(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154839
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】基板貼り付け装置及び基板貼り付け方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20231013BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064441
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】菊地 右文
(72)【発明者】
【氏名】山田 芳裕
(72)【発明者】
【氏名】水澤 竜馬
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA03
5F131AA12
5F131AA23
5F131BA60
5F131CA09
5F131CA33
5F131CA42
5F131EA07
5F131EA14
5F131EA15
5F131EB63
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EC32
5F131EC42
5F131EC52
5F131EC54
5F131EC62
5F131EC63
5F131EC64
5F131JA27
5F131JA35
(57)【要約】
【課題】複数の基板どうしの接合面に加えられる加圧力の均一化を図る。
【解決手段】基板貼り付け装置100は、複数の基板S1、S2を重ねた状態で挟む第1プレート20及び第2プレート30と、第1プレート20及び第2プレート30のいずれか一方をいずれか他方に押し付ける押圧機構30と、を有し、第1プレート20及び第2プレート30の少なくとも一方は、プレート本体31と、プレート本体31に支持されて基板S1、S2に当接し、プレート本体31よりも高い柔軟性を有する変形可能な当接シート35と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を重ねた状態で挟む第1プレート及び第2プレートと、
前記第1プレート及び前記第2プレートのいずれか一方をいずれか他方に押し付ける押圧機構と、を有し、
前記第1プレート及び前記第2プレートの少なくとも一方は、
プレート本体と、
前記プレート本体に支持されて前記基板に当接し、前記プレート本体よりも高い柔軟性を有する変形可能な当接シートと、を備える、基板貼り付け装置。
【請求項2】
前記当接シートは、前記基板の機能領域を覆うように形成されている、請求項1に記載の基板貼り付け装置。
【請求項3】
前記当接シートは、前記プレート本体よりも低い圧縮ヤング率を有する材料を含んで形成されている、請求項1又は2に記載の基板貼り付け装置。
【請求項4】
前記当接シートは、ゴム硬度が15~36である、請求項1又は2に記載の基板貼り付け装置。
【請求項5】
前記当接シートは、多孔質材料を用いて形成されている、請求項1又は2に記載の基板貼り付け装置。
【請求項6】
前記当接シートは、0.5mm以上1.5mm以下の厚みを有している、請求項1又は2に記載の基板貼り付け装置。
【請求項7】
前記当接シートは、単位面積あたり1.0tの荷重が付与された際に、前記荷重の方向に50um以上変形する材料により形成されている、請求項1又は2に記載の基板貼り付け装置。
【請求項8】
前記第1プレート及び前記第2プレートの一方又は双方は、前記基板を加熱するための加熱部を備え、
前記当接シートは、前記加熱部による加熱温度に抗する耐熱性を有した材料で形成されている、請求項1又は2に記載の基板貼り付け装置。
【請求項9】
前記当接シートの外形寸法は、前記基板の外形寸法よりも小さく、前記当接シートが前記基板に当接した際に、前記当接シートの外側に前記基板の外周部が突出する、請求項1又は2に記載の基板貼り付け装置。
【請求項10】
複数の基板を重ねた状態で第1プレート及び第2プレートで挟むことにより前記複数の基板を貼り合わせる方法であって、
前記第1プレートと前記第2プレートとの間に、前記複数の基板を重ねた状態で配置することと、
前記第1プレート及び前記第2プレートのいずれか一方をいずれか他方に向けて押し付けることにより、前記第1プレートと前記第2プレートとの間の前記複数の基板に押圧力を付与することと、を含み、
