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特開2023-152842硬化性樹脂組成物、積層構造体、硬化物および電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152842
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、積層構造体、硬化物および電子部品
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20231005BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20231005BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20231005BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G03F7/027 502
G03F7/004 501
G03F7/004 512
C08F290/14
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045146
(22)【出願日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2022057258
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】チャ ハヌル
(72)【発明者】
【氏名】福田 晋一朗
(72)【発明者】
【氏名】工藤 知哉
【テーマコード(参考)】
2H225
4J127
【Fターム(参考)】
2H225AC23
2H225AC31
2H225AC33
2H225AC34
2H225AC36
2H225AC53
2H225AC54
2H225AC63
2H225AC74
2H225AD07
2H225AE12P
2H225AE15P
2H225AN10P
2H225AN36P
2H225AN39P
2H225AP08P
2H225AP09P
2H225AP11P
2H225BA20P
2H225BA22P
2H225CA13
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J127AA03
4J127AA04
4J127BA01
4J127BA041
4J127BA042
4J127BA061
4J127BB041
4J127BB052
4J127BB081
4J127BB092
4J127BB221
4J127BB222
4J127BC031
4J127BC052
4J127BC131
4J127BC132
4J127BD191
4J127BD222
4J127BE311
4J127BE31Y
4J127BE341
4J127BE342
4J127BE34Y
4J127BG051
4J127BG142
4J127BG161
4J127CB341
4J127CC131
4J127DA12
4J127EA13
4J127FA18
4J127FA37
(57)【要約】
【課題】厚さ10μm以下の硬化物の形成が可能な硬化性樹脂組成物であって、解像性および耐現像性に優れ、得られた硬化物が良好な絶縁信頼性を有するだけでなく、高い剛性と回路基板との高い密着性を有する硬化性樹脂組成物、これを用いた積層構造体、硬化物および電子部品を提供すること。
【解決手段】(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)光重合開始剤、(C)カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物、(D)無機充填剤および(E)エポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物であって、(C)カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物として、(C-1)重量平均分子量が2,000以上の光硬化性化合物と、(C-2)重量平均分子量が2,000未満であるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物と、を含む硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂、
(B)光重合開始剤、
(C)カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物、
(D)無機充填剤および
(E)エポキシ樹脂
を含有する硬化性樹脂組成物であって、
(C)カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物として、(C-1)重量平均分子量が2,000以上の光硬化性化合物と、(C-2)重量平均分子量が2,000未満であるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物と、を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(E)エポキシ樹脂として、(E-1)2官能エポキシ樹脂と(E-2)3官能以上のエポキシ樹脂とを含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(E-1)2官能エポキシ樹脂100質量部に対する(E-2)3官能以上のエポキシ樹脂の配合量が、20質量部以上500質量部以下であることを特徴とする請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(D)無機充填剤が、シリカ、硫酸バリウムおよび水酸化アルミニウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(C-2)重量平均分子量が2,000未満であるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物が、(C-2a)一般式(1)
【化1】
(一般式(1)において、ROはそれぞれ独立して炭素数1以上4以下のオキシアルキレン基であり、l、m、およびnはそれぞれ0または0より大きい数であり、且つ3≦l+m+n≦20をみたす。)で表されるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
膜厚10μm以下の硬化物を形成する用途に用いられることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
フィルムと、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物で形成された樹脂層とを有することを特徴とする積層構造体。
【請求項8】
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物、または、請求項7に記載の積層構造体の樹脂層が硬化されたものであることを特徴とする硬化物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化物を有することを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、この硬化性樹脂組成物で形成された樹脂層を有する積層構造体、前記硬化性樹脂組成物または樹脂層の硬化物およびこの硬化物を有する電子部品に関し、特に、アルカリ現像可能な光および熱硬化性の硬化性樹脂組成物、この硬化性樹脂組成物で形成された樹脂層を有する積層構造体、前記硬化性樹脂組成物または樹脂層の硬化物およびこの硬化物を有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板用、特に、パソコンのCPUやスマートフォンのAP、メモリーと言った半導体を実装するためのパッケージ基板(PKG)に形成されるソルダーレジスト(硬化物)は、硬化性樹脂組成物または硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を有する積層構造体を硬化して得られるものである。パッケージ基板用ソルダーレジスト組成物は、微細な開口やパターンの形成を可能とする微細開口性(解像性)や絶縁信頼性等の諸特性に加えて、高い剛性を持つ硬化物を形成することができるという要求も高まっている。
【0003】
従来のソルダーレジストでは、無機充填剤の充填量を多くして線膨張係数を低下させることにより、剛性を高める技術が知られている。
【0004】
また、特許文献1は、分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基とカルボキシル基を有する光ラジカル反応性の樹脂、分子中に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基と、トリシクロデカン構造とを有する光重合性モノマー、光重合開始剤、エポキシ樹脂、及びシリカフィラーを含有する感光性樹脂組成物であって、シリカフィラーの平均粒径と最大粒径を所定範囲内とし、且つそのシリカフィラーの配合割合を全質量中の20~70質量%とするものを開示する。
