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特開2023-154794シリコン単結晶の製造方法及び装置並びにシリコンウェーハの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154794
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】シリコン単結晶の製造方法及び装置並びにシリコンウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20231013BHJP
   C30B 15/10 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
C30B29/06 502B
C30B15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064365
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】清水 泰順
(72)【発明者】
【氏名】下崎 一平
(72)【発明者】
【氏名】高梨 啓一
(72)【発明者】
【氏名】濱田 建
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF10
4G077EG01
4G077PD01
(57)【要約】
【課題】石英ルツボの変形や偏心の有無又は大きさを定量的に評価することが可能なシリコン単結晶の製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】本発明は、石英ルツボ11内のシリコン融液2からシリコン単結晶を引き上げるシリコン単結晶の製造方法であって、シリコン融液2の融液面2aに写り込む石英ルツボ11の鏡像11Mを含む画像を所定の時間間隔で取得し、石英ルツボ11が少なくとも一回転する間に取得した複数枚の画像に写る石英ルツボ11の鏡像11Mの位置の時間的変化から石英ルツボ11の変形又は偏心の有無又は大きさを評価する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ルツボ内のシリコン融液からシリコン単結晶を引き上げるシリコン単結晶の製造方法であって、
前記シリコン融液の融液面に写り込む前記石英ルツボの鏡像を含む画像を所定の時間間隔で取得し、前記石英ルツボが少なくとも一回転する間に取得した複数枚の画像に写る前記石英ルツボの鏡像の位置の時間的変化から前記石英ルツボの変形又は偏心の有無又は大きさを評価することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
【請求項2】
前記石英ルツボの鏡像から前記石英ルツボの上端部の位置を検出し、前記上端部の位置の時間的変化から前記上端部の変形量又は偏心量を算出する、請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項3】
前記画像中の画素の縦方向の輝度の微分値から前記石英ルツボの上端部を検出する、請求項2に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項4】
前記画像を撮影するカメラの光学軸を含む平面内に前記上端部の位置の検出ラインを設定し、前記検出ライン上における前記石英ルツボの鏡像の位置の時間的変化から前記石英ルツボの変化量を算出する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項5】
前記石英ルツボ内のシリコン原料を融解する原料融解工程を開始してから前記シリコン融液に種結晶を着液させる着液工程を開始するまでの間に取得した前記複数枚の画像に基づいて前記石英ルツボの変化量を算出する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項6】
シリコン融液を保持する石英ルツボと、
前記石英ルツボを取り囲むように設けられ、前記シリコン融液を加熱するヒーターと、
前記石英ルツボを回転及び昇降駆動するルツボ駆動手段、
前記シリコン融液からシリコン単結晶を引き上げる結晶引き上げ手段と、
前記シリコン融液から引き上げられたシリコン単結晶を取り囲むように前記石英ルツボの上方に配置された熱遮蔽体と、
前記熱遮蔽体の開口部を通して見える前記シリコン融液の融液面を斜め上方から撮影するカメラと、
前記カメラの撮影画像を処理する画像処理部とを備え、
前記カメラは、前記シリコン融液の融液面に写り込む前記石英ルツボの鏡像を含む画像を所定の時間間隔で取得し、
前記画像処理部は、前記石英ルツボが少なくとも一回転する間に取得した複数枚の画像に写る前記石英ルツボの鏡像の位置の時間的変化から前記石英ルツボの変形又は偏心の有無又は大きさを評価することを特徴とするシリコン単結晶製造装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、前記石英ルツボの鏡像から前記石英ルツボの上端部の位置を検出し、前記上端部の位置の時間的変化から前記上端部の変形量又は偏心量を算出する、請求項6に記載のシリコン単結晶製造装置。
