(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154637
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】仮想発電所の電力管理システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20231013BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231013BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20231013BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20231013BHJP
B60L 53/68 20190101ALI20231013BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20231013BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20231013BHJP
G16Y 40/30 20200101ALI20231013BHJP
【FI】
H02J3/14 160
H02J7/00 P
H02J3/32
G06Q50/06
B60L53/68
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064091
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000241485
【氏名又は名称】豊田通商株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 裕士
(72)【発明者】
【氏名】根津 有希央
(72)【発明者】
【氏名】淀瀬 健司
(72)【発明者】
【氏名】江原 雅人
(72)【発明者】
【氏名】小鮒 俊介
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
5H125
5L049
【Fターム(参考)】
5G066DA03
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
5G066KB01
5G503AA01
5G503BB01
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BC05
5H125BC21
5H125BE02
5H125CC04
5H125CD10
5H125DD02
5H125EE21
5H125EE51
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】ユーザーの利便性を損なうことなく、且つ、電力需給調整市場におけるユーザーの収益に対する影響を最小限に抑えながら、電力需給バランスの調整力の基準値と電力需給調整市場における入札値を決定可能な仮想発電所の電力管理システムを提供すること。
【解決手段】本発明に係る仮想発電所の電力管理システムは、充電器に接続されている車載電池の充電動作のみを制御する仮想発電所の電力管理システムであって、車両の使用予定の有無、充電器の最大充電電力、車載電池の空き容量に基づいて、電力需給バランスの調整力の基準となる車載電池の充電電力量の基準値及び入札値を設定し、設定した基準値及び入札値に基づいて車載電池の充電動作を制御する電力管理装置を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電器に接続されている車載電池の充電動作のみを制御する仮想発電所の電力管理システムであって、
車両の使用予定の有無、前記充電器の最大充電電力、前記車載電池の空き容量に基づいて、電力需給バランスの調整力の基準となる前記車載電池の充電電力量の基準値及び入札値を設定し、設定した基準値及び入札値に基づいて車載電池の充電動作を制御する電力管理装置を備える
ことを特徴とする仮想発電所の電力管理システム。
【請求項2】
前記電力管理装置は、車両の使用予定がある時間枠には入札値を設定しないことを特徴とする請求項1に記載の仮想発電所の電力管理システム。
【請求項3】
前記電力管理装置は、車両の使用予定がある時間枠における前記車載電池の充電電力量が必要量以上ない場合、該時間枠より前の時間枠における入札値を入札の単価が低い時間枠から順に変更することを特徴とする請求項1に記載の仮想発電所の電力管理システム。
【請求項4】
