(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153860
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、硬化膜、積層体、硬化膜の製造方法、半導体デバイス、及び、樹脂
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20231011BHJP
G03F 7/037 20060101ALI20231011BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
C08G73/10
G03F7/037
G03F7/027 514
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118381
(22)【出願日】2023-07-20
(62)【分割の表示】P 2021561499の分割
【原出願日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】P 2019214433
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】野崎 敦靖
(57)【要約】 (修正有)
【課題】得られる硬化膜が耐薬品性に優れるポリイミド樹脂を提供する。
【解決手段】下記式(1-1)で表される繰返し単位、及び、下記式(1-2)で表される繰返し単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を有する樹脂、並びに、重合開始剤を含む、硬化性樹脂組成物、上記硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜、上記硬化膜を含む積層体、上記硬化膜の製造方法、及び、上記硬化膜又は上記積層体を含む半導体デバイスの提供、並びに、特定の構造を有する新規な樹脂。
(式中、R
11とR
21はアミド結合を複数有する4価の基を表し、L
11とL
21は重合性基を含む2価の連結基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1-1)で表される繰返し単位、及び、下記式(1-2)で表される繰返し単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を有し、
前記式(1-1)で表される繰返し単位として下記式(2-1)で表される繰返し単位を有するか、又は、前記式(1-2)で表される繰返し単位として下記式(2-2)で表される繰返し単位を有する、
樹脂。
【化1】
式(1-1)中、R
11はアミド結合を複数有する4価の基を表し、L
11は重合性基を含む2価の連結基を表す;
式(1-2)中、R
21はアミド結合を複数有する4価の基であり、L
21は重合性基を含む2価の基を表し、R
22及びR
23はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。
【化2】
式(2-1)中、X
1及びX
2はそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基、炭素数2~30の環状、直鎖状、又は、分岐鎖状の脂肪族基を表し、Y
1は炭素数1~30の有機基を表し、Q
1は炭素数1~30の有機基を表し、A
1は重合性基、脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を含む基を表し、A
2は重合性基を含む基を表し、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又は芳香族炭化水素基を表し、n1及びn2はそれぞれ独立に、1以上の整数を表す;
式(2-2)中、X
3及びX
4はそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基、炭素数2~30の環状、直鎖状、または分岐鎖状の脂肪族基を表し、Y
2は炭素数1~30の有機基を表し、Q
2は炭素数1~30の有機基を表し、A
3は重合性基、脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を含む基を表し、A
4は重合性基を含む基を表し、R
3及びR
4はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、G
1及びG
2はそれぞれ独立に、炭素数1~30の有機基を表し、n3及びn4はそれぞれ独立に、1以上の整数を表す。
【請求項2】
下記式(1-1)で表される繰返し単位、及び、下記式(1-2)で表される繰返し単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を有し、
前記式(1-1)で表される繰返し単位として下記式(2-1)で表される繰返し単位を有するか、又は、前記式(1-2)で表される繰返し単位として下記式(2-2)で表される繰返し単位を有する、
樹脂。
【化3】
式(1-1)中、R
11はアミド結合を複数有する4価の基を表し、L
11は重合性基を含む2価の連結基を表す;
式(1-2)中、R
21はアミド結合を複数有する4価の基であり、L
21は重合性基を含む2価の基を表し、R
22及びR
23はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。
【化4】
式(2-1)中、X
1及びX
2はそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基、炭素数2~30の環状、直鎖状、又は、分岐鎖状の脂肪族基を表し、Y
1は炭素数1~30の有機基を表し、Q
1は炭素数1~30の有機基を表し、A
1は(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、エポキシ基、メチロール基、又はアルコキシメチル基、ポリアルキレンオキシ基を含む基、または、式(P-4)で表される基を表し、A
2は重合性基を含む基を表し、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、n1及びn2はそれぞれ独立に、1以上の整数を表す;
式(2-2)中、X
3及びX
4はそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基、炭素数2~30の環状、直鎖状、または分岐鎖状の脂肪族基を表し、Y
2は炭素数1~30の有機基を表し、Q
2は炭素数1~30の有機基を表し、A
3は重合性基、脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を含む基を表し、A
4は重合性基を含む基を表し、R
3及びR
4はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、G
1及びG
2はそれぞれ独立に、炭素数1~30の有機基を表し、n3及びn4はそれぞれ独立に、1以上の整数を表す。
【化5】
式(P-4)中、L
4は単結合又はm+1価の連結基を表し、A
4はアルキル基、ポリアルキレンオキシ基又はこれらの結合により表される基を表し、mは1以上の整数を表し、*はY
1との結合部位を表す。
【請求項3】
下記式(1-1)で表される繰返し単位、及び、下記式(1-2)で表される繰返し単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を有し、
前記式(1-1)で表される繰返し単位として下記式(2-1)で表される繰返し単位を有するか、又は、前記式(1-2)で表される繰返し単位として下記式(2-2)で表される繰返し単位を有する、
樹脂。
【化6】
式(1-1)中、R
11はアミド結合を複数有する4価の基を表し、L
11は重合性基を含む2価の連結基を表す;
式(1-2)中、R
21はアミド結合を複数有する4価の基であり、L
21は重合性基を含む2価の基を表し、R
22及びR
23はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。
【化7】
式(2-1)中、X
1及びX
2はそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基、炭素数2~30の環状、直鎖状、又は、分岐鎖状の脂肪族基を表し、Y
1は式(Y-1)で表される基を表し、Q
1は炭素数1~30の有機基を表し、A
1は重合性基、脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を含む基を表し、A
2は重合性基を含む基を表し、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、n1及びn2はそれぞれ独立に、1以上の整数を表す;
式(2-2)中、X
3及びX
4はそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基、炭素数2~30の環状、直鎖状、または分岐鎖状の脂肪族基を表し、Y
2は炭素数1~30の有機基を表し、Q
2は炭素数1~30の有機基を表し、A
3は重合性基、脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を含む基を表し、A
4は重合性基を含む基を表し、R
3及びR
4はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、G
1及びG
2はそれぞれ独立に、炭素数1~30の有機基を表し、n3及びn4はそれぞれ独立に、1以上の整数を表す。
【化8】
式(Y-1)中、R
Y1、R
Y2及びR
Y3はそれぞれ独立に、下記式(Y1-1)~式(Y1-4)のいずれかで表される構造を表し、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立に、アミド結合を表し、a及びbはそれぞれ独立に、0以上の整数を表し、式(Y-1)に存在するR
Y1、R
Y2及びR
Y3のうち、少なくとも1つは式(2-1)中のA
1との結合部位を表す。
【化9】
式(Y1-1)~(Y1-4)中、*はそれぞれ、他の構造との結合部位を、#はそれぞれ、式(2-1)におけるA
1との結合部位又は水素原子との結合部位を表す。
式(Y1-1)又は式(Y1-2)中、L
Y1及びL
Y2はそれぞれ独立に、アルキレン基を表す。
式(Y1-3)又は式(Y1-4)中、L
Y4はそれぞれ独立に、単結合又は2価の炭化水素基を表す。
式(Y1-4)中、L
Y3は単結合、又は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)
2-、-NHC(=O)-、若しくは、これらを2以上組み合わせた基である。
式(Y1-3)又は式(Y1-4)中、nはそれぞれ独立に、1~4の整数を表し、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【請求項4】
前記式(2-1)中、R1及びR2がそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又は芳香族炭化水素基を表す、請求項2又は3に記載の樹脂。
【請求項5】
前記式(2-1)中、A
1は(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、エポキシ基、メチロール基、又はアルコキシメチル基、ポリアルキレンオキシ基を含む基、または、式(P-4)で表される基を表す、請求項1又は3に記載の樹脂。
【化10】
式(P-4)中、L
4は単結合又はm+1価の連結基を表し、A
4はアルキル基、ポリアルキレンオキシ基又はこれらの結合により表される基を表し、mは1以上の整数を表し、*はY
1との結合部位を表す。
【請求項6】
前記式(2-1)中、A
1が下記式(P-2)、式(P-3)又は式(P-4)で表される基であり、A
2が下記式(P-2)又は式(P-3)で表される基であり、前記式(2-2)中A
3が下記式(P-2)、式(P-3)又は式(P-4)で表される基であり、A
4が下記式(P-2)又は式(P-3)で表される基である、請求項1又は3に記載の樹脂。
【化11】
式(P-2)中、A
2はビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロキシ基、マレイミド基、ビニルフェニル基、エポキシ基、オキセタニル基、メチロール基又はアルコキシメチル基を表し、*はY
1、Q
1、Y
2又はQ
2との結合部位を表す。
式(P-3)中、A
2はビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロキシ基、マレイミド基、ビニルフェニル基、エポキシ基、オキセタニル基、メチロール基又はアルコキシメチル基を表し、L
2は炭化水素基、又は、炭化水素基と、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)
2-、-NR
N-、カーボネート結合、ウレア基、若しくは、これらが2以上結合した基を表し、Z
1はエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、カーボネート結合、又は、アミド結合を表し、*はY
1、Q
1、Y
2又はQ
2との結合部位を表す。R
Nは水素原子又は炭化水素基である。
【化12】
式(P-4)中、L
4は単結合又はm+1価の連結基を表し、A
4はアルキル基、ポリアルキレンオキシ基又はこれらの結合により表される基を表し、mは1以上の整数を表し、*はY
1との結合部位を表す。
【請求項7】
前記式(P-4)中のL4がエステル結合、アミド結合、ウレア結合、又はウレタン結合である、請求項2、5又は6に記載の樹脂。
【請求項8】
前記式(2-1)中、Y
1は式(Y-1)で表される基を表す、請求項1又は2に記載の樹脂。
【化13】
式(Y-1)中、R
Y1、R
Y2及びR
Y3はそれぞれ独立に、下記式(Y1-1)~式(Y1-4)のいずれかで表される構造を表し、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立に、アミド結合を表し、a及びbはそれぞれ独立に、0以上の整数を表し、式(Y-1)に存在するR
Y1、R
Y2及びR
Y3のうち、少なくとも1つは式(2-1)中のA
1との結合部位を表す。
【化14】
式(Y1-1)~(Y1-4)中、*はそれぞれ、他の構造との結合部位を、#はそれぞれ、式(2-1)におけるA
1との結合部位又は水素原子との結合部位を表す。
式(Y1-1)又は式(Y1-2)中、L
Y1及びL
Y2はそれぞれ独立に、アルキレン基を表す。
式(Y1-3)又は式(Y1-4)中、L
Y4はそれぞれ独立に、単結合又は2価の炭化水素基を表す。
式(Y1-4)中、L
Y3は単結合、又は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)
2-、-NHC(=O)-、若しくは、これらを2以上組み合わせた基である。
式(Y1-3)又は式(Y1-4)中、nはそれぞれ独立に、1~4の整数を表し、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【請求項9】
前記式(Y-1)中、a及びbが0又は1である、請求項3又は8に記載の樹脂。
【請求項10】
前記式(Y-1)中、RY1、RY2及びRY3はそれぞれ独立に、前記式(Y1-3)で表される構造である、請求項3、8又は9に記載の樹脂。
【請求項11】
前記式(Y1-3)中、LY4がいずれも単結合である、請求項3、8、9又は10に記載の樹脂。
【請求項12】
前記式(2-1)中、n1が1であり、n2が1であり、前記式(2-2)中、n3が1であり、n4が1である、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項13】
前記式(2-1)中のX1及びX2がそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基であり、前記式(2-2)中のX3及びX4がそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基である、請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項14】
前記式(2-1)中のY1が芳香族炭化水素基を含む基であり、前記式(2-2)中のY2が芳香族炭化水素基を含む基である、請求項1~13のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項15】
前記式(2-1)中のQ1が芳香族炭化水素基を含む基であり、前記式(2-2)中のQ2が芳香族炭化水素基を含む基である、請求項1~8のいずれか1項のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項16】
前記式(2-1)中のQ
1及び式(2-2)中のQ
2が式(A2-1)~式(A2-5)で表される構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構造である、請求項1~15のいずれか1項に記載の樹脂。
【化15】
式(A2-1)~(A2-5)中、R
A211~R
A214、R
A221~R
A224、R
A231~R
A238、R
A241~R
A248及びR
A251~R
A258はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、環状アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン化アルキル基、又は、ハロゲン原子を表し、L
A231及びL
A241はそれぞれ独立に、単結合、カルボニル基、スルホニル基、2価の飽和炭化水素基、2価の不飽和炭化水素基、ヘテロ原子、ヘテロ環基、又は、ハロゲン化アルキレン基を表し、R
A211~R
A214のうち少なくとも1つ、R
A221~R
A224のうち少なくとも1つ、R
A231~R
A238のうち少なくとも1つ、R
A241~R
A248のうち少なくとも1つ、及び、R
A251~R
A258のうち少なくとも1つが上記式(2-1)中のA
2又は上記式(2-2)中のA
4との結合部位であってもよく、*はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表す。
【請求項17】
前記式(2-1)中のQ1及び式(2-2)中のQ2が前記式(A2-1)で表される構造である、請求項16に記載の樹脂。
【請求項18】
前記樹脂における式(1-1)で表される繰返し単位、及び、式(1-2)で表される繰返し単位の合計含有量が、樹脂の質量に対して50質量%以上である、請求項1~17のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項19】
式(1-1)で表される繰返し単位を有し、式(1-1)で表される繰返し単位の含有量が、樹脂の全繰返し単位に対して70モル%以上である、請求項1~18のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項20】
式(1-2)で表される繰返し単位を有し、式(1-2)で表される繰返し単位の含有量が、樹脂の全繰返し単位に対して70モル%以上である、請求項1~18のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項21】
重量平均分子量が10,000~100,000である、請求項1~20のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項22】
酸価が0~2.0mmol/gである、請求項1~21のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項23】
1gの特定樹脂に含まれる重合性基のモル量が、0.05~10mmol/gである、請求項1~21のいずれか1項に記載の樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、硬化膜、積層体、硬化膜の製造方法、半導体デバイス、及び、樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、耐熱性及び絶縁性に優れるため、様々な用途に適用されている。上記用途としては特に限定されないが、実装用の半導体デバイスを例に挙げると、絶縁膜や封止材の材料、又は、保護膜としての利用が挙げられる。また、フレキシブル基板のベースフィルムやカバーレイなどとしても用いられている。
【0003】
例えば上述した用途において、ポリイミドは、ポリイミドを含む硬化性樹脂組成物の形態で用いられる場合もあれば、ポリイミド前駆体等を含む硬化性樹脂組成物の形態で用いられる場合がある。上記前駆体は、例えば加熱等により、環化してポリイミド等の樹脂となる。
これらの硬化性樹脂組成物は、公知の塗布方法等により基材等に適用可能であるため、例えば、適用される硬化性樹脂組成物の形状、大きさ、適用位置等の設計の自由度が高いなど、製造上の適応性に優れるといえる。
ポリイミド等の樹脂がもつ高い性能に加え、このような製造上の適応性に優れる観点から、ポリイミド、又は、ポリイミド前駆体を含む硬化性樹脂組成物について、産業上の応用展開がますます期待されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、特定の構造を有するポリアミック酸と、光重合性化合物と、光重合開始剤とを含む感光性樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリイミドを含む硬化性樹脂組成物において、得られる硬化膜の耐薬品性に優れる硬化性樹脂組成物の提供が望まれている。
【0007】
本発明の一実施態様は、得られる硬化膜の耐薬品性に優れる硬化性樹脂組成物、上記硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜、上記硬化膜を含む積層体、上記硬化膜の製造方法、及び、上記硬化膜又は上記積層体を含む半導体デバイスを提供することを目的とする。
また、本発明の別の一実施態様は、新規な樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明の代表的な実施態様の例を記載する。
<1> 下記式(1-1)で表される繰返し単位、及び、下記式(1-2)で表される繰返し単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を有する樹脂、並びに、
重合開始剤を含む、
硬化性樹脂組成物;
【化1】
式(1-1)中、R
11はアミド結合を複数有する4価の基を表し、L
11は重合性基を含む2価の連結基を表す;
式(1-2)中、R
21はアミド結合を複数有する4価の基であり、L
21は重合性基を含む2価の基を表し、R
22及びR
23はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。
<2> 上記樹脂が、上記式(1-1)で表される繰返し単位として下記式(2-1)で表される繰返し単位を有するか、又は、上記式(1-2)で表される繰返し単位として下記式(2-2)で表される繰返し単位を有する、<1>に記載の硬化性樹脂組成物;
【化2】
式(2-1)中、X
1及びX
2はそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基、炭素数2~30の環状、直鎖状、又は、分岐鎖状の脂肪族基を表し、Y
1は炭素数1~30の有機基を表し、Q
1は炭素数1~30の有機基を表し、A
1は重合性基、脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を含む基を表し、A
2は重合性基を含む基を表し、重合性基を含む基を表し、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、n1及びn2はそれぞれ独立に、1以上の整数を表す;
式(2-2)中、X
3及びX
4はそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基、炭素数2~30の環状、直鎖状、または分岐鎖状の脂肪族基を表し、Y
2は炭素数1~30の有機基を表し、Q
2は炭素数1~30の有機基を表し、A
3は重合性基、脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を含む基を表し、A
4は重合性基を含む基を表し、R
3及びR
4はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、G
1及びG
2はそれぞれ独立に、炭素数1~30の有機基を表し、n3及びn4はそれぞれ独立に、1以上の整数を表す。
<3> 上記式(2-1)中のX
1及びX
2がそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基であり、上記式(2-2)中のX
3及びX
4がそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基である、<2>に記載の硬化性樹脂組成物。
<4> 上記式(2-1)中のY
1が芳香族炭化水素基を含む基であり、上記式(2-2)中のY
2が芳香族炭化水素基を含む基である、<2>又は<3>に記載の硬化性樹脂組成物。
<5> 上記式(2-1)中のQ
1が芳香族炭化水素基を含む基であり、上記式(2-2)中のQ
2が芳香族炭化水素基を含む基である、<2>~<4>のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
<6> 重合性化合物を更に含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
<7> 上記重合性化合物として、多官能重合性化合物を更に含む、<6>に記載の硬化性樹脂組成物。
<8> 再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられる、<1>~<7>のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
<9> <1>~<8>のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜。
<10> <9>に記載の硬化膜を2層以上有し、上記硬化膜同士のいずれかの間に金属層を有する、積層体。
<11> <1>~<8>のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物を基板に適用して膜を形成する膜形成工程を含む、硬化膜の製造方法。
<12> 上記膜を50~450℃で加熱する工程を含む、<11>に記載の硬化膜の製造方法。
<13> <9>に記載の硬化膜又は<10>に記載の積層体を有する、半導体デバイス。
<14> 式(2-1)で表される繰返し単位、及び、式(2-2)で表される繰返し単位よりなる群から選ばれた少なくとも一方を含む、
樹脂。
【化3】
式(2-1)中、X
1及びX
2はそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基、炭素数2~30の環状、直鎖状、または分岐鎖状の脂肪族基を表し、Y
1は炭素数1~30の有機基を表し、Q
1は炭素数1~30の有機基を表し、A
1は重合性基、脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を含む基を表し、A
2は重合性基を含む基を表し、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、n1及びn2はそれぞれ独立に、1以上の整数を表す;
式(2-2)中、X
3及びX
4はそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基、炭素数2~30の環状、直鎖状、または分岐鎖状の脂肪族基を表し、Y
2は炭素数1~30の有機基を表し、Q
2は炭素数1~30の有機基を表し、A
3は重合性基、脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を含む基を表し、A
4は重合性基を含む基を表し、R
3及びR
4はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、G
1及びG
2はそれぞれ独立に、炭素数1~30の有機基を表し、n3及びn4はそれぞれ独立に、1以上の整数を表す。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施態様によれば、得られる硬化膜の耐薬品性に優れる硬化性樹脂組成物、上記硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜、上記硬化膜を含む積層体、上記硬化膜の製造方法、及び、上記硬化膜又は上記積層体を含む半導体デバイスが提供される。
また、本発明の別の一実施態様によれば、新規な樹脂が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の主要な実施形態について説明する。しかしながら、本発明は、明示した実施形態に限られるものではない。
本明細書において「~」という記号を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、その工程の所期の作用が達成できる限りにおいて、他の工程と明確に区別できない工程も含む意味である。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有しない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において、単に「脂肪族基」「脂肪族炭化水素基」「飽和脂肪族炭化水素基」「アルキル基」、「アルキレン基」等と記載した場合、特段の記載がない限り、これらの基は分岐構造及び環状構造の少なくとも一方を有していてもよいものとする。例えば、「アルキル基」には特段の記載がない限り、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、環状アルキル基及びこれらの組み合わせにより表されるアルキル基が含まれる。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた露光も含む。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線又は放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方、又は、いずれかを意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方、又は、いずれかを意味し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方、又は、いずれかを意味する。
本明細書において、構造式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また本明細書において、固形分濃度とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量百分率である。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に述べない限り、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC測定)に従い、ポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000、TSKgel Super HZ2000(東ソー(株)製)を用いることによって求めることができる。それらの分子量は特に述べない限り、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて測定したものとする。また、GPC測定における検出は特に述べない限り、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用したものとする。
本明細書において、積層体を構成する各層の位置関係について、「上」又は「下」と記載したときには、注目している複数の層のうち基準となる層の上側又は下側に他の層があればよい。すなわち、基準となる層と上記他の層の間に、更に第3の層や要素が介在していてもよく、基準となる層と上記他の層は接している必要はない。また、特に断らない限り、基材に対し層が積み重なっていく方向を「上」と称し、又は、硬化性樹脂組成物層がある場合には、基材から硬化性樹脂組成物層へ向かう方向を「上」と称し、その反対方向を「下」と称する。なお、このような上下方向の設定は、本明細書中における便宜のためであり、実際の態様においては、本明細書における「上」方向は、鉛直上向きと異なることもありうる。
本明細書において、特段の記載がない限り、組成物は、組成物に含まれる各成分として、その成分に該当する2種以上の化合物を含んでもよい。また、特段の記載がない限り、組成物における各成分の含有量とは、その成分に該当する全ての化合物の合計含有量を意味する。
本明細書において、特に述べない限り、温度は23℃、気圧は101,325Pa(1気圧)、相対湿度は50%RHである。
本明細書にいて、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0011】
(硬化性樹脂組成物)
本発明の硬化性樹脂組成物(以下、単に、「本発明の組成物」ともいう。)は、下記式(1-1)で表される繰返し単位、及び、下記式(1-2)で表される繰返し単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を有する樹脂、及び、重合開始剤を含む。
以下、下記式(1-1)で表される繰返し単位、及び、下記式(1-2)で表される繰返し単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を有する樹脂を、「特定樹脂」ともいう。
【化4】
式(1-1)中、R
11はアミド結合を複数有する4価の基を表し、L
11は重合性基を含む2価の連結基を表す;
式(1-2)中、R
21はアミド結合を複数有する4価の基であり、L
21は重合性基を含む2価の基を表し、R
22及びR
23はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。
本明細書において、アミド結合とは(-C(=O)NR-)により表される構造をいう。上記Rは水素原子又は1価の有機基を表し、水素原子又は炭化水素基であることが好ましく、水素原子、アルキル基又は芳香族炭化水素基であることがより好ましく、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は、炭素数6~20の芳香族炭化水素基であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
本明細書において、単に「エステル結合(-C(=O)O-)」、「ウレタン結合(-O-C(=O)NR-)」、「アミド結合」等と記載した場合、これらの結合の向きは限定されないものとする。上記ウレタン結合(-O-C(=O)NR-)におけるRは、上述のアミド結合におけるRと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0012】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ネガ型の硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
ネガ型の硬化性樹脂組成物とは、硬化性樹脂組成物から形成された層を露光した場合に、露光されていない部分(非露光部)が現像液により除去される組成物をいう。
また、本発明において、繰返し単位とは、繰返し連結することにより樹脂を構成する構成単位のうち最小のものをいう。すなわち、例えば式(1-2)で表される繰返し単位が2つ結合した構成単位を有する樹脂は、式(1-2)で表される繰返し単位が2つ結合した繰返し単位を1つ有する樹脂ではなく、式(1-2)で表される繰返し単位を2つ有する樹脂である。
【0013】
本発明の硬化性樹脂組成物は、得られる硬化膜の耐薬品性に優れる。
上記効果が得られるメカニズムは定かではないが、下記のように推測される。
【0014】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記式(1-1)で表される繰返し単位を有する樹脂(以下、「特定樹脂」ともいう。)を含む。
ここで、従来用いられてきたポリイミド樹脂又はポリイミド前駆体とは異なり、特定樹脂は、式(1-1)又は式(1-2)中のR11又はR21に複数のアミド結合を含み、かつ、L11又はL21に重合性基を含む。
アミド結合は高い水素結合性を有するため、樹脂が上記複数のアミド結合を含むことにより、樹脂間又は樹脂内で相互作用が生じると考えられる。硬化後の硬化膜においては、上記相互作用と、上記アミド結合に近接するL11又はL21に含まれる重合性基の重合による架橋により、密度の高い網目状の構造が形成されると推測される。このような密度の高い網目状の構造が形成された硬化膜には、薬品が浸透しにくくなると考えられる。このように、本発明の硬化性樹脂組成物によれば、薬品の浸透が抑制された、耐薬品性に優れた硬化膜が得られると推測される。
硬化膜が耐薬品性に優れることにより、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜上に、溶剤を含む他の硬化性樹脂組成物を更に適用、硬化して積層体を作製する場合等に、硬化膜が現像液又は他の硬化性樹脂組成物に接したとしても、硬化膜の溶解が抑制されると考えられる。
本発明によれば、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP)等の極性溶剤、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液等のアルカリ水溶液、又は、上記極性溶剤と上記アルカリ水溶液との混合液に対する溶解性が抑制された、耐薬品性に優れた硬化膜が得られると考えられる。
更に、特定樹脂が式(1-1)又は式(1-2)中のL11又はL21に溶剤溶解性の高い重合性基を有することにより、重合前の組成物においては現像液の浸透性が向上するため、現像性に優れた組成物膜(感光膜)が得られやすいと推測される。
【0015】
ここで、特許文献1には、式(1-1)で表される繰返し単位、及び、式(1-2)で表される繰返し単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を有する樹脂については記載も示唆もない。また、特許文献1における硬化性樹脂組成物においては、得られる硬化膜の耐薬品性が低いという問題点があった。
【0016】
<特定樹脂>
本発明の硬化性樹脂組成物は、特定樹脂を含む。
特定樹脂は、式(1-1)で表される繰返し単位、及び、式(1-2)で表される繰返し単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を有する。
