(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153070
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】繊維状チーズ
(51)【国際特許分類】
A23C 19/068 20060101AFI20231005BHJP
A23C 19/093 20060101ALI20231005BHJP
A23C 19/084 20060101ALI20231005BHJP
A23C 19/09 20060101ALI20231005BHJP
A23L 3/00 20060101ALI20231005BHJP
A23L 3/3409 20060101ALI20231005BHJP
A23L 3/3418 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A23C19/068
A23C19/093
A23C19/084
A23C19/09
A23L3/00 101Z
A23L3/3409
A23L3/3418
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056946
(22)【出願日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2022057982
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】山田 未央
(72)【発明者】
【氏名】崎山 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】川端 史郎
【テーマコード(参考)】
4B001
4B021
【Fターム(参考)】
4B001AC01
4B001AC02
4B001AC03
4B001AC05
4B001AC06
4B001AC15
4B001AC20
4B001AC22
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4B001AC99
4B001BC03
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4B001BC99
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4B021LA02
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4B021MP06
4B021MP10
4B021MQ02
4B021MQ03
4B021MQ05
(57)【要約】
【課題】固形物を含有する繊維状チーズであって、大きめの固形物を含有したとしても引き裂いたときに固形物が落下することなく、また引裂性や糸ひき性も損なわれることのない新たな繊維状チーズを提供すること。
【解決手段】繊維方向に引き裂き性を有する繊維状チーズであって、増粘組成物を含む固形物を含有し、前記増粘組成物を前記繊維状チーズ全体の0.3質量%以上30質量%未満の範囲で含有する繊維状チーズとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維方向に引き裂き性を有する繊維状チーズであって、固形物と増粘組成物を含有し、前記増粘組成物を前記繊維状チーズ全体の0.3質量%以上30質量%未満の範囲で含有する、繊維状チーズ。
【請求項2】
前記増粘組成物が、プロセスチーズ類、ゼラチン、糖類及び増粘安定剤からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の繊維状チーズ。
【請求項3】
前記増粘組成物が、前記固形物の外表面の少なくとも一部を被覆している、請求項1または2に記載の繊維状チーズ。
【請求項4】
前記増粘組成物の含量が、繊維状チーズ全体の0.35質量%以上25質量%以下の範囲内である、請求項1または2に記載の繊維状チーズ。
【請求項5】
前記固形物は、レーザー回析式粒度分布測定により測定される体積基準の累積粒度分布における50%粒径(D50)が、0.2mm以上5mm以下の範囲内である、請求項1または2に記載の繊維状チーズ。
【請求項6】
前記固形物の形状が、多面体、錐体、柱体、楕円体及びこれらを組み合わせた形状からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1または2に記載の繊維状チーズ。
【請求項7】
前記固形物が食品素材である、請求項1または2に記載の繊維状チーズ。
【請求項8】
不活性ガスを含める包装方法または真空包装で包装されている、請求項1または2に記載の繊維状チーズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維状チーズに関する。
【背景技術】
【0002】
日本の市場において、ナチュラルチーズが定着しつつある。ナチュラルチーズには、熟成の程度により、乳成分の熟成の風味を楽しめる、いわゆる熟成型ナチュラルチーズ、および新鮮な乳風味を味わえる、いわゆる非熟成型ナチュラルチーズに分類できる。また、ナチュラルチーズは、その硬さから、特別硬質ナチュラルチーズ、硬質ナチュラルチーズ、半硬質ナチュラルチーズ、軟質ナチュラルチーズに分類できる。このように、ナチュラルチーズには、熟成の程度や物性(食感)の違いなどにより、多くの種類が存在する。
