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特開2023-153774タンパク質付着抑制用共重合体、共重合体の製造方法、樹脂改質剤、成形材料、共重合体含有組成物、塗膜および物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153774
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】タンパク質付着抑制用共重合体、共重合体の製造方法、樹脂改質剤、成形材料、共重合体含有組成物、塗膜および物品
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/26 20060101AFI20231011BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20231011BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20231011BHJP
   A61L 29/04 20060101ALI20231011BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20231011BHJP
   A61L 33/06 20060101ALI20231011BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C08F220/26
C08L33/14
C08F265/06
A61L29/04 100
A61L31/04 110
A61L33/06 200
C12M1/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110980
(22)【出願日】2023-07-05
(62)【分割の表示】P 2020548456の分割
【原出願日】2019-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2018180898
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019047265
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】西村 雅翔
(72)【発明者】
【氏名】椋木 一詞
(72)【発明者】
【氏名】大沼 妙子
(72)【発明者】
【氏名】麻生 宏実
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 裕美子
(57)【要約】      (修正有)
【課題】タンパク質が付着し難く、タンパク質と接触する物品の製造に好適なタンパク質付着抑制用共重合体、共重合体の製造方法、ならびに前記共重合体を用いた樹脂改質剤、成形材料、共重合体含有組成物、塗膜および物品を提供すること。
【解決手段】タンパク質付着抑制用共重合体であって、前記共重合体の一分子中に、下記式(1)で表される構成単位(a)を含むポリマー鎖と、下記式(2)で表される構成単位(b)を含むポリマー鎖とを有する、タンパク質付着抑制用共重合体。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質付着抑制用共重合体であって、
前記共重合体の一分子中に、下記式(3A)で表される構成単位(a)を含むポリマー鎖(3A)と、下記式(3B)で表される構成単位(b)を含むポリマー鎖(3B)とを有する、タンパク質付着抑制用共重合体。
【化1】
(式(3A)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、RはOR33、ハロゲン原子、COR34、COOR35、CN、CONR3637又はR38であり、R33~R37はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換の脂環式基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基、置換若しくは非置換の非芳香族の複素環式基、置換若しくは非置換のアラルキル基、置換若しくは非置換のアルカリール基、又は置換若しくは非置換のオルガノシリル基を表し、R38は置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基を表す。)
(式(3B)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数1~4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1~6の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
前記構成単位(a)が、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位である、請求項1に記載のタンパク質付着抑制用共重合体。
【請求項3】
前記構成単位(a)を含む下記式(4)で表されるマクロモノマー由来の構成単位(d)を有する、請求項1または2に記載のタンパク質付着抑制用共重合体。
【化2】
(式中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を表し、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよく、Rは水素原子またはメチル基を表し、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよく、Zは末端基であり、nは2~10,000の自然数である。)
【請求項4】
前記構成単位(b)が、メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシプロピルアクリレート、メトキシブチルアクリレート、エトキシメチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート、エトキシブチルアクリレート、プロポキシメチルアクリレート、プロポキシエチルアクリレート、プロポキシプロピルアクリレート、プロポキシブチルアクリレート、ブトキシメチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシプロピルアクリレート、ブトキシブチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシプロピルメタクリレート、メトキシブチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、エトキシプロピルメタクリレート、エトキシブチルメタクリレート、プロポキシメチルメタクリレート、プロポキシエチルメタクリレート、プロポキシプロピルメタクリレート、プロポキシブチルメタクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシプロピルメタクリレート、及びブトキシブチルメタクリレートからなる群より選ばれる単量体由来であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のタンパク質付着抑制用共重合体。
【請求項5】
重量平均分子量(Mw)が75,000以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のタンパク質付着抑制用共重合体。
【請求項6】
全構成単位中の、前記構成単位(b)の総質量が、前記構成単位(a)の総質量よりも大きい、請求項1~5のいずれか一項に記載のタンパク質付着抑制用共重合体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のタンパク質付着抑制用共重合体からなる樹脂改質剤。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のタンパク質付着抑制用共重合体を含む成形材料。
【請求項9】
さらに熱可塑性樹脂を含み、前記タンパク質付着抑制用共重合体を1質量%以上含む請求項8に記載の成形材料。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル樹脂またはオレフィン樹脂である請求項9に記載の成形材料。
【請求項11】
タンパク質と接触する物品であって、請求項8~10のいずれか一項に記載の成形材料を成形した物品。
【請求項12】
前記成形した物品が、血しょうタンパク質と接触する、医療用器具、生化学用器具、及び細胞治療用機器からなる群より選ばれるいずれか、又は、血しょうタンパク質以外のタンパク質と接触する、細胞培養用シャーレ、細胞培養用セル、細胞培養用マイクロプレート、細胞培養用バッグ、細胞培養用プレート、細胞培養用チューブ、細胞培養用フラスコ、バイオ医薬品用シャーレ、バイオ医薬品用セル、バイオ医薬品用マイクロプレート、バイオ医薬品用プレート、バイオ医薬品用チューブ、バイオ医薬品用バッグ、バイオ医薬品用容器、バイオ医薬品用シリンジ、バイオ医薬品用フラスコ、抗体医薬品用シャーレ、抗体医薬品用セル、抗体医薬品用マイクロプレート、抗体医薬品用プレート、抗体医薬品用チューブ、抗体医薬品用バッグ、抗体医薬品用容器、抗体医薬品用シリンジ、及び抗体医薬品用フラスコ、血液バッグ、血液製剤用バイアル、血液製剤用バックからなる群より選ばれるいずれかである、請求項11に記載の成形した物品。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか一項に記載のタンパク質付着抑制用共重合体と、溶剤とを含む共重合体含有組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の共重合体含有組成物を用いて形成された塗膜。
【請求項15】
タンパク質と接触する物品であって、タンパク質と接触する面に請求項14に記載の塗膜を有する物品。
【請求項16】
前記塗膜を有する物品が、血しょうタンパク質と接触する面に前記塗膜を有する、医療用器具、生化学用器具、及び細胞治療用機器からなる群のより選ばれるいずれか、又は、血しょうタンパク質以外のタンパク質と接触する面に前記塗膜を有する、細胞培養用シャーレ、細胞培養用セル、細胞培養用マイクロプレート、細胞培養用バッグ、細胞培養用プレート、細胞培養用チューブ、細胞培養用フラスコ、バイオ医薬品用シャーレ、バイオ医薬品用セル、バイオ医薬品用マイクロプレート、バイオ医薬品用プレート、バイオ医薬品用チューブ、バイオ医薬品用バッグ、バイオ医薬品用容器、バイオ医薬品用シリンジ、バイオ医薬品用フラスコ、抗体医薬品用シャーレ、抗体医薬品用セル、抗体医薬品用マイクロプレート、抗体医薬品用プレート、抗体医薬品用チューブ、抗体医薬品用バッグ、抗体医薬品用容器、抗体医薬品用シリンジ、及び抗体医薬品用フラスコ、血液バッグ、血液製剤用バイアル、血液製剤用バックからなる群のより選ばれるいずれかである、請求項15の塗膜を有する物品。
【請求項17】
下記式(1)で表される構成単位(a)を含み下記式(4)で表されるラジカル重合性基を有するマクロモノマー(d’)と、下記式(2’)で表される単量体(b’)とを含む単量体混合物を、懸濁重合することを含む、共重合体の製造方法。
【化3】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、RはOR33、ハロゲン原子、COR34、COOR35、CN、CONR3637又はR38であり、R33~R37はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換の脂環式基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基、置換若しくは非置換の非芳香族の複素環式基、置換若しくは非置換のアラルキル基、置換若しくは非置換のアルカリール基、又は置換若しくは非置換のオルガノシリル基を表し、R38は置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基を表す。)
【化4】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数1~4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1~6の炭化水素基を表す。)
【化5】
(式中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を表し、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよく、Rは水素原子またはメチル基を表し、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよく、Zは末端基であり、nは2~10,000の自然数である。)
【請求項18】
前記単量体(b’)が、メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシプロピルアクリレート、メトキシブチルアクリレート、エトキシメチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート、エトキシブチルアクリレート、プロポキシメチルアクリレート、プロポキシエチルアクリレート、プロポキシプロピルアクリレート、プロポキシブチルアクリレート、ブトキシメチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシプロピルアクリレート、ブトキシブチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシプロピルメタクリレート、メトキシブチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、エトキシプロピルメタクリレート、エトキシブチルメタクリレート、プロポキシメチルメタクリレート、プロポキシエチルメタクリレート、プロポキシプロピルメタクリレート、プロポキシブチルメタクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシプロピルメタクリレート、及びブトキシブチルメタクリレートからなる群より選ばれる1以上であることを特徴とする、請求項17に記載の共重合体の製造方法。
【請求項19】
前記単量体混合物中に存在する、前記単量体(b’)の総質量が、前記構成単位(a)の総質量よりも大きい、請求項17又は18に記載の共重合体の製造方法。
【請求項20】
前記マクロモノマー(d’)を懸濁重合法で合成することを含む、請求項17~19のいずれか一項に記載の共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタンパク質付着抑制用共重合体、共重合体の製造方法、ならびに前記共重合体を用いた樹脂改質剤、成形材料、共重合体含有組成物、塗膜および物品に関する。