【請求項8】
前記画像処理部は、前記画像中の画素の縦方向の輝度の微分値から前記石英ルツボの上端部を検出する、請求項7に記載のシリコン単結晶製造装置。
【請求項9】
前記画像処理部は、前記画像を撮影するカメラの光学軸を含む平面内に前記上端部の位置の検出ラインを設定し、前記検出ライン上における前記石英ルツボの鏡像の位置の時間的変化から前記石英ルツボの変化量を算出する、請求項6乃至8のいずれか一項に記載のシリコン単結晶製造装置。
【請求項10】
前記画像処理部は、前記石英ルツボ内のシリコン原料を融解する原料融解工程を開始してから前記シリコン融液に種結晶を着液させる着液工程を開始するまでの間に取得した前記複数枚の画像に基づいて前記石英ルツボの変化量を算出する、請求項6乃至8のいずれか一項に記載のシリコン単結晶製造装置。
【請求項11】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法により製造されたシリコン単結晶を加工してシリコンウェーハを製造することを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー法(CZ法)によるシリコン単結晶の製造方法及び装置に関し、特に石英ルツボの変形又は偏心の有無又は大きさの評価方法に関する。また、本発明は、そのようなシリコン単結晶を用いたシリコンウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの基板材料となるシリコンウェーハの多くはCZ法により製造されたシリコン単結晶インゴットを加工して製造されている。CZ法は、石英ルツボ内で多結晶シリコン原料を融解してシリコン融液を生成し、シリコン融液に種結晶を浸漬し、石英ルツボ及び種結晶を回転させながら種結晶を徐々に引き上げることにより、種結晶の下端に大きな単結晶を成長させる。CZ法によれば大口径シリコン単結晶の歩留まりを高めることが可能である。
【0003】
石英ルツボはシリコン融液を保持するシリカガラス製の容器である。そのため、石英ルツボにはシリコンの融点以上の高温下で変形せず、長時間の使用に耐えられる高い耐久性が求められる。結晶引き上げ工程中に石英ルツボが変形するとシリコン単結晶の形状や品質が変化し、最悪の場合、ルツボ壁が炉内構造物に接触して事故につながる。このような事故を未然に防止するためには、石英ルツボの変形を監視することが好ましい。例えば、特許文献1には、ルツボの容積の変化に伴う融液面の高さの急な変化からルツボの変形を検出する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-109826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
石英ルツボ内の多結晶シリコン原料を加熱して融解する原料融解工程では、ヒーターからの輻射熱によって石英ルツボに大きな熱負荷がかかるため、石英ルツボの上端部が内側へ倒れ込む現象が生じやすい。このようなルツボの変形が発生した場合、単結晶の引き上げ工程中にルツボと熱遮蔽体が接触し、結晶引き上げ工程の続行が不可能となる。また結晶引き上げ工程を続行できる場合でも、石英ルツボ内のシリコン融液の対流が変化してシリコン単結晶の酸素異常の要因となる。そのため、結晶引き上げ工程中、特にルツボの変形が起こりやすい原料融解工程中のルツボの変形の確認は必須となる。しかし、従来は作業者が目視で炉内を観察して判断するしか方法がなく、ルツボの変形量の定量的に評価する方法が存在しなかった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、石英ルツボの変形や偏心の有無又は大きさを定量的に評価することが可能なシリコン単結晶の製造方法及び装置並びにシリコンウェーハの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明によるシリコン単結晶の製造方法は、石英ルツボ内のシリコン融液からシリコン単結晶を引き上げるシリコン単結晶の製造方法であって、前記シリコン融液の融液面に写り込む前記石英ルツボの鏡像を含む画像を所定の時間間隔で取得し、前記石英ルツボが少なくとも一回転する間に取得した複数枚の画像に写る前記石英ルツボの鏡像の位置の時間的変化から前記石英ルツボの変形又は偏心による変化量を算出することを特徴とする。本発明によれば、石英ルツボの変形や偏心による形状の変化を客観的に捉えて石英ルツボの変形による事故やシリコン単結晶の品質の低下を未然に防止することができる。
【0008】
