(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153272
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】クロマトグラフ装置
(51)【国際特許分類】
G01N 30/86 20060101AFI20231005BHJP
G01N 30/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01N30/86 Q
G01N30/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134424
(22)【出願日】2023-08-22
(62)【分割の表示】P 2019128144の分割
【原出願日】2019-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2018163108
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】福田 真人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正人
(57)【要約】
【課題】クロマトグラフ装置の分析の手順及び条件の変更が確実に装置側で実行され、簡易かつミスなく分析できるようにしたクロマトグラフ装置を提供する。
【解決手段】所定の手順及び条件に従ってクロマトグラフ分析を行うクロマトグラフ装置100であって、一の分析手順書に従ってクロマトグラフ分析を開始するときに、所定のタイミングで、手順及び条件が所定の位置に記載された紙文書、又はテキストデータを含む分析手順書20a~20cから、位置の数値、及び/又は文字を読み取る読取り部11と、読取り部が読み取った数値、及び/又は文字、又は、当該読み取った数値及び/又は文字と予め関連付けられた事項に基づき、クロマトグラフ分析を実行する制御部9と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の手順及び条件に従ってクロマトグラフ分析を行うクロマトグラフ装置であって、
前記手順及び条件を含む分析手順書に従って前記クロマトグラフ分析を開始するときに、所定のタイミングで、前記手順及び条件が所定の位置に記載された紙文書又は前記手順及び条件が所定の位置に記載されたテキストデータを含む、前記分析手順書から、前記位置に含まれる数値及び/又は文字を読み取る読取り部と、
前記読取り部が読み取った前記数値及び/又は前記文字に基づき、前記クロマトグラフ分析を実行する制御部と、を備え、
前記分析手順書には、認証済か否かの情報が含まれ、
前記制御部は、前記分析手順書の認証の有無を報知するクロマトグラフ装置。
【請求項2】
前記制御部は、読み取った前記数値及び/又は文字に基づく前記クロマトグラフ分析が実行可能か否かを判定し、その結果を報知する請求項1に記載のクロマトグラフ装置。
【請求項3】
前記クロマトグラフ装置とは別に、前記クロマトグラフ分析を実行可能な設備情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記クロマトグラフ分析が実行不能と判定したとき、前記記憶部に基づき、実行可能となる前記設備を報知する請求項2に記載のクロマトグラフ装置。
【請求項4】
前記文字は、単位を含む請求項1~3のいずれか一項に記載のクロマトグラフ装置。
【請求項5】
前記位置は、前記分析手順書の所定の枠内、特定のページ、ヘッダ、及びフッタの少なくともいずれか1つである請求項1~4のいずれか一項に記載のクロマトグラフ装置。
【請求項6】
前記分析手順書が複数存在する場合に、
前記制御部は、一の分析手順書に基づき前記クロマトグラフ分析を実行した後、他の分析手順書の読み取りの有無をユーザに促すか、又は予め設定された複数の前記分析手順書の種類に基づき、他の分析手順書の読み取り及び前記クロマトグラフ分析の実行を行う請求項1~5のいずれか一項に記載のクロマトグラフ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフ装置、ガスクロマトグラフ装置などのクロマトグラフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体クロマトグラフ(HPLC)分析では、作業者は分析の手順及び条件(SOP:標準作業手続き)が規定された分析手順書を参照し、それに従って分析を行っている。
