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特開2023-154471腹部圧迫システム、腹部圧迫方法、及び、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154471
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】腹部圧迫システム、腹部圧迫方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61G 13/00 20060101AFI20231013BHJP
   A61B 5/022 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
A61G13/00 A
A61B5/022 A
A61G13/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063768
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
(71)【出願人】
【識別番号】522140404
【氏名又は名称】株式会社ラプラスAP
(71)【出願人】
【識別番号】515086746
【氏名又は名称】有限会社ラプラス
(71)【出願人】
【識別番号】593010969
【氏名又は名称】株式会社志成データム
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 文靖
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】村田 敦子
(72)【発明者】
【氏名】山本 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 美智子
(72)【発明者】
【氏名】澤本 一哲
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 之良
【テーマコード(参考)】
4C017
4C341
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AB01
4C017AC01
4C017AD01
4C017DD14
4C017EE15
4C341MM20
(57)【要約】
【課題】人工透析中における患者の血圧の低下を抑制する。
【解決手段】腹部圧迫装置200は、患者の腹部を圧迫する。挙上検知部103は、患者の人工透析中に患者の下肢の挙上を検知する。圧迫制御部104は、挙上検知部103が患者の下肢の挙上を検知した場合、腹部圧迫装置200を制御して患者の腹部を繰り返して圧迫する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の腹部を圧迫する腹部圧迫手段と、
前記患者の人工透析中に前記患者の下肢の挙上を検知する挙上検知手段と、
前記挙上検知手段が前記患者の下肢の挙上を検知した場合、前記腹部圧迫手段を制御して前記患者の腹部を繰り返して圧迫する圧迫制御手段と、を備える、
腹部圧迫システム。
【請求項2】
前記挙上検知手段は、前記患者の下肢を挙上した高さである挙上高さを検知し、
前記圧迫制御手段は、前記挙上検知手段が検知した前記挙上高さに応じた圧迫力で前記患者の腹部を圧迫する、
請求項1に記載の腹部圧迫システム。
【請求項3】
前記挙上高さを測定する高さ測定手段を更に備え、
前記挙上検知手段は、前記高さ測定手段が測定した前記挙上高さを取得する、
請求項2に記載の腹部圧迫システム。
【請求項4】
前記患者の大腿部が延びる方向と水平面とのなす角度である挙上角度を測定する角度測定手段を更に備え、
前記挙上検知手段は、前記角度測定手段から前記挙上角度を取得し、前記挙上角度と前記患者の大腿部の長さとに基づいて前記挙上高さを算出する、
請求項2に記載の腹部圧迫システム。
【請求項5】
前記患者の下肢を挙上する下肢挙上手段と、
前記患者の人工透析中に前記患者の血圧低下を検知する血圧低下検知手段と、
前記血圧低下検知手段が前記患者の血圧低下を検知した場合、前記下肢挙上手段を制御し、前記患者の下肢を挙上する挙上制御手段と、を更に備える、
請求項1から4の何れか1項に記載の腹部圧迫システム。
【請求項6】
挙上検知手段が、患者の人工透析中に前記患者の下肢の挙上を検知し、
腹部圧迫手段が、前記挙上検知手段が前記患者の下肢の挙上を検知した場合、前記患者の腹部を繰り返して圧迫する、
腹部圧迫方法。
【請求項7】
コンピュータを、
患者の人工透析中に前記患者の下肢の挙上を検知する挙上検知手段、
前記挙上検知手段が前記患者の下肢の挙上を検知した場合、前記患者の腹部を圧迫する腹部圧迫手段を制御して前記患者の腹部を繰り返して圧迫する圧迫制御手段、として機能させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、腹部圧迫システム、腹部圧迫方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
腎臓に障害のある患者に対して、人工透析を実施することがある。人工透析は、傷害された腎臓の代わりに老廃物と水分とを体外に排出する技術である。人工透析中は、血管内を流れる血液から水分が除去されるため、患者の血圧が低下することが頻繁にある。患者の血圧が低下し過ぎる場合、人工透析を継続できない。
【0003】
そこで、現在、人工透析中に患者の血圧が低下しないようにする技術が知られている。例えば、特許文献1には、人工透析中に患者の血圧が低下した場合に、自動で足先側を持ち上げて緊急体位姿勢とし、足の位置を心臓の位置よりも高くすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-225916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、足の位置を心臓の位置よりも高くするだけでは、患者の血圧が上昇しない可能性が高い。この理由は、下肢の挙上だけでは、下肢の静脈系から体幹に戻ってきた血液が下大静脈や腹部内臓血管にプールされ、心拍出量が増加しないためである。このため、人工透析中における患者の血圧の低下を抑制する技術が望まれている。
