(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154282
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】電磁波シールド積層体、被覆材又は外装材、電気・電子機器及び電磁波シールド積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20231012BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
H05K9/00 Q
B32B15/08 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063512
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】政井 一高
【テーマコード(参考)】
4F100
5E321
【Fターム(参考)】
4F100AB00A
4F100AB17A
4F100AB33A
4F100AK42B
4F100BA08
4F100EJ32
4F100GB41
4F100JD08
4F100JG04B
5E321AA23
5E321BB21
5E321BB23
5E321BB25
5E321CC16
5E321GG05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シールド特性が良好な電磁波シールド積層体、該電磁波シールド積層体を備えた電気・電子機器用の被覆材又は外装材及び該被覆材又は外装材を備えた電気・電子機器を提供する。
【解決手段】少なくとも2層の金属層(銅箔110、112)と絶縁層(PETフィルム120、122、124)とを備え、金属層と絶縁層とが交互に積層された電磁波シールド積層体100であって、電磁波シールド積層体の端部の厚みTが変化するテーパ部115を有する。厚み方向において各テーパ部の先端における、絶縁層122を介して隣接し合う金属層間の距離Aが、該テーパ部以外である平坦部116の中央部位における、絶縁層124を介して隣接し合う金属層間の距離Bよりも短く、金属層同士がいずれも接触していない。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層の金属層と絶縁層とを備え、該金属層と該絶縁層とが交互に積層された電磁波シールド積層体であって、
当該電磁波シールド積層体の端部の厚みが変化するテーパ部を有し、
厚み方向において各テーパ部の先端における、絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離Aが、該テーパ部以外である平坦部の中央部位における、絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離Bよりも短く、
金属層同士が、いずれも接触していない、電磁波シールド積層体。
【請求項2】
当該電磁波シールド積層体の平坦部の厚みTに対する各テーパ部の長さL1の割合L1/Tが2000%以下である、請求項1に記載の電磁波シールド積層体。
【請求項3】
前記距離Bに対する前記距離Aの割合A/Bが75%以下である、請求項1又は2に記載の電磁波シールド積層体。
【請求項4】
当該電磁波シールド積層体の最上層及び最下層が、金属層である、請求項1又は2に記載の電磁波シールド積層体。
【請求項5】
隣接し合う金属層間に介する絶縁層が、該金属層の先端よりも外側にはみ出したはみ出し部を有する、請求項1又は2に記載の電磁波シールド積層体。
【請求項6】
金属層同士が、いずれも電気的に接続されていない、請求項1又は2に記載の電磁波シールド積層体。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の電磁波シールド積層体を備えた電気・電子機器用の被覆材又は外装材。
【請求項8】
請求項7に記載の被覆材又は外装材を備えた電気・電子機器。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の電磁波シールド積層体の製造方法であって、
少なくとも2層の金属層と絶縁層とを用いて、該金属層と該絶縁層とを交互に積層された中間積層体の最外層側から凸部を有するノッチ加工パンチで該中間積層体にノッチを形成する工程と、
前記ノッチを形成後、前記ノッチの一部を切断するように厚み方向に前記中間積層体を打ち抜くことで電磁波シールド積層体を得る工程とを含む、電磁波シールド積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド積層体、被覆材又は外装材、電気・電子機器及び電磁波シールド積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車といった二次電池を搭載した環境配慮型自動車では、搭載した二次電池から発生する直流電流を、インバータを介して交流電流に変換した後、必要な電力を交流モータに供給し、駆動力を得る方式を採用するものが多く、インバータのスイッチング動作などに起因して電磁波が発生する。電磁波は、車載の音響機器や無線機器等の受信障害となることから、インバータなどを金属製の筐体内に収容して、電磁波シールドするという対策が行われている。
【0003】