【0003】
ナチュラルチーズは、その食シーンとして、そのまま食される場合が多いが、それゆえに食感や見た目が単調になりやすい。そこで、従来、複合チーズとすることによりバラエティ化が図られており、例えば、食品素材の外側をチーズで被覆したり、チーズに食品素材を分散状態で存在させることがなされている。
【0004】
食品素材の外側をチーズで被覆する技術として、例えば、特許文献1には、粒状食品の外側をプロセスチーズ類で被覆してスナックサイズとしたチーズ被覆食品が提案されている。また、特許文献2には、弾力性があるナチュラルチーズを外層として内容物を包餡してなる包餡型ナチュラルチーズを製造する方法であって、前記外層を20℃~100℃の温度で包餡する工程を含む方法が記載されている。
【0005】
また、チーズに食品素材を分散状態で存在させる技術として、例えば、特許文献3には、pH5.0~5.8のチーズカード或いは熟成前のチーズを熱水中で練圧して可塑性に富んだカードを作成し、次いで該カードから熱水を分離した後成形もしくは押出しすることによりパスタフィラタチーズを製造するに際し、上記チーズカード或いは熟成前チーズを熱水中で練圧して45~75℃の温度の可塑性に富んだカードにし、熱水を分離後混練して該カードの薄膜を形成させ、次いでこれに食品素材を添加、混合する、食品素材を均一に含有するパスタフィラタチーズの製造法が提案されている。
【0006】
一方、手で引き裂いた際に糸状又は繊維状のチーズ片が生じる繊維状チーズが知られており、その見た目の新鮮さ等から注目されている。
【0007】
繊維状チーズは、モッツァレラチーズなどと共通の製造工程を有している。モッツァレラチーズは、原料乳を凝乳させ、チーズカードとホエイを分離し、ホエイを排出してから、チーズカードを温水中や水蒸気中で加熱しながら混練することにより得られる。さらに、モッツァレラチーズを押出成形や延伸し、その後冷却・固化することにより、押出方向や延伸方向に沿った柱状の繊維状チーズが得られる。これは、加熱・混練されたモチ状のチーズカードが押出成形や延伸により一定方向に引き延ばされると、チーズカード中のカゼインミセルを形成するサブミセル同士が付かず離れずの状態で押出方向に変形することにより、押出方向や延伸方向に沿ってチーズが引き伸ばされてたんぱく質マトリクス構造が形成されるためである。繊維状チーズは、このように押出方向や延伸方向に沿って手で引裂くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4-267844号公報
【特許文献2】国際公開第2016/043311号
【特許文献3】特開平3-83541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
引用文献1、2は、食品素材を内包させたチーズ食品が記載されている。引用文献3にはカレーパウダーを練り込んだ繊維状チーズを製造したことが記載されている。
【0010】
近年、チーズの多様化に求められる特性として食したときの食感の変化がある。特許文献1~3のようにチーズに食品素材を固形物として含有させることにより食感の変化が期待できるが、繊維状チーズに固形物を含有することはなされていない。繊維状チーズは繊維方向に沿って引き裂かれるので、固形物が含有されていると、引裂き位置によっては引き裂いた際に固形物が落下する虞があり、また固形物が大きくなると引き裂き時の固形物の落下率が高くなる虞がある。
【0011】
引用文献1、2は、外皮のチーズが繊維性を有していないので、引き裂いたときの内包物の落下等は想定されていない。
【0012】
また、引用文献3では本発明者らの検討によると、食感の変化をもたらすことはできず、また、手で引き裂いたときに糸状組織は生じず、引き裂く際に指先にカレーパウダーが付着してしまう等の課題があった。
【0013】
本発明は上記課題に鑑み、固形物を含有する繊維状チーズであって、大きめの固形物を含有したとしても引き裂いたときに固形物が落下しづらく、また引裂性も損なわれることのない新たな繊維状チーズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、所定量の増粘組成物を固形物とともに繊維状チーズに含有させることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明は以下の(1)~(7)によって達成される。
(1)繊維方向に引き裂き性を有する繊維状チーズであって、固形物と増粘組成物を含有し、前記増粘組成物を前記繊維状チーズ全体の0.3質量%以上30質量%未満の範囲で含有する、繊維状チーズ。
【0016】
(2)前記増粘組成物が、プロセスチーズ類、ゼラチン、糖類及び増粘安定剤からなる群から選択される少なくとも1種である、前記(1)に記載の繊維状チーズ。
【0017】
(3)前記増粘組成物が、前記固形物の外表面の少なくとも一部を被覆している、前記(1)または(2)に記載の繊維状チーズ。
【0018】
(4)前記増粘組成物の含量が、繊維状チーズ全体の0.35質量%以上25質量%以下の範囲内である、前記(1)から(3)のいずれか1つに記載の繊維状チーズ。
【0019】
