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特開2023-154456樹脂組成物及びその製造方法並びにかかる製造方法で用いられる多層構造体及び回収助剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154456
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】樹脂組成物及びその製造方法並びにかかる製造方法で用いられる多層構造体及び回収助剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20231013BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20231013BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20231013BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L31/04 S
C08L29/04 S
C08K5/098
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063742
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(72)【発明者】
【氏名】石内 聡史
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB03W
4J002BB05W
4J002BB07W
4J002BB12W
4J002BB14W
4J002BB16W
4J002BB23W
4J002BE03Z
4J002BF03X
4J002BF03Y
4J002EG036
4J002EG046
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD100
4J002FD170
4J002GG01
4J002GG02
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】フィルムのフィッシュアイを抑制しつつ、透明性にも優れる樹脂組成物及びその製造方法並びにかかる製造方法に用いられる多層構造体及び回収助剤の提供。
【解決手段】PO(A)、エチレン単位含有量の異なる2種以上のEVAを含むEVA組成物(B)、エチレン単位含有量が20~55モル%、ケン化度が95モル%以上であるEVOH(C)及び脂肪酸二価金属塩(D)を含み、上記EVA組成物(B)のケン化度が5モル%以下、酸変性量が0.01mmol/g以下である樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン(A)、エチレン単位含有量の異なる2種以上のエチレン-酢酸ビニル共重合体を含むエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物(B)、エチレン単位含有量が20~55モル%、ケン化度が95モル%以上であるエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)及び脂肪酸二価金属塩(D)を含み、上記エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物(B)のケン化度が5モル%以下、酸変性量が0.01mmol/g以下である樹脂組成物。
【請求項2】
エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物(B)のエチレン単位含有量が50~90モル%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物(B)を構成するエチレン単位含有量の異なる2種以上のエチレン-酢酸ビニル共重合体において、少なくとも1組のエチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン単位含有量の差が5~50モル%である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物(B)とエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)の質量比(B/C)が0.05~2である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物(B)と脂肪酸二価金属塩(D)の質量比(B/D)が3~100である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)と脂肪酸二価金属塩(D)の質量比(C/D)が10~1000である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
ポリオレフィン(A)とエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物(B)の屈折率の差(A-B)が0.015~0.050を満たし、かつエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)とエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物(B)の屈折率の差(C-B)が0.001~0.080を満たす、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
ポリオレフィン(A)の含有量が80~99質量%であり、エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物(B)の含有量が0.10~6.0質量%であり、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)の含有量が0.10~20質量%であり、脂肪酸二価金属塩(D)の含有量が0.005~0.50質量%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
ポリオレフィン(A)を主成分として含む層およびエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)を主成分として含む層を有する多層構造体を溶融混練する工程を含み、前記多層構造体を構成する層の内少なくとも1層がエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物を製造する製造方法。
【請求項10】
ポリオレフィン(A)を主成分とする層およびエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)を主成分とする層を含み、前記多層構造体を構成する層の内少なくとも1層がエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項9に記載の製造方法で用いられる多層構造体。
【請求項11】
ポリオレフィン(A)を主成分として含む層およびエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)を主成分として含む層を有する多層構造体と回収助剤とを混合し溶融混練する工程を含み、前記回収助剤がエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物を製造する製造方法。
【請求項12】
エチレン-酢酸ビニル共重合体組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)を含む、請求項11に記載の製造方法に用いられる回収助剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン及びエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物を含有する樹脂組成物及びその製造方法に関する。また、前記製造方法に用いられる多層構造体及び回収助剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン(以下「PO」と略記する場合がある)層と、バリア性に優れるエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、EVOHと略記することがある)層とを含む多層構造体は、そのバリア性を活かして食品包装容器、燃料容器など各種用途に用いられている。このような多層構造体はフィルム、シート、カップ、トレイ、ボトル等の各種成形品として用いられる。近年、廃棄プラスチックごみ削減のための活動が活発化しており、一般家庭から排出される上記成形物からなる使用済み容器の廃棄物を回収して、溶融成形し、フィルム、シート、カップ、トレイ、ボトル等のリサイクル成形体として再利用する場合がある。このような再生技術は、廃棄物削減や経済性の観点で産業上有用であり、実用化されている。
【0003】
しかしながら、POとEVOHとは相溶性が悪いため、PO層及びEVOH層を有する積層体を、再度溶融成形しリサイクル成形体として再利用する際、溶融成形時の熱劣化によりゲル化を起こしたり、劣化物が押出機内のスクリュー等に付着したりして、得られる成形品においてフィッシュアイが発生する等の外観不良の原因となっていた。また、POとEVOHとの相溶性が悪いため表面にストリーク(縞模様)が発生したりする場合もあった。
【0004】
このような問題を解決する方策として、特許文献1には、PO、EVOH及び酸変性オレフィン-カルボン酸ビニルエステル共重合体を含有する樹脂組成物が記載されており、この樹脂組成物によれば、得られる成形品のフィッシュアイやスジ、ストリークの発生が低減できるとされている。
【0005】
特許文献2には、エチレン-酢酸ビニル系共重合体及びエチレン単位含有量70モル%以上のエチレン-酢酸ビニル系共重合体ケン化物を含有する回収物改質用樹脂組成物が記載されており、PO層及びEVOH層を含む多層構造体を回収し溶融成形する際に前記回収改質用樹脂組成物を用いて得られるリサイクル成形品は、変色が抑制され、かつ目ヤニの発生が抑制され、外観に優れた成形物となるとされている。