しかしながら、金属製の筐体は、電磁波シールド特性が良好であるものの、重いため燃費が低下するとともに、コストも増大する。そこで、金属製の筐体に代わる電磁波シールド筐体の開発が望まれている。
【0004】
また、自動車に限らず、通信機器、ディスプレイ及び医療機器を含め多くの電気・電子機器から電磁波が放射される。電磁波は精密機器の誤作動を引き起こす可能性があり、更には、人体に対する影響も懸念される。このため、電磁波シールド材を用いて電磁波の影響を軽減する各種の技術が開発されてきた。例えば、特許文献1には、銅箔と樹脂フィルムとを積層してなる銅箔複合体を電磁波シールド材として用いることが記載されている。また、特許文献2には、少なくとも二枚の金属箔が固体状の絶縁層を介して積層された構造を有する電磁波シールド材であって、絶縁層を介して積層された二枚以上の金属箔のうち、少なくとも二枚が電気的に接続されている電磁波シールド材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】平成7-290449号公報
【特許文献2】特開2017-45810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、優れたシールド特性を得るのに必要な電磁波シールド材の厚みをかなり大きくする必要があり、自動車における燃費向上の観点から十分な軽量化が達成できない。
【0007】
また、特許文献2では、電気的に接続されている形態として、例えば金属箔間の絶縁層の長さより金属箔の長さを長くし、金属箔同士を接触させることが記載されている(特許文献2の段落0073、
図4参照)。これにより、電磁波シールド材自体の軽量化を図るだけでなく、シールド特性が良好に改善されている。しかしながら、電磁波シールド材の製造において、金属箔間の絶縁層の長さより金属箔の長さを長くすることが必要となるので、ロール状の金属箔と絶縁層をラミネート加工等により貼り合わせて積層した電磁波シールド材をスリットして所望のサイズの電磁波シールド材を大量生産することに不向きであるというのが実情である。
したがって、特許文献1、2に記載の電磁波シールド材には未だ改善の余地がある。
【0008】
そこで、本発明の一実施形態において、シールド特性が良好な電磁波シールド積層体を提供することを目的とする。また、本発明の更なる実施形態において、比較的容易に製造することが可能な電磁波シールド積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は一側面において、少なくとも2層の金属層と絶縁層とを備え、該金属層と該絶縁層とが交互に積層された電磁波シールド積層体であって、当該電磁波シールド積層体の端部の厚みが変化するテーパ部を有し、厚み方向において各テーパ部の先端における、絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離Aが、該テーパ部以外である平坦部の中央部位における、絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離Bよりも短く、金属層同士が、いずれも接触していない、電磁波シールド積層体である。
【0010】
本発明に係る電磁波シールド積層体の一実施形態においては、当該電磁波シールド積層体の平坦部の厚みTに対する各テーパ部の長さL1の割合L1/Tが2000%以下である。
【0011】
本発明に係る電磁波シールド積層体の一実施形態においては、前記距離Bに対する前記距離Aの割合A/Bが75%以下である。
【0012】
本発明に係る電磁波シールド積層体の一実施形態においては、当該電磁波シールド積層体の最上層及び最下層が、金属層である。
【0013】
本発明に係る電磁波シールド積層体の一実施形態においては、隣接し合う金属層間に介する絶縁層が、該金属層の先端よりも外側にはみ出したはみ出し部を有する。
【0014】
本発明に係る電磁波シールド積層体の一実施形態においては、金属層同士が、いずれも電気的に接続されていない。
【0015】
また、本発明は別の側面において、上記いずれかに記載の電磁波シールド積層体を備えた電気・電子機器用の被覆材又は外装材である。
【0016】
また、本発明は別の側面において、上記の被覆材又は外装材を備えた電気・電子機器である。
【0017】
さらに、本発明は別の側面において、上記いずれかに記載の電磁波シールド積層体の製造方法であって、少なくとも2層の金属層と絶縁層とを用いて、該金属層と該絶縁層とを交互に積層された中間積層体の最外層側から凸部を有するノッチ加工パンチで該中間積層体にノッチを形成する工程と、前記ノッチを形成後、前記ノッチの一部を切断するように厚み方向に前記中間積層体を打ち抜くことで電磁波シールド積層体を得る工程とを含む、電磁波シールド積層体の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施形態によれば、シールド特性が良好な電磁波シールド積層体を提供できる。また、本発明の更なる実施形態によれば、比較的容易に製造することが可能な電磁波シールド積層体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る電磁波シールド積層体の製造方法の一例を説明するためのフロー図である。
【
図2】従来の電磁波シールド積層体の製造方法の一例を説明するためのフロー図である。
【