(5)前記固形物は、レーザー回析式粒度分布測定により測定される体積基準の累積粒度分布における50%粒径(D50)が、0.2mm以上5mm以下の範囲内である、前記(1)から(4)のいずれか1つに記載の繊維状チーズ。
【0020】
(6)前記固形物の形状が、多面体、錐体、柱体、楕円体及びこれらを組み合わせた形状からなる群から選択される少なくとも1つである、前記(1)から(5)のいずれか1つに記載の繊維状チーズ。
【0021】
(7)前記固形物が食品素材である、前記(1)から(6)のいずれか1つに記載の繊維状チーズ。
【0022】
(8)不活性ガスを含める包装方法または真空包装で包装されている、前記(1)から(7)のいずれか1項に記載の繊維状チーズ。
【発明の効果】
【0023】
本発明の繊維状チーズは、食品素材である固形物を含有するので、食したときの食感や風味が変化し、おいしさや楽しさのバリエーションを広げることができる。また、前記固形物は増粘組成物を含み、該増粘組成物がチーズと固形物との接着を強固にするので、大きめの固形物であっても繊維状チーズを引き裂いた際の落下を抑制でき、製品としての品質を保つことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の繊維状チーズについて説明するが、以下の説明における例示によって本発明は限定されない。
【0025】
なお、本明細書において、繊維状チーズとは、糸状組織又は繊維状組織を内部に有するチーズであって、引き裂くことにより糸状組織又は繊維状組織が裂け、糸状又は繊維状のチーズ片が生じるものをいう。
【0026】
本発明の繊維状チーズは、繊維方向に引き裂き性を有するものであり、固形物と増粘組成物を含有し、増粘組成物を繊維状チーズ全体の0.5質量%以上30質量%未満の範囲で含有する。増粘組成物を前記範囲で含有することで、固形物が繊維性を有するチーズ部分に接着しやすくなり、接着強度が強くなるので、繊維状チーズを引き裂いたときにも糸状組織に絡まりやすくなり、固形物の落下を抑制できる。
【0027】
固形物としては、食品素材であれば特に限定されないが、例えば、アーモンド、ピーナッツ、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツ、クルミ、ペカン、ピーカンナッツ等のナッツ類;ブドウ、マンゴー、いちご、パイナップル、りんご、キウイ、みかん、クランベリー、ブルーベリー、いちじく、プルーン、バナナ、梅等の果実を乾燥したドライフルーツ;レモンピール、オレンジピール等の果実の皮;トマト、サツマイモ、カボチャ、ニンジン、ニンニク、パプリカ等の野菜を乾燥した乾燥野菜;ハム、ベーコン、ソーセージ、スパム、サラミ、ビーフジャーキー等の食肉製品;ほたて、いか、さけ、かつお、まぐろなどの乾燥または加熱調理した魚介加工品、海苔、あおさなどの乾燥した海藻;クリームチーズ、チェダーチーズ、エダム、カマンベール、ブルーチーズ、マリボー、サムソー、エメンタール、ラクレット、パルメザンチーズ、エポワス、マロワル等のチーズ類;胡椒、ガーリック、オールスパイス、オレガノ、サンショウ、ゴマ、ショウガ、パセリ等の香辛料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
固形物は、レーザー回析式粒度分布測定により測定される体積基準の累積粒度分布における50%粒径(D50)(以下、「平均粒子径(D50)」ともいう。)が、0.2mm以上5mm以下の範囲内であることが好ましい。
【0029】
固形物の平均粒子径(D50)が0.2mm以上であると、繊維状チーズを食したときに固形物の歯応えが感じられるので食感の変化を楽しむことができ、また5mm以下であると、繊維状チーズを成形したときに形が歪になることもなく、また、引き裂いた際の固形物の落下を抑制しやすい。
【0030】
繊維状チーズ中の固形物の平均粒子径(D50)は、0.5mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましく、1.5mm以上であることがさらに好ましく、2.0mm以上であることがさらに好ましい。また、同平均粒子径(D50)は、4.5mm以下であることが好ましく、4.3mm以下であることがより好ましく、4.0mm以下であることがさらに好ましく、3.8mm以下であることがさらに好ましい。
【0031】
なお、固形物の平均粒子径(D50)は、例えば、株式会社堀場製作所製の「Partica LA-960V2」(商品名)、A&D社製の「Masters Sizer 3000T Aeros」(商品名)などで測定できる。
【0032】
前記固形物は、多面体、錐体、柱体、楕円体及びこれらを組み合わせた形状からなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。固形物は、繊維状チーズを引き裂いた際の落下抑制の観点から、真球度の低いものが好ましく、例えば、真球度は0.8以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.6以下であることがさらに好ましい。また、同真球度は、特に限定されないが、繊維状チーズを食した際の食感向上の観点から、0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。