【0006】
特許文献3には、オレフィン―カルボン酸ビニルエステル共重合体及び/又はそのケン化物、脂肪酸金属塩及び/又は金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属ケイ酸塩から選ばれる1種以上の金属化合物を含有してなる樹脂組成物が記載されており、PO層及びEVOH層を含む多層構造体を回収し溶融成形する際に前記樹脂組成物を用いて得られるリサイクル成形品は、ロングラン成形性に優れるとともに、熱可塑性樹脂とEVOHの相分離異物(目ヤニ)の成形品中への混入が無く、リグラインド層と隣接層との耐層間剥離性に優れ、リグラインド層の耐衝撃性等の機械的特性の低下のない成形物となるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2012/060371号
【特許文献2】国際公開第2009/041440号
【特許文献3】特開2002―234971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年のPO層及びEVOH層を含む多層構造体のリサイクル成形品に求められる品質向上に伴い、前記従来の技術ではリサイクル成形品の透明性が不十分となる場合があった。かかる透明性を改善するために、酸変性された相溶化剤を多く添加する手法や、相溶化剤の酸変性度を高める等の手法により、POとEVOHとの相溶性を高めることが考えられるが、そのような手法で透明性を改善したリサイクル成形品は、得られる樹脂組成物の粘度が高くなるためフィッシュアイが生じやすい場合があり、フィッシュアイの発生の抑制と透明性との両立が困難であった。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、フィルムのフィッシュアイを抑制しつつ、透明性にも優れる樹脂組成物及びその製造方法並びにかかる製造方法に用いられる多層構造体及び回収助剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、
[1]ポリオレフィン(A)(以下「PO(A)」と略記する場合がある)、エチレン単位含有量の異なる2種以上のEVAを含むエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物(B)(以下「EVA組成物(B)」と略記する場合がある)、エチレン単位含有量が20~55モル%、ケン化度が95モル%以上であるエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(C)(以下「EVOH(C)」と略記する場合がある)及び脂肪酸二価金属塩(D)を含み、上記EVA組成物(B)のケン化度が5モル%以下、酸変性量が0.01mmol/g以下である樹脂組成物;
[2]EVA組成物(B)のエチレン単位含有量が50~90モル%である、[1]の樹脂組成物;
[3]EVA組成物(B)を構成するエチレン単位含有量の異なる2種以上のEVAにおいて、少なくとも1組のEVAのエチレン単位含有量の差が5~50モル%である、[1]または[2]の樹脂組成物;
[4]EVA組成物(B)とEVOH(C)の質量比(B/C)が0.05~2である、[1]~[3]のいずれかの樹脂組成物;
[5]EVA組成物(B)と脂肪酸二価金属塩(D)の質量比(B/D)が3~100である、[1]~[4]のいずれかの樹脂組成物;
[6]EVOH(C)と脂肪酸二価金属塩(D)の質量比(C/D)が10~1000である、[1]~[5]のいずれかの樹脂組成物;
[7]PO(A)とEVA組成物(B)の屈折率の差(A-B)が0.015~0.050を満たし、かつエEVOH(C)とEVA組成物(B)の屈折率の差(C-B)が0.001~0.080を満たす、[1]~[6]のいずれかの樹脂組成物;
[8]PO(A)の含有量が80~99質量%であり、EVA組成物(B)の含有量が0.10~6.0質量%であり、EVOH(C)の含有量が0.10~20質量%であり、脂肪酸二価金属塩(D)の含有量が0.005~0.50質量%である、[1]~[7]のいずれかの樹脂組成物;
[9]PO(A)を主成分として含む層およびEVOH(C)を主成分として含む層を有する多層構造体を溶融混練する工程を含み、前記多層構造体を構成する層の内少なくとも1層がEVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[1]~[8]のいずれかの樹脂組成物を製造する製造方法;
[10]PO(A)を主成分とする層およびEVOH(C)を主成分とする層を含み、前記多層構造体を構成する層の内少なくとも1層がEVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[9]の製造方法で用いられる多層構造体;
[11]PO(A)を主成分として含む層およびEVOH(C)を主成分として含む層を有する多層構造体と回収助剤とを混合し溶融混練する工程を含み、前記回収助剤がEVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)を含む、[1]~[8]のいずれかの樹脂組成物を製造する製造方法;
[12]EVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)を含む、[11]の製造方法に用いられる回収助剤;
を提供することにより解決される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、PO及びEVOHを含む樹脂組成物において、該樹脂組成物を用いて得られるフィルムのフィッシュアイを抑制しつつ、透明性にも優れる樹脂組成物及びその製造方法並びにかかる製造方法に用いられる多層構造体及び回収助剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の樹脂組成物を用いて得られるフィルムを「回収フィルム」と表現する場合がある。回収フィルムは単層であっても多層であってもよく、実施例では主に単層フィルムによって透明性及びフィッシュアイの評価を実施しているが、多層においても同様の効果が得られる。本願明細書において「スクラップ」とは、とは、多層構造体や成形体を得る際に発生する端部や不良品を回収したものである。本願明細書において「主成分」とは50質量%超であることを意味し、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、実質的にその成分のみからなることがさらに好ましいものとする。
【0013】
本発明の樹脂組成物は、PO(A)、EVA組成物(B)、EVOH(C)及び脂肪酸二価金属塩(D)を含み、EVA組成物(B)のケン化度が5モル%以下、酸変性量が0.01mmol/g以下である樹脂組成物である。エチレン単位含有量の異なる2種以上のEVAを含むEVA組成物(B)を含むことで、PO(A)及びEVOH(C)を含む樹脂組成物を溶融成形して得られる単層フィルムの透明性が優れる傾向となる。すなわち、PO(A)及びEVOH(C)を含む材料を回収し溶融成形して得られるリサイクル成形品(回収フィルム等)の透明性が優れる傾向となる。また、脂肪酸二価金属塩(D)を含むことで、上記回収フィルムのフィッシュアイ数が減少する傾向となる。さらに驚くべきことに、EVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)を含むことで、上記回収フィルムの透明性がさらに優れる傾向となる。
【0014】
(PO(A))
本発明の樹脂組成物はPO(A)を含む。本発明で用いられるPO(A)は、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂;エチレンと1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル―1-ペンテンなどのα-オレフィン類またはアクリル酸エステルを共重合したエチレン系共重合体;ポリプロピレン;プロピレンとエチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル―1-ペンテンなどのα―オレフィン類を共重合したプロピレン系共重合体;ポリ(1-ブテン);ポリ(4-メチル―1-ペンテン);アイオノマー樹脂などを含んでいる。中でも、PO(A)として、ポリエチレン、エチレン系共重合体などのポリエチレン系樹脂、またはポリプロピレン、ポリプロピレン系共重合体などのポリプロピレン系樹脂が好ましく、ポリエチレン系樹脂がより好ましいPO(A)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0015】
PO(A)の公知のプリズムカップリング法で測定される屈折率は1.500以上が好ましく、1.505以上がより好ましい。また、PO(A)の屈折率は1.540以下が好ましく、1.530以下がより好ましい。PO(A)の屈折率が上記範囲であると、後述するEVA組成物(B)及びEVOH(C)等との屈折率の関係性を調整しやすく、得られる樹脂組成物の透明性を高められる傾向となる。PO(A)の屈折率は、例えば実施例記載の方法によって測定することができる。
【0016】
(EVA組成物(B))
本発明の樹脂組成物は、エチレン単位含有量の異なる2種以上のEVAを含むEVA組成物(B)を含む。エチレン-酢酸ビニル共重合体が1種であると、ポリオレフィン(A)とEVOH(C)の相溶性が低下し、回収フィルムの透明性が悪化する傾向にある。上記EVA組成物(B)を構成するEVAは2種であっても良いし、3種以上であっても良い。以下EVA組成物(B)の好適な態様は2種以上のEVAを混合した後の態様を意味し、例えば、エチレン単位含有量が90モル%のEVAを50質量部、エチレン単位含有量が75モル%のEVAを50質量%ブレンドしたEVA組成物(B)のエチレン単位含有量は83モル%となる。
【0017】
