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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153338
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】チーズ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 19/032 20060101AFI20231005BHJP
   A23C 19/068 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A23C19/032
A23C19/068
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135860
(22)【出願日】2023-08-23
(62)【分割の表示】P 2023537706の分割
【原出願日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2022060892
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】川原 良介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 武志
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 和子
(57)【要約】
【課題】本発明は、白カビによる過剰なアンモニア臭の発生の抑制と、青カビによる熟成風味(特に呈味及び/又はコク)の増強とを両立させたチーズ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、チーズ本体と、チーズ本体の表面の少なくとも一部を覆う白カビと、チーズ本体の内部に含まれる青カビとを含むチーズであって、アンモニアの含有量に対する遊離グルタミン酸の含有量の比が質量比で0.70以上であり、遊離グルタミン酸の含有量が30mg%以上であるチーズ及びその製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チーズ本体と、チーズ本体の表面の少なくとも一部を覆う白カビと、チーズ本体の内部に含まれる青カビとを含む、チーズであって、
アンモニアの含有量に対する遊離グルタミン酸の含有量の比が質量比で0.70以上であり、
遊離グルタミン酸の含有量が30mg%以上であり、
以下の特徴(a)~(d):
(a)前記チーズ 1gを、内部標準物質としてシクロオクタノール 0.25ppmを使用して固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法により分析した場合、フェネチルアルコールのピーク面積の、シクロオクタノールのピーク面積に対する比が0.40以上である;
(b)前記チーズ 1gを、内部標準物質としてシクロオクタノール 0.25ppmを使用して固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法により分析した場合、2,5-ジメチルピラジンのピーク面積の、シクロオクタノールのピーク面積に対する比が0.15以下である;
(c)前記チーズ 1gを、内部標準物質としてシクロオクタノール 0.25ppmを使用して固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法により分析した場合、トリメチルピラジンのピーク面積の、シクロオクタノールのピーク面積に対する比が0.20以下である;
(d)前記チーズ 1gを、内部標準物質としてシクロオクタノール 0.25ppmを使用して固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法により分析した場合、テトラメチルピラジンのピーク面積の、シクロオクタノールのピーク面積に対する比が0.050以下である
のうちの1以上を満たす、チーズ。
【請求項2】
個包装された、請求項1に記載のチーズ。
【請求項3】
熟成後に殺菌処理された、請求項1に記載のチーズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チーズ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カビ熟成タイプのナチュラルチーズとして、例えば、カマンベールチーズ、ブリーチーズ、ブリア・サヴァラン、バラカ、シャウルス等の白カビチーズ(表皮が白カビで覆われているソフトチーズ)、ゴルゴンゾーラ、スティルトン、ロックフォール等の青カビチーズ(青カビを繁殖させ、その働きで内部から風味を作り出す、いわゆるブルーチーズ)等が知られている。
【0003】
その他のナチュラルチーズとして、カンボゾラ、ババリアブルー等の、表皮が白カビで覆われており、内部に青カビが含まれているチーズ(例えば、カマンベールチーズの中に青カビが生えた形態のチーズ)が知られている。
【0004】
表皮が白カビで覆われており、内部に青カビが含まれているチーズ(以下「白カビ/青カビチーズ」という。)は、例えば、青カビ及び白カビをバランス良く生育させるために、例えば、以下の工程により製造される。
・原料乳に青カビを接種してカードを作製する。
・カード内部に青カビを生育させる空隙を形成させる。
・青カビの生育に必要な酸素を供給するため、カードに対して穿孔(ピアシング)を行う。
・カード表面に白カビを付着させる。
・カードを熟成させる。
【0005】
一方、従来のナチュラルチーズとは異なる新規な風味を有するナチュラルチーズが望まれている。例えば、特許文献1には、熟成を酸素欠乏下で行うことを特徴とするナチュラルチーズの製造方法が記載されている。特許文献1に記載の製造方法によれば、固形分100gあたり、セリン250mg以上、グルタミン410mg以上、プロリン380mg以上、グリシン130mg以上及びアラニン160mg以上の甘味系遊離アミノ酸を含有するナチュラルチーズを製造できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3370815号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的な青カビチーズでは、良好な風味を得るために、最低1~2か月の熟成期間を要する。一方、一般的な白カビチーズの熟成期間は、2週間~1ヵ月程度と短い。
【0008】
白カビ/青カビチーズを製造する際、熟成期間中、白カビが有するアミノ酸デヒドロゲナーゼによりアミノ酸が分解され、アンモニアが発生する。このため、白カビ/青カビチーズを製造する際、一般的な青カビチーズの熟成期間を採用すると、白カビにより過剰なアンモニア臭が発生する。一方、過剰なアンモニア臭の発生を抑制するために、熟成期間を短くすると、青カビによる熟成が不十分となり、青カビによる熟成風味(特に呈味及び/又はコク)が弱くなる。したがって、白カビ/青カビチーズでは、良好な風味を実現することが難しい。例えば、市場流通している生タイプの白カビ/青カビチーズでは、流通又は保存中に白カビによる熟成が進行してアンモニア臭や苦みが強くなる傾向がある。白カビによる過剰な熟成を防ぎ、賞味期限を延長する方法として加熱処理が挙げられるが、加熱処理タイプの白カビ/青カビチーズでは、青カビによる熟成風味が弱い傾向がある。
【0009】
このように、白カビ/青カビチーズでは、青カビによる熟成風味(特に呈味及び/又はコク)の増強を優先すると、白カビにより過剰なアンモニア臭が発生する。一方、白カビによる過剰なアンモニア臭の発生の抑制を優先すると、青カビによる熟成風味(特に呈味及び/又はコク)が不十分となる。
【0010】
そこで、本発明は、白カビによる過剰なアンモニア臭の発生の抑制と、青カビによる熟成風味(特に呈味及び/又はコク)の増強とを両立させたチーズ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のチーズ及びその製造方法を提供する。
[1]チーズ本体と、チーズ本体の表面の少なくとも一部を覆う白カビと、チーズ本体の内部に含まれる青カビとを含む、チーズであって、
アンモニアの含有量に対する遊離グルタミン酸の含有量の比が質量比で0.70以上であり、
遊離グルタミン酸の含有量が30mg%以上である、チーズ。
[2]アンモニアの含有量に対する遊離アラニンの含有量の比が質量比で0.30以上である、[1]に記載のチーズ。
[3]遊離アラニンの含有量が12mg%以上である、[2]に記載のチーズ。
[4]アンモニアの含有量に対する遊離イソロイシンの含有量の比が質量比で0.10以上である、[1]~[3]のいずれかに記載のチーズ。
[5]遊離イソロイシンの含有量が4mg%以上である、[4]に記載のチーズ。
[6]アンモニアの含有量が250mg%以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のチーズ。
[7]遊離セリンの含有量が6mg%以上であり、遊離グルタミンの含有量が100mg%以下であり、遊離プロリンの含有量が6mg%以上であり、遊離グリシンの含有量が150mg%以下であり、遊離アラニンの含有量が12mg%以上である、[1]~[6]のいずれかに記載のチーズ。
[8]遊離セリン、遊離グルタミン、遊離プロリン、遊離グリシン及び遊離アラニンの合計含有量が39mg%以上1250mg%以下である、[7]に記載のチーズ。
[9]ノルフラネオールの含有量が1.0ppm以上である、[1]~[8]のいずれかに記載のチーズ。
[10]酪酸の含有量が4.0ppm以上である、[1]~[9]のいずれかに記載のチーズ。
