(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155125
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】シリコーン感圧接着剤組成物、シリコーン感圧接着剤、感圧接着フィルム、画像表示装置及びシリコーン感圧接着剤の評価方法
(51)【国際特許分類】
C09J 183/07 20060101AFI20231013BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20231013BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20231013BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231013BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231013BHJP
【FI】
C09J183/07
C09J183/05
C09J183/04
C09J11/06
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164689
(22)【出願日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2022064145
(32)【優先日】2022-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】内田 誠也
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA11
4J004AA17
4J004AB01
4J004FA08
4J040EK031
4J040EK041
4J040EK081
4J040JB09
4J040KA14
4J040KA29
4J040LA06
4J040LA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い粘着力と優れた剥離性を両立し、着色が少なく透明性の高い感圧接着剤、及び、感圧接着剤の評価方法を提供する。
【解決手段】(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量が0.0010~0.010モル/100gであるオルガノポリシロキサン、(B)ケイ素原子に結合した水素原子の含有量が0.0010~0.020モル/gであるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)(R3
3SiO1/2)単位、及び(SiO4/2)単位を有するオルガノポリシロキサン、(D)ヒドロシリル化反応触媒、及び、(E)酸化防止剤を含むシリコーン感圧接着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン感圧接着剤組成物であって、
(A)下記平均式(1)で表され、ケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量が0.0010~0.010モル/100gである直鎖状オルガノポリシロキサン、
【化1】
(式中、R
1は、互いに同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の炭素数1~12の一価炭化水素基であり、nは、3,000~15,000の数である。)
(B)下記平均式(2)で表され、ケイ素原子に結合した水素原子の含有量が0.0010~0.020モル/gである直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
【化2】
(式中、R
2は、互いに同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の炭素数1~12の一価炭化水素基または水素原子であり、mは、0~200の数である。)
(C)(R
3
3SiO
1/2)単位(式中、R
3は、互いに同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の炭素数1~12の一価炭化水素基、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基又はハロゲン原子である)、及び(SiO
4/2)単位を有し、(R
3
3SiO
1/2)単位:(SiO
4/2)単位の比が0.5:1~1.8:1の範囲である三次元網目状オルガノポリシロキサン、
(D)ヒドロシリル化反応触媒、
及び、
(E)酸化防止剤
を含むものであることを特徴とするシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項2】
前記(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の数が、前記(A)成分中のアルケニル基1個に対し0.2~50個であることを特徴とする請求項1に記載のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項3】
前記酸化防止剤が、2種以上の酸化防止剤を含むものであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項4】
前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤及びチオエーテル系酸化防止剤を含むものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシリコーン感圧接着剤組成物を硬化してなるものであることを特徴とするシリコーン感圧接着剤。
【請求項6】
JIS Z 0237に規定される180°引き剥がし試験において、室温23℃、引張り速度300mm/minでの粘着力が、5.0N/25mm以上であることを特徴とする請求項5に記載のシリコーン感圧接着剤。
【請求項7】
前記引き剥がし試験後の被着面に対するポリエチレンテレフタレートフィルムのJIS Z 0237に規定される180°引き剥がし試験において、室温23℃、引張り速度300mm/minでの粘着力が0.1N/25mm以下であることを特徴とする請求項6に記載のシリコーン感圧接着剤。
【請求項8】
JIS Z 8781-4に規定されるL*a*b*表色系における厚み300μmでのb*値が0.15以下である請求項5から請求項7のいずれか一項に記載のシリコーン感圧接着剤。
【請求項9】
請求項5から請求項8のいずれか一項に記載のシリコーン感圧接着剤からなる感圧接着剤層を備えたものであることを特徴とする感圧接着フィルム。
【請求項10】
請求項5から請求項8のいずれか一項に記載のシリコーン感圧接着剤からなる感圧接着剤層を備えたものであることを特徴とする画像表示装置。
【請求項11】
シリコーン感圧接着剤の評価方法であって、