前記押圧力は、前記押圧力に応じて変形する当接シートを介して、前記複数の基板に付与される、基板貼り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板貼り付け装置及び基板貼り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の基板を重ねた状態で貼り付ける基板貼り付け装置が知られている。このような基板貼り付け装置として、例えば被加圧部と、その下面に配置された応力分散部と、応力分散部の下面に配置された部品保持部とを備えた構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この構成において、部品保持部は応力分散部を構成する応力分散プレートの下面に取り付けられている。被加圧部の上面中央には、加圧機構からの加圧力が点荷重で加えられる。応力分散プレートは、その上面に円環状に台形状断面の接触部を備えている。複数の基板は、部品保持部と応力分散部との間に挟み込まれる。加圧機構からの加圧力は、応力分散プレートに形成された円環状の接触部により、周囲へ分散される。このように、応力分散プレートを設けることにより、複数の基板どうしの接合面に加えられる加圧力は均一化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の基板貼り付け装置は、円環状の接触部を介して加圧力を伝達しているので、加圧する軸方向の延長上に加圧力を伝達する部分がなく、加圧力を均一に分散するには不十分である。基板どうしを適切に張り合わせるために、複数の基板どうしの接合面に加えられる加圧力のさらなる均一化が望まれている。また、複数の基板どうしの接合面に加えられる加圧力の均一性が低い場合、例えば、基板貼り付け装置の後工程で、基板の洗浄を行った際に、基板上の電子部品が脱落してしまうこともある。
【0005】
本発明は、複数の基板どうしの接合面に加えられる加圧力の均一化を図ることが可能な基板貼り付け装置及び基板貼り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様では、複数の基板を重ねた状態で挟む第1プレート及び第2プレートと、第1プレート及び第2プレートのいずれか一方をいずれか他方に押し付ける押圧機構と、を有し、第1プレート及び第2プレートの少なくとも一方は、プレート本体と、プレート本体に支持されて基板に当接し、プレート本体よりも高い柔軟性を有する変形可能な当接シートと、を備える、基板貼り付け装置が提供される。
【0007】
本発明の第2態様では、複数の基板を重ねた状態で第1プレート及び第2プレートで挟むことにより複数の基板を貼り合わせる方法であって、第1プレートと第2プレートとの間に、複数の基板を重ねた状態で配置することと、第1プレート及び第2プレートのいずれか一方をいずれか他方に向けて押し付けることにより、第1プレートと第2プレートとの間の複数の基板に押圧力を付与することと、を含み、押圧力は、押圧力に応じて変形する当接シートを介して、複数の基板に付与される、基板貼り付け方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板貼り付け装置は、第1プレート及び第2プレートの少なくとも一方が、基板に当接し、プレート本体よりも高い柔軟性を有する変形可能な当接シートを備えているので、押圧機構による押圧力は、当接シートを介して複数の基板に伝達される。従って、複数の基板どうしの接合面に加えられる加圧力の均一化を図ることができ、複数の基板どうしを適切に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る基板貼り付け装置の一例を示す図である。
【
図3】第2プレートを下降させ、当接シートを基板に突き当てた状態の縦断面図である。
【
図4】本実施形態に係る基板貼り付け方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】基板貼り付け装置の動作の一例を示す工程図である。
【
図6】基板貼り付け装置の動作の一例を示す工程図である。
【
図7】基板貼り付け装置の動作の一例を示す工程図である。
【
図8】基板貼り付け装置の動作の一例を示す工程図である。
【
図9】基板貼り付け装置の動作の一例を示す工程図である。
【