一方、実際の液体クロマトグラフ装置は、装置内のコンピュータに設定された条件ファイルに基づいて動作しており、作業者は、この動作中に分析手順書の具体的な数値や条件を入力したり、装置に指定されていた手順を変更する。
このような条件を手入力で行うと時間を要したり、入力ミスを伴うおそれがあることから、分析依頼者が作成したテキストファイル等の自然文から分析条件を自動的に読み取って条件設定できるようにした技術が開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、分析手順書と、装置側の条件ファイルとは別系統で管理されているため、互いの情報が一致しているかを検証することが困難である。又、装置の更新時は、分析内容が同じであっても、条件ファイルの更新,新規作成を強いられる。さらに、装置側の条件ファイルが更新されたとしても、それを手順書側に反映させることは作業者が行わなければならず、更新漏れが発生し易い。逆の場合も同様である。
一方、分析手順書等に規定された分析条件を読み込み、その条件を装置内に保存して動作する方式においては、その後に分析手順書が変更されても、変更があったことを作業者が知らない場合、次回の分析時に以前に装置内に保存された分析条件をそのまま使って分析してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、クロマトグラフ装置の分析の手順及び条件の変更が確実に装置側で実行され、簡易かつミスなく分析できるようにしたクロマトグラフ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明のクロマトグラフ装置は、所定の手順及び条件に従ってクロマトグラフ分析を行うクロマトグラフ装置であって、前記手順及び条件を含む分析手順書に従って前記クロマトグラフ分析を開始するときに、所定のタイミングで、前記手順及び条件が所定の枠内に記載された紙文書又は前記手順及び条件が所定の位置に記載されたテキストデータを含む、前記分析手順書から、前記枠内の数値及び文字を読み取る読取り部と、前記読取り部が読み取った前記数値及び/又は前記文字に基づき、前記クロマトグラフ分析を実行する制御部と、を備え、前記分析手順書には、認証済か否かの情報が含まれ、前記制御部は、前記分析手順書の認証の有無を報知する。
【0007】
このクロマトグラフ装置によれば、分析の手順及び条件が記述された分析手順書を読み取って初めて分析が実行可能となるので、分析手順書が変更されると変更内容通りの分析を行うことができる。又、分析の手順と条件を作業者が入力する必要がない。これにより、分析の手順及び条件の変更が確実に装置側で実行され、簡易かつミスなくクロマトグラフ装置の分析ができる。
又、分析手順書をクロマトグラフ装置で書き換えることができないため、分析手順書が誤って変更されることを防止できる。
さらに、分析手順書は紙文書、又はテキストデータを含む形態であるので、文書(又は文書データ)として管理し易く、文書の変更やコピーが容易である。
【0008】
また、本発明のクロマトグラフ装置によれば、分析手順書が認証済である旨が報知されると、その分析手順書が精査され、正規なものであることが認識できる。
【0009】
本発明のクロマトグラフ装置において、前記制御部は、読み取った前記数値及び/又は文字に基づく前記クロマトグラフ分析が実行可能か否かを判定し、その結果を報知してもよい。
このクロマトグラフ装置によれば、クロマトグラフ装置の状態を設備が分析手順書に対応してクロマトグラフ分析が実行可能か否かを自動的に判定できるので、より簡易かつミスなくクロマトグラフ装置の分析ができる。
【0010】
本発明のクロマトグラフ装置は、前記クロマトグラフ装置とは別に、前記クロマトグラフ分析を実行可能な設備情報を記憶する記憶部をさらに備え、前記制御部は、前記クロマトグラフ分析が実行不能と判定したとき、前記記憶部に基づき、実行可能となる前記設備を報知してもよい。
このクロマトグラフ装置によれば、クロマトグラフ分析が実行不能であっても、実行可能とするような設備を自動的に報知するので、作業者は報知内容に従ってクロマトグラフ装置を整備してクロマトグラフ分析を容易に実行可能にすることができる。