[11]前記チーズ 1gを、内部標準物質としてシクロオクタノール 0.25ppmを使用して固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法により分析した場合、フェネチルアルコールのピーク面積の、シクロオクタノールのピーク面積に対する比が0.40以上である、[1]~[10]のいずれかに記載のチーズ。
[12]前記チーズ 1gを、内部標準物質としてシクロオクタノール 0.25ppmを使用して固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法により分析した場合、2,5-ジメチルピラジンのピーク面積の、シクロオクタノールのピーク面積に対する比が0.15以下である、[1]~[11]のいずれかに記載のチーズ。
[13]前記チーズ 1gを、内部標準物質としてシクロオクタノール 0.25ppmを使用して固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法により分析した場合、トリメチルピラジンのピーク面積の、シクロオクタノールのピーク面積に対する比が0.20以下である、[1]~[12]のいずれかに記載のチーズ。
[14]前記チーズ 1gを、内部標準物質としてシクロオクタノール 0.25ppmを使用して固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法により分析した場合、テトラメチルピラジンのピーク面積の、シクロオクタノールのピーク面積に対する比が0.050以下である、[1]~[13]のいずれかに記載のチーズ。
[15]個包装された、[1]~[14]のいずれかに記載のチーズ。
[16]熟成後に殺菌処理された、[1]~[15]のいずれかに記載のチーズ。
[17]以下の工程:
(a)青カビを含むカードを準備する工程;
(b)カードの表面に白カビを付着させる工程;及び
(c)カードを熟成させる工程
を含む、[1]~[16]のいずれかに記載のチーズを製造する方法であって、
工程(c)における熟成が、低酸素環境での熟成を含む、方法。
[18]低酸素環境での熟成を、カードをガスバリア性容器に収容した状態で実施し、
ガスバリア性容器を密封すること、ガスバリア性容器内に脱酸素剤を存在させること、及び、ガスバリア性容器内の空気を不活性ガスで置換することから選択される1種以上の手段により、ガスバリア性容器内の環境を低酸素環境とする、[17]に記載の方法。
[19]低酸素環境での熟成を、個包装されていないカードに対して実施する、[17]又は[18]に記載の方法。
[20]工程(c)の後に個包装を実施する工程をさらに含む、[19]に記載の方法。
[21]低酸素環境での熟成を、個包装されたカードに対して実施する、[17]又は[18]に記載の方法。
[22]低酸素環境での熟成を、温度:3~20℃、湿度:70~100%、酸素濃度:0~15%及び熟成期間:1日以上30日以下の条件で実施する、[17]~[21]のいずれかに記載の方法。
[23]工程(c)の後に殺菌処理を実施する工程をさらに含む、[17]~[22]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、白カビによる過剰なアンモニア臭の発生の抑制と、青カビによる熟成風味(特に呈味及び/又はコク)の増強とを両立させたチーズ及びその製造方法が提供される。白カビによる過剰なアンモニア臭の発生の抑制と、青カビによる熟成風味(特に呈味及び/又はコク)の増強との両立により、従来のナチュラルチーズとは異なる新規な風味(特に独特の呈味及び/又はコク)を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について説明する。なお、本発明において、「mg%」は、チーズ100gあたりの含有量(mg)を意味し、「ppm」は、質量ppmを意味する。
【0014】
≪チーズ≫
本発明のチーズは、チーズ本体と、チーズ本体の表面の少なくとも一部を覆う白カビと、チーズ本体の内部に含まれる青カビとを含む。
【0015】
本発明のチーズは、ナチュラルチーズの一種である。
【0016】
本発明のチーズは、ホールチーズであってもよいし、ポーションチーズであってもよい。ホールチーズは、例えば、円盤形、円柱形、立方体、長方体等である。ポーションチーズは、ホールチーズを複数(例えば、2個、3個、4個、6個、8個、10個、12個等)のポーションに切り分けて得られるチーズ断片であり、ポーションチーズの平面視形状は、例えば、扇形、三角形、正方形、長方形等である。
【0017】
チーズ本体は、白カビ及び青カビにより熟成(発酵)した状態にある。
【0018】
白カビは、チーズ本体の表面の少なくとも一部を覆う。白カビは、通常、白カビ層を形成している。白カビは、チーズ本体の表面の一部を覆っていてもよいし、チーズ本体の表面の全体を覆っていてもよい。ホールチーズの場合、チーズ本体の表面積のうち白カビで覆われている部分の面積の割合は、例えば70~100%、好ましくは80~100%、より好ましくは90~100%である。ポーションチーズの場合、チーズ本体の表面積のうち白カビで覆われている部分の面積の割合は、例えば20~80%、好ましくは30~70%、より好ましくは40~60%である。チーズ本体の表面積のうち白カビで覆われている部分の面積の割合が大きいほど、殺菌処理時の漏れが生じにくい。白カビとしては、例えば、Penicillium camemberti、Penicillium candidum、Penicillium caseicolum、Geotrichum candidum等が挙げられる。1種の白カビを単独で使用してもよいし、2種以上の白カビを併用してもよい。
【0019】
青カビは、チーズ本体の内部に含まれる。青カビとしては、例えば、Penicillium roqueforti、Penicillium galaucum等が挙げられる。1種の青カビを単独で使用してもよいし、2種以上の青カビを併用してもよい。
【0020】
本発明のチーズは、個包装されたものであってもよい。本発明のチーズは、例えば、個包装されたホールチーズであってもよいし、個包装されたポーションチーズであってもよい。個包装により、チーズの品質変化を防止できるとともに、喫食時の取り扱いやすさが向上する。個包装には、食品包装用途に通常使用される包装材、例えば、プラスチック製フィルム、包材紙等を使用できる。個包装は、通常の個包装と同様の条件で行えばよく、通常の個包装に使用される包装機を使用して実施できる。ポーションチーズを個包装する場合、開封時にポーションカット切断面と包装材との剥がれをより良好にするに、ゼラチン等のゲル化剤を塗布した包装材を使用するとよい。ポーションチーズの個包装は、切断面に包装材が密着するように包装すること等、通常のポーションカット品の個包装と同様の条件で行えばよく、通常のポーションカット品の個包装に使用される包装機を使用して実施できる。
【0021】
本発明のチーズは、熟成後に殺菌処理されたものであってもよい。殺菌処理としては、例えば、密封容器に収容されたチーズ又は個包装されたチーズを加熱殺菌する処理を例示できる。殺菌処理の条件としては公知の条件を採用できる。殺菌処理は、例えば、中心温度が80℃以上となるような温度で実施できる。当該温度での保持時間は、例えば10分間以上、好ましくは20分間以上である。ホールチーズをそのまま密封容器に収容して殺菌処理を実施してもよいし、ホールチーズを適当な個数に切り分けて得られるポーションチーズを密封容器に収容して殺菌処理を実施してもよい。ホールチーズ又はポーションチーズをフィルム、包材紙等の包装材により個包装して殺菌処理を実施してもよい。殺菌処理に使用される密封容器としては、例えば、金属缶、アルミパウチ、ポリプロピレン等のプラスチック製容器等が挙げられる。殺菌処理は、レトルト処理(加圧加熱殺菌処理)であってもよい。レトルト処理の条件としては公知の条件を採用できる。
【0022】
本発明のチーズは、以下の特徴Aを有する。
[特徴A]
アンモニアの含有量に対する遊離グルタミン酸の含有量の比が質量比で0.70以上であり、遊離グルタミン酸の含有量が30mg%以上である。
【0023】
特徴Aは、白カビによる過剰なアンモニア臭の発生の抑制と、青カビによる熟成風味(特に旨味等の呈味)の増強とが両立された結果として実現される特徴である。特徴Aにより、従来のナチュラルチーズとは異なる新規な風味(特に独特の呈味)を実現できる。
【0024】
アンモニアの含有量に対する遊離グルタミン酸の含有量の比が大きいほど、白カビによる過剰なアンモニア臭の発生の抑制と、青カビによる熟成風味(特に旨味等の呈味)の増強とがより効果的に両立されているといえる。したがって、アンモニアの含有量に対する遊離グルタミン酸の含有量の比は、質量比で、0.80以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.3以上であることがより一層好ましい。上限は特に限定されないが、他の成分とのバランスを考慮すると、好ましくは10以下、より好ましくは8.0以下、より一層好ましくは5.0以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0025】
遊離グルタミン酸は、呈味成分(特に旨味成分)であり、遊離グルタミン酸の含有量が大きいほど、白カビ及び青カビによる熟成風味(特に旨味等の呈味)が増強されているといえる。適度な旨味を実現する観点から、遊離グルタミン酸の含有量は、40mg%以上であることが好ましく、45mg%以上であることがより好ましく、60mg%以上であることがより一層好ましい。上限は特に限定されないが、他の成分とのバランスを考慮し、適度な旨味を実現する観点や、チーズの内部の硬さの観点から、好ましくは1000mg%以下、より好ましくは750mg%以下、より一層好ましくは500mg%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0026】
以下、本発明のチーズの付加的特徴(特徴B~N)を説明する。特徴B~Nのうち2以上を組み合わせることができ、特徴B~Nのうち2以上を有するチーズも本発明に包含される。
