(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152834
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】シリコンエッチング液、及びシリコンエッチング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
H01L21/308 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043628
(22)【出願日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】111112402
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】荘 雅茜
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA02
5F043AA09
5F043BB02
5F043DD02
5F043DD12
5F043DD13
5F043EE02
5F043EE07
5F043EE08
5F043FF01
(57)【要約】
【課題】高いエッチング速度を有し、且つ基板との表面張力、及び接触角が低いシリコンエッチング液、及び該シリコンエッチング液でエッチング処理を行う高いアスペクト比を有するシリコン基板のシリコンエッチング方法の提供。
【解決手段】(A)成分:第4級アンモニウム水酸化物と、(B)成分:アミン類と、(C)成分:溶剤と、を含有し、前記(B)成分はポリアミン、及びアルカノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である、シリコンエッチング液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:第4級アンモニウム水酸化物と、(B)成分:アミン類と、(C)成分:溶剤と、を含有し、
前記(B)成分はポリアミン、及びアルカノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である、シリコンエッチング液。
【請求項2】
前記(B)成分は1,3-プロパンジアミン、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、及びジイソプロパノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である請求項1に記載のシリコンエッチング液。
【請求項3】
前記(B)成分は1,3-プロパンジアミン、又はジイソプロパノールアミンである請求項1又は2に記載のシリコンエッチング液。
【請求項4】
前記(A)成分はテトラメチルアンモニウム水酸化物である請求項1に記載のシリコンエッチング液。
【請求項5】
前記(C)成分は水、及び水溶性有機溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種以上である請求項1に記載のシリコンエッチング液。
【請求項6】
前記(C)成分は水である請求項5に記載のシリコンエッチング液。
【請求項7】
シリコンエッチング液総重量に対して、前記(A)成分の含有量は0重量%超、2.38重量%以下である請求項1に記載のシリコンエッチング液。
【請求項8】
シリコンエッチング液総重量に対して、前記(B)成分の含有量は0重量%超、30重量%以下である請求項1に記載のシリコンエッチング液。
【請求項9】
さらに、(D)成分:界面活性剤を含有する請求項1に記載のシリコンエッチング液。
【請求項10】
シリコンエッチング液総重量に対して、前記(D)成分の含有量は0重量%以上、1重量%以下である請求項9に記載のシリコンエッチング液。
【請求項11】
前記(D)成分はアニオン系界面活性剤である請求項9に記載のシリコンエッチング液。
【請求項12】
請求項1に記載のシリコンエッチング液を用いて、アスペクト比が50以上のシリコン層を有するシリコン基板をエッチング処理する、シリコンエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種のシリコンデバイスを製造するためのシリコンエッチング液、及びシリコンエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化技術は、半導体デバイスにおける機能ユニットの高密度化を可能にしてきた。例えば、トランジスタサイズの縮小化は、より多くのメモリ素子をチップ上に取り込むことを可能にし、容量が増えた製品の製造につながる。
【0003】
シリコン酸化膜(SiOx)、シリコン窒化膜(SiN)等の機能膜層を有するシリコンオンインシュレーター基板(以下、『シリコン基板』ということがある。)をエッチング処理で半導体デバイスを製造する際、エッチング選択性を考慮して、大半、製造プロセスにはアルカリ系エッチング液が用いられる。選択性とは、特定の部材に対して特に高いエッチング性を示す性質を言い、例えば、シリコン膜と他の膜(例えば、SiOx、SiN等)とを有するシリコン基板をエッチングする際に、シリコン膜のみをエッチングし、他の膜がエッチングされない場合には、一般、シリコンに対する選択性が高いと言われる。
【0004】
従来のアルカリ系エッチング液でシリコン異方性エッチングを行う方法では、エッチング液として、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、第4級アンモニウム水酸化物(例えば、テトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)等)等を含むアルカリ水溶液が用いられており、金属を含まない点で、第4級アンモニウム水酸化物を含むシリコン異方性エッチング液が好適に用いられている。
