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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154221
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】シート状食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20231012BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20231012BHJP
【FI】
A23L5/00 B
A23L19/00 Z
A23L19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063406
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(71)【出願人】
【識別番号】000110882
【氏名又は名称】ニチモウ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】野上 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】西崎 大祐
【テーマコード(参考)】
4B016
4B035
【Fターム(参考)】
4B016LC07
4B016LE01
4B016LG05
4B016LG06
4B016LG08
4B016LP04
4B016LP08
4B016LP13
4B035LC16
4B035LE06
4B035LG31
4B035LG32
4B035LG34
4B035LP21
4B035LP23
4B035LP24
4B035LP34
4B035LP55
4B035LP59
4B035LT07
(57)【要約】
【課題】既存の海苔製造装置を用いて野菜等のペーストを含む原料液を濾す際の歩留まりを向上させることができるシート状食品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のシート状食品の製造方法は、野菜又は果物を粉砕して得られるペーストを含む原料液を簀に通して濾す工程を備えており、前記簀が、メッシュ状シート(1)を備えているか、又は、前記簀が、凹凸を有する樹脂製棒で構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜又は果物を粉砕して得られるペーストを含む原料液からシート状食品を製造する方法であって、
前記原料液を簀に通して濾す工程を備えており、
前記簀が、メッシュ状シート(1)を備えているか、又は、前記簀が、樹脂表面に凹凸を有する樹脂製棒で構成されている、
シート状食品の製造方法。
【請求項2】
前記メッシュ状シート(1)の目開きが10μm以上である、請求項1に記載のシート状食品の製造方法。
【請求項3】
前記メッシュ状シート(1)の目開きが2000μm以下である、請求項1に記載のシート状食品の製造方法。
【請求項4】
前記簀の少なくとも上部に配置されたスポンジ状吸収体を前記簀に押圧して前記原料液を脱水する工程を更に備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のシート状食品の製造方法。
【請求項5】
前記スポンジ状吸収体の表面に、目開きが10μm以上のメッシュ状シート(2)を備える、請求項4に記載のシート状食品の製造方法。
【請求項6】
前記メッシュ状シート(2)の目開きが550μm以下である、請求項5に記載のシート状食品の製造方法。
【請求項7】
前記メッシュシート状(2)の目開きが、前記メッシュ状シート(1)の目開きよりも小さい、請求項5記載のシート状食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、野菜や果物(以下、野菜等)を原料としたシート状食品が市場に流通している。このようなシート状食品は、野菜等本来の栄養成分、風味及び色味等を有しているため、例えば海苔や生春巻きの皮の代わりに使用したり、細かく裁断して料理にトッピングしたりすること等によって、料理に彩りを簡単に付与することができ、喫食時には野菜等の風味を楽しむことができ、野菜等の栄養成分を摂取することもできる。
【0003】
野菜等を原料としたシート状食品の製造方法として、例えば、特許文献1には、澱粉や小麦などのバインダーと呼ばれる結合剤を混合しない乾燥野菜シートであり、野菜を粉砕して液状又はペースト状にしたあと、抄いたり、絞ったりせず、又は野菜をプレスで加熱圧着したりせず、2mmから0.01mmの間の厚さに乾燥させた乾燥野菜シートが開示されている。また、特許文献2には、野菜及び又は果物を含む食材を酵素入り水槽にて所定時間ボイルする工程と、ボイル済み食材をミンチ若しくはペースト状にした後、調整器内で酵素と共にミンチの均質化を図る工程と、ミンチされた食材をシート状に敷設するとともに水分を絞り取って乾燥する工程とを含むことを特徴とするシート状食品の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-198091号公報