本発明によるシリコン単結晶の製造方法は、前記石英ルツボの鏡像から前記石英ルツボの上端部の位置を検出し、前記上端部の位置の時間的変化から前記上端部の変形量又は偏心量を算出することが好ましい。これにより、石英ルツボの上端部の変形やルツボの偏心の度合いを客観的に評価することができる。また、融液面の高さ変動に影響しない石英ルツボの上端部のみの変形を評価することも可能である。
【0009】
本発明によるシリコン単結晶の製造方法は、前記画像中の画素の縦方向の輝度の微分値から前記石英ルツボの上端部を検出することが好ましい。これにより、石英ルツボの上端部の変形や偏心の度合いを客観的に評価することができる。
【0010】
本発明によるシリコン単結晶の製造方法は、前記画像を撮影するカメラの光学軸を含む平面内に前記上端部の位置の検出ラインを設定し、前記検出ライン上における前記石英ルツボの鏡像の位置の時間的変化から前記石英ルツボの変化量を算出することが好ましい。これにより、石英ルツボの変化量を容易に算出することができる。
【0011】
本発明によるシリコン単結晶の製造方法は、前記石英ルツボ内のシリコン原料を融解する原料融解工程を開始してから前記シリコン融液に種結晶を着液させる着液工程を開始するまでの間に取得した前記複数枚の画像に基づいて前記石英ルツボの変化量を算出することが好ましい。原料融解工程中は石英ルツボに大きな熱負荷がかかるため、石英ルツボの上端部の内倒れが生じやすい。このような原料融解工程中に石英ルツボの変化量を算出することにより、石英ルツボの変形による事故や単結晶歩留まりの低下を未然に防止することができる。
【0012】
また、本発明によるシリコン単結晶製造装置は、シリコン融液を保持する石英ルツボと、前記石英ルツボを取り囲むように設けられ、前記シリコン融液を加熱するヒーターと、前記石英ルツボを回転及び昇降駆動するルツボ駆動手段、前記シリコン融液からシリコン単結晶を引き上げる結晶引き上げ手段と、前記シリコン融液から引き上げられたシリコン単結晶を取り囲むように前記石英ルツボの上方に配置された熱遮蔽体と、前記熱遮蔽体の開口部を通して見える前記シリコン融液の融液面を斜め上方から撮影するカメラと、前記カメラの撮影画像を処理する画像処理部とを備え、前記カメラは、前記シリコン融液の融液面に写り込む前記石英ルツボの鏡像を含む画像を所定の時間間隔で取得し、前記画像処理部は、前記石英ルツボが少なくとも一回転する間に取得した複数枚の画像に写る前記石英ルツボの鏡像の位置の時間的変化から前記石英ルツボの変形又は偏心による変化量を算出することを特徴とする。本発明によれば、石英ルツボの変形や偏心による形状の変化を客観的に捉えて石英ルツボの変形による事故やシリコン単結晶の品質の低下を未然に防止することができる。
【0013】
本発明において、前記画像処理部は、前記石英ルツボの鏡像から前記石英ルツボの上端部の位置を検出し、前記上端部の位置の時間的変化から前記上端部の変形量又は偏心量を算出することが好ましい。これにより、石英ルツボの上端部の変形やルツボの偏心の度合いを客観的に評価することができる。
【0014】
本発明において、前記画像処理部は、前記画像中の画素の縦方向の輝度の微分値から前記石英ルツボの上端部を検出することが好ましい。これにより、石英ルツボの上端部の変形や偏心の度合いを客観的に評価することができる。
【0015】
本発明において、前記画像処理部は、前記画像を撮影するカメラの光学軸を含む平面内に前記上端部の位置の検出ラインを設定し、前記検出ライン上における前記石英ルツボの鏡像の位置の時間的変化から前記石英ルツボの変化量を算出することが好ましい。これにより、石英ルツボの変化量を容易に算出することができる。
【0016】
本発明において、前記画像処理部は、前記石英ルツボ内のシリコン原料を融解する原料融解工程を開始してから前記シリコン融液に種結晶を着液させる着液工程を開始するまでの間に取得した前記複数枚の画像に基づいて前記石英ルツボの変化量を算出することが好ましい。このような原料融解工程中に石英ルツボの変化量を算出することにより、石英ルツボの変形による事故や単結晶歩留まりの低下を未然に防止することができる。
【0017】
さらにまた、本発明によるシリコンウェーハの製造方法は、上述した本発明によるシリコン単結晶の製造方法により製造されたシリコン単結晶を加工してシリコンウェーハを製造することを特徴とする。本発明によれば、シリコンウェーハの製造歩留まりを高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、石英ルツボの変形や偏心の有無又は大きさ定量的に評価することが可能なシリコン単結晶の製造方法及び装置並びにシリコンウェーハの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施の形態によるシリコン単結晶の製造方法の説明図であって、単結晶製造装置の構成を示す略断面図である。
図2図2は、本実施形態によるシリコン単結晶の製造工程を示すフローチャートである。
図3図3は、シリコン単結晶インゴットの形状を示す略断面図である。