本願は、2018年9月26日に、日本に出願された特願2018-180898号、及び2019年3月14日に、日本に出願された特願2019-047265号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療器具、生化学分析やタンパクの分離精製の分野では、各種ポリマー材料(ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ナイロン)、ガラス、又はステンレス等の金属が、各種反応容器、遠心管、チューブ、シリンジ、ピペット、フィルター、分離用カラム等の種々の部品、容器等に使用されているが、いずれの材料においてもタンパク質の付着がおきるために、検出感度の低下や再現性の低下、精製不良を引き起こす原因となっている。
また、カテーテル、カニューレ、ステント、血しょう分離用膜、人工心肺等の人工臓器等は、循環血液や体内の代謝物質との接触があり、タンパク質の付着や、血しょうタンパク付着によって引き起こされる血栓等の形成を抑制する生体適合性が必要とされている。
【0003】
特許文献1には、ポリメトキシエチルアクリレート(PMEA)が、抗血栓性、低タンパク質付着能といった生体適合性を有することが記載されている。
特許文献2には、ポリメチルメタクリレート(PMMA)と、PMEAとのブレンド溶液の塗膜を熱処理し、超純水にさらすことによって、血小板が付着しにくい膜を得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-161954号公報
【特許文献2】特開2013-121430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されているPMEAはガラス転移温度が約-50℃と非常に低い。このため、成形材料として使用し難く、塗料とした場合は塗膜の充分な硬度が得られ難く、実用性に劣る。
また特許文献2に記載されている方法は、製造工程が煩雑であり、処理時間が長いという欠点がある。
【0006】
本発明は、タンパク質が付着し難く、タンパク質と接触する物品の製造に好適なタンパク質付着抑制用共重合体、共重合体の製造方法、ならびに前記共重合体を用いた樹脂改質剤、成形材料、共重合体含有組成物、塗膜および物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] 下記式(1)で表される構成単位(a)、及び下記式(2)で表される構成単位(b)を有する、タンパク質付着抑制用共重合体。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、RはOR33、ハロゲン原子、COR34、COOR35、CN、CONR3637又はR38であり、R33~R37はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換の脂環式基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基、置換若しくは非置換の非芳香族の複素環式基、置換若しくは非置換のアラルキル基、置換若しくは非置換のアルカリール基、又は置換若しくは非置換のオルガノシリル基を表し、R38は置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基を表す。)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数1~4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1~6の炭化水素基を表す。)
[2] 前記構成単位(a)が、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位である、[1]のタンパク質付着抑制用共重合体。
[3] 前記構成単位(a)を含むマクロモノマー由来の構成単位(d)を有する、[1]または[2]のタンパク質付着抑制用共重合体。
[4] 前記マクロモノマーが、下記式(4)で表される、[3]のタンパク質付着抑制用共重合体。
【0012】
【化3】
【0013】
(式中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を表し、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよく、Rは水素原子またはメチル基を表し、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよく、Zは末端基であり、nは2~10,000の自然数である。)
[5] 前記構成単位(b)が、メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシプロピルアクリレート、メトキシブチルアクリレート、エトキシメチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート、エトキシブチルアクリレート、プロポキシメチルアクリレート、プロポキシエチルアクリレート、プロポキシプロピルアクリレート、プロポキシブチルアクリレート、ブトキシメチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシプロピルアクリレート、ブトキシブチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシプロピルメタクリレート、メトキシブチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、エトキシプロピルメタクリレート、エトキシブチルメタクリレート、プロポキシメチルメタクリレート、プロポキシエチルメタクリレート、プロポキシプロピルメタクリレート、プロポキシブチルメタクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシプロピルメタクリレート、及びブトキシブチルメタクリレートからなる群より選ばれる単量体由来である、[1]~[4]のいずれかのタンパク質付着抑制用共重合体。
[6] 重量平均分子量(Mw)が75,000以上である、[1]~[5]のいずれかのタンパク質付着抑制用共重合体。
[7] 全構成単位中の、前記構成単位(b)の総質量が、前記構成単位(a)の総質量よりも大きい、[1]~[6]のいずれかのタンパク質付着抑制用共重合体。
[8] 前記[1]~[7]のいずれかのタンパク質付着抑制用共重合体からなる樹脂改質剤。
[9] 前記[1]~[7]のいずれかのタンパク質付着抑制用共重合体を含む成形材料。
[10] さらに熱可塑性樹脂を含み、前記タンパク質付着抑制用共重合体を1質量%以上含む[9]の成形材料。
[11] 前記熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル樹脂またはオレフィン樹脂である[10]の成形材料。
[12] タンパク質と接触する物品であって、[9]~[11]のいずれかの成形材料を成形した物品。
[13] 前記成形した物品が、血しょうタンパク質と接触する、医療用器具、生化学用器具、及び細胞治療用機器からなる群より選ばれるいずれか、又は、血しょうタンパク質以外のタンパク質と接触する、細胞培養用シャーレ、細胞培養用セル、細胞培養用マイクロプレート、細胞培養用バッグ、細胞培養用プレート、細胞培養用チューブ、細胞培養用フラスコ、バイオ医薬品用シャーレ、バイオ医薬品用セル、バイオ医薬品用マイクロプレート、バイオ医薬品用プレート、バイオ医薬品用チューブ、バイオ医薬品用バッグ、バイオ医薬品用容器、バイオ医薬品用シリンジ、バイオ医薬品用フラスコ、抗体医薬品用シャーレ、抗体医薬品用セル、抗体医薬品用マイクロプレート、抗体医薬品用プレート、抗体医薬品用チューブ、抗体医薬品用バッグ、抗体医薬品用容器、抗体医薬品用シリンジ、及び抗体医薬品用フラスコ、血液バッグ、血液製剤用バイアル、血液製剤用バックからなる群より選ばれるいずれかである、[12]に記載の成形した物品。
[14] 前記[1]~[7]のいずれかのタンパク質付着抑制用共重合体と、溶剤とを含む共重合体含有組成物。
[15] 前記[14]の共重合体含有組成物を用いて形成された塗膜。
[16] タンパク質と接触する物品であって、タンパク質と接触する面に[15]の塗膜を有する物品。
[17] 前記塗膜を有する物品が、血しょうタンパク質と接触する面に前記塗膜を有する、医療用器具、生化学用器具、及び細胞治療用機器からなる群のより選ばれるいずれか、又は、血しょうタンパク質以外のタンパク質と接触する面に前記塗膜を有する、細胞培養用シャーレ、細胞培養用セル、細胞培養用マイクロプレート、細胞培養用バッグ、細胞培養用プレート、細胞培養用チューブ、細胞培養用フラスコ、バイオ医薬品用シャーレ、バイオ医薬品用セル、バイオ医薬品用マイクロプレート、バイオ医薬品用プレート、バイオ医薬品用チューブ、バイオ医薬品用バッグ、バイオ医薬品用容器、バイオ医薬品用シリンジ、バイオ医薬品用フラスコ、抗体医薬品用シャーレ、抗体医薬品用セル、抗体医薬品用マイクロプレート、抗体医薬品用プレート、抗体医薬品用チューブ、抗体医薬品用バッグ、抗体医薬品用容器、抗体医薬品用シリンジ、及び抗体医薬品用フラスコ、血液バッグ、血液製剤用バイアル、血液製剤用バックからなる群のより選ばれるいずれかである、[16]の塗膜を有する物品。
[18] 下記式(1)で表される構成単位(a)を含みラジカル重合性基を有するマクロモノマー(d’)と、下記式(2’)で表される単量体(b’)とを含む単量体混合物を、懸濁重合することを含む、共重合体の製造方法。
【0014】
【化4】
【0015】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、RはOR33、ハロゲン原子、COR34、COOR35、CN、CONR3637又はR38であり、R33~R37はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換の脂環式基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基、置換若しくは非置換の非芳香族の複素環式基、置換若しくは非置換のアラルキル基(アリールアルキル基)、置換若しくは非置換のアルカリール基(アルキルアリール基)、又は置換若しくは非置換のオルガノシリル基を表し、R38は置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基を表す。)
【0016】
【化5】
【0017】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数1~4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1~6の炭化水素基を表す。)
[19] 前記単量体(b’)が、メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシプロピルアクリレート、メトキシブチルアクリレート、エトキシメチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート、エトキシブチルアクリレート、プロポキシメチルアクリレート、プロポキシエチルアクリレート、プロポキシプロピルアクリレート、プロポキシブチルアクリレート、ブトキシメチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシプロピルアクリレート、ブトキシブチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシプロピルメタクリレート、メトキシブチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、エトキシプロピルメタクリレート、エトキシブチルメタクリレート、プロポキシメチルメタクリレート、プロポキシエチルメタクリレート、プロポキシプロピルメタクリレート、プロポキシブチルメタクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシプロピルメタクリレート、及びブトキシブチルメタクリレートからなる群より選ばれる1以上である、[18]の共重合体の製造方法。
[20] 前記単量体混合物中に存在する、前記単量体(b’)の総質量が、前記構成単位(a)の総質量よりも大きい、[18]又は[19]の共重合体の製造方法。
[21] 前記マクロモノマー(d’)を懸濁重合法で合成することを含む、[18]~[20]のいずれかの共重合体の製造方法。
【0018】
本発明は、以下の組み合わせを有していてもよい。
[1] 下記式(1)で表される構成単位(a)、及び下記式(2)で表される構成単位(b)を有する、共重合体。
【0019】
【化6】
【0020】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、RはOR33、ハロゲン原子、COR34、COOR35、CN、CONR3637又はR38であり、R33~R37はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換の脂環式基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基、置換若しくは非置換の非芳香族の複素環式基、置換若しくは非置換のアラルキル基(アリールアルキル基)、置換若しくは非置換のアルカリール基(アルキルアリール基)、又は置換若しくは非置換のオルガノシリル基を表し、R38は置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基を表す。)
【0021】
【化7】
【0022】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数1~4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1~6の炭化水素基を表す。)
[2] Rはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、またはブチレン基である、[1]の共重合体。
[3] Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、またはヘキシル基を表す、[1]または[2]の共重合体。
[4] 前記構成単位(a)が、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位である、[1]~[3]のいずれかの共重合体。
[5] 前記構成単位(a)を含むマクロモノマー由来の構成単位(d)を有する、[1]~[4]のいずれかの共重合体。
[6] 前記マクロモノマーが、下記式(4)で表される、[5]の共重合体。
【0023】
【化8】
【0024】
(式中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を表し、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよく、Rは水素原子またはメチル基を表し、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよく、Zは末端基であり、nは2~10,000の自然数である。)