図10】当接シートに用いるシート材料の性能評価の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下の説明に限定されない。また、図面においては実施形態をわかり易く説明するため、一部分を省略して表現している部分がある。さらに図面では、一部分を大きく又は強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現しており、実際の製品とは大きさ、形状が異なっている場合がある。以下の各図において、XYZ直交座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ直交座標系においては、水平面に平行な平面をXY平面とする。このXY平面において基板S1と基板S2との搬送方向に平行な方向をX方向とし、X方向に直交する方向をY方向とする。また、XY平面に垂直な方向をZ方向(高さ方向)と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の指す方向が+方向であり、矢印の指す方向とは反対の方向が-方向であるとして説明する。
【0011】
<基板貼り付け装置>
実施形態に係る基板貼り付け装置100について説明する。
図1は、実施形態に係る基板貼り付け装置100の一例を示す図である。基板貼り付け装置100は、前工程において接着層Fを介して仮に貼り合わされた基板S1、S2に、押圧力を付与することで、基板S1と基板S2とを貼り付ける。接着層Fは、基板S1及び基板S2の少なくとも一方に設けられている。
【0012】
基板S1及び基板S2は、例えばガラス基板であるが、ガラス基板以外の半導体基板、樹脂性基板などであってもよい。本実施形態では、貼り付けられる2枚の基板のうち、上側基板を基板S1と称し、下側基板を基板S2と称する。また、基板S1と基板S2とを貼り付けた形態を基板Sと称する。基板S1及び基板S2は、いずれも平面視において(Z方向から見て)円形状の円形基板が使用されるが、円形基板に限定されず、平面視において矩形状(正方形状、長方形状)の角形基板、楕円形状、長円形状等の基板であってもよい。
【0013】
図2は、基板S1及び基板S2を上方から視た図である。
図2に示すように、基板S1及び基板S2は、機能領域Afを有している。機能領域Afは、基板S1と基板S2との間で、半導体チップ等の素子が配置されている領域である。機能領域Afは、基板S1及び基板S2の外周縁Seよりも径方向内側に設定されている。基板S1及び基板S2は、機能領域Afの径方向外側に、素子が配置されていない外周領域Asを有している。
【0014】
図1に示すように、基板貼り付け装置100は、チャンバ10と、第1プレート20と、第2プレート30と、押圧機構50と、制御部(図示せず)と、を備える。制御部(図示せず)は、基板貼り付け装置100における各部の動作を統括して制御する。
【0015】
チャンバ10は、基板貼り付け装置100の基台15上に配置されている。チャンバ10は、基台15の外周部から上方に立ち上がる側壁10aと、側壁10aの上方を覆う天板10bとを有した箱状に形成されている。チャンバ10は、その内部に第1プレート20と、第2プレート30と、押圧機構50の一部とが収容されている。チャンバ10は、-側壁10aの一部に開口部11を有している。開口部11は、チャンバ10の-X側の面に形成され、チャンバ10の内部と外部と、を連通させる。開口部11は、前工程において接着層Fを介して仮に貼り合わされた基板S1、S2、及び基板S1と基板S2とが貼り付けられた基板Sが、それぞれ通過可能な寸法に形成されている。基板S1、S2は、搬送装置(図示せず)によって開口部11を介してチャンバ10内に搬入される。また、基板Sは、開口部11を介してチャンバ10内から搬出される。
【0016】
チャンバ10は、開口部11を開閉するゲートバルブ12を備えている。ゲートバルブ12は、チャンバ10の-X側の側面における外側に配置され、図示しない駆動部によって、例えば、高さ方向(Z方向)にスライド可能である。ゲートバルブ12は、スライドすることにより開口部11を開閉し、開口部11を閉じることによりチャンバ10内を密閉状態にすることができる。
【0017】
なお、本実施形態において、開口部11を閉じることによりチャンバ10内を密閉状態にして、図示しない真空ポンプにより、チャンバ10内を真空雰囲気としている。この吸引装置によりチャンバ10内を吸引(排気)することにより、チャンバ10内を真空雰囲気にすることができる。さらに、チャンバ10は、内部の真空雰囲気を開放するために外部に対して開放可能なバルブを備えていてもよい。ただし、チャンバ10内を真空雰囲気とすることに限定されず、ゲートバルブ12で開口部11を閉じても、チャンバ10内を大気圧雰囲気下とされた状態としてもよい。また、チャンバ10の上面には、後述する複数の押圧軸51が貫通する複数の貫通部10hが設けられている。貫通部10hのそれぞれには、押圧軸51が昇降可能な状態で挿入されており、図示しないシール部材によってチャンバ10内の密閉状態を維持している。