EVA組成物(B)を構成するEVAは2種または3種であることが好ましい。EVA組成物(B)を構成する少なくとも2種のEVAを、それぞれエチレン単位含有量が多い順にEVA(b1)、EVA(b2)(3種類含む場合はエチレン単位含有量が一番低いEVAをEVA(b3)とする)とすると、EVA(b1)とEVA(b2)との質量比(b1/B2)は30/70以上90/10以下が好ましい。また、EVA(b1)とEVA(b2)及びEVA(b3)の合計量との質量比(b1/(b2+b3))は30/70以上90/10以下が好ましい。EVA組成物(B)においてEVA(b1)が占める割合は、30質量%以上が好ましく35質量%以上がより好ましく、45質量%以上がさらに好ましい場合がある。また、EVA組成物(B)においてEVA(b1)が占める割合は95質量%以下であっても、85質量%以下であっても、75質量%以下であってもよい。
【0018】
EVA組成物(B)はケン化されていてもよく、そのケン化度は5モル%以下である。EVA組成物(B)のケン化度が5モル%を超えるとPO(A)とEVOH(C)との相溶性が低下し、回収フィルムの透明性が悪化する場合がある。EVA組成物(B)のケン化度は3モル%以下がより好ましく、1モル%以下がさらに好ましく、ケン化されていないことが特に好ましい。EVA組成物(B)のケン化度はNMRにより測定できる。EVA組成物(B)を構成するEVAのケン化度の好適な態様も、EVA組成物(B)と同様である。
【0019】
EVA組成物(B)は酸変性されていてもよく、その酸変性量は0.01mmol/g以下である。酸変性量が0.01mmol/gを超えると、EVOH(C)と反応することで増粘しやすくなり、回収フィルムのフィッシュアイが増加する場合がある。また、酸変性量が0.01mmol/gを超えると脂肪酸二価金属塩(D)の働きを阻害しやすくなり、回収フィルムのフィッシュアイが増加する場合がある。前記EVA組成物(B)の酸変性量は0.007mol/g以下がより好ましく、0.005mol/g以下がさらに好ましい。EVA組成物(B)の酸変性量はJIS K2501:2003に記載の方法に準拠して測定できる。EVA組成物(B)を構成するEVAの酸変性度の好適な態様も、EVA組成物(B)と同様である。
【0020】
EVA組成物(B)は、エチレン単位含有量が50~90モル%であることが好ましい。エチレン単位含有量が上記範囲内であると、PO(A)とEVOH(C)の相溶性が向上し、回収フィルムの透明性が向上する。EVA組成物(B)のエチレン単位含有量は60モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましい。EVA組成物(B)のエチレン単位含有量は87モル%以下がより好ましく、85モル%以下がさらに好ましい。回収フィルムの透明性が向上する観点からEVA組成物(B)を構成するEVAのエチレン単位含有量は20~95モル%が好ましい。EVA組成物(B)及びEVA組成物(B)を構成するEVAのエチレン単位含有量はNMRにより測定できる。
【0021】
EVA組成物(B)がEVA(b1)及びEVA(b2)を含む場合、EVA(b1)のエチレン単位含有量は65モル%以上が好ましく、75モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましく、85モル%以上であってもよい。また、EVA(b1)のエチレン単位含有量は99モル%以下が好ましい。また、EVA(b2)のエチレン単位含有量は30モル%以上が好ましく、50モル%以上であっても、60モル%以上であっても、70モル%以上であってもよい。また、EVA(b2)のエチレン単位含有量は95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下であってもよい。EVA(B)がさらにEVA(b3)を含む場合、EVA(b3)のエチレン単位含有量は25モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましく、35モル%以上がさらに好ましい。またEVA(b3)のエチレン単位含有量は90モル%以下が好ましく、70モル%以下であっても、50モル%以下であってもよい。EVA(b1)、EVA(b2)及びEVA(b3)のエチレン単位含有量が上記範囲であると、透明性及びフィッシュアイの抑制がより優れる傾向となる。
【0022】
前記EVA組成物(B)を構成するEVAは、各EVAのエチレン単位含有量の差を取った際に、少なくとも1組のEVAのエチレン単位含有量の差は5~50モル%であることが好ましく、8~25モル%であることがより好ましく、10~20モル%であることがさらに好ましい。例えば、EVA組成物(B)がEVA(b1)、EVA(b2)及びEVA(b3)を含む場合、各EVAのエチレン単位含有量差は、EVA(b1)とEVA(b2)のエチレン単位含有量差、EVA(b1)とEVA(b3)のエチレン単位含有量差、及びEVA(b2)とEVA(b3)のエチレン単位含有量差を意味する。より具体的には、エチレン単位含有量が50モル%、70モル%、80モル%の3種のEVA(以下、エチレン単位含有量をそれぞれEt50、Et70、Et80と表記する)を含むEVA組成物においては、各EVAのエチレン単位含有量差は次のように算出できる。
Et70 - Et50 = 20モル%
Et80 - Et50 = 30モル%
Et80 - Et70 = 10モル%
【0023】
EVA組成物(B)の190℃、2160g荷重下におけるメルトフローレート(MFR)は特に限定されないが、0.1~30g/10分が好ましい。EVA組成物(B)のMFRは0.5g/10分以上であることがより好ましく、1g/10分以上であることがさらに好ましい。また、EVA組成物(B)のMFRは10g/10分以下がより好ましく、5g/10分以下がさらに好ましい。EVA組成物(B)を構成するEVAのMFRの好適な態様も、EVA組成物(B)と同様である。
【0024】
本発明のEVA組成物(B)を構成するEVAはその1種または2種以上が不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されていてもよく、前記不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸;前記した酸のメチルエステルまたはエチルエステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明におけるEVA組成物(B)を構成するEVAは架橋されていてもよい。架橋変性方法としては、EVA組成物(B)に架橋剤を添加する方法が挙げられ、架橋剤としては各成分を架橋できるものであればよく、特に限定されないが、反応性などを考慮して有機過酸化物を使用することが好ましい。架橋剤の有機過酸化物としては、有機過酸化物であれば特に限定されず、例えば、ジクミルペルオキシド、ジt-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1ージ(tーブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシドなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。なかでも、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1-ジ(tーブチルペルオキシ)シクロヘキサンが反応性の観点から好ましく用いられる。
【0026】
また、前記架橋剤と共に、必要に応じて、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼンなどの架橋助剤を用いてもよい。上記架橋剤を含んでいるエチレン-酢酸ビニル共重合体組成物(B)を、熱を加え混練することで架橋することができる。この際、混練温度はEVA組成物(B)の融点~300℃程度が好ましい。
【0027】
本発明のEVA組成物(B)を構成するEVAの製造方法としては、高圧法ラジカル重合、溶液重合、乳化重合等の公知の製造方法が挙げられる。EVA組成物(B)を構成するEVAとしては市販品の中から適宜選択することができ、例えば、東ソー株式会社製のウルトラセン、ランクセス社製のレバプレンまたはレバメルト等が挙げられる。
【0028】
EVA組成物(B)を製造する方法としては特に限定されないが、各成分を均一に分散できる観点から、EVA組成物(B)を構成する各種材料をブレンドし、その後混練装置で溶融混練することが好ましい。混練装置としては、各成分を均一に分散できれば特に制限はなく、通常用いられる樹脂の混練装置により製造することができる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、回転ロール、インターナルミキサーなどの混練装置が挙げられる。中でも分散性及び連続生産性に優れることから、二軸押出機がより好ましい。二軸押出機で混練を行う場合のスクリュー回転数は特に限定されないが、50rpm以上3000rpm以下で混練することが好ましく、100rpm以上2000rpm以下がより好ましく、150rpm以上1000rpm以下がさらに好ましい。
【0029】
EVA組成物(B)においてEVAが占める割合は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましく、EVA組成物(B)はEVAのみから構成されていてもよい。また、EVA組成物(B)が架橋剤及び必要に応じて架橋助剤を含む場合、EVA組成物(B)においてEVA、架橋剤及び必要に応じて架橋助剤が占める割合は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましく、EVA組成物(B)はEVA、架橋剤及び必要に応じて架橋助剤のみから構成されていてもよい
【0030】
(EVOH(C))
本発明の樹脂組成物は、エチレン単位含有量が20~55モル%であり、ケン化度が95モル%以上であるEVOH(C)を含む。EVOH(C)のエチレン単位含有量が20モル%以上であると、PO(A)との相溶性が向上する。EVOH(C)のエチレン単位含有量は25モル%以上がより好ましい。また、EVOH(C)のエチレン単位含有量が55モル%以下であると、本発明の樹脂組成物の原料に用いられ得る多層構造体のガスバリア性が向上する。EVOH(C)のエチレン単位含有量は50モル%以下がより好ましい。
【0031】
前記EVOH(C)のケン化度は、本発明の樹脂組成物の原料に用いられ得る多層構造体のガスバリア性及び熱安定性の観点から95モル%以上であり、98モル%以上がより好ましく、99モル%以上がさらに好ましい。EVOH(C)のケン化度は100モル%以下であってもよい。
