(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154669
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G02B 21/00 20060101AFI20231013BHJP
G02B 3/06 20060101ALI20231013BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20231013BHJP
G02B 21/06 20060101ALI20231013BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
G02B21/00
G02B3/06
G02B3/00 A
G02B21/06
G01N21/64 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064161
(22)【出願日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】新谷 大和
(72)【発明者】
【氏名】菅野(渡辺) 梢
【テーマコード(参考)】
2G043
2H052
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA16
2G043DA02
2G043DA06
2G043EA01
2G043FA02
2G043HA01
2G043HA03
2G043HA09
2G043JA03
2G043KA09
2G043LA02
2G043LA03
2H052AA07
2H052AA09
2H052AC04
2H052AC11
2H052AC15
2H052AC34
2H052AD03
2H052AD20
2H052AD34
2H052AF02
2H052AF14
(57)【要約】
【課題】高画質の試料の画像を短時間で取得することが可能な顕微鏡を提供する。
【解決手段】照明光を試料に照射する照明光学系と、試料からの検出光を受光する検出光学系と、照明光学系に配置された位相変調ユニット60とを備え、位相変調ユニット60は、照明光が照射され得る複数の照射領域を有し、複数の照射領域における照明光の照射位置に応じて、照明光に対して所定の位相分布を付与する位相変調素子65と、複数の照射領域における照明光の照射位置を変える第1位相変調用スキャナ63とを有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの照明光を試料に照射する照明光学系と、
前記試料からの検出光を受光する検出光学系と、
前記照明光学系および前記検出光学系の少なくとも一方に配置された位相変調ユニットとを備え、
前記位相変調ユニットは、
前記照明光および前記検出光の少なくとも一方の光が照射され得る複数の照射領域を有し、前記複数の照射領域における前記少なくとも一方の光の照射位置に応じて、前記少なくとも一方の光に対して所定の位相分布を付与する位相変調素子と、
前記照射位置と前記複数の照射領域とを相対的に移動させる第1走査部とを有する顕微鏡。
【請求項2】
前記位相変調ユニットは、前記所定の位相分布が付与された前記少なくとも一方の光の進行方向を一定の方向にする第2走査部を有する請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項3】
前記複数の照射領域は、互いに重ならない請求項1または2に記載の顕微鏡。
【請求項4】
前記第1走査部は、前記試料における顕微鏡観察が行われる観察領域が変位する際に、前記複数の照射領域における前記少なくとも一方の光の照射位置を変える請求項1~3のいずれか一項に記載の顕微鏡。
【請求項5】
前記位相変調ユニットは、前記少なくとも一方の光の断面形状を楕円形にするシリンドリカルレンズを有する請求項1~4のいずれか一項に記載の顕微鏡。
【請求項6】
前記位相変調ユニットが前記照明光学系に配置され、
前記少なくとも一方の光が前記照明光であり、
前記位相変調ユニットは、前記照明光を複数の光に分ける光学素子アレイを有し、
前記照明光学系は、前記複数の光を前記試料に照射する請求項5に記載の顕微鏡。
【請求項7】
前記照射領域は、互いに離れた複数個の部分領域に分割されており、
前記位相変調ユニットは、前記照射領域における前記複数個の部分領域に、前記少なくとも一方の光を複数の光に分けて照射する光学素子アレイを有する請求項1~4のいずれか一項に記載の顕微鏡。
【請求項8】
前記照明光学系は、前記照明光により前記試料を走査する第3走査部を備え、
前記第3走査部が前記照明光により前記試料を走査するのに同期して、前記第1走査部が前記複数の光に分けて照射する前記照射領域を変える請求項7に記載の顕微鏡。
【請求項9】
前記光学素子アレイにより分かれた前記複数の光が、前記複数個の部分領域上でそれぞれライン状となる請求項7または8に記載の顕微鏡。
【請求項10】
前記位相変調ユニットが前記照明光学系に配置され、
前記少なくとも一方の光が前記照明光であり、
前記照明光は、前記位相変調素子により、互いに異なる位相分布が付与された複数の回折光に分かれ、
前記照明光学系は、前記複数の回折光を前記試料に照射する請求項1~4または請求項9のいずれか一項に記載の顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、位相変調素子を用いて光の位相を変化させることにより試料に起因する収差を補正し、高画質の試料の画像を取得することが可能な顕微鏡が提案されている。また、試料を照明するための照明光を多点化することにより、試料の画像を短時間で取得することが可能な顕微鏡も提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)。このように顕微鏡では、高画質の試料の画像を短時間で取得することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-34127号公報
【特許文献2】特開2021-89430号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明に係る顕微鏡は、光源からの照明光を試料に照射する照明光学系と、前記試料からの検出光を受光する検出光学系と、前記照明光学系および前記検出光学系の少なくとも一方に配置された位相変調ユニットとを備え、前記位相変調ユニットは、前記照明光および前記検出光の少なくとも一方の光が照射され得る複数の照射領域を有し、前記複数の照射領域における前記少なくとも一方の光の照射位置に応じて、前記少なくとも一方の光に対して所定の位相分布を付与する位相変調素子と、前記照射位置と前記複数の照射領域とを相対的に移動させる第1走査部とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】第1実施形態に係る顕微鏡を示す説明図である。
【
図3】第1実施形態に係る位相変調ユニットを示す説明図である。
【
図4】第1実施形態に係る位相変調ユニットにおいて照明光の照射領域を変えた状態を示す説明図である。
【
図5】第1実施形態に係る位相変調ユニットにおける照明光の照射領域を示す説明図である。
【
図6】第1実施形態における観察領域を示す説明図である。
【
図7】試料の画像取得方法の流れを示すフローチャートである。
【
図8】収差の計測を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】変形例に係る収差の計測を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】第1実施形態に係る位相変調ユニットの変形例を示す説明図である。
【
図11】第2実施形態に係る顕微鏡を示す説明図である。
【
図12】第3実施形態に係る顕微鏡を示す説明図である。
【
図13】第4実施形態に係る顕微鏡を示す説明図である。
【
図14】第5実施形態に係る顕微鏡を示す説明図である。
【
図15】第6実施形態に係る位相変調ユニットを示す説明図である。
【
図16】第6実施形態に係る位相変調ユニットにおける照明光の照射領域を示す説明図である。
【
図17】第6実施形態に係る位相変調ユニットの変形例を示す説明図である。
【
図18】第11実施形態に係る顕微鏡を示す説明図である。
【
図19】第11実施形態に係る位相変調ユニットを示す説明図である。
【
図20】第11実施形態に係る位相変調ユニットにおける照明光の照射領域を示す説明図である。
【
図21】第11実施形態における観察領域を示す説明図である。
【
図22】第11実施形態に係る位相変調ユニットの変形例を示す説明図である。
【
図23】第12実施形態に係る位相変調ユニットを示す説明図である。
【
図24】第12実施形態に係る位相変調ユニットにおける照明光の照射領域を示す説明図である。
【
図25】第12実施形態に係る位相変調ユニットにおける照射領域の一部を示す拡大図である。
【
図26】第12実施形態に係る位相変調ユニットにおける照射領域の部分領域に関する説明図である。
【
図27】第12実施形態における観察領域を示す説明図である。
【
図28】第12実施形態に係る位相変調ユニットの第1変形例を示す説明図である。
【
図29】第12実施形態に係る位相変調ユニットの第2変形例を示す説明図である。
【
図30】第12実施形態に係る位相変調ユニットの第3変形例を示す説明図である。
【
図31】第12実施形態に係る位相変調ユニットの第4変形例を示す説明図である。
【
図32】第16実施形態に係る位相変調ユニットを示す説明図である。
【
図33】第16実施形態に係る位相変調ユニットにおける照明光の照射領域を示す説明図である。
【
図34】第16実施形態に係る位相変調ユニットにおける照射領域の部分領域に関する説明図である。
【
図35】第16実施形態に係る位相変調ユニットの第1変形例を示す説明図である。
【
図36】第16実施形態に係る位相変調ユニットの第1変形例を示す説明図である。
【
図37】第20実施形態に係る位相変調ユニットを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[第1実施形態]
以下、各実施形態に係る顕微鏡について説明する。まず、
図1を参照しながら、第1実施形態に係る顕微鏡1について説明する。以降の説明において、顕微鏡1の対物レンズ28の光軸方向に延びる座標軸をz軸とする。また、このz軸と垂直な面内において互いに直交する方向に延びる座標軸をそれぞれx軸およびy軸とする。z軸が延びる方向をz方向と称し、x軸が延びる方向をx方向と称し、y軸が延びる方向をy方向と称する場合がある。なお、+z方向は、倒立顕微鏡の場合は上向き方向であり、正立顕微鏡の場合は下向き方向である。また、z方向の位置をz位置と称し、x方向の位置をx位置と称し、y方向の位置をy位置と称する場合がある。
【0007】
第1実施形態に係る顕微鏡1は、走査型顕微鏡とも称される。第1実施形態に係る顕微鏡1は、ステージ11と、光源ユニット16と、照明光学系21と、検出光学系31と、検出器41と、波面センサ46と、演算装置51と、記憶部52と、インターフェース部53と、顕微鏡制御部54とを備える。ステージ11は、中央に開口部を有する板状に形成される。ステージ11は、カバーガラス等の保持部材CGを介して観察対象である試料TPを支持する。試料TPの例として、例えば、生体試料(図示せず)やビーズ(図示せず)等がある。生体試料は、細胞や生体組織等の厚みがある試料である。ビーズは、ポリスチレン製の(例えば、直径0.2μm程度の)微小な球体である。試料TPは、蛍光色
素等で染色されていてもよい。また、試料TPの内部に蛍光染色されたビーズや金属粒子を導入してもよい。
【0008】
ステージ11には、ステージ駆動部12が設けられる。ステージ駆動部12は、電動モータやピエゾ素子等を用いて構成される。ステージ駆動部12は、ステージ11をz軸(対物レンズ28の光軸)と垂直な面内(xy平面内)で移動させる。ステージ駆動部12によりステージ11をz軸と垂直な面内で移動させることで、保持部材CGを介してステージ11に支持された、試料TPにおける広範囲の画像を取得することが可能である。なお、ステージ駆動部12は、ステージ11をz方向に移動させてもよい。
【0009】
光源ユニット16は、試料TPに含まれる蛍光物質を励起するための照明光(励起光)を射出させる。光源ユニット16は、光源17と、シャッタ18とを有する。光源17として、例えば、照明光として所定の波長域のレーザ光(励起光)を射出させることが可能なレーザ光源等が用いられる。シャッタ18は、光源17から射出される照明光を通過させるか、もしくは遮るようになっている。
【0010】
照明光学系21は、光源ユニット16から射出された照明光(励起光)で試料TPを照明する。照明光学系21は、光源ユニット16側から順に、コリメータレンズ22と、位相変調ユニット60と、ダイクロイックミラー24と、試料走査部25と、スキャンレンズ26と、第2対物レンズ27と、対物レンズ28とを有する。コリメータレンズ22は、光源ユニット16から射出された照明光を略平行光にする。位相変調ユニット60は、光源ユニット16から射出された照明光に対して位相変調を行い、試料TPと照明光学系21と検出光学系31で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正する。ダイクロイックミラー24は、光源ユニット16から射出された照明光(励起光)が透過し、ステージ11上の試料TPで発生した光のうち所定の波長帯の光(例えば、蛍光)が反射する特性を有する。なお、ダイクロイックミラー24は、光源ユニット16から射出された照明光が反射し、試料TPで発生した光のうち所定の波長帯の光が透過するように構成されていてもよい。
【0011】
試料走査部25は、対物レンズ28の瞳位置と光学的に共役な位置またはその近傍に配置される。試料走査部25は、反射面の向き(方位角)が変化するように保持されたミラー(例えば、ガルバノミラーやレゾナントミラー等)を用いて構成される。試料走査部25は、反射面の向きを変化させることにより、反射面で反射される照明光の進行方向を変化させる。これにより、試料走査部25は、x方向とy方向との2方向において、光源ユニット16からの照明光により試料TPを走査する。なお、試料走査部25は、ミラーに限らず、音響光学偏向器(AOD)や電気光学結晶(KTN結晶)等の透過型の偏向器を用いて構成されて、照明光の進行方向を変化させるようにしてもよい。
【0012】
スキャンレンズ26は、光源ユニット16からの照明光を集光する。第2対物レンズ27は、光源ユニット16からの照明光を再び略平行光にする。対物レンズ28は、ステージ11の下方近傍に配置される。対物レンズ28は、ステージ11の開口部およびカバーガラス等の保持部材CGを介して、ステージ11上の試料TPと対向する。対物レンズ28と保持部材CGとの間隙部は、浸液IMで満たされていてもよく、空気等の気体で満たされていてもよい。
【0013】
また、対物レンズ28は、対物レンズ保持部29を介して、顕微鏡1の筐体(図示せず)に取り付けられている。対物レンズ保持部29は、例えば電動モータ等の駆動装置(図示せず)を用いて構成される。対物レンズ保持部29は、レボルバ(図示せず)とともに対物レンズ28をz方向に上下移動させる。対物レンズ保持部29により対物レンズ28がz方向に移動すると、試料TPに対する対物レンズ28の相対位置が変化し、試料TP
に対する対物レンズ28の焦点位置がz方向に変化する。対物レンズ保持部29により対物レンズ28の焦点位置をz方向に変位させることで、試料TPの内部であってz方向の位置が異なる断面の画像を取得することができる。以降、z方向の位置が異なる試料TPの複数の断面の画像を、「zスタック画像」とも称する。なお、ステージ駆動部12により、ステージ11をz方向に移動させることで、対物レンズ28の焦点位置をz方向に変位させてzスタック画像を取得してもよい。
【0014】
図2は、試料TPのzスタック画像の一例を模式的に示す図である。
図2には、試料TPのxy断面の第1の2次元画像TI1と、第1の2次元画像TI1とはz位置が異なる試料TPのxy断面の第2の2次元画像TI2と、第1の2次元画像TI1および第2の2次元画像TI2とはz位置が異なる試料TPのxy断面の第3の2次元画像TI3とが示されている。このように、第1の2次元画像TI1と、第2の2次元画像TI2と、第3の2次元画像TI3とは、試料TPのそれぞれ異なるz位置でのxy断面の2次元画像である。zスタック画像は、第1~第3の2次元画像TI1~TI3すなわち、試料TPのそれぞれ異なるz位置でのxy断面の2次元画像を含む。なお、2次元画像の数は、
図2に示した3枚に限られるわけではなく、任意の枚数であってよい。
【0015】
検出光学系31は、試料TPで発生した光を検出光として受光する。検出光学系31は、試料TP側から順に、対物レンズ28と、第2対物レンズ27と、スキャンレンズ26と、試料走査部25と、ダイクロイックミラー24とを含む。さらに、検出光学系31は、ダイクロイックミラー24側から順に、検出フィルタ32と、集光レンズ33と、挿脱ミラー34と、検出用ピンホール板35とを有する。また、検出光学系31は、計測用ピンホール板36と、計測用リレーレンズ37とを有する。このように、対物レンズ28と、第2対物レンズ27と、スキャンレンズ26と、試料走査部25と、ダイクロイックミラー24は、照明光学系21と検出光学系31の両方に含まれている。
【0016】
検出フィルタ32は、試料TPで発生した光のうち所定の波長帯の光(例えば、蛍光)を透過させる。検出フィルタ32は、例えば、試料TPで反射した照明光、外光、および迷光等の少なくとも一部を遮る。集光レンズ33は、試料TPからの検出光を集光する。挿脱ミラー34は、集光レンズ33と検出用ピンホール板35との間の光路に対して挿脱可能に配設される。挿脱ミラー34が集光レンズ33と検出用ピンホール板35との間の光路から離脱する場合、試料TPからの検出光は、検出用ピンホール板35に達する。挿脱ミラー34が集光レンズ33と検出用ピンホール板35との間の光路に挿入される場合、試料TPからの検出光は、挿脱ミラー34で反射して計測用ピンホール板36に達する。
【0017】
検出用ピンホール板35は、中央にピンポール(図示せず)を有する板状に形成され、試料TPと光学的に共役な位置に配置される。検出器41は、検出用ピンホール板35を通過した検出光を検出する。検出器41として、例えば、光電子増倍管や、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード等が用いられる。
【0018】
計測用ピンホール板36は、中央にピンポール(図示せず)を有する板状に形成され、試料TPと光学的に共役な位置に配置される。計測用リレーレンズ37は、試料TPからの検出光を略平行光にする。波面センサ46は、試料TPからの検出光の波面の収差を計測する。波面センサ46として、例えば、シャックハルトマン波面センサ等が用いられる。
【0019】
演算装置51は、CPU(Central Processing Unit)を含み、記憶部52に記憶さ
れているプログラムに基づいて、顕微鏡制御部54を含む顕微鏡1の制御を行う。記憶部52は、メモリ素子またはハードディスク等の記憶媒体を含み、上述したプログラムに加
えて、検出器41により検出された検出光の信号データを一時的に記憶する。
【0020】
インターフェース部53は、マウス、キーボード、タッチパッド、トラックボール等のうち少なくとも1つを含むユーザーが操作可能な入力部(図示せず)と、液晶ディスプレイ等の表示部(図示せず)とを有する。インターフェース部53の入力部は、ユーザーによる操作を検出し、その検出結果をユーザーが入力した入力データとして演算装置51へ出力する。演算装置51は、顕微鏡1の操作に必要なGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)や、顕微鏡制御部54により生成された試料TPの画像を、表示部に表示させる。インターフェース部53は、ネットワーク回線を介して、顕微鏡1の外部に配置されているサーバ等とのデータの交信を行う。
【0021】
顕微鏡制御部54は、試料走査部25に制御信号を送信して、試料走査部25により変化する照明光および検出光の進行方向を制御する。顕微鏡制御部54は、ステージ駆動部12に制御信号を送信して、ステージ駆動部12に駆動されるステージ11の位置を制御する。顕微鏡制御部54は、対物レンズ保持部29に制御信号を送信して、対物レンズ保持部29に保持される対物レンズ28の位置を制御する。顕微鏡制御部54は、シャッタ18に制御信号を送信して、シャッタ18の開閉を制御する。顕微鏡制御部54は、挿脱ミラー34に制御信号を送信して、挿脱ミラー34の挿脱を制御する。
【0022】
また、顕微鏡制御部54は、検出器41から送信される検出信号に基づいて、試料TPの2次元画像を生成する。顕微鏡制御部54は、検出器41から送信される検出信号や、波面センサ46から送信される計測信号に基づいて、試料TPと照明光学系21と検出光学系31で生じる収差のうち、少なくとも一部に関するデータを取得する。顕微鏡制御部54は、位相変調ユニット60に制御信号を送信して、位相変調ユニット60による照明光の位相変調を制御する。
【0023】
光源ユニット16の光源17から射出された照明光(励起光)は、照明光学系21のコリメータレンズ22を透過して略平行光になる。コリメータレンズ22を透過した照明光は、位相変調ユニット60に入射する。照明光が位相変調ユニット60に入射すると、位相変調ユニット60は、入射した照明光に対して位相変調を行い、位相変調を行った照明光を射出させる。位相変調ユニット60から射出された略平行光である照明光は、ダイクロイックミラー24に入射する。ダイクロイックミラー24に入射した照明光は、ダイクロイックミラー24を透過して試料走査部25に入射する。試料走査部25に入射した照明光は、試料走査部25を通ってスキャンレンズ26および第2対物レンズ27を透過し、対物レンズ28に入射する。対物レンズ28に入射した照明光は、対物レンズ28を透過し、対物レンズ28の焦点面に集光される。試料TPにおいて照明光が集光される部分(すなわち、対物レンズ28の焦点面と重なる部分)は、試料走査部25によりx方向とy方向との2方向において2次元的に走査される。
【0024】
試料TPにおいて照明光(励起光)が集光される部分に含まれる蛍光物質から、検出光として蛍光が発光する。なお、検出光は、蛍光に限られるものではなく、例えば散乱光や反射光等であってもよい。検出光は、照明光の強度に対して非線形な応答を示す光波であってもよく、例えば、多光子励起により発光する蛍光や、第二次高調波、第三次高調波等であってもよい。また、試料から発生する光以外の波動を検出するようにしてもよく、例えば、試料に対し浸液等を介して対向配置されたトランスデューサーにより、試料から発生する音響波を検出するようにしてもよい。試料から発生する検出光については、以降、全ての実施形態に記載の検出光も同様であるので、説明を省略する。
【0025】
試料TPで発生した検出光(蛍光)は、検出光学系31としての対物レンズ28に入射する。対物レンズ28に入射した検出光は、対物レンズ28を透過し、第2対物レンズ2
7およびスキャンレンズ26を透過して試料走査部25に入射する。試料走査部25に入射した検出光は、試料走査部25を通ってダイクロイックミラー24に入射する。ダイクロイックミラー24に入射した検出光(蛍光)は、照明光(励起光)と波長が異なるため、ダイクロイックミラー24で反射して検出フィルタ32に達する。検出フィルタ32に達した蛍光は、検出フィルタ32を通って集光レンズ33を透過する。
【0026】
挿脱ミラー34が集光レンズ33と検出用ピンホール板35との間の光路から離脱している場合、集光レンズ33を透過した検出光は、検出用ピンホール板35に達する。対物レンズ28の焦点位置と共役な位置で集光した検出光は、検出用ピンホール板35を通過して検出器41に入射する。検出器41は、検出器41に入射した光(検出光)の光電変換を行い、光の検出信号として、その光の光量(明るさ)に対応するデータを生成する。検出器41は、生成したデータを顕微鏡制御部54に送信する。顕微鏡制御部54は、検出器41から送信されたデータを所定のサンプリング間隔で積算して1画素分のデータとして、これを試料走査部25による2次元的な走査と同期して並べる処理を行うことで、複数画素分のデータが2次元で(2方向で)並ぶ1つの画像データを生成し、記憶部52に記憶させる。このようにして、顕微鏡制御部54が試料TPの2次元画像を生成することで、試料TPの画像取得が行われる。以降、全ての実施形態に記載の顕微鏡制御部54による2次元画像生成処理は、同様なので、説明を省略する。
【0027】
なお、試料走査部25を通る照明光により試料TPが走査されるため、試料TPで発生した検出光は、検出光学系31の光軸AX2から外れる場合がある。しかしながら、試料TPで発生した検出光は、対物レンズ28、第2対物レンズ27およびスキャンレンズ26を透過して試料走査部25を通ると、検出光学系31の光軸AX2に沿って進むようになる。以降、光軸から外れた光が光軸に沿って進むようになることをデスキャンと称する場合がある。試料走査部25における検出光のデスキャンによって、試料走査部25により照明光の進行方向が変化するのに拘わらず、集光レンズ33を透過した検出光は、検出用ピンホール板35の位置で集光して検出用ピンホール板35を通過することができる。但し、試料TPにおける照明光の集光位置(すなわち、対物レンズ28の焦点位置)よりz方向にずれた部分から発生する光は、検出用ピンホール板35を通過することができない。従って、本実施形態においては、反射光および散乱光等の照明光の強度に対して線形に応答する検出光を検出する場合であっても、いわゆる背景光である、照明光の集光位置以外の部分から発生する光を除去することができる。
【0028】
挿脱ミラー34が集光レンズ33と検出用ピンホール板35との間の光路に挿入されている場合、集光レンズ33を透過した検出光は、挿脱ミラー34で反射して計測用ピンホール板36に達する。対物レンズ28の焦点位置と共役な位置で集光した検出光は、計測用ピンホール板36を通過して計測用リレーレンズ37を透過し、波面センサ46に入射する。波面センサ46は、波面センサ46に入射した検出光の波面の収差を計測し、計測信号として波面の収差に関するデータを顕微鏡制御部54に送信する。顕微鏡制御部54は、波面センサ46から送信された計測信号に基づいて、試料TPと照明光学系21と検出光学系31で生じる収差のうち、少なくとも一部に関するデータを取得する。
【0029】
なお、試料走査部25における検出光のデスキャンによって、試料走査部25により照明光の進行方向が変化するのに拘わらず、集光レンズ33を透過した検出光は、計測用ピンホール板36の位置で集光して計測用ピンホール板36を通過することができる。但し、試料TPにおける照明光の集光位置よりz方向にずれた部分から発生する光は、計測用ピンホール板36を通過することができない。従って、前述したように、いわゆる背景光である、照明光の集光位置以外の部分から発生する光を除去することができる。また、計測用ピンホール板36は、ローパスフィルタとしても機能し、検出光の波面の高次収差成分を遮断することで、波面センサ46による波面の収差の計測精度を向上させることがで
きる。
【0030】
第1実施形態に係る顕微鏡1において、挿脱ミラー34の代わりにビームスプリッタ(図示せず)が配設され、ビームスプリッタに入射した検出光のうち一部がビームスプリッタを透過して検出器41に到達し、ビームスプリッタに入射した検出光のうち他の一部がビームスプリッタで反射して波面センサ46に到達するように構成されてもよい。
【0031】
第1実施形態に係る顕微鏡1において、コリメータレンズ22、スキャンレンズ26、第2対物レンズ27、対物レンズ28、集光レンズ33、および計測用リレーレンズ37は、複数のレンズから構成されてもよく、反射鏡を含んで構成されてもよい。以降、全ての実施形態に係る顕微鏡の構成の如何に拘わらず、顕微鏡に含まれるレンズは、複数のレンズから構成されてもよく、反射鏡を含んで構成されてもよいので、説明を省略する。また、第1実施形態に係る顕微鏡1において、光源ユニット16と、照明光学系21と、検出光学系31と、検出器41と、波面センサ46は、ステージ11および試料TPの下方に配置されているが、ステージ11および試料TPの上方に配置されていてもよい。以降、全ての実施形態に係る顕微鏡の各部は、ステージ11および試料TPの上方に配置されていてもよいので、説明を省略する。
【0032】
[位相変調ユニットの構成]
次に、
図3を参照しながら、第1実施形態に係る位相変調ユニット60について説明する。
図3に示すように、第1実施形態に係る位相変調ユニット60は、第1リレーレンズ61と、第1ミラー62と、第1位相変調用スキャナ63と、第2リレーレンズ64と、位相変調素子65と、第2位相変調用スキャナ66と、第2ミラー67と、第3リレーレンズ68とを備える。第1リレーレンズ61は、コリメータレンズ22を透過して略平行光となった照明光を集光する。第1ミラー62は、第1リレーレンズ61からの照明光を第1位相変調用スキャナ63に向けて反射させる。
【0033】
第1位相変調用スキャナ63は、試料TPと光学的に共役な位置B1に配置される。第1位相変調用スキャナ63は、反射面の向き(方位角)が1軸回転または2軸回転によって変化するように保持されたミラー(例えば、ガルバノミラーやレゾナントミラー等)を用いて構成される。第1位相変調用スキャナ63は、第1ミラー62で反射した照明光の進行方向を変化させる。これにより、第1位相変調用スキャナ63は、
図3および
図4に示すように、コリメータレンズ22からの照明光により位相変調素子65を走査する。なお、第1位相変調用スキャナ63は、ミラーに限らず、音響光学偏向器(AOD)や電気光学結晶(KTN結晶)等の透過型の偏向器を用いて構成されて、照明光の進行方向を変化させるようにしてもよい。なお書きについては、以降、全ての実施形態に記載の位相変調用スキャナも同様であるので、説明を省略する。
【0034】
第2リレーレンズ64は、位相変調素子65と対向して配置される。第2リレーレンズ64は、第1位相変調用スキャナ63を通った照明光を略平行光にする。第2リレーレンズ64は、位相変調素子65で反射した照明光を集光する。
【0035】
位相変調素子65は、対物レンズ28の瞳位置と光学的に共役な位置H1に配置される。位相変調素子65は、例えば反射型液晶素子や透過型液晶素子等を用いて構成され、表示面において複数の位相変調パターンを縦横またはいずれか一方向に並べて表示する。各実施形態において、照明光や検出光に付与する位相パターンや補償波面等(位相分布)を位相変調パターンと称している。なお、位相変調素子65は、空間位相変調器(SLM:Spatial Light Modulator)やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)-SLM、デフォーマブルミラーを用いて構成されてもよい。なお書きについては、以降、全ての実施形態に記載の位相変調素子も同様であるので、説明を省略する。位相変調素子6
5の表示面には、照明光が照射され得る複数の照射領域が設けられる。位相変調素子65の表示面における複数の照射領域は、複数の位相変調パターンに対応して縦横またはいずれか一方向に並んで設けられる。
【0036】
図5に、複数の照射領域の配置例を示す。
図5の例では、位相変調素子65の表示面に表示される16個の位相変調パターンに対応して、照明光が照射され得る正方形状の16個の照射領域が設けられる。なお、位相変調パターンの数、位相変調素子65の照射領域の数は、試料TPに応じて任意に決めることができる。なお、位相変調パターンの数、照射領域の数については、以降、全ての実施形態で同様であるので、説明を省略する。16個の照射領域のうち(
図5の上から)1行目には、左側から順に、第1照射領域SA1と、第2照射領域SA2と、第3照射領域SA3と、第4照射領域SA4とが設けられる。16個の照射領域のうち(