[7] 前記置換基が、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、又はハロゲン原子である、[6]の共重合体。
[8] Rはそれぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよく、Rは水素原子またはメチル基を表し、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよい、[6]または[7]の共重合体。
[9] 前記マクロモノマーの数平均分子量(Mn)は、200~100,000であることが好ましく、500~100,000がより好ましく、1000~50,000がさらに好ましく、2,000~50,000が特に好ましい、[6]~[8]のいずれかの共重合体。
[10] 前記マクロモノマーの分子量分布は、1.5~3.0が好ましく、2.0~2.5がより好ましい、[6]~[9]のいずれかの共重合体。
[11] 前記構成単位(b)が、メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシプロピルアクリレート、メトキシブチルアクリレート、エトキシメチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート、エトキシブチルアクリレート、プロポキシメチルアクリレート、プロポキシエチルアクリレート、プロポキシプロピルアクリレート、プロポキシブチルアクリレート、ブトキシメチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシプロピルアクリレート、ブトキシブチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシプロピルメタクリレート、メトキシブチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、エトキシプロピルメタクリレート、エトキシブチルメタクリレート、プロポキシメチルメタクリレート、プロポキシエチルメタクリレート、プロポキシプロピルメタクリレート、プロポキシブチルメタクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシプロピルメタクリレート、及びブトキシブチルメタクリレートからなる群より選ばれる単量体由来である、[1]~[10]のいずれかの共重合体。
[12] 重量平均分子量(Mw)が75,000以上である、[1]~[11]のいずれかの共重合体。
[13] 全構成単位中の、前記構成単位(b)の総質量が、前記構成単位(a)の総質量よりも大きい、[1]~[12]のいずれかの共重合体。
[14] 重量平均分子量(Mw)が75,000以上1,000,000以下がより好ましく、80,000以上500,000以下がさらに好ましい、[1]~[13]のいずれかの共重合体。
[15] 前記構成単位(b)の割合は、全構成単位の総質量に対し、50質量%超95質量%以下が好ましく、50質量%超80質量%以下がより好ましく、50質量%超75質量%以下がさらに好ましい、[1]~[14]のいずれかの共重合体。
[16] 前記構成単位(a)の割合は、全構成単位の総質量に対し、30~70質量%が好ましく、40~60質量%がより好ましい、[1]~[15]のいずれかの共重合体。
[17] 前記[1]~[16]のいずれかの共重合体からなる樹脂改質剤。
[18] 前記[1]~[16]のいずれかの共重合体を含む成形材料。
[19] さらに熱可塑性樹脂を含み、前記共重合体を1質量%以上含む[18]の成形材料。
[20] 前記熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル樹脂またはオレフィン樹脂である[19]の成形材料。
[21] 前記熱可塑性樹脂がポリメチルメタクリレートまたはオレフィン樹脂である[19]の成形材料。
[22] タンパク質と接触する物品であって、[18]~[21]のいずれかの成形材料を成形した物品。
[23] 前記成形した物品が、血しょうタンパク質と接触する、医療用器具、生化学用器具、及び細胞治療用機器からなる群より選ばれるいずれか、又は、血しょうタンパク質以外のタンパク質と接触する、細胞培養用シャーレ、細胞培養用セル、細胞培養用マイクロプレート、細胞培養用バッグ、細胞培養用プレート、細胞培養用チューブ、細胞培養用フラスコ、バイオ医薬品用シャーレ、バイオ医薬品用セル、バイオ医薬品用マイクロプレート、バイオ医薬品用プレート、バイオ医薬品用チューブ、バイオ医薬品用バッグ、バイオ医薬品用容器、バイオ医薬品用シリンジ、バイオ医薬品用フラスコ、抗体医薬品用シャーレ、抗体医薬品用セル、抗体医薬品用マイクロプレート、抗体医薬品用プレート、抗体医薬品用チューブ、抗体医薬品用バッグ、抗体医薬品用容器、抗体医薬品用シリンジ、及び抗体医薬品用フラスコ、血液バッグ、血液製剤用バイアル、血液製剤用バックからなる群より選ばれるいずれかである、[22]に記載の成形した物品。
[24] 前記[1]~[16]のいずれかの共重合体と、溶剤とを含む共重合体含有組成物。
[25] 共重合体含有組成物に対する前記共重合体の含有量は、1~85質量%が好ましく、5~80質量%がより好ましく、10~75質量%がさらに好ましく、15~70質量%が特に好ましい、[24]の共重合体含有組成物。
[26] 共重合体含有組成物に対する、前記溶剤の含有量は15~99質量%が好ましく、20~95質量%がより好ましく、25~90質量%が特に好ましい、[24]または[25]の共重合体含有組成物。
[27] [24]~[26]のいずれか共重合体含有組成物を用いて形成された塗膜。
[28] タンパク質と接触する物品であって、タンパク質と接触する面に[27]の塗膜を有する物品。
[29] 前記塗膜を有する物品が、血しょうタンパク質と接触する面に前記塗膜を有する、医療用器具、生化学用器具、及び細胞治療用機器からなる群より選ばれるいずれか、又は、血しょうタンパク質以外のタンパク質と接触する面に前記塗膜を有する、細胞培養用シャーレ、細胞培養用セル、細胞培養用マイクロプレート、細胞培養用バッグ、細胞培養用プレート、細胞培養用チューブ、細胞培養用フラスコ、バイオ医薬品用シャーレ、バイオ医薬品用セル、バイオ医薬品用マイクロプレート、バイオ医薬品用プレート、バイオ医薬品用チューブ、バイオ医薬品用バッグ、バイオ医薬品用容器、バイオ医薬品用シリンジ、バイオ医薬品用フラスコ、抗体医薬品用シャーレ、抗体医薬品用セル、抗体医薬品用マイクロプレート、抗体医薬品用プレート、抗体医薬品用チューブ、抗体医薬品用バッグ、抗体医薬品用容器、抗体医薬品用シリンジ、及び抗体医薬品用フラスコ、血液バッグ、血液製剤用バイアル、血液製剤用バックからなる群より選ばれるいずれかである、[28]の塗膜を有する物品。
[30] 下記式(1)で表される構成単位(a)を含みラジカル重合性基を有するマクロモノマー(d’)と、下記式(2’)で表される単量体(b’)とを含む単量体混合物を、懸濁重合することを含む、共重合体の製造方法。
【0025】
【化9】
【0026】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、RはOR33、ハロゲン原子、COR34、COOR35、CN、CONR3637又はR38であり、R33~R37はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換の脂環式基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基、置換若しくは非置換の非芳香族の複素環式基、置換若しくは非置換のアラルキル基、置換若しくは非置換のアルカリール基、又は置換若しくは非置換のオルガノシリル基を表し、R38は置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基を表す。)
【0027】
【化10】
【0028】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数1~4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1~6の炭化水素基を表す。)
[31] 前記単量体(b’)が、メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシプロピルアクリレート、メトキシブチルアクリレート、エトキシメチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート、エトキシブチルアクリレート、プロポキシメチルアクリレート、プロポキシエチルアクリレート、プロポキシプロピルアクリレート、プロポキシブチルアクリレート、ブトキシメチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシプロピルアクリレート、ブトキシブチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシプロピルメタクリレート、メトキシブチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、エトキシプロピルメタクリレート、エトキシブチルメタクリレート、プロポキシメチルメタクリレート、プロポキシエチルメタクリレート、プロポキシプロピルメタクリレート、プロポキシブチルメタクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシプロピルメタクリレート、及びブトキシブチルメタクリレートからなる群より選ばれる1以上である、[30]の共重合体の製造方法。
[32] 前記単量体混合物中に存在する、前記単量体(b’)の総質量が、前記構成単位(a)の総質量よりも大きい、[30]または[31]の共重合体の製造方法。
[33] 前記マクロモノマー(d’)を懸濁重合法で合成することを含む、[30]~[32]のいずれかの共重合体の製造方法。
[34] [1]~[16]のいずれかの共重合体を製造するための、[30]~[32]のいずれかの共重合体の製造方法。
[35] タンパク質付着抑制用である、[1]~[16]のいずれかの共重合体。
【発明の効果】
【0029】
本発明の共重合体はタンパク質付着抑制効果を有し、タンパク質と接触する物品の製造に好適である。
本発明の共重合体の製造方法によれば、成形性に優れ、タンパク質付着抑制効果を有する共重合体が得られる。
本発明の樹脂改質剤によれば、樹脂組成物のタンパク質付着抑制効果を向上できる。
本発明の成形材料によれば、タンパク質付着抑制効果を有する成形体を製造できる。
本発明の物品は、タンパク質付着抑制効果を有する。
本発明の共重合体含有組成物によれば、タンパク質付着抑制効果を有する塗膜を形成できる。
本発明の塗膜は、タンパク質付着抑制効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】比較例及び実施例のタンパク質付着試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「(メタ)アクリル系単量体」は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を意味する。
「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の総称である。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸の総称である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
「置換若しくは非置換」とは、炭化水素基が「非置換のもしくは置換基を有する」ものであることを意味する。
【0032】
以下、本発明の実施の形態について説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための単なる例示であって、本発明をこの実施の形態にのみ限定することは意図されない。本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、様々な態様で実施することが可能である。
【0033】
<タンパク質付着抑制用共重合体>
本実施形態のタンパク質付着抑制用共重合体(以下、単に「共重合体」という。)は、下記式(1)で表される構成単位(a)及び下記式(2)で表される構成単位(b)有する。
【0034】
【化11】
【0035】
式(1)において、Rは、水素原子またはメチル基を表し、RはOR33、ハロゲン原子、COR34、COOR35、CN、CONR3637又はR38であり、R33~R37はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換の脂環式基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基、置換若しくは非置換の非芳香族の複素環式基、置換若しくは非置換のアラルキル基、置換若しくは非置換のアルカリール基、又は置換若しくは非置換のオルガノシリル基を表し、R38は置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基を表す。
式(2)において、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数1~4のアルキレン基を表し、Rは炭素数1~6の炭化水素基を表す。
【0036】
共重合体はランダム共重合体でもよいが、タンパク質付着抑制の観点から、下記式(3A)で表される、構成単位(a)のポリマー鎖(3A)と、下記式(3B)で表される、構成単位(b)のポリマー鎖(3B)とを有するブロック共重合体またはグラフト共重合体の構造を有することが好ましい。
【0037】
【化12】
【0038】
式(3A)中のR、Rは、式(1)中のR、Rとそれぞれ同じである。nは1~1,000,000の自然数である。タンパク質付着抑制の観点からnは2~1,000が好ましく、5~1,000がより好ましく、10~500がさらに好ましく、20~500が特に好ましい。
式(3B)中のR~Rは、式(2)中のR~Rとそれぞれ同じである。mは1~1,000,000の自然数である。タンパク質付着抑制の観点からmは2~100,000が好ましく、5~50,000がさらに好ましい。また、mが前記下限値以上であれば、タンパク質付着抑制効果がより優れ、前記上限値以下であれば、成形性がより優れる。
共重合体の一分子中にポリマー鎖(3A)が2以上存在する場合、各ポリマー鎖(3A)の重合度(n)は互いに同じであってもよく異なってもよい。
共重合体の一分子中にポリマー鎖(3B)が2以上存在する場合、各ポリマー鎖(3B)の重合度(m)は互いに同じであってもよく異なってもよい。
【0039】
<構成単位(a)>
構成単位(a)は、前記式(1)で表される構造を有する。
構成単位(a)は(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位であることが好ましい。
としては水素原子、メチル基が好ましく、RとしてはCOOR35が好ましい。