【0032】
EVOH(C)の210℃、2160g荷重下におけるMFRは、溶融成形性及び押出成形性の観点から0.1~50g/10分が好ましい。EVOH(C)のMFRは、0.5g/10分以上がより好ましく、1g/10分以上がさらに好ましい。また、EVOH(C)のMFRは20g/10分以下がより好ましく、10g/10分以下がさらに好ましい。
【0033】
EVOH(C)は、本発明の目的が阻害されない範囲で、エチレン、酢酸ビニル及びそのケン化物以外の他の単量体由来の単位を有していてもよい。EVOH(C)が前記他の単量体単位を有する場合、EVOH(C)の各々の全構造単位に対する各々の前記他の単量体単位の含有量は、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましく、5モル%以下であることが特に好ましい。また、EVOH(C)が上記他の単量体由来の単位を有する場合、その下限値は0.05モル%であってもよいし0.10モル%であってもよい。前記他の単量体としては、例えば、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン等のアルケン;3-アシロキシ-1-プロペン、3-アシロキシ-1-ブテン、4-アシロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-1-ブテン、3-アシロキシ-4-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-3-メチル-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-1-ペンテン、5-アシロキシ-1-ペンテン、4,5-ジアシロキシ-1-ペンテン、4-アシロキシ-1-ヘキセン、5-アシロキシ-1-ヘキセン、6-アシロキシ-1-ヘキセン、5,6-ジアシロキシ-1-ヘキセン、1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン等のエステル基を有するアルケン又はそのケン化物;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和酸又はその無水物、塩、又はモノ若しくはジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸又はその塩;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β-メトキシ-エトキシ)シラン、γ-メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等ビニルシラン化合物;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0034】
EVOH(C)は、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の手法で後変性されていてもよい。
【0035】
EVOH(C)は、1種単独で用いることもできるし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
(脂肪酸二価金属塩(D))
本発明に用いられる樹脂組成物は、脂肪酸二価金属塩(D)を含む。脂肪酸二価金属塩(D)を含むことにより、劣化物の凝集に由来するフィッシュアイの発生を抑制できる。脂肪酸二価金属塩(D)としては、ラウリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、塩基性ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、塩基性ヒドロキシステアリン酸、ノナデカン酸、オレイン酸、ベヘン酸、モンタン酸、リノール酸等の炭素数12以上の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。
【0037】
その他、炭素数11以下の脂肪酸金属塩(酢酸塩、プロピオン酸塩等)、脂肪酸金属塩以外の金属塩(硝酸塩、硫酸塩等)等を用いることもできる。
【0038】
また、前記脂肪酸二価金属塩(D)を構成する二価金属塩は、周期律表第2族の金属塩及び各種二価の遷移金属塩であればよく、例えばマグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、コバルト塩、及びマンガン塩等が挙げられる。中でも、生産性および実用性の観点から、脂肪酸二価金属塩(D)を構成する二価金属塩としては、マグネシウム塩、カルシウム塩、及び亜鉛塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0039】
本発明の樹脂組成物に含有される脂肪酸二価金属塩(D)を構成する二価金属イオンは、アニオンから解離した状態で存在していてもよい。また、EVOH(C)やその他の任意成分が有する基等(例えば、カルボキシ基、水酸基等)に配位した状態で存在していてもよい。
【0040】
(接着性樹脂(E))
本発明の樹脂組成物を構成する成分として、上記してきたPO(A)、EVA組成物(B)、EVOH(C)及び脂肪酸二価金属塩(D)以外に、接着性樹脂(E)を含有することが好ましい。接着性樹脂(E)としては、例えば不飽和カルボン酸又はその無水物をオレフィン系重合体に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を挙げることができる。不飽和カルボン酸又はその無水物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、中でも、無水マレイン酸が好適に用いられる。具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-プロピレン共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-酢酸ビニル共重合体等から選ばれた1種又は2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。
【0041】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物中におけるPO(A)の含有量は、回収フィルムの透明性及びフィッシュアイの観点から80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、87質量%以上がさらに好ましい。また、PO(A)の含有量は99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましく、96質量%以下がさらに好ましい。PO(A)の含有量が99質量%以下であると、本発明の樹脂組成物を、EVOH層を含む多層構造体を回収して製造する場合に、コストを抑制できる傾向となる。
【0042】
本発明の樹脂組成物中におけるEVA組成物(B)の含有量は、回収フィルムの透明性の観点から、0.10質量%以上が好ましく、0.25質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。また、本発明の樹脂組成物中におけるEVA組成物(B)の含有量は、フィッシュアイを抑制する観点から6.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下がさらに好ましい。
【0043】
本発明の樹脂組成物中におけるEVOH(C)の含有量は、0.10質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上がさらに好ましい。EVOH(C)の含有量が0.10質量%以上であると、本発明の樹脂組成物を、EVOH層を含む多層構造体を回収して製造する場合に、コストを抑制できる傾向となる。また、本発明の樹脂組成物中におけるEVOH(C)の含有量は、回収フィルムの透明性及びフィッシュアイの観点から20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、6.0質量%以下が特に好ましい。
【0044】
本発明の樹脂組成物中における脂肪酸二価金属塩(D)の含有量は0.005質量%以上が好ましく、0.015質量%以上がより好ましく、0.020質量%以上がさらに好ましい。また、脂肪酸二価金属塩(D)の含有量は1.2質量%以下が好ましく、0.50質量%以下がより好ましく、0.30質量%以下がさらに好ましく、0.25質量%以下がよりさらに好ましく、0.15質量%以下が特に好ましい。脂肪酸二価金属塩(D)の含有量が上記範囲内であると、回収フィルムのフィッシュアイが抑制できる傾向となる。
【0045】
本発明の樹脂組成物中におけるEVA組成物(B)とEVOH(C)の質量比(B/C)は0.05~2であることが好ましい。質量比(B/C)が0.05以上であると、回収フィルムの透明性が向上する傾向となる。質量比(B/C)は0.1以上がより好ましく、0.2以上がさらに好ましい。また、質量比(B/C)が2以下であると、得られる回収フィルムのフィッシュアイを抑制できる傾向となる。質量比(B/C)は1.5以下がより好ましく、1.0以下がさらに好ましい。
【0046】
本発明の樹脂組成物中におけるEVA組成物(B)と脂肪酸二価金属塩(D)の質量比(B/D)は3~100であることが好ましい。質量比(B/D)が3以上であると、透明性が向上する傾向となる。質量比(B/D)は5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましい。また、質量比(B/D)が100以下であると、回収フィルムのフィッシュアイを抑制できる傾向となる。質量比(B/D)は75以下がより好ましく、50以下がさらに好ましい。
【0047】
本発明の樹脂組成物中におけるEVOH(C)と脂肪酸二価金属塩(D)の質量比(C/D)は10~1000であることが好ましい。質量比(C/D)が10以上であると、EVOH(C)の溶融混練中の熱劣化が抑制され、回収フィルムのフィッシュアイを抑制できる傾向となる。質量比(C/D)は20以上がより好ましく、50以上がさらに好ましい。また、質量比(C/D)が1000以下であると、フィッシュアイを抑制できる傾向となる。C/Dは500以下がより好ましく、200以下がさらに好ましい。
