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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155552
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】航空機
(51)【国際特許分類】
   B64B 1/60 20060101AFI20231016BHJP
   B64B 1/24 20060101ALI20231016BHJP
   B64B 1/22 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
B64B1/60
B64B1/24
B64B1/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064941
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】能見 基彦
(57)【要約】
【課題】小さな面積の発着場で離陸および着陸することができる航空機を提供する。
【解決手段】航空機は、機体1と、空気よりも比重が小さい気体が充填された複数の気嚢2,3と、機体1または気嚢2,3に取り付けられた推進力発生装置5と、複数の気嚢2,3を傾動可能に機体1にそれぞれ連結する複数の連結機構7,8と、複数の気嚢2,3を機体1に対してそれぞれ傾動させる複数のアクチュエータ11,12を備える。複数の連結機構7,8は、複数の気嚢2,3が水平方向に対して上方または下方に傾くことを許容する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
空気よりも比重が小さい気体が充填された複数の気嚢と、
前記機体または前記気嚢に取り付けられた推進力発生装置と、
前記複数の気嚢を傾動可能に前記機体にそれぞれ連結する複数の連結機構と、
前記複数の気嚢を前記機体に対してそれぞれ傾動させる複数のアクチュエータを備え、
前記複数の連結機構は、前記複数の気嚢が水平方向に対して上方または下方に傾くことを許容する、航空機。
【請求項2】
前記機体は、前記複数の気嚢の間に配置されている、請求項1に記載の航空機。
【請求項3】
前記複数のアクチュエータは、前記複数の気嚢を同期して傾動させるように構成されている、請求項1に記載の航空機。
【請求項4】
前記複数の気嚢は、前記航空機の進行方向において、前記機体の前方および後方に配置された前方気嚢および後方気嚢を含む、請求項1に記載の航空機。
【請求項5】
前記複数の気嚢は、前記機体の両側に配置された複数の翼型気嚢を含む、請求項1に記載の航空機。
【請求項6】
前記機体は、乗員が収容されるキャビンを含む、請求項1に記載の航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有人航空機、無人航空機などの航空機に関し、特に気嚢を有する航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
空飛ぶ自動車や有人ドローンが社会に実装されつつあるが、多くのタイプは電動のマルチロータータイプであり、バッテリー切れ、故障あるいはローター回転系の故障により、墜落に至る。これに対し、飛行船のように浮力で飛行するタイプの航空機は、バッテリー切れ、あるいは機器の故障が発生しても直ちに墜落することはない。したがって、飛行船タイプの航空機は、都市部での飛行において、地上の人や建造物等に対しては安全性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-90741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、浮力で飛行する航空機は、気嚢部の体積が極めて大であり、離着陸する飛行場は大きな面積を要するという欠点を持つ。
【0005】
そこで、本発明は、小さな面積の発着場で離陸および着陸することができる航空機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、機体と、空気よりも比重が小さい気体が充填された複数の気嚢と、前記機体または前記気嚢に取り付けられた推進力発生装置と、前記複数の気嚢を傾動可能に前記機体にそれぞれ連結する複数の連結機構と、前記複数の気嚢を前記機体に対してそれぞれ傾動させる複数のアクチュエータを備え、前記複数の連結機構は、前記複数の気嚢が水平方向に対して上方または下方に傾くことを許容する、航空機が提供される。
【0007】
一態様では、前記機体は、前記複数の気嚢の間に配置されている。
一態様では、前記複数のアクチュエータは、前記複数の気嚢を同期して傾動させるように構成されている。
一態様では、前記複数の気嚢は、前記航空機の進行方向において、前記機体の前方および後方に配置された前方気嚢および後方気嚢を含む。
一態様では、前記複数の気嚢は、前記機体の両側に配置された複数の翼型気嚢を含む。
一態様では、前記機体は、乗員が収容されるキャビンを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、気嚢を上方または下方に傾動させることにより、航空機の地上投影面積を小さくすることができる。したがって、航空機は、小さな面積の発着場で離陸および着陸することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】航空機の一実施形態を示す側面図である。
