(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152915
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】半田付け装置
(51)【国際特許分類】
B23K 3/06 20060101AFI20231005BHJP
B23K 3/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B23K3/06 K
B23K3/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052440
(22)【出願日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2022056878
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】松本 泰英
(72)【発明者】
【氏名】村山 竜也
(72)【発明者】
【氏名】田中 厚
(72)【発明者】
【氏名】浅野 弘史
(57)【要約】
【課題】糸半田のくずによる半田付け時の不具合を抑制することができる半田付け装置を提供する。
【解決手段】半田付け装置1は、糸半田Wを挿通可能な入口側挿通孔21を有する入口側部材2と、入口側挿通孔21と連通可能であり糸半田Wを挿通可能な出口側挿通孔31を有する出口側部材3と、を備え、入口側部材2と出口側部材3とは、入口側挿通孔21と出口側挿通孔31とが連通した連通状態から、入口側挿通孔21及び出口側挿通孔31と交差する方向に相対移動して非連通状態となることにより、入口側挿通孔21及び出口側挿通孔31に挿通された糸半田Wを切断可能に設けられ、入口側挿通孔21と出口側挿通孔31とのうち少なくとも一方を吸引する吸引部を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸半田を挿通可能な入口側挿通孔を有する入口側部材と、
前記入口側挿通孔と連通可能であり糸半田を挿通可能な出口側挿通孔を有する出口側部材と、を備え、
前記入口側部材と前記出口側部材とは、前記入口側挿通孔と前記出口側挿通孔とが連通した連通状態から、前記入口側挿通孔及び前記出口側挿通孔と交差する方向に相対移動して非連通状態となることにより、該入口側挿通孔及び該出口側挿通孔に挿通された糸半田を切断可能に設けられ、
前記入口側挿通孔と前記出口側挿通孔とのうち少なくとも一方を吸引する吸引部を備えることを特徴とする半田付け装置。
【請求項2】
前記吸引部は少なくとも前記出口側挿通孔を吸引し、
前記出口側部材には、前記吸引部と前記出口側挿通孔とを連通させる出口側連通路が形成され、
前記出口側連通路は、前記連通状態において前記入口側部材によって閉塞され且つ前記非連通状態において開放される開閉部を有することを特徴とする請求項1に記載の半田付け装置。
【請求項3】
少なくとも前記出口側部材が移動することで前記連通状態と前記非連通状態とが切り換えられるとともに、前記非連通状態において前記出口側挿通孔が半田溶融部に対して鉛直方向上方に位置し、
前記非連通状態となる際の前記出口側部材の移動によって前記出口側挿通孔の内部の糸半田くずが前記半田溶融部に向かうことを阻害する阻害部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半田付け装置。
【請求項4】
前記阻害部として、前記連通状態において前記出口側挿通孔に対して鉛直方向下方に配置され、糸半田くずを回収可能な回収部を備えることを特徴とする請求項3に記載の半田付け装置。
【請求項5】
前記阻害部として、前記出口側挿通孔の鉛直方向下端部から、前記連通状態となる際に前記出口側部材が移動する側に向かって延びるとともに、糸半田くずが通過可能な間隙部が形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の半田付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント基板等の基板上に半田付けを行う際に、糸半田を適宜な長さに切断し、切断した糸半田を溶融する方法が知られている。このような半田付けのための装置として、糸半田を切り刃及び受け刃に挿通し、切り刃を移動させることで生じるせん断力によって糸半田を切断するものが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された装置では、切断された半田片が切り刃とともに排出孔上に移動し、プッシャーで押し出されることで落下し、半田ごてによって溶融されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半田付け作業において、ローラ等によって糸半田を送る際や糸半田を切断する際に、糸半田のくずが発生してしまうことがあった。