【0005】
特許文献1の感光性樹脂組成物は、現像性に優れ、且つ得られた硬化膜は十分なHAST耐性を有し、高い耐熱性を有するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-160271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、半導体モジュールの薄型化や小型化が要求されており、パッケージ基板全体の厚みを減らすためにソルダーレジストの膜厚も薄くすることが要求されている。
しかし、従来のソルダーレジストにおいて無機充填剤の充填量を多くした場合、ソルダーレジストを薄膜に形成すると、下地となる回路基板とこのソルダーレジストの薄膜との密着性が低下する不具合が生じた。薄膜のソルダーレジストにおいて、特許文献1のように、無機充填剤の粒径を調整して回路基板との密着性とソルダーレジストの高い剛性とを両立させることも考えられる。しなしながら、無機充填剤の粒径を調整すると、現像残渣が残るために解像性の制御が困難になるという問題があった。一方で、現像残渣を解消するために現像工程を長くすると、樹脂層の露光部では長時間の現像工程に対する耐現像性が問題となった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、厚さ10μm以下の硬化物の形成が可能な硬化性樹脂組成物であって、解像性および耐現像性に優れ、得られた硬化物が良好な絶縁信頼性を有するだけでなく、高い剛性と回路基板との高い密着性を有する硬化性樹脂組成物、これを用いた積層構造体、硬化物および電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的達成に向け鋭意検討を行った。その結果、アルカリ現像可能な硬化性樹脂組成物において、カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物として重量平均分子量が2,000以上の光硬化性化合物と重量平均分子量が2,000未満の光硬化性化合物を併用し、且つ、重量平均分子量が2,000未満の光硬化性化合物として3官能のものに限定すると共にオキシアルキレン基を含有させることで、解像性、耐現像性、絶縁信頼性を有しつつ、無機充填剤が含まれていても、得られた硬化物について回路基板との密着性および剛性のバランスがとれることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の前記目的は、
(A)カルボキシル基含有樹脂、
(B)光重合開始剤、
(C)カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物、
(D)無機充填剤および
(E)エポキシ樹脂
を含有する硬化性樹脂組成物であって、
(C)カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物として、(C-1)重量平均分子量が2,000以上の光硬化性化合物と、(C-2)重量平均分子量が2,000未満であるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物と、を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物により達成されることが見いだされた。
【0011】
また、(E)エポキシ樹脂として、(E-1)2官能エポキシ樹脂と(E-2)3官能以上のエポキシ樹脂とを含むことが好ましい。
【0012】
さらに、(E-1)2官能エポキシ樹脂100質量部に対する(E-2)3官能以上のエポキシ樹脂の配合量が、20質量部以上500質量部以下であることが好ましい。
【0013】
そのうえ、(D)無機充填剤が、シリカ、硫酸バリウムおよび水酸化アルミニウムを含むことが好ましい。
【0014】
さらに、(C-2)重量平均分子量が2,000未満であるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物が、(C-2a)一般式(1)
【0015】
【化1】
(一般式(1)において、ROはそれぞれ独立して炭素数1以上4以下のオキシアルキレン基であり、l、m、およびnはそれぞれ0または0より大きい数であり、且つ3≦l+m+n≦20をみたす。)で表されるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0016】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は膜厚10μm以下の硬化物を形成する用途に用いられることが好ましい。
【0017】
そのうえ、本発明の前記目的は、フィルムと、本発明の硬化性樹脂組成物で形成された樹脂層とを有する積層構造体、本発明の硬化性樹脂組成物または前記積層構造体の樹脂層の硬化物、およびこの硬化物を有する電子部品によっても達成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物は、厚さ10μm以下の薄い硬化物を形成可能であって、解像性および耐現像性に優れ、得られた硬化物は絶縁信頼性に優れるだけでなく、高い剛性と回路基板との高い密着性を有するものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<硬化性樹脂組成物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)光重合開始剤、(C)カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物、(D)無機充填剤および(E)エポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物であって、(C)カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物として、(C-1)重量平均分子量が2,000以上の光硬化性化合物と、(C-2)重量平均分子量が2,000未満であるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物と、を含む。
【0020】
[(A)カルボキシル基含有樹脂]
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる(A)カルボキシル基含有樹脂は、カルボキシル基を含有することで本発明の硬化性樹脂組成物にアルカリ現像性を付与する。
【0021】
(A)カルボキシル基含有樹脂としては、分子中にカルボキシル基を含有する従来公知の各種樹脂を使用することができる。特に、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有樹脂が、光硬化性や耐現像性の面から好ましい。エチレン性不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの誘導体由来であることが好ましい。(A)カルボキシル基含有樹脂としてエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを用いる場合、(C)カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物を併用することによって、硬化性樹脂組成物を光硬化性とすることができる。
【0022】
(A)カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量はどのようなものであってもよいが、例えば、1,500以上150,000以下の範囲であり、好ましくは1,600以上100,000以下、より好ましくは1,800以上50,000以下である。
【0023】
本発明において、重量平均分子量(Mw)の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC)法(ポリスチレン標準)により、下記測定装置、測定条件にて測定した値である。
【0024】
測定装置:Waters製「Waters 2695」
検出器:Waters製「Waters2414」、RI(示差屈折率計)
カラム:Waters製「HSPgel Column,HR MB-L,3μm,6mm×150mm」×2+Waters製「HSPgel Column,HR1,3μm,6mm×150mm」×2
測定条件:
カラム温度:40℃
RI検出器設定温度:35℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.5ml/分
サンプル量:10μl
サンプル濃度:0.5wt%
【0025】
(A)カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。
【0026】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0027】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキサイド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0028】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0029】