【0018】
なお、基板貼り付け装置100は、チャンバ10を備えるか否かが任意であり、チャンバ10を備えない形態(大気開放型)であってもよい。また、チャンバ10内は、図示しないガス供給装置に接続されてもよい。このガス供給装置からチャンバ10内に所定のガスを供給することでチャンバ10内の雰囲気を、所定のガス雰囲気に置換することができる。所定のガスとしては、例えば、窒素ガスなどの基板S1、S2に形成されている薄膜等に対して不活性なガス、又はドライエアなどが用いられる。
【0019】
第1プレート20は、チャンバ10内に搬入された基板S1、S2を下方から支持する。第1プレート20は、上方から見て円形状であるが、この形態に限定されず、例えば矩形状(正方形状、長方形状)、楕円形状、長円形状等であってもよい。第1プレート20は、基板S1、S2より大きい外径寸法に設定されている。
【0020】
第1プレート20は、支持プレート21と、第1ヒータ(加熱部)22と、ベースプレート23とを有する。支持プレート21、第1ヒータ22、及びベースプレート23は、下側(-Z側)からこの順番で積層されている。第1プレート20は、支持プレート21の下面側に設けられた複数本の支柱24により支持され、支柱24を介して基台15の上面に固定されている。支持プレート21と第1ヒータ22との間、及び第1ヒータ22とベースプレート23との間は、例えばボルト等の締結部材により固定されている。
【0021】
支持プレート21は、例えば、金属、樹脂、セラミックス等の材質により形成された板状体である。第1ヒータ22は、加熱部の一例であり、例えば、内部に電熱線等の加熱機構(熱源)を有するホットプレートである。第1ヒータ22によりベースプレート23を介して基板S1、S2を加熱する。なお、第1ヒータ22は、シート状の熱源を挟んで積層された積層構造体であってもよい。また、本実施形態では、第1プレート20は、第1ヒータ22を有しているが、有していない構成としてもよい。
【0022】
ベースプレート23は、上面である+Z側の載置面23aに基板S1、S2、及び基板Sが載置される。ベースプレート23は、基板S1、S2、及び基板Sの熱膨張係数緩和のため、例えば、セラミックスで板状に形成されるセラミックプレートが用いられるが、金属、樹脂等で形成されてもよい。ベースプレート23の載置面23aは、基板S2との接触面となる。従って、載置面23aは、平面度が高くかつ面粗さが小さい(又は鏡面である)ことが好ましい。
【0023】
支柱24は、支持プレート21の下面に複数設けられている。複数の支柱24は、第1プレート20をチャンバ10の底部の基台15に支持するために用いられる。複数の支柱24は、支持プレート21の外周部に配置されている。支柱24は、上方から見て矩形状であるが、円形状、楕円形状、長円形状等であってもよい。支柱24は、支持プレート21の周方向に間隔を開けて複数配置されている。本実施形態において、支柱24は、周方向に間隔をあけて6つ配置されている。複数本の支柱24で第1プレート20を支持することにより、押圧機構50による押圧力が大きい場合であっても、第1プレート20の変形を防止する。なお、複数本の支柱24の本数及び配置は、上記した形態に限定されず、第1プレート20の大きさ、使用される押圧力の大きさ等によって任意に設定することができる。
【0024】
図3は、第2プレート30を下降させ、当接シート35を基板S1、S2に突き当てた状態の縦断面図である。
図3に示すように、第2プレート30は、基板S1と基板S2とを貼り付ける際に、基板S1、S2を第1プレート20側(-Z側)に向かって押圧する。第2プレート30は、第1プレート20の上側に配置されている。第2プレート30は、第1プレート20と同様に、上方から見て円形状であるが、この形態に限定されず、例えば、矩形状(正方形状、長方形状)、楕円形状、長円形状等であってもよい。第2プレート30は、基板S1、S2より大きい外径寸法に設定されている。第2プレート30の外径寸法は、第1プレート20と同一であるが、この形態に限定されない。例えば、第2プレート30は、第1プレート20に対して外径寸法が大きくてもよいし、又は小さくてもよい。
【0025】