【0027】
特徴B~Hは、白カビによる過剰なアンモニア臭の発生の抑制と、青カビによる熟成風味(特に呈味)の増強とが両立された結果として実現される特徴である。特徴Aと特徴B~Hのうち1又は2以上とが相俟って、従来のナチュラルチーズとは異なる新規な風味(特に独特の呈味)をより効果的に実現できる。したがって、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴B~Hのうち1又は2以上とを有することが好ましい。
【0028】
特徴I~Nは、白カビによる過剰なアンモニア臭の発生の抑制と、青カビによる熟成風味(特にコク)の増強とが両立された結果として実現される特徴である。特徴Aと特徴I~Nのうち1又は2以上とが相俟って、従来のナチュラルチーズとは異なる新規な風味(特に独特の呈味及びコク)をより効果的に実現できる。したがって、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴I~Nのうち1又は2以上とを有することが好ましい。
【0029】
特徴Aと、特徴B~Hのうち1又は2以上と、特徴I~Nのうち1又は2以上とが相俟って、従来のナチュラルチーズとは異なる新規な風味(特に独特の呈味及びコク)をより効果的に実現できる。したがって、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴B~Hのうち1又は2以上と、特徴I~Nのうち1又は2以上とを有することが好ましい。
【0030】
本発明のチーズは、以下の特徴Bを有することが好ましい。
[特徴B]アンモニアの含有量に対する遊離アラニンの含有量の比が質量比で0.30以上である。
【0031】
アンモニアの含有量に対する遊離アラニンの含有量の比が大きいほど、白カビによる過剰なアンモニア臭の発生の抑制と、青カビによる熟成風味(特に甘味、旨味等の呈味)の増強とがより効果的に両立されているといえる。したがって、アンモニアの含有量に対する遊離アラニンの含有量の比は、質量比で、0.30以上であることが好ましく、0.40以上であることがより好ましく、0.50以上であることがより一層好ましく、0.60以上であることがより一層好ましい。上限は特に限定されないが、他の成分とのバランスを考慮すると、好ましくは10以下、より好ましくは5.0以下、より一層好ましくは3.0以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0032】
一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Bとを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Bと、特徴C~Hのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Bと、特徴I~Nのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Bと、特徴C~Hのうち1又は2以上と、特徴I~Nのうち1又は2以上とを有する。
【0033】
本発明のチーズは、以下の特徴Cを有することが好ましい。特に、本発明のチーズが特徴Bを有する場合、本発明のチーズは特徴Cも有することが好ましい。
[特徴C]遊離アラニンの含有量が12mg%以上である。
【0034】
遊離アラニンは、呈味成分(特に甘味及び旨味成分)であり、遊離アラニンの含有量が大きいほど、白カビ及び青カビによる熟成風味(特に甘味、旨味等の呈味)が増強されているといえる。適度な甘味及び旨味を実現する観点から、遊離アラニンの含有量は、12mg%以上であることが好ましく、15mg%以上であることがより好ましく、20mg%以上であることがより一層好ましく、30mg%以上であることがより一層好ましい。上限は特に限定されないが、他の成分とのバランスを考慮し、適度な甘味及び旨味を実現する観点から、好ましくは300mg%以下、より好ましくは200mg%以下、より一層好ましくは100mg%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0035】
一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Cとを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Cと、特徴B及びD~Hのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Cと、特徴I~Nのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Cと、特徴B及びD~Hのうち1又は2以上と、特徴I~Nのうち1又は2以上とを有する。
【0036】
本発明のチーズは、以下の特徴Dを有することが好ましい。
[特徴D]アンモニアの含有量に対する遊離イソロイシンの含有量の比が質量比で0.10以上である。
【0037】
アンモニアの含有量に対する遊離イソロイシンの含有量の比が大きいほど、白カビによる過剰なアンモニア臭の発生の抑制と、青カビによる熟成風味(特に苦味等の呈味)の増強とがより効果的に両立されているといえる。したがって、アンモニアの含有量に対する遊離イソロイシンの含有量の比は、質量比で、0.10以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましく、0.20以上であることがより一層好ましく、0.30以上であることがより一層好ましい。上限は特に限定されないが、他の成分とのバランスを考慮すると、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.5以下、より一層好ましくは4.0以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0038】
一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Dとを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Dと、特徴B~C及びE~Hのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Dと、特徴I~Nのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Dと、特徴B~C及びE~Hのうち1又は2以上と、特徴I~Nのうち1又は2以上とを有する。
【0039】
本発明のチーズは、以下の特徴Eを有することが好ましい。特に、本発明のチーズが特徴Dを有する場合、本発明のチーズは特徴Eも有することが好ましい。
[特徴E]遊離イソロイシンの含有量が4mg%以上である。
【0040】
遊離イソロイシンは、呈味成分(苦味成分)であり、遊離イソロイシンの含有量が大きいほど、白カビ及び青カビによる熟成風味(特に苦味等の呈味)が増強されているといえる。適度な苦味を実現する観点から、遊離イソロイシンの含有量は、4mg%以上であることが好ましく、5mg%以上であることがより好ましく、6mg%以上であることがより一層好ましく、10mg%以上であることがより一層好ましい。上限は特に限定されないが、他の成分とのバランスを考慮し、適度な苦味を実現する観点から、好ましくは800mg%以下、好ましくは500mg%以下、より一層好ましくは350mg%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0041】
一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Eとを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Eと、特徴B~D及びF~Hのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Eと、特徴I~Nのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Eと、特徴B~D及びF~Hのうち1又は2以上と、特徴I~Nのうち1又は2以上とを有する。
【0042】
本発明のチーズは、以下の特徴Fを有することが好ましい。特に、本発明のチーズが特徴Aに加えて特徴B(特に特徴B及びC)を有する場合、又は、本発明のチーズが特徴Aに加えて特徴D(特に特徴D及びE)を有する場合、本発明のチーズは特徴Fも有することが好ましい。
[特徴F]アンモニアの含有量が250mg%以下である。
【0043】
アンモニアの含有量が小さいほど、白カビによる過剰なアンモニア臭の発生が抑制されているといえる。したがって、アンモニアの含有量は、250mg%以下であることが好ましく、200mg%以下であることがより好ましく、150mg%以下であることがより一層好ましく、100mg%未満であることがより一層好ましい。下限は特に限定されないが、例えば、4mg%以上、20mg%以上又は40mg%以上である。これらの下限はそれぞれ、上述の上限のいずれと組み合わせてもよい。
【0044】
一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Fとを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Fと、特徴B~E及びG~Hのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Fと、特徴I~Nのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Fと、特徴B~E及びG~Hのうち1又は2以上と、特徴I~Nのうち1又は2以上とを有する。
【0045】
本発明のチーズは、以下の特徴Gを有することを好ましい。