図5の上から)2行目には、左側から順に、第5照射領域SA5と、第6照射領域SA6と、第7照射領域SA7と、第8照射領域SA8とが設けられる。16個の照射領域のうち(
図5の上から)3行目には、左側から順に、第9照射領域SA9と、第10照射領域SA10と、第11照射領域SA11と、第12照射領域SA12とが設けられる。16個の照射領域のうち(
図5の上から)4行目には、左側から順に、第13照射領域SA13と、第14照射領域SA14と、第15照射領域SA15と、第16照射領域SA16とが設けられる。
【0037】
第1~第16照射領域SA1~SA16は、互いに重ならないように並んで配置される。第1~第16照射領域SA1~SA16のうちいずれかの照射領域に照明光が照射されると、照明光の位相が変化(変調)する。具体的には、照明光が照射された照射領域に設定された位相変調パターンに応じた位相分布が照明光に付与される。また、位相変調素子65において照明光が照射される照射領域(すなわち位相変調パターン)を変えることで、照明光に付与する位相分布(検出光が照射領域に照射される場合、検出光に付与する位相分布)を変えることが可能である。
【0038】
第2位相変調用スキャナ66は、試料TPと光学的に共役な位置B1に配置される。第2位相変調用スキャナ66は、第1位相変調用スキャナ63と同様に構成される。第2位相変調用スキャナ66は、第2リレーレンズ64からの照明光が第2ミラー67に向けて進むように、すなわち第2リレーレンズ64からの照明光が照明光学系21の光軸AX1に沿って進むように照明光の進行方向を変化させる。第2ミラー67は、第2位相変調用スキャナ66を通った照明光を第3リレーレンズ68に向けて反射させる。第3リレーレンズ68は、第2ミラー67で反射した照明光を略平行光にする。なお、第1位相変調用スキャナ63と第2位相変調用スキャナ66に代えて、単一の位相変調用スキャナで構成してもよい。
【0039】
照明光学系21のコリメータレンズ22を透過した照明光は、位相変調ユニット60の第1リレーレンズ61に入射する。第1リレーレンズ61に入射した照明光は、第1リレーレンズ61を透過して第1ミラー62で反射する。第1ミラー62で反射した照明光は、第1位相変調用スキャナ63に入射し、試料TPと光学的に共役な位置B1において一旦集光する。第1位相変調用スキャナ63は、第1位相変調用スキャナ63に入射した照明光により位相変調素子65を走査する。第1位相変調用スキャナ63に入射した照明光は、第1位相変調用スキャナ63を通って第2リレーレンズ64を透過する。第2リレーレンズ64を透過した照明光は、略平行光となり、位相変調素子65における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照射される。
【0040】
照明光が位相変調素子65における複数の照射領域(例えば、第1~第16照射領域SA1~SA16)のうちいずれかの照射領域に照射されると、照明光が照射された照射領域に設定された位相変調パターン(位相分布)に応じて照明光の位相分布が変化する(変
調される)。位相変調素子65における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照射された照明光は、当該照射領域で反射する。なお、第1位相変調用スキャナ63は、第1位相変調用スキャナ63に入射する照明光により位相変調素子65を走査することで、位相変調素子65における複数の照射領域の中で照明光が照射される照射領域を変えることが可能である。
【0041】
位相変調素子65における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照射されて反射した照明光は、第2リレーレンズ64を透過する。第2リレーレンズ64を透過した照明光は、第2位相変調用スキャナ66に入射し、試料TPと光学的に共役な位置B1において一旦集光する。第2位相変調用スキャナ66は、第2リレーレンズ64からの照明光が第2ミラー67に向けて進むように、すなわち第2リレーレンズ64からの照明光が照明光学系21の光軸AX1に沿って進むように照明光の進行方向を変化させる。第2位相変調用スキャナ66に入射した照明光は、第2位相変調用スキャナ66を通って第2ミラー67で反射する。第2ミラー67で反射した照明光は、第3リレーレンズ68を透過し、略平行光となって照明光学系21のダイクロイックミラー24に入射する。このようにして、位相変調ユニット60による照明光に対する位相変調が行われる。
【0042】
なお、第1位相変調用スキャナ63を通る照明光により位相変調素子65が走査されるため、位相変調素子65における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域で反射した照明光は、照明光学系21の光軸AX1から外れる場合がある。しかしながら、複数の照射領域のうちいずれかの照射領域で反射した照明光は、第2リレーレンズ64を透過して第2位相変調用スキャナ66を通ると、照明光学系21の光軸AX1に沿って進むようになる。第2位相変調用スキャナ66における照明光のデスキャンによって、第1位相変調用スキャナ63が照明光の進行方向を変化させて照射領域を変えるのに拘わらず、第3リレーレンズ68を透過した照明光は、略平行光となって照明光学系21のダイクロイックミラー24に入射することができる。
【0043】
前述したように、第1位相変調用スキャナ63は、第1位相変調用スキャナ63に入射する照明光により位相変調素子65を走査することで、位相変調素子65における複数の照射領域の中で照明光が照射される照射領域を変えることが可能である。第1位相変調用スキャナ63は、試料TPにおける顕微鏡観察が行われる観察領域が変位する際に、位相変調素子65において照明光が照射される照射領域を変える。なお、試料TPにおける複数の観察領域ごとに、試料TPと照明光学系21と検出光学系31で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正するための位相変調パターン、すなわち試料TPと照明光学系21と検出光学系31で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正するための所定の位相分布が予め求められている。位相変調素子65は、位相変調素子65の表示面における各照射領域に、対応する観察領域について予め求められた位相変調パターンを表示する。これにより、第1位相変調用スキャナ63が位相変調素子65における照射領域を観察領域ごとに変えることで、観察領域ごとに適切に求められた位相変調パターン(位相分布)に応じて照明光の位相を変化(変調)させることができる。従って、試料TPと照明光学系21と検出光学系31に起因する収差のうち、少なくとも一部が補正された、高画質の試料TPの画像を短時間で取得することが可能になる。
【0044】
図6に、試料TPにおける複数の観察領域の配置例を示す。
図6の例では、顕微鏡1の視野内において試料TPにおける複数の観察領域(例えば、16個の観察領域)が設定される。16個の観察領域のうち(
図6の上から)1行目には、左側から順に、第1観察領域KA1と、第2観察領域KA2と、第3観察領域KA3と、第4観察領域KA4とが設定される。16個の観察領域のうち(
図6の上から)2行目には、左側から順に、第5観察領域KA5と、第6観察領域KA6と、第7観察領域KA7と、第8観察領域KA8とが設定される。16個の観察領域のうち(
図6の上から)3行目には、左側から順に、第
9観察領域KA9と、第10観察領域KA10と、第11観察領域KA11と、第12観察領域KA12とが設定される。16個の観察領域のうち(
図6の上から)4行目には、左側から順に、第13観察領域KA13と、第14観察領域KA14と、第15観察領域KA15と、第16観察領域KA16とが設定される。なお、観察領域の数は、試料TPに応じて任意に決めることができる。なお観察領域の数については、以降、全ての実施形態で同様であるので、説明を省略する。
【0045】
図5および
図6に示す例において、位相変調素子65は、位相変調素子65の第1照射領域SA1に、第1観察領域KA1について予め求められた位相変調パターンを表示する。位相変調素子65は、位相変調素子65の第2照射領域SA2に、第2観察領域KA2について予め求められた位相変調パターンを表示する。位相変調素子65は、位相変調素子65の第3照射領域SA3に、第3観察領域KA3について予め求められた位相変調パターンを表示する。位相変調素子65は、位相変調素子65の第4照射領域SA4に、第4観察領域KA4について予め求められた位相変調パターンを表示する。以下同様に、位相変調素子65は、位相変調素子65の第5~第16照射領域SA5~SA16に、第5~第16観察領域KA5~KA16について予め求められた位相変調パターンを表示する。
【0046】
試料TPにおける第1~第16観察領域KA1~KA16を観察する際、すなわち第1~第16観察領域KA1~KA16の画像を取得する際、まず、第1観察領域KA1の画像を取得する。第1観察領域KA1の画像を取得する際、位相変調ユニット60の第1位相変調用スキャナ63は、位相変調素子65に対する照明光の照射領域を第1照射領域SA1に変える。第2位相変調用スキャナ66は、第1位相変調用スキャナ63と同期して作動し、第1照射領域SA1に照射されて反射した照明光LA1の進行方向を照明光学系21の光軸AX1に沿った方向にする。照明光学系21の試料走査部25は、位相変調素子65の第1照射領域SA1に照射された照明光LA1により、第1観察領域KA1においてラスタスキャンを行う。従って、試料TPにおける第1観察領域KA1に起因する収差が補正された、高画質の第1観察領域KA1の画像を取得することが可能になる。
【0047】
第1観察領域KA1の画像を取得した後、第2観察領域KA2の画像を取得する。第2観察領域KA2の画像を取得する際、位相変調ユニット60の第1位相変調用スキャナ63は、位相変調素子65に対する照明光の照射領域を第1照射領域SA1から第2照射領域SA2に変える。第2位相変調用スキャナ66は、第1位相変調用スキャナ63と同期して作動し、第2照射領域SA2に照射されて反射した照明光LA2の進行方向を照明光学系21の光軸AX1に沿った方向にする。照明光学系21の試料走査部25は、位相変調素子65の第2照射領域SA2に照射された照明光LA2により、第2観察領域KA2においてラスタスキャンを行う。従って、試料TPにおける第2観察領域KA2に起因する収差が補正された、高画質の第2観察領域KA2の画像を取得することが可能になる。
【0048】
以下同様に、第2観察領域KA2の画像を取得した後、第3~第16観察領域KA3~KA16の画像を順に取得する。なお、試料TPにおける観察領域が第3~第16観察領域KA3~KA16に変位する際、位相変調ユニット60の第1位相変調用スキャナ63は、位相変調素子65に対する照明光の照射領域を第3照射領域SA3~第16照射領域SA16に変える。これにより、試料TPにおける第1~第16観察領域KA1~KA16に起因する収差が個々に補正された、高画質の試料TPの画像を短時間で取得することが可能になる。
[画像取得方法]
【0049】
次に、
図7を参照しながら、顕微鏡1を用いた試料TPの画像取得方法について説明する。
図7は、試料TPの画像取得方法の流れを示すフローチャートである。試料TPの画
像を取得するには、まず、試料TPの画像取得条件の設定を行う(ステップST10)。画像取得条件の設定を行う処理において、演算装置51は、インターフェース部53の表示部(図示せず)に、ユーザーに対して画像取得範囲IR(
図2を参照)の設定を促すGUI等の画面を表示させる。画像取得範囲IRは、試料TPの画像を取得する範囲である。画像取得範囲IRは、例えば
図2に示すように、x方向の範囲Rxと、y方向の範囲Ryと、z方向の範囲Rzとを含む。
【0050】
ユーザーがインターフェース部53の入力部(図示せず)に暫定的な画像取得範囲を入力すると、顕微鏡制御部54は、シャッタ18に制御信号を送信して、シャッタ18が開くように制御を行う。また、顕微鏡制御部54は、入力部に入力された暫定的な画像取得範囲に基づいて、ステージ駆動部12に制御信号を送信して、ステージ駆動部12にステージ11を所定位置に移動させる制御を行う。顕微鏡制御部54は、試料走査部25に制御信号を送信して、試料走査部25により変化する照明光および検出光の進行方向を制御する。
【0051】
このとき、前述したように、試料TPにおいて照明光が集光される部分は、試料走査部25によりx方向とy方向との2方向において2次元的に走査される。試料TPで発生した検出光(蛍光)は、検出光学系31を介して検出器41に入射する。検出器41は、検出器41に入射した光(検出光)の光電変換を行い、光の検出信号を顕微鏡制御部54に送信する。顕微鏡制御部54は、検出器41から送信される検出信号に基づいて、試料TPの2次元画像を生成し、生成した2次元画像のデータを記憶部52に記憶させる。またこのとき、顕微鏡制御部54は、対物レンズ保持部29に制御信号を送信して、対物レンズ保持部29に対物レンズ28の焦点位置をz方向に変位させる制御を行う。これにより、顕微鏡制御部54は、z方向の位置が異なる試料TPの複数の断面の2次元画像、すなわちzスタック画像を生成する。例えば
図2に示すように、z方向の位置が異なる第1~第3の2次元画像TI1~TI3を含むzスタック画像が、インターフェース部53の表示部に表示される。
【0052】
ユーザーは、インターフェース部53の表示部に表示された試料TPのzスタック画像を見ながらGUIを利用して、インターフェース部53の入力部に、ステージ11のx位置とy位置、および対物レンズ28の焦点位置を移動させる指示を入力し、所望の画像取得範囲IRを設定する。また、演算装置51は、インターフェース部53の表示部に、ユーザーに2次元画像またはzスタック画像を取得する回数、および画像を取得する時間間隔の設定を促すGUI等の画面を表示させる。ユーザーは、GUIを利用して、インターフェース部53の入力部に、2次元画像またはzスタック画像を取得する回数、および画像を取得する時間間隔を入力して設定する。
【0053】
なお、画像取得範囲IRを設定する方法として、例えば、画像取得範囲IRのx方向の範囲およびy方向の範囲を画像のピクセル数で指定するとともに、画像のピクセルのピッチであるスキャンピッチを指定することで、画像取得範囲IRのx方向の範囲Rxおよびy方向の範囲Ryを設定してもよい。また例えば、取得すべきzスタック画像を構成する、z方向の位置が異なる試料TPの複数の断面の2次元画像の取得枚数と、当該複数の断面の2次元画像同士のz方向の距離を入力することで、画像取得範囲IRのz方向の範囲Rzを設定してもよい。なお、画像取得範囲IRを設定する方法は、これに限られるものではなく、例えば、試料TPの画像を取得する直方体領域のx方向、y方向、およびz方向の長さを指定することで、画像取得範囲IRを設定してもよい。
【0054】
次に、収差計測位置および収差推定位置の決定を行う(ステップST20)。収差計測位置および収差推定位置の決定を行う処理において、画像取得範囲IR内における、試料TPと照明光学系21と検出光学系31で生じる収差の少なくとも一部を計測するNM個
の収差計測位置と、試料TPと照明光学系21と検出光学系31で生じる収差の少なくとも一部を計算から推定するNE個の収差推定位置とを決定する。例えば、
図2に示すように、画像取得範囲IRをグリッド状の複数の領域に分割する。そして、分割した複数の領域のうち、黒丸が描かれた領域PRmの座標位置(例えば、領域PRmの中心の座標位置)を収差計測位置に決定し、白丸が描かれた領域PReの座標位置(例えば、領域PReの中心の座標位置)を収差推定位置に決定してもよい。ここで、分割された各領域PRm,PReのx方向の大きさをPxとし、各領域PRm,PReのy方向の大きさをPyとし、各領域PRm,PReのz方向の大きさをPzとする。各領域PRm,PReの大きさ(Px,Py,Pz)は、当該領域内で収差が同じと見なせる大きさに設定することが望ましい。
【0055】
収差計測位置を決定する方法として、例えば、演算装置51がインターフェース部53の表示部に画像取得範囲IRの全体像を示す画像を表示させ、ユーザーがインターフェース部53の入力部を利用して収差計測位置を指定するようにしてもよい。具体的には、ユーザーが収差計測位置の決定を開始する指令を入力部に入力すると、顕微鏡制御部54は、ステージ11を前述の所定位置に移動させた状態で、先のステップST10で設定した画像取得範囲IRに基づいて試料走査部25を作動させる制御を行う。顕微鏡制御部54は、検出器41から送信される検出信号に基づいて、画像取得範囲IR内の試料TPの画像を生成する。演算装置51は、顕微鏡制御部54により生成された試料TPの画像に各領域PRm,PReの境界を示す線を重ねた画像を、インターフェース部53の表示部に表示させる。画像取得範囲IRの全体像を示す画像は、例えば前述のzスタック画像(z方向の位置が異なる試料TPの複数の断面の2次元画像)であってもよい。
【0056】
ユーザーは、インターフェース部53の表示部に表示された画像取得範囲IR内の試料TPの画像を見ながら、GUIを利用して収差計測位置を指定する。例えば、インターフェース部53の表示部に表示された試料TPの画像における各領域PRmのいずれかにマウスカーソルを移動させ、インターフェース部53の入力部を構成するマウスのボタンをクリック(入力)することにより、収差計測位置を指定してもよい。顕微鏡制御部54は、マウスのボタンのクリックにより入力部に入力された領域PRmの座標位置(すなわち、x位置、y位置、およびz位置)を、収差計測位置として記憶部52に記憶させる。ユーザーは、試料TPの画像における複数の領域PRmに対してマウスのボタンのクリックを繰り返すことで、複数の収差測定位置を指定し、記憶部52は、ユーザーが指定した複数の収差測定位置の座標を記憶する。ここで、ユーザーが指定した収差測定位置の個数をNM個とする。
【0057】
画像取得範囲IRをグリッド状に分割した複数の領域のうち、収差計測位置として決定されなかった残りの領域PReの座標位置が収差推定位置に決定される。分割した複数の領域のうち、一部の領域PRmの収差のみを計測し、残りの領域PReの収差を推定することで、収差の計測に要する時間を短縮することができる。これにより、顕微鏡1の作動時間を短縮することが可能であり、試料TPに対する光毒性を低減させることも可能である。
【0058】
なお、NM個の収差測定位置は、ユーザーによって指定されるが、これに限られるものではなく、自動で決定されるようにしてもよい。例えば、ユーザーが収差計測位置の決定を開始する指令を入力部に入力すると、顕微鏡制御部54は、先のステップST10で設定した画像取得範囲IRに基づいて、zスタック画像(z方向の位置が異なる試料TPの複数の断面の2次元画像)を生成してもよい。演算装置51は、顕微鏡制御部54により生成されたzスタック画像において、例えば、画像取得範囲IRをグリッド状に分割した複数の領域のうち、輝度値が明るい方から順にNM個の領域を収差測定位置として選択し、選択したNM個の領域の座標位置を収差測定位置として記憶部52に記憶させてもよい
。なおこのとき、zスタック画像におけるz方向の範囲を画像取得範囲IRのz方向の範囲Rzより狭くしたり、zスタック画像におけるスキャンピッチを設定値より大きくしたりしてもよい。
【0059】
次に、収差の計測を行っていない収差計測位置への移動を行う(ステップST30)。収差計測位置への移動を行う処理において、顕微鏡制御部54は、ステージ駆動部12に駆動されるステージ11の位置を制御することで、照明光の集光点または中心点を各収差計測位置(x位置、y位置、およびz位置)へ移動させるようにしてもよい。顕微鏡制御部54は、試料走査部25により変化する照明光の進行方向を制御することで、照明光の集光点または中心点を各収差計測位置へ移動させるようにしてもよい。また、顕微鏡制御部54は、対物レンズ保持部29に保持される対物レンズ28の位置を制御することで、対物レンズ28の焦点位置(すなわち、照明光の集光点または中心点)を各収差計測位置(z位置)へ移動させるようにしてもよい。
【0060】
次に、各収差計測位置において、試料TPと照明光学系21と検出光学系31で生じる収差の計測を行う(ステップST40)。収差の計測を行う処理の詳細については、後で説明する。
【0061】
次に、NM個の全ての収差計測位置において収差の計測を行っているか否かを判定する(ステップST50)。判定がNOの場合、すなわち、収差の計測を行っていない収差計測位置が存在する場合、ステップST30に戻る。一方、判定がYESの場合、すなわち、全ての収差計測位置において収差の計測を行っている場合、ステップST60に進む。
【0062】
次のステップST60では、各収差推定位置において、試料TPと照明光学系21と検出光学系31で生じる収差の推定を行う。収差を推定する方法として、例えば、着目する収差推定位置とNM個の収差計測位置との距離について重み付けを行った、収差の加重平均を用いることができる。NM個の収差計測位置のうち、m番目の収差計測位置近傍の領域において計測された収差の位相分布をφm(xp,yp)とする。NE個の収差推定位置のうち、k番目の収差推定位置の領域における収差の位相分布をψk(xp,yp)とする。m番目の収差計測位置とk番目の収差推定位置との距離をdmkとする。ここで、(xp,yp)は、瞳面(対物レンズ28の瞳位置と光学的に共役な位置における光軸と垂直な面)における(x,y)座標を表す。このとき、k番目の収差推定位置の領域における収差の位相分布ψk(xp,yp)は、次の式(1)を用いて算出されるようにしてもよい。
【0063】
【0064】
なお、収差を推定する方法は、上述した方法に限られるものではない。例えば、NM個の収差計測位置において計測された収差に基づいて、視野の位置に応じて変化する収差を表現する収差のモデルのパラメータを決定し、決定した収差のモデルのパラメータに基づいてNE個の収差推定位置における収差を算出するようにしてもよい。
【0065】
次に、試料TPの2次元画像の取得を行う(ステップST70)。試料TPの2次元画像の取得を行う処理において、顕微鏡制御部54は、先のステップST30~ST50で計測した収差および、先のステップST60で推定した収差に基づいて、試料TPと照明
光学系21と検出光学系31で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正するために照明光に付与する位相変調パターンを決定する。顕微鏡制御部54は、求めた位相変調パターンを位相変調素子65に表示させる制御を行う。また、顕微鏡制御部54は、対物レンズ保持部29に保持される対物レンズ28の位置を制御して、対物レンズ28の焦点位置を2次元画像の取得を行うz位置へ変位させる。その後、上述の実施形態で述べたようにして、顕微鏡制御部54が試料TPの2次元画像を生成する。
【0066】
次に、画像取得範囲IRにおける全てのz位置において試料TPの2次元画像を取得して、試料TPのzスタック画像を生成したか否かを判定する(ステップST80)。判定がNOの場合、すなわち、試料TPの2次元画像を取得していないz位置が存在する場合、ステップST70に戻る。一方、判定がYESの場合、すなわち、全てのz位置において試料TPの2次元画像を取得して、試料TPのzスタック画像を生成した場合、先のステップST10で設定した時間間隔を置いてステップST90に進む。
【0067】
次のステップST90では、先のステップST10で設定した時間間隔で、先のステップST10で設定した設定回数だけ試料TPのzスタック画像を取得したか否かを判定する。判定がNOの場合、すなわち、設定回数だけ試料TPのzスタック画像を取得していない場合、ステップST70に戻る。一方、判定がYESの場合、すなわち、設定回数だけ試料TPのzスタック画像を取得した場合、処理を終了する。このようにして、試料TPのzスタック画像を取得することができる。また、所定の時間間隔で取得された試料TPのzスタック画像からなる、試料TPのタイプラプス動画を生成することができる。
【0068】
[収差の計測]
次に、
図8を参照しながら、収差の計測を行う処理について説明する。
図8は、収差の計測を行う処理の流れを示すフローチャートである。収差の計測を行う処理において、まず、集光レンズ33と検出用ピンホール板35との間の光路への挿脱ミラー34の挿入を行う(ステップST401)。挿脱ミラー34の挿入を行う処理において、顕微鏡制御部54は、挿脱ミラー34を集光レンズ33と検出用ピンホール板35との間の光路に挿入する制御を行う。
【0069】
次に、波面センサ46で検出光の受光を行う(ステップST402)。このとき、顕微鏡制御部54は、シャッタ18に制御信号を送信して、シャッタ18が開くように制御を行う。これにより、光源ユニット16から射出された照明光は、照明光学系21を介して試料TPにおける収差計測位置に集光される。挿脱ミラー34が集光レンズ33と検出用ピンホール板35との間の光路に挿入されている場合、試料TPにおける収差計測位置で発生した検出光(蛍光)は、前述したように、挿脱ミラー34で反射して波面センサ46に入射する。波面センサ46は、波面センサ46に入射した検出光の波面の収差を計測し、計測信号として波面の収差に関するデータを顕微鏡制御部54に送信する。顕微鏡制御部54は、波面センサ46から送信された計測信号に基づいて、試料TPと検出光学系31で生じる収差の少なくとも一部に関するデータを取得する。
【0070】
なおこのとき、顕微鏡制御部54は、試料走査部25に制御信号を送信して、収差計測位置近傍の領域における最も明るい部分を照明するように照明光の進行方向を制御してもよい。波面センサ46の受光中に、顕微鏡制御部54は、試料走査部25に制御信号を送信して、収差計測位置近傍の領域を2次元的に走査するように照明光の進行方向を制御してもよい。
【0071】
次に、集光レンズ33と検出用ピンホール板35との間の光路からの挿脱ミラー34の離脱を行い(ステップST403)、処理を終了する。挿脱ミラー34の離脱を行う処理において、顕微鏡制御部54は、挿脱ミラー34を集光レンズ33と検出用ピンホール板
35との間の光路から離脱させる制御を行う。
【0072】
以上説明したように、第1実施形態によれば、位相変調ユニット60は、照明光が照射され得る複数の照射領域を有し、複数の照射領域における照明光の照射位置に応じて照明光に対して位相分布を付与する位相変調素子65と、照明光が照射される照射領域を変える第1位相変調用スキャナ63とを有している。第1位相変調用スキャナ63により、位相変調素子65に対する照明光の照射領域を変えることで、照明光の位相を変化させる位相変調パターンを変更するようにすれば、位相変調素子65で表示する位相変調パターンを切り替える場合よりも、短時間で位相変調パターンを変更することができる。従って、試料TPにおける観察領域が変位する際に、位相変調素子65に対する照明光の照射領域を変えることで、試料TPにおける複数の観察領域に起因する収差が個々に補正された、高画質の試料TPの画像を短時間で取得することが可能になる。
【0073】
また、位相変調ユニット60は、第1位相変調用スキャナ63が位相変調素子65に対する照明光の照射領域を変えるのに拘わらず、照射領域に照射されて位相が変化した照明光の進行方向を一定の方向(照明光学系21の光軸AX1に沿った方向)にする第2位相変調用スキャナ66を有している。これにより、照明光の光路を変えることなく、照明光の位相のみを変化させることができる。
【0074】
また、位相変調素子65における複数の照射領域は、互いに重ならないようになっている。これにより、試料TPの画像取得範囲ごとに適切な位相変調パターンを設けることができる。
【0075】
[収差の計測の変形例]
第1実施形態に係る顕微鏡1において、波面センサ46、挿脱ミラー34、計測用ピンホール板36、および計測用リレーレンズ37が設けられているが、これに限られるものではない。例えば、波面センサ46、挿脱ミラー34、計測用ピンホール板36、および計測用リレーレンズ37を設けずに、検出器41に入射する検出光に基づいて、試料TPと照明光学系21と検出光学系31で生じる収差の計測を行うようにしてもよい。
【0076】
次に、
図9を参照しながら、収差の計測を行う処理の変形例について説明する。変形例に係る収差の計測を行う処理では、位相変調素子65に表示させる位相変調パターンを変更し、複数の位相変調パターンにおいて検出される検出光に基づいて収差を求める。変形例に係る収差の計測を行う処理では、基底関数の線形和で瞳面における位相変調パターンを表現する。
【0077】
本変形例において、瞳面におけるx方向およびy方向の座標を(xP,yP)とする。基底関数のうちm番目の項をhm(xP,yP)とする。基底関数のうちm番目の項の係数をbmとする。また、基底関数のうちのm番目の成分を基底関数の「モードm」とも称する。基底関数として、例えば、Zernike多項式やLegendre多項式、三角関数、ウェーブ
レット関数等を用いることができる。後述する各ステップST451~ST462の処理を実行すると、ND個の係数b1,b2,…bNDの値が記憶部52に記憶される。
【0078】
図9は、変形例に係る収差の計測を行う処理の流れを示すフローチャートである。収差の計測を行う処理において、まず、初期設定を行う(ステップST451)。初期設定を行う処理において、顕微鏡制御部54は、基底関数の各モードの係数の値を初期値に設定し、記憶部52に記憶させる。具体的には、b
m=0(m=1,2,…ND)に設定する。また、収差計測の繰り返し回数itr(itr=1,2,…NI)について、itr=1に設定する。基底関数の各モードのうち着目するモードm´(m´=1,2,…ND)について、m´=1に設定する。位相変調パターンの設定番号j(j=1,2,…NJ)
について、j=1に設定する。
【0079】
次に、基底関数の各モードのうち着目するモードm´の係数の設定を行う(ステップST452)。具体的には、顕微鏡制御部54は、基底関数のモードm´のNJ個の係数bm´(j)(j=1,2,…NJ)の値を設定する。基底関数のモードm´の係数bm´(
j)の値について、例えば、所定の数値範囲を等間隔に分割して設定してもよい。また、
繰り返し回数itrに応じて、前述の数値範囲を変更してもよい。例えば、繰り返し回数itrが増えるごとに数値範囲を狭めることで、基底関数の各モードmの係数bmの値を精度よく求めることが可能である。また、顕微鏡制御部54は、現在の基底関数のモードmの係数bmの値をb_oldとして記憶部52に記憶させる。
【0080】
次に、位相変調素子65に表示させる位相変調パターンの設定を行う(ステップST453)。位相変調パターンの設定を行う処理において、顕微鏡制御部54は、NJ個の位相変調パターンΨj(xP,yP)(j=1,2,…NJ)を設定する。j番目の位相変調パターンΨj(xP,yP)は、基底関数の各モードのうち着目するモードm´の係数bm´(j)の値のみを変更した位相変調パターンであり、次式(2)で表される。
【0081】
【0082】
式(2)において、bmhm(xP,yP)の和は、m=m´の場合を除く、m=1からNJまでの和である。係数bmの値は、記憶部52に記憶された現在の基底関数のモードmの係数bmの値(b_old)を用いる。
【0083】
次に、位相変調素子65に表示させる位相変調パターンの変更を行う(ステップST454)。位相変調パターンの変更を行う処理において、顕微鏡制御部54は、位相変調素子65に表示させる位相変調パターンをj番目の位相変調パターンΨj(xP,yP)に変更する。
【0084】
次に、検出器41により検出光の検出を行う(ステップST455)。このとき、顕微鏡制御部54は、シャッタ18に制御信号を送信して、シャッタ18が開くように制御を行う。これにより、光源ユニット16から射出された照明光は、照明光学系21を介して試料TPにおける収差計測位置に集光される。試料TPにおける収差計測位置で発生した検出光(蛍光)は、照明光学系21を介して検出器41に入射する。検出器41は、検出器41に入射した光(検出光)の光電変換を行い、光の検出信号を顕微鏡制御部54に送信する。
