(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153343
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】オルガノポリシロキサンを含むゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 83/08 20060101AFI20231005BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20231005BHJP
C08G 77/48 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L83/08
C08L9/00
C08G77/48
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135993
(22)【出願日】2023-08-24
(62)【分割の表示】P 2020024945の分割
【原出願日】2020-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣神 宗直
(57)【要約】
【課題】 硬度、引張特性、転がり抵抗およびウェットグリップ性に優れ、所望の低燃費タイヤを実現し得るゴム組成物を提供すること。
【解決手段】
下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、ジエン系ゴムおよび充填剤を含むゴム組成物。
(R1)a(R2)b(OR3)c(R4)dSiO(4-2a-b-c-d)/2 (1)
(式中、R1は、それぞれ独立してスルフィド基含有二価有機基を表し、R2は、それぞれ独立して、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~10のアラルキル基を表し、R3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアラルキル基、または炭素数2~10のアルケニル基を表し、R4は、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基を表し、a、b、cおよびdは、0<2a<1、0<b<1、0<c<3、0≦d<1、かつ0<2a+b+c+d<4を満たす数を表す。)
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、ジエン系ゴムおよび充填剤を含むゴム組成物。
(R1)a(R2)b(OR3)c(R4)dSiO(4-2a-b-c-d)/2 (1)
(式中、R1は、それぞれ独立してスルフィド基含有二価有機基を表し、R2は、それぞれ独立して、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~10のアラルキル基を表し、R3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアラルキル基、または炭素数2~10のアルケニル基を表し、R4は、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基を表し、a、b、cおよびdは、0<2a<1、0<b<1、0<c<3、0≦d<1、かつ0<2a+b+c+d<4を満たす数を表す。)
【請求項2】
前記R
1が、下記平均式(2)で表されるスルフィド基含有二価有機基である請求項1記載のゴム組成物。
【化1】
(式中、nは、それぞれ独立して1~10の数を表し、xは、1~6の数を表し、破線は結合手を表す。)
【請求項3】
前記R2が、フェニル基を表す請求項1または2記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記dが、0<d<1を満たす数を表す請求項1~3のいずれか1項記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記R4が、炭素数6~12のアルキル基を表す請求項1~4のいずれか1項記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項記載のゴム組成物を成形してなるタイヤ。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項記載のゴム組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項7記載の硬化物を用いたタイヤ。
【請求項9】
下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサンを含むゴム組成物を成形してなるタイヤ。
(R1)a(R2)b(OR3)c(R4)dSiO(4-2a-b-c-d)/2 (1)