【0040】
33~R37の非置換のアルキル基としては、例えば、炭素数1~22の分岐又は直鎖アルキル基が挙げられる。炭素数1~22の分岐又は直鎖アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、i-ブチル基、ペンチル基(アミル基)、i-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、i-オクチル基、ノニル基、i-ノニル基、デシル基、i-デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基(ステアリル基)、i-オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基及びドコシル基等が挙げられる。
【0041】
33~R37の非置換の脂環式基としては、単環式のものでも多環式のものでもよく、例えば、炭素数3~20の脂環式基が挙げられる。脂環式基としては、飽和脂環式基が好ましく、具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、シクロオクチル基、及びアダマンチル基等が挙げられる。
【0042】
33~R37の非置換のアリール基としては、例えば、炭素数6~18のアリール基が挙げられる。炭素数6~18のアリール基の具体例としては、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
33~R37の非置換のヘテロアリール基としては、例えば、炭素数4~18のヘテロアリール基が挙げられる。炭素数4~18のヘテロアリール基の具体例としては、ピリジル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
33~R37の非置換の非芳香族の複素環式基としては、例えば、炭素数4~18の複素環式基が挙げられる。炭素数4~18の複素環式基の具体例としては、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基等の酸素原子含有複素環式基、γ-ブチロラクトン基、ε-カプロラクトン基、ピロリジニル基、ピロリドン基、モルホリノ基等の窒素原子含有複素環式基等が挙げられる。
33~R37の非置換のアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
【0043】
33~R37の非置換のオルガノシリル基としては、例えば-SiR171819(ここで、R17~R19はそれぞれ独立に、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換の脂環式基、又は置換若しくは非置換のアリール基を示す。)が挙げられる。
17~R19における置換若しくは非置換のアルキル基としては、前記と同様のものが挙げられ、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-アミル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基、ステアリル基、ラウリル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、2-メチルイソプロピル基、ベンジル基等が挙げられる。
17~R19における置換若しくは非置換の脂環式基としては、前記と同様のものが挙げられ、例えばシクロヘキシル基等が挙げられる。
17~R19における置換若しくは非置換のアリール基としては、前記と同様のものが挙げられ、例えばフェニル基、p-メチルフェニル等が挙げられる。
17~R19はそれぞれ同じでもよく異なってもよい。
【0044】
33~R37の置換基としては、例えば、アルキル基(ただしR33~R37が置換基を有するアルキル基である場合を除く)、アリール基、-COOR11、シアノ基、-OR12、-NR1314、-CONR1516、ハロゲン原子、アリル基、エポキシ基、シロキシ基、及び親水性又はイオン性を示す基からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
ここで、R11~R16はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換の脂環式基、又は置換若しくは非置換のアリール基を示す。
【0045】
上記置換基におけるアルキル基、アリール基はそれぞれ、前記の非置換のアルキル基、非置換のアリール基と同様のものが挙げられる。
上記置換基における-COOR11のR11としては、水素原子又は非置換のアルキル基が好ましい。すなわち、-COOR11は、カルボキシ基又はアルコキシカルボニル基が好ましい。アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基が挙げられる。
上記置換基における-OR12のR12としては、水素原子又は非置換のアルキル基が好ましい。すなわち、-OR12は、ヒドロキシ基又はアルコキシ基が好ましい。アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~12のアルコキシ基が挙げられ、具体例としては、メトキシ基が挙げられる。
【0046】
上記置換基における-NR1314としては、例えばアミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基等が挙げられる。
上記置換基における-CONR1516としては、例えば、カルバモイル基(-CONH)、N-メチルカルバモイル基(-CONHCH)、N,N-ジメチルカルバモイル基(ジメチルアミド基:-CON(CH)等が挙げられる。
【0047】
上記置換基におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
上記置換基における親水性又はイオン性を示す基としては、例えば、カルボキシ基のアルカリ塩又はスルホ基のアルカリ塩、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基等のポリ(アルキレンオキシド)基及び四級アンモニウム塩基等のカチオン性置換基が挙げられる。
【0048】
上記式(1)で表される構成単位(a)としては、下記重合性モノマー(a’)由来の構成単位が挙げられる。
重合性モノマー(a’)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸3,5,5-トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、テルペンアクリレートやその誘導体、水添ロジンアクリレートやその誘導体、(メタ)アクリル酸ドコシル等の炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノオクチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノオクチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノオクチル、シトラコン酸モノエチル等のカルボキシル基含有ビニル系単量体;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;
ジメチルマレート、ジブチルマレート、ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジブチルイタコネート、ジパーフルオロシクロヘキシルフマレート等の不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体;
(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル等のエポキシ基含有ビニル系単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系のビニル系単量体;
(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するビニル系単量体;
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性のビニル系単量体;
(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系単量体;
(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソブトキシエチル、(メタ)アクリル酸t-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、「プラクセルFM」(ダイセル化学(株)製カプロラクトン付加モノマー、商品名)、「ブレンマーPME-100」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が2であるもの)、商品名)、「ブレンマーPME-200」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が4であるもの)、商品名)、「ブレンマーPME-400」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が9であるもの)、商品名)、「ブレンマー50POEP-800B」(日油(株)製、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-メタクリレート(エチレングリコールの連鎖が8であり、プロピレングリコールの連鎖が6であるもの)、商品名)、「ブレンマー20ANEP-600」(日油(株)製ノニルフェノキシ(エチレングリコール-ポリプロピレングリコール)モノアクリレート、商品名)、「ブレンマーAME-100」(日油(株)製、商品名)、「ブレンマーAME-200」(日油(株)製、商品名)及び「ブレンマー50AOEP-800B」(日油(株)製、商品名)等のグリコールエステル系単量体、
3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤含有単量体、
トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-プロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-アミルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ヘキシルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-オクチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ドデシルシリル(メタ)アクリレート、トリフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリ-p-メチルフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリベンジルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-s-ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-2-メチルイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ-t-ブチルシリル(メタ)アクリレート、エチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、n-ブチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピル-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、n-オクチルジ-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルステアリルシリル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルフェニルシリル(メタ)アクリレート、t-ブチルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、ラウリルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリルメチルマレート、トリイソプロピルシリルアミルマレート、トリ-n-ブチルシリル-n-ブチルマレート、t-ブチルジフェニルシリルメチルマレート、t-ブチルジフェニルシリル-n-ブチルマレート、トリイソプロピルシリルメチルフマレート、トリイソプロピルシリルアミルフマレート、トリ-n-ブチルシリル-n-ブチルフマレート、t-ブチルジフェニルシリルメチルフマレート、t-ブチルジフェニルシリル-n-ブチルフマレート、サイラプレーンFM-0711(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンFM-0721(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンFM-0725(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンTM-0701(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンTM-0701T(JNC(株)製、商品名)、X-22-174ASX(信越化学工業(株)製、商品名)、X-22-174BX(信越化学工業(株)製、商品名)、KF-2012(信越化学工業(株)製、商品名)、X-22-2426(信越化学工業(株)製、商品名)、X-22-2404(信越化学工業(株)製、商品名)等の、シランカップリング剤含有モノマー以外のオルガノシリル基含有単量体;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン、
(メタ)アクリル酸2-イソシアナトエチル、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロフェニル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)メタクリレート、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1,2,2,2-テトラフルオロー1-(トリフルオロメチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有単量体(ただしハロゲン化オレフィンを除く)、
1-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、1-(2-エチルへキシルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1-(シクロへキシルオキシ)エチルメタクリレート、2-テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート等のアセタール構造を持つ単量体、