前記電力管理装置は、前記充電器の最大充電電力又は前記車載電池の空き容量を満たす充電電力量の小さい方の値に基づいて、車両の使用予定がない時間枠の入札値を設定することを特徴とする請求項1に記載の仮想発電所の電力管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電器に接続されている車載電池の充電動作のみを制御する仮想発電所(VPP)の電力管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自然エネルギーにより発電する発電設備と、所定エリア内に設けられて発電設備の発電電力を消費する電力消費設備と、を含む複数のマイクログリッドを隣接して備え、各マイクログリッドにおける電動車両の二次電池の充放電動作を制御する電力管理システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電動車両の蓄電池としての機能を電力インフラと連携させ、電動車両の車載電池の充放電量や充放電タイミングを最適化することにより電動車両をVPPの一部として運用することが注目されている。このVPPの方式には、V2G(Vehicle to Grid)方式とV1G方式とがある。V2G方式では車載電池の充放電動作を制御できるが、V1G方式では車載電池の充電動作しか制御できない。このため、V1G方式のVPPでは、電力需給バランスの調整力の基準となる基準値を車載電池の充電電力の一定値に設定し、基準値に対して車載電池の充電電力を増減させることにより、電力需給バランスの調整力を提供することが考えられる。しかしながら、車載電池に充電可能な電力量は車載電池の容量や残容量等に依存して制約となる。また、ユーザーの利便性の観点から電動車両の利用時には車載電池の残容量が十分になくてはならない。このため、ユーザーの利便性を損なうことなく電力需給バランスの調整力を提供するために、車載電池の制約やユーザーの予定を踏まえて電力需給バランスの調整力の基準値と電力需給調整市場における入札値を決定する技術の提供が期待されていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ユーザーの利便性を損なうことなく、且つ、電力需給調整市場におけるユーザーの収益に対する影響を最小限に抑えながら、電力需給バランスの調整力の基準値と電力需給調整市場における入札値を決定可能な仮想発電所の電力管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る仮想発電所の電力管理システムは、充電器に接続されている車載電池の充電動作のみを制御する仮想発電所の電力管理システムであって、車両の使用予定の有無、前記充電器の最大充電電力、前記車載電池の空き容量に基づいて、電力需給バランスの調整力の基準となる前記車載電池の充電電力量の基準値及び入札値を設定し、設定した基準値及び入札値に基づいて車載電池の充電動作を制御する電力管理装置を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る仮想発電所の電力管理システムは、上記発明において、前記電力管理装置は、車両の使用予定がある時間枠には入札値を設定しないことを特徴とする。これにより、車両の使用予定がある際に入札が行われることによってユーザーの利便性が損なわれることを抑制できる。
【0008】
本発明に係る仮想発電所の電力管理システムは、上記発明において、前記電力管理装置は、車両の使用予定がある時間枠における前記車載電池の充電電力量が必要量以上ない場合、該時間枠より前の時間枠における入札値を入札の単価が低い時間枠から順に変更することを特徴とする。これにより、電力需給調整市場におけるユーザーの収益への影響を最小限に抑えながらユーザーの利便性を向上させることができる。
【0009】
本発明に係る仮想発電所の電力管理システムは、上記発明において、前記電力管理装置は、前記充電器の最大充電電力又は前記車載電池の空き容量を満たす充電電力量の小さい方の値に基づいて、車両の使用予定がない時間枠の入札値を設定することを特徴とする。これにより、入札し得る最大限の値で入札し、得られる収益を最大化することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る仮想発電所の電力管理システムによれば、車両の使用予定の有無、充電器の最大充電電力、車載電池の空き容量に基づいて、電力需給バランスの調整力の基準となる車載電池の充電電力量の基準値及び入札値を設定するので、ユーザーの利便性を損なうことなく、且つ、電力需給調整市場におけるユーザーの収益に対する影響を最小限に抑えながら、電力需給バランスの調整力の基準値と電力需給調整市場における入札値を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態である仮想発電所の電力管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態である電力管理処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態である充電量修正処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図3に示すステップS24の処理を説明するための図である。