(式中、R1は、それぞれ独立してスルフィド基含有二価有機基を表し、R2は、それぞれ独立して、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~10のアラルキル基を表し、R3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアラルキル基、または炭素数2~10のアルケニル基を表し、R4は、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基を表し、a、b、cおよびdは、0<2a<1、0<b<1、0<c<3、0≦d<1、かつ0<2a+b+c+d<4を満たす数を表す。)
【請求項10】
下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサンを含むゴム組成物の硬化物を用いたタイヤ。
(R1)a(R2)b(OR3)c(R4)dSiO(4-2a-b-c-d)/2 (1)
(式中、R1は、それぞれ独立してスルフィド基含有二価有機基を表し、R2は、それぞれ独立して、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~10のアラルキル基を表し、R3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアラルキル基、または炭素数2~10のアルケニル基を表し、R4は、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基を表し、a、b、cおよびdは、0<2a<1、0<b<1、0<c<3、0≦d<1、かつ0<2a+b+c+d<4を満たす数を表す。)
【請求項11】
下記平均組成式(1)で表され、毛細管式動粘度計による25℃における動粘度が、2~10,000mm
2/sであるオルガノポリシロキサン。
(R
1)
a(R
2)
b(OR
3)
c(R
4)
dSiO
(4-2a-b-c-d)/2 (1)
(式中、R
1は、それぞれ独立して下記平均式(2)で表されるスルフィド基含有二価有機基を表し、R
2は、それぞれ独立して、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~10のアラルキル基を表し、R
3は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアラルキル基、または炭素数2~10のアルケニル基を表し、R
4は、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基を表し、a、b、cおよびdは、0<2a<1、0<b<1、0<c<3、0≦d<1、かつ0<2a+b+c+d<4を満たす数を表す。)
【化2】
(式中、nは、それぞれ独立して1~10の数を表し、xは、2~6の数を表し、破線は結合手を表す。)
【請求項12】
前記R2が、フェニル基を表す請求項11記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項13】
前記dが、0<d<1を満たす数を表す請求項11または12記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項14】
前記R4が、炭素数6~12のアルキル基を表す請求項11~13のいずれか1項記載のオルガノポリシロキサン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサンを含むゴム組成物およびタイヤに関し、さらに詳述すると、スルフィド基を有する有機基およびアリール基またはアラルキル基を含有するオルガノポリシロキサンを含むゴム組成物およびタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
含硫黄有機ケイ素化合物は、シリカ充填ゴム組成物からなるタイヤの製造に必須成分として有用である。シリカ充填タイヤは、自動車用途で優れた性能を有し、特に、耐磨耗性、転がり抵抗およびウェットグリップ性に優れている。これらの性能の向上は、タイヤの低燃費性向上と密接に関連しているため、昨今盛んに研究されている。
【0003】
低燃費性向上には、ゴム組成物のシリカ充填率を上げることが必須であるが、シリカ充填ゴム組成物は、タイヤの転がり抵抗を低減し、ウェットグリップ性を向上させるものの、未加硫粘度が高く、多段練り等を要し、作業性に問題がある。そのため、シリカ等の無機質充填剤を単に配合したゴム組成物では、充填剤の分散が不足し、破壊強度および耐磨耗性が大幅に低下するといった問題が生じる。
そこで、無機質充填剤のゴム中への分散性を向上させるとともに、無機質充填剤とゴムマトリックスとを化学結合させるために、含硫黄有機ケイ素化合物が必須であった。
【0004】
含硫黄有機ケイ素化合物としては、アルコキシシリル基とポリスルフィドシリル基を分子内に含む化合物、例えば、ビス-トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィドやビス-トリエトキシシリルプロピルジスルフィド等が有効であることが知られている(特許文献1~4)。
また、上記ポリスルフィド基を有する有機ケイ素化合物の他に、シリカの分散性に有利なチオエステル型の封鎖メルカプト基含有有機ケイ素化合物や、水素結合によるシリカとの親和性に有利な加水分解性シリル基部分にアミノアルコール化合物をエステル交換したタイプの含硫黄有機ケイ素化合物の応用も知られている(特許文献5~9)。
【0005】
