(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154327
(43)【公開日】2023-10-19
(54)【発明の名称】アスファルトマスターバッチ組成物
(51)【国際特許分類】
C08J 3/22 20060101AFI20231012BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20231012BHJP
C08L 95/00 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
C08J3/22 CEZ
C08L23/00
C08L95/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063592
(22)【出願日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金丸 正実
(72)【発明者】
【氏名】南 裕
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA15
4F070AA65
4F070AB22
4F070AB23
4F070AE03
4F070FA01
4F070FA17
4F070FB03
4F070FC03
4J002AG001
4J002BB032
4J002BB042
4J002BB052
4J002BB122
4J002BB142
4J002BB152
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】アスファルトへの混合性に優れ、耐熱性や強度に優れる改質アスファルトを得ることができるアスファルトマスターバッチ組成物、ペレット、該アスファルトマスターバッチ組成物を含有するアスファルト組成物及びその製造方法、並びにアスファルト合材を提供する。
【解決手段】下記(1)~(4)を満たす結晶性ポリオレフィン(A)及びストレートアスファルト(B)を含有し、前記結晶性ポリオレフィン(A)と前記ストレートアスファルト(B)の質量比[(A)/(B)]が10/90~60/40である、アスファルトマスターバッチ組成物。
(1)重量平均分子量(Mw)が10,000~200,000
(2)分子量分布(Mw/Mn)が2.0~6.0
(3)融点が70℃以上160℃以下
(4)融解吸熱量(ΔH-D)が30J/g以上100J/g以下
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)~(4)を満たす結晶性ポリオレフィン(A)及びストレートアスファルト(B)を含有し、
前記結晶性ポリオレフィン(A)と前記ストレートアスファルト(B)の質量比[(A)/(B)]が10/90~60/40である、アスファルトマスターバッチ組成物。
(1)重量平均分子量(Mw)が10,000~200,000
(2)分子量分布(Mw/Mn)が2.0~6.0
(3)融点が70℃以上160℃以下
(4)融解吸熱量(ΔH-D)が30J/g以上100J/g以下
【請求項2】
前記結晶性ポリオレフィン(A)が、下記(5)~(7)を満たすプロピレン系重合体である、請求項1に記載のアスファルトマスターバッチ組成物。
(5)プロピレンの構成単位の含有量が90~100モル%
(6)エチレン及び炭素数4~18のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1つの構成単位の含有量が0~10モル%
(7)メソペンタッド分率[mmmm]が40~100モル%
【請求項3】
25℃での貯蔵弾性率が2×106Pa・sより大きい、請求項1又は2に記載のアスファルトマスターバッチ組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のアスファルトマスターバッチ組成物とストレートアスファルト(C)を含有し、
前記ストレートアスファルト(B)と前記ストレートアスファルト(C)の合計に対する前記結晶性ポリオレフィン(A)の質量比[(A)/[(B)+(C)]]が0.5/99.5~10/90である、アスファルト組成物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1つに記載のアスファルトマスターバッチ組成物と、ストレートアスファルト(C)を含むアスファルトとを加熱混合して得られるものである、請求項4に記載のアスファルト組成物。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1つに記載のアスファルトマスターバッチ組成物と、ストレートアスファルト(C)を含むアスファルトとを加熱混合する、アスファルト組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1つに記載のアスファルトマスターバッチ組成物を粒状化して得られるペレット。
【請求項8】
請求項7に記載のペレットと、ストレートアスファルト(C)を含むアスファルトとを加熱混合して得られるものである、請求項4に記載のアスファルト組成物。
【請求項9】
請求項7に記載のペレットと、ストレートアスファルト(C)を含むアスファルトとを加熱混合する、アスファルト組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項4、5又は8に記載のアスファルト組成物と骨材を含有し、骨材の含有量が80~99質量%である、アスファルト合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルトマスターバッチ組成物、ペレット、該アスファルトマスターバッチ組成物を含有するアスファルト組成物及びその製造方法、並びにアスファルト合材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、道路舗装や防水用途に用いられるアスファルトは、ストレートアスファルト(石油アスファルト)の流動性、強度、骨材等への接着性等を改善するために、スチレン系エラストマー等を添加することや、空気酸化処理を行うといった試みがなされている。
アスファルトの改質方法の1つとして、ポリオレフィンを添加し、強度を向上させる方法も検討されている。
たとえば、特許文献1には、低温での脆化を抑制することを目的として、フィッシャートロプシュワックスとメタロセン系ポリオレフィン・プラストマーを同時に添加した防水工事用アスファルト組成物が開示されている。
特許文献2には、廃油の有効利用を目的として、鉱油等の油状物質と常温固体のポリオレフィンを含有し、特定の複素弾性率を保持することを特徴とする合成アスファルトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-038121号公報
