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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154736
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】レーザ溶接方法及び冷却器
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20231013BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20231013BHJP
   F28F 1/32 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
B23K26/21 N
F28F1/32 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064257
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173598
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 桜子
(72)【発明者】
【氏名】伊川 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】山内 忍
(72)【発明者】
【氏名】田村 忍
【テーマコード(参考)】
4E168
5F136
【Fターム(参考)】
4E168BA21
4E168BA87
4E168CB03
4E168DA23
4E168DA24
4E168DA26
4E168DA28
4E168DA29
4E168EA19
4E168KA04
5F136BA07
5F136BA36
5F136CB07
5F136FA02
5F136FA03
5F136GA04
5F136GA37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡易な方法で、フィンによる冷却効率を向上させる。
【解決手段】レーザ溶接方法は、平板状の基部11と、基部11の表面から突出し、表面における第1の方向に延びる間隙113を挟んで並ぶ平板状の複数のフィン12’とを有するフィン部材(例えばヒートシンク10)を、平板状の保持部材(例えばカバー22)に重ね、基部11の間隙に対して、第1の方向の複数箇所に分割してレーザ光Lを照射することで、フィン部材と保持部材とを接合するとともに、複数のフィン12’の少なくとも一部を波型に変形させる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の基部と、当該基部の表面から突出し、当該表面における第1の方向に延びる間隙を挟んで並ぶ平板状の複数のフィンとを有するフィン部材を、平板状の保持部材に重ね、
前記基部の前記間隙に対して、前記第1の方向の複数箇所に分割してレーザ光を照射することで、前記フィン部材と前記保持部材とを接合するとともに、複数の前記フィンの少なくとも一部を波型に変形させる
レーザ溶接方法。
【請求項2】
前記フィン部材には、前記第1の方向に交差する第2の方向に前記フィンを挟んで並ぶ複数の前記間隙が形成されており、当該第2の方向に隣接する当該間隙に対し当該第1の方向の同じ位置にレーザ光を照射する
請求項1に記載のレーザ溶接方法。
【請求項3】
前記フィン部材には、前記第1の方向に交差する第2の方向に前記フィンを挟んで並ぶ複数の前記間隙が形成されており、当該第2の方向に隣接する当該間隙に対し当該第1の方向にずれた位置にレーザ光を照射する
請求項1に記載のレーザ溶接方法。
【請求項4】
前記間隙に対して、前記第1の方向に間隔をあけて並ぶ複数の第1の箇所と、当該第1の箇所に対し当該第1の方向に隣接し且つ当該第1の方向に交差する第2の方向にずれた複数の第2の箇所とにレーザ光を照射する
請求項1に記載のレーザ溶接方法。
【請求項5】
前記間隙において前記レーザ光を照射した部位に向けて前記フィンを傾斜させることで、当該フィンを波型に変形させる請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレーザ溶接方法。
【請求項6】
平板状の基部と、当該基部の表面から突出し、当該表面における第1の方向に延びる間隙を挟んで並ぶ複数のフィンとを有するフィン部材と、
前記フィン部材を保持する平板状の保持部材とを備え、
前記フィン部材は、前記基部の前記間隙に対して前記第1の方向の複数箇所に分割してレーザ光が照射されることで、前記保持部材に接合されているとともに、複数の前記フィンの少なくとも一部が波型に変形している
冷却器。
【請求項7】
平板状の保持部材と、
平板状の基部と、当該基部の表面から突出し、当該表面における第1の方向に延びる間隙を挟んで並ぶ複数のフィンとを有し、当該基部の当該間隙に対して当該第1の方向の複数箇所に分割してレーザ光が照射されることで前記保持部材に接合されているフィン部材と
を備え、
前記フィン部材は、前記フィンの少なくとも一部が、前記第1の方向の複数箇所において前記基部に垂直な方向に対して傾斜している
冷却器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接方法及び冷却器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、長手方向に沿って延びるフィンが短手方向に複数配置された冷却器において、高い冷却性能を実現するために、フィンを長手方向と短手方向に直交する方向から見た断面形状を波型とする技術が開示されている。
特許文献2には、ベース板に対しレーザ溶接によりフィンを接合する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-106220号公報
【特許文献2】特開2018-190847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィンによる冷却効率を向上させるためには、フィン間を流通する冷却液とフィンとの接触面積を大きくすることが好ましい。