しかし、上記各特許文献に開示された含硫黄有機ケイ素化合物を使用しても、所望の低燃費性を実現するタイヤ用ゴム組成物を得るには至っていない。また、これらの含硫黄有機ケイ素化合物は、スルフィド型の化合物と比較して高コストであるうえ、製造法が複雑であることから、生産性に問題があるなど、種々課題が残されている。
【0006】
また、特許文献10および11では、ポリスルフィド基と長鎖アルキル基を有するポリシロキサンを用いた例が開示され、これらのポリシロキサンを用いた場合、転がり抵抗およびウェットグリップ性は改善するものの、硬度や引張特性が低下してしまい、所望の低燃費性を実現するタイヤ用ゴム組成物を得るには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2004-525230号公報
【特許文献2】特開2004-18511号公報
【特許文献3】特開2002-145890号公報
【特許文献4】米国特許第6229036号明細書
【特許文献5】特開2005-8639号公報
【特許文献6】特開2008-150546号公報
【特許文献7】特開2010-132604号公報
【特許文献8】特許第4571125号公報
【特許文献9】米国特許第6414061号明細書
【特許文献10】特許第5574063号公報
【特許文献11】特許第6384338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、硬度、引張特性、転がり抵抗およびウェットグリップ性に優れ、所望の低燃費タイヤを実現し得るゴム組成物およびタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、スルフィド基含有有機基、アリール基またはアラルキル基、並びに加水分解性基および/または水酸基を含有するオルガノポリシロキサンが、ゴム組成物に添加した場合にその硬化物の硬度や引張特性を低下させずに転がり抵抗およびウェットグリップ性を改善することができることを見出すとともに、このゴム組成物が、所望の低燃費タイヤ特性を実現し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、
1. 下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、ジエン系ゴムおよび充填剤を含むゴム組成物、
(R
1)
a(R
2)
b(OR
3)
c(R
4)
dSiO
(4-2a-b-c-d)/2 (1)
(式中、R
1は、それぞれ独立してスルフィド基含有二価有機基を表し、R
2は、それぞれ独立して、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~10のアラルキル基を表し、R
3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアラルキル基、または炭素数2~10のアルケニル基を表し、R
4は、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基を表し、a、b、cおよびdは、0<2a<1、0<b<1、0<c<3、0≦d<1、かつ0<2a+b+c+d<4を満たす数を表す。)
2. 前記R
1が、下記平均式(2)で表されるスルフィド基含有二価有機基である1のゴム組成物、
【化1】
(式中、nは、それぞれ独立して1~10の数を表し、xは、1~6の数を表し、破線は結合手を表す。)
3. 前記R
2が、フェニル基を表す1または2のゴム組成物、
4. 前記dが、0<d<1を満たす数を表す1~3のいずれかのゴム組成物、
5. 前記R
4が、炭素数6~12のアルキル基を表す1~4のいずれかのゴム組成物、
6. 1~5のいずれかのゴム組成物を成形してなるタイヤ、
7. 1~5のいずれかのゴム組成物の硬化物、
8. 7の硬化物を用いたタイヤ、
9. 下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサンを含むゴム組成物を成形してなるタイヤ、
(R
1)
a(R
2)
b(OR
3)
c(R
4)
dSiO
(4-2a-b-c-d)/2 (1)
(式中、R
1は、それぞれ独立してスルフィド基含有二価有機基を表し、R
2は、それぞれ独立して、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~10のアラルキル基を表し、R
3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアラルキル基、または炭素数2~10のアルケニル基を表し、R
4は、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基を表し、a、b、cおよびdは、0<2a<1、0<b<1、0<c<3、0≦d<1、かつ0<2a+b+c+d<4を満たす数を表す。)
10. 下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサンを含むゴム組成物の硬化物を用いたタイヤ、
(R
1)
a(R
2)
b(OR
3)
c(R
4)
dSiO
(4-2a-b-c-d)/2 (1)
(式中、R