4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、(メタ)アクリル酸-2-イソシアナトエチル等が挙げられる。
【0049】
これらの重合性モノマー(a’)は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
重合性モノマー(a’)として、共重合性の点で、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルがより好ましく、(メタ)アクリル酸メチルが特に好ましい。
【0050】
<マクロモノマー(d’)>
本実施形態の共重合体は、構成単位(a)を含むマクロモノマー由来の構成単位(d’)を有してもよい。マクロモノマー(d’)を構成する繰り返し単位が構成単位(a)のみであってもよい。マクロモノマーとは重合可能な官能基を有するものを意味する。
マクロモノマー(d’)は、構成単位(a)と、ラジカル重合性基を有することが好ましい。
マクロモノマー(d’)がラジカル重合性基を有する場合、マクロモノマー(d’)と単量体(b’)とをラジカル重合により共重合させて、本実施形態の共重合体を製造することができる。
【0051】
マクロモノマー(d’)に含まれるラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基が好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、例えば、CH=C(COOR)-CH-、(メタ)アクリロイル基、2-(ヒドロキシメチル)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
ここで、Rは水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を表す。
としての、非置換のアルキル基、非置換の脂環式基、非置換のアリール基、非置換のヘテロアリール基、非置換の非芳香族の複素環式基、および各基の置換基の具体例は、前記式(1)中のRとしてのCOOR35のR35と同じものが挙げられる。
【0052】
としては、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、又は非置換の若しくは置換基を有する脂環式基が好ましく、非置換のアルキル基、又は非置換の若しくは置換基としてアルキル基を有する脂環式基がより好ましい。
上記の中でも、入手のし易さから、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、イソボルニル基及びアダマンチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、イソボルニル基及びアダマンチル基がより好ましい。
【0053】
マクロモノマー(d’)は、ラジカル重合性基を有する単量体に由来する構成単位を2以上有していることが好ましい。
マクロモノマー(d’)は、構成単位(a)を2以上有していることが好ましい。マクロモノマー(d’)は、前記式(3A)で表されるポリマー鎖の1以上を有することが好ましい。マクロモノマー(d’)は、下記式(4)の構造を有するものがより好ましい。
【0054】
【化13】
【0055】
式(4)において、Rはそれぞれ独立に、水素原子、非置換の若しくは置換基を有するアルキル基、非置換の若しくは置換基を有する脂環式基、非置換の若しくは置換基を有するアリール基、非置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基、又は非置換の若しくは置換基を有する非芳香族の複素環式基を表し、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよく、Rは水素原子またはメチル基を表し、複数のRはそれぞれ同じでも異なってもよく、Zは末端基であり、nは2~10,000の自然数である。
Zとしては、例えば、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子、ラジカル重合開始剤に由来する基、ラジカル重合性基等が挙げられる。
は2~10,000であり、成形性の観点からは2~1,000が好ましく、5~1,000がより好ましく、10~500がさらに好ましく、20~500が特に好ましい。
Zは、マクロモノマー(d’)の末端基である。Zとしては、例えば、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子、ラジカル重合開始剤に由来する基、ラジカル重合性基等が挙げられる。
【0056】
式(4)中のRは、前記エチレン性不飽和結合を有する基であるCH=C(COOR)-CH-のRと同じである。
共重合体中のRは、疎水性保持の観点から、アルキル基、脂環式基、アリール基、ヘテロアリール基又は非芳香族の複素環式基であることが好ましく、アルキル基又は脂環式基であることがより好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。
【0057】
マクロモノマー(d’)の数平均分子量(Mn)は、200~100,000であることが好ましく、500~100,000がより好ましく、1000~50,000がより好ましく、2,000~50,000がさらに好ましい。
マクロモノマー(d’)の数平均分子量が前記下限値以上であれば、塗膜性能がより優れ、前記上限値以下であれば、成形性がより優れる。
マクロモノマー(d’)の数平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを基準樹脂として測定される。
【0058】
マクロモノマー(d’)を構成する全構成単位の合計(100質量%)に対する構成単位(a)の割合は、塗膜性能の点から、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
<構成単位(b)>
構成単位(b)は、前記式(2)で表される構造を有する。
構成単位(b)は、下記式(2’)で表される単量体(b’)由来の構成単位である。下記式(2’)におけるR、R、及びRは、前記式(2)におけるR、R、及びRとそれぞれ同じである。
【0059】
【化14】
【0060】
単量体(b’)としては、以下のものが例示できる。
メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシプロピルアクリレート、メトキシブチルアクリレート、エトキシメチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート、エトキシブチルアクリレート、プロポキシメチルアクリレート、プロポキシエチルアクリレート、プロポキシプロピルアクリレート、プロポキシブチルアクリレート、ブトキシメチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシプロピルアクリレート、ブトキシブチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシプロピルメタクリレート、メトキシブチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、エトキシプロピルメタクリレート、エトキシブチルメタクリレート、プロポキシメチルメタクリレート、プロポキシエチルメタクリレート、プロポキシプロピルメタクリレート、プロポキシブチルメタクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシプロピルメタクリレート、ブトキシブチルメタクリレート、「ブレンマーPME-100」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が2であるもの)、商品名)、「ブレンマーPME-200」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が4であるもの)、商品名)などが挙げられる。
【0061】
中でも、タンパク質付着抑制の観点から、メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシプロピルアクリレート、メトキシブチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシプロピルメタクリレート、メトキシブチルメタクリレート等のメトキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、メトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレートが特に好ましい。
【0062】
構成単位(b)がタンパク質付着抑制能を有する理由は次のように考えられる。高分子表面に水和する水として、高分子と弱く相互作用する自由水、高分子と中間的な相互作用する中間水、高分子と強く相互作用する不凍水があることが知られている。高分子表面に中間水が存在すると、タンパク質が高分子表面に付着しにくくなり、その結果、タンパク質付着抑制能が付与されると考えられる。高分子表面に中間水を存在させるには、上記式(2’)で表される単量体(b’)由来の構成単位を含むことが有効であると考えられ、その中で、特にメトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレートに基づく構成単位が有効であると考えられる。
【0063】
<構成単位(c)>
本実施形態の共重合体は、下記式(5)で表される構造を有する構成単位(c)を含むことが好ましい。
【0064】
【化15】
【0065】
式(5)において、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、OH、OR35、CN、NR2021又はR22であり、R20、R21、OR35はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換の脂環式基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基、置換若しくは非置換の非芳香族の複素環式基、置換若しくは非置換のアラルキル基、置換若しくは非置換のアルカリール基、又は置換若しくは非置換のオルガノシリル基を表し、R22は置換若しくは非置換のアリール基、又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基を表す。
【0066】
構成単位(c)としては、下記重合性モノマー(c’)由来の構成単位が挙げられる。
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸3,5,5-トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、テルペンアクリレートやその誘導体、水添ロジンアクリレートやその誘導体、(メタ)アクリル酸ドコシル等の炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノオクチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノオクチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノオクチル、シトラコン酸モノエチル等のカルボキシル基含有ビニル系単量体;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;
ジメチルマレート、ジブチルマレート、ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジブチルイタコネート、ジパーフルオロシクロヘキシルフマレート等の不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体;
(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル等のエポキシ基含有ビニル系単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系のビニル系単量体;
(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するビニル系単量体;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性のビニル系単量体;
(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系単量体;
(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、「プラクセルFM」(ダイセル化学(株)製カプロラクトン付加モノマー、商品名)、
3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤含有単量体、
トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-プロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-アミルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ヘキシルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-オクチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ドデシルシリル(メタ)アクリレート、トリフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリ-p-メチルフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリベンジルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-s-ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-2-メチルイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ-t-ブチルシリル(メタ)アクリレート、エチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、n-ブチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピル-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、n-オクチルジ-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルステアリルシリル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルフェニルシリル(メタ)アクリレート、t-ブチルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、ラウリルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリルメチルマレート、トリイソプロピルシリルアミルマレート、トリ-n-ブチルシリル-n-ブチルマレート、t-ブチルジフェニルシリルメチルマレート、t-ブチルジフェニルシリル-n-ブチルマレート等の、シランカップリング剤含有モノマー以外のオルガノシリル基含有単量体;
