(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152809
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】ポリエステル溶液及びポリエステル膜
(51)【国際特許分類】
C08J 3/11 20060101AFI20231005BHJP
C08G 63/12 20060101ALI20231005BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20231005BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
C08J3/11 CFD
C08G63/12
C08J5/18
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039210
(22)【出願日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2022057682
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100163234
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 順子
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 宏将
(72)【発明者】
【氏名】福山 遼大
(72)【発明者】
【氏名】池田 悠太
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
4J029
4J200
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AC33
4F070AE28
4F070CA11
4F070CB05
4F070CB11
4F071AA44
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4F071AF52
4F071AH19
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4J029AE11
4J029AE13
4J029BA02
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4J029BD04A
4J029BD07A
4J029BF30
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4J200AA02
4J200AA04
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4J200BA19
4J200CA01
4J200DA19
4J200DA20
4J200EA10
4J200EA21
(57)【要約】
【課題】
不燃性であり、かつ一定以上の沸点を有する溶媒に溶解させた脂肪族ポリエステル溶液を提供する。
【解決手段】
5~30の炭素数を有するジオールに由来する構造単位及び5~30の炭素数を有するジカルボン酸に由来する構造単位を分子鎖中に有する脂肪族ポリエステル樹脂を含み、常圧における沸点が70℃以上である塩素系有機溶剤を溶媒とする、ポリエステル溶液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5~30の炭素数を有するジオールに由来する構造単位及び5~30の炭素数を有するジカルボン酸に由来する構造単位を分子鎖中に有する脂肪族ポリエステル樹脂を含み、常圧における沸点が70℃以上である塩素系有機溶剤を溶媒とする、ポリエステル溶液。
【請求項2】
前記塩素系有機溶剤が、テトラクロロエチレン及びトリクロロエチレンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のポリエステル溶液。
【請求項3】
前記ジオールに由来する構造単位及び前記ジカルボン酸に由来する構造単位のうち、少なくとも一方の炭素数が6以上である、請求項1又は2に記載のポリエステル溶液。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリエステル溶液を塗布し、乾燥してなる、ポリエステル膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル溶液及びポリエステル膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロプラスチックを始めとする難分解性プラスチックが引き起こす、環境破壊及び生体への悪影響が問題となっている。種々の解決策が検討されており、生分解性プラスチックの利用が一案として検討されている。
【0003】