【0006】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、人工透析中における患者の血圧の低下を抑制する腹部圧迫システム、腹部圧迫方法、及び、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の観点に係る腹部圧迫システムは、
患者の腹部を圧迫する腹部圧迫手段と、
前記患者の人工透析中に前記患者の下肢の挙上を検知する挙上検知手段と、
前記挙上検知手段が前記患者の下肢の挙上を検知した場合、前記腹部圧迫手段を制御して前記患者の腹部を繰り返して圧迫する圧迫制御手段と、を備える。
【0008】
前記挙上検知手段は、前記患者の下肢を挙上した高さである挙上高さを検知し、
前記圧迫制御手段は、前記挙上検知手段が検知した前記挙上高さに応じた圧迫力で前記患者の腹部を圧迫してもよい。
【0009】
前記挙上高さを測定する高さ測定手段を更に備え、
前記挙上検知手段は、前記高さ測定手段が測定した前記挙上高さを取得してもよい。
【0010】
前記患者の大腿部が延びる方向と水平面とのなす角度である挙上角度を測定する角度測定手段を更に備え、
前記挙上検知手段は、前記角度測定手段から前記挙上角度を取得し、前記挙上角度と前記患者の大腿部の長さとに基づいて前記挙上高さを算出してもよい。
【0011】
前記患者の下肢を挙上する下肢挙上手段と、
前記患者の人工透析中に前記患者の血圧低下を検知する血圧低下検知手段と、
前記血圧低下検知手段が前記患者の血圧低下を検知した場合、前記下肢挙上手段を制御し、前記患者の下肢を挙上する挙上制御手段と、を更に備えてもよい。
【0012】
上記目的を達成するために、本開示の第2の観点に係る腹部圧迫方法は、
挙上検知手段が、患者の人工透析中に前記患者の下肢の挙上を検知し、
腹部圧迫手段が、前記挙上検知手段が前記患者の下肢の挙上を検知した場合、前記患者の腹部を繰り返して圧迫する。
【0013】
上記目的を達成するために、本開示の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
患者の人工透析中に前記患者の下肢の挙上を検知する挙上検知手段、
前記挙上検知手段が前記患者の下肢の挙上を検知した場合、前記患者の腹部を圧迫する腹部圧迫手段を制御して前記患者の腹部を繰り返して圧迫する圧迫制御手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、人工透析中における患者の血圧の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1に係る腹部圧迫システムの構成図
図2】実施の形態1に係る腹部圧迫システムの動作の説明図
図3】実施の形態1に係る制御装置の構成図
図4】実施の形態1に係る腹部圧迫装置の構成図
図5】実施の形態1に係る圧迫帯の外観図
図6】実施の形態1に係る下肢挙上装置の構成図
図7】挙上高さの測定方法の説明図
図8】実施の形態1に係る腹部圧迫システムの機能構成図
図9】実施の形態1に係る制御装置が実行する腹部圧迫処理を示すフローチャート
図10】実施の形態2に係る腹部圧迫システムの機能構成図
図11】挙上角度の測定方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付す。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る腹部圧迫システム1000の構成を示す図である。腹部圧迫システム1000は、人工透析を受ける患者500の血圧が低下した場合に、患者500の血圧が上昇するように患者500の腹部を圧迫するシステムである。患者500は、腎臓に障害があり、腎臓の機能が低下した患者である。患者500は、自身が有する腎臓で、老廃物と水分とを体外に排出することが困難である。そこで、患者500は、老廃物と水分とを体外に排出する人工透析を受ける。
【0018】
ところで、人工透析中は、血管内を流れる血液から水分が急速に除去されるため、患者500の血圧が低下することがある。患者500の血圧が低下し過ぎると、患者500の身体に悪影響が生じる。そこで、腹部圧迫システム1000は、人工透析中に患者500の血圧が低下した場合、患者500の血圧が上昇するように患者500の腹部を繰り返して圧迫する。具体的には、腹部圧迫システム1000は、患者500の下肢を挙上した上で、患者500の腹部を繰り返して圧迫する。なお、患者500の下肢を挙上することは、図2に示すように、患者500の足の位置を患者500の心臓の位置よりも高くすることである。また、患者500の腹部を圧迫することは、患者500の腹部の周りから腹部に圧力を加えることである。
【0019】
このような動作により、患者500の血圧が上昇する効果が期待できる。つまり、患者500の下肢を挙上すると、患者500の下肢の静脈系から患者500の体幹に血液が戻りやすくなる。ここで、患者500の腹部を繰り返して圧迫すると、患者500の体幹に戻った血液が心臓に供給される。その結果、患者500の心拍出量が増加し、患者500の血圧が上昇する。このように、腹部の圧迫を伴う下肢の挙上により、患者500の血圧の上昇が期待できる。
【0020】
しかし、腹部の圧迫を伴わない下肢の挙上では、患者500の血圧の十分な上昇が期待できない。患者500の下肢を挙上するだけでは、患者500の下肢の静脈系から患者500の体幹に戻った血液が下大静脈や腹部内臓血管にプールされ、患者500の心拍出量が増加しないためである。なお、下肢挙上だけでは患者500の心拍出量が増加しないことについては、例えば、非特許文献:山下政司、相川武司、北間正崇、透析低血圧への一時的対処法に関する基礎的検討、生体医工学、55(2)、pp.84-90、2017に記載されている。
【0021】
図1に示すように、腹部圧迫システム1000は、制御装置100と、腹部圧迫装置200と、下肢挙上装置300と、血圧センサ410と、測距センサ420とを備える。制御装置100は、腹部圧迫装置200と下肢挙上装置300と血圧センサ410と測距センサ420とのそれぞれと通信可能に接続される。なお、図1では、患者500に対して人工透析を実行する装置の図示を省略している。
【0022】
