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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152916
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】高周波伝送装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/11 20060101AFI20231005BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20231005BHJP
   H01P 3/08 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H05K1/11 H
H05K3/46 N
H05K3/46 Z
H01P3/08 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052443
(22)【出願日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2022059022
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】山口 文枝
(72)【発明者】
【氏名】中島 滉
(72)【発明者】
【氏名】鳥光 悟
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶
【テーマコード(参考)】
5E316
5E317
5J014
【Fターム(参考)】
5E316AA32
5E316AA35
5E316AA42
5E316BB02
5E316BB04
5E316BB06
5E316EE01
5E316FF01
5E316GG15
5E316GG28
5E316HH06
5E317AA11
5E317AA24
5E317CD32
5E317GG11
5J014CA08
5J014CA23
(57)【要約】
【課題】伝送損失の高周波特性を向上させることができる高周波伝送装置を提供する。
【解決手段】高周波伝送装置1は、複数の基板層21,22と、蛇行形状を有して基板層22の面22Aに設けられた導線部3と、基板層21,22のうち導線部3が設けられた面22Aとは異なる面21A,22Bに設けられたグランド部41,42と、グランド部41,42に電気的に接続される接続部5が設けられた複数の層間接続部6と、を備える。複数の層間接続部6は、基板層21,22のうち少なくとも導線部3が設けられた面22Aを貫通し、グランド部41,42が設けられた面21A,22Bにまで至るとともに、導線部3の蛇行形状のうち直線部31に沿って並んだ直線配置部6Aおよび曲線部32に沿って並んだ曲線配置部6Bを形成している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の基板層と、
蛇行形状を有して前記基板層の一面に設けられた導線部と、
前記基板層のうち前記導線部が設けられた面とは異なる面に設けられたグランド部と、
前記グランド部に電気的に接続される接続部が設けられる複数の層間接続部と、を備え、
前記複数の層間接続部は、前記基板層のうち少なくとも前記導線部が設けられた面を貫通し、前記グランド部が設けられた面にまで至るとともに、前記導線部の蛇行形状のうち直線部に沿って並んだ直線配置部および曲線部に沿って並んだ曲線配置部を形成することを特徴とする高周波伝送装置。
【請求項2】
前記直線配置部において隣り合う前記層間接続部の中心間距離よりも、前記曲線配置部において隣り合う前記層間接続部の中心間距離の方が小さいことを特徴とする請求項1に記載の高周波伝送装置。
【請求項3】
互いに隣り合う前記直線部同士の間隔が2mm以下であり、
前記直線配置部において隣り合う前記層間接続部同士の中心間距離が2.4mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波伝送装置。
【請求項4】
前記直線配置部において隣り合う前記層間接続部同士の中心間距離が0.7~1.2mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波伝送装置。
【請求項5】
前記層間接続部は、前記直線部又は前記曲線部に沿って延びる長孔状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波伝送装置。