【特許文献2】特開平9-56340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載のシート状食品の製造方法では、野菜等を粉砕してペースト状にした原料液をトレーやコンベア上で乾燥させるため、シート状食品の製造に時間を要したり、トレーのコンベア上での滞留時間が長くなるため、設備が大型化したりするといった懸念点がある。
したがって、本発明の目的は、野菜等の粉砕物から効率良くシート状食品を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる問題を解決するために、本発明者らは、既存の海苔製造装置を使用することを検討した。しかしながら、従来の海苔製造装置を用いて野菜等を原料としたシート状食品を製造したところ、既存の海苔製造装置では野菜等の原料液の多くが海苔簀を通過し、その結果、歩留まりが悪くなり、製造時のロスが多くなることがあった。
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、既存の海苔製造装置において用いられている既存の海苔簀の代わりに特定の構成の簀を採用することにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]野菜又は果物を粉砕して得られるペーストを含む原料液からシート状食品の製造方法であって、
前記原料液を簀に通して濾す工程を備え、
前記簀が、メッシュ状シート(1)を備えているか、又は、前記簀が、樹脂表面に凹凸を有する樹脂製棒で構成されている、
シート状食品の製造方法。
[2]前記メッシュ状シート(1)の目開きが10μm以上である、[1]に記載のシート状食品の製造方法。
[3]前記メッシュ状シート(1)の目開きが2000μm以下である、[1]又は[2]に記載のシート状食品の製造方法。
[4]前記簀の濾し面の少なくとも上部に配置されたスポンジ状吸収体を前記簀に押圧して前記原料液を脱水する工程を更に備える、[1]~[3]のいずれか1項に記載のシート状食品の製造方法。
[5]前記スポンジ状吸収体の表面に、目開きが10μm以上のメッシュ状シート(2)を備える、[4]に記載のシート状食品の製造方法。
[6]前記メッシュ状シート(2)の目開きが550μm以下である、[5]に記載のシート状食品の製造方法。
[7]前記メッシュシート状(2)の目開きが、前記メッシュ状シート(1)の目開きよりも小さい、[5]又は[6]に記載のシート状食品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、野菜等のペーストを含む原料液を濾す際の歩留まりを向上させることができるため、効率の良いシート状食品の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、欠けや穴を生じることがなく、表面が滑らかな野菜等シート状食品を製造することができる。
また、本発明によれば、既存の海苔製造装置で用いられている海苔簀を改良して用いることが可能であり、既存の海苔製造装置で製造することができるため、大型設備の設備投資の必要なく大量生産を開始することができるという利点を有する。さらに、従来のトレー内で乾燥させる方法では製造時間が長くなり、コンベア上でのトレーの滞留時間が長くなるため設備の大型化が必要であるが、本発明によれば係る問題を生じない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のシート状食品の製造方法において、メッシュ状シート(1)を備える簀でペーストを含む原料液を濾し、スポンジ状吸収体で脱水し、乾燥させた後の簀、メッシュ状シート(1)及びシート状食品の断面図を表す模式図である。
図2】比較例1で得られたニンジンシートを表す写真である。
図3】比較例1で得られたニンジンシートを表す拡大写真である。
図4】実施例1で得られたニンジンシートを表す写真である。
図5】実施例1で得られたニンジンシートを表す拡大写真である。
図6】実施例6で得られたニンジンシートを表す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のシート状食品の製造方法を詳述する。
本発明のシート状食品の製造方法は、野菜又は果物(以下、野菜等)を粉砕して得られるペーストを含む原料液を特定の構成の簀(す)に通して濾す工程を含む。
【0011】