脂肪族ポリエステル樹脂は生分解性を示すものが多く、環境負荷の少ないポリマーとして注目されている。具体例として、ポリブチレンサクシネート(PBS)を挙げることができる。PBSをフィルム成形する場合やフィルム状製品にラミネート成形する場合、押出法や押出コーティング等の成形法が多く用いられる。
一方で、報告例は多くないが、生分解性ポリエステルの溶液を接着剤、粘着剤、インク、コーティング剤などとして用いる検討も行われている。特許文献1では、生分解性ポリエステルを非ハロゲン溶剤に溶解したポリエステル溶液が報告されている。特許文献2では、ポリブチレンサクシネートを溶媒に溶解して得たポリブチレンサクシネート溶液を、ポリブチレンサクシネートの非溶媒に浸漬することで得られた濾過膜が報告され、ポリブチレンサクシネートを溶解する溶媒としてクロロホルムが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/001081号
【特許文献2】特開2008-132415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリエステル溶液を用いる際の安全性を考慮すると、生分解性ポリエステルを溶解させる溶媒は不燃性であることが好ましい。しかし、生分解性を有する脂肪族ポリエステルは、クロロホルムなどの一部の有機溶剤を除いて溶けにくく、溶液を調製することが困難である。クロロホルムは不燃性であるが、沸点が61℃と比較的低く、作業中に揮発しやすいため、取扱い上の困難が生じる。さらに、高温に加熱して樹脂を溶解させることができず、効率よく、かつ、均質な樹脂溶液を得ることが難しい。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、不燃性であり、かつ、一定以上の沸点を有する溶媒に溶解させた脂肪族ポリエステル溶液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題に関して鋭意検討を重ねた結果、特定の炭素数を有するジオールに由来する構造単位及び特定の炭素数を有するジカルボン酸に由来する構造単位を分子鎖中に有する脂肪族ポリエステルと、特定の塩素系有機溶剤とを組み合わせることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の[1]~[4]を提供するものである。
【0008】
[1] 5~30の炭素数を有するジオールに由来する構造単位及び5~30の炭素数を有するジカルボン酸に由来する構造単位を分子鎖中に有する脂肪族ポリエステル樹脂を含み、常圧における沸点が70℃以上である塩素系有機溶剤を溶媒とする、ポリエステル溶液。
[2] 前記塩素系有機溶剤が、テトラクロロエチレン及びトリクロロエチレンからなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]に記載のポリエステル溶液。
[3] 前記ジオールに由来する構造単位及び前記ジカルボン酸に由来する構造単位のうち、少なくとも一方の炭素数が6以上である、上記[1]又は[2]に記載のポリエステル溶液。
[4] 上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のポリエステル溶液を塗布し、乾燥してなる、ポリエステル膜。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、不燃性であり、かつ、一定以上の沸点を有する溶媒に溶解させた脂肪族ポリエステル溶液を提供することができる。上記溶媒は常圧における沸点が高いため、取り扱い性に優れるとともに、脂肪族ポリエステル樹脂が十分に溶解するため、均質なポリエステル溶液を得ることができる。また、本発明のポリエステル溶液に含まれる脂肪族ポリエステル樹脂は生分解性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。ただし、本発明は次に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0011】
[脂肪族ポリエステル樹脂]
本発明のポリエステル溶液に含まれる脂肪族ポリエステル樹脂は、5~30の炭素数を有するジオールに由来する構造単位及び5~30の炭素数を有するジカルボン酸に由来する構造単位を分子鎖中に有することを要する。
【0012】
<ジオール>
ジオールに由来する構造単位(以下、「ジオール由来単位」と略記することがある)を構成するジオールの炭素数は、5~30であることを要する。ジオールの炭素数が本範囲から外れると、本発明のポリエステル溶液を構成する溶媒へのポリエステル樹脂の溶解性に劣るとともに、生分解性が低下する。