1は、それぞれ独立してスルフィド基含有二価有機基を表し、R
2は、それぞれ独立して、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~10のアラルキル基を表し、R
3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアラルキル基、または炭素数2~10のアルケニル基を表し、R
4は、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基を表し、a、b、cおよびdは、0<2a<1、0<b<1、0<c<3、0≦d<1、かつ0<2a+b+c+d<4を満たす数を表す。)
11. 下記平均組成式(1)で表され、毛細管式動粘度計による25℃における動粘度が、2~10,000mm
2/sであるオルガノポリシロキサン、
(R
1)
a(R
2)
b(OR
3)
c(R
4)
dSiO
(4-2a-b-c-d)/2 (1)
(式中、R
1は、それぞれ独立して下記平均式(2)で表されるスルフィド基含有二価有機基を表し、R
2は、それぞれ独立して、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~10のアラルキル基を表し、R
3は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアラルキル基、または炭素数2~10のアルケニル基を表し、R
4は、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基を表し、a、b、cおよびdは、0<2a<1、0<b<1、0<c<3、0≦d<1、かつ0<2a+b+c+d<4を満たす数を表す。)
【化2】
(式中、nは、それぞれ独立して1~10の数を表し、xは、2~6の数を表し、破線は結合手を表す。)
12. 前記R
2が、フェニル基を表す11のオルガノポリシロキサン、
13. 前記dが、0<d<1を満たす数を表す11または12のオルガノポリシロキサン、
14. 前記R
4が、炭素数6~12のアルキル基を表す11~13のいずれかのオルガノポリシロキサン
を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のオルガノポリシロキサンは、スルフィド基含有有機基、アリール基含有有機基、並びに加水分解性基および/または水酸基を有しており、このオルガノポリシロキサンをゴム用配合剤として含有するゴム組成物を用いて形成されたタイヤは、所望の低燃費タイヤ特性を満足することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
[1]オルガノポリシロキサン
本発明に係るオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(1)で表される。
(R1)a(R2)b(OR3)c(R4)dSiO(4-2a-b-c-d)/2 (1)
【0013】
上記式(1)において、R1は、それぞれ独立してスルフィド基含有二価有機基を表す。
この有機基としては、アルキレン基、アリーレン基、アルキレン基等が挙げられるが、炭素数2~20のアルキレン基が好ましく、下記平均式(2)で表されるものがより好ましい。
【0014】
【化3】
(式中、nは、それぞれ独立して1~10、好ましくは1~5の数を表し、xは、1~6、好ましくは2~4の数を表し、破線は結合手を表す。)
【0015】
上記式(2)で表されるスルフィド基含有二価有機基の具体例としては、下記式で表される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
【0017】
R2は、それぞれ独立して、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~10のアラルキル基を表す。
炭素数6~10のアリール基の具体例としては、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル基等が挙げられる。
炭素数7~10のアラルキル基の具体例としては、フェニルメチル(ベンジル)、フェニルエチル基等が挙げられる。
これらの中でもR2としては、フェニル基が好ましい。
【0018】
R3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアラルキル基、または炭素数2~10のアルケニル基を表す。
炭素数1~20のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、n-デシル、オクタデシル基等が挙げられる。
炭素数2~10のアルケニル基の具体例としては、ビニル、プロペニル、ペンテニル基等が挙げられる。
炭素数6~10のアリール基および炭素数7~10のアラルキル基としては、上記R2で例示した基と同様のものが挙げられる。
これらの中でも、R3としては、水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、エチル基がより好ましい。なお、R3が水素原子である割合は、R3の全数のうち0~30モル%が好ましく、0~10モル%がより好ましい。
