(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155540
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】水中無線通信装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/04 20060101AFI20231016BHJP
H01Q 9/26 20060101ALI20231016BHJP
H01Q 9/42 20060101ALI20231016BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20231016BHJP
H01Q 13/10 20060101ALI20231016BHJP
H04B 11/00 20060101ALI20231016BHJP
B63C 11/00 20060101ALI20231016BHJP
B63C 11/48 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
H01Q1/04
H01Q9/26
H01Q9/42
H01Q13/08
H01Q13/10
H04B11/00 D
B63C11/00 B
B63C11/48 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064913
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】能見 基彦
(72)【発明者】
【氏名】脇田 俊昭
【テーマコード(参考)】
5J045
5J046
【Fターム(参考)】
5J045DA03
5J045DA10
5J045NA01
5J046AB06
5J046AB07
5J046AB08
(57)【要約】
【課題】水中での無線通信を実現することができる装置を提供する。
【解決手段】水中無線通信装置は、50~500MHzの帯域内の周波数の電波を送信するホスト装置1と、電波を受信する水中装置2を備える。ホスト装置1および水中装置2は、それぞれ、水中アンテナ21,22を有しており、水中アンテナ21,22の導体素子は、電波の波長の半分の長さを、水の比誘電率の1/2乗で割り算して得られた長さを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中無線通信装置であって、
50~500MHzの帯域内の周波数の電波を送信するホスト装置と、
前記電波を受信する水中装置を備え、
前記ホスト装置および前記水中装置は、それぞれ、水中アンテナを有しており、
前記水中アンテナの導体素子は、前記電波の波長の半分の長さを、水の比誘電率の1/2乗で割り算して得られた長さを有する、水中無線通信装置。
【請求項2】
前記水中アンテナの導体素子および給電点は、水中に没している、請求項1に記載の水中無線通信装置。
【請求項3】
前記水中アンテナは、フォールデッドダイポールアンテナである、請求項1または2に記載の水中無線通信装置。
【請求項4】
前記水中アンテナは、逆F形式アンテナである、請求項1または2に記載の水中無線通信装置。
【請求項5】
前記水中アンテナは、マイクロストリップアンテナである、請求項1または2に記載の水中無線通信装置。
【請求項6】
前記水中アンテナは、スロットアンテナである、請求項1または2に記載の水中無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に設置された潜没式装置、あるいは水中を移動する水中移動体、あるいは水面に浮いている船舶などの機器類間で無線通信を行う技術に関し、特に水中での電波の送受信に適した水中アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
水中で作動する水中ロボットや水中ドローンなどの水中装置は、一般に、陸上または水面に配置されたホスト装置と通信を行う。例えば、ホスト装置としてのコントローラは、水中ロボットを操作するための操作信号を水中ロボットに送り、水中ロボットは、操作信号を受けて作動する。別の例では、水中ロボットは、水中の対象物の画像を生成し、画像を陸上または水面上のホスト装置に送る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水中装置およびホスト装置のいずれか一方または両方が可動である場合、移動の制限を低減させる観点から、通信は無線通信の形態であることが望ましい。しかしながら、社会で広く使われているGHz帯域の電波は、水中では激しく減衰するため通信できない。そこで、低い周波数帯域での無線通信が有効と考えられるが、水中での無線通信を実現する装置は未だ確立されていないのが現状である。
【0005】
そこで、本発明は、水中での無線通信を実現することができる装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、水中無線通信装置であって、50~500MHzの帯域内の周波数の電波を送信するホスト装置と、前記電波を受信する水中装置を備え、前記ホスト装置および前記水中装置は、それぞれ、水中アンテナを有しており、前記水中アンテナの導体素子は、前記電波の波長の半分の長さを、水の比誘電率の1/2乗で割り算して得られた長さを有する、水中無線通信装置が提供される。
【0007】
一態様では、前記水中アンテナの導体素子および給電点は、水中に没している。
一態様では、前記水中アンテナは、フォールデッドダイポールアンテナである。
一態様では、前記水中アンテナは、逆F形式アンテナである。
一態様では、前記水中アンテナは、マイクロストリップアンテナである。
一態様では、前記水中アンテナは、スロットアンテナである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記長さの導体素子を持つ水中アンテナは、水中を伝播する電波を感度よく送受信することができる。したがって、水中での無線通信が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】水中無線通信装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図2】送信側水中アンテナの一実施形態を示す拡大図である。
【
図3】送信側水中アンテナの他の実施形態を示す拡大図である。
【
図4】送信側水中アンテナのさらに他の実施形態を示す拡大図である。
【
図5】送信側水中アンテナのさらに他の実施形態を示す拡大図である。
【
図6】水中アンテナを用いて水中での電波の送受信を行った実験を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、水中無線通信装置の一実施形態を示す模式図である。