(4)前記(2)または(3)に記載のカルボキシル基含有樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端に(メタ)アクリロイル基を有するカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0030】
(5)前記(2)または(3)に記載のカルボキシル基含有樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端に(メタ)アクリロイル基を有するカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0031】
(6)2官能またはそれ以上の多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0032】
(7)2官能エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0033】
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0034】
(9)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ樹脂に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0035】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0036】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0037】
(12)前記(1)~(11)のいずれかに記載のカルボキシル基含有樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0038】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0039】
(A)カルボキシル基含有樹脂の酸価は、硬化性樹脂組成物の現像性向上の観点から、40~200mgKOH/gであることが好ましく、50~160mgKOH/gであることがより好ましい。
【0040】
(A)カルボキシル基含有樹脂は、前記列挙したものに限らず使用することができ、1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。中でも、前記(10)または(11)に記載のカルボキシル基含有樹脂は絶縁信頼性に優れるため好適に用いることができる。
【0041】
(A)カルボキシル基含有樹脂の配合量は、本発明の硬化性樹脂組成物の固形分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上60質量部以下であり、より好ましくは15質量部以上45質量部以下である。
【0042】
[(B)光重合開始剤]
本発明の硬化性樹脂組成物は、(B)光重合開始剤を含む。(B)光重合開始剤を含むことにより、本発明の硬化性樹脂組成物を光硬化させることができる。(B)光重合開始剤としては、光重合開始剤や光ラジカル発生剤として公知の光重合開始剤であれば、いずれのものを用いることもでき、例えば、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート等のアシルフォスフィネート類;1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル)]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。
【0043】
光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でもモノアシルフォスフィンオキサイド類、アシルフォスフィネート類およびオキシムエステル類の少なくとも1種が好ましく、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネートおよびエタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)の少なくとも1種がより好ましい。
【0044】
(B)光重合開始剤の配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂および(C)カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物の合計100質量部に対して0.1質量部以上40質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上15質量部以下であることがさらに好ましい。
【0045】
[(C)カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、(C)カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物を含む。(C)カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物は、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するものであり、本発明の硬化性樹脂組成物に光硬化性を付与する化合物である。
【0046】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(C)カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物として、(C-1)重量平均分子量が2,000以上の光硬化性化合物と、(C-2)重量平均分子量が2,000未満であるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物と、を含む。
【0047】
これらの成分を配合することにより、得られた硬化物が良好な解像性、耐現像性、絶縁信頼性を有するだけでなく、無機充填剤が含まれていても、剛性および回路基板との密着性のバランスがとれたものとなる。作用機序は明らかではないが、本発明の(A)~(E)成分を含み、特に希釈剤として作用する重量平均分子量が相対的に小さい光硬化性化合物にオキシアルキレン基を導入することで、硬化性樹脂組成物が(D)無機充填剤を含んでいる場合であっても得られた硬化物の回路基板との密着性が向上し、さらにこれを3官能のものに限定することで得られた硬化物の剛性や他の特性とのバランスをとることができたものと推察される。
【0048】
(C-1)重量平均分子量が2,000以上の光硬化性化合物としては、2官能のリン変性アクリレートオリゴマー(RAYLOCK-1722、ダイセル社製 Mw:3,000)、2官能のウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーポリブタジエンアクリレート樹脂(TE-2000、日本曹達社製 Mw:2,500)、2官能のポリカーボネートウレタン系アクリレートオリゴマー(UN-9000PEP、根上工業社製 Mw:5,000)などの(メタ)アクリロイル基含有化合物などが挙げられる。
【0049】
(C-1)重量平均分子量が2,000以上の光硬化性化合物は、ビスフェノールAまたはビスフェノールFのポリメチロール化合物とフェノール類の縮合反応で得られた、下記一般式(2)の構造を含む分子中に4つ以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物(a)のフェノール性水酸基の一部又は全部を、環状エーテル基を有する化合物(b)と反応させてアルコール性水酸基を有するオキシアルキル基に変換し、生じたオキシアルキル基の末端水酸基にアクリル酸及び/又はメタクリル酸(c)の付加を行なうことによって、(メタ)アクリロイル基が側鎖の末端に付与された光硬化性化合物であることが好ましい。このような光硬化性化合物を含むことにより、特に優れた絶縁信頼性を得ることができる。
【0050】
【化2】
(一般式(2)中、Rは-C(CH-又は-CH-であり、Rはそれぞれ独立して炭素数1~11の炭化水素基、aはそれぞれ独立して0~3の数を表し、nはそれぞれ独立して1~2の数を表し、mは1~10の数を表す。)
【0051】
前記一般式(2)の構造を含む分子中に4つ以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物(a)は、ビスフェノールA又はビスフェノールFのポリメチロール化合物(a1)とフェノール類(a2)を酸性触媒存在下で縮合反応させることによって得られる。
【0052】
フェノール類(a2)としてはフェノール、各種クレゾール類、各種キシレノール類などのアルキルフェノール類、ナフトール類を用いることができ、好ましくはo-クレゾール、2,6-キシレノールを用いる。また、これらを混合して用いてもよい。