【0033】
なお、固形物の真球度は、粒子径測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製「Camsizer XT」)を用いた動的画像解析法等により測定できる。
【0034】
本実施形態において、固形物の含量は繊維状チーズ全体の0.2質量%以上5.0質量%以下の範囲内であることが好ましい。繊維状チーズ全体における固形物の含量が0.2質量%以上であると、食したときに固形物の存在を十分に感じることができるので、食感や風味の変化が感じられ、また5.0質量%以下であると、繊維状チーズの引き裂き性を損なうことがなく、成形しやすい。固形物の含量は、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.4質量%以上であることがさらに好ましく、0.5質量%以上であることが特に好ましい。また、固形物の含量は、4.5質量%以下であることがより好ましく、4.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0035】
増粘組成物としては、例えば、プロセスチーズ類、ゼラチン、糖類、増粘安定剤等が挙げられ、これらの群から選択される少なくとも1種を好ましく用いることができる。
【0036】
本発明の実施の形態に係るプロセスチーズ類とは、プロセスチーズ、チーズフード、乳等を主原料とする食品を指す。プロセスチーズおよびチーズフードを製造する際、チーズカードに溶融塩などの乳化剤を添加して混合することが必要である。溶融塩としてはリン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩など、通常のプロセスチーズ製造に用いられている溶融塩を使用することができる。溶融塩の化合物の種類としては、特に限定されないが、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラメタリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カルシウム等が挙げられ、これらを1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その添加量はチーズの合計量(100質量%)に対して、0.05~5質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましい。なお、溶融塩を使用しすぎると糸ひき性が悪化する。
【0037】
溶融塩の中でも、静菌効果、pHの維持の観点から、ポリリン酸塩、モノリン酸塩を組み合わせることがより好ましい。
【0038】
本発明の実施の形態においてプロセスチーズは、室温で引裂いたときに糸状組織を生じない、ナチュラルチーズに溶融塩を加えて加熱溶融したチーズである。ナチュラルチーズとしては、例えば、チェダー、エメンタール、及びエダム、パルミジャーノ・レジャー等のハードタイプのナチュラルチーズ;ゴーダ、マリボー、サムソー等のセミハードタイプのナチュラルチーズ;カマンベール、ブリー、ゴルゴンゾーラ、カンボゾーラなどのカビタイプのナチュラルチーズ;エポワス、ポン・エヴォックなどのウォッシュタイプのナチュラルチーズが挙げられる。これらのチーズは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
中でも、接着性や風味の観点からチェダー、ゴーダ、コンテ、ラクレットなどのナチュラルチーズがより好ましく、その中でも特にチェダーチーズ、ゴーダチーズが好ましい。
【0040】
糖類としては、例えば、乳糖、ショ糖、水あめ、粉あめ、澱粉、α化澱粉、澱粉水解物、液糖、砂糖、ぶどう糖、コーンシロップ、マンノース、マルトース、マルトトリオース、オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、パラチノースオリゴ糖、異性化液糖、ショ糖結合水飴、酵素糖化水飴、還元乳糖、還元澱粉糖化物、還元糖ポリデキストロース、澱粉加水分解物、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、オリゴ糖アルコール、ラフィノース、ラクチュロース、ステビア、キシロース、化工澱粉、デキストリン、麦芽糖、果糖、三温糖、和三盆糖、黒糖、メープルシロップ、蜂蜜、異性化液糖、果糖ぶどう糖液糖、還元水飴(糖アルコール)、トレハロース、ステビオサイド、カンゾウ抽出物、アスパルテーム等が挙げられる。糖類として、糖分を多く含む食品(果実、サツマイモ等)等の糖質を用いてもよい。これらの糖類は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
増粘安定剤としては、例えば、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、CMC等が挙げられる。これらの増粘安定剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
増粘組成物の含量は、繊維状チーズ全体の0.3質量%以上30質量%未満の範囲内であり、0.35質量%以上25質量%以下の範囲内であることがより好ましい。増粘組成物のvが0.35質量%以上であると、固形物とチーズとを十分に接着できる。また、増粘組成物の含量が多くなり過ぎると、繊維状チーズの引き裂き性が低下したり、棒状に形成し難くなったりするので、30質量%未満で含有させる。