図3A】試験例1で得られた電磁波シールド積層体をマイクロスコープにより撮影したことで得られた拡大写真である。
【
図3B】試験例2で得られた電磁波シールド積層体をマイクロスコープにより撮影したことで得られた拡大写真である。
【
図4】実施例1で得られた電磁波シールド積層体の概略正面図である。
【
図5】比較例1で得られた電磁波シールド積層体の概略正面図である。
【
図6】比較例2で得られた電磁波シールド積層体の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明は各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。
なお、本明細書において、「テーパ部」は、金属層の先端eから重心cまでの水平長さL0に対する各テーパ部の水平長さL1の割合L1/L0が20%以内である(
図4参照)。また、「テーパ部以外」は、電磁波シールド積層体の厚みが実質的に変化しない平坦部である。
【0021】
[1.電磁波シールド積層体]
本発明に係る電磁波シールド積層体の一実施形態では、少なくとも2層の金属層と絶縁層とを備え、該金属層と該絶縁層とが交互に積層される。そして、一実施形態においては、電磁波シールド積層体の端部の厚みが変化するテーパ部を有し、各テーパ部の先端(先端面)における、絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離Aが、該テーパ部以外である平坦部の中央部位における、絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離Bよりも短く、金属層同士が、いずれも接触していないことが肝要である。一実施形態においては、シールド特性が良好である。
なお、本発明においては、金属層同士がいずれも接触していないので、金属層同士がいずれも電気的に接続されていない。
【0022】
従来、特許文献1に記載の積層体のように、電磁波シールド材として金属箔と絶縁層とが交互に積層されていた。シールド特性の向上を図るため、1層の絶縁層を介して隣接し合う金属箔間の距離を狭めるために、該絶縁層の全体厚みを薄くすることを検討した。しかしながら、1MHzにおいてのシールド特性が向上せず、低下することがあった。この理由としては、絶縁層の全体厚みを薄くしたことで、電磁波の減衰効果が低下したと推察される。
【0023】
そこで、本発明者は上記事情を考慮し鋭意検討を重ねたところ、少なくとも2層の金属層と、絶縁層とを備え、該金属層と該絶縁層とが交互に積層され、かかる積層体の端部の厚みが変化するテーパ部を有し、厚み方向においてテーパ部の先端における絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離Aが、厚み方向において平坦部の中央部位における絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離Bよりも短く、金属層同士が、いずれも接触していないことで、電磁波シールド特性が良好になることを見出した。また、このような電磁波シールド積層体については、特許文献2と異なり、厚み方向に垂直な方向における絶縁層の長さより金属層の長さを長くせず、比較的容易に製造することが可能である。
以下、本発明の好適な態様を説明する。
【0024】
一実施形態では、金属層と絶縁層とを交互に積層することで製造可能であり、少なくとも2層の金属層が絶縁層を介して積層された構造を有する。電磁波シールド特性の観点からは、本発明に係る電磁波シールド積層体は、一例としては、以下が挙げられる。括弧で表された層は適宜加えてもよいことを表す。電磁波シールド特性の観点からは、電磁波シールド積層体の最外層として、最上層と最下層の少なくとも一方は金属層であることが好ましく、電磁波シールド積層体の最上層と最下層の両方が金属層であることが好ましい。
(1)(絶縁層)/金属層/絶縁層/金属層/(絶縁層)
(2)(絶縁層)/金属層/絶縁層/金属層/絶縁層/金属層/(絶縁層)
(3)(絶縁層)/金属層/絶縁層/金属層/絶縁層/金属層/絶縁層/金属層/(絶縁層)
(1)~(3)においては、一つの「金属層」は絶縁層を介することなく複数の金属層を積層して構成することができ、一つの「絶縁層」も金属層を介することなく複数の絶縁層を積層して構成することができる。つまり、絶縁層を介することなく積層された複数の金属層は1層の金属層として捉えることができ、金属層を介することなく積層された複数の絶縁層は1層の絶縁層として捉えることができる。また、絶縁層や金属層以外の層を設けることもできる。
【0025】
このように、金属層と絶縁層を交互に積層することで、電磁波シールド特性の顕著な改善が見られるが、電磁波シールド積層体の端部の厚みが変化するテーパ部を有し、厚み方向において各テーパ部の先端(先端面)における、絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離Aが、該テーパ部以外の平坦部の中央部位における、絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離Bよりも短く、金属層同士が、いずれも接触していないことで更なる電磁波シールド特性の改善を図ることができる。理論によって本発明が制限されることを意図しないが、これは以下の理由によると考えられる。すなわち、金属層間の距離が短くなることにより、絶縁層から外部に漏れる電磁波の量が少なくなり、受信アンテナに回りこむ電磁波の強度が弱まることでシールド効果が上昇すると考えられる。