第2プレート30は、後述する押圧機構50の押圧軸51の下端に保持されており、押圧軸51の昇降に伴って昇降する。第2プレート30は、プレート本体31と、当接シート35と、を備えている。プレート本体31は、受圧プレート32と、第2ヒータ(加熱部)33と、加圧プレート34と、を備えている。受圧プレート32、第2ヒータ33、加圧プレート34、及び当接シート35、は、上側からこの順番で積層されている。受圧プレート32、第2ヒータ33、及び加圧プレート34は、それぞれ平面視円形の板状で、同一の外径を有している。プレート本体31を構成する受圧プレート32と、第2ヒータ33と、加圧プレート34とは、例えばボルト等の締結部材により固定されている。
【0026】
受圧プレート32は、押圧機構50側、つまり上側に配置されている。受圧プレート32は、押圧機構50の押圧軸51の下端部に接続されている。受圧プレート32は、押圧機構50の押圧軸51から押圧力を受けるため、所定の強度で形成されることが好ましい。受圧プレート32は、例えば、金属、樹脂、セラミックス等により形成される。本実施形態では、受圧プレート32は、金属プレートである。
【0027】
第2ヒータ33は、加圧プレート34と受圧プレート32との間に配置されている。第2ヒータ33は、加圧プレート34の上面に配置されている。第2ヒータ33は、第1プレート20の第1ヒータ22と同様に、例えば、内部に電熱線等の加熱機構(熱源)を有するホットプレートである。第2ヒータ(図示せず)は、加圧プレート34を介して基板S1を加熱する。なお、第2ヒータ(図示せず)は、第1ヒータ22同様、シート状の熱源を挟んで積層された積層構造体であってもよい。また、本実施形態では、プレート本体31は、第2ヒータ33を備えているが、備えていない構成としてもよい。
【0028】
加圧プレート34は、第2ヒータ33の下側に設けられている。加圧プレート34は、基板S1を上方から加圧するための加圧面34aを-Z側の下面に備える。加圧プレート34は、基板S1、S2、及び基板Sの熱膨張係数緩和のため、例えば、セラミックスで板状に形成されるセラミックプレートが用いられるが、金属、樹脂等で板状に形成されてもよい。
【0029】
当接シート35は、プレート本体31に支持されている。当接シート35は、プレート本体31に対して第1プレート20側、つまり下側に設けられている。当接シート35は、加圧プレート34の加圧面34aに沿って固定されている。当接シート35は、例えば、接着、吸着等により、加圧面34aに固定されている。当接シート35は、適宜の手段により、加圧面34aに対して着脱可能に構成されるのが好ましい。当接シート35は、下側を向き、基板S1に当接する当接面35fを有している。
【0030】
当接シート35は、下方から見て円形に形成されているが円形に限られない。例えば平面視において矩形状(正方形状、長方形状)の角形基板、楕円形状、長円形状等であってもよい。当接シート35は、プレート本体31よりも高い柔軟性を有する変形可能な材料により形成されている。加圧プレート34を下降させることで基板S1、S2に荷重を印加した際に、押圧機構50による押圧力は、受圧プレート32から第2ヒータ33、加圧プレート34、当接シート35を経て、複数の基板S1、S2に伝達される。この際、当接シート35は、押圧力によって上下方向(シート厚み方向)に変形することで、基板S1,S2に作用する圧力変動幅の均一化を図る。
【0031】
このため、当接シート35は、プレート本体31よりも低い圧縮ヤング率を有する材料を含んで形成されている。プレート本体31において、当接シート35の上側に配置された加圧プレート34は、例えばセラミックス製である場合、その圧縮ヤング率は、300000(MPa)である。また、プレート本体31の加圧プレート34が、例えばステンレス製である場合、圧縮ヤング率Eは193000(MPa)である。つまり、加圧プレート34は、基板S1、S2に荷重を印加した際に加圧面34aに生じる上下方向における変位量(変形量)は、ほとんど生じない。これに対し、当接シート35において、加圧プレート34で荷重を印加した際に基板S1,S2に作用する圧力変動幅の均一化を図るには、以下に示すような条件を満たす材料を当接シート35に用いるのが好ましい。
【0032】
例えば、当接シート35は、基板S1、S2に仮固定又は固定しない方が好ましく、すなわち、本実施形態のように、プレート本体31に支持されているのが好ましく、単位面積あたり1.0tの荷重が基板S1、S2に付与された際に、荷重の方向に50um以上360um以下の範囲で変位(変形)する材料を含んで形成されているのが好ましい。単位面積あたり1.0tの荷重が基板S1、S2に付与された際の当接シート35の変位量が、上記範囲を下回る場合、荷重を印加した際の当接シート35の変位が少なく、十分な圧力均一化効果が得られない。また、単位面積あたり1.0tの荷重が基板S1、S2に付与された際の当接シート35の変位量が、上記範囲を上回る場合、基板S1,S2に十分な荷重が付与されない可能性がある。