制御装置100は、腹部圧迫システム1000の全体の動作を制御する装置である。例えば、制御装置100は、血圧センサ410から患者500の血圧を示す血圧情報を取得し、患者500の血圧が低下したことを検知する。また、制御装置100は、患者500の血圧の低下を検知した場合、下肢挙上装置300を制御して、患者500の下肢を挙上する。また、制御装置100は、測距センサ420から患者500の下肢を挙上した高さである挙上高さを示す高さ情報を取得し、患者500の下肢の挙上を検知する。また、制御装置100は、患者500の下肢の挙上を検知した場合、腹部圧迫装置200を制御して、患者500の腹部を圧迫する。
【0023】
制御装置100は、腹部圧迫システム1000の制御に特化した専用のコンピュータでもよいし、スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン等の汎用のコンピュータでもよい。図3に示すように、制御装置100は、制御部11と、記憶部12と、表示部13と、操作受付部14と、通信部15とを備える。
【0024】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、RTC(Real Time Clock)等を備える。CPUは、中央処理装置、中央演算装置、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)等とも呼び、制御装置100の制御に係る処理及び演算を実行する中央演算処理部として機能する。制御部11において、CPUは、ROMに格納されているプログラム及びデータを読み出し、RAMをワークエリアとして用いて、制御装置100を統括制御する。RTCは、例えば、計時機能を有する集積回路である。なお、CPUは、RTCから読み出される時刻情報から現在日時を特定可能である。
【0025】
記憶部12は、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の不揮発性の半導体メモリを備えており、いわゆる補助記憶装置としての役割を担う。記憶部12は、制御部11が各種処理を実行するために使用するプログラム及びデータを記憶する。また、記憶部12は、制御部11が各種処理を実行することにより生成又は取得するデータを記憶する。
【0026】
表示部13は、制御部11による制御に従って、各種の画像を表示する。表示部13は、タッチスクリーン、液晶ディスプレイ等を備える。操作受付部14は、ユーザから各種の操作を受け付け、受け付けた操作の内容を示す情報を制御部11に供給する。操作受付部14は、タッチスクリーン、ボタン、レバー等を備える。
【0027】
通信部15は、制御部11による制御に従って、各種の装置と通信する。通信部15は、各種の無線通信規格又は各種の有線通信規格に則って、各種の装置と通信する。各種の無線通信規格としては、Wi-Fi(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)等がある。各種の有線通信規格としては、USB(Universal Serial Bus、登録商標)、Thunderbolt(登録商標)等がある。通信部15は、各種の通信規格に準拠した通信インターフェースを備える。
【0028】
腹部圧迫装置200は、患者500の腹部を圧迫する装置である。本実施の形態では、腹部圧迫装置200は、患者500の腹部の周囲に取り付けた圧迫帯220の内部の空気の圧力を調整することにより、患者500の腹部を圧迫する。なお、本実施の形態では、腹部圧迫装置200は、予め定められた周期で、患者500の腹部の圧迫と患者500の腹部の圧迫の解除とを繰り返す。この予め定められた周期は、例えば、患者500の呼吸の周期と同程度の周期である。
【0029】
図4に示すように、腹部圧迫装置200は、空圧制御部210と、圧迫帯220と、表示部230と、操作受付部240と、通信部250と、コンプレッサ261と、エアタンク262と、減圧器263と、電空レギュレータ264と、排気用バルブ265と、リリーフバルブ266と、気圧センサ267と、圧迫圧センサ268とを備える。なお、コンプレッサ261及びエアタンク262の代わりに、圧縮空気ボンベが用いられてもよい。
【0030】
空圧制御部210は、腹部圧迫装置200の全体の動作を制御する。例えば、空圧制御部210は、患者500の腹部に装着された圧迫帯220の内部の空気の圧力である圧迫圧が、通信部250を介して制御装置100から指示された圧迫力に対応する圧力になるように、各部を制御する。なお、空圧制御部210は、患者500の腹部の圧迫と患者500の腹部の圧迫の解除とを繰り返す。つまり、空圧制御部210は、予め定められた周期で上記圧迫圧を増減させて、患者500の腹部を繰り返して圧迫する。
【0031】
なお、本実施の形態では、患者500の腹部を圧迫するときの圧迫圧、つまり、圧迫帯220が膨張しているときの圧迫圧を、適宜、単に、圧迫圧という。同様に、患者500の腹部を圧迫するときの圧迫力、つまり、圧迫帯220が膨張しているときの圧迫力を、適宜、単に、圧迫力という。空圧制御部210は、CPU、ROM、RAM、RTC等を備える。
【0032】
圧迫帯220は、患者500の腹部を圧迫するために、患者500の腹部に装着される帯形状の部材である。図5に示すように、圧迫帯220は、膨張部221と、取付部222と、取付部223と、空気供給チューブ224とを備える。圧迫帯220は、膨張部221と取付部222と取付部223とが連結して形成される。
【0033】
膨張部221は、患者500の腹部を圧迫するために、膨張する部分である。膨張部221の内部には、袋体225が設けられる。袋体225には、空気供給チューブ224が接続される。袋体225は、電空レギュレータ264から空気供給チューブ224を介して供給された空気により膨らみ、膨張部221を膨張させる。膨張部221の膨張により、患者500の腹部が圧迫される。また、袋体225は、空気供給チューブ224を介して空気が放出されると収縮し、膨張部221を収縮させる。膨張部221が収縮すると、患者500の腹部の圧迫が解除される。
【0034】
取付部222と取付部223とは、膨張部221を患者500の腹部に取り付けるための部分である。取付部222は膨張部221の一端に設けられ、取付部223は膨張部221の他端に設けられる。取付部222と取付部223とは、面ファスナーを備える。空気供給チューブ224は、袋体225に空気を供給し、袋体225から空気を放出するためのチューブである。