図4図4は、石英ルツボの変形を監視する方法を説明するための図であって、原料融解工程におけるCZ引き上げ炉の概念図である。
図5図5(a)及び(b)は、石英ルツボ内のシリコン融液を撮影するカメラの撮影画像の模式図であって、(a)は石英ルツボの上端部が変形していない状態、(b)は石英ルツボの上端部が変形した状態をそれぞれ示している。
図6図6(a)及び(b)は、石英ルツボの上端部の位置の求め方の説明図である。
図7図7は、石英ルツボの変形量の測定結果の一例を示すグラフであり、横軸はルツボ回転角度(度)、縦軸はルツボ鏡像エッジの位置(pixel)をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態によるシリコン単結晶の製造方法の説明図であって、単結晶製造装置の構成を示す略断面図である。
【0022】
図1に示すように、単結晶製造装置1は、水冷式のチャンバー10と、チャンバー10内でシリコン融液2を保持する石英ルツボ11と、石英ルツボ11を保持する黒鉛ルツボ12と、黒鉛ルツボ12を支持する回転シャフト13と、回転シャフト13及び黒鉛ルツボ12介して石英ルツボ11を回転及び昇降駆動するルツボ駆動機構14と、黒鉛ルツボ12の周囲に配置されたヒーター15と、ヒーター15の外側であってチャンバー10の内面に沿って配置された断熱材16と、石英ルツボ11の上方に配置された熱遮蔽体17と、石英ルツボ11の上方であって回転シャフト13と同軸上に配置された引き上げワイヤー18と、チャンバー10の上方に配置された結晶引き上げ機構19と、チャンバー10内を撮影するカメラ20と、カメラ20の撮影画像を処理する画像処理部21と、単結晶製造装置1の各部を制御する制御部22とを備えている。
【0023】
チャンバー10は、メインチャンバー10aと、メインチャンバー10aの上部開口に連結された細長い円筒状のプルチャンバー10bとで構成されており、石英ルツボ11、黒鉛ルツボ12、ヒーター15及び熱遮蔽体17はメインチャンバー10a内に設けられている。プルチャンバー10bにはチャンバー10内にアルゴンガス等の不活性ガス(パージガス)やドーパントガスを導入するためのガス導入口10cが設けられており、メインチャンバー10aの下部にはチャンバー10内の雰囲気ガスを排出するためのガス排出口10dが設けられている。また、メインチャンバー10aの上部には覗き窓10eが設けられており、シリコン単結晶3の育成状況を観察可能である。
【0024】
石英ルツボ11は、円筒状の側壁部と湾曲した底部とを有するシリカガラス製の容器である。黒鉛ルツボ12は、加熱によって軟化した石英ルツボ11の形状を維持するため、石英ルツボ11の外表面に密着して石英ルツボ11を包むように保持する。石英ルツボ11及び黒鉛ルツボ12はチャンバー10内においてシリコン融液2を支持する二重構造のルツボを構成している。
【0025】
黒鉛ルツボ12は回転シャフト13の上端部に固定されており、回転シャフト13の下端部はチャンバー10の底部を貫通してチャンバー10の外側に設けられたルツボ駆動機構14に接続されている。黒鉛ルツボ12、回転シャフト13及びルツボ駆動機構14は石英ルツボ11の回転及び昇降駆動するルツボ駆動手段を構成している。ルツボ駆動機構14によって駆動される石英ルツボ11の回転及び昇降動作は制御部22によって制御される。
【0026】
ヒーター15は、石英ルツボ11内に充填されたシリコン原料を融解してシリコン融液2を生成すると共に、シリコン融液2の溶融状態を維持するために用いられる。ヒーター15はカーボン製の抵抗加熱式ヒーターであり、黒鉛ルツボ12内の石英ルツボ11を取り囲むように設けられている。さらにヒーター15の外側には断熱材16がヒーター15を取り囲むように設けられており、これによりチャンバー10内の保温性が高められている。ヒーター15の出力は制御部22によって制御される。
【0027】
熱遮蔽体17は、シリコン融液2の温度変動を抑制して結晶成長界面近傍に適切な熱分布を与えると共に、ヒーター15及び石英ルツボ11からの輻射熱によるシリコン単結晶3の加熱を防止するために設けられている。熱遮蔽体17は略円筒状の黒鉛製の部材であり、シリコン単結晶3の引き上げ経路を除いたシリコン融液2の上方の領域を覆うように設けられている。
【0028】
熱遮蔽体17の下端の開口部17aの直径はシリコン単結晶3の直径よりも大きく、これによりシリコン単結晶3の引き上げ経路が確保されている。また熱遮蔽体17の下端部の外径は石英ルツボ11の口径よりも小さく、熱遮蔽体17の下端部は石英ルツボ11の内側に位置するので、石英ルツボ11の上端部を熱遮蔽体17の下端よりも上方まで上昇させても熱遮蔽体17が石英ルツボ11と干渉することはない。
【0029】