【請求項6】
前記層間接続部の延在方向寸法は、幅方向寸法の5倍以上であることを特徴とする請求項5に記載の高周波伝送装置。
【請求項7】
前記層間接続部は、円形に形成され、その直径が、互いに隣り合う前記直線部同士の間隔の2/3以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、信号を伝送する装置として、蛇行形状を有する導線(ミアンダ配線)が設けられたものが知られている。従来、このような装置として、基板の表面に蛇行する導線路を設けるとともに裏面にアースパターンを形成し、隣接する導線路間をシールドするシールドパターンを設け、シールドパターンとアースパターンとをスルーホールによって電気的に接続したものが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された遅延線では、シールドパターンを設けることにより、隣接する導線路間に静電容量結合が生じることを防ぎ、遅延特性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6-26307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の遅延線では、シールドパターンを設ける必要があり、構成が複雑化しやすかった。導体が設けられたスルーホール(層間接続部)はシールド作用を有しており、シールドパターンを省略した場合でも一定のシールド効果は得られるものの、良好な特性を得ることは困難であった。このとき、特に高周波域における伝送損失の乱れが生じやすい。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、伝送損失の高周波特性を向上させることができる高周波伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る高周波伝送装置は、1又は複数の基板層と、蛇行形状を有して前記基板層の一面に設けられた導線部と、前記基板層のうち前記導線部が設けられた面とは異なる面に設けられたグランド部と、前記グランド部に電気的に接続される接続部が設けられる複数の層間接続部と、を備え、前記複数の層間接続部は、前記基板層のうち少なくとも前記導線部が設けられた面を貫通し、前記グランド部が設けられた面にまで至るとともに、前記導線部の蛇行形状のうち直線部に沿って並んだ直線配置部および曲線部に沿って並んだ曲線配置部を形成することを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る高周波伝送装置では、前記直線配置部において隣り合う前記層間接続部の中心間距離よりも、前記曲線配置部において隣り合う前記層間接続部の中心間距離の方が小さい。
【0008】
本発明の一態様に係る高周波伝送装置では、互いに隣り合う前記直線部同士の間隔が2mm以下であり、前記直線配置部において隣り合う前記層間接続部同士の中心間距離が2.4mm以下である。
【0009】
本発明の一態様に係る高周波伝送装置では、前記直線配置部において隣り合う前記層間接続部同士の中心間距離が0.7~1.2mmである。
【0010】
本発明の一態様に係る高周波伝送装置では、前記層間接続部は、前記直線部又は前記曲線部に沿って延びる長孔状に形成されている。
【0011】
本発明の一態様に係る高周波伝送装置では、前記層間接続部の延在方向寸法は、幅方向寸法の5倍以上である。
【0012】
本発明の一態様に係る高周波伝送装置では、前記層間接続部は、円形に形成され、その直径が、互いに隣り合う前記直線部同士の間隔の2/3以上である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る高周波伝送装置によれば、伝送損失の高周波特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る高周波伝送装置の平面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る高周波伝送装置の断面図である。
図3】比較例1の高周波伝送装置の平面図である。
図4】本発明の第1の変形例の高周波伝送装置の平面図である。
図5】本発明の第2の変形例の高周波伝送装置の平面図である。
図6】本発明の第3の変形例の高周波伝送装置の平面図である。
図7】本発明の第4の変形例の高周波伝送装置の平面図である。