【特許文献2】特開2009-013193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や2では、ポリオレフィンをアスファルトに混合させるために、分子量が小さいワックス成分や油状成分と同時に用いる必要があった。このような方法では、十分な強度が得られなかった。また、アスファルトには耐熱性も要求されている。
そこで、ワックス等を用いず、ポリオレフィンでアスファルトを均質に改質する方法が求められていた。また、より高強度で耐熱性にも優れるアスファルトが求められていた。
したがって、本発明の課題は、アスファルトへの混合性に優れ、耐熱性や強度に優れる改質アスファルトを得ることができるアスファルトマスターバッチ組成物、ペレット、該アスファルトマスターバッチ組成物を含有するアスファルト組成物及びその製造方法、並びにアスファルト合材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、特定の結晶性ポリオレフィンとストレートアスファルトを特定の比率で含有するマスターバッチ組成物が、前記課題を解決することを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の<1>~<10>に関する。
<1>下記(1)~(4)を満たす結晶性ポリオレフィン(A)及びストレートアスファルト(B)を含有し、前記結晶性ポリオレフィン(A)と前記ストレートアスファルト(B)の質量比[(A)/(B)]が10/90~60/40である、アスファルトマスターバッチ組成物。
(1)重量平均分子量(Mw)が10,000~200,000
(2)分子量分布(Mw/Mn)が2.0~6.0
(3)融点が70℃以上160℃以下
(4)融解吸熱量(ΔH-D)が30J/g以上100J/g以下
<2>前記結晶性ポリオレフィン(A)が、下記(5)~(7)を満たすプロピレン系重合体である、前記<1>に記載のアスファルトマスターバッチ組成物。
(5)プロピレンの構成単位の含有量が90~100モル%
(6)エチレン及び炭素数4~18のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1つの構成単位の含有量が0~10モル%
(7)メソペンタッド分率[mmmm]が40~100モル%
<3>25℃での貯蔵弾性率が2×106Pa・sより大きい、前記<1>又は<2>に記載のアスファルトマスターバッチ組成物。
<4>前記<1>~<3>のいずれか1つに記載のアスファルトマスターバッチ組成物とストレートアスファルト(C)を含有し、前記ストレートアスファルト(B)と前記ストレートアスファルト(C)の合計に対する前記結晶性ポリオレフィン(A)の質量比[(A)/[(B)+(C)]]が0.5/99.5~10/90である、アスファルト組成物。
<5>前記<1>~<3>のいずれか1つに記載のアスファルトマスターバッチ組成物と、ストレートアスファルト(C)を含むアスファルトとを加熱混合して得られるものである、前記<4>に記載のアスファルト組成物。
<6>前記<1>~<3>のいずれか1つに記載のアスファルトマスターバッチ組成物と、ストレートアスファルト(C)を含むアスファルトとを加熱混合する、アスファルト組成物の製造方法。
<7>前記<1>~<3>のいずれか1つに記載のアスファルトマスターバッチ組成物を粒状化して得られるペレット。
<8>前記<7>に記載のペレットと、ストレートアスファルト(C)を含むアスファルトとを加熱混合して得られるものである、前記<4>に記載のアスファルト組成物。
<9>前記<7>に記載のペレットと、ストレートアスファルト(C)を含むアスファルトとを加熱混合する、アスファルト組成物の製造方法。
<10>前記<4>、<5>又は<8>に記載のアスファルト組成物と骨材を含有し、骨材の含有量が80~99質量%である、アスファルト合材。
【発明の効果】
【0007】
アスファルトへの混合性に優れ、耐熱性や強度に優れる改質アスファルトを得ることができるアスファルトマスターバッチ組成物、ペレット、該アスファルトマスターバッチ組成物を含有するアスファルト組成物及びその製造方法、並びにアスファルト合材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[アスファルトマスターバッチ組成物]
本発明のアスファルトマスターバッチ組成物は、下記(1)~(4)を満たす結晶性ポリオレフィン(A)及びストレートアスファルト(B)を含有し、前記結晶性ポリオレフィン(A)と前記ストレートアスファルト(B)の質量比[(A)/(B)]が10/90~60/40である。
(1)重量平均分子量(Mw)が10,000~200,000
(2)分子量分布(Mw/Mn)が2.0~6.0
(3)融点が70℃以上160℃以下
(4)融解吸熱量(ΔH-D)が30J/g以上100J/g以下
【0009】
<結晶性ポリオレフィン(A)>
本発明のアスファルトマスターバッチ組成物に含有される結晶性ポリオレフィン(A)は、下記(1)~(4)を満たす。
(1)重量平均分子量(Mw)が10,000~200,000
(2)分子量分布(Mw/Mn)が2.0~6.0
(3)融点が70℃以上160℃以下
(4)融解吸熱量(ΔH-D)が30J/g以上100J/g以下
【0010】
結晶性ポリオレフィン(A)は、エチレン、プロピレン、及び炭素数4~18のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1つのオレフィンを単量体とする重合体であり、好ましくはプロピレンを主たる単量体とする重合体であるプロピレン系重合体である。
【0011】
((1)重量平均分子量(Mw))
結晶性ポリオレフィン(A)の重量平均分子量(Mw)は、10,000~200,000である。機械的強度の観点から、10,000以上であり、好ましくは50,000以上であり、より好ましくは100,000以上であり、そして、アスファルトとの混合性の観点から、200,000以下であり、好ましくは190,000以下であり、より好ましくは180,000以下である。
本発明において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したポリプロピレン換算の重量平均分子量である。
【0012】
((2)分子量分布(Mw/Mn))
結晶性ポリオレフィン(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、2.0~6.0である。溶解性の観点から、2.0以上であり、好ましくは2.5以上であり、より好ましくは3.0以上であり、更に好ましくは3.5以上であり、そして、機械的強度の観点から、6.0以下であり、好ましくは5.0以下であり、より好ましくは4.5以下である。