【0019】
R4は、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基を表し、その具体例としては、上記R3で例示した炭素数1~20のアルキル基のうち、炭素数1~12のものが挙げられる。
これらの中でも、ゴム組成物の粘度を低下させることで加工性を向上させ、さらには低燃費性をより向上させる観点から、R4としては、炭素数6~12のアルキル基が好ましい。
【0020】
a、b、cおよびdは、ケイ素原子の合計モル数を1とした場合の各有機基の平均モル数を意味し、0<2a<1、0<b<1、0<c<3、0≦d<1、かつ0<2a+b+c+d<4を満たす数を表すが、好ましくは0.2≦2a≦0.95、0.05≦b≦0.8、1≦c≦2.5、0≦d≦0.6、かつ1.3≦2a+b+c+d<4を満たす数、より好ましくは、0.3≦2a≦0.80、0.05≦b≦0.6、1≦c≦2.5、0.05≦d≦0.5、かつ1.5≦2a+b+c+d<4を満たす数である。
【0021】
本発明において、オルガノポリシロキサンの毛細管式動粘度計による25℃における動粘度は、加工性の点から、2~10,000mm2/sが好ましく、10~5,000mm2/sがより好ましい。
【0022】
本発明のオルガノポリシロキサンは、例えば、下記一般式(3)で表される有機ケイ素化合物と、下記一般式(4)で表される有機ケイ素化合物と、必要により、下記一般式(5)で表される有機ケイ素化合物とを共加水分解縮合することにより製造することができる。
【0023】
【化5】
(式中、R
3、nおよびxは上記と同じ意味を表し、R
5は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または炭素数7~10のアラルキル基を表し、yは、1~3の整数、好ましくは、2または3を表す。)
【0024】
【化6】
(式中、R
2、R
3、R
5およびyは、上記と同じ意味を表す。)
【0025】
【化7】
(式中、R
3、R
4およびyは、上記と同じ意味を表す。)
【0026】
R5の炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアラルキル基としては、上記R2およびR4で例示した基と同様のものが挙げられるが、それらの中でも、R5としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0027】
上記式(3)で表される有機ケイ素化合物の具体的としては、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
上記式(4)で表される有機ケイ素化合物の具体的としては、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルジエトキシメチルシラン、フェニルジメトキシメチルシラン等が挙げられる。
上記式(5)で表される有機ケイ素化合物の具体的としては、メチルトリエトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルメチルジエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0028】
ここで、上記式(3)、(4)および(5)で表される有機ケイ素化合物の使用量は、上記式(1)において、a~dが上述した数となるように選択される。式(3)、(4)および(5)で表される有機ケイ素化合物全体に対し、式(3)で表される有機ケイ素化合物は、好ましくは20~95モル%、より好ましくは20~90モル%であり、式(4)で表される有機ケイ素化合物は、好ましくは5~80モル%、より好ましくは5~70モル%、特に好ましくは5~60モル%であり、式(5)で表される有機ケイ素化合物は、好ましくは0~60モル%、より好ましくは5~50モル%である。
【0029】
共加水分解縮合は、公知の方法によって行うことができる。使用する水の量も公知の量とすることができ、通常、有機ケイ素化合物中の加水分解性シリル基の合計1モルに対し、0.3~0.99モルであるが、0.4~0.8モルが好ましい。
【0030】
本発明のオルガノポリシロキサンの製造には、必要に応じて有機溶媒を用いてもよい。
有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒などが挙げられる。
これらの中でも、加水分解反応性に優れるという観点から、エタノール、i-プロパノールが好ましい。上記溶媒を使用する場合、その使用量は特に限定されないが、上記有機ケイ素化合物の質量の2倍量以下程度が好適であり、特に有機ケイ素化合物の質量と同量以下程度が好ましい。
【0031】
また、本発明のオルガノポリシロキサンの製造には、必要に応じて触媒を用いてもよい。
触媒の具体例としては、塩酸、酢酸等の酸性触媒;テトラブチルオルトチタネート、アンモニウムフルオリド等のルイス酸触媒;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属塩;トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン等のアミン化合物などが挙げられる。