【0033】
なお、単位面積あたりの荷重として、例えば1.0tを例示したが、これに限られない。実際に、基板貼り付け装置100で基板S1,S2の貼り合わせを行う際の荷重に合わせて、荷重を適宜変化させても良い。また、当接シート35は、第2ヒータ33による加熱温度に抗する耐熱性を有した材料で形成されているのが好ましい。第2ヒータ33による加熱温度は、例えば150℃程度である。
【0034】
例えば、当接シート35は、圧縮ヤング率が例えば0.2~2MPaの材料を含んで形成されているのが好ましい。当接シート35の圧縮ヤング率の、より好ましい範囲は、0.3~0.9MPaである。例えば、圧縮ヤング率が、上記範囲を上回る場合、荷重を印加した場合の変位が少なく、十分な圧力均一化効果が得られない場合がある。一方、圧縮ヤング率が、上記範囲を下回る場合、基板S1、S2の一部又は全部に対して十分な荷重が付与されない可能性が残る。
【0035】
また、例えば、当接シート35は、ゴム硬度が、例えば5~36の材料を含んで形成されているのが好ましい。当接シート35のゴム硬度の、より好ましい範囲は、15~36であり、さらに好ましい範囲は、20~30である。例えば、ゴム硬度が、上記範囲を上回る場合、十分な圧力均一化効果が得られない場合がある。一方、ゴム硬度が、上記範囲を下回る場合、基板S1、S2の一部又は全部に対して十分な荷重が付与されない可能性が残る。また、例えば、当接シート35は、多孔質材料を含んで形成されているのが好ましい。多孔質材料を含んで当接シート35を形成することにより、圧力均一化効果が得られやすくなる。なお、本実施形態で使用されるゴム硬度については、JIS K 7312準拠のC型硬度計を用いて測定された数値である。
【0036】
また、基板貼り付け装置100で基板Sを量産する場合、当接シート35は、上記したような各条件を、荷重を繰り返し作用させた場合、ある一定の回数が経過しても、その性能が著しく低下しないことが望まれる。これらの各条件を満足する、当接シート35に用いる素材としては、例えば、フッ素スポンジ(基材付き)を用いることができる。なお、基板貼り付け処理を複数回行わない場合であれば、当接シート35に用いる素材として、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製ガスケットも用いることができる。
【0037】
また、例えば、当接シート35は、厚みが、例えば0.5mm以上2.0mm以下で材料を含んで形成されているのが好ましい。当接シート35の厚みの、より好ましい範囲は、0.5mm以上1.5mm以下である。例えば、当接シート35の厚みが、上記範囲を上回る場合、荷重を印加した際に第2ヒータ33による熱が基板S1、S2に伝わりにくくなる。また、当接シート35の厚みが上記範囲を下回る場合、荷重を印加した際の当接シート35の変位が少なく、十分な圧力均一化効果が得られない。
【0038】
また、当接シート35の上面、及び下面の少なくとも一方には、例えば基板S1からの離型性を高める等の、機能性を有した基材を形成するようにしてもよい。基材は、被膜等であってもよい。例えば、当接シート35の上面、及び下面の少なくとも一方には、例えばポリイミド層を形成するようにしてもよい。
【0039】
当接シート35の外形(外径)寸法は、基板S1、S2の外形寸法よりも小さく設定されている。これにより、当接シート35が基板S1、S2に当接した際には、当接シート35の外側に基板S1、S2の外周部が突出する。当接シート35の外形(外径)寸法を、基板S1、S2の外形寸法より大きくすると、当接シート35の外周部が、基板S1、S2よりも径方向外側にはみ出す。すると、基板S1、S2の加圧を繰り返すうちに、当接シート35の外周部は変位せず、その内側で基板S1、S2に当接する部分が、繰り返しの変位により押し潰される。その結果、当接シート35と基板S1,S2の位置ずれ等により、当接シート35の外周部の押し潰されていない部分が基板S1,S2に当接すると、その部分で過度に大きな圧力が加えられてしまう可能性がある。当接シート35の外径寸法を、基板S1,S2の外径寸法と同一とした場合にも、同様の問題が生じる可能性がある。
【0040】
当接シート35は、基板S1、S2の機能領域Afを覆うように形成されているのが好ましい。つまり、当接シート35の外径寸法は、機能領域Afの外径寸法よりも大きく設定するのが好ましい。これにより、加圧時に、当接シート35の全体が、機能領域Afに当接し、圧力の均一化を有効に図ることができる。
【0041】