また、本発明のクロマトグラフ装置において、前記文字は、単位を含んでもよく、前記位置は、前記分析手順書の所定の枠内、特定のページ、ヘッダ、及びフッタの少なくともいずれか1つであってもよい。
【0011】
本発明のクロマトグラフ装置において、前記分析手順書が複数存在する場合に、前記制御部は、一の分析手順書に基づき前記クロマトグラフ分析を実行した後、他の分析手順書の読み取りの有無をユーザに促すか、又は予め設定された複数の前記分析手順書の種類に基づき、他の分析手順書の読み取り及び前記クロマトグラフ分析の実行を行ってもよい。
このクロマトグラフ装置によれば、複数の分析手順書に従ったクロマトグラフ分析の実行をすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クロマトグラフ装置の分析の手順及び条件の変更が確実に装置側で実行され、簡易かつミスなく分析できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る液体クロマトグラフ装置の構成を示す図である。
【
図2】紙文書からなる分析手順書の一例を示す図である。
【
図6】制御部及び読取り部の処理フローを示す図である。
【
図7】分析手順書の位置を表すヘッダを示す図である。
【
図8】分析手順書の位置を表すヘッダを示す別の図である。
【
図9】複数の分析手順書に従ってクロマトグラフ分析を行う際のシーケンステーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る液体クロマトグラフ装置100の構成を示す図である。
液体クロマトグラフ装置100は、全体を制御するデータ処理装置7、移動相(溶離液と溶媒の混合溶液)1、移動相1を送液するポンプ2、試料を注入するオートサンプラ3、成分を分離するカラム4、カラム4を恒温にするカラムオーブン5、分離された成分を検出する検出器6、表示部10、読取り部11を備える。
【0015】
データ処理装置7は、分析を実行し分析結果を解析する制御部(CPU)9、分析結果または解析結果を保存する記憶部(ハードディスク等)8、図示しないROM及びRAMを有するコンピュータから構成される。表示部(モニタ)10は、分析結果や解析結果を表示する。
読取り部11は、分析手順書から後述する数値、文字及び/又は単位を読み取る。この分析手順書は紙文書20a、テキストデータを含むCDディスクやUSBメモリ等の記憶媒体20b、テキストデータを含みネットワーク200から配信される配信データ20cの形態とすることができる。
紙文書からなる分析手順書20aの場合、読取り部11はスキャナ(OCR:Optical Character Recognition)であり、記憶媒体からなる分析手順書20bの場合、読取り部11はリーダであり、配信データからなる分析手順20cの場合、読取り部11はネットワークインターフェースとリーダである。
【0016】
検出器6は信号強度を検出する素子を複数持ち、時間に対する信号強度を取得可能な検出器である。
試料は、オートサンプラ3のインジェクタ(図示せず)から注入され、ポンプ2から送液される移動相1とともにカラム5を通過し、試料中の種々の成分に分離される。
成分に分離された試料は、検出器6で検出される。検出器6の信号はデータ処理装置7に送られてデータ処理が行われる。
カラム4は、移動相1中に存在する試料の成分を分離する分離部として一般的に使用される装置である。カラム4としては、充填型カラムやモノリスカラム等がある。カラム4のカラム充填剤としては、吸着型、分配型、イオン交換型等の種々のタイプのものを使用することができる。カラム4を恒温に保ち、再現性よく試料の分離ができるように、カラム4は、カラムオーブン5内に設置されていることが望ましい。
【0017】
図2~
図5は、紙文書からなる分析手順書20aの一例を示す。
図2は分析手順書20aの表紙、
図3は分析手順書20aの目次(構成)、
図4、
図5は
図3の見出し「5.測定時の各装置部設定の条件」の具体的な手順及び条件を示す図である。
図3に示すように、この分析手順書20aの1~10の見出しにそれぞれ手順及び条件が記載されており、これに従って分析が行われる。又、「※□で囲まれた部分は、指定のフォーマットで記載されている項目になります。」と記載されている部分が、特許請求の範囲の「位置」に相当する枠内となっている。
又、「手順」とは、分析手順書20aの1~10の見出しの操作である。「条件」とは、各枠内に規定された、例えば「分析時間7min(7分)」などの実際の操作を行うときの条件である。
