(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154918
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】繊維製品用洗浄剤組成物および洗浄方法
(51)【国際特許分類】
C11D 1/88 20060101AFI20231013BHJP
C11D 1/40 20060101ALI20231013BHJP
C11D 3/10 20060101ALI20231013BHJP
C11D 1/62 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
C11D1/88
C11D1/40
C11D3/10
C11D1/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064562
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志垣 杏奈
(72)【発明者】
【氏名】堀江 拓也
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AD03
4H003AD04
4H003AE02
4H003AE05
4H003BA12
4H003DA01
4H003DB01
4H003DB02
4H003DC02
4H003EA16
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA21
4H003FA34
(57)【要約】
【課題】衣料などの繊維製品へのダメージを抑えながら、血液汚れに対する洗浄性を向上する。
【解決手段】実施形態に係る繊維製品用洗浄剤組成物は、両性界面活性剤(A)と、脂肪酸アルカノールアミド(B)と、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムの少なくともいずれか一方の炭酸塩(C)と、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムの少なくともいずれか一方の炭酸水素塩(D)と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両性界面活性剤(A)と、
脂肪酸アルカノールアミド(B)と、
炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムの少なくともいずれか一方の炭酸塩(C)と、
炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムの少なくともいずれか一方の炭酸水素塩(D)と、
を含む、繊維製品用洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記両性界面活性剤(A)100質量部に対する、前記炭酸塩(C)の含有量が5~80質量部であり、前記炭酸水素塩(D)の含有量が3~80質量部である、請求項1に記載の繊維製品用洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記両性界面活性剤(A)100質量部に対する、前記脂肪酸アルカノールアミド(B)の含有量が5~85質量部である、請求項1または2に記載の繊維製品用洗浄剤組成物。
【請求項4】
さらに、第四級アンモニウム塩(E)を含む、請求項1または2に記載の繊維製品用洗浄剤組成物。
【請求項5】
両性界面活性剤(A)と、脂肪酸アルカノールアミド(B)と、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムの少なくともいずれか一方の炭酸塩(C)と、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムの少なくともいずれか一方の炭酸水素塩(D)と、を含む洗浄剤組成物を用いて、繊維製品を洗浄する洗浄方法。
【請求項6】
前記両性界面活性剤(A)100質量部に対する、前記炭酸塩(C)の含有量が5~80質量部であり、前記炭酸水素塩(D)の含有量が3~80質量部である、請求項5に記載の洗浄方法。
【請求項7】
前記両性界面活性剤(A)100質量部に対する、前記脂肪酸アルカノールアミド(B)の含有量が5~85質量部である、請求項5または6に記載の洗浄方法。
【請求項8】
前記洗浄剤組成物がさらに第四級アンモニウム塩(E)を含む、請求項5または6に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品用洗浄剤組成物および洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料などの繊維製品を洗浄するための洗浄剤組成物として、例えば、特許文献1には、有機リン酸エステルアニオンと有機アミン誘導体カチオンとの塩、および、ノニオン界面活性剤とを配合することにより、泥汚れの洗浄性を向上することが開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の洗浄剤では、繊維製品に付着した血液汚れを落とすことが難しい。
【0003】
