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特開2023-152897低粘度化処理大豆蛋白及び該低粘度化処理大豆蛋白を使用した食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152897
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】低粘度化処理大豆蛋白及び該低粘度化処理大豆蛋白を使用した食品
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/16 20060101AFI20231005BHJP
   A23L 2/66 20060101ALI20231005BHJP
   A23L 11/65 20210101ALI20231005BHJP
【FI】
A23J3/16
A23L2/00 J
A23L11/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050582
(22)【出願日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2022056301
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022136381
(32)【優先日】2022-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】柑本 雅司
【テーマコード(参考)】
4B020
4B117
【Fターム(参考)】
4B020LB18
4B020LC04
4B020LG04
4B020LK01
4B020LK03
4B020LK04
4B020LK05
4B020LP15
4B117LC02
4B117LG11
4B117LK01
4B117LK10
4B117LK12
4B117LK13
4B117LK16
4B117LL01
4B117LL02
4B117LL03
4B117LL06
(57)【要約】
【課題】 本発明の課題は、水と混合した場合に蛋白のダマができにくく、低粘度の大豆蛋白分散液が得られるような低粘度化処理大豆蛋白を提供し、飲食時の口あたりがさらりとした低粘度化処理大豆蛋白含有飲料を提供することである。
【解決手段】 分離大豆蛋白を加熱処理して得られる、又は、分離大豆蛋白に対してエタノールを添加、混合した後、加熱処理して得られる、以下の要件を満たす低粘度化処理大豆蛋白。
要件:水92gを入れたシェイカーに、低粘度化処理大豆蛋白8gを入れた後、シェイカーの蓋をして上下に10回振り混ぜ、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製し、音叉型振動式粘度計を用いて、特定の条件で測定した低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の20℃における粘度が1mPa・s以上~20mPa・s未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離大豆蛋白を加熱処理した低粘度化処理大豆蛋白であって、以下の要件を満たすことを特徴とする低粘度化処理大豆蛋白。
要件:水92gを入れたシェイカーに、低粘度化処理大豆蛋白8gを入れた後、シェイカーの蓋をして上下に10回振り混ぜ、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製し、音叉型振動式粘度計を用いて、以下の条件で測定した低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の20℃における粘度が1mPa・s以上~20mPa・s未満である。
粘度測定条件:粘度の測定は、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の調製において、シェイカーを振り混ぜて低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製してから30分以内に行い、測定する直前に、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を撹拌棒で撹拌して大豆蛋白を分散させ、粘度の測定開始から1分後の値を測定する。
【請求項2】
分離大豆蛋白に対してエタノールを添加、混合した後、加熱処理した低粘度化処理大豆蛋白であって、以下の要件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の低粘度化処理大豆蛋白。
要件:水92gを入れたシェイカーに、低粘度化処理大豆蛋白8gを入れた後、シェイカーの蓋をして上下に大きく10回振り混ぜ、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製し、音叉型振動式粘度計を用いて、以下の条件で測定した低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の20℃における粘度が1mPa・s以上~20mPa・s未満である。
粘度測定条件:粘度の測定は、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の調製において、シェイカーを振り混ぜて低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製してから30分以内に行い、測定する直前に、大豆蛋白含有飲料を撹拌棒で撹拌して大豆蛋白を分散させ、粘度の測定開始から1分後の値を測定する。
【請求項3】
前記エタノールの添加量が、分離大豆蛋白100質量部に対して、0.1~25質量部であることを特徴とする請求項2に記載の低粘度化処理大豆蛋白。
【請求項4】
前記加熱処理の温度が、80℃~130℃であることを特徴とする請求項2に記載の低粘度化処理大豆蛋白。
【請求項5】
請求項1に記載の低粘度化処理大豆蛋白を含有する大豆蛋白粉末飲料。
【請求項6】
さらに、ビタミン類、糖類、高甘味度甘味料、増粘多糖類、デキストリン、食用油、ココアパウダー、食塩、着色料、香料、及び乳化剤から選ばれる1種又は2種以上を含有する請求項5に記載の大豆蛋白粉末飲料。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の低粘度化処理大豆蛋白、もしくは請求項5又は6に記載の大豆蛋白粉末飲料を使用した大豆蛋白含有飲料。