特定樹脂は、式(1-1)で表される繰返し単位、及び、式(1-2)で表される繰返し単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を側鎖に有してもよいが、上記繰返し単位を主鎖に有することが好ましい。
本明細書において、「主鎖」とは、樹脂を構成する高分子化合物の分子中で相対的に最も長い結合鎖をいい、「側鎖」とはそれ以外の結合鎖をいう。
【0017】
〔式(1-1)で表される繰返し単位〕
-R11-
式(1-1)中、R11はアミド結合を複数有する4価の基を表す。
R11に含まれるアミド結合は、特定樹脂の主鎖に含まれてもよいし、特定樹脂の側鎖に含まれてもよいが、耐薬品性の観点からは、特定樹脂の主鎖に含まれることが好ましい。
R11におけるアミド結合の数は、2以上であればよいが、2~10であることが好ましく、2~5であることがより好ましく、2~4であることが更に好ましく、2又は3であることが特に好ましく、2であることが最も好ましい。
R11は、4価の基であればよいが、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基と、2以上のアミド結合とを含むことが好ましい。
現像性の観点からは、R11は芳香環族炭化水素基を含む基であることが好ましい。
また、耐薬品性の観点からは、R11は重合性基を含む基であることが好ましい。重合性基としては、エチレン性不飽和結合を含む基、環状エーテル基、メチロール基又はアルコキシメチル基を含む基が好ましく、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロキシ基、マレイミド基、ビニルフェニル基、エポキシ基、オキセタニル基、メチロール基又はアルコキシメチル基がより好ましく、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、エポキシ基、メチロール基又はアルコキシメチル基が更に好ましい。
R11に含まれる重合性基の数は、1個以上であることが好ましく、1~15個であることがより好ましく、1~10個であることが更に好ましく、1~5個であることが一層好ましく、1又は2個であることが特に好ましく、1個であることが最も好ましい。
現像液溶解性の観点からは、R11は、脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を置換基として有することが好ましい。
これらの置換基としては、後述する式(P-4)で表される基が好ましい。
【0018】
<<式(R-1)>>
これらの中でも、R
11は下記式(R-1)で表される基であることが好ましい。
【化5】
【0019】
式(R-1)中、X1及びX2はそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基、炭素数2~30の環状、直鎖状、または分岐鎖状の脂肪族基を表し、L1及びL2はそれぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表し、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表し、L3は2価の連結基を表し、*はそれぞれ、式(1-1)中の2つのイミド構造のうち一方との結合部位を表し、#はそれぞれ、上記イミド構造のうち他方との結合部位を表す。
【0020】
<<<X1及びX2>>>
式(R-1)中、X1及びX2はそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は、炭素数3~30の脂肪族環基であることが好ましい。
上記炭素数6~30の芳香族炭化水素基としては、炭素数6~20の芳香族炭化水素基がより好ましく、炭素数6~10の芳香族炭化水素基が更に好ましく、ベンゼン環から水素原子を3つ除いた構造がより好ましい。
上記炭素数3~30の脂肪族環基としては、炭素数4~20の脂肪族環基がより好ましく、炭素数6~10の脂肪族環基が更に好ましく、6員環構造である脂肪族環構造から水素原子を3つ除いた構造がより好ましい。
上記脂肪族環基は、飽和脂肪族環基であっても不飽和脂肪族環基であってもよいが、飽和脂肪族環基であることが好ましい。
上記脂肪族環基は、脂肪族炭化水素環基であっても脂肪族複素環基であってもよいが、脂肪族炭化水素環基であることが好ましい。
これらの中でも、上記脂肪族環基としては、飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
X1又はX2である芳香族炭化水素基又は脂肪族環基において、X1における2つの*、及び、X2における2つの#は、芳香族炭化水素基又は脂肪族環基における隣接位に存在することが好ましい。
本明細書において、2つの結合部位が環構造における隣接位に存在するとは、ある結合部位が存在する上記環構造における環員と、別の結合部位が存在する上記環構造における環員とが、環構造において隣接する環員であることをいう。例えば、環構造がベンゼン環構造である場合、隣接位とはオルト位のことである。
【0021】
上記X1及びX2は、本発明の効果が得られる範囲内において、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、環状アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0022】
<<<L1及びL2>>>
式(R-1)中、L1及びL2はそれぞれ独立に、単結合、炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)2-、-NRN-、又は、これらが2以上結合した基が好ましく、単結合がより好ましい。上記「これらが2以上結合した基」としては、ウレア基等が好ましく挙げられる。
上記RNは水素原子又は炭化水素基を表し、水素原子、アルキル基又は芳香族炭化水素基がより好ましく、水素原子又はアルキル基が更に好ましく、水素原子が特に好ましい。
上記炭化水素基としては、炭素数1~30の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は、これらの組み合わせにより表される基が好ましく、炭素数1~10の飽和脂肪族炭化水素基、ベンゼン環から2以上の水素原子を除いた基、又は、これらの結合により表される基であることがより好ましい。
また、L1及びL2における炭化水素基は、重合性基を含む基を置換基として有してもよい。重合性基としては、上述のR11における重合性基が挙げられる。
現像液溶解性の観点からは、L1及びL2における炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を少なくとも含む基を置換基として有することが好ましい。これらの置換基としては、後述する式(P-4)で表される基が好ましい。
【0023】
式(R-1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表し、水素原子、アルキル基又は芳香族炭化水素基がより好ましく、水素原子又はアルキル基が更に好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0024】
<<<L
3>>>
式(R-1)中、L
3は炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)
2-、-NR
N-、又は、これらが2以上結合した基が好ましく、炭化水素基、又は、少なくとも1つの炭化水素基と、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)
2-、-NR
N-、及び、ウレア基よりなる群から選ばれた少なくとも1つの構造とが結合した基であることが好ましい。上記R
Nは上述の通りである。
上記炭化水素基としては、炭素数1~30の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は、これらの組み合わせにより表される基が好ましく、炭素数1~10の飽和脂肪族炭化水素基、ベンゼン環から2以上の水素原子を除いた基、又は、これらの結合により表される基であることがより好ましい。
また、L
3における炭化水素基は、重合性基、脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を含む基を置換基として有してもよい。重合性基としては、上述のR
11における重合性基が挙げられる。
得られる硬化膜の耐薬品性の観点からは、重合性基を少なくとも含む基を置換基として有することが好ましい。
現像液溶解性の観点からは、脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を少なくとも含む基を置換基として有することが好ましい。これらの置換基としては、後述する式(P-4)で表される基が好ましい。
また、L
3としては、下記式(L-1)で表される基が好ましい。
【化6】
式(L-1)中、Y
1は炭素数1~30の有機基を表し、A
1は重合性基、脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を含む基を表し、n1は1以上の整数を表し、*は式(R-1)中のR
1が結合する窒素原子との結合部位を表し、#は式(R-1)中のR
2が結合する窒素原子との結合部位を表す。
【0025】
式(L-1)中、Y1は炭化水素基、又は、少なくとも1つの炭化水素基と、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)2-、-NRN-よりなる群から選ばれた少なくとも1つの構造とが結合した基であることが好ましく、炭化水素基、又は、少なくとも1つの炭化水素基とアミド結合とが結合した構造であることが好ましい。
【0026】
また、Y
1は下記式(Y-1)で表される基であることが好ましい。
【化7】
式(Y-1)中、R
Y1、R
Y2及びR
Y3はそれぞれ独立に、炭素数1~30の有機基を表し、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立に、アミド結合を表し、a及びbはそれぞれ独立に、0以上の整数を表し、式(Y-1)に存在するR
Y1、R
Y2及びR
Y3のうち、少なくとも1つは式(L-1)中のA
1との結合部位を表す。
【0027】
式(Y-1)中、R
Y1、R
Y2及びR
Y3はそれぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基を含む基であることが好ましく、芳香族炭化水素基を含む基であることが好ましい。
上記脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数2~20の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
上記芳香族炭化水素基としては、炭素数6~30の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6~20の芳香族炭化水素基がより好ましく、炭素数6~12の芳香族炭化水素基が更に好ましく、炭素数6の芳香族炭化水素基が特に好ましい。
また、R
Y1、R
Y2及びR
Y3はそれぞれ独立に、下記式(Y1-1)~式(Y1-4)のいずれかで表される構造であることが好ましく、式(Y1-3)又は式(Y1-4)で表される構造であることがより好ましく、式(Y1-3)で表される構造であることがより好ましい。
式(Y1-1)~(Y1-4)中、*はそれぞれ、他の構造との結合部位を、#はそれぞれ、式(L-1)におけるA
1との結合部位又は水素原子との結合部位を表す。
【化8】
式(Y1-1)又は式(Y1-2)中、L
Y1及びL
Y2はそれぞれ独立に、アルキレン基を表し、炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素数1~4のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が更に好ましい。
式(Y1-3)又は式(Y1-4)中、L
Y4はそれぞれ独立に、単結合又は2価の炭化水素基を表し、単結合が好ましい。上記2価の炭化水素基としては、アルキレン基が好ましく、炭素数1~10のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~4のアルキレン基が更に好ましい。
式(Y1-4)中、L
Y3は単結合、又は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)
2-、-NHC(=O)-、若しくは、これらを2以上組み合わせた基であることが好ましく、単結合、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキレン基、-O-、-C(=O)-、-S-又は-S(=O)
2-であることがより好ましく、-CH
2-、-O-、-S-、-S(=O)
2-、-C(CF
3)
2-、及び、-C(CH
3)
2-よりなる群から選択される2価の基であることが更に好ましい。
式(Y1-3)又は式(Y1-4)中、nはそれぞれ独立に、1~4の整数を表し、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0028】
式(Y-1)中、Z1及びZ2におけるアミド結合はそれぞれ独立に、上述のR11におけるアミド結合と同様であり、好ましい態様も同様である。
また、Z1及びZ2におけるアミド結合の向きは特に限定されない。
【0029】
式(Y-1)中、a及びbはそれぞれ独立に、0以上の整数を表し、0~4の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0又は1であることが更に好ましく、0が特に好ましい。
【0030】
式(L-1)中、A1は重合性基、脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を含む基を表す。
重合性基としては、エチレン性不飽和結合を含む基、環状エーテル基、メチロール基又はアルコキシメチル基を含む基が好ましく、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロキシ基、マレイミド基、ビニルフェニル基、エポキシ基、オキセタニル基、又は、メチロール基がより好ましく、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、エポキシ基、メチロール基、又はアルコキシメチル基が更に好ましい。
A1が重合性基を含む基である場合、A1に含まれる重合性基の数は、1個以上であり、1~15個であることが好ましく、1~10個であることがより好ましく、1~5個であることが更に好ましく、1又は2個であることが特に好ましく、1個であることが最も好ましい。
A1が脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を少なくとも含む基である場合の好ましい態様は、上述の式(R-1)におけるL3の置換基として記載した通りである。
【0031】
また、A
1が重合性基を含む場合は下記式(P-1)で表される基であることが好ましい。
【化9】
式(P-1)中、L
1は単結合又はm+1価の連結基を表し、A
2は重合性基を表し、mは1以上の整数を表し、*はY
1との結合部位を表す。
式(P-1)中、L
1は単結合、又は、炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)
2-、-NR
N-、若しくは、これらが2以上結合した基が好ましく、単結合、又は、炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-NR
N-、若しくは、これらが2以上結合した基がより好ましい。上記「これらが2以上結合した基」としては、ウレア基等が挙げられる。
上記R
Nは水素原子又は炭化水素基を表し、水素原子、アルキル基又はアリール基がより好ましく、水素原子又はアルキル基が更に好ましく、水素原子が特に好ましい。
上記L
1における炭化水素基としては、炭素数1~30の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は、これらの組み合わせにより表される基が好ましく、炭素数1~10の飽和脂肪族炭化水素基、ベンゼン環から2以上の水素原子を除いた基、又は、これらの結合により表される基であることがより好ましい。
【0032】
式(P-1)中、A2はビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロキシ基、マレイミド基、ビニルフェニル基、エポキシ基、オキセタニル基、メチロール基又はアルコキシメチル基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、エポキシ基、メチロール基又はアルコキシメチル基がより好ましい。
【0033】
式(P-1)中、mは1~15の整数であることが好ましく、1~10の整数であることがより好ましく、1~5の整数であることが更に好ましく、1又は2であることが特に好ましく、1であることが最も好ましい。
【0034】
また、A
1は下記式(P-2)又は式(P-3)で表される基であることが好ましい。
【化10】
式(P-2)中、A
2は重合性基を表し、*はY
1との結合部位を表す。
式(P-2)中、A
2は式(P-1)におけるA
2と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(P-3)中、A
2は重合性基を表し、L
2は炭化水素基、又は、炭化水素基と、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)
2-、-NR
N-、カーボネート結合、ウレア基、若しくは、これらが2以上結合した基を表し、Z
1はエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、カーボネート結合、又は、アミド結合を表し、*はY
1との結合部位を表す。R
Nは上述の通りである。
式(P-3)中、A
2は式(P-1)におけるA
2と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(P-3)中、L
2は炭化水素基、(ポリ)アルキレンオキシ基、又は、これらの組み合わせにより表される基が好ましく、炭化水素基がより好ましい。
本明細書において、(ポリ)アルキレンオキシ基とは、アルキレンオキシ基又はポリアルキレンオキシ基を意味する。また、本発明において、ポリアルキレンオキシ基とは、アルキレンオキシ基が2以上直接結合した基をいう。ポリアルキレンオキシ基に含まれる複数のアルキレンオキシ基におけるアルキレン基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。ポリアルキレンオキシ基が、アルキレン基が異なる複数種のアルキレンオキシ基を含む場合、ポリアルキレンオキシ基におけるアルキレンオキシ基の配列は、ランダムな配列であってもよいし、ブロックを有する配列であってもよいし、交互等のパターンを有する配列であってもよい。
上記炭化水素基としては、アルキレン基、2価の芳香族炭化水素基、又はこれらの組み合わせにより表される基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましい。
上記アルキレン基としては、炭素数1~30のアルキレン基が好ましく、炭素数1~20のアルキレン基がより好ましく、炭素数1~10のアルキレン基が更に好ましい。
本発明において、単に「脂肪族炭化水素基」「飽和脂肪族炭化水素基」「アルキル基」、「アルキレン基」等と記載した場合、特段の記載がない限り、これらの基は分岐構造及び環状構造の少なくとも一方を有していてもよいものとする。例えば、「アルキル基」には特段の記載がない限り、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、環状アルキル基及びこれらの組み合わせにより表されるアルキル基が含まれる。
上記芳香族炭化水素基としては、炭素数6~30の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6~20の芳香族炭化水素基がより好ましく、フェニレン基又はナフチレン基が更に好ましく、フェニレン基が特に好ましい。
上記(ポリ)アルキレンオキシ基におけるアルキレン基としては、炭素数2~10のアルキレン基が好ましく、炭素数2~4のアルキレン基がより好ましく、エチレン基又はプロピレン基がより好ましく、エチレン基が更に好ましい。
また、ポリアルキレンオキシ基に含まれるアルキレンオキシ基の数(ポリアルキレンオキシ基の繰り返し数)は、2~20が好ましく、2~10がより好ましく、2~5が更に好ましく、2~4が特に好ましい。
式(P-3)中、Z
1はエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、又は、アミド結合を表し、エステル結合、ウレタン結合、ウレア結合、又は、アミド結合がより好ましい。
式(P-3)中、*はY
1との結合部位を表す。
【0035】
また、耐薬品性の観点からは、A1に含まれる重合性基と、特定樹脂の主鎖との距離は0~15であることが好ましく、0~10であることがより好ましい。
ここで、A1に含まれる重合性基と、特定樹脂の主鎖との距離とは、ポリイミドの主鎖に含まれる原子と、重合性基との間に含まれる原子数のうち、最小の数をいう。例えば、後述する実施例における式(PI-1)で表される樹脂においてメタクリロキシ基と主鎖との距離は4である。
すなわち、ポリイミドが主鎖内部に環構造を有する場合、「上述のポリイミドの主鎖に含まれる原子」には上記環構造の環員が含まれる。
また、A1が複数の重合性基を含む場合、A1に含まれる重合性基のうち、最も主鎖に近い重合性基と、ポリイミドの主鎖との距離が0~15であることが好ましく、0~10であることがより好ましい。更に、A1が複数の重合性基を含む場合、A1に含まれる全ての重合性基と、ポリイミドの主鎖との距離が0~15であることが更に好ましく、0~10であることが特に好ましい。
【0036】
A
1が脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む基である場合、A
1は下記式P-4で表される基であることが好ましい。
【化11】
式(P-4)中、L
4は単結合又はm+1価の連結基を表し、A
4は脂肪族炭化水素基、ポリアルキレンオキシ基又はこれらの結合により表される基を表し、mは1以上の整数を表し、*はY
1との結合部位を表す。
式(P-4)中、L
4は単結合、又は、炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)
2-、-NR
N-、若しくは、これらが2以上結合した基が好ましく、エステル結合、アミド結合、ウレア結合、又はウレタン結合がより好ましく、エステル結合が更に好ましい。
式(P-4)中、A
4における脂肪族炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、直鎖アルキル基又は分岐アルキル基がより好ましく、分岐アルキル基が更に好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、4~30が好ましく、6~20がより好ましい。
式(P-4)中、A
4におけるポリアルキレンオキシ基を含む基としては、後述のR
22におけるポリアルキレンオキシ基を含む基と同様の基が挙げられ、好ましい態様も同様である。
式(P-4)中、A
4は置換基として上述の重合性基を含む基、又は、他の公知の置換基を有していてもよい。
式(P-4)中、mは1以上の整数を表し、1~10の整数が好ましく、1~4の整数がより好ましく、1又は2が更に好ましく、1が特に好ましい。
【0037】
式(L-1)中、n1は1以上の整数を表し、1~20の整数であることが好ましく、1~10の整数であることがより好ましく、1~4の整数であることが更に好ましく、1又は2であることが特に好ましく、1であることが最も好ましい。
また、n1が2以上の整数である場合、n1個のA1はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0038】
<<<R1及びR2>>>
式(R-1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表し、水素原子、アルキル基又は芳香族炭化水素基が好ましく、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数6~12の芳香族炭化水素基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0039】
-L11-
式(1-1)中、L11は重合性基を含む2価の連結基を表す。
L11における重合性基としては、エチレン性不飽和結合を含む基、環状エーテル基、メチロール基又はアルコキシメチル基を含む基が好ましく、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロキシ基、マレイミド基、ビニルフェニル基、エポキシ基、オキセタニル基、メチロール基又はアルコキシメチル基がより好ましく、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、エポキシ基、メチロール基又はアルコキシメチル基が更に好ましい。
L11に含まれる重合性基の数は、1個以上であることが好ましく、1~15個であることがより好ましく、1~10個であることが更に好ましく、1~5個であることが一層好ましく、1又は2個であることが特に好ましく、1個であることが最も好ましい。
また、現像性の観点からは、L11は芳香族炭化水素基を含む基であることが好ましく、炭素数6~30の芳香族炭化水素基を含む基であることがより好ましく、ベンゼン環構造、又は、ナフタレン環構造を含む基であることが更に好ましく、ベンゼン環構造を含む基であることが特に好ましい。
【0040】
<<式(L-2)>>
これらの中でも、L
11は、下記式(L-2)で表される基であることが好ましい。
【化12】
式(L-2)中、Q
1は炭素数1~30の有機基を表し、A
2は重合性基を含む基を表し、n2は1以上の整数を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
【0041】
<<Q1>>
Q1は芳香族炭化水素基を含むn2+2価の基であることが好ましい。
Q1における芳香族炭化水素基は、炭素数6~30の芳香族炭化水素基であることが好ましく、炭素数6~20の芳香族炭化水素基であることがより好ましく、ベンゼン環から2以上の水素原子を除いた基であることが更に好ましく、ベンゼン環から3以上の水素原子を除いた基であることが特に好ましい。
式(L-2)中、Q1における、式(L-2)に記載の2つの*との結合部位は、いずれも芳香族炭化水素基であることが好ましい。すなわち、式(1-1)に記載の2つの窒素原子は、Q1に含まれる芳香族炭化水素環構造と、直接結合することが好ましい。
また、式(L-2)中、Q1における、A2との結合部位は、いずれも芳香族炭化水素基であることが好ましい。すなわち、A2は、Q1に含まれる芳香族炭化水素環構造と、直接結合することが好ましい。
【0042】
Q
1は、下記式(A2-1)~式(A2-5)で表される構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構造を含むことが好ましく、上述の式(A2-1)~式(A2-5)で表される構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構造であることがより好ましい。
【化13】
式(A2-1)~(A2-5)中、R
A211~R
A214、R
A221~R
A224、R
A231~R
A238、R
A241~R
A248及びR
A251~R
A258はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、環状アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン化アルキル基、又は、ハロゲン原子を表し、L
A231及びL
A241はそれぞれ独立に、単結合、カルボニル基、スルホニル基、2価の飽和炭化水素基、2価の不飽和炭化水素基、ヘテロ原子、ヘテロ環基、又は、ハロゲン化アルキレン基を表し、R
A211~R
A214のうち少なくとも1つ、R
A221~R
A224のうち少なくとも1つ、R
A231~R
A238のうち少なくとも1つ、R
A241~R
A248のうち少なくとも1つ、及び、R
A251~R
A258のうち少なくとも1つが上記式(L-2)中のA
2との結合部位であってもよく、*はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表す。
【0043】
これらの中でも、溶剤溶解性の観点から、Q1は式(A2-1)~式(A2-4)のいずれかで表される構造を含むことが好ましく、式(A2-1)で表される構造を含むことがより好ましい。
【0044】
式(A2-1)中、RA211~RA214はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~12の環状アルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、炭素数1~3のハロゲン化アルキル基、又は、ハロゲン原子を表すことが好ましく、溶剤溶解性の観点からは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~3のハロゲン化アルキル基がより好ましく、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。
上記RA211~RA214における上記ハロゲン化アルキル基におけるハロゲン原子、又は、上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
また、上記RA211~RA214のうち、少なくとも1つが式(L-2)中のA2との結合部位であることが好ましく、RA213が上記A2との結合部位であることがより好ましい。
【0045】
式(A2-2)中、RA221~RA224はそれぞれ、式(A2-1)におけるRA211~RA214と同義であり、好ましい態様も同様である。
また、上記RA211~RA214のうち、少なくとも1つが式(L-2)中のA2との結合部位であることが好ましく、1つ又は2つが上記A2との結合部位であることがより好ましい。
【0046】
式(A2-3)中、RA231~RA238はそれぞれ、式(A2-1)におけるRA211~RA214と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(A2-3)中、LA231は、単結合、炭素数1~6の2価の飽和炭化水素基、炭素数5~24の2価の不飽和炭化水素基、-O-、-S-、-NRN-、ウレア基、ヘテロ環基、又は、炭素数1~6のハロゲン化アルキレン基を表すことが好ましく、単結合、炭素数1~6の飽和炭化水素基、-O-又はヘテロ環基を表すことが好ましく、単結合又は-O-を表すことが更に好ましい。上記RNは上述の通りであり、好ましい態様も同様である。
また、上記RA231~RA238のうち、少なくとも1つが式(L-2)中のA2との結合部位であることが好ましく、1つ又は2つが上記A2との結合部位であることがより好ましく、RA231~RA234のうち1つと、RA235~RA238のうち1つとが上記A2との結合部位であることが更に好ましい。
【0047】
式(A2-4)中、RA241~RA248及びLA241はそれぞれ、式(A2-3)におけるRA231~RA238及びLA231と同義であり、好ましい態様も同様である。
また、上記RA241~RA248のうち、少なくとも1つが式(L-2)中のA2との結合部位であることが好ましく、1つ又は2つが上記A2との結合部位であることがより好ましく、RA241~RA244のうち1つと、RA245~RA248のうち1つとが上記A2との結合部位であることが更に好ましい。
【0048】
式(A2-4)中、RA251~RA258は式(A2-1)におけるRA211~RA214と同義であり、好ましい態様も同様である。
また、上記RA251~RA258のうち、少なくとも1つが式(L-2)中のA2との結合部位であることが好ましく、1つ又は2つが上記A2との結合部位であることがより好ましく、RA251~RA254のうち1つと、RA255~RA258のうち1つとが上記A2との結合部位であることが更に好ましい。
【0049】
<<A2>>
式(L-2)中、A2は重合性基を含む基を表す。
重合性基としては、エチレン性不飽和結合を含む基、環状エーテル基、メチロール基又はアルコキシメチル基を含む基が好ましく、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロキシ基、マレイミド基、ビニルフェニル基、エポキシ基、オキセタニル基、又は、メチロール基がより好ましく、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、エポキシ基、メチロール基、又はアルコキシメチル基が更に好ましい。
A2に含まれる重合性基の数は、1個以上であり、1~15個であることが好ましく、1~10個であることがより好ましく、1~5個であることが更に好ましく、1又は2個であることが特に好ましく、1個であることが最も好ましい。
【0050】
また、A2は上述の式(P-1)で表される基であることが好ましく、上述の式(P-2)又は上述の式(P-3)で表される基であることがより好ましい。
【0051】
<<n2>>
式(L-2)中、n2は1以上の整数を表し、1~20の整数であることが好ましく、1~10の整数であることがより好ましく、1~4の整数であることが更に好ましく、1又は2であることが特に好ましく、1であることが最も好ましい。
また、n2が2以上の整数である場合、n2個のA2はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0052】
-式(2-1)-
特定樹脂が式(1-1)で表される繰返し単位を有する場合、特定樹脂は、式(1-1)で表される繰返し単位として、下記式(2-1)で表される繰返し単位を有することが好ましい。
【化14】
式(2-1)中、X
1及びX
2はそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基、炭素数2~30の環状、直鎖状、又は、分岐鎖状の脂肪族基を表し、Y
1は炭素数1~30の有機基を表し、Q
1は炭素数1~30の有機基を表しA
1は重合性基、脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を含む基を表し、A
2は重合性基を含む基を表し、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、n1及びn2はそれぞれ独立に、1以上の整数を表す。
【0053】
上記式(2-1)中、X1、X2、R1及びR2はそれぞれ、上述の式(R-1)中のX1、X2、R1及びR2と同義であり、好ましい態様も同様である。
上記式(2-1)中、Y1、A1及びn1はそれぞれ、上述の式(L-1)中のY1、A1及びn1と同義であり、好ましい態様も同様である。
上記式(2-1)中、Q1、A2及びn2はそれぞれ、上述の式(L-2)中のQ1、A2及びn2と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0054】
〔式(1-2)で表される繰返し単位〕
-R21-
式(1-2)中、R21は式(1-1)中のR11と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0055】
-L21-
式(1-2)中、L21は式(1-1)中のL11と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0056】
-R22、R23-
R22及びR23はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、いずれも1価の有機基であることが好ましい。
R22及びR23における1価の有機基としては、重合性基を含む基、又は、ヘテロ原子を含んでもよい有機基が挙げられ、耐薬品性、現像性及び特定樹脂の溶剤溶解性の観点から、ポリアルキレンオキシ基を含む基が好ましい。
【0057】
<<重合性基を含む基>>
R22及びR23における重合性基を含む基に含まれる重合性基としては、エチレン性不飽和結合を含む基、環状エーテル基、メチロール基又はアルコキシメチル基を含む基が好ましく、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロキシ基、マレイミド基、ビニルフェニル基、エポキシ基、オキセタニル基、メチロール基又はアルコキシメチル基がより好ましく、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、エポキシ基、メチロール基又はアルコキシメチル基が更に好ましい。
上記重合性基を含む基に含まれる重合性基の数は、1個以上であり、1~15個であることが好ましく、1~10個であることがより好ましく、1~5個であることが更に好ましく、1又は2個であることが特に好ましく、1個であることが最も好ましい。
【0058】
上記重合性基を含む基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、又は、下記式(III)で表される基であることも好ましい。
【0059】
【0060】
式(III)中、R200は、水素原子又はメチル基を表し、メチル基が好ましい。
【0061】
式(III)中、R201は、炭素数2~12のアルキレン基、-CH2CH(OH)CH2-又は炭素数4~30の(ポリ)アルキレンオキシ基(アルキレン基としては炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が特に好ましい;繰り返し数は1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が特に好ましい)を表す。なお、(ポリ)アルキレンオキシ基とは、アルキレンオキシ基又はポリアルキレンオキシ基を意味する。
好適なR201の例は、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、ドデカメチレン基、-CH2CH(OH)CH2-が挙げられ、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、-CH2CH(OH)CH2-がより好ましい。
特に好ましくは、R200がメチル基で、R201がエチレン基である。
式(III)中、*は他の構造との結合部位を表す。
【0062】
<<ヘテロ原子を含んでもよい有機基>>
ヘテロ原子を含んでもよい有機基は、重合性基を有しない有機基であることが好ましい。
上記ヘテロ原子を含んでもよい有機基におけるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等が挙げられ、酸素原子が好ましい。
また、上記ヘテロ原子は、エーテル結合(-O-)として含まれることが好ましい。