【0048】
本発明の樹脂組成物中におけるPO(A)とEVA組成物(B)の屈折率の差(A-B)は0.015~0.050を満たし、かつEVOH(C)とEVA組成物(B)の屈折率の差(C-B)が0.001~0.080を満たすことが好ましい。各成分の屈折率差が上記の範囲内であると、回収フィルムにおける透明性が向上する。その理由は定かではないが、PO(A)のマトリックスとEVOH(C)のドメインの界面に前記屈折率差を満たすEVA組成物(B)が存在することにより、EVOH(C)の見かけの屈折率がPO(A)の屈折率に近づくため、回収フィルム中の光散乱が抑制され、結果として回収フィルムの透明性が向上していると推定される。PO(A)とEVA組成物(B)の屈折率の差(A-B)は、0.020~0.045がより好ましく、0.025~0.040がさらに好ましい。また、EVOH(C)とEVA組成物(B)の屈折率の差(C-B)は、0.010~0.070がより好ましく、0.030~0.060がさらに好ましい。
【0049】
(他の化合物)
本発明の樹脂組成物に、本発明の効果を阻害しない範囲でPO(A)、EVA組成物(B)、EVOH(C)、脂肪族二価金属塩(D)及び接着性樹脂(E)以外の他の化合物を含有させることもできる。前記他の化合物の例としては、PO(A)、EVA組成物(B)、EVOH(C)及び接着性樹脂(E)以外の樹脂、カルボン酸化合物、リン酸化合物、ホウ素化合物、金属塩(アルカリ金属塩、脂肪酸二価金属塩(D)以外のアルカリ土類金属塩)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、充填剤、帯電防止剤を挙げることができる。本発明の樹脂組成物中における前記他の化合物の含有量は、通常5質量%以下であり、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。本発明の樹脂組成物がカルボン酸化合物、リン酸化合物、ホウ酸化合物または金属塩を含む場合、それらの化合物はEVOH(C)と予め混合されていることが好ましい。
【0050】
PO(A)、EVA組成物(B)、EVOH(C)及び接着性樹脂(E)以外の樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリスチレン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0051】
カルボン酸化合物は、モノカルボン酸でも多価カルボン酸でもよく、これらの組み合わせであってもよい。カルボン酸化合物はイオンであってもよく、かかるカルボン酸イオンは金属イオンと塩を形成していてもよい。カルボン酸及びカルボン酸イオンの含有量は0.05~20ppmが好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば酢酸、ステアリン酸などの脂肪族カルボン酸等が好適に用いられる。本発明の樹脂組成物がカルボン酸化合物を含むと、溶融成形時の着色を防止できる傾向となる。
【0052】
リン酸化合物は特に限定されず、リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等を用いることができる。リン酸塩としては第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれの形で含まれていてもよいが、第1リン酸塩が好ましい。そのカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩が好ましい。中でも、リン酸2水素ナトリウム及びリン酸2水素カリウムが好ましい。本発明の樹脂組成物がリン酸化合物を含む場合、リン酸化合物の含有量はリン酸根換算で0.05~25ppmが好ましい。リン酸化合物の含有量が0.05ppm以上であると、溶融成形時の耐着色性が良好となる傾向にある。一方、リン酸化合物の含有量が25ppm以下であると溶融成形性が良好となる傾向にある。
【0053】
ホウ素化合物としては特に限定されず、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては前記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物のうちでもオルトホウ酸(以下、単にホウ酸と表示する場合がある)が好ましい。本発明の樹脂組成物がホウ素化合物を含む場合、ホウ素化合物の含有量はホウ素元素換算で1~100ppmが好ましい。ホウ素化合物の含有量が1ppm以上であると、加熱溶融時のトルク変動を抑制できる傾向となる。一方、ホウ素化合物の含有量が100ppm以下であると、成形性を良好に保てる傾向にある。
【0054】
アルカリ金属塩のカチオン種は特に限定されないが、ナトリウム塩またはカリウム塩が好適である。アルカリ金属塩のアニオン種も特に限定されない。カルボン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、ホウ酸塩、水酸化物等として添加できる。本発明の樹脂組成物がアルカリ金属塩を含む場合、アルカリ金属塩の含有量は金属元素換算で0.5~25ppmであることが好ましい。アルカリ金属塩の含有量が0.5ppm以上であると層間接着性が良好となる傾向となる。一方、アルカリ金属塩の含有量が25ppm以下であると溶融安定性に優れる傾向となる。
【0055】
脂肪酸二価金属塩(D)以外のアルカリ土類金属塩のカチオン種は特に限定されないが、マグネシウム塩またはカルシウム塩が好適である。アルカリ土類金属塩のアニオン種も特に限定されない。炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、ホウ酸塩、水酸化物等として添加できる。アルカリ土類金属塩の含有量は0.5~25ppmが好ましい。本発明の樹脂組成がアルカリ土類金属塩を含むと、成形体を繰り返し溶融成形した際の劣化抑制やゲル等の劣化物の発生を抑制できる傾向となる。
【0056】
酸化防止剤:2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、4,4’-チオビス(6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’-チオビス(6-t-ブチルフェノール)など。
【0057】
紫外線吸収剤:エチレン-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)5-クロロベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノンなど。
【0058】
可塑剤:フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステルなど。
【0059】
滑剤:ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、N-オレイルパルミトアミド、N-ステアリルエルカアミド、流動パラフィン、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリオレフィンワックス、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、モンタン酸、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸ステアリル、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛など。
【0060】
充填剤:グラスファイバー、アスベスト、バラストナイト、ケイ酸カルシウムなど。
【0061】
帯電防止剤:グリセリンモノ脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルジエタノールアミン、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリウムベタインなど。
【0062】
本発明の樹脂組成物における全樹脂のうち、PO(A)、EVA組成物(B)及びEVOH(C)が占める割合は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、98質量%以上が特に好ましく、実質的にPO(A)、EVA組成物(B)及びEVOH(C)のみであってもよいし、PO(A)、EVA組成物(B)及びEVOH(C)のみであってもよい。本発明の樹脂組成物が接着性樹脂(E)を含む場合、本発明の樹脂組成物における全樹脂のうち、PO(A)、EVA組成物(B)、EVOH(C)及び接着性樹脂(E)が占める割合は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、98質量%以上が特に好ましく、実質的にPO(A)、EVA組成物(B)、EVOH(C)及び接着性樹脂(E)のみであってもよいし、PO(A)、EVA組成物(B)、EVOH(C)及び接着性樹脂(E)のみであってもよい。また、本発明の樹脂組成物における、PO(A)、EVA組成物(B)、EVOH(C)及び脂肪酸二価金属塩(D)が占める割合は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、98質量%以上が特に好ましく、実質的にPO(A)、EVA組成物(B)、EVOH(C)及び脂肪酸二価金属塩(D)のみから構成されていてもよい。本発明の樹脂組成物が接着性樹脂(E)を含む場合、本発明の樹脂組成物における、PO(A)、EVA組成物(B)、EVOH(C)、脂肪酸二価金属塩(D)及び接着性樹脂(E)が占める割合は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、98質量%以上が特に好ましく、実質的にPO(A)、EVA組成物(B)、EVOH(C)、脂肪酸二価金属塩(D)及び接着性樹脂(E)のみから構成されていてもよい。
【0063】
