の方法(オーブン、熱風送風機、ホットプレート、赤外線ヒータ等による加熱、真空乾燥またはこれらの組み合わせ)によって行うことができる。加熱温度は、塗布膜が本硬化(ポストベーク)する温度であれば特に制限されない。加熱温度は、60~250℃の温度で20~60分間行われることが好ましい。
【0139】
加熱硬化後には、塗布膜(硬化膜)を短波長の放射線で洗浄し、塗布膜表面の有機汚染物質を除去してもよい。
【0140】
上記洗浄は、例えば低圧水銀ランプによる184.9nmおよび253.7nmの波長の紫外線を照射する方法により行うことができる。このときの照射量は、1000mJとすることができる。
【0141】
上述の硬化膜付き基板は、表示装置のブラックマトリックス、カラーフィルター、遮光膜、保護膜および波長変換層などの各種機能層として用いることができる。当該表示装置の光源は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)光源およびレーザー発光ダイオード(LED)光源などの公知の光源とすればよい。また、表示装置は、光源と上述の硬化膜付き基板との間に、量子ドットまたは蛍光体化合物を含む波長変換層が配置された構成であってもよい。上述の硬化膜付き基板は、特に、膜厚が1μmや3μm以上の厚膜としたときにも良好なフレキシブル耐性を有するので、このような膜厚を有する、LEDディスプレイにおいてLED光源に対して側方に配置され、側方への光漏れを抑止するための遮光膜などとして有用である。
【実施例0142】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0143】
まず、(A)成分である不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の合成例から説明するが、これらの合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。
【0144】
なお、各種測定機器について、同一の機種を使用した場合には、2か所目から機器メーカー名を省略している。また、実施例において、測定用の樹脂硬化膜付き基板の作製に使用しているガラス基板は、全て同じ処理を施して使用している。また、各成分の含有量について、小数第一位が0であるときは、小数点以下の表記を省略することがある。
【0145】
[固形分濃度]
合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W0(g)〕に含浸させて秤量し〔W1(g)〕、160℃にて2時間加熱した後の重量〔W2(g)〕から次式により求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0)
【0146】
[エポキシ当量]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させた後に臭化テトラエチルアンモニウムの酢酸溶液を加え、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-過塩素酸溶液で滴定して求めた。
【0147】
[酸価]
酸価は、樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めた。
【0148】
[分子量]
分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuper H-2000(2本)+TSKgelSuper H-3000(1本)+TSKgelSuper H-4000(1本)+TSKgelSuper H-5000(1本)(東ソー株式会社製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS-オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0149】
[アクリル当量]
アクリル当量は、分子量をアクリル官能基数で割ることにより求めた。
【0150】
以下の合成例等で使用する略号は次のとおりである。
AA :アクリル酸
BPFE :ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応物)
BPDA :3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA :テトラヒドロ無水フタル酸
TEAB :臭化テトラエチルアンモニウム
TPP :トリフェニルフォスフィン
PGMEA :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0151】
[合成例1]
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にBPFE(114.4g、0.23モル)、AA(33.2g、0.46モル)、PGMEA(157.0g)およびTEAB(0.48g)を仕込み、100~105℃で20時間撹拌して反応させた。次いで、フラスコ内にBPDA(35.3g、0.12モル)、THPA(18.3g、0.12モル)を仕込み、120~125℃で6時間撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A)を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55.8質量%、酸価(固形分換算)は100mgKOH/g、GPC分析によるMwは3,600であった。
【0152】
[合成例2]