【0005】
例えば、特許文献1には、多結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜の一部又はすべてを除去するためのエッチング液であって、アルカリ化合物、酸化剤、フッ酸化合物、及び水を含み、該アルカリ化合物が水酸化カリウム、アンモニア、又は第4級水酸化アンモニウムであり、凹凸形状部のアスペクト比(aspect ratio)が15~100であるシリンダー(cylinder)構造を形成できるシリコンエッチング液が開示されている。
また、特許文献2には、第4級水酸化アンモニウム、水を含む混合液であって、式(1)R1O-(CmH2mO)n-R2(式中、R1は水素原子又は炭素数1~3のアルキル基、R2は水素原子又は炭素数1~6のアルキル基、mは2~6の整数、nは1又は2である。)で示されるエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等の化合物を含むシリコンエッチング液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-135081号公報
【特許文献2】特開2020-126997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
第4級水酸化アンモニウムのうち、テトラメチルアンモニウム水酸化物がマイクロ電子デバイスを製造する分野におけるシリコンエッチングでよく見られる化学薬品であるが、台湾国内の職業安全衛生法の法制度がより整備されるのに伴い、作業場において労働者が特定の化学物質のガス、蒸気、又は粉塵を吸入することによる健康被害を防ぐため、民国110年(西暦2021年)9月16日に法改正が公布された「特定化学物質被害予防基準」という法規で、テトラメチルアンモニウム水酸化物が丙類第一種物質として列記され、且つ使用量の制限(混合物において2.38重量%以下)が明記されている。しかし、使用量を法定基準まで下げた場合、このような少量のテトラメチルアンモニウム水酸化物によるエッチング能力では不十分である。
【0008】
また、半導体デバイスの微細化に伴い、このような高いアスペクト比の狭い空間(narrow space)に対してシリコンエッチングを行う際、エッチング液の浸透率を高めるため、エッチング液に界面活性剤を添加する必要がある。しかし、界面活性剤の添加によって、同時にエッチング能力であるシリコンエッチング速度(Si etching rate)も急激に低下してしまう。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高いエッチング速度を有し、且つ基板との表面張力、及び接触角が低いシリコンエッチング液、及び該シリコンエッチング液でエッチング処理を行う高いアスペクト比を有するシリコン基板のシリコンエッチング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
台湾国内の法規の規制により、エッチング液混合物におけるテトラメチルアンモニウム水酸化物の使用量が2.38重量%以下である必要があるため、テトラメチルアンモニウム水酸化物の使用量を増やすことで、シリコンエッチング速度を高めることはできない。また、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のような慣用の強アルカリも、残留金属が懸念され、微細化のマイクロ電子デバイス分野には適さないため、慣用の強アルカリでシリコンエッチング速度を高めることもできない。これに対して、本発明者らは、ポリアミン、及びアルカノールアミンからなる群から選ばれる強塩基性アミンと、テトラメチルアンモニウム水酸化物とを組み合わせて使用し、さらに特定の界面活性剤を添加することによって、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
【0012】
[1](A)成分:第4級アンモニウム水酸化物と、(B)成分:アミン類と、(C)成分:溶剤と、を含有し、
前記(B)成分はポリアミン、及びアルカノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とするシリコンエッチング液。
【0013】
[2]前記(B)成分は1,3-プロパンジアミン、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、及びジイソプロパノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である前記[1]のシリコンエッチング液。
【0014】
[3]前記(B)成分は1,3-プロパンジアミン、又はジイソプロパノールアミンである前記[1]又は[2]のシリコンエッチング液。
【0015】
[4]前記(A)成分はテトラメチルアンモニウム水酸化物である前記[1]のシリコンエッチング液。
【0016】
[5]前記(C)成分は水、及び水溶性有機溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種以上である前記[1]のシリコンエッチング液。
【0017】
[6]前記(C)成分は水である前記[5]のシリコンエッチング液。
【0018】
[7]シリコンエッチング液総重量に対して、前記(A)成分の含有量は0重量%超、2.38重量%以下である前記[1]のシリコンエッチング液。
【0019】
[8]シリコンエッチング液総重量に対して、前記(B)成分の含有量は0重量%超、30重量%以下である前記[1]のシリコンエッチング液。
【0020】
[9]さらに、(D)成分:界面活性剤を含有する前記[1]のシリコンエッチング液。
【0021】
[10]シリコンエッチング液総重量に対して、前記(D)成分の含有量は0重量%以上、1重量%以下である前記[9]のシリコンエッチング液。