【0026】
(距離A、距離B)
一実施形態においては、絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離を短くする観点から、距離Bに対する距離Aの割合A/Bが、上限側として75%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、40%以下であることが更により好ましい。一方、上記割合A/Bが、下限側として、典型的に8%以上、より典型的に10%以上である。
より具体的に、距離Aが、上限側として例えば250μm以下であり、また例えば150μm以下である一方で、下限側として例えば1.5μm以上であり、また例えば2.0μm以上である。また、距離Bが、下限側として例えば20μm以上であり、また例えば25μm以上である一方で、上限側として例えば300μm以下であり、また例えば250μm以下である。
なお、距離A、距離Bの測定方法の一例を以下に説明する。
電磁波シールド積層体を厚み方向に切断し、その切断面をマイクロスコープ(光学顕微鏡)等で観察することにより測定することができる。すなわち、距離A、距離Bは各々厚み方向における金属層間の垂直距離を意味する。
【0027】
(テーパ部長さ)
加工容易性の観点から、当該電磁波シールド積層体の平坦部の厚みTに対する各テーパ部の水平長さL1の割合L1/Tが2000%以下であることが好適である(
図4参照)。上記割合を超える場合、打ち抜き加工後にテーパ加工の工程を追加する必要が生じる。一方、上記割合L1/Tは、下限側として、典型的に30%以上、より典型的には50%以上である。
なお、テーパ部の長さについては、先述した距離A、距離Bの測定方法と同様に、マイクロスコープで測定可能である。
【0028】
(金属層)
一実施形態において、使用する金属層の材料としては特に制限はないが、交流磁界や交流電界に対するシールド特性を高める観点からは、導電性に優れた金属材料とすることが好ましい。具体的には、導電率が1.0×106S/m(20℃の値。以下同じ。)以上の金属によって形成することが好ましく、金属の導電率が10.0×106S/m以上であるとより好ましく、30.0×106S/m以上であると更により好ましく、50.0×106S/m以上であると最も好ましい。このような金属としては、導電率が約9.9×106S/mのFe、導電率が約14.5×106S/mのNi、導電率が約39.6×106S/mのAl、導電率が約58.0×106S/mのCu、及び導電率が約61.4×106S/mのAgが挙げられる。導電率とコストの双方を考慮すると、Al又はCuを採用することが実用性上好ましい。本発明に係る電磁波シールド積層体中に使用する金属層はすべて同一の金属であってもよいし、層毎に異なる金属を使用してもよい。また、上述した金属の合金を使用することもできる。金属層表面には接着促進、耐環境性、耐熱及び防錆などを目的とした各種の表面処理層が形成されていてもよい。
【0029】
例えば、金属層が最外層となる場合に必要とされる耐環境性、耐熱性を高めることを目的として、Auめっき、Agめっき、Snめっき、Niめっき、Znめっき、Sn合金めっき(Sn-Ag、Sn-Ni、Sn-Cuなど)、クロメート処理などを施すことができる。これらの処理を組み合わせてもよい。コストの観点からSnめっきあるいはSn合金めっきが好ましい。
【0030】
また、金属層と絶縁層との密着性を高めることを目的として、クロメート処理、粗化処理、Niめっきなどを施すことができる。これらの処理を組み合わせてもよい。粗化処理が密着性を得られやすく好ましい。
【0031】
また、直流磁界に対するシールド特性を高めることを目的として、比透磁率の高い金属層を設けることができる。比透磁率の高い金属層としてはFe-Ni合金めっき、Niめっきなどが挙げられる。
【0032】
金属層として銅箔を使用する場合、シールド特性が向上することから、純度が高いものが好ましく、純度は好ましくは99.5質量%以上、より好ましくは99.8質量%以上である。銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔、メタライズによる銅箔等を用いることができるが、屈曲性及び成形加工性に優れた圧延銅箔が好ましい。銅箔中に合金元素を添加して銅合金箔とする場合、これらの元素と不可避的不純物との合計含有量が0.5質量%未満であればよい。特に、銅箔中に、Sn、Mn、Cr、Zn、Zr、Mg、Ni、Si、及びAgから選ばれる少なくとも1種以上を合計で50~2000質量ppm、及び/又はPを10~50質量ppm含有すると、同じ厚みの純銅箔より伸びが向上するので好ましい。
【0033】