還留冷却器付き500mlの四つ口フラスコ中に、ビスフェノールA型エポキシ化合物(日鉄エポキシ製造株式会社製、商品名YD-128、エポキシ当量=182)104.2g(0.29mol)、AA41.2g(0.57mol)、TPP1.50g、及びPGMEA41.0gを仕込み、100~105℃の加熱下で12hr撹拌し、反応生成物を得た。
【0153】
次いで、得られた反応生成物にジメチロールプロピオン酸17.4g(0.13mol)及びPGMEA123.8gを仕込み、45℃に昇温した。次に、イソホロンジイソシアネート61.8g(0.28mol)をフラスコ内の温度に注意しながら滴下した。滴下終了後、75~80℃の加熱下で6hr撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(B)-1を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は60.0wt%であり、酸価(固形分換算)は54mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは11,440であった。
【0154】
[合成例3]
還留冷却器付き500mlの四つ口フラスコ中に、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物(三菱ケミカル株式会社製、商品名YX-8000、エポキシ当量=201)80.4g(0.40mol)、AA57.6g(0.80mol)、TPP2.10g、及びPGMEA40.0gを仕込み、100~105℃の加熱下で12hr撹拌し、反応生成物を得た。
【0155】
次いで、得られた反応生成物にジメチロールプロピオン酸24.4g(0.18mol)及びPGMEA141.3gを仕込み、45℃に昇温した。次に、イソホロンジイソシアネート86.4g(0.39mol)をフラスコ内の温度に注意しながら滴下した。滴下終了後、75~80℃の加熱下で6hr撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(B)-2を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は60.0wt%であり、酸価(固形分換算)は40mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは7,420であった。
【0156】
[合成例4]
還留冷却器付き500mlの四つ口フラスコ中に、ビフェノールノボラックエポキシ化合物(日本化薬株式会社製、商品名NC-3000、エポキシ当量=270)91.8g(0.34mol)、AA49.0g(0.68mol)、TPP1.78g、及びPGMEA40.0gを仕込み、100~105℃の加熱下で12hr撹拌し、反応生成物を得た。
【0157】
次いで、得られた反応生成物にジメチロールプロピオン酸20.7g(0.15mol)及びPGMEA131.9gを仕込み、45℃に昇温した。次に、イソホロンジイソシアネート73.5g(0.33mol)をフラスコ内の温度に注意しながら滴下した。滴下終了後、75~80℃の加熱下で6hr撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(B)-3を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は60.0wt%であり、酸価(固形分換算)は38mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは8,210であった。
【0158】
表1および表2に記載の配合量(単位は質量%)で感光性樹脂組成物を調製した。表1および表2で使用した配合成分は以下のとおりである。
【0159】
((C)少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物)
(C):ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの混合物(DPHA、日本化薬株式会社製)
【0160】
((D)光重合性開始剤)
(D):メタノン,(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)〔4-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルフェニル〕-,O-アセチルオキシム(アデカアークルズ NCI-831、ADEKA社製)
【0161】
((E)遮光材分散液)
(E)-1:カーボンブラック顔料20質量%、高分子分散剤4質量%のプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート溶剤分散液(固形分濃度24質量%)
(E)-2:ビスベンゾフラノン系顔料20質量%、高分子分散剤4質量%のプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート溶剤分散液(固形分濃度24質量%)
【0162】
((F)エポキシ樹脂)
(F)-1:ビフェノールノボラック型エポキシ化合物(NC-3000、エポキシ当量270、日本化薬株式会社製)
(F)-2:ビスフェノールA型エポキシ化合物(JER1010、エポキシ当量4000、三菱ケミカル株式会社製)
【0163】
((G)カップリング剤)
(G):3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランの有効成分50%アルコール溶液(KBE-585、信越化学工業社製)
【0164】
((H)界面活性剤)
(H):ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(SH3775M、ダウ・ケミカル日本株式会社製)