【0053】
上記フェノール化合物(a)に対するアルキレンオキシド、環状カーボネート等の環状エーテル基を有する化合物(b)の付加割合は、フェノール化合物(a)のフェノール性水酸基1当量当り0.5~5.0モル、好ましくは0.8~3.0モルがよい。0.5~5.0モルの範囲とすることで、硬化性樹脂組成物の光硬化性が向上し、また、乾燥塗膜としての樹脂層を形成した場合に指触乾燥性が向上する。
【0054】
(C-2)重量平均分子量が2,000未満であるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物は、重量平均分子量が2,000未満であって、3つのエチレン性不飽和二重結合と少なくとも1つのオキシアルキレン基とを有する化合物であればどのようなものでもよく、任意に水酸基、エーテル結合、ケトン、芳香環、飽和または芳香族性を有しない不飽和の炭素環、複素環などの官能基または構造部を有していてもよい。エチレン性不飽和二重結合は、アクリル酸またはメタクリル酸由来であることが好ましい。
【0055】
(C-2)重量平均分子量が2,000未満であるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物は、例えば、グリコール、トリメチロールプロパン、1,2,4-ブタントリオールなどの3価アルコールのアルキレンオキシド付加物に対してエチレン性不飽和二重結合を有する酸((メタ)アクリル酸など)を反応させることで得ることができる。
【0056】
または、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの4官能以上の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物に対してエチレン性不飽和二重結合を有する酸((メタ)アクリル酸など)を反応させることで、オキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物を得ることとしてもよい。この場合、得られたオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物が水酸基またはその置換基を有していてもよい。
【0057】
さらに、これらの反応はあくまで例示であって、他の反応や製法によって(C-2)重量平均分子量が2,000未満であるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物が得られてもよい。
【0058】
なお、上述の3価以上の多価アルコールの骨格には、芳香環、飽和または芳香族性を有しない不飽和の炭素環、複素環などの官能基または構造部を有していてもよい。
【0059】
(C-2)重量平均分子量が2,000未満であるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物の市販品としては、例えば、A-GLY-3E、A-GLY-9E、A-GLY-20E、A-TMPT-9EO、AT-20E(以上、新中村化学工業社製)、ラロマーLR 8863(BASFジャパン社製)、TMP-2P、TMP-3P、TMP-3、PET-3(以上、第一工業製薬社製)、M-310、M-321、M-350、M-360(以上、東亞合成社製)が挙げられる。
【0060】
なかでも、(C-2)重量平均分子量が2,000未満であるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物は、(C-2a)一般式(1)
【0061】
【化3】
(一般式(1)において、オキシアルキレン基はROであり、ROはそれぞれ独立して炭素数1以上4以下であり、l、m、およびnはそれぞれ0または0より大きい数であり、且つ3≦l+m+n≦20をみたす。なお、Rは炭素数1以上4以下のアルキレン基である)で表されるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0062】
さらに、上述の一般式(1)において、オキシアルキレン基の炭素数はより好ましくは2以上4以下であり、特に好ましくは2以上3以下である。
【0063】
そのうえ、上述の一般式(1)において、l、m、およびnが6≦l+m+n≦12であることがさらに好ましい。
【0064】
また、(C-2)重量平均分子量が2,000未満であるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物は、(i)重量平均分子量が大きいオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物と、(ii)重量平均分子量が小さいオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物と、の組み合わせを含み、且つ(ii)重量平均分子量が小さいオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物の配合量が(i)重量平均分子量が大きいオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物の配合量よりも小さいことが特に好ましい。このような特に好ましい構成により、解像性、耐現像性、回路基板との密着性がさらに向上する。
【0065】
ここで、(i)重量平均分子量が大きいオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物の重量平均分子量は、例えば、600以上1000以下であり、好ましくは700以上900以下であり、(ii)重量平均分子量が小さいオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物の重量平均分子量は、例えば、200以上600未満であり、好ましくは250以上550以下である。
【0066】
また、(C-2)重量平均分子量が2,000未満であるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物が、(i)重量平均分子量が大きいオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物と、(ii)重量平均分子量が小さいオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物との組み合わせの場合、(i)重量平均分子量が大きいオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物の配合比は、(ii)重量平均分子量が小さいオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物1質量部に対して、例えば2質量部以上12質量部以下である。ここで、(i)重量平均分子量が大きいオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物は、上記(C-2a)一般式(1)で表されるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物であることが好ましい。
【0067】
(ii)重量平均分子量が小さいオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物は、(C-2b)一般式(3)
【0068】
【化4】
(一般式(3)において、o、pおよびqは、それぞれ独立して0、1または2であり、好ましくは1または2である。)で表されるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0069】
(C)カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物の配合量は、本発明の硬化性樹脂組成物の固形分100質量部に対して、例えば、3質量部以上40質量部以下であり、好ましくは4質量部以上30質量部以下であり、特に好ましくは5質量部以上20質量部以下である。
【0070】
なお、(C)カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物の重量平均分子量の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC)法(ポリスチレン標準)により、上記測定装置、測定条件にて測定した値である。
【0071】
[(D)無機充填剤]
本発明の硬化性樹脂組成物は、(D)無機充填剤を含む。無機充填剤は、硬化性樹脂組成物の硬化収縮を抑制し、硬化物の絶縁信頼性および剛性を向上させるために配合する。(D)無機充填剤としては、特に限定されず、公知慣用の無機充填剤、例えば非結晶性シリカ、結晶性シリカ、ノイブルグ珪土、水酸化アルミニウム、ガラス粉末、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、天然マイカ、合成マイカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化鉄、非繊維状ガラス、ハイドロタルサイト、ミネラルウール、アルミニウムシリケート、カルシウムシリケート、亜鉛華等の無機充填剤を用いることができ、これらの組み合わせでもよい。