(メタ)アクリル酸2-イソシアナトエチル、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロフェニル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)メタクリレート、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1,2,2,2-テトラフルオロー1-(トリフルオロメチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有単量体(ただしハロゲン化オレフィンを除く)、
1-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、1-(2-エチルへキシルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1-(シクロへキシルオキシ)エチルメタクリレート、2-テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート等のアセタール構造を持つ単量体、
4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、(メタ)アクリル酸-2-イソシアナトエチル等が挙げられる。
中でも、取扱いの容易さの観点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、テルペンアクリレートやその誘導体等の炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有ビニル系単量体;
(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有ビニル系単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系のビニル系単量体;
(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド等のアミド基を含有するビニル系単量体、;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性のビニル系単量体;
(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系単量体;
3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤含有単量体、
トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-プロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート等の、シランカップリング剤含有モノマー以外のオルガノシリル基含有単量体;
2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素含有単量体(ただしハロゲン化オレフィンを除く)、
1-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、1-(2-エチルへキシルオキシ)エチル(メタ)アクリレート等のアセタール構造を持つ単量体が好ましい。
【0067】
全構成単位中の、前記構成単位(b)の総質量が、前記構成単位(a)の総質量よりも大きいことが好ましい。
共重合体中に存在する、構成単位(a)と構成単位(b)の合計の質量に対して、構成単位(b)は50質量%超、95質量%以下が好ましく、50質量%超、80質量%以下がより好ましく、50質量%超、75質量%以下がさらに好ましい。構成単位(b)の割合が上記下限値以上であるとタンパク質付着抑制効果に優れ、上限値以下であると成形性に優れる。
【0068】
共重合体が構成単位(c)を含む場合、全構成単位の総質量に対して、構成単位(c)の総質量は0.5~33質量%が好ましく、0.5~25質量%がより好ましく、0.5~20質量%がさらに好ましい。
構成単位(c)の含有量が上記範囲の下限値以上であると塗膜性に優れ、上限値以下であると成形性に優れる。
【0069】
共重合体の重量平均分子量は75,000以上が好ましく、75,000以上1,000,000以下がより好ましく、80,000以上500,000以下がさらに好ましい。重量平均分子量が上記範囲の下限値以上であると塗膜性に優れ、上限値以下であると成形性に優れる。
共重合体の重量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを基準樹脂として測定される。
【0070】
<共重合体の製造方法>
本実施形態の共重合体の製造方法は、マクロモノマー(d’)と単量体(b’)を含む単量体混合物(I-1)を塊状重合、懸濁重合、溶液重合する方法がある。
単量体混合物(I-1)100質量部に対して、0.001~5質量部の非金属連鎖移動剤とを含む原料組成物(I)を懸濁重合する方法が好ましい。
原料組成物(I)は分散剤を含むことが好ましい。
懸濁重合することにより、成形性に優れ、加工しやすい共重合体が得られる。溶液重合することにより、分子量分布の狭い共重合体が得られる。例えば懸濁重合により得られた懸濁液から、ビーズ状の共重合体を回収して成形体の製造に用いてもよく、前記ビーズ状の共重合体をペレット状に成形したものを成形体の製造に用いてもよい。例えば溶液重合により得られたポリマー溶液を貧溶媒に滴下し再沈殿する、あるいは脱気押出等の方法で溶剤等を除去することで粉末状の共重合体を回収して成形体の製造に用いても良く、前記粉末状の共重合体をペレット状に成形したものを成形体の製造に用いてもよい。
【0071】
共重合体の好ましい懸濁重合の製造方法として、例えば、以下の方法(A)、方法(B)および方法(C)が挙げられる。
方法(A)は、マクロモノマー(d’)を単量体(b’)に溶解して単量体混合物(I-1)を調製した後、前記単量体混合物(I-1)にラジカル重合開始剤と、必要に応じて非金属連鎖移動剤を添加して原料組成物(I)を調製する。その後、原料組成物(I)を、必要に応じて分散剤を添加した水溶液中に分散させて原料組成物(I)のシラップ分散液を調製する、得られた原料組成物(I)のシラップ分散液を懸濁重合する方法である。
また方法(B)は、まず水中に、マクロモノマー(d’)と、必要に応じて添加された分散剤が分散した水性懸濁液に、単量体(b’)を添加して、単量体混合物(I-1)のシラップ分散液を調製する。この単量体混合物(I-1)のシラップ分散液に、ラジカル重合開始剤と、必要に応じて非金属連鎖移動剤添加して、原料組成物(I)のシラップ分散液を調製する。その後、原料組成物(I)のシラップ分散液を懸濁重合する方法である。
方法(C)は、マクロモノマー(d’)を単量体(b’)に溶解して単量体混合物(I-1)を調製した後、前記単量体混合物(I-1)にラジカル重合開始剤と、必要に応じて非金属連鎖移動剤を添加して原料組成物(I)を調製する。その後、原料組成物(I)を、水中に分散させて原料組成物(I)のシラップ分散液を調製する。重合する直前に分散剤を添加した後、原料組成物(I)のシラップ分散液を懸濁重合する方法である。
ここで「水性懸濁液」とは、モノマーやシラップが水中に分散した状態のことを意味する。
【0072】
上記の方法(A)では、マクロモノマーの粒子を単量体(b’)に完全に溶解させたシラップを作製することで、均一な組成を有する粒子が得られやすい。このため、方法(A)で得られる共重合体は、成形体の機械強度が優れる。
方法(B)は、マクロモノマー(d’)の回収工程を省くことができるため製造工程を短縮することができる。すなわち、方法(B)において、前記水性懸濁液として、懸濁重合法でマクロモノマー(d’)を合成して得られる懸濁液を用い、この懸濁液に単量体(b’)を追加して共重合することができるため、マクロモノマー(d’)を回収する工程を省略できる。懸濁重合法によりマクロモノマー(d’)を合成する方法は公知の方法を用いることができる。
これに対して、方法(A)では、懸濁重合法により合成したマクロモノマー(d’)を粒子として回収して用いる。
方法(C)は、系内のモノマー分散状態を安定にすることができるため、方法(A)より均一な組成を有する粒子が得られやすい。
【0073】
上記の方法(A)、方法(B)、又は方法(C)のいずれの方法においても、マクロモノマー(d’)を単量体(b’)に溶解させる際には加温することが好ましい。
マクロモノマー(d’)を単量体(b’)に溶解させる際の加熱温度は30~90℃が好ましい。加熱温度が30℃以上で、マクロモノマー(d’)の単量体(b’)への溶解性を良好とすることができる傾向にあり、加熱温度が90℃以下で、単量体混合物(I-1)の揮発を抑制できる傾向にある。加熱温度の下限は、35℃以上がより好ましい。また、加熱温度の上限は、75℃以下がより好ましい。すなわち、マクロモノマー(d’)を単量体(b’)に溶解させる場合は、単量体混合物(I-1)を、30~90℃に加熱することが好ましく、35~75℃に加熱することがより好ましい。
【0074】
マクロモノマー(d’)を含む単量体混合物(I-1)を重合する際にラジカル重合開始剤を使用する場合、ラジカル重合開始剤の添加時期としてはマクロモノマー(d’)を単量体(b’)に溶解した後に添加することが好ましい。すなわち、マクロモノマー(d’)を単量体(b’)に溶解させて、単量体混合物(I-1)を調製した後、前記単量体混合物(I-1)にラジカル重合開始剤を添加することが好ましい。
【0075】
ラジカル重合開始剤を添加する際の単量体混合物(I-1)の温度は0℃以上、使用するラジカル重合開始剤の10時間半減期温度から15℃を減じた温度以下であることが好ましい。ラジカル重合開始剤を添加する際の温度が0℃以上でラジカル重合開始剤の単量体(b’)への溶解性が良好となる傾向にある。また、ラジカル重合開始剤を添加する際の温度が、ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度から15℃を減じた温度以下であれば安定に重合を行うことができる傾向にある。
【0076】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド及びジ-t-ブチルパーオキサイドが挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)が挙げられる。
【0077】
上記のラジカル重合開始剤の中で、入手しやすさの点で、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)が好ましい。
ラジカル重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ラジカル重合開始剤の添加量は、重合発熱制御の点で、マクロモノマー(d’)及び単量体(b’)の合計量100質量部に対して0.0001質量部以上10質量部以下が好ましく、0.0005質量部以上5質量部以下がより好ましい。
【0078】
前述の方法(A)、または方法(B)において、原料組成物(I)を懸濁重合する際の重合温度としては、特に制限はなく、一般的には50~120℃であることが好ましく、70~100℃がより好ましい。
また、重合時間は、1~6時間が好ましく、1.5~4時間がより好ましい。
また、撹拌条件としては、100~800rpmが好ましく、150~600rpmがより好ましい。
【0079】
懸濁重合に用いる分散剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、(メタ)アクリル酸スルホアルキルのアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、ポリスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩、スチレンスルホン酸のアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸スルホアルキルのアルカリ金属塩とスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸スルホアルキルのアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩とスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体及び(メタ)アクリル酸スルホアルキルのアルカリ金属塩とスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体;ケン化度70~100%のポリビニルアルコ-ル;メチルセルロ-ス;澱粉;並びにヒドロキシアパタイトが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中で、懸濁重合時の分散安定性が良好な(メタ)アクリル酸スルホアルキルのアルカリ金属塩と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体が好ましい。
【0080】
水性懸濁液の総質量に対して、0.005~5質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。水性懸濁液中の分散剤の含有量が0.005質量%以上であれば、懸濁重合液の分散安定性が良好であり、得られる重合体の洗浄性、脱水性、乾燥性及び流動性が良好となる傾向にある。また、分散剤の含有量が5質量%以下の場合に、重合時の泡立ちが少なく、重合安定性が良好となる傾向にある。
【0081】
水性懸濁液の分散安定性向上を目的として、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マンガン等の電解質を水性懸濁液中に添加してもよい。この場合、これら添加剤の割合としては、前記方法(A)の場合、水性懸濁液の総質量に対して、0.01~0.5質量%であることが好ましい。また、前記方法(B)の場合、水性懸濁液中の電解質の好ましい割合は、0.01~10質量%が好ましい。
【0082】
単量体混合物(I-1)と後述する非金属連鎖移動剤を含有する原料組成物(I)を重合して共重合体を得ることが好ましい。
【0083】
<非金属連鎖移動剤>
非金属連鎖移動剤は、重合体を得る際に単量体混合物(I-1)に添加されるものであり、特に懸濁重合法で重合体を得る際に添加することが好ましい。
重合体の製造時に、連鎖移動剤として、非金属連鎖移動剤を用いることにより、重合体中に含まれる未反応のマクロモノマーを低減できる。