一般的に、アルカリ剤を配合してpHを高くした洗浄剤を用いれば、血液汚れを落とすことができる。しかしながら、pHが高い洗浄剤では繊維製品にダメージを与えてしまう。そこで、特許文献2には、リン酸エステル型のアニオン界面活性剤とアルカリ金属の炭酸塩とを含み、pHが9.5~11.5である繊維用品用洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-008078号公報
【特許文献2】特開2021-054911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、繊維製品へのダメージを抑えながら、血液汚れに対する洗浄性を向上することができる繊維製品用洗浄剤組成物および洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] 両性界面活性剤(A)と、脂肪酸アルカノールアミド(B)と、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムの少なくともいずれか一方の炭酸塩(C)と、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムの少なくともいずれか一方の炭酸水素塩(D)と、を含む、繊維製品用洗浄剤組成物。
[2] 前記両性界面活性剤(A)100質量部に対する、前記炭酸塩(C)の含有量が5~80質量部であり、前記炭酸水素塩(D)の含有量が3~80質量部である、[1]に記載の繊維製品用洗浄剤組成物。
[3] 前記両性界面活性剤(A)100質量部に対する、前記脂肪酸アルカノールアミド(B)の含有量が5~85質量部である、[1]または[2]に記載の繊維製品用洗浄剤組成物。
[4] さらに、第四級アンモニウム塩(E)を含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤組成物。
【0007】
[5] 両性界面活性剤(A)と、脂肪酸アルカノールアミド(B)と、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムの少なくともいずれか一方の炭酸塩(C)と、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムの少なくともいずれか一方の炭酸水素塩(D)と、を含む洗浄剤組成物を用いて、繊維製品を洗浄する洗浄方法。
[6] 前記両性界面活性剤(A)100質量部に対する、前記炭酸塩(C)の含有量が5~80質量部であり、前記炭酸水素塩(D)の含有量が3~80質量部である、[5]に記載の洗浄方法。
[7] 前記両性界面活性剤(A)100質量部に対する、前記脂肪酸アルカノールアミド(B)の含有量が5~85質量部である、[5]または[6]に記載の洗浄方法。
[8] 前記洗浄剤組成物がさらに第四級アンモニウム塩(E)を含む、[5]~[7]のいずれか1項に記載の洗浄方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態であると、衣料などの繊維製品へのダメージを抑えながら、血液汚れおよび皮脂汚れに対する洗浄性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
[両性界面活性剤(A)]
本実施形態に係る繊維製品用洗浄剤組成物(以下、「洗浄剤組成物」ともいう。)は、(A)成分として両性界面活性剤を含有する。両性界面活性剤としては、例えば、ベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤、アミンオキサイド型両性界面活性剤などが挙げられる。これらはいずれか1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。(A)成分として、好ましくはベタイン型両性界面活性剤が用いられる。
【0011】
ベタイン型両性界面活性剤は、カチオン性基としての第四級アンモニウムとともにアニオン性基として-COO-を持つ界面活性剤である。ベタイン型両性界面活性剤の具体例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油ジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン型両性界面活性剤、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、オクタン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタインなどのアミドベタイン型両性界面活性剤、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのイミダゾリニウムベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。これらはいずれか1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、および2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインからなる群から選択される少なくとも一種が好ましく用いられる。
【0012】