【0018】
図4、
図5に示すように、見出し「5.測定時の各装置部設定の条件」としては、4つの枠があり、それぞれデータ取得条件、送液条件、カラム保温部条件、試料注入部条件の順になっている。
なお、上記4つの枠がそれぞれデータ取得条件、送液条件、カラム保温部条件、試料注入部条件に関するものであることは、枠の中の最初の行の文字列(タイトル)を取得して認識することができる。但し、例えば送液条件なら、「送液条件」に限らず、「送液」に関するいくつかの単語を認識している。例えば、「送液」、「Pump」、「Flow」のいずれかが含まれていれば、送液条件と認識する。これは、分析手順書によって、送液に関するタイトルが異なる可能性があるからである。
【0019】
そして、読取り部11は、例えば
図4の「データ取得条件」の枠内の数値「7.0」及び文字(単位)「min」を読み取り、制御部9は分析時間を7min(7分)に設定する。同様に、「送液条件」の枠の溶媒A,Bとしてそれぞれ「10mM酢酸緩衝液」、「アセトニトリル」を読み取って設定する。
なお、例えば
図4の「データ取得条件」の枠内の情報として、分析時間、分析波長、データ取得間隔、データレスポンスの4つがあることが予め設定されている。又、分析時間の単位が「min」であることも設定されている。
従って、読取り部11は、「7.0」及び単位「min」を読み取ると、この数値が「分析時間」であると認識する。
但し、データ取得間隔、データレスポンスはいずれも単位が「ms」であるので、最初に出現した「ms」がデータ取得間隔、次に出現した「ms」がデータレスポンスであることも設定されている。
このようにして、
図4の「データ取得条件」の各数値等を読み取る。
図4の「送液条件」の最大圧力、最小圧力も同様である。
【0020】
又、
図4の「送液条件」の枠内の情報は次のように読み取る。
まず、「送液条件」の枠内の「溶媒A」~「溶媒D」を読み取ると、そのアルファベット大文字A~Dの右の文字列を読み取るよう設定されている。
従って、読取り部11は、「溶媒A」が「10mM酢酸緩衝液」、「溶媒B」が「アセトニトリル」と認識する。
又、読取り部11は、「送液タイムテーブル」のTime,Flow, 「溶媒B%」を読み取り、Timeの具体的な時間(min)を読み取って、その時間にFlowの流量にて、「溶媒B」であるアセトニトリルを、枠内の数値と単位%(例えば40%)に従って、溶媒Aの10mM酢酸緩衝液と混合して混合溶媒とする動作であると認識する。
【0021】
この設定は、例えばデータ処理装置7のRAM(ランダムアクセスメモリ)に一時データとして書き込んでもよく、記憶部8に書きこんでもよい。
RAMに書き込んだ場合、液体クロマトグラフ装置100の分析が終了して電源がOFFになるとデータは残らない。記憶部8に書き込んだ場合、液体クロマトグラフ装置100の分析が終了して電源がOFFになってもデータは残る。
但し、いずれの場合であっても、本発明では、クロマトグラフ分析を開始するときに、所定のタイミングで、読取り部11が最新の分析手順書を読み取り、読み取ったデータ、又は、当該読み取ったデータと予め関連付けられた事項に基づいて分析を実行する。
【0022】
また、「所定のタイミングで」分析手順書を読み取るとは、1つの分析手順書に従う「クロマトグラフ分析を開始する」時点から、実際のクロマトグラフ分析を実行し始めるまでの間の時間であればいつでもよい。
一方、分析手順書を読み取り、それらに基づいて分析をするが、分析を実行するときに、手順書に記載がなくとも、装置側で、後述の想定値も含むパラメータを分析手順書とは別に予めデフォルトで設定してもよい。パラメータは例えば以下のようなものが挙げられる。
a. ファームウェアのパラメータ(待ち時間、操作回数、ループ回数、記憶場所のアドレス、変換定数、換算係数など)
b. 組立調整時、保守点検に指定するパラメータ(出荷時に指定する装置固有の定数、フォトインタラプタの位置チューニング定数、検出感度に関するゼロ・スパン調整値など)
c. 顧客設定可能なパラメータのデフォルト値(ポンプの流量調整値、オートサンプラのエアギャップ体積、カラムオーブンの温度校正用調整値、検出器の時定数相当値など)
d. 分析手順書に記載なくとも、良識的に想定可能なパラメータ(データ処理装置の積分計算に関連する指定値、同定用タイムウインドウの許容時間など)