【0165】
((I)溶剤)
(I)-1:プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート(東京化成工業株式会社製)
(I)-2:シクロヘキサノン(東京化成工業株式会社製)
【0166】
【0167】
【0168】
[評価]
[特性評価用の硬化膜の作製]
表1および表2に示した感光性樹脂組成物を、予め低圧水銀灯で波長254nmにおいて積算照度が500mJ/cm2となるよう紫外線を照射して表面を洗浄した、125mm×125mmのガラス基板「Eagle XG」(コーニング社製)(以下「ガラス基板」という)上に、加熱硬化処理後に所定の膜厚となるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で2分間プリベークをして塗布膜を作製した。
【0169】
次いで、上記塗布膜上にネガ型フォトマスクを被せ、i線照度30mW/cm2の超高圧水銀ランプで100mJ/cm2の紫外線を照射して、光硬化反応を行った。
【0170】
次いで、露光した上記硬化膜を23℃、0.04%水酸化カリウム溶液により1kgf/cm2のシャワー圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から30秒間、現像処理を行った後、5kgf/cm2のスプレー水洗を行い、上記硬化膜の未露光部分を除去してガラス基板上に硬化膜パターンを形成し、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、実施例1~19、および比較例1~2に係る硬化膜付き基板を得た。
【0171】
上記で得られた実施例1~19および比較例1~2の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜について、以下の項目について評価した結果を表3および表4に示す。
【0172】
<遮光性>
膜厚を1μmとして作製した硬化膜を卓上式透過濃度計(X-Rite 361T、エックスライト社製)を用いて遮光度(光学濃度OD)を測定した。
【0173】
<厚膜形成能>
膜厚を変えて作製された硬化膜の膜表面上にシワが発生していないか目視で確認した。この際、膜厚が5μm以上においてもシワが発生しない場合を○、5μm以下でシワが発生する場合は×とした。
【0174】
<厚膜時のホール解像度>
本硬化後の膜厚を7μmに固定した場合において、現像され四角形形状で開口していることを顕微鏡(XD-1000、ニコン社製)で確かめた。この際、開口している箇所に相当するネガ型フォトマスクの開口サイズが100μm未満である場合を○、100~200μmである場合を△、200μm以上である場合を×とした。
【0175】
<厚膜時のホールのエッジクリアランス>
前述の100μm以下サイズのホールパターンにおいて、四辺にスカムやエッジバンプ、庇等直線性を損なう欠陥が無いことを顕微鏡(XD-1000、ニコン社製)で確かめた。この際、全く無くエッジクリアランスが良好である場合を○、四辺のうち一ないし二辺で欠陥が見られる場合を△、四辺全てに見られる場合を×とした。
【0176】
<基材との密着性>
本硬化後の膜厚が7μmの硬化膜付きガラス基板を用いてJIS K5600第5部第6節に準じた付着性(クロスカット法)評価を行った。その結果、付着性の分類が4~5Bの場合を○、2~4Bの場合を△、2B未満の場合を×とした。
【0177】
<フレキシブル性>
基材を可撓性基板であるカプトン100H(膜厚25μmのポリイミド系フィルム、230℃で30分加熱したときの熱収縮率が0.2%、東レ・デュポン株式会社製)に変更した上で前述の成膜条件に準じて膜厚1、3、7、10μmの硬化膜を形成した。これらのフィルムを、予め現像により得た50μm×50μmの開口部をもつ幅1cm、長さ12cmの短冊状に加工し、短冊の両端を端部より5cmの地点まで動かないように塗工面を上側にして治具で固定し、短冊の中央にあたる6cmの地点で屈曲するようにした。この屈曲においては、塗工面間の空間距離(ギャップ)を10mm、5mmおよび1mmとして設け、3秒間で折りたたみ・3秒間で拡げる操作を1往復として、50往復のハゼ折り屈曲試験を行った。
【0178】
この操作が終了したところで、顕微鏡(XD-1000、ニコン社製)にてネガ型フォトマスクの開口サイズが50μm×50μmに相当する箇所のパターンの四隅や硬化膜にクラック、剥離等の欠陥が無いかを確認した。このうち、1200μm×1200μmの範囲を観察して、無作為に16ヵ所の開口パターンを選定して前記のような欠陥が見られたものを数えた。
【0179】
ここで、全く欠陥が無い場合を◎、1~2ヵ所の場合を○、3~7か所の場合を△、8ヵ所以上の場合を×とした。
【0180】
評価結果を表3および表4に示す。
【0181】
【0182】
【0183】
上記実施例1~19、比較例1~2の結果から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより、カラーフィルターに用いられるブラックマトリックスと同様な遮光性、製版性を有しつつ耐屈曲性が付与された硬化膜を作製できることがわかった。したがって、本硬化膜はフレキシブルディスプレイ用の遮光層として最適である。
本発明の感光性樹脂組成物によれば、フォトリソグラフィーによるパターニングが可能でかつ、遮光材を含有しながらもフレキシブル性に優れた硬化膜付き基板を得ることができる。例えば、基材が湾曲している、可動する表示装置における遮光層などに有用である。特に、基材に対する密着性と硬化膜の耐クラック性に優れる点が有機ELディスプレイやLEDディスプレイに代表されるフレキシブルデバイスには好適である。