上記アルキルベタイン型両性界面活性剤に含まれる疎水基としての炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、両者が混在してもよく、好ましくは飽和のアルキル基である。該炭化水素基の炭素数は、特に限定されず、8~20でもよく、8~18でもよく、10~18でもよい。上記疎水基とともに窒素原子に結合する短鎖の炭化水素基は、炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、より好ましくはメチル基である。
【0013】
上記アミドベタイン型両性界面活性剤に含まれる疎水基としての炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、両者が混在してもよい。該炭化水素基の炭素数は、特に限定されず、8~20でもよく、8~18でもよく、10~18でもよい。アミド結合のNHと第四級アンモニウムの窒素原子との間に介在するアルキレン基の炭素数は、特に限定されず、1~6でもよく、2~4でもよく、好ましくは炭素数3のトリメチレン基である。該第四級アンモニウムの窒素原子に結合する短鎖の炭化水素基は、炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、より好ましくはメチル基である。
【0014】
上記イミダゾリニウムベタイン型両性界面活性剤に含まれる疎水基としての炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、両者が混在してもよい。該炭化水素基の炭素数は、特に限定されず、8~20でもよく、8~18でもよく、10~18でもよい。
【0015】
上記スルホベタイン型両性界面活性剤は、カチオン性基としての第四級アンモニウムとともにアニオン性基として-SO3
-を持つ界面活性剤である。スルホベタイン型両性界面活性剤としては、例えば、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタインなどが挙げられる。
【0016】
上記アミンオキサイド型両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイドなどのアルキルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。
【0017】
[脂肪酸アルカノールアミド(B)]
本実施形態に係る洗浄剤組成物は、(B)成分として脂肪酸アルカノールアミドを含有する。脂肪酸アルカノールアミドは、脂肪酸とアルカノールアミンとのアミド化合物であり、ノニオン界面活性剤の一種である。
【0018】
脂肪酸アルカノールアミドとしては、脂肪酸モノアルカノールアミド、脂肪酸ジアルカノールアミド、およびそれらにポリオキシアルキレン(例えばポリオキシエチレン)を付加したものが挙げられる。これらの中でも、脂肪酸ジアルカノールアミドが好ましい。
【0019】
脂肪酸アルカノールアミドを構成する脂肪酸は、特に限定されず飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよく、両者が混在してもよい。該脂肪酸の炭素数は、特に限定されず、8~20でもよく、8~18でもよく、10~18でもよい。また、アミド結合の窒素原子に結合するヒドロキシアルキル基(即ち、アルカノールアミンに由来する基)の炭素数は、1~4であることが好ましく、より好ましくは炭素数2のヒドロキシエチル基である。
【0020】
脂肪酸アルカノールアミドの具体例としては、ラウリン酸モノエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、パーム核油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸イソプロパノールアミド、ヤシ油脂肪酸イソプロパノールアミドなどの脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミドなどの脂肪酸ジエタノールアミドなどが挙げられる。これらはいずれか1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、脂肪酸ジエタノールアミドが好ましく用いられる。
【0021】
[炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウム(C)]
本実施形態に係る洗浄剤組成物は、(C)成分として炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムの少なくともいずれか一方の炭酸塩(以下、「炭酸塩(C)」という。)を含有する。すなわち、洗浄剤組成物は、(C)成分として、炭酸ナトリウムのみ含んでもよく、炭酸カリウムのみ含んでもよく、炭酸ナトリウムと炭酸カリウムの双方を含んでもよい。
【0022】
かかる炭酸塩(C)を含有することにより、血液汚れに対する洗浄性が向上するとともに、上記(A)成分および(B)成分とともに併用することによって、皮脂汚れに対する洗浄性が向上する。
【0023】
[炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸水素カリウム(D)]
本実施形態に係る洗浄剤組成物は、(D)成分として炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムの少なくともいずれか一方の炭酸水素塩(以下、「炭酸水素塩(D)」という。)を含有する。すなわち、洗浄剤組成物は、(D)成分として、炭酸水素ナトリウムのみ含んでもよく、炭酸水素カリウムのみ含んでもよく、炭酸水素ナトリウムと炭酸水素カリウムの双方を含んでもよい。