本発明において、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により測定したポリプロピレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)より算出した値である。
【0013】
((3)融点(Tm-D))
結晶性ポリオレフィン(A)の融点(Tm-D)は、70℃以上160℃以下である。耐熱性向上の観点から、70℃以上であり、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは110℃以上であり、更に好ましくは120℃以上であり、より更に好ましくは130℃以上であり、そして、アスファルトとの混合性の観点から、160℃以下であり、好ましくは155℃以下であり、より好ましくは150℃以下であり、更に好ましくは145℃以下である。
なお、本発明では、示差走査型熱量計(DSC)(パーキン・エルマー社製、「DSC-7」)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下-10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップを融点(Tm-D)として定義する。
【0014】
((4)融解吸熱量(ΔH-D))
結晶性ポリオレフィン(A)の融解吸熱量(ΔH-D)は、30J/g以上100J/g以下である。耐熱性向上の観点から、30J/g以上であり、好ましくは40J/g以上であり、より好ましくは50J/g以上であり、更に好ましくは55J/g以上であり、より更に好ましくは60J/g以上であり、そして、アスファルトとの混合性の観点から、100J/g以下であり、好ましくは90J/g以下であり、より好ましくは80J/g以下であり、更に好ましくは70J/g以下である。
本発明において、融解吸熱量(ΔH-D)は、示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下-10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブのピークを含むライン部分と熱量変化の無い低温側の点と熱量変化の無い高温側の点とを結んだ線(ベースライン)とで囲まれる面積を求めることで算出される。
【0015】
なお、本発明における結晶性ポリオレフィン(A)としては、例えば、以下のようなものを挙げることができる。
ホモプロピレン系の結晶性ポリオレフィン(A)としては、L-MODU S400、S410、S600、S901(出光興産株式会社製)、J108M、J137G、J107G、Y2045GP(株式会社プライムポリマー製)、ノバテックMG05ES(日本ポリプロ株式会社製)が挙げられる。
エチレン共重合系ポリプロピレンの結晶性ポリオレフィン(A)としては、Y2045GP、J-3021GRP(株式会社プライムポリマー製)、Vistamaxx8880、Vistamaxx8780、Vistamaxx8380(ExxonMobil社製)、Licocene3602、Licocene2602、Licocene1602(Clariant社製)が挙げられる。
ポリエチレン系の結晶性ポリオレフィン(A)としては、ハイゼックス1300J、ネオゼックス20201J、ウルトゼックス15150J(株式会社プライムポリマー製)、Affinity GA1950、Affinity GA1900H(DOW社製)が挙げられる。
【0016】
(プロピレン系重合体)
前記のとおり、本発明に用いられる結晶性ポリオレフィン(A)は、エチレン、プロピレン、及び炭素数4~18のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1つのオレフィンを単量体とする重合体であり、好ましくはプロピレンを主たる単量体とする重合体であるプロピレン系重合体である。
なかでも、結晶性ポリオレフィン(A)が、下記(5)~(7)の少なくとも1つ以上を満たすプロピレン系重合体であることが好ましく、下記(5)~(7)を全て満たすプロピレン系重合体であることがより好ましい。
(5)プロピレンの構成単位の含有量が90~100モル%
(6)エチレン及び炭素数4~18のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1つの構成単位の含有量が0~10モル%
(7)メソペンタッド分率[mmmm]が40~100モル%
【0017】
((5)プロピレンの構成単位の含有量)
プロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体及びプロピレンと他のオレフィンとの共重合体から選択される少なくとも1種である。プロピレン系重合体におけるプロピレンの構成単位の含有量は、耐熱性を向上させる観点から、好ましくは90~100モル%であり、より好ましくは93~100モル%であり、更に好ましくは93~99モル%である。
【0018】
(プロピレン系重合体の種類とプロピレン以外の他のオレフィン)
プロピレン系重合体の種類としては、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-ブテンブロック共重合体、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、又はプロピレン-α-オレフィングラフト共重合体等から選択されるプロピレン系重合体であることが好ましく、プロピレン単独重合体やプロピレン-エチレンランダム共重合体がより好ましく、プロピレン-エチレンランダム共重合体が更に好ましい。
【0019】
プロピレン系重合体が共重合体である場合、構成単位として含まれうるプロピレン以外の他のオレフィンとしては、エチレン及び炭素数4~18のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1つが挙げられる。炭素数4~18のα-オレフィンは、好ましくは炭素数4~16のα-オレフィン、より好ましくは炭素数4~12のα-オレフィン、更に好ましくは炭素数4~8のα-オレフィンである。当該α-オレフィンの具体例としては、1-ブテン,1-ペンテン,4-メチル-1-ペンテン,1-ヘキセン,1-オクテン,1-デセン,1-ドデセン,1-テトラデセン,1-ヘキサデセン,1-オクタデセン等が挙げられる。
【0020】
((6)エチレン及び炭素数4~18のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1つの構成単位の含有量)
プロピレン系重合体中のエチレン及び炭素数4~18のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1つの構成単位の含有量は、好ましくは0~10モル%である。