【0043】
増粘組成物の含量は、増粘組成物の材料、組成等によって、前記範囲で適宜調整すればよい。例えば、増粘組成物として非繊維状チーズを用いる場合は、増粘組成物は、繊維状チーズ全体の0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、4質量%以上が特に好ましく、8質量%以上が最も好ましい。増粘組成物として糖類を用いる場合は、増粘組成物は、繊維状チーズ全体の0.32質量%以上であることがより好ましく、0.35質量%以上がさらに好ましい。また、同増粘組成物は、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、2.5質量%以下が特に好ましい。
【0044】
本発明の実施の形態に係る繊維状チーズにおいて、増粘組成物は固形物の外表面の少なくとも一部を被覆していることが好ましく、固形物の外表面全体が増粘組成物で被覆されていることがより好ましい。増粘組成物が固形物の外表面を被覆していることで、繊維性を有するチーズ部分との接着強度がより強くなる。
【0045】
増粘組成物には、固形物同士の接着を防止するために、接着防止剤を含有することが好ましい。接着防止剤としては、例えば、レシチン、酵素分解レシチン、酢酸モノグリセリド、高級脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリンエステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤等が挙げられる。これらの接着防止剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、安価である点から、大豆レシチン、酵素分解レシチンがより好ましい。
【0046】
本発明の実施の形態において、繊維状チーズのFDM(Fat in Dry Mutter)は30~60%であることが好ましい。
【0047】
FDMとは、チーズ製品における固形分中の脂肪の割合を意味し、繊維状チーズの脂肪FDMが30%以上であると、チーズの豊かな風味やコクを感じさせることができ、また60%以下であると、成形性や引裂性や糸ひき性をより良好にできる。
【0048】
繊維状チーズのFDMは、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。また、同FDMは、55%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。
【0049】
なお、FDMは、脂肪含量を固形分含量で除した割合(百分率)である。FDMに用いる固形分とはたんぱく質含量と脂肪含量の合計である。日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアルの「第1章 一般成分及び関連成分」に記載のタンパク質含量は、記載の「マクロ改良ケルダール法」(P12-P16)に従って測定した。また、脂肪含量は、同章に記載の「酸・アンモニア分解法」(P24-P25)に従って測定した。)。
【0050】
また、本発明の実施の形態において、繊維状チーズ中の水分量は、30~55%であることが好ましい。
【0051】
繊維状チーズ中の水分量は、低すぎると硬くなり食べづらいので、35%以上であることがより好ましく、38%以上であることがさらに好ましい。また、水分量が多くなり過ぎると繊維状チーズが水っぽくなり、また口腔内や手指にべたつくと食べづらいので、同水分量は、50%以下であることがより好ましく、47%以下であることがさらに好ましい。
【0052】
また、本発明の実施の形態において、繊維状チーズの水溶性窒素の含量は0.1~5mg/gであることが好ましい。水溶性窒素は、熟成中にたんぱく質が酵素によって分解されて生成する、分子量が5,000Da以下のペプチドまたはアミノ酸に含まれる窒素のことである。水溶性窒素の含量は、繊維状チーズ中で、熟成の進行とともに増大する。水溶性窒素含量が5mg/g以下であると、繊維状チーズ中に固形物を巻き込んでも繊維性を保つことができる。
【0053】
繊維状チーズの風味の観点から、水溶性窒素は、0.5mg/g以上であることがより好ましく、1mg/g以上であることがさらに好ましい。また、水溶性窒素は、4mg/g以下であることがより好ましく、3mg/g以下であることがさらに好ましい。
【0054】
なお、水溶性窒素の含量とたんぱく質の含量は、「マクロ改良ケルダール法」により測定できる。
【0055】
また、本発明の実施の形態において、繊維状チーズのpHは5.0以上5.8以下の範囲内であることが好ましい。繊維状チーズのpHを5.6以上5.8以下の範囲内にすることによって繊維状チーズの性状を硬くすることができる一方、繊維状チーズのpHを5.0以上5.4以下の範囲内にすることによって繊維状チーズの性状を軟らかくすることができる。なお、pHの調整は、チーズカードを混練する前や途中で有機酸などの酸を混合することによって行うことができる。
【0056】
本実施形態において、繊維状チーズの直径は0.5~10cmであることが好ましい。