本発明で用いられる野菜としては特に限定されず、ニンジン、ダイコン等の根菜類、タマネギ、ジャガイモ等の土物類、ケール、ホウレンソウ等の葉茎菜類、カボチャ、トマト等の果菜類、グリンピース、サヤエンドウ等のマメ科野菜類、トウモロコシ、ベビーコーン等のイネ科野菜類等が挙げられる。中でも、製造安定性に優れる観点からは、野菜は、ニンジン、カボチャ、ジャガイモ、タマネギ又はトウモロコシであることが好ましく、ニンジン又はカボチャであることがより好ましく、ニンジンであることが更に好ましい。
【0012】
本発明で用いられる果物としては特に限定されず、リンゴ、ナシ等の仁果類、モモ、サクランボ等の核果類を含む落葉性果樹、ミカン等の柑橘類を含む常緑性果樹等が挙げられる。
【0013】
野菜等を粉砕する手法は、野菜等をペースト状にすることができれば特に限定されない。このような手法としては、例えば、洗浄、剥皮等の下処理がなされた野菜等をペースト化装置に供する手法が挙げられる。ペースト化装置の方式は特に限定されず、磨石式(砥石式)、切刃式、胴搗式、媒体撹拌式、圧縮式、衝撃式、すり潰式等が挙げられる。中でも、切刃式が好ましい。切刃式装置として、市販のカッターミキサーを使用することができる。ペースト化の条件は、野菜等をペースト化装置によってペーストにすることができれば特に限定されないが、例えば、1000~2500rpmで30秒~3分間カッターミキサーで粉砕すること等が挙げられる。
【0014】
ペースト化装置に供する野菜等は、事前に任意の大きさに切断し、熱水中又は蒸気中で加熱することが好ましい。加熱は、野菜等を殺菌及び軟化する目的で、中心温度75℃以上で1分以上加熱することが好ましい。中心温度75℃以上(大気圧下では100℃以下)で、1~20分間加熱することが好ましい。
得られるペースト中の固形物の粒度は、シート状食品の乾燥を均一に行うことができる観点からは、2000μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましい。上記粒度の下限値は特に限定されないが、簀を通過しにくくする観点からは、例えば100μm以上であることが好ましい。上記粒度範囲は、ペースト化の条件を調節することで調整することができる。粒度は、以下の要領に従って判断する。
まず、ペーストを任意の目開きをもつステンレス篩にかけ、篩上で濾す。濾したのちに篩上に残っているペーストをステンレス篩の目開きよりも大きい粒度のペースト、篩を通ったペーストを目開きよりも細かい粒度のペーストとして扱う。
【0015】
次いで、得られたペーストを含む原料液は、後述する簀に通して濾される。これにより、固形分は簀上に留まり、粒度の小さい画分や水分は除去される。原料液は、簀へ供給しやすいように、水等に分散させて粘度を下げたり、逆に結合剤等を配合して粘度を上げたりして、適切な粘度に調節してもよい。原料液は、ペースト及び水からなることが好ましく、結合剤を含まないことが好ましい。野菜及び又は果物から製造されたペーストに対して添加する水の量は、ペーストを製造するために用いた野菜及び又は果物中の水分量により適宜変更することが好ましいが、例えば、ペーストを製造するために用いた野菜及び又は果物の質量に対して、10~300質量%程度あるいは50~200質量%程度の水を加えて原料液を製造してもよい。原料液の粘度は特に限定されないが、25℃で0.1Pa・s~0.6Pa・sであることが好ましい。
【0016】
原料液の粘度の測定方法は、特に制限されず、細管粘度計、落球粘度計、回転粘度計及び振動粘度計等を利用する方法等が挙げられる。例えば、回転粘度計としてVISCOMETER TVC-10(東機産業株式会社製)(ロータNo.3を装着、回転速度20rpm)を用いることができる。
【0017】
なお、原料液は、上記の如く野菜等を粉砕して得られたものを用いてもよく、別途準備された原料液の冷凍物を解凍して用いてもよい。
【0018】
本発明において用いる簀は、メッシュ状シート(1)を備えているか、あるいは、簀は、樹脂表面に凹凸を有する樹脂製棒で構成されている。「簀」は従来海苔の製造において使用される「海苔簀」と同様の材料(例えば、竹、ポリプロピレン樹脂など)を用いて同様の形状(例えば、φ1~3mmの竹あるいは樹脂を0.1~1mmの間隔で並べて、これらを糸で結合して、10~30cm×10~30cmの枠に納めたもの)を有するように製造された簀をベースとするものであってよく、これに、メッシュ状シート(1)を備えていてもよく、また、従来使用されている樹脂製棒で構成されている「海苔簀」をベースとしてその樹脂表面に凹凸を有するものであってもよい。
【0019】