【
図5】
図5は、コマ毎のバッテリーの充電電力量の基準値及び入札値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である仮想発電所の電力管理システムについて詳しく説明する。
【0013】
〔構成〕
まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態である仮想発電所の電力管理システムの構成について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態である仮想発電所の電力管理システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態である仮想発電所の電力管理システムは、電力会社11から電力系統12を介して供給される電力を利用して充電器13に接続されている車両14のバッテリー(車載電池)14aの充電動作のみを制御するV1G方式の仮想発電所の電力管理システムである。本実施形態では、電力管理システムは、充電器13によるバッテリー14aの充電動作を制御する電力管理装置1を備えている。
【0015】
電力管理装置1は、ワークステーション等の情報処理装置によって構成され、インターネット回線等の電気通信回線を介して充電器13及び電力需給調整サーバ装置15に接続されている。ここで、電力需給調整サーバ装置15は、電力の需給調整市場における電力の取引を管理する装置であり、電気通信回線を介して電力の入札に関する情報を提供する。電力の入札に関する情報には、入札の時間枠(コマ)毎の電力売買の予想単価(例えば1kWの電力を売買価格)等の情報が含まれている。
【0016】
また、電力管理装置1は、ユーザー情報データベース(ユーザー情報DB)1aを備えている。ユーザー情報DB1aには、以下の表1に示すようなユーザー情報が電力管理システムを利用するユーザー毎に格納されている。具体的には、表1に示すように、ユーザー情報には、入札の各コマi(=1~Imax(本例では48))における入札有無Flag(i)、バッテリー14aの充電電力量の基準値L(i)、バッテリー14aの充電電力量Ca(i)、入札の予想単価Pr(i)、車両14の使用予定の有無、及びバッテリー14aの必要充電電力量(必要容量)Cr(i)に関する情報が含まれる。
【0017】
【0018】
ここで、入札有無Flag(i)は、値が1である時は、車両4の使用予定がない、換言すれば、入札を行うことを示し、値が0である時は、車両4の使用予定がある、換言すれば、入札を行わないことを示す。また、バッテリー14aの必要容量Cr(i)は、車両14の使用予定がない場合は0、車両14の使用予定がある場合には車両14の使用用途に応じた値に設定される。また、ユーザー情報には、ユーザーの識別情報、ユーザーが所有する車両14に関する情報、ユーザーが所有する車両14に搭載されているバッテリー14aの最大容量Cmax、バッテリー14aが接続されている充電器13の最大充電電力量Pmax等の情報が含まれる。ユーザー情報は、電力管理システムを利用するユーザーによって電気通信回線を介して登録、書き換え可能な形態でユーザー情報DB1aに格納されている。
【0019】
このような構成を有する電力管理システムでは、電力管理装置1が、電力の入札に関する情報及びユーザー情報を用いて後述する電力管理処理を実行することにより、ユーザーの利便性を損なうことなく、且つ、電力需給調整市場におけるユーザーの収益に対する影響を最小限に抑えながら、電力需給バランスの調整力の基準値と電力需給調整市場における入札値を決定する。以下、
図2を参照して、電力管理処理を実行する際の電力管理装置1の動作について説明する。
【0020】
〔電力管理処理〕
図2は、本発明の一実施形態である電力管理処理の流れを示すフローチャートである。
図2に示すフローチャートは、電力管理装置1に対して処理対象期間(コマi(=1~Imax))における電力管理処理の実行指令が入力されたタイミングで開始となり、電力管理処理はステップS1の処理に進む。なお、以下に示す電力管理処理は、ユーザー情報DB1aにユーザー情報が格納されているユーザー毎に実行される。また、以下に示す電力管理装置1の動作は、電力管理装置1がコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0021】