シリコン単結晶3の成長と共に石英ルツボ11内の融液量は減少するが、融液面2aと熱遮蔽体17との間隔(ギャップ値h)が一定になるように石英ルツボ11を上昇させることにより、シリコン融液2の温度変動を抑制すると共に、融液面2aの近傍を流れるガスの流速を一定にしてシリコン融液2からのドーパントの蒸発量を制御する。このようなギャップ制御により、シリコン単結晶3の引き上げ軸方向の結晶欠陥分布、酸素濃度分布、抵抗率分布等の安定性を向上させることができる。
【0030】
石英ルツボ11の上方には、シリコン単結晶3の引き上げ軸であるワイヤー18と、ワイヤー18を巻き取ることによってシリコン単結晶3を引き上げる結晶引き上げ機構19が設けられており、これらはシリコン単結晶3を引き上げる結晶引き上げ手段を構成している。結晶引き上げ機構19はワイヤー18と共にシリコン単結晶3を回転させる機能を有している。結晶引き上げ機構19は制御部22によって制御される。結晶引き上げ機構19はプルチャンバー10bの上方に配置されており、ワイヤー18は結晶引き上げ機構19からプルチャンバー10b内を通って下方に延びており、ワイヤー18の先端部はメインチャンバー10aの内部空間まで達している。図1は育成途中のシリコン単結晶3がワイヤー18に吊設された状態を示している。シリコン単結晶3の引き上げ時には石英ルツボ11とシリコン単結晶3とをそれぞれ回転させながらワイヤー18を徐々に引き上げることによりシリコン単結晶3を成長させる。
【0031】
チャンバー10の外側にはカメラ20が設置されている。カメラ20は例えばCCDカメラであり、チャンバー10に形成された覗き窓10eを介してチャンバー10内を撮影する。カメラ20の設置角度は鉛直方向に対して所定の角度をなしており、カメラ20はシリコン単結晶3の引き上げ軸に対して傾斜したカメラ軸(光学軸)を有する。すなわち、カメラ20は、熱遮蔽体17の円形の開口部17a及びシリコン融液2の融液面2aを含む石英ルツボ11の上面領域を斜め上方から撮影する。
【0032】
カメラ20は、画像処理部21に接続されており、画像処理部21は制御部22に接続される。シリコン単結晶3の引き上げ工程中、画像処理部21は、カメラ20の撮影画像に写る単結晶の輪郭パターンから固液界面近傍における結晶直径を算出する。また画像処理部21は、カメラ20の撮影画像中の融液面に映り込んだ熱遮蔽体17の鏡像の位置から熱遮蔽体17から融液面までの距離(ギャップ値h)を算出する。
【0033】
制御部22は、カメラ20の撮影画像から得られた結晶直径データに基づいて結晶引き上げ速度を制御することにより結晶直径を制御する。具体的には、結晶直径の計測値が狙いの直径よりも大きい場合には結晶引き上げ速度を大きくし、狙いの直径よりも小さい場合には引き上げ速度を小さくする。また制御部22は、結晶引き上げ機構19のセンサ出力等から求めたシリコン単結晶3の結晶長データと、カメラ20の撮影画像から得られたギャップ値h(液面レベル)に基づいて、所定のギャップ値になるように石英ルツボ11の移動量(ルツボ上昇速度)を制御する。
【0034】
図2は、本実施形態によるシリコン単結晶の製造工程を示すフローチャートである。また、図3は、シリコン単結晶インゴットの形状を示す略断面図である。
【0035】
図2に示すように、本実施形態によるシリコン単結晶の製造工程は、石英ルツボ11内のシリコン原料をヒーター15で加熱してシリコン融液2を生成する原料融解工程S11と、原料融解工程S11の影響による石英ルツボ11の変形の有無又は大きさを評価するルツボ変形検出工程S12と、ワイヤー18の先端部に取り付けられた種結晶を降下させてシリコン融液2に着液させる着液工程S13と、シリコン融液2との接触状態を維持しながら種結晶を徐々に引き上げて単結晶を育成する結晶育成工程(S14~S17)を有している。
【0036】
図2及び図3に示すように、結晶育成工程では、無転位化のために結晶直径が細く絞られたネック部3aを形成するネッキング工程S14と、結晶成長と共に結晶直径が徐々に増加したショルダー部3bを形成するショルダー部育成工程S15と、規定の結晶直径に維持されたボディー部3cを形成するボディー部育成工程S16と、結晶成長と共に結晶直径が徐々に減少したテイル部3dを形成するテイル部育成工程S17とが順に実施される。
【0037】
その後、シリコン単結晶3を融液面2aから切り離して冷却する冷却工程S18が実施される。以上により、図3に示すようなネック部3a、ショルダー部3b、ボディー部3c及びテイル部3dを有するシリコン単結晶インゴット3Iが完成する。シリコンウェーハは、シリコン単結晶インゴット3Iに外周研削、スライス、ラッピング、エッチング、両面研磨、片面研磨、洗浄等の工程を順次行うことにより製造される。
【0038】
本実施形態においては、原料融解工程S11から着液工程S13までの間に石英ルツボ11内のシリコン融液2の融液面2aをカメラ20で撮影し、カメラ20の撮影画像に写る石英ルツボ11の鏡像の変化から石英ルツボ11の変形を検出する(ルツボ変形検出工程S12)。石英ルツボ11の変形の検出を原料融解工程S11から着液工程S13までの間に行う理由は、ショルダー部育成工程S14以降ではシリコン単結晶3の存在によって融液面2aに映る石英ルツボ11の鏡像を捉えることが難しくなるからである。また、石英ルツボ11の大きな変形の予兆を早期に検出することができれば、結晶引き上げの続行/中止の判断も容易である。