簀がメッシュ状シート(1)を備えていることで、簀に原料液を通す際の歩留まりを向上させることができる。この場合、簀は、後述するように、表面に凹凸を有する簀であってもよく、かかる凹凸を有さない簀であってもよい。この際、簀上にメッシュ状シート(1)を配置し、その上から原料液を流し込むことが好ましい。なお、本明細書中、スポンジ状吸収体が備えるメッシュ状シートと、簀が備えるメッシュ状シートとが存在するため、便宜上、簀が備えるメッシュ状シートをメッシュ状シート(1)、スポンジ状吸収体が備えるメッシュ状シートをメッシュ状シート(2)と区別して記載することとする。
【0020】
メッシュ状シート(1)の目開きは、10μm以上であることが好ましい。上記目開きが上記下限値以上であると、スポンジ状吸収体を用いた原料液の脱水を効率よく行うことができる。メッシュ状シート(1)の目開きは、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが更に好ましい。
【0021】
メッシュ状シート(1)の目開きは、2000μm以下であることが好ましい。上記目開きが上記上限値以下であると、歩留まり及び脱水性を良好に保ちつつ、原料液の固形分がメッシュ状シートを通過しにくくなるため、メッシュ状シートの孔の壁面に原料液が付着しにくくなり、メッシュ状シートと乾燥後のシート状食品の間の接着が抑制された結果、乾燥させたシート状食品をメッシュ状シートから剥離する際にシート状食品の欠けや穴開きを抑制することができ、更にシート状食品の表面を滑らかにすることができる。メッシュ状シート(1)の目開きは、1100μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましく、100μm以下であることが更により好ましい。
【0022】
なお、メッシュ状シート(1)の目開きは、例えば、接眼レンズに接眼ミクロメーターが装着された実体顕微鏡を使用して測定することができる。実体顕微鏡には、例えばKEYENCE社製のVHX-1000が使用でき、使用するレンズは、検体の目開きに応じて適宜選択でき、例えばKEYENCE社製のVH-Z25が挙げられる。
【0023】
メッシュ状シート(1)の厚みは、特に限定されず、100~1500μmであることが好ましい。メッシュ状シート(1)の厚みは、慣用の手法、例えば接触式膜厚計等により測定することができる。
【0024】
メッシュ状シート(1)の材質は特に限定されない。メッシュ状シート(1)は、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を単独で又は2種以上を含むことが好ましい。中でも、シート状食品の剥離性に優れる観点からは、メッシュ状シート(1)は、フッ素系樹脂を含むことが好ましい。
【0025】
簀が、樹脂表面に凹凸を有する樹脂製棒で構成されていることによっても、簀に原料液を通す際の歩留まりを向上させることができる。樹脂表面の凹凸はどのように形成されていてもよいが、簀を構成する棒の長手方向(軸方向)に垂直な断面視において、円周に沿って凹凸が存在することが好ましく、例えば、そのような凹凸は、樹脂製棒の長手方向(あるいは軸方向)に沿って伸びる溝(凹部)を間隔をあけて形成することにより製造することができる。凹凸の形状は、乾燥後のシート状食品の剥離性が向上すれば、どのような形状であってもよい。以下では、便宜上、表面に凹凸を有する樹脂製棒で構成されている簀を、「凹凸表面簀」と表記し、凹凸を有する樹脂製棒で構成されていない簀を「平滑表面簀」と表記することとする。凹凸表面簀としては、市販のものを用いることができ、市販品としては例えば、株式会社ニチモウワンマン製の「ニベラ」等が挙げられる。
【0026】
歩留まりをより向上させる観点からは、凹凸表面簀を構成する樹脂製棒は、軸方向に捩じられた構造を備えることが好ましい。すなわち、樹脂製棒の凸部は、簀の棒の長手方向(軸方向)に垂直な断面視において、棒の一端から他端に向かって円を描くように配置されていることが好ましい。樹脂製棒の材質は特に限定されず、例えばポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を用いることができる。
【0027】
メッシュ状シート(1)を備えているか、あるいは、樹脂表面に凹凸を有する樹脂製棒で構成されている、本発明の簀を用いて濾された原料液は、更に簀の濾し面の少なくとも上部、好ましくは上部及び下部、に配置されたスポンジ状吸収体を簀に押圧して脱水されることが好ましい。スポンジ状吸収体は、原料液に含まれる水分を毛細管作用により吸水させて脱水するために用いられる。スポンジ状吸収体は、簀により原料液を濾した後に、前記簀の濾し面の少なくとも上部においてもよく、あるいは上部及び下部から挟むように配置してもよく、さらに従来の海苔製造装置に使用されているようなプレス装置のプレス面に接着させて配置してもよい。