ステップS1の処理では、電力管理装置1が、処理対象のコマ番号を示すプログラムカウンタiの値を1(処理対象期間の最初のコマ(表1に示す例では「0:00」)に対応するコマ番号)に設定する。これにより、ステップS1の処理は完了し、電力管理処理はステップS2の処理に進む。
【0022】
ステップS2の処理では、電力管理装置1が、プログラムカウンタiの値がimax(処理対象期間の最後のコマ(表1に示す例では「23:30」)に対応するコマ番号)以下であるか否かを判別する。判別の結果、プログラムカウンタiの値がimax以下である場合(ステップS2:Yes)、電力管理装置1は、電力管理処理をステップS3の処理に進める。一方、プログラムカウンタiの値がimaxである場合には(ステップS2:No)、電力管理装置1は、処理対象期間内における全てのコマに対して処理が完了したと判断し、一連の電力管理処理を終了する。
【0023】
ステップS3の処理では、電力管理装置1が、処理対象期間におけるユーザー情報をユーザー情報DB1aから読み出し、読み出されたユーザー情報に基づいてプログラムカウンタiの値に対応するコマにおける入札有無Flag(i)が1に設定されているか否かを判別する。判別の結果、入札有無Flag(i)が1に設定されている場合(ステップS3:Yes)、電力管理装置1は、車両14の使用予定がないと判断し、電力管理処理をステップS6の処理に進める。一方、入札有無Flag(i)が0に設定されている場合には(ステップS3:No)、電力管理装置1は、車両14の使用予定があると判断し、電力管理処理をステップS4の処理に進める。
【0024】
ステップS4の処理では、電力管理装置1が、前回の電力管理処理において設定されたコマ開始時のバッテリー14aの残容量C(i)がユーザー情報に含まれるバッテリー14aの必要容量Cr(i)より大きいか否かを判別する。なお、今回が初めての電力管理処理である場合、電力管理装置1は、ステップS3の処理において読み出されたユーザー情報に基づいて、電気通信回線を介して充電器13に接続されているユーザーが所有する車両14に搭載されているバッテリー14aの残容量C(i)を取得する。また、ユーザーがバッテリー14aの残容量C(i)を入力するようにしてもよい。判別の結果、バッテリー14aの残容量C(i)がバッテリー14aの必要容量Cr(i)より大きい場合(ステップS4:Yes)、電力管理装置1は、電力管理処理をステップS10の処理に進める。一方、バッテリー14aの残容量C(i)がバッテリー14aの必要容量Cr(i)以下である場合には(ステップS4:No)、電力管理装置1は、電力管理処理をステップS5の処理に進める。
【0025】
ステップS5の処理では、電力管理装置1が、バッテリー14aの残容量C(i)がバッテリー14aの必要容量Cr(i)と同じになるようにバッテリー14aの充電電力量を修正する充電量修正処理を実行する。この充電量修正処理の詳細については、
図3に示すフローチャートを参照して後述する。これにより、ステップS5の処理は完了し、電力管理処理はステップS10の処理に進む。
【0026】
ステップS6の処理では、電力管理装置1が、ユーザー情報に基づいてバッテリー14aの最大容量Cmaxとバッテリー14aの残容量C(i)との差分値Cmax-C(i)を1コマ分の時間Tで除算した値を、バッテリー14aの空き容量を満たす充電電力量{Cmax-C(i)}/Tとして算出する。そして、電力管理装置1は、ユーザー情報に基づいて充電器13の最大充電電力量Pmaxが充電電力量{Cmax-C(i)}/Tより大きいか否かを判別する。判別の結果、充電器13の最大充電電力量Pmaxが充電電力量{Cmax-C(i)}/Tより大きい場合(ステップS6:Yes)、電力管理装置1は、電力管理処理をステップS7の処理に進める。一方、充電器13の最大充電電力量Pmaxが充電電力量{Cmax-C(i)}/T以下である場合には(ステップS6:No)、電力管理装置1は、電力管理処理をステップS8の処理に進める。
【0027】
ステップS7の処理では、電力管理装置1が、バッテリー14aの充電電力量の基準値L(i)及び入札値B(i)を充電電力量{Cmax-C(i)}/Tを2で除算した値に設定すると共に、バッテリー14aの充電電力量Ca(i)をバッテリー14aの充電電力量の基準値L(i)に1コマ分の時間Tを乗算した値に設定する。なお、入札値B(i)とは、コマiにおいて基準値L(i)に対して制御可能な充電電力の幅のことを意味する。例えば基準値3kWに対して0~6kWで制御できるのであれば、入札値B(i)は±3kWになる。これにより、ステップS7の処理は完了し、電力管理処理はステップS9の処理に進む。