プロピレン系重合体中のエチレン及び炭素数4~18のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1つの構成単位の含有量が0モル%であるとき、プロピレン系重合体はプロピレン単独重合体である。
プロピレン系重合体が共重合体である場合、エチレン及び炭素数4~18のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1つの構成単位の含有量は、アスファルトとの混合温度を低下させる観点から、好ましくは0モル%を超え、より好ましくは0.5モル%以上、更に好ましくは1.0モル%以上であり、そして、強度を向上させる観点から、好ましくは15モル%以下、より好ましくは12モル%以下、更に好ましくは10モル%以下、更に好ましくは7モル%以下である。
【0021】
((7)メソペンタッド分率[mmmm])
メソペンタッド分率[mmmm]は、プロピレン系重合体の立体規則性を表す指標であり、メソペンタッド分率[mmmm]が大きくなると、立体規則性が高くなる。プロピレン系重合体のメソペンタッド分率[mmmm]は、強度を向上させる観点から、好ましくは40~100モル%である。より好ましくは70モル%以上であり、更に好ましくは71モル%以上であり、より更に好ましくは72モル%以上であり、より更に好ましくは73モル%以上であり、そして、アスファルトとの混合性の観点から、より好ましくは99.5モル%以下であり、更に好ましくは95モル%以下であり、より更に好ましくは80モル%以下である。
ここで、メソペンタッド分率[mmmm]は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠し、13C-NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率である。
【0022】
プロピレン系重合体の製造方法については特に限定されず、チーグラー触媒やメタロセン触媒等を用いた公知の方法により製造することができる。
【0023】
なお、プロピレン系重合体としては、例えば、以下のようなものを挙げることができる。
ホモプロピレン系のプロピレン系重合体としては、L-MODU S400、S410、S600、S901(出光興産株式会社製)、J108M、J137G、J107G、Y2045GP(株式会社プライムポリマー製)、ノバテックMG05ES(日本ポリプロ株式会社製)が挙げられる。
エチレン共重合系のプロピレン系重合体としては、Y2045GP、J-3021GRP(株式会社プライムポリマー製)、Vistamaxx8880、Vistamaxx8780、Vistamaxx8380(ExxonMobil社製)、Licocene3602、Licocene2602、Licocene1602(Clariant社製)が挙げられる。
【0024】
<ストレートアスファルト(B)>
本発明のアスファルトマスターバッチ組成物には、前記結晶性ポリオレフィン(A)及びストレートアスファルト(B)を含有する。
ストレートアスファルト(B)は、アスファルト基油として用いられるものである。
ストレートアスファルト(B)は、JIS K 2207に定められるアスファルト又はこれらの混合物を使用することができる。ストレートアスファルト(B)は、針入度グレード40~60から200~300相当品を使用することが好ましい。
【0025】
<アスファルトマスターバッチ組成物の組成・特性等>
本発明のアスファルトマスターバッチ組成物は、前記結晶性ポリオレフィン(A)及びストレートアスファルト(B)を含有するが、前記結晶性ポリオレフィン(A)と前記ストレートアスファルト(B)の質量比[(A)/(B)]は、10/90~60/40である。前記質量比とすることによって、アスファルトへの混合性に優れ、耐熱性や強度に優れる改質アスファルトを得ることができる。
前記結晶性ポリオレフィン(A)と前記ストレートアスファルト(B)の質量比[(A)/(B)]は、10/90以上であり、好ましくは12/88以上であり、より好ましくは15/85以上であり、更に好ましくは20/80以上である。また、60/40以下であり、好ましくは45/55以下であり、より好ましくは40/60以下であり、更に好ましくは30/70以下である。
【0026】
本発明のアスファルトマスターバッチ組成物の25℃での貯蔵弾性率は、好ましくは2×106Pa・sより大きい。貯蔵弾性率を前記範囲とすることによって、アスファルトへの混合性を維持しつつ、ペレット形状等を容易に調整することができ、よりアスファルトへ混合しやすくできる。本発明のアスファルトマスターバッチ組成物の25℃での貯蔵弾性率は、好ましくは2×106Pa・sより大きく、より好ましくは2.5×106Pa・s以上であり、更に好ましくは3×106Pa・s以上である。上限には制限はないが、好ましくは100×106Pa・s以下である。
【0027】
(任意の添加剤)
本発明のアスファルトマスターバッチ組成物には、結晶性ポリオレフィン(A)及びストレートアスファルト(B)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で任意の添加剤が含まれていてもよい。
任意の添加剤としては、酸化防止剤等が挙げられる。
【0028】
酸化防止剤は、熱安定性を高める目的で添加してもよい。
酸化防止剤としては公知のものを使用することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤を用いることが好ましい。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール・ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール・ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナムアミド)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等を挙げることができる。
酸化防止剤の市販品としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF株式会社製、IRGANOX1010)、1,3,5-トリス-(3',5'-ジ‐tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸(株式会社ADEKA製、アデカスタブ AO-20)等を用いることができる。
【0029】
<アスファルトマスターバッチ組成物の製造方法及びペレット>