【請求項8】
さらに、ビタミン類、糖類、高甘味度甘味料、増粘多糖類、デキストリン、食用油、ココアパウダー、食塩、着色料、香料、及び乳化剤から選ばれる1種又は2種以上を含有する請求項7に記載の大豆蛋白含有飲料。
【請求項9】
分離大豆蛋白を加熱処理する低粘度化処理大豆蛋白の製造方法であって、以下の要件を満たすことを特徴とする低粘度化処理大豆蛋白の製造方法。
要件:水92gを入れたシェイカーに、低粘度化処理大豆蛋白8gを入れた後、シェイカーの蓋をして上下に10回振り混ぜ、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製し、音叉型振動式粘度計を用いて、以下の条件で測定した低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の20℃における粘度が1mPa・s以上~20mPa・s未満である。
粘度測定条件:粘度の測定は、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の調製において、シェイカーを振り混ぜて低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製してから30分以内に行い、測定する直前に、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を撹拌棒で撹拌して大豆蛋白を分散させ、粘度の測定開始から1分後の値を測定する。
【請求項10】
分離大豆蛋白に対してエタノールを添加、混合した後、加熱処理した低粘度化処理大豆蛋白の製造方法であって、以下の要件を満たすことを特徴とする請求項9に記載の低粘度化処理大豆蛋白の製造方法。
要件:水92gを入れたシェイカーに、低粘度化処理大豆蛋白8gを入れた後、シェイカーの蓋をして上下に大きく10回振り混ぜ、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製し、音叉型振動式粘度計を用いて、以下の条件で測定した低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の20℃における粘度が1mPa・s以上~20mPa・s未満である。
粘度測定条件:粘度の測定は、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の調製において、シェイカーを振り混ぜて低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製してから30分以内に行い、測定する直前に、大豆蛋白含有飲料を撹拌棒で撹拌して大豆蛋白を分散させ、粘度の測定開始から1分後の値を測定する。
【請求項11】
前記エタノールの添加量が、分離大豆蛋白100質量部に対して、0.1~25質量部であることを特徴とする請求項10に記載の低粘度化処理大豆蛋白の製造方法。
【請求項12】
前記加熱処理の温度が、80℃~130℃であることを特徴とする請求項10又は11に記載の低粘度化処理大豆蛋白の製造方法。
【請求項13】
分離大豆蛋白を加熱処理することにより、以下の要件を満たす低粘度化処理大豆蛋白を得ることを特徴する、分離大豆蛋白の低粘度化処理方法。
要件:水92gを入れたシェイカーに、低粘度化処理大豆蛋白8gを入れた後、シェイカーの蓋をして上下に10回振り混ぜ、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製し、音叉型振動式粘度計を用いて、以下の条件で測定した低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の20℃における粘度が1mPa・s以上~20mPa・s未満である。
粘度測定条件:粘度の測定は、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の調製において、シェイカーを振り混ぜて低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製してから30分以内に行い、測定する直前に、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を撹拌棒で撹拌して大豆蛋白を分散させ、粘度の測定開始から1分後の値を測定する。
【請求項14】
分離大豆蛋白に対してエタノールを添加、混合した後、加熱処理することにより、以下の要件を満たす低粘度化処理大豆蛋白を得ることを特徴する、請求項13に記載の分離大豆蛋白の低粘度化処理方法。
要件:水92gを入れたシェイカーに、低粘度化処理大豆蛋白8gを入れた後、シェイカーの蓋をして上下に10回振り混ぜ、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製し、音叉型振動式粘度計を用いて、以下の条件で測定した低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の20℃における粘度が1mPa・s以上~20mPa・s未満である。
粘度測定条件:粘度の測定は、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の調製において、シェイカーを振り混ぜて低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製してから30分以内に行い、測定する直前に、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を撹拌棒で撹拌して大豆蛋白を分散させ、粘度の測定開始から1分後の値を測定する。
【請求項15】
前記エタノールの添加量が、分離大豆蛋白100質量部に対して、0.1~25質量部であることを特徴とする請求項14に記載の低粘度化処理方法。
【請求項16】
前記加熱処理の温度が、80℃~130℃であることを特徴とする請求項14又は15に記載の低粘度化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低粘度化処理大豆蛋白及び該低粘度化処理大豆蛋白を使用した食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、蛋白質の摂取を目的として、水や牛乳に分散させて飲む大豆蛋白粉末飲料が販売されている。そして、大豆蛋白粉末飲料の蛋白原料には、大豆蛋白加水分解物がよく使用されている(特許文献1)。