上記ヘテロ原子を含んでもよい有機基としては、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~30の有機基であることが好ましく、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数2~20の有機基であることがより好ましい。
【0063】
<<<ポリアルキレンオキシ基>>>
これらの中でも、上記ヘテロ原子を含んでもよい有機基は、ポリアルキレンオキシ基を含む有機基であることが好ましい。
【0064】
本発明において、ポリアルキレンオキシ基とは、アルキレンオキシ基が2以上直接結合した基をいう。ポリアルキレンオキシ基に含まれる複数のアルキレンオキシ基におけるアルキレン基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
ポリアルキレンオキシ基が、アルキレン基が異なる複数種のアルキレンオキシ基を含む場合、ポリアルキレンオキシ基におけるアルキレンオキシ基の配列は、ランダムな配列であってもよいし、ブロックを有する配列であってもよいし、交互等のパターンを有する配列であってもよい。
上記アルキレン基の炭素数(アルキレン基が置換基を有する場合、置換基の炭素数を含む)は、2以上であることが好ましく、2~10であることがより好ましく、2~6であることがより好ましく、2~5であることが更に好ましく、2~4であることが一層好ましく、2又は3であることが特に好ましく、2であることが最も好ましい。
また、上記アルキレン基は、置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
また、ポリアルキレンオキシ基に含まれるアルキレンオキシ基の数(ポリアルキレンオキシ基の繰り返し数)は、2~20が好ましく、2~10がより好ましく、2~5が更に好ましく、2~4が特に好ましく、2が最も好ましい。
ポリアルキレンオキシ基としては、溶剤溶解性及び耐薬品性の両立の観点からは、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、ポリトリメチレンオキシ基、ポリテトラメチレンオキシ基、又は、複数のエチレンオキシ基と複数のプロピレンオキシ基とが結合した基が好ましく、ポリエチレンオキシ基又はポリプロピレンオキシ基がより好ましく、ポリエチレンオキシ基が更に好ましい。上記複数のエチレンオキシ基と複数のプロピレンオキシ基とが結合した基において、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基とはランダムに配列していてもよいし、ブロックを形成して配列していてもよいし、交互等のパターン状に配列していてもよい。これらの基におけるエチレンオキシ基等の繰り返し数の好ましい態様は上述の通りである。
【0065】
ポリアルキレンオキシ基を含む有機基は、下記式(PO-1)で表される基であることが好ましい。
【化16】
式(PO-1)中、R
P1はそれぞれ独立に、アルキレン基を表し、R
P2は1価の有機基を表し、nは2以上の整数を表し、L
P1は単結合又は2価の連結基を表し、*は式(1-2)中のR
22又はR
23が結合する酸素原子との結合部位を表す。
【0066】
式(PO-1)中、RP1はそれぞれ独立に、炭素数2~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~4のアルキレン基であることがより好ましく、エチレン基(-CH2-CH2-)又はプロピレン基(-CH2-CH(CH3)-又は-CH(CH3)-CH2-)であることがより好ましく、エチレン基であることが更に好ましい。
【0067】
式(PO-1)中、RP2は1価の有機基を表し、アルキル基、芳香族炭化水素基、アラルキル基、又は、重合性基を含む基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
上記アルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数2~4のアルキル基がより好ましく、エチル基が更に好ましい。
上記芳香族炭化水素基としては、炭素数6~20の芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。
上記アラルキル基としては、炭素数7~30のアラルキル基が好ましく、炭素数7~20のアラルキル基がより好ましく、ベンジル基がより好ましい。
上記重合性基を含む基に含まれる重合性基としては、エチレン性不飽和結合を含む基、環状エーテル基メチロール基又はアルコキシメチル基を含む基が好ましく、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロキシ基、マレイミド基、ビニルフェニル基、エポキシ基、オキセタニル基、メチロール基又はアルコキシメチル基がより好ましく、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、エポキシ基、メチロール基又はアルコキシメチル基が更に好ましい。
上記重合性基を含む基としては、上述の式(P-1)で表される基が好ましく、上述の式(P-2)又は上述の式(P-3)で表される基であることがより好ましい。
【0068】
式(PO-1)中、nは2~20の整数が好ましく、2~10の整数がより好ましく、2~5の整数が更に好ましく、2~4の整数が特に好ましく、2が最も好ましい。
【0069】
式(PO-1)中、LP1は単結合又は2価の連結基を表し、単結合が好ましい。
上記2価の連結基としては、炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)2-、-NRN-、又は、これらが2以上結合した基が好ましく、炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-NRN-。又は、これらが2以上結合した基がより好ましく、炭化水素基、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、又はこれらを2以上組み合わせた基が更に好ましい。
上記RNは水素原子又は炭化水素基を表し、水素原子、アルキル基又はアリール基がより好ましく、水素原子又はアルキル基が更に好ましく、水素原子が特に好ましい。
上記LP1における炭化水素基としては、炭素数1~30の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は、これらの組み合わせにより表される基が好ましく、炭素数1~10の飽和脂肪族炭化水素基、ベンゼン環から2以上の水素原子を除いた基、又は、これらの結合により表される基であることがより好ましい。
【0070】
<<<ハロゲン原子により置換された炭化水素基>>>
また、溶剤溶解性及び膜強度の観点から、ヘテロ原子を含んでもよい有機基は、ハロゲン原子により置換された炭化水素基であってもよい。
ハロゲン原子により置換された炭化水素基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
上記炭化水素基としては、アルキル基、又は、芳香族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
上記アルキル基としては、炭素数1~30のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数2~4のアルキル基が更に好ましい。
上記芳香族炭化水素基としては、炭素数6~30の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6~20の芳香族炭化水素基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。
すなわち、ハロゲン原子により置換された炭化水素基は、フッ素原子により少なくとも1つの水素原子が置換されたアルキル基であることが好ましい。
R22又はR23としてハロゲン原子により置換された炭化水素基を含むことにより、得られる硬化膜の膜強度が向上する。
【0071】
<<他の置換基>>
R22及びR23は、他の置換基であってもよい。
他の置換基としては、酸基を有する炭化水素基等が挙げられる。酸基を有する炭化水素基としては、酸基を有するアルキル基、酸基を有する芳香族炭化水素基、又は、酸基を有するアラルキル基等が挙げられる。
上記酸基を有するアルキル基におけるアルキル基としては、炭素数1~30のアルキル基が好ましく、炭素数1~20のアルキル基がより好ましく、炭素数1~10のアルキル基が更に好ましい。
上記酸基を有するアルキル基における酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基等が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
上記酸基を有する芳香族炭化水素基における芳香族炭化水素基としては、炭素数6~20の芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。
上記酸基を有するアラルキル基としては、炭素数7~30のアラルキル基が好ましく、炭素数7~20のアラルキル基がより好ましく、ベンジル基がより好ましい。
上記酸基を有する芳香族炭化水素基、又は、上記酸基を有するアラルキル基における酸基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基等が挙げられ、フェノール性ヒドロキシ基、又は、カルボキシ基が好ましく、フェノール性ヒドロキシ基がより好ましい。
これらの中でも、酸基を有する芳香族炭化水素基、又は、酸基を有するアラルキル基が好ましく、フェノール性ヒドロキシ基を有する芳香族炭化水素基、又は、フェノール性ヒドロキシ基を有するアラルキル基がより好ましく、フェノール性ヒドロキシ基を有するフェニル基、又は、フェノール性ヒドロキシ基を有するベンジル基が更に好ましい。
また、他の置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシアルキル基、アリーロキシ基アルキル基等の基であってもよい。
【0072】
膜強度および耐薬品性の観点からは、特定樹脂に含まれる全ての式(1-2)で表される繰返し単位中のR22及びR23の全モル量に対する、エチレン性不飽和結合を含む置換基であるR22及びR23のモル量の割合が、0~60%であることが好ましく、0~30%であることがより好ましい。
膜強度の観点からは、上記割合は、0~10%であることが好ましく、0~5%であることがより好ましく、0~3%であることが更に好ましい。
耐薬品性の観点からは、上記割合は、10~30%であることが好ましく、15~30%であることがより好ましい。
【0073】
膜強度、耐薬品性および特定樹脂の溶剤溶解性の観点からは、上記樹脂に含まれる全ての上記式(1-2)で表される繰返し単位中のR22及びR23の全モル量に対する、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~30の有機基であるR22及びR23のモル量の割合が、20~100%であることが好ましい。
膜強度の観点からは、上記割合の下限は、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましく、60%以上であることが特に好ましく、70%以上であることが最も好ましい。
耐薬品性の観点からは、上記割合の上限は、95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、85%以下であることが更に好ましく、80%以下であることが特に好ましく、70%以下であることが最も好ましい。
【0074】
膜強度、耐薬品性および特定樹脂の溶剤溶解性の観点からは、上記樹脂に含まれる全ての上記式(1-2)で表される繰返し単位中のR22及びR23の全モル量に対する、ポリアルキレンオキシ基を含む有機基である上記R22及びR23のモル量の割合が、20~100%であることが好ましい。
上記割合の記載における、ポリアルキレンオキシ基を含む有機基は、ポリアルキレンオキシ基を含む有機基であれば、重合性基を更に含む有機基であってもよいが、ポリアルキレンオキシ基を含み、かつ、重合性基を有しない有機基であることが好ましい。
膜強度の観点からは、上記割合の下限は、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましく、60%以上であることが特に好ましく、70%以上であることが最も好ましい。
耐薬品性の観点からは、上記割合の上限は、95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、85%以下であることが更に好ましく、80%以下であることが特に好ましく、70%以下であることが最も好ましい。
また、現像液溶解性の観点からは、例えば、上述の式(1-2)におけるR21を、上述の脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を少なくとも含む基を置換基として含む基とし、かつ、R22及びR23を上述の他の置換基とする態様も好ましく挙げられる。
この場合、上記式(1-2)で表される繰返し単位中のR22及びR23の全モル量に対する、上述の他の置換基である上記R22及びR23のモル量の割合が、50~100%であることも好ましい。
【0075】
-式(2-2)-
特定樹脂が式(1-2)で表される繰返し単位を有する場合、特定樹脂は、式(1-2)で表される繰返し単位として、下記式(2-2)で表される繰返し単位を有することが好ましい。
【化17】
式(2-2)中、X
3及びX
4はそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基、炭素数2~30の環状、直鎖状、または分岐鎖状の脂肪族基を表し、Y
2は炭素数1~30の有機基を表し、Q
2は炭素数1~30の有機基を表し、A
3は重合性基、脂肪族炭化水素基、及び、ポリアルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を含む基を表し、A
4は重合性基を含む基を表し、R
3及びR
4はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、G
1及びG
2はそれぞれ独立に、炭素数1~30の有機基を表し、n3及びn4はそれぞれ独立に、1以上の整数を表す。
【0076】
式(2-2)中、X3及びX4はそれぞれ、上述の式(2-1)中のX1及びX2と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(2-2)中、R3及びR4はそれぞれ、上述の式(2-1)中のR1及びR2と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(2-2)中、Y2、A3及びn3はそれぞれ、上述の式(2-1)中のY1、A1及びn1と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(2-2)中、Q2、A4及びn4はそれぞれ、上述の式(2-1)中のQ1、A2及びn2と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(2-2)中、G1及びG2はそれぞれ、上述の式(1-2)中のR23及びR22と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0077】
これらの中でも、特定樹脂は、上記式(1-1)で表される繰返し単位として上記式(2-1)で表される繰返し単位を有するか、又は、上記式(1-2)で表される繰返し単位として上記式(2-2)で表される繰返し単位を有することが好ましい。
【0078】
溶剤溶解性、現像性の観点からは、上記式(2-1)中のX1及びX2がそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基であり、上記式(2-2)中のX3及びX4がそれぞれ独立に、炭素数6~30の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0079】
溶剤溶解性、現像性の観点からは、上記式(2-1)中のY1が芳香族炭化水素基を含む基であり、上記式(2-2)中のY2が芳香族炭化水素基を含む基であることが好ましい。
【0080】
溶剤溶解性、現像性の観点からは、上記式(2-1)中のQ1が芳香族炭化水素基を含む基であり、上記式(2-2)中のQ2が芳香族炭化水素基を含む基であることが好ましい。
【0081】
-繰返し単位の含有量-
特定樹脂における式(1-1)で表される繰返し単位、及び、式(1-2)で表される繰返し単位の合計含有量は、特定樹脂の全繰返し単位に対して50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることが更に好ましく、80モル%以上であることが特に好ましい。上記含有量の上限は特に限定されず、100モル%以下であればよい。
また、特定樹脂における式(1-1)で表される繰返し単位、及び、式(1-2)で表される繰返し単位の合計含有量は、特定樹脂の質量に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。上記含有量の上限は特に限定されず、100質量%以下であればよい。
【0082】
特定樹脂が式(1-1)で表される繰返し単位を有する場合、式(1-1)で表される繰返し単位の含有量が、特定樹脂の全繰返し単位に対して50モル%以上である態様とすることもできる。上記含有量は、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることが更に好ましく、80モル%以上であることが特に好ましい。上記含有量の上限は特に限定されず、100モル%以下であればよい。
特定樹脂が式(1-2)で表される繰返し単位を有する場合、式(1-2)で表される繰返し単位の含有量が、特定樹脂の全繰返し単位に対して50モル%以上である態様とすることもできる。上記含有量は、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることが更に好ましく、80モル%以上であることが特に好ましい。上記含有量の上限は特に限定されず、100モル%以下であればよい。
【0083】
特定樹脂が式(1-1)で表される繰返し単位を有する場合、式(1-1)で表される繰返し単位を1種単独で含んでもよいし、構造の異なる式(1-1)で表される繰返し単位を2種以上含んでもよい。特定樹脂が、構造の異なる式(1-1)で表される繰返し単位を2種以上含む場合、特定樹脂に含まれる全ての式(1-1)で表される繰返し単位の合計含有量が、上記含有量の範囲に含まれることが好ましい。
特定樹脂が式(1-2)で表される繰返し単位を有する場合、式(1-2)で表される繰返し単位を1種単独で含んでもよいし、構造の異なる式(1-2)で表される繰返し単位を2種以上含んでもよい。特定樹脂が、構造の異なる式(1-2)で表される繰返し単位を2種以上含む場合、特定樹脂に含まれる全ての式(1-2)で表される繰返し単位の合計含有量が、上記含有量の範囲に含まれることが好ましい。
【0084】
また、特定樹脂が式(1-1)で表される繰返し単位を有する場合、特定樹脂のイミド化率(閉環率)を、70%以上とすることも好ましい。上記イミド化率は、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
上記イミド化率の上限は特に限定されず、100%以下であればよい。
上記イミド化率は、例えば下記方法により測定される。
特定樹脂の赤外吸収スペクトルを測定し、イミド構造由来の吸収ピークである1377cm-1付近のピーク強度P1を求める。次に、そのポリイミドを350℃で1時間熱処理した後、再度、赤外吸収スペクトルを測定し、1377cm-1付近のピーク強度P2を求める。得られたピーク強度P1、P2を用い、下記式に基づいて、特定樹脂のイミド化率を求めることができる。
イミド化率(%)=(ピーク強度P1/ピーク強度P2)×100
【0085】
〔他の繰返し単位〕
-式(1)で表される繰返し単位-
特定樹脂は、他の繰返し単位を更に含んでもよい。
他の繰返し単位としては、下記式(1)で表される繰返し単位が挙げられる。
上述の式(1-2)で表される繰返し単位に該当する繰返し単位は、下記式(1)で表される繰返し単位には該当しないものとする。
特定樹脂が下記式(1)で表される繰返し単位を有する場合、特定樹脂は下記式(1)で表される繰返し単位を主鎖に含むことが好ましい。
【化18】
式(1)中、A
A1及びA
A2は、それぞれ独立に酸素原子又はNHを表し、R
111は、2価の有機基を表し、R
115は、4価の有機基を表し、R
113及びR
114は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。
上記式(1)で表される繰返し単位は、R
115に含まれるアミド結合の数が1以下であるか、又は、R
111が重合性基を有しない繰返し単位である。
【0086】
式(1)中、AA1及びAA2はそれぞれ独立に、酸素原子又は-NH-を表し、酸素原子であることが好ましい。
式(1)中、R113及びR114は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、1価の有機基であることが好ましい。
また、R113及びR114の少なくとも一方が重合性基を含むことが好ましく、両方が重合性基を含むことがより好ましい。
また、R113及びR114における1価の有機基としては、上述の式(1-2)中のR22及びR23において重合性基を含む基、ヘテロ原子を含んでもよい有機基、又は、他の置換基も好ましく挙げられる。
【0087】
式(1)中、R
115は、上述の式(1-2)中のR
21と同様の構造であってもよい。式(1)中のR
115が、上述の式(1-2)中のR
21と同様の構造である場合、式(1)中のR
111は、重合性基を含まない構造である。
また、R
115は芳香環を含む4価の有機基が好ましく、下記式(5)又は式(6)で表される基がより好ましい。
【化19】
【0088】
式(5)中、R112は、単結合、又は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-CO-、-S-、-SO2-、及びNHCO-、ならびに、これらの組み合わせから選択される基であることが好ましく、単結合、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキレン基、-O-、-CO-、-S-及びSO2-から選択される基であることがより好ましく、-CH2-、-C(CF3)2-、-C(CH3)2-、-O-、-CO-、-S-及びSO2-からなる群から選択される2価の基であることが更に好ましい。
式(5)及び式(6)中、*はそれぞれ、他の構造との結合部位を表す。
【0089】
R
115は、具体的には、テトラカルボン酸二無水物から無水物基の除去後に残存するテトラカルボン酸残基などが挙げられる。テトラカルボン酸二無水物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
テトラカルボン酸二無水物は、下記式(O)で表されることが好ましい。
【化20】
式(O)中、R
115は、4価の有機基を表す。R
115は式(1)におけるR
115と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0090】
テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ジフェニルヘキサフルオロプロパン-3,3,4,4-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,8,9,10-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ならびに、これらの炭素数1~6のアルキル及び炭素数1~6のアルコキシ誘導体が挙げられる。
【0091】
また、国際公開第2017/038598号の段落0038に記載のテトラカルボン酸二無水物(DAA-1)~(DAA-5)も好ましい例として挙げられる。
【0092】
式(1)中、R111は、上述の式(1-2)中のL21と同様の構造であってもよい。式(1)中のR111が、上述の式(1-2)中のL21と同様の構造である場合、式(1)中のR115に含まれるアミド結合の数は1以下である。
式(1)中、R111は重合性基を含まない構造であってもよい。
また、R111は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は、これらの基の少なくとも1つと-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)2-、-NRN-、及び、ウレア基、の少なくとも1つとが結合した基であることが好ましい。RNは上述の通りである。
上記脂肪族炭化水素基としては、炭素数2~30の脂肪族飽和炭化水素基が好ましく、炭素数2~10の脂肪族飽和炭化水素基がより好ましい。
また、上記脂肪族炭化水素基としては、環員数が6~20の飽和脂肪族炭化水素環基が好ましい。
上記芳香族炭化素基としては、炭素数6~20の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6~12の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数6の芳香族炭化水素基がより好ましい。
これらの中でも、溶剤溶解性の観点からは、R111は脂肪族炭化水素環基又は芳香族炭化水素環基を含む基であることが好ましく、芳香族炭化水素環基を含む基であることがより好ましい。
【0093】
また、式(1)におけるR111は、得られる硬化膜の柔軟性の観点から、-Ar0-L0-Ar0-で表されることが好ましい。Ar0は、それぞれ独立に、芳香族炭化水素基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が特に好ましい)であり、フェニレン基が好ましい。L0は、上述の式(A2-3)におけるLA231と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0094】
式(1)におけるR111は、i線透過率の観点から下記式(51)又は式(61)で表される2価の有機基であることが好ましい。特に、i線透過率、入手のし易さの観点から式(61)で表される2価の有機基であることがより好ましい。
【0095】
【0096】
式(51)中、R50~R57はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は1価の有機基であり、R50~R57の少なくとも1つはフッ素原子、メチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、又は、トリフルオロメチル基であり、*はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表す。
【0097】
R50~R57の1価の有機基としては、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6)の無置換のアルキル基、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6)のフッ化アルキル基等が挙げられる。
【0098】
【0099】
式(61)中、R58及びR59は、それぞれ独立にフッ素原子、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、又は、トリフルオロメチル基である。
【0100】
式(1)におけるR111は、ジアミンに由来する構造であることが好ましい。
上記ジアミンとしては、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン;1,2-又は1,3-ジアミノシクロペンタン、1,2-、1,3-又は1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,2-、1,3-又は1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス-(3-アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルシクロヘキシルメタン又はイソホロンジアミン;メタ又はパラフェニレンジアミン、ジアミノトルエン、4,4’-又は3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-又は3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-又は3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-又は3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-又は3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル)、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’-ジアミノパラテルフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(2-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-10-ヒドロアントラセン、3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルエーテル、1,4-ジアミノアントラキノン、1,5-ジアミノアントラキノン、3,3-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-ジメチル-3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2-(3’,5’-ジアミノベンゾイルオキシ)エチルメタクリレート、2,4-又は2,5-ジアミノクメン、2,5-ジメチル-パラフェニレンジアミン、アセトグアナミン、2,3,5,6-テトラメチル-パラフェニレンジアミン、2,4,6-トリメチル-メタフェニレンジアミン、4,6-ジヒドロキシ-1,3-フェニレンジアミン、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、2,7-ジアミノフルオレン、2,5-ジアミノピリジン、1,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノ安息香酸、ジアミノ安息香酸のエステル、1,5-ジアミノナフタレン、ジアミノベンゾトリフルオライド、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)オクタフルオロブタン、1,5-ビス(4-アミノフェニル)デカフルオロペンタン、1,7-ビス(4-アミノフェニル)テトラデカフルオロヘプタン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(2-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、パラビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’-ビス(3-アミノ-5-トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロトリジン及び4,4’-ジアミノクアテルフェニルから選ばれる少なくとも1種のジアミンが挙げられる。
【0101】
また、国際公開第2017/038598号の段落0030~0031に記載のジアミン(DA-1)~(DA-18)も好ましい。
国際公開第2017/038598号の段落0032~0034に記載の2つ以上のアルキレングリコール単位を主鎖にもつジアミンも好ましく用いられる。
【0102】
また、上述の式(51)又は(61)の構造を与えるジアミンとしては、ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(フルオロ)-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル等が挙げられる。これらの1種を用いるか、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
また、以下のジアミンも好適に使用できる。
【化23】
【0104】
また、基材との密着性を向上させる目的で、ジアミン成分として、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(パラアミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサン等のシロキサン構造を有するジアミンを用いてもよい。
【0105】
-式(4)で表される繰返し単位-
特定樹脂は、式(4)で表される繰返し単位を更に含んでもよい。
特定樹脂が下記式(4)で表される繰返し単位を有する場合、特定樹脂は下記式(4)で表される繰返し単位を主鎖に含むことが好ましい。
ただし、上述の式(1-1)で表される繰返し単位は、式(4)で表される繰返し単位には該当しないものとする。
【化24】
式(4)中、R
131は、2価の有機基を表し、R
132は、4価の有機基を表す。
式(4)中、R
131及びR
132はそれぞれ、式(1)中のR
111及びR
115と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0106】
<<含有量>>
特定樹脂における他の繰返し単位の合計含有量は、特に限定されないが、特定樹脂の全質量に対して30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。上記合計含有量の下限は特に限定されず、0質量%以上であればよい。
また、得られる硬化膜の耐薬品性の観点から、特定樹脂の一態様として、他の繰返し単位を実質的に含有しない態様とすることも好ましい。
この場合、特定樹脂の全質量に対して、他の繰返し単位の合計含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。上記含有量の下限は特に限定されず、0質量%以上であればよい。
特定樹脂は、他の繰返し単位を1種単独で含んでもよいし、構造の異なる他のを2種以上含んでもよい。特定樹脂が、構造の異なる他の繰返し単位を2種以上含む場合、特定樹脂に含まれる全ての他の繰返し単位の合計含有量が、上記含有量の範囲に含まれることが好ましい。
【0107】
-末端構造-
特定樹脂の末端の構造は特に限定されないが、組成物の保存安定性を向上させるため、末端をモノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物などの末端封止剤で封止してもよい。これらの末端封止剤のうち、モノアミンを用いることが好ましい。モノアミンとしては、アニリン、2-エチニルアニリン、3-エチニルアニリン、4-エチニルアニリン、5-アミノ-8-ヒドロキシキノリン、1-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-4-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-カルボキシ-7-アミノナフタレン、1-カルボキシ-6-アミノナフタレン、1-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-カルボキシ-7-アミノナフタレン、2-カルボキシ-6-アミノナフタレン、2-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、4-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、6-アミノサリチル酸、2-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノ-4,6-ジヒドロキシピリミジン、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、2-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノール、4-アミノスチレンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよく、複数の末端封止剤を反応させることにより、複数の異なる末端基を導入してもよい。
【0108】
〔含有量〕
本発明の硬化性樹脂組成物における特定樹脂の含有量は、得られる硬化膜の破断伸びを向上させる観点からは、硬化性樹脂組成物の全固形分に対し、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましい。
上記含有量の上限としては、硬化性樹脂組成物の解像性を向上させる観点からは、99.5質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましく、98質量%以下であることが更に好ましく、97質量%以下であることが一層好ましく、95質量%以下であることがより一層好ましい。
【0109】
〔特定樹脂の物性〕
-分子量-
特定樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2,000~500,000であることが好ましく、5,000~200,000であることがより好ましく、10,000~100,000であることが更に好ましい。
特定樹脂の数平均分子量(Mn)は、800~250,000であることが好ましく、2,000~100,000であることがより好ましく、4,000~50,000であることが更に好ましい。
特定樹脂の分子量の分散度は、1.5~3.5が好ましく、2~3がより好ましい。
本明細書において、分子量の分散度とは、重量平均分子量を数平均分子量により除した値(重量平均分子量/数平均分子量)をいう。
【0110】
-酸価-
特定樹脂の酸価は、0~2.0mmol/gであることが好ましく、0~1.5mmol/gであることがより好ましく、0~1.0mmol/gとすることが更に好ましい。
硬化性樹脂組成物を、後述するアルカリ現像に用いる場合、特定樹脂の酸価は、1.2~7mmol/gであることが好ましく、1.5~6mmol/gであることがより好ましく、2~5mmol/gであることが更に好ましい。
本発明において、酸価とは、特定樹脂1gに含まれる酸基の量(mmol)をいう。
酸基とは、pH12以上のアルカリ(例えば水酸化ナトリウム)により中和される基をいう。また、上記酸基は、pKaが10以下である基であることが好ましい。
上記酸価は、公知の方法により測定され、例えば、JIS K 0070:1992に記載の方法により測定される。
上記酸基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
【0111】
-重合性基価-
1gの特定樹脂に含まれる重合性基のモル量(重合性基価、単位はmmol/g)は、0.05~10mmol/gであることが好ましく、0.1~5mmol/gであることがより好ましい。