本発明は、簡易な方法で、フィンによる冷却効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、平板状の基部と、当該基部の表面から突出し、当該表面における第1の方向に延びる間隙を挟んで並ぶ平板状の複数のフィンとを有するフィン部材を、平板状の保持部材に重ね、前記基部の前記間隙に対して、前記第1の方向の複数箇所に分割してレーザ光を照射することで、前記フィン部材と前記保持部材とを接合するとともに、複数の前記フィンの少なくとも一部を波型に変形させるレーザ溶接方法である。
ここで、前記フィン部材には、前記第1の方向に交差する第2の方向に前記フィンを挟んで並ぶ複数の前記間隙が形成されており、当該第2の方向に隣接する当該間隙に対し当該第1の方向の同じ位置にレーザ光を照射してもよい。
また、前記フィン部材には、前記第1の方向に交差する第2の方向に前記フィンを挟んで並ぶ複数の前記間隙が形成されており、当該第2の方向に隣接する当該間隙に対し当該第1の方向にずれた位置にレーザ光を照射してもよい。
また、前記間隙に対して、前記第1の方向に間隔をあけて並ぶ複数の第1の箇所と、当該第1の箇所に対し当該第1の方向に隣接し且つ当該第1の方向に交差する第2の方向にずれた複数の第2の箇所とにレーザ光を照射してもよい。
また、前記間隙において前記レーザ光を照射した部位に向けて前記フィンを傾斜させることで、当該フィンを波型に変形させてもよい。
また、他の観点から捉えると、本発明は、平板状の基部と、当該基部の表面から突出し、当該表面における第1の方向に延びる間隙を挟んで並ぶ複数のフィンとを有するフィン部材と、前記フィン部材を保持する平板状の保持部材とを備え、前記フィン部材は、前記基部の前記間隙に対して前記第1の方向の複数箇所に分割してレーザ光が照射されることで、前記保持部材に接合されているとともに、複数の前記フィンの少なくとも一部が波型に変形している冷却器である。
さらに、他の観点から捉えると、本発明は、平板状の保持部材と、平板状の基部と、当該基部の表面から突出し、当該表面における第1の方向に延びる間隙を挟んで並ぶ複数のフィンとを有し、当該基部の当該間隙に対して当該第1の方向の複数箇所に分割してレーザ光が照射されることで前記保持部材に接合されているフィン部材とを備え、前記フィン部材は、前記フィンの少なくとも一部が、前記第1の方向の複数箇所において前記基部に垂直な方向に対して傾斜している冷却器である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、簡易な方法で、フィンによる冷却効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る冷却装置の構成する部品を分解した図の一例である。
図2】冷却装置を長手方向に沿って切断した断面の一例を示す図である。
図3】冷却装置を短手方向に沿って切断した断面の一例を示す図である。
図4】ヒートシンクおよびカバーを、ヒートシンクのフィンが形成された側から見た斜視図である。
図5】ヒートシンクおよびカバーを、図4におけるV方向から見た図である。
図6】(a)~(b)は、ヒートシンクを長手方向に垂直な面で切断した断面図である。
図7】ヒートシンクとカバーとのレーザ溶接を説明するための図である。
図8】ヒートシンクとカバー22とをレーザ溶接する際のレーザ光の照射方法の一例を示した図であって、ヒートシンクをフィン側から見た図である。
図9】レーザ光を照射した後のヒートシンクおよびカバーの状態の一例を示す図であって、図8におけるIX-IX部の断面図である。
図10】第2の実施形態が適用されるヒートシンクおよびカバーを、フィンの先端側から見た図である。
図11】第3の実施形態が適用されるヒートシンクおよびカバーを、フィンの先端側から見た図である。
図12】第3の実施形態が適用されるヒートシンクおよびカバーを、フィンの先端側から見た図である。
図13】ヒートシンクおよびカバーを、長手方向に垂直な面で切断した断面図である。
図14】第3の実施形態において、ヒートシンクとカバーとをレーザ溶接する際のレーザ光の照射方法の一例を示した図であって、ヒートシンクをフィン側から見た図である。
図15】レーザ光を照射した後のヒートシンクおよびカバーの状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る冷却装置1の構成する部品を分解した図の一例である。
図2および図3は、冷却装置1の断面の一例を示す図である。図2は、冷却装置1を後述する長手方向に沿って切断した断面の一例を示す図であり、図3は、冷却装置1を後述する短手方向に沿って切断した断面の一例を示す図である。
第1の実施形態に係る冷却装置1は、フィン12を有するフィン部材の一例としてのヒートシンク10と、ヒートシンク10を収容するとともに、冷却液が流通する空間を形成するケース20とを備えている。冷却装置1は、発熱体の一例としての半導体モジュール5を、冷却液及びヒートシンク10を用いて冷却する液冷式冷却装置である。
【0009】
ケース20は、有底凹状のケース本体21と、ケース本体21の開口部を覆う保持部材の一例としてのカバー22と、ケース本体21とカバー22との間を密封するOリング23と、ケース本体21とカバー22とを接合するボルト24とを備えている。また、ケース20は、ケース20内に冷却液を流入させる流入管25と、ケース20内から冷却液を流出させる流出管26とを備えている。
ケース本体21及びカバー22の材質は、A6063等の、アルミニウム合金のA6000系、ADC12等のアルミニウム合金ダイカスト、銅であることを例示することができる。
【0010】
ケース本体21は、平板状の矩形の底部31と、底部31における周囲の端部から底部31の板面に直交する方向に突出した4つの側壁32とを有している。
4つの側壁32の内の第1側壁321には、第1側壁321を貫通する第1貫通孔323が形成されている。また、4つの側壁32の内の、第1側壁321に対向する第2側壁322には、第2側壁322を貫通する第2貫通孔324が形成されている。第1貫通孔323には、流入管25が嵌め込まれ、第2貫通孔324には、流出管26が嵌め込まれている。