一方で、加水分解をしていない分離大豆蛋白は、蛋白質の摂取の点からは、蛋白含量が高いのでメリットがあるが、水と混合して得られる分散液の粘度が高くなり、ゾル状の粘りが発生してしまうことがら、飲料用途にはほとんど使用されていなかった。
また、大豆蛋白加水分解物は、加水分解処理を必須とする製造により、水と混合しても分散液の粘度は高くならないが、価格が高いという欠点があり、飲料用として、加水分解処理を行わなくても、分散液の粘度が低い分離大豆蛋白の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-238693公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、水と混合した場合に蛋白のダマができにくく、水と混合した場合に低粘度の大豆蛋白分散液が得られるような低粘度化処理大豆蛋白を提供することである。
また、本発明の目的は、飲食時の口あたりがさらりとした低粘度化処理大豆蛋白含有飲料を提供することである。
なお、本発明において「低粘度」とは、音叉型振動式粘度計を用いて後述する条件で測定した時の粘度が、1mPa・s以上~20mPa・s未満の範囲であることを意味する。以下、同様とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、分離大豆蛋白の粉末を加熱処理することで、又はエタノールを添加、混合後、加熱処理することで、大豆蛋白の加水分解処理をしなくても、飲料の原料に適した低粘度の大豆蛋白が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下に関するものである。
〔1〕分離大豆蛋白を加熱処理した低粘度化処理大豆蛋白であって、以下の要件を満たすことを特徴とする低粘度化処理大豆蛋白。
要件:水92gを入れたシェイカーに、低粘度化処理大豆蛋白8gを入れた後、シェイカーの蓋をして上下に10回振り混ぜ、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製し、音叉型振動式粘度計を用いて、以下の条件で測定した低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の20℃における粘度が1mPa・s以上~20mPa・s未満である。
粘度測定条件:粘度の測定は、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の調製において、シェイカーを振り混ぜて低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製してから30分以内に行い、測定する直前に、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を撹拌棒で撹拌して大豆蛋白を分散させ、粘度の測定開始から1分後の値を測定する。
〔2〕分離大豆蛋白に対してエタノールを添加、混合した後、加熱処理した低粘度化処理大豆蛋白であって、以下の要件を満たすことを特徴とする〔1〕に記載の低粘度化処理大豆蛋白。
要件:水92gを入れたシェイカーに、低粘度化処理大豆蛋白8gを入れた後、シェイカーの蓋をして上下に大きく10回振り混ぜ、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製し、音叉型振動式粘度計を用いて、以下の条件で測定した低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の20℃における粘度が1mPa・s以上~20mPa・s未満である。
粘度測定条件:粘度の測定は、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の調製において、シェイカーを振り混ぜて低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製してから30分以内に行い、測定する直前に、大豆蛋白含有飲料を撹拌棒で撹拌して大豆蛋白を分散させ、粘度の測定開始から1分後の値を測定する。
〔3〕前記エタノールの添加量が、分離大豆蛋白100質量部に対して、0.1~25質量部であることを特徴とする〔2〕に記載の低粘度化処理大豆蛋白。
〔4〕前記加熱処理の温度が、80℃~130℃であることを特徴とする〔2〕又は〔3〕に記載の低粘度化処理大豆蛋白。
〔5〕〔1〕~〔4〕に記載の低粘度化処理大豆蛋白を含有する大豆蛋白粉末飲料。
〔6〕さらに、ビタミン類、糖類、高甘味度甘味料、増粘多糖類、デキストリン、食用油、ココアパウダー、食塩、着色料、香料、及び乳化剤から選ばれる1種又は2種以上を含有する〔5〕に記載の大豆蛋白粉末飲料。
〔7〕〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の低粘度化処理大豆蛋白、もしくは〔5〕又は〔6〕に記載の大豆蛋白粉末飲料を使用した大豆蛋白含有飲料。
〔8〕さらに、ビタミン類、糖類、高甘味度甘味料、増粘多糖類、デキストリン、食用油、ココアパウダー、食塩、着色料、香料、及び乳化剤から選ばれる1種又は2種以上を含有する〔7〕に記載の大豆蛋白含有飲料。
〔9〕分離大豆蛋白を加熱処理する低粘度化処理大豆蛋白の製造方法であって、以下の要件を満たすことを特徴とする低粘度化処理大豆蛋白の製造方法。
要件:水92gを入れたシェイカーに、低粘度化処理大豆蛋白8gを入れた後、シェイカーの蓋をして上下に10回振り混ぜ、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製し、音叉型振動式粘度計を用いて、以下の条件で測定した低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の20℃における粘度が1mPa・s以上~20mPa・s未満である。