【0072】
(D)無機充填剤としては、硬化性樹脂組成物の硬化収縮を抑制し、剛性および回路基板との密着性などの特性を向上させる観点から、シリカと硫酸バリウムの組み合わせが好ましい。
【0073】
さらに、硬化物の絶縁信頼性および剛性を向上させる観点から、(D)無機充填剤が、シリカ、硫酸バリウムおよび水酸化アルミニウムを含むことが好ましい。また、(D)無機充填剤は、その表面が水酸化アルミニウムで処理されていてもよく、水酸化アルミニウムで表面処理された硫酸バリウムが好ましい。このような水酸化アルミニウムの表面処理物は、例えば硫酸バリウム粒子の水スラリーに水酸化ナトリウム水溶液を加えた後、アルミン酸ナトリウム水溶液と硫酸を加えた後、撹拌し、得られたスラリーを濾過、水洗、乾燥することで得ることができる。
【0074】
(D)無機充填剤が水酸化アルミニウムを含む場合、(D)無機充填剤に含まれる水酸化アルミニウムの配合量が、硬化性樹脂組成物の固形分100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上0.5質量部以下である。
【0075】
(D)無機充填剤を表面処理する場合、表面処理された状態で本発明の硬化性樹脂組成物に配合されていればよく、表面未処理の(D)無機充填剤と表面処理剤とを別々に配合して組成物中で(D)無機充填剤が表面処理されてもよいが、予め表面処理した(D)無機充填剤を配合することが好ましい。
【0076】
(D)無機充填剤の配合量は、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物の固形分100質量部に対して20質量部以上60質量部以下であり、好ましくは30質量部以上50質量部以下である。このような配合量とすることで、硬化物の回路基板に対する密着性と剛性のバランスがさらに向上する。
【0077】
[(E)エポキシ樹脂]
本発明の硬化性樹脂組成物は、(E)エポキシ樹脂を含む。本発明の硬化性樹脂組成物が(E)エポキシ樹脂を含むことで、耐熱性、めっき耐性などの特性を付与することができる。
【0078】
(E)エポキシ樹脂としては、1分子中に少なくとも1つのエポキシ基を有する公知慣用の多官能エポキシ樹脂を使用することができる。
【0079】
好ましくは、(E)エポキシ樹脂として、(E-1)2官能エポキシ樹脂と(E-2)3官能以上のエポキシ樹脂とを含む。
【0080】
(E-1)2官能エポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル社製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、DIC社製のEPICLON 840、EPICLON 850、EPICLON 850-S、EPICLON 1050、EPICLON 2055、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートYD-011、YD-013、YD-127、YD-128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、住友化学社製のスミエポキシESA-011、ESA-014、ELA-115、ELA-128等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjERYL903、DIC社製のEPICLON 152、165、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートYDB-400、YDB-500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、住友化学社製のスミエポキシESB-400、ESB-700等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;DIC社製のEPICLON 830、三菱ケミカル社製jER807、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートYDF-170、YDF-175、YDF-2004等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートST-2004、ST-2007、ST-3000(商品名)、三菱ケミカル社製のYX8034等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル社製のセロキサイド2021P等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のYL-6056、YX-4000、YL-6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬社製EBPS-200、ADEKA社製EPX-30、DIC社製のEXA-1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;日油社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0081】
(E-2)3官能以上のエポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル社製のjER152、jER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、DIC社製のEPICLON N-730、N-770、N-865、日本化薬社製のEPPN-201、EOCN-1025、EOCN-1020、EOCN-104S、RE-306、NC-3000、住友化学社製のスミエポキシESCN-195X、ESCN-220、日鉄ケミカル&マテリアル社製のYDCN-700-2、YDCN-700-3、YDCN-700-5、YDCN-700-7、YDCN-700-10、YDCN-701、YDCN-704、YDCN-704A、DIC社製のEPICLON N-680、N-690、N-695(いずれも商品名)等のノボラック型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjER604、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートYH-434、住友化学社製のスミエポキシELM-120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のYL-933、日本化薬社製のEPPN-501、EPPN-502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjERYL-931等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学社製のTEPIC-S等の複素環式エポキシ樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル社製ZX-1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル社製ESN-185、ESN-365等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC社製HP-7200、HP-7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日油社製CP-50S、CP-50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル社製のYR-102、YR-450等のCTBN変性エポキシ樹脂、プリンテック社のVG3101L等のトリフェノール骨格を有する3官能エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0082】
(E)エポキシ樹脂の配合量は、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物の合計100質量部に対して5質量部以上40質量部以下であり、好ましくは10質量部以上25質量部以下である。
【0083】
また、(E-1)2官能エポキシ樹脂100質量部に対する(E-2)3官能以上のエポキシ樹脂の配合量が、20質量部以上500質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがさらに好ましく、絶縁信頼性の向上の観点から25質量部以上50質量部以下であることが最も好ましい。
【0084】
[有機溶剤]
本発明の硬化性樹脂組成物には、当該硬化性樹脂組成物の調製のためや、回路基板やフィルムに塗布するための粘度調整のために有機溶剤を配合することができる。このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などを挙げることができる。このような有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0085】