【0085】
顕微鏡制御部54は、検出器41から送信される検出信号に基づいて、評価値V(j)を算出し、算出した評価値V(j)のデータを記憶部52に記憶させる。評価値V(j)として、例えば、検出器41から送信される検出信号の積算値を用いてもよい。
【0086】
また例えば、波面センサ46の受光中に、顕微鏡制御部54は、試料走査部25に制御信号を送信して、収差計測位置近傍の領域を2次元的に走査するように照明光の進行方向を制御してもよい。この場合、顕微鏡制御部54は、検出器41から送信される検出信号に基づいて、収差計測位置近傍の領域の2次元画像を生成し、生成した2次元画像に基づいて、評価値V(j)を算出してもよい。画像に基づく評価値V(j)として、例えば、画像のコントラスト、最大輝度値、輝度値の標準偏差、または画像をフーリエ変換した際
の所定の周波数領域のパワースペクトルの積算値のうち、少なくとも1つを用いてもよい。また、画像に基づく評価値V(j)として、収差計測位置近傍の領域を複数回走査して取得した、複数枚の画像間の相関値を用いてもよい。画像に基づく評価値V(j)として、公知文献「Fourier ring correlation simplifies image restoration in fluorescence microscopy, nature communications 10, Article number : 3103(2019)」に基づいて算出した、画像のカットオフ周波数を用いてもよい。
【0087】
次に、j=NJであるか否かを判定する(ステップST456)。判定がNOの場合、すなわち、j≠NJの場合、ステップST457に進む。ステップST457において、j=j+1に設定し、ステップST454に戻る。これにより、先のステップST453で設定したNJ個の位相変調パターンのうち、残りの位相変調パターンについて評価値V(j)が算出される。
【0088】
一方、ステップST456における判定がYESの場合、すなわち、j=NJの場合、ステップST458に進む。ステップST458において、NJ個の位相変調パターンについて算出した評価値V(j)に基づいて、基底関数のモードmの係数値bm*を決定する。係数値bm*を決定すると、記憶部52に記憶されている基底関数のモードmの係数bmの値を係数値bm*に更新する。
【0089】
係数値bm*として、例えば、評価値V(j)が最大となる場合のjに対応するモードm´の係数bm´(j)の値を選択してもよい。また、係数値bm*として、評価値V(j)をモードm´の係数bm´(j)を引数とする関数として表して、評価値V(j)のデータ点で補間を行い、評価値V(j)が最大となる場合のモードm´の係数bm´(j)の値を求めてもよい。評価値V(j)のデータ点で補間を行う方法として、例えば、ラグランジュ補間やニュートン補間、エルミート補間、スプライン補間等を用いることが可能である。また、係数値bm*として、評価値V(j)の関数近似に基づいて、評価値V(j)が最大となる場合の係数値を算出してもよい。評価値V(j)の関数近似を行う関数として、例えば、2次関数やガウス関数等を用いることが可能である。
【0090】
次のステップST459において、m´=NDであるか否かを判定する。判定がNOの場合、すなわち、m´≠NDの場合、ステップST460に進む。ステップST460において、m´=m´+1に設定し、ステップST452に戻る。これにより、基底関数の各モードmのうち、残りのモードmの係数bmの値が算出される。
【0091】
一方、ステップST459における判定がYESの場合、すなわち、m´=NDの場合、ステップST461に進む。ステップST461において、itr=NIであるか否かを判定する。判定がNOの場合、すなわち、itr≠NIの場合、ステップST462に進む。ステップST462において、itr=itr+1に設定し、ステップST452に戻る。これにより、各モードmの係数値bm*の決定を複数回行うことで、基底関数の各モードmの係数bmの値をより適切な値にすることができる。
【0092】
一方、ステップST462における判定がYESの場合、すなわち、itr=NIの場合、処理を終了する。このような方法でも、収差(位相変調パターン)の計測を行うことができる。なお、収差の計測を行う方法は、上述の2つの方法に限られるものではなく、例えば、米国特許第8866107号明細書で開示される方法を用いるようにしてもよい。
【0093】
[位相変調ユニットの変形例]
次に、
図10を参照しながら、第1実施形態における位相変調ユニットの変形例について説明する。
図10に示すように、第1実施形態の変形例に係る位相変調ユニット80は
、ビームスプリッタ86と、第1リレーレンズ81と、ミラー82と、位相変調用スキャナ83と、第2リレーレンズ84と、位相変調素子65とを有する。ビームスプリッタ86の透過率と反射率の比率は、例えば1:1に設定される。照明光学系21のコリメータレンズ22からビームスプリッタ86に入射した光の一部は、当該ビームスプリッタ86を透過して第1リレーレンズ81に入射する。第1リレーレンズ81からビームスプリッタ86に入射した光の一部は、当該ビームスプリッタ86で反射して照明光学系21のダイクロイックミラー24に入射する。
【0094】
第1リレーレンズ81は、ビームスプリッタ86から第1リレーレンズ81に入射した照明光を集光する。第1リレーレンズ81は、ミラー82から第1リレーレンズ81に入射した照明光を略平行光にする。ミラー82は、第1リレーレンズ81からミラー82に入射した照明光を位相変調用スキャナ83に向けて反射させる。ミラー82は、位相変調用スキャナ83からミラー82に入射した照明光を第1リレーレンズ81に向けて反射させる。
【0095】
位相変調用スキャナ83は、試料TPと光学的に共役な位置B2に配置される。位相変調用スキャナ83は、反射面の向き(方位角)が1軸回転または2軸回転によって変化するように保持されたミラー(例えば、ガルバノミラーやレゾナントミラー等)を用いて構成される。位相変調用スキャナ83は、ミラー82から位相変調用スキャナ83に入射した照明光の進行方向を変化させる。これにより、位相変調用スキャナ83は、コリメータレンズ22からの照明光により位相変調素子65を走査する。
【0096】
また、位相変調用スキャナ83は、第2リレーレンズ84から位相変調用スキャナ83に入射した照明光がミラー82に向けて進むように、すなわち第2リレーレンズ84からの照明光が照明光学系21の光軸AX1に沿って進むように照明光の進行方向を変化させる。
【0097】
第2リレーレンズ84は、位相変調用スキャナ83を通った照明光を略平行光にする。第2リレーレンズ84は、位相変調素子65で反射した照明光を集光する。位相変調素子65は、対物レンズ28の瞳位置と光学的に共役な位置H2に配置される。位相変調素子65は、第1実施形態に係る位相変調素子65と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0098】
照明光学系21のコリメータレンズ22を透過した照明光は、位相変調ユニット80のビームスプリッタ86に入射する。コリメータレンズ22からビームスプリッタ86に入射した照明光の一部は、当該ビームスプリッタ86を透過して第1リレーレンズ81に入射する。第1リレーレンズ81に入射した照明光は、第1リレーレンズ81を透過してミラー82で反射する。ミラー82で反射した照明光は、位相変調用スキャナ83に入射し、試料TPと光学的に共役な位置B2において一旦集光する。位相変調用スキャナ83は、位相変調用スキャナ83に入射した照明光により位相変調素子65を走査する。ミラー82から位相変調用スキャナ83に入射した照明光は、位相変調用スキャナ83を通って第2リレーレンズ84を透過する。第2リレーレンズ84を透過した照明光は、略平行光となり、位相変調素子65における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照射される。
【0099】
照明光が位相変調素子65における複数の照射領域(例えば、第1~第16照射領域SA1~SA16)のうちいずれかの照射領域に照射されると、照明光が照射された照射領域における位相変調パターンに応じて照明光の位相が変化する。位相変調素子65における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照射された照明光は、当該照射領域で反射する。なお、位相変調用スキャナ83は、位相変調用スキャナ83に入射する照明光によ
り位相変調素子65を走査することで、位相変調素子65における複数の照射領域の中で照明光が照射される照射領域を変えることが可能である。
【0100】
位相変調素子65における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照射されて反射した照明光は、第2リレーレンズ84を透過する。第2リレーレンズ84を透過した照明光は、位相変調用スキャナ83に入射し、試料TPと光学的に共役な位置B2において一旦集光する。位相変調用スキャナ83は、第2リレーレンズ84からの照明光がミラー82に向けて進むように、すなわち第2リレーレンズ84からの照明光が照明光学系21の光軸AX1に沿って進むように照明光の進行方向を変化させる。第2リレーレンズ84から位相変調用スキャナ83に入射した照明光は、位相変調用スキャナ83を通ってミラー82で反射する。ミラー82で反射した照明光は、第1リレーレンズ81を透過し、略平行光となってビームスプリッタ86に入射する。第1リレーレンズ81からビームスプリッタ86に入射した照明光の一部は、当該ビームスプリッタ86で反射して照明光学系21のダイクロイックミラー24に入射する。これにより、第1実施形態に係る位相変調ユニット60の場合と同様にして、照明光に対する位相変調が行われる。
【0101】
[第2実施形態]
次に、
図11を参照しながら、第2実施形態に係る顕微鏡101について説明する。第2実施形態に係る顕微鏡101は、走査型顕微鏡とも称される。第2実施形態に係る顕微鏡101は、ステージ11と、光源ユニット16と、照明光学系121と、検出光学系131と、検出器41と、波面センサ46と、演算装置51と、記憶部52と、インターフェース部53と、顕微鏡制御部54とを備える。ステージ11および光源ユニット16は、第1実施形態に係るステージ11および光源ユニット16と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0102】
照明光学系121は、光源ユニット16から射出された照明光(励起光)で試料TPを照明する。照明光学系121は、光源ユニット16側から順に、コリメータレンズ122と、ダイクロイックミラー123と、位相変調ユニット60と、試料走査部125と、スキャンレンズ126と、第2対物レンズ127と、対物レンズ128とを有する。照明光学系121に含まれるコリメータレンズ122と、ダイクロイックミラー123と、試料走査部125と、スキャンレンズ126と、第2対物レンズ127と、対物レンズ128の各構成、各機能は、第1実施形態の顕微鏡の照明光学系21に含まれるコリメータレンズ22と、ダイクロイックミラー24と、試料走査部25と、スキャンレンズ26と、第2対物レンズ27と、対物レンズ28と同様なので、説明を省略する。
【0103】
また、検出光学系131は、試料TPで発生した光を検出光として受光する。検出光学系131は、試料TP側から順に、対物レンズ128と、第2対物レンズ127と、スキャンレンズ126と、試料走査部125と、位相変調ユニット60と、ダイクロイックミラー123とを含み、位相変調ユニット60が、試料走査部125とダイクロイックミラー123との間に配置されている点が、第1実施形態とは異なる。
【0104】
位相変調ユニット60は、第1実施形態に係る位相変調ユニット60と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。第2実施形態において、位相変調ユニット60は、ダイクロイックミラー123を透過した照明光に対して位相変調を行うとともに、試料走査部125を通った検出光に対して位相変調を行い、試料TPと照明光学系121と検出光学系131で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正する。
【0105】
さらに、検出光学系131は、ダイクロイックミラー123側から順に、検出フィルタ132と、集光レンズ133と、挿脱ミラー134と、検出用ピンホール板135とを有
する。また、検出光学系131は、計測用ピンホール板136と、計測用リレーレンズ137とを有するが、これらの各機能、各構成は、第1実施形態と同様なので、説明を省略する。このように、対物レンズ128と、第2対物レンズ127と、スキャンレンズ126と、試料走査部125と、位相変調ユニット60と、ダイクロイックミラー123は、照明光学系121と検出光学系131の両方に含まれている。
【0106】
検出器41および波面センサ46は、第1実施形態に係る検出器41および波面センサ46と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。また、演算装置51、記憶部52、インターフェース部53、および顕微鏡制御部54は、第1実施形態に係る演算装置51、記憶部52、インターフェース部53、および顕微鏡制御部54と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0107】
第2実施形態に係る顕微鏡101では、光源ユニット16の光源17から射出された照明光(励起光)は、照明光学系121のコリメータレンズ122を透過して略平行光になり、ダイクロイックミラー123に入射し、ダイクロイックミラー123を透過して位相変調ユニット60に入射する点が第1実施形態とは異なる。試料TPにおいて照明光(励起光)が集光される部分に含まれる蛍光物質から、検出光として蛍光が発光する。また、試料TPで発生した検出光(蛍光)は、検出光学系131としての対物レンズ128、第2対物レンズ127、スキャンレンズ126、試料走査部125を介して、位相変調ユニット60に入射する点も第1実施形態とは異なる。検出光が位相変調ユニット60に入射すると、位相変調ユニット60は、入射した検出光に対して位相変調を行い、位相変調を行った検出光を射出させる。位相変調ユニット60から射出された略平行光である検出光は、ダイクロイックミラー123に入射する。
【0108】
第2実施形態に係る顕微鏡101において、挿脱ミラー134の代わりにビームスプリッタ(図示せず)が配設され、ビームスプリッタに入射した検出光のうち一部がビームスプリッタを透過して検出器41に到達し、ビームスプリッタに入射した検出光のうち他の一部がビームスプリッタで反射して波面センサ46に到達するように構成されてもよい。
【0109】
第2実施形態に係る顕微鏡101において、照明光学系121のダイクロイックミラー123を透過した照明光は、位相変調ユニット60の第1リレーレンズ61に入射するが、その後は第1実施形態と同様なので、説明を省略する。なお、位相変調素子65における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域で反射した照明光は、第2リレーレンズ64を透過して第2位相変調用スキャナ66を通ると、照明光学系121の光軸AX11に沿って進むようになる。
【0110】
また、検出光学系131としての試料走査部125を通った検出光は、位相変調ユニット60の第3リレーレンズ68に入射する。第3リレーレンズ68に入射した検出光は、照明光とは逆の順で、第3リレーレンズ68と、第2ミラー67と、第2位相変調用スキャナ66と、第2リレーレンズ64を通って、位相変調素子65における複数の照射領域のうち照明光と同じ照射領域に照射される。
【0111】
検出光が位相変調素子65における照明光と同じ照射領域に照射されると、当該照射領域における位相変調パターンに応じて検出光の位相が変化する。位相変調素子65における照明光と同じ照射領域に照射された検出光は、当該照射領域で反射する。
【0112】
位相変調素子65における照明光と同じ照射領域に照射されて反射した検出光は、第2リレーレンズ64と、第1位相変調用スキャナ63を通って第1ミラー62で反射する。第1ミラー62で反射した検出光は、第1リレーレンズ61を透過し、略平行光となって
検出光学系131としてのダイクロイックミラー123に入射する。このようにして、位相変調ユニット60による検出光に対する位相変調が行われる。
【0113】
なお、位相変調素子65における照明光と同じ照射領域で反射した検出光は、第2リレーレンズ64を透過して第1位相変調用スキャナ63を通ると、検出光学系131の光軸AX12に沿って進むようになる。第1位相変調用スキャナ63における検出光のデスキャンによって、第2位相変調用スキャナ66(および第1位相変調用スキャナ63)が検出光の進行方向を変化させて照射領域を変えるのに拘わらず、第1リレーレンズ61を透過した検出光は、略平行光となって検出光学系131としてのダイクロイックミラー123に入射することができる。
【0114】
第1位相変調用スキャナ63および第2位相変調用スキャナ66は、照明光および検出光により位相変調素子65を走査することで、位相変調素子65における複数の照射領域の中で照明光および検出光が照射される照射領域を変えることが可能である。第1位相変調用スキャナ63および第2位相変調用スキャナ66は、試料TPにおける顕微鏡観察が行われる観察領域が変位する際に、位相変調素子65において照明光および検出光が照射される照射領域を変える。なお、試料TPにおける複数の観察領域ごとに、試料TPと照明光学系121と検出光学系131で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正するための位相変調パターン、すなわち試料TPと照明光学系121と検出光学系131で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正するための所定の位相分布が予め求められている。位相変調素子65は、位相変調素子65の表示面における各照射領域に、対応する観察領域について予め求められた位相変調パターンを表示する。これにより、第1位相変調用スキャナ63および第2位相変調用スキャナ66が位相変調素子65における照射領域を観察領域ごとに変えることで、観察領域ごとに適切に求められた位相変調パターン(位相分布)に応じて照明光の位相を変化(変調)させることができる。従って、試料TPと照明光学系121と検出光学系131に起因する収差の少なくとも一部が補正された、高画質の試料TPの画像を短時間で取得することが可能になる。
【0115】
また、第2実施形態に係る顕微鏡101を用いても、第1実施形態で述べた画像取得方法により、試料TPの画像を取得することが可能である。従って、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第2実施形態によれば、位相変調ユニット60により、照明光に対する位相変調に加え、検出光に対する位相変調が行われるため、より高画質の試料TPの画像を短時間で取得することが可能になる。
【0116】
第2実施形態に係る顕微鏡101において、例えば、波面センサ46、挿脱ミラー134、計測用ピンホール板136、および計測用リレーレンズ137を設けずに、検出器41に入射する検出光に基づいて、試料TPと照明光学系121と検出光学系131で生じる収差の少なくとも一部の計測を行うようにしてもよい。この場合、第1実施形態で述べた収差の計測を行う処理の変形例により、収差(位相変調パターン)の計測を行うようにしてもよい。
【0117】
第2実施形態に係る顕微鏡101において、位相変調ユニット60に代えて、第1実施形態の変形例に係る位相変調ユニット80が設けられるようにしてもよい。上述の第2実施形態の場合と同様にして、第1実施形態の変形例に係る位相変調ユニット80により、照明光および検出光に対する位相変調を行うことが可能である。
【0118】
[第3実施形態]
次に、
図12を参照しながら、第3実施形態に係る顕微鏡201について説明する。第3実施形態に係る顕微鏡201は、走査型顕微鏡とも称される。第3実施形態に係る顕微鏡201は、ステージ11と、光源ユニット16と、照明光学系221と、検出光学系2
31と、検出器41と、波面センサ46と、演算装置51と、記憶部52と、インターフェース部53と、顕微鏡制御部54とを備える。ステージ11および光源ユニット16は、第1実施形態に係るステージ11および光源ユニット16と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0119】
照明光学系221は、光源ユニット16から射出された照明光(励起光)で試料TPを照明する。照明光学系221は、光源ユニット16側から順に、コリメータレンズ222と、位相変調ユニット60と、第1ダイクロイックミラー224と、試料走査部225と、スキャンレンズ226と、第2対物レンズ227と、第2ダイクロイックミラー228と、対物レンズ229とを有する。照明光学系221に含まれるコリメータレンズ222と、ダイクロイックミラー224と、試料走査部225と、スキャンレンズ226と、第2対物レンズ227と、対物レンズ229の各構成、各機能は、第1実施形態の顕微鏡の照明光学系21に含まれるコリメータレンズ22と、ダイクロイックミラー24と、試料走査部25と、スキャンレンズ26と、第2対物レンズ27と、対物レンズ28と同様なので、説明を省略する。
【0120】
位相変調ユニット60は、第1実施形態に係る位相変調ユニット60と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。第3実施形態において、位相変調ユニット60は、コリメータレンズ222を透過した照明光に対して位相変調を行い、試料TPと照明光学系221で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正する。
【0121】
検出光学系231は、試料TPで発生した光を検出光として受光する。検出光学系231は、試料TP側から順に、対物レンズ229と、第2ダイクロイックミラー228と、第2対物レンズ227と、スキャンレンズ226と、試料走査部225と、第1ダイクロイックミラー224とを含む。さらに、検出光学系231は、第2ダイクロイックミラー228側から順に、第1検出用リレーレンズ232と、第2検出用リレーレンズ233と、検出フィルタ234とを有する。また、検出光学系231は、第1ダイクロイックミラー224側から順に、計測用フィルタ235と、集光レンズ236と、計測用ピンホール板237と、計測用リレーレンズ238とを有するが、これらの各機能、各構成は、第1実施形態と同様なので、説明を省略する。このように、対物レンズ229と、第2ダイクロイックミラー228と、第2対物レンズ227と、スキャンレンズ226と、試料走査部225と、第1ダイクロイックミラー224は、照明光学系221と検出光学系231の両方に含まれている。
【0122】
なお、第2ダイクロイックミラー228は、対物レンズ229と第2対物レンズ227との間の光路に対して挿脱可能に配設される。第2ダイクロイックミラー228が対物レンズ229と第2対物レンズ227との間の光路に挿入される場合、光源ユニット16からの照明光は、第2ダイクロイックミラー228を透過して対物レンズ229に入射し、試料TPからの検出光は、第2ダイクロイックミラー228で反射して第1検出用リレーレンズ232に入射する。第2ダイクロイックミラー228が対物レンズ229と第2対物レンズ227との間の光路から離脱する場合、光源ユニット16からの照明光は、対物レンズ229に入射し、試料TPからの検出光は、第2対物レンズ227に入射する。
【0123】
第1検出用リレーレンズ232は、試料TPからの検出光を集光する。第2検出用リレーレンズ233は、試料TPからの検出光を再び略平行光にする。検出フィルタ234は、試料TPで発生した光のうち所定の波長帯の光(例えば、蛍光)を透過させる。検出フィルタ234は、例えば、試料TPで反射した照明光、外光、および迷光等の少なくとも一部を遮る。検出器41は、試料TPからの検出光を検出する。
【0124】
検出器41および波面センサ46は、第1実施形態に係る検出器41および波面センサ46と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。また、演算装置51、記憶部52、インターフェース部53、および顕微鏡制御部54は、第1実施形態に係る演算装置51、記憶部52、インターフェース部53、および顕微鏡制御部54と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0125】
第3実施形態において、顕微鏡制御部54は、試料走査部225に制御信号を送信して、試料走査部225により変化する照明光および検出光の進行方向を制御する。顕微鏡制御部54は、対物レンズ保持部230に制御信号を送信して、対物レンズ保持部230に保持される対物レンズ229の位置を制御する。顕微鏡制御部54は、第2ダイクロイックミラー228に制御信号を送信して、第2ダイクロイックミラー228の挿脱を制御する。
【0126】
光源ユニット16の光源17から射出された照明光(励起光)は、照明光学系221のコリメータレンズ222、位相変調ユニット60、第1ダイクロイックミラー224、試料走査部225、スキャンレンズ226、および第2対物レンズ227を経て、第2ダイクロイックミラー228に到達する点は、第1実施形態と同様である。
【0127】
第2ダイクロイックミラー228が対物レンズ229と第2対物レンズ227との間の光路に挿入されている場合、照明光は、第2ダイクロイックミラー228を透過して対物レンズ229に入射する。対物レンズ229に入射した照明光は、対物レンズ229を透過し、対物レンズ229の焦点面に集光される。試料TPにおいて照明光が集光される部分(すなわち、対物レンズ229の焦点面と重なる部分)は、試料走査部225によりx方向とy方向との2方向において2次元的に走査される。
【0128】
試料TPにおいて照明光(励起光)が集光される部分に含まれる蛍光物質から、検出光として蛍光が発光する。試料TPで発生した検出光(蛍光)は、検出光学系231としての対物レンズ229に入射する。対物レンズ229に入射した検出光は、対物レンズ229を透過し、第2ダイクロイックミラー228に入射する。第2ダイクロイックミラー228に入射した検出光(蛍光)は、照明光(励起光)と波長が異なるため、第2ダイクロイックミラー228で反射して第1検出用リレーレンズ232および第2検出用リレーレンズ233を透過する。第1検出用リレーレンズ232および第2検出用リレーレンズ233を透過した蛍光は、検出フィルタ234を通って検出器41に入射する。検出器41の機能、構成は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0129】
第2ダイクロイックミラー228が対物レンズ229と第2対物レンズ227との間の光路から離脱している場合、スキャンレンズ226および第2対物レンズ227を透過した照明光は、対物レンズ229に入射して透過し、対物レンズ229の焦点面に集光される。試料TPで発生した検出光(蛍光)は、検出光学系231としての対物レンズ229に入射して透過し、第2対物レンズ227およびスキャンレンズ226を透過して試料走査部225に入射するが、その後、波面センサ46に入射するまでは、第1実施形態と同様なので、説明を省略する。波面センサ46は、波面センサ46に入射した検出光の波面の収差を計測し、計測信号として波面の収差に関するデータを顕微鏡制御部54に送信する。顕微鏡制御部54は、波面センサ46から送信された計測信号に基づいて、試料TPと検出光学系231で生じる収差の少なくとも一部に関するデータを取得する。
【0130】
第3実施形態に係る顕微鏡201において、第1実施形態の場合と同様にして、位相変調ユニット60による照明光に対する位相変調が行われる。また、第3実施形態に係る顕微鏡201を用いても、第1実施形態で述べた画像取得方法により、試料TPの画像を取
得することが可能である。従って、第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第3実施形態によれば、検出光が検出器41に入射するまでに通過する光学素子の数が少ないため、検出光の光量の損失を低減させることができる。
【0131】
なお、第3実施形態では、第1実施形態で述べた収差の計測を行う処理における、ステップST401において、挿脱ミラー34を集光レンズ33と検出用ピンホール板35との間の光路に挿入するのに代えて、第2ダイクロイックミラー228を対物レンズ229と第2対物レンズ227との間の光路から離脱させる。また、ステップST403において、挿脱ミラー34を集光レンズ33と検出用ピンホール板35との間の光路から離脱させるのに代えて、第2ダイクロイックミラー228を対物レンズ229と第2対物レンズ227との間の光路に挿入する。
【0132】
第3実施形態に係る顕微鏡201において、例えば、波面センサ46、第1ダイクロイックミラー224、計測用フィルタ235、集光レンズ236、計測用ピンホール板237、および計測用リレーレンズ238を設けずに、検出器41に入射する検出光に基づいて、試料TPと照明光学系221と検出光学系231で生じる収差の計測を行うようにしてもよい。この場合、第1実施形態で述べた収差の計測を行う処理の変形例により、収差(位相変調パターン)の計測を行うようにしてもよい。またこの場合、第2ダイクロイックミラー228が対物レンズ229と第2対物レンズ227との間の光路に配置固定されてもよい。
【0133】
第3実施形態に係る顕微鏡201において、位相変調ユニット60に代えて、第1実施形態の変形例に係る位相変調ユニット80が設けられるようにしてもよい。上述の第1実施形態の変形例の場合と同様にして、第1実施形態の変形例に係る位相変調ユニット80により、照明光に対する位相変調を行うことが可能である。
【0134】
[第4実施形態]
次に、
図13を参照しながら、第4実施形態に係る顕微鏡301について説明する。第4実施形態に係る顕微鏡301は、走査型顕微鏡とも称される。第4実施形態に係る顕微鏡301は、ステージ11と、光源ユニット16と、照明光学系321と、検出光学系331と、計測光学系335と、検出器41と、波面センサ46と、演算装置51と、記憶部52と、インターフェース部53と、顕微鏡制御部54とを備える。ステージ11および光源ユニット16は、第1実施形態に係るステージ11および光源ユニット16と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0135】
照明光学系321は、光源ユニット16から射出された照明光(励起光)で試料TPを照明する。照明光学系321は、光源ユニット16側から順に、コリメータレンズ322と、位相変調ユニット60と、ダイクロイックミラー324と、試料走査部325と、スキャンレンズ326と、第2対物レンズ327と、照明用対物レンズ328とを有する。照明光学系321に含まれるコリメータレンズ322と、ダイクロイックミラー324と、試料走査部325と、スキャンレンズ326と、第2対物レンズ327と、照明用対物レンズ328の各構成、各機能は、第1実施形態の顕微鏡の照明光学系21に含まれるコリメータレンズ22と、ダイクロイックミラー24と、試料走査部25と、スキャンレンズ26と、第2対物レンズ27と、対物レンズ28と同様なので、説明を省略する。
【0136】
位相変調ユニット60は、第1実施形態に係る位相変調ユニット60と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0137】