一実施形態において使用する金属層の厚みは、1層当たり4μm以上であることが好ましい。4μm未満だと金属層の延性が著しく低下し、電磁波シールド積層体の成形加工性が不十分となる場合がある。また、1層当たりの層の厚みが4μm未満だと優れた電磁波シールド特性を得るために多数の金属層を積層する必要が出てくるため、製造コストが上昇するという問題も生じる。このような観点から、金属層の厚みは1層当たり10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることが更により好ましく、20μm以上であることが更により好ましく、25μm以上であることが更により好ましく、30μm以上であることが更により好ましい。一方で、1層当たりの金属層の厚みが100μmを超えても成形加工性を悪化させることから、金属層の厚みは1層当たり100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、45μm以下であることが更により好ましく、40μm以下であることが特に好ましい。
【0034】
金属層と金属層との間には絶縁層が介されるため、金属層が少なくとも2層存在すれば、本発明の効果を奏することができる。ただし、金属層の積層数は多い方がシールド特性は向上するものの、積層数を多くすると積層工程が増えるので製造コストの増大を招き、また、シールド特性の向上効果も飽和する傾向にあるため、電磁波シールド積層体中の金属層は5層以下であればよく、4層以下であればよい。金属層が3層以上の場合には、少なくとも一方の最外層の金属層または最外層に隣接する金属層と、絶縁層を介して隣接し合う金属層との間の距離Bに対する距離Aの割合A/Bが、75%以下であればよい。
【0035】
すなわち、一実施形態においては、金属層の合計厚みを15~150μmとすることができ、100μm以下とすることもでき、80μm以下とすることもでき、60μm以下とすることもできる。
【0036】
(絶縁層)
複数の金属層を積層することによる電磁波シールド特性の顕著な改善は、金属層と金属層の間に絶縁層を介することで得られる。金属層同士を直接重ねても、金属層の合計厚みが増えることでシールド特性が向上するものの、顕著な向上効果は得られない。これは、金属層間に絶縁層が存在することで電磁波の反射回数が増えて、電磁波が減衰されることによると考えられる。
【0037】
絶縁層としては、金属層とのインピーダンスの差が大きいものの方が、優れた電磁波シールド特性を得る上では好ましい。大きなインピーダンスの差を生じさせるには、絶縁層の比誘電率が小さいことが必要であり、具体的には10(20℃の値。以下同じ。)以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましく、3.5以下であることが更により好ましい。比誘電率は原理的には1.0より小さくなることはない。一般的に手に入る材料では低くても2.0程度であり、これ以上低くして1.0に近づけてもシールド特性の上昇は限られている一方、材料自体が特殊なものになり高価となる。コストと作用との兼ね合いを考えると、比誘電率は2.0以上であることが好ましく、2.2以上であることがより好ましい。
【0038】
具体的には、絶縁層を構成する材料としてはガラス、金属酸化物、紙、天然樹脂、合成樹脂が挙げられ、加工性の観点から合成樹脂が好ましい。これらの材料には炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維などの繊維強化材を混入させることも可能である。合成樹脂としては、入手のしやすさや加工性の観点から、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)及びPBT(ポリブチレンテレフタレート)等のポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリアセタール、フッ素樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ABS樹脂、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、ポリ塩化ビニル、PC(ポリカーボネート)、ポリスチレン、スチレンブタジエンゴム等が挙げられ、これらの中でも加工性、コストの理由によりPET、PEN、ポリアミド、ポリイミドが好ましい。合成樹脂はウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、アミド系などのエラストマーとすることもできる。更には、合成樹脂自体が接着剤の役割を担ってもよく、この場合は金属層が接着剤を介して積層された構造となる。接着剤としては特に制限はないが、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン系、ポリエステル系、シリコーン樹脂系、酢酸ビニル系、スチレンブタジエンゴム系、ニトリルゴム系、フェノール樹脂系、シアノアクリレート系などが挙げられ、製造しやすさとコストの理由により、ウレタン系、ポリエステル系、酢酸ビニル系が好ましい。
【0039】
樹脂材料はフィルム状や繊維状の形態で積層することができる。また、金属層に未硬化の樹脂組成物を塗布後に硬化させることで樹脂層を形成してもよいが、金属層に貼付可能な樹脂フィルムとするのが製造しやすさの理由により好ましい。特にPETフィルムを好適に用いることができる。特に、PETフィルムとして2軸延伸フィルムを用いることに
より、シールド材の強度を高めることができる。
【0040】
絶縁層の厚みは特に制限されないが、テーパ部における1層の絶縁層の厚みが、平坦部の中央部位における1層の絶縁層の厚みよりも薄いことが好適である。テーパ部における1層の絶縁層の厚みは、上限側として例えば250μm以下であり、また例えば150μm以下である。一方、上記テーパ部における1層の絶縁層の厚みは、下限側として例えば1.5μm以上であり、また例えば2.0μm以上である。