(1)シリコーン感圧接着剤からなる感圧接着剤層を基材の一方の面に備えた感圧接着フィルムを準備する第1の工程と、
(2)前記感圧接着フィルムの感圧接着剤層を、JIS Z 0237に準じステンレス鋼板表面に圧着した後、引張速度300mm/minで感圧接着フィルムをステンレス鋼板に対して180°に引き剥がす第2の工程と、
(3)ポリエチレンテレフタレートフィルムを、JIS Z 0237に準じ、前記第2の工程後のステンレス鋼板における前記感圧接着フィルムを引き剥がした後の範囲内に圧着した後、引張速度300mm/minで前記ポリエチレンテレフタレートフィルムをステンレス鋼板に対して180°に引き剥がした際の粘着力を測定する第3の工程と、
(4)前記粘着力に基づいて、前記シリコーン感圧接着剤の良否を判定する第4の工程と
を備えるものとすることを特徴とするシリコーン感圧接着剤の評価方法。
【請求項12】
前記第4の工程を、前記粘着力が0.1N/25mm以下を満たすか否かによってシリコーン感圧接着剤の良否を判定する工程とすることを特徴とする請求項11に記載のシリコーン感圧接着剤の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン感圧接着剤組成物、シリコーン感圧接着剤、感圧接着フィルム、画像表示装置及びシリコーン感圧接着剤の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン系感圧接着剤は、アクリル系のものと比較して、感圧接着剤に必要とされるタック、粘着力、保持力に優れている。加えて、シリコーンの特徴である優れた耐熱性、耐寒性、電気特性などを具備しているため、電気絶縁テープ、耐熱テープ、マスキングテープ等の各種粘着製品に幅広く利用されている。
【0003】
シリコーン系感圧接着剤は、その硬化機構から付加反応硬化型、縮合反応硬化型、過酸化物硬化型に分類することができる。中でも、付加反応硬化型が、反応性が良好な点や、副生物を発生しない点から広く利用されている。
【0004】
また、シリコーン系感圧接着剤はその透明性を活かして、スマートデバイス等の表示素子分野への利用の検討が進められている(特許文献1)。
【0005】
近年、接着剤を貼り合わせた後に再度引き剥がして再利用するリワーク性の観点や、工程上の歩留まり向上といった観点から、樹脂、又は金属等の被着体に貼り合わせ、引き剥がした際に被着体面への糊残りが少ない感圧接着剤組成物が注目されている。そのため、感圧接着剤には、上述した透明性に加えて、被着体に対する優れた接着力と、糊残り無く引き剥がす剥離性の両立が求められている。
【0006】
特許文献2では、被着体面への糊残りが少ないシリコーン系感圧接着剤が開示されているが、180°引き剥がし試験による粘着力が0.05~4N/25mmと低く、十分とは言えない。
【0007】
同様に、特許文献3、4においても、被着体面への糊残りが少ないことを特徴としているが、粘着力は依然として十分とは言えない。また、感圧接着剤の着色等についての言及は無く、外観や透明性については不明である。
【0008】
また、上述した文献全てに共通して、接着層の糊残りの評価方法は、目視や指触等、感覚による曖昧なものであり、接着層が残存しているか否かについての本質的な評価方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2014-522436号公報
【特許文献2】特開2005-298550号公報
【特許文献3】特開2009-051916号公報
【特許文献4】WO2016/139956
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高い粘着力と優れた剥離性(糊残りの少なさ)を両立し、着色が少なく透明性の高い感圧接着剤、及び、感圧接着剤の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、
シリコーン感圧接着剤組成物であって、
(A)下記平均式(1)で表され、ケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量が0.0010~0.010モル/100gである直鎖状オルガノポリシロキサン、
【化1】
(式中、R
1は、互いに同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の炭素数1~12の一価炭化水素基であり、nは、3,000~15,000の数である。)
(B)下記平均式(2)で表され、ケイ素原子に結合した水素原子の含有量が0.0010~0.020モル/gである直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
【化2】
(式中、R
2は、互いに同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の炭素数1~12の一価炭化水素基または水素原子であり、mは、0~200の数である。)
(C)(R
3
3SiO
1/2)単位(式中、R
3は、互いに同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の炭素数1~12の一価炭化水素基、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基又はハロゲン原子である)、及び(SiO
4/2)単位を有し、(R
3
3SiO
1/2)単位:(SiO
4/2)単位の比が0.5:1~1.8:1の範囲である三次元網目状オルガノポリシロキサン、
(D)ヒドロシリル化反応触媒、
及び、
(E)酸化防止剤
を含むシリコーン感圧接着剤組成物を提供する。
【0012】
このように特定されたシリコーン感圧接着剤組成物であれば、優れた粘着力と剥離性を両立し、着色が少ないシリコーン感圧接着剤を与えるシリコーン感圧接着剤組成物とすることができる。
【0013】
このとき、前記(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の数が、前記(A)成分中のアルケニル基1個に対し0.2~50個であることが好ましい。
【0014】
このようなシリコーン感圧接着剤組成物であれば、得られるシリコーン感圧接着剤が、接着力および剥離性により優れるものとなる。
【0015】
また、前記酸化防止剤が、2種以上の酸化防止剤を含むことが好ましい。
【0016】
また、前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤及びチオエーテル系酸化防止剤を含むものであることがより好ましい。
【0017】
このようなシリコーン感圧接着剤組成物であれば、より着色が少なく透明性に優れたシリコーン感圧接着剤が得られる。
【0018】
また、本発明では、上記のシリコーン感圧接着剤組成物を硬化してなるものであるシリコーン感圧接着剤を提供する。
【0019】
このようなシリコーン感圧接着剤は、優れた粘着力と剥離性を両立し、着色が少ないものとなる。