シランの加水分解反応(および/または一部縮合)の触媒として、例えば塩酸を使用することができ、シラノールの縮合(オリゴマー化)の触媒として、例えば水酸化カリウムを使用することができる。
触媒の量(シランの加水分解反応の触媒とシラノールの縮合反応の触媒を併用する場合はそれぞれの量)は、反応性に優れるという観点から、有機ケイ素化合物中の加水分解性シリル基の合計1モルに対し、0.001~0.05(単位:モル当量)が好ましい。
【0032】
共加水分解縮合の反応条件は、通常、20~100℃、好ましくは60~85℃にて、通常30分~20時間、好ましくは1分~10時間である。
【0033】
[2]ゴム組成物
本発明のゴム組成物は、上述した式(1)で表されるオルガノポリシロキサン(A)を含むものであり、さらに、ジエン系ゴム(B)、充填剤(C)を含んでいてもよい。
上記式(1)で表されるオルガノポリシロキサン(A)の配合量は、得られるゴムの物性や、発揮される効果の程度と経済性とのバランス等を考慮すると、後述する充填剤(C)100質量部に対し、3~20質量部が好ましく、5~12質量部がより好ましい。
【0034】
ジエン系ゴム(B)としては、従来、各種ゴム組成物に一般的に用いられている任意のゴムを用いることができ、その具体例としては、天然ゴム(NR);各種イソプレンゴム(IR)、各種スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等のジエン系ゴムなどが挙げられ、これらは、1種単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。また、ジエン系ゴム以外に、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPR,EPDM)等の非ジエン系ゴムなどを併用することができる。
【0035】
充填剤(C)としては、シリカ、タルク、クレー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン等が挙げられる。これらの中でも、シリカが好ましく、本発明のゴム組成物は、シリカ含有ゴム組成物として用いることがより好ましい。
この場合、充填剤(C)の配合量は、得られるゴムの物性や、発揮される効果の程度と経済性とのバランス等を考慮すると、ジエン系ゴム100質量部に対し、5~200質量部が好ましく、30~120質量部がより好ましい。
【0036】
なお、本発明のゴム組成物には、上記(A)~(C)の各成分に加えて、カーボンブラック、加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤等のタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができる。これら添加剤の配合量も本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0037】
本発明のゴム組成物は、常法に従い、ジエン系ゴム(B)に、オルガノポリシロキサン(A)、充填剤(C)およびその他の成分を加えて混練することで得ることができる。
【0038】
[3]ゴム製品(タイヤ)
本発明のゴム組成物は、上述した(A)~(C)成分およびその他の成分を一般的な方法で組成物とし、これを加硫または架橋するゴム製品、例えば、タイヤ等のゴム製品の製造に使用することができる。特に、タイヤを製造する場合、本発明のゴム組成物がトレッドに用いられていることが好ましい。
【0039】
本発明のゴム組成物を用いて得られるタイヤは、転がり抵抗が大幅に低減されていることに加え、耐磨耗性も大幅に向上していることから、所望の低燃費性を実現できる。
なお、タイヤの構造は、従来公知の構造とすることができ、その製法も、従来公知の製法を採用すればよい。また、気体入りのタイヤの場合、タイヤ内に充填する気体として通常空気や、酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例0040】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記例において、「部」は質量部を意味し、粘度は毛細管式動粘度計を用いて25℃で測定した値である。
【0041】
[1]オルガノポリシロキサンの合成
[実施例1-1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製、KBE-846)539g(1.0mol)、フェニルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE-103)192g(0.8mol)、エタノール200gを納めた後、室温にて0.5N塩酸25.2g(水1.4mol)を滴下した。次いで、80℃にて10時間撹拌した。その後、プロピレンオキサイド3.0gを滴下し、80℃で2時間撹拌した。さらに、減圧濃縮、濾過することで、粘度が240mm2/sの褐色透明液体を得た。得られたオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式で表されるものであった。