図1に示すように、水中無線通信装置は、ホスト装置1および水中装置2を備えている。ホスト装置1は、50~500MHzの帯域内の周波数の電波を送信するように構成されており、水中装置2は、50~500MHzの帯域内の周波数の電波を受信するように構成されている。
【0011】
ホスト装置1は、発振器5、変調器6、増幅器7、およびこれらの構成要素を囲む防水ケーシング8を有している。ホスト装置1が船舶上に配置される場合は、防水ケーシング8は省略されてもよい。水中装置2は、チューナー12、増幅器13、復調器14、およびこれらの構成要素を囲む防水ケーシング15などを有している。ただし、ホスト装置1および水中装置2の構成要素は、本実施形態には限定されない。一実施形態では、ホスト装置1は、50~500MHzの帯域内の周波数の電波を送信および受信するように構成され、水中装置2も、50~500MHzの帯域内の周波数の電波を送信および受信するように構成される。他の実施形態では、ホスト装置1は、50~500MHzの帯域内の周波数の電波を受信するように構成され、水中装置2は、50~500MHzの帯域内の周波数の電波を送信するように構成される。
【0012】
ホスト装置1は、水中または水面上または陸上に配置され、水中装置2は水中に配置される。水中装置2の例としては、水中ロボット、水中ドローン、水中撮像装置などが挙げられる。ホスト装置1の例としては、水中装置2の動作を制御するコントローラ、水中装置2から送られてくる画像を表示する画像表示装置などが挙げられる。
図1に示す例では、ホスト装置1は、船舶17内に配置されており、可動である。
図1に示す水中装置2も、スクリュープロペラなどの推進装置18を備えた可動体である。ホスト装置1は、水中ドローンなどの水中装置であってもよい。
【0013】
本実施形態において、水中無線通信装置で使用される電波は、50~500MHzの帯域内の周波数を持つ電波である。この周波数帯域の電波は、水中で減衰しにくいという利点がある。電波の周波数は、水中無線通信装置の用途に応じて適宜決定される。例えば、情報量は少ないがロバスト性が必要な通信の場合は、上記帯域内の低周波側の電波が選択される。他の例では、画像などの情報量が多いがホスト装置1と水中装置2との間の距離が短い場合は、上記帯域内の高周波側の電波が選択される。
【0014】
ホスト装置1は水中アンテナ21をさらに有し、水中装置2は水中アンテナ22をさらに有している。水中アンテナ21および水中アンテナ22は同じ構成および同じ大きさを有しているので、以下、水中アンテナ21について説明する。
【0015】
図2は、水中アンテナ21の一実施形態を示す拡大図である。
図2に示すように、本実施形態では、水中アンテナ21は、フォールデッドダイポールアンテナである。水中アンテナ21は、導体素子25を有している。導体素子25は、給電点26を介して給電ケーブル27に連結されている。給電点26および導体素子25を含む水中アンテナ21は、水中に没している。同様に、水中アンテナ22も水中に没している。したがって、電波は、水中アンテナ21と水中アンテナ22との間で水中を伝播する。
【0016】
水中アンテナ21の導体素子25は、水中無線通信装置で使用される電波の波長の半分の長さを、水の比誘電率の1/2乗で割り算して得られた長さを有する。すなわち、50~500MHzの帯域から選択された電波の周波数をfR[Hz]、電波の波長をλR[m]、水の比誘電率をεRとすると、水中アンテナ21の導体素子25の長さLW[m]は、次の式で表される。
λR=300×108/fR
LW=(λR/2)/(εR)1/2
ここで、水の比誘電率εRは、水中アンテナ21および水中アンテナ22が浸漬される水の温度と、使用される電波の周波数fRに依存して変わる値を有する。言い換えれば、水の温度と、電波の周波数fRが分かれば、水の比誘電率εRは一意に定まる。
【0017】
図2に示すように、フォールデッドダイポールアンテナである水中アンテナ21の導体素子25は、上記式から算定される長さL
Wを有する。水中アンテナ22の導体素子も同じ長さを有している。このような長さの導体素子を持つ水中アンテナ21および水中アンテナ22は、水中を伝播する電波を感度よく送受信することができる。したがって、水中での無線通信が実現される。
【0018】
50~500MHzの帯域から選択された電波によってホスト装置1と水中装置2との間で送受信される信号は、アナログ信号であってもよいし、またはデジタル信号であってもよい。
【0019】
図3乃至
図5に示すように、水中アンテナ21,22の導体素子が上記式から算定される長さL
Wを有するのであれば、水中アンテナ21,22は、逆F形式アンテナ(
図3参照)、またはマイクロストリップアンテナ(
図4参照)、またはスロットアンテナ(
図5参照)であってもよい。
【0020】
次に、水中アンテナ21および水中アンテナ22を用いて、水中での電波の送受信を行った実験について
図6を参照して説明する。この実験では、水中装置2は、金属製の水槽30内の水中に配置されたVHF撮像装置であり、水中ロボット33に取り付けられている。水槽30の上部開口は、蓋35により閉じられている。ホスト装置1は、水槽30外に配置されたVHFチューナー38および映像表示装置40を有している。水中アンテナ21および水中アンテナ22は、水槽30内の水中に配置されている。水中アンテナ21および水中アンテナ22は、100MHzの電波を送受信するように設計されたフォールデッドダイポールアンテナである。
【0021】
VHF撮像装置である水中装置2は、水中の物体41の映像を生成し、映像を電波に変換し、電波を水中アンテナ22から発信する。電波の周波数は、97.250MHz(VHF:2ch)である。電波は、水槽30内の水中を伝播し、ホスト装置1の水中アンテナ21によって受信される。水中ロボット33のコントローラ43は、水槽30外にある。水中ロボット33の操縦用電波の周波数は40MHzである。水中ロボット33の操縦用電波も水中アンテナ22により受信される。
【0022】
実験の結果、水中装置2から送られてきた物体41の映像が、ホスト装置1の映像表示装置40に表示されたことが確認できた。したがって、この実験から、水中アンテナ21および水中アンテナ22により電波を水中で送受信できることが実証された。加えて、100MHz用の水中アンテナ22を用いて、40MHzの電波で水中ロボット33を操縦できることも確認できた。
【0023】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0024】
1 ホスト装置
2 水中装置
5 発振器
6 変調器
7 増幅器
8 防水ケーシング
12 チューナー
13 増幅器
14 復調器
15 防水ケーシング
17 船舶
18 推進装置
21 水中アンテナ
22 水中アンテナ
25 導体素子
26 給電点
30 水槽
33 水中ロボット
35 蓋
38 VHFチューナー
40 映像表示装置
41 物体