特定樹脂が重合性基としてエチレン性不飽和結合を含む場合、1gの特定樹脂に含まれるエチレン性不飽和結合のモル量は、0.05~10mmol/gであることが好ましく、0.1~5mmol/gであることがより好ましい。
特定樹脂が重合性基として環状エーテル基、メチロール基、アルコキシメチル基等の重合性基を含む場合、1gの特定樹脂に含まれる上記重合性基のモル量は、0.05~10mmol/gであることが好ましく、0.1~5mmol/gであることがより好ましい。
【0112】
〔具体例〕
特定樹脂の具体例としては、後述の実施例において使用された特定樹脂が挙げられる。
【0113】
〔製造方法(式(1-2)で表される繰返し単位を有する特定樹脂の製造方法)〕
特定樹脂が式(1-2)で表される繰返し単位を有する場合、特定樹脂は、例えば、後述の実施例における合成例に示した合成方法により合成される。
また、式(1-2)で表される繰返し単位を有する特定樹脂の製造方法は、ジアミンと、4価カルボン酸化合物又はその誘導体とを反応させる工程(前駆体製造工程)を含むことが好ましい。
【0114】
-前駆体製造工程-
上記前駆体製造工程において用いられるジアミンとしては、下記式(DA-1)で表されるジアミンが挙げられる。
【化25】
式(DA-1)中、L
21は式(1-2)中のL
21と同義であり、好ましい態様も同様である。
また、式(1)の説明において記載したジアミンを更に用いることにより、式(1)で表される繰返し単位を特定樹脂に導入することもできる。
上記前駆体製造工程において用いられる4価カルボン酸化合物としては、カルボン酸二無水物であってもよいし、4つのカルボキシ基のうち2つに対してエステル化、ハロゲン化等の変性が行われた構造の化合物であってもよい。好ましくは、後述の式(DC-1)で表されるカルボン酸二無水物において、加水分解後の4つのカルボキシ基のうち、2つのカルボキシ基がエステル化された化合物が挙げられる。
上記エステル化により、上述の式(1-2)におけるR
22及びR
23が導入されていることが好ましい。
また、上記4つのカルボキシ基のうち2つがエステル化された化合物をハロゲン化剤を用いてハロゲン化させた後、ジアミンと反応させることが好ましい。
その他、前駆体製造工程における反応条件は、公知のエステル化の条件を参考に適宜決定することができる。
【0115】
また、前駆体製造工程においては、反応に際し、有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
有機溶剤としては、原料に応じて適宜定めることができるが、ピリジン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、N-メチル-2-ピロリドン及びN-エチル-2-ピロリドンが例示される。
【0116】
前駆体製造工程においては、固体を析出する工程を含んでいることが好ましい。具体的には、反応液中の特定樹脂を、水中に沈殿させ、テトラヒドロフラン等のポリイミド前駆体が可溶な溶剤に溶解させることによって、固体析出することができる。
【0117】
-ジアミン製造工程-
特定樹脂の製造方法は、2つのニトロ基、少なくとも1つの反応性基、及び、芳香族炭化水素基を有する化合物Aと、上記反応性基と結合を形成可能である基、及び、重合性基を有する化合物Bとを反応させ、化合物Aと化合物Bが結合した化合物Cを得た後に、上記化合物Cにおけるニトロ基を還元して、ジアミンを得る工程(ジアミン製造工程)を含んでもよい。
ジアミン製造工程において得られたジアミンが、前駆体製造工程におけるジアミンとして用いられる。
【0118】
化合物Aにおける反応性基としては、特に限定されないが、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等が挙げられる。
化合物Aは、2つのニトロ基と、少なくとも1つの反応性基とが、芳香族炭化水素基に直接結合した構造であることが好ましい。
【0119】
化合物Bにおける反応性基と結合を形成可能である基としては、特に限定されないが、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボン酸ハライド基、エポキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。
化合物Bにおける重合性基としては、上述の式(1-2)におけるL22に含まれる基として例示された基が挙げられる。
【0120】
化合物Cは化合物Aと化合物Bとの反応により得られる基であり、2つのニトロ基と、少なくとも1つの重合性基を含む基とを有する化合物である。
化合物Cにおけるニトロ基を還元することにより、ジアミン化合物が得られる。
還元方法としては、ベシャン還元、パラジウム、プラチナ、ニッケル等の金属触媒と水素ガス、ギ酸アンモニウム等の水素源を用いた水素添加反応、金属ヒドリドを還元剤とした還元方法など、公知の方法を用いることができる。
【0121】
例えば、後述する実施例におけるジニトロ体(A-1)の合成は、化合物Aである3,5-ジニトロベンゾイルクロリドと、化合物Bであるメタクリル酸2-ヒドロキシエチルとを反応させて化合物Cであるジニトロ体(A-1)を得る反応である。
また、後述する実施例におけるジアミン(AA-1)の合成は、化合物Cであるジニトロ体(A-1)における2つのニトロ基を還元してジアミン(AA-1)を得る反応である。
【0122】
-カルボン酸二無水物製造工程-
特定樹脂の製造方法は、ジアミン化合物と、1つのカルボン酸無水物基、及び、1つのカルボキシ基を有する化合物とを反応させ、アミド結合を2以上有するカルボン酸二無水物を得る工程(カルボン酸二無水物製造工程)を含んでもよい。
上記1つのカルボキシ基は、カルボン酸ハライド基であってもよい。
上記反応の詳細は、公知のアミド化方法を参考に決定すればよい。
例えば、後述する実施例における無水物(MA-1)の合成は、ジアミン化合物であるAA-1と、1つのカルボン酸無水物基、及び、1つのカルボン酸ハライド基を有する化合物である無水トリメリット酸クロリドとを反応して、アミド結合を2つ有する無水物(MA-1)を得る反応である。
得られるカルボン酸二無水物としては、下記式(DC-1)で表される化合物が挙げられる。
【化26】
式(DC-1)中、R
21は式(1-2)中のR
21と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0123】
〔製造方法(式(1-2)で表される繰返し単位を有する特定樹脂の製造方法)〕
特定樹脂が式(1-2)で表される繰返し単位を有する場合、特定樹脂は、例えば、後述の実施例における合成例に示した合成方法により合成される。
また、式(1-1)で表される繰返し単位を有する特定樹脂の製造方法は、上述の式(1-2)で表される繰返し単位を有する特定樹脂をイミド化するイミド化工程を含んでもよい。
【0124】
イミド化工程においては、上記前駆体製造工程等において得られた式(1-2)で表される繰返し単位を有する特定樹脂がイミド化され、式(1-1)で表される繰返し単位を有する特定樹脂が得られる。
イミド化工程は、熱イミド化(例えば、加熱によるイミド化)、化学イミド化(例えば、触媒を用いたイミド化)及びこれらの組み合わせによるイミド化のいずれであってもよく、例えば、アミン系化合物等の触媒の存在下で加熱することにより行われる。
また、イミド化工程において、例えば脱水剤を使用してもよい。脱水剤としては、無水酢酸等のカルボン酸無水物等が挙げられる。
その他、イミド化の詳細については、公知の方法により行うことができる。
【0125】
-他の製造方法-
また、式(1-1)で表される繰返し単位を有する特定樹脂の製造方法は、カルボン酸二無水物及びジアミン化合物の反応時に高温で加熱、脱水させ、1段階で樹脂を合成する方法であってもよい。
カルボン酸二無水物としては、例えば、上述の式(DC-1)で表されるカルボン酸二無水物が挙げられる。上記カルボン酸二無水物は、上述の4価カルボン酸製造工程において得られた化合物であることが好ましい。
ジアミン化合物としては、上述の式(DA-1)で表されるジアミン化合物を用いることができる。
更に、本発明において用いられる樹脂の製造方法は、カルボン酸二無水物、及び、ジイソシアネート化合物の反応時に高温で脱炭酸させ、1段階で樹脂を合成する方法であってもよい。
カルボン酸二無水物としては、例えば、上述の式(DC-1)で表されるカルボン酸二無水物が挙げられる。上記カルボン酸二無水物は、上述の4価カルボン酸製造工程において得られた化合物であることが好ましい。
ジイソシアネート化合物としては、上述の式(DA-1)で表される化合物における2つのアミノ基を、それぞれイソシアネート基に変更した化合物が挙げられる。
これらの製造方法の詳細は、公知のポリイミドの合成方法を参考にすることができる。
【0126】
また、本発明において用いられる樹脂の製造方法は、3つのカルボキシ基を有する化合物、又は、上記3つのカルボキシ基を有する化合物の誘導体と、第一のジアミン化合物、又は、ジイソシアネート化合物とを反応させて2つのイミド環構造と2つのカルボン酸とを有する化合物Dを得る工程、及び、上記化合物Dと、第二のジアミン化合物とを反応させて樹脂を得る工程、を含む製造方法であってもよい。
上記3つのカルボキシ基を有する化合物、又は、上記3つのカルボキシ基を有する化合物の誘導体としては、3つのカルボキシ基を有する化合物、1つのカルボキシ基と1つのカルボン酸無水物基とを有する化合物、1つのカルボン酸ハライド基と1つのカルボン酸無水物基とを有する化合物、1つのカルボン酸エステル基と1つのカルボン酸無水物基とを有する化合物、3つのカルボン酸エステル基を有する化合物、1つのカルボン酸ハライド基と2つのカルボン酸エステル基とを有する化合物等が挙げられる。
上記第一のジアミン化合物として、具体的には、上述の式(DA-1)で表されるジアミン化合物を用いることができる。
上記ジイソシアネート化合物として、具体的には、上述の式(DA-1)で表される化合物における2つのアミノ基を、それぞれイソシアネート基に変更した化合物が挙げられる。
上記反応の条件等は、公知のイミド化反応を参考に適宜決定すればよい。
【0127】
上記第二のジアミン化合物としては、下記式(DA-2)で表されるジアミン化合物が挙げられる。
【化27】
式(DA-2)中、L
3は式(R-1)中のL
3と同義であり、好ましい態様も同様である。
上記樹脂を得る工程における反応の条件は、公知のポリアミドの製造方法を参考に適宜決定すればよい。
【0128】
<重合開始剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、重合開始剤を含む。
重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましい。
【0129】
〔光重合開始剤〕
本発明の硬化性樹脂組成物は、重合開始剤として、光重合開始剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光ラジカル重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する光ラジカル重合開始剤が好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよい。
【0130】
光ラジカル重合開始剤は、約300~800nm(好ましくは330~500nm)の範囲内で少なくとも約50L・mol-1・cm-1のモル吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種含有していることが好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶剤を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0131】
光ラジカル重合開始剤としては、公知の化合物を任意に使用できる。例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物、トリハロメチル基を有する化合物など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノン、アゾ系化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、有機ホウ素化合物、鉄アレーン錯体などが挙げられる。これらの詳細については、特開2016-027357号公報の段落0165~0182、国際公開第2015/199219号の段落0138~0151の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0132】
ケトン化合物としては、例えば、特開2015-087611号公報の段落0087に記載の化合物が例示され、この内容は本明細書に組み込まれる。市販品では、カヤキュアーDETX(日本化薬(株)製)も好適に用いられる。
【0133】
本発明の一実施態様において、光ラジカル重合開始剤としては、ヒドロキシアセトフェノン化合物、アミノアセトフェノン化合物、及び、アシルホスフィン化合物を好適に用いることができる。より具体的には、例えば、特開平10-291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、特許第4225898号に記載のアシルホスフィンオキシド系開始剤を用いることができる。
【0134】
ヒドロキシアセトフェノン系開始剤としては、IRGACURE 184(IRGACUREは登録商標)、DAROCUR 1173、IRGACURE 500、IRGACURE-2959、IRGACURE 127、IRGACURE 727(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
【0135】
アミノアセトフェノン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE 907、IRGACURE 369、及び、IRGACURE 379(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
【0136】
アミノアセトフェノン系開始剤として、365nm又は405nm等の波長光源に吸収極大波長がマッチングされた特開2009-191179号公報に記載の化合物も用いることができる。
【0137】
アシルホスフィン系開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイドなどが挙げられる。また、市販品であるIRGACURE-819やIRGACURE-TPO(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
【0138】
メタロセン化合物としては、IRGACURE-784(BASF社製)などが例示される。
【0139】
光ラジカル重合開始剤として、より好ましくはオキシム化合物が挙げられる。オキシム化合物を用いることにより、露光ラチチュードをより効果的に向上させることが可能になる。オキシム化合物は、露光ラチチュード(露光マージン)が広く、かつ、光硬化促進剤としても働くため、特に好ましい。
【0140】
オキシム化合物の具体例としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物を用いることができる。
【0141】
好ましいオキシム化合物としては、例えば、下記の構造の化合物や、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。本発明の硬化性樹脂組成物においては、特に光ラジカル重合開始剤としてオキシム化合物(オキシム系の光重合開始剤)を用いることが好ましい。オキシム系の光重合開始剤は、分子内に >C=N-O-C(=O)- の連結基を有する。
【0142】
【0143】
市販品ではIRGACURE OXE 01、IRGACURE OXE 02、IRGACURE OXE 03、IRGACURE OXE 04(以上、BASF社製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光ラジカル重合開始剤2)も好適に用いられる。また、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI-831及びアデカアークルズNCI-930((株)ADEKA製)も用いることができる。また、DFI-091(ダイトーケミックス(株)製)を用いることができる。また、下記の構造のオキシム化合物を用いることもできる。
【化29】
【0144】
光重合開始剤としては、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物、特許06636081号に記載の化合物が挙げられる。
【0145】
光重合開始剤としては、カルバゾール環の少なくとも1つのベンゼン環がナフタレン環となった骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。そのようなオキシム化合物の具体例としては、国際公開第2013/083505号に記載の化合物が挙げられる。
【0146】
また、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることも可能である。そのようなオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載されている化合物、特表2014-500852号公報の段落0345に記載されている化合物24、36~40、特開2013-164471号公報の段落0101に記載されている化合物(C-3)などが挙げられる。
【0147】
最も好ましいオキシム化合物としては、特開2007-269779号公報に示される特定置換基を有するオキシム化合物や、特開2009-191061号公報に示されるチオアリール基を有するオキシム化合物などが挙げられる。
【0148】
光ラジカル重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム塩化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物及びその誘導体、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体及びその塩、ハロメチルオキサジアゾール化合物、3-アリール置換クマリン化合物よりなる群から選択される化合物が好ましい。
【0149】
更に好ましい光ラジカル重合開始剤は、トリハロメチルトリアジン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム塩化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物であり、トリハロメチルトリアジン化合物、α-アミノケトン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、ベンゾフェノン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が一層好ましく、メタロセン化合物又はオキシム化合物を用いるのがより一層好ましく、オキシム化合物が更に一層好ましい。
【0150】
また、光ラジカル重合開始剤は、ベンゾフェノン、N,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)等のN,N’-テトラアルキル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1,2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパノン-1等の芳香族ケトン、アルキルアントラキノン等の芳香環と縮環したキノン類、ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体などを用いることもできる。また、下記式(I)で表される化合物を用いることもできる。
【0151】
【0152】
式(I)中、RI00は、炭素数1~20のアルキル基、1個以上の酸素原子によって中断された炭素数2~20のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、フェニル基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、炭素数2~12のアルケニル基、1個以上の酸素原子によって中断された炭素数2~18のアルキル基及び炭素数1~4のアルキル基の少なくとも1つで置換されたフェニル基、又はビフェニルであり、RI01は、式(II)で表される基であるか、RI00と同じ基であり、RI02~RI04は各々独立に炭素数1~12のアルキル、炭素数1~12のアルコキシ基又はハロゲンである。
【0153】
【0154】
式中、RI05~RI07は、上記式(I)のRI02~RI04と同じである。
【0155】
また、光ラジカル重合開始剤は、国際公開第2015/125469号の段落0048~0055に記載の化合物を用いることもできる。
【0156】
光重合開始剤を含む場合、その含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量%であり、更に好ましくは0.5~15質量%であり、一層好ましくは1.0~10質量%である。
光重合開始剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。光重合開始剤を2種以上含有する場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0157】
<熱重合開始剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、熱重合開始剤を含んでもよく、特に熱ラジカル重合開始剤を含んでもよい。熱ラジカル重合開始剤は、熱のエネルギーによってラジカルを発生し、重合性を有する化合物の重合反応を開始又は促進させる化合物である。熱ラジカル重合開始剤を添加することによって、後述する加熱工程において、特定樹脂及び重合性化合物の重合反応を進行させることもできるので、より耐薬品性を向上できる。
【0158】
熱ラジカル重合開始剤として、具体的には、特開2008-063554号公報の段落0074~0118に記載されている化合物が挙げられる。
【0159】
熱重合開始剤を含む場合、その含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量%であり、更に好ましくは5~15質量%である。熱重合開始剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。熱重合開始剤を2種以上含有する場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0160】
〔光酸発生剤〕
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、重合開始剤として、光酸発生剤を含んでもよい。
光酸発生剤としては、露光により酸を発生するものであれば特に限定されるものではないが、キノンジアジド化合物、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o-ニトロベンジルスルホネート等のスルホネート化合物などを挙げることができる。
【0161】
キノンジアジド化合物としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合及びスルホンアミド結合の少なくとも一方により結合したものなどが挙げられる。本発明においては、例えば、これらポリヒドロキシ化合物やポリアミノ化合物の官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。
【0162】
本発明において、キノンジアジドは5-ナフトキノンジアジドスルホニル基、4-ナフトキノンジアジドスルホニル基のいずれも好ましく用いられる。4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のi線領域に吸収を持っており、i線露光に適している。5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のg線領域まで吸収が伸びており、g線露光に適している。本発明においては、露光する波長によって4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物、5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を選択することが好ましい。また、同一分子中に4-ナフトキノンジアジドスルホニル基、5-ナフトキノンジアジドスルホニル基を有するナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を含有してもよいし、4-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物と5-ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を含有してもよい。
【0163】
上記ナフトキノンジアジド化合物は、フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物と、キノンジアジドスルホン酸化合物とのエステル化反応によって合成可能であり、公知の方法により合成することができる。これらのナフトキノンジアジド化合物を使用することで解像度、感度、残膜率がより向上する。
上記ナフトキノンジアジド化合物としては、例えば、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸又は1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-4-スルホン酸、これらの化合物の塩又はエステル化合物等が挙げられる。
【0164】
オニウム塩化合物、又は、スルホネート化合物としては、特開2008-013646号公報の段落0064~0122に記載の化合物等が挙げられる。
その他、光酸発生剤としては市販品を使用してもよい。市販品としては、WPAG-145、WPAG-149、WPAG-170、WPAG-199、WPAG-336、WPAG-367、WPAG-370、WPAG-469、WPAG-638、WPAG-699(いずれも富士フイルム和光純薬(株)製)等が挙げられる。
【0165】
光酸発生剤を含む場合、その含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、0.1~20質量%であることがより好ましく、2~15質量%であることが更に好ましい。光酸発生剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。光酸発生剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0166】
<熱酸発生剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、重合開始剤として、熱酸発生剤を含んでもよい。
熱酸発生剤は、加熱により酸を発生し、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基又はアシルオキシメチル基を有する化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物及びベンゾオキサジン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物、又は、特定樹脂に含まれるメチロール基等の架橋反応を促進させる効果がある。
また、本発明の硬化性樹脂組成物が熱酸発生剤を含む場合、特定樹脂は重合性基としてメチロール基又はアルコキシメチル基を含むことが好ましい。
【0167】
熱酸発生剤の熱分解開始温度は、50℃~270℃が好ましく、50℃~250℃がより好ましい。また、硬化性樹脂組成物を基板に塗布した後の乾燥(プリベーク:約70~140℃)時には酸を発生せず、その後の露光、現像でパターニングした後の最終加熱(キュア:約100~400℃)時に酸を発生するものを熱酸発生剤として選択すると、現像時の感度低下を抑制できるため好ましい。
熱分解開始温度は、熱酸発生剤を耐圧カプセル中5℃/分で500℃まで加熱した場合に、最も温度が低い発熱ピークのピーク温度として求められる。
熱分解開始温度を測定する際に用いられる機器としては、Q2000(TAインスツルメント社製)等が挙げられる。
【0168】
熱酸発生剤から発生する酸は強酸が好ましく、例えば、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などのアリールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸、あるいはトリフルオロメタンスルホン酸などのハロアルキルスルホン酸などが好ましい。このような熱酸発生剤の例としては、特開2013-072935号公報の段落0055に記載のものが挙げられる。
【0169】
中でも、硬化膜中の残留が少なく硬化膜物性を低下させにくいという観点から、炭素数1~4のアルキルスルホン酸や炭素数1~4のハロアルキルスルホン酸を発生するものがより好ましく、メタンスルホン酸(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウム、メタンスルホン酸(4-((メトキシカルボニル)オキシ)フェニル)ジメチルスルホニウム、メタンスルホン酸ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウム、メタンスルホン酸ベンジル(4-((メトキシカルボニル)オキシ)フェニル)メチルスルホニウム、メタンスルホン酸(4-ヒドロキシフェニル)メチル((2-メチルフェニル)メチル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(4-((メトキシカルボニル)オキシ)フェニル)ジメチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ベンジル(4-((メトキシカルボニル)オキシ)フェニル)メチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(4-ヒドロキシフェニル)メチル((2-メチルフェニル)メチル)スルホニウム、3-(5-(((プロピルスルホニル)オキシ)イミノ)チオフェン-2(5H)-イリデン)-2-(o-トリル)プロパンニトリル、2,2-ビス(3-(メタンスルホニルアミノ)-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが、熱酸発生剤として好ましい。
【0170】
また、特開2013-167742号公報の段落0059に記載の化合物も熱酸発生剤として好ましい。
【0171】
熱酸発生剤の含有量は、特定樹脂100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。0.01質量部以上含有することで、架橋反応が促進されるため、硬化膜の機械特性及び耐薬品性をより向上させることができる。また、硬化膜の電気絶縁性の観点から、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。
【0172】
<重合性化合物>
本発明の硬化性樹脂組成物は重合性化合物を含むことが好ましい。
本明細書において、上述の特定樹脂に該当する化合物は、重合性化合物には該当しないものとする。
重合性化合物としては、多官能重合性化合物が好ましい。本明細書において、多官能重合性化合物とは、重合性基を2以上有する化合物をいう。
また、重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物が好ましく、ラジカル重合性基を2以上有する化合物がより好ましい。
【0173】
〔ラジカル重合性化合物〕
重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物を用いることができる。ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を有する化合物である。ラジカル重合性基としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイル基などのエチレン性不飽和結合を有する基が挙げられる。ラジカル重合性基は、(メタ)アクリロイル基が好ましく、反応性の観点からは、(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
【0174】
ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基の数は、1個でもよく、2個以上でもよいが、ラジカル重合性化合物はラジカル重合性基を2個以上有することが好ましく、3個以上有することがより好ましい。上限は、15個以下が好ましく、10個以下がより好ましく、8個以下が更に好ましい。
【0175】
ラジカル重合性化合物の分子量は、2,000以下が好ましく、1,500以下がより好ましく、900以下が更に好ましい。ラジカル重合性化合物の分子量の下限は、100以上が好ましい。
【0176】
本発明の硬化性樹脂組成物は、現像性の観点から、ラジカル重合性基を2個以上含む2官能以上のラジカル重合性化合物を少なくとも1種含むことが好ましく、3官能以上のラジカル重合性化合物を少なくとも1種含むことがより好ましい。また、2官能のラジカル重合性化合物と3官能以上のラジカル重合性化合物との混合物であってもよい。例えば2官能以上の重合性モノマーの官能基数とは、1分子中におけるラジカル重合性基の数が2個以上であることを意味する。
【0177】
ラジカル重合性化合物の具体例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)やそのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル、及び不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類である。また、ヒドロキシ基やアミノ基、スルファニル基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類又はエポキシ類との付加反応物や、単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更に、ハロゲノ基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等のビニルベンゼン誘導体、ビニルエーテル、アリルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。具体例としては、特開2016-027357号公報の段落0113~0122の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0178】
また、ラジカル重合性化合物は、常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物も好ましい。その例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後、(メタ)アクリレート化した化合物、特公昭48-041708号公報、特公昭50-006034号公報、特開昭51-037193号各公報に記載されているようなウレタン(メタ)アクリレート類、特開昭48-064183号、特公昭49-043191号、特公昭52-030490号各公報に記載されているポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレート及びこれらの混合物を挙げることができる。また、特開2008-292970号公報の段落0254~0257に記載の化合物も好適である。また、多官能カルボン酸にグリシジル(メタ)アクリレート等の環状エーテル基とエチレン性不飽和結合を有する化合物を反応させて得られる多官能(メタ)アクリレートなども挙げることができる。
【0179】
また、上述以外の好ましいラジカル重合性化合物として、特開2010-160418号公報、特開2010-129825号公報、特許第4364216号公報等に記載される、フルオレン環を有し、エチレン性不飽和結合を有する基を2個以上有する化合物や、カルド樹脂も使用することが可能である。
【0180】
更に、その他の例としては、特公昭46-043946号公報、特公平01-040337号公報、特公平01-040336号公報に記載の特定の不飽和化合物や、特開平02-025493号公報に記載のビニルホスホン酸系化合物等もあげることができる。また、特開昭61-022048号公報に記載のペルフルオロアルキル基を含む化合物を用いることもできる。更に日本接着協会誌 vol.20、No.7、300~308ページ(1984年)に光重合性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0181】
上記のほか、特開2015-034964号公報の段落0048~0051に記載の化合物、国際公開第2015/199219号の段落0087~0131に記載の化合物も好ましく用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0182】
また、特開平10-062986号公報において式(1)及び式(2)としてその具体例と共に記載の、多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後に(メタ)アクリレート化した化合物も、ラジカル重合性化合物として用いることができる。
【0183】
更に、特開2015-187211号公報の段落0104~0131に記載の化合物も他のラジカル重合性化合物として用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0184】
ラジカル重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては KAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては KAYARAD D-320;日本化薬(株)製、A-TMMT:新中村化学工業(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、A-DPH;新中村化学工業社製)、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を介して結合している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
【0185】