【0035】
圧迫帯220は、患者500の腹部、つまり、患者500の胴体の下部に巻かれる。圧迫帯220が患者500の腹部に巻かれたときに、取付部222と取付部223とが患者500の背中に回り込む。取付部222が備える面ファスナーと取付部223が備える面ファスナーとが係合することにより、圧迫帯220が患者500の腹部に固定される。圧迫帯220が患者500の腹部に固定されると、膨張部221が患者500の腹部に配置される。
【0036】
表示部230は、空圧制御部210による制御に従って、各種の画像を表示する。表示部230は、タッチスクリーン、液晶ディスプレイ等を備える。操作受付部240は、ユーザから各種の操作を受け付け、受け付けた操作の内容を示す情報を空圧制御部210に供給する。操作受付部240は、タッチスクリーン、ボタン、レバー等を備える。通信部250は、空圧制御部210による制御に従って、各種の装置と通信する。通信部250は、各種の無線通信規格又は各種の有線通信規格に則って、各種の装置と通信する。通信部250は、各種の通信規格に準拠した通信インターフェースを備える。
【0037】
コンプレッサ261と、エアタンク262と、減圧器263と、電空レギュレータ264と、排気用バルブ265と、リリーフバルブ266とは、患者500の腹部に装着された圧迫帯220を膨張及び収縮させる空圧システムを構成する。
【0038】
コンプレッサ261は、空気を圧縮し、圧縮した空気(以下、適宜「第1圧縮空気」という。)をエアタンクに供給する。エアタンク262は、コンプレッサ261から供給された第1圧縮空気を蓄える。エアタンク262が蓄えた第1圧縮空気は、減圧器263に供給される。減圧器263は、エアタンク262から供給された第1圧縮空気を減圧して第2圧縮空気にする。第2圧縮空気の気圧は、第1圧縮空気の気圧よりも低く、大気圧よりも高い。第2圧縮空気の気圧は、電空レギュレータ264が扱うことができる程度の気圧である。
【0039】
電空レギュレータ264は、減圧器263から供給された第2圧縮空気を圧迫帯220に供給する。また、電空レギュレータ264は、圧迫帯220から第2圧縮空気を抜き取る。つまり、電空レギュレータ264は、圧迫帯220の内部の空気の量を調整する。排気用バルブ265は、空圧制御部210による制御に従って、開閉する電磁バルブである。排気用バルブ265が開くと、空圧システムの内部の第1圧縮空気が空圧システムの外部に排出される。リリーフバルブ266は、電空レギュレータ264から圧迫帯220に供給される第2圧縮空気の圧力が閾値以上になったときに、この第2圧縮空気を放出する。リリーフバルブ266は、圧迫帯220の内部の第2圧縮空気の気圧が過度に大きくなることを防止する安全弁として機能する。
【0040】
気圧センサ267は、第1圧縮空気の気圧を検知する。気圧センサ267は、第1圧縮空気の気圧を示す気圧情報を空圧制御部210に供給する。圧迫圧センサ268は、第2圧縮空気の気圧を検知する。圧迫圧センサ268は、第2圧縮空気の気圧を示す圧迫圧情報を空圧制御部210に供給する。第2圧縮空気の気圧は、圧迫帯220の内部の空気の圧力であり、適宜、圧迫圧という。気圧センサ267と圧迫圧センサ268とは、例えば、半導体の気圧センサである。
【0041】
下肢挙上装置300は、患者500の下肢を挙上する装置である。本実施の形態では、下肢挙上装置300は、患者500の下肢が配置された配置台320の一部を床から持ち上げることにより、患者500の下肢を挙上する。患者500の下肢が挙上された高さである挙上高さは、予め定められていてもよいし、制御装置100により指定されていてもよい。例えば、制御装置100は、患者500の血圧の低下の程度により挙上高さを決定してもよい。例えば、制御装置100は、患者500の血圧の低下の程度が大きい程、挙上高さを高くしてもよい。図6に示すように、下肢挙上装置300は、駆動制御部310と、配置台320と、表示部330と、操作受付部340と、通信部350と、駆動回路360と、モータ370と、エンコーダ380とを備える。
【0042】
駆動制御部310は、下肢挙上装置300の全体の動作を制御する。例えば、駆動制御部310は、通信部350を介して制御装置100から挙上指示を受けたときに、モータ370を駆動する駆動回路360を制御して、配置台320の一部を床から持ち上げて、患者500の下肢を挙上する。駆動制御部310は、CPU、ROM、RAM、RTC等を備える。
【0043】
配置台320は、患者500の下肢が配置される台である。図7に示すように、配置台320は、固定部321と、傾斜部322と、昇降部323とを備える。固定部321と傾斜部322と昇降部323とは、板状の部材である。配置台320は、昇降部323が床から持ち上げられていない状態では、全体として板状である。配置台320の状態は、モータ370の駆動により変化する。
【0044】
固定部321は、床に固定される部材である。固定部321の状態は、モータ370の駆動により変化しない。つまり、固定部321は、モータ370が駆動しても、床の上に配置されたままである。固定部321には、患者500の臀部501が配置される。
【0045】
傾斜部322は、床面に対して傾斜する部材である。傾斜部322は、モータ370の駆動により、回転軸324を中心にして固定部321に対して回転する。傾斜部322は、モータ370の駆動により、床面に対する傾きである傾斜角が変化する。傾斜部322には、患者500の大腿部502が配置される。
【0046】
昇降部323は、モータ370の駆動により、上昇又は下降する部材である。昇降部323は、モータ370の駆動により、回転軸325を中心にして傾斜部322に対して回転する。昇降部323は、床面と平行な状態を維持しながら、上昇又は下降する。昇降部323には、患者500の下腿部503が配置される。なお、図7では、モータ370の駆動により傾斜部322及び昇降部323を回転又は移動させるための機構の図示を省略している。
【0047】