検出光学系331は、試料TPで発生した光を検出光として受光する。検出光学系331は、試料TP側から順に、検出用対物レンズ332と、検出フィルタ334とを有する
。検出用対物レンズ332は、ステージ11の上方近傍に配置される。検出用対物レンズ332は、カバーガラス等の保持部材(図示せず)を介して、照明用対物レンズ328とは反対側からステージ11上の試料TPと対向する。検出用対物レンズ332と保持部材との間隙部は、空気等の気体で満たされていてもよく、浸液で満たされていてもよい。
【0138】
また、検出用対物レンズ332は、検出用対物レンズ保持部333を介して、顕微鏡301の筐体(図示せず)に取り付けられている。検出用対物レンズ保持部333は、例えば電動モータ等の駆動装置(図示せず)を用いて構成される。検出用対物レンズ保持部333は、レボルバ(図示せず)とともに検出用対物レンズ332をz方向に上下移動させる。検出用対物レンズ保持部333により検出用対物レンズ332がz方向に移動すると、試料TPに対する検出用対物レンズ332の相対位置が変化し、試料TPに対する検出用対物レンズ332の焦点位置がz方向に変化する。照明用対物レンズ保持部329により照明用対物レンズ328の焦点位置をz方向に変位させ、照明用対物レンズ328の焦点位置と合わせるように、検出用対物レンズ保持部333により検出用対物レンズ332の焦点位置をz方向に変位させることで、試料TPの内部であってz方向の位置が異なる断面の画像、すなわちzスタック画像を取得することができる。
【0139】
検出フィルタ334は、試料TPで発生した光のうち所定の波長帯の光(例えば、蛍光)を透過させる。検出フィルタ334は、例えば、試料TPを透過した照明光、外光、および迷光等の少なくとも一部を遮る。検出器41は、試料TPからの検出光を検出する。
【0140】
計測光学系335は、試料TPで発生した光を計測光として受光する。計測光学系335は、試料TP側から順に、照明用対物レンズ328と、第2対物レンズ327と、スキャンレンズ326と、試料走査部325と、ダイクロイックミラー324とを含む。さらに、計測光学系335は、ダイクロイックミラー324側から順に、計測用フィルタ336と、集光レンズ337と、計測用ピンホール板338と、計測用リレーレンズ339とを有するが、これらの各機能、各構成は、第1実施形態と同様なので、説明を省略する。このように、照明用対物レンズ328と、第2対物レンズ327と、スキャンレンズ326と、試料走査部325と、ダイクロイックミラー324は、照明光学系321と計測光学系335の両方に含まれている。
【0141】
検出器41および波面センサ46は、第1実施形態に係る検出器41および波面センサ46と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。また、演算装置51、記憶部52、インターフェース部53、および顕微鏡制御部54は、第1実施形態に係る演算装置51、記憶部52、インターフェース部53、および顕微鏡制御部54と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0142】
第4実施形態において、顕微鏡制御部54は、試料走査部325に制御信号を送信して、試料走査部325により変化する照明光および検出光の進行方向を制御する。顕微鏡制御部54は、照明用対物レンズ保持部329および検出用対物レンズ保持部333に制御信号を送信して、照明用対物レンズ保持部329に保持される照明用対物レンズ328の位置および、検出用対物レンズ保持部333に保持される検出用対物レンズ332の位置を制御する。
【0143】
光源ユニット16の光源17から射出された照明光(励起光)は、照明光学系321のコリメータレンズ322、位相変調ユニット60、ダイクロイックミラー324、試料走査部325、スキャンレンズ326、および第2対物レンズ327を経て、照明用対物レンズ328に入射する点は、第1実施形態と同様である。照明用対物レンズ328に入射した照明光は、照明用対物レンズ328を透過し、照明用対物レンズ328の焦点面に集
光される。試料TPにおいて照明光が集光される部分(すなわち、照明用対物レンズ328の焦点面と重なる部分)は、試料走査部325によりx方向とy方向との2方向において2次元的に走査される。
【0144】
試料TPにおいて照明光(励起光)が集光される部分に含まれる蛍光物質から、蛍光が発光する。試料TPで発生した光(蛍光)の一部は、検出光として検出光学系331の検出用対物レンズ332に入射する。検出用対物レンズ332に入射した検出光は、検出用対物レンズ332を透過し、検出フィルタ334を通って検出器41に入射する。
【0145】
試料TPで発生した光(蛍光)の他の一部は、計測光として計測光学系335としての照明用対物レンズ328に入射して透過し、第2対物レンズ327およびスキャンレンズ326を透過して試料走査部325に入射するが、その後、波面センサ46に入射するまでは、第1実施形態と同様なので、説明を省略する。波面センサ46は、波面センサ46に入射した計測光の波面の収差を計測し、計測信号として波面の収差に関するデータを顕微鏡制御部54に送信する。顕微鏡制御部54は、波面センサ46から送信された計測信号に基づいて、試料TPと照明光学系321で生じる収差に関するデータを取得する。
【0146】
第4実施形態に係る顕微鏡301において、第1実施形態の場合と同様にして、位相変調ユニット60による照明光に対する位相変調が行われる。また、第4実施形態に係る顕微鏡301を用いても、第1実施形態で述べた画像取得方法により、試料TPの画像を取得することが可能である。従って、第4実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第4実施形態によれば、検出用対物レンズ332が、照明用対物レンズ328とは反対側からステージ11上の試料TPと対向するため、試料TPで発生した散乱光を検出光として検出する場合に、検出光学系331により試料TPからの前方散乱光を効率よく検出することができる。また、照明光学系321により複数の波長を有する照明光で試料TPを照明し、検出光学系331により試料TPを透過した特定の波長の光を検出光として検出することができる。
【0147】
なお、第4実施形態では、第1実施形態で述べた収差の計測を行う処理における、ステップST401およびステップST403が省略される。また、ステップST402において、試料TPにおける収差計測位置で発生した計測光(蛍光)は、前述したように、計測光学系335を介して波面センサ46に入射する。波面センサ46は、波面センサ46に入射した計測光の波面の収差を計測し、計測信号として波面の収差に関するデータを顕微鏡制御部54に送信する。顕微鏡制御部54は、波面センサ46から送信された計測信号に基づいて、試料TPと照明光学系321で生じる収差に関するデータを取得する。
【0148】
第4実施形態に係る顕微鏡301において、例えば、波面センサ46、ダイクロイックミラー324、計測用フィルタ336、集光レンズ337、計測用ピンホール板338、および計測用リレーレンズ339を設けずに、検出器41に入射する検出光に基づいて、試料TPと照明光学系321と検出光学系331で生じる収差の計測を行うようにしてもよい。この場合、第1実施形態で述べた収差の計測を行う処理の変形例により、収差(位相変調パターン)の計測を行うようにしてもよい。
【0149】
第4実施形態に係る顕微鏡301において、位相変調ユニット60に代えて、第1実施形態の変形例に係る位相変調ユニット80が設けられるようにしてもよい。上述の第1実施形態の変形例の場合と同様にして、第1実施形態の変形例に係る位相変調ユニット80により、照明光に対する位相変調を行うことが可能である。
【0150】
[第5実施形態]
次に、
図14を参照しながら、第5実施形態に係る顕微鏡401について説明する。第
5実施形態に係る顕微鏡401は、落射蛍光顕微鏡とも称される。第5実施形態に係る顕微鏡401は、ステージ11と、光源ユニット416と、照明光学系421と、検出光学系431と、2次元検出器441と、波面センサ46と、演算装置51と、記憶部52と、インターフェース部53と、顕微鏡制御部54とを備える。ステージ11は、第1実施形態に係るステージ11と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0151】
光源ユニット416は、試料TPに含まれる蛍光物質を励起するための照明光(励起光)を射出させる。光源ユニット416は、光源417と、シャッタ418とを有する。光源417として、例えば、水銀ランプやLED(Light Emitting Diode)ランプ等が用いられる。シャッタ418は、光源417から射出される照明光を通過させるか、もしくは遮るようになっている。
【0152】
照明光学系421は、光源ユニット416から射出された照明光(励起光)で試料TPを照明する。照明光学系421は、光源ユニット416側から順に、コリメータレンズ422と、照明フィルタ423と、照明用視野絞り424と、照明用リレーレンズ425と、ダイクロイックミラー426と、対物レンズ427とを有する。照明光学系421に含まれるコリメータレンズ422と、ダイクロイックミラー426と、対物レンズ427の各構成、各機能は、第1実施形態の顕微鏡の照明光学系21に含まれるコリメータレンズ22と、ダイクロイックミラー24と、対物レンズ28と同様なので、説明を省略する。照明フィルタ423は、光源ユニット416からの照明光のうち所定の波長域の光(励起光)を透過させる。照明用視野絞り424は、対物レンズ427の焦点位置と光学的に共役な位置に配置される。照明用視野絞り424は、照明光により試料TPが照明される領域を制限する。照明用リレーレンズ425は、光源ユニット416からの照明光を集光する。
【0153】
検出光学系431は、試料TPで発生した光を検出光として受光する。検出光学系431は、試料TP側から順に、対物レンズ427と、ダイクロイックミラー426とを含む。さらに、検出光学系431は、ダイクロイックミラー426側から順に、第2対物レンズ432と、検出用視野絞り433と、コリメータレンズ434と、ミラー435と、位相変調ユニット60と、検出フィルタ436と、挿脱ミラー437と、結像レンズ438とを有する。また、検出光学系431は、挿脱ミラー437側から順に、第1計測用リレーレンズ439と、第2計測用リレーレンズ440とを有する。このように、対物レンズ427と、ダイクロイックミラー426は、照明光学系421と検出光学系431の両方に含まれている。
【0154】
第2対物レンズ432は、試料TPからの検出光を集光する。検出用視野絞り433は、対物レンズ427の焦点位置と光学的に共役な位置に配置される。検出用視野絞り433は、顕微鏡401の視野を制限する。コリメータレンズ434は、試料TPからの検出光を略平行光にする。ミラー435は、試料TPからの検出光を位相変調ユニット60に向けて反射させる。
【0155】
位相変調ユニット60は、第1実施形態に係る位相変調ユニット60と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。第5実施形態において、位相変調ユニット60は、ミラー435で反射した検出光に対して位相変調を行い、試料TPと検出光学系431で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正する。
【0156】
検出フィルタ436は、試料TPで発生した光のうち所定の波長帯の光(例えば、蛍光)を透過させる。検出フィルタ436は、例えば、試料TPで反射した照明光、外光、および迷光等の少なくとも一部を遮る。挿脱ミラー437は、検出フィルタ436と結像レ
ンズ438との間の光路に対して挿脱可能に配設される。挿脱ミラー437が検出フィルタ436と結像レンズ438との間の光路から離脱する場合、試料TPからの検出光は、結像レンズ438に入射する。挿脱ミラー437が検出フィルタ436と結像レンズ438との間の光路に挿入される場合、試料TPからの検出光は、挿脱ミラー437で反射して第1計測用リレーレンズ439に入射する。
【0157】
結像レンズ438は、試料TPからの検出光を2次元検出器441の検出面上に結像させる。2次元検出器441は、試料TPと光学的に共役な位置に配置される。2次元検出器441は、結像レンズ438により結像した検出光を検出する。2次元検出器441として、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラ等が用いられる。
【0158】
第1計測用リレーレンズ439は、試料TPからの検出光を集光する。第2計測用リレーレンズ440は、試料TPからの検出光を略平行光にする。波面センサ46は、試料TPからの検出光の波面の収差を計測する。
【0159】
波面センサ46は、第1実施形態に係る波面センサ46と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。また、演算装置51、記憶部52、インターフェース部53、および顕微鏡制御部54は、第1実施形態に係る演算装置51、記憶部52、インターフェース部53、および顕微鏡制御部54と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0160】
第5実施形態において、顕微鏡制御部54は、対物レンズ保持部428に制御信号を送信して、対物レンズ保持部428に保持される対物レンズ427の位置を制御する。顕微鏡制御部54は、シャッタ418に制御信号を送信して、シャッタ418の開閉を制御する。顕微鏡制御部54は、挿脱ミラー437に制御信号を送信して、挿脱ミラー437の挿脱を制御する。
【0161】
光源ユニット416の光源417から射出された照明光(励起光)は、照明光学系421のコリメータレンズ422を透過して略平行光になる。コリメータレンズ422を透過した照明光は、照明フィルタ423および照明用視野絞り424を通って照明用リレーレンズ425を透過する。照明用リレーレンズ425を透過した照明光は、集束しつつダイクロイックミラー426で反射して対物レンズ427に入射する。対物レンズ427に入射した照明光は、対物レンズ427を透過し、対物レンズ427の焦点面に照明用視野絞り424の像を形成する。
【0162】
試料TPにおいて照明光(励起光)が照明用視野絞り424の像を形成する部分(すなわち、対物レンズ427の焦点面と重なる部分)に含まれる蛍光物質から、検出光として蛍光が発光する。試料TPで発生した検出光(蛍光)は、検出光学系431としての対物レンズ427に入射する。対物レンズ427に入射した検出光は、対物レンズ427を透過してダイクロイックミラー426に入射する。ダイクロイックミラー426に入射した検出光(蛍光)は、照明光(励起光)と波長が異なるため、ダイクロイックミラー426を透過して第2対物レンズ432に入射する。
【0163】
第2対物レンズ432に入射した検出光は、第2対物レンズ432を透過して検出用視野絞り433を通り、コリメータレンズ434に入射する。コリメータレンズ434に入射した検出光は、コリメータレンズ434を透過して略平行光となり、ミラー435で反射して位相変調ユニット60に入射する。検出光が位相変調ユニット60に入射すると、位相変調ユニット60は、入射した検出光に対して位相変調を行い、位相変調を行った検出光を射出させる。
【0164】
位相変調ユニット60から射出された略平行光である検出光は、検出フィルタ436に入射する。挿脱ミラー437が検出フィルタ436と結像レンズ438との間の光路から離脱している場合、検出フィルタ436に入射した検出光は、検出フィルタ436を通って結像レンズ438を透過し、2次元検出器441に入射して試料TPの像を形成する。
【0165】
2次元検出器441は、2次元検出器441に入射した光(検出光)の光電変換を行い、光の検出信号として、その光の光量(明るさ)に対応するデータを生成する。2次元検出器441は、複数画素において生成したデータを顕微鏡制御部54に送信する。顕微鏡制御部54は、2次元検出器441から送信された複数画素分のデータに基づいて、複数画素分のデータが2次元で(2方向で)並ぶ1つの画像データを生成し、記憶部52に記憶させる。このようにして、顕微鏡制御部54が試料TPの2次元画像を生成することで、試料TPの画像取得が行われる。
【0166】
挿脱ミラー437が検出フィルタ436と結像レンズ438との間の光路に挿入されている場合、検出フィルタ436に入射した検出光は、検出フィルタ436を通って挿脱ミラー437で反射し、第1計測用リレーレンズ439に入射する。第1計測用リレーレンズ439に入射した検出光は、第1計測用リレーレンズ439および第2計測用リレーレンズ440を透過して波面センサ46に入射する。波面センサ46は、波面センサ46に入射した検出光の波面の収差を計測し、計測信号として波面の収差に関するデータを顕微鏡制御部54に送信する。顕微鏡制御部54は、波面センサ46から送信された計測信号に基づいて、試料TPと照明光学系421と検出光学系431で生じる収差の少なくとも一部に関するデータを取得する。
【0167】
第5実施形態に係る顕微鏡401において、検出光学系431のミラー435で反射した検出光は、位相変調ユニット60の第3リレーレンズ68に入射するが、その後は第2実施形態における検出光に対する位相変調と同様なので、説明を省略する。
【0168】
前述したように、第2位相変調用スキャナ66は、第2位相変調用スキャナ66に入射する検出光により位相変調素子65を走査することで、位相変調素子65における複数の照射領域の中で検出光が照射される照射領域を変えることが可能である。第2位相変調用スキャナ66は、試料TPにおける顕微鏡観察が行われる観察領域が変位する際に、位相変調素子65において検出光が照射される照射領域を変える。なお、試料TPにおける複数の観察領域ごとに、試料TPと検出光学系431で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正するための位相変調パターン、すなわち試料TPと検出光学系431で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正するための所定の位相分布が予め求められている。位相変調素子65は、位相変調素子65の表示面における各照射領域に、対応する観察領域について予め求められた位相変調パターンを表示する。これにより、第2位相変調用スキャナ66が位相変調素子65における照射領域を観察領域ごとに変えることで、観察領域ごとに適切に求められた位相変調パターン(位相分布)に応じて照明光の位相を変化(変調)させることができる。従って、試料TPと検出光学系431に起因する収差の少なくとも一部が補正された、高画質の試料TPの画像を短時間で取得することが可能になる。
【0169】
また、第5実施形態に係る顕微鏡401を用いても、第1実施形態で述べた画像取得方法により、試料TPの画像を取得することが可能である。従って、第5実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第5実施形態によれば、2次元検出器441により、例えば試料TPにおける第1~第16観察領域KA1~KA16のうち1つの観察領域で生じる検出光を一度に検出することができるため、高画質の試料TPの画像をより短時間で取得することが可能になる。
【0170】
第5実施形態に係る顕微鏡401において、例えば、波面センサ46、挿脱ミラー437、第1計測用リレーレンズ439および第2計測用リレーレンズ440を設けずに、2次元検出器441に入射する検出光に基づいて、試料TPと照明光学系421と検出光学系431で生じる収差の計測を行うようにしてもよい。この場合、第1実施形態で述べた収差の計測を行う処理の変形例により、収差(位相変調パターン)の計測を行うようにしてもよい。
【0171】
第5実施形態に係る顕微鏡401において、位相変調ユニット60に代えて、第1実施形態の変形例に係る位相変調ユニット80が設けられるようにしてもよい。上述の第5実施形態の場合と同様にして、第1実施形態の変形例に係る位相変調ユニット80により、検出光に対する位相変調を行うことが可能である。
【0172】
[第6実施形態]
次に、
図15を参照しながら、第6実施形態に係る顕微鏡について説明する。第6実施形態に係る顕微鏡は、位相変調ユニット60に代えて、第6実施形態に係る位相変調ユニット160が設けられる他は、第1実施形態に係る顕微鏡1と同様の構成であり、位相変調ユニット160以外の共通する各部に第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な図示および説明を省略する。第6実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット160は、コリメータレンズ22を透過した照明光に対して位相変調を行い、試料TPと照明光学系21と検出光学系31で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正する。
図15に示すように、第6実施形態に係る位相変調ユニット160は、第1リレーレンズ161と、第1ミラー162と、第2リレーレンズ163と、第1シリンドリカルレンズ164と、第2シリンドリカルレンズ165と、第3リレーレンズ166と、位相変調用スキャナ167と、第4リレーレンズ168と、位相変調素子169と、第2ミラー170と、第5リレーレンズ171とを有する。なお、
図15において破線で囲まれた部分は、位相変調ユニット160の一部を
図15に対して垂直な方向から見た図である。
【0173】
第1リレーレンズ161は、コリメータレンズ22を透過して略平行光となった照明光を集光する。第1ミラー162は、試料TPと光学的に共役な位置B11の近傍に配置される。第1ミラー162は、第1リレーレンズ161からの照明光を第2リレーレンズ163に向けて反射させる。第2リレーレンズ163は、第1ミラー162で反射した照明光を略平行光にする。第1シリンドリカルレンズ164および第2シリンドリカルレンズ165は、第2リレーレンズ163からの照明光を断面視楕円形の略平行光にする。第3リレーレンズ166は、第2シリンドリカルレンズ165からの照明光を集光する。
【0174】
位相変調用スキャナ167は、試料TPと光学的に共役な位置B11に配置される。位相変調用スキャナ167は、反射面の向き(方位角)が1軸回転または2軸回転によって変化するように保持されたミラー(例えば、ガルバノミラーやレゾナントミラー等)を用いて構成される。位相変調用スキャナ167は、第3リレーレンズ166を透過した照明光の進行方向を変化させる。これにより、位相変調用スキャナ167は、
図15に示すように、コリメータレンズ22からの照明光により位相変調素子169を走査する。
【0175】
また、位相変調用スキャナ167は、第4リレーレンズ168から位相変調用スキャナ167に入射した照明光が第3リレーレンズ166に向けて進むように、すなわち第4リレーレンズ168からの照明光が照明光学系21の光軸AX1に沿って進むように照明光の進行方向を変化させる。
【0176】
第4リレーレンズ168は、位相変調素子169と対向して配置される。第4リレーレンズ168は、位相変調用スキャナ167を通った照明光を(断面視楕円形の)略平行光にする。第4リレーレンズ168は、位相変調素子169で反射した照明光を集光する。
【0177】
位相変調素子169は、対物レンズ28の瞳位置と光学的に共役な位置H11に配置される。位相変調素子169は、例えば反射型液晶素子や透過型液晶素子等を用いて構成され、表示面において複数の位相変調パターンを、照明光における楕円形の断面の長手方向と垂直な方向に並べて表示する。位相変調素子169の表示面には、照明光が照射され得る複数の照射領域が設けられる。位相変調素子169の表示面における複数の照射領域は、複数の位相変調パターンに対応して、照明光における楕円形の断面の長手方向と垂直または平行な方向に並んで設けられる。
【0178】
図16に、複数の照射領域の配置例を示す。
図16の例では、位相変調素子169の表示面に表示される16個の位相変調パターンに対応して、照明光が照射され得る長方形状の16個の照射領域が設けられる。16個の照射領域として、(
図16の上側から順に)第1照射領域SB1と、第2照射領域SB2と、第3照射領域SB3と、第4照射領域SB4と、第5照射領域SB5と、第6照射領域SB6と、第7照射領域SB7と、第8照射領域SB8と、第9照射領域SB9と、第10照射領域SB10と、第11照射領域SB11と、第12照射領域SB12と、第13照射領域SB13と、第14照射領域SB14と、第15照射領域SB15と、第16照射領域SB16とが設けられる。
【0179】
第1~第16照射領域SB1~SB16は、互いに重ならないように、照明光における楕円形の断面の長手方向と垂直な方向に並んで配置される。第1~第16照射領域SB1~SB16のうちいずれかの照射領域に照明光が照射されると、照明光の位相が変化(変調)する。具体的には、照明光が照射された照射領域に設定された位相変調パターンに応じた位相分布が照明光に付与される。また、位相変調素子169において照明光が照射される照射領域(すなわち位相変調パターン)を変えることで、照明光に付与する位相分布(検出光が照射領域に照射される場合、検出光に付与する位相分布)を変えることが可能である。
【0180】
第2ミラー170は、試料TPと光学的に共役な位置B11の近傍に配置される。第2ミラー170は、第2リレーレンズ163を透過した位相変調素子169からの照明光を第5リレーレンズ171に向けて反射させる。第5リレーレンズ171は、第2ミラー170で反射した照明光を略平行光にする。
【0181】
照明光学系21のコリメータレンズ22を透過した照明光は、位相変調ユニット160の第1リレーレンズ161に入射する。第1リレーレンズ161に入射した照明光は、第1リレーレンズ161を透過して第1ミラー162で反射する。第1ミラー162で反射した照明光は、第2リレーレンズ163を透過する。第2リレーレンズ163を透過した照明光は、第1シリンドリカルレンズ164および第2シリンドリカルレンズ165を透過して断面視楕円形の略平行光になる。第2シリンドリカルレンズ165を透過した照明光は、第3リレーレンズ166を透過して位相変調用スキャナ167に入射し、試料TPと光学的に共役な位置B11において一旦集光する。位相変調用スキャナ167は、位相変調用スキャナ167に入射した照明光により、照明光における楕円形の断面の長手方向と垂直な方向に位相変調素子169を走査する。位相変調用スキャナ167に入射した照明光は、位相変調用スキャナ167を通って第4リレーレンズ168を透過する。第4リレーレンズ168を透過した照明光は、断面視楕円形の略平行光となり、位相変調素子169における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照射される。
【0182】
照明光が位相変調素子169における複数の照射領域(例えば、第1~第16照射領域SB1~SB16)のうちいずれかの照射領域に照射されると、照明光が照射された照射領域における位相変調パターン(位相分布)に応じて照明光の位相が変化(変調)する。位相変調素子169における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照射された照明
光は、当該照射領域で反射する。なお、位相変調用スキャナ167は、位相変調用スキャナ167に入射する照明光により位相変調素子169を走査することで、複数の照射領域の中で照明光が照射される照射領域を変えることが可能である。
【0183】
位相変調素子169における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照射されて反射した照明光は、第4リレーレンズ168を透過する。第4リレーレンズ168を透過した照明光は、位相変調用スキャナ167に入射し、試料TPと光学的に共役な位置B11において一旦集光する。位相変調用スキャナ167は、第4リレーレンズ168からの照明光が第3リレーレンズ166に向けて進むように、すなわち第4リレーレンズ168からの照明光が照明光学系21の光軸AX1に沿って進むように照明光の進行方向を変化させる。位相変調用スキャナ167に入射した照明光は、位相変調用スキャナ167を通って第3リレーレンズ166を透過する。第3リレーレンズ166を透過した照明光は、第2シリンドリカルレンズ165および第1シリンドリカルレンズ164を透過して断面視円形の略平行光になる。第1シリンドリカルレンズ164を透過した照明光は、第2リレーレンズ163を透過して第2ミラー170で反射する。第2ミラー170で反射した照明光は、第5リレーレンズ171を透過し、略平行光となって照明光学系21のダイクロイックミラー24に入射する。このようにして、位相変調ユニット160による照明光に対する位相変調が行われる。
【0184】
なお、位相変調用スキャナ167を通る照明光により位相変調素子169が走査されるため、位相変調素子169における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域で反射した照明光は、照明光学系21の光軸AX1から外れる場合がある。しかしながら、複数の照射領域のうちいずれかの照射領域で反射した照明光は、第4リレーレンズ168を透過して位相変調用スキャナ167を通ると、照明光学系21の光軸AX1に沿って進むようになる。位相変調用スキャナ167における照明光のデスキャンによって、位相変調用スキャナ167が照明光の進行方向を変化させて照射領域を変えるのに拘わらず、第5リレーレンズ171を透過した照明光は、略平行光となって照明光学系21のダイクロイックミラー24に入射することができる。
【0185】
前述したように、位相変調用スキャナ167は、位相変調用スキャナ167に入射する照明光により位相変調素子169を走査することで、複数の照射領域の中で照明光が照射される照射領域を変えることが可能である。位相変調用スキャナ167は、試料TPにおける顕微鏡観察が行われる観察領域が変位する際に、位相変調素子169において照明光が照射される照射領域を変える。なお、試料TPにおける16個の観察領域ごとに、試料TPと照明光学系21と検出光学系31で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正するための位相変調パターン、すなわち試料TPと照明光学系21と検出光学系31で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正するための所定の位相分布が予め求められている。位相変調素子169は、位相変調素子169の表示面における各照射領域に、対応する観察領域について予め求められた位相変調パターンを表示する。これにより、位相変調用スキャナ167が位相変調素子169における照射領域を16個の観察領域ごとに変えることで、観察領域ごとに適切に求められた位相変調パターン(位相分布)に応じて照明光の位相を変化(変調)させることができる。従って、試料TPと照明光学系21と検出光学系31に起因する収差の少なくとも一部が補正された、高画質の試料TPの画像を短時間で取得することが可能になる。
【0186】
試料TPにおける複数の観察領域は、第1実施形態で例示した観察領域と同様に設定することができる。具体的には、
図6に示すように、顕微鏡の視野内において試料TPにおける16個の観察領域KA1~KA16が設定される。位相変調素子169は、位相変調素子169の第1照射領域SB1に、第1観察領域KA1について予め求められた位相変調パターンを表示する。位相変調素子169は、位相変調素子169の第2照射領域SB