また、平坦部の中央部位における1層の絶縁層の厚みは、下限側として例えば20μm以上であり、また例えば25μm以上である。一方、上記平坦部の中央部位の1層の絶縁層の厚みは、上限側として例えば300μm以下であり、また例えば250μm以下である。なお、最外層が絶縁層である電磁波シールド積層体においては、該最外層の絶縁層の厚みは、平坦部の中央部位における1層の絶縁層の厚みと同等であってもよい。
【0041】
(はみ出し部)
一実施形態においては、隣接し合う金属層間に介する絶縁層が、該金属層の先端よりも外側にはみ出したはみ出し部を有してもよい。
【0042】
絶縁層と金属層とを積層する積層方法としては、絶縁層と金属層の間に接着剤を用いてもよく、接着剤を用いずに絶縁層を金属層に熱圧着してもよい。接着剤を用いずに単に重ねる方法でもよいが、電磁波シールド積層体の一体性を考慮すれば、少なくとも端部(例えばシールド材が四角形の場合は各辺)は接着剤により又は熱圧着により接合することが好ましい。但し、絶縁層に余分な熱を加えないという点からは、接着剤を用いることが好ましい。接着剤としては先述したものと同様であり、特に制限はないが、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン系、ポリエステル系、シリコーン樹脂系、酢酸ビニル系、スチレンブタジエンゴム系、ニトリルゴム系、フェノール樹脂系、シアノアクリレート系などが挙げられ、製造しやすさとコストの理由により、ウレタン系、ポリエステル系、酢酸ビニル系が好ましい。
【0043】
接着剤層の厚みは6μm以下であることが好ましい。接着剤層の厚みが6μmを超えると、金属層に絶縁層を積層した後に金属層のみが破断しやすくなる。ただし、先述したような接着剤層が絶縁層の役割を兼ねる場合は、この限りではなく、絶縁層の説明で述べた厚みとすることができる。
【0044】
一実施形態においては、テーパ部の先端における電磁波シールド積層体の厚みは、上限側として例えば400μm以下、例えば300μm以下である。一方、テーパ部の先端における上記電磁波シールド積層体の厚みは、下限側として例えば8μm以上、例えば10μm以上である。
なお、平坦部の中央部位における電磁波シールド積層体の厚みは、上限側として例えば500μm以下、例えば400μm以下である。一方、上記電磁波シールド積層体の厚みは、下限側として例えば100μm以上、例えば150μm以上である。
【0045】
一実施形態によれば、1MHzにおいて36dB以上の磁界シールド特性(受信側でどれだけ信号が減衰したか)をもつことができ、好ましくは40dB以上の磁界シールド特性をもつことができ、より好ましくは50dB以上の磁界シールド特性をもつことができ、更により好ましくは60dB以上の磁界シールド特性をもつことができ、特に好ましくは70dB以上の磁界シールド特性をもつことができ、例えば36~90dBの磁界シールド特性をもつことができる。本発明においては、磁界シールド特性はKEC法によって測定することとする。KEC法とは、関西電子工業振興センターにおける「電磁波シールド特性測定法」を指す。
【0046】
(用途)
一実施形態において、当該電磁波シールド積層体は、特に電気・電子機器(例えば、インバータ、通信機、共振器、電子管・放電ランプ、電気加熱機器、電動機、発電機、電子部品、印刷回路、医療機器等)用の被覆材又は外装材、電気・電子機器に接続されたハーネスや通信ケーブルの被覆材、電磁波シールドシート、電磁波シールドパネル、電磁波シールド袋、電磁波シールド箱、電磁波シールド室など各種の電磁波シールド用途に利用することが可能である。
【0047】
[2.電磁波シールド積層体の製造方法]
本発明に係る電磁波シールド積層体の製造方法の一実施形態においては、前述した電磁波シールド積層体の製造方法であって、一例としてノッチ形成、打ち抜きの順に行う。なお、先述した説明と重複する説明については割愛する。
【0048】
(ノッチ形成)
図1(A)及び(B)に示すように、少なくとも2層の金属層と絶縁層とを用いて、該金属層と該絶縁層とを交互に積層された中間積層体(下記ノッチ加工を施す前の積層体を中間積層体と呼ぶ)の最外層側(例えば、最下層側)から凸部を有するノッチ加工パンチで該中間積層体にノッチを形成する。各金属層は、同種又は異種の材料でもよく、同一の又は異なる厚みでもよい。また、各絶縁層は、同種又は異種の材料でもよく、同一の又は異なる厚みでもよい。ノッチの先端の角度や曲率半径R、ノッチの押し付け荷重(または押し込み量)等は各金属層、各絶縁層の厚みや材質により種々設定することができる。
なお、ノッチを形成する中間積層体の最外層は、加工後の変形量が少なく、スプリングバックの戻りも少ないことから、金属層であることが好ましい。
【0049】
中間積層体の最上層の外表面をノッチ加工ダイで押さえ、ノッチ加工パンチの凸部が中間積層体の最下層の外表面に当接するように押すと、中間積層体の最下層の外表面にノッチが形成される。
【0050】
(打ち抜き)
ノッチを形成後、