表示部330は、駆動制御部310による制御に従って、各種の画像を表示する。表示部330は、タッチスクリーン、液晶ディスプレイ等を備える。操作受付部340は、ユーザから各種の操作を受け付け、受け付けた操作の内容を示す情報を駆動制御部310に供給する。操作受付部340は、タッチスクリーン、ボタン、レバー等を備える。通信部350は、駆動制御部310による制御に従って、各種の装置と通信する。通信部350は、各種の無線通信規格又は各種の有線通信規格に則って、各種の装置と通信する。通信部350は、各種の通信規格に準拠した通信インターフェースを備える。
【0048】
駆動回路360は、駆動制御部310による制御に従って、モータ370を駆動する回路である。例えば、駆動回路360は、駆動制御部310による駆動指示に従って、モータ370にパルス信号を出力する。駆動回路360は、モータ370を駆動するためのドライバIC(Integrated Circuit)を備える。
【0049】
モータ370は、電気エネルギーを力学的エネルギーに変換する装置である。モータ370は、駆動回路360から供給されたパルス信号に従って正方向又は逆方向に回転する。なお、モータ370の回転に伴って、配置台320の一部が回転又は移動する。具体的には、モータ370の回転に伴って、傾斜部322の傾きが変化して、昇降部323が上昇又は下降する。モータ370が正方向に回転したときに、傾斜部322の傾きが大きくなり、昇降部323が上昇する。モータ370が逆方向に回転したときに、傾斜部322の傾きが小さくなり、昇降部323が下降する。モータ370は、例えば、ステッピングモータである。
【0050】
エンコーダ380は、機械的な位置の変化を検出し、検出結果を示す電気信号を出力するセンサである。本実施の形態では、エンコーダ380は、モータ370の駆動に伴って変化する角度を検出し、検出した角度を示す電気信号を駆動制御部310に供給する。エンコーダ380は、モータ370の回転角度を検出してもよいし、傾斜部322の床面に対する傾斜角を検出してもよい。エンコーダ380は、例えば、ロータリエンコーダである。
【0051】
血圧センサ410は、患者500の血圧を検知する。血圧センサ410は、例えば、患者500の腕に取り付けられて患者500の上半身の血圧を検知する血圧計である。血圧センサ410は、患者500の血圧を示す血圧情報を制御装置100に供給する。患者500の血圧をどのように定義するのかは、適宜、調整することができる。例えば、患者500の血圧は、収縮期血圧でもよいし、拡張期血圧でもよいし、平均血圧でもよい。平均血圧は、例えば、(収縮期血圧-拡張期血圧)/3+拡張期血圧という計算式により算出される。本実施の形態では、患者500の血圧は、収縮期血圧を示すものとする。
【0052】
測距センサ420は、対象物までの距離を測定するセンサである。例えば、測距センサ420は、図7に示すように、昇降部323に設置され、床面までの距離を測定する。又は、測距センサ420は、床面に設置され、昇降部323までの距離を測定してもよい。本実施の形態では、測距センサ420は、床面から昇降部323までの長さである挙上高さを測定する。図7において、挙上高さはh1である。測距センサ420は、測定した挙上高さを示す高さ情報を制御装置100に送信する。測距センサ420は、LiDAR(Light Detection And Ranging)方式のセンサでもよいし、RADAR(Radio Detection And Ranging)方式のセンサでもよいし、超音波方式のセンサでもよい。
【0053】
LiDAR方式のセンサは、赤外線に代表される光の位相差を用いて対象物までの距離を求めるセンサである。LiDAR方式のセンサは、出力した光信号の位相と反射した光信号の位相との差から対象物までの距離を算出する。RADAR方式のセンサは、電波の伝播時間を用いて対象物までの距離を求めるセンサである。RADAR方式のセンサは、電波を送信してから電波を受信するまでの時間から対象物までの距離を算出する。超音波方式のセンサは、超音波の伝播時間を用いて対象物までの距離を求めるセンサである。超音波方式のセンサは、超音波を送信してから超音波を受信するまでの時間から対象物までの距離を算出する。
【0054】
次に、図8を参照して、腹部圧迫システム1000の機能について説明する。以下、主に、腹部圧迫システム1000が備える制御装置100の機能について説明する。制御装置100は、機能的には、血圧低下検知部101と、挙上制御部102と、挙上検知部103と、圧迫制御部104とを備える。これらの各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、ROM又は記憶部12に格納される。そして、CPUが、ROM又は記憶部12に記憶されたプログラムを実行することによって、これらの各機能を実現する。
【0055】
血圧低下検知部101は、患者500の人工透析中に患者500の血圧低下を検知する。例えば、血圧低下検知部101は、血圧センサ410から取得した血圧情報が示す血圧が血圧閾値以下であるか判別する。なお、本実施の形態では、患者500の血圧低下を判別するために用いる血圧は、患者500の収縮期血圧である。従って、血圧低下検知部101は、収縮期血圧が血圧閾値以下である場合、血圧低下があると判別し、収縮期血圧が血圧閾値を超える場合、血圧低下がないと判別する。血圧閾値をどの程度の値にするのかは、適宜、調整することができる。例えば、血圧閾値は、患者500の正常時における収縮期血圧の90%としてもよい。血圧低下検知部101は、血圧低下検知手段の一例である。
【0056】
挙上制御部102は、血圧低下検知部101が患者500の血圧低下を検知した場合、下肢挙上装置300を制御し、患者500の下肢を挙上する。例えば、挙上制御部102は、血圧低下を検知した場合、患者500の下肢の挙上を指示する挙上指示情報を下肢挙上装置300に送信する。下肢挙上装置300は、挙上制御部102から挙上指示情報を受信すると、患者500の下肢を挙上する。挙上制御部102は、挙上制御手段の一例である。下肢挙上装置300は、下肢挙上手段の一例である。
【0057】