持ち易さ、引裂き易さの観点から、繊維状チーズの直径は、0.7cm以上であることがより好ましく、1cm以上がさらに好ましい。また、同直径は、7cm以下であることがより好ましく、3cm以下がさらに好ましい。
【0057】
本実施形態において、繊維状チーズの長さは1~50cmであることが好ましい。
持ち易さ、引き裂き易さの観点から、繊維状チーズの長さは、3cm以上であることがより好ましく、5cm以上がさらに好ましい。また、同長さは、30cm以下であることがより好ましく、15cm以下がさらに好ましい。
【0058】
本実施形態の繊維状チーズは、原料乳から作製されたチーズカードに、少なくとも固形物と増粘組成物を添加してチーズカード混練物を作製する工程、このチーズカード混練物を押出形成する工程を含んで製造されることが好ましい。繊維状チーズに用いられるチーズカードは、冷蔵または冷凍保存された市販のチーズカードでもかまわない。その場合、冷凍保存されたチーズカードのほうが好ましい。
【0059】
原料乳としては、例えば、牛由来の原料乳が挙げられ、具体的に生乳、牛乳、脱脂乳、部分脱脂乳、クリーム等が好適に用いられる。
【0060】
原料乳からチーズカードを作製するには、チーズ製造におけるチーズカード製造の常法に従って行うことができる。すなわち、原料乳に乳酸菌や酸、レンネット(凝乳酵素)等を添加し、適温に保持してチーズカードを形成させ、得られたチーズカードの切断、ホエイの排除し、圧搾する。なお、本発明には冷凍や冷蔵の市販チーズカードも利用でき、原料乳から作製したチーズカードを混合して組成を調整してもよい。
【0061】
乳酸菌は、原料乳を発酵させるスターターであり、従来のチーズ製造に用いられる乳酸菌であればいずれも使用できる。添加できる酸としては、例えば、乳酸、クエン酸、コハク酸などの有機酸等が挙げられる。
【0062】
続いて、このようにして得られたチーズカードを加熱し、混練する。
加熱・混練の方法としては、従来の方法で行うことができる。例えば、温水中、水蒸気中、マイクロ波などで加熱しながら混練する方法が挙げられる。
【0063】
混練は、従来のチーズカードの製造に用いられる混練機を用いて行うことができる。加熱・混練の時間は、組成に所望の弾力がある繊維状の組織となるまで行えばよい。
【0064】
本発明においては、この加熱・混練の工程において、固形物と増粘組成物を添加し、混練する。
【0065】
固形物及び増粘組成物としては上記した食品素材が挙げられ、好ましい含量も上記したとおりである。固形物と増粘組成物の添加は、一度に添加してしてもよいし、複数回に分けて添加してもよい。複数回に分けて添加するほうが、チーズ中の固形物が均等に分散しやすいので好適である。
【0066】
なお、固形物と増粘組成物は、両者を混合した状態で添加するのが好ましく、増粘組成物が固形状の場合は、増粘組成物を加熱し溶解状態で固形物と混合し、これらをチーズカードに添加するのが好ましい。
【0067】
増粘組成物を溶融する場合は、増粘組成物のみを加熱してもよいし、溶媒(例えば、水やクエン酸ナトリウム水溶液)に添加して加熱してもよい。
【0068】
また、この加熱・混練の工程において、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の成分を添加することができる。任意の成分としては、例えば、乳化剤、色素(着色料)、乳成分、植物性油脂、パウダー状又は液状の香辛料、香料、澱粉等が挙げられる。その任意の成分を加えることで、繊維状チーズの経時安定性の付与や、見た目や風味のバリエーションの付与ができる。任意の成分は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
乳化剤としては、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0070】
色素(着色料)としては、例えば、アナトー色素、パプリカ色素、β-カロチン、クルクミン等のカロテノイド色素、カラメル色素、タマリンド色素、クチナシ色素、フラボノイド色素、コチニール色素、赤色2号、赤色102号、黄色4号等が挙げられる。
【0071】
乳成分としては、例えば、脱脂粉乳、酸カゼイン、カゼインナトリウム等が挙げられる。
【0072】
植物性油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム油、大豆油等が挙げられる。
【0073】
糖質類としては、例えば、ブドウ糖、ショ糖等が挙げられる。
【0074】
パウダー状又は液状の香辛料としては、コショウ、ガーリック、唐辛子、オールスパイス、オレガノ、サンショウ、ゴマ、ショウガ、パセリ等をパウダー状又は液状に加工したものが挙げられる。
【0075】
なお、パウダー状又は液状の香辛料の含量は、繊維状チーズに対して0.2~3質量%であることが好ましい。なお、同含量は、0.4質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、同含量は、2.5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましい。
【0076】