【0023】
これにより、分析条件が有効となる寿命は、クロマトグラフ分析の開始から終了までとなる。又、本実施形態では、測定データ(分析結果)は分析の終了時に出力装置または別なデータ管理ソフトウェアに出力され、測定データを装置100に残さない。
【0024】
又、本実施形態では、読み込まれた分析条件等のデータは、分析結果と一緒に出力(印刷又は、ファイル等に電子データとして出力)することも可能であり、後で分析結果を見たときにその時の分析条件を知ることも可能である。
【0025】
なお、分析手順書20aのうち、読み取り対象となるのは、枠内の数値、及び/又は文字、又は、当該読み取った数値及び/又は文字と予め関連付けられた事項であり、これらは文書又はテキストデータである。これに対し、文書(データ)内に埋め込まれたコード化で、別のソフトウェア等を用いらなければ判別できない情報や、文書からリンクされた別文書やリンク先等は読み取り対象としない。
【0026】
次に、
図6を参照し、制御部9及び読取り部11の処理フローについて説明する。
まず、読取り部11は、上述のようにして分析手順書20aの枠内の数値、及び/又は文字を読み取る(ステップS2)。
次に、制御部9はステップS2の読み取りが終了したかを判定する(ステップS4)。この判定は、読み取った分析手順書20aの終端記号が通常は電子ファイルに記述されているので、終端記号を読み取って行うことができる。
なお、本実施形態では、分析手順書20aの全ての情報を読み取り、次にそこから必要な値等を取得しているが、分析手順書20aから1行ずつ読み取ることも可能であり、その場合は、最後の行を読み出すとファイルシステムのインターフェス関数がファイルの末端であることを示す。
ステップS4で「Yes」であればステップS6へ移行し、「No」であればステップS2へ戻る。
【0027】
ステップS6で制御部9は、ステップS2で読み取ったデータに基づくクロマトグラフ分析が実行可能か否かを判定する。この判定は、例えば、分析に必要な項目(例えば、
図3の目次の1~10の見出し)に対応した設備(例えばカラム4の種類)を予め記憶部8に記憶しておくと共に、現在の装置100に実際に取り付けられた設備(カラム等)の種別を認識できるようにしておく。そして、ステップS2で読み取ったデータにおける設備が、実際の設備に対応するかを比較して行うことができる。
実際に取り付けられた設備(カラム等)の種別の認識方法は、例えばカラムに機械的な凸部を設け、カラム装着時に対応する装置側のスイッチを押すようにしたり、作業者がカラムの種別をデータ処理装置7に入力してもよい。
ステップS6で「Yes」であればステップS8へ移行し、「No」であればステップS20へ移行する。
【0028】
なお、例えばカラムの使用可能時間は、例えば、予めカラムの種別や登録番号を記憶しておき、分析時にその種別や登録番号を指定することで認識できる。又、カラムに情報タグを付け、カラムオーブンの中に設置すると、自動的にカラムの情報を読み出してもよい。
【0029】
ステップS8で制御部9は、ステップS2で読み取ったデータから認証済の情報を取得し、認証の有無を表示(報知)する。表示の方法は、例えば認証済の情報を取得できた場合は、「認証済」取得できなかった場合は、「Trial」の表示を透かしやヘッダ、フッダ等で表示する。
同様にクロマトグラフの表示画面の背景に透かし的にTrialを表示することや特定の位置に表示,強調することができる。
又、認証済の情報を取得する方法としては、例えば分析手順書の文書データの変更履歴を読み出して変更履歴の最終変更が「認証」をしめすものなら認証済みとして扱うことができる。その後、文書が変更されると自動的に変更履歴が記録される場合、最終変更が更新されて「認証済」でなくなる。
【0030】
ステップS8に続き、制御部9は、ステップS2で読み取ったデータに基づき、クロマトグラフ分析を実行する(ステップS10)。
次に、制御部9は、分析が終了した否かを判定する(ステップS12)。この判定は、例えば作業者が分析手順書20aによる分析を終了する旨をデータ処理装置7に入力して行うことができる。
ステップS12で「No」であればステップS2へ戻り、「Yes」であればステップS14に移行する。ステップS14では、制御部9は、別の分析手順書を用いる次の分析があるか否かを判定する。この判定は、例えば制御部9が表示部10に「次の分析の有無の問い合わせ」画面を表示し、作業者が次の分析の有無をデータ処理装置7に入力して行うことができる。ステップS14で「Yes」であればステップS2へ戻り、「No」であれば処理を終了する。