使用されるスポンジ状吸収体は特に限定されず、10~50mm程度の厚みを有する樹脂(例えば、ポリウレタン)製の多孔質体を用いることができる。スポンジ状吸、収体は、少なくとも上部にあればよいが、好ましくは簀を挟むように一対をなして上部及び下部に用いられる。本発明では、スポンジ状吸収体の原料液と接する側の表面に、目開きが10μm以上のメッシュ状シート(2)を備えていることが好ましい。かかる構成を採用することにより、スポンジ状吸収体を用いた原料液の脱水を効率よく行うことができる。上記目開きは45μm以上であることがより好ましく、55μm以上であることが更に好ましく、65μm以上であることが特に好ましい。
【0028】
スポンジ状吸収体を簀に押圧する際の圧力は特に限定されず、0.5MPa~5MPaであることが好ましい。上記圧力が上記範囲内であると、脱水を効率よく行うことができ、乾燥時間を短縮することができると同時に、スポンジ状吸収体への原料液の移行を抑制することができる。
【0029】
メッシュ状シート(2)の材質は特に限定されず、メッシュ状シート(1)に用いることができる材質を使用することができる。メッシュ状シート(2)は、メッシュ状シート(1)とは異なる材質のものであってもよいし、同じ材質のものであってもよい。すなわち、メッシュ状シート(2)は、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を単独で又は2種以上を含むことが好ましく、シート状食品の剥離性に優れる観点からは、メッシュ状シート(2)は、フッ素系樹脂を含むことが好ましい。
【0030】
メッシュ状シート(2)の目開きは550μm以下であることが好ましい。上記目開きが上記上限値以下であると、歩留まり及び脱水性を良好に保ちつつ、原料液の固形分がメッシュ状シートを通過しにくくなるため、メッシュ状シート(2)と原料液の接着がより抑制され、乾燥させたシート状食品をメッシュ状シート(2)から剥離する際にシート状食品の欠けや穴開きをより抑制することができ、シート状食品の表面を滑らかにすることができる。上記目開きは500μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることが更に好ましく、300μm以下であることが特に好ましい。メッシュ状シート(2)の目開きの測定は、上述したメッシュ状シート(1)の目開きの測定と同様の手法によって行うことができる。
【0031】
メッシュシート状(2)の目開きは、メッシュ状シート(1)の目開きよりも小さいことが好ましい。かかる構成を採用することにより、スポンジ吸収体を簀に押圧して離したときに、野菜等がメッシュ状シート(2)に付着することが抑制され、結果として得られるシート状食品の欠けや穴開きを抑制することができる。この場合のメッシュ状シート(2)の目開きとメッシュ状シート(1)の目開きとの差は、10μm~1000μmであることが好ましく、20μm~500μmであることがより好ましい。
【0032】
このように脱水された原料液は、乾燥させてシート状食品を得る工程を経てもよい。乾燥条件は特に限定されず、例えば、簀ごと30~60℃の温度で1~5時間乾燥させてもよい。乾燥後の簀、メッシュ状シート(1)及びシート状食品の断面図を表す模式図を図1に示す。図1に示されるように、乾燥後は、簀3上にメッシュ状シート(1)2が積層され、更にシート状食品1が積層されている。乾燥によって得られるシート状食品の水分含有率は特に限定されないが、20質量%以下であることが好ましい。
【0033】
上記乾燥されたシート状食品は、次いで簀から剥離されることが好ましい。このようにして得られるシート状食品の厚みは特に限定されず、1μm~1000μmであることが好ましく、100μm~800μmであることがより好ましく、150μm~500μmであることが更に好ましい。シート状食品の大きさも特に限定されず、一辺15~25cmの正方形又は長方形とすることができる。
【実施例0034】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0035】
<ペースト(ニンジンペースト)の製造>
ニンジンを洗浄後、必要に応じて剥皮及び適当なサイズに切断し、沸騰水中で15分間加熱し、カッターミキサーを用いて2000rpmで3分間粉砕処理することでニンジンペーストを得た。
【0036】
<シート状食品(ニンジンシート)の製造>
実施例1
上記で得られたニンジンペースト100gと、水100gを混合し撹拌してペーストを含む原料液(粘度(25℃):0.3~0.4Pa・s)を得た。得られた原料液を、平滑表面簀上に70μmの目開きを有するメッシュ状シート(1)(SEFER社製、「PFK」、フッ素系樹脂を含む)を貼付したものの上に200g塗布した(いずれも塗布面積は21cm×19cm=399cm2)。塗布してから1分静置後の簀上の原料液の質量を測定し、歩留まりを下記の式に従って算出した。
歩留まり(質量%)=(簀に原料液を塗布して1分静置後の質量/200)×100