図8】実施例1及び比較例1の高周波伝送装置の伝送損失の周波数特性のグラフである。
図9】条件1~6の高周波伝送装置の各部の寸法を示す平面図である。
図10】条件1~4の高周波伝送装置の伝送損失の周波数特性のグラフである。
図11】条件5,6の高周波伝送装置の伝送損失の周波数特性のグラフである。
図12】条件7の高周波伝送装置の伝送損失の周波数特性のグラフである。
図13】条件8の高周波伝送装置の伝送損失の周波数特性のグラフである。
図14】条件9の高周波伝送装置の伝送損失の周波数特性のグラフである。
図15】条件10の高周波伝送装置の伝送損失の周波数特性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る高周波伝送装置1の平面図であり、図2は、高周波伝送装置1の断面図である。
【0016】
図1,2に示すように、本発明の実施の形態に係る高周波伝送装置1は、複数の基板層21,22と、蛇行形状を有して基板層22の面22Aに設けられた導線部3と、基板層21,22のうち導線部3が設けられた面22Aとは異なる面21A,22Bに設けられたグランド部41,42と、グランド部41,42に電気的に接続される接続部5が設けられた複数の層間接続部6と、を備える。複数の層間接続部6は、基板層21,22のうち少なくとも導線部3が設けられた面22Aを貫通し、グランド部41,42が設けられた面21A,22Bにまで至るとともに、導線部3の蛇行形状のうち直線部31に沿って並んだ直線配置部6Aおよび曲線部32に沿って並んだ曲線配置部6Bを形成している。
【0017】
本実施の形態では、高周波伝送装置1が2枚の基板層21,22を備える。基板層21,22は、絶縁材料によって、所定の平面に沿って延びる平板状に形成されている。以下では、基板層21,22が沿って延びる平面をXY平面とし、XY平面において互いに直交する2方向をX方向及びY方向とし、基板層21,22の板厚方向をZ方向とする。Z方向において基板層21,22が積層されており、Z方向における基板層21側を第1面側とし、基板層22側を第2面側とする。
【0018】
導線部3は、基板層22における第1面側の面22Aに設けられており、基板層21と基板層22との間に配置されている。即ち、導線部3は、基板層21における第2面側の面21Bに設けられていると捉えることも可能である。
【0019】
導線部3は、蛇行形状を有しており、この蛇行形状は、X方向に沿って延びる複数の直線部31と、Y方向において隣り合う直線部31同士を接続する曲線部32と、を有する。曲線部32は、半円状に形成され、直線部31のX方向端部同士を接続する。即ち、導線部3は、直線部31においてX方向の一方側から他方側に向かった後、半円状の曲線部32によって折り返されることでX方向の一方側に向かい、隣り合う直線部31においてX方向の他方側から一方側に向かい、半円状の曲線部32によって折り返されることでX方向の他方側に向かうことを繰り返す。このように、導線部3はX方向において往復しつつY方向の一方側に向かう。
【0020】
グランド部41は、基板層21における第1面側の面21Aに設けられ、グランド部42は、基板層22における第2面側の面22Bに設けられている。即ち、グランド部41,42は、導線部3が設けられた面22Aとは異なる面に設けられている。グランド部41,42は、例えば面21A,22Bの全体に亘るように板状に設けられているが、充分な体積を有するものであればよく、その形状は特に限定されない。また、本実施の形態では、グランド部41,42と接続部5とが一体に形成されているが、これらは別体に形成されるとともに接触する構成であってもよい。尚、複数の接続部5のうち一部が、グランド部41,42とは別体に形成されるとともに電気的に接続されていなくてもよい。
【0021】
複数の層間接続部6は、Z方向に沿って延びることで2つの基板層21,22を貫通する貫通孔と、この貫通孔に設けられた接続部5と、を備えたスルーホールであって、XY平面において点在するように設けられている。層間接続部6の貫通孔は、円筒状に形成されており、XY平面に沿った断面においてはその内周面が円形となっている。即ち、層間接続部6は断面円形となっている。複数の層間接続部6は、2つの基板層21,22を貫通することから、導線部3が設けられた面22Aを貫通し、グランド部41,42が設けられた面21A,22Bに至る。複数の層間接続部6は、曲線部32の周囲を除き、X方向及びY方向に沿って並ぶことで列を形成するように配置されている。