そして、ステップS2へ戻ると、別の分析手順書を読み取り、新たな手順及び条件で別の分析が開始されることになる。
【0031】
一方、ステップS6で「No」の場合、ステップS20で制御部9は、分析手順書20aによるクロマトグラフ分析が実行可能となる設備を表示(報知)する。
具体的には、例えば、上述のように記憶部8に記憶された分析に必要な項目に対応した設備(例えばカラム4の種類)を分析に必要な項目(例えば、
図3の目次の1~10の見出し)に、必要な設備(例えばカラム4の種類)を読み出して表示することで行うことができる。
ステップS20に続き、制御部9は、ステップS20で表示した設備が取り付けられたか否かを判定する(ステップS22)。この判定は、例えばステップS20で表示した設備(カラム)の種別を取得して行うことができる。
ステップS22で「Yes」であればステップS8へ移行し、「No」であれば処理を終了する。
【0032】
以上のように、分析の手順及び条件が記述された分析手順書を読み取って初めて分析が実行可能となるので、分析手順書が変更されると変更内容通りの分析を行うことができる。又、分析の手順と条件を作業者が入力する必要がない。これにより、分析の手順及び条件の変更が確実に装置側で実行され、簡易かつミスなくクロマトグラフ装置の分析ができる。
又、分析手順書をクロマトグラフ装置で書き換えることができないため、分析手順書が誤って変更されることを防止できる。
さらに、分析手順書は紙文書、又はテキストデータを含む形態であるので、文書(又は文書データ)として管理し易く、文書の変更やコピーが容易である。
【0033】
なお、分析手順書が認証済である旨が報知されると、その分析手順書が精査され、正規なものであることが認識できる。
又、認証済の分析手順書コピー可能としてもよい。
【0034】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
報知の方法は、表示部10への表示の他、音声による報知が挙げられる。
【0035】
分析手順書は、紙文書に限らず、テキストデータ等の電子ファイルでもよい。
分析手順書の読み取り位置は上記実施形態に限定されず、枠内の他、特定のページ、特定の文字列、ヘッダ、及びフッタの少なくともいずれか1つであってもよい。
例えば、
図7に示すように、読み取り対象でなく、一般の説明用に書かれているページのヘッダには、「Information part」というヘッダが記述されている。一方、
図8に示すように、分析条件等の読み取り対象のページのヘッダには、「Method part」というヘッダが記述されている。
従って、分析手順書の各ページのヘッダに基づき、「Method part」というヘッダが記述されているページの数字や文字を読み取ることで、文書中の言葉が一般の説明用に書かれている頁か、条件を指定するための頁かを判断し、必要な情報を取得することが可能である。
【0036】
分析手順書がテキストデータを含む場合、ヘッダ及び/又はフッタに記述された情報を読み取ればよい。
分析手順書が紙文書の場合、ヘッダ及び/又はフッタの1ページにおける位置関係を決めておき、その位置の情報を読み取ればよい。さらに、ページ番号の位置も設定しておき、ページ番号と対応してヘッダ及び/又はフッタを読み取ってもよい。
また、用紙の上辺/下辺等からの所定距離をヘッダ/フッタとして予め定め、この位置の情報を読取るようにしてもよい。
【0037】
分析手順書の位置の例として、特定の文字列としては、予め決められたものの他、例えば
図3の見出し1~10が相当する。この場合、
図3の見出し1~10をすべて読み取り、その中の見出し「5.測定時の各装置部設定の条件」以降で、次の見出し「6.取得データのピーク検出解析条件」より前の部分の文書を、見出し5の内容とみなして読み取るようにすることができる。
【0038】
読み取る文字は、単位を含んでもよい。この場合、例えば文字として「波長」、「nm」が記載されている場合、これらを同じ条件項目である「wavelength」とみなし、その単位を予め決められたもの(例えばnm)に設定こともできる。又、文字(単位)として「μL/min」が記載されている場合、これを「mL/min」に単位を統一し、その数値を変換することもできる。これらの例は、「読み取った数値及び/又は文字と予め関連付けられた事項」に相当する。
