(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155556
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】ドローン用の空中給電システム
(51)【国際特許分類】
B64F 1/36 20170101AFI20231016BHJP
B64F 1/12 20060101ALI20231016BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20231016BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20231016BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20231016BHJP
B61B 7/06 20060101ALI20231016BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231016BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20231016BHJP
【FI】
B64F1/36
B64F1/12
B64D27/24
B64C27/08
B64C39/02
B61B7/06
H02J7/00 301D
H02J7/00 301B
H02J50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064946
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】能見 基彦
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA04
5G503BB01
5G503FA03
5G503GB08
(57)【要約】
【課題】ドローンが空中で給電することができ、給電のためにドローンが地上に帰投することを不要とすることができる空中給電システムを提供する。
【解決手段】空中給電システムは、交流電力が流れる電力ケーブル1と、電力ケーブル1に沿って移動可能な可動給電装置2を備える。可動給電装置2は、電力ケーブル1を囲むように延びるコイル5と、コイル5に電気的に接続された、ドローン100用の給電端子7,8を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力が流れる電力ケーブルと、
前記電力ケーブルに沿って移動可能な可動給電装置を備え、
前記可動給電装置は、
前記電力ケーブルを囲むように延びるコイルと、
前記コイルに電気的に接続された、ドローン用の給電端子を備えている、空中給電システム。
【請求項2】
前記可動給電装置は、前記コイルおよび前記給電端子を支持するハウジングと、前記ドローンの発着場をさらに備え、
前記給電端子は、前記発着場に設置されている、請求項1に記載の空中給電システム。
【請求項3】
前記可動給電装置は、前記電力ケーブルに支持され、前記電力ケーブル上を転がり移動可能な回転体をさらに備えている、請求項1に記載の空中給電システム。
【請求項4】
前記可動給電装置は、前記可動給電装置を前記電力ケーブル上で移動させるための推進力を発生させる推進力発生装置をさらに備えている、請求項1に記載の空中給電システム。
【請求項5】
前記可動給電装置は、前記コイルに接続された整流装置をさらに備え、
前記給電端子は、前記整流装置を経由して前記コイルに接続されている、請求項1に記載の空中給電システム。
【請求項6】
前記コイルは、直列に接続された複数のコイルである、請求項1に記載の空中給電システム。
【請求項7】
前記コイルは、並列に接続された複数のコイルである、請求項1に記載の空中給電システム。
【請求項8】
前記電力ケーブルは、単線の電力ケーブルである、請求項1に記載の空中給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中を移動するための無人ドローンおよび/または有人ドローンに空中で給電するための空中給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空中を移動することができるドローンは、様々な分野で活用されている。例えば、空中から広範囲に亘る領域を撮影する用途、荷物を搬送する用途、風速、圧力、温度、微粒子濃度などの物理量または化学量を計測する用途などに使用されている。さらには、人を運搬する有人ドローンの開発も進められている。このように、ドローンは今後ますます様々な用途および目的で使用されることが予想されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドローンは、通常、バッテリーを搭載しており、バッテリーから供給される電力でプロペラを回転させることで推進力を発生する。ドローンの飛行時間は、バッテリーの蓄電量に依存する。すなわち、ドローンはバッテリーに電力がある限り飛行を継続することができる。その一方で、バッテリー内の電力が消費されると、ドローンは飛行することができず、墜落する危険性がある。したがって、バッテリー内の蓄電量が0になる前に、ドローンは地上に帰投する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、ドローンが空中で給電することができ、給電のためにドローンが地上に帰投することを不要とすることができる空中給電システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、交流電力が流れる電力ケーブルと、前記電力ケーブルに沿って移動可能な可動給電装置を備え、前記可動給電装置は、前記電力ケーブルを囲むように延びるコイルと、前記コイルに電気的に接続された、ドローン用の給電端子を備えている、空中給電システムが提供される。