【0024】
かかる炭酸水素塩(D)を含有することにより、上記炭酸塩(C)による血液汚れに対する洗浄性を維持しつつ、繊維製品に対するダメージを抑えることができる。
【0025】
[第四級アンモニウム塩(E)]
本実施形態に係る洗浄剤組成物は、上記(A)~(D)成分に加えて、さらに、(E)成分として第四級アンモニウム塩を含有してもよい。第四級アンモニウム塩を含有することにより除菌性(抗菌性)を洗浄剤組成物に付与することができる。
【0026】
第四級アンモニウム塩としては、特に限定されず、例えば、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジヤシアルキルジメチルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウムクロライドなどのジアルキルジメチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、アルキル(C8-18)ジメチルベンジルアンモニウムクロライド(塩化ベンザルコニウム)などのアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシアルキルトリメチルアンモニウムクロライド、牛脂アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、オレイルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアルキルトリメチルアンモニウム塩などが挙げられる。これらはいずれか1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
[繊維製品用洗浄剤組成物]
本実施形態に係る洗浄剤組成物は、上記の両性界面活性剤(A)と脂肪酸アルカノールアミド(B)と炭酸塩(C)と炭酸水素塩(D)とを含む。これにより、衣料などの繊維製品へのダメージを抑えながら、血液汚れおよび皮脂汚れに対する洗浄性を向上することができる。詳細には、炭酸塩(C)を含むことにより血液汚れに対する洗浄性を向上することができる。また、炭酸塩(C)とともに両性界面活性剤(A)及び脂肪酸アルカノールアミド(B)を含むことにより、皮脂汚れに対する洗浄性を向上することができる。更に、炭酸塩(C)とともに炭酸水素塩(D)を併用することにより、洗浄性を維持しつつ、pHの上昇を抑えて繊維製品に対するダメージを低減することができる。
【0028】
上記(A)~(D)成分の配合割合は特に限定されない。一実施形態において、(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量は、5~85質量部であることが好ましく、より好ましくは10~70質量部であり、更に好ましくは15~50質量部である。
【0029】
また、一実施形態において、(A)成分100質量部に対する(C)成分の含有量は、5~80質量部であることが好ましく、より好ましくは10~70質量部であり、更に好ましくは20~50質量部である。
【0030】
また、一実施形態において、(A)成分100質量部に対する(D)成分の含有量は、3~80質量部であることが好ましく、より好ましくは10~60質量部であり、更に好ましくは15~40質量部である。
【0031】
洗浄剤組成物における(A)成分の含有量は特に限定されず、例えば、該洗浄剤組成物の全固形分(不揮発分)100質量%に対して、10~80質量%でもよく、20~70質量%でもよく、30~60質量%でもよい。
【0032】
一実施形態において、洗浄剤組成物は、さらに第四級アンモニウム塩(E)を含むことが好ましい。これにより、洗浄剤組成物には、除菌性(抗菌性)が付与される。特に、本実施形態によれば、上記(A)~(D)成分がアニオン界面活性剤ではないので、上記本来の効果である繊維製品へのダメージ抑制と洗浄性効果を両立しながら、第四級アンモニウム塩(E)による除菌効果を付与することができる。
【0033】
(E)成分の含有量は特に限定されない。一実施形態において、(A)成分100質量部に対する(E)成分の含有量は、3~50質量部でもよく、5~30質量部でもよく、10~25質量部でもよい。
【0034】
該洗浄剤組成物は、(A)~(D)成分、および任意成分としての(E)成分とともに、水を含む液体洗浄剤組成物であることが好ましい。このような液体洗浄剤組成物である場合、上記両性界面活性剤(A)を含むことにより、洗浄剤組成物の白濁や分離を抑えて安定性を向上することができる。
【0035】
液体洗浄剤組成物の固形分濃度(不揮発分濃度)は、特に限定されない。例えば、洗濯に際して水で希釈して使用する原液として製品化する場合、液体洗浄剤組成物の固形分濃度は、10~50質量%でもよく、15~40質量%でもよい。一方、液体洗浄剤組成物をそのまま繊維製品に付与して使用する場合、液体洗浄剤組成物の固形分濃度はより低濃度でもよく、例えば0.01~30質量%でもよく、0.1~10質量%でもよい。そのため、両方の場合をあわせた固形分濃度は、0.01~50質量%でもよく、0.1~40質量%でもよい。
【0036】