(-C3H6-S4-C3H6-)0.36(-C6H5)0.28(-OC2H5)2.00SiO0.50
【0042】
[実施例1-2]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製、KBE-846)539g(1.0mol)、フェニルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE-103)96g(0.4mol)、プロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製KBE-3033)83g(0.4mol)、エタノール200gを納めた後、室温にて0.5N塩酸25.2g(水1.4mol)を滴下した。次いで、80℃にて10時間撹拌した。その後、プロピレンオキサイド3.0gを滴下し、80℃で2時間撹拌した。更に、減圧濃縮、濾過することで、粘度が150mm2/sの褐色透明液体を得た。得られたオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式で表されるものであった。
(-C3H6-S4-C3H6-)0.36(-C6H5)0.14(-C3H7)0.14(-OC2H5)2.00SiO0.50
【0043】
[実施例1-3]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製、KBE-846)539g(1.0mol)、フェニルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE-103)96g(0.4mol)、ヘキシルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製KBE-3063)99g(0.4mol)、エタノール200gを納めた後、室温にて0.5N塩酸25.2g(水1.4mol)を滴下した。次いで、80℃にて10時間撹拌した。その後、プロピレンオキサイド3.0gを滴下し、80℃で2時間撹拌した。さらに、減圧濃縮、濾過することで、粘度が120mm2/sの褐色透明液体を得た。得られたオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式で表されるものであった。
(-C3H6-S4-C3H6-)0.36(-C6H5)0.14(-C6H13)0.14(-OC2H5)2.00SiO0.50
【0044】
[実施例1-4]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製、KBE-846)539g(1.0mol)、フェニルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE-103)96g(0.4mol)、オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製KBE-3083)111g(0.4mol)、エタノール200gを納めた後、室温にて0.5N塩酸25.2g(水1.4mol)を滴下した。次いで、80℃にて10時間撹拌した。その後、プロピレンオキサイド3.0gを滴下し、80℃で2時間撹拌した。さらに、減圧濃縮、濾過することで、粘度が80mm2/sの褐色透明液体を得た。得られたオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式で表されるものであった。
(-C3H6-S4-C3H6-)0.36(-C6H5)0.14(-C8H17)0.14(-OC2H5)2.00SiO0.50
【0045】
[実施例1-5]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製、KBE-846)539g(1.0mol)、フェニルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE-103)48g(0.2mol)、オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製KBE-3083)166g(0.6mol)、エタノール200gを納めた後、室温にて0.5N塩酸25.2g(水1.4mol)を滴下した。次いで、80℃にて10時間撹拌した。その後、プロピレンオキサイド3.0gを滴下し、80℃で2時間撹拌した。さらに、減圧濃縮、濾過することで、粘度が80mm2/sの褐色透明液体を得た。得られたオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式で表されるものであった。
(-C3H6-S4-C3H6-)0.36(-C6H5)0.07(-C8H17)0.21(-OC2H5)2.00SiO0.50
【0046】
[比較例1-1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製、KBE-846)539g(1.0mol)、オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE-3083)222g(0.8mol)、エタノール200gを納めた後、室温にて0.5N塩酸25.2g(水1.4mol)を滴下した。次いで、80℃にて10時間撹拌した。その後、プロピレンオキサイド3.0gを滴下し、80℃で2時間撹拌した。さらに、減圧濃縮、濾過することで、粘度が80mm2/sの褐色透明液体を得た。得られたオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式で表されるものであった。