本発明のアスファルトマスターバッチ組成物は、前記結晶性ポリオレフィン(A)及びストレートアスファルト(B)を含有し、前記結晶性ポリオレフィン(A)と前記ストレートアスファルト(B)の質量比[(A)/(B)]が10/90~60/40であれば、製造方法に制限はないが、次のようにして得ることができる。
【0030】
具体的には、前記結晶性ポリオレフィン(A)と、ストレートアスファルト(B)を加熱混合して、混合物を得る。なお、前述の添加剤や、後述のアスファルト組成物に含まれるアスファルト基油及び補強材等を混合してもよい。
加熱混合は、撹拌装置によって、たとえば、160℃以上で、撹拌、混合することが好ましい。
得られた混合物を粉砕、ペレタイズなどを行い、塊状、ペレット状等のアスファルトマスターバッチ組成物を得ることができる。
【0031】
本発明のアスファルトマスターバッチ組成物は、ペレット状とすることが好ましい。すなわち、本発明のペレットは、前記アスファルトマスターバッチ組成物を粒状化して得られる。
【0032】
[アスファルト組成物]
本発明のアスファルト組成物は、前記アスファルトマスターバッチ組成物とストレートアスファルト(C)を含有し、前記ストレートアスファルト(B)と前記ストレートアスファルト(C)の合計に対する前記結晶性ポリオレフィン(A)の質量比[(A)/[(B)+(C)]]が0.5/99.5~10/90である。前記結晶性ポリオレフィンとストレートアスファルトの質量比が前記範囲であると、アスファルト組成物は、耐熱性や強度に優れる。
前記ストレートアスファルト(B)と前記ストレートアスファルト(C)の合計に対する前記結晶性ポリオレフィン(A)の質量比[(A)/[(B)+(C)]]は、好ましくは0.5/99.5以上であり、より好ましくは1.0/99.0以上であり、更に好ましくは3/97以上である。また、好ましくは10/90以下であり、より好ましくは8/92以下であり、更に好ましくは7/93以下である。
【0033】
<ストレートアスファルト(C)>
ストレートアスファルト(C)は、前記ストレートアスファルト(B)と同じ種類であっても異なっていてもよい。ストレートアスファルト(C)は、アスファルト基油として用いられるものである。
ストレートアスファルト(C)は、JIS K 2207に定められるアスファルト又はこれらの混合物を使用することができる。ストレートアスファルト(C)は、針入度グレード40~60から200~300相当品を使用することが好ましい。
【0034】
本発明のアスファルト組成物には、ストレートアスファルト以外のアスファルト基油として、プロパン脱れきアスファルト等の溶剤脱れきアスファルト、ブローンアスファルト、セミブローンアスファルト等のアスファルトを組み合わせて用いてもよく、更に芳香族系重質鉱油が含まれてもよい。
【0035】
溶剤脱れきアスファルトは、減圧蒸留残油から溶剤脱れき油(高粘度潤滑油留分)を抽出した残渣分に相当する(「新石油辞典」,石油学会編,1982年,p.308参照)。特に溶剤としてプロパン、またはプロパンとブタンを用いた場合に、プロパン脱れきアスファルトと呼ぶ。
ブローンアスファルトは、例えば、JIS K 2207に定められるアスファルトである。
セミブローンアスファルトは、例えば、「アスファルト舗装要綱」,社団法人日本道路協会発行,平成9年1月13日,p.51,表-3.3.4に定められるセミブローンアスファルトである。
【0036】
(芳香族系重質鉱油)
前記アスファルト組成物において、芳香族系重質鉱油は、原油の減圧蒸留残油をプロパン等により脱れきして得られた溶剤脱れき油を、更にフルフラール等の極性溶剤を用いて溶剤抽出することにより、ブライトストック(重質潤滑油)を得る際の溶剤抽出油、すなわち、エキストラクトが使用できる。特に第一発明の一態様であるアスファルト組成物においては、芳香族重質鉱油としてエキストラクトを添加することが好ましい。
【0037】
前記アスファルト組成物において、エキストラクトの役割は、熱可塑性エラストマーのアスファルトへの溶解性を高め、貯蔵安定性において分離の発生を防ぐもので、熱可塑性エラストマーの添加量が多いとエキストラクトの必要な添加量も増加する。また、熱可塑性エラストマーの添加量に対して必要以上のエキストラクトを添加するとアスファルト組成物の弾性率が低下する。
【0038】
アスファルト組成物全体に対するエキストラクトの含有量は、針入度、軟化点、貯蔵安定性、強度を示す複素弾性率とホイールトラッキング試験における動的安定度(DS)、及び、低温性状を示す曲げ仕事量と曲げスティフネスを考慮して決められる。本実施形態で検討した範囲では、アスファルト組成物全体に対するエキストラクトの含有量は、2.0質量%以上8.0質量%以下とされていることが好ましいが、当該エキストラクトが含有されていることは特段必須にはならず、含有されていなくてもよい。
【0039】
(補強材)
前記アスファルト組成物には、ストレートアスファルト及びその他のアスファルト基油以外に、補強材としてSBS(スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー)を含んでいてもよい。
SBSは、補強材として添加される熱可塑性エラストマーである。SBSの性能は、主にその分子量及びスチレン含有量から推定することができる。ここでいうスチレン含有量とは、SBS中に含まれているスチレンの質量%である。
【0040】
現在、工業的に入手が容易なSBSの重量平均分子量は、12万以上25万以下とされている。SBSは、スチレン含有量がSBS全体の25.0質量%以上35.0質量%以下であり、好ましくは27.0質量%以上33.0質量%以下である。
【0041】
上記以外にも、分子量およびスチレン含有量の異なるSBSが入手可能で、それらのSBSの分子量は、8万以上9万以下とされている。さらにスチレン含有量がSBS全体の25.0質量%以上50.0質量%以下である。
【0042】
前記アスファルト組成物において、SBSが含有されていることは特段必須にはならず、含有されていなくても良いが、上述した課題を解決するためには、アスファルト組成物全体に対するSBSの含有量を、7.0質量%以下とすることが好ましい。SBSの含有量を7.0質量%以下とすることで、アスファルト連続相を維持することが可能となり、遮水性に優れた密粒度混合物の耐水性の向上を図ることが可能となる。これに対し、舗装内部に積極的に空隙を設けた排水性もしくは透水性の高いアスファルト混合物を製造したい場合には、本実施形態のアスファルト組成物全体に対するSBSの含有量を7.0質量%超とすることで、上述した課題を解決しつつ、SBSの相転移を生じさせることで、高い排水性または透水性を有したアスファルト組成物を製造することが可能となる。
【0043】