挙上検知部103は、患者500の人工透析中に患者500の下肢の挙上を検知する。挙上検知部103が、患者500の下肢の挙上を検知する手法は、適宜、調整することができる。例えば、挙上検知部103は、測距センサ420から取得した高さ情報が示す挙上高さに基づいて、患者500の下肢が挙上されているか否かを判別してもよい。例えば、挙上検知部103は、この挙上高さが高さ閾値以上である場合、患者500の下肢が挙上されていると判別し、この挙上高さが高さ閾値未満である場合、患者500の下肢が挙上されていないと判別してもよい。高さ閾値は、適宜、調整することができる。例えば、高さ閾値は、10cmでもよい。
【0058】
又は、挙上検知部103は、挙上制御部102から取得した昇降状態情報が示す昇降状態に基づいて、患者500の下肢が挙上されているか否かを判別してもよい。例えば、挙上検知部103は、この昇降状態が上昇済み状態である場合、患者500の下肢が挙上されていると判別し、この昇降状態が下降済み状態である場合、患者500の下肢が挙上されていないと判別してもよい。なお、挙上制御部102は、患者500の下肢を挙上しているときに上昇済み状態を示す昇降状態情報を出力し、患者500の下肢を挙上していないときに下降済み状態を示す昇降状態情報を出力する。挙上検知部103は、挙上検知手段の一例である。
【0059】
圧迫制御部104は、挙上検知部103が患者500の下肢の挙上を検知した場合、腹部圧迫装置200を制御して患者500の腹部を繰り返して圧迫する。例えば、圧迫制御部104は、挙上検知部103が患者500の下肢の挙上を検知した場合、患者500の腹部の圧迫の開始を指示する圧迫開始指示情報を腹部圧迫装置200に送信する。腹部圧迫装置200は、圧迫制御部104から圧迫開始指示情報を受信すると、患者500の腹部を繰り返して圧迫する。圧迫制御部104は、圧迫制御手段の一例である。腹部圧迫装置200は、腹部圧迫手段の一例である。
【0060】
挙上検知部103は、患者500の下肢を挙上した高さである挙上高さを検知し、挙上高さに基づいて患者500の下肢の挙上を検知してもよい。例えば、挙上検知部103は、測距センサ420から取得した高さ情報に基づいて挙上高さを特定し、この挙上高さが高さ閾値を超える場合、患者500の下肢が挙上されていると判別してもよい。なお、測距センサ420は、挙上高さを測定し、測定した挙上高さを示す高さ情報を挙上検知部103に供給する。一方、挙上検知部103は、上述したように、測距センサ420から高さ情報を取得し、測距センサ420が測定した挙上高さを取得する。測距センサ420は、高さ測定手段の一例である。
【0061】
ここで、圧迫制御部104は、挙上検知部103が検知した挙上高さに応じた圧迫力で患者500の腹部を圧迫してもよい。具体的には、圧迫制御部104は、挙上高さが高い程、圧迫力を強くする。なお、圧迫力の強さは、圧迫帯220の内部の空気の圧力である圧迫圧に対応する。このため、圧迫制御部104は、挙上高さが高い程、圧迫圧を高くする。例えば、圧迫制御部104は、挙上高さに比例して、圧迫力を強くしてもよい。例えば、挙上高さをh、圧迫圧をp、係数をkとして、p=k×hとしてもよい。
【0062】
又は、圧迫制御部104は、圧迫力を段階的に設定してもよい。例えば、上述した高さ閾値を第1高さ閾値として、第1高さ閾値よりも大きい第2高さ閾値と、第2高さ閾値よりも大きい第3高さ閾値とを想定する。まず、検知された挙上高さが第1高さ閾値以上且つ第2高さ閾値未満である場合、患者500の腹部を圧迫する圧迫力が第1圧迫力に設定される。そして、検知された挙上高さが第2高さ閾値以上且つ第3高さ閾値未満である場合、圧迫力が第1圧迫力よりも強い第2圧迫力に設定される。また、検知された挙上高さが第3高さ閾値以上である場合、圧迫力が第2圧迫力よりも強い第3圧迫力に設定される。
【0063】
次に、図9のフローチャートを参照して、制御装置100が実行する腹部圧迫処理について説明する。腹部圧迫処理は、例えば、患者500の人工透析が開始され、制御装置100がユーザから開始指示を受け付けたときに実行される。
【0064】
まず、制御装置100が備える制御部11は、血圧情報を取得する(ステップS101)。例えば、制御部11は、通信部15を介して、血圧センサ410から血圧情報を取得する。制御部11は、ステップS101の処理を完了すると、患者500の血圧が血圧閾値以下であるか否かを判別する(ステップS102)。例えば、制御部11は、取得した血圧情報が示す収縮期血圧が血圧閾値以下であるか否かを判別する。血圧閾値を示す情報は、例えば、記憶部12に記憶されている。
【0065】
制御部11は、患者500の血圧が血圧閾値以下でないと判別すると(ステップS102:NO)、ステップS101に処理を戻す。制御部11は、患者500の血圧が血圧閾値以下であると判別すると(ステップS102:YES)、患者500の下肢の挙上を指示する(ステップS103)。例えば、制御部11は、患者500の下肢の挙上を指示する挙上指示情報を、通信部15を介して下肢挙上装置300に送信する。下肢挙上装置300は、挙上指示情報を受信すると、患者500の下肢を挙上する。
【0066】
制御部11は、ステップS103の処理を完了すると、高さ情報を取得する(ステップS104)。例えば、制御部11は、通信部15を介して、測距センサ420から高さ情報を取得する。制御部11は、ステップS104の処理を完了すると、挙上高さが高さ閾値以上であるか否かを判別する(ステップS105)。例えば、制御部11は、取得した高さ情報が示す挙上高さが高さ閾値以上であるか否かを判別する。高さ閾値を示す情報は、例えば、記憶部12に記憶されている。
【0067】
制御部11は、挙上高さが高さ閾値以上でないと判別すると(ステップS105:NO)、挙上指示から一定時間が経過したか否かを判別する(ステップS106)。この一定時間は、例えば、下肢挙上装置300が挙上指示を受けてから患者500の下肢の挙上が完了するまでに要する時間よりも少し長い時間である。この一定時間を示す情報は、例えば、記憶部12に記憶されている。
【0068】
制御部11は、挙上指示から一定時間が経過していないと判別すると(ステップS106:NO)、ステップS104に処理を戻す。制御部11は、挙上指示から一定時間が経過したと判別すると(ステップS106:YES)、エラーメッセージを表示する(ステップS107)。例えば、制御部11は、表示部13を制御して、患者500の下肢の挙上が正常にできていないことを報知するエラーメッセージを表示する。制御部11は、ステップS107の処理を完了すると、腹部圧迫処理を終了する。