(-C3H6-S4-C3H6-)0.36(-C8H17)0.28(-OC2H5)2.00SiO0.50
【0047】
[2]ゴム組成物の調製
[実施例2-1~2-5,比較例2-1~2-2]
4Lのインターナルミキサー(MIXTRON、(株)神戸製鋼所製)を用いて、表1記載のSBRとBRを30秒間混練した。
次いで、表1記載のオイル成分、カーボンブラック、シリカ、スルフィドシラン、実施例および比較例で得られたオルガノポリシロキサン、ステアリン酸、老化防止剤、並びにワックスを加え、内温を150℃まで上昇させ、150℃で2分間保持をかけた後、排出した。その後、ロールを用いて延伸した。得られたゴムを、再度インターナルミキサー(MIXTRON、(株)神戸製鋼所製)を用いて内温が140℃になるまで混練し、排出した後、ロールを用いて延伸した。
これに表1記載の酸化亜鉛、加硫促進剤および硫黄を加えて混練し、ゴム組成物を得た。
【0048】
SBR:SLR-4602(トリンセオ製)
BR:BR-01(JSR(株)製)
オイル:AC-12(出光興産(株)製)
カーボンブラック:シースト3(東海カーボン(株)製)
シリカ:ニプシルAQ(東ソー・シリカ(株)製)
スルフィドシラン:KBE-846(信越化学工業(株)製)
ステアリン酸:工業用ステアリン酸(花王(株)製)
老化防止剤:ノクラック6C(大内新興化学工業(株)製)
ワックス:オゾエース0355(日本精蝋(株)製)
酸化亜鉛:亜鉛華3号(三井金属鉱業(株)製)
加硫促進剤(a):ノクセラーD(大内新興化学工業(株)製)
加硫促進剤(b):ノクセラーDM-P(大内新興化学工業(株)製)
加硫促進剤(c):ノクセラーCZ-G(大内新興化学工業(株)製)
硫黄:5%オイル処理硫黄(細井化学工業(株))製)
【0049】
上記実施例2-1~2-5、比較例2-1~2-2で得られたゴム組成物について、未加硫物性および加硫物性を下記の方法で測定した。結果を表1,2に併せて示す。なお、加硫物性に関しては、得られたゴム組成物をプレス成形(160℃、10~40分)して、加硫ゴムシート(厚み2mm)を作製した。
【0050】
〔未加硫物性〕
(1)ムーニー粘度
JIS K 6300-1:2013に準拠し、余熱1分、測定4分、温度130℃にて測定し、比較例2-1を100として指数で表した。指数値が小さいほど、ムーニー粘度が低く加工性に優れている。
〔加硫物性〕
(2)硬度
JIS K 6253-3:2012に準拠しデュロメーター(タイプA)硬さを測定し、比較例2-1を100として指数で表した。指数値が大きいほど、硬度が高く優れている。
(3)引張特性
JIS3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251に準拠して行い、300%モジュラス(M300)[MPa]を室温にて測定した。得られた結果を、比較例2-1を100として指数表示した。指数値が大きいほど、モジュラスが高く引張特性に優れることを示す。
(4)動的粘弾性(歪分散)
粘弾性測定装置(メトラビブ社製)を使用し、温度25℃、周波数55Hzの条件にて、歪0.5%の貯蔵弾性率E’(0.5%)と歪3.0%の貯蔵弾性率E’(3.0%)を測定し、[E’(0.5%)-E’(3.0%)]の値を算出した。なお、試験片は厚さ0.2cm、幅0.5cmのシートを用い、使用挟み間距離2cmとして初期荷重を1Nとした。
[E’(0.5%)-E’(3.0%)]の値は、比較例2-1を100として指数で表し、指数値が小さい程、シリカの分散性が良好であることを示す。
(5)動的粘弾性(温度分散)
粘弾性測定装置(メトラビブ社製)を使用し、引張の動歪1%、周波数55Hzの条件にて測定した。なお、試験片は厚さ0.2cm、幅0.5cmのシートを用い、使用挟み間距離2cmとして初期荷重を1Nとした。
tanδ(0℃)、tanδ(60℃)の値は、比較例2-1を100として指数で表した。tanδ(0℃)の値は、指数値が大きいほどウェットグリップ性が良好であることを示す。tanδ(60℃)の値は、指数値が小さいほど転がり抵抗が良好であることを示す。
(6)耐磨耗性
FPS試験機(上島製作所製)を用いて、サンプルスピード200m/分、荷重20N、路面温度30℃、スリップ率5%の条件で試験を行った。
得られた結果を、比較例2-1を100として指数表示した。指数値が大きいほど、磨耗量が少なく耐磨耗性に優れることを示す。
【0051】
【0052】
表1に示されるように、実施例2-1~2-5のゴム組成物の加硫物は、比較例1-1のゴム組成物の加硫物に比べ、硬度や引張特性を維持したまま、歪分散[E’(0.5%)-E’(3.0%)]の値が小さく、シリカ分散性に優れていることがわかる。また、動的粘弾性tanδ(0℃)の値が高く、ウェットグリップ性に優れ、動的粘弾性tanδ(60℃)が低く、ヒステリシスロスが小さく低発熱性である。