本発明において、ポリエステル樹脂の溶媒への溶解性及び生分解性、並びに原料の入手容易性の観点から、上記ジオールの炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上であり、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下、よりさらに好ましくは13以下、特に好ましくは12以下、最も好ましくは11以下である。
【0013】
上記ジオールは、直鎖状、分岐状、環状のいずれのジオールであってもよいが、直鎖状又は分岐状の鎖状のジオールが好ましく、直鎖状のジオールがより好ましい。
上記ジオールとしては、具体的には、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオールなどの鎖状のジオール;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソソルバイドなどの脂環式ジオールなどが挙げられる。中でも、炭素数が8~13の直鎖状のジオールが好ましく、例えば、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール及び1,12-ドデカンジオールからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
上記ジオール由来単位は、単独のジオールに由来してもよいし、2種以上のジオールに由来してもよい。
【0014】
<ジカルボン酸>
ジカルボン酸に由来する構造単位(以下、「ジカルボン酸由来単位」と略記することがある)を構成するジカルボン酸の炭素数は、5~30であることを要する。ジカルボン酸の炭素数が本範囲から外れると、本発明のポリエステル溶液を構成する溶媒への脂肪族ポリエステル樹脂の溶解性に劣るとともに、生分解性が低下する。
本発明における溶媒への溶解性及び生分解性、並びに原料の入手容易性の観点から、ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上であり、好ましくは25以下、より好ましくは23以下、さらに好ましくは20以下、よりさらに好ましくは15以下、よりさらに好ましくは13以下、特に好ましくは12以下、最も好ましくは11以下である。
【0015】
ジカルボン酸としては、鎖状のジカルボン酸であっても、環状のジカルボン酸であってもよく、鎖状のジカルボン酸が好ましく、直鎖状のジカルボン酸がより好ましい。具体的には、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ドコサン二酸及び1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。中でも、炭素数が5~20の直鎖状のジカルボン酸が好ましく、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸及びドデカン二酸からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
上記ジカルボン酸由来単位は、単独のジカルボン酸に由来してもよいし、2種以上のジカルボン酸に由来してもよい。
【0016】
本発明の一態様においては、脂肪族ポリエステル樹脂の分子鎖に含有される、上記ジオール由来単位及びジカルボン酸由来単位の少なくとも一方の炭素数が好ましくは6以上、より好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上である。ジオール由来単位及びジカルボン酸由来単位は上述した通り5~30の炭素数を有するが、少なくとも一方が当該範囲の炭素数を有する場合に、より溶媒溶解性に優れるとともに、生分解性に優れるポリエステル樹脂となる。
上記ジオール由来単位と、上記ジカルボン酸由来単位の炭素数の合計は特に限定されないが、例えば10~50、好ましくは10~45、より好ましくは15~40、さらに好ましくは15~35、よりさらに好ましくは15~30、特に好ましくは15~25である。
【0017】
本発明のポリエステル溶液に含まれる脂肪族ポリエステル樹脂は、上記5~30の炭素数を有するジオール由来単位及び5~30の炭素数を有するジカルボン酸由来単位を分子鎖中に有すればよく、その他の構成単位を含有していてもよい。その他の構成単位としては、ヒドロキシカルボン酸由来の構成単位又は3官能以上の官能基由来の構成単位を挙げることができる。
【0018】
ヒドロキシカルボン酸由来の構成単位は、単位中に1個の水酸基とカルボキシル基とを有する化合物由来の単位であれば特に限定されない。ヒドロキシカルボン酸単位の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2-ヒドロキシ-n-酪酸、2-ヒドロキシカプロン酸、6-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸、マンデル酸、サリチル酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸及びこれらのエステル、酸塩化物、酸無水物等に由来する単位などが挙げられる。