図1(C)に示すように、前記ノッチの一部を切断するように厚み方向に前記中間積層体を打ち抜くことで電磁波シールド積層体を得る。より具体的には、中間積層体をダイの上に載置し、パンチがノッチの頂点に当たるように厚み方向に中間積層体を該パンチで打ち抜く。これにより、絶縁層を介して隣接し合う金属層の端部がそれぞれ、先端に向けて幅が狭くなるテーパ部が形成され、各テーパ部の先端における、絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離Aが、該テーパ部以外である平坦部の中央部位における、絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離Bよりも短く、金属層同士が、いずれも接触していない電磁波シールド積層体が得られる。また、パンチ後の破面(先端)全体にダレ等も生じない。
仮に先述の埋め込む工程において、
図2(A)及び(B)に示すように、中間積層体にノッチを形成せずにパンチで積層体を打ち抜いた場合、切断後の中間積層体は金属層同士が接触していないが、打ち抜き時に金属層及び絶縁層が引っ張られることで破面全体にダレが発生することがある。このようなダレが、電磁波シールド積層体のシールド特性を低下させると推察される。
【0051】
なお、パンチとダイとのクリアランスは、破面のダレの発生の抑制の観点から、例えば電磁波シールド積層体の総厚みの2~8%が適正である。
【0052】
また、本発明に係る電磁波シールド積層体の製造方法の一実施形態においては、中間積層体の作製時に、金属層と絶縁層とを接着剤や熱圧着等で接合していない場合、位置ずれが起きないように、上述の打ち抜き後の電磁波シールド積層体の端部(例えば、上面視で方形状ならば、端部4辺)をテープで固定する工程を含んでもよい。
【実施例0053】
本発明を試験例、実施例、比較例に基づいて具体的に説明する。以下の実施例、比較例の記載は、あくまで本発明の技術的内容の理解を容易とするための具体例であり、本発明の技術的範囲はこれらの具体例によって制限されるものではない。
【0054】
[電磁波シールド積層体の作製検討]
(試験例1~2)
表1に示すように、試験例1として銅箔(幅:50mm、奥行き:40mm、厚み:18~21μm)及びPETフィルム(幅:50mm、奥行き:40mm、厚み:99~100μm)を準備し、試験例2として銅箔(幅:50mm、奥行き:40mm、厚み:35~36μm)及びPCフィルム(幅:50mm、奥行き:40mm、厚み:100μm)を準備した。表1に示す構成に従って、PETフィルム又はPCフィルムと銅箔とを接着剤で接合させて中間積層体を作製した(
図1(A)参照)。
次に、中間積層体の最下層側から凸部を有するノッチ加工パンチで、中間積層体にノッチを形成した(
図1(B)参照)。次に、中間積層体をダイの上に載置し、パンチがノッチの頂点に当たるように厚み方向に中間積層体を該パンチで打ち抜くことで、テーパ部及び該テーパ部以外である平坦部が形成された電磁波シールド積層体を得た(
図1(C)参照)。この時、ダイとパンチとのクリアランスは、0.01mmに設定していた。
【0055】
<評価方法>
(打ち抜き後の観察)
電磁波シールド積層体を下記観察条件で観察し、下記判断基準に基づき評価した。この結果を表1及び
図3A(試験例1)及び
図3B(試験例2)に示す。
・観察条件
測定機器:マイクロスコープ(キーエンス製 VHX-6000)
測定箇所:積層体の端部の断面形状(積層体を切断し、樹脂に埋めた後、該積層体の切断後の断面形状に研磨加工を施した。)
観察倍率:20倍
・判断基準:得られた電磁波シールド積層体において、各テーパ部以外である平坦部の中央部位における、絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離Bに対する、該テーパ部の先端における、絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離Aの割合A/Bが、75%以下であった場合、「〇」と示す。なお、試験例1における距離A及び距離Bは、ノッチが形成された最下層の金属層と絶縁層を介して隣接し合う金属層との間の、厚み方向における垂直距離を意味する。
【0056】
【0057】
(考察1)
試験例1~2では、少なくとも2層の金属層としての銅箔と絶縁層とを用いて、該金属層と該絶縁層とが交互に積層された中間積層体の最下層側から凸部を有するノッチ加工パンチで該中間積層体にノッチを形成した後、該ノッチの一部を切断するように厚み方向に中間積層体を打ち抜いた。その結果、端部の厚みが変化するテーパ部を有し、厚み方向において各テーパ部の先端における、絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離Aが、該テーパ部以外である平坦部の中央部位における、絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離Bよりも短く、金属層同士が、いずれも接触していない電磁波シールド積層体を得ることができた(
図3A及びB参照)。
【0058】
[電磁波シールド積層体]
<実施例1>
実施例1では、
図4に示す電磁波シールド積層体100を以下のように作製した。まず、金属層として銅箔110、112(幅:60mm、奥行き:60mm、厚み:17μm)を2枚、絶縁層としてPETフィルム120、124(幅:50mm、奥行き:50mm、厚み:100μm)を2枚、PETフィルム122(幅:70mm、奥行き:70mm、厚み:25μm)を1枚それぞれ準備した。銅箔110の上にPETフィルム120、PETフィルム122、PETフィルム124、銅箔112の順に積層し、接着剤を介することなく中間積層体を得た。