また、4つの側壁32におけるカバー22側の端面には、ケース本体21の開口部の周囲に、Oリング23が嵌め込まれる溝325と、溝325の外側の四隅それぞれに、ボルト24が締め付けられる雌ネジ326とが形成されている。
【0011】
カバー22は、平板状の部材である。カバー22の四隅には、それぞれ、ボルト24を通すための孔221が形成されている。
カバー22におけるケース本体21側の面である内面222には、ヒートシンク10が接合されている。
【0012】
一方、カバー22における内面222とは反対側の面である外面223には、半導体モジュール5が接合されている。
ここで、半導体モジュール5は、絶縁層51と、絶縁層51上に設けられた配線層52と、配線層52に、はんだ層54を介して装着された半導体素子53とを有している。また、半導体モジュール5は、絶縁層51からの熱を冷却装置1に伝達する伝熱層55を有している。
そして、半導体モジュール5は、伝熱層55がカバー22の外面223に接合されている。伝熱層55とカバー22とを接合する手法としては、ろう付、はんだ付け、シンタリング(焼結)、樹脂による接着、熱伝導グリスによる貼り付け等を例示することができる。
【0013】
図4図6は、ヒートシンク10およびカバー22を示した図である。図4は、ヒートシンク10およびカバー22を、ヒートシンク10の後述するフィン12が形成された側から見た斜視図である。図5は、ヒートシンク10およびカバー22を、図4におけるV方向から見た図である。図6(a)~(b)は、ヒートシンク10を長手方向に垂直な面で切断した断面図である。図6(a)は、図5におけるVIA-VIA部の断面図であり、図6(b)は、図5におけるVIB-VIB部の断面図である。
ヒートシンク10は、平板状の基部11と、基部11から突出する複数のフィン12とを有している。
【0014】
基部11は、第1の方向の一例である長手方向と、長手方向に直交する第2の方向の一例である短手方向とを有する矩形状の部材である。基部11は、複数のフィン12が突出する表面111と、カバー22の内面222に接合される裏面112(図3参照)とを有している。
なお、本実施形態の説明では、基部11の長手方向および短手方向を、それぞれ、単に長手方向および短手方向と称する場合がある。
【0015】
それぞれのフィン12は、基部11の表面111から基部11の板面に直交する方向に突出する。以下の説明では、フィン12のうち基部11の表面111側(図4における下側)をフィン12の根元側と称し、フィン12のうち表面111とは反対側(図4における上側)をフィン12の先端側と称する場合がある。
それぞれのフィン12は、長手方向に沿って延びる板状の部材である。それぞれのフィン12は、基部11の表面111における長手方向に延びる間隙113を挟んで並んで配置されている。それぞれのフィン12は、流入管25から流出管26への方向(後述する流通空間35における冷却液の流通方向)に沿って設けられている。
また、本実施形態のフィン12は、波型に変形した部分を有する。波型とは、フィン12が延びる方向(この例では長手方向)に交差する方向(この例では短手方向)の一端側に突出する部分と、他端側に突出する部分とが、フィン12が延びる方向に交互に並んでいる形状を意味する。
【0016】
ヒートシンク10は、ヒートシンク10とカバー22とが積層される部位にヒートシンク10側からレーザ光を照射することで、カバー22に接合されている。付言すると、ヒートシンク10は、ヒートシンク10とカバー22とが積層される部位に、ヒートシンク10における基部11の表面に形成された間隙113に沿ってレーザ光を照射することで、カバー22に接合されている。
【0017】
図5に示すように、ヒートシンク10およびカバー22には、レーザ光の照射によってヒートシンク10およびカバー22を構成する材料が溶融することにより、溶接部40が形成されている。付言すると、ヒートシンク10およびカバー22には、ヒートシンク10の基部11におけるそれぞれの間隙113に沿って延びる溶接部40が形成されている。
本実施形態では、ヒートシンク10およびカバー22に形成される溶接部40は、それぞれの間隙113に沿って延びるとともに長手方向に複数箇所(この例では3箇所)に分割されている。
【0018】
そして、本実施形態のヒートシンク10は、レーザ光が照射されて溶接部40が形成されたことによって、フィン12の一部が波型に変形している。詳細については後述するが、本実施形態では、基部11の板面に直交する方向および長手方向に延びる平板状のフィン12´(後述する図7参照)を有するヒートシンク10をカバー22に重ねてレーザ溶接することで、平板状のフィン12´が変形して、波型の部分を有するフィン12が得られる。なお、波型に変形する前の平板状のフィン12´を有するヒートシンク10は、例えば、切削加工、押出成形、鍛造、プレス加工等により得られる。
【0019】
図5に示すように、本実施形態のヒートシンク10では、複数のフィン12のうち短手方向の中央部に位置するフィン121は、基部11の板面に直交する方向および長手方向に延びる平板状の形状を有している。
【0020】
これに対し、複数のフィン12のうちフィン121よりも短手方向の一端側に位置する複数のフィン122は、溶接部40に隣接する部分が、溶接部40に向けて短手方向の他端側に突出している。具体的には、複数のフィン122は、溶接部40に隣接し短手方向の他端側に突出する第1領域122Aと、短手方向の一端側に突出する第2領域122Bとが、長手方向に交互に並んだ波型の形状となっている。そして、複数のフィン122では、短手方向の一端側に位置するフィン122ほど、第1領域122Aの短手方向の他端側への突出量、および第2領域122Bの短手方向の一端側への突出量が大きい波型の形状となっている。
また、短手方向に隣接するフィン122では、図6(a)~(b)に示すように、第1領域122A同士の短手方向の間隔が、第2領域122B同士の短手方向の間隔と比べて狭くなっている。
【0021】