【0020】
このとき、本発明のシリコーン感圧接着剤は、JIS Z 0237に規定される180°引き剥がし試験において、室温23℃、引張り速度300mm/minでの粘着力が、5.0N/25mm以上であることが好ましい。
【0021】
このようなシリコーン感圧接着剤は、粘着力が十分なものとなる。
【0022】
また、本発明のシリコーン感圧接着剤は、前記引き剥がし試験後の被着面に対するポリエチレンテレフタレートフィルムのJIS Z 0237に規定される180°引き剥がし試験において、室温23℃、引張り速度300mm/minでの粘着力が0.1N/25mm以下であることが好ましい。
【0023】
このようなシリコーン感圧接着剤は、剥離性に優れるものとなる。
【0024】
また、本発明のシリコーン感圧接着剤は、JIS Z 8781-4に規定されるL*a*b*表色系における厚み300μmでのb*値が0.15以下であることが好ましい。
【0025】
このようなシリコーン感圧接着剤は、黄色の着色が少なく透明性に優れるものとなる。
【0026】
また、本発明では、上記のシリコーン感圧接着剤からなる感圧接着剤層を備えた感圧接着フィルムを提供する。
【0027】
このような感圧接着フィルムは、優れた粘着力と剥離性を両立し、着色が少ないものとなる。
【0028】
また、本発明では、上記のシリコーン感圧接着剤からなる感圧接着剤層を備えた画像表示装置を提供する。
【0029】
このような画像表示装置は、信頼性および視認性に優れるものとなる。
【0030】
また、本発明では、シリコーン感圧接着剤の評価方法であって、
(1)シリコーン感圧接着剤からなる感圧接着剤層を基材の一方の面に備えた感圧接着フィルムを準備する第1の工程と、
(2)前記感圧接着フィルムの感圧接着剤層を、JIS Z 0237に準じステンレス鋼板表面に圧着した後、引張速度300mm/minで感圧接着フィルムをステンレス鋼板に対して180°に引き剥がす第2の工程と、
(3)ポリエチレンテレフタレートフィルムを、JIS Z 0237に準じ、前記第2の工程後のステンレス鋼板における前記感圧接着フィルムを引き剥がした後の範囲内に圧着した後、引張速度300mm/minで前記ポリエチレンテレフタレートフィルムをステンレス鋼板に対して180°に引き剥がした際の粘着力を測定する第3の工程と、
(4)前記粘着力に基づいて、前記シリコーン感圧接着剤の良否を判定する第4の工程と
を備えるシリコーン感圧接着剤の評価方法を提供する。
【0031】
このようなシリコーン感圧接着剤の評価方法であれば、目視や指触等の感覚によらず、剥離性を定量的に評価する事ができる。
【0032】
前記第4の工程を、前記粘着力が0.1N/25mm以下を満たすか否かによってシリコーン感圧接着剤の良否を判定する工程とすることが好ましい。
【0033】
このような評価方法であれば、シリコーン感圧接着剤の剥離性についてより実用的な評価を行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明のシリコーン感圧接着剤組成物は、高い粘着力と優れた剥離性(糊残りの少なさ)を両立し、着色が少ないシリコーン感圧接着剤を与えることから、リワーク性及び透明性に優れ、このような特性を有する本発明のシリコーン感圧接着剤組成物は、感圧接着フィルムや画像表示装置の貼合せ等に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
上述のように、粘着力と剥離性を両立し、着色が少なく透明性の高い感圧接着剤、及び、感圧接着剤の定量的な評価方法の開発が求められていた。
【0036】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定の付加硬化型シリコーン組成物を使用することで、粘着力および剥離性に優れ、着色の少ないシリコーン感圧接着剤が得られることを見出し、また、更に定量的に感圧接着剤を評価する方法を見出し、本発明を完成させた。
【0037】
即ち、本発明は、
シリコーン感圧接着剤組成物であって、
(A)下記平均式(1)で表され、ケイ素原子に結合したアルケニル基の含有量が0.0010~0.010モル/100gである直鎖状オルガノポリシロキサン、
【化3】
(式中、R
1は、互いに同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の炭素数1~12の一価炭化水素基であり、nは、3,000~15,000の数である。)
(B)下記平均式(2)で表され、ケイ素原子に結合した水素原子の含有量が0.0010~0.020モル/gである直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
【化4】
(式中、R
2は、互いに同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の炭素数1~12の一価炭化水素基または水素原子であり、mは、0~200の数である。)
(C)(R
3
3SiO
1/2)単位(式中、R
3は、互いに同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の炭素数1~12の一価炭化水素基、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基又はハロゲン原子である)、及び(SiO
4/2)単位を有し、(R
3
3SiO
1/2)単位:(SiO
4/2)単位の比が0.5:1~1.8:1の範囲である三次元網目状オルガノポリシロキサン、
(D)ヒドロシリル化反応触媒、
及び、
(E)酸化防止剤
を含むシリコーン感圧接着剤組成物である。
【0038】
また、本発明は、シリコーン感圧接着剤の評価方法であって、
(1)シリコーン感圧接着剤からなる感圧接着剤層を基材の一方の面に備えた感圧接着フィルムを準備する第1の工程と、
(2)前記感圧接着フィルムの感圧接着剤層を、JIS Z 0237に準じステンレス鋼板表面に圧着した後、引張速度300mm/minで感圧接着フィルムをステンレス鋼板に対して180°に引き剥がす第2の工程と、
(3)ポリエチレンテレフタレートフィルムを、JIS Z 0237に準じ、前記第2の工程後のステンレス鋼板における前記感圧接着フィルムを引き剥がした後の範囲内に圧着した後、引張速度300mm/minで前記ポリエチレンテレフタレートフィルムをステンレス鋼板に対して180°に引き剥がした際の粘着力を測定する第3の工程と、
(4)前記粘着力に基づいて、前記シリコーン感圧接着剤の良否を判定する第4の工程と
を備えるシリコーン感圧接着剤の評価方法である。
【0039】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
本発明のシリコーン感圧接着剤組成物は、下記(A)~(E)成分を含むものである。
【0041】
[(A)成分]