【0022】
[11]前記(D)成分はアニオン系界面活性剤である前記[9]又は[10]のシリコンエッチング液。
【0023】
[12]前記[1]~[11]のいずれか一項のシリコンエッチング液を用いて、アスペクト比が50以上のシリコン層を有するシリコン基板をエッチング処理する、シリコンエッチング方法。
【0024】
[13]前記シリコン基板はアスペクト比が200以下のシリコン層を有する前記[12]のシリコンエッチング方法。
【0025】
[14]前記シリコンエッチング液と前記シリコン基板の接触角は35°より小さい前記[12]のシリコンエッチング方法。
【0026】
[15]前記シリコンエッチング液と前記シリコン基板の表面張力は35mN/mより小さい前記[12]のシリコンエッチング方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、高いエッチング速度を有し、且つ基板との表面張力、及び接触角が低いシリコンエッチング液、及び該シリコンエッチング液でエッチング処理を行う高いアスペクト比を有するシリコン基板のシリコンエッチング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【発明を実施するための形態】
【0029】
(シリコンエッチング液)
本発明の第1の態様に係るシリコンエッチング液は、(A)成分:第4級アンモニウム水酸化物と、(B)成分:アミン類と、(C)成分:溶剤と、を含有し、前記(B)成分はポリアミン、及びアルカノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である。
【0030】
<(A)成分>
本実施形態のシリコンエッチング液において、(A)成分である第4級アンモニウム水酸化物は、従来からシリコンエッチング液の成分として使用されている各種の第4級アンモニウム水酸化物が用いられる。第4級アンモニウム水酸化物は、通常、NR4
+・OH-で表され、Rは通常、1価の炭化水素基を示し、4つのRは同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
該1価の炭化水素基としては、1価の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、1価の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基、1価の脂環式炭化水素基又は1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0032】
上記直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の炭素原子数が1~20の直鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0033】
上記分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、1-メチルエチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基等の炭素原子数が3~20の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0034】
上記直鎖状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)等が挙げられる。
上記分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、1-メチルビニル基、2-メチルビニル基、1-メチルプロペニル基、2-メチルプロペニル基等が挙げられる。
【0035】
上記1価の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等の単環式の脂環式炭化水素基、及び、デカリン、ペルヒドロアズレン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた多環式の脂環式炭化水素基が挙げられる。
【0036】
上記1価の芳香族炭化水素基としては、芳香環から水素原子1個を除いた基が挙げられる。該芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。
【0037】
(A)成分の具体例としては、テトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)、テトラエチルアンモニウム水酸化物(TEAH)、テトラプロピルアンモニウム水酸化物(TPAH)、テトラブチルアンモニウム水酸化物(TBAH)等が挙げられるが、特に制限なく使用できる。
その中でも、下記構造式で表されるテトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)が好ましい。
【化1】
【0038】
シリコンエッチング液が含有する(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(A)成分の含有量は、シリコンエッチング液総重量に対して、上限値が2.38重量%以下であることが好ましい;下限値が0重量%超であり、1.0重量%以上であることが好ましく、1.2重量%以上であることがより好ましく、1.4重量%以上であることがさらに好ましいが、これらに限定されない。
【0039】
<(B)成分>
本実施形態のシリコンエッチング液において、(B)成分であるアミン類はポリアミン、及びアルカノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である。