ラジカル重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR-494、エチレンオキシ鎖を4個有する2官能メタクリレートであるサートマー社製のSR-209、231、239、日本化薬(株)製のペンチレンオキシ鎖を6個有する6官能アクリレートであるDPCA-60、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA-330、ウレタンオリゴマーUAS-10、UAB-140(日本製紙社製)、NKエステルM-40G、NKエステル4G、NKエステルM-9300、NKエステルA-9300、UA-7200(新中村化学工業社製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600(共栄社化学社製)、ブレンマーPME400(日油(株)製)などが挙げられる。
【0186】
ラジカル重合性化合物としては、特公昭48-041708号公報、特開昭51-037193号公報、特公平02-032293号公報、特公平02-016765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-049860号公報、特公昭56-017654号公報、特公昭62-039417号公報、特公昭62-039418号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、ラジカル重合性化合物として、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平01-105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する化合物を用いることもできる。
【0187】
ラジカル重合性化合物は、カルボキシ基、リン酸基等の酸基を有するラジカル重合性化合物であってもよい。酸基を有するラジカル重合性化合物は、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルが好ましく、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシ基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせたラジカル重合性化合物がより好ましい。特に好ましくは、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシ基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせたラジカル重合性化合物において、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールである化合物である。市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製の多塩基酸変性アクリルオリゴマーとして、M-510、M-520などが挙げられる。
【0188】
酸基を有するラジカル重合性化合物の好ましい酸価は、0.1~40mgKOH/gであり、特に好ましくは5~30mgKOH/gである。ラジカル重合性化合物の酸価が上記範囲であれば、製造上の取扱性に優れ、更には、現像性に優れる。また、重合性が良好である。なお、アルカリ現像する場合の現像速度の観点では、酸基を有するラジカル架橋剤の好ましい酸価は、0.1~300mgKOH/gであり、特に好ましくは1~100mgKOH/gである。上記酸価は、JIS K 0070:1992の記載に準拠して測定される。
【0189】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化膜の弾性率制御に伴う反り抑制の観点から、ラジカル重合性化合物として、単官能ラジカル重合性化合物を好ましく用いることができる。単官能ラジカル重合性化合物としては、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のN-ビニル化合物類、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物類等が好ましく用いられる。単官能ラジカル重合性化合物としては、露光前の揮発を抑制するため、常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物も好ましい。また、パターンの解像性と膜の伸縮性の観点から、2官能のメタアクリレート又はアクリレートを用いることも好ましい。
具体的な化合物としては、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、PEG200ジアクリレート、PEG200ジメタクリレート、PEG600ジアクリレート、PEG600ジメタクリレート、ポリテトラエチレングリコールジアクリレート、ポリテトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジメタクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジメタクリレート、2-ヒドロキシー3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸変性ジメタクリレート、その他ウレタン結合を有する2官能アクリレート、ウレタン結合を有する2官能メタクリレートを使用することができる。これらは必要に応じ、2種以上を混合し使用することができる。なお、例えばPEG200ジアクリレートとは、ポリエチレングリコールジアクリレートであって、ポリエチレングリコール鎖の式量が200程度のものをいう。
【0190】
〔上述したラジカル重合性化合物以外の重合性化合物〕
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述したラジカル重合性化合物以外の重合性化合物を更に含むことができる。上述したラジカル重合性化合物以外の重合性化合物としては、ヒドロキシメチル基(メチロール基)、アルコキシメチル基又はアシルオキシメチル基を有する化合物;エポキシ化合物;オキセタン化合物;ベンゾオキサジン化合物が挙げられる。
【0191】
-ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基又はアシルオキシメチル基を有する化合物-
ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基又はアシルオキシメチル基を有する化合物としては、下記式(AM1)、(AM4)又は(AM5)で示される化合物が好ましい。
【0192】
【化32】
(式中、tは、1~20の整数を示し、R
104は炭素数1~200のt価の有機基を示し、R
105は、-OR
106又は、-OCO-R
107で示される基を示し、R
106は、水素原子又は炭素数1~10の有機基を示し、R
107は、炭素数1~10の有機基を示す。)
【化33】
(式中、R
404は炭素数1~200の2価の有機基を示し、R
405は、-OR
406又は、-OCO-R
407で示される基を示し、R
406は、水素原子又は炭素数1~10の有機基を示し、R
407は、炭素数1~10の有機基を示す。)
【化34】
(式中uは3~8の整数を示し、R
504は炭素数1~200のu価の有機基を示し、R
505は、-OR
506又は、-OCO-R
507で示される基を示し、R
506は、水素原子又は炭素数1~10の有機基を示し、R
507は、炭素数1~10の有機基を示す。)
【0193】
式(AM4)で示される化合物の具体例としては、46DMOC、46DMOEP(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)、DML-MBPC、DML-MBOC、DML-OCHP、DML-PCHP、DML-PC、DML-PTBP、DML-34X、DML-EP、DML-POP、dimethylolBisOC-P、DML-PFP、DML-PSBP、DML-MTrisPC(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、NIKALAC MX-290(商品名、(株)三和ケミカル製)、2,6-dimethoxymethyl-4-t-butylphenol、2,6-dimethoxymethyl-p-cresol、2,6-diacetoxymethyl-p-cresolなどが挙げられる。
【0194】
また、式(AM5)で示される化合物の具体例としては、TriML-P、TriML-35XL、TML-HQ、TML-BP、TML-pp-BPF、TML-BPA、TMOM-BP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP、HMOM-TPPHBA、HMOM-TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、TM-BIP-A(商品名、旭有機材工業(株)製)、NIKALAC MX-280、NIKALAC MX-270、NIKALAC MW-100LM(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)が挙げられる。
【0195】
-エポキシ化合物(エポキシ基を有する化合物)-
エポキシ化合物としては、一分子中にエポキシ基を2以上有する化合物であることが好ましい。エポキシ基は、200℃以下で架橋反応し、かつ、架橋に由来する脱水反応が起こらないため膜収縮が起きにくい。このため、エポキシ化合物を含有することは、硬化性樹脂組成物の低温硬化及び反りの抑制に効果的である。
【0196】
エポキシ化合物は、ポリエチレンオキサイド基を含有することが好ましい。これにより、より弾性率が低下し、また反りを抑制することができる。ポリエチレンオキサイド基は、エチレンオキサイドの繰返し単位数が2以上のものを意味し、繰返し単位数が2~15であることが好ましい。
【0197】
エポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;プロピレングリコールジグリシジルエーテル等のアルキレングリコール型エポキシ樹脂;ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコール型エポキシ樹脂;ポリメチル(グリシジロキシプロピル)シロキサン等のエポキシ基含有シリコーンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。具体的には、エピクロン(登録商標)850-S、エピクロン(登録商標)HP-4032、エピクロン(登録商標)HP-7200、エピクロン(登録商標)HP-820、エピクロン(登録商標)HP-4700、エピクロン(登録商標)EXA-4710、エピクロン(登録商標)HP-4770、エピクロン(登録商標)EXA-859CRP、エピクロン(登録商標)EXA-1514、エピクロン(登録商標)EXA-4880、エピクロン(登録商標)EXA-4850-150、エピクロンEXA-4850-1000、エピクロン(登録商標)EXA-4816、エピクロン(登録商標)EXA-4822、エピクロン(登録商標)EXA-830LVP、エピクロン(登録商標)EXA-8183、エピクロン(登録商標)EXA-8169、エピクロン(登録商標)N-660、エピクロン(登録商標)N-665-EXP-S、エピクロン(登録商標)N-740、リカレジン(登録商標)BEO-20E(以上商品名、DIC(株)製)、リカレジン(登録商標)BEO-60E、リカレジン(登録商標)HBE-100、リカレジン(登録商標)DME-100、リカレジン(登録商標)L-200(商品名、新日本理化(株))、EP-4003S、EP-4000S、EP-4088S、EP-3950S(以上商品名、(株)ADEKA製)などが挙げられる。この中でも、ポリエチレンオキサイド基を含有するエポキシ樹脂が、反りの抑制及び耐熱性に優れる点で好ましい。例えば、エピクロン(登録商標)EXA-4880、エピクロン(登録商標)EXA-4822、リカレジン(登録商標)BEO-60Eは、ポリエチレンオキサイド基を含有するので好ましい。
【0198】
-オキセタン化合物(オキセタニル基を有する化合物)-
オキセタン化合物としては、一分子中にオキセタン環を2つ以上有する化合物、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルメチル)オキセタン、1,4-ベンゼンジカルボン酸-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エステル等を挙げることができる。具体的な例としては、東亞合成株式会社製のアロンオキセタンシリーズ(例えば、OXT-121、OXT-221、OXT-191、OXT-223)が好適に使用することができ、これらは単独で、又は2種以上混合してもよい。
【0199】
-ベンゾオキサジン化合物(ベンゾオキサゾリル基を有する化合物)-
ベンゾオキサジン化合物は、開環付加反応に由来する架橋反応のため、硬化時に脱ガスが発生せず、更に熱収縮を小さくして反りの発生が抑えられることから好ましい。
【0200】
ベンゾオキサジン化合物の好ましい例としては、B-a型ベンゾオキサジン、B-m型ベンゾオキサジン、P-d型ベンゾオキサジン、F-a型ベンゾオキサジン(以上、商品名、四国化成工業社製)、ポリヒドロキシスチレン樹脂のベンゾオキサジン付加物、フェノールノボラック型ジヒドロベンゾオキサジン化合物が挙げられる。これらは単独で用いるか、又は2種以上混合してもよい。
【0201】
重合性化合物の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、0質量%超60質量%以下であることが好ましい。下限は5質量%以上がより好ましい。上限は、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。
【0202】
重合性化合物は1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を併用する場合には合計量が上記の範囲となることが好ましい。
【0203】
<溶剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤は、公知の溶剤を任意に使用できる。溶剤は有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、スルホキシド類、アミド類、ウレア類、アルコール類などの化合物が挙げられる。
【0204】
エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸へキシル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、アルキルオキシ酢酸アルキル(例えば、アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチル及び2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等が好適なものとして挙げられる。
【0205】
エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等が好適なものとして挙げられる。
【0206】
ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、3-メチルシクロヘキサノン、レボグルコセノン、ジヒドロレボグルコセノン等が好適なものとして挙げられる。
【0207】
芳香族炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン、アニソール、リモネン等が好適なものとして挙げられる。
【0208】
スルホキシド類として、例えば、ジメチルスルホキシドが好適なものとして挙げられる。
【0209】
アミド類として、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、N-ホルミルモルホリン、N-アセチルモルホリン等が好適なものとして挙げられる。
【0210】
ウレア類として、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が好適なものとして挙げられる。
【0211】
アルコール類として、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n-アミルアルコール、メチルアミルアルコール、および、ダイアセトンアルコール等が挙げられる。
【0212】
溶剤は、塗布面性状の改良などの観点から、2種以上を混合する形態も好ましい。
【0213】
本発明では、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される1種の溶剤、又は、2種以上で構成される混合溶剤が好ましい。ジメチルスルホキシドとγ-ブチロラクトンとの併用が特に好ましい。また、N-メチル-2-ピロリドンと乳酸エチル、N-メチル-2-ピロリドンと乳酸エチル、ジアセトンアルコールと乳酸エチル、シクロペンタノンとγ-ブチロラクトン、の組み合わせもそれぞれ好ましい。
【0214】
溶剤の含有量は、塗布性の観点から、本発明の硬化性樹脂組成物の全固形分濃度が5~80質量%になる量とすることが好ましく、5~75質量%となる量にすることがより好ましく、10~70質量%となる量にすることが更に好ましく、40~70質量%となるようにすることが一層好ましい。溶剤含有量は、塗膜の所望の厚さと塗布方法に応じて調節すればよい。
【0215】
溶剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。溶剤を2種以上含有する場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0216】
<他の樹脂>
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述した特定樹脂とは異なる、他の樹脂(以下、単に「他の樹脂」ともいう。)を含んでもよい。
他の樹脂としては、特定樹脂とは別種のポリイミド、特定樹脂とは別種のポリイミド前駆体、ポリシロキサン、シロキサン構造を含む樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
例えば、アクリル樹脂を更に加えることにより、塗布性に優れた組成物が得られ、また、耐薬品性に優れた硬化膜が得られる。
例えば、後述する重合性化合物に代えて、又は、後述する重合性化合物に加えて、重量平均分子量が20,000以下の重合性基価の高いアクリル系樹脂を組成物に添加することにより、組成物の塗布性、硬化膜の耐薬品性等を向上させることができる。
【0217】
〔ポリイミド(他の樹脂)〕
得られる硬化膜の膜強度の観点からは、他の樹脂であるポリイミドは、上述した式(4)で表される繰返し単位を有することが好ましい。
ポリイミドにおいて、式(4)で表される繰返し単位は1種であってもよいが、2種以上であってもよい。また、ポリイミドは、上記の式(4)の繰返し単位のほかに、他の種類の繰返し単位も含んでもよい。
【0218】
本発明におけるポリイミドの一実施形態として、全繰返し単位の50モル%以上、更には70モル%以上、特には90モル%以上が式(4)で表される繰返し単位であるポリイミド前駆体が例示される。上限としては100モル%以下が実際的である。
【0219】
ポリイミドの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2,000~500,000であり、より好ましくは5,000~100,000であり、更に好ましくは10,000~50,000である。また、数平均分子量(Mn)は、好ましくは800~250,000であり、より好ましくは、2,000~50,000であり、更に好ましくは、4,000~25,000である。
【0220】
ポリイミドの分子量の分散度は、1.5~3.5が好ましく、2~3がより好ましい。
【0221】
ポリイミドは、例えば、後述する他の樹脂であるポリイミド前駆体を、加熱等により環化することにより得られる。
【0222】
〔ポリイミド前駆体(他の樹脂)〕
得られる硬化膜の膜強度の観点からは、ポリイミド前駆体は、上述した式(1)で表される繰返し単位を有することが好ましい。
【0223】
ポリイミド前駆体において、式(1)で表される繰返し単位は1種であってもよいが、2種以上であってもよい。また、式(1)で表される繰返し単位の構造異性体を含んでいてもよい。また、ポリイミド前駆体は、上記の式(1)の繰返し単位のほかに、他の種類の繰返し単位も含んでもよい。
【0224】
本発明におけるポリイミド前駆体の一実施形態として、全繰返し単位の50モル%以上、更には70モル%以上、特には90モル%以上が式(1)で表される繰返し単位であるポリイミド前駆体が例示される。上限としては100モル%以下が実際的である。
【0225】
ポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2,000~500,000であり、より好ましくは5,000~100,000であり、更に好ましくは10,000~50,000である。また、数平均分子量(Mn)は、好ましくは800~250,000であり、より好ましくは、2,000~50,000であり、更に好ましくは、4,000~25,000である。
【0226】
ポリイミド前駆体の分子量の分散度は、1.5~3.5が好ましく、2~3がより好ましい。
【0227】
ポリイミド前駆体は、ジカルボン酸又はジカルボン酸誘導体とジアミンとを反応させて得られる。好ましくは、ジカルボン酸又はジカルボン酸誘導体を、ハロゲン化剤を用いてハロゲン化させた後、ジアミンと反応させて得られる。
【0228】
ポリイミド前駆体の製造方法では、反応に際し、有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
【0229】
有機溶剤としては、原料に応じて適宜定めることができるが、ピリジン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、N-メチルピロリドン及びN-エチルピロリドンが例示される。
【0230】
ポリイミド前駆体の製造に際し、固体を析出する工程を含んでいることが好ましい。具体的には、反応液中のポリイミド前駆体を、水中に沈殿させ、テトラヒドロフラン等のポリイミド前駆体が可溶な溶剤に溶解させることによって、固体析出することができる。
【0231】
本発明の硬化性樹脂組成物が他の樹脂を含む場合、他の樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物の全固形分に対し、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましく、2質量%以上であることが一層好ましく、5質量%以上であることがより一層好ましく、10質量%以上であることが更に一層好ましい。
また、本発明の硬化性樹脂組成物における、他の樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物の全固形分に対し、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以下であることが一層好ましく、50質量%以下であることがより一層好ましい。
また、本発明の硬化性樹脂組成物の好ましい一態様として、他の樹脂の含有量が低含有量である態様とすることもできる。上記態様において、他の樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物の全固形分に対し、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが一層好ましく、1質量%以下であることがより一層好ましい。上記含有量の下限は特に限定されず、0質量%以上であればよい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、他の樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0232】
<オニウム塩>
本発明の硬化性樹脂組成物は、オニウム塩を含むことが好ましい。
特に、硬化性樹脂組成物が特定樹脂として式(1-2)で表される繰返し単位を有する樹脂を含む場合、硬化性樹脂組成物は熱塩基発生剤を含むことが好ましい。
オニウム塩の種類等は特に定めるものではないが、アンモニウム塩、イミニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩又はホスホニウム塩が好ましく挙げられる。
これらの中でも、熱安定性が高い観点からはアンモニウム塩又はイミニウム塩が好ましく、ポリマーとの相溶性の観点からはスルホニウム塩、ヨードニウム塩又はホスホニウム塩が好ましい。
【0233】
また、オニウム塩はオニウム構造を有するカチオンとアニオンとの塩であり、上記カチオンとアニオンとは、共有結合を介して結合していてもよいし、共有結合を介して結合していなくてもよい。
すなわち、オニウム塩は、同一の分子構造内に、カチオン部と、アニオン部と、を有する分子内塩であってもよいし、それぞれ別分子であるカチオン分子と、アニオン分子と、がイオン結合した分子間塩であってもよいが、分子間塩であることが好ましい。また、本発明の硬化性樹脂組成物において、上記カチオン部又はカチオン分子と、上記アニオン部又はアニオン分子と、はイオン結合により結合されていてもよいし、解離していてもよい。
オニウム塩におけるカチオンとしては、アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン又はホスホニウムカチオンが好ましく、テトラアルキルアンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオンよりなる群から選択される少なくとも1種のカチオンがより好ましい。
【0234】
本発明において用いられるオニウム塩は、熱塩基発生剤であってもよい。
熱塩基発生剤とは、加熱により塩基を発生する化合物をいい、例えば、40℃以上に加熱すると塩基を発生する酸性化合物等が挙げられる。
【0235】
〔アンモニウム塩〕
本発明において、アンモニウム塩とは、アンモニウムカチオンと、アニオンとの塩を意味する。
【0236】
-アンモニウムカチオン-
アンモニウムカチオンとしては、第四級アンモニウムカチオンが好ましい。
また、アンモニウムカチオンとしては、下記式(101)で表されるカチオンが好ましい。
【化35】
式(101)中、R
1~R
4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表し、R
1~R
4の少なくとも2つはそれぞれ結合して環を形成してもよい。
【0237】
式(101)中、R1~R4はそれぞれ独立に、炭化水素基であることが好ましく、アルキル基又はアリール基であることがより好ましく、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基であることが更に好ましい。R1~R4は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、ヒドロキシ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基等が挙げられる。
R1~R4の少なくとも2つはそれぞれ結合して環を形成する場合、上記環はヘテロ原子を含んでもよい。上記ヘテロ原子としては、窒素原子が挙げられる。
【0238】
アンモニウムカチオンは、下記式(Y1-1)及び(Y1-2)のいずれかで表されることが好ましい。
【化36】
【0239】
式(Y1-1)及び(Y1-2)において、R101は、n価の有機基を表し、R1は式(101)におけるR1と同義であり、Ar101及びAr102はそれぞれ独立に、アリール基を表し、nは、1以上の整数を表す。
式(Y1-1)において、R101は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、又は、これらが結合した構造からn個の水素原子を除いた基であることが好ましく、炭素数2~30の飽和脂肪族炭化水素、ベンゼン又はナフタレンからn個の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
式(Y1-1)において、nは1~4であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
式(Y1-2)において、Ar101及びAr102はそれぞれ独立に、フェニル基又はナフチル基であることが好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0240】
-アニオン-
アンモニウム塩におけるアニオンとしては、カルボン酸アニオン、フェノールアニオン、リン酸アニオン及び硫酸アニオンから選ばれる1種が好ましく、塩の安定性と熱分解性を両立させられるという理由からカルボン酸アニオンがより好ましい。すなわち、アンモニウム塩は、アンモニウムカチオンとカルボン酸アニオンとの塩がより好ましい。
カルボン酸アニオンは、2個以上のカルボキシ基を持つ2価以上のカルボン酸のアニオンが好ましく、2価のカルボン酸のアニオンがより好ましい。この態様によれば、硬化性樹脂組成物の安定性、硬化性及び現像性をより向上できる。特に、2価のカルボン酸のアニオンを用いることで、硬化性樹脂組成物の安定性、硬化性及び現像性を更に向上できる。
【0241】
カルボン酸アニオンは、下記式(X1)で表されることが好ましい。
【化37】
式(X1)において、EWGは、電子求引性基を表す。
【0242】
本実施形態において電子求引性基とは、ハメットの置換基定数σmが正の値を示すものを意味する。ここでσmは、都野雄甫総説、有機合成化学協会誌第23巻第8号(1965)p.631-642に詳しく説明されている。なお、本実施形態における電子求引性基は、上記文献に記載された置換基に限定されるものではない。
σmが正の値を示す置換基の例としては、CF3基(σm=0.43)、CF3C(=O)基(σm=0.63)、HC≡C基(σm=0.21)、CH2=CH基(σm=0.06)、Ac基(σm=0.38)、MeOC(=O)基(σm=0.37)、MeC(=O)CH=CH基(σm=0.21)、PhC(=O)基(σm=0.34)、H2NC(=O)CH2基(σm=0.06)などが挙げられる。なお、Meはメチル基を表し、Acはアセチル基を表し、Phはフェニル基を表す(以下、同じ)。
【0243】
EWGは、下記式(EWG-1)~(EWG-6)で表される基であることが好ましい。
【化38】
式(EWG-1)~(EWG-6)中、R
x1~R
x3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヒドロキシ基又はカルボキシ基を表し、Arは芳香族基を表す。
【0244】
本発明において、カルボン酸アニオンは、下記式(XA)で表されることが好ましい。
【化39】
式(XA)において、L
10は、単結合、又は、アルキレン基、アルケニレン基、芳香族基、-NR
X-及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる2価の連結基を表し、R
Xは、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を表す。
【0245】
カルボン酸アニオンの具体例としては、マレイン酸アニオン、フタル酸アニオン、N-フェニルイミノ二酢酸アニオン及びシュウ酸アニオンが挙げられる。
【0246】
特定樹脂の環化が低温で行われやすく、また、硬化性樹脂組成物の保存安定性が向上しやすい観点から、本発明におけるオニウム塩は、カチオンとしてアンモニウムカチオンを含み、上記オニウム塩がアニオンとして、共役酸のpKa(pKaH)が2.5以下であるアニオンを含むことが好ましく、1.8以下であるアニオンを含むことがより好ましい。
上記pKaの下限は特に限定されないが、発生する塩基が中和されにくく、特定樹脂などの環化効率を良好にするという観点からは、-3以上であることが好ましく、-2以上であることがより好ましい。
上記pKaとしては、Determination of Organic Structures by Physical Methods(著者:Brown, H. C., McDaniel, D. H., Hafliger, O., Nachod, F. C.; 編纂:Braude, E. A., Nachod, F. C.; Academic Press, New York, 1955)や、Data for Biochemical Research(著者:Dawson, R.M.C.et al; Oxford, Clarendon Press, 1959)に記載の値を参照することができる。これらの文献に記載の無い化合物については、ACD/pKa(ACD/Labs製)のソフトを用いて構造式より算出した値を用いることとする。
【0247】
アンモニウム塩の具体例としては、以下の化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化40】
【0248】
〔イミニウム塩〕
本発明において、イミニウム塩とは、イミニウムカチオンと、アニオンとの塩を意味する。アニオンとしては、上述のアンモニウム塩におけるアニオンと同様のものが例示され、好ましい態様も同様である。
【0249】
-イミニウムカチオン-
イミニウムカチオンとしては、ピリジニウムカチオンが好ましい。
また、イミニウムカチオンとしては、下記式(102)で表されるカチオンも好ましい。
【化41】
【0250】
式(102)中、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表し、R7は炭化水素基を表し、R5~R7の少なくとも2つはそれぞれ結合して環を形成してもよい。
式(102)中、R5及びR6は上述の式(101)におけるR1~R4と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(102)中、R7はR5及びR6の少なくとも1つと結合して環を形成することが好ましい。上記環はヘテロ原子を含んでもよい。上記ヘテロ原子としては、窒素原子が挙げられる。また、上記環としてはピリジン環が好ましい。
【0251】
イミニウムカチオンは、下記式(Y1-3)~(Y1-5)のいずれかで表されるものであることが好ましい。
【化42】
式(Y1-3)~(Y1-5)において、R
101は、n価の有機基を表し、R
5は式(102)におけるR
5と同義であり、R
7は式(102)におけるR
7と同義であり、nは1以上の整数を表し、mは0以上の整数を表す。
式(Y1-3)において、R
101は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、又は、これらが結合した構造からn個の水素原子を除いた基であることが好ましく、炭素数2~30の飽和脂肪族炭化水素、ベンゼン又はナフタレンからn個の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
式(Y1-3)において、nは1~4であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
式(Y1-5)において、mは0~4であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
【0252】
イミニウム塩の具体例としては、以下の化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化43】
【0253】
〔スルホニウム塩〕
本発明において、スルホニウム塩とは、スルホニウムカチオンと、アニオンとの塩を意味する。アニオンとしては、上述のアンモニウム塩におけるアニオンと同様のものが例示され、好ましい態様も同様である。
【0254】
-スルホニウムカチオン-
スルホニウムカチオンとしては、第三級スルホニウムカチオンが好ましく、トリアリールスルホニウムカチオンがより好ましい。
また、スルホニウムカチオンとしては、下記式(103)で表されるカチオンが好ましい。
【化44】
【0255】
式(103)中、R8~R10はそれぞれ独立に炭化水素基を表す。
R8~R10はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基であることがより好ましく、炭素数6~12のアリール基であることが更に好ましく、フェニル基であることが更に好ましい。
R8~R10は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、ヒドロキシ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、置換基として、アルキル基、又は、アルコキシ基を有することが好ましく、分岐アルキル基又はアルコキシ基を有することがより好ましく、炭素数3~10の分岐アルキル基、又は、炭素数1~10のアルコキシ基を有することが更に好ましい。
R8~R10は同一の基であっても、異なる基であってもよいが、合成適性上の観点からは、同一の基であることが好ましい。
【0256】
〔ヨードニウム塩〕
本発明において、ヨードニウム塩とは、ヨードニウムカチオンと、アニオンとの塩を意味する。アニオンとしては、上述のアンモニウム塩におけるアニオンと同様のものが例示され、好ましい態様も同様である。
【0257】
-ヨードニウムカチオン-
ヨードニウムカチオンとしては、ジアリールヨードニウムカチオンが好ましい。
また、ヨードニウムカチオンとしては、下記式(104)で表されるカチオンが好ましい。
【化45】
【0258】
式(104)中、R11及びR12はそれぞれ独立に炭化水素基を表す。
R11及びR12はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基であることがより好ましく、炭素数6~12のアリール基であることが更に好ましく、フェニル基であることが更に好ましい。
R11及びR12は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、ヒドロキシ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、置換基として、アルキル基、又はアルコキシ基を有することが好ましく、分岐アルキル基又はアルコキシ基を有することがより好ましく、炭素数3~10の分岐アルキル基、又は、炭素数1~10のアルコキシ基を有することが更に好ましい。
R11及びR12は同一の基であっても、異なる基であってもよいが、合成適性上の観点からは、同一の基であることが好ましい。
【0259】
〔ホスホニウム塩〕
本発明において、ホスホニウム塩とは、ホスホニウムカチオンと、アニオンとの塩を意味する。アニオンとしては、上述のアンモニウム塩におけるアニオンと同様のものが例示され、好ましい態様も同様である。
【0260】
-ホスホニウムカチオン-
ホスホニウムカチオンとしては、第四級ホスホニウムカチオンが好ましく、テトラアルキルホスホニウムカチオン、トリアリールモノアルキルホスホニウムカチオン等が挙げられる。
また、ホスホニウムカチオンとしては、下記式(105)で表されるカチオンが好ましい。
【化46】
【0261】
式(105)中、R13~R16はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。
R13~R16はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基であることがより好ましく、炭素数6~12のアリール基であることが更に好ましく、フェニル基であることが更に好ましい。