【0084】
非金属連鎖移動剤としては、例えば、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン等の含硫黄連鎖移動剤、α-メチルスチレンダイマー、四塩化炭素及びテルペノイドが挙げられるが、手に入れやすさや高い連鎖移動能を有する観点から含硫黄連鎖移動剤が好ましい。
非金属連鎖移動剤の含有量は単量体混合物(I-1)100質量部に対して0.01~0.5質量部が好ましい。
非金属連鎖移動剤の含有量が上記範囲の下限値以上であると、添加効果が充分に得られ、上限値以下であると硬化後の機械的強度に優れる。
前記非金属連鎖移動剤の含有量は0.03~0.3質量部がより好ましく、0.05~0.2質量部が特に好ましい。
【0085】
本実施形態の共重合体はタンパク質付着抑制機能を有し、下記のタンパク質付着試験(1)において、フィブリノーゲン34ppm濃度(質量基準)における、1cm当たりのフィブリノーゲン吸着量が45ng(ナノグラム)以下を達成できる。該フィブリノーゲン吸着量は30ng以下が好ましく、20ng以下がより好ましい。
また本発明の共重合体は、アルブミン2000ppm濃度(質量基準)における、1cm当たりのアルブミン吸着量が320ng(ナノグラム)以下を達成できる。該アルブミン吸着量は300ng以下が好ましい。
[タンパク質付着試験(1)]
試験対象の共重合体を、溶剤であるメチルセロソルブに溶解して、共重合体の濃度が0.1~0.5質量%である共重合体溶液を調製する。共重合体溶液を水晶発振子マイクロバランス法装置のセンサーチップ上に、単位面積当たりの共重合体の塗布量が20.7ng/mm~62ng/mmとなるようにスピンコートし、80℃15分間乾燥して、共重合体をセンサーチップ上に固定化する。
なお、再現性が得られるように、センサーチップ表面を予め洗浄処理しておく。例えば、波長172nmのエキシマ光を照射して洗浄する方法、または、ピランハ溶液をセンサーチップ表面上に滴下し、5~10分静置した後、純水で洗浄する方法を用いることができる。
フィブリノーゲン(ヒト血しょう由来)をリン酸緩衝液(水99.0435重量%、塩化ナトリウム0.9重量%、リン酸水素二ナトリウム0.0421重量%、リン酸二水素カリウム0.0144重量%、pHは7.1~7.3)に、所定濃度となるように溶解して試験液とする。試験液のフィブリノーゲン濃度は1000(単位は質量ppm)とする。
センサーチップの表面を前記リン酸緩衝液中に12時間以上浸漬することで安定化させた後、再度、規定量の前記リン酸緩衝液中でセンサーを水晶発振子マイクロバランス法装置にセッティングし、発信周波数計測を開始する。30分~1時間程度、発信周波数を安定化させた後、15分毎に前記試験液を滴下する。1回の滴下量は0.5~1.0μLとする。発信周波数の測定データから、センサーへのフィブリノーゲンの吸着量を算出する。測定データの解析は解析ソフトを用いて行うことができる。試験液を滴下した系内のフィブリノーゲン濃度と、センサーへの吸着量との相関を表すグラフから、フィブリノーゲン34ppm濃度(質量基準)における、センサー面積(4.8mm)当たりのフィブリノーゲン吸着量を求める。
同様にアルブミン(ウシ由来,BSA)についても同様に実施することができる。その際の試験液のアルブミン濃度は10,000、30,000(単位は質量ppm)の2種類とする。アルブミン濃度と、センサーへの吸着量との相関を表すグラフから、アルブミン2000ppm濃度(質量基準)における、センサー面積(4.8mm)当たりのアルブミン吸着量を求める。
【0086】
<用途>
後述の実施例に示されるように、本実施形態の共重合体は成形性に優れ、成形体はタンパク質付着抑制効果を有するため、タンパク質と接触する物品の製造に好適である。特に血しょうタンパク質と接触する物品の製造に好適である。
本実施形態の共重合体は樹脂改質剤として好適である。前記共重合体からなる樹脂改質剤を樹脂組成物に添加することにより、樹脂組成物のタンパク質付着抑制効果を向上できる。
本実施形態の共重合体は成形材料として好適である。前記共重合体を含む成形材料を成形すると、タンパク質付着抑制効果を有す物品(成形体)が得られる。
【0087】
<成形材料>
成形材料は、前記共重合体の他に必要に応じてその他のポリマーを含有してもよい。さらに必要に応じてその他の成分を含有してもよい。
その他のポリマーとしては、PMMA等の(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルエーテルケトン及びポリフッ化ビニリデンが例示できる。その他のポリマーとしては熱可塑性樹脂が好ましく、中でも(メタ)アクリル樹脂、オレフィン樹脂が好ましい。
その他の成分としては、例えば、離型剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐衝撃性改良剤、柔軟性付与剤、耐候性改良剤、着色剤、無機顔料、有機顔料、カーボンブラック、フェライト、導電性付与剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収材、滑剤、無機充填剤、強化剤、可塑剤、逆可塑剤、中和剤、架橋剤、難燃剤、防腐剤、防虫剤、芳香剤、ラジカル補足剤、吸音材、コアシェルゴム、等が挙げられる。
前記共重合体と、その他のポリマーと、必要に応じて配合されるその他の成分とを混合する方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、ブレンダ―等の物理的混合方法及びブラベンダー、ニーダー、押出機などの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
成形材料の形状には特に制限はないが、成形材料を用いて成形体を溶融成形することを想定した場合、予め前記共重合体、その他のポリマー、必要に応じて配合されるその他の成分を溶融混練し、ペレット状やビーズ状に加工しておくことが好ましい。
成形材料の総質量に対する前記共重合体の含有量は、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。100質量%でもよい。前記下限値以上だとタンパク質付着抑制能に優れる。
成形材料の総質量に対して、その他のポリマーは0~95質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましい。
【0088】
本実施形態の共重合体を含む成形材料はタンパク質付着抑制機能を有し、下記のタンパク質付着試験(2)において、1cm当たりのアルブミン吸着量が1.5μg(マイクログラム)以下を達成できる。該アルブミン吸着量は1.25μg以下が好ましく、1.10μg以下がより好ましい。
[タンパク質付着試験(2):μBCA法]
試験対象の成形材料を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解させたアルブミン溶液1mg/mLに37℃2時間浸漬させる。2時間浸漬後、PBSで成形材料を洗浄した後、ドデシル硫酸ナトリウム水溶液6mLに浸し、5分間超音波洗浄を行う。96ウェルプレートに超音波洗浄後の溶液を150μL入れ、市販のBCAキットのタンパク質定量試薬150μLを超音波洗浄後の溶液を入れた部分に入れ、37℃2時間保持する。2時間保持後、プレートリーダーにて562nmの吸光度を測定し、濃度既知のアルブミン溶液から得られる検量線に当てはめることでアルブミンの吸着量を算出する。
【0089】
<成形した物品>
物品(成形体)の形状としては、例えば、シート状及び3次元形状が挙げられる。
前記成形材料を成形して物品(成形体)を製造する方法は、溶融成形法が好ましく、例えば、射出成形法、圧縮成形法、中空成形法、押出成形法、回転成形法、流延法及び溶媒キャスト法が挙げられる。このうち、射出成形、押出成形が好ましい。
【0090】
前記物品(成形体)は、タンパク質と接触する物品が好ましく、多層フィルムにおいて、血しょうタンパク質、抗体医薬、バイオ医薬と接触する内層に用いるのが好ましい。
血しょうタンパク質と接触する物品としては、コンタクトレンズ、カニューレ、カテーテル、注射筒、点滴ルート、点滴バック、輸液バッグ、血液バッグ、ステント、内視鏡等の医療用器具;ピペットチップ、シャーレ、セル、マイクロプレート、保存バッグ、プレート、試薬保管容器、チューブ、フラスコ等の生化学用器具、ミキサー、バイオリアクター、ジャーファーメンター等の細胞治療用機器等が挙げられる。
また、血しょうタンパク質以外のタンパク質と接触する物品として、例えば、細胞培養用シャーレ、細胞培養用セル、細胞培養用マイクロプレート、細胞培養用バッグ、細胞培養用プレート、細胞培養用チューブ、細胞培養用フラスコ、バイオ医薬品用シャーレ、バイオ医薬品用セル、バイオ医薬品用マイクロプレート、バイオ医薬品用プレート、バイオ医薬品用チューブ、バイオ医薬品用バッグ、バイオ医薬品用容器、バイオ医薬品用シリンジ、バイオ医薬品用フラスコ、抗体医薬品用シャーレ、抗体医薬品用セル、抗体医薬品用マイクロプレート、抗体医薬品用プレート、抗体医薬品用チューブ、抗体医薬品用バッグ、抗体医薬品用容器、抗体医薬品用シリンジ、抗体医薬品用フラスコ、血液バッグ(全血、血漿、血小板、赤血球)、血液製剤用バイアル、血液製剤用バック等が挙げられる。
【0091】
<塗膜>
本実施形態の共重合体は溶剤に溶解して使用できる。後述の実施例に示されるように、前記共重合体と溶剤とを含む共重合体含有組成物を用いて形成した塗膜は、前記共重合体を含み、タンパク質付着抑制効果を有する。共重合体含有組成物に含まれる、前記共重合体は1種でもよく2種以上でもよい。
タンパク質と接触する物品の、少なくともタンパク質と接触する面に、共重合体含有組成物を用いて塗膜を形成することが好ましい。特に、血しょうタンパク質と接触する物品の、少なくとも血しょうタンパク質と接触する面に、共重合体含有組成物を用いて塗膜を形成することが好ましい。
【0092】
共重合体含有組成物中の溶剤としては、本実施形態の共重合体を溶解できるものであれば特に限定されない。例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール類;エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、酢酸ブチル等のケトン類;メチルエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールアセテート類;n-ペンタン、n-ヘキサン等の脂肪族系炭化水素類;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族系炭化水素類;等が挙げられる。
これらはいずれか1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0093】
共重合体含有組成物に対する、溶剤の含有量は15~99質量%が好ましく、20~95質量%がより好ましく、25~90質量%が特に好ましい。溶剤の含有量が前記下限値以上であると、塗布性に優れる。
共重合体含有組成物は、共重合体以外の他の成分をさらに含んでもよい。
共重合体含有組成物に対する前記共重合体の含有量は、1~85質量%が好ましく、5~80質量%がより好ましく、10~75質量%がさらに好ましく、15~70質量%が特に好ましい。前記共重合体の含有量が前記下限値以上であると、塗膜のタンパク質付着抑制効果に優れる。
共重合体含有組成物の全固形分に対する前記共重合体の含有量は、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。100質量%でもよい。
【0094】
共重合体含有組成物を用いて塗膜を形成する方法は特に限定されないが、例えば、ディップ、スプレー法、スピンコート等の塗装方法で基材上に塗膜を形成できる。
基材の材質は特に限定しないが、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、塩ビ、ナイロン、シリコーン樹脂、ガラス、ステンレス等の金属などの表面に塗装できるものが用いられる。
【0095】
血しょうタンパク質と接触する面に前記塗膜を有する物品としては、例えば、メス、ピンセット、コンタクトレンズ、カニューレ、カテーテル、注射筒、注射針、点滴ルート、点滴針、点滴バック、血液バッグ、ガーゼ、ステント、内視鏡等の医療用器具;ピペットチップ、シャーレ、セル、マイクロプレート、保存バッグ、プレート、試薬保管容器、チューブ等の生化学用器具、ミキサー、バイオリアクター、ジャーファーメンター等の細胞治療用機器等が挙げられる。
また、血しょうタンパク質以外のタンパク質と接触する面に前記塗膜を有する物品として、例えば、細胞培養用シャーレ、細胞培養用セル、細胞培養用マイクロプレート、細胞培養用バッグ、細胞培養用プレート、細胞培養用チューブ、細胞培養用フラスコ、バイオ医薬品用シャーレ、バイオ医薬品用セル、バイオ医薬品用マイクロプレート、バイオ医薬品用プレート、バイオ医薬品用チューブ、バイオ医薬品用バッグ、バイオ医薬品用容器、バイオ医薬品用シリンジ、バイオ医薬品用フラスコ、抗体医薬品用シャーレ、抗体医薬品用セル、抗体医薬品用マイクロプレート、抗体医薬品用プレート、抗体医薬品用チューブ、抗体医薬品用バッグ、抗体医薬品用容器、抗体医薬品用シリンジ、抗体医薬品用フラスコ、血液バッグ(全血、血漿、血小板、赤血球)、血液製剤用バイアル、血液製剤用バック等が挙げられる。
【実施例0096】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の部は質量部を表す。
【0097】
<測定方法・評価方法>
(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn))
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製、HLC-8220)を用いて測定した。カラムはTSKgelα-M(東ソー(株)製、7.8mm×30cm)、TSKguardcolumnα(東ソー(株)製、6.0mm×4cm)を使用した。検量線は、F288/F1/28/F80/F40/F20/F2/A1000(東ソー(株)製、標準ポリスチレン)、及びスチレン単量体を使用して作成した。
【0098】
(成形性評価)
庄司鉄工(株)製プレス成形機にて、各例の共重合体又は重合体を成形した。成形条件は、200℃、18MPaで5分間保持とし、厚さ2mmの試験板を作製した。
プレス成形にて得られた試験片の外観と離型性を観察し、成形性を下記の基準で評価した。
◎:成形不良なし、離型性も良好。
○:成形不良なし、離型性が劣る。
△:成形できるが、成形不良が発生する。
×:成形が困難。
【0099】
(押し込み弾性率)
前記成形性評価において作製した試験板について、微小硬度計(HM-2000、フィッシャーインストルメンツ社製)にて、ビッカース圧子、荷重7mN/100s、クリープ60s、R=0.4mN/100sの測定条件で、押し込み弾性率を測定した。
【0100】
(タンパク質付着試験1)
吸着量を解析するタンパク質として牛血清アルブミン(略称:BSA、和光純薬(株))を用い、前記タンパク質付着試験(1)により、BSA濃度と、センサー面積(4.8mm)当たりの吸着量との相関を求めた。