前記アスファルト組成物においては、1種類のSBSのみを混合するようにしてもよいし、特定の分子構造を有する2種類以上のSBSを選択して混合するようにしてもよい。1種類のSBSのみを混合する場合には、2種類以上のSBSを選択して混合する煩雑さを解消することができ、製造労力の低減を図ることが可能となるため、好ましい。
【0044】
(任意の添加剤)
本発明のアスファルト組成物には、前記アスファルトマスターバッチ組成物、芳香族系重質鉱油、補強材以外に、本発明の効果を損なわない範囲で任意の添加剤が含まれていてもよい。
【0045】
任意の添加剤として、石油樹脂及びこれに水素原子を付加した水添石油樹脂が挙げられる。
石油樹脂は、ナフサなど石油類の熱分解によるエチレンなどのオレフィン製造時に副生物として得られる炭素数4~10の脂肪族オレフィン類や脂肪族ジオレフィン類、あるいは炭素数8以上でかつオレフィン性不飽和結合を有する芳香族化合物から選ばれる1種または2種以上の不飽和化合物を、重合または共重合して得られる樹脂である。
石油樹脂は、例えば、脂肪族オレフィン類や脂肪族ジオレフィン類を重合した「脂肪族系石油樹脂」、オレフィン性不飽和結合を有する芳香族化合物を重合した「芳香族系石油樹脂」、脂肪族オレフィン類や脂肪族ジオレフィン類と、オレフィン性不飽和結合を有する芳香族化合物とを共重合した「脂肪族-芳香族共重合石油樹脂」に大別できる。
この炭素数4~10の脂肪族オレフィン類としては、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテンなどが挙げられる。また、炭素数4~10の脂肪族ジオレフィン類としては、ブタジエン、ペンタジエン、イソプレン、ピペリレン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、メチルペンタジエンなどが挙げられる。さらに、炭素数8以上でかつオレフィン性不飽和結合を有する芳香族化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、インデン、メチルインデン、エチルインデンなどが挙げられる。
また、この石油樹脂の原料化合物は、その全てがナフサなど石油類の熱分解によるオレフィン製造時の副生物である必要はなく、化学合成された不飽和化合物を用いてもよい。
石油樹脂の好適例としては、シクロペンタジエンやジシクロペンタジエンの重合により得られるジシクロペンタジエン系石油樹脂や、これらシクロペンタジエンやジシクロペンタジエンとスチレンを共重合させて得られるジシクロペンタジエン-スチレン系石油樹脂、イソプレンやピペリレンの重合により得られるC5系石油樹脂、インデンやビニルトルエン等のC9モノマーの重合により得られるC9系石油樹脂が挙げられる。
水添石油樹脂は、前記石油樹脂に水素原子を付加した石油樹脂であり、不飽和結合が実質的に残存しない完全水添石油樹脂及び不飽和結合が残存する部分水添石油樹脂があり、部分水添石油樹脂が好ましい。
【0046】
また、任意の添加剤として、ポリエチレン系ポリオレフィンを挙げることができる。具体的には、ハイゼックス1300J、ネオゼックス20201J、ウルトゼックス15150J(株式会社プライムポリマー製)、Affinity GA1950、Affinity GA1900H(DOW社製)などを用いることができる。
【0047】
その他、任意の添加剤としては、酸化防止剤等が挙げられる。
酸化防止剤は、熱安定性を高める目的で添加してもよい。
酸化防止剤としては公知のものを使用することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤を用いることが好ましい。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール・ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール・ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナムアミド)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等を挙げることができる。
酸化防止剤の市販品としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF株式会社製、IRGANOX1010)、1,3,5-トリス-(3',5'-ジ‐tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸(株式会社ADEKA製、アデカスタブ AO-20)等を用いることができる。
【0048】
[アスファルト組成物の製造方法]
本発明のアスファルト組成物は、前記のように、アスファルトマスターバッチ組成物とストレートアスファルト(C)を含有し、前記ストレートアスファルト(B)と前記ストレートアスファルト(C)の合計に対する前記結晶性ポリオレフィン(A)の質量比[(A)/[(B)+(C)]]が0.5/99.5~10/90であれば、いかなる方法によって製造されたものであってもよいが、次に示す方法によって製造されたものであることが好ましい。
すなわち、本発明のアスファルト組成物は、前記アスファルトマスターバッチ組成物と、ストレートアスファルト(C)を含むアスファルトとを加熱混合して得られるものであることが好ましい。また、前記アスファルトマスターバッチ組成物を粒状化してペレットとしている場合、本発明のアスファルト組成物は、前記ペレットと、ストレートアスファルト(C)を含むアスファルトとを加熱混合して得られるものであることが好ましい。
【0049】
本発明のアスファルト組成物の製造方法は、アスファルトマスターバッチ組成物と、ストレートアスファルト(C)を含むアスファルトとを加熱混合する製造方法であることが好ましい。また、前記アスファルトマスターバッチ組成物を粒状化してペレットとしている場合、本発明のアスファルト組成物の製造方法は、前記ペレットと、ストレートアスファルト(C)を含むアスファルトとを加熱混合する製造方法であることが好ましい。
ストレートアスファルト(C)を含むアスファルトとしては、ストレートアスファルト(C)のみでもよく、前記に挙げた芳香族系重質鉱油、補強材、任意の添加剤を含むものであってもよい。
前記ストレートアスファルト(C)に芳香族系重質鉱油を混合し、撹拌装置によって、たとえば、140℃以上で、撹拌、混合し、予めアスファルト基油を得てもよい。この工程において補強材を同時に添加してもよい。補強材を添加する場合には、温度を180℃以上とすることが好ましい。
本発明の製造方法においては、アスファルトマスターバッチ組成物は、前記アスファルトのいずれに加熱混合してもよく、アスファルトマスターバッチ組成物とアスファルトを混合したのちに、更にアスファルト基油や補強材を添加してもよい。
アスファルトマスターバッチ組成物と、ストレートアスファルト(C)を含むアスファルトとの加熱混合は、撹拌装置によって、180℃以上で撹拌、混合してアスファルト組成物を得ることが好ましい。