粘度測定条件:粘度の測定は、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の調製において、シェイカーを振り混ぜて低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製してから30分以内に行い、測定する直前に、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を撹拌棒で撹拌して大豆蛋白を分散させ、粘度の測定開始から1分後の値を測定する。
〔10〕分離大豆蛋白に対してエタノールを添加、混合した後、加熱処理した低粘度化処理大豆蛋白の製造方法であって、以下の要件を満たすことを特徴とする〔9〕に記載の低粘度化処理大豆蛋白の製造方法。
要件:水92gを入れたシェイカーに、低粘度化処理大豆蛋白8gを入れた後、シェイカーの蓋をして上下に大きく10回振り混ぜ、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製し、音叉型振動式粘度計を用いて、以下の条件で測定した低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の20℃における粘度が1mPa・s以上~20mPa・s未満である。
粘度測定条件:粘度の測定は、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の調製において、シェイカーを振り混ぜて低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製してから30分以内に行い、測定する直前に、大豆蛋白含有飲料を撹拌棒で撹拌して大豆蛋白を分散させ、粘度の測定開始から1分後の値を測定する。
〔11〕前記エタノールの添加量が、分離大豆蛋白100質量部に対して、0.1~25質量部であることを特徴とする〔10〕に記載の低粘度化処理大豆蛋白の製造方法。
〔12〕前記加熱処理の温度が、80℃~130℃であることを特徴とする〔10〕又は〔11〕に記載の低粘度化処理大豆蛋白の製造方法。
〔13〕分離大豆蛋白を加熱処理することにより、以下の要件を満たす低粘度化処理大豆蛋白を得ることを特徴する、分離大豆蛋白の低粘度化処理方法。
要件:水92gを入れたシェイカーに、低粘度化処理大豆蛋白8gを入れた後、シェイカーの蓋をして上下に10回振り混ぜ、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製し、音叉型振動式粘度計を用いて、以下の条件で測定した低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の20℃における粘度が1mPa・s以上~20mPa・s未満である。
粘度測定条件:粘度の測定は、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の調製において、シェイカーを振り混ぜて低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製してから30分以内に行い、測定する直前に、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を撹拌棒で撹拌して大豆蛋白を分散させ、粘度の測定開始から1分後の値を測定する。
〔14〕分離大豆蛋白に対してエタノールを添加、混合した後、加熱処理することにより、以下の要件を満たす低粘度化処理大豆蛋白を得ることを特徴する、〔13〕に記載の分離大豆蛋白の低粘度化処理方法。
要件:水92gを入れたシェイカーに、低粘度化処理大豆蛋白8gを入れた後、シェイカーの蓋をして上下に10回振り混ぜ、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製し、音叉型振動式粘度計を用いて、以下の条件で測定した低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の20℃における粘度が1mPa・s以上~20mPa・s未満である。
粘度測定条件:粘度の測定は、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の調製において、シェイカーを振り混ぜて低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製してから30分以内に行い、測定する直前に、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を撹拌棒で撹拌して大豆蛋白を分散させ、粘度の測定開始から1分後の値を測定する。
〔15〕前記エタノールの添加量が、分離大豆蛋白100質量部に対して、0.1~25質量部であることを特徴とする〔14〕に記載の低粘度化処理方法。
〔16〕前記加熱処理の温度が、80℃~130℃であることを特徴とする〔14〕又は〔15〕のいずれか1つに記載の低粘度化処理方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水と混合した場合に蛋白のダマができにくく、水と混合した場合に低粘度の大豆蛋白分散液が得られる低粘度化処理大豆蛋白を提供することができる。
また、本発明によれば、飲食時の口あたりがさらりとした低粘度の大豆蛋白含有飲料を提供することができる。
さらに、大豆蛋白の加水分解処理をしなくても良いので、大豆蛋白含有飲料の価格を安くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明は、加熱処理した低粘度化処理大豆蛋白、好ましくは、分離大豆蛋白に対してエタノールを添加、混合した後、加熱処理した低粘度化処理大豆蛋白であって、以下の要件を満たすことを特徴とする低粘度化処理大豆蛋白である。
要件:水92gを入れたシェイカーに、低粘度化処理大豆蛋白8gを入れた後、シェイカーの蓋をして上下に10回振り混ぜ(上下の振り幅40~50cm)、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製し、音叉型振動式粘度計を用いて、以下の条件で測定した低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の20℃における粘度が1mPa・s以上~20mPa・s未満である。