[その他成分]
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌・防黴剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、密着性付与剤、チキソ性付与剤、光開始助剤、増感剤、熱可塑性樹脂、有機フィラー、離型剤、表面処理剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、安定剤、蛍光体などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知慣用のものを用いることができる。
【0086】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、10μm以下の薄膜の硬化物を形成した場合であってもその硬化物の剛性および回路基板との密着性を良好に維持できることから、本発明の硬化性樹脂組成物は、膜厚10μm以下の硬化物を形成する用途に用いられることが好ましい。
【0087】
本発明の硬化性樹脂組成物の好適な用途としては、電子部品や半導体パッケージ基板等のプリント配線板上に硬化物を形成する用途であり、より好適には、プリント配線板上に永久被膜を形成する用途であり、さらに好適には、ソルダーレジスト、層間絶縁層、カバーレイを形成する用途である。
【0088】
<積層構造体>
本発明の積層構造体は、フィルムと、本発明の硬化性樹脂組成物で形成された樹脂層とを有するものである。なお、樹脂層は、単層であってもよく、二つ以上の樹脂層の積層構造を有していてもよい。
【0089】
上記積層構造体は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0090】
まず、第1のフィルム(キャリアフィルムや支持フィルムとも言う)上に、樹脂層を構成する本発明の硬化性樹脂組成物をそのまま、あるいは、必要に応じて有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、常法に従い、コンマコーター等の公知の手法で塗布する。樹脂層が2層以上の積層構造である場合、塗布される硬化性樹脂組成物を替えて、あるいは替えないで塗布操作を繰り返す。その後、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥することで、第1のフィルム上に樹脂層を形成した積層構造体を作製することができる。積層構造体に形成した樹脂層の膜厚は、硬化物の膜厚が10μm以下になればよく、例えば10μm程度であることが好ましい。
【0091】
この積層構造体上には、樹脂層表面に塵が付着することを防ぐ等の目的で、さらに、剥離可能な第2のフィルム(カバーフィルムや保護フィルムとも言う)を積層することができる。第1のフィルムおよび第2のフィルムとしては、従来公知のプラスチックフィルムを適宜用いることができ、第2のフィルムについては、第2のフィルムを剥離するときに、樹脂層と第1のフィルムとの接着力よりも小さいものであることが好ましい。キャリアフィルムおよびカバーフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10~150μmの範囲で適宜選択される。
【0092】
<硬化物>
本発明の硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物または上記積層構造体の樹脂層を硬化させて得られる。
【0093】
本発明の硬化性樹脂組成物または上記積層構造体の樹脂層を用いて硬化物を形成するには、本発明の硬化性樹脂組成物を基板上に塗布し、必要に応じて溶剤を揮発乾燥した後に得られた樹脂層に対し、あるいは、上記積層構造体の樹脂層を基板に貼付して形成した樹脂層に対し、露光(光照射)を行うことにより、露光部(光照射された部分)が硬化する。具体的には、接触式または非接触方式により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光、もしくは、レーザーダイレクト露光機により直接パターン露光して、未露光部をアルカリ水溶液(例えば、0.3~3質量%炭酸ナトリウム水溶液)により現像することにより、樹脂層のパターンが形成される。
【0094】
その後、さらに約100~180℃の温度に加熱して熱硬化(ポストキュア)させることにより、密着性、絶縁信頼性、耐熱性、耐薬品性、剛性等の諸特性に優れた硬化物を形成することができる。なお、パターン状に形成された樹脂層に活性エネルギー線をさらに照射しても良く、この活性エネルギー線の照射は、熱硬化の前でも後でもよい。
【0095】
上記基板としては、予め銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0096】
硬化性樹脂組成物を基板上に塗布する方法としては、スクリーン印刷法、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、カーテンコート法等がある。スクリーン印刷法では硬化性樹脂組成物を薄く塗布する際に膜厚の制御が難しかったり表面不良が生じたりする不具合があったが、本発明の硬化性樹脂組成物によれば、厚みの薄い樹脂層と硬化物を容易に形成することができる。
【0097】
上記硬化物を形成する際の揮発乾燥または熱硬化は、例えば、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0098】
また、上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで樹脂層のパターンを描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350~410nmの範囲にあるものでよい。樹脂層のパターンを形成するための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20~1000mJ/cm、好ましくは20~800mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0099】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液を使用することができる。
【0100】
<電子部品>
また、本発明は、上記硬化物を有する電子部品をも提供することができる。
【0101】
本発明の硬化性樹脂組成物を用いることによって、品質、耐久性及び信頼性の高い電子部品が提供される。
【0102】
本発明において電子部品とは、電子回路に使用する部品を意味し、プリント配線板、トランジスタ、発光ダイオード、レーザーダイオード等の能動部品の他抵抗、コンデンサ、インダクタ、コネクタ等の受動部品も含まれる。
【実施例0103】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は固形分の質量部を意味するものとする。
【0104】
((A)カルボキシル基含有樹脂の合成)
[合成例1]
<カルボキシル基含有樹脂A1の合成>
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート700gにオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON N-695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均反応性基数7.6)1070g(グリシジル基数(芳香環総数):5.0モル)、アクリル酸360g(5.0モル)、およびハイドロキノン1.5gを仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。
【0105】
次いで、トリフェニルフォスフィン4.3gを仕込み、110℃に加熱して2時間反応後、更にトリフェニルフォスフィン1.6gを追加し、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。得られた反応液に芳香族系炭化水素(ソルベッソ150)562g、テトラヒドロ無水フタル酸684g(4.5モル)を仕込み、110℃で4時間反応を行った。さらに、得られた反応液にグリシジルメタクリレート142.0g(1.0モル)を仕込み、115℃で4時間反応を行い、カルボキシル基含有樹脂溶液を得た。
【0106】
このようにして得られたカルボキシル基含有樹脂A1溶液の固形分は65%、固形分の酸価は87mgKOH/gであった。カルボキシル基含有樹脂A1の重量平均分子量を上記した通り、ポリスチレンを標準物質としてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、12,350であった。
【0107】
[合成例2]
<カルボキシル基含有樹脂A2の合成>