[特徴G]遊離セリンの含有量が6mg%以上であり、遊離グルタミンの含有量が100mg%以下であり、遊離プロリンの含有量が6mg%以上であり、遊離グリシンの含有量が150mg%以下であり、遊離アラニンの含有量が12mg%以上である。
【0046】
遊離セリンは、呈味成分(特に甘味成分)である。適度な甘味を実現する観点から、遊離セリンの含有量は、6mg%以上であることが好ましく、8mg%以上であることがより好ましく、9mg%以上であることがより一層好ましく、15mg%以上であることがより一層好ましい。上限は特に限定されないが、他の成分とのバランスを考慮し、適度な甘味を実現する観点から、好ましくは300mg%以下、好ましくは200mg%以下、より一層好ましくは150mg%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0047】
遊離グルタミンは、呈味成分(特に甘味及び旨味成分)である。適度な甘味及び旨味を実現する観点から、遊離グルタミンの含有量は、100mg%以下であることが好ましく、90mg%以下であることがより好ましく、70mg%以下であることがより一層好ましく、50mg%以下であることがより一層好ましい。下限は特に限定されないが、他の成分とのバランスを考慮し、適度な甘味及び旨味を実現する観点から、これらの下限はそれぞれ、上述の上限のいずれと組み合わせてもよい。
【0048】
遊離プロリンは、呈味成分(特に甘味及び苦味成分)である。適度な甘味及び苦味を実現する観点から、遊離プロリンの含有量は、6mg%以上であることが好ましく、7mg%以上であることがより好ましく、10mg%以上であることがより一層好ましく、17mg%以上であることがより一層好ましい。上限は特に限定されないが、他の成分とのバランスを考慮し、適度な甘味及び苦味を実現する観点から、好ましくは300mg%以下、好ましくは250mg%以下、より一層好ましくは200mg%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0049】
遊離グリシンは、呈味成分(特に甘味及び旨味成分)である。適度な甘味及び旨味を実現する観点から、遊離グリシンの含有量は、150mg%以下であることが好ましく、130mg%以下であることがより好ましく、100mg%以下であることがより一層好ましく、50mg%以下であることがより一層好ましい。下限は特に限定されないが、他の成分とのバランスを考慮し、適度な甘味及び旨味を実現する観点から、好ましくは3mg%以上、好ましくは4mg%以上、より一層好ましくは5mg%以上である。これらの下限はそれぞれ、上述の上限のいずれと組み合わせてもよい。
【0050】
遊離アラニンの含有量の好ましい範囲は、特徴Cに記載の通りである。
【0051】
一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Gとを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Gと、特徴B~F及びHのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Gと、特徴I~Nのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Gと、特徴B~F及びHのうち1又は2以上と、特徴I~Nのうち1又は2以上とを有する。
【0052】
本発明のチーズは、以下の特徴Hを有することが好ましい。特に、本発明のチーズが特徴Gを有する場合、本発明のチーズは特徴Hも有することが好ましい。
[特徴H]遊離セリン、遊離グルタミン、遊離プロリン、遊離グリシン及び遊離アラニンの合計含有量が39mg%以上1250mg%以下である。
【0053】
従来のナチュラルチーズとは異なる新規な風味(特に独特の呈味)を実現する観点から、遊離セリン、遊離グルタミン、遊離プロリン、遊離グリシン及び遊離アラニンの合計含有量は、39mg%以上1250mg%以下であることが好ましく、50mg%以上850mg%以下であることがより好ましく、75mg%以上550mg%以下であることがより一層好ましく、80mg%以上500mg%以下であることがより一層好ましい。
【0054】
一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Hとを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Hと、特徴B~Gのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Hと、特徴I~Nのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Hと、特徴B~Gのうち1又は2以上と、特徴I~Nのうち1又は2以上とを有する。
【0055】
チーズにおける各種アミノ酸及びアンモニアの含有量は、実施例に記載の方法に従って測定できる。
【0056】
本発明のチーズは、以下の特徴Iを有することが好ましい。
[特徴I]ノルフラネオールの含有量が1.0ppm以上である。
【0057】
ノルフラネオール(4-ヒドロキシ-5-メチル-3(2H)-フラノン)は、芳ばしい香りを呈する香気成分であり、ノルフラネオールの含有量が大きいほど、白カビ及び青カビによる熟成風味(特にコク)が増強されているといえる。したがって、ノルフラネオールの含有量は、1.0ppm以上であることが好ましく、1.2ppm以上であることがより好ましく、1.5ppm以上であることがより一層好ましく、2.0ppm以上であることがより一層好ましい。上限は特に限定されないが、他の成分とのバランスを考慮し、適度な熟成風味(特にコク)を実現する観点から、好ましくは35ppm以下、より好ましくは30ppm以下、より一層好ましくは25ppm以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0058】
一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Iとを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Iと、特徴B~Hのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Iと、特徴J~Nのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Iと、特徴B~Hのうち1又は2以上と、特徴J~Nのうち1又は2以上とを有する。
【0059】
本発明のチーズは、以下の特徴Jを有することが好ましい。
[特徴J]酪酸の含有量が4.0ppm以上である。
【0060】
酪酸は、チーズらしい香りを呈する香気成分であり、酪酸の含有量が大きいほど、白カビ及び青カビによる熟成風味(特にコク)が増強されているといえる。したがって、酪酸の含有量は、4.0ppm以上であることが好ましく、5.0ppm以上であることがより好ましく、6.0ppm以上であることがより一層好ましく、7.0ppm以上であることがより一層好ましく、8.0ppm以上であることがより一層好ましい。上限は特に限定されないが、他の成分とのバランスを考慮し、適度な熟成風味(特にコク)を実現する観点から、好ましくは50ppm以下、より好ましくは48ppm以下、より一層好ましくは45ppm以下、より一層好ましくは40ppm以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0061】
一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Jとを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Jと、特徴B~Hのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Jと、特徴I及びK~Nのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Jと、特徴B~Hのうち1又は2以上と、特徴I及びK~Nのうち1又は2以上とを有する。
【0062】
本発明のチーズは、以下の特徴Kを有することが好ましい。
[特徴K]本発明のチーズ 1gを、内部標準物質としてシクロオクタノール 0.25ppmを使用して固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法により分析した場合、フェネチルアルコールのピーク面積の、シクロオクタノールのピーク面積に対する比(以下「比R1」という。)が0.40以上である。
【0063】
フェネチルアルコールは、パン(例えば、ライ麦パン等)、アルコール(例えば、日本酒、ワイン等)等のような甘く好ましい香りを呈する香気成分であり、比R1が大きいほど、白カビ及び青カビによる熟成風味(特にコク)が増強されているといえる。したがって、比R1は、0.40以上であることが好ましく、0.45以上であることがより好ましく、0.50以上であることがより一層好ましく、0.58以上であることがより一層好ましい。上限は特に限定されないが、他の成分とのバランスを考慮し、適度な熟成風味(特にコク)を実現する観点から、比R1は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下、より一層好ましくは1.0以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0064】
一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Kとを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Kと、特徴B~Hのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Kと、特徴I~J及びL~Nのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Kと、特徴B~Hのうち1又は2以上と、特徴I~J及びL~Nのうち1又は2以上とを有する。