【0039】
図4は、石英ルツボ11の変形を検出する方法を説明するための図であって、原料融解工程S11におけるCZ引き上げ炉の概念図である。
【0040】
図4に示すように、原料融解工程S11では石英ルツボ11の変形を検出するためカメラ20で融液面2aを撮影する。カメラ20は、熱遮蔽体17の開口部17aを通して覗き見えるシリコン融液2の融液面2aを撮影することができる。カメラ20と石英ルツボ11との間には熱遮蔽体17が存在しているので、石英ルツボ11の実像をカメラ20で直接捉えることはできない。融液面2aには石英ルツボ11の鏡像11Mが映り込んでいるが、石英ルツボ11の上端部11eが内倒れすると、融液面2aに映る石英ルツボ11の鏡像11Mのエッジの位置も変化するので、石英ルツボ11の鏡像11Mの変化から石英ルツボ11の変形を検出することができる。
【0041】
原料融解工程S11を開始すると固体のシリコン原料が徐々に融解してシリコン融液2の量が増加する。原料融解工程S11を開始してしばらくはシリコン融液2の量が少なく、固体原料も残存しているので、融液面2aに映る石英ルツボ11の鏡像をカメラ20で正確に捉えることはできない。また石英ルツボ11にはまだ大きな熱負荷がかかっていないので、石英ルツボ11が大きく変形することもない。原料の融解がある程度進んで石英ルツボ11内のシリコン融液2の量が十分になると、石英ルツボ11の上端部11eの鏡像エッジが融液面2aに写り込むようになるので、石英ルツボ11の変形の検出が可能となる。そしてシリコン融液2の量が十分に増加する頃には、熱負荷の影響による石英ルツボ11の変形が見られるようになる。
【0042】
石英ルツボ11が相対的に高い位置にあり、熱遮蔽体17の下端から融液面2aまでの距離(ギャップ値h)が小さい場合には、石英ルツボ11の上端部11eの鏡像が熱遮蔽体17によって遮られ、鏡像エッジを観察することができない。しかし、石英ルツボ11を十分に降下させた場合には、石英ルツボ11の上端部11eの鏡像エッジをカメラ20の視野内に収めることができる。そのため、ルツボ変形検出工程S12では、結晶育成工程(特にボディー部育成工程S16)のときよりも低い位置に融液面2aを設定して石英ルツボ11の変形量の算出を行うことが望ましい。
【0043】
図5(a)及び(b)は、石英ルツボ11内のシリコン融液2の融液面2aを撮影するカメラ20の撮影画像の模式図であって、(a)は石英ルツボ11の上端部が変形していないときの画像、(b)は石英ルツボ11の上端部が変形しているときの画像をそれぞれ示している。
【0044】
図5(a)及び(b)に示すように、石英ルツボ11内のシリコン融液2の融液面2aは、石英ルツボ11の上方に設けられた熱遮蔽体17の開口部17aを通して観察することができる。カメラ20の撮影画像中、黒塗りの領域は熱遮蔽体17の実像17Rであり、熱遮蔽体17の開口部17aの内側領域はすべて融液面2aである。
【0045】
融液面2aは鏡面であるため、融液面2aには石英ルツボ11の上端部やヒーター15の上端部が映り込む。実空間ではヒーター15の上端部は石英ルツボ11の上端部よりも上方に位置するが、融液面2aに映る石英ルツボ11とヒーター15の位置関係は上下反転しており、撮影画像中の下方が実空間の上方に対応する。そのため、石英ルツボ11の鏡像エッジはヒーター15の鏡像エッジよりも上方に位置している。熱遮蔽体17の円弧状のエッジラインE1と石英ルツボ11の上端部の円弧状のエッジラインE2との間の領域が石英ルツボ11の鏡像11Mであり、また石英ルツボ11の上端部の円弧状のエッジラインE2とヒーター15の上端部の円弧状のエッジラインE3との間の領域がヒーター15の鏡像15Mである。
【0046】
図5(a)に示すように、変形していない石英ルツボ11の上端部11eの鏡像11MのエッジラインE2は綺麗な円弧状になる。しかし、図4のように石英ルツボ11の上端部11eが内側に倒れ込んでいると、図5(b)に示すように、石英ルツボ11の上端部11eの鏡像11Mの円弧形状が変化し、鏡像11MのエッジラインE2の一部は画像の縦方向(Y方向)の下方に移動する。石英ルツボ11は一定速度で回転しているので、予め設定した検出ラインL0上で見たときには、石英ルツボ11の上端部の位置が下方に移動することになる。したがって、石英ルツボ11が一回転する間における石英ルツボ11の鏡像15MのエッジラインE2と検出ラインL0との交点P2の位置の変化を測定することにより、石英ルツボ11の上端部11eの変形量を算出することができる。
【0047】
検出ラインL0はカメラ20の光学軸を含む平面内に設定されることが好ましい。これにおり、石英ルツボ11の上端部11eの変形量を容易に算出することができる。