同様に、複数のフィン12のうちフィン121よりも短手方向の他端側に位置する複数のフィン123は、溶接部40に隣接する部分が、溶接部40に向けて短手方向の他端側に突出している。具体的には、複数のフィン123は、短手方向の一端側に突出する第1領域123Aと、短手方向の他端側に突出する第2領域123Bとが、長手方向に交互に並んだ波型の形状となっている。そして、複数のフィン123では、短手方向の他端側に位置するフィン123ほど、第1領域123Aの短手方向の一端側への突出量、および第2領域123Bの短手方向の他端側への突出量が大きい波型の形状となっている。
また、短手方向の隣接するフィン123では、図6(a)~(b)に示すように、第1領域123A同士の短手方向の間隔が、第2領域123B同士の短手方向の間隔と比べて狭くなっている。
【0022】
そして、ヒートシンク10全体では、短手方向の中央部から短手方向の両端に向かうほど、フィン12の短手方向への突出量が大きくなるとともに、フィン12の曲率が大きくなっている。
付言すると、複数のフィン122では、短手方向の一端側に位置するフィン122ほど、第1領域122Aと第2領域122Bとの短手方向への突出量および曲率が大きくなっている。同様に、複数のフィン123では、短手方向の他端側に位置するフィン123ほど、第1領域123Aと第2領域123Bとの短手方向への突出量および曲率が大きくなっている。
【0023】
また、図6(a)~(b)に示すように、ヒートシンク10の基部11は、間隙113のうち溶接部40が形成された領域の短手方向の幅が、間隙113のうち溶接部40が形成されていない領域と比べて小さくなっている。詳細については後述するが、これは、レーザ光の照射によって溶接部40を形成する際に、基部11を構成する母材が収縮することに由来する。
【0024】
以上のように構成された冷却装置1は、以下のようにして得られる。
カバー22と、複数の平板状のフィン12´を有するヒートシンク10とをレーザ溶接にて接合する。この際、レーザ光の照射によって複数のフィン12´が変形することで、波型の形状のフィン12が得られる。
半導体モジュール5とカバー22との接合は、採用する接合方法によって、カバー22とヒートシンク10との接合の前に行う場合と、カバー22とのヒートシンク10との接合の後に行う場合とがある。例えば、半導体モジュール5とカバー22とをろう付けやシンタリング等により接合する場合には、カバー22とヒートシンク10との接合の前に行うことが好ましい。一方、半導体モジュール5とカバー22とを接着、はんだ付け、グリスによる貼り付け等により接合する場合には、カバー22とヒートシンク10との接合の後に行うことが好ましい。
【0025】
そして、ヒートシンク10が接合されたカバー22を、半導体モジュール5が外部に位置し、ヒートシンク10がケース20の内部に収容されるように、ケース本体21に被せ、ケース本体21の開口部をカバー22で覆う。ケース本体21にカバー22を被せる時には、ケース本体21に形成された溝325にOリング23を嵌め込んでおく。
ケース本体21にカバー22を被せた後、カバー22に形成された孔221に通したボルト24をケース本体21に形成された雌ネジ326に締め付ける。
これにより、ヒートシンク10とケース本体21の凹部34との間に囲まれた空間に冷却液が流通する流通空間35が形成される。流通空間35では、ヒートシンク10の隣接するフィン12同士の間を、冷却液が流通する。なお、この例では、流通空間35による冷却液の流通方向が、長手方向と平行になっている。流通空間35は、Oリング23にて密封される。
【0026】
以上説明したように、本実施形態のヒートシンク10は、フィン12が波型に変形している部分を有している。このような構成を有することで、冷却装置1では、ヒートシンク10のフィン12が平板状である場合と比べて、流通空間35において隣接するフィン12同士の間を流通する冷却液とフィン12との接触面積が大きくなる。これにより、冷却装置1による半導体モジュール5の冷却効率が向上する。
【0027】
また、本実施形態のヒートシンク10では、複数のフィン12のうち短手方向の両端に位置するフィン12ほど、短手方向への突出量および曲率が大きい。このような構成を有することで、冷却装置1では、短手方向の中央と比べて短手方向の両端側のほうが、冷却液とフィン12との接触面積が大きくなり、冷却効率が高くなっている。これにより、例えば半導体モジュール5等の発熱体において熱源が短手方向の中央からずれた位置にある場合に、冷却装置1によって発熱体をより効果的に冷却することができる。
【0028】
さらにまた、本実施形態のヒートシンク10では、複数のフィン12のうち短手方向の中央に位置するフィン12ほど、短手方向への突出量および曲率が小さい。このような構成を有することで、冷却装置1では、短手方向の中央に位置するフィン12の短手方向への突出量および曲率が短手方向の両端と同じ場合と比べて、短手方向の中央に位置するフィン12間を流通する冷却液の圧力損失が小さくなっている。これにより、冷却装置1による半導体モジュール5の冷却効率がより向上する。また、冷却液がフィン12間を流通する際に、冷却液の流れに生じる乱れを低減できる。
【0029】
次に、レーザ溶接により、ヒートシンク10をカバー22に接合するとともに、ヒートシンク10のフィン12を波型に変形させる方法について説明する。
図7は、ヒートシンク10とカバー22とのレーザ溶接を説明するための図である。
図8は、ヒートシンク10とカバー22(図5等参照)とをレーザ溶接する際のレーザ光Lの照射方法の一例を示した図であって、ヒートシンク10をフィン12´側から見た図である。図9は、レーザ光Lを照射した後のヒートシンク10およびカバー22の状態の一例を示す図であって、図8におけるIX-IX部の断面図である。
【0030】