なお、上記のように液体洗浄剤組成物を原液として製品化する場合、脂肪酸アルカノールアミド(B)を配合することにより、増粘効果が得られることで使い勝手を向上することができる。
【0037】
該洗浄剤組成物のpHは特に限定されないが、濃度1質量%水溶液でのpHが9.5~11.5であることが好ましく、より好ましくは9.8~11.2、更に好ましくは10.0~11.0である。ここで、濃度1質量%水溶液でのpHとは、該洗浄剤組成物を水に溶解または水で希釈して固形分濃度が1質量%である水溶液を調製したときに、当該水溶液について25℃で測定したpHである。ここで、pHはJIS Z8802に準拠したガラス電極法により測定される。
【0038】
本実施形態に係る洗浄剤組成物には、(A)~(D)成分、任意成分としての(E)成分、および水の他に、その効果を阻害しない範囲内で、他の成分を配合することができる。他の成分としては、例えば、他の界面活性剤、キレート剤、pH調整剤(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸、塩酸など)、漂白剤、柔軟剤、蛍光剤、酵素、防腐剤、香料、着色剤、消泡剤、親水性溶剤(一価アルコール、二価アルコールなど)が挙げられる。但し、アニオン界面活性剤を配合すると、第四級アンモニウム塩(E)による除菌性が損なわれる。そのため、第四級アンモニウム塩(E)を配合する場合、洗浄剤組成物はアニオン界面活性剤を含有しないことが好ましい。
【0039】
上記他の界面活性剤としては、例えば、(B)成分以外のノニオン界面活性剤や、(E)成分以外のカチオン界面活性剤などが挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。ここで、ポリオキシアルキレンとしてはポリオキシエチレンであることが好ましい。
【0040】
上記キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、ニトリロ三酢酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸塩、トリエチレンテトラミン六酢酸塩、1,3-プロパンジアミン四酢酸塩、L-グルタミン酸二酢酸塩、エチレンジアミンジコハク酸塩、クエン酸塩、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸塩、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)塩、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)塩などが挙げられる。
【0041】
[繊維製品の洗浄方法]
以上説明した実施形態に係る洗浄剤組成物は、衣料などの繊維製品を洗浄するための洗浄剤として用いることができる。従って、実施形態に係る繊維製品の洗浄方法は、上記洗浄剤組成物を用いて、繊維製品を洗浄するものである。
【0042】
具体的な洗浄方法は特に限定されない。例えば、ドラム式洗濯機やパルセータ式洗濯機などの洗濯機を用いて、水道水などの水に該洗浄剤組成物を投入して繊維製品とともに攪拌することで洗浄してもよい。また、該洗浄剤組成物を水に溶解または希釈してなる洗浄液に繊維製品を浸け置き洗いし、またはもみ洗いすることで洗浄してもよい。また、該洗浄剤組成物をそのまま繊維製品の汚れ箇所に付与し、その後、水中で洗浄してもよい。
【0043】
上記洗浄剤組成物の使用量は、特に限定されず、洗浄剤組成物と水を混合してなる洗浄液における固形分濃度として0.01~2質量%でもよく、0.1~1質量%でもよい。浴比(1kgの被洗浄物を洗うのに用いる洗浄液の容量(L))も特に限定されず、例えば、1:3~1:40でもよく、1:5~1:30でもよい。
【0044】
繊維製品としては、例えば、有機繊維を用いてなる織物、編物、不織布などの布帛、ならびにそれらを用いて得られた衣料(衣服、下着など)や、その他の布製品(例えば、タオル、シーツ)が挙げられる。有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維などの合成繊維、綿や麻、絹などの天然繊維、レーヨンやアセテートなどのセルロース系繊維が挙げられる。
【0045】
なお、上述した配合量や炭素数、濃度、pHをはじめとする種々の数値範囲は、特に断らない限り、それぞれそれらの上限値と下限値を含むものである。また、該数値範囲の上限値と下限値は任意に組み合わせることができ、それら全ての組み合わせが好ましい数値範囲として本明細書に記載されているものとする。
【実施例0046】
以下、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0047】
下記の(A)~(E)成分、および水を用いて、表1に記載の配合処方(質量部)にて各成分を混合して洗浄剤組成物を調製した。なお、各成分について水溶液の形態の製品を用いた場合、表中の質量部は、有効成分(固形分)としての質量部を示す。
【0048】
(A)成分:
・A-1:ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(第一工業製薬株式会社製「アモーゲンS-H」)
・A-2:ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(第一工業製薬株式会社製「アモーゲンCB-H」)