粘度測定条件:粘度の測定は、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の調製において、シェイカーを振り混ぜて低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製してから30分以内に行い、測定する直前に、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を撹拌棒で撹拌して大豆蛋白を分散させ、粘度の測定開始から1分後の値を測定する。
【0009】
まず、本発明に使用する分離大豆蛋白について説明をする。
本発明に使用する分離大豆蛋白は、通常製造されている方法で製造することができる。分離大豆蛋白の製造方法としては、例えば、脱脂大豆を中性から弱アルカリ性で水抽出後、おからを分離し、得られた抽出液を大豆蛋白の等電点付近の酸性に調整して沈殿物を生じさせることでホエー成分を分離し、沈殿物を溶解、中和後、乾燥することによって製造することができる。
このように、分離大豆蛋白は、脱脂大豆から製造することができるが、市販品を使用することもできる。分離大豆蛋白の市販品としては、例えば、日清オイリオグループ(株)
販売の商品「ソルピー6000H」、「ソルピー5000H」が挙げられる。
なお、市販の分離大豆蛋白中の蛋白含量は、通常、乾燥重量あたり90質量%以上である。
【0010】
次に、本発明の製造方法に使用するエタノールについて説明をする。
本発明では、エタノールを添加しなくても低粘度化処理大豆蛋白の製造方法を製造することができるが、エタノールを添加することで加熱処理時間を短くすることができる。
エタノールは、純度が99.5vol%の高純度のものも使用できるが、水分含量が1~30vol%の含水エタノール(70vol%~99vol%)を使用することもできる。
エタノールの添加量は、分離大豆蛋白100質量部に対して、0~25質量部であることが好ましく、0.1~25質量部であることがより好ましく、1~25質量部であることがさらに好ましく、5~25質量部であることがさらにより好ましく、5~20質量部であることが最も好ましい。
なお、エタノールの添加量は、分離大豆蛋白100質量部に対して、25質量部よりも多くでも本発明の効果を得ることはできるが、エタノールの使用量が多くなり、製造コストがかかることに注意が必要である。
【0011】
次に、本発明の低粘度化処理大豆蛋白の製造方法、及び分離大豆蛋白の低粘度化処理方法について説明をする。
本発明の低粘度化処理大豆蛋白は、粉末の分離大豆蛋白を加熱処理することによって、好ましくは、粉末の分離大豆蛋白に対してエタノールを添加、混合した後、加熱処理することによって製造することができる。単に、分離大豆蛋白を加熱処理により低粘度化処理をする場合に比べ、エタノールを添加、混合することで低粘度化処理における加熱時間を短くすることができる。
まず、エタノールの添加について説明をする。
上述したように、エタノールは、添加しなくても低粘度化処理大豆蛋白の製造方法を製造することができるが、エタノールを添加する場合のエタノールの添加方法について以下に説明をする。
分離大豆蛋白へエタノールの添加、混合は、容器、好ましくは密閉容器に、分離大豆蛋白を入れて、分離大豆蛋白にエタノールを噴霧した後、容器を振って混合することにより行うことができる。
分離大豆蛋白へエタノールの添加、混合は、分離大豆蛋白を粉体混合機で混合している状態、又は流動化させている状態の所に、エタノールを添加することで行っても良い。
また、トレー等の容器に分離大豆蛋白を広げた状態して、霧吹きでエタノールを分離大豆蛋白の表面全体に噴霧し、その後混合しても良い。
エタノールの添加には、市販の霧吹き、噴霧スプレー等を用いることができる。
なお、分離大豆蛋白に添加したエタノールは、後述する加熱処理時に、蒸留装置問を用いて、揮発したエタノールを回収し、再度、分離大豆蛋白への添加に使用(再利用)することもできる。
【0012】
次に、加熱処理について説明をする。
分離大豆蛋白の加熱には、送風定温恒温器、加熱乾燥機、エクストルーダー等を使用することができる。
分離大豆蛋白の加熱処理の温度は、エタノールの添加の有無、エタノールの添加量や濃度、分離大豆蛋白の処理量、加熱処理時の分離大豆蛋白の状態等によって変わってくる。
エタノールを添加しない場合、分離大豆蛋白の加熱処理の温度は、120℃~130℃であることが好ましく、120℃であることがより好ましい。
エタノールを添加する場合、分離大豆蛋白の加熱処理の温度は、80℃~130℃であることが好ましく、90℃~120℃であることがより好ましく、100℃~120℃であることがさらに好ましく、120℃であることがさらにより好ましい。
い。
【0013】
加熱処理の時間は、エタノールの添加の有無、添加量や濃度、分離大豆蛋白の処理量、加熱処理時の分離大豆蛋白の状態等によって変わってくるが、以下の方法で低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製し、以下の方法で測定したその粘度が、20mPa・s未満になるまでの加熱時間が必要である。
(低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の調製、及び粘度測定方法)
低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液は、水92gを入れたシェイカーに、低粘度化処理大豆蛋白8gを入れた後、シェイカーの蓋をして上下に10回振り混ぜる(上下の振り幅40~50cm)ことにより行う。
低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の粘度の測定は、シェイカーを振り混ぜて低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製してから30分以内に行い、測定する直前に、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を撹拌棒で撹拌して大豆蛋白を分散させ、粘度の測定開始から1分後の値を測定する。
後述する実施例で詳細に説明をするが、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の粘度が、20mPa・s未満であった場合には、大豆蛋白の分散性、及び飲食時の口当たりも良好になるので、本発明では、低粘度化処理大豆蛋白を用いて得られる低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液の粘度が重要な要素である。