【0048】
図6(a)及び(b)は、石英ルツボ11の鏡像エッジの位置の求め方の説明図である。
【0049】
図6(a)及び(b)に示すように、検出ラインL0上における石英ルツボ11の鏡像エッジの位置は、撮影画像の縦方向(Y方向)の輝度分布の微分値から求めることができる。図6(a)に示す撮影画像の縦方向の輝度分布を見ると、熱遮蔽体17の実像17Rと石英ルツボ11の鏡像11Mとの境界位置P1(図5(a)及び(b)参照)で輝度が大きく変化し、また石英ルツボ11の鏡像とヒーター15の鏡像との境界位置P2でも大きく変化することが分かる。
【0050】
そこでこの撮影画像の縦方向(Y方向)の輝度分布の微分値を求めると、図6(b)のように2つの輝度ピークが得られる。最初の輝度ピークの発生位置は熱遮蔽体17の下端部の位置P1に対応しており、2番目の輝度ピークの発生位置は石英ルツボ11の鏡像エッジの位置P2に対応している。こうして得られた石英ルツボ11の上端部の鏡像エッジの位置P2を石英ルツボ11が一回転する間に所定の撮影周期(サンプリング周期)で測定し、鏡像エッジの位置P2の変化量から、石英ルツボ11の上端部11eの変形量を求めることができる。
【0051】
画像の撮影周期(撮影間隔)は360度を割り切れない角度ピッチであることが好ましい。例えば、整数値であれば、7度、11度といった360の約数以外の数値を挙げることができる。360度を割り切れる角度ピッチで測定する場合、ルツボの2回転目以降も同じ角度のデータの積み重ねとなり、角度ピッチの隙間のデータを埋めることができない。一方、7度ピッチなどの360度を割り切れない角度ピッチで測定した場合、2回転目以降は7の倍数の隙間を埋める角度となるため、7回転したときに1度ピッチのデータを取得することができる。また、画像の撮影周期は短ければ短いほど石英ルツボ11の上端部11eの変形量の測定精度を高めることができるが、画像の処理負担が増加する。そのため、画像の撮影周期の下限値はルツボ回転速度と画像処理装置の能力に応じて決定すればよい。例えば、0.5度以上とすることもできる。また画像の撮影周期の上限値は例えば15度以下とすることができ、10度以下とすることもできる。
【0052】
上記のように、石英ルツボ11の上端部11eの変形量は、石英ルツボ11が一回転する間における鏡像エッジの縦方向の位置の偏差から求めるため、ルツボが全周に亘って内倒れしている場合には、正しい変形量を求めることはできない。しかし、図5(b)に示すように、石英ルツボ11の内倒れは局所的に発生し、ルツボの全周に亘って発生することはほとんどない。したがって、上記の方法であってもルツボの変形量を正確に求めることは可能である。また、ルツボが変形していないときの画素位置を基準値として予め求めておけば、ルツボの全周が内倒れした場合でも正しい変形量を求めることが可能である。
【0053】
測定誤差を排除して石英ルツボ11の上端部11eの変形量を正確に求めるためには、複数の測定値の平均値を求めることが好ましい。そのため、石英ルツボ11が連続でN回転する間に撮影した複数の画像から石英ルツボ11の変形量のN個の測定結果を求め、これらN個の測定結果の平均値を求めることが好ましい。
【0054】
図7は、一定速度で回転する石英ルツボ11の上端部の鏡像エッジの位置の測定結果の一例を示すグラフであり、横軸はルツボ回転角度(度)、縦軸は石英ルツボの鏡像エッジの画素位置(pixel)をそれぞれ示している。
【0055】
図7に示すように、石英ルツボ11の鏡像エッジのY方向の位置は、石英ルツボ11が一回転する間に上下方向に変動し、約30°、150°及び270°の位置で極大となり、約110°、220°及び330°の位置で極小となっていることが分かる。またルツボ鏡像エッジの上下方向の最大変化量は約60pixelであることが分かる。このように、石英ルツボ11の鏡像の変化から石英ルツボ11の変形量を求めることができる。
【0056】
上記の撮影画像から求められる石英ルツボ11の変形量は画素数(pixel)であり、これを実空間の変形量(ミリメートル)にするためには単位換算が必要である。単位換算の方法は特に限定されないが、例えば、石英ルツボ11の上端部の一点がルツボ回転により移動したときの単位時間当たりの移動画素数と、石英ルツボ11の直径及び回転速度から求めた単位時間当たりの実際の移動距離との対応関係から求めることができる。すなわち、石英ルツボ11の鏡像エッジ上の一点がある座標点Aから別の座標点Bまで移動していたとする。一方、実空間における石英ルツボ11の上端部の一点の移動距離は、石英ルツボの直径と回転速度から求めることができるから、撮影画像中のA-B間の画素数と実空間の移動距離とを対応させることにより、一画素当たりの実空間の距離を求めることができる。
【0057】