香料としては、例えば、スモークフレーバー、ベーコンフレーバー、とうがらしフレーバー、バターフレーバー、カマンベールフレーバー等の食用フレーバーが挙げられる。これらのフレーバーは固形物含有した繊維状チーズを作製後に調味液中に浸漬して製造してもよい。
【0077】
澱粉としては、例えば、コーン、ポテト、ワキシーコーン、タピオカ、米等の天然澱粉;コーン、ポテト、ワキシーコーン、タピオカ、米等を原料とし、エーテル化処理したエーテル化澱粉又はエステル化処理したエステル化澱粉、またはこれらの処理を組み合わせた化工澱粉等の加工澱粉等が挙げられる。
【0078】
得られた混練物を押出成形して本発明の繊維状チーズが得られる。
撹拌混合は、例えば二軸エクストルーダ―やストレッチャーなどが挙げられる。また、撹拌機能と押出成形機能が一体となった押出成形機を用いてもよい。
【0079】
その後、押出形成されたチーズを延伸することにより繊維状チーズとする。延伸工程では、従来公知の方法により行うことができる。押出後の延伸工程を省略してもよい。
【0080】
このようにして得られた成形品を冷却して、本発明の繊維状チーズが得られる。
冷却は、噴霧した液体溶媒や冷却したに成形品を投入することにより行うことができる。
【0081】
噴霧液として液体窒素が挙げられる。冷却に用いる液としては、例えば、水、塩水等が挙げられる。
【実施例0082】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の説明において、共通する成分は同じものを用いている。また、特に説明のない限り、「%」は「質量%」を表す。
【0083】
<試験例1>
(実施例1)
【0084】
原料乳として生乳、脱脂乳、クリームを用いて標準化乳を得て、殺菌(75℃達温)して36℃に冷却して得られた仕込み乳に凍結乳酸菌(クリスチャンハンセン社製)、レンネット(クリスチャンハンセン社製)を添加して、定法により固形分中の脂肪含量(FDM)が48%であり、水分が50%であり、pHが5.6であるチーズカードを作製した。
【0085】
市販チェダーチーズ(6ヶ月熟成)900gに対して20gの2%クエン酸ナトリウム水溶液および80gの水を混合した後(クエン酸ナトリウムの濃度:2%)、その混合物を加温溶融してプロセスチーズを得た。次に、40gのプロセスチーズに、クラッシュアーモンド(平均粒子径(D50):3.76mm、株式会社堀場製作所製の「Partica LA-960V2」により測定)20gを添加して混合し、アーモンド入りプロセスチーズを作製した。
【0086】
上述のチーズカード940gを70~80℃の熱水中で混練して湯を切った後に、そのチーズカードに対して上述のアーモンド入りチェダーチーズ60gを添加した後にそれを混合して混合物を得た。その混合物をケンミックスミキサー(株式会社愛工舎製作所製)に投入して同ミキサーで同混合物を押し出しながら成形して直径1.5cmの紐状の繊維状チーズを得た。そして、その紐状の繊維状チーズを氷水中で冷却して、長さ10cmにカットした。なお、繊維状チーズ全体に対するアーモンドの含量は2.0%であり、プロセスチーズの含量は4.0%であった。なお、この繊維状チーズのpHは5.7であった。
【0087】
(実施例2および3ならびに比較例1および2)
プロセスチーズの添加量、クラッシュアーモンドの添加量およびチーズカードの添加量を、表1の各例に示す量に代えた以外は、実施例1と同様にして繊維状チーズを得た。なお、実施例2に係る繊維状チーズにおいて繊維状チーズ全体に対するアーモンドの含量は2.0%であり、プロセスチーズの含量は10%であった。また、実施例3に係る繊維状チーズにおいて繊維状チーズ全体に対するアーモンドの含量は2.0%であり、プロセスチーズの含量は25%であった。また、比較例1ではプロセスチーズを用いずにクラッシュアーモンドのみをチーズカードに添加した。また、比較例2に係る繊維状チーズにおいて繊維状チーズ全体に対するアーモンドの含量は2.0%であり、プロセスチーズの含量は30%であった。また、上記の繊維状チーズのpHは全て5.7であった。
【0088】
【0089】
実施例1~3、比較例1~2の繊維状チーズについて、以下の試験を行った。
【0090】
1.糸ひき性の評価
5℃に保存しておいた製造2日後の検体について、下記の方法で糸ひき性を評価した。
検体1本を繊維の方向に沿って台座にのせ、検体の上面から2mmの部分に切れ目を水平に入れて、上面と切れ目部分(端)をアタッチメントで5mmの幅で挟み、速度180mm/秒で4cm垂直方向に引き上げ、引き上げたときに生じた糸状組織の数をカウントして、下記に示す評価基準に基づき糸ひき性を評価した。
【0091】
<評価基準>
5:非常に明確な方向性を有し、手で裂いたときのように細かな糸状組織を10本以上生じる。
4:良好な方向性を有し、手で裂いたときのように細かな糸状組織を5~9本生じる。
3:方向性を有し、手で裂いたときに一部に1本以上の糸状組織を生じる。
2:わずかに方向性を有するが、手で裂いたときのように細かな糸状組織は生じない。
1:組織は均一で、手で裂いても糸状組織を生じない。
【0092】
2.風味の評価
風味は、評価者による官能検査によって評価した。
5℃に保存しておいた繊維状チーズについて、チーズ開発業務に3年以上携わった10名の評価者に食してもらい、下記に示す評価基準に基づき評価し、その平均値を求めた。
【0093】
<評価基準>
5:評価「3」よりもかなり良好である。