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の各種のジアミン化合物が挙げられる。その中でも、下記構造式で表されるエチレンジアミン(EDA)、1,2-プロパンジアミン(12DAP)、1,3-プロパンジアミン(13DAP)、1,4-ブタンジアミン(14DAB)のジアミン化合物が好ましく、1,3-プロパンジアミンがより好ましい。
【0040】
【0041】
アルカノールアミンとしては、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン等の各種のアルカノールアミン化合物が挙げられる。その中でも、下記構造式で表される2-(2-アミノエトキシ)エタノール(DGA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)が好ましく、ジイソプロパノールアミンがより好ましい。
【0042】
【0043】
シリコンエッチング液が含有する(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(B)成分の含有量は、シリコンエッチング液総重量に対して、上限値が30重量%以下であり、25重量%以下であることが好ましく、20重量%超であることがさらに好ましい;下限値が0重量%超であり、1重量%以上であることが好ましく、2重量%以上であることがさらに好ましいが、これらに限定されない。
【0044】
シリコンエッチング液に0重量%超の(B)成分を含有することで、シリコンエッチング速度の上昇という効果が得られる。(B)成分の含有量の増加に伴い、一般的に、シリコンエッチング速度が上昇する。アミン類化合物の種類にもよるが、例えば、前述の1,3-プロパンジアミンの場合、その含有量が30重量%を超えると、逆にシリコンエッチング速度は大幅に下がる。
【0045】
<(C)成分>
本実施形態のシリコンエッチング液において、(C)成分である溶剤を含有する。(C)成分は、水、及び水溶性有機溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種以上である。(C)成分は、水であることが好ましい。
【0046】
水としては、純水、イオン交換水等を用いることができる。
水溶性有機溶媒としては、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、グリコールエーテル系溶媒等が挙げられる。水溶性有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
アルコール系溶媒として、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール等の1価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、ヘキシレングリコール、1,7-ヘプタンジオール、オクチレングリコール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール等の多価アルコール等が挙げられる。
【0048】
エーテル系溶媒として、具体的には、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジ-n-ペンチルエーテル、ジ-sec-ブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ-sec-ペンチルエーテル、ジ-tert-アミルエーテル等が挙げられる。
【0049】
グリコールエーテル系溶媒として、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0050】
(C)成分の含有量は特に限定されないが、前記の(A)成分、(B)成分、及び後述する(D)成分等に対して、(C)成分の含有量はシリコンエッチング液中の残量である。
【0051】
<<(D)成分>>
本実施形態のシリコンエッチング液において、前記の(A)成分、(B)成分、及び(C)成分以外に、さらに、(D)成分:界面活性剤を含有してもよい。
(D)成分である界面活性剤としては、各種のアニオン系、カチオン系、又はノニオン系の任意の界面活性剤を使用できるが、その中でも、アニオン系界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩が好ましく、具体的にTakesurf-A-32-Q(竹本油脂株式会社製)がより好ましい。
シリコンエッチング液に(D)成分を含有する場合、(D)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
(D)成分の含有量は、シリコンエッチング液総重量に対して、上限値が1重量%以下であり、0.5重量%以下であることが好ましい;下限値が0重量%以上であり、0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上であることがさらに好ましいが、これらに限定されない。シリコンエッチング液に0重量%以上の(D)成分である界面活性剤を含有することで、シリコンエッチング液と基板の間の接触角、及び表面張力を効果的に下げることができるため、高いアスペクト比の狭い空間に対するシリコンエッチングの浸透率を高めることができる。ただし、(D)成分である界面活性剤の添加によって、同時にシリコンエッチング速度も急激に低下する。そのため、シリコンエッチング液に1重量%以下の(D)成分を含有することで、高いエッチング速度と、低い接触角及び表面張力による浸透率との間で良いバランスが得られる。
【0053】