【0014】
加熱時間として、例えば、100gの粉末の分離大豆蛋白を、エタノールを添加しないで120℃で加熱する場合、90分~250分加熱することが好ましく、90分~200分加熱することがより好ましく、90分~150分加熱することがさらに好ましい。
例えば、100gの粉末の分離大豆蛋白に、分離大豆蛋白100質量部に対して5質量部の99.5vol%エタノールを添加、混合して120℃で加熱する場合、70分~250分加熱することが好ましく、70分~200分加熱することがより好ましく、70分~150分加熱することがさらに好ましい。
例えば、100gの粉末の分離大豆蛋白に、分離大豆蛋白100質量部に対して10質量部の99.5vol%エタノールを添加、混合して120℃で加熱する場合、60分~250分加熱することが好ましく、60分~200分加熱することがより好ましく、60分~150分加熱することがさらに好ましい。
例えば、100gの粉末の分離大豆蛋白に、分離大豆蛋白100質量部に対して20質量部の99.5vol%エタノールを添加、混合して120℃で加熱する場合、40分~250分加熱することが好ましく、40分~200分加熱することがより好ましく、40分~150分加熱することがさらに好ましい。
例えば、100gの粉末の分離大豆蛋白に、分離大豆蛋白100質量部に対して5質量部の99.5vol%エタノールを添加、混合して100℃で加熱する場合、200分~300分加熱することが好ましく、200分~250分加熱することがより好ましい。
例えば、100gの粉末の分離大豆蛋白に、分離大豆蛋白100質量部に対して10質量部の99.5vol%エタノールを添加、混合して100℃で加熱する場合、200分~300分加熱することが好ましく、200分~250分加熱することがより好ましい。
例えば、100gの粉末の分離大豆蛋白に、分離大豆蛋白100質量部に対して20質量部の99.5vol%エタノールを添加、混合して100℃で加熱する場合、150分~300分加熱することが好ましく、150分~250分加熱することがより好ましい。
【0015】
このようにして製造された本発明の低粘度化処理大豆蛋白は、そのまま飲料の原料、即ち、大豆蛋白粉末飲料として使用することができる。
低粘度化処理大豆蛋白からなる大豆蛋白粉末飲料を用いた大豆蛋白含有飲料は、例えば、80~200mlの水又は牛乳を入れたシェイカーに、大豆蛋白粉末飲料である低粘度化処理大豆蛋白を、好ましくは5~30g、より好ましくは、5~20g、さらに好ましくは8~16g添加後、シェイカーの蓋をして数回振り混ぜることにより製造することができる。
通常の分離大豆蛋白の水溶液は、粘度が高くなって蛋白分散液が増粘し、飲料に適さないが、本発明の低粘度化処理大豆蛋白を用いて製造した大豆蛋白飲料は、粘度が低く(上述した条件で測定した場合20mPa・s未満)、飲みやすい。
【0016】
本発明の低粘度化処理大豆蛋白を水に分散させた分散液の粘度は、音叉型振動式粘度計を用いて測定することができる。音叉型振動式粘度計として、例えば、(株)エー・アンド・デイ製の粘度計「SV-10」を挙げることができる。
粘度の測定は、次のようにして行う。
水92gを入れたシェイカーに、低粘度化処理大豆蛋白8gを入れた後、シェイカーの蓋をして上下に10回振り混ぜる(上下の振り幅40~50cm)ことで低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を調製し、調製をしてから30分以内に粘度の測定を行う。また、粘度を測定する直前に、低粘度化処理大豆蛋白分散水溶液を撹拌棒で撹拌して大豆蛋白を分散させ、粘度の測定開始から1分後の値を測定する。
【0017】
また、本発明の低粘度化処理大豆蛋白と各種食品素材とを混合することで、各種食品素材を含有する大豆蛋白粉末飲料を得ることができる。
各種食品素材として、ビタミン類、糖類、高甘味度甘味料、増粘多糖類、デキストリン、食用油脂、ココアパウダー、食塩、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、着色料、香料、乳化剤等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
大豆蛋白粉末飲料中の低粘度化処理大豆蛋白、及び各種食品素材の含量は、特に限定しないが、例えば、低粘度化処理大豆蛋白の含量は、好ましくは30~99質量%であり、より好ましくは40~90質量%であり、さらにより好ましくは45~85質量%である。
また、各種食品素材の含量は、好ましくは1~70質量%であり、より好ましくは10~60質量%であり、さらにより好ましくは15~55質量%である。
【0018】
ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、パントテン酸、葉酸、ナイアシン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
糖類としては、砂糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、ソルビトール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
高甘味度甘味料としては、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムK等が挙
げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0019】
増粘多糖類としては、キサンタンガム、ローカストビーンガム、寒天、プルラン、ジェランガム、カラギーナン、グアーガム、タマリンドシードガム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
食用油脂としては、大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、ひまわり油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、かぼちゃ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米糠油、パーム油、豚脂、牛脂、魚油や、これらの油脂の水添油や、これらの油脂の1種又は2種以上をエステル交換した油、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0020】