測定装置は、水晶発振子マイクロバランス法(QCM=Quartz Crystal Microbalance)装置(AFFNIX Q8、(株)アルバック製)を用いた。
センサーチップの洗浄処理は、無電極エキシマー172nm照射装置(型番:MDIRH-M-1-330、(株)M.D.COM製)を用いた。センサーチップ表面を処理範囲に入るように設定し、自動搬送モードにて5mm/sec、20回処理を行い、センサーチップ表面を洗浄と親水化処理を行った。
測定データの解析は、解析ソフト(AQUA、(株)アルバック製)を用いた。
【0101】
(タンパク質付着試験2)
吸着量を解析するタンパク質をフィブリノーゲン(ヒト血しょう由来、和光純薬(株))とした以外は、タンパク質付着試験1と同様に測定及び解析を行った。
(タンパク質付着試験3)
成形材料について、前記タンパク質付着試験(2)(μBCA法)により、BSAの吸着量を評価した。
(タンパク質付着試験4)
吸着タンパク質をフィブリノーゲン(ヒト血しょう由来、和光純薬(株))とした以外は、タンパク質付着試験3と同様に測定及び評価した。
(タンパク質付着試験5)
吸着タンパク質をγグロブリン(ヒト血しょう由来、和光純薬(株))とした以外は、タンパク質付着試験3と同様に測定及び評価した。
【0102】
(製造例1)
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水900部、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウム60部、メタクリル酸カリウム10部及びメチルメタクリレート(MMA)12部を入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、50℃に昇温した。その中に、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.08部を添加し、更に60℃に昇温した。昇温後、滴下ポンプを使用して、MMAを0.24部/分の速度で75分間連続的に滴下した。反応溶液を60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な水溶液である固形分10質量%の分散剤1を得た。
【0103】
次に、撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部及び分散剤1(固形分10質量%)0.25部を入れて撹拌し、均一な水溶液とした。次に、MMAを100部、連鎖移動剤としてビス[(ジフルオロボリル)ジフェニルグリオキシメイト]コバルト(II)を0.0010部及び重合開始剤として「パーオクタO」(登録商標)(1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、日油株式会社製)0.1部を加え、水性懸濁液とした。
【0104】
次に、重合装置内を窒素置換し、80℃に昇温して4時間反応し、さらに重合率を上げるため、90℃に昇温して2時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、マクロモノマーを含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、40℃で16時間乾燥して、マクロモノマー(MM1)を得た。このマクロモノマー(MM1)の数平均分子量は15000、分子量分布(Mw/Mn)は2.4であった。
【0105】
(製造例2)
MMAを100部、連鎖移動剤としてビス[(ジフルオロボリル)ジフェニルグリオキシメイト]コバルト(II)を0.0009部及び重合開始剤として「パーオクタO」(登録商標)(1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、日油株式会社製)0.12部を加えた以外は製造例1と同様に実施した。得られたマクロモノマー(MM2)の数平均分子量は21000、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であった。
【0106】
(製造例3)
MMAを95部、MAを5部、連鎖移動剤としてビス[(ジフルオロボリル)ジフェニルグリオキシメイト]コバルト(II)を0.0016部及び重合開始剤として「パーオクタO」(登録商標)(1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、日油株式会社製)0.12部を加えた以外は製造例1と同様に実施した。得られたマクロモノマー(MM3)の数平均分子量は15000、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。
【0107】
以下の例1は実施例、例2~4は比較例である。
表1において、Stはスチレン、MMAはメチルメタクリレート、MEAはメトキシエチルアクリレート、n-OMはn-オクチルメルカプタンをそれぞれ示す。
【0108】
[例1]
脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.3部及び製造例1で製造した分散剤1を0.26部混合して懸濁用水分散媒を調製した。
冷却管付フラスコに、製造例1で製造したマクロモノマー(MM1)を40部、メトキシエチルアクリレート(大阪有機(株)社製)60部並びに非金属連鎖移動剤としてn-オクチルメルカプタン(関東化学(株)製、商品名)0.2部を仕込み、撹拌しながら55℃に加温し、シラップの状態の組成物を得た。組成物を40℃以下に冷却した後、組成物にAMBN(富士フィルム和光純薬(株)製、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、商品名)0.325部を溶解させ、原料組成物を得た。
【0109】
次いで、原料組成物に前記の懸濁用水分散媒を加えた後、窒素バブリングによりセパラブルフラスコ内の雰囲気を窒素置換しながら、攪拌回転数を上げてシラップ分散液を得た。
【0110】
シラップ分散液を75℃に昇温し、セパラブルフラスコの外温を保持した。重合発熱ピークが出た後、シラップ分散液が75℃になった時点で、シラップ分散液を85℃に昇温し、30分保持して重合を完結させ、懸濁液を得た。
【0111】
懸濁液を40℃以下に冷却した後に、懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、70℃で12時間乾燥して、共重合体を得た。得られた共重合体の分子量(Mn、Mw)、および物性(成形性、押し込み弾性率)を表1に示す(以下、同様)。
表1には構成単位(a)と構成単位(b)の質量比、構成単位(a)と構成単位(b)の合計100質量部に対する非金属連鎖移動剤の添加量も示す(以下、同様)。
【0112】
得られた共重合体をメチルセロルブに溶解し、タンパク質付着試験を行った。結果を表1に示す(以下、同様)。
【0113】
[例2]
冷却管付フラスコにメトキシエチルアクリレート(大阪有機(株)社製)100部、及び溶剤としてメチルセロソルブ(関東化学(株)製、試薬特級)250部を投入し、窒素バブリングにより内部を窒素置換した。次いで、フラスコ内の単量体組成物を加温して内温を70℃に保った状態で、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、0.8部(和光純薬(株)、和光特級)を単量体組成物に加えた後、4時間保持し、次いで80℃に昇温して1時間保持し、重合を完結させた。この後、重合反応物を室温まで冷却し、大量のジイソプロピルエーテル(純正化学(株))で再沈殿させた。再沈殿によって析出したポリマーを回収し、50℃及び50mmHg(6.67kPa)以下の条件で一晩真空乾燥して共重合体を得た。
得られた共重合体は粘調のポリマーであり、流動性が高く、成形できなかった。
得られた共重合体をメチルセロルブに溶解し、タンパク質付着試験を行った。
【0114】
[例3]
数平均分子量50,000、重量平均分子量50,500のポリスチレン紛体(標準ポリスチレン、F-4東ソー(株)社製)をキシレン(和光純薬(株)社製)に溶解したものを、基材上にスピンコート塗布を行ったのち乾燥させて塗膜を形成した。得られた塗膜についてタンパク付着試験を行った。また上記の方法で成形性を評価した。
【0115】
[例4]
数平均分子量54,900、重量平均分子量108,000のポリメチルメタクリレート(三菱ケミカル(株)社製 VHK000)をキシレン(和光純薬(株)社製)に溶解したものを、基材上にスピンコート塗布を行ったのち乾燥させて塗膜を形成した。得られた塗膜についてタンパク付着試験を行った。また上記の方法で成形性を評価した。
【0116】
【表1】
【0117】
図1は表1のタンパク質付着試験の結果を示したグラフである。図1において、横軸はBSA濃度を表し、縦軸は共重合体のBSA吸着量を表す。
表1および図1の結果に示されるように、例1の共重合体は、例2~4の重合体より優れたタンパク質付着抑制効果を有する。
また、例1の共重合体の成形体は、例3~4の重合体の成形体より押し込み弾性率が低く、成形加工性に優れる。
【0118】
以下の例5,例6,例9~例23、24、26~30は実施例、例7、例8、例25、例32は比較例である。
[例5]
ポリメチルメタクリレート(前記VHK000)を70部と、例1で得られた共重合体30部を、ラボプラストミルにて250℃、30rpmで5分間混練して成形材料を調製した。得られた成形材料を庄司鉄工(株)製プレス成形機にて成形した。成形条件は、200℃、18MPaで5分間保持とし、厚さ2mmの成形体を作製した。得られた成形体について前記タンパク質付着試験(2)(μBCA法)にてタンパク質付着試験を行った。試験結果を、表3に示す(以下、同様)。
[例6]
例1で得られた共重合体の使用量を100部に変更した以外は、例5と同様に実施した。
[例7]
VHK000の使用量を100部に変更した以外は、例5と同様に実施した。
[例8]
オレフィン樹脂MC638(三菱ケミカル(株)製、商品名)の使用量を100部に変更した以外は、例5と同様に実施した。
[例9]
冷却管付フラスコにメトキシエチルアクリレート(大阪有機(株)社製)51部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル9部(三菱ケミカル(株)製、アクリエステル(登録商標)HO)、製造例2で製造したマクロモノマー(MM2)マクロモノマー40部、及び溶剤としてN,N-ジメチルアセトアミド(和光純薬工業(株)製、試薬特級)150部を投入し、窒素バブリングにより内部を窒素置換した。次いで、フラスコ内の単量体組成物を加温して内温を55℃に保った状態で、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4´―ジメチルバレロニトリル)0.1部(和光純薬工業(株)製、商品名:V-65)を単量体組成物に加えた後、4時間保持した。次いで80℃に昇温し、V-65の0.15部を追添加した後、60分間保持し、重合を完結させた。その後、重合反応物を室温まで冷却し、大量の純水で再沈殿させた。再沈殿によって析出したポリマーを回収し、50℃及び50mmHg(6.67kPa)以下の条件で一晩真空乾燥して共重合体を得た。数平均分子量は66000、重量平均分子量は217000であった。得られた共重合体の使用量を100重量部に変更した以外は、例5と同様に実施した。
[例10]
脱イオン水144部及び硫酸ナトリウム0.3部混合して懸濁用水分散媒を調製した。
冷却管付フラスコに、製造例3で製造したマクロモノマー(MM3)を40部、メトキシエチルアクリレート(大阪有機(株)社製)58部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2部(三菱ケミカル(株)製、アクリエステル(登録商標)HO)並びに非金属連鎖移動剤としてn-オクチルメルカプタン(関東化学(株)製、商品名)0.2部を仕込み、撹拌しながら55℃に加温し、シラップの状態の組成物を得た。組成物を40℃以下に冷却した後、組成物にAMBN(富士フィルム和光純薬(株)製、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、商品名)0.325部を溶解させ、原料組成物を得た。
【0119】
次いで、原料組成物に前記の懸濁用水分散媒を加えた後、窒素バブリングによりセパラブルフラスコ内の雰囲気を窒素置換しながら、攪拌回転数を上げてシラップ分散液を得た。
【0120】
製造例1で製造した分散剤1を0.26部と脱イオン水1部を混合した水分散媒をフラスコ内に投入後、75℃に昇温し、セパラブルフラスコの外温を保持した。重合発熱ピークが出た後、シラップ分散液が75℃になった時点で、シラップ分散液を85℃に昇温し、30分保持して重合を完結させ、懸濁液を得た。
【0121】
懸濁液を40℃以下に冷却した後に、懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、70℃で12時間乾燥して、共重合体を得た。数平均分子量は37500、重量平均分子量は224000であった。得られた共重合体の使用量を100重量部に変更した以外は、例5と同様に実施した。
[例11]
製造例3で製造したマクロモノマー(MM3)を使用した以外は例1と同様に実施した。数平均分子量は42700、重量平均分子量は295000であった。得られた共重合体の使用量を100重量部に変更した以外は、例5と同様に実施した。
例1、及び例9~例11の共重合体について、表2にまとめた。
[例12~例18]
共重合体及び熱可塑性樹脂を表4に記載の比率に変更した以外は、例5と同様に実施した。
[例19~例25]
タンパク質をフィブリノーゲン(FB)に変え、共重合体及び熱可塑性樹脂を表5に記載の比率に変更した以外は、例5と同様に実施した。
[例26~例32]
タンパク質をγグロブリン(IgG)に変え、共重合体及び熱可塑性樹脂を表6に記載の比率に変更した以外は、例5と同様に実施した。
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
【0125】
【表5】
【0126】
【表6】
【0127】
表3~表6の結果に示されるように、本発明の共重合体を含む例5,例6,例9~例24、例26~例31の成形材料は、本発明の共重合体を含まない例7,例8,例25,例32の成形材料より優れたタンパク質付着抑制効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の共重合体は、成形体にタンパク付着抑制機を付与することができる。
本発明の共重合体は、塗膜にタンパク付着抑制機を付与することができる。
本発明の共重合体は、タンパク質と接触する物品の製造に好適である。
例えば、メス、ピンセット、コンタクトレンズ、カニューレ、カテーテル、注射筒、注射針、点滴ルート、点滴針、点滴バック、血液バッグ、ガーゼ、ステント、内視鏡等の医療用器具;ピペットチップ、シャーレ、セル、マイクロプレート、保存バッグ、プレート、試薬保管容器、チューブ等、血しょうタンパク質と接触する物品の製造に好適である。
図1