図7に示すように、平板状のフィン12´を有するヒートシンク10を、基部11の裏面112が接触するように、カバー22の上に重ね合わせる。そして、ヒートシンク10の複数のフィン12´側から、基部11の表面111において複数の平板状のフィン12´間に形成された間隙113に対して、レーザ装置150のレーザヘッド157からレーザ光Lを照射する。そして、複数のフィン12´間に形成された間隙113に沿ってレーザヘッド157を移動させることで、レーザ光Lを照射する。なお、レーザ装置150のレーザ源は特に限定されない。YAGレーザ、COレーザ、ファイバレーザ、ディスクレーザ、半導体レーザであることを例示することができる。
【0031】
本実施形態では、ヒートシンク10のフィン12を波型に変形させる観点から、ヒートシンク10の間隙113に対して、長手方向の複数箇所に分割してレーザ光Lを照射する。
この例では、図8に示すように、ヒートシンク10のそれぞれの間隙113に対して、長手方向に間隔をあけながら、長手方向の複数箇所(この例では3箇所)に分割してレーザ光Lを照射する。付言すると、この例では、それぞれの間隙113に対して、長手方向の同じ位置にレーザ光Lを照射する。
レーザ光Lを長手方向の複数箇所に分割して照射する方法としては、例えばレーザヘッド157を長手方向に移動させながら、レーザ光Lの照射と消灯とを繰り返すことが挙げられる。また、レーザ光Lを長手方向の複数箇所に分割して照射する他の方法としては、ヒートシンク10上にレーザ光Lの進行を遮断する遮断板等を重ねて、ヒートシンク10の間隙113にレーザ光Lが照射される箇所と照射されない箇所とを設けることが挙げられる。
【0032】
ヒートシンク10の基部11に対してレーザ光Lが照射されると、レーザ光Lのエネルギーが熱に変換されることによって、ヒートシンク10の基部11およびカバー22の母材自体が溶融し、その後、急速に冷却される。この急速加熱・急速冷却により溶接部40に組織変化が生じ、溶接部40は溶けて固まった溶融部41と、溶融熱により組織変化の生じた熱影響部42とにより構成される。熱影響部42は、基部11の熱影響部42hと、カバー22の熱影響部42cとにより構成される。
【0033】
半導体モジュール5が接合されるカバー22の外面223に凹凸が生じることを抑制する観点から、溶融部41がカバー22を貫通しないようにレーザ光Lを照射することが好ましい。溶融部41がカバー22を貫通しないようにレーザ溶接するためには、レーザ光Lの単位時間当たりのエネルギー密度を調整すれば良い。単位時間当たりのエネルギー密度が大きくなるのに応じて、より深い溶融部41が形成されるため、溶融部41がカバー22を貫通する大きさよりも小さくなるように、レーザ光Lの単位時間当たりのエネルギー密度を小さくする。また、レーザ光Lの単位時間当たりのエネルギー密度を小さくするには、レーザヘッド157の移動速度を大きくするか、または、レーザ出力を小さくすれば良い。
【0034】
ここで、ヒートシンク10では、基部11に対してレーザ光Lが照射され溶接部40が形成されると、溶接部40が形成された部位では、ヒートシンク10の基部11を構成する母材が冷却されて凝固する際に収縮する。この例では、図9に示すように、溶接部40が形成された部位において、基部11が、ヒートシンク10における短手方向の中心に向けて、短手方向に収縮する。
一方、基部11のうち溶接部40が形成されていない部位は、収縮しない。
【0035】
そして、溶接部40が形成された部位において基部11が短手方向に収縮すると、平板状のフィン12´のうち溶接部40に隣接する部分が、収縮した基部11に引っ張られるように、溶接部40に近づく方向に変形する。
具体的には、複数のフィン12´のうちヒートシンク10における短手方向の一端側に位置するフィン12´は、図8に示すように、溶接部40に隣接する部分が、短手方向の他端側に突出するように変形する。一方、これらのフィン12´のうち、溶接部40に隣接していない部分は、変形しない。これにより、図5に示したように、溶接部40に隣接し短手方向の他端側に突出する第1領域122Aと、短手方向の一端側に突出する第2領域122Bとが、長手方向に交互に並んだ波型のフィン122が得られる。
【0036】
また、複数のフィン12´のうちヒートシンク10における短手方向の他端側に位置するフィン12´は、図8に示すように、溶接部40に隣接する部分が、短手方向の一端側に突出するように変形する。一方、これらのフィン12´のうち、溶接部40に隣接していない部分は、変形しない。これにより、図5に示したように、溶接部40に隣接し短手方向の一端側に突出する第1領域123Aと、短手方向の他端側に突出する第2領域123Bとが、長手方向に交互に並んだ波型のフィン123が得られる。
なお、複数のフィン12´のうちヒートシンク10における短手方向の中央に位置するフィン12´(図5におけるフィン121)は、溶接部40において基部11が収縮した場合であっても、ほとんど変形しない。
【0037】
ここで、本実施形態では、複数の間隙113に対して、長手方向の同じ位置に溶接部40を形成している。また、上述したように、それぞれの間隙113に形成された溶接部40において、基部11は、ヒートシンク10における短手方向の中心に向けて収縮する。
これにより、本実施形態のヒートシンク10では、複数のフィン12´のうち、短手方向の両端側に位置するフィン12´ほど、溶接部40を形成することによる短手方向への変形量が大きくなる。
この結果、短手方向の中央部と比べて短手方向の両端側において、フィン12の短手方向への突出量が大きいとともに、フィン12の曲率が大きい本実施形態のヒートシンク10が得られる。
【0038】
ここで、波型のフィンを有するヒートシンクは、例えば、切削加工、押出成形、鍛造、プレス加工等によっても製造することができる。しかしながら、このような方法で波型のフィンを有するヒートシンクを製造すると、平板状のフィンを有するヒートシンクを製造する場合と比べて、製造工程が複雑になったり製造に要するコストが高価になったりする傾向がある。また、これらの方法により得られた波型のフィンを有するヒートシンクをレーザ溶接によりカバー22に接合しようとすると、レーザ光を波型に蛇行させて照射する必要があり、ヒートシンクとカバー22との接合精度が低下するおそれがある。
【0039】