特許文献1に記載された装置では、切り刃を移動させると半田片とともに糸半田のくずも移動してしまい、このくずが基板に落下すると短絡等が発生してしまう虞があった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、糸半田のくずによる半田付け時の不具合を抑制することができる半田付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る半田付け装置は、糸半田を挿通可能な入口側挿通孔を有する入口側部材と、前記入口側挿通孔と連通可能であり糸半田を挿通可能な出口側挿通孔を有する出口側部材と、を備え、前記入口側部材と前記出口側部材とは、前記入口側挿通孔と前記出口側挿通孔とが連通した連通状態から、前記入口側挿通孔及び前記出口側挿通孔と交差する方向に相対移動して非連通状態となることにより、該入口側挿通孔及び該出口側挿通孔に挿通された糸半田を切断可能に設けられ、前記入口側挿通孔と前記出口側挿通孔とのうち少なくとも一方を吸引する吸引部を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る半田付け装置では、前記吸引部は少なくとも前記出口側挿通孔を吸引し、前記出口側部材には、前記吸引部と前記出口側挿通孔とを連通させる出口側連通路が形成され、前記出口側連通路は、前記連通状態において前記入口側部材によって閉塞され且つ前記非連通状態において開放される開閉部を有する。
【0008】
本発明の一態様に係る半田付け装置では、少なくとも前記出口側部材が移動することで前記連通状態と前記非連通状態とが切り換えられるとともに、前記非連通状態において前記出口側挿通孔が半田溶融部に対して鉛直方向上方に位置し、前記非連通状態となる際の前記出口側部材の移動によって前記出口側挿通孔の内部の糸半田くずが前記半田溶融部に向かうことを阻害する阻害部が設けられている。
【0009】
本発明の一態様に係る半田付け装置では、前記阻害部として、前記連通状態において前記出口側挿通孔に対して鉛直方向下方に配置され、糸半田くずを回収可能な回収部を備える。
【0010】
本発明の一態様に係る半田付け装置では、前記阻害部として、前記出口側挿通孔の鉛直方向下端部から、前記連通状態となる際に前記出口側部材が移動する側に向かって延びるとともに、糸半田くずが通過可能な間隙部が形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る半田付け装置によれば、糸半田のくずによる半田付け時の不具合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る半田付け装置の斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る半田付け装置の連通状態における断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る半田付け装置の非連通状態における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る半田付け装置1の斜視図であり、
図2は、半田付け装置1の連通状態における断面図であり、
図3は、半田付け装置1の非連通状態における断面図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る半田付け装置1は、糸半田Wを挿通可能な入口側挿通孔21を有する入口側部材2と、入口側挿通孔21と連通可能であり糸半田Wを挿通可能な出口側挿通孔31を有する出口側部材3と、を備え、入口側部材2と出口側部材3とは、入口側挿通孔21と出口側挿通孔31とが連通した連通状態から、入口側挿通孔21及び出口側挿通孔31と交差する方向に相対移動して非連通状態となることにより、入口側挿通孔21及び出口側挿通孔31に挿通された糸半田Wを切断可能に設けられ、入口側挿通孔21と出口側挿通孔31とのうち少なくとも一方を吸引する吸引部を備える。
【0015】
半田付け装置1は、入口側部材2及び出口側部材3を備えた切断ユニット10と、切断ユニット10の上流側に設けられた送り機構20と、切断ユニット10の下流側に設けられた半田溶融部30と、を備える。ここで、「上流側」及び「下流側」は、糸半田Wの移動する方向を基準とし、本実施の形態では、上流側が鉛直方向上側に対応し、下流側が鉛直方向下側に対応する。また、鉛直方向をZ方向とし、水平面内において互いに直交する2方向をX方向及びY方向とし、鉛直方向における上下を単に上側又は下側と呼ぶことがある。