3官能以上の官能基を有する構成単位は、3官能以上の多価アルコール;3官能以上の多価カルボン酸若しくはその無水物、酸塩化物、又はエステル;及び3官能以上のヒドロキシカルボン酸若しくはその無水物、酸塩化物、又はエステル;3官能以上のアミン類からなる群から選ばれる少なくとも1種の3官能以上の多官能化合物に由来する単位などが挙げられる。
3官能以上の多価アルコールに由来する単位としては、具体的には、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等に由来する単位などが挙げられる。3官能以上の多価カルボン酸又はその無水物に由来する単位は、具体的には、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタテトラカルボン酸無水物等に由来する単位などが挙げられる。3官能以上のヒドロキシカルボン酸に由来する単位としては、具体的には、リンゴ酸、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキシメチルグルタル酸、酒石酸、クエン酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸等に由来する単位などが挙げられる。これらのうち、特に入手のし易さから、トリメチロールプロパン、リンゴ酸、酒石酸およびクエン酸に由来する単位が好ましい。
【0019】
本発明のポリエステル溶液に含まれる脂肪族ポリエステル樹脂は、分子鎖における5~30の炭素数を有するジオール由来単位及び5~30の炭素数を有するジカルボン酸由来単位の割合が、ポリエステル樹脂を構成する全構成単位に対して、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、よりさらに好ましくは95モル%以上であり、100モル%であってもよい。
脂肪族ポリエステル樹脂が、ヒドロキシカルボン酸由来の構成単位を含む場合には、ポリエステル樹脂を構成する全構成単位に対して、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下で含むことが好ましい。ヒドロキシカルボン酸由来の構成単位の量を上記範囲とすることで、脂肪族ポリエステル樹脂の溶解性及び生分解性に悪影響を与えずに、その結晶性や耐熱性を良好にすることができる。
脂肪族ポリエステル樹脂が、3官能以上の官能基を有する構成単位を含む場合には、ポリエステル樹脂を構成する全構成単位に対して、好ましくは0.0001モル%以上、より好ましくは0.001モル%以上、さらに好ましくは0.005モル%以上、特に好ましくは0.01モル%以上である。上限は、好ましくは5モル%、より好ましくは4モル%、さらに好ましくは3モル%である。3官能以上の官能基を有する構成単位の量を上記範囲とすることで、脂肪族ポリエステル樹脂の溶解性及び生分解性に悪影響を与えずに、その溶融粘度を適切に調整することができる。
【0020】
上記脂肪族ポリエステル樹脂の還元粘度(ηsp/c)は、特に限定されない。ハンドリング性、生産性などの観点から、上記還元粘度は、実施例にて後述する測定条件において、好ましくは0.8dL/g以上、よりさらに好ましくは1.0dL/g以上、最も好ましくは1.10dL/g以上であり、好ましくは4.0dL/g以下、より好ましくは2.5dL/g以下、さらに好ましくは1.70dL/g以下である。
【0021】
本発明において、脂肪族ポリエステル樹脂の数平均分子量は、好ましくは9,000~100,000、より好ましくは10,000~50,000、さらに好ましくは10,000~30,000、よりさらに好ましくは10,000~25,000、特に好ましくは11,000~17,000である。数平均分子量が上記範囲にあると、ポリエステル溶液の粘性を適切に保ちながら、本発明のポリエステル溶液の溶媒への溶解性を担保することができる。
分子量分布は、好ましくは2~8、より好ましくは3~7、さらに好ましくは4~7である。
脂肪族ポリエステル樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したポリスチレン換算の値である。
【0022】
<その他成分>
本発明のポリエステル溶液は、本発明の効果を大幅に損なわない限りにおいて、上記脂肪族ポリエステル樹脂の他に、フィラー(充填剤)、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、加水分解防止剤、結晶核剤、アンチブロッキング剤、耐候剤、熱安定剤、難燃剤、離型剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、分散助剤、各種界面活性剤、スリップ剤、鮮度保持剤、抗菌剤等の各種添加剤等のその他成分を含んでいてもよい。これらの成分は単独で含まれてもよいし、2種類以上が含まれていてもよい。