R13~R16は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、ヒドロキシ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、置換基として、アルキル基、又はアルコキシ基を有することが好ましく、分岐アルキル基又はアルコキシ基を有することがより好ましく、炭素数3~10の分岐アルキル基、又は、炭素数1~10のアルコキシ基を有することが更に好ましい。
R13~R16は同一の基であっても、異なる基であってもよいが、合成適性上の観点からは、同一の基であることが好ましい。
【0262】
本発明の硬化性樹脂組成物がオニウム塩を含む場合、オニウム塩の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物の全固形分に対し、0.1~50質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、0.85質量%以上が更に好ましく、1質量%以上が一層好ましい。上限は、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が一層好ましく、5質量%以下であってもよく、4質量%以下であってもよい。
オニウム塩は、1種又は2種以上を用いることができる。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0263】
<熱塩基発生剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、熱塩基発生剤を含んでもよい。
特に、硬化性樹脂組成物が特定樹脂として式(1-2)で表される繰返し単位を有する樹脂を含む場合、硬化性樹脂組成物は熱塩基発生剤を含むことが好ましい。
熱塩基発生剤は、上述のオニウム塩に該当する化合物であってもよいし、上述のオニウム塩以外の他の熱塩基発生剤であってもよい。
他の熱塩基発生剤としては、ノニオン系熱塩基発生剤が挙げられる。
ノニオン系熱塩基発生剤としては、式(B1)又は式(B2)で表される化合物が挙げられる。
【化47】
【0264】
式(B1)及び式(B2)中、Rb1、Rb2及びRb3はそれぞれ独立に、第三級アミン構造を有しない有機基、ハロゲン原子又は水素原子である。ただし、Rb1及びRb2が同時に水素原子となることはない。また、Rb1、Rb2及びRb3はいずれもカルボキシ基を有することはない。なお、本明細書で第三級アミン構造とは、3価の窒素原子の3つの結合手がいずれも炭化水素系の炭素原子と共有結合している構造を指す。したがって、結合した炭素原子がカルボニル基をなす炭素原子の場合、つまり窒素原子とともにアミド基を形成する場合はこの限りではない。
【0265】
式(B1)、(B2)中、Rb1、Rb2及びRb3は、これらのうち少なくとも1つが環状構造を含むことが好ましく、少なくとも2つが環状構造を含むことがより好ましい。環状構造としては、単環及び縮合環のいずれであってもよく、単環又は単環が2つ縮合した縮合環が好ましい。単環は、5員環又は6員環が好ましく、6員環が好ましい。単環は、シクロヘキサン環及びベンゼン環が好ましく、シクロヘキサン環がより好ましい。
【0266】
より具体的にRb1及びRb2は、水素原子、アルキル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が更に好ましい)、又はアリールアルキル基(炭素数7~25が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)であることが好ましい。これらの基は、本発明の効果を奏する範囲で置換基を有していてもよい。Rb1とRb2とは互いに結合して環を形成していてもよい。形成される環としては、4~7員の含窒素複素環が好ましい。Rb1及びRb2は特に、置換基を有してもよい直鎖、分岐、又は環状のアルキル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)であることが好ましく、置換基を有してもよいシクロアルキル基(炭素数3~24が好ましく、3~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)であることがより好ましく、置換基を有してもよいシクロヘキシル基が更に好ましい。
【0267】
Rb3としては、アルキル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~24が好ましく、2~12がより好ましく、2~6が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)、アリールアルケニル基(炭素数8~24が好ましく、8~20がより好ましく、8~16が更に好ましい)、アルコキシル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリールオキシ基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~12が更に好ましい)、又はアリールアルキルオキシ基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)が挙げられる。中でも、シクロアルキル基(炭素数3~24が好ましく、3~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリールアルケニル基、アリールアルキルオキシ基が好ましい。Rb3は更に本発明の効果を奏する範囲で置換基を有していてもよい。
【0268】
式(B1)で表される化合物は、下記式(B1-1)又は下記式(B1-2)で表される化合物であることが好ましい。
【化48】
【0269】
式中、Rb11及びRb12、並びに、Rb31及びRb32は、それぞれ、式(B1)におけるRb1及びRb2と同じである。
Rb13はアルキル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~12が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)であり、本発明の効果を奏する範囲で置換基を有していてもよい。中でも、Rb13はアリールアルキル基が好ましい。
【0270】
Rb33及びRb34は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~8がより好ましく、1~3が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~8がより好ましく、2~3が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11が更に好ましい)であり、水素原子が好ましい。
【0271】
Rb35は、アルキル基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、3~8が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~10がより好ましく、3~8が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~12が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)であり、アリール基が好ましい。
【0272】
式(B1-1)で表される化合物は、式(B1-1a)で表される化合物もまた好ましい。
【化49】
【0273】
Rb11及びRb12は式(B1-1)におけるRb11及びRb12と同義である。
Rb15及びRb16は水素原子、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11が更に好ましい)であり、水素原子又はメチル基が好ましい。
Rb17はアルキル基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、3~8が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~10がより好ましく、3~8が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~12が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)であり、中でもアリール基が好ましい。
【0274】
ノニオン系熱塩基発生剤の分子量は、800以下であることが好ましく、600以下であることがより好ましく、500以下であることが更に好ましい。下限としては、100以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましく、300以上であることが更に好ましい。
【0275】
上述のオニウム塩のうち、熱塩基発生剤である化合物の具体例、又は、他の熱塩基発生剤の具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。
【化50】
【化51】
【0276】
【0277】
熱塩基発生剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物の全固形分に対し、0.1~50質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。熱塩基発生剤は、1種又は2種以上を用いることができる。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0278】
<マイグレーション抑制剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、更にマイグレーション抑制剤を含むことが好ましい。マイグレーション抑制剤を含むことにより、金属層(金属配線)由来の金属イオンが硬化性樹脂組成物層内へ移動することを効果的に抑制可能となる。
【0279】
マイグレーション抑制剤としては、特に制限はないが、複素環(ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、2H-ピラン環及び6H-ピラン環、トリアジン環)を有する化合物、チオ尿素類及びスルファニル基を有する化合物、ヒンダードフェノール系化合物、サリチル酸誘導体系化合物、ヒドラジド誘導体系化合物が挙げられる。特に、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール等のトリアゾール系化合物、1H-テトラゾール、5-フェニルテトラゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、4-メチルベンゾトリアゾール等のテトラゾール系化合物が好ましく使用できる。
【0280】
又はハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉するイオントラップ剤を使用することもできる。
【0281】
その他のマイグレーション抑制剤としては、特開2013-015701号公報の段落0094に記載の防錆剤、特開2009-283711号公報の段落0073~0076に記載の化合物、特開2011-059656号公報の段落0052に記載の化合物、特開2012-194520号公報の段落0114、0116及び0118に記載の化合物、国際公開第2015/199219号の段落0166に記載の化合物などを使用することができる。
【0282】
マイグレーション抑制剤の具体例としては、下記化合物を挙げることができる。
【0283】
【0284】
硬化性樹脂組成物がマイグレーション抑制剤を有する場合、マイグレーション抑制剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.05~2.0質量%であることがより好ましく、0.1~1.0質量%であることが更に好ましい。
【0285】
マイグレーション抑制剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。マイグレーション抑制剤が2種以上の場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0286】
<重合禁止剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、重合禁止剤を含むことが好ましい。
【0287】
重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、o-メトキシフェノール、p-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、p-tert-ブチルカテコール、1,4-ベンゾキノン、ジフェニル-p-ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、フェノチアジン、N-ニトロソジフェニルアミン、N-フェニルナフチルアミン、エチレンジアミン四酢酸、1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、2-ニトロソ-5-(N-エチル-N-スルホプロピルアミノ)フェノール、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩、N-ニトロソ-N-(1-ナフチル)ヒドロキシアミンアンモニウム塩、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-tert-ブチル)フェニルメタン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、4‐ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルフリーラジカル、フェノチアジン、1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル、ジブチルジチオカーバネート銅(II)、ニトロベンゼン、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩などが好適に用いられる。また、特開2015-127817号公報の段落0060に記載の重合禁止剤、及び、国際公開第2015/125469号の段落0031~0046に記載の化合物を用いることもできる。
【0288】
また、下記化合物を用いることができる(Meはメチル基である)。
【0289】
【0290】
本発明の硬化性樹脂組成物が重合禁止剤を有する場合、重合禁止剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~20.0質量%が挙げられ、0.01~5質量%であることが好ましく、0.02~3質量%であることがより好ましく、0.05~2.5質量%であることが更に好ましい。
【0291】
重合禁止剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。重合禁止剤が2種以上の場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0292】
<金属接着性改良剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、電極や配線などに用いられる金属材料との接着性を向上させるための金属接着性改良剤を含むことが好ましい。金属接着性改良剤としては、シランカップリング剤、アルミニウム系接着助剤、チタン系接着助剤、スルホンアミド構造を有する化合物及びチオウレア構造を有する化合物、リン酸誘導体化合物、βケトエステル化合物、アミノ化合物などが挙げられる。
【0293】
シランカップリング剤の例としては、国際公開第2015/199219号の段落0167に記載の化合物、特開2014-191002号公報の段落0062~0073に記載の化合物、国際公開第2011/080992号の段落0063~0071に記載の化合物、特開2014-191252号公報の段落0060~0061に記載の化合物、特開2014-041264号公報の段落0045~0052に記載の化合物、国際公開第2014/097594号の段落0055に記載の化合物が挙げられる。また、特開2011-128358号公報の段落0050~0058に記載のように異なる2種以上のシランカップリング剤を用いることも好ましい。また、シランカップリング剤は、下記化合物を用いることも好ましい。以下の式中、Etはエチル基を表す。
【0294】
【0295】
また、金属接着性改良剤としては、特開2014-186186号公報の段落0046~0049に記載の化合物、特開2013-072935号公報の段落0032~0043に記載のスルフィド系化合物を用いることもできる。他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレー、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物が挙げられる。これらは1種単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0296】
アルミニウム系接着助剤としては、例えば、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等を挙げることができる。
【0297】
金属接着性改良剤の含有量は特定樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部であり、より好ましくは0.5~15質量部の範囲であり、更に好ましくは0.5~5質量部の範囲である。上記下限値以上とすることで硬化工程後の硬化膜と金属層との接着性が良好となり、上記上限値以下とすることで硬化工程後の硬化膜の耐熱性、機械特性が良好となる。金属接着性改良剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0298】
<その他の添加剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、各種の添加物、例えば、N-フェニルジエタノールアミンなどの増感剤、光塩基発生剤、連鎖移動剤、界面活性剤、高級脂肪酸誘導体、無機粒子、硬化剤、硬化触媒、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を配合することができる。これらの添加剤を配合する場合、合計配合量は硬化性樹脂組成物の固形分の3質量%以下とすることが好ましい。
【0299】
〔増感剤〕
本発明の硬化性樹脂組成物は、増感剤を含んでいてもよい。増感剤は、特定の活性放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、熱硬化促進剤、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などと接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用が生じる。これにより、熱硬化促進剤、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤は化学変化を起こして分解し、ラジカル、酸又は塩基を生成する。
増感剤としては、N-フェニルジエタノールアミン等の増感剤が挙げられる。
また、増感剤としては、増感色素を用いてもよい。
増感色素の詳細については、特開2016-027357号公報の段落0161~0163の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0300】
本発明の硬化性樹脂組成物が増感剤を含む場合、増感剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物の全固形分に対し、0.01~20質量%であることが好ましく、0.1~15質量%であることがより好ましく、0.5~10質量%であることが更に好ましい。増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0301】
〔連鎖移動剤〕
本発明の硬化性樹脂組成物は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、例えば高分子辞典第三版(高分子学会編、2005年)683-684頁に定義されている。連鎖移動剤としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、及びGeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカルに水素を供与して、ラジカルを生成するか、若しくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。特に、チオール化合物を好ましく用いることができる。
【0302】
また、連鎖移動剤は、国際公開第2015/199219号の段落0152~0153に記載の化合物を用いることもできる。
【0303】
本発明の硬化性樹脂組成物が連鎖移動剤を有する場合、連鎖移動剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物の全固形分100質量部に対し、0.01~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、1~5質量部が更に好ましい。連鎖移動剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。連鎖移動剤が2種以上の場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0304】
〔界面活性剤〕
本発明の硬化性樹脂組成物には、塗布性をより向上させる観点から、各種類の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種類の界面活性剤を使用できる。また、下記界面活性剤も好ましい。下記式中、主鎖の繰返し単位を示す括弧は各繰返し単位の含有量(モル%)を、側鎖の繰返し単位を示す括弧は各繰返し単位の繰り返し数をそれぞれ表す。
【化56】
また、界面活性剤は、国際公開第2015/199219号の段落0159~0165に記載の化合物を用いることもできる。
【0305】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F780、RS-72-K(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171、ノベックFC4430、同FC4432(以上、スリーエム ジャパン(株)製)、サーフロンS-382、同SC-101、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC1068、同SC-381、同SC-383、同S393、同KH-40(以上、旭硝子(株)製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(OMNOVA社製)等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落0015~0158に記載の化合物、特開2011-132503号公報の段落0117~0132に記載の化合物を用いることもできる。フッ素系界面活性剤としてブロックポリマーを用いることもでき、具体例としては、例えば特開2011-89090号公報に記載された化合物が挙げられる。
フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。
フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体をフッ素系界面活性剤として用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落0050~0090および段落0289~0295に記載された化合物、例えばDIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K等が挙げられる。
【0306】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好適であり、より好ましくは5~30質量%であり、特に好ましくは7~25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中における溶解性も良好である。
【0307】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP341、KF6001、KF6002(以上、信越シリコーン(株)製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー(株)製)等が挙げられる。
【0308】
炭化水素系界面活性剤としては、例えば、パイオニンA-76、ニューカルゲンFS-3PG、パイオニンB-709、パイオニンB-811-N、パイオニンD-1004、パイオニンD-3104、パイオニンD-3605、パイオニンD-6112、パイオニンD-2104-D、パイオニンD-212、パイオニンD-931、パイオニンD-941、パイオニンD-951、パイオニンE-5310、パイオニンP-1050-B、パイオニンP-1028-P、パイオニンP-4050-T等(以上、竹本油脂社製)、などが挙げられる。
【0309】
ノニオン型界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD-6112、D-6112-W、D-6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0310】
カチオン型界面活性剤として具体的には、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.77、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0311】
アニオン型界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)製)、サンデットBL(三洋化成(株)製)等が挙げられる。
【0312】
本発明の硬化性樹脂組成物が界面活性剤を有する場合、界面活性剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、0.001~2.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.005~1.0質量%である。界面活性剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。界面活性剤が2種以上の場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0313】
〔高級脂肪酸誘導体〕
本発明の硬化性樹脂組成物は、酸素に起因する重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体を添加して、塗布後の乾燥の過程で硬化性樹脂組成物の表面に偏在させてもよい。
【0314】
また、高級脂肪酸誘導体は、国際公開第2015/199219号の段落0155に記載の化合物を用いることもできる。
【0315】
本発明の硬化性樹脂組成物が高級脂肪酸誘導体を有する場合、高級脂肪酸誘導体の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物の全固形分に対して、0.1~10質量%であることが好ましい。高級脂肪酸誘導体は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。高級脂肪酸誘導体が2種以上の場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0316】
〔無機粒子〕
本発明の樹脂組成物は、無機粒子を含んでもよい。無機粒子として、具体的には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、ガラス等を含むことができる。
【0317】
上記無機粒子の平均粒子径としては、0.01~2.0μmが好ましく、0.02~1.5μmがより好ましく、0.03~1.0μmがさらに好ましく、0.04~0.5μmが特に好ましい。
上記無機粒子の平均粒子径を多量に含有させることによって、上記硬化膜の機械特性が劣化することがある。また、上記無機粒子の平均粒子径が2.0μmを超えると、露光光の散乱によって解像度が低下することがある。
【0318】
〔紫外線吸収剤〕
本発明の組成物は、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、トリアジン系などの紫外線吸収剤を使用することができる。
サリシレート系紫外線吸収剤の例としては、フェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート、p-t-ブチルフェニルサリシレートなどが挙げられ、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例としては、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例としては、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-アミル-5’-イソブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-イソブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-イソブチル-5’-プロピルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(1,1,3,3-テトラメチル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0319】
置換アクリロニトリル系紫外線吸収剤の例としては、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチル、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシルなどが挙げられる。さらに、トリアジン系紫外線吸収剤の例としては、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンなどのモノ(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物;2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-プロピルオキシフェニル)-6-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-プロピルオキシフェニル)-6-(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ヘキシルオキシフェニル)-6-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンなどのビス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物;2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス[2-ヒドロキシ-4-(3-ブトキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]-1,3,5-トリアジンなどのトリス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物等が挙げられる。
【0320】
本発明においては、上記各種の紫外線吸収剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物は、紫外線吸収剤を含んでも含まなくてもよいが、含む場合、紫外線吸収剤の含有量は、本発明の組成物の全固形分質量に対して、0.001質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましい。
【0321】
〔有機チタン化合物〕
本実施形態の樹脂組成物は、有機チタン化合物を含有してもよい。樹脂組成物が有機チタン化合物を含有することにより、低温で硬化した場合であっても耐薬品性に優れる樹脂層を形成できる。
【0322】
使用可能な有機チタン化合物としては、チタン原子に有機基が共有結合又はイオン結合を介して結合しているものが挙げられる。
有機チタン化合物の具体例を、以下のI)~VII)に示す:
I)チタンキレート化合物:中でも、ネガ型感光性樹脂組成物の保存安定性がよく、良好な硬化パターンが得られることから、アルコキシ基を2個以上有するチタンキレート化合物がより好ましい。具体的な例は、チタニウムビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイド、チタニウムジ(n-ブトキサイド)ビス(2,4-ペンタンジオネート、チタニウムジイソプロポキサイドビス(2,4-ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)等である。
II)テトラアルコキシチタン化合物:例えば、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、チタニウムテトラエトキサイド、チタニウムテトラ(2-エチルヘキソキサイド)、チタニウムテトライソブトキサイド、チタニウムテトライソプロポキサイド、チタニウムテトラメトキサイド、チタニウムテトラメトキシプロポキサイド、チタニウムテトラメチルフェノキサイド、チタニウムテトラ(n-ノニロキサイド)、チタニウムテトラ(n-プロポキサイド)、チタニウムテトラステアリロキサイド、チタニウムテトラキス[ビス{2,2-(アリロキシメチル)ブトキサイド}]等である。
III)チタノセン化合物:例えば、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム等である。
IV)モノアルコキシチタン化合物:例えば、チタニウムトリス(ジオクチルホスフェート)イソプロポキサイド、チタニウムトリス(ドデシルベンゼンスルホネート)イソプロポキサイド等である。
V)チタニウムオキサイド化合物:例えば、チタニウムオキサイドビス(ペンタンジオネート)、チタニウムオキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、フタロシアニンチタニウムオキサイド等である。
VI)チタニウムテトラアセチルアセトネート化合物:例えば、チタニウムテトラアセチルアセトネート等である。
VII)チタネートカップリング剤:例えば、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート等である。
【0323】
中でも、有機チタン化合物としては、上記I)チタンキレート化合物、II)テトラアルコキシチタン化合物、及びIII)チタノセン化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが、より良好な耐薬品性を奏するという観点から好ましい。特に、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、及びビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウムが好ましい。
【0324】
有機チタン化合物を配合する場合、その配合量は、環化樹脂の前駆体100質量部に対し、0.05~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~2質量部である。配合量が0.05質量部以上である場合、得られる硬化パターンに良好な耐熱性及び耐薬品性が発現し、一方10質量部以下である場合、組成物の保存安定性に優れる。
【0325】
〔酸化防止剤〕
本発明の組成物は、酸化防止剤を含んでいてもよい。添加剤として酸化防止剤を含有することで、硬化後の膜の伸度特性や、金属材料との密着性を向上させることができる。酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。フェノール性ヒドロキシ基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。前述の置換基としては炭素数1~22の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。また、酸化防止剤は、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物も好ましい。また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。リン系酸化防止剤としてはトリス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2-[(4,6,9,11-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-2-イル)オキシ]エチル]アミン、亜リン酸エチルビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)などが挙げられる。酸化防止剤の市販品としては、例えば、アデカスタブ AO-20、アデカスタブ AO-30、アデカスタブ AO-40、アデカスタブ AO-50、アデカスタブ AO-50F、アデカスタブ AO-60、アデカスタブ AO-60G、アデカスタブ AO-80、アデカスタブ AO-330(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。また、酸化防止剤は、特許第6268967号公報の段落番号0023~0048に記載された化合物を使用することもできる。また、本発明の組成物は、必要に応じて、潜在酸化防止剤を含有してもよい。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開第2014/021023号、国際公開第2017/030005号、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤の市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。好ましい酸化防止剤の例としては、2,2-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチルフェノールおよび一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0326】
【0327】
一般式(3)中、R5は水素原子または炭素数2以上のアルキル基を表し、R6は炭素数2以上のアルキレン基を表す。R7は、炭素数2以上のアルキレン基、O原子、およびN原子のうち少なくともいずれかを含む1~4価の有機基を示す。kは1~4の整数を示す。
【0328】