2に、第2観察領域KA2について予め求められた位相変調パターンを表示する。位相変調素子169は、位相変調素子169の第3照射領域SB3に、第3観察領域KA3について予め求められた位相変調パターンを表示する。位相変調素子169は、位相変調素子169の第4照射領域SB4に、第4観察領域KA4について予め求められた位相変調パターンを表示する。以下同様に、位相変調素子169は、位相変調素子169の第5~第16照射領域SB5~SB16に、第5~第16観察領域KA5~KA16について予め求められた位相変調パターンを表示する。
【0187】
試料TPにおける第1~第16観察領域KA1~KA16を観察する際、すなわち第1~第16観察領域KA1~KA16の画像を取得する際、まず、第1観察領域KA1の画像を取得する。第1観察領域KA1の画像を取得する際、位相変調ユニット160の第1位相変調用スキャナ167は、位相変調素子169に対する照明光の照射領域を第1照射領域SB1に変える。照明光学系21の試料走査部25は、位相変調素子169の第1照射領域SB1に照射された照明光LB1により、第1観察領域KA1においてラスタスキャンを行う。従って、試料TPにおける第1観察領域KA1に起因する収差が補正された、高画質の第1観察領域KA1の画像を取得することが可能になる。
【0188】
第1観察領域KA1の画像を取得した後、第2観察領域KA2の画像を取得する。第2観察領域KA2の画像を取得する際、位相変調ユニット160の第1位相変調用スキャナ167は、位相変調素子169に対する照明光の照射領域を第1照射領域SB1から第2照射領域SB2に変える。照明光学系21の試料走査部25は、位相変調素子169の第2照射領域SB2に照射された照明光LB2により、第2観察領域KA2においてラスタスキャンを行う。従って、試料TPにおける第2観察領域KA2に起因する収差が補正された、高画質の第2観察領域KA2の画像を取得することが可能になる。
【0189】
以下同様に、第2観察領域KA2の画像を取得した後、第3~第16観察領域KA3~KA16の画像を順に取得する。なお、試料TPにおける観察領域が第3~第16観察領域KA3~KA16に変位する際、位相変調ユニット160の第1位相変調用スキャナ167は、位相変調素子169に対する照明光の照射領域を第3照射領域SB3~第16照射領域SB16に変える。これにより、試料TPにおける第1~第16観察領域KA1~KA16に起因する収差が個々に補正された、高画質の試料TPの画像を短時間で取得することが可能になる。
【0190】
また、第6実施形態に係る顕微鏡を用いても、第1実施形態で述べた画像取得方法により、試料TPの画像を取得することが可能である。従って、第6実施形態によれば、位相変調ユニット160は、照明光が照射され得る複数の照射領域を有し、複数の照射領域における照明光の照射位置に応じて照明光に対して位相分布を付与する位相変調素子169と、照明光が照射される照射領域を変える位相変調用スキャナ167とを有している。位相変調用スキャナ167により、位相変調素子169に対する照明光の照射領域を変えることで、照明光の位相を変化させる位相変調パターンを変更するようにすれば、位相変調素子169で表示する位相変調パターンを切り替える場合よりも、短時間で位相変調パターンを変更することができる。従って、試料TPにおける観察領域が変位する際に、位相変調素子169に対する照明光の照射領域を変えることで、試料TPにおける複数の観察領域に起因する収差が個々に補正された、高画質の試料TPの画像を短時間で取得することが可能になる。
【0191】
また、位相変調ユニット160は、位相変調素子169に対する照明光の照射領域を変えるのに拘わらず、照射領域に照射されて位相が変化した照明光の進行方向を一定の方向(照明光学系21の光軸AX1に沿った方向)にする位相変調用スキャナ167を有している。これにより、照明光の光路を変えることなく、照明光の位相のみを変化させること
ができる。
【0192】
また、位相変調素子169における複数の照射領域は、互いに重ならないようになっている。これにより、試料TPの画像取得範囲ごとに適切な位相変調パターンを設けることができる。
【0193】
また、位相変調ユニット160は、複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照射される照明光の断面形状を楕円形にする第1シリンドリカルレンズ164および第2シリンドリカルレンズ165を有している。これにより、位相変調素子169における照射領域の長手方向において滑らかな位相分布を有する位相変調パターンを表示することが可能になる。
【0194】
[位相変調ユニットの変形例]
次に、
図17を参照しながら、第6実施形態における位相変調ユニットの変形例について説明する。
図17に示すように、第6実施形態の変形例に係る位相変調ユニット180は、ビームスプリッタ191と、第1リレーレンズ181と、ミラー182と、第2リレーレンズ183と、第1シリンドリカルレンズ184と、第2シリンドリカルレンズ185と、第3リレーレンズ186と、位相変調用スキャナ187と、第4リレーレンズ188と、位相変調素子169とを有する。なお、
図17において破線で囲まれた部分は、位相変調ユニット180の一部を
図17に対して垂直な方向から見た図である。
【0195】
ビームスプリッタ191の透過率と反射率の比率は、例えば1:1に設定される。照明光学系21のコリメータレンズ22からビームスプリッタ191に入射した光の一部は、当該ビームスプリッタ191を透過して第1リレーレンズ181に入射する。第1リレーレンズ181からビームスプリッタ191に入射した光の一部は、当該ビームスプリッタ191で反射して照明光学系21のダイクロイックミラー24に入射する。
【0196】
第1リレーレンズ181は、コリメータレンズ22を透過して略平行光となった照明光を集光する。ミラー182は、試料TPと光学的に共役な位置B12の近傍に配置される。ミラー182は、第1リレーレンズ181からの照明光を第2リレーレンズ183に向けて反射させる。第2リレーレンズ183は、ミラー182で反射した照明光を略平行光にする。第1シリンドリカルレンズ184および第2シリンドリカルレンズ185は、第2リレーレンズ183からの照明光を断面視楕円形の略平行光にする。第3リレーレンズ186は、第2シリンドリカルレンズ185からの照明光を集光する。
【0197】
位相変調用スキャナ187は、試料TPと光学的に共役な位置B12に配置される。位相変調用スキャナ187は、反射面の向き(方位角)が1軸回転または2軸回転によって変化するように保持されたミラー(例えば、ガルバノミラーやレゾナントミラー等)を用いて構成される。位相変調用スキャナ187は、第3リレーレンズ186を透過した照明光の進行方向を変化させる。これにより、位相変調用スキャナ187は、
図17に示すように、コリメータレンズ22からの照明光により位相変調素子169を走査する。
【0198】
また、位相変調用スキャナ187は、第4リレーレンズ188から位相変調用スキャナ187に入射した照明光が第3リレーレンズ186に向けて進むように、すなわち第4リレーレンズ188からの照明光が照明光学系21の光軸AX1に沿って進むように照明光の進行方向を変化させる。
【0199】
第4リレーレンズ188は、位相変調素子169と対向して配置される。第4リレーレンズ188は、位相変調用スキャナ187を通った照明光を(断面視楕円形の)略平行光にする。第4リレーレンズ188は、位相変調素子169で反射した照明光を集光する。
【0200】
位相変調素子169は、対物レンズ28の瞳位置と光学的に共役な位置H12に配置される。位相変調素子169は、第6実施形態に係る位相変調素子169と同様の構成であり、第6実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0201】
照明光学系21のコリメータレンズ22を透過した照明光は、位相変調ユニット180のビームスプリッタ191に入射する。コリメータレンズ22からビームスプリッタ191に入射した照明光の一部は、当該ビームスプリッタ191を透過して第1リレーレンズ181に入射する。第1リレーレンズ181に入射した照明光は、第1リレーレンズ181を透過してミラー182で反射する。ミラー182で反射した照明光は、第2リレーレンズ183を透過する。第2リレーレンズ183を透過した照明光は、第1シリンドリカルレンズ184および第2シリンドリカルレンズ185を透過して断面視楕円形の略平行光になる。第2シリンドリカルレンズ185を透過した照明光は、第3リレーレンズ186を透過して位相変調用スキャナ187に入射し、試料TPと光学的に共役な位置B12において一旦集光する。位相変調用スキャナ187は、位相変調用スキャナ187に入射した照明光により、照明光における楕円形の断面の長手方向と垂直または平行な方向に位相変調素子169を走査する。位相変調用スキャナ187に入射した照明光は、位相変調用スキャナ187を通って第4リレーレンズ188を透過する。第4リレーレンズ188を透過した照明光は、断面視楕円形の略平行光となり、位相変調素子169における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照射される。
【0202】
照明光が位相変調素子169における複数の照射領域(例えば、第1~第16照射領域SB1~SB16)のうちいずれかの照射領域に照射されると、照明光が照射された照射領域における位相変調パターンに応じて照明光の位相が変化する。位相変調素子169における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照射された照明光は、当該照射領域で反射する。なお、位相変調用スキャナ187は、位相変調用スキャナ187に入射する照明光により位相変調素子169を走査することで、複数の照射領域の中で照明光が照射される照射領域を変えることが可能である。
【0203】
位相変調素子169における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照射されて反射した照明光は、第4リレーレンズ188を透過する。第4リレーレンズ188を透過した照明光は、位相変調用スキャナ187に入射し、試料TPと光学的に共役な位置B12において一旦集光する。位相変調用スキャナ187は、第4リレーレンズ188からの照明光が第3リレーレンズ186に向けて進むように、すなわち第4リレーレンズ188からの照明光が照明光学系21の光軸AX1に沿って進むように照明光の進行方向を変化させる。位相変調用スキャナ187に入射した照明光は、位相変調用スキャナ187を通って第3リレーレンズ186を透過する。第3リレーレンズ186を透過した照明光は、第2シリンドリカルレンズ185および第1シリンドリカルレンズ184を透過して断面視円形の略平行光になる。第1シリンドリカルレンズ184を透過した照明光は、第2リレーレンズ183を透過してミラー182で反射する。ミラー182で反射した照明光は、第1リレーレンズ181を透過し、略平行光となってビームスプリッタ191に入射する。第1リレーレンズ181からビームスプリッタ191に入射した照明光の一部は、当該ビームスプリッタ191で反射して照明光学系21のダイクロイックミラー24に入射する。これにより、第6実施形態に係る位相変調ユニット160の場合と同様にして、照明光に対する位相変調が行われる。
【0204】
[第7実施形態]
次に、第7実施形態に係る顕微鏡について説明する。第7実施形態に係る顕微鏡は、位相変調ユニット60に代えて、第6実施形態に係る位相変調ユニット160が設けられる他は、第2実施形態に係る顕微鏡101と同様の構成であり、位相変調ユニット160以
外の共通する各部に第2実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な図示および説明を省略する。第7実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット160は、照明光学系121のダイクロイックミラー123を透過した照明光に対して位相変調を行うとともに、検出光学系131としての試料走査部125を通った検出光に対して位相変調を行い、試料TPと照明光学系121と検出光学系131で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正する。
【0205】
照明光学系121のダイクロイックミラー123を透過した照明光は、位相変調ユニット160の第1リレーレンズ161に入射するが、その後は、第6実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0206】
また、検出光学系131としての試料走査部125を通った検出光は、位相変調ユニット160の第5リレーレンズ171に入射する。第5リレーレンズ171に入射した検出光は、照明光とは逆の順で、第5リレーレンズ171と、第2ミラー170と、第2リレーレンズ163と、第1シリンドリカルレンズ164および第2シリンドリカルレンズ165と、第3リレーレンズ166と、位相変調用スキャナ167と、第4リレーレンズ168を通って、断面視楕円形の略平行光となり、位相変調素子169における複数の照射領域のうち照明光と同じ照射領域に照射される。
【0207】
検出光が位相変調素子169における照明光と同じ照射領域に照射されると、当該照射領域における位相変調パターンに応じて照明光の位相が変化する。位相変調素子169における照明光と同じ照射領域に照射された検出光は、当該照射領域で反射する。
【0208】
位相変調素子169における照明光と同じ照射領域に照射されて反射した検出光は、第4リレーレンズ168と、位相変調用スキャナ167と、第3リレーレンズ166と、第2シリンドリカルレンズ165および第1シリンドリカルレンズ164と、第2リレーレンズ163を通って、第1ミラー162で反射する。第1ミラー162で反射した検出光は、第1リレーレンズ161を透過し、略平行光となって検出光学系131としてのダイクロイックミラー123に入射する。このようにして、位相変調ユニット160による検出光に対する位相変調が行われる。
【0209】
なお、位相変調素子169における照明光と同じ照射領域で反射した検出光は、第4リレーレンズ168を透過して位相変調用スキャナ167を通ると、検出光学系131の光軸AX12に沿って進むようになる。位相変調用スキャナ167における検出光のデスキャンによって、位相変調用スキャナ167が検出光の進行方向を変化させて照射領域を変えるのに拘わらず、第1リレーレンズ161を透過した検出光は、略平行光となって検出光学系131としてのダイクロイックミラー123に入射することができる。
【0210】
位相変調用スキャナ167は、位相変調用スキャナ167に入射する照明光および検出光により位相変調素子169を走査することで、位相変調素子169における複数の照射領域の中で照明光および検出光が照射される照射領域を変えることが可能である。位相変調用スキャナ167は、試料TPにおける顕微鏡観察が行われる観察領域が変位する際に、位相変調素子169において照明光および検出光が照射される照射領域を変える。なお、試料TPにおける16個の観察領域ごとに、試料TPと照明光学系121と検出光学系131で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正するための位相変調パターン、すなわち試料TPと照明光学系121と検出光学系131で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正するための所定の位相分布が予め求められている。位相変調素子169は、位相変調素子169の表示面における各照射領域に、対応する観察領域について予め求められた位相変調パターンを表示する。これにより、位相変調用スキャナ167が位相変調素子169における照射領域を16個の観察領域ごとに変えることで、観察領域ごとに適切に求
められた位相変調パターン(位相分布)に応じて照明光の位相を変化(変調)させることができる。従って、試料TPと照明光学系121と検出光学系131に起因する収差の少なくとも一部が補正された、高画質の試料TPの画像を短時間で取得することが可能になる。
【0211】
また、第7実施形態に係る顕微鏡を用いても、第2実施形態に係る顕微鏡101と同様、第1実施形態で述べた画像取得方法により、試料TPの画像を取得することが可能である。従って、第7実施形態によれば、第6実施形態および第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0212】
第7実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット160に代えて、第6実施形態の変形例に係る位相変調ユニット180が設けられるようにしてもよい。上述の第7実施形態の場合と同様にして、第6実施形態の変形例に係る位相変調ユニット180により、照明光および検出光に対する位相変調を行うことが可能である。
【0213】
[第8実施形態]
次に、第8実施形態に係る顕微鏡について説明する。第8実施形態に係る顕微鏡は、位相変調ユニット60に代えて、第6実施形態に係る位相変調ユニット160が設けられる他は、第3実施形態に係る顕微鏡201と同様の構成であり、位相変調ユニット160以外の共通する各部に第3実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な図示および説明を省略する。
【0214】
第8実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット160は、照明光学系221のコリメータレンズ222を透過した照明光に対して位相変調を行い、試料TPと照明光学系221で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正する。このとき、第6実施形態の場合と同様にして、位相変調ユニット160による照明光に対する位相変調が行われる。また、第8実施形態に係る顕微鏡を用いても、第3実施形態に係る顕微鏡201と同様、第1実施形態で述べた画像取得方法により、試料TPの画像を取得することが可能である。従って、第8実施形態によれば、第6実施形態および第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0215】
第8実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット160に代えて、第6実施形態の変形例に係る位相変調ユニット180が設けられるようにしてもよい。上述の第6実施形態の変形例の場合と同様にして、第6実施形態の変形例に係る位相変調ユニット180により、照明光に対する位相変調を行うことが可能である。
【0216】
[第9実施形態]
次に、第9実施形態に係る顕微鏡について説明する。第9実施形態に係る顕微鏡は、位相変調ユニット60に代えて、第6実施形態に係る位相変調ユニット160が設けられる他は、第4実施形態に係る顕微鏡301と同様の構成であり、位相変調ユニット160以外の共通する各部に第4実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な図示および説明を省略する。
【0217】
第9実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット160は、照明光学系321のコリメータレンズ322を透過した照明光に対して位相変調を行い、試料TPと照明光学系321で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正する。このとき、第6実施形態の場合と同様にして、位相変調ユニット160による照明光に対する位相変調が行われる。また、第9実施形態に係る顕微鏡を用いても、第4実施形態に係る顕微鏡301と同様、第1実施形態で述べた画像取得方法により、試料TPの画像を取得することが可能である。従って、第9実施形態によれば、第6実施形態および第4実施形態と同様の効果を得るこ
とができる。
【0218】
第9実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット160に代えて、第6実施形態の変形例に係る位相変調ユニット180が設けられるようにしてもよい。上述の第6実施形態の変形例の場合と同様にして、第6実施形態の変形例に係る位相変調ユニット180により、照明光に対する位相変調を行うことが可能である。
【0219】
[第10実施形態]
次に、第10実施形態に係る顕微鏡について説明する。第10実施形態に係る顕微鏡は、位相変調ユニット60に代えて、第6実施形態に係る位相変調ユニット160が設けられる他は、第5実施形態に係る顕微鏡401と同様の構成であり、位相変調ユニット160以外の共通する各部に第5実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な図示および説明を省略する。第10実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット160は、検出光学系431のミラー435で反射した検出光に対して位相変調を行い、試料TPと検出光学系431で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正する。
【0220】
検出光学系431のミラー435で反射した検出光は、位相変調ユニット160の第5リレーレンズ171に入射するが、その後は第7実施形態と同様なので、説明を省略する。
【0221】
前述したように、位相変調用スキャナ167は、位相変調用スキャナ167に入射する検出光により位相変調素子169を走査することで、複数の照射領域の中で検出光が照射される照射領域を変えることが可能である。位相変調用スキャナ167は、試料TPにおける顕微鏡観察が行われる観察領域が変位する際に、位相変調素子169において検出光が照射される照射領域を変える。なお、試料TPにおける16個の観察領域ごとに、試料TPと照明光学系421と検出光学系431で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正するための位相変調パターン、すなわち試料TPと照明光学系421と検出光学系431で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正するための所定の位相分布が予め求められている。位相変調素子169は、位相変調素子169の表示面における各照射領域に、対応する観察領域について予め求められた位相変調パターンを表示する。これにより、位相変調用スキャナ167が位相変調素子169における照射領域を16個の観察領域ごとに変えることで、観察領域ごとに適切に求められた位相変調パターン(位相分布)に応じて検出光の位相を変化(変調)させることができる。従って、試料TPと照明光学系421と検出光学系431に起因する収差の少なくとも一部が補正された、高画質の試料TPの画像を短時間で取得することが可能になる。
【0222】
また、第10実施形態に係る顕微鏡を用いても、第5実施形態に係る顕微鏡401と同様、第1実施形態で述べた画像取得方法により、試料TPの画像を取得することが可能である。従って、第10実施形態によれば、第6実施形態および第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0223】
第10実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット160に代えて、第6実施形態の変形例に係る位相変調ユニット180が設けられるようにしてもよい。上述の第10実施形態の場合と同様にして、第6実施形態の変形例に係る位相変調ユニット180により、検出光に対する位相変調を行うことが可能である。
【0224】
[第11実施形態]
次に、
図18を参照しながら、第11実施形態に係る顕微鏡501について説明する。第11実施形態に係る顕微鏡501は、走査型顕微鏡とも称される。第11実施形態に係る顕微鏡501は、ステージ11と、光源ユニット16と、照明光学系521と、検出光
学系531と、アレイ型検出器541と、波面センサ46と、演算装置51と、記憶部52と、インターフェース部53と、顕微鏡制御部54とを備える。ステージ11および光源ユニット16は、第1実施形態に係るステージ11および光源ユニット16と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0225】
照明光学系521は、光源ユニット16から射出された照明光(励起光)で試料TPを照明する。照明光学系521は、光源ユニット16側から順に、コリメータレンズ522と、位相変調ユニット560と、ダイクロイックミラー524と、試料走査部525と、スキャンレンズ526と、第2対物レンズ527と、対物レンズ528とを有する。コリメータレンズ522は、光源ユニット16から射出された照明光を略平行光にし、位相変調ユニット560は、照明光に対して位相変調を行い、試料TPと照明光学系521で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正する。照明光学系521に含まれるコリメータレンズ522と、ダイクロイックミラー524と、試料走査部525と、スキャンレンズ526と、第2対物レンズ527と、対物レンズ528の各構成、各機能は、第1実施形態の顕微鏡の照明光学系21を含まれるコリメータレンズ22と、ダイクロイックミラー24と、試料走査部25と、スキャンレンズ26と、第2対物レンズ27と、対物レンズ28と同様なので、説明を省略する。
【0226】
検出光学系531は、試料TPで発生した光を検出光として受光する。検出光学系531は、試料TP側から順に、対物レンズ528と、第2対物レンズ527と、スキャンレンズ526と、試料走査部525と、ダイクロイックミラー524とを含む。さらに、検出光学系531は、ダイクロイックミラー524側から順に、検出フィルタ532と、集光レンズ533と、挿脱ミラー534と、検出用ピンホール板535とを有する。また、検出光学系531は、計測用ピンホール板536と、計測用リレーレンズ537とを有する。検出用ピンホール板535以外のこれらの各機能、各構成は、第1実施形態と同様なので、説明を省略する。このように、対物レンズ528と、第2対物レンズ527と、スキャンレンズ526と、試料走査部525と、ダイクロイックミラー524は、照明光学系521と検出光学系531の両方に含まれている。
【0227】
検出用ピンホール板535は、検出光学系531の光軸AX52と垂直な方向に並んだ複数のピンポール(例えば、3つのピンホール)を有する板状に形成され、試料TPと光学的に共役な位置に配置される。アレイ型検出器541は、検出用ピンホール板535の3つのピンポールと対向して配置される複数の検出器(例えば、3つの検出器)を有して構成され、検出用ピンホール板135を通過した複数の検出光(例えば、3つの検出光)を検出する。アレイ型検出器541を構成する検出器として、例えば、光電子増倍管や、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード等が用いられる。
【0228】
波面センサ46は、第1実施形態に係る波面センサ46と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。また、演算装置51、記憶部52、インターフェース部53、および顕微鏡制御部54は、第1実施形態に係る演算装置51、記憶部52、インターフェース部53、および顕微鏡制御部54と同様の構成であり、第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0229】
第11実施形態において、顕微鏡制御部54は、試料走査部525に制御信号を送信して、試料走査部525により変化する照明光および検出光の進行方向を制御する。顕微鏡制御部54は、対物レンズ保持部529に制御信号を送信して、対物レンズ保持部529に保持される対物レンズ528の位置を制御する。顕微鏡制御部54は、挿脱ミラー534に制御信号を送信して、挿脱ミラー534の挿脱を制御する。顕微鏡制御部54は、位相変調ユニット560に制御信号を送信して、位相変調ユニット560による照明光の位相変調を制御する。
【0230】
光源ユニット16の光源17から射出された照明光(励起光)は、照明光学系521のコリメータレンズ522を透過して略平行光になる。コリメータレンズ522を透過した照明光は、位相変調ユニット560に入射する。照明光が位相変調ユニット560に入射すると、位相変調ユニット560は、入射した照明光に対して位相変調し、位相変調された複数の照明光(例えば、3本の照明光)を射出するが、その後、3本の照明光は、ダイクロイックミラー524、試料走査部525、スキャンレンズ526、および第2対物レンズ527を経て、対物レンズ528の焦点面に集光される。試料TPにおいて照明光が集光される複数か所(例えば、3か所)の部分(すなわち、対物レンズ128の焦点面と重なる部分)は、試料走査部525によりx方向とy方向との2方向において2次元的に走査される。
【0231】
試料TPにおいて照明光(励起光)が集光される3か所の部分に含まれる蛍光物質から、検出光として蛍光が発光する。試料TPにおける3か所の部分で発生した3つの検出光(蛍光)は、検出光学系531としての対物レンズ528に入射するが、その後、第2対物レンズ527、スキャンレンズ526、試料走査部525、ダイクロイックミラー524、検出フィルタ532を経て集光レンズ533を透過するまでは、3か所の部分からの検出光が透過する点以外、第1実施形態と同じなので、説明を省略する。
【0232】
挿脱ミラー534が集光レンズ533と検出用ピンホール板535との間の光路から離脱している場合、集光レンズ533を透過した3つの検出光は、検出用ピンホール板535に達する。対物レンズ528の焦点位置と共役な位置で集光した検出光は、検出用ピンホール板535を通過してアレイ型検出器541に入射する。アレイ型検出器541は、アレイ型検出器541を構成する3つの検出器にそれぞれ入射した光(検出光)の光電変換を行い、光の検出信号として、その光の光量(明るさ)に対応するデータを生成する。アレイ型検出器541は、3つの検出器において生成したデータを顕微鏡制御部54に送信する。
【0233】
挿脱ミラー534が集光レンズ533と検出用ピンホール板535との間の光路に挿入されている場合、集光レンズ533を透過した3つの検出光のうち検出光学系531の光軸AX52を通る検出光は、挿脱ミラー534で反射して計測用ピンホール板536に達し、計測用リレーレンズ537を透過し、波面センサ46に入射する。波面センサ46は、波面センサ46に入射した検出光の波面の収差を計測し、計測信号として波面の収差に関するデータを顕微鏡制御部54に送信する。顕微鏡制御部54は、波面センサ46から送信された計測信号に基づいて、試料TPと照明光学系521と検出光学系531で生じる収差の少なくとも一部に関するデータを取得する。
【0234】
第11実施形態に係る顕微鏡501において、挿脱ミラー534の代わりにビームスプリッタ(図示せず)が配設され、ビームスプリッタに入射した検出光のうち一部がビームスプリッタを透過してアレイ型検出器541に到達し、ビームスプリッタに入射した検出光のうち他の一部がビームスプリッタで反射して波面センサ46に到達するように構成されてもよい。
【0235】
[位相変調ユニットの構成]
次に、
図19を参照しながら、第11実施形態に係る位相変調ユニット560について説明する。
図19に示すように、第11実施形態に係る位相変調ユニット560は、第1リレーレンズ561と、第1ミラー562と、第2リレーレンズ563と、第1シリンドリカルレンズ564と、第2シリンドリカルレンズ565と、第3リレーレンズ566と、位相変調用スキャナ567と、第4リレーレンズ568と、位相変調素子569と、第2ミラー570と、第5リレーレンズ571と、マイクロレンズアレイ572と、第6リ
レーレンズ573とを有する。なお、
図19において破線で囲まれた部分は、位相変調ユニット560の一部を
図19に対して垂直な方向から見た図である。
【0236】