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、ビスフェノールA 456部、水228部、37%ホルマリン649部を仕込み、40℃以下の温度を保ち、25%水酸化ナトリウム水溶液228部を添加した、添加終了後50℃で10時間反応した。反応終了後40℃まで冷却し、40℃以下を保ちながら37.5%リン酸水溶液でpH4まで中和した。その後静置し水層を分離した。分離後メチルイソブチルケトン300部を添加し均一に溶解した後、蒸留水500部で3回洗浄し、50℃以下の温度で減圧下、水、溶媒等を除去した。得られたポリメチロール化合物をメタノール550部に溶解し、ポリメチロール化合物のメタノール溶液1230部を得た。得られたポリメチロール化合物のメタノール溶液の一部を真空乾燥機中室温で乾燥したところ、固形分が55.2%であった。
【0108】
得られたポリメチロール化合物のメタノール溶液500部、2,6-キシレノール440部を仕込み、50℃で均一に溶解した。均一に溶解した後50℃以下の温度で減圧下メタノールを除去した。その後シュウ酸8部を加え、100℃で10時間反応した。反応終了後180℃、50mmHgの減圧下で溜出分を除去し、ノボラック樹脂A 550部を得た。
【0109】
更に、温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、上記のノボラック樹脂Aを130部、50%水酸化ナトリウム水溶液2.6部、トルエン/メチルイソブチルケトン(質量比=2/1)100部を仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、次に加熱昇温し、150℃、8kg/cmでエチレンオキシド45部を徐々に導入し反応させた。反応はゲージ圧0.0kg/cmとなるまで約4時間を続けた後、室温まで冷却した。この反応溶液に3.3部の36%塩酸水溶液を添加混合し、水酸化ナトリウムを中和した。この中和反応生成物をトルエンで希釈し、3回水洗し、エバポレーターにて脱溶剤して、水酸基価が175g/eq.であるノボラック樹脂Aのエチレンオキシド付加物を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りエチレンオキシドが平均1モル付加しているものであった。
【0110】
このように得られたノボラック樹脂Aのエチレンオキシド付加物175部、アクリル酸50部、p-トルエンスルホン酸3.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、トルエン130部を撹拌機、温度計、空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を吹き込みながら攪拌して、115℃に昇温し、反応により生成した水をトルエンと共沸混合物として留去しながら、さらに4時間反応させたのち、室温まで冷却した。得られた反応溶液を、5%NaCl水溶液を用いて水洗し、減圧留去にてトルエンを除去した。この後、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを加えて、固形分68%のアクリレート樹脂溶液を得た。
【0111】
次に、撹拌器及び還流冷却器の付いた4つ口フラスコに、得られたアクリレート樹脂溶液312部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、トリフェニルフォスフィン0.3部を仕込み、この混合物を110℃に加熱し、テトラヒドロ無水フタル酸45部を加え、4時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有樹脂A2溶液は、固形分72%、固形分酸価65mgKOH/gであった。カルボキシル基含有樹脂A2の重量平均分子量を上記した通り、ポリスチレンを標準物質としてゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、10,000であった。
【0112】
((C-1)カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物(Mw≧2,000)の合成)
[合成例3]
<光硬化性化合物C-1の合成>
上記カルボキシル基含有樹脂A2の合成方法に従って水酸基価が175g/eq.であるノボラック樹脂Aのエチレンオキシド付加物を得た。
【0113】
このように得られたノボラック樹脂Aのエチレンオキシド付加物175部、メタクリル酸75部、p-トルエンスルホン酸3.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、トルエン130部を撹拌機、温度計、空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を吹き込みながら攪拌して、115℃に昇温し、反応により生成した水をトルエンと共沸混合物として留去しながら、さらに4時間反応させたのち、室温まで冷却した。得られた反応溶液を、5%NaCl水溶液を用いて水洗し、減圧留去にてトルエンを除去したのち、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを加えて、カルボキシル基を有さない光硬化性化合物C-1溶液を得た。このカルボキシル基を有さない光硬化性化合物C-1溶液の固形分は68%であった。カルボキシル基を有さない光硬化性化合物C-1の重量平均分子量を、上記した通り、ポリスチレンを標準物質としてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、6,000であった。
【0114】
[調製例1]
<表面処理されたシリカとシリカスラリーベースの調製>
球状シリカ(デンカ社製SFP-30M、平均粒径:600nm)77質量部と、溶剤としてPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)6.8質量部と、CA(カルビトールアセテート)3.7質量部と、メタクリル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業社製KBM-503)3.9質量部とを均一分散させて、表面処理されたシリカの溶剤分散品を得た。これに、カルボキシル基含有樹脂A2を固形分量で8.6質量部混ぜてシリカスラリーベースを作製した。
【0115】
<1.実施例1~5および比較例1~4の硬化性樹脂組成物の調製>
下記表1に示す成分組成に従って、調製例1で作製したシリカスラリーベースと、これ以外の実施例1~5および比較例1~4の硬化性樹脂組成物の材料をそれぞれ配合し、得られた硬化性樹脂組成物を攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルにて混練し、各硬化性樹脂組成物を調製した。なお、表1中の値は、特に断りがない限り、固形分の質量部である。なお、表1中のカルボキシル基含有樹脂A2の配合量の一部は、シリカスラリーベースに含まれている。
【0116】
<2.硬化性樹脂組成物の評価基板作製条件>
実施例および比較例で得られた硬化性樹脂組成物を、各評価基板上にスクリーン印刷法で塗布し、乾燥後の塗膜が10μmになるよう80℃の熱風乾燥機で30分乾燥し、樹脂層を得た。次にDI露光装置((株)オーク製作所、Di-impact Mms60、高圧水銀灯(ショートアークランプ)搭載)を用いて100mJ/cmの露光量で活性エネルギー線を全面露光した。その後、1質量%濃度の炭酸ナトリウム水溶液を用いて約0.1MPa、90秒間スプレーで現像し、未露光部を溶解除去し、さらに高圧水銀灯を備えたUVコンベア炉にて1J/cmの露光量で樹脂層に照射した後、160℃で60分加熱して樹脂層を完全硬化させて硬化物を作製した。この硬化膜の膜厚は10μmである。
【0117】
前記各硬化性樹脂組成物について、以下に示すように、硬化性樹脂組成物の解像性、耐現像性を評価し、前記硬化性樹脂組成物で形成された硬化物の絶縁信頼性、基板との密着性、剛性を評価した。結果を表1に示す。
【0118】
<3.絶縁信頼性の評価>
くし形電極(ライン/スペース=12ミクロン/13ミクロン、(株)レゾナック社製、MCL-E-679FG(R)、グレード:FR-4.1、電極の本数:片方10本ずつ両方で20本、くし形電極部の長さ:12mm、板厚:0.5mm)が形成された評価基板に前処理として、化学処理(メック(株)社製、メックエッチボンドCZ-8101、1.0μmエッチング)した後、防錆処理(メック(株)社製、メックエッチボンドCL-8300)を行った。このようにして得られた基板に、<2.硬化性樹脂組成物の評価基板作製条件>に従って実施例と比較例の硬化性樹脂組成物を全面塗布し、樹脂層を形成し、電極の端部を除き全面露光し現像した後、UVコンベア炉にてUV照射および160℃で60分間熱硬化して評価基板を作製した。この評価基板を、130℃、湿度85%の雰囲気下の高温高湿槽(エスペック(株)製、高加速寿命試験装置)に入れ、電圧5.0Vを印加し、絶縁劣化に至るまでの時間を測定した。ここで、電気抵抗値が1x10-6Ωを下回った時点で絶縁劣化と判定した。評価基準は以下の通りである。
【0119】
◎:絶縁劣化に至るまでの時間が500時間以上
○:絶縁劣化に至るまでの時間が400時間以上500時間未満
△:絶縁劣化に至るまでの時間が300時間以上400時間未満
×:絶縁劣化に至るまでの時間が300時間未満