本発明のシリコーン感圧接着剤組成物における(A)成分は、下記平均式(1)で表され、ケイ素原子に結合したアルケニル基含有量が0.0010~0.010モル/100gである直鎖状オルガノポリシロキサンである。
【化5】
(式中、R
1は、互いに同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の炭素数1~12の一価炭化水素基であり、nは、3,000~15,000の数である。)
【0042】
R1は、互いに同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の炭素数1~12の一価炭化水素基であり、一価炭化水素基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-オクチル、n-デシル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等の炭素原子数1~12のアルキル基;フェニル、ナフチル基等の炭素原子数6~12のアリール基;トリル、キシリル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル基等の炭素原子数7~12のアルキルアリール基;ベンジル、フェネチル基等の炭素原子数7~12のアラルキル基、ビニル、アリル、ブテニル、ヘキセニル、オクテニル、デセニル、ドデセニル基等の炭素原子数2~12のアルケニル基等が挙げられる。中でも、メチル基、フェニル基、ビニル基が好ましい。
【0043】
R1のうち、(A)成分全体にして0.0010~0.010モル/100gがアルケニル基であり、アルケニル基量が0.0015~0.005モル/100gであることが好ましい。アルケニル基量が0.0010モル/100g未満であると、後述する(B)成分との架橋が不足することにより、得られる感圧接着剤の剥離性が不十分なものとなり、被着体から剥がした際の糊残りが発生しやすくなり、一方、0.010モル/100gを超えると、得られる感圧接着剤の粘着力が低下する場合がある。
【0044】
nは、3,000~15,000の数であり、5,000~10,000であることが好ましい。nが上記範囲を満たさない場合、感圧接着剤の粘着力や剥離性が不十分なものとなる場合がある。なお、n=15,000を超えるオルガノポリシロキサンは、粘度が非常に高いために合成が困難である。また、取り扱い性も悪く実使用には堪えない。
【0045】
(A)成分の性状はオイル状または生ゴム状であってよい。その粘度は、オイル状のものであれば25℃において1,000mPa・s以上が好ましく、10,000mPa・s以上がより好ましい。また、生ゴム状のものであれば、30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの溶液の粘度が、5,000~100,000mPa・sのものが好ましく、10,000~50,000mPa・sのものがより好ましい。
【0046】
なお、粘度はB型回転粘度計で測定した25℃における値である。
【0047】
(A)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンの具体的な例としては、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン、両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン、両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン、両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルシロキサンなどが挙げられる。
【0048】
(A)成分は一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0049】
[(B)成分]
本発明のシリコーン感圧接着剤組成物における(B)成分は、下記平均式(2)で表され、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)の含有量が0.0010~0.020モル/gである直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、(A)成分中に含まれるアルケニル基とヒドロシリル化反応により架橋する成分である。
【化6】
(式中、R
2は、互いに同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の炭素数1~12の一価炭化水素基または水素原子であり、mは、0~200の数である。)
【0050】
R2は互いに同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の炭素数1~12の一価炭化水素基または水素原子であり、炭素数1~12の一価炭化水素基としては、ヒドロシリル化反応性炭素-炭素不飽和結合を含まないものが好ましく、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-オクチル、n-デシル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等の炭素原子数1~12のアルキル基;フェニル、ナフチル基等の炭素原子数6~12のアリール基;トリル、キシリル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル基等の炭素原子数7~12のアルキルアリール基;ベンジル、フェネチル基等の炭素原子数7~12のアラルキル基等が挙げられ、メチル基、フェニル基が特に好ましい。
【0051】
R2のうち、水素原子(SiH基)の量は、(B)成分全体に対して0.0010~0.020モル/gであり、0.0020~0.010モル/gが好ましい。SiH基量が0.0010モル/g未満であると、上記(A)成分との架橋が不足することにより、得られる感圧接着剤の剥離性が不十分なものとなり、被着体から剥がした際の糊残りが発生しやすくなり、一方、0.020モル/gを超えるものは、構造上合成が困難であることに加え、得られる感圧接着剤の粘着力が低下する場合がある。
【0052】
mは、0~200の数であり、50~100であることが好ましい。mが200を超えると、感圧接着剤の粘着力や剥離性が不十分なものとなる場合がある。
【0053】
(B)成分の直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体的な例としては、例えば、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルフェニルシロキシ基封鎖フェニルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルフェニルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端メチルフェニルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン、両末端メチルフェニルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジフェニルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0054】