4:評価「3」よりもやや良好である。
3:チーズと固形物の両方の風味を同時に違和感なく楽しめる(許容範囲)。
2:評価「3」よりもやや悪い。
1:評価「3」よりもかなり悪い。
【0094】
なお、評価者の基準を標準化するため市販アーモンド入りプロセスチーズを事前に食べてそれを2点の基準として評価した。
【0095】
3.食感の評価
食感は、評価者による官能検査によって評価した。
5℃に保存しておいた繊維状チーズについて、10名の評価者に食してもらい、下記に示す評価基準に基づき評価し、その平均値を求めた。
【0096】
<評価基準>
5:評価「3」よりもかなり良好である。
4:評価「3」よりもやや良好である。
3:チーズと固形物の両方の食感を同時に違和感なく楽しめる(許容範囲)。
2:評価「3」よりもやや悪い。
1:評価「3」よりもかなり悪い。
【0097】
なお、評価者の基準を標準化するため市販アーモンド入りプロセスチーズを事前に食べてそれを2点の基準として評価した。
【0098】
4.付着性の評価
付着性は、評価者による官能検査によって評価した。
5℃に保存しておいた繊維状チーズを、2本の指(親指と人差し指)で全て幅約2mmのチーズ片になるまで引き裂いた後、指先に付着した固形物の量をカウントした。10名の評価者に試験をしてもらい、下記に示す評価基準に基づき評価し、その平均値を求めた。
【0099】
<評価基準>
5:指先に固形物が付着しない。
4:指先に固形物が2粒以下付着する。
3:指先に固形物が3粒付着する(許容範囲)。
2:指先に固形物が4粒以上、まばらに付着する。
1:指先の全体に固形物が付着する。
なお、評価者の引裂き方を揃えるために、試料1個につき20~30回で引裂くように事前に指示した。
【0100】
5.落下率の測定
繊維状チーズを軸方向に半分にカットした(直径1.5cm、長さ5cm)。それを幅3mm、厚さ0.5mmで剥がし、繊維状チーズから落下したクラッシュアーモンドの数を測定した。
【0101】
落下したクラッシュアーモンドの数を繊維状チーズに含まれたクラッシュアーモンドの全個数で除した割合を求め、落下率とした。
なお、評価者の引裂き方を揃えるために、試料1個につき20~30回で引裂くように事前に指示した。
【0102】
6.総合評価
上記1~5の試験結果をもとに、下記表2に記載の判定基準に基づき、総合判定を行った。評価は、「△」と「○」が合格レベルであり、「×」は不合格である。
【0103】
【0104】
上記1~6の試験結果を表3に示す。
【0105】
【0106】
表3の結果より、実施例1~3では繊維状チーズに対するクラッシュアーモンドの付着性が良好であり、落下の少ない繊維状チーズであることがわかった。中でも実施例3では、クラッシュアーモンドの付着性にも優れ風味や食感に特徴のある繊維状チーズが得られた。
【0107】
これに対し、比較例1に係る繊維状チーズでは、クラッシュアーモンドの1/3以上が落下し、また、比較例2では、糸ひき性を有するチーズを得ることができなかった。
【0108】
<試験例2>
(実施例4)
原料乳として生乳、脱脂乳、クリームを用いて標準化乳を得て、殺菌(75℃達温)して36℃に冷却して得られた仕込み乳に10%乳酸を滴下しpHを6.2にした。pHが6.2に達した時点で凍結乳酸菌(クリスチャンハンセン社製)、レンネット(クリスチャンハンセン社製)を添加して、定法によりFDM48%、水分50%のチーズカードを作製した。
【0109】
ロースト済みアーモンドナッツを粉砕し、回転釜に投入し、転動状態にした。転動しているクラッシュアーモンドの表面を均斉に被覆できるだけの量の下記表4に示す組成の液状のキャンディ組成物を徐々に回転釜内に流下させ、クラッシュアーモンドの表面をキャンディ層でコートした。キャンディ層は硬質且つ均斉な厚みを有しており、表面は平滑であって、アーモンド100質量%に対してキャンディ層は10質量%となった。キャンディコートクラッシュアーモンドの平均粒子径(D50)(株式会社堀場製作所製の「Partica LA-960V2」により測定)は、2.02mmであった。
上記作製したチーズカードを70~80℃の熱水中で混練して湯を切った後に、上記作製したキャンディコートアーモンドを添加して混合した。なお、繊維状チーズ全体に対するアーモンドの含量は4.0%、キャンディ組成物の含量は0.35%である。
その後、成形して延伸して直径1.5cmの紐状の繊維状チーズを得て、これを氷水中で冷却して、長さ10cmにカットした。
【0110】
【0111】
(参考例1)
キャンディコートアーモンドの替わりに、クラッシュアーモンド(平均粒子径(D50):2.02mm、株式会社堀場製作所製の「Partica LA-960V2」により測定)をチーズカードに添加して混合した以外は、実施例4と同様にして繊維状チーズを得た。
【0112】
実施例4及び参考例1の繊維状チーズについて、試験例1と同様の評価(糸ひき性、風味、食感及び付着性の評価、並びに落下率の測定)を行った。結果を表5に示す。
【0113】
【0114】
表5の結果より、実施例4はキャンディコートしたクラッシュアーモンドを用いることで、コートされていないクラッシュアーモンドを含有する参考例1の繊維状チーズよりもアーモンドの落下率が減少し、また糸ひき性も改善できることがわかった。