図2】前方気嚢および後方気嚢が上方に傾いた状態を示す図である。
図3】航空機の他の実施形態を示す上面図である。
図4】航空機の他の実施形態を示す上面図である。
図5】航空機の他の実施形態を示す上面図である。
図6図5に示す航空機の正面図である。
図7】翼型気嚢が上方に傾いた状態を示す図である。
図8】航空機の他の実施形態を示す上面図である。
図9】航空機の他の実施形態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、航空機の一実施形態を示す側面図である。図1に示すように、本実施形態の航空機は、機体1と、空気よりも比重が小さい気体が充填された前方気嚢2および後方気嚢3と、機体1に推進力を与える推進力発生装置5と、前方気嚢2を傾動可能に機体1に連結する前方連結機構7と、後方気嚢3を傾動可能に機体1に連結する後方連結機構8と、前方気嚢2および後方気嚢3を機体1に対して傾動させる前方アクチュエータ11および後方アクチュエータ12を備えている。
【0011】
前方気嚢2および後方気嚢3内に充填される気体は、航空機の全体を空中に浮揚させるための浮揚ガスである。浮揚ガスの例としては、ヘリウムガス、水素ガスなどが挙げられる。前方気嚢2および後方気嚢3は、その内部に密閉空間を形成し、ヘリウムガスなどの気体は密閉空間内に充填される。前方気嚢2および後方気嚢3の材料および構造は、特に限定されないが、飛行船に使用される気嚢と同じ材料および同じ構造を使用することができる。前方気嚢2および後方気嚢3は、航空機の全体を空中に浮揚させるのに十分な内部容量を有している。一実施形態では、前方気嚢2および後方気嚢3のそれぞれは、フレームを持つ硬式気嚢である。さらに、一実施形態では、機体1も、内部に浮揚ガスが充填された気嚢から構成されてもよい。
【0012】
前方気嚢2は、航空機の進行方向において、機体1の前方に配置されており、後方気嚢3は、航空機の進行方向において、機体1の後方に配置されている。後方気嚢3には尾翼9が取り付けられている。推進力発生装置5は、回転アクチュエータ16を介して機体1の側面に連結されている。図1では1つの推進力発生装置5のみが描かれているが、機体1の両側に2つの推進力発生装置5が設けられている。各推進力発生装置5は、プロペラ19と、該プロペラ19を回転させる電動機などの回転装置(図示せず)を有しており、プロペラ19を回転させることにより推進力を発生させるように構成されている。
【0013】
各推進力発生装置5は、回転アクチュエータ16に取り付けられ、回転アクチュエータ16は機体1の側面に固定されている。回転アクチュエータ16は推進力発生装置5の全体を回転させることで、推進力発生装置5の向きを変更できるように構成されている。すなわち、図1に示すように、回転アクチュエータ16が推進力発生装置5を水平方向に向けると、航空機は水平に飛行することができる。後述するように、回転アクチュエータ16が推進力発生装置5を鉛直方向に向けると、航空機は上昇または下降することができる。
【0014】
本実施形態では、推進力発生装置5および回転アクチュエータ16は機体1に取り付けられているが、一実施形態では、推進力発生装置5および回転アクチュエータ16は、航空機が水平飛行および上昇下降ができる限りにおいて、前方気嚢2および/または後方気嚢3に取り付けられてもよい。
【0015】
図2は、前方気嚢2および後方気嚢3が上方に傾いた状態を示す図である。図2に示すように、前方連結機構7は、前方気嚢2が水平方向に対して上方に傾くことを許容するように構成され、後方連結機構8も、後方気嚢3が水平方向に対して上方に傾くことを許容するように構成されている。より具体的には、前方連結機構7および後方連結機構8は、前方気嚢2および後方気嚢3が、水平姿勢から鉛直姿勢に傾動することを許容する。前方連結機構7および後方連結機構8は、ヒンジなどを備えている。
【0016】
前方アクチュエータ11は、前方気嚢2または前方連結機構7に連結され、後方アクチュエータ12は、後方気嚢3または後方連結機構8に連結されている。前方アクチュエータ11および後方アクチュエータ12の例としては、電動機、油圧モータ、油圧シリンダ、および空気圧シリンダが挙げられる。航空機は前方気嚢2および後方気嚢3の浮力により落下する懸念はないため、前方気嚢2および後方気嚢3を高速で傾動させる必要はない。したがって、前方アクチュエータ11および後方アクチュエータ12は前方気嚢2および後方気嚢3を傾動させるのに十分な力を発生できればよい。
【0017】
前方連結機構7および前方アクチュエータ11は、機体1の前側の上部に固定されており、後方連結機構8および後方アクチュエータ12は、機体1の後側の上部に固定されている。前方アクチュエータ11は、前方気嚢2を前方連結機構7を中心に所定の角度(例えば90度)で回転させることにより、前方気嚢2の姿勢を水平姿勢と鉛直姿勢との間で変更することが可能である。同様に、後方アクチュエータ12は、後方気嚢3を後方連結機構8を中心に所定の角度(例えば90度)で回転させることにより、後方気嚢3の姿勢を水平姿勢と鉛直姿勢との間で変更することが可能である。
【0018】
機体1は、前方気嚢2と後方気嚢3の間に配置されている。機体1は、ペイロード(乗員や貨物、搭載機器等)を格納する。より具体的には、機体1は、乗員が収容されるキャビン22を有している。ペイロードを収納する機体1をなるべく軽量化するため、機体1は軽金属(例えばアルミニウム)、硬質樹脂、紙、木などから構成されてもよい。