(B)成分は、単独で用いても二種以上併用してもよい。
【0055】
(A)成分中のアルケニル基に対して(B)成分中のヒドロシリル基のモル比が0.2~50となるものが好ましく、モル比が1.0~10となるものがより好ましい。
【0056】
(B)成分の配合量は、(A)成分中のアルケニル基1個に対して(B)成分中のSiH基の数が、好ましくは0.2~50個、より好ましくは0.5~10.0個、更に好ましくは1.0~5.0の範囲となる量である。このような範囲であれば、得られる感圧接着剤が、接着力および剥離性により優れるものとなる。
【0057】
[(C)成分]
本発明のシリコーン感圧接着剤組成物における(C)成分は、(R3
3SiO1/2)単位、及び(SiO4/2)単位を有し、(R3
3SiO1/2)単位:(SiO4/2)単位の比が0.5:1~1.8:1の範囲である三次元網目状オルガノポリシロキサンである。
【0058】
R3は、互いに同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の炭素数1~12の一価炭化水素基、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基又はハロゲン原子であり、一価炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-オクチル、n-デシル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等の炭素原子数1~12のアルキル基;フェニル、ナフチル基等の炭素原子数6~12のアリール基;トリル、キシリル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル基等の炭素原子数7~12のアルキルアリール基;ベンジル、フェネチル基等の炭素原子数7~12のアラルキル基などが挙げられる。中でも、メチル基及びフェニル基が好ましい。
【0059】
R3の一部が、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基又はハロゲン原子であってもよく、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基又はハロゲン原子の含有量は、R3の全数のうち4%以下であることが好ましい。
【0060】
炭素数1~4のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ基等が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0061】
ハロゲン原子としては、塩素、臭素等が挙げられる。
【0062】
(R3
3SiO1/2)単位:(SiO4/2)単位の比は、0.5~1.8:1であり、0.7~1.2:1が好ましい。(C)成分の構成単位比が上記を満たさない場合、感圧接着剤の粘着力や剥離性が不十分なものとなる場合がある。
【0063】
(C)成分は、目的に応じてR3SiO3/2単位及び/又はR3
2SiO2/2単位を含有していてもよい。
【0064】
(C)成分は、単独で用いても二種以上併用してもよい。
【0065】
(C)成分の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは1,000~20,000、より好ましくは2,000~10,000の範囲である。なお、重量平均分子量は、トルエンを展開溶媒として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値である。
【0066】
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、50~300質量部が好ましく、100~200質量部がより好ましい。このような範囲であれば、得られる感圧接着剤が、接着力および剥離性により優れるものとなる。
【0067】
[(D)成分]
本発明のシリコーン感圧接着剤組成物における(D)成分は、ヒドロシリル化反応触媒であり、白金系、ロジウム系、パラジウム系、鉄系、ルテニウム系、鉄/コバルト系触媒等が挙げられる。中でも、ヒドロシリル化を促進する能力の高さから、白金系触媒が好ましい。白金系触媒は、具体的には塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物などが挙げられるが、中でも塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物が好ましく、例えば、商品名CAT-PL-50T(信越化学工業(株)製)等の市販品を用いることができる。
【0068】
(D)成分の配合量は、触媒量でよく、特に限定されないが、本発明のシリコーン感圧接着剤組成物の質量の合計に対して、(D)成分中の金属換算で0.01~500質量ppmの範囲が好ましく、0.05~100質量ppmの範囲がより好ましい。
【0069】
[(E)成分]
本発明のシリコーン感圧接着剤組成物における(E)成分は、組成物が着色することによって透明性が損なわれることを防止する目的で用いられる酸化防止剤であり、フェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤等の酸化防止剤から適宜選択して用いることができる。
【0070】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、4,4’-ブチリデンビス-(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート、2,2’-メチレンビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ジエチル[〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル]ホスホネート、2,5,7,8-テトラメチル-2(4’,8’,12’-トリメチルトリデシル)クロマン-6-オール、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0071】
なお、フェノール系酸化防止剤では、フェノール水酸基に加え、以下の例示と重複するが、リン原子、硫黄原子、アミンのいずれかを少なくとも一つ以上同一分子中に含む化合物も列挙した。
【0072】