位相変調ユニット560に含まれる第1リレーレンズ561と、第1ミラー562と、第2リレーレンズ563と、第1シリンドリカルレンズ564と、第2シリンドリカルレンズ565と、第3リレーレンズ566と、位相変調用スキャナ567と、第4リレーレンズ568と、位相変調素子569と、第2ミラー570と、第5リレーレンズ571の各機能、各構成は、
図15に示す第6実施形態に係る位相変調ユニット160に含まれる第1リレーレンズ161と、第1ミラー162と、第2リレーレンズ163と、第1シリンドリカルレンズ164と、第2シリンドリカルレンズ165と、第3リレーレンズ166と、位相変調用スキャナ167と、第4リレーレンズ168と、位相変調素子169と、第2ミラー170と、第5リレーレンズ171と同様なので、説明を省略する。なお、位相変調素子569は、対物レンズ528の瞳位置と光学的に共役な位置H21に配置される。
【0237】
図20に、複数の照射領域の配置例を示す。
図20の例では、位相変調素子569の表示面に表示される3個の位相変調パターンに対応して、照明光が照射され得る長方形状の3個の照射領域が設けられる。3個の照射領域として、(
図20の上側から順に)第1照射領域SC1と、第2照射領域SC2と、第3照射領域SC3とが設けられる。
【0238】
第1~第3照射領域SC1~SC3は、互いに重ならないように、照明光における楕円形の断面の長手方向と垂直な方向に並んで配置される。第1~第3照射領域SC1~SC3のうちいずれかの照射領域に照明光が照射されると、照明光の位相が変化(変調)する。具体的には、照明光が照射された照射領域に設定された位相変調パターンに応じた位相分布が照明光に付与される。また、位相変調素子569において照明光が照射される照射領域(すなわち位相変調パターン)を変えることで、照明光に付与する位相分布を変えることが可能である。
【0239】
マイクロレンズアレイ572は、照明光学系521の光軸AX51と垂直な方向に並ぶ3つのマイクロレンズを含み、第5リレーレンズ571を透過した照明光を3本の照明光に分ける。第6リレーレンズ573は、マイクロレンズアレイ572により分かれた3本の照明光を集光する。なお、
図19には、マイクロレンズアレイ572におけるマイクロレンズの数が3つである場合の例を示しているが、これに限られるものではなく、これらの数は(検出用ピンホール板535のピンホールおよびアレイ型検出器541の検出器の数と同じ)複数であればよい。マイクロレンズの数については、第11実施形態の変形例においても同様であり、説明を省略する。
【0240】
照明光学系521のコリメータレンズ522を透過した照明光は、位相変調ユニット560内に配置された位相変調素子569における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照射される。照明光が位相変調素子569における複数の照射領域(例えば、第1~第3照射領域SC1~SC3)のうちいずれかの照射領域に照射されると、照明光が照射された照射領域における位相変調パターン(位相分布)に応じて照明光の位相が変化(変調)する。位相変調素子569における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照射された照明光は、当該照射領域で反射する。なお、位相変調用スキャナ567は、位相変調用スキャナ567に入射する照明光により位相変調素子569を走査することで、複数の照射領域の中で照明光が照射される照射領域を変えることが可能である。第2ミラー570で反射した照明光は、第5リレーレンズ571を透過して略平行光となり、マイクロレンズアレイ572に入射する。
【0241】
マイクロレンズアレイ572に入射した照明光は、マイクロレンズアレイ572を透過
して3本の照明光に分かれる。マイクロレンズアレイ572において分かれた3本の照明光は、互いに略平行のまま試料TPと光学的に共役な位置B21において一旦集光し、第6リレーレンズ573に入射する。第6リレーレンズ573に入射した3本の照明光は、第6リレーレンズ573を透過し、照明光学系521のダイクロイックミラー524に入射する。このようにして、位相変調ユニット560による照明光に対する位相変調および照明光の多点化が行われる。位相変調用スキャナ567における照明光のデスキャンによって、位相変調用スキャナ567が照明光の進行方向を変化させて照射領域を変えるのに拘わらず、第5リレーレンズ171を透過した照明光は、略平行光となってマイクロレンズアレイ572に入射することができる。
【0242】
なお、試料TPにおける左右3つの観察領域ごとに、試料TPと照明光学系521と検出光学系531で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正するための位相変調パターン、すなわち試料TPと照明光学系521と検出光学系531で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正するための所定の位相分布が予め求められている。位相変調素子569は、位相変調素子569の表示面における各照射領域に、対応する観察領域について予め求められた位相変調パターンを表示する。これにより、位相変調用スキャナ567が位相変調素子569における照射領域を左右3つの観察領域ごとに変えることで、観察領域ごとに適切に求められた位相変調パターン(位相分布)に応じて照明光の位相を変化(変調)させることができる。従って、試料TPと照明光学系521と検出光学系531に起因する収差の少なくとも一部が補正された、高画質の試料TPの画像を短時間で取得することが可能になる。
【0243】
図21に、試料TPにおける複数の観察領域の配置例を示す。
図21の例では、顕微鏡501の視野内において試料TPにおける9個の観察領域が設定される。9個の観察領域のうち(
図21の上から)1行目には、左側から順に、第1観察領域KC1と、第2観察領域KC2と、第3観察領域KC3とが設定される。9個の観察領域のうち(
図21の上から)2行目には、左側から順に、第4観察領域KC4と、第5観察領域KC5と、第6観察領域KC6とが設定される。9個の観察領域のうち(
図21の上から)3行目には、左側から順に、第7観察領域KC7と、第8観察領域KC8と、第9観察領域KC9とが設定される。
【0244】
図20および
図21に示す例において、位相変調素子569は、位相変調素子569の第1照射領域SC1に、第1~第3観察領域KC1~KC3について予め求められた位相変調パターンを表示する。位相変調素子569は、位相変調素子569の第2照射領域SC2に、第4~第6観察領域KC4~KC6について予め求められた位相変調パターンを表示する。位相変調素子569は、位相変調素子569の第3照射領域SC3に、第7~第9観察領域KC7~KC9について予め求められた位相変調パターンを表示する。
【0245】
試料TPにおける第1~第9観察領域KC1~KC9を観察する際、すなわち第1~第9観察領域KC1~KC9の画像を取得する際、まず、第1~第3観察領域KC1~KC3の画像を同時に取得する。第1~第3観察領域KC1~KC3の画像を取得する際、位相変調ユニット560の位相変調用スキャナ567は、位相変調素子569に対する照明光の照射領域を第1照射領域SC1に変える。照明光学系521の試料走査部525は、位相変調素子569の第1照射領域SC1に照射された照明光LC1により、第1~第3観察領域KC1~KC3において同時にラスタスキャンを行う。
【0246】
具体的は、
図20における第1照射領域SC1の左側に照射されて分かれた照明光LC1aにより、第1観察領域KC1においてラスタスキャンを行う。
図20における第1照射領域SC1の中央に照射されて分かれた照明光LC1bにより、第2観察領域KC2においてラスタスキャンを行う。
図20における第1照射領域SC1の右側に照射されて分
かれた照明光LC1cにより、第3観察領域KC3においてラスタスキャンを行う。従って、試料TPにおける第1~第3観察領域KC1~KC3に起因する収差が補正された、高画質の第1~第3観察領域KC1~KC3の画像を短時間で取得することが可能になる。
【0247】
第1~第3観察領域KC1~KC3の画像を取得した後、第4~第6観察領域KC4~KC6の画像を同時に取得する。第4~第6観察領域KC4~KC6の画像を取得する際、位相変調ユニット560の位相変調用スキャナ567は、位相変調素子569に対する照明光の照射領域を第1照射領域SC1から第2照射領域SC2に変える。照明光学系521の試料走査部525は、位相変調素子569の第2照射領域SC2に照射された照明光LC2により、第4~第6観察領域KC4~KC6において同時にラスタスキャンを行う。
【0248】
具体的は、
図20における第2照射領域SC2の左側に照射されて分かれた照明光LC2aにより、第4観察領域KC4においてラスタスキャンを行う。
図20における第2照射領域SC2の中央に照射されて分かれた照明光LC2bにより、第5観察領域KC5においてラスタスキャンを行う。
図20における第2照射領域SC2の右側に照射されて分かれた照明光LC2cにより、第6観察領域KC6においてラスタスキャンを行う。従って、試料TPにおける第4~第6観察領域KC4~KC6に起因する収差が補正された、高画質の第4~第6観察領域KC4~KC6の画像を短時間で取得することが可能になる。
【0249】
第4~第6観察領域KC4~KC6の画像を取得した後、第7~第9観察領域KC7~KC9の画像を同時に取得する。第7~第9観察領域KC7~KC9の画像を取得する際、位相変調ユニット560の位相変調用スキャナ567は、位相変調素子569に対する照明光の照射領域を第2照射領域SC2から第3照射領域SC3に変える。照明光学系521の試料走査部525は、位相変調素子569の第3照射領域SC3に照射された照明光LC3により、第7~第9観察領域KC7~KC9において同時にラスタスキャンを行う。
【0250】
具体的は、
図20における第3照射領域SC3の左側に照射されて分かれた照明光LC3aにより、第7観察領域KC7においてラスタスキャンを行う。
図20における第3照射領域SC3の中央に照射されて分かれた照明光LC3bにより、第8観察領域KC8においてラスタスキャンを行う。
図20における第3照射領域SC3の右側に照射されて分かれた照明光LC3cにより、第9観察領域KC9においてラスタスキャンを行う。従って、試料TPにおける第7~第9観察領域KC7~KC9に起因する収差が補正された、高画質の第7~第9観察領域KC7~KC9の画像を短時間で取得することが可能になる。このようにして、試料TPにおける第1~第9観察領域KC1~KC9に起因する収差が個々に補正された、高画質の試料TPの画像をより短時間で取得することが可能になる。
【0251】
なお、第11実施形態に係る顕微鏡501を用いても、第1実施形態で述べた画像取得方法により、試料TPの画像を取得することが可能である。第11実施形態によれば、位相変調ユニット560は、照明光が照射され得る複数の照射領域を有し、複数の照射領域における照明光の照射位置に応じて照明光に対して位相分布を付与する位相変調素子569と、照明光が照射される照射領域を変える位相変調用スキャナ567とを有している。位相変調用スキャナ567により、位相変調素子569に対する照明光の照射領域を変えることで、照明光の位相を変化させる位相変調パターンを変更するようにすれば、位相変調素子569で表示する位相変調パターンを切り替える場合よりも、短時間で位相変調パターンを変更することができる。従って、試料TPにおける観察領域が変位する際に、位
相変調素子569に対する照明光の照射領域を変えることで、試料TPにおける複数の観察領域に起因する収差が個々に補正された、高画質の試料TPの画像を短時間で取得することが可能になる。
【0252】
また、位相変調用スキャナ567は、位相変調素子569に対する照明光の照射領域を変えるのに拘わらず、照射領域に照射されて位相が変化した照明光の進行方向を一定の方向(照明光学系521の光軸AX51に沿った方向)にする。これにより、照明光の光路を変えることなく、照明光の位相のみを変化させることができる。
【0253】
また、位相変調素子569における複数の照射領域は、互いに重ならないようになっている。これにより、試料TPの画像取得範囲ごとに適切な位相変調パターンを設けることができる。
【0254】
また、位相変調ユニット560は、複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照射される照明光の断面形状を楕円形にする第1シリンドリカルレンズ564および第2シリンドリカルレンズ565と、照射領域に照射された照明光を複数の光に分けるマイクロレンズアレイ572(光学素子アレイ)とを有している。これにより、照明光学系521は、マイクロレンズアレイ572によって分けられた複数の(例えば3本の)照明光により試料TPを照明することが可能になり、高画質の試料TPの画像をより短時間で取得することが可能になる。
【0255】
[位相変調ユニットの変形例]
次に、
図22を参照しながら、第11実施形態における位相変調ユニットの変形例について説明する。
図22に示すように、第11実施形態の変形例に係る位相変調ユニット580は、ビームスプリッタ591と、第1リレーレンズ581と、ミラー582と、第2リレーレンズ583と、第1シリンドリカルレンズ584と、第2シリンドリカルレンズ585と、第3リレーレンズ586と、位相変調用スキャナ587と、第4リレーレンズ588と、位相変調素子569と、マイクロレンズアレイ592と、第6リレーレンズ593とを有する。なお、
図22において破線で囲まれた部分は、位相変調ユニット580の一部を
図22に対して垂直な方向から見た図である。
【0256】
位相変調ユニット580に含まれるビームスプリッタ591と、第1リレーレンズ581と、ミラー582と、第2リレーレンズ583と、第1シリンドリカルレンズ584と、第2シリンドリカルレンズ585と、第3リレーレンズ586と、位相変調用スキャナ587と、第4リレーレンズ588と、位相変調素子569の各機能、各構成は、
図17に示す第6実施形態の変形例に係る位相変調ユニット180に含まれるビームスプリッタ191と、第1リレーレンズ181と、ミラー182と、第2リレーレンズ183と、第1シリンドリカルレンズ184と、第2シリンドリカルレンズ185と、第3リレーレンズ186と、位相変調用スキャナ187と、第4リレーレンズ188と、位相変調素子169と同様なので、説明を省略する。マイクロレンズアレイ592は、照明光学系521の光軸AX51と垂直な方向に並ぶ3つのマイクロレンズを含み、ビームスプリッタ591で反射した照明光を3本の照明光に分ける。第6リレーレンズ593は、マイクロレンズアレイ592により分かれた3本の照明光を集光する。
【0257】
照明光学系521のコリメータレンズ522を透過した照明光は、位相変調ユニット580内に配置された位相変調素子569における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照射される。
【0258】
照明光が位相変調素子569における複数の照射領域(例えば、第1~第3照射領域SC1~SC3)のうちいずれかの照射領域に照射されると、照明光が照射された照射領域
における位相変調パターンに応じて照明光の位相が変化する。位相変調素子569における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照射された照明光は、当該照射領域で反射する。なお、位相変調用スキャナ587は、位相変調用スキャナ587に入射する照明光により位相変調素子569を走査することで、複数の照射領域の中で照明光が照射される照射領域を変えることが可能である。第1リレーレンズ581からビームスプリッタ591に入射した照明光の一部は、当該ビームスプリッタ591で反射してマイクロレンズアレイ592に入射する。
【0259】
マイクロレンズアレイ592に入射した照明光は、マイクロレンズアレイ592を透過して3本の照明光に分かれる。マイクロレンズアレイ592において分かれた3本の照明光は、互いに略平行のまま試料TPと光学的に共役な位置B22において一旦集光し、第6リレーレンズ593に入射する。第6リレーレンズ593に入射した3本の照明光は、第6リレーレンズ593を透過し、照明光学系521のダイクロイックミラー524に入射する。これにより、第11実施形態に係る位相変調ユニット560の場合と同様にして、照明光に対する位相変調が行われる。
【0260】
第11実施形態に係る顕微鏡501において、位相変調ユニット560に代えて、第1実施形態に係る位相変調ユニット60が設けられるようにしてもよい。この場合、位相変調素子65には計算機生成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)を用
いて計算された位相パターンが表示され、位相変調素子65における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照明光が照射されると、回折現象により、照明光が照射された照射領域から複数の反射光(回折光)が生じるようしてもよい。このとき、計算機生成ホログラム(CGH)を用いることで、回折現象により生じる複数の反射光それぞれに対し、各反射光(回折光)で照明する試料の観察位置に応じた異なる位相分布を付与することが可能である。複数の回折光に異なる位相分布を付与する計算機生成ホログラム(CGH)の計算は、例えば文献「Anisoplanatic adaptive optics in parallelized laser scanning microscopy, Optics EXPRESS, Vol. 28, No. 10/11 (2020)」に記載の
方法を用いることが可能である。また、位相変調ユニット560に代えて、第6実施形態に係る位相変調ユニット160が設けられるようにしてもよい。この場合、位相変調素子169が計算機生成ホログラム(CGH)を用いて構成され、位相変調素子169における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照明光が照射されると、回折現象により、照明光が照射された照射領域から複数の反射光(回折光)が生じるようしてもよい。このとき、計算機生成ホログラム(CGH)を用いることで、回折現象により生じる複数の反射光それぞれに対し、各反射光(回折光)で照明する試料の観察位置に応じた異なる位相分布を付与することが可能である。なお、回折光の数は、試料TPに応じて任意に決めることができる。
【0261】
[第12実施形態]
次に、
図23を参照しながら、第12実施形態に係る顕微鏡について説明する。第12実施形態に係る顕微鏡は、位相変調ユニット60に代えて、第12実施形態に係る位相変調ユニット610が設けられる他は、第1実施形態に係る顕微鏡1と同様の構成であり、位相変調ユニット610以外の共通する各部に第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な図示および説明を省略する。第12実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット610は、コリメータレンズ22を透過した照明光に対して位相変調を行い、試料TPと照明光学系21で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正する。
図23に示すように、第12実施形態に係る位相変調ユニット610は、第1マイクロレンズアレイ611と、第1ミラー612と、第1リレーレンズ613と、第1位相変調用スキャナ614と、第2リレーレンズ615と、位相変調素子616と、第2位相変調用スキャナ617と、第3リレーレンズ618と、第2ミラー619と、第2マイクロレンズアレイ620とを有する。なお、第1位相変調用スキャナ614と第2位相変調用スキャナ617に代え
て、単一の位相変調用スキャナで構成してもよい。
【0262】
第1マイクロレンズアレイ611は、照明光学系21の光軸AX1と垂直な方向に放射状に並ぶ複数のマイクロレンズ(例えば、12個のマイクロレンズ)を含む。第1マイクロレンズアレイ611は、照明光学系21のコリメータレンズ22を透過して略平行光となった照明光を、複数の照明光(例えば、12本の照明光)に分け、複数点に集光する。第1ミラー612は、第1マイクロレンズアレイ611により分かれた複数の照明光を第1リレーレンズ613に向けて反射させる。第1リレーレンズ613は、第1ミラー612で反射した複数の照明光を略平行にする。
【0263】
第1位相変調用スキャナ614は、第1マイクロレンズアレイ611により分かれた複数の照明光が重なる位置(第1リレーレンズ113の焦点位置近傍)に配置される。第1位相変調用スキャナ614は、反射面の向き(方位角)が1軸回転または2軸回転によって変化するように保持されたミラー(例えば、ガルバノミラーやレゾナントミラー、MEMSミラー等)を用いて構成される。第1位相変調用スキャナ614は、第1マイクロレンズアレイ611により分かれた複数の照明光の進行方向を変化させる。これにより、第1位相変調用スキャナ614は、
図23に示すように、第1マイクロレンズアレイ611により分かれた複数の照明光により位相変調素子616を走査する。
【0264】
第2リレーレンズ615は、位相変調素子616と対向して配置される。第2リレーレンズ615は、第1位相変調用スキャナ614を通った複数の照明光を複数点に集光する。第2リレーレンズ615は、位相変調素子616で反射した複数の照明光を略平行にする。
【0265】
位相変調素子616は、第1マイクロレンズアレイ611により分かれた各照明光が集光する位置(第1マイクロレンズアレイにより分かれた照明光が集光する位置と共役な位置)に配置される。位相変調素子616は、例えば反射型液晶素子や透過型液晶素子等を用いて構成され、表示面において複数の位相変調パターンを分割して表示する。なお、位相変調素子616の表示面には、照明光が照射され得る複数の照射領域(例えば、36組の照射領域)が設けられる。各照射領域は、互いに離れた複数個の部分領域(例えば、12個の部分領域)に分割されている。位相変調素子616の表示面における各照射領域を構成する部分領域は、観察領域の配置に対応して、互いに重ならないように縦横に並んで設けられる。位相変調素子616は、複数の位相変調パターンを、複数の照射領域における複数個の部分領域に分割して表示する。
【0266】
図24に、複数の照射領域および各照射領域を構成する複数個の部分領域の配置例を示す。
図24の例において、位相変調素子616の表示面には、12個の部分領域(A~L)に分割された36組の照射領域が設けられる。例えば、第1照射領域SD1において、12個の部分領域のうち(
図24の上から)1段目には、左側から順に、第1部分領域SD1Aと、第2部分領域SD1Bとが分離して配置される。第1照射領域SD1において、12個の部分領域のうち(
図24の上から)2段目には、左側から順に、第3部分領域SD1Cと、第4部分領域SD1Dと、第5部分領域SD1Eと、第6部分領域SD1Fとが分離して配置される。第1照射領域SD1において、12個の部分領域のうち(
図24の上から)3段目には、左側から順に、第7部分領域SD1Gと、第8部分領域SD1Hと、第9部分領域SD1Iと、第10部分領域SD1Jとが分離して配置される。第1照射領域SD1において、12個の部分領域のうち(
図24の上から)4段目には、左側から順に、第11部分領域SD1Kと、第12部分領域SD1Lとが分離して配置される。
【0267】
また、
図24および
図25に示すように、第1照射領域SD1の第1部分領域SD1A
を含む6×6個の36個の部分領域には、第1~第36照射領域の第1部分領域SD1A~SD36Aが配置される。具体的には、36個の部分領域のうち(
図25の上から)1行目には、左側から順に、第1照射領域SD1の第1部分領域SD1Aと、第2照射領域の第1部分領域SD2Aと、第3照射領域の第1部分領域SD3Aと、第4照射領域の第1部分領域SD4Aと、第5照射領域の第1部分領域SD5Aと、第6照射領域の第1部分領域SD6Aとが配置される。36個の部分領域のうち(
図25の上から)2行目には、左側から順に、第7照射領域の第1部分領域SD7Aと、第8照射領域の第1部分領域SD8Aと、第9照射領域の第1部分領域SD9Aと、第10照射領域の第1部分領域SD10Aと、第11照射領域の第1部分領域SD11Aと、第12照射領域の第1部分領域SD12Aとが配置される。36個の部分領域のうち(
図25の上から)3行目には、左側から順に、第13照射領域の第1部分領域SD13Aと、第14照射領域の第1部分領域SD14Aと、第15照射領域の第1部分領域SD15Aと、第16照射領域の第1部分領域SD16Aと、第17照射領域の第1部分領域SD17Aと、第18照射領域の第1部分領域SD18Aとが配置される。
【0268】
36個の部分領域のうち(
図25の上から)4行目には、左側から順に、第19照射領域の第1部分領域SD19Aと、第20照射領域の第1部分領域SD20Aと、第21照射領域の第1部分領域SD21Aと、第22照射領域の第1部分領域SD22Aと、第23照射領域の第1部分領域SD23Aと、第24照射領域の第1部分領域SD24Aとが配置される。36個の部分領域のうち(
図25の上から)5行目には、左側から順に、第25照射領域の第1部分領域SD25Aと、第26照射領域の第1部分領域SD26Aと、第27照射領域の第1部分領域SD27Aと、第28照射領域の第1部分領域SD28Aと、第29照射領域の第1部分領域SD29Aと、第30照射領域の第1部分領域SD30Aとが配置される。36個の部分領域のうち(
図25の上から)6行目には、左側から順に、第31照射領域の第1部分領域SD31Aと、第32照射領域の第1部分領域SD32Aと、第33照射領域の第1部分領域SD33Aと、第34照射領域の第1部分領域SD34Aと、第35照射領域の第1部分領域SD35Aと、第36照射領域の第1部分領域SD36Aとが配置される。
【0269】
第1~第36照射領域の第1部分領域SD1A~SD36Aと同様に、第1照射領域SD1の第2部分領域SD1Bを含む6×6個の36個の部分領域には、第1~第36照射領域の第2部分領域(図示せず)が配置される。第1照射領域SD1の第3部分領域SD1Cを含む6×6個の36個の部分領域には、第1~第36照射領域の第3部分領域(図示せず)が配置される。第1照射領域SD1の第4部分領域SD1Dを含む6×6個の36個の部分領域には、第1~第36照射領域の第4部分領域(図示せず)が配置される。第1照射領域SD1の第5部分領域SD1Eを含む6×6個の36個の部分領域には、第1~第36照射領域の第5部分領域(図示せず)が配置される。第1照射領域SD1の第6部分領域SD1Fを含む6×6個の36個の部分領域には、第1~第36照射領域の第6部分領域(図示せず)が配置される。
【0270】
第1照射領域SD1の第7部分領域SD1Gを含む6×6個の36個の部分領域には、第1~第36照射領域の第7部分領域(図示せず)が配置される。第1照射領域SD1の第8部分領域SD1Hを含む6×6個の36個の部分領域には、第1~第36照射領域の第8部分領域(図示せず)が配置される。第1照射領域SD1の第9部分領域SD1Iを含む6×6個の36個の部分領域には、第1~第36照射領域の第9部分領域(図示せず)が配置される。第1照射領域SD1の第10部分領域SD1Jを含む6×6個の36個の部分領域には、第1~第36照射領域の第10部分領域(図示せず)が配置される。第1照射領域SD1の第11部分領域SD1Kを含む6×6個の36個の部分領域には、第1~第36照射領域の第11部分領域(図示せず)が配置される。第1照射領域SD1の第12部分領域SD1Lを含む6×6個の36個の部分領域には、第1~第36照射領域
の第12部分領域(図示せず)が配置される。
【0271】
図24に示すように、位相変調素子616は、第1照射領域SD1の位相変調パターンを、第1照射領域SD1における第1~第12部分領域SD1A~SD1Lに分割して表示する。位相変調素子616は、第2照射領域SD2の位相変調パターンを、第2照射領域SD2における第1~第12部分領域SD2A~SD2Lに分割して表示する。このように、位相変調素子616は、第n照射領域SDn(n=1~36)の位相変調パターンを、第n照射領域SDnにおける第1~第12部分領域SDnA~SDnLに分割して表示する。
図24に示す例において、第1マイクロレンズアレイ611により分かれた12本の照明光は、第n照射領域SDnにおける第1~第12部分領域SDnA~SDnL、すなわち、第1~第36照射領域のうちいずれかの照射領域における第1~第12部分領域に照射される。なお、位相変調素子616に設定される複数の照射領域の配置は、必ずしも図示したような格子状の配置に限らず、第1位相変調用スキャナ614が位相変調素子616上を走査する任意の軌道上に配置されてもよい。
【0272】
第1~第36照射領域のうちいずれかの照射領域における第1~第12部分領域に、分割された12本の照明光が照射されると、各照明光の位相が変化(変調)する。具体的には、照明光が照射された部分領域における位相値に応じた位相が各照明光に付与される。結果として、
図26に示すように、マイクロレンズアレイ620で結合されて(後述)位相変調ユニット610から射出される照明光に、照射領域を構成する第1~第12部分領域のそれぞれに設定された位相値に応じた位相分布が付与される。また、位相変調素子616において照明光が照射される照射領域(すなわち、第1~第12部分領域の組)を変えることで、位相変調ユニット610から出射する照明光に付与する位相分布(検出光が照射領域に照射される場合、検出光に付与する位相分布)を変えることが可能である。
【0273】
第2位相変調用スキャナ617は、第1マイクロレンズアレイ611により分かれた複数の照明光が重なる位置(第2リレーレンズ615の焦点位置近傍)に配置される。第2位相変調用スキャナ617は、第1位相変調用スキャナ614と同様に構成される。第2位相変調用スキャナ617は、位相変調素子を透過または反射し第2リレーレンズ615により略平行となった複数の照明光が第3リレーレンズ618に向けて進むように、すなわち位相変調ユニット610から射出される照明光が照明光学系21の光軸AX1に沿って進むように照明光の進行方向を変化させる。第3リレーレンズ618は、第2位相変調用スキャナ617を通った複数の照明光を複数点に集光する。第2ミラー619は、第3リレーレンズ618を透過した複数の照明光を第2マイクロレンズアレイ620に向けて反射させる。第2マイクロレンズアレイ620は、第1マイクロレンズアレイ611と同様に構成される。第2マイクロレンズアレイ620は、第2ミラー619で反射した複数の照明光を結合して略平行光にする。このようにして、位相変調ユニット610による照明光に対する位相変調が行われる。
【0274】
なお、複数の照射領域のうちいずれかの照射領域における複数個の部分領域で反射した複数の照明光が、第2リレーレンズ615を透過して第2位相変調用スキャナ617を通ると、位相変調ユニット610から射出される照明光が照明光学系21の光軸AX1に沿って進むようになる。第2位相変調用スキャナ617における照明光のデスキャンによって、第1位相変調用スキャナ614が照明光の進行方向を変化させて照射領域を変えるのに拘わらず、第2マイクロレンズアレイ620を透過した複数の照明光は、略平行な1つの照明光となって照明光学系21のダイクロイックミラー24に入射することができる。
【0275】
前述したように、第1位相変調用スキャナ614は、第1位相変調用スキャナ614に入射する複数の照明光により位相変調素子616を走査することで、位相変調素子616における複数の照射領域の中で照明光が照射される照射領域を変えることが可能である。