各種食品素材を含有する大豆蛋白粉末飲料は、低粘度化処理大豆蛋白と各種食品素材の1種又は2種以上を混合することにより製造することができる。
混合は、袋に原料を入れて袋を振って混合してもよく、ナウターミキサー、V型混合機、リボンミキサー等の混合機を用いて混合しても良い。
各種食品素材を含有する大豆蛋白粉末飲料は、水や牛乳と混合することにより、各種食品素材を含有する大豆蛋白含有飲料とすることができる。
各種食品素材を含有する大豆蛋白粉末飲料を用いた大豆蛋白含有飲料は、例えば、80~200mlの水又は牛乳を入れたシェイカーに、大豆蛋白粉末飲料を、好ましくは5~30g、より好ましくは、5~20g、さらに好ましくは8~16g添加後、シェイカーの蓋をして数回振り混ぜることにより製造することができる。
【0021】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【実施例0022】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
〔使用した分離大豆蛋白〕
本実施例では、分離大豆蛋白は、日清オイリオグループ(株)販売の商品「ソルピー6000H」(蛋白含量:93質量%)を使用した。
分離大豆蛋白の蛋白含量は、大豆蛋白試料の全窒素分を、ケルダール法により定量し、大豆蛋白試料に対する百分率で表し、これに6.25を乗じて粗蛋白の含量とする方法で導出した。この方法は、JAS(社団法人日本農林規格協会)による植物性たん白の日本農林規格における植物たん白質含有率の測定法に準じたものである。
【0024】
・低粘度化処理大豆蛋白の製造(加熱処理1、加熱温度:120℃)
粉末の分離大豆蛋白100gをステンレストレー(縦28cm、横22cm)の上に広げて敷き詰めた(厚さ約2~5mm)。そのステンレストレーを加熱装置(ヤマト科学(株)社製、装置名「送風定温恒温器 DN-62」)に入れ、120℃で、最終的に100分間、加熱処理を行った。分析、評価用サンプルとして、加熱開始から10分ごとに、分離大豆蛋白約9gを取り出した。加熱処理は100分まで行った。
なお、エタノールの添加、混合は行わなかった。
【0025】
・低粘度化処理大豆蛋白の製造(加熱処理2、加熱温度:120℃)
密閉容器に粉末の分離大豆蛋白100gを入れ、その中に、99.5vol%エタノール5gを霧吹きで噴霧後(分離大豆蛋白100質量部に対するエタノール添加量5質量部)、容器を振って混合した。分離大豆蛋白を容器から取り出し、ステンレストレー(縦28cm、横22cm)の上に広げて敷き詰めた(分離大豆蛋白の厚さ約2~5mm)。 そのステンレストレーを加熱装置(ヤマト科学(株)社製、装置名「送風定温恒温器 DN-62」)に入れ、120℃で、最終的に100分間、加熱処理を行った。分析及び評価用サンプルとして、加熱開始から10分ごとに、分離大豆蛋白約9gを取り出した。加熱処理は100分まで行った。
【0026】
・低粘度化処理大豆蛋白の製造(加熱処理3、加熱温度:120℃)
99.5vol%エタノールの添加量を5gから10gに変えた以外は、加熱処理2と同様に、粉末の分離大豆蛋白の加熱処理を行った(分離大豆蛋白100質量部に対するエタノール添加量10質量部)。
・低粘度化処理大豆蛋白の製造(加熱処理4、加熱温度:120℃)
99.5vol%エタノールの添加量を5gから20gに変えた以外は、加熱処理2と同様に、粉末の分離大豆蛋白の加熱処理を行った(分離大豆蛋白100質量部に対するエタノール添加量20質量部)。
【0027】
・大豆蛋白含有飲料の製造
加熱処理1~4の各加熱処理時間で得られた低粘度化処理大豆蛋白と水を用いて、大豆蛋白含有飲料を製造した。
具体的には、イオン交換水92gを入れた500mlシェイカーに、低粘度化処理大豆蛋白8gを入れた後、シェイカーの蓋をして上下に10回振り混ぜ(上下の振り幅40~50cm)、大豆蛋白含有飲料を製造した。
また、比較として、エタノールを添加せず、加熱処理もしていない分離大豆蛋白(加熱処理1の加熱時間0分)、及びエタノールを添加、混合したが加熱処理はしていない分離大豆蛋白(加熱処理2~4の加熱時間0分)についても、同様の方法で大豆蛋白含有飲料を製造した。
【0028】
・大豆蛋白含有飲料の粘度
得られた大豆蛋白含有飲料の20℃での粘度を、音叉型振動式粘度計((株)エー・アンド・デイ製、装置名「SV-10」)を用いて測定した。粘度の測定は、シェイカーを振り混ぜることで大豆蛋白分散水溶液を調製してから30分以内に、20℃の恒温室で行った。
大豆蛋白分散液を均一にするために、粘度を測定する直前に、大豆蛋白含有飲料をスパチュラで撹拌して大豆蛋白を分散させた。そして、粘度の測定開始から1分後の値を測定サンプルの粘度の値(mPa・s)とした。
また、測定した大豆蛋白含有飲料の粘度について、表1に記載した基準で評価した。測定結果及び評価結果を表2、表3に示す。
【0029】
・大豆蛋白含有飲料中の大豆蛋白の分散性
シェイカーの蓋をして上下に10回振り混ぜて(上下の振り幅40~50cm)製造した直後の大豆蛋白含有飲料中の大豆蛋白の分散性を目視で確認し、表1に記載した基準で評価をした。評価結果を表2~表5に示す。
【0030】
・大豆蛋白含有飲料の官能評価
大豆蛋白含有飲料の飲食時の口あたりについて、表1に記載した基準で評価をした。評価結果を表2、表3に示す。
・大豆蛋白含有飲料の総合評価
大豆蛋白含有飲料について、粘度の値、大豆蛋白の分散性、及び官能評価の結果に基づいて、表1に記載した基準で総合評価をした。総合評価結果を表2、表3に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
表2及び表3の結果から、120℃の加熱処理では、得られる大豆蛋白飲料の粘度を20mPa・s未満に低下させるために必要な加熱時間は、エタノールを添加しなかった場合(加熱処理1)、90分かかることがわかった。
また、加熱処理の前に分離大豆蛋白にエタノールを添加、混合した場合(加熱処理2~4)は、エタノールを添加しなかった場合よりも加熱時間が短くて済むことが分かった。また、得られる大豆蛋白飲料の粘度を20mPa・s未満に低下させるために必要な加熱時間は、エタノールの添加量が多いほど短くて済むことがわかった。