チオエーテル系酸化防止剤の具体例としては、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル-3,3’-チオジプロピオネート、2-メルカプトベンズイミダゾール、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、2,4-1ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0073】
アミン系酸化防止剤の具体例としては、N,N’-ジアリル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、オクチル化ジフェニルアミン、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0074】
ホスファイト系酸化防止剤の具体例としては、トリスノニルフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ジエチル[〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル]ホスホネート等が挙げられる。
【0075】
また、酸化防止剤としては、各種市販品を用いることもでき、そのような市販品としては、例えば、(株)ADEKA製のアデカスタブAO-60、アデカスタブAO-50、アデカスタブAO-80、アデカスタブAO-330、アデカスタブAO-412S、アデカスタブLA-52、アデカスタブLA-57、アデカスタブLA-63P、アデカスタブLA-68、アデカスタブLA-72、アデカスタブLA-77Y、アデカスタブLA-77G、アデカスタブLA-81、アデカスタブLA-82、アデカスタブLA-87、アデカスタブLA-402AF、アデカスタブLA-502XP、アデカスタブ2112、アデカスタブPEP-36;ビーエーエスエフ(BASF)ジャパン(株)製のイルガノックス1010、イルガノックス1010FF、イルガノックス1035、イルガノックス1035FF、イルガノックス1076、イルガノックス1076FF、イルガノックス1098、イルガノックス1135、イルガノックス1330、イルガノックス1726、イルガノックス1425WL、イルガノックス1520L、イルガノックス245、イルガノックス245FF、イルガノックス259、イルガノックス3114、イルガノックス5057、イルガノックス565、イルガフォス168;住友化学(株)製スミライザー GA-80、スミライザー MDP-S、スミライザー WX-R、スミライザー WX-RC、スミライザー TP-D;住化ケムテックス(株)製Sumilizer BBM-S等が挙げられる。
【0076】
以上で示した各酸化防止剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上を併用することが着色防止効果を向上できる点から好ましい。中でも、フェノール系酸化防止剤とチオエーテル系酸化防止剤とを併用することがより好ましい。
【0077】
(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.01~1質量部が好ましく、0.1~0.5質量部がより好ましい。このような範囲であればより良好な着色防止効果が得られる。
【0078】
[反応制御剤]
本発明のシリコーン感圧接着剤組成物には、(D)成分のヒドロシリル化反応触媒に対して反応制御効果を持つ公知の反応制御剤を使用してもよい。反応制御剤としては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロヘキサノール、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ブチン、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ペンチン、3,5-ジメチル-3-トリメチルシロキシ-1-ヘキシン、1-エチニル-1-トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2-ジメチル-3-ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン、1,1,ジメチル-1-トリメチルシロキシ-エチンなどが挙げられ、好ましくは、1-エチニルシクロヘキサノール、1,1,ジメチル-1-トリメチルシロキシ-エチンである。
【0079】
[有機溶剤]
本発明のシリコーン感圧接着剤組成物には、上記(A)~(E)成分および必要に応じて添加されるその他の成分を混合する目的及び/又はシリコーン感圧接着剤組成物の粘度を調整する目的で、有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ヘプタン、オクタン、イソパラフィン等の脂肪族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1,4-ジオキサンなどのエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤等が挙げられる。
【0080】
[その他の成分]
本発明のシリコーン感圧接着剤組成物には、必要に応じて(A)~(E)以外の成分を添加してもよい。具体的には、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルジフェニルシロキサンなどの非反応性のポリオルガノシロキサン、さらに、ヒンダードアミン化合物などの耐熱助剤、トリアゾール系、ベンゾフェノン系などの光安定剤、リン酸エステル系、ハロゲン系、アンチモン系などの難燃剤、カチオン活性剤、アニオン活性剤、非イオン系活性剤などの帯電防止剤などが挙げられる。
【0081】
[シリコーン感圧接着剤]
本発明のシリコーン感圧接着剤組成物は、硬化させることによりシリコーン感圧接着剤とすることができる。シリコーン感圧接着剤組成物の硬化条件は、塗工量等に応じて適宜調整されるが、典型的には80~130℃で30秒~3分である。
【0082】
本発明のシリコーン感圧接着剤の被着体は特に限定されない。例えば、ステンレス、銅、鉄、などの金属、これらの表面がメッキ処理や防錆処理された金属、ガラス、陶磁器、セラミックス、ポリテトラフロロエチレン、ポリイミド、エポキシ、ノボラック樹脂などの樹脂,さらにこれらのうちの複数が複合された複合材上に粘着させることができる。
【0083】
本発明のシリコーン感圧接着剤は、JIS Z 0237に規定される180°引き剥がし試験において、室温23℃、引張り速度300mm/minでの粘着力が、5.0N/25mm以上であることが好ましい。このようなシリコーン感圧接着剤は、粘着力が十分なものとなる。
【0084】
また、本発明のシリコーン感圧接着剤は、上記引き剥がし試験後の被着面に対するポリエチレンテレフタレートフィルムのJIS Z 0237に規定される180°引き剥がし試験において、室温23℃、引張り速度300mm/ minでの粘着力が0.1N/25mm以下であることが好ましい。このようなシリコーン感圧接着剤は、剥離性に優れるものとなる。