第12実施形態において、照明光学系21の試料走査部25は、位相変調ユニット610から射出される照明光により、試料TPにおける複数の観察領域に跨る走査を行う。第1位相変調用スキャナ614は、複数の観察領域に跨る走査とタイミングを合わせて、位相変調素子616において照明光が照射される照射領域を順次変える。なお、試料TPにおける複数の観察領域ごとに、試料TPと照明光学系21で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正するための位相変調パターン、すなわち試料TPと照明光学系21で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正するための所定の位相分布が予め求められている。位相変調素子616は、位相変調素子616の各照射領域における複数個の部分領域に、対応する観察領域について予め求められた位相変調パターンを分割して表示する。複数の観察領域に跨る走査とタイミングを合わせて、位相変調素子616において照明光が照射される照射領域を順次変化させることで、1つの観察領域に対して走査を行う毎に照射領域を変える場合と比較して、より短時間で収差が補正された試料TPの画像を取得することが可能になる。
【0276】
図27に、試料TPにおける複数の観察領域の配置例を示す。
図27の例では、顕微鏡1の視野内において試料TPにおける36個の観察領域が設定される。36個の観察領域のうち(
図27の上から)1行目には、左側から順に、第1観察領域KD1と、第2観察領域KD2と、第3観察領域KD3と、第4観察領域KD4と、第5観察領域KD5と、第6観察領域KD6とが設定される。36個の観察領域のうち(
図27の上から)2行目には、左側から順に、第7観察領域KD7と、第8観察領域KD8と、第9観察領域KD9と、第10観察領域KD10と、第11観察領域KD11と、第12観察領域KD12とが設定される。36個の観察領域のうち(
図27の上から)3行目には、左側から順に、第13観察領域KD13と、第14観察領域KD14と、第15観察領域KD15と、第16観察領域KD16と、第17観察領域KD17と、第18観察領域KD18とが設定される。
【0277】
36個の観察領域のうち(
図27の上から)4行目には、左側から順に、第19観察領域KD19と、第20観察領域KD20と、第21観察領域KD21と、第22観察領域KD22と、第23観察領域KD23と、第24観察領域KD24とが設定される。36個の観察領域のうち(
図27の上から)5行目には、左側から順に、第25観察領域KD25と、第26観察領域KD2と、第27観察領域KD27と、第28観察領域KD28と、第29観察領域KD29と、第30観察領域KD30とが設定される。36個の観察領域のうち(
図27の上から)6行目には、左側から順に、第31観察領域KD31と、第32観察領域KD32と、第33観察領域KD33と、第34観察領域KD34と、第35観察領域KD35と、第36観察領域KD36とが設定される。なお、各観察領域KD1~KD36の面積は、照明光LD1の断面積より大きくてもよく、照明光LD1の断面積と略同じであってもよい。
【0278】
図24~
図27に示す例において、位相変調素子616は、第1観察領域KD1について予め求められた位相変調パターンを、位相変調素子616の第1照射領域SD1における第1~第12部分領域SD1A~SD1Lに分割して表示する。位相変調素子616は、第2観察領域KA2について予め求められた位相変調パターンを、位相変調素子616の第2照射領域SD2における第1~第12部分領域SD2A~SD2Lに分割して表示する。このようにして、位相変調素子616は、第n観察領域KDn(n=1~36)について予め求められた位相変調パターンを、位相変調素子616の第n照射領域SDnにおける第1~第12部分領域SDnA~SDnLに分割して表示する。
【0279】
試料TPにおける第1~第36観察領域KD1~KD36を観察する際、すなわち第1~第36観察領域KD1~KD36の画像を取得する際、照明光学系21の試料走査部25は、位相変調ユニット610から射出される照明光により、試料TPにおける第1~第
36観察領域KD1~KD36に跨る走査を行う。例えば、第1~第6観察領域KD1~KD6まで直線的に走査を行うタイミングに同期して、第1位相変調用スキャナ614は、位相変調素子616に対する照明光の照射領域を第1~第6照射領域まで順に変える。このとき、分かれた照明光が照射される各部分領域は、第1照射領域における各部分領域から第6照射領域における各部分領域まで連続的に変化する。例えば
図25に示すように、分かれた照明光LD1が照射される第1部分領域は、第1照射領域における第1部分領域SD1Aから第6照射領域における第1部分領域SD6Aまで連続的に変化する。
【0280】
また例えば、第7~第12観察領域KD7~KD12まで直線的に走査を行うタイミングに同期して、第1位相変調用スキャナ614は、位相変調素子616に対する照明光の照射領域を第7~第12照射領域まで順に変える。このとき、分かれた照明光が照射される各部分領域は、第7照射領域における各部分領域から第12照射領域における各部分領域まで連続的に変化する。例えば
図25に示すように、分かれた照明光LD1が照射される第1部分領域は、第7照射領域における第1部分領域SD7Aから第12照射領域における第1部分領域SD12Aまで連続的に変化する。
【0281】
以下同様にして、第13~第18観察領域KD13~KD18まで直線的に走査を行うタイミングに同期して、第1位相変調用スキャナ614は、位相変調素子616に対する照明光の照射領域を第13~第18照射領域まで順に変える。第19~第24観察領域KD19~KD24まで直線的に走査を行うタイミングに同期して、第1位相変調用スキャナ614は、位相変調素子616に対する照明光の照射領域を第19~第24照射領域まで順に変える。第25~第30観察領域KD25~KD30まで直線的に走査を行うタイミングに同期して、第1位相変調用スキャナ614は、位相変調素子616に対する照明光の照射領域を第25~第30照射領域まで順に変える。第31~第36観察領域KD31~KD36まで直線的に走査を行うタイミングに同期して、第1位相変調用スキャナ614は、位相変調素子616に対する照明光の照射領域を第31~第36照射領域まで順に変える。
【0282】
これにより、1つの観察領域に対して走査を行う毎に照射領域を変える場合と比較して、試料TPにおける第1~第36観察領域KD1~KD36に起因する収差が個々に補正された、高画質の試料TPの画像をより短時間で取得することが可能になる。なお、第2位相変調用スキャナ617は、第1位相変調用スキャナ614と同期して作動し、位相変調ユニット610から射出される照明光が照明光学系21の光軸AX1に沿って進むように、各照射領域における第1~第12部分領域に照射されて反射した12本の照明光の進行方向を変化させる。
【0283】
なお、第12実施形態に係る顕微鏡を用いても、第1実施形態で述べた画像取得方法により、試料TPの画像を取得することが可能である。第12実施形態によれば、位相変調ユニット610は、照明光が照射され得る複数の照射領域を有し、複数の照射領域における照明光の照射位置に応じて照明光に対して位相分布を付与する位相変調素子616と、照明光が照射される照射領域を変える第1位相変調用スキャナ614とを有している。第1位相変調用スキャナ614により、位相変調素子616に対する照明光の照射領域を変えることで、照明光の位相を変化させる位相変調パターンを変更するようにすれば、位相変調素子616で表示する位相変調パターンを切り替える場合よりも、短時間で位相変調パターンを変更することができる。
【0284】
また、位相変調ユニット610は、各照射領域における複数個の部分領域に、照明光を複数の照明光に分けて照射する第1マイクロレンズアレイ611(光学素子アレイ)を有している。従って、第1位相変調用スキャナ614により、照明光学系21の試料走査部25が試料TPを走査するのに同期して、複数の照明光が照射される複数個の部分領域に
分割された照射領域を変えることで、1つの観察領域に対して走査を行う毎に照射領域を変える場合と比較して、試料TPにおける複数の観察領域に起因する収差が個々に補正された、高画質の試料TPの画像をより短時間で取得することが可能になる。
【0285】
また、位相変調ユニット610は、第1位相変調用スキャナ614が位相変調素子616に対する照明光の照射領域を変えるのに拘わらず、照射領域に照射されて位相が変化した照明光の進行方向を一定の方向(照明光学系21の光軸AX1に沿った方向)にする第2位相変調用スキャナ617を有している。これにより、照明光の光路を変えることなく、照明光の位相のみを変化させることができる。
【0286】
[位相変調ユニットの第1変形例]
次に、
図28を参照しながら、第12実施形態における位相変調ユニットの第1変形例について説明する。
図28に示すように、第12実施形態の第1変形例に係る位相変調ユニット630は、ビームスプリッタ637と、マイクロレンズアレイ631と、ミラー632と、第1リレーレンズ633と、位相変調用スキャナ634と、第2リレーレンズ635と、位相変調素子616とを有するが、ビームスプリッタ637以外は、位相変調ユニット610に含まれる第1マイクロレンズアレイ611と、第1ミラー612と、第1リレーレンズ613と、第1位相変調用スキャナ614と、第2リレーレンズ615と、位相変調素子616と、第2位相変調用スキャナ617と、第3リレーレンズ618と、第2ミラー619と、第2マイクロレンズアレイ620の各機能、各構成と同じなので、説明を省略する。ビームスプリッタ637の透過率と反射率の比率は、例えば1:1に設定される。照明光学系21のコリメータレンズ22からビームスプリッタ637に入射した照明光の一部は、当該ビームスプリッタ637を透過してマイクロレンズアレイ631に入射する。マイクロレンズアレイ631からビームスプリッタ637に入射した照明光の一部は、当該ビームスプリッタ637で反射して照明光学系21のダイクロイックミラー24に入射する。
【0287】
[位相変調ユニットの第2変形例]
次に、
図29を参照しながら、第12実施形態における位相変調ユニットの第2変形例について説明する。
図29に示すように、第12実施形態の第2変形例に係る位相変調ユニット640は、第1マイクロレンズアレイディスク641と、モータ645と、第1ミラー642と、第1リレーレンズ643と、第2リレーレンズ644と、位相変調素子616と、第3リレーレンズ647と、第2ミラー648と、第2マイクロレンズアレイディスク649とを有するが、第1マイクロレンズアレイディスク641、モータ645及び第2マイクロレンズアレイディスク649以外は、位相変調ユニット610に含まれる第1ミラー612と、第1リレーレンズ613と、第2リレーレンズ615と、位相変調素子616と、第3リレーレンズ618と、第2ミラー619の各機構、各構成と同じなので、説明を省略する。位相変調ユニット640は、位相変調ユニット610に含まれる第1マイクロレンズアレイ611、第1位相変調用スキャナ614、第2位相変調用スキャナ617、第2マイクロレンズアレイ620の機能、構成を第1マイクロレンズアレイディスク641、モータ645及び第2マイクロレンズアレイディスク649に変更したものに相当する。
【0288】
第1マイクロレンズアレイディスク641は、照明光学系21の光軸AX1と垂直な方向に放射状に並ぶ複数のマイクロレンズ(例えば、12個のマイクロレンズ)を含む、円盤状に形成される。第1マイクロレンズアレイディスク641は、コリメータレンズ22を透過して略平行光となった照明光を、複数の照明光(例えば、12本の照明光)に分ける。第1マイクロレンズアレイディスク641は、第1回転軸646aを介してモータ645に回転可能に支持される。モータ645は、第1マイクロレンズアレイディスク641を回転移動させることにより、第1マイクロレンズアレイディスク641により分かれ
た複数の照明光の進行方向を変化させる。これにより、モータ645は、第1マイクロレンズアレイディスク641により分かれた複数の照明光により位相変調素子616を走査する。
【0289】
第2マイクロレンズアレイディスク649は、第1マイクロレンズアレイディスク641と同様に構成される。第2マイクロレンズアレイディスク649は、第2マイクロレンズアレイディスク649に入射した複数の照明光を結合して略平行光にする。第2マイクロレンズアレイディスク649は、第2回転軸646bを介してモータ645に回転可能に支持される。モータ645は、第1マイクロレンズアレイディスク641と同期して第2マイクロレンズアレイディスク649を回転移動させることにより、第2マイクロレンズアレイディスク649を透過した照明光が照明光学系21の光軸AX1に沿って進むようにする。
【0290】
第1マイクロレンズアレイディスク641により分かれた複数の照明光が、複数の照射領域のうちいずれかの照射領域における複数個の部分領域(例えば、第1~第36照射領域のうちいずれかの照射領域における第1~第12部分領域)に照射されると、照明光が照射された部分領域における位相変調パターンに応じて各照明光の位相が変化する。複数の照射領域のうちいずれかの照射領域における複数個の部分領域に照射された複数の照明光は、各部分領域で反射する。なお、モータ645は、第1マイクロレンズアレイディスク641を回転移動させて、第1マイクロレンズアレイディスク641により分かれた複数の照明光により位相変調素子616を走査することで、位相変調素子616における複数の照射領域の中で照明光が照射される照射領域(すなわち、第1~第12部分領域の組)を変えることが可能である。位相変調素子616上には、第1マイクロレンズアレイディスク641の回転により走査される複数の照明光の位置及び軌道に沿った位置に、複数の照射領域と各照射領域が互いに離れて分割された部分領域が設定される。
【0291】
[位相変調ユニットの第3変形例]
次に、
図30を参照しながら、第12実施形態における位相変調ユニットの第3変形例について説明する。
図30に示すように、第12実施形態の第3変形例に係る位相変調ユニット650は、第1リレーレンズ651と、第1ミラー652と、第2リレーレンズ653と、マイクロレンズアレイディスク654と、モータ655、位相変調素子616と、第2ミラー657と、第3リレーレンズ658とを有するが、マイクロレンズアレイディスク654、モータ655及び位相変調素子616以外は、
図3に示す位相変調ユニット60に含まれる第1リレーレンズ61と、第1ミラー62と、第2リレーレンズ64と、第2ミラー67と、第3リレーレンズ68と同じなので、説明を省略する。第1ミラー652は、試料TPと光学的に共役な位置B34の近傍に配置される。第1ミラー652は、第1リレーレンズ651を透過した照明光を第2リレーレンズ653に向けて反射させる。第2リレーレンズ653は、第1ミラー652で反射した照明光を略平行光にする。また、第2リレーレンズ653は、マイクロレンズアレイディスク654から射出された照明光を集光する。
【0292】
マイクロレンズアレイディスク654は、照明光学系21の光軸AX1と垂直な方向に放射状に並ぶ複数のマイクロレンズ(例えば、12個のマイクロレンズ)を含む、円盤状に形成される。マイクロレンズアレイディスク654は、第2リレーレンズ653を透過した照明光を、複数の照明光(例えば、12本の照明光)に分けて集光する。また、マイクロレンズアレイディスク654は、位相変調素子616で反射した複数の照明光を結合して略平行光にする。マイクロレンズアレイディスク654は、回転軸656を介してモータ655に回転可能に支持される。モータ655は、マイクロレンズアレイディスク654を回転移動させることにより、マイクロレンズアレイディスク654により分かれた複数の照明光の進行方向を変化させる。これにより、モータ655は、マイクロレンズア
レイディスク654により分かれた複数の照明光により位相変調素子616を走査する。
【0293】
位相変調素子616は、第12実施形態に係る位相変調素子616と同様の構成であり、第12実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。第2ミラー657は、試料TPと光学的に共役な位置B34の近傍に配置される。第2ミラー657は、第2リレーレンズ653を透過した照明光を第3リレーレンズ658に向けて反射させる。第3リレーレンズ658は、第2ミラー657で反射した照明光を略平行光にする。
【0294】
マイクロレンズアレイディスク654により分かれた複数の照明光が、複数の照射領域のうちいずれかの照射領域における複数個の部分領域(例えば、第1~第36照射領域のうちいずれかの照射領域における第1~第12部分領域)に照射されると、照明光が照射された部分領域における位相変調パターンに応じて各照明光の位相が変化する。複数の照射領域のうちいずれかの照射領域における複数個の部分領域に照射された複数の照明光は、各部分領域で反射する。なお、モータ655は、マイクロレンズアレイディスク654を回転移動させて、マイクロレンズアレイディスク654により分かれた複数の照明光により位相変調素子616を走査することで、位相変調素子616における複数の照射領域の中で照明光が照射される照射領域(すなわち、第1~第12部分領域の組)を変えることが可能である。位相変調素子616上には、マイクロレンズアレイディスク654の回転により走査される複数の照明光の位置及び軌道に沿った位置に、複数の照射領域と各照射領域が互いに離れて分割された部分領域が設定される。
【0295】
複数の照射領域のうちいずれかの照射領域における複数個の部分領域に照射されて反射した複数の照明光は、マイクロレンズアレイディスク654に入射する。マイクロレンズアレイディスク654に入射した複数の照明光は、マイクロレンズアレイディスク654を透過して略平行な1つの照明光に結合され、第2リレーレンズ653に入射する。第2リレーレンズ653に入射した照明光は、第2リレーレンズ653を透過して第2ミラー657で反射する。第2ミラー657で反射した照明光は、第3リレーレンズ658を透過して略平行光となり、照明光学系21のダイクロイックミラー24に入射する。これにより、第12実施形態に係る位相変調ユニット610の場合と同様にして、照明光に対する位相変調が行われる。
【0296】
[位相変調ユニットの第4変形例]
次に、
図31を参照しながら、第12実施形態における位相変調ユニットの第4変形例について説明する。
図31に示すように、第12実施形態の第4変形例に係る位相変調ユニット660は、ビームスプリッタ661と、第1リレーレンズ662と、第2リレーレンズ663と、マイクロレンズアレイディスク664と、位相変調素子616とを有する。ビームスプリッタ661の透過率と反射率の比率は、例えば1:1に設定される。照明光学系21のコリメータレンズ22からビームスプリッタ661に入射した照明光の一部は、当該ビームスプリッタ661を透過して第1リレーレンズ662に入射する。第1リレーレンズ662からビームスプリッタ661に入射した照明光の一部は、当該ビームスプリッタ661で反射して照明光学系21のダイクロイックミラー24に入射する。
【0297】
第1リレーレンズ662は、ビームスプリッタ661を透過した照明光を集光する。第2リレーレンズ663は、第1リレーレンズ662を透過した照明光を略平行光にする。また、第2リレーレンズ663は、マイクロレンズアレイディスク664からの照明光を集光する。位相変調素子616は、第12実施形態に係る位相変調素子616と同様の構成であり、第12実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0298】
マイクロレンズアレイディスク664は、
図30に示す位相変調ユニット650に含まれるマイクロレンズアレイディスク654の機能、構成と同じなので、説明を省略する。
【0299】
照明光学系21のコリメータレンズ22を透過した照明光は、位相変調ユニット660のビームスプリッタ661に入射する。コリメータレンズ22からビームスプリッタ661に入射した照明光の一部は、当該ビームスプリッタ661を透過して第1リレーレンズ662を透過する。第1リレーレンズ662を透過した照明光は、試料TPと光学的に共役な位置B35において一旦集光し、第2リレーレンズ663に入射する。第2リレーレンズ663に入射した照明光は、第2リレーレンズ663を透過してマイクロレンズアレイディスク664に入射する。マイクロレンズアレイディスク664に入射した照明光は、マイクロレンズアレイディスク664を透過して複数の照明光(例えば、12本の照明光)に分かれる。マイクロレンズアレイディスク664において分かれた複数の照明光は、位相変調素子616の複数の照射領域のうちいずれかの照射領域における複数個の部分領域に照射されるが、その後は、第3変形例の記載と同じなので、説明を省略する。
【0300】
[第13実施形態]
次に、第13実施形態に係る顕微鏡について説明する。第13実施形態に係る顕微鏡は、位相変調ユニット60に代えて、第12実施形態に係る位相変調ユニット610が設けられる他は、第2実施形態に係る顕微鏡101と同様の構成であり、位相変調ユニット610以外の共通する各部に第2実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な図示および説明を省略する。第13実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット610は、照明光学系121のダイクロイックミラー123を透過した照明光に対して位相変調を行うとともに、試料走査部125を通った検出光に対して位相変調を行い、試料TPと照明光学系121と検出光学系131で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正する。
【0301】
照明光学系121のダイクロイックミラー123を透過した照明光は、位相変調ユニット610に入射するが、その後は第12実施形態と同様なので、説明を省略する。位相変調ユニット610から出射した照明光は、照明光学系121の試料走査部125に入射する。
【0302】
また、検出光学系131としての試料走査部125を通った検出光は、位相変調ユニット610に入射後、前述した照明光とは逆方向の経路を辿り、照明光と同様の位相変調を受け、略平行で位相変調ユニット610からダイクロイックミラー123に向けて出射する。第12実施形態と同様に、複数の観察領域に跨る走査とタイミングを合わせて、位相変調素子616において照明光および検出光が照射される照射領域を順次変化させることで、1つの観察領域に対して走査を行う毎に照射領域を変える場合と比較して、高画質の試料TPの画像をより短時間で取得することが可能になる。
【0303】
また、第13実施形態に係る顕微鏡を用いても、第2実施形態に係る顕微鏡101と同様、第1実施形態で述べた画像取得方法により、試料TPの画像を取得することが可能である。従って、第13実施形態によれば、第12実施形態および第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第13実施形態によれば、位相変調ユニット610により、照明光に対する位相変調に加え、検出光に対する位相変調が行われるため、より高画質の試料TPの画像を短時間で取得することが可能になる。
【0304】
第13実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット610に代えて、第12実施形態の第1変形例に係る位相変調ユニット630が設けられるようにしてもよい。上述の第13実施形態の場合と同様にして、第12実施形態の第1変形例に係る位相変調ユニット630により、照明光および検出光に対する位相変調を行うことが可能である。また、位相変調ユニット610に代えて、第12実施形態の第2変形例に係る位相変調ユニット640、第3変形例に係る位相変調ユニット650、または第4変形例に係る位相変調ユニット660が設けられるようにしてもよい。
【0305】
[第14実施形態]
次に、第14実施形態に係る顕微鏡について説明する。第14実施形態に係る顕微鏡は、位相変調ユニット60に代えて、第12実施形態に係る位相変調ユニット610が設けられる他は、第3実施形態に係る顕微鏡201と同様の構成であり、位相変調ユニット610以外の共通する各部に第3実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な図示および説明を省略する。
【0306】
第14実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット610は、照明光学系221のコリメータレンズ222を透過した照明光に対して位相変調を行い、試料TPと照明光学系221で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正する。このとき、第12実施形態の場合と同様にして、位相変調ユニット610による照明光に対する位相変調が行われる。また、第14実施形態に係る顕微鏡を用いても、第3実施形態に係る顕微鏡201と同様、第1実施形態で述べた画像取得方法により、試料TPの画像を取得することが可能である。従って、第14実施形態によれば、第12実施形態および第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0307】
第14実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット610に代えて、第12実施形態の第1変形例に係る位相変調ユニット630が設けられるようにしてもよい。上述の第12実施形態の第1変形例の場合と同様にして、第12実施形態の第1変形例に係る位相変調ユニット630により、照明光に対する位相変調を行うことが可能である。また、位相変調ユニット610に代えて、第12実施形態の第2変形例に係る位相変調ユニット640、第3変形例に係る位相変調ユニット650、または第4変形例に係る位相変調ユニット660が設けられるようにしてもよい。
【0308】
[第15実施形態]
次に、第15実施形態に係る顕微鏡について説明する。第15実施形態に係る顕微鏡は、位相変調ユニット60に代えて、第12実施形態に係る位相変調ユニット610が設けられる他は、第4実施形態に係る顕微鏡301と同様の構成であり、位相変調ユニット610以外の共通する各部に第4実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な図示および説明を省略する。
【0309】
第15実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット610は、照明光学系321のコリメータレンズ322を透過した照明光に対して位相変調を行い、試料TPと照明光学系321と検出光学系331で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正する。このとき、第12実施形態の場合と同様にして、位相変調ユニット610による照明光に対する位相変調が行われる。また、第15実施形態に係る顕微鏡を用いても、第4実施形態に係る顕微鏡301と同様、第1実施形態で述べた画像取得方法により、試料TPの画像を取得することが可能である。従って、第15実施形態によれば、第12実施形態および第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0310】
第15実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット610に代えて、第12実施形態の第1変形例に係る位相変調ユニット630が設けられるようにしてもよい。上述の第12実施形態の第1変形例の場合と同様にして、第12実施形態の第1変形例に係る位相変調ユニット630により、照明光に対する位相変調を行うことが可能である。また、位相変調ユニット610に代えて、第12実施形態の第2変形例に係る位相変調ユニット640、第3変形例に係る位相変調ユニット650、または第4変形例に係る位相変調ユニット660が設けられるようにしてもよい。
【0311】
[第16実施形態]
次に、
図32を参照しながら、第16実施形態に係る顕微鏡について説明する。第16実施形態に係る顕微鏡は、位相変調ユニット60に代えて、第16実施形態に係る位相変調ユニット710が設けられる他は、第1実施形態に係る顕微鏡1と同様の構成であり、位相変調ユニット710以外の共通する各部に第1実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な図示および説明を省略する。第16実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット710は、コリメータレンズ22を透過した照明光に対して位相変調を行い、試料TPと照明光学系21で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正する。
図32に示すように、第16実施形態に係る位相変調ユニット710は、第1リレーレンズ711と、第1ミラー712と、第2リレーレンズ713と、シリンドリカルレンズアレイ714と、第3リレーレンズ715と、位相変調用スキャナ716と、第4リレーレンズ717と、位相変調素子718と、第2ミラー719と、第5リレーレンズ720とを有するが、シリンドリカルレンズアレイ714及び位相変調素子718以外は、
図15に示す位相変調ユニット160に含まれる第1リレーレンズ161と、第1ミラー162と、第2リレーレンズ163と、第2シリンドリカルレンズ165と、第3リレーレンズ166と、位相変調用スキャナ167と、第4リレーレンズ168と、第2ミラー170と、第5リレーレンズ171の各機能、各構成と同じなので、説明を省略する。なお、
図32において破線で囲まれた部分は、位相変調ユニット710の一部を
図32に対して垂直な方向から見た図である。
【0312】
シリンドリカルレンズアレイ714は、照明光学系21の光軸AX1と垂直な方向に1列に並ぶ複数のシリンドリカルレンズ(例えば、4個のシリンドリカルレンズ)を含む。シリンドリカルレンズアレイ714は、第2リレーレンズ713からの照明光を複数の照明光(例えば、4本の照明光)に分けてライン状に集光する。第3リレーレンズ715は、シリンドリカルレンズアレイ714からの複数の照明光を重ねる。
【0313】
位相変調用スキャナ716は、試料TPと光学的に共役な位置B41に配置される。位相変調用スキャナ716は、シリンドリカルレンズアレイ714により分かれた複数の照明光の進行方向を変化させる。これにより、位相変調用スキャナ716は、
図32に示すように、シリンドリカルレンズアレイ714により分かれた複数の照明光により位相変調素子718を走査する。
【0314】
また、位相変調用スキャナ716は、第4リレーレンズ717から位相変調用スキャナ716に入射した照明光が第3リレーレンズ715に向けて進むように、すなわち位相変調ユニット710から射出される照明光が照明光学系21の光軸AX1に沿って進むように照明光の進行方向を変化させる。
【0315】
位相変調素子718は、照明光がシリンドリカルレンズアレイ714によって複数のライン状に集光される位置と共役な位置H41に配置される。位相変調素子718は、例えば反射型液晶素子や透過型液晶素子等を用いて構成され、表示面において複数の位相変調パターンを分割して表示する。位相変調素子718の表示面には、照明光が照射され得る複数の照射領域(例えば、6組の照射領域)が設けられる。各照射領域は、互いに離れた複数の長方形状の部分領域(例えば、4個の部分領域)に分割されている。位相変調素子718の表示面における各照射領域を構成する部分領域は、照明光における楕円形の断面の長手方向と垂直な方向に並んで設けられる。位相変調素子718は、複数の位相変調パターンを、複数の照射領域における複数個の部分領域に分割して表示する。
【0316】
図33に、複数の照射領域および各照射領域を構成する複数個の部分領域の配置例を示す。