本発明のポリエステル溶液にその他成分が含まれる場合、ポリエステル溶液の特性を損なわない観点から、溶液中の脂肪族ポリエステル樹脂100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、よりさらに好ましくは1質量部以下である。
【0023】
[塩素系有機溶剤]
本発明のポリエステル溶液は、常圧における沸点が70℃以上である塩素系有機溶剤が溶媒であることを要する。常圧における沸点が70℃未満であると、作業中に揮発しやすい等、ポリエステル溶液の取扱いが困難となる。
上記塩素系有機溶剤の常圧における沸点は、好ましくは75℃以上、より好ましくは80℃以上である。具体的には、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンからなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0024】
塩素系有機溶剤は上記したトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの等の、常圧における沸点が70℃以上である塩素系有機溶剤を主成分として含むことが好ましい。ここで「主成分」とは、塩素系有機溶剤の好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上を構成する成分を意味し、実質的に100質量%であってもよい。
本発明においては、常圧における沸点が70℃以上であれば、脂肪族ポリエステル樹脂の溶解性に悪影響を与えない範囲で、その他の塩素系有機溶剤や、非塩素系有機溶剤を含んでいてもよい。
【0025】
[ポリエステル溶液]
本発明のポリエステル溶液は、上記脂肪族ポリエステル樹脂を、上記の塩素系有機溶剤に溶解させたものである。上記脂肪族ポリエステル樹脂は、常圧における沸点が70℃以上である塩素系有機溶剤に可溶である。
脂肪族ポリエステル樹脂の溶剤への溶解は、常温で行ってもよいし、加熱して行ってもよい。加熱温度は特に限定されないが、本発明において用いられる塩素系有機溶剤の沸点以下の温度であることが好ましい。溶解に際しては、攪拌下で脂肪族ポリエステル樹脂を溶剤に溶解させることが好ましい。
【0026】
本発明のポリエステル溶液の濃度は特に限定されないが、成形時(膜形成)の作業性の観点から、好ましくは0.1~40質量%、より好ましくは0.1~30質量%、さらに好ましくは0.1~20質量%、よりさらに好ましくは0.5~20質量%、特に好ましくは1~20質量%である。
【0027】
本発明のポリエステル溶液は、このまま使用することもできるが、例えば、乳化剤を混合して、エマルジョン化させて乳化物とすることもできるし、乾燥させて乾燥物にすることもできる。ポリエステル溶液を乳化物にしてから乾燥させて、乾燥物にすることも好ましい。
【0028】
<ポリエステル膜>
本発明の一態様においては、特定の溶媒に特定の脂肪族ポリエステル樹脂を溶解させた、本発明のポリエステル溶液を塗布し、乾燥してなるポリエステル膜を提供する。ポリエステル膜の膜厚は、用途に応じて適宜選択することができ、例えばポリエステル溶液の塗布量により制御することができる。
上記ポリエステル膜の製造方法は特に限定されず、例えば、ベースフィルム等の被塗布材に本発明のポリエステル溶液を塗布した後、溶媒を除去するために乾燥させることにより得ることができる。
【0029】
塗布方法は特に限定されないが、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、スプレーコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
乾燥方法は特に限定されず、加熱、送風、熱風、真空引き等の方法を適宜用いることができる。
【0030】
<脂肪族ポリエステル樹脂の製造方法>
本発明のポリエステル溶液に含まれる脂肪族ポリエステル樹脂の製造方法の一例を以下に記載する。脂肪族ポリエステル樹脂は、例えば、上記のジカルボン酸と、ジオールと、任意にその他の成分とを、触媒の存在下で重縮合することにより製造することができる。
【0031】
ジオール由来単位を形成するジオールとジカルボン酸由来単位を形成するジカルボン酸とを反応させる場合には、製造されるポリエステル樹脂が目的とする組成を有するように、ジオール及びジカルボン酸の使用量を調整する。通常、ジオールとジカルボン酸とは、実質的に等モル量で反応するが、ジオールは、エステル化反応中に留出し得ることから、通常はジカルボン酸に対して、1.01~3.0モル倍過剰に用いる。
【0032】