【0069】
制御部11は、挙上高さが高さ閾値以上であると判別すると(ステップS105:YES)、挙上高さに応じた圧迫力を決定する(ステップS108)。例えば、制御部11は、挙上高さに予め定められた係数を乗じることにより圧迫圧を決定する。制御部11は、ステップS108の処理を完了すると、決定した圧迫力での患者500の腹部の圧迫を指示する(ステップS109)。例えば、制御部11は、決定した圧迫圧で患者500の腹部を繰り返して圧迫する処理の開始を指示する圧迫開始指示情報を、通信部15を介して、腹部圧迫装置200に送信する。腹部圧迫装置200は、この圧迫開始指示情報を受信すると、圧迫指示情報で指定された圧迫圧で、患者500の腹部を繰り返して圧迫する。
【0070】
制御部11は、ステップS109の処理を完了すると、血圧情報を取得する(ステップS110)。制御部11は、ステップS110の処理を完了すると、患者500の血圧が血圧閾値以下であるか否かを判別する(ステップS111)。制御部11は、患者500の血圧が血圧閾値以下であると判別すると(ステップS111:YES)、ステップS110に処理を戻す。
【0071】
制御部11は、患者500の血圧が血圧閾値以下でないと判別すると(ステップS111:NO)、患者500の腹部の圧迫の終了を指示する(ステップS112)。例えば、制御部11は、患者500の腹部の圧迫を終了することを指示する圧迫終了指示情報を、通信部15を介して、腹部圧迫装置200に送信する。腹部圧迫装置200は、この圧迫終了指示情報を受信すると、患者500の腹部の圧迫を終了する。
【0072】
制御部11は、ステップS112の処理を完了すると、患者500の下肢の挙上の終了を指示する(ステップS113)。例えば、制御部11は、患者500の下肢の挙上を終了することを指示する挙上終了指示情報を、通信部15を介して、下肢挙上装置300に送信する。下肢挙上装置300は、この挙上終了指示情報を受信すると、患者500の下肢の挙上を終了する。制御部11は、ステップS113の処理を完了すると、ステップS101に処理を戻す。
【0073】
本実施の形態では、患者500の人工透析中に患者500の下肢の挙上が検知された場合、患者500の腹部が繰り返して圧迫される。例えば、患者500の血圧の低下を確認した看護師が患者500の下肢を挙上した場合、患者500の腹部を繰り返して圧迫する処理が実行される。従って、本実施の形態によれば、人工透析中における患者500の血圧の低下を抑制することができる。
【0074】
また、本実施の形態では、患者500の下肢を挙上した高さである挙上高さに応じた圧迫力で患者500の腹部が圧迫される。ここで、挙上高さが高い程、下大静脈に血液がプールされやすい。従って、挙上高さが高い程、より強い腹部の圧迫が必要であるが、患者500の血圧がより上昇することが期待できる。従って、本実施の形態によれば、人工透析中における患者500の血圧の低下をより適切に抑制することができる。
【0075】
また、本実施の形態では、挙上検知部103は、測距センサ420が測定した挙上高さを取得する。従って、本実施の形態によれば、圧迫力の決定に用いる挙上高さを精度良く特定することができる。
【0076】
また、本実施の形態では、血圧低下検知部101が患者500の血圧低下を検知した場合、患者500の下肢が挙上される。従って、本実施の形態によれば、患者500の血圧の低下を抑制するためのユーザの手間を軽減することができる。
【0077】
(実施の形態2)
実施の形態1では、測距センサ420を用いて挙上高さを検知する例について説明した。挙上高さを検知する方法は、この方法に限定されない。本実施の形態では、挙上角度から挙上高さを検知する方法について説明する。なお、実施の形態1と同様の構成及び機能については、適宜、説明を省略又は簡略化する。
【0078】
図10を参照して、本実施の形態に係る腹部圧迫システム1100の機能について説明する。腹部圧迫システム1100は、測距センサ420を備えない点と、制御装置100に代えて制御装置110を備える点とを除き、腹部圧迫システム1000と同様の構成である。制御装置110は、挙上検知部103の動作を除き、制御装置100と同様の構成である。
【0079】
エンコーダ380は、患者500の大腿部502が延びる方向と水平面とのなす角度である挙上角度を測定する。例えば、エンコーダ380は、図11に示すように、固定部321と傾斜部322との接続部分に設けられ、傾斜部322が固定部321に対して傾斜した角度である傾斜角度を測定する。つまり、本実施の形態では、エンコーダ380は、モータ370の回転角度ではなく、傾斜部322の傾斜角度を測定する。
【0080】
ここで、固定部321は水平面に沿って延び、傾斜部322が延びる方向は患者500の大腿部502が延びる方向とほぼ同じである。従って、実質的に、傾斜部322の傾斜角度は、挙上角度である。エンコーダ380は、測定した挙上角度を示す角度情報を、制御装置110に供給する。エンコーダ380は、角度測定手段の一例である。
【0081】
挙上検知部103は、エンコーダ380から挙上角度を取得し、挙上角度と患者500の大腿部502の長さとに基づいて挙上高さを算出する。例えば、挙上角度がθ1であり、挙上高さがh1であり、大腿部502の長さがL1である場合を想定する。この場合、h1=L1×sinθ1という計算式によりh1を算出することができる。なお、大腿部502の長さを示す情報は、例えば、記憶部12に記憶されている。また、大腿部502の長さは、傾斜部322の長さと同程度であると見做してもよい。この場合、傾斜部322の長さを示す情報が、記憶部12に記憶されていればよい。
【0082】
本実施の形態では、挙上角度から挙上高さが算出される。従って、本実施の形態によれば、挙上高さを測定する測距センサ420が不要である。例えば、下肢挙上装置300が挙上角度を測定するエンコーダ380を備えている場合、挙上高さを測定する測距センサ420を用意しなくても挙上高さを算出可能である。
【0083】
(変形例)
以上、実施の形態を説明したが、種々の形態による変形及び応用が可能である。上記実施の形態において説明した構成、機能、動作のどの部分を採用するのかは任意である。また、上述した構成、機能、動作のほか、更なる構成、機能、動作が採用されてもよい。また、上記実施の形態において説明した構成、機能、動作は、自由に組み合わせることができる。