以上説明した本実施形態のシリコンエッチング液は、(A)成分:テトラメチルアンモニウム水酸化物等の第4級アンモニウム水酸化物と、(B)成分:特定のポリアミン、及び特定のアルカノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のアミン類と、(C)成分:水、及び水溶性有機溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の溶剤とを含有する。上述した(A)成分と、(B)成分と、(C)成分との組合せにより、少量(例えば、2.38重量%以下)の(A)成分を使用したとしても、高いシリコンエッチング速度という効果が得られる。
さらに、上述した(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分:特定の界面活性剤との組合せにより、高いシリコンエッチング速度と、狭い空間に対する優れた浸透率(低い接触角及び低い表面張力)との間で良いバランスが得られるという効果が得られるため、たとえ高いアスペクト比(>50以上)有するシリコン基板であっても、本実施形態に係るシリコンエッチング液を使用して高いシリコンエッチング速度でエッチング処理を行うことができる。
【0054】
(シリコンエッチング方法)
本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係るシリコンエッチング液を用いて、アスペクト比が50以上のシリコン層(Si layer)を有するシリコン基板をエッチング処理する、シリコンエッチング方法である。
【0055】
図1Aに示されるように、エッチング処理前のシリコンオンインシュレーター基板(SOI基板)(1)は、絶縁層である基板(S)と、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等の機能膜層(2)と、シリコン層(3)とを有する。エッチング処理後では、
図1Bに示されるように、シリコン層(3)が除去され、パターンが形成される。
【0056】
その中、シリコン層(3)のアスペクト比は、
図1Aに示されるように、シリコン層(3)の高さ(h)と幅(w)との比(h/w)で示されるため、前記のアスペクト比が50以上とは、h/wの比が「50以上/1」の意味を指す。
【0057】
[エッチング処理]
シリコン基板をエッチング処理する方法としては、スプレー法、浸漬法、液盛り法等が挙げられる。
【0058】
スプレー法は、シリコン基板を所定の方向に搬送もしくは回転させ、その空間に上述した第1の態様に係るシリコンエッチング液を噴射して、シリコン基板に該シリコンエッチング液を接触させる方法である。また、必要に応じて、スピンコーターを用いて基板を回転させながら該シリコンエッチング液を噴霧してもよい。
【0059】
浸漬法は、シリコン基板を上述した第1の態様に係るシリコンエッチング液に浸漬して、シリコン基板に該シリコンエッチング液を接触させる方法である。
液盛り法は、シリコン基板に上述した第1の態様に係るシリコンエッチング液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法である。
【0060】
上述した各種エッチング処理の方法は、シリコン基板の構造や材質等に応じて適宜選択することができる。スプレー法、又は液盛り法の場合、シリコン基板への上述した第1の態様に係るシリコンエッチング液の供給量は、シリコン基板における被処理面が、該シリコンエッチング液で十分に濡れる量であればよい。
【0061】
エッチング処理を行うとき、上述した第1の態様に係るシリコンエッチング液とシリコン基板の接触角は35°より小さい。また、上述した第1の態様に係るシリコンエッチング液とシリコン基板の表面張力は35mN/mより小さい。接触角、及び表面張力の測定方法は、後述の実施例における説明の通りである。
シリコンエッチング液をこのような低い接触角及び低い表面張力とすることで、たとえアスペクト比が200以上のシリコン層を有するシリコン基板であっても、上述した第1の態様に係るシリコンエッチング液で該シリコン基板をエッチング処理することができる。
【0062】
前述したように、本発明の第1の態様に係るシリコンエッチング液は高いアスペクト比(>50以上)のシリコン層を有するシリコン基板に適するが、当業者であれば、たとえ低いアスペクト比(<50)の狭くないシリコン層を有するシリコン基板であっても、本発明の第1の態様に係るシリコンエッチング液で該シリコン基板をエッチング処理することができると、当然理解できる。
【0063】
エッチング処理を行う温度は、特に限定されず、例えば、室温の25℃前後であるが、加熱の条件下でエッチング処理を行ってもよい。エッチング処理を行う時間は、特に限定されず、例えば、10分間以内であり、5分間以内であることが好ましく、3分間以内であることがさらに好ましく、2分間以内であることが特に好ましく、1分間以内であることが最も好ましい。シリコン基板の構造や材質、エッチング処理条件に応じて、適宜選択される。
【0064】
本実施形態のシリコンエッチング方法は、上述したエッチング処理に加えて、洗浄工程、リンス工程、乾燥工程を含んでいてもよい。洗浄工程及びリンス工程は上述したエッチング処理の前後で行ってもよい。乾燥工程は、洗浄工程及びリンス工程の後に行ってもよい。
【0065】
[[洗浄工程]]
洗浄工程は、シリコン基板の表面を予め洗浄する工程である。
洗浄方法は、特に限定されず、例えば、半導体基板の洗浄方法として、公知のRCA洗浄法等が挙げられる。このRCA洗浄法では、まず、基板を過酸化水素と水酸化アンモニウムとを含む溶液に浸漬して、基板から微粒子及び有機物を除去する。次いで、基板をフッ酸水溶液に浸漬して、基板表面の自然酸化膜を除去する。
【0066】
[[リンス工程]]
リンス工程は、シリコン基板の表面を、後述するリンス液でリンスする工程である。リンスの方法は、特に限定されず、半導体製造工程において、基板の洗浄に一般的に用いられる方法を採用することができる。そのような方法としては、例えば、基板をリンス液に浸漬する方法、基板にリンス液の蒸気を接触させる方法、基板をスピンさせながらリンス液を基板に供給する方法等が挙げられる。中でも、リンス方法としては、基板をスピンさせながらリンス液を基板に供給する方法が好ましい。