【0019】
航空機が空中を飛行するときは、図1に示すように、前方気嚢2および後方気嚢3は水平姿勢である。本実施形態の航空機は、前方気嚢2および後方気嚢3によって浮力が付与され、空中に係留することができる。したがって、本実施形態の航空機は、一般的な飛行機とは異なり、前進することにより揚力を生じさせる必要がない。仮に推進力発生装置5が故障しても、本実施形態の航空機は墜落することがない。また、本実施形態の航空機は、前進のみならず、後進することも可能である。
【0020】
航空機が離陸および着陸するときは、図2に示すように、前方気嚢2および後方気嚢3は上方に傾く。したがって、航空機の地上投影面積を小さくすることができ、航空機は、小さな面積の発着場で離陸および着陸することができる。
【0021】
航空機の姿勢を安定させるために、ペイロードを格納する機体1は航空機の重心位置にある。さらに、前方気嚢2および後方気嚢3を傾動させる間も航空機の姿勢を安定さるために、前方アクチュエータ11および後方アクチュエータ12は、前方気嚢2および後方気嚢3を同期して傾動させ、機体1が常に航空機の重心に位置するようにする。
【0022】
本実施形態では、2つの気嚢、すなわち前方気嚢2と後方気嚢3が設けられているが、3つ以上の気嚢が設けられてもよい。
【0023】
図1および図2では、乗員が収容されるキャビン22は機体1の上部に設けられているが、一実施形態では、図3に示すように、キャビン22は機体1の内部に設けられてもよい。さらに、一実施形態では、図4に示すように、キャビン22は機体1の下部に設けられてもよい。
【0024】
図5は、航空機の一実施形態を示す上面図であり、図6は、図5に示す航空機の正面図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図1および図2を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0025】
図5および図6に示すように、本実施形態の航空機は、機体1の両側に配置された2つの翼型気嚢31と、これら翼型気嚢31を傾動可能に機体1に連結する2つの連結機構35と、翼型気嚢31を機体1に対して傾動させる2つのアクチュエータ38を備えている。機体1は、2つの翼型気嚢31の間に配置されている。連結機構35は、上述した前方連結機構7および後方連結機構8と同じ構成を有し、アクチュエータ38は、上述した前方アクチュエータ11および後方アクチュエータ12と同じ構成を有している。推進力発生装置5および回転アクチュエータ16は、機体1の後部に配置されている。一実施形態では、推進力発生装置5および回転アクチュエータ16は、機体1の前部、側部、下部、または上部に設けられてもよい。
【0026】
翼型気嚢31は、航空機の全体を空中に浮揚させるのに十分な内部容量を有している。一実施形態では、3つ以上の翼型気嚢31、3つ以上の連結機構35、3つ以上のアクチュエータ38が設けられてもよい。例えば、前方の一対の翼型気嚢と、後方の一対の翼型気嚢が設けられてもよい。さらに、一実施形態では、機体1も、内部に浮揚ガスが充填された気嚢から構成されてもよい。
【0027】
翼型気嚢31は、翼の形状を有しているので、航空機が前進するときに揚力を発生させることができる。ただし、翼型気嚢31内に封入されている浮揚ガスが浮力を発生させるため、翼型気嚢31によって発生される揚力は小さくてよい。本実施形態によれば、航空機が飛行時に浮力と揚力を使うことにより高度の調整範囲が広がる。本実施形態の航空機は、前進のみならず、後進することも可能である。翼型気嚢31に通常の航空機の翼に敷設されるフラップ等の高揚力装置をつけてもよい。
【0028】
図7は、翼型気嚢31が上方に傾いた状態を示す図である。図7に示すように、航空機が離陸および着陸するときは、両方の翼型気嚢31は上方に傾く。したがって、航空機の地上投影面積を小さくすることができ、航空機は、小さな面積の発着場で離陸および着陸することができる。
【0029】
本実施形態では、推進力発生装置5および回転アクチュエータ16は機体1に取り付けられているが、一実施形態では、推進力発生装置5および回転アクチュエータ16は、航空機が水平飛行および上昇下降ができる限りにおいて、翼型気嚢31に取り付けられてもよい。
【0030】
図5乃至図7では、乗員が収容されるキャビン22は機体1の上部に設けられているが、一実施形態では、図8に示すように、キャビン22は機体1の内部に設けられてもよい。さらに、一実施形態では、図9に示すように、キャビン22は機体1の下部に設けられてもよい。
【0031】
今まで説明した実施形態では、気嚢は水平方向に対して上方に傾くように構成されているが、気嚢は水平方向に対して下方に傾いても航空機の地上投影面積を小さくすることができる。また、上述した各実施形態の航空機は、有人航空機のみならず、無人航空機にも適用することが可能である。
【0032】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0033】
1 機体
2 前方気嚢
3 後方気嚢
5 推進力発生装置
7 前方連結機構
8 後方連結機構
9 尾翼
11 前方アクチュエータ
12 後方アクチュエータ
16 回転アクチュエータ
19 プロペラ
22 キャビン
31 翼型気嚢
35 連結機構
38 アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9