ポリエステルの重合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができる。例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等が重合触媒として挙げられる。中でも、触媒活性が高く、少量で重合を行うことが可能である点から、ゲルマニウム化合物又はチタン化合物が好適である。
触媒の使用量は、特に限定されないが、使用するモノマー量に対して、通常0.0005質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上であり、通常3質量%以下、好ましくは1.5質量%以下である。触媒量を上記範囲内とすることで、製造コストを抑えつつ十分な触媒効果が得られ、かつ、得られるポリマーの着色又は耐加水分解性の低下を抑制することができる。
【0033】
触媒の導入時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に導入しておいてもよく、減圧開始時に導入してもよい。
ジカルボン酸とジオールとのエステル化反応及び/又はエステル交換反応する際の温度、重合時間、圧力等の反応条件は、従来公知の条件を用いることができる。例えば、ジカルボン酸とジオールとのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、通常150℃以上、好ましくは180℃以上であり、通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。反応雰囲気は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気が好適である。反応圧力は、通常、0.01×103Pa~1×105Pa(常圧)、好ましくは0.03×103Pa以上、より好ましくは0.05×103Pa以上であり、好ましくは1.0×104Pa以下、より好ましくは1.4×103Pa以下、さらに好ましくは0.4×103Pa以下である。
反応時間は、通常1時間以上であり、通常10時間以下、好ましくは6時間以下、より好ましくは4時間以下である。反応条件を上記範囲内とすることで、不飽和結合の過剰生成によるゲル化が抑制され、重合度をコントロールすることができる。
【0034】
その他の構成単位として、ヒドロキシカルボン酸由来の単位を含む場合において、ヒドロキシカルボン酸を導入する時期は、ジオールとジカルボン酸との重縮合反応前であれば特に限定されない。予め触媒をヒドロキシカルボン酸溶液に溶解させた状態で混合する方法、原料仕込み時に触媒を反応系に導入すると同時に混合する方法等が挙げられる。
その他の構成単位として多官能成分単位を含む場合において、多官能成分単位を構成する化合物の導入時期は、特に限定されない。重合初期の他のモノマー又はオリゴマーと同時に仕込んでもよいし、エステル交換反応後、減圧を開始する前に仕込んでもよいが、他のモノマー又はオリゴマーと同時に仕込む方が工程の簡略化の点で好ましい。
【0035】
脂肪族ポリエステル樹脂の製造時には、本発明の効果を損なわない限りは、カーボネート化合物、ジイソシアネート化合物等の鎖延長剤を使用することもできる。鎖延長剤の量は、脂肪族ポリエステル樹脂を構成する全構成単位に対する、カーボネート結合又はウレタン結合の割合として、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。生分解性の観点から、脂肪族ポリエステル樹脂を構成する全構成単位に対し、カーボネート結合は1モル%未満であることが好ましく、0.5モル%以下であることがより好ましく、0.1モル%以下であることがさらに好ましい。同じ理由から、脂肪族ポリエステル樹脂を構成する全構成単位に対し、ウレタン結合は0.5モル%以下であることが好ましく、0.3モル%以下であることがより好ましく、0.12モル%以下であることが更に好ましく、0.05モル%以下であることが特に好ましい。
ポリエステル樹脂中のカーボネート結合量又はウレタン結合量は、1H-NMR及び13C-NMR等のNMR(核磁気共鳴スペクトル装置)による測定結果から算出することができる。
【0036】
<反応装置>
上記重縮合反応を行う反応装置としては、公知の縦型又は横型撹拌槽型反応器を用いることができる。重縮合反応工程を行う反応器としては、真空ポンプと反応器とを結ぶ減圧用排気管の間に、凝縮器が結合され、この凝縮器により重縮合反応中に生成する揮発成分や未反応モノマーを回収できる装置が好ましい。
脂肪族ポリエステル樹脂を連続式に製造できる反応装置としては、例えば、公知の縦型撹拌重合槽、横型撹拌重合槽、薄膜蒸発式重合槽等を使用することができ、複数基の反応槽を並べて多段式に行うのが一般的である。
【0037】
[脂肪族ポリエステル樹脂の生分解性]
本発明のポリエステル溶液に含まれる脂肪族ポリエステル樹脂の特徴の1つとして、生分解性を有することを挙げることができる。本発明の一の側面において、当該脂肪族ポリエステル樹脂は、特に樹脂が生分解し難いとされる海水中での生分解性(海洋生分解性)を有する。