【0059】
中間積層体について、テーパ部と、該テーパ部以外である平坦部とを形成するため、PETフィルム120、124の端辺とPETフィルム122との間の段差では、該段差に沿って銅箔110、112を折り曲げた。次に各部材の位置を固定するため積層体の四辺をテープ止めし、
図4に示す電磁波シールド積層体100を得た。なお、PETフィルム122の幅及び奥行きが銅箔110、112よりもいずれも長かったので、得られた電磁波シールド積層体100は、はみ出し部123を有していた。
【0060】
(電磁波シールド特性評価)
電磁波シールド積層体100を構成する銅箔110、112とPETフィルム120、122、124とが測定中、位置ずれが起きないように、電磁波シールド積層体100の外周部をテープで固定することで、該電磁波シールド積層体100を磁界シールド特性評価装置(テクノサイエンスジャパン製 型式T SES-KEC)に設置して、室温(25℃)条件下で、KEC法により磁界シールド特性を評価した。そして、周波数を0.1MHzから10MHzまで変化させて、周波数の変化に対する磁界シールド特性の推移を調査した。なお、表2には、1MHzにおける磁界シールド特性を示す。
【0061】
(距離A、距離B、テーパ部長さ)
テーパ部115の先端におけるPETフィルム122を介して隣接し合う銅箔110、112の距離Aについては、ハイトゲージ(東洋精機製作所製)で測定したPETフィルム122の厚みがこれに相当し、これを表2に示す。また、平坦部116の中央部位におけるPETフィルム120、122、124を介して隣接し合う銅箔110、112の距離Bについては、ハイトゲージで測定したPETフィルム120、122、124の厚みの合計値がこれに相当し、これを表2に示す。
各テーパ部の水平長さL1は約5mm、銅箔110、112の先端eから重心cまでの水平長さL0に対するテーパ部の水平長さL1の割合L1/L0は各々20%以下、電磁波シールド積層体100の平坦部の中央部位の厚みTに対する各テーパ部の水平長さL1の割合L1/Tは各々2000%以下に確実に収まっている。
【0062】
<比較例1>
比較例1では、
図5に示す電磁波シールド積層体200を以下のように作製した。まず、金属層として銅箔210、212(幅:60mm、奥行き:60mm、厚み:17μm)を2枚、絶縁層としてPETフィルム220、224(幅:50mm、奥行き:50mm、厚み:100μm)を2枚、PETフィルム222(幅:70mm、奥行き:70mm、厚み:25μm)を1枚それぞれ準備した。銅箔210の上にPETフィルム220、PETフィルム222、PETフィルム224、銅箔212の順に積層し、中間積層体を得た。金属層の各端部にテーパ加工をそれぞれ施さなかったこと以外、実施例1と同じように、電磁波シールド積層体200を作製した。PETフィルム220、222、224を介して隣接し合う銅箔210、212の距離Cについては、PETフィルム220、222、224の厚みの合計値を表3に示す。
なお、得られた電磁波シールド積層体200については、KEC法により磁界シールド特性を評価した。この結果を表3に示す。
【0063】
<比較例2>
比較例2では、
図6に示す電磁波シールド積層体300を以下のように作製した。金属層として銅箔310、312(幅:60mm、奥行き:60mm、厚み:17μm)を2枚、絶縁層としてPETフィルム322(幅:60mm、奥行き:60mm、厚み:25μm)を1枚それぞれ準備した。銅箔310の上にPETフィルム322、銅箔312の順に積層し、中間積層体を得た。金属層の各端部にテーパ加工をそれぞれ施さなかったこと以外、実施例1と同じように、電磁波シールド積層体300を作製した。PETフィルム322を介して隣接し合う銅箔310、312の距離Dについては、PETフィルム322の厚みを表3に示す。
なお、得られた電磁波シールド積層体300については、KEC法により磁界シールド特性を評価した。この結果を表3に示す。
【0064】
【0065】
【0066】
(考察2)
実施例1では、端部の厚みが変化するテーパ部を有し、厚み方向において各テーパ部の先端における、絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離Aが、該テーパ部以外である平坦部の中央部位における、絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離Bよりも短く、金属層同士が、いずれも接触していなかったことで、シールド特性が良好な電磁波シールド積層体が得られた。
一方、比較例1~2では、テーパ加工されていないため、先端における絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離C、Dと、中央部位における絶縁層を介して隣接し合う金属層間の距離C、Dとが同等であったことで、実施例1よりもシールド特性が劣っていた。特に、比較例2では、実施例1と比べ、上記距離Dが、上記距離Aと同等であっても、上記距離Bより短かったことから、シールド特性が劣っていた。
なお、実施例1を考慮すれば、試験例1~2では、シールド特性が良好な電磁波シールド積層体が得られていたと推察される。