【0120】
<4.解像性の評価>
銅張積層板としてのFR-4基材(銅の厚さ:35μm、板厚:0.8mm)に前処理として、化学処理(メック(株)社製、メックエッチボンドCZ-8101、1.0μmエッチング)した後、防錆処理(メック(株)社製、メックエッチボンドCL-8300)を行った。このようにして得られた基板に、<2.硬化性樹脂組成物の評価基板作製条件>に従って実施例と比較例の硬化性樹脂組成物を全面塗布し、樹脂層を形成した。次に、SROパターンで露光を行い、現像、UV照射および熱硬化した硬化物を得た。得られたSROパターン部を電子顕微鏡で観察し、形成可能な最小開口サイズを以下の基準で評価した。
【0121】
◎:φ40μm未満
○:φ40μm以上φ60μm未満
△:φ60μm以上φ80μm未満
×:φ80μm以上
【0122】
<5.密着性の評価>
銅張積層板としてのFR-4基材(銅の厚さ:35μm、板厚:0.8mm)に前処理として、化学処理(メック(株)社製、メックエッチボンドCZ-8101、1.0μmエッチング)した後、防錆処理(メック(株)社製、メックエッチボンドCL-8300)を行った。このようにして得られた基板に、<2.硬化性樹脂組成物の評価基板作製条件>に従って実施例と比較例の硬化性樹脂組成物を全面塗布し、樹脂層を形成し、全面露光、現像、UV照射、熱硬化をして、硬化物を有する基板を作製した。作製した硬化物に、EMCモールドプレス装置(MPC-06M APIC YAMADA CORP.製)を用いて、EMC(SG-8500BE SAMSUNG SDI)を5mmで形成し、175℃で4時間硬化した。その後、小型卓上試験機(FGS-500TV、NIDEC-SHIMPO CORP.製)を用いて、0.5mm/secの速度で引き倒しを行った。これらの条件にて測定されたシェア強度を以下の基準で評価した。
【0123】
◎:シェア強度が150N以上
○:シェア強度が120N以上150N未満
△:シェア強度が100N以上120N未満
×:シェア強度が100N未満
【0124】
<6.耐現像性の評価>
銅張積層板としてのFR-4基材(銅の厚さ:35μm、板厚:0.8mm)に前処理として、化学処理(メック(株)社製、メックエッチボンドCZ-8101、1.0μmエッチング)した後、防錆処理(メック(株)社製、メックエッチボンドCL-8300)を行った。このようにして得られた基板に、<評価基板作製条件>に従って、実施例と比較例の硬化性樹脂組成物を使用して樹脂層を形成する工程までを実施した。次に、41段のステップタブレット(Photec、(株)レゾナック社製)を載せ、露光を行った。その後、現像工程において1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて約0.1MPaで90秒と240秒で現像し、残存感度を測定した。現像時間の違いによる残存感度の変化を以下の基準で評価した。
【0125】
◎:残存感度の変化が2段以下
○:残存感度の変化が3段以上5段未満
△:残存感度の変化が5段以上7段未満
×:残存感度の変化が7段以上
【0126】
<7.剛性 線膨張係数(CTE値(α2))の評価>
18μm厚の銅箔上に、<評価基板作製条件>に従って実施例と比較例の樹脂組成物を全面塗布し、樹脂層を形成した。次に、DI露光装置(Di-impact Mms60、高圧水銀灯(ショートアークランプ)搭載)を用いて樹脂層に対し100mJ/cmの露光量で露光を行った。露光は、TMAの測定サイズである3mm×10mmのサイズにて行った。この後、1質量%濃度の炭酸ナトリウム水溶液を用いて約0.1MPa、90秒間スプレーで現像し、未露光部を溶解除去した。次に、高圧水銀灯を備えたUVコンベア炉にて1J/cmの露光量で樹脂層に照射した後、160℃で60分加熱して樹脂層を完全硬化させて硬化物を作製した。
【0127】
上記のようにして得られた硬化物を銅箔より剥離し、測定サイズ(幅3mmx長さ10mmのサイズ)が得られるようにサンプルを切り出した。次いで、日立ハイテクサイエンス社製TMA6100にて、サンプルを鉛直方向に配置して長手方向の上下両端を治具で固定してCTEを測定した。測定条件は試験荷重5g、サンプルを10℃/分の昇温速度で室温より260℃まで昇温し、
25℃まで冷却後した後280℃まで昇温した。2回目におけるTg以上の線膨張係数(CTE(α2))を得た。線膨張係数(CTE(α2))に基づき剛性を以下の基準で評価した。
◎:CTE(α2)が120ppm/K未満であり、非常に高い剛性を有する。
〇:CTE(α2)が120ppm/K以上130ppm/K未満であり、高い剛性を有する。
×:CTE(α2)が130ppm/K以上であり、剛性が低い。
【0128】
【表1】
【0129】
表1中の成分の詳細は以下のとおりである。
*1:合成例1に従う
*2:合成例2に従う
*3:エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート(IGM Resins社製)
*4:合成例3に従う
*5:A-GLY-9E(新中村化学工業社製) オキシエチレン基を有するグリセリントリアクリレート 重量平均分子量:811
*6:ラロマーLR8863(BASFジャパン社製) オキシエチレン基を有するトリメチロールプロパントリアクリレート 重量平均分子量:340
*7:BPE-900(新中村化学工業社製) エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレート 重量平均分子量:約1,000
*8:DPHA(ダイセル・オルネクス社製) ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 重量平均分子量:804
*9:水酸化アルミニウム(Al(OH))にて硫酸バリウム(B-30、堺化学工業社製)を表面処理したもの(CIKナノテック社製、BSECA70WT%-H34)(なお、表面処理に供された水酸化アルミニウムおよび硫酸バリウムの量は表1に記載されたとおりであり、これらの全量を無機充填剤として硬化性樹脂組成物に配合した。)
*10:調製例1のシリカスラリーベースに含まれる表面処理されたシリカのみの配合量
*11:N-870-75EA(DIC社製) ビスフェノールA骨格を有する2官能エポキシ樹脂
*12:VG3101L(プリンテック社製) トリフェノール骨格を有する3官能エポキシ樹脂
【0130】
表1に示すように、実施例と比較例の対比から、硬化性樹脂組成物が(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)光重合開始剤、(C)カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物、(D)無機充填剤および(E)エポキシ樹脂を含有することに加えて、(C)カルボキシル基を含有しない光硬化性化合物として、(C-1)重量平均分子量が2,000以上の光硬化性化合物と、(C-2)重量平均分子量が2,000未満であるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物と、を含むことで、この硬化性樹脂組成物は解像性および耐現像性に優れるものとなり、この硬化性樹脂組成物で形成された硬化物の絶縁信頼性、基板との密着性および剛性も良好なものとなった。
【0131】
また、実施例5と実施例4との対比から、(D)無機充填剤としてシリカに加えて硫酸バリウムの水酸化アルミニウムによる表面処理物を追加すると形成された硬化物の絶縁信頼性と剛性が向上することがわかった。
【0132】
さらに、実施例4と実施例3との対比から、(E-1)2官能エポキシ樹脂100質量部に対する(E-2)3官能エポキシ樹脂の配合量を43質量部程度にすると形成された硬化物の絶縁信頼性がさらに向上することがわかった。
【0133】
そのうえ、実施例1および実施例2のように、(C-2)重量平均分子量が2,000未満であるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物が、重量平均分子量が2,000未満の範囲内においてより高分子量の化合物(Mw:811)とより低分子量の化合物(Mw:340)とを併用すると、硬化性樹脂組成物の解像性および耐現像性、ならびに硬化性樹脂組成物で形成された硬化物の絶縁信頼性、基板との密着性および剛性の全ての特性が優れることがわかった。
【0134】
一方、(C-1)重量平均分子量が2,000以上の光硬化性化合物を含まない比較例1の硬化性樹脂組成物は、解像性、耐現像性、絶縁信頼性、基板との密着性および剛性の全てが劣っていた。重量平均分子量が2,000未満であるオキシアルキレン基含有2官能光硬化性化合物を含む比較例2の硬化性樹脂組成物は、特に耐現像性、絶縁信頼性、基板との密着性および剛性が劣っていた。重量平均分子量が2,000未満である6官能光硬化性化合物を含む比較例3の硬化性樹脂組成物は、特に解像性、耐現像性、基板との密着性および剛性が劣っていた。(C-2)重量平均分子量が2,000未満であるオキシアルキレン基含有3官能光硬化性化合物を含まない比較例4の硬化性樹脂組成物は、特に解像性、耐現像性、絶縁信頼性が劣っていた。