【0007】
一態様では、前記可動給電装置は、前記コイルおよび前記給電端子を支持するハウジングと、前記ドローンの発着場をさらに備え、前記給電端子は、前記発着場に設置されている。
一態様では、前記可動給電装置は、前記電力ケーブルに支持され、前記電力ケーブル上を転がり移動可能な回転体をさらに備えている。
一態様では、前記可動給電装置は、前記可動給電装置を前記電力ケーブル上で移動させるための推進力を発生させる推進力発生装置をさらに備えている。
一態様では、前記可動給電装置は、前記コイルに接続された整流装置をさらに備え、前記給電端子は、前記整流装置を経由して前記コイルに接続されている。
一態様では、前記コイルは、直列に接続された複数のコイルである。
一態様では、前記コイルは、並列に接続された複数のコイルである。
一態様では、前記電力ケーブルは、単線の電力ケーブルである。
【発明の効果】
【0008】
電力ケーブルに交流電力が流れると、アンペールの法則により電力ケーブルの周りに磁場が生じる。この磁場は交番的に変化し、電力ケーブルを囲むコイルに電磁誘導が起こり、コイルに起電力が発生する。したがって、本発明によれば、コイルに接続された給電端子からドローンに電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】空中給電システムの一実施形態を示す模式図である。
【
図2】可動給電装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図3】可動給電装置の他の実施形態を示す模式図である。
【
図4】可動給電装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。
【
図5】可動給電装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。
【
図6】可動給電装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。
【
図7】可動給電装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。
【
図8】可動給電装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。
【
図9】可動給電装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。
【
図10】空中給電システムの他の実施形態を示す模式図である。
【
図11】空中給電システムのさらに他の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、空中給電システムの一実施形態を示す模式図である。
図1に示すように、空中給電システムは、交流電力が流れる電力ケーブル1と、電力ケーブル1に沿って移動可能な可動給電装置2を備えている。電力ケーブル1は、図示しない鉄塔または気球などにより空中に架設された電力線であり、例えば商用電源から供給される交流電力が流れている。電力ケーブル1は、単線の電力ケーブルである。電力ケーブル1の例としては、被覆電線が挙げられる。
【0011】
可動給電装置2は、電力ケーブル1に支持されており、電力ケーブル1上を移動可能である。可動給電装置2は、電力ケーブル1を囲むように延びるコイル5と、コイル5に配線21,22により電気的に接続された、ドローン100用の給電端子7,8を備えている。コイル5の全体の形状は特に限定されないが、例えば、
図1に示すように、コイル5は環状であり、電力ケーブル1はコイル5の内側を通って延びている。コイル5は、電力ケーブル1との摩擦を防ぐために非接触であるが、コイル5が耐摩耗性を有していれば、電力ケーブル1に接触してもよい。
【0012】
可動給電装置2は、コイル5および給電端子7,8を支持するハウジング11をさらに備えている。より具体的には、コイル5はハウジング11内に収容されており、給電端子7,8はハウジング11の外面に取り付けられている。可動給電装置2は、電力ケーブル1上を転がり移動可能な回転体14をさらに備えている。回転体14の例としては、プーリー、ローラーなどが挙げられる。回転体14は、ブラケット17に回転可能に保持されており、ブラケット17はハウジング11に固定されている。回転体14は、電力ケーブル1に支持されており、電力ケーブル1上を転がり接触する。したがって、可動給電装置2の全体は、電力ケーブル1上を移動することが可能である。
【0013】
可動給電装置2は、コイル5に接続された整流装置20をさらに備えている。この整流装置20は、交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換器である。給電端子7,8は、配線21,22により整流装置20に接続されている。すなわち、給電端子7,8は、整流装置20を経由してコイル5に電気的に接続されている。
【0014】
電力ケーブル1に交流電力が流れると、アンペールの法則により電力ケーブル1の周りに交番的に変化する磁場が生じる。この磁場の交番的な変化は、電力ケーブル1を囲むコイル5に電磁誘導を起こし、コイル5に起電力が発生する。コイル5に発生した交流電力は、整流装置20により直流電力に変換され、配線21,22を通じて給電端子7,8に流れる。
【0015】
可動給電装置2は、ドローン100の発着場25を有している。空中を飛行するドローン100は、発着場25に着地することができ、さらに発着場25から空中に飛び立つことができる。給電端子7,8は、発着場25に設置されている。したがって、ドローン100が発着場25に停留しているときに、ドローン100の電気端子を給電端子7,8に電気的に接続することにより、可動給電装置2はドローン100に電力を供給することができる。