これに対し、本実施形態では、ヒートシンク10の間隙113に対して、長手方向の複数箇所に分割してレーザ光Lを照射することで、ヒートシンク10をカバー22に接合するとともに、ヒートシンク10のフィン12を波型に変形させることができる。これにより、例えば、切削加工、押出成形、鍛造、プレス加工等によって波型のフィンを有するヒートシンクを得る場合と比べて、簡易な方法で、冷却効率の高い波型のフィン12を有するヒートシンク10を得ることができる。また、冷却装置1の製造工程を変更することなく、波型のフィン12を有するヒートシンク10を備えた冷却装置1を得ることができる。
【0040】
<第2の実施形態>
続いて、第2の実施形態について説明する。図10は、第2の実施形態が適用されるヒートシンク10およびカバー22を、フィン12の先端側から見た図である。なお、以下の説明では、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を用い、詳細な説明は省略する。
第1の実施形態では、上述したように、ヒートシンク10のそれぞれの間隙113に対して、長手方向の同じ位置にレーザ光Lを照射し、長手方向の同じ位置に溶接部40を形成している。これに対し、第2の実施形態では、ヒートシンク10において短手方向に隣接する間隙113に対して、長手方向にずれた位置にレーザ光Lを照射し、長手方向にずれた位置に溶接部40を形成している点で、第1の実施形態とは異なっている。
【0041】
ヒートシンク10およびカバー22には、それぞれの間隙113に沿って延びるとともに長手方向に複数箇所に分割された溶接部40が形成されている。
本実施形態では、ヒートシンク10の複数の間隙113のうち短手方向の一端側(図10における上側)から奇数段目の間隙113に対して、長手方向における第1の位置に、複数(この例では3個)の第1溶接部40Cが、長手方向に間隔をあけて形成されている。また、ヒートシンク10の複数の間隙113のうち短手方向の一端側から偶数段目の間隙113に対して、第1溶接部40C同士の間隔に対応する長手方向における第2の位置に、複数(この例では3個)の第2溶接部40Dが、長手方向に間隔をあけて形成されている。付言すると、第1溶接部40Cと第2溶接部40Dとは、長手方向にずれた位置に形成されている。
【0042】
本実施形態のヒートシンク10においても、第1の実施形態と同様に、溶接部40(第1溶接部40C、第2溶接部40D)が形成された部位において基部11が短手方向に収縮することで、複数のフィン12が波型に変形している。本実施形態のヒートシンク10では、フィン12は、溶接部40(第1溶接部40C、第2溶接部40D)に隣接する部分が、溶接部40に向けて短手方向に突出し、波型に変形している。
【0043】
具体的には、複数のフィン12のうち短手方向の一端側から奇数段目のフィン124は、第1溶接部40Cに向けて短手方向の他端側に突出する領域と、第2溶接部40Dに向けて短手方向の一端側に突出する領域とが、長手方向に順に並んでいる。
また、複数のフィン12のうち短手方向の一端側から偶数段目のフィン125は、第1溶接部40Cに向けて短手方向の一端側に突出する領域と、第2溶接部40Dに向けて短手方向の他端側に突出する領域とが、長手方向に順に並んでいる。
【0044】
そして、本実施形態のヒートシンク10では、短手方向に隣接するフィン12の波型の位相が互い違いになっている。言い換えると、本実施形態のヒートシンク10では、短手方向に隣接する一方のフィン12のうち短手方向の一端側に突出する領域と、他方のフィン12のうち短手方向の他端側に突出する領域とが、間隙113を挟んで短手方向に対向している。同様に、本実施形態のヒートシンク10では、短手方向に隣接する一方のフィン12のうち短手方向の他端側に突出する領域と、他方のフィン12のうち短手方向の一端側に突出する領域とが、間隙113を挟んで短手方向に対向している。
【0045】
このように、第2の実施形態のヒートシンク10では、第1の実施形態と同様に、フィン12が波型に変形している部分を有している。このような構成を有することで、冷却装置1では、ヒートシンク10のフィン12が平板状である場合と比べて、流通空間35において隣接するフィン12同士の間を流通する冷却液とフィン12との接触面積が大きくなる。これにより、冷却装置1による半導体モジュール5の冷却効率が向上する。
【0046】
また、本実施形態のヒートシンク10では、短手方向に隣接するフィン12の波型の位相が互い違いであることで、短手方向の一端側から他端側に亘って、フィン12同士の間を流通する冷却液による冷却効率が一定となりやすい。これにより、冷却装置1により冷却される半導体モジュール5に温度むらが生じることが抑制される。
【0047】
さらに、本実施形態のヒートシンク10では、上述したように、短手方向に隣接する間隙113に対して、長手方向にずれた位置にレーザ光Lを照射し、長手方向にずれた位置に溶接部40を形成している。これにより、例えば第1の実施形態のように、ヒートシンク10のそれぞれの間隙113に対して、長手方向の同じ位置に溶接部40を形成する場合と比べて、溶接部40を形成するためにレーザ光を照射する距離が短くなる。この結果、本実施形態では、ヒートシンク10とカバー22とを接合するためのレーザ光の照射に要する時間を短くすることができる。
【0048】
<第3の実施形態>
続いて、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、ヒートシンク10のフィン12の形状、およびヒートシンク10とカバー22とに形成される溶接部40の位置が、第1の実施形態および第2の実施形態とは異なっている。
図11および図12は、第3の実施形態が適用されるヒートシンク10およびカバー22を、フィンの先端側から見た図である。なお、図12では、フィン12のうち基部11との境界のみを実線で示し、フィン12の他の部分については破線で示している。
図13(a)~(b)は、ヒートシンク10およびカバー22を、長手方向に垂直な面で切断した断面図である。図13(a)は、図11におけるXIIIA-XIIIA部の断面図であり、図13(b)は、図11におけるXIIIB-XIIIB部の断面図である。
【0049】