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、例えばPO(A)、EVA組成物(B)、EVOH(C)および脂肪酸二価金属塩(D)をドライブレンドして溶融混練する方法;PO(A)、EVA組成物(B)、EVOH(C)および脂肪酸二価金属塩(D)からなる群より選ばれる少なくとも1種を予めドライブレンドしてから、他の成分を配合して溶融混練する方法;PO(A)、EVA組成物(B)、EVOH(C)および脂肪酸二価金属塩(D)からなる群より選ばれる少なくとも1種を予め溶融混練してから、他の成分を配合して溶融混練する方法;PO(A)を主成分として含む層及びEVOH(C)を主成分として含む層を有する多層構造体と、EVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)を含む回収助剤とを溶融混練する方法;PO(A)を主成分として含む層及びEVOH(C)を主成分として含む層を有する多層構造体であって、前記多層構造体の少なくとも一層にEVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)を含む多層構造体を溶融混練する方法等が挙げられる。また、本発明の樹脂組成物が前記他の化合物を含む場合、前記他の化合物は、上述したドライブレンドの工程で混ぜ合わせても、多層構造体を構成する層中に含ませても、多層構造体を構成する層であっても、溶融混練時に回収助剤として添加してもよい。
【0064】
中でも、PO(A)を主成分として含む層及びEVOH(C)を主成分として含む層を有する多層構造体を溶融混練する工程を含み、前記多層構造体を構成する層の内少なくとも1層がEVA組成物(B)および脂肪酸二価金属塩(D)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む方法が、実用性および経済性の観点から好ましい。さらに多層構造体としての性能を維持できる観点から、PO(A)を主成分として含む層がEVA組成物(B)および脂肪酸二価金属塩(D)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。前記多層構造体を構成する層の内少なくとも1層にEVA組成物(B)および脂肪酸二価金属塩(D)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含ませる方法は特に限定されないが、例えば、EVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)をそれぞれ別の層に含ませてもよいし、同じ層に含ませてもよい。また、多層構造体を構成する層の原料となる樹脂を後述する回収助剤またはその成分とドライブレンドしてそのまま製膜してもよいし、多層構造体を構成する層の原料となる樹脂を後述する回収助剤またはその成分とドライブレンドして溶融混練してペレットを作製した後に、かかるペレットを用いて製膜してもよい。
【0065】
また、本発明の樹脂組成物の製造において、PO(A)を主成分として含む層およびEVOH(C)を主成分として含む層を有する多層構造体と回収助剤とを混合し溶融混練する工程を含み、前記回収助剤がEVA組成物(B)および脂肪酸二価金属塩(D)を含む方法も、実用性および経済性の観点から好ましい。このとき、前記多層構造体は、公知の方法により粉砕されたスクラップとして用いることが好ましい。粉砕されたスクラップに対して添加される回収助剤としては、例えば、EVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)をそれぞれ別々にブレンドしてもよいが、EVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)を含む組成を予めドライブレンドし溶融混錬したペレット形状の回収助剤をドライブレンドしてから溶融混練するのが好ましい。なお、スクラップとしては、一つの成形物から得られるスクラップを用いてもよいし、二つ以上の成形物から得られる関連するスクラップを混合して使用してもよい。
【0066】
本発明の回収助剤は、EVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)を含む。EVA組成物(B)を含むことで、回収性が良好となり、回収後に得られるリサイクル成形品の透明性が良好となる。また、脂肪酸二価金属塩(D)を含むことで、回収後に得られるリサイクル成形品のフィッシュアイの発生を抑制できる傾向となる。本回収助剤に含まれるEVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)の好適な態様は、上述した樹脂組成物に含まれるEVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)と同様である。本発明の回収助剤中のEVA組成物(B)の含有量は20質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上であってよく、100質量%以下であってもよい。また、本発明の回収助剤中の脂肪酸二価金属塩(D)の含有量は、0.1~25質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。本発明の回収助剤においてEVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)が占める割合は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、97質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上であってもよい。本発明の回収助剤は、実質的にEVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)のみからなってもよい。
【0067】
また、本発明の回収助剤は、回収助剤製造時のフィード性の観点からPO(A)を含んでいてもよい。本発明の回収助剤がPO(A)を含む場合、本発明の回収助剤中のPO(A)の含有量は20質量%~90質量%が好ましく、30質量%~80質量%がより好ましい。本発明の回収助剤がPO(A)を含む場合、本発明の回収助剤中のEVA組成物(B)の含有量は10質量%~80質量%が好ましく、20質量%~70質量%がより好ましい。本発明の回収助剤がPO(A)を含む場合、本発明の回収助剤中の脂肪酸二価金属塩(D)の含有量は0.1質量%~15質量%が好ましく、1質量%~10質量%がより好ましい。本発明の回収助剤がPO(A)を含む場合、本発明の回収助剤においてPO(A)、EVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)が占める割合は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、97質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上であってもよい。本発明の回収助剤は、実質的にPO(A)、EVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)のみからなってもよい。なお、回収助剤に含まれるPO(A)は、本発明の樹脂組成物の原料として用いられ得る多層構造体を構成するPO(A)とは同一であっても異なっていてもよい。
【0068】
本発明の回収助剤は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、PO(A)、EVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)以外の他の化合物を含んでいてもよい。前記他の化合物としては、上述した樹脂組成物に含まれていてもよい他の化合物が挙げられ、その他にEVOH(C)を前記回収助剤が含んでいてもよい。本発明の回収助剤における他の化合物の含有量は、通常50質量%以下であり、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
【0069】
相溶性の観点から、本発明の回収助剤がPO(A)を含む場合、前記回収助剤に含有されるPO(A)と回収される多層構造体に含まれるPO(A)とは同じ種類のPOであることが好ましい。例えば、回収される多層構造体に含まれるPO(A)がポリプロピレンである場合には、前記回収助剤に含有されるPO(A)もポリプロピレンであることが好ましく、回収される多層構造体に含まれるPO(A)がポリエチレンである場合には、前記回収助剤に含有されるPO(A)もポリエチレンであることが好ましい。
【0070】
本発明の回収助剤がEVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)以外の化合物を含む場合、EVA組成物(B)及び脂肪酸二価金属塩(D)とそれ以外の化合物とを予め溶融混練して、それら全てを含有する回収助剤としてから回収物に添加することが好ましい。このような回収助剤は、好適にはペレット形状で回収物に配合される。回収物は、適当な寸法に粉砕しておくことが好ましく、粉砕された回収物に対してペレット形状の回収助剤を混合することが好適である。
【0071】
本発明の樹脂組成物の原料として、未使用の樹脂のみを用いても構わないが、原料の少なくとも一部として、上述したような多層構造体の回収物を用いることが、廃棄物量の低減及びコスト削減の観点から好ましい。本発明の樹脂組成物の原料における、前記回収物の割合は50質量%以上が好ましい。なお、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、回収物の原料として、市場で消費された包装材料(多層構造体)を用いてもよく、その場合、包装材料を裁断し、必要に応じて分別及び洗浄した後に、押出機を用いて溶融混練する工程が一般に採用される。
【0072】
本発明の樹脂組成物の原料として使用される多層構造体としては、特に限定されず、以下の層構成を備える多層構造体が例示される。なお、下記例示においてPO(A)層を「A」、EVOH(C)層を「C」、接着性樹脂(E)層を「E」、本発明の樹脂組成物層を「F」及び直接積層していることを「/」で表現する。
3層 A/E/C、A/C/A
5層 A/E/C/E/A、A/E/C/E/F
6層 A/E/C/E/F/A、F/A/E/C/E/A、A/F/E/C/E/F、F/A/E/C/E/F
7層 A/F/E/C/E/F/A、A/F/E/C/E/A/F、F/A/E/C/E/A/F