【0084】
実施の形態1では、システム全体の動作を統括する統括機能を有する制御装置100と、患者500の腹部を圧迫する腹部圧迫機能を有する腹部圧迫装置200と、患者500の下肢を挙上する下肢挙上機能を有する下肢挙上装置300とが協働する例について説明した。システム全体として、統括機能と腹部圧迫機能と下肢挙上機能とを備えていれば、システム構成は実施の形態1で示した構成に限定されない。例えば、腹部圧迫装置200が腹部圧迫機能に加え統括機能を有する場合、制御装置100は不要である。また、下肢挙上装置300が下肢挙上機能に加え統括機能を有する場合、制御装置100は不要である。また、統括機能と腹部圧迫機能と下肢挙上機能とを有する1つの装置が採用されてもよい。
【0085】
実施の形態1では、下肢挙上装置300が患者500の下肢を挙上する例について説明した。患者500の下肢の挙上は、手動で実現されてもよい。例えば、看護師が、患者500の血圧の低下を検知した場合に、患者500の下肢を手動で挙上してもよい。この場合、患者500の下肢の挙上が検知された場合に、患者500の腹部が圧迫されればよい。
【0086】
実施の形態1では、患者500の血圧の低下の程度に拘わらず、下肢挙上装置300による挙上高さが一定である例について説明した。患者500の血圧の低下の程度に応じて、下肢挙上装置300による挙上高さが調整されてもよい。例えば、患者500の血圧の低下の程度が大きい程、下肢挙上装置300による挙上高さが高く調整されてもよい。
【0087】
実施の形態1では、挙上高さに応じて、患者500の腹部を圧迫する圧迫力が調整される例について説明した。患者500の下肢の挙上が検知された場合、挙上高さに拘わらず、一定の圧迫力で患者500の腹部が圧迫されてもよい。
【0088】
実施の形態1では、患者500の下肢が挙上されるときに患者500の下腿部503が水平に維持され、床面から下腿部503までの距離が挙上高さに設定される例について説明した。挙上高さをどのように設定するのかは、適宜、調整することができる。例えば、患者500の下肢が挙上されるときに患者500の下肢が真っ直ぐに延びた状態に維持され、床面から患者500の膝までの距離、床面から患者500の足先までの距離、床面から患者500の下腿部503の中心までの距離等が挙上高さに設定されてもよい。
【0089】
実施の形態1では、空気の供給による膨張部221の膨張により、患者500の腹部を圧迫する例について説明した。患者500の腹部を圧迫する方法は、この例に限定されない。例えば、空気以外の気体、又は、液体の供給による膨張部221の膨張により、患者500の腹部を圧迫してもよい。また、バネ、ゴム等の弾性体を用いた締め付けにより、患者500の腹部を圧迫してもよい。
【0090】
上記実施の形態では、制御部11において、CPUがROM又は記憶部12に記憶されたプログラムを実行することによって、図8,10に示した各部として機能した。しかしながら、本開示において、制御部11は、専用のハードウェアであってもよい。専用のハードウェアとは、例えば単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらの組み合わせ等である。制御部11が専用のハードウェアである場合、各部の機能それぞれを個別のハードウェアで実現してもよいし、各部の機能をまとめて単一のハードウェアで実現してもよい。また、各部の機能のうち、一部を専用のハードウェアによって実現し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現してもよい。このように、制御部11は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又は、これらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0091】
本開示に係る制御装置100,110の動作を規定する動作プログラムを既存のパーソナルコンピュータ又は情報端末装置等のコンピュータに適用することで、当該コンピュータを、本開示に係る制御装置100,110として機能させることも可能である。また、このようなプログラムの配布方法は任意であり、例えば、CD-ROM(Compact Disk ROM)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto Optical Disk)、又は、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布してもよいし、インターネット等の通信ネットワークを介して配布してもよい。
【0092】
本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。すなわち、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、本開示の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0093】
11 制御部、12 記憶部、13,230,330 表示部、14,240,340 操作受付部,15,250,350 通信部、100,110 制御装置、101 血圧低下検知部、102 挙上制御部、103 挙上検知部、104 圧迫制御部、200 腹部圧迫装置、210 空圧制御部、220 圧迫帯、221 膨張部、222,223 取付部、224 空気供給チューブ、225 袋体、261 コンプレッサ、262 エアタンク、263 減圧器、264 電空レギュレータ、265 排気用バルブ、266 リリーフバルブ、267 気圧センサ、268 圧迫圧センサ、300 下肢挙上装置、310 駆動制御部、320 配置台、321 固定部、322 傾斜部、323 昇降部、324,325 回転軸、360 駆動回路、370 モータ、380 エンコーダ、410 血圧センサ、420 測距センサ、500 患者、501 臀部、502 大腿部、503 下腿部、1000,1100 腹部圧迫システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11