【0039】
また、分析手順書が複数存在する場合には、上記した
図6のステップS14の判定を行うことで、複数の分析手順書に従って、それぞれ別個のクロマトグラフ分析を行うことができる。この場合、ステップS14では、制御部は別の分析手順書の読み取りの有無をユーザに促し、別の分析手順書を読み取るか否かはユーザの判断となる。
これに対し、装置100側で予め複数の分析手順書の種類(例えば、分析手順書の個数又は名称等)を設定しておき、これに基づき、自動的に別の分析手順書の読み取り及びクロマトグラフ分析の実行を行うようにしてもよい。この設定としては、例えば
図9に示すようなシーケンステーブルを記憶部8に記憶しておき、このシーケンステーブルを読み出すことができる。
【0040】
図9の例では、クロマトグラフ分析の開始(分析装置の起動)後、所定の準備運転をした後、シーケンステーブルのステップ1~5に従って複数の分析手順書による分析を行う。
準備運転としては、ポンプ送液を開始し、カラムオーブンの温度安定化を待ち、検出器のランプの輝度安定化を待機する動作が挙げられる。
シーケンステーブルの各ステップでは、分析手順書とは別にバイアルNoが指定されており、指定されたバイアルNoのサンプルを吸引し、そのステップの分析手順書(ステップS1では分析手順書「A」)を読み取り、その条件のもとサンプルを注入して測定を行う。シーケンステーブルの各ステップでは、注入回数も指定されている。
【0041】
ステップ1が終了すると、制御部9は、次のステップ2のバイアルNo,注入回数を読み出し、さらに分析手順書の種類(名称)(A)を読み出す。制御部9は、分析手順書Aが、分析開始後のシーケンステーブルで読み取った分析手順書Aと同一の種類であるかを判定し、「Yes」であるので、ステップ2では分析手順書Aを再度読み取らず、ステップ1で読み取った分析手順書Aの情報を用いる。
ステップ2が終了すると、制御部9は、次のステップ3のバイアルNo,注入回数を読み出し、さらに分析手順書の種類(名称)(B)を読み出す。分析手順書Bはまだ読み取っていないので、分析手順書Bを読み取る。このようにしてステップ5まで行う。
【0042】
なお、シーケンステーブルから一度に分析手順書の種類(A,B,C)を読み出し、ステップ1を行う前に、先にすべての分析手順書A~Cを読み取るようにしてもよいが、各ステップ毎に個々に分析手順書を読み取ると、各分析手順書A~Cが常に最新の手順書であることを確認できる、次のステップに入る前であれば、分析手順書を読み込んで分析順序を入れ替えることができる、所定の測定中に緊急に別の測定が必要になった場合などにA~Cと別の手順書を読み込んで測定順序を変えることができる、等の利点がある。
【0043】
分析手順書の種類としては、上記した名称(A~C)の他、クロマトグラフ分析を行う複数の分析手順書の個数(
図9の例ではA~Cの3個)でもよい。
【符号の説明】
【0044】
9 制御部
10 記憶部
11 読取り部
20a~20c 分析手順書
100 クロマトグラフ装置
【手続補正書】
【提出日】2023-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
所定の手順及び条件に従ってクロマトグラフ分析を行うクロマトグラフ装置であって、
前記手順及び条件を含む分析手順書に従って前記クロマトグラフ分析を開始するときに、所定のタイミングで、前記手順及び条件が所定の位置に記載された紙文書である前記分析手順書から、前記位置に含まれる数値及び/又は文字を読み取る読取り部と、
前記読取り部が読み取った前記数値及び/又は前記文字に基づき、前記クロマトグラフ分析を実行する制御部と、を備えるクロマトグラフ装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明のクロマトグラフ装置は、所定の手順及び条件に従ってクロマトグラフ分析を行うクロマトグラフ装置であって、前記手順及び条件を含む分析手順書に従って前記クロマトグラフ分析を開始するときに、所定のタイミングで、前記手順及び条件が所定の枠内に記載された紙文書である前記分析手順書から、前記枠内の数値及び文字を読み取る読取り部と、前記読取り部が読み取った前記数値及び/又は前記文字に基づき、前記クロマトグラフ分析を実行する制御部と、を備える。