【0022】
接続部5は、金属等の導体によって構成され、各々の層間接続部6の貫通孔の内周面に設けられ、層間接続部6のZ方向全体に亘って延びる。接続部5は、面21A,22Bにおいて、グランド部41,42に対し、接触するか又は他の導体を介することにより電気的に接続される。一方、面21B,22Aにおいては、接続部5は導線部3からは離隔しており、電気的に接続されていない。
【0023】
ここで、複数の層間接続部6の配置の具体例について説明する。Y方向に隣り合う2つの直線部31の間において、直線部31に沿って(即ちX方向に沿って)複数の層間接続部6が並ぶことで、2列の直線配置部6Aを形成している。また、曲線部32の内周側及び外周側のそれぞれにおいて、複数の層間接続部6が曲線部32に沿って並ぶことで、半円に沿った曲線配置部6Bを形成している。また、内周側の曲線配置部6Bは、Y方向に隣り合う直線配置部6AのX方向端部同士を接続するように配置され、外周側の曲線配置部6Bは、2つの直線部31をY方向から挟む直線配置部6AのX方向端部同士を接続するように配置されている。
【0024】
直線配置部6Aにおいて、複数の層間接続部6は、等しいピッチ(中心間距離)で並んでいる。直線配置部6AにおいてX方向に隣り合う層間接続部6の中心間距離よりも、曲線配置部6Bにおいて隣り合う層間接続部6の中心間距離の方が小さくなっている。
【0025】
本実施の形態では、Y方向において互いに隣り合う直線部31同士の間隔が2mm以下であり、直線配置部6AにおいてX方向に隣り合う層間接続部6同士の中心間距離が2.4mm以下であり、0.7~1.2mmとなっている。また、本実施の形態の高周波伝送装置は、例えば30~40GHz以下の高周波数帯の伝送用に用いられる。基板層21,22の比誘電率は、例えば3.3~3.4となっている。
【0026】
以上のような本発明の実施の形態に係る高周波伝送装置1によれば、複数の層間接続部6によって、導線部3の蛇行形状のうち直線部31に沿って並んだ直線配置部6Aと、曲線部32に沿って並んだ曲線配置部6Bと、が形成されていることで、層間接続部が単に直線状に配置されている構成と比較して、曲線部32の近傍においてシールド効果を向上させることができる。従って、高周波域における伝送損失の乱れを抑制し、伝送損失の高周波特性を向上させることができる。
【0027】
また、Y方向において互いに隣り合う直線部31同士の間隔が2mm以下であり、直線配置部6Aにおいて隣り合う層間接続部6同士の中心間距離が2.4mm以下であることで、高周波伝送装置1を小型化しつつ、伝送損失の高周波特性を向上させることができる。即ち、直線部31同士の間隔を小さくすれば小型化できるものの、直線部31同士の静電容量結合が生じやすくなるのに対し、層間接続部6同士の中心間距離を小さくすることで、シールド効果を向上させて伝送損失の高周波特性を向上させることができる。
【0028】
また、直線配置部6Aにおいて隣り合う層間接続部6の中心間距離よりも、曲線配置部6Bにおいて隣り合う層間接続部6の中心間距離の方が小さいことで、曲線配置部6Bにおけるシールド効果を向上させて伝送損失の高周波特性を向上させることができる。
【0029】
また、直線配置部6Aにおいて隣り合う層間接続部6同士の中心間距離が0.7~1.2mmであることで、伝送損失の高周波特性を向上させることができる。
【0030】
また、直線配置部6AにおいてX方向に隣り合う層間接続部6の中心間距離よりも、曲線配置部6Bにおいて隣り合う層間接続部6の中心間距離の方が小さいことで、曲線部32の近傍においてシールド効果を向上させやすく、伝送損失の高周波特性を向上させることができる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に係る高周波伝送装置に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0032】
例えば、前記実施の形態では、Y方向において互いに隣り合う直線部31同士の間隔が2mm以下であるものとしたが、直線部同士の間隔は、対象とする周波数帯や基板層の比誘電率、電線の種類、直線部の長さ等に応じて適宜に設定されればよく、2mmよりも大きくてもよい。
【0033】