図12に示すように、ヒートシンク10およびカバー22には、ヒートシンク10の基部11におけるそれぞれの間隙113に沿って延びるとともに長手方向に複数箇所に分割されている溶接部40を有している。本実施形態では、ヒートシンク10およびカバー22に形成される溶接部40は、それぞれの間隙113において、短手方向の一端側(図12の上側)において長手方向に沿って延びる複数の第1溶接部40Aと、短手方向の他端側(図12の下側)において長手方向に沿って延びる複数の第2溶接部40Bとに分割されている。それぞれの間隙113において、複数の第1溶接部40Aと第2溶接部40Bとは、長手方向に交互に並んで設けられている。
【0050】
また、それぞれのフィン12は、図13(a)~(b)に示すように、基部11の板面に垂直な方向に対して傾斜している部分を有する。付言すると、それぞれのフィン12は、間隙113に形成された溶接部40に隣接する部分が、溶接部40側に向けて傾斜している。より具体的には、図13(a)に示すように、それぞれのフィン12は、間隙113に形成された第1溶接部40Aに隣接する部分が、第1溶接部40A側に向けて、短手方向の他端側に傾斜している。また、図13(b)に示すように、それぞれのフィン12は、間隙113に形成された第2溶接部40Bに隣接する部分が、第2溶接部40B側に向けて、短手方向の一端側に傾斜している。
なお、図示は省略するが、それぞれのフィン12は、長手方向に隣接する第1溶接部40Aと第2溶接部40Bとの境界であって、間隙113に溶接部40が形成されていない領域に対向する部分では、基部11の板面に垂直な方向に対して傾斜していない。言い換えると、それぞれのフィン12は、第1溶接部40Aと第2溶接部40Bとの境界に対向する部分では、基部11の板面に垂直な方向に延びている。
【0051】
そして、それぞれのフィン12は、第1溶接部40Aに向けて短手方向の他端側に傾斜している部分、および第2溶接部40Bに向けて短手方向の一端側に傾斜している部分が、長手方向に順に並んでいる。付言すると、それぞれのフィン12は、基部11の板面に垂直な方向に対する傾斜角度が、長手方向の一端から他端に亘り連続して変化している。
これにより、フィン12全体としては、フィン12を先端側から基部11の板面に垂直な方向に見た場合に、短手方向の他端側に突出する第1領域12Aと、短手方向の一端側に突出する第2領域12Bとが長手方向に並んだ波型の形状となっている。
【0052】
また、それぞれのフィン12は、根元側と先端側とで形状が異なっている。より具体的には、それぞれのフィン12は、根元側では、長手方向に沿って延びる平板状である。また、それぞれのフィン12は、根元側から先端側に向かうに従い、短手方向の一端側または他端側への突出量が大きい波型の形状となっている。付言すると、それぞれのフィン12は、第1領域12Aおよび第2領域12Bの曲率が、根元側から先端側に向かうに従い大きくなっている。
【0053】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、平板状のフィン12´(図7参照)を有するヒートシンク10をカバー22に重ね合わせ、ヒートシンク10の間隙113にレーザ光Lを照射することで、波型のフィン12が形成される。
図14は、第3の実施形態において、ヒートシンク10とカバー22(図11等参照)とをレーザ溶接する際のレーザ光Lの照射方法の一例を示した図であって、ヒートシンク10をフィン12´側から見た図である。
図15は、レーザ光Lを照射した後のヒートシンク10およびカバー22の状態の一例を示す図である。
【0054】
本実施形態では、平板状のフィン12´を基部11の板面に垂直な方向に対して傾斜させて波型のフィン12を得る観点から、ヒートシンク10の間隙113に対して、フィン12´に隣接する位置に、レーザ光Lを長手方向の複数箇所に分割して照射する。
この例では、まず、図14にて矢印Aで示すように、ヒートシンク10のそれぞれの間隙113における短手方向の一端側に、長手方向に間隔をあけながら、長手方向の複数箇所(この例では3箇所)に分割してレーザ光Lを照射する。これにより、それぞれの間隙113に、フィン12´に対して短手方向の他端側に隣接する位置に、長手方向に間隔をあけて並ぶ複数の第1溶接部40A(図12参照)が形成される。
【0055】
続いて、図14にて矢印Bで示すように、ヒートシンク10のそれぞれの間隙113における短手方向の他端側において、第1溶接部40Aが形成された箇所の間に位置する複数箇所(この例では3箇所)に分割して、レーザ光Lを照射する。これにより、それぞれの間隙113に、フィン12´に対して短手方向の一端側に隣接する位置に、長手方向に間隔をあけて並ぶ複数の第2溶接部40B(図12参照)が形成される。
【0056】
ここで、上述したように、ヒートシンク10では、基部11に溶接部40(第1溶接部40A、第2溶接部40B)が形成されると、溶接部40において、基部11が収縮する。
そして、溶接部40において基部11が収縮すると、平板状のフィン12´のうち溶接部40に隣接する部分が、収縮した基部11に引っ張られるように変形する。これにより、図15に示すように、フィン12´のうち溶接部40に隣接する部分が、溶接部40側に向けて短手方向に傾斜する。
【0057】
より具体的には、間隙113に対してレーザ光Lが照射されると、第1溶接部40Aおよび第2溶接部40Bにおいて、基部11が収縮する。そして、第1溶接部40Aにおいて基部11が収縮すると、フィン12´のうち第1溶接部40Aに隣接する部分が、上述した図13(a)に示したフィン12のように、第1溶接部40A側に向けて短手方向の他端側に傾斜する。同様に、第2溶接部40Bにおいて基部11が収縮すると、フィン12´のうち第2溶接部40Bに隣接する部分が、上述した図13(b)に示したフィン12のように、第2溶接部40B側に向けて短手方向の一端側に傾斜する。
これにより、短手方向の他端側に突出する第1領域12Aと、短手方向の一端側に突出する第2領域12Bとが長手方向に交互に並んだ波型のフィン12が得られる。
【0058】