【0065】
本発明のチーズは、以下の特徴Lを有することが好ましい。
[特徴L]本発明のチーズ 1gを、内部標準物質としてシクロオクタノール 0.25ppmを使用して固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法により分析した場合、2,5-ジメチルピラジンのピーク面積の、シクロオクタノールのピーク面積に対する比(以下「比R2」という。)が0.15以下である。
【0066】
2,5-ジメチルピラジンは、焼成したエビ、カニ等のような芳ばしい香りを呈する香気成分であり、比R2が適度であると、白カビ及び青カビによる熟成風味(特にコク)が増強されているといえるが、比R2が大きすぎると、焼成したエビ、カニ等のような芳ばしい香りが強くなりすぎてチーズらしさが出現しにくくなる。したがって、比R2は、0.15以下であることが好ましく、0.12以下であることが好ましく、0.10以下であることがより好ましく、0.08以下であることがより一層好ましい。また、比R2は、0.01以上であることが好ましく、0.02以上であることがより好ましく、0.04以上であることがより一層好ましい。これらの下限はそれぞれ、上述の上限のいずれと組み合わせてもよい。
【0067】
一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Lとを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Lと、特徴B~Hのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Lと、特徴I~K及びM~Nのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Lと、特徴B~Hのうち1又は2以上と、特徴I~K及びM~Nのうち1又は2以上とを有する。
【0068】
本発明のチーズは、以下の特徴Mを有することが好ましい。特に、本発明のチーズが特徴I~Kのうちの1又は2以上を有する場合、本発明のチーズは特徴Mも有することが好ましい。
[特徴M]本発明のチーズ 1gを、内部標準物質としてシクロオクタノール 0.25ppmを使用して固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法により分析した場合、トリメチルピラジンのピーク面積の、シクロオクタノールのピーク面積に対する比(以下「比R3」という。)が0.20以下である。
【0069】
トリメチルピラジンは、焼成したエビ、カニ等のような芳ばしい香りを呈する香気成分であり、比R3が適度であると、白カビ及び青カビによる熟成風味(特にコク)が増強されているといえるが、比R3が大きすぎると、焼成したエビ、カニ等のような芳ばしい香りが強くなりすぎてチーズらしさが出現しにくくなる。したがって、比R3は、0.20以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましく、0.10以下であることがより一層好ましい。また、比R3は、0.01以上であることが好ましく、0.02以上であることがより好ましく、0.04以上であることがより一層好ましい。これらの下限はそれぞれ、上述の上限のいずれと組み合わせてもよい。
【0070】
一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Mとを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Mと、特徴B~Hのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Mと、特徴I~L及びNのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Mと、特徴B~Hのうち1又は2以上と、特徴I~L及びNのうち1又は2以上とを有する。
【0071】
本発明のチーズは、以下の特徴Nを有することが好ましい。特に、本発明のチーズが特徴I~Kのうちの1又は2以上を有する場合、本発明のチーズは特徴Nも有することが好ましい。
[特徴N]本発明のチーズ 1gを、内部標準物質としてシクロオクタノール 0.25ppmを使用して固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法により分析した場合、テトラメチルピラジンのピーク面積の、シクロオクタノールのピーク面積に対する比(以下「比R4」という。)が0.050以下である。
【0072】
テトラメチルピラジンは、焼成したエビ、カニ等のような芳ばしい香りを呈する香気成分であり、比R4が適度であると、白カビ及び青カビによる熟成風味(特にコク)が増強されているといえるが、比R4が大きすぎると、焼成したエビ、カニ等のような芳ばしい香りが強くなりすぎてチーズらしさが出現しにくくなる。したがって、比R4は、0.050以下であることが好ましく、0.040以下であることがより好ましく、0.028以下であることがより一層好ましく、0.025以下であることがより一層好ましい。また、比R4は、0.001以上であることが好ましく、0.002以上であることがより好ましく、0.005以上であることがより一層好ましく、0.010以上であることがより一層好ましい。
【0073】
一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Nとを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Nと、特徴B~Hのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Nと、特徴I~Mのうち1又は2以上とを有する。一実施形態において、本発明のチーズは、特徴Aと、特徴Nと、特徴B~Hのうち1又は2以上と、特徴I~Mのうち1又は2以上とを有する。
【0074】
固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法(SPME-GC/MS)による成分分析は、実施例に記載の方法に従って行うことができる。
【0075】
≪チーズの製造方法≫
本発明のチーズは、以下の工程:
(a)青カビを含むカードを準備する工程;
(b)カードの表面に白カビを付着させる工程;及び
(c)カードを熟成させる工程
を含む方法であって、工程(c)における熟成が低酸素環境での熟成を含む方法により製造できる。
【0076】
上記方法によれば、白カビによる過剰な熟成を抑制できるとともに、青カビによる適度な熟成を実現できる。したがって、上記方法によれば、白カビによる過剰なアンモニア臭の発生の抑制と、青カビによる熟成風味(特に呈味及び/又はコク)の増強とを両立させたチーズを製造できる。白カビによる過剰なアンモニア臭の発生の抑制と、青カビによる熟成風味(特に呈味及び/又はコク)の増強との両立により、従来のナチュラルチーズとは異なる新規な風味(特に独特の呈味及び/又はコク)を実現できる。
【0077】
工程(a)では、青カビを含むカードを準備する。工程(a)は、例えば、次のようにして実施できる。
【0078】
まず、原料乳を準備する。原料乳としては、通常、生乳を使用する。生乳としては、例えば、牛乳、羊乳、水牛乳、山羊乳等が挙げられるが、牛乳が一般的である。2種以上の生乳の混合物を使用してもよい。
【0079】
原料乳に清浄化処理を施してもよい。清浄化処理の後、通常、原料乳に標準化処理を施す。すなわち、原料乳の成分(例えば、脂肪、タンパク質等)を調整し、標準化する。標準化処理の後、原料乳に均質化処理を施してもよい。均質化処理は、例えば、ホモジナイザーを使用して実施できる。
【0080】
次いで、原料乳を加熱殺菌する。加熱殺菌は、例えば、低温長時間殺菌又は高温短時間殺菌により実施できる。低温長時間殺菌は、例えば、63℃程度で30分間加熱することにより実施できる。高温短時間殺菌は、例えば、72℃程度で15秒間加熱することにより実施できる。
【0081】
次いで、加熱殺菌された原料乳を冷却する。加熱殺菌された原料乳は、例えば、30℃程度又は35℃程度まで冷却される。
【0082】
次いで、冷却された原料乳に、乳酸菌スターター、青カビスターター及びレンネット(凝乳酵素)を添加する。乳酸菌スターターとしては、例えば、Streptococcus lacts、Streptococcus cremoris、Streptococcus diacetylactis、Streptococcus thermophilus、Streptococcus durance、Streptococcus faecalis、Streptococcus citrovorus、Streptococcus paracitrovorus、Leuconostoc citrovorum、Leuconostoc、dextranicum、Leuconostoc cremoris等を使用できる。1種の乳酸菌を単独で使用してもよいし、2種以上の乳酸菌を併用してもよい。青カビスターターとしては、例えば、青カビ(Penicillium roqueforti、Penicillium galaucum)の胞子を使用できる。乳酸菌スターター、青カビスターター及びレンネットの添加順序は特に限定されない。乳酸菌スターター、青カビスターター及びレンネットの添加を同時に行ってもよいし、順次行ってもよい。また、乳酸菌スターター及び青カビスターターの添加の後、レンネットの添加を行ってもよい。また、乳酸菌スターター及びレンネットの添加の後、青カビスターターの添加を行ってもよい。レンネットの添加により、原料乳が固まり、凝乳が得られる。