本発明の製造方法によることで、アスファルト中に結晶性ポリオレフィン(A)が容易にかつ均一に混合され、耐熱性や強度に優れる改質アスファルトを得ることができる。
特に結晶性ポリオレフィン(A)を溶解するために、過酷な条件を必要としないため、結晶性ポリオレフィン(A)の高温での分解を抑制でき、アスファルトの耐久性を維持することができる。更にあらゆる作業現場においても、短時間で効率的に結晶性ポリオレフィン(A)を混合することができる。
【0050】
[アスファルト合材]
本発明のアスファルト合材は、前記アスファルト組成物と骨材を含有し、骨材の含有量が好ましくは80~99質量%である。
【0051】
前記アスファルト合材において、骨材の含有量は、アスファルト合材全体に対して、好ましくは80~99質量%であり、より好ましくは90~97質量%である。
アスファルト合材は、前記アスファルト組成物に所定の粒径を有する骨材を加えて、所定の回転数にて混合することで、所望の性状を有するアスファルト合材が得られる。アスファルト組成物と骨材を混合する際の温度は170~180℃程度が好ましい。
本発明のアスファルト合材は、上述したアスファルト組成物を含有することから、耐熱性や強度に優れる。
【実施例0052】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0053】
[結晶性ポリオレフィン(A)及びアスファルトマスターバッチ組成物の分析]
〔1.メソペンタッド分率[mmmm]〕
以下に示す装置及び条件で、13C-NMRスペクトルの測定を行った。なお、ピークの帰属は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,8,687(1975)」で提案された方法に従った。
装置:日本電子(株)製、「JNM-EX400型13C-NMR装置」
方法:プロトン完全デカップリング法
濃度:220mg/mL
溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
【0054】
<計算式>
M=m/S×100
m:メソペンタッド連鎖:21.7~22.5ppm
【0055】
メソペンタッド分率[mmmm]は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠して求めたものであり、13C-NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率である。
【0056】
〔2.重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)〕
ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。測定には、下記の装置及び条件を使用し、ポリプロピレン換算の重量平均分子量及び数平均分子量を得た。分子量分布(Mw/Mn)は、これらの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)より算出した値である。
<GPC測定装置>
カラム :東ソー株式会社製「TOSO GMHHR-H(S)HT」
検出器 :液体クロマトグラム用RI検出 ウォーターズ・コーポレーション製「WATERS 150C」
<測定条件>
溶媒 :1,2,4-トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0mL/分
試料濃度 :2.2mg/mL
注入量 :160μL
検量線 :Universal Calibration
解析プログラム:HT-GPC(Ver.1.0)
【0057】
〔3.融点(Tm-D)及び融解吸熱量(ΔH-D)〕
示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、「DSC-7」)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下-10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから融解吸熱量(ΔH-D)として求めた。また、得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップから融点(Tm-D)を求めた。
なお、融解吸熱量(ΔH-D)は、熱量変化の無い低温側の点と熱量変化の無い高温側の点とを結んだ線をベースラインとして、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、「DSC-7」)を用いた、DSC測定により得られた融解吸熱カーブのピークを含むライン部分と当該ベースラインとで囲まれる面積を求めることで算出される。
【0058】
〔4.エチレンの構成単位の含有量及びプロピレンの構成単位の含有量〕
以下に示す装置及び条件で、13C-NMRスペクトルの測定を行った。なお、ピークの帰属は、H.N.Chengにより「Macromolecules,17,1950(1984)」で提案された方法に従った。
装置:ブルカーバイオスピン株式会社製、「AVANCE III HD」
プローブ:BBO 10mmφ試料管対応
方法:プロトン完全デカップリング法
濃度:220mg/mL
溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼンと重ベンゼンの95:5(容量比)混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:500回
【0059】
<計算式>
Tδδ等の記号はC.J.Carman等により「Macromolecules,10,536(1977)」の表記法に従い、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表す。
A:33.3ppm付近に観測されるTδδの積分値
B:31.0ppm付近に観測されるTβδの積分値
C:30.4ppm付近に観測されるSγδの積分値
D:30.0ppm付近に観測されるSδδの積分値
E:28.9ppm付近に観測されるTββの積分値
F:27.3ppm付近に観測されるSβδの積分値
G:24.8ppm付近に観測されるSββの積分値
【0060】
ここで、triad分率(mol%)は以下の式から求められる。
[EPE]=A/T×100
[PPE]=B/T×100
[EEE]=(C/4+D/2)/T×100
[PPP]=E/T×100
[PEE]=F/T×100
[PEP]=G/T×100
T=[EPE]+[PPE]+[EEE]+[PPP]+[PEE]+[PEP]
【0061】