このように、第3の実施形態のヒートシンク10では、第1の実施形態と同様に、フィン12が波型に変形している部分を有している。このような構成を有することで、冷却装置1では、ヒートシンク10のフィン12が平板状である場合と比べて、流通空間35において隣接するフィン12同士の間を流通する冷却液とフィン12との接触面積が大きくなる。これにより、冷却装置1による半導体モジュール5の冷却効率が向上する。
【0059】
また、本実施形態のヒートシンク10では、フィン12の根元側と先端側とで波型の形状が異なっている。具体的には、本実施形態のヒートシンク10では、フィン12の先端側ほど、短手方向への突出量および曲率が大きい。冷却装置1では、このような構成を有することで、フィン12の先端側の形状が根元側と等しい場合と比べて、流通空間35において隣接するフィン12同士の間を流通する冷却液とフィン12との接触面積がより大きくなる。これにより、冷却装置1による半導体モジュール5の冷却効率がより向上する。
【0060】
さらに、本実施形態のヒートシンク10では、フィン12の根元側ほど、短手方向への突出量および曲率が小さい。冷却装置1では、このような構成を有することで、フィン12の根元側の形状が先端側と等しい場合と比べて、フィン12の根元側の近傍を流通する冷却液の圧力損失が小さくなる。これにより、冷却装置1による半導体モジュール5の冷却効率がより向上する。また、冷却液がフィン12間を流通する際に、冷却液の流れに生じる乱れを低減できる。
【0061】
さらにまた、本実施形態のヒートシンク10では、複数のフィン12の波型の位相が揃っている。言い換えると、本実施形態のヒートシンク10では、複数のフィン12において、短手方向の他端側に突出する第1領域12Aと、短手方向の一端側に突出する第2領域12Bとの長手方向の位置が、互いに等しくなっている。このような構成を有することで、複数のフィン12の波型の位相がずれている場合と比べて、フィン12間を流通する冷却液の圧力損失が小さくなる。これにより、冷却装置1による半導体モジュール5の冷却効率がより向上する。また、冷却液がフィン12間を流通する際に、冷却液の流れに生じる乱れを低減できる。
【0062】
以上説明したように、レーザ溶接方法は、平板状の基部(例えば基部11)と、基部の表面(例えば表面111)から突出し、表面における第1の方向(例えば長手方向)に延びる間隙(例えば間隙113)を挟んで並ぶ平板状の複数のフィン(例えばフィン12´)とを有するフィン部材(例えばヒートシンク10)を、平板状の保持部材(例えばカバー22)に重ね、基部の間隙に対して、第1の方向の複数個所に分割してレーザ光を照射することで、フィン部材と保持部材とを接合するとともに、複数のフィンの少なくとも一部を波型に変形させる。
これにより、簡易な方法で、フィンによる冷却効率を向上させることができる。
【0063】
また、冷却器(例えばケース20)は、平板状の基部(例えば基部11)と、基部の表面(例えば表面111)から突出し、表面における第1の方向(例えば長手方向)に延びる間隙(例えば間隙113)を挟んで並ぶ複数のフィン(例えばフィン12)とを有するフィン部材(例えばヒートシンク10)と、フィン部材を保持する平板状の保持部材(例えばカバー22)とを備え、フィン部材は、基部の間隙に対して第1の方向の複数個所に分割してレーザ光が照射されることで、保持部材に接合されているとともに、複数のフィンの少なくとも一部が波型に変形している。
これにより、複数のフィンが波型に変形していない場合と比べて、フィンによる冷却効率を向上させることができる。
【0064】
さらに、冷却器(例えばケース20)は、平板状の保持部材(例えばカバー22)と、平板状の基部(例えば基部11)と、基部の表面(例えば表面111)から突出し、表面における第1の方向(例えば長手方向)に延びる間隙(例えば間隙113)を挟んで並ぶ複数のフィン(例えばフィン12)とを有し、基部の間隙に対して第1の方向の複数個所に分割してレーザ光が照射されることで保持部材に接合されているフィン部材(例えばヒートシンク10)とを備え、フィン部材は、フィンの少なくとも一部が、第1の方向の複数個所において基部に垂直な方向に対して傾斜している。
これにより、フィンが基部に垂直な方向に対して傾斜していない場合と比べて、フィンによる冷却効率を向上させることができる。
【0065】
ここで、上述した第1の実施形態~第3の実施形態では、ヒートシンク10において、複数の間隙113の全てに対して長手方向の複数箇所に分割された溶接部40を形成することで、短手方向の一端側から他端側に亘って複数のフィン12を波型に変形させたが、これに限られない。例えば、冷却装置1により冷却する半導体モジュール5等の発熱体の形状や発熱体における熱源の位置等に応じて、複数のフィン12のうち一部のフィン12のみを波型に変形させてもよい。例えば、複数のフィン12のうち短手方向の中央に位置するフィン12のみを波型に変形させる場合には、ヒートシンク10の複数の間隙113のうち、短手方向の中央に位置する間隙113にのみ、長手方向の複数箇所に分割された溶接部40を形成すればよい。
【0066】
また、上述した第1の実施形態~第3の実施形態では、ヒートシンク10において、それぞれのフィン12を、長手方向の一端から他端の全域に亘って波型に変形させたが、これに限られない。例えば、フィン12のうち、冷却装置1により冷却する半導体モジュール5等の発熱体が配置される位置のみを、波型に変形させてもよい。例えば、上述した第1の実施形態~第3の実施形態のように、冷却装置1における長手方向の中央に半導体モジュール5が配置される場合、フィン12における長手方向の中央部のみを波型に変形させてもよい。この場合、ヒートシンク10の複数の間隙113に対し、長手方向の中央部のみに溶接部40を形成すればよい。
【符号の説明】
【0067】
1…冷却装置、10…ヒートシンク、11…基部、12…フィン、12A…第1領域、12B…第2領域、22…カバー、40…溶接部、40A…第1溶接部、40B…第2溶接部、41…溶融部、42…熱影響部、111…表面、112…裏面、113…間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15