【0016】
半田付け装置1は、糸半田Wを切断して糸半田片W1を作製し、この糸半田片W1を溶融させることにより、例えばプリント基板等の基板における電極上に半田付けする装置である。
【0017】
送り機構20は、糸半田Wを挟み込む一対のローラを備え、これらのローラの表面には、糸半田との間の摩擦力を確保するためにローレット部が形成されている。一対のローラのうち少なくとも一方が回転することにより、糸半田Wが下側に送られる。このとき、送り機構20は、糸半田Wの送り量を調節及び管理可能となっている。
【0018】
切断ユニット10は、入口側部材2と、出口側部材3と、フレーム4と、吸引部と、を備え、送り機構20から送られた糸半田Wを切断し、切断された糸半田片W1を半田溶融部30に送り込むように構成されている。
【0019】
入口側部材2は、例えば金属部材によってブロック状に形成されたものであって、入口側挿通孔21と、入口側連通路22と、が形成されている。入口側部材2は、フレーム4に対して移動不能に固定されている。入口側部材2は、特に入口側挿通孔21の周囲且つ下端部(即ち糸半田Wを切断する部分)が、他の部分と異なる金属によって形成されることで切断容易となっていることが好ましいが、全体が一種類の金属によって形成されていてもよい。また、入口側挿通孔21の下端部に、刃を付与した構造としてもよい。
【0020】
入口側挿通孔21は、Z方向に沿って延びる貫通孔であって、送り機構20の下方に配置されている。即ち、送り機構20によって下側に向かって送られた糸半田Wが、入口側挿通孔21内に導入されるようになっている。
【0021】
入口側連通路22は、入口側挿通孔21と吸引部とを連通させるものであって、Y方向に沿って延びる水平部221と、Z方向に沿って延びる鉛直部222と、を有する。水平部221は、入口側挿通孔21の下端部に連続し、Y方向における一方側(
図2,3における左側)に向かって延びる。水平部221は、下面側が開放されており、この開放された部分が出口側部材3によって閉塞されることで、筒状の通路が形成されるようになっている。鉛直部222は、水平部221のY方向一方側の端部に連続し、上側に向かって延び、この上端部が吸引部に接続される。
【0022】
出口側部材3は、例えば金属部材によってブロック状に形成されたものであって、出口側挿通孔31と、出口側連通路32と、間隙部33と、が形成されている。出口側部材3は、例えば直動モータ等のアクチュエータ5によって、Y方向に沿って往復移動可能に設けられている。出口側部材3は、特に出口側挿通孔31の周囲且つ上端部(即ち糸半田Wを切断する部分)が、他の部分と異なる金属によって形成されることで切断容易となっていることが好ましいが、全体が一種類の金属によって形成されていてもよい。また、出口側挿通孔31の上端部に、刃を付与した構造としてもよい。
【0023】
出口側挿通孔31は、Z方向に沿って延びる貫通孔であって、後述するように入口側挿通孔21と連通可能となっている。即ち、入口側挿通孔21を通過してさらに下側に向かって送られた糸半田Wが、出口側挿通孔31内に導入されるようになっている。
【0024】
出口側連通路32は、出口側挿通孔31と吸引部とを連通させるものであって、Y方向に沿って延びる水平部321と、Z方向に沿って延びる鉛直部322と、を有する。水平部321は、出口側挿通孔31の上端部に連続し、Y方向における他方側(
図2,3における右側)に向かって延びる。水平部321は、上面側が開放されており、この開放された部分が入口側部材2によって閉塞されることで、筒状の通路が形成されるようになっている。鉛直部322は、水平部321のY方向略中央部に連続し、Z方向下側に向かって延び、この下端部が吸引部に接続されている。
【0025】
間隙部33は、出口側挿通孔31の下端部からY方向の一方側に向かって延び、フレーム4の上面に対して隙間を形成する部分である。即ち、出口側部材3の下面は、間隙部33以外の部分においてフレーム4に対して摺接し、間隙部33において離隔するようになっている。
【0026】
吸引部は、例えばポンプ等の減圧部であって、1つの吸引部が入口側挿通孔21及び出口側挿通孔31の両方に接続されて吸引することが好ましいが、入口側挿通孔21に接続されて吸引する吸引部と、出口側挿通孔31に接続されて吸引する吸引部と、が独立に設けられていてもよい。
【0027】
フレーム4は、入口側部材2、出口側部材3、アクチュエータ5及びその他の部品を支持するものである。フレーム4には、入口側挿通孔21の下方に位置する回収孔41と、半田溶融部30の上方に位置する通過孔42と、が形成されている。即ち、切断された糸半田片W1が、出口側挿通孔31から通過孔42を通過して下方に向かい、半田溶融部30に導入されるようになっている。