押圧機構50は、第2プレート30を下降させ、基板S1と基板S2とを貼り付ける際に、基板S1を基板S2側(第1プレート20側)に向かって押圧する。
図1に示すように、押圧機構50は、押圧軸51と、押圧軸51を駆動させる駆動部(図示せず)と、を備える。押圧軸51は、上方から見て受圧プレート32の中央部に配置され、受圧プレート32の中央部に荷重(押圧力)を付加する。
【0042】
押圧軸51は、貫通部10hを介してチャンバ10内に挿入されている。押圧軸51は、それぞれ円形断面の棒状体であり、付与される荷重によって変形しない、又は変形が押さえられた外径及び材質(例えば金属、樹脂、セラミックス等)により形成される。駆動部(図示せず)は、押圧軸51を駆動する。駆動部は、例えば、エアーシリンダ装置、油圧シリンダ装置、電動回転モータを用いたボールネジ機構等が用いられる。
【0043】
駆動部は、制御部(図示せず)によって制御される。駆動部(図示せず)によって押圧軸51に付与する荷重、及び荷重を付与する駆動タイミングは、予め設定されたプログラム等に基づいて制御部(図示せず)によって統括して制御される。また、駆動部(図示せず)の動作の一部又は全部は、オペレータによる操作によって行われてもよい。
【0044】
<基板貼り付け方法>
次に、本実施形態に係る基板貼り付け方法について説明する。
図4は、本実施形態に係る基板貼り付け方法の一例を示すフローチャートである。この基板貼り付け方法は、例えば、制御部(図示せず)からの指示により実行される。
図5から
図8は、基板貼り付け装置100の動作の一例を示す工程図である。なお、これらの工程図では、各部の動きが分かり易くなるように、記載を簡略化している。以下、
図4のフローチャートに沿って説明する。
【0045】
まず、チャンバ10のゲートバルブ12を開き、基板Sを搬入する(ステップS01)。
図5に示すように、制御部(図示せず)は、図示しない駆動部を駆動させてゲートバルブ12を上昇させ、開口部11を開放させる。続いて、搬送装置(図示せず)により、前工程で予め接着層Fを介して重ねた複数の基板S1、S2をチャンバ10内に搬入する。このとき、第2プレート30は、第1プレート20に対して上方に離間させておく。搬送装置(図示せず)は、基板S1,S2を保持した状態で開口部11からチャンバ10の内部に進入し、重ね合わせた基板S1、S2を第1プレート20のベースプレート23上に載置する(ステップS02)。
【0046】
続いて、
図6に示すように、ゲートバルブ12を閉じ、図示しない吸引装置によりチャンバ10内を排気し、例えば、チャンバ10内を真空雰囲気とする(ステップS03)。なお、チャンバ10内を真空雰囲気とすることに代えて、図示しない吸引装置によりチャンバ10内を排気しつつ、チャンバ10内にクリーンエアを供給し、例えば、チャンバ10内を、大気圧条件下でクリーンエアに置換にしてもよい。
【0047】
続いて、制御部(図示せず)は、
図7に示すように、駆動部(図示せず)を駆動させて押圧軸51とともに第2プレート30を下降させ、第1プレート20のベースプレート23上に支持された基板S1、S2に、第2プレート30の加圧プレート34を当接させる(ステップS04)。続いて、この状態で、第1ヒータ22及び第2ヒータ(図示せず)により基板S1、S2を所定の時間加熱してプレヒート処理を行う。プレヒート処理は、第1ヒータ22及び第2ヒータ(図示せず)の温度を例えば150℃から250℃にして行う。
【0048】
続いて、押圧軸51で荷重を付加し、基板S1と基板S2とを貼り付ける(ステップS05)。制御部(図示せず)は、駆動部(図示せず)を駆動して押圧軸51とともに第2プレート30を下降させ、第1プレート20と第2プレート30との間で基板S1と基板S2とを押圧することで、基板S1と基板S2とを貼り付ける。このとき、第1ヒータ22及び第2ヒータ(図示せず)による加熱を継続させて、第1プレート20及び第2プレート30を所定の温度に保持させてもよい。基板S1と基板S2とは、接着層Fが熱によって溶融することで接着され、さらに、第2プレート30による基板S1側からの押圧によって、基板S1と基板S2とが強固に貼り付けられる。
【0049】
基板S1と基板S2との貼り付け完了後、
図8に示すように、駆動部(図示せず)を駆動させて押圧軸51とともに第2プレート30を上昇させる(ステップS06)。その後、