【0016】
図1に示す実施形態では、発着場25は、ハウジング11の上面から構成されており、ドローン100は、ハウジング11の上面の発着場25で発着することができる。一実施形態では、発着場25は、ハウジング11から下方に吊り下げられてもよい。その場合は、給電端子7,8はハウジング11の下方に設けられる。
【0017】
図1に示す実施形態によれば、ドローン100は、バッテリー充電のために地上に帰投する必要がない。また、可動給電装置2は空中に存在しているので、ドローン100の発着のためのスペースを地上に確保する必要がない。さらに、バッテリー充電のためにドローン100が地上に着陸する必要がなくなり、かつドローン100が再度高い高度まで上昇する必要がなくなるので、結果として、ドローン100の消費電力を削減することができる。
【0018】
一実施形態では、
図2に示すように、複数のコイル5を直列に接続し、高い電圧を得るようにしてもよい。他の実施形態では、
図3に示すように、複数のコイル5を並列に接続し、大きい電流を得るようにしてもよい。
【0019】
図4乃至
図6に示すように、可動給電装置2は、ドローン100自身の推進力を利用して、電力ケーブル1上を移動してもよい。
図4に示す実施形態では、ドローン100は可動給電装置2にフレキシブルカップリング30で連結されながら、給電端子7,8に電気的に接続される。
図5に示す実施形態では、ドローン100は可動給電装置2に牽引配線ケーブル31を介して給電端子7,8に電気的に接続される。
図6に示す実施形態では、給電端子7,8は異なる高さに配置されており、これら給電端子7,8に接続されたドローン100は傾く。
【0020】
図4乃至
図6に示す実施形態によれば、ドローン100はいずれも傾いた状態で、可動給電装置2に連結される。したがって、ドローン100の推進力により、可動給電装置2はドローン100とともに電力ケーブル1上を矢印で示す方向に移動することができる。また、ドローン100が傾いた状態で発生される推進力は、可動給電装置2を電力ケーブル1に沿って移動させるのみならず、ドローン100および可動給電装置2を上方に持ち上げる作用をするので、電力ケーブル1への荷重を低減させることができる。
図4乃至
図6に示す実施形態において、一実施形態では、一本の同軸ケーブルでドローン100を可動給電装置2に連結してもよい。
【0021】
図7に示すように、可動給電装置2は、コイル5に誘起された電力を蓄えるバッテリー35を有してもよい。
図7に示す実施形態では、バッテリー35は整流装置20に接続され、さらに配線21,22を通じて給電端子7,8に接続されている。本実施形態によれば、バッテリー35からドローン100に安定的に電力を供給することができる。
【0022】
図8および
図9は、可動給電装置2の他の実施形態を示す模式図である。
図1乃至
図3を参照した説明は、
図8および
図9に示す実施形態にも適用できるので、その重複する説明を省略する。
図8および
図9に示す実施形態では、可動給電装置2は、可動給電装置2が電力ケーブル1上を移動するための推進力を発生させる推進力発生装置40を備えている。
【0023】
図8に示す推進力発生装置40は、ハウジング11の外部に配置されたプロペラ41と、プロペラ41を回転させるための電動機42を備えている。プロペラ41の位置は特に限定されず、例えば、ハウジング11の前側、後側、下側、上側、または側方であってもよい。この実施形態では、電動機42はバッテリー35に接続されており、バッテリー35は整流装置20および給電端子7,8に接続されている。電動機42は整流装置20に直接接続されてもよい。
【0024】
図9に示す推進力発生装置40は、電動機44と、電動機44のトルクを回転体14(例えばプーリー)に伝えるトルク伝達装置45を備えている。この実施形態では、トルク伝達装置45は、ベルトとプーリーの組み合わせであるが、トルク伝達装置45はギヤの組み合わせであってもよい。この実施形態でも、電動機44はバッテリー35に接続されており、バッテリー35は整流装置20および給電端子7,8に接続されている。電動機44は整流装置20に直接接続されてもよい。
【0025】
図8および
図9に示す実施形態によれば、推進力発生装置40により可動給電装置2は電力ケーブル1上を自由に移動することができる。例えば、推進力発生装置40は、ドローン100に給電しながら、ドローン100を搬送することができる。
【0026】
図10は、複数の電力ケーブル1を含む電力網60と、これら電力ケーブル1上に支持された複数の可動給電装置2を含む空中給電システムの一実施形態を示す模式図である。複数の電力ケーブル1は、複数の鉄塔50により支持されており、都市部の上方に電力網60が構築されている。可動給電装置2は、これら電力網60を構成する電力ケーブル1上を移動することにより、広い領域で複数のドローン100に発着場を提供し、かつ複数のドローン100に給電することができる。鉄塔50と電力ケーブル1は、複線化やロープウェイの端部と類似したUターン部、鉄道と類似した転車機構やポイント、一つの鉄塔から二つ以上の鉄塔に接続する分岐などがあってもよい。
【0027】
図11に示すように、一実施形態では、鉄塔50に代えて、気球55により複数の電力ケーブル1を含む電力網60を空中で支持してもよい。
【0028】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0029】
1 電力ケーブル
2 可動給電装置
5 コイル
7,8 給電端子
11 ハウジング
14 回転体
17 ブラケット
20 整流装置
21,22 配線
25 発着場
30 フレキシブルカップリング
31 牽引配線ケーブル
35 バッテリー
40 推進力発生装置
41 プロペラ
42 電動機
44 電動機
45 トルク伝達装置
50 鉄塔
55 気球
60 電力網
100 ドローン