【0028】
ここで、切断ユニット10の動作および各部の位置関係について説明する。
図2に示すように出口側部材3がY方向一方側に位置すると、入口側挿通孔21と出口側挿通孔31とが連通した連通状態となる。
図3に示すように出口側部材3がY方向他方側に位置すると、出口側挿通孔31と通過孔42とが連通し、入口側挿通孔21と出口側挿通孔31とがずれることで連通しない非連通状態となる。このように、出口側部材3のみが移動することで、連通状態と非連通状態とが切り換えられるようになっている。連通状態と非連通状態との間の状態を遷移状態とする。また、Y方向の一方側が、非連通状態から連通状態となる際に出口側部材3が移動する側となり、Y方向の他方側が、連通状態から非連通状態となる際に出口側部材3が移動する側となる。
【0029】
連通状態において、送り機構20から下側に送られた糸半田Wが入口側挿通孔21及び出口側挿通孔31に挿通される。このとき、回収孔41も、入口側挿通孔21及び出口側挿通孔31に対して下方に配置され、これらと連通する。従って、送り機構20のローレット部が糸半田に対して接触することで糸半田くずが生じた場合、この糸半田くずは、落下することにより、入口側挿通孔21及び出口側挿通孔31を通過し、さらに回収孔41を通過して下方に向かう。また、吸引部によって入口側挿通孔21及び出口側挿通孔31が吸引されていることで、入口側挿通孔21及び出口側挿通孔31の内部に位置する糸半田くずが除去されるようになっている。
【0030】
回収孔41の下方には例えば皿部材が設けられ、糸半田くずが堆積するようになっている。このような回収孔41及び皿部材が、糸半田くずを回収可能な回収部として機能するとともに、Y方向他方側への出口側部材3の移動によって出口側挿通孔31の内部の糸半田くずが半田溶融部30に向かうことを阻害する阻害部としても機能する。半田付け装置1は自動ステージ等に搭載され3次元に駆動されるが、半田くずが各部材間等の隙間(例えば出口側部材3とフレーム4とがZ方向に対向する隙間)に入りやすいので、半田くずを吸引してもよいし、溝加工とすることで半田くずを溜めて別途回収および吸引しても良い。
【0031】
連通状態から非連通状態となるように出口側部材3が移動する遷移状態において、入口側部材2の下端部と出口側部材3の上端部とによって糸半田Wがせん断され、糸半田片W1が作製される。この糸半田片W1は、出口側挿通孔31に収容されて出口側部材3とともに移動する。非連通状態になると、出口側挿通孔31と通過孔42とが連通し、糸半田片は、重力によって落下することで、通過孔42を通過して半田溶融部30に向かう。このとき、通過孔42の上端部には、下方に向かうにしたがって内径が小さくなるテーパ部が形成されており、糸半田片W1が案内されるようになっている。
【0032】
入口側連通路22は、連通状態において、水平部221及び鉛直部222が出口側部材3によって下側から閉塞される。即ち、連通状態において吸引部によって入口側挿通孔21が減圧されやすくなっている。一方、非連通状態においては、水平部221と鉛直部222の一部とが出口側部材3によって閉塞されず開放される。即ち、連通状態において吸引部によって入口側挿通孔21が減圧されにくくなっている。このように、入口側連通路22のうち連通状態において閉塞されるとともに非連通状態において開放される部分が開閉部223となる。
【0033】
出口側連通路32は、連通状態において、水平部321が入口側部材2によって上側から閉塞される。即ち、連通状態において吸引部によって出口側挿通孔31が減圧されやすくなっている。一方、非連通状態においては、水平部321と鉛直部322とが入口側部材2によって閉塞されず開放される。即ち、連通状態において吸引部によって出口側挿通孔31が減圧されにくくなっている。このように、出口側連通路32のうち連通状態において閉塞されるとともに非連通状態において開放される部分が開閉部323となる。このとき、水平部321が鉛直部322よりもY方向他方側まで延びていることで、出口側連通路32が開放されやすくなっている。
【0034】
上記のように送り機構20のローレット部が糸半田に接触した際に生じた糸半田くずは、回収孔41を通過せずに出口側挿通孔31の下部に堆積することがある。また、糸半田が切断された際に糸半田くずが生じると、この糸半田くずは回収孔41を通過せずに、同様に出口側挿通孔31の下部に堆積することがある。
【0035】
出口側部材3に間隙部33が形成されていることで、出口側部材3がY方向他方側に移動する際に、出口側挿通孔31の内面と、堆積した糸半田くずと、が接触しにくく、出口側挿通孔31の内面のうちY方向他方側を向いた部分によって糸半田くずが押されて移動することが抑制される。これにより、堆積した糸半田くずが通過孔42に向かいにくくなっている。このように、間隙部33は、Y方向他方側への出口側部材3の移動によって出口側挿通孔31の内部の糸半田くずが半田溶融部30に向かうことを阻害する阻害部として機能する。