【0028】
ステップS8の処理では、電力管理装置1が、バッテリー14aの充電量の基準値L(i)及び入札値B(i)を充電器13の最大充電電力量Pmaxを2で除算した値に設定すると共に、バッテリー14aの充電電力量Ca(i)をバッテリー14aの充電電力量の基準値L(i)に1コマ分の時間Tを乗算した値に設定する。これにより、ステップS8の処理は完了し、電力管理処理はステップS9の処理に進む。
【0029】
ステップS9の処理では、電力管理装置1が、次のコマ(コマ番号i+1)の開始時におけるバッテリー14aの残容量C(i+1)を、現在のコマ(コマ番号i)の開始時におけるバッテリー14aの残容量C(i)にステップS7又はステップS8の処理において設定されたバッテリー14aの充電電力量Ca(i)を加算した値に設定する。これにより、ステップS9の処理は完了し、電力管理処理はステップS10の処理に進む。
【0030】
ステップS10の処理では、電力管理装置1が、プログラムカウンタiの値を1増数する。これにより、ステップS10の処理は完了し、電力管理処理はステップS10の処理に進む。以後、電力管理装置1は、ステップS7又はステップS8の処理において設定されたバッテリー14aの充電電力量の基準値L(i)及び入札値B(i)に基づいてバッテリー14aの充電動作を制御する。
【0031】
〔充電量修正処理〕
次に、
図3を参照して、上記ステップS5の充電量修正処理について詳しく説明する。
【0032】
図3は、
図2に示すステップS5の充電量修正処理の流れを示すフローチャートである。
図3に示すフローチャートは、
図2に示すステップS4の処理においてバッテリー14aの残容量C(i)がバッテリー14aの必要容量Cr(i)以下であると判別されたタイミングで開始となり、充電量修正処理はステップS21の処理に進む。
【0033】
ステップS21の処理では、電力管理装置1が、バッテリー14aの必要容量Cr(i)とバッテリー14aの残容量C(i)との差分値を不足している充電量(不足量)Cd(i)として算出する。これにより、ステップS21の処理は完了し、充電量修正処理はステップS22の処理に進む。
【0034】
ステップS22の処理では、電力管理装置1が、ユーザー情報に基づいて、コマ番号iに対応するコマの開始時刻より早い開始時刻のコマの中から入札の予想単価Pr(i)が最小のコマのコマ番号jを探索する。これにより、ステップS22の処理は完了し、充電量修正処理はステップS23の処理に進む。
【0035】
ステップS23の処理では、電力管理装置1が、ステップS21の処理において算出された不足量Cd(i)が、充電器13の最大充電電力量Pmaxに1コマ分の時間Tを乗算した値Pmax*TからステップS22の処理において探索されたコマ番号jに対応するコマにおけるバッテリー14aの充電電力量Ca(j)を減算した値より大きいか否かを判別する。なお、ステップS22の処理において複数のコマ番号が探索された場合、電力管理装置1は、探索されたコマ番号の中で開始時刻が最も早いコマに対応するコマ番号をコマ番号jとして選択する。判別の結果、不足量Cd(i)が減算値より大きい場合(ステップS23:Yes)、電力管理装置1は、最大充電電力量Pmaxでも不足量Cd(i)を補うことができないと判断し、充電量修正処理をステップS25の処理に進める。一方、不足量Cd(i)が減算値以下である場合には(ステップS23:No)、電力管理装置1は、最大充電電力量Pmaxで不足量Cd(i)を補うことができると判断し、充電量修正処理をステップS24の処理に進める。
【0036】
ステップS24の処理では、電力管理装置1が、ステップS22の処理において探索されたコマ番号jに対応するコマにおけるバッテリー14aの充電電力量の基準値L(j)を、基準値L(j)に不足量Cd(i)を1コマ分の時間Tで除算した値Cd(i)/Tを加算した値に設定する。また、電力管理装置1は、コマ番号jに対応するコマにおける入札値B(j)を充電器13の最大充電電力量Pmaxから基準値L(j)を減算した値に設定すると共に、コマ番号jに対応するコマにおけるバッテリー14aの充電電力量Ca(j)を、充電電力量Ca(j)に不足量Cd(i)を加算した値に設定する。すなわち、
図4に示すように、電力管理装置1は、不足量Cd(i)のみを追加で充電するようにバッテリー14aの充電量の基準値L(j)を修正する。これにより、ステップS24の処理は完了し、充電量修正処理はステップS26の処理に進む。
【0037】