【0083】
青カビは、原料乳に添加せずに、成形前又は成形後のカードに添加してもよい。
【0084】
次いで、得られた凝乳からホエー(乳清)を除去し、カードを得る。
【0085】
切断、モールド(型)への投入等によりカードを成形してもよい。成形後の形状は、例えば、円盤状、円柱状等である。
【0086】
チェダリング(すなわち、ブロック状にしたカードを反転させながら堆積と反転とを繰り返し、酸度を上昇させながらホエーの排出を促進させる処理)を実施してもよい。
【0087】
成形前又は成形後のカードに加塩処理を施してもよい。加塩処理は、例えば、カードを食塩水に浸漬することにより、又は、カードの表面に食塩をすり込むことにより、又は、成形前のカードに直接食塩(例えばドライソルト)を混ぜ込むことにより実施できる。
【0088】
加塩処理後、カードに乾燥処理を施してもよい。乾燥処理は常法に従って実施できる。
【0089】
チーズ内部に青カビを生育させるために、カードに穿孔処理を施す。穿孔処理は、例えば、針又は細い棒をカードに突き刺すことにより実施できる。穿孔処理により、青カビの生育に必要な酸素をカード内部に供給することが可能となる。
【0090】
以上のようにして、青カビを含むカードを準備できる。
【0091】
工程(b)では、工程(a)で準備されたカードの表面に白カビを付着させる。
【0092】
白カビとしては、例えば、Penicillium camemberti、Penicillium candidum、Penicillium caseicolum、Geotrichum candidum等を使用できる。白カビは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。カードの表面への白カビの付着は、白カビの胞子の分散液をカードの表面に噴霧することにより実施できる。カードの表面への白カビの付着量は、適宜調整できる。
【0093】
工程(c)では、表面に白カビを付着させたカードを熟成させる。本発明において、「熟成」とは、カードを一定期間、特定の温度及び湿度で保蔵することにより、各種の酵素が働き、目的とするチーズに特有の組織及び風味がつくられる工程を指し、熟成の条件は、チーズの種類によって異なる。
【0094】
工程(c)における熟成は、低酸素環境での熟成を含む。工程(c)は、例えば、次のようにして実施できる。
【0095】
まず、一次熟成を実施する。一次熟成では、白カビが生育してカードの表面に白カビ層が形成されるまで、表面に白カビを付着させたカードを一般的な白カビチーズと同様の条件で熟成させる。但し、一次熟成の目的は、白カビの生育に限定されるものではない。カード内部において青かびを生育させることも、一次熟成の目的に包含される。一次熟成を実施する際の好ましい条件は、次の通りである。温度は、好ましくは3~25℃、より好ましくは8~20℃である。湿度は、好ましくは70~100%、より好ましくは80~100%である。熟成時の雰囲気は、好ましくは大気雰囲気である。熟成期間は、好ましくは3日以上20日以下、より好ましくは5日以上14日以下である。
【0096】
一次熟成の後、二次熟成を実施する。二次熟成は、低酸素環境で実施する。すなわち、二次熟成は、低酸素環境での熟成である。「低酸素環境」は、熟成時の雰囲気中の酸素濃度(体積基準)が15%以下であることを意味する。下限はゼロである。二次熟成を実施する際の好ましい条件は、次の通りである。温度は、好ましくは3~20℃、より好ましくは6~18℃である。湿度は、好ましくは70~100%、より好ましくは80~100%である。酸素濃度は、好ましくは0~15%、より好ましくは0~14%、より一層好ましくはが0~10%である。熟成期間は、好ましくは1日以上30日以下、より好ましくは2日以上25日以下、より一層好ましくは3日以上21日以下、より一層好ましくは4日以上21日以下である。
【0097】
低酸素環境での熟成は、酸素が不活性ガス等のガスで置換された容器内又は室内においてカードを熟成させることにより、実施することができる。カードの管理のしやすさから、低酸素環境での熟成は、カードをガスバリア性容器に収容した状態で実施することが好ましい。この場合、ガスバリア性容器を密封すること、ガスバリア性容器内に脱酸素剤を存在させること、及び、ガスバリア性容器内の空気を不活性ガスで置換することから選択される1種以上の手段により、ガスバリア性容器内の環境を低酸素環境とすることができる。ガスバリア性容器は、酸素の透過を抑制し、容器内の環境を低酸素環境とすることができればよく、完全なガスバリア性を有していなくてもよい。ガスバリア性容器としては、例えば、プラスチック製容器、金属製容器、ガラス製容器等を使用できる。プラスチック製容器の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリルニトリル、ナイロン等が挙げられる。カードをガスバリア性容器に収容し、ガスバリア性容器を密封して熟成する場合、カビが容器内の酸素を消費することにより、一定時間経過後、容器内は低酸素環境となる。カードをガスバリア性容器に収容し、ガスバリア性容器内に脱酸素剤を存在させて熟成する場合、脱酸素剤が容器内の酸素を吸収することにより、及び、カビが容器内の酸素を消費することにより、一定時間経過後、容器内は低酸素環境となる。カードをガスバリア性容器に収容し、ガスバリア性容器内の空気を不活性ガスで置換して熟成する場合、不活性ガスでの置換より、容器内は低酸素環境となる。不活性ガスで置換されなかった酸素が容器内に残存する場合、カビが容器内の酸素を消費することにより、一定時間経過後、容器内は低酸素環境となる。不活性ガスとしては、窒素ガス、炭酸ガス、アルゴンガス等を使用できる。ガスバリア性容器に収容されるカードは、個包装されていないものであってもよいし、個包装されたものであってもよい。
【0098】
低酸素環境での熟成は、個包装されていないカードに対して実施してもよいし、個包装されたカードに対して実施してもよい。低酸素環境での熟成は、個包装されていないカードに対して実施した後、当該カードを個包装してさらに実施してもよい。
【0099】
低酸素環境での熟成を、個包装されたカードに対して実施する場合、カードの個包装は、一次熟成の後、かつ、二次熟成の前に実施してもよいし、二次熟成の間に実施してもよい。個包装は、カード(例えば、円盤状、円柱状、立方体、長方体等のカード)に対して実施してもよいし、カードを複数(例えば、2個、3個、4個、6個、8個、10個、12個等)のポーションに切り分けて得られるカード断片に対して実施してもよい。個包装により、カード又はカード断片と周囲雰囲気(例えば、大気雰囲気)との接触が抑制されるため、低酸素環境での熟成が可能となる。低酸素環境での熟成は、個包装されたカードをガスバリア性容器に収容し、ガスバリア性容器内の環境を低酸素環境として実施してもよい。個包装には、食品包装用途に通常使用される包装材、例えば、プラスチック製フィルム、包材紙等を使用できる。カードと周囲雰囲気との接触を効果的に抑制する観点から、個包装に使用される包装材は、ガスバリア性を有することが好ましい。包装材は、酸素の透過を抑制することができればよく、完全なガスバリア性を有していなくてもよい。特に、低酸素環境での熟成を、個包装されたカードをガスバリア性容器に収容し、ガスバリア性容器内の環境を低酸素環境として実施する場合、包装材は、完全なガスバリア性を有していなくてもよい。ガスバリア性包装材としては、例えば、プラスチック製フィルム等を使用できる。プラスチック製フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリルニトリル、ナイロン等が挙げられる。個包装は、通常の個包装と同様の条件で行えばよく、通常の個包装に使用される包装機を使用して実施できる。
【0100】
低酸素環境での熟成を、個包装されていないカードに対して実施する場合、工程(c)の後に個包装を実施してもよい。個包装は、ホールチーズに対して実施してもよいし、ポーションチーズに対して実施してもよい。個包装をポーションチーズに対して実施する場合、工程(c)の後に、ホールチーズを複数(例えば、2個、3個、4個、6個、8個、10個、12個等)のポーションに切り分けてポーションチーズを得ればよい。個包装により、チーズの品質変化を防止できるとともに、喫食時の取り扱いやすさが向上する。個包装には、食品包装用途に通常使用される包装材、例えば、プラスチック製フィルム、包材紙等を使用できる。個包装は、通常の個包装と同様の条件で行えばよく、通常の個包装に使用される包装機を使用して実施できる。ポーションチーズを個包装する場合、開封時にポーションカット切断面と包装材との剥がれをより良好にするに、ゼラチン等のゲル化剤を塗布した包装材を使用するとよい。ポーションチーズの個包装は、切断面に包装材が密着するように包装すること等、通常のポーションカット品の個包装と同様の条件で行えばよく、通常のポーションカット品の個包装に使用される包装機を使用して実施できる。
【0101】
工程(c)の後に殺菌処理を行ってもよい。殺菌処理は、密封容器に収容されたチーズ又は個包装されたチーズを加熱殺菌する処理である。工程(c)の後に個包装を実施する場合、殺菌処理は、個包装の後に実施することが好ましい。低酸素環境での熟成を、個包装されていないカードに対して実施する場合、工程(c)の後に、チーズの密封容器への収容又は個包装を実施し、密封容器への収容又は個包装の後に、殺菌処理することが好ましい。殺菌処理の条件としては公知の条件を利用できる。低酸素環境での熟成を、個包装されたカードに対して実施する場合、工程(c)の後に、そのまま、殺菌処理を実施できる。殺菌処理は、例えば、中心温度が80℃以上となるような温度で実施できる。当該温度での保持時間は、例えば10分間以上、好ましくは20分間以上である。工程(c)の後、ホールチーズ(例えば、円盤状、円柱状、立方体、長方体等のチーズ)をそのまま密封容器に収容して殺菌処理を実施してもよいし、ホールチーズを適当な個数(例えば2個、3個、4個、6個、8個、10個、12個等)に切り分けて得られるポーションチーズを密封容器に収容して殺菌処理を実施してもよい。ホールチーズ又はポーションチーズをフィルム、包材紙等の包装材により個包装して殺菌処理を実施してもよい。殺菌処理に使用される密封容器としては、例えば、金属缶、アルミパウチ、ポリプロピレン等のプラスチック製容器等が挙げられる。殺菌処理は、レトルト処理(加圧加熱殺菌処理)であってもよい。レトルト処理の条件としては公知の条件を採用できる。