【0036】
以上のような本発明の実施形態に係る半田付け装置1によれば、吸引部が入口側挿通孔21及び出口側挿通孔31を吸引することで、糸半田くずが半田溶融部30に向かいにくくし、糸半田のくずによる不具合を抑制することができる。特に、出口側挿通孔31を吸引することにより、切断時に生じた糸半田くずを除去しやすくすることができる。
【0037】
また、出口側挿通孔31が、連通状態において入口側部材2によって閉塞され且つ非連通状態において開放される開閉部323を有することで、非連通状態において出口側挿通孔31が減圧されにくく、出口側挿通孔31に収容された糸半田片を通過孔42に向かって落下させやすくすることができる。
【0038】
また、出口側部材3が、阻害部としての回収部及び間隙部33を有することで、糸半田くずが半田溶融部30に向かうことを抑制し、糸半田のくずによる不具合を抑制することができる。
【0039】
また、出口側部材3が移動して連通状態と非連通状態とが切り換えられることで、入口側挿通孔21と出口側挿通孔31と通過孔42との全てが同時に連通することが抑制され、送り機構20において生じた糸半田くずが直接的に半田溶融部30に向かうことを抑制することができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施形態に係る半田付け装置に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0041】
例えば、前記実施形態では、入口側連通路22及び出口側連通路32がそれぞれ開閉部223,323を有するものとしたが、開閉部は形成されていなくてもよい。即ち、糸半田片が充分に重い場合や、吸引力が比較的低い場合、糸半田片を下方に押し込む機構等が設けられる場合等、糸半田片が半田溶融部30に向かいやすい場合には、出口側連通路32が常に吸引されていてもよい。また、吸引部のオンオフを手動又は自動(例えば出口側部材3の位置に応じた自動切換)で切り換えることで、非連通状態において吸引を停止してもよい。
【0042】
また、以下のように、吸引部における吸引力を変化させたり、必要な状態時のみ吸引したりするようにしてもよい。例えば以下のような制御を行ってもよい。上記のような遷移状態において糸半田Wが切断されるまでは吸引力を所定の強さ(例えば最大値)とし、非連通状態において糸半田片W1が落下を開始するまでに、吸引力を低下させるか又は吸引を停止してもよい。このとき、吸引力を低下させたり吸引を停止したりするタイミングは、切断直後から非連通状態になるまでのいずれのタイミングであってもよい。ここでは、入口側連通孔と出口側連通孔とが独立の吸引部によって吸引されるようになっており、入口側連通孔および出口側連通孔に対して吸引力を低下させたり吸引を停止したりする。
【0043】
次に、糸半田片W1の落下後、非連通状態から連通状態となる際に、出口側連通孔の吸引を開始したり吸引力を上昇させたりする。次に、連通状態となったら、入口側連通路の吸引を開始したり吸引力を上昇させたりする。このとき、出口側連通路の吸引を停止したり吸引力を低下させたりしてもよい。
【0044】
また、上記の処理や前記実施形態において、回収孔41の下方の空間や間隙部など、糸半田くずが溜まりやすい部分を適宜なタイミングで吸引してもよい。このタイミングとしては、切断された糸半田片W1の移動を妨げないようなものであればよく、遷移状態や非連通状態であることが好ましい。
【0045】
また、前記実施形態では、出口側部材3が、阻害部としての回収部及び間隙部33を有するものとしたが、吸引部によって糸半田くずが充分に除去されて半田溶融部30に向かいにくい場合には、阻害部は設けられていなくてもよい。また、阻害部として、回収部及び間隙部のうち一方のみが設けられていてもよい。
【0046】
また、前記実施形態では、出口側部材3が移動することで連通状態と非連通状態とが切り換えられるものとしたが、入口側部材と出口側部材とが相対移動することで連通状態と非連通状態とが切り換えられればよく、入口側部材のみが移動してもよいし、入口側部材及び出口側部材の両方が移動してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…半田付け装置、2…入口側部材、21…入口側挿通孔、22…入口側連通路、3…出口側部材、31…出口側挿通孔、32…出口側連通路、323…開閉部、33…間隙部(阻害部)、41…回収孔(回収部、阻害部)、30…半田溶融部、W…糸半田、W1…糸半田片