一般式(3)で表される化合物は、樹脂の脂肪族基やフェノール性水酸基の酸化劣化を抑制する。また、金属材料への防錆作用により、金属酸化を抑制することができる。
【0329】
樹脂と金属材料に同時に作用できるため、kは2~4の整数がより好ましい。R7としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルエーテル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基、アリール基、アリールエーテル基、カルボキシル基、カルボニル基、アリル基、ビニル基、複素環基、-O-、-NH-、-NHNH-、それらを組み合わせたものなどが挙げられ、さらに置換基を有していてもよい。この中でも、現像液への溶解性や金属密着性の点から、アルキルエーテル、-NH-を有することが好ましく、樹脂との相互作用と金属錯形成による金属密着性の点から-NH-がより好ましい。
【0330】
下記一般式(3)で表される化合物は、例としては以下のものが挙げられるが、下記構造に限らない。
【0331】
【0332】
【0333】
【0334】
【0335】
酸化防止剤の添加量は、樹脂に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。添加量が0.1質量部より少ない場合は、信頼性後の伸度特性や金属材料に対する密着性向上の効果が得られにくく、また10質量部より多い場合は、感光剤との相互作用により、樹脂組成物の感度低下を招く恐れがある。酸化防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0336】
<その他の含有物質についての制限>
本発明の硬化性樹脂組成物の水分含有量は、塗布面性状の観点から、5質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましく、0.6質量%未満が更に好ましい。水分の含有量を維持する方法としては、保管条件における湿度の調整、収容容器の空隙率低減などが挙げられる。
【0337】
本発明の硬化性樹脂組成物の金属含有量は、絶縁性の観点から、5質量ppm(parts per million)未満が好ましく、1質量ppm未満がより好ましく、0.5質量ppm未満が更に好ましい。金属としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、クロム、ニッケルなどが挙げられる。金属を複数含む場合は、これらの金属の合計が上記範囲であることが好ましい。
【0338】
また、本発明の硬化性樹脂組成物に意図せずに含まれる金属不純物を低減する方法としては、本発明の硬化性樹脂組成物を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、本発明の硬化性樹脂組成物を構成する原料に対してフィルターろ過を行う、装置内をポリテトラフルオロエチレン等でライニングしてコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。
【0339】
本発明の硬化性樹脂組成物は、半導体材料としての用途を考慮すると、ハロゲン原子の含有量が、配線腐食性の観点から、500質量ppm未満が好ましく、300質量ppm未満がより好ましく、200質量ppm未満が更に好ましい。中でも、ハロゲンイオンの状態で存在するものは、5質量ppm未満が好ましく、1質量ppm未満がより好ましく、0.5質量ppm未満が更に好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。塩素原子及び臭素原子、又は塩素イオン及び臭素イオンの合計がそれぞれ上記範囲であることが好ましい。ハロゲン原子の含有量を調節する方法としては、イオン交換処理などが好ましく挙げられる。
【0340】
本発明の硬化性樹脂組成物の収容容器としては従来公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器としては、原材料や硬化性樹脂組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0341】
<硬化性樹脂組成物の調製>
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記各成分を混合して調製することができる。混合方法は特に限定はなく、従来公知の方法で行うことができる。
【0342】
また、硬化性樹脂組成物中のゴミや微粒子等の異物を除去する目的で、フィルターを用いたろ過を行うことが好ましい。フィルター孔径は、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.1μm以下が更に好ましい。一方、生産性の観点では、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましい。フィルターの材質は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン又はナイロンが好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルターろ過工程では、複数種のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種のフィルターを使用する場合は、孔径又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回ろ過してもよい。複数回ろ過する場合は、循環ろ過であってもよい。また、加圧してろ過を行ってもよい。加圧してろ過を行う場合、加圧する圧力は0.05MPa以上0.3MPa以下が好ましい。一方、生産性の観点では、0.01MPa以上1.0MPa以下が好ましく、0.03MPa以上0.9MPa以下がより好ましく、0.05MPa以上0.7MPa以下が更に好ましい。
フィルターを用いたろ過の他、吸着材を用いた不純物の除去処理を行ってもよい。フィルターろ過と吸着材を用いた不純物除去処理とを組み合わせてもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができる。例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材が挙げられる。
【0343】
<硬化性樹脂組成物の用途>
本発明の硬化性樹脂組成物は、再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられることが好ましい。
また、その他、半導体デバイスの絶縁膜の形成、又は、ストレスバッファ膜の形成等にも用いることができる。
【0344】
(硬化膜、積層体、半導体デバイス、及びそれらの製造方法)
次に、硬化膜、積層体、半導体デバイス、及びそれらの製造方法について説明する。
【0345】
本発明の硬化膜は、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化してなる。本発明の硬化膜の膜厚は、例えば、0.5μm以上とすることができ、1μm以上とすることもできる。また、上限値としては、100μm以下とすることができ、30μm以下とすることもできる。
【0346】
本発明の硬化膜を2層以上、更には、3~7層積層して積層体としてもよい。本発明の積層体は、硬化膜を2層以上有し、硬化膜の間に金属層を有する積層体であることが好ましい。また、本発明の積層体は、硬化膜を2層以上含み、上記硬化膜同士のいずれかの間に金属層を含む態様が好ましい。例えば、第一の硬化膜、金属層、第二の硬化膜の3つの層がこの順に積層された層構造を少なくとも含む積層体が好ましく挙げられる。上記第一の硬化膜及び上記第二の硬化膜は、いずれも本発明の硬化膜であり、例えば、上記第一の硬化膜及び上記第二の硬化膜のいずれもが、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化してなる膜である態様が好ましく挙げられる。上記第一の硬化膜の形成に用いられる本発明の硬化性樹脂組成物と、上記第二の硬化膜の形成に用いられる本発明の硬化性樹脂組成物とは、組成が同一の組成物であってもよいし、組成が異なる組成物であってもよいが、製造適性上の観点からは、組成が同一の組成物であることが好ましい。このような金属層は、再配線層などの金属配線として好ましく用いられる。
【0347】
本発明の硬化膜の適用可能な分野としては、半導体デバイスの絶縁膜、再配線層用層間絶縁膜、ストレスバッファ膜などが挙げられる。そのほか、封止フィルム、基板材料(フレキシブルプリント基板のベースフィルムやカバーレイ、層間絶縁膜)、又は上記のような実装用途の絶縁膜をエッチングでパターン形成することなどが挙げられる。これらの用途については、例えば、サイエンス&テクノロジー株式会社「ポリイミドの高機能化と応用技術」2008年4月、柿本雅明/監修、CMCテクニカルライブラリー「ポリイミド材料の基礎と開発」2011年11月発行、日本ポリイミド・芳香族系高分子研究会/編「最新ポリイミド 基礎と応用」エヌ・ティー・エス,2010年8月等を参照することができる。
【0348】
また、本発明における硬化膜は、オフセット版面又はスクリーン版面などの版面の製造、成形部品のエッチングへの使用、エレクトロニクス、特に、マイクロエレクトロニクスにおける保護ラッカー及び誘電層の製造などにも用いることもできる。
【0349】
本発明の硬化膜の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう。)は、本発明の硬化性樹脂組成物を基材に適用して膜を形成する膜形成工程を含むことが好ましい。
更に、本発明の硬化膜の製造方法は、上記膜形成工程を含み、かつ、上記膜を露光する露光工程及び上記膜を現像する(上記膜に対して現像処理を行う)現像工程を更に含むことがより好ましい。
更に、本発明の硬化膜の製造方法は、上記膜形成工程(及び、必要に応じて上記現像工程)を含み、かつ、上記膜を50~450℃で加熱する加熱工程を更に含むことがより好ましい。
具体的には、以下の(a)~(d)の工程を含むことも好ましい。
(a)硬化性樹脂組成物を基材に適用して膜(硬化性樹脂組成物層)を形成する膜形成工程
(b)膜形成工程の後、膜を露光する露光工程
(c)露光された上記膜に対して現像処理を行う現像工程
(d)現像された上記膜を50~450℃で加熱する加熱工程
上記加熱工程において加熱することにより、現像後の硬化性樹脂組成物層を更に硬化させることができる。この加熱工程で、例えば上述の熱塩基発生剤が分解し、十分な硬化性が得られる。
【0350】
本発明の好ましい実施形態に係る積層体の製造方法は、本発明の硬化膜の製造方法を含む。本実施形態の積層体の製造方法は、上記の硬化膜の製造方法に従って、硬化膜を形成後、更に、再度、(a)の工程、又は(a)~(c)の工程、又は(a)~(d)の工程を行う。特に、上記各工程を順に、複数回、例えば、2~5回(すなわち、合計で3~6回)行うことが好ましい。このように硬化膜を積層することにより、積層体とすることができる。本発明では特に硬化膜を設けた部分の上又は硬化膜の間、又はその両者に金属層を設けることが好ましい。なお、積層体の製造においては、(a)~(d)の工程をすべて繰り返す必要はなく、上記のとおり、少なくとも(a)、好ましくは(a)~(c)又は(a)~(d)の工程を複数回行うことで硬化膜の積層体を得ることができる。
【0351】
<膜形成工程(層形成工程)>
本発明の好ましい実施形態に係る製造方法は、硬化性樹脂組成物を基材に適用して膜(層状)にする、膜形成工程(層形成工程)を含む。
【0352】
基材の種類は、用途に応じて適宜定めることができるが、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの半導体作製基材、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基材、紙、SOG(Spin On Glass)、TFT(薄膜トランジスタ)アレイ基材、プラズマディスプレイパネル(PDP)の電極板など特に制約されない。
また、これらの基材には表面に密着層や酸化層などの層が設けられていてもよい。本発明では、特に、半導体作製基材が好ましく、シリコン基材、Cu基材およびモールド基材がより好ましい。
また、基材としては、例えば板状の基材(基板)が用いられる。
基材の形状は特に限定されず、円形状であっても矩形状であってもよいが、矩形状であることが好ましい。
これらの基材にはヘキサメチルジシラザン(HMDS)等による密着層や酸化層などの層が表面に設けられていてもよい。
基材のサイズとしては、円形状であれば、例えば直径が100~450mmであり、好ましくは200~450mmである。矩形状であれば、例えば短辺の長さが100~1000mmであり、好ましくは200~700mmである。
【0353】
また、硬化性樹脂組成物層等の樹脂層の表面や金属層の表面に硬化性樹脂組成物層を形成する場合は、樹脂層や金属層が基材となる。
【0354】
硬化性樹脂組成物を基材に適用する手段としては、塗布が好ましい。
【0355】
具体的には、適用する手段としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スプレーコート法、スピンコート法、スリットコート法、及びインクジェット法などが例示される。硬化性樹脂組成物層の厚さの均一性の観点から、より好ましくはスピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、インクジェット法である。方法に応じて適切な固形分濃度や塗布条件を調整することで、所望の厚さの樹脂層を得ることができる。
また、基材の形状によっても塗布方法を適宜選択でき、ウェハ等の円形基材であればスピンコート法やスプレーコート法、インクジェット法等が好ましく、矩形基材であればスリットコート法やスプレーコート法、インクジェット法等が好ましい。スピンコート法の場合は、例えば、500~2,000rpm(revolutions per minute)の回転数で、10秒~1分程度適用することができる。樹脂組成物の粘度や設定する膜厚によっては、300~3,500rpmの回転数で、10~180秒適用することも好ましい。また膜厚の均一性を得るために、複数の回転数を組み合わせて塗布することもできる。
また、あらかじめ仮支持体上に上記付与方法によって付与して形成した塗膜を、基材上に転写する方法を適用することもできる。
転写方法に関しては特開2006-023696号公報の段落0023、0036~0051や、特開2006-047592号公報の段落0096~0108に記載の作製方法を本発明においても好適に用いることができる。
また、基材の端部において余分な膜の除去を行なう工程を行なってもよい。このような工程の例には、エッジビードリンス(EBR)、エアナイフ、バックリンスなどが挙げられる。樹脂組成物を基材に塗布する前に基材を種々の溶剤を塗布し、基材の濡れ性を向上させた後に樹脂組成物を塗布するプリウェット工程を採用しても良い。
【0356】
<乾燥工程>
本発明の製造方法は、上記膜(硬化性樹脂組成物層)を形成後、膜形成工程(層形成工程)の後に、溶剤を除去するために乾燥する工程を含んでいてもよい。好ましい乾燥温度は50~150℃で、70℃~130℃がより好ましく、90℃~110℃が更に好ましい。乾燥時間としては、30秒~20分が例示され、1分~10分が好ましく、3分~7分がより好ましい。
【0357】
<露光工程>
本発明の製造方法は、上記膜(硬化性樹脂組成物層)を露光する露光工程を含んでもよい。露光量は、硬化性樹脂組成物を硬化できる限り特に定めるものではないが、例えば、波長365nmでの露光エネルギー換算で100~10,000mJ/cm2照射することが好ましく、200~8,000mJ/cm2照射することがより好ましい。
【0358】
露光波長は、190~1,000nmの範囲で適宜定めることができ、240~550nmが好ましい。
【0359】
露光波長は、光源との関係でいうと、(1)半導体レーザー(波長 830nm、532nm、488nm、405nm etc.)、(2)メタルハライドランプ、(3)高圧水銀灯、g線(波長 436nm)、h線(波長 405nm)、i線(波長 365nm)、ブロード(g,h,i線の3波長)、(4)エキシマレーザー、KrFエキシマレーザー(波長 248nm)、ArFエキシマレーザー(波長 193nm)、F2エキシマレーザー(波長 157nm)、(5)極端紫外線;EUV(波長 13.6nm)、(6)電子線、(7)YAGレーザーの第二高調波532nm、第三高調波355nm等が挙げられる。本発明の硬化性樹脂組成物については、特に高圧水銀灯による露光が好ましく、中でも、i線による露光が好ましい。これにより、特に高い露光感度が得られうる。取り扱いと生産性の観点では、高圧水銀灯のブロード(g,h,i線の3波長)光源や半導体レーザー405nmも好適である。
【0360】
<現像工程>
本発明の製造方法は、露光された膜(硬化性樹脂組成物層)に対して、現像処理を行う現像工程を含んでもよい。現像を行うことにより、露光されていない部分(非露光部)が除去される。現像方法は、所望のパターンを形成できれば特に制限は無く、例えばノズルからの現像液の吐出、スプレー噴霧、基材の現像液浸漬などが挙げられ、ノズルからの吐出が好ましく利用される。現像工程には、現像液が連続的に基材に供給され続ける工程、基材上で現像液が略静止状態で保たれる工程、現像液を超音波等で振動させる工程およびそれらを組み合わせた工程などが採用可能である。
【0361】
現像は現像液を用いて行う。現像液は、硬化性樹脂組成物がネガ型の硬化性樹脂組成物であれば硬化性樹脂組成物層の露光されていない部分(非露光部)が除去されるものを、本発明の硬化性樹脂組成物がポジ型の硬化性樹脂組成物であれば露光された部分(露光部)が除去されるものを、特に制限なく使用できる。
本発明において、現像液としてアルカリ現像液を用いる場合をアルカリ現像、現像液として有機溶剤を50質量%以上含む現像液を用いる場合を溶剤現像という。
【0362】
アルカリ現像において、現像液は、有機溶剤の含有量が現像液の全質量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、有機溶剤を含まないことが特に好ましい。
アルカリ現像における現像液は、pHが9~14である水溶液がより好ましい。
アルカリ現像における現像液に含まれるアルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、アンモニア又はアミンなどが挙げられる。アミンとしては、例えば、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、アルカノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、四級アンモニウム水酸化物、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)又は水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなどが挙げられる。なかでも金属を含まないアルカリ化合物が好ましく、アンモニウム化合物がより好ましい。
アルカリ化合物は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。現像液における塩基性化合物の含有量は、例えばTMAHを用いる場合、現像液全質量中0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.3~3質量%が更に好ましい。
【0363】
溶剤現像において、現像液は、有機溶剤を90%以上含むことがより好ましい。本発明では、現像液は、ClogP値が-1~5の有機溶剤を含むことが好ましく、ClogP値が0~3の有機溶剤を含むことがより好ましい。ClogP値は、ChemBioDrawにて構造式を入力して計算値として求めることができる。
【0364】
有機溶剤は、エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、アルキルオキシ酢酸アルキル(例:アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチル及び2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル等、並びに、エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等、並びに、ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、N-メチル-2-ピロリドン等、並びに、芳香族炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン、アニソール、リモネン等、スルホキシド類としてジメチルスルホキシドが好適に挙げられる。
【0365】
本発明では、特にシクロペンタノン、γ-ブチロラクトンが好ましく、シクロペンタノンがより好ましい。現像液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤は1種又は、2種以上を混合して使用することもできる。
現像液は、他の成分を更に含んでもよい。他の成分としては、例えば、公知の界面活性剤や公知の消泡剤等が挙げられる。
【0366】
〔現像液の供給方法〕
現像液の供給方法は、所望のパターンを形成できれば特に制限は無く、基材を現像液に浸漬する方法、基材上にノズルを用いて現像液を供給しパドル現像、または、現像液を連続供給する方法がある。ノズルの種類は特に制限は無く、ストレートノズル、シャワーノズル、スプレーノズル等が挙げられる。
現像液の浸透性、非画像部の除去性、製造上の効率の観点から、現像液をストレートノズルで供給する方法、又はスプレーノズルにて連続供給する方法が好ましく、画像部への現像液の浸透性の観点からは、スプレーノズルで供給する方法がより好ましい。
また、現像液をストレートノズルにて連続供給後、基材をスピンし現像液を基材上から除去し、スピン乾燥後に再度ストレートノズルにて連続供給後、基材をスピンし現像液を基材上から除去する工程を採用してもよく、この工程を複数回繰り返しても良い。
また現像工程における現像液の供給方法としては、現像液が連続的に基材に供給され続ける工程、基材上で現像液が略静止状態で保たれる工程、基材上で現像液を超音波等で振動させる工程及びそれらを組み合わせた工程などが採用可能である。
【0367】
現像液は、50質量%以上が有機溶剤であることが好ましく、70質量%以上が有機溶剤であることがより好ましく、90質量%以上が有機溶剤であることが更に好ましい。また、現像液は、100質量%が有機溶剤であってもよい。
【0368】
現像時間としては、5秒~10分間が好ましく、10秒~5分がより好ましい。現像時の現像液の温度は、特に定めるものではないが、通常、10~45℃、好ましくは、20~40℃で行うことができる。
【0369】
現像液を用いた処理の後、更に、リンスを行ってもよい。また、パターン上に接する現像液が乾燥しきらないうちにリンス液を供給するなどの方法を採用しても良い。
溶剤現像の場合、リンスは、現像液とは異なる有機溶剤を用いて行うことが好ましい。
溶剤現像の場合のリンス液としては、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、IPA(イソプロパノール)などが挙げられ、好ましくはPGMEAである。
アルカリ現像の場合、リンスは、純水を用いて行うことが好ましい。
リンス時間は、10秒~10分間が好ましく、20秒~5分間がより好ましく、5秒~1分が更に好ましい。リンス時のリンス液の温度は、特に定めるものではないが、好ましくは、10~45℃、より好ましくは、18℃~30℃で行うことができる。
【0370】
リンス液が有機溶剤を含む場合の有機溶剤としては、エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、アルキルオキシ酢酸アルキル(例:アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチル及び2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル等、並びに、エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等、並びに、ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、N-メチル-2-ピロリドン等、並びに、芳香族炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン、アニソール、リモネン等、スルホキシド類としてジメチルスルホキシド、並びに、アルコール類として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、オクタノール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルイソブチルカルビノール、トリエチレングリコール等、並びに、アミド類として、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が好適に挙げられる。
【0371】
リンス液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤は1種又は、2種以上を混合して使用することができる。本発明では特にシクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノン、PGMEA、PGMEが好ましく、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、PGMEA、PGMEがより好ましく、シクロヘキサノン、PGMEAがさらに好ましい。
【0372】
リンス液が有機溶剤を含む場合、リンス液は、50質量%以上が有機溶剤であることが好ましく、70質量%以上が有機溶剤であることがより好ましく、90質量%以上が有機溶剤であることが更に好ましい。また、リンス液は、100質量%が有機溶剤であってもよい。
【0373】
リンス液は、他の成分を更に含んでもよい。
他の成分としては、例えば、公知の界面活性剤や公知の消泡剤等が挙げられる。
【0374】
〔リンス液の供給方法〕
リンス液の供給方法は、所望のパターンを形成できれば特に制限は無く、基材をリンス液に浸漬する方法、基材上でのパドル現像、基材にリンス液をシャワーで供給する方法、基材上にストレートノズル等の手段により現像液を連続供給する方法がある。
リンス液の浸透性、非画像部の除去性、製造上の効率の観点から、リンス液をシャワーノズル、ストレートノズル、スプレーノズルなどで供給する方法があり、スプレーノズルにて連続供給する方法が好ましく、画像部へのリンス液の浸透性の観点からは、スプレーノズルで供給する方法がより好ましい。ノズルの種類は特に制限は無く、ストレートノズル、シャワーノズル、スプレーノズル等が挙げられる。
すなわち、リンス工程は、リンス液を上記露光後の膜に対してストレートノズルにより供給、又は、連続供給する工程であることが好ましく、リンス液をスプレーノズルにより供給する工程であることがより好ましい。
またリンス工程におけるリンス液の供給方法としては、リンス液が連続的に基材に供給され続ける工程、基材上でリンス液が略静止状態で保たれる工程、基材上でリンス液を超音波等で振動させる工程及びそれらを組み合わせた工程などが採用可能である。
【0375】
<加熱工程>
本発明の製造方法は、現像された上記膜を50~450℃で加熱する工程(加熱工程)を含むことが好ましい。
加熱工程は、膜形成工程(層形成工程)、乾燥工程、及び現像工程の後に含まれることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物は特定樹脂以外の重合性化合物を含むが、特定樹脂以外の未反応の重合性化合物の硬化反応、特定樹脂における未反応の重合性基の硬化反応などをこの工程で進行させることができる。
また、特定樹脂がポリイミド前駆体であり、かつ、硬化性樹脂組成物が熱塩基発生剤を含む場合、加熱工程では、例えば熱塩基発生剤が分解することにより塩基が発生し、ポリイミド前駆体の環化反応が進行する。
加熱工程における層の加熱温度(最高加熱温度)としては、50℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることが更に好ましく、150℃以上であることが特に好ましく、160℃以上であることが一層好ましく、170℃以上であることが最も好ましい。上限としては、450℃以下であることが好ましく、350℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることが更に好ましく、220℃以下であることが特に好ましい。
【0376】
加熱は、加熱開始時の温度から最高加熱温度まで1~12℃/分の昇温速度で行うことが好ましく、2~10℃/分がより好ましく、3~10℃/分が更に好ましい。昇温速度を1℃/分以上とすることにより、生産性を確保しつつ、アミンの過剰な揮発を防止することができ、昇温速度を12℃/分以下とすることにより、硬化膜の残存応力を緩和することができる。なお、急速加熱可能なオーブンの場合は、加熱開始時の温度から最高加熱温度まで1~8℃/秒の昇温速度で行うことが好ましく、2~7℃/秒がより好ましく、3~6℃/秒が更に好ましい。
【0377】
加熱開始時の温度は、20℃~150℃が好ましく、20℃~130℃がより好ましく、25℃~120℃が更に好ましい。加熱開始時の温度は、最高加熱温度まで加熱する工程を開始する際の温度のことをいう。例えば、硬化性樹脂組成物を基材の上に適用した後、乾燥させる場合、この乾燥後の膜(層)の温度であり、例えば、硬化性樹脂組成物に含まれる溶剤の沸点よりも、30~200℃低い温度から徐々に昇温させることが好ましい。
【0378】
加熱時間(最高加熱温度での加熱時間)は、10~360分であることが好ましく、20~300分であることがより好ましく、30~240分であることが更に好ましい。
【0379】
特に多層の積層体を形成する場合、硬化膜の層間の密着性の観点から、加熱温度は180℃~320℃で加熱することが好ましく、180℃~260℃で加熱することがより好ましい。その理由は定かではないが、この温度とすることで、層間の特定樹脂における重合性基同士が架橋反応を進行するためと考えられる。
【0380】
加熱は段階的に行ってもよい。例として、25℃から180℃まで3℃/分で昇温し、180℃にて60分保持し、180℃から200℃まで2℃/分で昇温し、200℃にて120分保持する、といった前処理工程を行ってもよい。前処理工程としての加熱温度は100~200℃が好ましく、110~190℃であることがより好ましく、120~185℃であることが更に好ましい。この前処理工程においては、米国特許9159547号明細書に記載のように紫外線を照射しながら処理することも好ましい。このような前処理工程により膜の特性を向上させることが可能である。前処理工程は10秒間~2時間程度の短い時間で行うとよく、15秒~30分間がより好ましい。前処理は2段階以上のステップとしてもよく、例えば100~150℃の範囲で前処理工程1を行い、その後に150~200℃の範囲で前処理工程2を行ってもよい。
【0381】
更に、加熱後冷却してもよく、この場合の冷却速度としては、1~5℃/分であることが好ましい。
【0382】
加熱工程は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを流す等により、低酸素濃度の雰囲気で行うことが特定樹脂の分解を防ぐ点で好ましい。酸素濃度は、50ppm(体積比)以下が好ましく、20ppm(体積比)以下がより好ましい。
加熱手段としては、特に限定されないが、例えばホットプレート、赤外炉、電熱式オーブン、熱風式オーブンなどが挙げられる。
【0383】
<金属層形成工程>
本発明の製造方法は、現像処理後の膜(硬化性樹脂組成物層)の表面に金属層を形成する金属層形成工程を含むことが好ましい。
【0384】
金属層としては、特に限定なく、既存の金属種を使用することができ、銅、アルミニウム、ニッケル、バナジウム、チタン、クロム、コバルト、金、タングステン、及び、これらの金属を含む合金が例示され、銅及びアルミニウムがより好ましく、銅が更に好ましい。
【0385】
金属層の形成方法は、特に限定なく、既存の方法を適用することができる。例えば、特開2007-157879号公報、特表2001-521288号公報、特開2004-214501号公報、特開2004-101850号公報に記載された方法を使用することができる。例えば、フォトリソグラフィ、リフトオフ、電解メッキ、無電解メッキ、エッチング、印刷、及びこれらを組み合わせた方法などが考えられる。より具体的には、スパッタリング、フォトリソグラフィ及びエッチングを組み合わせたパターニング方法、フォトリソグラフィと電解メッキを組み合わせたパターニング方法が挙げられる。
【0386】
金属層の厚さとしては、最も厚肉の部分で、0.01~100μmが例として挙げられ、0.1~50μmが好ましく、1~10μmがより好ましい。
【0387】
<積層工程>
本発明の製造方法は、更に、積層工程を含むことが好ましい。
【0388】
積層工程とは、硬化膜(樹脂層)又は金属層の表面に、再度、(a)膜形成工程(層形成工程)、(b)露光工程、(c)現像工程、(d)加熱工程を、この順に行うことを含む一連の工程である。ただし、(a)の膜形成工程のみを繰り返す態様であってもよい。
また、(d)加熱工程は積層の最後又は中間に一括して行う態様としてもよい。すなわち、(a)~(c)の工程を所定の回数繰り返し行い、その後に(d)の加熱をすることで、積層された硬化性樹脂組成物層を一括で硬化する態様としてもよい。また、(c)現像工程の後には(e)金属層形成工程を含んでもよく、このときにも都度(d)の加熱を行ってもよいし、所定回数積層させた後に一括して(d)の加熱を行ってもよい。積層工程には、更に、上記乾燥工程や加熱工程等を適宜含んでいてもよいことは言うまでもない。
【0389】
積層工程後、更に積層工程を行う場合には、上記加熱工程後、上記露光工程後、又は、上記金属層形成工程後に、更に、表面活性化処理工程を行ってもよい。表面活性化処理としては、プラズマ処理が例示される。
【0390】
上記積層工程は、2~5回行うことが好ましく、3~5回行うことがより好ましい。また、積層工程における各層は、組成、形状、膜厚等が同一の層であってもよいし、異なる層であってもよい。
【0391】
例えば、樹脂層/金属層/樹脂層/金属層/樹脂層/金属層のような、樹脂層を2層以上20層以下とする構成が例として挙げられ、樹脂層が3層以上7層以下の構成が好ましく、3層以上5層以下が更に好ましい。
【0392】
<表面活性化処理工程>
本発明の硬化膜の製造方法は、上記金属層および感光性樹脂組成物層の少なくとも一部を表面活性化処理する、表面活性化処理工程を含んでもよい。
表面活性化処理工程は、通常、金属層形成工程の後に行うが、上記露光現像工程の後、感光性樹脂組成物層に表面活性化処理工程を行ってから、金属層形成工程を行ってもよい。
表面活性化処理は、金属層の少なくとも一部のみに行ってもよいし、露光後の感光性樹脂組成物層の少なくとも一部のみに行ってもよいし、金属層および露光後の感光性樹脂組成物層の両方について、それぞれ、少なくとも一部に行ってもよい。表面活性化処理は、金属層の少なくとも一部について行うことが好ましく、金属層のうち、表面に感光性樹脂組成物層を形成する領域の一部または全部に表面活性化処理を行うことが好ましい。このように、金属層の表面に表面活性化処理を行うことにより、その表面に設けられる樹脂層との密着性を向上させることができる。
また、表面活性化処理は、露光後の感光性樹脂組成物層(樹脂層)の一部または全部についても行うことが好ましい。このように、感光性樹脂組成物層の表面に表面活性化処理を行うことにより、表面活性化処理した表面に設けられる金属層や樹脂層との密着性を向上させることができる。
表面活性化処理としては、具体的には、各種原料ガス(酸素、水素、アルゴン、窒素、窒素/水素混合ガス、アルゴン/酸素混合ガスなど)のプラズマ処理、コロナ放電処理、CF4/O2、NF3/O2、SF6、NF3、NF3/O2によるエッチング処理、紫外線(UV)オゾン法による表面処理、塩酸水溶液に浸漬して酸化皮膜を除去した後にアミノ基とチオール基を少なくとも一種有する化合物を含む有機表面処理剤への浸漬処理、ブラシを用いた機械的な粗面化処理から選択され、プラズマ処理が好ましく、特に原料ガスに酸素を用いた酸素プラズマ処理が好ましい。コロナ放電処理の場合、エネルギーは、500~200,000J/m2が好ましく、1000~100,000J/m2がより好ましく、10,000~50,000J/m2が最も好ましい。
【0393】
本発明では特に、金属層を設けた後、更に、上記金属層を覆うように、上記硬化性樹脂組成物の硬化膜(樹脂層)を形成する態様が好ましい。具体的には、(a)膜形成工程、(b)露光工程、(c)現像工程、(e)金属層形成工程、(d)加熱工程の順序で繰り返す態様、又は、(a)膜形成工程、(b)露光工程、(c)現像工程、(e)金属層形成工程の順序で繰り返し、最後又は中間に一括して(d)加熱工程を設ける態様が挙げられる。硬化性樹脂組成物層(樹脂層)を積層する積層工程と、金属層形成工程を交互に行うことにより、硬化性樹脂組成物層(樹脂層)と金属層を交互に積層することができる。
【0394】
本発明は、本発明の硬化膜又は積層体を含む半導体デバイスも開示する。本発明の硬化性樹脂組成物を再配線層用層間絶縁膜の形成に用いた半導体デバイスの具体例としては、特開2016-027357号公報の段落0213~0218の記載及び
図1の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0395】
(樹脂)
本発明の樹脂は、上述の式(2-1)で表される繰返し単位、及び、上述の式(2-2)で表される繰返し単位よりなる群から選ばれた少なくとも一方を含むことが好ましい。
本発明の樹脂は、上述の式(2-1)で表される繰返し単位、及び、上述の式(2-2)で表される繰返し単位よりなる群から選ばれた少なくとも一方を含むこと以外は、上述の特定樹脂と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0396】
<用途>
本発明の樹脂は、硬化性樹脂組成物に含まれる樹脂として用いられることが好ましい。
また、例えば層間絶縁膜用の組成物など、従来のポリイミドが用いられる組成物において、特に制限なく、従来のポリイミドの一部又は全部を本発明の樹脂に置き換えて用いることができる。
本発明の樹脂は耐薬品性に優れるため、本発明の樹脂は、例えば、絶縁膜を形成するための組成物、積層体を形成するための組成物などの、耐薬品性が必要とされる用途に用いられる組成物において、好適に用いられると考えられる。
【実施例0397】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。以下、「部」、「%」は特に述べない限り、質量基準である。
【0398】
(特定樹脂の合成)
<ジアミンの合成>
〔ジニトロ体(A-1)の合成〕
コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコ中で、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(富士フイルム和光純薬(株)製)26.0g(0.2モル)、脱水ピリジン(富士フイルム和光純薬(株)製)17.4g(0.22モル)を78gの酢酸エチルに溶解し、5℃以下に冷却した。次いで、3,5-ジニトロベンゾイルクロリド(東京化成工業(株)製)48.4g(0.21モル)を145gの酢酸エチルに溶解し、この溶液を滴下ロートを使い、1時間かけてフラスコ中に滴下した。滴下終了後、10℃以下で30分撹拌し、25℃に昇温し、3時間撹拌した。次いで、反応液を酢酸エチル(CH3COOEt)600mLで希釈し、分液ロートに移し、水300mL、飽和重曹水300mL、希塩酸300mL、飽和食塩水で順に洗浄した。分液洗浄後、硫酸マグネシウム30gで乾燥後、エバポレーターを用いて濃縮、真空乾燥し、ジニトロ体(A-1)を61.0g得た。ジニトロ体(A-1)であることはNMRスペクトルから確認した。ジニトロ体(A-1)について1H-NMRによる分析を行った。その結果を以下に示す。
1H-NMRデータ(重クロロホルム、400MHz、内部標準:テトラメチルシラン)δ(ppm)=1.97(s、3H)、4.55-4.57(m、2H)、4.70-4.73(m、2H)、5.63(s、1H)、6.16(s、1H)、9.16-9.17(d、2H)、9.24-9.25(d、1H)
同様にして、後述する構造のジニトロ体(A-2)~(A-9)を合成した。
【0399】
〔ジアミン(AA-1)の合成〕
コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコに、還元鉄(富士フイルム和光純薬(株)製)27.9g(500ミリモル)、塩化アンモニウム(富士フイルム和光純薬(株)製)5.9g(110ミリモル)、酢酸(富士フイルム和光純薬(株)製)3.0g(50ミリモル)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製)0.03gを秤り取り、イソプロピルアルコール(IPA)200mL、純水30mLを添加し、撹拌した。
次いで、ジニトロ体(A-1)16.2gを少量ずつ1時間かけて添加し、30分撹拌した。次に、外温を85℃に昇温し、2時間撹拌し、25℃以下に冷却した後、セライト(登録商標)を使用してろ過した。ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮し、酢酸エチル800mLに溶解した。これを分液ロートに移し、飽和重曹水300mLで2回洗浄し、水300mL、飽和食塩水300mLで順に洗浄した。分液洗浄後、硫酸マグネシウム30gで乾燥後、エバポレーターを用いて濃縮、真空乾燥し、ジアミン(AA-1)を11.0g得た。ジアミン(AA-1)であることはNMRスペクトルから確認した。
1H-NMRデータ(重クロロホルム、400MHz、内部標準:テトラメチルシラン)δ(ppm)=1.95(s、3H)、3.68(s、4H)、4.45-4.47(m、2H)、4.50-4.53(m、2H)、5.58(s、1H)、6.14(s、1H)、6.19-6.20(t、1H)、6.77-6.78(d、2H)
同様にして、ジニトロ体(A-1)に代えてジニトロ体(A-2)~(A-9)を用いることにより、下記構造のジアミン(AA-2)~(AA-9)を合成した。
【化62】
【化63】
【化64】
【0400】
<カルボン酸二無水物の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコに、無水トリメリット酸クロリド(東京化成工業(株)製) 18.5g(0.88モル)を酢酸エチル 200gに溶解し、-10℃以下に冷却した。次いで、ジアミン(AA-1) 10.6g(40ミリモル)、ピリジン 7.12g(90ミリモル)を酢酸エチル 60gに溶解し、これを1時間かけて滴下した。滴下後、-10℃以下で1時間、25℃で1時間撹拌した。次いで、酢酸エチル 500mL、及び、水 300mLを添加し、10分間撹拌した後、これを分液ロートに移し、300mLの水で洗浄した後、200mLの飽和重曹水溶液で2回洗浄し、200mLの希塩酸水溶液、飽和食塩水の順で洗浄した。これを硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレーターで濃縮後、酢酸エチル溶液をヘキサンに晶析した。これをろ過、真空乾燥し、無水物(MA-1)20.0g得た。無水物(MA-1)であることはNMRスペクトルから確認した。無水物(MA-1)について
1H-NMRによる分析を行った結果を以下に示す。
1H-NMRデータ(重ジメチルスルホキシド(DMSO)、400MHz、内部標準:テトラメチルシラン)
δ(ppm)=1.88(s、3H)、4.44-4.47(q、2H)、4.60-4.62(q、2H)、5.70(s、2H)、6.06(s、1H)、8.23-8.26(m、4H)、8.52―8.54(d、2H)、8.65(s、2H)、8.82―8.83(t、1H)、10.98(s、2H)
同様にして、無水物(MA-1)の合成において、ジアミン(AA-1)に代えてジアミン(AA-2)~(AA-7)を用いることにより、下記構造の無水物(MA-2)~(MA-7)を合成した。
無水物(MA-1)の合成において、ジアミン(AA-1)に代えて4,4’-ジアミノベンズアニリドを用いることにより無水物(MA-8)を合成した。
無水物(MA-1)の合成において、ジアミン(AA-1)に代えて下記構造のジアミン(AA-10)を用いることにより無水物(MA-9)を合成した。
ジアミン(AA-10)は、ジアミン(AA-1)と4-ニトロベンゾイルクロリドとを反応させることによりジニトロ体(A-10)を作成した後、上記ジニトロ体(A-10)を、ジニトロ体(A-1)からジアミン(AA-1)を合成する場合と同様の方法により還元して合成した。
無水物(MA-1)の合成において、ジアミン(AA-1)に代えてジアミン
(AA-8)又は(AA-9)を用いることにより、下記構造の(MA-10)及び(MA-11)をそれぞれ合成した。
【化65】
【化66】
【化67】
【化68】
【化69】
【0401】
<ポリイミド樹脂PI-1の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコに、水分を除去しながら、無水物(MA-1) 11.0g(18ミリモル)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製) 0.02gをN-メチルピロリドン(NMP) 40.0gに溶解した。次いで、ジアミン(AA-1) 4.76g(18ミリモル)添加し、25℃で3時間撹拌し、45℃で更に3時間撹拌した。次いで、ピリジン 5.69g(72ミリモル)、無水酢酸 4.59g(45ミリモル)、N-メチルピロリドン(NMP) 37.7g添加し、80℃で、3時間撹拌し、N-メチルピロリドン(NMP)50gを加え、希釈した。
この反応液を、1リットルのメタノールの中で沈殿させ、3,000rpmの速度で15分間撹拌した。樹脂を濾過して取得し、1リットルのメタノールの中で再度30分間撹拌し再び濾過した。得られた樹脂を減圧下で、40℃で1日乾燥し、ポリイミド樹脂PI-1を得た。PI-1の分子量は、Mw(重量平均分子量)=62,100、Mn(数平均分子量)=22,900であった。
PI-1の構造は下記式(PI-1)により表される構造であると推測される。
【化70】
【0402】
<ポリイミド樹脂PI-2の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコに、水分を除去しながら、無水物(MA-2) 9.73g(18ミリモル)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製) 0.02gをN-メチルピロリドン(NMP) 40.0gに溶解した。次いで、ジアミン(AA-4) 5.01g(18ミリモル)添加し、25℃で3時間撹拌し、45℃で更に3時間撹拌した。次いで、ピリジン5.69g(72ミリモル)、無水酢酸 4.59g(45ミリモル)、N-メチルピロリドン(NMP) 34.4g添加し、80℃で、3時間撹拌し、N-メチルピロリドン(NMP)50gを加え、希釈した。
この反応液を、1リットルのメタノールの中で沈殿させ、3,000rpmの速度で15分間撹拌した。樹脂を濾過して取得し、1リットルのメタノールの中で再度30分間撹拌し再び濾過した。得られた樹脂を減圧下で、40℃で1日乾燥し、ポリイミド樹脂PI-2を得た。PI-2の分子量は、Mw=74,200、Mn=29,000であった。
PI-2の構造は下記式(PI-2)により表される構造であると推測される。
【化71】
【0403】
<ポリイミド樹脂PI-3の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコに、水分を除去しながら、無水物(MA-3) 9.45g(18ミリモル)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製) 0.02gをN-メチルピロリドン(NMP) 40.0gに溶解した。次いで、ジアミン(AA-6) 8.27g(18ミリモル)添加し、25℃で3時間撹拌し、45℃で更に3時間撹拌した。次いで、ピリジン 5.69g(72ミリモル)、無水酢酸 4.59g(45ミリモル)、N-メチルピロリドン(NMP) 41.5g添加し、80℃で、3時間撹拌し、N-メチルピロリドン(NMP) 50gを加え、希釈した。
この反応液を、1リットルのメタノールの中で沈殿させ、3,000rpmの速度で15分間撹拌した。樹脂を濾過して取得し、1リットルのメタノールの中で再度30分間撹拌し再び濾過した。得られた樹脂を減圧下で、40℃で1日乾燥し、ポリイミド樹脂PI-3を得た。PI-3の分子量は、Mw=81,000、Mn=32,700であった。
PI-3の構造は下記式(PI-3)により表される構造であると推測される。
【化72】
【0404】
<ポリイミド樹脂PI-4の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコに、水分を除去しながら、無水物(MA-1)11.0g(18ミリモル)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製)0.02gをN-メチルピロリドン(NMP)40.0gに溶解した。次いで、ジアミン(AA-4)5.01g(18ミリモル)添加し、25℃で3時間撹拌し、45℃で更に3時間撹拌した。次いで、ピリジン5.69g(72ミリモル)、無水酢酸4.59g(45ミリモル)、N-メチルピロリドン(NMP)41.5g添加し、80℃で、3時間撹拌し、N-メチルピロリドン(NMP)50gを加え、希釈した。
この反応液を、1リットルのメタノールの中で沈殿させ、3,000rpmの速度で15分間撹拌した。樹脂を濾過して取得し、1リットルのメタノールの中で再度30分間撹拌し再び濾過した。得られた樹脂を減圧下で、40℃で1日乾燥し、ポリイミド樹脂PI-4を得た。PI-4の分子量は、Mw=81,000、Mn=32,700であった。
PI-4の構造は下記式(PI-4)により表される構造であると推測される。
【化73】
【0405】
<ポリイミド樹脂PI-5の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコに、水分を除去しながら、無水物(MA-1) 11.0g(18ミリモル)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製) 0.02gをN-メチルピロリドン(NMP)40.0gに溶解した。次いで、ジアミン(AA-7) 3.75g(18ミリモル)添加し、25℃で3時間撹拌し、45℃で更に3時間撹拌した。次いで、ピリジン5.69g(72ミリモル)、無水酢酸4.59g(45ミリモル)、N-メチルピロリドン(NMP)37.7g添加し、80℃で、3時間撹拌し、N-メチルピロリドン(NMP)50gを加え、希釈した。
この反応液を、1リットルのメタノールの中で沈殿させ、3,000rpmの速度で15分間撹拌した。樹脂を濾過して取得し、1リットルのメタノールの中で再度30分間撹拌し再び濾過した。得られた樹脂を減圧下で、40℃で1日乾燥し、ポリイミド樹脂PI-5を得た。PI-5の分子量は、Mw=32,600、Mn=14,100であった。
PI-5の構造は下記式(PI-5)により表される構造であると推測される。
【化74】
【0406】
<ポリイミド樹脂PI-6の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコに、水分を除去しながら、無水物(MA-9) 15.31g(18ミリモル)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製)0.02gをN-メチルピロリドン(NMP)40.0gに溶解した。次いで、ジアミン(AA-6)7.81g(17ミリモル)添加し、25℃で3時間撹拌し、45℃で更に3時間撹拌した。次いで、ピリジン5.69g(72ミリモル)、無水酢酸4.59g(45ミリモル)、N-メチルピロリドン(NMP)41.5g添加し、80℃で、3時間撹拌し、N-メチルピロリドン(NMP)50gを加え、希釈した。
この反応液を、1リットルのメタノールの中で沈殿させ、3000rpmの速度で15分間撹拌した。樹脂を濾過して取得し、1リットルのメタノールの中で再度30分間撹拌し再び濾過した。得られた樹脂を減圧下で、40℃で1日乾燥し、ポリイミド樹脂PI-6を得た。PI-6の分子量は、Mw=28,400、Mn=11,300であった。
PI-6の構造は下記式(PI-6)により表される構造であると推測される。
【化75】
【0407】
<ポリイミド樹脂PI-7の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコに、水分を除去しながら、無水物(MA-10) 11.5g(18ミリモル)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製) 0.02gをN-メチルピロリドン(NMP) 40.0gに溶解した。次いで、ジアミン(AA-1) 4.76g(18ミリモル)添加し、25℃で3時間撹拌し、45℃で更に3時間撹拌した。次いで、ピリジン 5.69g(72ミリモル)、無水酢酸 4.59g(45ミリモル)、N-メチルピロリドン(NMP) 37.7g添加し、80℃で、3時間撹拌し、N-メチルピロリドン(NMP)50gを加え、希釈した。
この反応液を、1リットルのメタノールの中で沈殿させ、3,000rpmの速度で15分間撹拌した。樹脂を濾過して取得し、1リットルのメタノールの中で再度30分間撹拌し再び濾過した。得られた樹脂を減圧下で、40℃で1日乾燥し、ポリイミド樹脂PI-7を得た。PI-7の分子量は、Mw(重量平均分子量)=35,500、Mn(数平均分子量)=13,900であった。
PI-7の構造は下記式(PI-7)により表される構造であると推測される。
【化76】
【0408】
<ポリイミド前駆体樹脂PA-1の合成例>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコに、水分を除去しながら、無水物(MA-1) 29.3g(47.8ミリモル)をジグリム 100g中に懸濁させた。ジエチレングリコールモノエチルエーテル 13.4g(100ミリモル)、ピリジン 16.8g(132ミリモル)を続いて添加し、60℃の温度で5時間撹拌した。次いで、混合物を-20℃まで冷却した後、塩化チオニル 11.9g(100ミリモル)を90分かけて滴下した。ピリジニウムヒドロクロリドの白色沈澱が得られた。次いで、混合物を室温まで温め、2時間撹拌した後、N-メチルピロリドン(NMP) 30mLを添加し、ジアミン(AA-1) 11.9g(45ミリモル)をN-メチルピロリドン(NMP) 80mL中に溶解させたものを、1時間かけて滴下により添加した。上記ジアミンを添加している間、粘度が増加した。次いで、メタノール 6.0g(188ミリモル)と2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製)0.05gを加え、混合物を2時間撹拌した。次いで、5リットルの水の中でポリイミド前駆体樹脂を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体樹脂混合物を500rpmの速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体樹脂を濾過して取得し、4リットルの水の中で再度30分間撹拌し再び濾過した。次いで、得られたポリイミド前駆体樹脂を減圧下で、45℃で1日乾燥し、ポリイミド前駆体PA-1を得た。このポリイミド前駆体PA-1の分子量は、Mw=30,600、Mn=13,500であった。
PA-1の構造は下記式(PA-1)により表される構造であると推測される。
【化77】
【0409】
<ポリイミド前駆体樹脂PA-2の合成例>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコに、水分を除去しながら、無水物(MA-1) 29.3g(47.8ミリモル)をジグリム 100g中に懸濁させた。トリフルオロー1-プロパノール 8.56g(75ミリモル)、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル3.25g(25ミリモル)ピリジン 16.8g(132ミリモル)を続いて添加し、60℃の温度で5時間撹拌した。次いで、混合物を-20℃まで冷却した後、塩化チオニル 11.9g(100ミリモル)を90分かけて滴下した。ピリジニウムヒドロクロリドの白色沈澱が得られた。次いで、混合物を室温まで温め、2時間撹拌した後、N-メチルピロリドン(NMP)30mLを添加し、ジアミン(AA-1) 11.9g(45ミリモル)をN-メチルピロリドン(NMP)80mL中に溶解させたものを、1時間かけて滴下により添加した。上記ジアミンを添加している間、粘度が増加した。次いで、メタノール 6.0g(188ミリモル)と2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製)0.05gを加え、混合物を2時間撹拌した。次いで、5リットルの水の中でポリイミド前駆体樹脂を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体樹脂混合物を500rpmの速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体樹脂を濾過して取得し、4リットルの水の中で再度30分間撹拌し再び濾過した。次いで、得られたポリイミド前駆体樹脂を減圧下で、45℃で1日乾燥し、ポリイミド前駆体PA-2を得た。このポリイミド前駆体PA-2の分子量は、Mw=28,300、Mn=12,900であった。
PA-2の構造は下記式(PA-2)により表される構造であると推測される。
式(PA-2)中、*はR
1が結合する酸素原子との結合部位を表す。
【化78】
【0410】
<ポリイミド前駆体樹脂PA-3の合成例>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコに、水分を除去しながら、ジアミン(AA-4) 12.5g(45ミリモル)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製) 0.05gをN-メチルピロリドン(NMP)122g溶解させた。次いで、無水物(MA-4) 28.2g(45ミリモル)を添加し、25℃で5時間撹拌した。次いで、N-メチルピロリドン(NMP) 40gを添加した後、3リットルの水の中でポリイミド前駆体樹脂を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体樹脂混合物を500rpmの速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体樹脂を濾過して取得し、4リットルの水の中で再度30分間撹拌し再び濾過した。次いで、得られたポリイミド前駆体樹脂を減圧下で、40℃で1日乾燥し、ポリイミド前駆体PA-3を得た。このポリイミド前駆体PA-3の分子量は、Mw=50,300、Mn=21,500であった。
PA-3の構造は下記式(PA-3)により表される構造であると推測される。
【化79】
【0411】
<ポリイミド前駆体樹脂PA-4の合成例>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコに、水分を除去しながら、無水物(MA-1) 29.3g(47.8ミリモル)をジグリム 100g中に懸濁させた。ジエチレングリコールモノエチルエーテル 13.4g(100ミリモル)、ピリジン 16.8g(132ミリモル)を続いて添加し、60℃の温度で5時間撹拌した。次いで、混合物を-20℃まで冷却した後、塩化チオニル 11.9g(100ミリモル)を90分かけて滴下した。ピリジニウムヒドロクロリドの白色沈澱が得られた。次いで、混合物を室温まで温め、2時間撹拌した後、N-メチルピロリドン(NMP) 30mLを添加し、ジアミン(AA-7) 9.37g(45ミリモル)をN-メチルピロリドン(NMP)80mL中に溶解させたものを、1時間かけて滴下により添加した。上記ジアミンを添加している間、粘度が増加した。次いで、メタノール 6.0g(188ミリモル)と2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製)0.05gを加え、混合物を2時間撹拌した。次いで、5リットルの水の中でポリイミド前駆体樹脂を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体樹脂混合物を500rpmの速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体樹脂を濾過して取得し、4リットルの水の中で再度30分間撹拌し再び濾過した。次いで、得られたポリイミド前駆体樹脂を減圧下で、45℃で1日乾燥し、ポリイミド前駆体PA-4を得た。このポリイミド前駆体PA-4の分子量は、Mw=21,900、Mn=10,100であった。
PA-4の構造は下記式(PA-4)により表される構造であると推測される。
【化80】
【0412】
<ポリイミド前駆体樹脂PA-5の合成例>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコに、水分を除去しながら、無水物(MA-9) 40.7g(47.8ミリモル)をジグリム 180g中に懸濁させた。トリエチレングリコールモノメチルエーテル 16.4g(100ミリモル)、ピリジン 16.8g(132ミリモル)を続いて添加し、60℃の温度で5時間撹拌した。次いで、混合物を-20℃まで冷却した後、塩化チオニル 11.9g(100ミリモル)を90分かけて滴下した。ピリジニウムヒドロクロリドの白色沈澱が得られた。次いで、混合物を室温まで温め、2時間撹拌した後、N-メチルピロリドン(NMP)50mLを添加し、ジアミン(AA-1) 11.89g(45ミリモル)をN-メチルピロリドン(NMP)100mL中に溶解させたものを、1時間かけて滴下により添加した。上記ジアミンを添加している間、粘度が増加した。次いで、メタノール 6.0g(188ミリモル)と2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製)0.05gを加え、混合物を2時間撹拌した。次いで、5リットルの水の中でポリイミド前駆体樹脂を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体樹脂混合物を500rpmの速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体樹脂を濾過して取得し、4リットルの水の中で再度30分間撹拌し再び濾過した。次いで、得られたポリイミド前駆体樹脂を減圧下で、45℃で1日乾燥し、ポリイミド前駆体PA-5を得た。このポリイミド前駆体PA-5の分子量は、Mw=28,000、Mn=13,500であった。
PA-5の構造は下記式(PA-5)により表される構造であると推測される。
【化81】
【0413】
<ポリイミド前駆体樹脂PA-6の合成例>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコに、水分を除去しながら、無水物(MA-11) 29.5g(47.8ミリモル)をジグリム 100g中に懸濁させた。エタノール 4.61g(100ミリモル)、ピリジン 16.8g(132ミリモル)を続いて添加し、60℃の温度で5時間撹拌した。次いで、混合物を-20℃まで冷却した後、塩化チオニル 11.9g(100ミリモル)を90分かけて滴下した。ピリジニウムヒドロクロリドの白色沈澱が得られた。次いで、混合物を室温まで温め、2時間撹拌した後、N-メチルピロリドン(NMP) 30mLを添加し、ジアミン(AA-1) 11.9g(45ミリモル)をN-メチルピロリドン(NMP) 80mL中に溶解させたものを、1時間かけて滴下により添加した。上記ジアミンを添加している間、粘度が増加した。次いで、メタノール 6.0g(188ミリモル)と2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製)0.05gを加え、混合物を2時間撹拌した。次いで、5リットルの水の中でポリイミド前駆体樹脂を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体樹脂混合物を500rpmの速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体樹脂を濾過して取得し、4リットルの水の中で再度30分間撹拌し再び濾過した。次いで、得られたポリイミド前駆体樹脂を減圧下で、45℃で1日乾燥し、ポリイミド前駆体PA-6を得た。このポリイミド前駆体PA-6の分子量は、Mw=25,100、Mn=10,500であった。
PA-6の構造は下記式(PA-6)により表される構造であると推測される。
【化82】
【0414】
<比較例用ポリイミドP-1の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコに、水分を除去しながら、下記式(a-1)で表される無水物(a-1) 11.4g(25ミリモル)をN-メチルピロリドン(NMP) 33.1gに溶解した。次いで、1,3-フェニレンジアミン(東京化成工業(株)製) 2.70g(25ミリモル)を添加し、25℃で3時間撹拌し、45℃で更に3時間撹拌した。次いで、ピリジン7.50g(94.8ミリモル)、無水酢酸6.38g(62ミリモル)、N-メチルピロリドン(NMP)20.0g添加し、80℃で、3時間撹拌し、N-メチルピロリドン(NMP)50gを加え、希釈した。
この反応液を、1.2リットルのメタノールの中で沈殿させ、3,000rpmの速度で15分間撹拌した。樹脂を濾過して取得し、1リットルのメタノールの中で再度30分間撹拌し再び濾過した。得られた樹脂を減圧下で、40℃で1日乾燥し、比較例用ポリイミドP-1を得た。P-1の分子量は、Mw=74,300、Mn=30,100であった。
P-1の構造は下記式(P-1)により表される構造であると推測される。
P-1は、式(1-1)におけるL
11に該当する位置に重合性基を有していないため、特定樹脂には該当しない。
【化83】
【化84】
【0415】
<比較例用ポリイミド前駆体P-2の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコに、水分を除去しながら、無水物(a-1)21.8g(47.8ミリモル)をジグリム 100g中に懸濁させた。ジエチレングリコールモノエチルエーテル 13.4g(100ミリモル)、ピリジン 16.8g(132ミリモル)を続いて添加し、60℃の温度で5時間撹拌した。次いで、混合物を-20℃まで冷却した後、塩化チオニル 11.9g(100ミリモル)を90分かけて滴下した。ピリジニウムヒドロクロリドの白色沈澱が得られた。次いで、混合物を室温まで温め、2時間撹拌した後、N-メチルピロリドン(NMP)30mLを添加し、1,3-フェニレンジアミン(東京化成工業(株)製)4.87(45ミリモル)をNMP50mL中に溶解させたものを、1時間かけて滴下により添加した。上記ジアミンを添加している間、粘度が増加した。次いで、メタノール 6.0g(188ミリモル)と2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(東京化成工業(株)製)0.05gを加え、混合物を2時間撹拌した。次いで、5リットルの水の中でポリイミド前駆体樹脂を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体樹脂混合物を500rpmの速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体樹脂を濾過して取得し、4リットルの水の中で再度30分間撹拌し再び濾過した。次いで、得られたポリイミド前駆体樹脂を減圧下で、45℃で1日乾燥し、比較例用ポリイミドP-2を得た。このポリイミド前駆体P-2の分子量は、Mw=26,300、Mn=12,100であった。
P-2の構造は下記式(P-2)により表される構造であると推測される。
P-2は、式(1-2)におけるL
21に該当する位置に重合性基を有していないため、特定樹脂には該当しない。
【化85】
【0416】
<比較例用ポリイミド前駆体P-3の合成>
コンデンサー及び撹拌機を取り付けたフラスコに、水分を除去しながら、1,12-ドデカンジアミン 2.31g(12.5mmol)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン 1.41g(5.7mmol)及びN-メチルピロリドン 5.0gを加えて室温で15分間攪拌した。次に、1,10-(デカメチレン)ビストリメリテート二無水物 10.00g(19.1mmol)及びN-メチルピロリドン 10.00gの混合溶液を15分間かけて添加した。添加終了後、得られた混合液を60℃まで昇温し、8時間攪拌することで、比較例用ポリイミド前駆体P-3のNMP溶液を得た。得られた溶液中の固形分は40質量%であり、P-3のMwは42,000、Mn=20,000であった。
P-3は、式(1-2)におけるL
21に該当する位置に重合性基を有していないため、特定樹脂には該当しない。
【化86】
【0417】
<実施例及び比較例>
各実施例において、それぞれ、下記表1に記載の成分を混合し、各硬化性樹脂組成物を得た。また、各比較例において、それぞれ、下記表1に記載の成分を混合し、各比較用組成物を得た。得られた硬化性樹脂組成物及び比較用組成物を、細孔の幅が0.8μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターを通して加圧ろ過した。
表1中、「質量部」の欄の数値は各成分の含有量(質量部)を示している。
表1中、例えば、「種類」の欄の「PA-1/PI-1」、「質量部」の欄の「18/14」等の記載は、PA-1を18質量部、PI-1を14質量部それぞれ使用したことを示している。
また、表1中、「-」の記載は該当する成分を含有していないことを示している。
【0418】
【0419】
表1に記載した各成分の詳細は下記の通りである。
【0420】
〔樹脂(特定樹脂又は比較用樹脂)〕
・PI-1~PI-7:上記で合成したポリイミド樹脂PI-1~PI-7
・PA-1~PA-6:上記で合成したポリイミド前駆体樹脂PA-1~PA-6
・P-1~P-3:上記で合成した比較用ポリイミドP-1、比較用ポリイミド前駆体P-2~P-3
【0421】
〔溶剤〕
・DMSO:ジメチルスルホキシド
・GBL:γ-ブチロラクトン
・EL:乳酸エチル
・NMP:N-メチルピロリドン
表1中、DMSO/GBLの記載は、DMSOとGBLをDMSO:GBL=20:80(質量比)の割合で混合して用いたことを示している。
表1中、NMP/ELの記載は、NMPとELをNMP:EL=80:20(質量比)の割合で混合して用いたことを示している。
【0422】
〔光重合開始剤〕
・OXE-01:IRGACURE OXE 01(BASF社製)
・OXE-02:IRGACURE OXE 02(BASF社製)
【0423】
〔重合性化合物〕
・SR-209:SR-209(サートマー社製)
・SR-231:SR-231(サートマー社製)
・ADPH:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業社製)
【0424】
〔重合禁止剤〕
・F-1:1,4-ベンゾキノン
・F-2:4-メトキシフェノール
・F-3:1,4-ジヒドロキシベンゼン
・F-4:2-ニトロソ-1-ナフトール(東京化成工業(株)製)
【0425】
〔金属接着性改良剤〕
・G-1~G-4:下記構造の化合物。以下の構造式中、Etはエチル基を表す。
【化87】
【0426】
〔マイグレーション抑制剤〕
・H-1:1H-テトラゾール
・H-2:1,2,4-トリアゾール
・H-3:5-フェニルテトラゾール
【0427】
〔オニウム塩又は熱塩基発生剤〕
・I-1:下記構造の化合物
【化88】
【0428】
〔添加剤〕
・J-1:N-フェニルジエタノールアミン(東京化成工業(株)製)
【0429】
<評価>
〔耐薬品性の評価〕
各実施例及び比較例において調製した各硬化性樹脂組成物又は比較用組成物を、それぞれ、シリコンウェハ上にスピンコート法により適用し、硬化性樹脂組成物層を形成した。
得られた硬化性樹脂組成物層を適用したシリコンウェハをホットプレート上で、100℃で5分間乾燥し、シリコンウェハ上に15μmの均一な厚さの硬化性樹脂組成物層を形成した。シリコンウェハ上の硬化性樹脂組成物層を、ステッパー(Nikon NSR 2005 i9C)を用いて、500mJ/cm2の露光エネルギーで全面露光し、露光した硬化性樹脂組成物層(樹脂層)を、窒素雰囲気下で、10℃/分の昇温速度で昇温し、表1の「硬化条件」の欄に記載の温度で180分間加熱して、硬化性樹脂組成物層の硬化層(樹脂層)を得た。
得られた樹脂層について下記の薬液に下記の条件で浸漬し、溶解速度を算定した。
薬液:ジメチルスルホキシド(DMSO)と25質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液の90:10(質量比)の混合物
評価条件:薬液中でに樹脂層を75℃で15分間浸漬して浸漬前後の膜厚を比較し、溶解速度(nm/分)を算出した。
評価は下記評価基準に従って行い、評価結果は表1の「耐薬品性」の欄に記載した。溶解速度が小さいほど、耐薬品性に優れるといえる。
-評価基準-
A:溶解速度が200nm/分未満であった。
B:溶解速度が200nm/分以上300nm/分未満であった。
C:溶解速度が300nm/分以上400nm/分未満であった。
D:溶解速度が400nm/分以上であった。
【0430】
〔現像液溶解性(現像性)評価〕
現像液溶解性評価は、以下のようにして実施した。
各実施例及び比較例において調製した各硬化性樹脂組成物又は比較用組成物を、それぞれ、スピンコート法でシリコンウェハ上に適用して硬化性樹脂組成物層を形成した。
得られた硬化性樹脂組成物層を適用したシリコンウェハをホットプレート上で、100℃で5分間乾燥し、シリコンウェハ上に35μmの厚さの均一な硬化性樹脂組成物層を得た。
シリコンウェハ上の硬化性樹脂組成物層を、ステッパー(Nikon NSR 2005 i9C)を用いて、500mJ/cm2の露光エネルギーでi線により露光した。上記露光は、幅50μm、幅70μm、又は、幅100μmの1:1ラインアンドスペースパターンが形成されたバイナリマスクを用いて行った。
上記露光後の硬化性樹脂組成物層に対し、表1の「現像方法(現像液)」の欄に「溶剤」と記載された例においては、露光後の硬化性樹脂組成物層に対して現像液として30℃のシクロペンタノンを用いた現像を行い、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)によるリンスを行った。
表1の「現像方法(現像液)」の欄に「アルカリ」と記載された例においては、露光後の硬化性樹脂組成物層に対して、現像液として30℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いた現像を行い、イオン交換水によるリンスを行った。
露光時に幅100μmの1:1ラインアンドスペース(L/S)パターンを用い、硬化性樹脂組成物層の厚さを35μmとした場合の未露光部の溶解に最低限必要な時間を最小現像時間とし、下記評価基準に従って評価した。最小現像時間が短いほど、現像液溶解性に優れているといえる。評価結果は表1の「現像性」の欄に記載した。
-評価基準-
A:上記最小現像時間が30秒以内であった。
B:上記最小現像時間が30秒を超え60秒以内であった。
C:上記最小現像時間が60秒を超え120秒以内であった。
D:120秒で完全に溶解しなかった。
【0431】
〔解像性評価〕
各実施例又は比較例において、上記現像液溶解性評価と同様の方法により、硬化性樹脂組成物層を有する銅張積層板を作製し、幅70μm、又は幅100μmの1:1ラインアンドスペースパターン(L/Sパターン)を用いた露光を行った。
現像時間を、上記現像液溶解性評価における、最小現像時間の2倍の時間の現像時間とした以外は、上記現像液溶解性評価と同様の方法により現像処理及びリンス処理を施した後、溶解部の銅面が現れている部分を観察し、解像できたかを確認した。
現像後の硬化膜のパターンにおける溶解部について27点の測定を行い、下記評価基準に従って評価した。評価結果は表1の「解像性」の欄に記載した。
-評価基準-
A:全ての50μmのL/Sパターンが解像できた。
B:50μmでは1つ以上が解像せず、全ての70μmのL/Sパターンが解像できた
C:70μmのL/Sパターンの1つ以上が完全に解像せず、すべての100μmのL/Sパターンが解像できた。
D:100μmのL/Sパターンの1つ以上が現像残渣等により、完全に解像しなかった。
【0432】
以上の結果から、本発明に係る、特定樹脂を含む硬化性樹脂組成物は、耐薬品性に優れることがわかる。
比較例1~3に係る比較用組成物は、特定樹脂を含有しない。この比較例1~3に係る比較用組成物は、耐薬品性に劣ることが分かる。
【0433】
<実施例101>
実施例1に記載の硬化性樹脂組成物を、表面に銅薄層が形成された樹脂基材における銅薄層の表面に膜厚が20μmとなるようにスピニングして塗布した。樹脂基材に塗布した硬化性樹脂組成物を、100℃で2分間乾燥した後、ステッパー(ニコン製、NSR1505 i6)を用いて露光した。露光は正方形パターン(縦横各100μmの正方形パターン、繰り返し数10)のマスクを介して、波長365nmで400mJ/cm2の露光量で行い正方形残しパターンを作製した。露光の後、シクロペンタノンで30秒間現像し、PGMEAで20秒間リンスし、パターンを得た。
次いで、窒素雰囲気下で、10℃/分の昇温速度で昇温し、表1の実施例1の「硬化条件」の欄に記載の温度に達した後、この温度で3時間加熱し、再配線層用層間絶縁膜を形成した。この再配線層用層間絶縁膜は、絶縁性に優れていた。また、これらの再配線層用層間絶縁膜を使用して半導体デバイスを製造したところ、問題なく動作することを確認した。