ステップS25の処理では、電力管理装置1が、ステップS22の処理において探索されたコマ番号jに対応するコマにおける入札有無Flag(j)の値を0に設定することにより、コマ番号jに対応するコマにおいては入札を行わないように設定する。また、電力管理装置1は、ステップS22の処理において探索されたコマ番号jに対応するコマにおけるバッテリー14aの充電電力量の基準値L(j)を充電器13の最大充電電力量Pmaxに設定すると共に、ステップS22の処理において探索されたコマ番号jに対応するコマにおける入札値B(j)を0に設定する。さらに、電力管理装置1は、コマ番号jに対応するコマにおけるバッテリー14aの充電電力量Ca(j)を、基準値L(j)に1コマ分の時間Tを乗算した値に設定する。これにより、ステップS25の処理は完了し、充電量修正処理はステップS26の処理に進む。
【0038】
ステップS26の処理では、電力管理装置1が、コマ番号jに対応するコマの次のコマ(コマ番号j+1)の開始時におけるバッテリー14aの残容量C(j+1)をコマ番号jに対応するコマの開始時におけるバッテリー14aの残容量C(j)にステップS24又はステップS25の処理において設定されたバッテリー14aの充電電力量Ca(j)を加算した値に設定する。これにより、ステップS26の処理は完了し、充電量修正処理はステップS27の処理に進む。
【0039】
ステップS27の処理では、電力管理装置1が、コマ番号jの値を1増数する。これにより、ステップS27の処理は完了し、充電量修正処理はステップS28の処理に進む。
【0040】
ステップS28の処理では、電力管理装置1が、コマ番号jの値がコマ番号iと同じになったか否かを判別する。判別の結果、コマ番号jの値がコマ番号iと同じになった場合(ステップS28:Yes)、電力管理装置1は、充電量修正処理をステップS29の処理に進める。一方、コマ番号jの値がコマ番号iと同じになっていない場合(ステップS28:No)、電力管理装置1は、充電量修正処理をステップS26の処理に戻す。
【0041】
ステップS29の処理では、電力管理装置1が、コマ番号iに対応するコマにおけるバッテリー14aの残容量C(i)がコマ番号iに対応するコマにおけるバッテリー14aの必要容量Cr(i)と同じであるか否かを判別する。判別の結果、残容量C(i)が必要容量Cr(i)と同じである場合(ステップS29:Yes)、電力管理装置1は、一連の充電量修正処理を終了する。一方、残容量C(i)が必要容量Cr(i)と同じでない場合には(ステップS29:No)、電力管理装置1は、充電量修正処理をステップS21の処理に戻す。
【0042】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である仮想発電所の電力管理システムでは、
図5に示すように、電力管理装置1が、車両14の使用予定の有無、充電器13の最大充電電力、バッテリー14aの空き容量に基づいて、電力需給バランスの調整力の基準となるバッテリー14aの充電電力量の基準値及び入札値を設定するので、ユーザーの利便性を損なうことなく、且つ、電力需給調整市場におけるユーザーの収益に対する影響を最小限に抑えながら、電力需給バランスの調整力の基準値と電力需給調整市場における入札値を決定することができる。なお、
図5において、線L1はバッテリー14aの充電電力量の基準値、線L2は入札値を示している。
【0043】
また、本発明の一実施形態である仮想発電所の電力管理システムでは、電力管理装置1は、車両14の使用予定がある時間枠には入札値を設定しないので、車両14の使用予定がある際に入札が行われることによってユーザーの利便性が損なわれることを抑制できる。
【0044】
また、本発明の一実施形態である仮想発電所の電力管理システムでは、電力管理装置1は、車両14の使用予定がある時間枠におけるバッテリー14aの充電電力量が必要量以上ない場合、その時間枠より前の時間枠における入札値を入札の単価が低い時間枠から順に変更するので、電力需給調整市場におけるユーザーの収益への影響を最小限に抑えながらユーザーの利便性を向上させることができる。
【0045】
また、本発明の一実施形態である仮想発電所の電力管理システムでは、電力管理装置1は、充電器13の最大充電電力又はバッテリー14aの空き容量を満たす充電電力量の小さい方の値に基づいて、車両14の使用予定がない時間枠の入札値を設定するので、入札し得る最大限の値で入札し、得られる収益を最大化することができる。
【0046】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1 電力管理装置
1a ユーザー情報データベース(ユーザー情報DB)
11 電力会社
12 電力系統
13 充電器
14 車両
14a バッテリー
15 電力需給調整サーバ装置