triad分率を用いて、エチレンの構成単位の含有量(モル%)及びプロピレンの構成単位の含有量(モル%)は以下の式より算出される。
エチレンの構成単位の含有量(モル%)=([EPE]+[PEE])×2/3+([PPE]+[PEP])/3+[EEE]
プロピレンの構成単位の含有量(モル%)=([EPE]+[PEE])/3+([PPE]+[PEP])×2/3+[PPP]
【0062】
〔5.25℃での貯蔵弾性率〕
粘弾性測定装置(MCR302、パーキンエルマー社製)を用い、下記条件にて、粘弾性を測定し、降温時25℃での貯蔵弾性率を得た。
治具:25mm パラレル
温度:160℃から20℃まで5℃/分の速度で降温した。
歪:160℃から20℃まで前記の速度で降温しながら、5%から1%に線形で変更した。
角周波数:6.3rad/秒
【0063】
[アスファルトマスターバッチ組成物の製造]
実施例1
ステンレス製の100mL円筒容器に、ストレートアスファルト(B)であるストレートアスファルト(針入度72、出光興産株式会社製)75g、結晶性ポリオレフィン(A)であるポリプロピレン-エチレンランダム共重合体(Y2045GP、ペレット、株式会社プライムポリマー製、プロピレン系重合体)25g、及び酸化防止剤であるイルガノックス1010(BASFジャパン株式会社製)0.2gを投入した。次にマントルヒーターを用いて加熱し、200℃で30分間撹拌して、アスファルトマスターバッチ組成物を得た。アスファルトマスターバッチ組成物はステンレス製容器より、テフロン(登録商標)シート上に取り出した。
前記のようにして測定した降温時25℃での貯蔵弾性率は、4×106Pa・sであった。
なお、結晶性ポリオレフィン(A)であるポリプロピレン-エチレンランダム共重合体(Y2045GP、ペレット、株式会社プライムポリマー製、プロピレン系重合体)の物性を表1に示す。
【0064】
実施例2
ステンレス製の100mL円筒容器に、ストレートアスファルト(B)であるストレートアスファルト(針入度72、出光興産株式会社製)70g、結晶性ポリオレフィン(A)であるプロピレン系重合体(L-MODU S901、ペレット、出光興産株式会社製)25g、水添石油樹脂(アイマーブ S-100、ペレット、出光興産株式会社製)を投入した。次にマントルヒーターを用いて加熱し、200℃で30分間撹拌して、アスファルトマスターバッチ組成物を得た。アスファルトマスターバッチ組成物はステンレス製容器より、テフロン(登録商標)シート上に取り出した。
前記のようにして測定した降温時25℃での貯蔵弾性率は、2.5×106Pa・sであった。
なお、結晶性ポリオレフィン(A)であるプロピレン系重合体(L-MODU S901、ペレット、出光興産株式会社製)の物性を表1に示す。
【0065】
【0066】
[アスファルト組成物の製造]
実施例3
ステンレス製の100mL円筒容器に、ストレートアスファルト(C)であるストレートアスファルト(針入度72、出光興産株式会社製)80g、実施例1で製造したアスファルトマスターバッチ組成物20g、及び酸化防止剤であるイルガノックス1010(BASFジャパン株式会社製)0.2gを投入し、次にマントルヒーターを用いて加熱し、200℃で15分間撹拌して、アスファルト組成物を得た。
【0067】
実施例4
ステンレス製の100mL円筒容器に、ストレートアスファルト(C)であるストレートアスファルト(針入度72、出光興産株式会社製)80g、実施例2で製造したアスファルトマスターバッチ組成物20gを投入し、次にマントルヒーターを用いて加熱し、140℃で15分間撹拌して、アスファルト組成物を得た。
【0068】
比較例1
ステンレス製の100mL円筒容器に、ストレートアスファルト(針入度72、出光興産株式会社製)95g、結晶性ポリオレフィン(A)であるポリプロピレン-エチレンランダム共重合体(Y2045GP、ペレット、株式会社プライムポリマー製、プロピレン系重合体)5g、及び酸化防止剤であるイルガノックス1010(BASFジャパン株式会社製)0.2gを投入し、次にマントルヒーターを用いて加熱し、200℃で15分間撹拌して、アスファルト組成物を得た。
【0069】
比較例2
ステンレス製の100mL円筒容器に、ストレートアスファルト(針入度72、出光興産株式会社製)94g、結晶性ポリオレフィン(A)であるプロピレン系重合体(L-MODU S901、ペレット、出光興産株式会社製)5g、及び水添石油樹脂(アイマーブ S-100、ペレット、出光興産株式会社製)1gを投入し、次にマントルヒーターを用いて加熱し、140℃で15分間撹拌して、アスファルト組成物を得た。
【0070】
[アスファルト組成物の評価]
実施例及び比較例で得られたアスファルト組成物の評価を次のようにして行った。結果を表2に示す。
〔1.引張試験(強度の評価)〕
実施例3~4及び比較例1~2で得られたアスファルト組成物を、プレス成形して下記試験片を作製し、JIS K-7113に準拠した引張試験により引張弾性率を測定した。
試験片(2号ダンベル):厚さ1mm
クロスヘッド速度:100mm/分
【0071】
〔2.外観(均一性の評価)〕
実施例3~4及び比較例1~2で得られたアスファルト組成物の外観を目視にて評価した。上記引張試験に用いた試験片を目視で観察し、アスファルト組成物に結晶性ポリオレフィン(A)が均一に混合されているものを〇(合格)とし、アスファルト組成物に結晶性ポリオレフィン(A)が均一に混合されていないものを×(不合格)とした。おらず、溶融分散しきれないペレットが見られた。
【0072】
〔3.60℃での貯蔵弾性率(耐熱性の評価)〕
粘弾性測定装置(MCR302、パーキンエルマー社製)を用い、下記条件にて、粘弾性を測定し、昇温時60℃での貯蔵弾性率を得た。昇温時60℃での貯蔵弾性率の値が大きいものほど、耐熱性に優れる。60℃での貯蔵弾性率は夏場の舗装道路における耐熱性の指標となる。
治具:25mm パラレル
温度及び歪:160℃から20℃まで5℃/分の速度で降温した。その後、歪1%にて30分間保持した。次に20℃から160℃まで5℃/分の速度で昇温しながら、歪1%から5%に線形で変更した。
角周波数:6.3rad/秒
【0073】
【0074】
実施例3及び4の結果から、本発明のアスファルトマスターバッチ組成物を用いることによって、結晶性ポリオレフィンのアスファルトへの混合性が改善され、均一なアスファルト組成物(改質アスファルト)を得ることができることがわかる。また、このようにして得られたアスファルト組成物(改質アスファルト)は、強度及び耐熱性に優れることがわかる。特に実施例4の結果からは、140℃という低温条件においても、本発明のアスファルトマスターバッチ組成物を用いることによって、結晶性ポリオレフィンのアスファルトへの混合性が改善され、均一なアスファルト組成物(改質アスファルト)を得ることができることがわかる。