図33の例において、位相変調素子718の表示面には、4個の長方形状の部分領域に分割された6組の照射領域が設けられる。例えば、第1照射領域SE1を構成する4個の部分領域として、(
図33の上側から順に)第1部分領域SE1Aと、第2部分領域S
E1Bと、第3部分領域SE1Cと、第4部分領域SE1Dとが分離して配置される。
【0317】
また、第1照射領域SE1の第1部分領域SE1Aと並んで、第2照射領域の第1部分領域SE2Aと、第3照射領域の第1部分領域SE3Aと、第4照射領域の第1部分領域SE4Aと、第5照射領域の第1部分領域SE5Aと、第6照射領域の第1部分領域SE6Aとが配置される。第1照射領域SE1の第2部分領域SE1Bと並んで、第2照射領域の第2部分領域SE2Bと、第3照射領域の第2部分領域SE3Bと、第4照射領域の第2部分領域SE4Bと、第5照射領域の第2部分領域SE5Bと、第6照射領域の第2部分領域SE6Bとが配置される。
【0318】
第1照射領域SE1の第3部分領域SE1Cと並んで、第2照射領域の第3部分領域SE2Cと、第3照射領域の第3部分領域SE3Cと、第4照射領域の第3部分領域SE4Cと、第5照射領域の第3部分領域SE5Cと、第6照射領域の第3部分領域SE6Cとが配置される。第1照射領域SE1の第4部分領域SE1Dと並んで、第2照射領域の第4部分領域SE2Dと、第3照射領域の第4部分領域SE3Dと、第4照射領域の第4部分領域SE4Dと、第5照射領域の第4部分領域SE5Dと、第6照射領域の第4部分領域SE6Dとが配置される。
【0319】
図33に示すように、位相変調素子718は、第1照射領域SE1の位相変調パターンを、第1照射領域SE1における第1~第4部分領域SE1A~SE1Dに分割して表示する。位相変調素子718は、第2照射領域SE2の位相変調パターンを、第2照射領域SE2における第1~第4部分領域SE2A~SE2Dに分割して表示する。このように、位相変調素子718は、第n照射領域SEn(n=1~6)の位相変調パターンを、第n照射領域SEnにおける第1~第4部分領域SEnA~SEnDに分割して表示する。位相変調素子718上に設定された各照射領域における各部分領域には、
図33における横方向の1次元位相パターンが表示される。
図33に示す例において、シリンドリカルレンズアレイ714により分かれた4本の照明光は、第n照射領域SEnにおける第1~第4部分領域SEnA~SEnD、すなわち、第1~第6照射領域のうちいずれかの照射領域における第1~第4部分領域に照射される。
【0320】
第1~第6照射領域のうちいずれかの照射領域における第1~第4部分領域に、分かれた4本の照明光が照射されると、各照明光の位相が変化(変調)する。具体的には、照明光が照射された部分領域における1次元の位相変調パターンに応じた位相分布が各照明光に付与される。結果として、
図34に示すように、シリンドリカルレンズアレイ714で結合されて(後述)位相変調ユニット710から射出される照明光に、第1~第4部分領域からなる照射領域に設定された位相変調パターンに応じた位相分布が付与される。また、位相変調素子718において照明光が照射される照射領域(すなわち、第1~第4部分領域の組)を変えることで、照明光に付与する位相分布(検出光が照射領域に照射される場合、検出光に付与する位相分布)を変えることが可能である。
【0321】
試料TPにおける複数の観察領域は、第12実施形態で例示した観察領域と同様に設定することができる。具体的には、
図27に示すように、顕微鏡の視野内において試料TPにおける例えば36個の観察領域KD1~KD36が設定される。
図33および
図27に示す例において、ここでは6個の観察領域KD1~KD6の画像を取得する方法を説明する。位相変調素子718は、第1観察領域KD1について予め求められた位相変調パターンを、位相変調素子718の第1照射領域SE1における第1~第4部分領域SE1A~SE1Dに分割して表示する。位相変調素子718は、第2観察領域KD2について予め求められた位相変調パターンを、位相変調素子718の第2照射領域SE2における第1~第4部分領域SE2A~SE2Dに分割して表示する。位相変調素子718は、第3観察領域KD3について予め求められた位相変調パターンを、位相変調素子718の第3照
射領域における第1~第4部分領域SE3A~SE3Dに分割して表示する。
【0322】
位相変調素子718は、第4観察領域KD4について予め求められた位相変調パターンを、位相変調素子718の第4照射領域における第1~第4部分領域SE4A~SE4Dに分割して表示する。位相変調素子718は、第5観察領域KD5について予め求められた位相変調パターンを、位相変調素子718の第5照射領域における第1~第4部分領域SE5A~SE5Dに分割して表示する。位相変調素子718は、第6観察領域KD6について予め求められた位相変調パターンを、位相変調素子718の第6照射領域における第1~第4部分領域SE6A~SE6Dに分割して表示する。
【0323】
試料TPにおける第1~第6観察領域KD1~KD6を観察する際、すなわち第1~第6観察領域KD1~KD6の画像を取得する際、照明光学系21の試料走査部25は、位相変調ユニット710から射出される照明光により、試料TPにおける第1~第6観察領域KD1~KD6に跨る走査を行う。例えば、第1観察領域KD1で直線的に走査を行うタイミングに同期して、位相変調用スキャナ716は、位相変調素子718に対する照明光の照射領域を第1照射領域SE1に変える。第2観察領域KD2で直線的に走査を行うタイミングに同期して、位相変調用スキャナ716は、位相変調素子718に対する照明光の照射領域を第2照射領域SE2に変える。
【0324】
第3観察領域KD3で直線的に走査を行うタイミングに同期して、位相変調用スキャナ716は、位相変調素子718に対する照明光の照射領域を第3照射領域に変える。第4観察領域KD4で直線的に走査を行うタイミングに同期して、位相変調用スキャナ716は、位相変調素子718に対する照明光の照射領域を第4照射領域に変える。第5観察領域KD5で直線的に走査を行うタイミングに同期して、位相変調用スキャナ716は、位相変調素子718に対する照明光の照射領域を第5照射領域に変える。第6観察領域KD6で直線的に走査を行うタイミングに同期して、位相変調用スキャナ716は、位相変調素子718に対する照明光の照射領域を第6照射領域に変える。
【0325】
このとき、分かれた照明光が照射される各部分領域は、第1照射領域における各部分領域から第6照射領域における各部分領域まで順次変化する。例えば
図33に示すように、分かれた照明光LE1が照射される第1部分領域は、第1照射領域における第1部分領域SE1Aから第6照射領域における第1部分領域SE6Aまで順次変化する。分かれた照明光LE1が照射される第2部分領域は、第1照射領域における第2部分領域SE1Bから第6照射領域における第2部分領域SE6Bまで順次変化する。分かれた照明光LE1が照射される第3部分領域は、第1照射領域における第3部分領域SE1Cから第6照射領域における第3部分領域SE6Cまで順次変化する。分かれた照明光LE1が照射される第4部分領域は、第1照射領域における第4部分領域SE1Dから第6照射領域における第4部分領域SE6Dまで順次変化する。
【0326】
第7~第12観察領域KD7~KD12の画像を取得する際には、位相変調素子718の第1~第6照射領域SE1~SE6それぞれに表示される位相変調パターンを、第7~第12観察領域KD7~KD12について予め求められた位相変調パターンに変更し、第1~第6観察領域KD1~KD6と同様に画像取得を行う。同様にして、第13~第18観察領域KD13~KD18、第19~第24観察領域KD19~KD24、第25~第30観察領域KD25~KD30、第31~第36観察領域KD31~KD36の画像をそれぞれ取得する際には、位相変調素子718の各照射領域に表示される位相変調パターンを、対応する観察領域について予め求められた位相変調パターンに順次変更し、上述の画像取得を行う。
【0327】
[位相変調ユニットの第1変形例]
次に、
図35を参照しながら、第16実施形態における位相変調ユニットの第1変形例について説明する。
図35に示すように、第16実施形態の第1変形例に係る位相変調ユニット730は、第1リレーレンズ731と、第1ミラー732と、第2リレーレンズ733と、シリンドリカルレンズアレイ734と、レンズ駆動部735と、位相変調素子718と、第2ミラー739と、第3リレーレンズ740とを有するが、シリンドリカルレンズアレイ734、レンズ駆動部735及び位相変調素子718以外は、
図3に示す位相変調ユニット60に含まれる第1リレーレンズ61と、第1ミラー62と、第2リレーレンズ64と、第2ミラー67と、第3リレーレンズ68の各機能、各構成と同じであり、また、
図30に示す位相変調ユニット650に含まれる第1リレーレンズ651と、第1ミラー652と、第2リレーレンズ653と、第2ミラー657と、第3リレーレンズ658の各機能、各構成と同じなので、説明を省略する。位相変調ユニット730は、位相変調ユニット650に含まれるマイクロレンズアレイディスク654、モータ655及び位相変調素子616を、シリンドリカルレンズアレイ734、レンズ駆動部735及び位相変調素子718に変更したものに相当する。なお、
図35において破線で囲まれた部分は、位相変調ユニット730の一部を
図35に対して垂直な方向から見た図である。
【0328】
第1リレーレンズ731は、試料TPと光学的に共役な位置B42の近傍に配置される。第1ミラー732は、試料TPと光学的に共役な位置B42の近傍に配置される。
【0329】
シリンドリカルレンズアレイ734は、照明光学系21の光軸AX1と垂直な方向に1列に並ぶ複数のシリンドリカルレンズ(例えば、4個のシリンドリカルレンズ)を含む。シリンドリカルレンズアレイ734は、第2リレーレンズ733からの照明光をライン状の複数の照明光(例えば、4本の照明光)に分ける。また、シリンドリカルレンズアレイ734は、位相変調素子718で反射した複数の照明光を結合して略平行光にする。シリンドリカルレンズアレイ734は、レンズ駆動部735にシリンドリカルレンズの並ぶ方向に移動可能に支持される。レンズ駆動部735は、ボイスコイルモータやピエゾ素子等を用いて構成される。レンズ駆動部735は、シリンドリカルレンズアレイ734をシリンドリカルレンズの並ぶ方向に直線的に移動させる。
【0330】
位相変調素子718は、対物レンズ28の瞳位置と光学的に共役な位置H42に配置される。位相変調素子718は、第16実施形態に係る位相変調素子718と同様の構成であり、第16実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。第2ミラー739は、試料TPと光学的に共役な位置B42の近傍に配置される。第2ミラー739は、第2リレーレンズ733を透過して第2ミラー739に入射した照明光を第3リレーレンズ740に向けて反射させる。第3リレーレンズ740は、第2ミラー739で反射した照明光を略平行光にする。
【0331】
シリンドリカルレンズアレイ734により分かれた複数の照明光が、複数の照射領域のうちいずれかの照射領域における複数個の部分領域(例えば、第1~第6照射領域のうちいずれかの照射領域における第1~第4部分領域)に照射されると、照明光が照射された部分領域における長手方向の位相変調パターンに応じて各照明光の位相分布が変化する。複数の照射領域のうちいずれかの照射領域における複数個の部分領域に照射された複数の照明光は、各部分領域で反射する。なお、レンズ駆動部735は、シリンドリカルレンズアレイ734をシリンドリカルレンズの並ぶ方向に移動させて、シリンドリカルレンズアレイ734において分かれた複数の照明光により位相変調素子718を走査することで、位相変調素子718における複数の照射領域の中で照明光が照射される照射領域(すなわち、第1~第4部分領域の組)を変えることが可能である。
【0332】
[位相変調ユニットの第2変形例]
次に、
図36を参照しながら、第16実施形態における位相変調ユニットの第2変形例
について説明する。
図36に示すように、第16実施形態の第2変形例に係る位相変調ユニット750は、ビームスプリッタ751と、第1リレーレンズ752と、第2リレーレンズ753と、シリンドリカルレンズアレイ754と、レンズ駆動部755と、位相変調素子718とを有するが、シリンドリカルレンズアレイ754、レンズ駆動部755及び位相変調素子718以外は、
図31に示す位相変調ユニット660に含まれるビームスプリッタ661と、第1リレーレンズ662と、第2リレーレンズ663の各機能、各構成と同じなので、説明を省略する。なお、
図36において破線で囲まれた部分は、位相変調ユニット750の一部を
図36に対して垂直な方向から見た図である。
【0333】
位相変調素子718は、対物レンズ28の瞳位置と光学的に共役な位置H43に配置される。位相変調素子718は、第16実施形態に係る位相変調素子718と同様の構成であり、第16実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。シリンドリカルレンズアレイ754は、
図35に示す位相変調ユニット730に含まれるシリンドリカルレンズアレイ734と同じなので、説明を省略する。なお、照明光学系21のコリメータレンズ22からビームスプリッタ751に入射して、ビームスプリッタ751と第1リレーレンズ752を透過した照明光は、試料TPと光学的に共役な位置B43において一旦集光し、第2リレーレンズ753を透過してシリンドリカルレンズアレイ754に入射する。
【0334】
[第17実施形態]
次に、第17実施形態に係る顕微鏡について説明する。第17実施形態に係る顕微鏡は、位相変調ユニット60に代えて、第16実施形態に係る位相変調ユニット710が設けられる他は、第2実施形態に係る顕微鏡101と同様の構成であり、位相変調ユニット710以外の共通する各部に第2実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な図示および説明を省略する。第17実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット710は、照明光学系121のダイクロイックミラー123を透過した照明光に対して位相変調を行うとともに、試料走査部125を通った検出光に対して位相変調を行い、試料TPと照明光学系121と検出光学系131で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正する。
【0335】
照明光学系121のダイクロイックミラー123を透過した照明光は、位相変調ユニット710の第1リレーレンズ711に入射するが、その後は第16実施形態と同様なので、説明を省略する。
【0336】
また、検出光学系131としての試料走査部125を通った検出光は、位相変調ユニット710に入射後、前述した照明光とは逆方向の経路を辿り、照明光と同様の位相変調を受けた検出光は、略平行で位相変調ユニット710からダイクロイックミラー123に向けて出射する。第16実施形態と同様に、複数の観察領域に跨る走査とタイミングを合わせて、位相変調素子616において照明光および検出光が照射される照射領域を順次変化させることで、1つの観察領域に対して走査を行う毎に照射領域を変える場合と比較して、高画質の試料TPの画像をより短時間で取得することが可能になる。
【0337】
また、第17実施形態に係る顕微鏡を用いても、第2実施形態に係る顕微鏡101と同様、第1実施形態で述べた画像取得方法により、試料TPの画像を取得することが可能である。従って、第17実施形態によれば、第16実施形態および第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第17実施形態によれば、位相変調ユニット710により、照明光に対する位相変調に加え、検出光に対する位相変調が行われるため、より高画質の試料TPの画像を短時間で取得することが可能になる。
【0338】
第17実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット710に代えて、第16実施形態の第1変形例に係る位相変調ユニット730が設けられるようにしてもよい。上述の
第17実施形態の場合と同様にして、第16実施形態の第1変形例に係る位相変調ユニット730により、照明光および検出光に対する位相変調を行うことが可能である。また、位相変調ユニット710に代えて、第16実施形態の第2変形例に係る位相変調ユニット750が設けられるようにしてもよい。
【0339】
[第18実施形態]
次に、第18実施形態に係る顕微鏡について説明する。第18実施形態に係る顕微鏡は、位相変調ユニット60に代えて、第16実施形態に係る位相変調ユニット710が設けられる他は、第3実施形態に係る顕微鏡201と同様の構成であり、位相変調ユニット710以外の共通する各部に第3実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な図示および説明を省略する。
【0340】
第18実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット710は、照明光学系221のコリメータレンズ222を透過した照明光に対して位相変調を行い、試料TPと照明光学系221で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正する。このとき、第16実施形態の場合と同様にして、位相変調ユニット710による照明光に対する位相変調が行われる。また、第18実施形態に係る顕微鏡を用いても、第3実施形態に係る顕微鏡201と同様、第1実施形態で述べた画像取得方法により、試料TPの画像を取得することが可能である。従って、第18実施形態によれば、第16実施形態および第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0341】
第18実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット710に代えて、第16実施形態の第1変形例に係る位相変調ユニット730が設けられるようにしてもよい。上述の第16実施形態の第1変形例の場合と同様にして、第16実施形態の第1変形例に係る位相変調ユニット730により、照明光に対する位相変調を行うことが可能である。また、位相変調ユニット710に代えて、第16実施形態の第2変形例に係る位相変調ユニット750が設けられるようにしてもよい。
【0342】
[第19実施形態]
次に、第19実施形態に係る顕微鏡について説明する。第19実施形態に係る顕微鏡は、位相変調ユニット60に代えて、第16実施形態に係る位相変調ユニット710が設けられる他は、第4実施形態に係る顕微鏡301と同様の構成であり、位相変調ユニット710以外の共通する各部に第4実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な図示および説明を省略する。
【0343】
第19実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット710は、照明光学系321のコリメータレンズ322を透過した照明光に対して位相変調を行い、試料TPと照明光学系321と検出光学系331で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正する。このとき、第16実施形態の場合と同様にして、位相変調ユニット710による照明光に対する位相変調が行われる。また、第19実施形態に係る顕微鏡を用いても、第4実施形態に係る顕微鏡301と同様、第1実施形態で述べた画像取得方法により、試料TPの画像を取得することが可能である。従って、第19実施形態によれば、第16実施形態および第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0344】
第19実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット710に代えて、第16実施形態の第1変形例に係る位相変調ユニット730が設けられるようにしてもよい。上述の第16実施形態の第1変形例の場合と同様にして、第16実施形態の第1変形例に係る位相変調ユニット730により、照明光に対する位相変調を行うことが可能である。また、位相変調ユニット710に代えて、第16実施形態の第2変形例に係る位相変調ユニット750が設けられるようにしてもよい。
【0345】
[第20実施形態]
次に、
図37を参照しながら、第20実施形態に係る顕微鏡について説明する。第20実施形態に係る顕微鏡は、位相変調ユニット60に代えて、第20実施形態に係る位相変調ユニット810が設けられる他は、第11実施形態に係る顕微鏡501と同様の構成であり、位相変調ユニット810以外の共通する各部に第11実施形態の場合と同じ符号を付して、詳細な図示および説明を省略する。第20実施形態に係る顕微鏡において、位相変調ユニット810は、照明光学系521のコリメータレンズ522を透過した照明光に対して位相変調を行い、試料TPと照明光学系521で生じる収差のうち、少なくとも一部を補正する。
図37に示すように、第20実施形態に係る位相変調ユニット810は、第1リレーレンズ811と、第1ミラー812と、第2リレーレンズ813と、シリンドリカルレンズアレイ814と、第3リレーレンズ815と、位相変調用スキャナ816と、第4リレーレンズ817と、位相変調素子818と、第2ミラー819と、第5リレーレンズ820とを有するが、位相変調素子818以外の各機能、各構成は、
図32に示す位相変調ユニット710に含まれる第1リレーレンズ711と、第1ミラー712と、第2リレーレンズ713と、シリンドリカルレンズアレイ714と、第3リレーレンズ715と、位相変調用スキャナ716と、第4リレーレンズ717と、第2ミラー719と、第5リレーレンズ720と同じなので、説明を省略する。なお、
図37において破線で囲まれた部分は、位相変調ユニット810の一部を
図37に対して垂直な方向から見た図である。
【0346】
シリンドリカルレンズアレイ814は、照明光学系521の光軸AX51と垂直な方向に1列に並ぶ複数のシリンドリカルレンズ(例えば、4個のシリンドリカルレンズ)を含む。また、位相変調用スキャナ816は、試料TPと光学的に共役な位置B51に配置される。シリンドリカルレンズアレイ814および位相変調用スキャナ816は、
図32に示す位相変調ユニット710に含まれるシリンドリカルレンズアレイ714および位相変調用スキャナ716と同じなので、説明を省略する。
【0347】
位相変調素子818は、対物レンズ528の瞳位置と光学的に共役な位置H51に配置される。位相変調素子818が表示する各部分領域の長手方向の1次元位相変調パターンは計算機生成ホログラム(CGH)を用いて構成され、位相変調素子65における複数の照射領域のうちいずれかの照射領域に照明光が照射されると、回折現象により、照明光が照射された照射領域から複数の反射光(回折光)が生じる(
図37では2本の回折光が生じた例を図示)。このとき、計算機生成ホログラム(CGH)を用いることで、回折現象により生じる複数の反射光それぞれに対し、各反射光(回折光)で照明する試料の観察位置に応じた異なる位相分布を付与することが可能である。なお、計算機生成ホログラム(CGH)は、第11実施形態と同様の方法で計算することが可能である。
【0348】
複数の照射領域および各照射領域を構成する複数個の部分領域の配置は、第16実施形態に係る位相変調素子718の場合と同様に設定される。第20実施形態に係る位相変調素子818は、第n照射領域SEn(n=1~6)の位相変調パターンを、第n照射領域SEnにおける第1~第4部分領域SEnA~SEnDに分割して表示する。シリンドリカルレンズアレイ814により分かれた4本の照明光は、第n照射領域SEnにおける第1~第4部分領域SEnA~SEnD、すなわち、第1~第6照射領域のうちいずれかの照射領域における第1~第4部分領域に照射される。なお、第20実施形態に係る位相変調素子818は、回折光を発生させることが可能な位相変調パターンを表示する。
【0349】
第1~第6照射領域のうちいずれかの照射領域に設定された第1~第4部分領域に、分かれた4本の照明光が照射されると、各照明光の位相分布が変化(変調)する。具体的には、照明光が照射された部分領域に設定された位相変調パターン(位相分布)に応じて、
回折現象により複数の方向(例えば、2方向)に反射光(回折光)が生じる。複数の回折光には、それぞれ異なる位相分布が付与される。第1~第4部分領域のそれぞれにおいて同一の方向に回折された回折光がシリンドリカルレンズアレイ814で1つの照明光に結合され(後述)、位相変調ユニット810から射出される照明光に、第1~第4部分領域からなる照射領域に設定された位相変調パターンに応じた位相分布が付与される。また、位相変調素子818の部分領域で生じる回折光の数だけ、位相変調ユニット810から複数の照明光(例えば、2本の照明光)が射出される。位相変調ユニット810から出射する複数の照明光のそれぞれに、照明する試料の観察位置に応じた異なる位相分布が付与される。位相変調素子818において照明光が照射される照射領域(すなわち、第1~第4部分領域の組)を変えることで、位相変調ユニット810から射出される複数の照明光のそれぞれに付与する位相分布を変えることが可能である。
【0350】
なお、第4リレーレンズ817は、位相変調素子818で反射した複数の回折光を重ねる。位相変調用スキャナ816は、第4リレーレンズ817から位相変調用スキャナ816に入射した回折光が第3リレーレンズ815に向けて進むように、すなわち位相変調ユニット810から射出される照明光が照明光学系521の光軸AX51に沿って進むように照明光および回折光の進行方向を変化させる。第3リレーレンズ815に入射した複数の回折光は、第3リレーレンズ815を透過してシリンドリカルレンズアレイ814に入射する。シリンドリカルレンズアレイ814に入射した複数の回折光のうち、進行方向が同一の回折光は、シリンドリカルレンズアレイ814を透過して略平行な1つの照明光に結合される。一方で、進行方向が異なる回折光はシリンドリカルレンズアレイ814で結合されないため、リンドリカルレンズアレイ814に入射する回折光の進行方向の数の分だけ、略平行な照明光が出射する。第2リレーレンズ813は、シリンドリカルレンズアレイ814から出射した複数の照明光を複数の位置へ集光する。第2ミラー819は、第2リレーレンズ813を透過して第2ミラー819に入射した複数の照明光を第5リレーレンズ820に向けて反射させる。第5リレーレンズ820は、第2ミラー819で反射した照明光を略平行光にする。位相変調ユニット810から射出した2本の照明光は、照明光学系521のダイクロイックミラー524に入射する。このようにして、位相変調ユニット810による照明光の分割と位相変調が行われる。
【0351】
なお、第20実施形態に係る顕微鏡を用いても、第1実施形態で述べた画像取得方法により、試料TPの画像を取得することが可能である。第20実施形態によれば、位相変調ユニット810は、照明光が照射され得る複数の照射領域を有し、複数の照射領域における照明光の照射位置に応じて照明光に対して位相分布を付与する位相変調素子818と、照明光が照射される照射領域を変える位相変調用スキャナ816とを有している。位相変調用スキャナ816により、位相変調素子818に対する照明光の照射領域を変えることで、照明光の位相を変化させる位相変調パターンを変更するようにすれば、位相変調素子818で表示する位相変調パターンを切り替える場合よりも、短時間で位相変調パターンを変更することができる。
【0352】
また、位相変調ユニット810は、各照射領域における複数個の部分領域に、照明光をライン状の複数の照明光に分けて照射するシリンドリカルレンズアレイ814(光学素子アレイ)を有している。従って、位相変調用スキャナ816により、照明光学系521の試料走査部525が試料TPを走査するのに応じて、複数の照明光が照射される複数個の部分領域に分割された照射領域を変えることで、試料TPにおける複数の観察領域に起因する収差が個々に補正された、高画質の試料TPの画像をより短時間で取得することが可能になる。また、位相変調素子818の照射領域における各部分領域の長手方向において滑らかな位相分布を有する位相変調パターンを付与することが可能になる。
【0353】
また、位相変調用スキャナ816は、位相変調素子818に対する照明光の照射領域を
変えるのに拘わらず、照射領域に照射されて位相が変化した照明光の進行方向を一定の方向(照明光学系521の光軸AX51に沿った方向)にする。これにより、照明光の光路を変えることなく、照明光の位相のみを変化させることができる。
【0354】
また、位相変調素子818が表示する位相変調パターンは計算機生成ホログラム(CGH)を用いて構成される。これにより、照明光学系521は、位相変調素子818の回折によって分けられた複数の(例えば2本の)照明光により試料TPを照明することが可能になり、高画質の試料TPの画像をより短時間で取得することが可能になる。
【0355】
上述の各実施形態において、顕微鏡として倒立顕微鏡を例示しているが、これに限られるものではなく、各実施形態に係る顕微鏡は正立顕微鏡であってもよい。
【符号の説明】
【0356】
1 顕微鏡(第1実施形態)
21 照明光学系 31 検出光学系
60 位相変調ユニット(第1実施形態)
63 第1位相変調用スキャナ 65 位相変調素子
66 第2位相変調用スキャナ
80 位相変調ユニット(第1実施形態の変形例)
83 位相変調用スキャナ
101 顕微鏡(第2実施形態)
121 照明光学系 131 検出光学系
201 顕微鏡(第3実施形態)
221 照明光学系 231 検出光学系
301 顕微鏡(第4実施形態)
321 照明光学系 331 検出光学系
401 顕微鏡(第5実施形態)
421 照明光学系 431 検出光学系
160 位相変調ユニット(第6実施形態)
164 第1シリンドリカルレンズ 165 第2シリンドリカルレンズ
167 位相変調用スキャナ 169 位相変調素子
180 位相変調ユニット(第6実施形態の変形例)
184 第1シリンドリカルレンズ 185 第2シリンドリカルレンズ
187 位相変調用スキャナ
501 顕微鏡(第11実施形態)
521 照明光学系 531 検出光学系
560 位相変調ユニット(第11実施形態)
564 第1シリンドリカルレンズ 565 第2シリンドリカルレンズ
567 位相変調用スキャナ 569 位相変調素子
572 マイクロレンズアレイ
580 位相変調ユニット(第11実施形態の変形例)
584 第1シリンドリカルレンズ 585 第2シリンドリカルレンズ
587 位相変調用スキャナ 592 マイクロレンズアレイ
610 位相変調ユニット(第12実施形態)
611 第1マイクロレンズアレイ 614 第1位相変調用スキャナ
616 位相変調素子 617 第2位相変調用スキャナ
620 第2マイクロレンズアレイ
630 位相変調ユニット(第12実施形態の第1変形例)
631 マイクロレンズアレイ 634 位相変調用スキャナ
640 位相変調ユニット(第12実施形態の第2変形例)
641 第1マイクロレンズアレイディスク
649 第2マイクロレンズアレイディスク
650 位相変調ユニット(第12実施形態の第3変形例)
654 マイクロレンズアレイディスク
660 位相変調ユニット(第12実施形態の第4変形例)
664 マイクロレンズアレイディスク
710 位相変調ユニット(第16実施形態)
714 シリンドリカルレンズアレイ 716 位相変調用スキャナ
718 位相変調素子
730 位相変調ユニット(第12実施形態の第1変形例)
734 シリンドリカルレンズアレイ 735 リニアモータ
750 位相変調ユニット(第12実施形態の第2変形例)
754 シリンドリカルレンズアレイ 755 リニアモータ
810 位相変調ユニット(第20実施形態)
814 シリンドリカルレンズアレイ 816 位相変調用スキャナ
818 位相変調素子