上述した石英ルツボ11の変形量を測定した結果、変形量が閾値を超える場合、制御部22は音や画面表示により警報を出力してもよい。これにより、作業者に注意を喚起することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によるシリコン単結晶の製造方法は、熱遮蔽体17の開口部17aを通して見える石英ルツボ11内のシリコン融液2の融液面2aをカメラ20で取得し、融液面2aに写り込む石英ルツボ11の鏡像11Mの時間的変化から石英ルツボ11の変形量を算出するので、石英ルツボ11の変形による事故の確率を予測して未然に防止することができる。また結晶引き上げ条件が石英ルツボ11の変形に与える影響をフィードバックすることで、ルツボの変形を未然に防止することができる。
【0059】
また、本実施形態によるシリコン単結晶製造装置は、熱遮蔽体17の開口部17aを通して見える石英ルツボ11内のシリコン融液2の融液面2aを斜め上方から撮影するカメラ20と、カメラ20の撮影画像を処理する画像処理部21とを備え、カメラ20は、シリコン融液2の融液面2aに写り込む石英ルツボ11の鏡像を含む画像を石英ルツボ11が少なくとも一回転する間に所定の時間間隔で複数枚取得し、画像処理部21は、複数枚の画像の各々に写る石英ルツボ11の鏡像11Mの時間的変化から石英ルツボ11の変形量を算出するので、石英ルツボ11の変形による事故の確率を予測して未然に防止することができる。また結晶引き上げ条件が石英ルツボ11の変形に与える影響をフィードバックすることで、ルツボの変形を未然に防止することができる。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【0061】
例えば、上記実施形態においては、石英ルツボ11の上端部11eの内倒れによる変形量を算出する場合について説明したが、本発明はそのような変形量の算出に限定されるものではなく、石英ルツボ11の沈み込みによって上端部11eの周方向の高さばらつきが生じる場合にも適用することができる。また、石英ルツボ11の中心軸が回転中心軸からずれて偏心回転するような場合における偏心量を算出する方法として用いることも可能である。この場合、石英ルツボ11の偏心量は、ルツボの回転周期と同期した鏡像エッジの位置の周期的な偏差から算出することができる。
【0062】
また、上記実施形態においては、原料融解工程S11から着液工程S13の開始前の期間に石英ルツボ11の鏡像を撮影して石英ルツボ11の変形量を算出しているが、本発明による石英ルツボ11の変形量の測定時期は原料融解工程S11から着液工程S13の開始前の期間に限定されるものではなく、融液面2aに映る石英ルツボ11の鏡像エッジを撮影可能な任意のタイミングで行うことができる。また、結晶引き上げ中に石英ルツボ11の鏡像を撮影できる場合には、石英ルツボ11の変形量を継続的に検出することも可能である。
【0063】
また、本発明による石英ルツボの変形量の検出は、いわゆるマルチ引き上げ法にも適用することができる。マルチ引き上げ法は、シリコン単結晶を引き上げた後、同一の石英ルツボ内にシリコン原料を追加供給して融解し、得られたシリコン融液からシリコン単結晶の引き上げを行い、このような原料供給工程と単結晶引き上げ工程を繰り返すことにより、一つの石英ルツボから複数本のシリコン単結晶を製造する方法である。追加供給した原料の融解工程において、本発明によるルツボの変形量の算出方法を採用することにより、結マルチ引き上げが続行可能かどうかを客観的に判断することができる。
【0064】
また、上記実施形態においては、結晶直径やギャップ値の測定に用いるカメラ20を用いて石英ルツボ11の変形量の検出のための画像を取得しているが、本発明はこのような構成に限定されず、直径計測等に用いるカメラとは別の専用のカメラを用いて融液面2aの画像を撮影してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 単結晶製造装置
2 シリコン融液
2a 融液面
3 シリコン単結晶
3I シリコン単結晶インゴット
3a ネック部
3b ショルダー部
3c ボディー部
3d テイル部
10 チャンバー
10a メインチャンバー
10b プルチャンバー
10c ガス導入口
10d ガス排出口
10e 覗き窓
11 石英ルツボ
11M 石英ルツボの鏡像
12 黒鉛ルツボ
13 回転シャフト
14 ルツボ駆動機構
15 ヒーター
15M ヒーターの鏡像
16 断熱材
17 熱遮蔽体
17R 熱遮蔽体の実像
17a 熱遮蔽体の開口部
18 ワイヤー
19 ワイヤー巻取り機構
20 カメラ
21 画像処理部
22 制御部
E1 熱遮蔽部材の実像のエッジライン
E2 石英ルツボの鏡像のエッジライン
E3 ヒーターの鏡像のエッジライン
L0 検出ライン
S11 原料融解工程
S12 ルツボ変形検出工程
S13 着液工程
S14 ネッキング工程
S15 ショルダー部育成工程
S16 ボディー部育成工程
S17 テイル部育成工程
S18 冷却工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7