また、前記実施の形態では、直線配置部6AにおいてX方向に隣り合う層間接続部6同士の中心間距離が2.4mm以下であり、0.7~1.2mmであるものとしたが、直線配置部において隣り合う層間接続部同士の中心間距離は、対象とする周波数帯や基板層の比誘電率、電線の種類、直線部の長さ等に応じて適宜に設定されればよく、2.4mmよりも大きくてもよい。
【0034】
また、前記実施の形態では、Y方向に隣り合う2つの直線部31同士の間に2列の直線配置部6Aが形成されているものとしたが、3列以上の直線配置部6Aが形成されていてもよいし、1列の直線配置部6Aが形成されていてもよく、直線部同士の間隔や求められる特性等に応じて適宜な数の直線配置部が形成されればよい。
【0035】
また、Y方向に隣り合う2つの直線部同士の間に1列の直線配置部が形成される場合、層間接続部の直径は、Y方向において互いに隣り合う直線部同士の間隔に対し、例えば1/3であることが好ましく、2/3以上且つ1未満であることがより好ましい。図4には、層間接続部6の直径を直線部31同士の間隔の1/3とした様子を示し、図5には、層間接続部6の直径を直線部31同士の間隔の2/3とした様子を示す。
【0036】
また、前記実施の形態では、層間接続部6が断面円形であるものとしたが、図6,7に示すように、平面視形状および断面形状が長孔状の層間接続部7を複数形成してもよい。直線配置部7Aを形成する層間接続部7は、直線部31に沿って延びており、即ちX方向を延在方向とし、Y方向を幅方向とするオーバル状(直線と曲線とが組み合わされた形状)となっている。曲線配置部7Bを形成する層間接続部7は、曲線部32に沿って延びており、即ち曲線部32が沿う円弧の周方向を延在方向とし、この円弧の径方向を幅方向とする形状となっている。曲線配置部7Bを形成する層間接続部7は、直線配置部7Aを形成する層間接続部7が屈曲された形状となっている。
【0037】
直線配置部7Aを形成する層間接続部7及び曲線配置部7Bを形成する層間接続部7はいずれも、延在方向寸法が幅方向寸法の5倍(図6参照)以上であることが好ましく、9倍(図7参照)以上であることが好ましい。尚、円状の層間接続部と長孔状の層間接続部とが混在していてもよく、直線配置部と曲線配置部とのうち一方が円状の層間接続部によって形成され、他方側が長孔状の層間接続部によって形成されてもよい。
【0038】
また、前記実施の形態では、高周波伝送装置1が2つの基板層21,22を備えるものとしたが、基板層の数は、1つであってもよいし3つ以上であってもよい。基板層が1つの場合、一面側に導線部が設けられ、他面側にグランド部が設けられればよい。
【0039】
また、前記実施の形態では、層間接続部6が2枚の基板層21,22の両方を貫通するスルーホールであるものとしたが、層間接続部の貫通の態様はこれに限定されない。層間接続部は、電子部品の端子を挿入して半田付けするための電子部品用スルーホールであってもよいし、基板パターンの層間の導通を目的としたビアホールであってもよい。層間接続部がビアホールである場合、基板の全層を貫通するビアホールであってもよいし、基板の一部を貫通するインタースティシャルビアであってもよい。層間接続部がインタースティシャルビアである場合、基板の表面と内層とを貫通するブラインドビアであってもよいし、基板の内層同士を貫通するベリットビアであってもよい。
【0040】
層間接続部は、上記に例示したいずれの形態の場合であっても、導線部が設けられた面を貫通してグランド部が設けられた面に至ればよい。即ち、層間接続部が設けられる目的や、層間接続部が貫通する基板の数、高周波伝送装置全体の両面において層間接続部が露出しているか否かについては特に限定されない。
【0041】
また、前記実施の形態では、直線配置部6AにおいてX方向に隣り合う層間接続部6の中心間距離よりも、曲線配置部6Bにおいて隣り合う層間接続部6の中心間距離の方が小さいものとしたが、このような配置に限定されない。即ち、直線配置部において隣り合う層間接続部の中心間距離よりも曲線配置部において隣り合う層間接続部の中心間距離の方が大きくてもよいし、これらの中心間距離が等しくてもよい。直線配置部及び曲線配置部における具体的な層間接続部の配置は、各部の寸法や形状、求められる特性等に応じて適宜に設定されればよい。
【0042】
[実施例]
(曲線配置部の有無について)
実施例1の高周波伝送装置1は、図1に示すように前記実施の形態と同様のものであって、Y方向に隣り合う2つの直線部31同士の間に2列の直線配置部6Aが形成され、さらに曲線配置部6Bが形成されている。一方、図3に示す比較例1の高周波伝送装置100は、曲線配置部6Bが形成されていない点で実施例1の高周波伝送装置1とは相違しており、その他は同様の構成となっている。