本明細書において、生分解度は、理論的酸素要求量(ThOD)に対する生物学的酸素要求量(BOD)の比率として算出される。
例えば、海水中での生分解に関しては、ISO 14851:1999(プラスチック-水系培養液中の好気的究極生分解度の求め方-閉鎖呼吸計を用いる酸素消費量の測定による方法)に準拠して測定される。また、土壌中の生分解に関してはISO 17556:2003(プラスチック-呼吸計を用いた酸素消費量又は発生した二酸化炭素量の測定による土壌中での好気的究極生分解度の求め方)に準拠して測定される。
【0038】
<用途>
本発明のポリエステル溶液及びポリエステル膜は、上記生分解性を生かして、各種用途に好適に用いることができる。
【実施例0039】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されない。なお、実施例および比較例における評価方法は下記のとおりである。
【0040】
(1)還元粘度(ηsp/c)
各実施例及び比較例のポリエステル樹脂を、フェノールとテトラクロロエタンとの1:1(重量比)混合溶媒に、濃度0.5g/dLとなるように溶解させ、樹脂溶液を調製した。次いで、ウベローデ粘度管を用い、30℃における樹脂溶液の通過時間を測定し、結果に基づき還元粘度を算出した。
【0041】
(2)分子量測定
各実施例及び比較例のポリエステル樹脂(約5mg)をガラスバイアルに採取し、安定剤としてエタノールを含有する試薬特級クロロホルム(エタノール濃度=0.3~1.0質量%)約5gを加えて一晩静置して、濃度が約0.1質量%の試料溶液を調製した。調製した試料溶液を、0.45μm前処理フィルター(GLサイエンス社製、クロマトディスク13N)にて濾過し、GPC測定に供した。
カラムとしては、昭和電工製Shodex HK-404L(4.6×150mm、3.5μm)、Shodex HK-401(4.6×150mm、3μm)及びRI検出器を装着した東ソー社製HLC-8420GPCを使用してGPC測定を行った。測定条件は以下の通りである。
試料注入量:20μL
カラム温度:40℃
溶出溶媒:試薬特級クロロホルム
送液流量:0.7mL/min
換算平均分子量の算出は以下のように行った。
標準試料として市販の単分散ポリスチレン(東ソー社製、F-128、80、40、20、10、4、2、1、A-5000、2500、1000、500)及びBHT(分子量220)を使用し、ポリスチレン標準試料及びBHTの保持時間と分子量に関する較正曲線を作成したのち、較正曲線に基づいて、ポリエステル樹脂のポリスチレン換算質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0042】
(3)溶剤溶解性
(3-1)1w/v%溶解試験
各実施例及び比較例の脂肪族ポリエステル(50mg)をフラスコに導入したのち、フラスコ内を窒素置換した。続いて、フラスコにテトラクロロエチレン(沸点:121℃)5mLを加え、フラスコ内を100℃で15分間撹拌した後、60℃に降温してさらに1時間撹拌した。60℃での撹拌終了後、ポリエステル溶液を目視で観察し、ポリエステルが完全に溶解しているものを「溶解」、ポリエステル残渣が残っているものを「不溶」として評価した。
(3-2)8w/v%及び19w/v%溶解試験
脂肪族ポリエステルの量を変えたこと以外は、(3-1)と同様に溶解試験を行った。評価方法も同様である。
【0043】
(4)海洋生分解性試験
(4-1)生分解度測定
各実施例及び比較例にて用いた脂肪族ポリエステル樹脂の生分解度を、ISO 14851:1999に準拠した方法により、以下の通り測定した。
凍結粉砕後目開き250μmのふるいで分級した試料30mgを入れた510mLの褐色瓶に、ISO 14851に準拠した方法で調整した、標準試験培養液と海水との混合液100mLを加えた。褐色瓶に圧力センサー(WTW社製、OxiTop(登録商標)-C型)を取り付け、25℃の恒温環境下、54日間試験液をスターラーで攪拌し、BOD測定に基づいて、生分解度(%)を算出した。実施例5のみ、攪拌時間を60日とした。各ポリエステル樹脂に対して2回実施し、その平均値を生分解度として算出した。結果を表2に示す。
【0044】
(4-2)対セルロース分解度
海洋生分解性を検証するために、比較実験として上記各樹脂の代わりにセルロースを用いて、同じ条件にて当該試験を実施した。セルロースは海洋生分解性が高いことが知られている。
各樹脂の生分解度を、セルロースの生分解度で除した値(対セルロース生分解度)を得た。上記対セルロース生分解度が大きいほど、海洋生分解性に優れることを示す。かかる結果を表2に示す。
【0045】
実施例1