【0085】
また、本発明のシリコーン感圧接着剤は、JIS Z 8781-4に規定されるL*a*b*表色系における厚み300μmでのb*値が0.15以下であることが好ましい。b*値が0.15以下であることは、硬化層が黄色に着色していないことを表しており、ディスプレイ用途等に感圧接着剤として使用する場合の要求特性に合致している。なお、b*値が0.15以下であることは硬化層が実質的に透明であることも示している。
【0086】
[感圧接着フィルム]
本発明のシリコーン感圧接着剤組成物は、各種フィルム基材に塗工し硬化させることにより、感圧接着剤層を備えた感圧接着フィルムを製造することができる。
【0087】
基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルム、アルミニウム箔、銅箔などの金属箔、和紙、合成紙、ポリエチレンラミネート紙などの紙、布、ガラス繊維、これらのうちの複数を積層してなる複合基材が挙げられる。
【0088】
基材とシリコーン感圧接着剤層の密着性を向上させるために、プライマー処理、コロナ処理、エッチング処理、プラズマ処理された基材を用いてもよいが、作業工程の簡略化の観点から、これらの方法を用いないことが好ましい。
【0089】
塗工方法は、公知の塗工方式を用いて塗工すればよく、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、キスコーター、グラビアコーター、スクリーン塗工、浸漬塗工、キャスト塗工などが挙げられる。また、塗工量は用途に応じて設定されるが、典型的には、硬化した後のシリコーン感圧接着剤層の厚みとして1~500μm、表示装置用部材としては100~300μm、マスキングテープ用途としては5~50μmであることが好ましい。
【0090】
上記のように基材に直接塗工して感圧接着フィルムを製造してもよいし、剥離コーティングが施された剥離性フィルムや剥離紙にシリコーン感圧接着剤組成物を塗工して硬化を行った後、基材を貼り合わせてシリコーン感圧接着剤層を転写することによって感圧接着フィルムを製造してもよい。
【0091】
[画像表示装置]
また、本発明のシリコーン感圧接着剤組成物は、硬化させることにより感圧接着剤層を形成し、それを備えた画像表示装置を製造することができる。このような画像表示装置は、信頼性および視認性に優れるものとなる。
【0092】
[シリコーン感圧接着剤の評価方法]
本発明のシリコーン組成物は、剥離性(糊残りの少なさ)に優れる。剥離性は、下記の(1)~(4)の工程を備える評価方法により評価することができる。このようなシリコーン感圧接着剤の評価方法であれば、目視や指触等の感覚によらず、剥離性を定量的に評価する事ができる。
【0093】
(1)シリコーン感圧接着剤からなる感圧接着剤層を基材の一方の面に備えた感圧接着フィルムを準備する第1の工程と、
(2)前記感圧接着フィルムの感圧接着剤層を、JIS Z 0237に準じステンレス鋼板表面に圧着した後、引張速度300mm/minで感圧接着フィルムをステンレス鋼板に対して180°に引き剥がす第2の工程と、
(3)ポリエチレンテレフタレートフィルムを、JIS Z 0237に準じ、前記第2の工程後のステンレス鋼板における前記感圧接着フィルムを引き剥がした後の範囲内に圧着した後、引張速度300mm/minで前記ポリエチレンテレフタレートフィルムをステンレス鋼板に対して180°に引き剥がした際の粘着力を測定する第3の工程と、
(4)前記粘着力に基づいて、前記シリコーン感圧接着剤の良否を判定する第4の工程
【0094】
工程(1)は、シリコーン感圧接着剤からなる感圧接着剤層を基材の一方の面に備えた感圧接着フィルムを準備する工程であり、感圧接着フィルムの製造方法としては特に限定されないが、例えば上記で挙げられた製造方法により感圧接着フィルムを準備することができる。また、感圧接着剤層の厚みは、特に限定されるものではないが、30μm程度とすることが好ましい。
【0095】
工程(2)は、上記感圧接着フィルムの感圧接着剤層を、ステンレス鋼板表面に圧着した後、引張速度300mm/minでステンレス鋼板に対して180°に引き剥がす工程である。
【0096】
本工程における圧着および引き剥がし条件は、JIS Z 0237に規定される180°引き剥がし試験に準じるが、必要に応じて圧着後に養生工程を設けてもよい。
【0097】
工程(3)は、上記工程(2)の後のステンレス鋼板における前記感圧接着フィルムを引き剥がした後の範囲内にポリエチレンテレフタレートフィルムを圧着した後、引張速度300mm/minで前記ポリエチレンテレフタレートフィルムをステンレス鋼板に対して180°に引き剥がした際の粘着力を測定する工程である。
【0098】
前記工程(2)の後のステンレス鋼板に感圧接着剤層の残存(糊残り)が発生していた場合、工程(3)においてポリエチレンテレフタレートフィルムを引き剥がす際に粘着力が発生する。なお、本工程における圧着および引き剥がし条件は、JIS Z 0237に規定される180°引き剥がし試験に準じるが、必要に応じてポリエチレンテレフタレートフィルムを圧着した後に養生工程を設けてもよい。
【0099】
工程(4)は、上記工程(3)における粘着力に基づいて、前記シリコーン感圧接着剤の良否を判定する工程であり、前記粘着力が0.1N/25mm以下を満たすか否かによってシリコーン感圧接着剤の良否を判定する工程であることが好ましい。このような評価方法であれば、シリコーン感圧接着剤の剥離性についてより実用的な評価を行うことができる。
【実施例0100】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、粘度は、B型回転粘度計を用いて測定した25℃における値であり、重量平均分子量(Mw)は、トルエンを展開溶媒として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値である。
【0101】
[実施例1~13、比較例1~5]
表1及び表2に示した配合(質量部)で下記の各成分を混合し、シリコーン感圧接着剤組成物を調製した。
【0102】
(A)成分:
(A-1)前記平均式(1)において、R1がメチル基及びビニル基(ビニル価0.0020モル/100g)であり、n=6,300であり、30質量%トルエン溶液の粘度が25,000mPa・sである直鎖状オルガノポリシロキサン
(A-2)前記平均式(1)において、R1がメチル基及びビニル基(ビニル価0.0068モル/100g)であり、n=6,600であり、30質量%トルエン溶液の粘度が19,500mPa・sである直鎖状オルガノポリシロキサン
(A-5)前記平均式(1)において、R1がメチル基及びビニル基(ビニル価0.0012モル/100g)であり、n=7,200であり、30質量%トルエン溶液の粘度が24,000mPa・sである直鎖状オルガノポリシロキサン