【実施例0102】
〔実施例1〕
(1)チーズの製造
原料乳10kgを72℃で15秒間殺菌した後、賦活した乳酸菌スターターを重量比2%で、青カビスターターを重量比0.001%で、レンネットを重量比0.02%で添加して乳を凝固させた。凝乳からホエー(乳清)を除去し、型詰めした後、22%食塩溶液のブラインに浸して青カビを含むカードを得た。得られたカードに穿孔処理を施し、表面に白カビ(Penicillium camemberti)の胞子の分散液を噴霧した後、一次熟成(高温熟成)させた。一次熟成は、温度:10℃、湿度:90%、熟成時の雰囲気:大気雰囲気、熟成期間:14日間の条件で実施した。一次熟成の後のカードを、酸素バリア性の高いエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)層を含む容器(径:100mm径,高さ:31mm)に収容し、容器を樹脂シートで密封し、二次熟成(低温熟成)を実施した。二次熟成は、温度:7℃、湿度:90%、熟成時の雰囲気:低酸素雰囲気、熟成期間:所定期間(1日間、4日間、7日間、14日間、30日間)の条件で実施した。なお、所定期間経過後の容器内の酸素濃度は全て1.0%未満(ほぼ0%)であった。以上のようにして、表皮が白カビで覆われており、内部に青カビが含まれているチーズを製造した。
【0103】
(2)官能評価
7名のチーズ業務経験者(いずれも経験年数1年以上)により、上記(1)で得られた二次熟成後のチーズの官能評価を実施した。官能評価の基準は、以下の通りである。官能評価の結果を表1に示す。
【0104】
[独特の呈味の評価基準]
1:非常に弱い
2:弱い
3:やや弱い
4:適度
5:やや強い
6:強い
7:非常に強い
【0105】
[アンモニア臭の評価基準]
1:非常に弱い
2:弱い
3:やや弱い
4:適度
5:やや強い
6:強い
7:非常に強い
【0106】
[コクの評価基準]
1:非常に弱い
2:弱い
3:やや弱い
4:適度
5:やや強い
6:強い
【0107】
[総合評価の基準]
1:非常に好ましくない
2:好ましくない
3:可もなく不可もなく
4:やや好ましい
5:好ましい
6:非常に好ましい
7:最高に好ましい
【0108】
(3)遊離アミノ酸及びアンモニアの定量分析
上記(1)で得られた二次熟成後のチーズ 5gに、0.2Mクエン酸ナトリウムバッファー 45.5gを添加し、ホモジナイザーで5分間粉砕した後、10000rpmで5分間遠心分離した。得られた遠心上清に7.5%(w/v)スルフォサリチル酸溶液を混合し、濾過精度0.2μmのフィルターで濾過し、タンパク質を除去した。その後、アミノ酸分析計(日立社製高速アミノ酸分析計L-8800)を使用して、遊離グルタミン酸(Glu)、遊離アラニン(Ala)、遊離イソロイシン(Ile)、遊離セリン(Ser)、遊離グルタミン(Gln)、遊離プロリン(Pro)及び遊離グリシン(Gly)及びアンモニアを定量した。また、定量結果に基づいて、アンモニア(NH)の含有量に対する遊離グルタミン酸(Glu)の含有量、遊離アラニン(Ala)の含有量及び遊離イソロイシン(Ile)の含有量の比をそれぞれ質量比で算出した。結果を表1に示す。
【0109】
(4)香気成分の定量分析
(4-1)試料の調製
上記(1)で得られた二次熟成後のチーズを細砕化し、細砕化したチーズ 1gに、内部標準物質(シクロオクタノール 0.25ppm)を添加し、20mLのバイアル瓶に収容して密閉し、試料入りのバイアル瓶を得た。
【0110】
(4-2)固相マイクロ抽出
試料入りのバイアル瓶をオートサンプラーMPS(GERSTEL社製)にセットし、固相マイクロ抽出により各バイアル瓶中の香気成分を捕集した。固相マイクロ抽出としては、ヘッドスペース固相マイクロ抽出(HS-SPME)を採用した。具体的には、バイアル瓶をアジテータモジュールで攪拌しながら60℃で5分間温めた後、捕集剤であるSPME(Solid phase Micro Extraction)(Supelco社製 SPME Fiber Assembly 50/30μm DVB/CAR/PDMS,Stableflex 24Ga Autosampler,3pk(Gray),ファイバー長 2cm)をバイアル瓶に差し込み、40分間、バイアル瓶内の密閉空間に存在する香気成分をSPMEに吸着させた。なお、使用したSPMEは、ジビニルベンゼン/カルボキセン/ポリジメチルシロキサン(DVB/CAR/PDMS)コーティングを有するSPMEファイバーアセンブリーである。
【0111】
(4-3)ガスクロマトグラフ飛行時間型質量分析(GC-TOFMS)
SPMEに吸着させた香気成分をGC-TOFMS法により分析した。GC-TOFMS法の条件は、以下の通りである。
【0112】
<GC条件>
測定機器:Agilent Technologies社製のAgilent 8890GC System
カラム:GLサイエンス社製のInertCap Pure-WAX(0.25mm×0.25μm×30M)
注入法:スプリット注入(スプリット比=1:10又は1:100、ノルフラネオールに関する分析ではスプリット比=1:10を採用)
キャリア:Heガス(ガス流量:1.0mL/分)
温度条件:香気成分をインジェクションした時点から、カラム温度を40℃で5分間保持した後、毎分15℃ずつ250℃までカラム温度を上昇させ、250℃到達時点から250℃で10分間保持した。
【0113】
<TOFMS条件>
測定機器:LECO社製のPEGASUS BT 4D
イオン化方式:EI(イオン化電圧:70eV)
スキャン質量:m/z=40~300
【0114】
各成分の特徴的なフラグメントイオンをモニタリングイオンとして設定した。各成分のモニタリングイオンは、以下の通りである。
シクロオクタノール(内部標準物質) m/z=57
ノルフラネオール(4-ヒドロキシ-5-メチル-3(2H)-フラノン) m/z=114
酪酸 m/z=60
フェネチルアルコール m/z=92
2,5-ジメチルピラジン m/z=108
トリメチルピラジン m/z=122
テトラメチルピラジン m/z=136
【0115】
一般的に、クロマトグラフ法による成分分析では、得られたクロマトグラフにおけるピーク面積が各成分の量に比例する。本発明においては、内部標準物質(シクロオクタノール 0.25ppm)のピーク面積に対する、分析対象である各成分のピーク面積の比(各成分のピーク面積/内部標準物質のピーク面積)をピーク面積比として求めた。ピーク面積の測定は、測定機器に付属の解析ソフトウェア(LECO社製のChromaTOF optimized for Pegasus4D)を使用して行った。
【0116】
フェネチルアルコールは、パン(例えば、ライ麦パン等)、アルコール(例えば、日本酒、ワイン等)のような甘く好ましい香りを呈する香気成分として知られている。2,5-ジメチルピラジン、トリメチルピラジン及びテトラメチルピラジンは、焼成したエビ、カニ等のような芳ばしい香りを呈する香気成分として知られている。内部標準物質(シクロオクタノール 0.25ppm)のピーク面積に対する、2,5-ジメチルピラジン、トリメチルピラジン又はテトラメチルピラジンのピーク面積の比(2,5-ジメチルピラジン、トリメチルピラジン又はテトラメチルピラジンのピーク面積/内部標準物質のピーク面積)を表2に示す。
【0117】
(4-4)ノルフラネオール及び酪酸の定量分析
以下の手順で、上記(1)で得られた二次熟成後のチーズ中のノルフラネオール及び酪酸の濃度を定量した。
上記(1)で得られた一次熟成後のチーズ(二次熟成期間 0日)を細砕化し、細砕化したチーズ 1gに、ノルフラネオール(東京化成工業株式会社製)又は酪酸(富士フィルム和光純薬製、和光特級)の希釈液を、内部標準物質(シクロオクタノール 0.25ppm)とともに添加し、20mLのバイアル瓶に収容して密閉し、試料入りのバイアル瓶を得た。上記(4-2)及び(4-3)と同様にしてHS-SPME及びGC-TOFMSを実施し、内部標準物質(シクロオクタノール 0.25ppm)のピーク面積に対する、分析対象である各成分のピーク面積の比(各成分のピーク面積/内部標準物質のピーク面積)をピーク面積比として求めた。求めたピーク面積比から検量線を作成した。作成した検量線と、上記(4-3)で得られた結果とに基づいて、上記(1)で得られた二次熟成後のチーズ中のノルフラネオール及び酪酸の濃度を定量した。結果を表2に示す。なお、表2中、「HMMF」はノルフラネオールを意味する。
【0118】
〔比較例1〕
一次熟成後のカードを、酸素バリア性の高いエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)層を含む容器(径:100mm径,高さ:31mm)に収容し、容器を樹脂シートで密封せずに、二次熟成を実施した点、並びに、二次熟成を、所定期間(4日間、7日間、14日間)、実施した点を除き、実施例1と同様にして、チーズの製造、官能評価、遊離アミノ酸及びアンモニアの定量分析、並びに、香気成分の定量分析を実施した。結果を表1及び2に示す。
【0119】
〔比較例2~5〕
表皮が白カビで覆われており、内部に青カビが含まれているチーズとして、市販品A(比較例2)、市販品B(比較例3)、市販品C(比較例4)又は市販品D(比較例5)を使用した点を除き、実施例1と同様にして、官能評価、遊離アミノ酸及びアンモニアの定量分析、並びに、香気成分の定量分析を実施した。結果を表1及び2に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