【0073】
前記多層構造体が本発明の樹脂組成物層を有していることが、廃棄物量低減及びコスト削減の観点から好ましい。また、層間の接着性が向上する観点から、EVOH(C)層と接着性樹脂(E)層とが接触していることが好ましい。
【0074】
前記多層構造体の全体厚みは、用途に応じて適宜設定することができる。前記全体厚みは、20~2000μmが好適である。全体厚みが20μm以上であることにより、剛性の高い多層構造体が得られる。全体厚みが50μm以上であることがより好適である。一方、全体厚みが2000μm以下であることにより、フレキシブルな多層構造体が得られる。全体厚みが1000μm以下であることがより好適である。
【0075】
前記多層構造体の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、一般のPOの分野において実施されている成形方法、例えば、押出成形、ブロー成形、射出成形、熱成形等を挙げることができる。なかでも、共押出成形及び共射出成形が好適であり、共押出成形がより好適である。
【0076】
本発明の多層構造体は、本発明の樹脂組成物を主成分とする層を備えることで環境及びコスト面で優れる。また、本発明の多層構造体は、さらにPO(A)層、EVOH(C)層及び接着性樹脂(E)層を含む多層構造体であることが好ましい。本発明の多層構造体における、好適な層構成及び製造方法については、上述の原料として使用される多層構造体において、本発明の樹脂組成物層を有する例として記載したものが挙げられる。また、本発明の多層構造体は本発明の効果を阻害しない範囲で、PO(A)層、EVOH(C)層及び接着性樹脂(E)層以外の他の樹脂層を有していてもよい。前記他の樹脂層としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体層、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル層、ポリエステルエラストマー層、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド層、ポリスチレン層、ポリ塩化ビニル層、ポリ塩化ビニリデン層、アクリル系樹脂層、ビニルエステル系樹脂層、ポリウレタン層、ポリカーボネート層等が挙げられる。
【0077】
本発明の樹脂組成物は、周知の溶融押出成形機、圧縮成形機、トランスファ成形機、射出成形機、吹込成形機、熱成形機、回転成形機、ディップ成形機などを使用して、フィルム、シート、チューブ、ボトル、カップなどの任意の成形品に成形することができる。成形に関しての押出温度は、本発明の樹脂組成物を構成するPO(A)の種類、PO(A)およびEVOH(C)のMFR、PO(A)およびEVOH(C)の組成比または成形機の種類などにより適宜選択されるが、多くの場合130~350℃の範囲である。
【0078】
本発明の樹脂組成物を成形して得られた成形品は、食品包装容器、飲料容器、化粧品容器、燃料容器、医薬品容器などとして用いることができる。
【実施例0079】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0080】
<評価方法>
(1)酸変性量の定量
実施例及び比較例で使用したEVA組成物(B)、EVA(b1)、EVA(b2)またはEVA(b3)について、JIS K2501:2003に基づいて酸価を測定し、酸価から酸変性量(mmol/g)を算出した。結果を表1に示す。
【0081】
(2)屈折率の測定
実施例及び比較例で使用したPO(A)、EVA組成物(B)及びEVOH(C)を用いて、公知のプリズムカップリング法により屈折率を測定した。具体的には、卓上用熱プレス装置(神藤金属工業所)を用いて、テフロン(登録商標)のシートの上に置いた厚さ100μmの鉄板スペーサーの円形の開口部に各樹脂を10g投入し、もう一枚のテフロン(登録商標)のシートで挟み、200℃で120秒間熱プレスし厚さ100μmのプレスフィルムを得た。得られたプレスフィルムを用い、メトリコン社製「プリズムカプラ Model 2010/M」を用いて、波長532nmのレーザー光における厚み方向の屈折率を測定した。
【0082】
(3)透明性の評価
実施例及び比較例で得られた回収単層フィルム(I)の中央を中心として10cm×10cmの正方形のサンプルを切り出した。続いて、切り出したサンプルについて、JIS K7375に準じて、ボイック積分球式光線透過率・全光線反射率計(村上色彩技術研究所製「HR-100型」)を使用しヘイズを測定した。
【0083】
(4)フィッシュアイの評価
実施例及び比較例で得られた回収単層フィルム(II)の作製時に欠点検出器(フロンティアシステム社製「FEカウンター」を用いて、幅0.08m×長さ1m(0.08m)中のフィッシュアイの個数をカウントした。評価基準は以下の通りとした。
A:フィッシュアイ個数500個以下
B:フィッシュアイ個数501個以上1500個以下
C:フィッシュアイ個数1501個以上
【0084】
<使用した材料>
・PO(A)
A1:「ノバテック(商標)LJ400」LDPE、日本ポリエチレン株式会社製
・EVA組成物(B)
(EVA(b1))
b1-1:公知の方法で製造されたEVA、エチレン単位含有量90モル%、ケン化度0モル%、酸変性量0.005mmol/g、密度0.95g/cm
b1-2:公知の方法で製造されたEVA、エチレン単位含有量93モル%、ケン化度0モル%、酸変性量0.005mmol/g、密度0.94g/cm
b1-3:公知の方法で製造されたEVA、エチレン単位含有量87モル%、ケン化度0モル%、酸変性量0.004mmol/g、密度0.95g/cm
b1-4:公知の方法で製造されたEVAケン化物、エチレン単位含有量89モル%、ケン化度97.1モル%、酸変性量0.012mmol/g、密度0.97g/cm
b1-5:公知の方法で製造されたEVA、エチレン単位含有量96モル%、ケン化度0モル%、酸変性量0.004mmol/g、密度0.93g/cm
(EVA(b2))
b2-1:公知の方法で製造されたEVA、エチレン単位含有量75モル%、ケン化度0モル%、酸変性量0.003mmol/g、密度1.00g/cm
b2-2:公知の方法で製造されたEVA、エチレン単位含有量87モル%、ケン化度0モル%、酸変性量0.004mmol/g、密度0.95g/cm
b2-3:公知の方法で製造されたEVA、エチレン単位含有量43モル%、ケン化度0モル%、酸変性量0.003mmol/g、密度1.11g/cm
b2-4:公知の方法で製造されたEVA、エチレン単位含有量70モル%、ケン化度0モル%、酸変性量0.15mmol/g、密度0.95g/cm
b2-5:公知の方法で製造されたEVA、エチレン単位含有量90モル%、ケン化度0モル%、酸変性量0.005mmol/g、密度0.95g/cm
(EVA(b3))
b3-1:公知の方法で製造されたEVA、エチレン単位含有量81モル%、ケン化度0モル%、酸変性量0.003mmol/g、密度0.97g/cm
b3-2:公知の方法で製造されたEVA、エチレン単位含有量43モル%、ケン化度0モル%、酸変性量0.003mmol/g、密度1.11g/cm
・EVOH(C)
C1:「エバール(商標)F171B」EVOH、株式会社クラレ製、エチレン単位含有量32モル%、ケン化度99モル%以上
C2:「エバール(商標)L171B」EVOH、株式会社クラレ製、エチレン単位含有量27モル%、ケン化度99モル%以上
C3:「エバール(商標)G156B」EVOH、株式会社クラレ製、エチレン単位含有量48モル%、ケン化度99モル%以上
・脂肪酸二価金属塩(D)
StMg:ステアリン酸マグネシウム
StCa:ステアリン酸カルシウム
StZn:ステアリン酸亜鉛
・接着性樹脂(E)
E1:「アドマー(商標)NF518」無水マレイン酸変性ポリエチレン、三井化学株式会社製、密度0.91g/cm
【0085】
<実施例>
実施例1
(EVA組成物(B1)の作製)
EVA(b1-1)50質量部とEVA(b2-1)50質量部とをドライブレンドし、二軸押出機(株式会社東洋精機製作所製2軸セグメント押出機「2D30W2」(D(mm)=25、L/D=30、スクリュー:同方向完全噛合型))を用いて溶融成形してEVA組成物(B1)ペレットを得た。
【0086】
(多層構造体の作製)
共押出多層キャスト製膜装置を用いて、PO層が低密度ポリエチレン(LDPE;日本ポリエチレン株式会社製「ノバテック(商標)LJ400」)からなり、バリア層がEVOH(C)(株式会社クラレ製「エバール(商標)F171B」)からなり、接着層が無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学株式会社製「アドマー(商標)NF518」、密度0.91g/cm)からなる多層構造体(LDPE層/無水マレイン酸変性ポリエチレン層/EVOH層/無水マレイン酸変性ポリエチレン層/LDPE層=40μm/5μm/10μm/5μm/40μmの層厚みと層構成を有する多層構造体(5層共押出多層キャストフィルム)を製膜した。このときの製膜条件は以下に示す。
共押出条件
PO層の押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=180/220/220/220℃
バリア層の押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=180/220/220/220℃
接着層の押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=180/220/220/220℃
押出機:
・PO層 32φ押出機 GT-32-A型(株式会社プラスチック工学研究所製)
・バリア層 20φ押出機 ラボ機ME型CO-EXT(株式会社東洋精機製作所製)
・接着層 25φ押出機 P25-18-AC型(大阪精機工作株式会社製)
Tダイ:300mm幅3種5層用(株式会社プラスチック工学研究所製)
冷却ロールの温度:80℃
引取速度:3.0m/分
【0087】
(単層フィルムの作製)
各押出機に使用する樹脂を全て低密度ポリエチレン(LDPE;日本ポリエチレン株式会社製「ノバテック(商標)LJ400」)に変更した以外は、上記多層構造体の作製と同様にして製膜を行い、厚み100μmのLDPE単層フィルムを得た。