その後、40μmの目開きを有するメッシュ状シート(2)(SEFER社製、「PVDF」、フッ素系樹脂を含む)を貼付したスポンジ状吸収体を、前述の簀の上下に配置して、押圧(プレス)して原料液を脱水させ、2MPaの圧力で3秒プレスした後、水分含有率が10質量%となるまで45℃で乾燥させ、メッシュ状シート(1)から剥離してシート状食品(ニンジンシート)を得た。得られたシート状食品について、下記の評価基準に従って評価した。
【0037】
<評価>
(1)脱水性の評価基準
○:プレス時に原料液の水分を十分に脱水できる
×:プレス時に原料液の水分を十分に脱水できない
(2)剥離性の評価基準
○:プレス及び乾燥後、剥離したシート状食品に合計36mm2以上の四方の欠けや穴がない
×:プレス及び乾燥後、剥離したシート状食品に合計36mm2以上の四方の欠けや穴がある
【0038】
実施例2~17、比較例1~6
野菜の種類、簾の種類及び簀に貼付したメッシュ状シート(1)の種類を下記表1~表3に記載の通りに変更したこと以外は実施例1と同様にしてシート状食品を得た。用いた凹凸表面簀は、株式会社ニチモウワンマン社製の「ニベラ A-04EJ」であり、当該簀を構成する樹脂製棒は表面に長手方向に沿った溝(表面に凹凸)を有しており、さらに各樹脂製棒が捩じられた構造を有していた。平滑表面簀は市販の株式会社ニチモウワンマン社製のニベラA-16であった。
結果を下記表1~表3に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
上記の結果より、従来の海苔簀(平滑表面簀に相当)でシート状食品を製造すると、脱水性は優れるものの、歩留まりが悪く、シート状食品を製造する際のロスが大きかった(比較例1~6)。また、図2からもわかるとおり、乾燥後のシートの一部が欠けてしまい、図3に示されるとおり、乾燥後の表面が滑らかではなくぼそぼそした状態であった。一方、平滑表面簀にメッシュ状シート(1)を貼付した場合、メッシュ状シート(1)を備えていない平滑表面簀を用いた場合と比較して、歩留まりを向上させることができることが分かった(実施例1~7)。更に、メッシュ状シート(1)の目開きが10μm以上であれば、原料液の脱水性を向上することができた(実施例1~6)。野菜の種類を変更した場合も同様の結果が得られた(実施例8~17)。また、メッシュ状シート(1)の目開きが2000μm以下であると、原料液の固形分がメッシュ状シート(1)をより通過しにくくなり、乾燥したニンジンシートを剥離する際に欠けや穴を生じることがなく(剥離性が向上)、表面も滑らかなものが得られた(実施例1~4、図2~5)。
【0043】
また、従来の平滑表面簀に代えて、樹脂製棒が樹脂表面に凹凸を有する構造を備えている凹凸表面簀を用いた場合(実施例6)であっても、歩留まりが上昇し、脱水性及び剥離性にも優れていた。この場合も、得られたニンジンシートに欠けや穴が発生することが抑制された(図6)。
【0044】
実施例18~20、比較例7
メッシュ状シート(1)を貼付した平滑表面簾を凹凸表面簾に変え、メッシュ状シート(2)の目開きを下記表4に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様にニンジンシートを得た。得られたニンジンシートについて、脱水性及び剥離性の評価を上記と同様に評価した。評価結果を下記表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
上記の結果より、スポンジ状吸収体の表面に貼付されたメッシュ状シート(2)の目開きが10μm以上であることにより、脱水性に優れることが分かった(実施例18~20)。また、メッシュ状シート(2)の目開きが550μm未満であれば、脱水性を低下させることなく、乾燥したニンジンシートを剥離する際に欠けや穴を生じることがなく、表面も滑らかなものが得られた(実施例18、19)。
【0047】
実施例21~28
メッシュ状シート(2)及びメッシュ状シート(1)の目開きを下記表5に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様にニンジンシートを得た。スポンジ状吸収体を用いて原料液をプレス脱水した後(乾燥前)における、ニンジンのメッシュ状シート(2)への付着性の評価を下記の評価基準に従って評価した。評価結果を下記表5に示す。
【0048】
<ニンジンの付着性の評価基準>
○:プレス後、ニンジンがメッシュ状シート(1)に付着していない
×:プレス後、ニンジンがメッシュ状シート(1)に付着している
【0049】
【表5】
【0050】
上記の結果より、スポンジ状吸収体側に貼付されているメッシュ状シート(2)の目開きが、簀側に貼付されているメッシュ状シート(1)の目開きよりも小さい場合に、ニンジンのメッシュ状シート(2)への付着が抑制できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6