表1に示すように、二次熟成期間が同一(4日間、7日間又は14日間)である場合において、実施例1と比較例1との間で独特の呈味を比較すると、実施例1では比較例1よりも独特の呈味が増強していた。また、実施例1における二次熟成期間が1日間、4日間、7日間、14日間又は30日間のいずれの場合も、比較例2~5と比較して独特の呈味が増強していた。
【0123】
表1に示すように、二次熟成期間が同一(4日間、7日間又は14日間)である場合において、実施例1と比較例1との間でアンモニア臭を比較すると、実施例1では比較例1よりもアンモニア臭が抑制されていた。また、実施例1における二次熟成期間が30日間である場合のアンモニア臭は、比較例2~5よりも強かったが、実施例1における二次熟成期間が1日間、4日間、7日間又は14日間である場合のアンモニア臭は、比較例2~5と同程度又はそれよりも低かった。
【0124】
表1に示すように、二次熟成期間が同一(4日間、7日間又は14日間)である場合において、実施例1と比較例1との間でコクを比較すると、実施例1では比較例1よりもコクが増強していた。また、実施例1における二次熟成期間が1日間、4日間、7日間、14日間又は30日間のいずれの場合も、比較例2~5と比較してコクが増強していた。
【0125】
表1に示すように、二次熟成期間が同一(4日間、7日間又は14日間)である場合において、実施例1と比較例1との間で総合評価を比較すると、実施例1では比較例1よりも総合評価が高かった。また、実施例1における二次熟成期間が30日間である場合の総合評価は、比較例4及び5よりも低かったが、実施例1における二次熟成期間が1日間、4日間、7日間又は14日間である場合の総合評価は、比較例2~5と同程度又はそれよりも高かった。
【0126】
表2に示すように、二次熟成期間が同一(4日間、7日間又は14日間)である場合において、実施例1と比較例1との間でHMMF含有量を比較すると、実施例1では比較例1よりもHMMF含有量が増強していた。また、実施例1における二次熟成期間が1日間である場合のHMMF含有量は、比較例3~5よりも増強しており、実施例1における二次熟成期間が4日間、7日間、14日間又は30日間である場合のHMMF含有量は、比較例2~5よりも増強していた。
【0127】
表2に示すように、二次熟成期間が同一(4日間、7日間又は14日間)である場合において、実施例1と比較例1との間で酪酸含有量を比較すると、実施例1では比較例1よりも酪酸含有量が増強していた。また、実施例1における二次熟成期間が4日間、7日間、14日間又は30日間である場合の酪酸含有量は、比較例2~5よりも増強していた。
【0128】
表2に示すように、二次熟成期間が同一(4日間、7日間又は14日間)である場合において、実施例1と比較例1との間でピーク面積比1を比較すると、実施例1では比較例1よりもピーク面積比1が大きかった。また、実施例1における二次熟成期間が1日間である場合のピーク面積比1は、比較例2~4よりも大きく、実施例1における二次熟成期間が4日間、7日間、14日間又は30日間である場合のピーク面積比1は、比較例2~5よりも大きかった。
【0129】
表2に示すように、二次熟成期間が同一(4日間、7日間又は14日間)である場合において、実施例1と比較例1との間でピーク面積比2を比較すると、実施例1では比較例1よりもピーク面積比2が小さかった。また、実施例1における二次熟成期間が1日間、4日間、7日間、14日間又は30日間のいずれの場合も、比較例2~4と比較してピーク面積比2が小さかった。
【0130】
表2に示すように、二次熟成期間が同一(4日間、7日間又は14日間)である場合において、実施例1と比較例1との間でピーク面積比3を比較すると、実施例1では比較例1よりもピーク面積比3が小さかった。また、実施例1における二次熟成期間が1日間、4日間、7日間、14日間又は30日間のいずれの場合も、比較例2~4と比較してピーク面積比3が小さかった。
【0131】
表2に示すように、二次熟成期間が同一(4日間、7日間又は14日間)である場合において、実施例1と比較例1との間でピーク面積比4を比較すると、実施例1では比較例1よりもピーク面積比4が小さかった。また、実施例1における二次熟成期間が1日間、4日間、7日間、14日間又は30日間のいずれの場合も、比較例2~4と比較してピーク面積比4が小さかった。
【0132】
以上の結果から、以下の工程:
(a)青カビを含むカードを準備する工程;
(b)カードの表面に白カビを付着させる工程;及び
(c)カードを熟成させる工程
を含む方法であって、工程(c)における熟成が低酸素環境での熟成を含む方法によれば、白カビによる過剰なアンモニア臭の発生の抑制と、青カビによる熟成風味(特に呈味及びコク)の増強とを両立させたチーズを製造できること、並びに、白カビによる過剰なアンモニア臭の発生の抑制と、青カビによる熟成風味(特に呈味及びコク)の増強との両立により、従来のナチュラルチーズとは異なる新規な風味(特に独特の呈味及びコク)を実現できることが確認された。
【0133】
実施例1における二次熟成期間が1日間、4日間、7日間、14日間又は30日間のいずれの場合も、得られたチーズは以下の特徴Aを有していた。
[特徴A]アンモニアの含有量に対する遊離グルタミン酸の含有量の比が質量比で0.70以上であり、遊離グルタミン酸の含有量が30mg%以上である。
【0134】
特徴Aは、白カビによる過剰なアンモニア臭の発生の抑制と、青カビによる熟成風味(特に旨味等の呈味)の増強とが両立された結果として実現される特徴であり、特徴Aにより、従来のナチュラルチーズとは異なる新規な風味(特に独特の呈味)を実現できると考えられる。
【0135】
実施例1における二次熟成期間が1日間、4日間、7日間、14日間又は30日間のいずれの場合も、得られたチーズは以下の特徴B~Hを有していた。
[特徴B]アンモニアの含有量に対する遊離アラニンの含有量の比が質量比で0.30以上である。
[特徴C]遊離アラニンの含有量が12mg%以上である。
[特徴D]アンモニアの含有量に対する遊離イソロイシンの含有量の比が質量比で0.10以上である。
[特徴E]遊離イソロイシンの含有量が4mg%以上である。
[特徴F]アンモニアの含有量が250mg%以下である。
[特徴G]遊離セリンの含有量が6mg%以上であり、遊離グルタミンの含有量が100mg%以下であり、遊離プロリンの含有量が6mg%以上であり、遊離グリシンの含有量が150mg%以下であり、遊離アラニンの含有量が12mg%以上である。
[特徴H]遊離セリン、遊離グルタミン、遊離プロリン、遊離グリシン及び遊離アラニンの合計含有量が39mg%以上1250mg%以下である。
【0136】
特徴B~Hは、白カビによる過剰なアンモニア臭の発生の抑制と、青カビによる熟成風味(特に呈味)の増強とが両立された結果として実現される特徴であり、特徴Aと特徴B~Hのうち1又は2以上とが相俟って、従来のナチュラルチーズとは異なる新規な風味(特に独特の呈味)をより効果的に実現できると考えられる。
【0137】
実施例1における二次熟成期間が1日間、4日間、7日間、14日間又は30日間のいずれの場合も、得られたチーズは以下の特徴I~Nを有していた。
[特徴I]ノルフラネオールの含有量が1.0ppm以上である。
[特徴J]酪酸の含有量が4.0ppm以上である。
[特徴K]チーズ 1gを、内部標準物質としてシクロオクタノール 0.25ppmを使用して固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法により分析した場合、フェネチルアルコールのピーク面積の、シクロオクタノールのピーク面積に対する比が0.40以上である。
[特徴L]チーズ 1gを、内部標準物質としてシクロオクタノール 0.25ppmを使用して固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法により分析した場合、2,5-ジメチルピラジンのピーク面積の、シクロオクタノールのピーク面積に対する比が0.15以下である。
[特徴M]チーズ 1gを、内部標準物質としてシクロオクタノール 0.25ppmを使用して固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法により分析した場合、トリメチルピラジンのピーク面積の、シクロオクタノールのピーク面積に対する比が0.20以下である。
[特徴N]チーズ 1gを、内部標準物質としてシクロオクタノール 0.25ppmを使用して固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法により分析した場合、テトラメチルピラジンのピーク面積の、シクロオクタノールのピーク面積に対する比が0.050以下である。
【0138】
特徴I~Nは、白カビによる過剰なアンモニア臭の発生の抑制と、青カビによる熟成風味(特にコク)の増強とが両立された結果として実現される特徴であり、特徴Aと特徴I~Nのうち1又は2以上とが相俟って、従来のナチュラルチーズとは異なる新規な風味(特に独特の呈味及びコク)をより効果的に実現できると考えられる。特に、特徴Aと、特徴B~Hのうち1又は2以上と、特徴I~Nのうち1又は2以上とが相俟って、従来のナチュラルチーズとは異なる新規な風味(特に独特の呈味及びコク)をより効果的に実現できると考えられる。
【0139】
なお、結果は示さないが、二次熟成期間が同一(4日間、7日間又は14日間)である場合において、実施例1と比較例1との間で酪酸以外の脂肪酸含有量を比較すると、実施例1では比較例1よりも酪酸以外の脂肪酸含有量が増強していた。また、実施例1における二次熟成期間が4日間、7日間、14日間又は30日間である場合の酪酸以外の脂肪酸含有量は、比較例2~5よりも増強していた。