【0067】
リンス工程に用いるリンス液としては、特に限定されず、半導体基板のリンス工程に一般的に用いられるものを使用することができる。リンス液としては、例えば、有機溶媒を含有するものが挙げられる。有機溶媒としては、炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、含ハロゲン溶媒、スルホキシド系溶媒、アルコール類、多価アルコールの誘導体、含窒素化合物溶媒等が挙げられる。
【0068】
[[乾燥工程]]
乾燥工程は、シリコン基板を乾燥させる工程である。乾燥工程を行うことにより、リンス工程後にシリコン基板に残留するリンス液を効率よく除去することができる。
シリコン基板の乾燥方法は、特に限定されず、スピン乾燥、加熱乾燥、温風乾燥、真空乾燥等の公知の方法を用いることができる。例えば、不活性ガス(窒素ガス等)ブロー下でのスピン乾燥が好適に例示される。
【0069】
以上説明した本実施形態のシリコンエッチング方法によれば、アスペクト比が50以上のシリコン層を有するシリコン基板をエッチング処理することができる。
【実施例0070】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0071】
<シリコンエッチング液の調製>
表1に示す各成分を混合し、各例のシリコンエッチング液を調製した。なお、表1に示す各成分で、シリコンエッチング液総重量100質量%となる。
【0072】
【0073】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有し、それぞれ市販品から入手可能である。
TMAH:テトラメチルアンモニウム水酸化物(25%水溶液)
13DAP:1,3-プロパンジアミン(>99%の工業級品)
EDA:エチレンジアミン(99%の試薬級品)
12DAP:1,2-プロパンジアミン(>98%の試薬級品)
14DAB:1,4-ブタンジアミン(>98%の試薬級品)
DGA:2-(2-アミノエトキシ)エタノール(98.5%エレクトロニクス級品)
DIPA:ジイソプロパノールアミン(>90%の試薬級品)
A-32-Q:商品名Takesurf-A-32-Q(アルキルスルホン酸塩のアニオン系界面活性剤;竹本油脂株式会社製)
【0074】
[シリコンエッチング速度の評価]
・処理対象物について
処理対象物はポリシリコンSOI(poly-Si Si On Insulator)ウエハである。ウエハを25℃において、希釈したフッ化水素酸水溶液(1:100)でプレ処理を90秒間行い、脱イオン水でリンスした後、窒素ガスブロー下でウエハを乾燥し、ウエハ上の自然酸化膜を除去した。
前記ウエハを約1.5cm×1.5cmのチップにカットして、エリプソメトリー(Ellipso Technology株式会社製;型番:Elli-SE-UaM12)を使用し、光学的方法でエッチング処理前の該チップのシリコン層の厚みを測定した。
【0075】
・評価方法
前記チップを各例のシリコンエッチング液に浸して、25℃でシリコンエッチング処理を行った。シリコンエッチング処理後のチップを、脱イオン水でリンスした後、窒素ガスブロー下でチップを乾燥した。
その後、前記エリプソメトリーを使用し、光学的方法でエッチング処理後の該チップのシリコン層の厚みを測定した。
「[(エッチング処理後のシリコン層の厚み)-(エッチング処理前のシリコン層の厚み)]/(処理時間)」で得られた値の平均値を、シリコンエッチング速度(poly-Si Etching Rate)とする。
【0076】
[接触角の評価]
・処理対象物について
前記[シリコンエッチング速度の評価]と同じプレ処理を行ったポリシリコンSOIウエハを用意した。
【0077】
・評価方法
全自動ウエハ接触角計(Kyowa株式会社製;型番:Dmo-701WA)を使用し、室温下で、プレ処理を行ったポリシリコンSOIウエハをステージ上にセットした。計器側のシリンジを各例のシリコンエッチング液で満たし、手動でシリコンエッチング液をウエハ表面に滴下すると、計器で自動的に測定して接触角の値(°)が得られる。
【0078】
[表面張力の評価]
・評価方法
全自動ウエハ接触角計(Kyowa株式会社製;型番:Dmo-701WA)を使用し、室温下で、計器側のシリンジを各例のシリコンエッチング液で満たした。計器の指示に基づいて所定の大きさの液滴を懸滴すると、計器で自動的に測定して表面張力の値(mN/m)が得られる。
【0079】
実施例1~実施例16、及び比較例1~比較例2のシリコンエッチング液のシリコンエッチング速度(poly-Si ER/25℃)、接触角、表面張力の評価結果を、下記の表2に示す。
【0080】
【0081】
表2の実施例1~実施例6に示す結果から、(B)成分の含有量の増加に伴い、シリコンエッチング速度が上昇することが分かる。また、(B)成分が添加されていない比較例1と、(B)成分が添加された実施例12とを比較したところ、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分との組合せにより、少量の(A)成分であっても、高いエッチング速度という効果が得られることが分かる。
また、実施例12~実施例14の結果から、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分との組合せにより、低い接触角及び低い表面張力の優れた浸透率が得られることが分かる。しかも、(B)成分が添加されていない比較例1と比較したところ、実施例12~実施例14のエッチング速度の上昇から、高いエッチング速度と同時に、基板との表面張力及び接触角が低いという効果が得られることが分かる。