図9に示すように、ゲートバルブ12を開いて基板Sをチャンバ10から搬出する(ステップS07)。ゲートバルブ12を上昇させて開口部11を開放した後、搬送装置(図示無し)で、第1プレート20の支持プレート21上に載置された基板Sをチャンバ10の外部に搬出される。その後、制御部(図示せず)は、ゲートバルブ12を閉じて、一連の処理を終了させる。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る基板貼り付け装置100は、当接シート35を含むので、押圧機構50による押圧力は、プレート本体31から当接シート35を経て複数の基板S1、S2に伝達される。当接シート35は、プレート本体31よりも高い柔軟性を有して変形可能である。これにより、押圧機構50による押圧力は、第2ヒータ33に、より均一に伝達される。従って、本実施形態に係る基板貼り付け装置100によれば、複数の基板S1、S2どうしの接合面に加えられる加圧力の均一化を図ることができる。
【0051】
(実施例)
次に、上記したような当接シート35に用いる複数の材料について、性能評価を行ったので、その結果を以下に示す。
ここで、当接シート35に用いるシート材料として、以下のようなものを用いた。
試験体1:厚さ1mmのフッ素スポンジ(基材付き)
試験体2:厚さ0.5mmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製ガスケット
試験体3:厚さ1mmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ガスケット
比較例:当接シートは使用しない
【0052】
上記の試験体1~3のシート材料を、それぞれ、基板貼り付け装置100の第1プレート20と第2プレートとの間に基板S1、S2を挟み込み、4000kgfの荷重を加えたときの、シート材料における圧力変動幅を圧力変動幅計で計測した。また、比較例として、当接シート35を用いずに、基板貼り付け装置100の第1プレート20と第2プレートとの間に基板S1、S2を挟み込み、4000kgfの荷重を加えたときの、圧力変動幅を圧力変動幅計で計測した。
【0053】
図10は、シート材料の評価結果を示す図である。ここで、試験体1~3のシート材料の圧縮ヤング率を、次式(1)で求め、
図10に示した。
E=F×L/(A・ΔL) ・・・(1)
ここで、Fは、荷重、Aはシート材料の平面積、Lはシート材料の厚さ、ΔLはシート材料の厚さの変位量である。なお、比較例における圧縮ヤング率は、プレート(第2プレート)を構成するステンレスの値である。
【0054】
図10に示すように、試験体1~3については、それぞれ、圧縮ヤング率、1ton荷重時のシート材料の耐久性、1tonの荷重を繰り返し500回加えたときのシート材料に作用した圧力の最小値と最大値との差(圧力変動幅)のそれぞれは、シート材料を用いない比較例と比較し、各条件を十分に満足した。ここで、耐久性の判断は、圧力変動幅により判断する。これは、繰り替えし荷重によりシートが完全につぶれ、圧力均一性を上げる効果が無くなると圧力変動幅が大きくなることによる。試験体1~3については、比較例に比べて、圧力変動幅が著しく小さいので、シート材料としての耐久性は十分有していると判断できる。
【0055】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上記した説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、上記した実施形態では、上側に配置された第2プレート30を押圧機構50によって移動させ、第2プレート30に、当接シート35を備える構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、下側に配置された第1プレート20を押圧機構50によって移動させ、この第1プレート20に、当接シート35を備える構成であってもよい。
【0056】
また、上記した実施形態では、前工程で接着層Fを介して仮に貼り合わせられた基板S1,S2を、基板貼り付け装置100で貼り付ける構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、基板貼り付け装置100で、基板S1、S2を順次搬入し、基板S1、S2を、接着層Fを介して貼り合わせた後、第1プレート20と第2プレート30との間で基板S1、S2を押圧することによって、基板S1、S2を貼り付ける構成であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
20・・・第1プレート
30・・・第2プレート
31・・・プレート本体
35・・・当接シート
50・・・押圧機構
100・・・基板貼り付け装置
Af・・・機能領域
S、S1、S2・・・基板