そして、粘度だけでなく、大豆蛋白の分散性、及び飲食時の口当たりも考慮した総合評価については、分離大豆蛋白にエタノールを添加しなかった場合には(加熱処理1)、120℃で90分加熱することで総合評価が○になった。
また、エタノールを添加、混合した場合には、加熱時間が70分(加熱処理2)、60分(加熱処理3)、40分(加熱処理4)と、エタノールを添加しなかった場合の加熱時間(90分)よりも短い時間で総合評価が○になることがわかった。また、エタノール添加量が多いほど、総合評価が○になる加熱時間は短くなることもわかった。
このように、大豆蛋白飲料の粘度が、20mPa・s未満であった場合には、大豆蛋白の分散性、及び飲食時の口当たりも良好になるので、本発明では、得られる大豆蛋白飲料の粘度が重要な要素であることがわかった。
【0035】
・低粘度化処理大豆蛋白の製造(加熱処理5、加熱温度:100℃)
粉末の分離大豆蛋白100gをステンレストレー(縦28cm、横22cm)の上に広げて敷き詰めた(厚さ約2~5mm)。そのステンレストレーを加熱装置(ヤマト科学(株)社製、装置名「送風定温恒温器 DN-62」)に入れ、100℃で、最終的に100分間、加熱処理を行った。分析、評価用サンプルとして、加熱開始から50分ごとに、分離大豆蛋白約9gを取り出した。加熱処理は200分まで行った。
なお、エタノールの添加、混合は行わなかった。
【0036】
・低粘度化処理大豆蛋白の製造(加熱処理6、加熱温度:100℃)
密閉容器に粉末の分離大豆蛋白100gを入れ、その中に、99.5vol%エタノール5gを霧吹きで噴霧後(分離大豆蛋白100質量部に対するエタノール添加量5質量部)、容器を振って混合した。分離大豆蛋白を容器から取り出し、ステンレストレー(縦28cm、横22cm)の上に広げて敷き詰めた(分離大豆蛋白の厚さ約2~5mm)。 そのステンレストレーを加熱装置(ヤマト科学(株)社製、装置名「送風定温恒温器 DN-62」)に入れ、100℃で、最終的に100分間、加熱処理を行った。分析及び評価用サンプルとして、加熱開始から50分ごとに、分離大豆蛋白約9gを取り出した。加熱処理は200分まで行った。
【0037】
・低粘度化処理大豆蛋白の製造(加熱処理7、加熱温度:100℃)
99.5vol%エタノールの添加量を5gから10gに変えた以外は、加熱処理2と同様に、粉末の分離大豆蛋白の加熱処理を行った(分離大豆蛋白100質量部に対するエタノール添加量10質量部)。
・低粘度化処理大豆蛋白の製造(加熱処理8、加熱温度:100℃)
99.5vol%エタノールの添加量を5gから20gに変えた以外は、加熱処理2と同様に、粉末の分離大豆蛋白の加熱処理を行った(分離大豆蛋白100質量部に対するエタノール添加量20質量部)。
【0038】
・大豆蛋白含有飲料の製造
加熱処理5~8の各加熱処理時間で得られた低粘度化処理大豆蛋白と水を用いて、大豆蛋白含有飲料を製造した。
具体的には、イオン交換水92gを入れた500mlシェイカーに、低粘度化処理大豆蛋白8gを入れた後、シェイカーの蓋をして上下に10回振り混ぜ(上下の振り幅40~50cm)、大豆蛋白含有飲料を製造した。
また、比較として、エタノールを添加せず、加熱処理もしていない分離大豆蛋白(加熱処理5の加熱時間0分)、及びエタノールを添加、混合したが加熱処理はしていない分離大豆蛋白(加熱処理6~8の加熱時間0分)についても、同様の方法で大豆蛋白含有飲料を製造した。
【0039】
・大豆蛋白含有飲料の粘度
得られた大豆蛋白含有飲料の20℃での粘度を、音叉型振動式粘度計((株)エー・アンド・デイ製、装置名「SV-10」)を用いて測定した。粘度の測定は、シェイカーを振り混ぜることで大豆蛋白分散水溶液を調製してから30分以内に、20℃の恒温室で行った。
大豆蛋白分散液を均一にするために、粘度を測定する直前に、大豆蛋白含有飲料をスパチュラで撹拌して大豆蛋白を分散させた。そして、粘度の測定開始から1分後の値を測定サンプルの粘度の値(mPa・s)とした。
また、測定した大豆蛋白含有飲料の粘度について、表1に記載した基準で評価した。測定結果及び評価結果を表4、表5に示す。
【0040】
・大豆蛋白含有飲料中の大豆蛋白の分散性
シェイカーの蓋をして上下に10回振り混ぜて(上下の振り幅40~50cm)製造した直後の大豆蛋白含有飲料中の大豆蛋白の分散性を目視で確認し、表1に記載した基準で評価をした。評価結果を表4、表5に示す。
【0041】
・大豆蛋白含有飲料の官能評価
大豆蛋白含有飲料の飲食時の口あたりについて、表1に記載した基準で評価をした。評価結果を表4、表5に示す。
・大豆蛋白含有飲料の総合評価
大豆蛋白含有飲料について、粘度の値、大豆蛋白の分散性、及び官能評価の結果に基づいて、表1に記載した基準で総合評価をした。総合評価結果を表4、表5に示す。
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
表4及び表5の結果から、100℃の加熱処理では、得られる大豆蛋白飲料の粘度を20mPa・s未満に低下させるために必要な加熱時間は、エタノールを添加しなかった場合(加熱処理5)200分以上必要であると考えられ、加熱処理の前に分離大豆蛋白にエタノールを添加、混合した場合は(加熱処理6~8)、それよりも短い時間で済むことが分かった。
そして、粘度だけでなく、大豆蛋白の分散性、及び飲食時の口当たりも考慮した総合評価については、分離大豆蛋白にエタノールを添加しなかった場合には(加熱処理5)、100℃で200分加熱しても総合評価が○にはならなかったが、エタノールを添加、混合した場合、加熱時間が200分(加熱処理6、7)、150分(加熱処理8)に総合評価が○になることがわかった。
このように、大豆蛋白飲料の粘度が20mPa・s未満であった場合には、大豆蛋白の分散性、及び飲食時の口当たりも良好になるので、本発明では、得られる大豆蛋白飲料の粘度が重要な要素であることがわかった。
また、120℃での加熱処理の結果(表2、表3)、及び100℃での加熱処理の結果(表4、表5)から、どちらの温度であっても、加熱処理をする前に、分離大豆蛋白にエタノールを添加、混合することで、得られる大豆蛋白飲料の粘度を20mPa・s未満に低下させるために必要な加熱時間を短くすることができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の低粘度化処理大豆蛋白は、食品分野、特に飲料分野で利用することができる。