【0088】
(粉砕)
上記で得られた多層構造体を径8mmΦメッシュの粉砕機で粉砕して多層構造体回収物を作製した。また、上記で得られた単層フィルムを径8mmΦメッシュの粉砕機で粉砕して単層フィルム回収物を作製した。
【0089】
(回収樹脂組成物ペレットの作製)
上記で得られた各回収物を多層構造体回収物/単層フィルム回収物=50/50の質量比になるようにドライブレンドした。得られたドライブレンド樹脂100質量部に対し、EVA組成物(B1)を1.25質量部、脂肪酸二価金属塩(D)としてステアリン酸マグネシウム(StMg)を0.03質量部となるようにさらにドライブレンドし、溶融混練した。溶融混練は、株式会社東洋精機製作所製2軸セグメント押出機「2D30W2」(D(mm)=25、L/D=30、スクリュー:同方向完全噛合型)を使用し、樹脂温度が220℃となるように溶融混練を行い、回収樹脂組成物ペレット(I)(直径2mm、長さ4mmの円柱ペレット)を得た。さらに、得られた回収樹脂組成物ペレット(II)を上述した溶融混練する操作にて再度溶融混練する操作を繰り返し、計5回溶融混練することにより、回収樹脂組成物ペレット(II)(直径2mm、長さ4mmの円柱ペレット)を得た。
【0090】
(回収単層フィルムの製膜)
上記で得られた回収樹脂組成物ペレット(I)50質量部と低密度ポリエチレン(LDPE;日本ポリエチレン株式会社製「ノバテック(商標)LJ400」)50質量部とをドライブレンドし、株式会社東洋精機製作所製20mm押出機「D2020」(D(mm)=20、L/D=20、圧縮比3.5、スクリュー:フルフライト)を用いて、以下の条件にて単層製膜を行い、回収単層フィルム(I)を得た。また、回収樹脂組成物ペレット(I)の代わりに回収樹脂組成物ペレット(II)を用いた以外は、上記と同様の条件で単層製膜を行い、回収単層フィルム(II)を得た。なお、回収単層フィルム(II)の製膜中に上記評価方法(4)に記載の方法に従って、フィッシュアイの評価を行った。結果を表1に示す。
(押出条件)
押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=180/220/220/220℃
スクリュー回転数:40rpm
冷却ロールの温度:50℃
フィルム厚み:25μm
【0091】
得られた回収単層フィルム(I)について、上記評価方法(3)に記載の方法に従って、透明性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
実施例2~38、比較例1~11
PO(A)の含有量及び種類、EVA組成物(B)の含有量及び種類、EVOH(C)の含有量及び種類、脂肪酸二価金属塩(D)の含有量及び種類、並びに接着性樹脂(E)の含有量を表1に記載の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法で多層構造体、単層フィルム、回収樹脂組成物ペレットおよび回収単層フィルムを作成し、評価した。結果を表1、表2、表3及び表4に示す。なお、比較例1及び比較例3では、EVA組成物(B)ペレットの製造及び回収樹脂組成物ペレット製造時のEVA組成物(B)の添加を行わなかった。また、比較例5では、EVA(b1-1)をそのままEVA組成物(B8)として用いた。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
実施例39
(回収助剤ペレットの作製)
実施例21で得られたEVA組成物(B12)97.5質量部、脂肪酸二価金属塩(D)としてステアリン酸マグネシウム(StMg)2.5質量部とをドライブレンドし、二軸押出機(株式会社東洋精機製作所製2軸セグメント押出機「2D30W2」(D(mm)=25、L/D=30、スクリュー:同方向完全噛合型))を用いて溶融成形して回収助剤ペレットを得た。
【0098】
(多層構造体の作製)
共押出多層キャスト製膜装置を用いて、PO層が低密度ポリエチレン(LDPE;日本ポリエチレン株式会社製「ノバテック(商標)LJ400」)100質量部に対して上記回収助剤ペレット3質量部をドライブレンドして溶融押出した層からなり、バリア層がEVOH(C)(株式会社クラレ製「エバール(商標)F171B」)からなり、接着層が無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学株式会社製「アドマー(商標)NF518」)からなる多層構造体(LDPE層/無水マレイン酸変性ポリエチレン層/EVOH層/無水マレイン酸変性ポリエチレン層/LDPE層=40μm/5μm/10μm/5μm/40μmの層厚みと層構成を有する多層構造体(5層共押出多層キャストフィルム)を製膜した。このときの製膜条件は以下に示す。
共押出条件
PO層の押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=180/220/220/220℃
バリア層の押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=180/220/220/220℃
接着層の押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=180/220/220/220℃
押出機:
・PO層 32φ押出機 GT-32-A型(株式会社プラスチック工学研究所製)
・バリア層 20φ押出機 ラボ機ME型CO-EXT(株式会社東洋精機製作所製)
・接着層 25φ押出機 P25-18-AC型(大阪精機工作株式会社製)
Tダイ:300mm幅3種5層用(株式会社プラスチック工学研究所製)
冷却ロールの温度:80℃
引取速度:3.0m/分
【0099】
(単層フィルムの作製)
各押出機に使用する樹脂を全て低密度ポリエチレン(LDPE;日本ポリエチレン株式会社製「ノバテック(商標)LJ400」)に変更した以外は、上記多層構造体の作製と同様にして製膜を行い、厚み100μmのLDPE単層フィルムを得た。
【0100】
(粉砕)
上記で得られた多層構造体を径8mmΦメッシュの粉砕機で粉砕して多層構造体回収物を作製した。また、上記で得られた単層フィルムを径8mmΦメッシュの粉砕機で粉砕して単層フィルム回収物を作製した。
【0101】
(回収樹脂組成物ペレットの作製)
上記で得られた各回収物を多層構造体回収物/単層フィルム回収物=50/50の質量比になるようにドライブレンドし、溶融混練した。溶融混練は、株式会社東洋精機製作所製2軸セグメント押出機「2D30W2」(D(mm)=25、L/D=30、スクリュー:同方向完全噛合型)を使用し、樹脂温度が220℃となるように溶融混練を行い、回収樹脂組成物ペレット(I)(直径2mm、長さ4mmの円柱ペレット)を得た。
【0102】
(回収樹脂組成物層を含む多層フィルム(回収多層フィルム)の作製)
共押出多層キャスト製膜装置を用いて、PO層が低密度ポリエチレン(LDPE;日本ポリエチレン株式会社製「ノバテック(商標)LJ400」)50質量部と回収樹脂組成物ペレット(I)50質量部とをドライブレンドしたペレット群を溶融押出した層からなり、バリア層がEVOH(C)(株式会社クラレ製「エバール(商標)F171B」)からなり、接着層が無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学株式会社製「アドマー(商標)NF518」)からなる多層フィルム(回収樹脂組成物層/無水マレイン酸変性ポリエチレン層/EVOH層/無水マレイン酸変性ポリエチレン層/回収樹脂組成物層=40μm/5μm/10μm/5μm/40μmの層厚みと層構成を有する回収多層フィルム(5層共押出多層キャストフィルム))を製膜した。また、対照として、PO層が低密度ポリエチレン(LDPE;日本ポリエチレン株式会社製「ノバテック(商標)LJ400」)からなり、バリア層がEVOH(C)(株式会社クラレ製「エバール(商標)F171B」)からなり、接着層が無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学株式会社製「アドマー(商標)NF518」)からなる多層フィルム(LDPE層/無水マレイン酸変性ポリエチレン層/EVOH層/無水マレイン酸変性ポリエチレン層/LDPE層=40μm/5μm/10μm/5μm/40μmの層厚みと層構成を有する多層フィルム(5層共押出多層キャストフィルム))を製膜した。回収樹脂組成物ペレット(I)を含むペレット群の押出加工性は安定しており良好であった。また、回収多層フィルムはLDPE層を含む多層フィルムと比べてフィッシュアイの量及び透明性は殆ど変わらず、良好な外観であった。
【0103】
比較例12
多層構造体のPO層に回収助剤ペレットをブレンドしなかった以外は、実施例39と同様の方法で多層構造体、単層フィルム、回収樹脂組成物ペレット、回収多層フィルムおよびポリエチレン層を含む多層フィルムを作製した。回収組成物の押出加工性は安定しており良好であったが、回収多層フィルムはLDPE層を含む多層フィルムと比べてフィッシュアイが増加し、透明性も低下した。
【0104】
実施例40
回収多層フィルムの層厚みと層構成をLDPE層/回収樹脂組成物層/無水マレイン酸変性ポリエチレン層/EVOH層/無水マレイン酸変性ポリエチレン層/回収樹脂組成物層/LDPE層=20μm/20μm/5μm/10μm/5μm/20μm/20μmの層厚みと層構成を有する回収多層フィルム(7層共押出多層キャストフィルム)に変更した以外は、実施例39と同様の方法で回収助剤ペレット、多層構造体、単層フィルム、回収樹脂組成物ペレットおよび回収多層フィルムおよびポリエチレン層を含む多層フィルムを作製した。回収樹脂組成物ペレット(I)を含むペレット群の押出加工性は安定しており良好であった。また、回収多層フィルムはLDPE層を含む多層フィルムと比べてフィッシュアイの量及び透明性は殆ど変わらず、良好な外観であった。
【0105】
比較例13
多層構造体のPO層に回収助剤ペレットをブレンドしなかった以外は、実施例40と同様の方法で多層構造体、単層フィルム、回収樹脂組成物ペレット、回収多層フィルムおよびポリエチレン層を含む多層フィルムを作製した。回収組成物の押出加工性は安定しており良好であったが、回収多層フィルムはLDPE層を含む多層フィルムと比べてフィッシュアイが増加し、透明性も低下した。