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧口を備えた反応容器に、原料として、グルタル酸48.89g、1,10-デカンジオール65.82gを仕込み、反応容器内を窒素雰囲気にし、160℃にて反応系が均一な溶液になるまで撹拌した。次に、撹拌しながら1時間かけて230℃まで昇温し、230℃で1時間保持した後に留出液を回収し、エステル化反応を進行させた。続いて、この反応液に、テトラブチルチタネート10.0質量%を溶解させたトルエン溶液0.366gを添加し、圧力を常圧から1.5時間かけて130Pa程度になるように、徐々に減圧しながら攪拌した。減圧開始から30分後、250℃まで30分間かけて昇温し、攪拌を継続した。減圧開始から4時間経過したところで撹拌を停止し、復圧して重縮合反応を終了した。反応容器下部より製造されたポリエステルをストランド状に抜き出し、冷却水槽を通して冷却した後、ペレタイザーによって切断し、2~3mm角程度のペレット状のポリエステル1(表中ではPE1と略記する)を得た。ポリエステル1の還元粘度は1.434dL/gであった。
得られたポリエステル1をパークロロエチレンに溶解させて、1w/v%、8w/v%及び19w/v%の濃度にて溶解性試験を行った。
また、得られたポリエステル1の生分解性を上記の方法にて測定した。結果を表2に示す。
【0046】
実施例2
グルタル酸をアジピン酸51.46g、1,10-デカンジオールを65.82g、テトラブチルチタネート溶液量を0.361gに変えたこと以外は、実施例1と同様の方法で反応を行い、減圧開始から3時間経過したところで反応を終了し、実施例1と同様の手法でペレット状のポリエスエル2(表中ではPE2と略記する)を得た。ポリエステル2の還元粘度は1.374dL/gであった。得られたポリエステル2を用いて、実施例1と同様に、溶解性試験及び生分解性試験を行った。結果を表1及び2に示す。
【0047】
実施例3
グルタル酸をピメリン酸53.69g、1,10-デカンジオールを59.73g、テトラブチルチタネート溶液量を0.391gに変えたこと以外は、実施例1と同様の方法で反応を行い、減圧開始から3時間経過したところで反応を終了し、実施例1と同様の手法でペレット状のポリエスエル3(表中ではPE3と略記する)を得た。ポリエステル3の還元粘度は1.672dL/gであった。得られたポリエステル3を用いて、実施例1と同様に、溶解性試験及び生分解性試験を行った。結果を表1及び2に示す。
【0048】
実施例4
グルタル酸をアゼライン酸57.67g、1,10-デカンジオールを54.57g、テトラブチルチタネート溶液量を0.366gに変えたこと以外は、実施例1と同様の方法で反応を行い、減圧開始から6時間経過したところで反応を終了し、実施例1と同様の手法でペレット状のポリエスエル4(表中ではPE4と略記する)を得た。ポリエステル4の還元粘度は1.308dL/gであった。得られたポリエステル4を用いて、実施例1と同様に、溶解性試験及び生分解性試験を行った。結果を表1及び2に示す。
【0049】
実施例5
グルタル酸をドデカン二酸62.50g、1,10-デカンジオールを49.26g、テトラブチルチタネート溶液量を0.368gに変えたこと以外は、実施例1と同様な方法で反応を行い、減圧開始から5時間30分経過したところで反応を終了し、実施例1と同様の手法でペレット状のポリエスエル5(表中ではPE5と略記する)を得た。ポリエステル5の還元粘度は1.156dL/gであった。得られたポリエステル5を用いて、実施例1と同様に、溶解性試験及び生分解性試験を行った。結果を表1及び2に示す。
【0050】
実施例6
グルタル酸をエイコサン二酸67.31g、1,10-デカンジオールを1,12-ドデカンジオール39.77g、テトラブチルチタネート溶液量を0.426gに変えたこと以外は、実施例1と同様の方法で反応を行い、減圧開始から3時間経過したところで反応を終了し、実施例1と同様の手法でペレット状のポリエスエル6(表中ではPE6と略記する)を得た。ポリエステル6の還元粘度は1.392dL/gであった。得られたポリエステル6を用いて、実施例1と同様に、溶解性試験及び生分解性試験を行った。結果を表1及び2に示す。
【0051】
比較例1
三菱ケミカル株式会社から販売されている、BioPBSTM FZ91をポリエステル樹脂(表中ではPBSと略記する)として用いて、実施例1と同様に、溶解性試験及び生分解性試験を行った。結果を表1及び2に示す。
【0052】
【0053】
【0054】
上記表1及び表2の結果から、PE1~PE6を含む実施例においては、塩素系有機溶剤であるパークロロエチレンに問題なく溶解するとともに、生分解性に優れることがわかる。一方、炭素数が4であるジオール及びジカルボン酸から構成されるPBSを用いた比較例では、最も低い濃度(1w/v%)における溶解性試験においても塩素系有機溶媒に溶解せず、ポリエステル溶液を得ることができなかった。また、PBSは生分解性にも劣ることがわかった。