・A-3:2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「エナジコールC-40H」)
【0049】
(B)成分:
・B-1:ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(第一工業製薬株式会社製「ダイヤノールCDE」)
・B-2:ラウリン酸ジエタノールアミド(花王株式会社製「アミノーンL-02」)
【0050】
(C)成分:
・C-1:炭酸ナトリウム
・C-2:炭酸カリウム
【0051】
(D)成分:
・D-1:炭酸水素ナトリウム
・D-2:炭酸水素カリウム
【0052】
(E)成分:
・E-1:ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(第一工業製薬株式会社製「カチオーゲンBC-50」)
・E-2:ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(第一工業製薬株式会社製「カチオーゲンDDM-PG」)
【0053】
得られた各洗浄剤組成物について、下記の評価方法により、安定性、血液汚れ洗浄性、皮脂汚れ洗浄性、洗浄後の生地ダメージ、および除菌性を評価した。また、上記した方法に従い、各洗浄剤組成物について濃度1質量%水溶液(25℃)のpHを測定した。
【0054】
・安定性:
洗浄剤組成物を50℃で24時間保管し、濁りや分離がないことを確認し、透明な場合を「A」、白濁や分離が生じた場合を「B」で表示した。
【0055】
・血液汚れ洗浄性:
標準人工汚染布(Swissatest社製「EMPA111」)を6cm×6cmに裁断したものを被洗浄物とし、洗浄試験を行った。各洗浄剤組成物を水で2質量%に希釈(50倍希釈)した洗浄液1Lに汚染布を浸漬し、10分間攪拌した。その後、汚染布を取り出し、1Lの水道水で10秒すすぎ、さらにもう一度1Lの水道水で10秒すすぎ、室温で乾燥させた。乾燥後、分光色彩計(日本電色工業株式会社製「SD6000」)で反射(正反射光処理SCE)によるY値を測定し、下記基準により評価した。
評価基準 A:Y値が70以上
B:Y値が65以上、70未満
C:Y値が65未満
【0056】
・皮脂汚れ洗浄性:
標準人工汚染布をWFK社製「WFK10D」に変更し、その他は血液汚れ洗浄性と同様にしてY値を測定し、下記基準により評価した。
評価基準 A:Y値が55以上
B:Y値が50以上、55未満
C:Y値が50未満
【0057】
・洗浄後の生地ダメージ:
洗浄剤組成物を水で50倍に希釈した洗浄液1Lをターゴトメーターに準備し、30℃に調温後、試験布としてカナキン3号布(10×10cm)を加え、100rpmの速さで20分間洗濯試験を行った。水道水で1分間すすいだ後、軽く絞り室温で2時間吊るして乾燥させた。これを5回繰り返し、得られた試験布について、コントロールと比較して表面の荒れの有無をパネラー10人に確認させ、下記基準により評価した。なお、コントロールは、上記洗浄液の代わりに水を用いて同様に洗濯試験を行って得られた布である。
評価基準 A:8名以上が荒れ無しと判断
B:5~7名が荒れ無しと判断
C:4名以下が荒れ無しと判断
【0058】
・除菌性:
洗浄剤組成物を滅菌水で50倍希釈し、得られた希釈液4.9mLに、予め調製した菌液(菌数:5.0~45.0×105~6CFU/mL)を0.1mL加えて攪拌した後、20分間静置した。さらに中和剤で10倍に希釈し10分静置後、塗抹法にて生菌数を確認し、コントロールに対する殺菌率を求め、下記基準により評価した。コントロールは、上記希釈液4.9mLの代わりに滅菌水4.9mLを用い、その他は同様にして生菌数を確認したものである。殺菌率は、コントロールの生菌数に対する減少率である。評価試験は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)と大腸菌(Escherichia coli)のそれぞれについて実施した。黄色ブドウ球菌の結果を「除菌性1」、大腸菌の結果を「除菌性2」として、それぞれ表1に結果を示した。
評価基準 A:殺菌率99%以上
B:殺菌率90%以上99%未満
C:殺菌率90%未満
【0059】
【0060】
結果は表1に示す通りである。比較例1では、両性界面活性剤(A)を配合していないため、皮脂汚れの洗浄性に劣るとともに、洗浄剤組成物の安定性評価において分離がみられ、安定性に劣っていた。比較例2では、脂肪酸アルカノールアミド(B)を配合していないため、皮脂汚れの洗浄性に劣っていた。比較例3では炭酸塩(C)を配合していないため、血液汚れの洗浄性および皮脂汚れの洗浄性に劣っていた。比較例4では、炭酸水素塩(D)を配合していないため、洗浄後の生地ダメージが大きかった。
【0061】
これに対し、(A)~(D)成分を全て配合した実施例1~18であると、洗浄後の生地ダメージを抑えながら、血液汚れの洗浄性および皮脂汚れの洗浄性に優れ、洗浄剤組成物の安定性にも優れていた。また、(E)成分をさらに配合した実施例1~14,16~18であると、生地ダメージの抑制と、血液汚れおよび皮脂汚れの洗浄性とを両立しつつ、洗浄剤組成物に除菌性が付与されていた。
【0062】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。