(A-6)前記平均式(1)において、R1がメチル基及びビニル基(ビニル価0.0094モル/100g)であり、n=6,300であり、30質量%トルエン溶液の粘度が18,100mPa・sである直鎖状オルガノポリシロキサン
(A-7)前記平均式(1)において、R1がメチル基及びビニル基(ビニル価0.0030モル/100g)であり、n=3,200であり、30質量%トルエン溶液の粘度が1,458mPa・sである直鎖状オルガノポリシロキサン
(A-8)前記平均式(1)において、R1がメチル基及びビニル基(ビニル価0.0021モル/100g)であり、n=14,500であり、30質量%トルエン溶液の粘度が35,100mPa・sである直鎖状オルガノポリシロキサン
【0103】
比較成分:
(A’-3)前記平均式(1)において、R1がメチル基及びビニル基(ビニル価0.0004モル/100g)であり、n=8,000であり、30質量%トルエン溶液の粘度が23,500mPa・sである直鎖状オルガノポリシロキサン
(A’-4)前記平均式(1)において、R1がメチル基及びビニル基(ビニル価0.0025モル/100g)であり、n=1,200であり、粘度が113,000Pa・sである直鎖状オルガノポリシロキサン
(A’-9)前記平均式(1)において、R1がメチル基及びビニル基(ビニル価0.0123モル/100g)であり、n=6,000であり、30質量%トルエン溶液の粘度が12,110mPa・sである直鎖状オルガノポリシロキサン
【0104】
(B)成分:
(B-1)前記平均式(2)において、R2がメチル基及び水素原子(ヒドロシリル基量0.0055モル/g)であり、m=90であり、粘度が100mPa・sである直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B-3)前記平均式(2)において、R2がメチル基及び水素原子(ヒドロシリル基量0.0019モル/g)であり、m=28であり、粘度が25mPa・sである直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B-4)前記平均式(2)において、R2がメチル基及び水素原子(ヒドロシリル基量0.0035モル/g)であり、m=32であり、粘度が27mPa・sである直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B-5)前記平均式(2)において、R2がメチル基及び水素原子(ヒドロシリル基量0.017モル/g)であり、m=38であり、粘度が20mPa・sである直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
【0105】
比較成分:
(B’-2)前記平均式(2)において、R2がメチル基及び水素原子(ヒドロシリル基量0.0004モル/g)であり、m=45であり、粘度が50mPa・sである直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
【0106】
(C)成分:
(C-1)((CH3)3SiO1/2)0.67(SiO4/2)1.00で表される構成単位比を有し、Mwが3,400である三次元網目状オルガノポリシロキサンの60質量%トルエン溶液
(C-2)((CH3)3SiO1/2)1.75(SiO4/2)1.00で表される構成単位比を有し、Mwが7,400である三次元網目状オルガノポリシロキサンの60質量%トルエン溶液
【0107】
(D)成分:
(D-1)白金触媒:CAT-PL-50T(信越化学工業(株)製)
【0108】
(E)成分:
(E-1)フェノール系酸化防止剤:イルガノックス1010(BASFジャパン(株)製)
(E-2)チオエーテル系酸化防止剤:アデカスタブAO-412S((株)ADEKA製)
(E-3)ホスファイト系酸化防止剤:アデカスタブPEP-36((株)ADEKA製)
【0109】
その他成分:
(F-1)反応制御剤:エチニルシクロヘキサノール
【0110】
【0111】
【0112】
得られたシリコーン感圧接着剤組成物について、下記の方法により粘着力、剥離性及びb*値の評価を行った結果を表3及び表4に示した。
【0113】
[粘着力]
シリコーン感圧接着剤組成物を、硬化後の厚みが30μmになるように幅25mmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布した後、130℃で1分加熱して感圧接着フィルムを作製した。この感圧接着フィルムを、JIS Z 0237に準じ質量2kgのローラーを用いてステンレス鋼板に圧着した後、25℃で24時間養生した。養生した感圧接着フィルムを、室温23℃、引張速度300mm/minの180°引き剥がし試験によって、ステンレス鋼板から引き剥がすのに要する力(N/25mm)を測定した。
【0114】
[剥離性]
幅25mmのポリエチレンテレフタレートフィルムを、上記粘着力試験後のステンレス鋼板上の上記粘着テープを剥がした部分と重ね、JIS Z 0237に準じ質量2kgのローラーを用いて圧着した後、25℃で24時間養生した。養生したポリエチレンテレフタレートフィルムを、室温23℃、引張速度300mm/minの180°引き剥がし試験によって、ステンレス鋼板から引き剥がすのに要する力(N/25mm)を測定した。
【0115】
[b*値]
シリコーン組成物を硬化後の厚みが300μmになるようにガラス板上に塗布した後、60℃で1時間放置した後、130℃で3分間硬化させ、サンプルを作成した。当該サンプルをJIS Z 8781-4に規定されるL*a*b*表色系でb*値を測定した。
【0116】
【0117】
【0118】
表3及び表4に示されるように、本発明のシリコーン感圧接着剤組成物を用いた実施例1~13では、優れた粘着力及び剥離性(糊残りの少なさ)を示し、低いb*値を有していた。また、酸化防止剤をそれぞれ1種単独で使用した実施例1,2と比較して、酸化防止剤を2種併用した実施例3~13では、より低いb*値を有している。
【0119】
中でも、フェノール系、チオエーテル系酸化防止剤を併用した実施例3、5~13では、特に低いb*値を有しており、着色が極めて少ないことが分かる。
【0120】
一方、(A)成分に代えてビニル価が0.0010モル/100g未満であるオルガノポリシロキサンを用いた比較例1、ビニル価が0.010モル/100gを超えるオルガノポリシロキサンを用いた比較例5、及び、前記(1)式においてnの範囲を満たさないオルガノポリシロキサンを用いた比較例2では、粘着力が低くなっている。また、比較例1、比較例2、並びに、(B)成分に代えてヒドロシリル基量が0.0010モル/g未満であるヒドロシリル基を含む比較例3では、剥離性試験において引き剥がすのに要する力が高く、糊残りが発生したことが分かる。
【0121】
また、酸化防止剤を添加していない比較例4では、b*値が0.15を超え、実質的に着色しており透明性が損なわれる結果となった。
【0122】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。