【0043】
図8に、実施例1及び比較例1の高周波伝送装置における伝送損失の周波数特性を示す。これらの周波数特性は、シミュレーション結果である。比較例1では35GHz以上の高周波数帯において波形の乱れ(リップル)が観測されたのに対し、実施例1ではこのような波形の乱れは観測されず、伝送損失の高周波特性の向上が確認された。
【0044】
(層間接続部の中心間距離について)
直線配置部における層間接続部同士の中心間距離のみを変更し、他の条件を固定してシミュレーションを行った。共通条件としては、Y方向に隣り合う直線部31同士の間隔Eを1.65mmとし、Y方向に隣り合う直線部31同士の間の直線配置部を1列とし、高周波伝送装置全体におけるミアンダ回数(直線部の数に等しい)を12回とし、直線部31をY方向から挟む層間接続部6の中心間距離Dを1.79mmとし、導線部3の幅Wを0.14mmとした。直線配置部において隣り合う層間接続部6同士の中心間距離Cを、0.7mm(条件1)、1.2mm(条件2)、2.4mm(条件3)、4.8mm(条件4)とした。各寸法C,D,E,Wは図9に示す通りである。
【0045】
図10に、条件1~4における伝送損失の周波数特性を示す。中心間距離Cが2.4mm以上である条件3,4では、35GHz以上の高周波数帯において波形の乱れ(リップル)が観測されたのに対し、中心間距離Cが1.2mm以下である条件1,2では、このような波形の乱れは観測されず、伝送損失の高周波特性の向上が確認された。
【0046】
(直線部の間隔について)
導線部のうちY方向に隣り合う直線部の間隔Eのみを変更し、他の条件を固定してシミュレーションを行った。共通条件としては、Y方向に隣り合う直線部同士の間の直線配置部を1列とし、高周波伝送装置全体におけるミアンダ回数を6回とし、層間接続部6の中心間距離Cを2.4mmとし、導線部3の幅Wを0.14mmとした。直線部31の間隔Eを、1.65mm(条件5)、3.44mm(条件6)とした。層間接続部6の中心間距離Dは、条件5では1.79mmとなり、条件6では、3.58mmとなる。
【0047】
図11に、条件5,6における伝送損失の周波数特性を示す。直線部31の間隔Eが比較的大きい条件6では波形の乱れが大きく、直線部31の間隔Eが比較的小さい条件5では波形の乱れが小さくなった。
【0048】
(層間接続部の直径について)
導線部のうちY方向に隣り合う直線部の間隔Eと、層間接続部6の直径と、の関係のみを変更し、他の条件を固定してシミュレーションを行った。共通条件としては、Y方向に隣り合う直線部同士の間の直線配置部を1列とし、高周波伝送装置全体におけるミアンダ回数を1回とし、層間接続部6の中心間距離Cを0.6mmとし、導線部3の幅Wを0.3mmとした。層間接続部6の直径を間隔Eの1/3(条件7、図4に対応)、2/3(条件8、図5に対応)とした。
【0049】
図12に、条件7における伝送損失の周波数特性を示し、図13に、条件8における伝送損失の周波数特性を示す。層間接続部6の直径が比較的大きい条件8では、条件7よりも波形の乱れが小さくなった。
【0050】
(層間接続部の形状について)
層間接続部7の形状のみを変更し、他の条件を固定してシミュレーションを行った。共通条件としては、Y方向に隣り合う直線部同士の間の直線配置部を1列とし、高周波伝送装置全体におけるミアンダ回数を1回とし、層間接続部7の中心間距離Cを0.6mmとし、導線部3の幅Wを0.3mmとし、層間接続部7の幅方向寸法を間隔Eの1/3とした。層間接続部7の延在方向寸法を幅方向寸法の5倍(条件9、図6に対応)、9倍(条件10、図7に対応)とした。
【0051】
図14に、条件9における伝送損失の周波数特性を示し、図15に、条件10における伝送損失の周波数特性を示す。層間接続部7が長孔状の条件9,10のいずれにおいても、層間接続部6が円状の条件7よりも波形の乱れが小さくなった。また、層間接続部7の延在方向寸法が比較的大きい条件10では、条件9よりも波形の乱れがさらに小さくなった。
【符号の説明】
【0052】
1…高周波伝送装置、21,22…基板層、21A,21B,22A,22B…面、3…導線部、31…直線部、32…曲線部、41,42…グランド部、5…接続部、6,7…層間接続部、6A,7A…直線配置部、6B,7B…曲線配置部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15