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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155601
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】ウレタンプレポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/40 20060101AFI20231016BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20231016BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20231016BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20231016BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20231016BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20231016BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
C08G18/40 009
C08G18/10
C08G18/48 066
C08G18/73
C08G18/75
C09J175/08
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065019
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清水 義久
(72)【発明者】
【氏名】山本 敏秀
【テーマコード(参考)】
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DF01
4J034DF02
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG06
4J034DG23
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HA08
4J034HA13
4J034HA15
4J034HB05
4J034HB06
4J034HB07
4J034HB08
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC33
4J034HC34
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC53
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA44
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC13
4J034KC16
4J034KC35
4J034KD01
4J034KD04
4J034KD08
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QA07
4J034QB03
4J034QB10
4J034QB14
4J034QC03
4J034QC08
4J034RA02
4J034RA03
4J034RA05
4J034RA06
4J034RA08
4J034RA10
4J034RA12
4J034RA13
4J034RA14
4J034RA15
4J040EF131
4J040JA09
4J040JB09
4J040LA01
4J040NA22
(57)【要約】
【課題】凝集力が高く、且つ柔軟性と耐寒性が顕著に良好なポリウレタンの形成に資するウレタンプレポリマー組成物、該ウレタンプレポリマー組成物を用いて得られるウレタン硬化物、該ポリウレタンからなるウレタン粘着剤シートを提供する。
【解決手段】
水酸基末端のウレタンプレポリマー(E)とポリアルキレンオキシド(B)を含むウレタンプレポリマー組成物(G)であって、ウレタンプレポリマー(E)が、ポリオールとポリイソシアネート(C)の反応物であり、1分子中に少なくとも一つのウレタン基と少なくとも一つの水酸基を有し、
ポリアルキレンオキシド(B)が3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)を含み、不飽和度が0.020meq/g未満で、数平均分子量が7万未満、且つポリアルキレンオキシド(B)の含有量が1~79重量%の範囲である、ウレタンプレポリマー組成物(G)
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基末端のウレタンプレポリマー(E)とポリアルキレンオキシド(B)を含むウレタンプレポリマー組成物(G)であって、
ウレタンプレポリマー(E)が、ポリオールとポリイソシアネート(C)の反応物であり、1分子中に少なくとも一つのウレタン基と少なくとも一つの水酸基を有し、
ポリアルキレンオキシド(B)が3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)を含み、
ウレタンプレポリマー組成物(G)の不飽和度が0.020meq/g未満で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により算出した数平均分子量が7万未満、且つウレタンプレポリマー組成物中のポリアルキレンオキシド(B)の含有量が1~79重量%の範囲である、ウレタンプレポリマー組成物(G)。
【請求項2】
ウレタンプレポリマー(E)がゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により算出した分子量分布が1.50未満である、請求項1に記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
【請求項3】
ポリアルキレンオキシド(B)が、水酸基価より算出した分子量が700以上30000以下である、請求項1に記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
【請求項4】
ポリアルキレンオキシド(B)が、不飽和度0.070meq/g未満である、請求項1に記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
【請求項5】
不揮発分濃度が80~100重量%の範囲であり、25℃における粘度が0.1~30Pa・sの範囲である、請求項1に記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
【請求項6】
ウレタンプレポリマー(E)中に、アルキレンオキシド残基を90~99.9重量%の範囲、且つポリイソシアネート残基を0.1~10重量%の範囲、且つ不飽和基を0.03重量%以下の範囲で含む、請求項1に記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
【請求項7】
ウレタンプレポリマー(E)を形成するポリオールが、不飽和度0.010meq/g未満で且つ水酸基価より算出した数平均分子量が3000~10000の範囲である2官能のポリアルキレンオキシド(A)を含む、請求項1に記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
【請求項8】
ウレタンプレポリマー(E)を形成する、全ポリオールの平均官能基数faveが1.85~2.20の範囲である、請求項1に記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
【請求項9】
ウレタンプレポリマー(E)を形成するポリアルキレンオキシド(A)が1級の水酸基を含む、請求項7に記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
【請求項10】
ポリイソシアネート(C)が脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、それらの変性体のいずれかを含み、ウレタンプレポリマー(E)を形成する、全ポリイソシアネートの平均官能基数faveが1.90~2.79の範囲である、請求項1に記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
【請求項11】
ケトエノール互変異性化合物(D)を0.01~1.0重量%の範囲で含む、請求項1に記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物(G)とイソシアネート化合物(F)とを含むウレタン形成性組成物(H)。
【請求項13】
請求項12に記載のウレタン形成性組成物(H)の反応物を含むウレタン硬化物(I)。
【請求項14】
請求項13に記載のウレタン硬化物(I)を含むウレタン粘着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウレタンプレポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤は、例えば、テープ、ラベル、シール、化粧用シート、滑り止めシート、両面粘着テープ等に用いられており、近年ではパソコン、テレビ、携帯電話等の液晶ディスプレイやタッチパネルの密着等の様々な分野で使用されている。
【0003】
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オキシアルキレン系粘着剤等が知られており、特に最近は、強い粘着力を有する強粘着型粘着剤から、微小な粘着力を有する微粘着型粘着剤まで広範囲の用途にアクリル系粘着剤が使用される傾向がある。
【0004】
しかしながら、アクリル系粘着剤は、アクリルモノマーが粘着剤中に残存する場合に、臭気や皮膚刺激性、基材の汚染が問題となる。またアクリル系粘着剤は、被着体に貼付した後、経時変化によって、粘着力が上昇したり移行性が高くなる傾向がある。このため被着体に糊残りが生じ易く、再剥離性が不充分になりやすいという問題がある。また、アクリル系粘着剤では、凝集力を発現するためガラス転移温度が高いコモノマーを使用することから低温での耐衝撃性が不足し耐寒性に劣るといった問題があった。
【0005】
これに対し、ウレタン系粘着剤は、アクリル粘着剤に比べて分子量が小さく、被着体の形状変化に容易に追従できる長所を有している。
【0006】
一方、片末端に不飽和基を有する副生モノオール(以下、不飽和モノオールと記す)を多量に含むポリアルキレンオキシドやそれを用いたウレタンプレポリマーが、ポリウレタンの原料として用いられている。しかしながら、このような不飽和モノオールを多量に含むポリアルキレンオキシドやそれを用いたウレタンプレポリマーはイソシアネート化合物との反応に伴う硬化(固化)に時間を要して生産性が損なわれるという問題が生じる。
【0007】
特許文献1では、分子量分布が狭く、不飽和モノオールが顕著に少ないポリアルキレンオキシドを用いた粘度が低くハンドリング性に優れ、ウレタン粘着剤を製造する際の硬化性が高いウレタン形成性組成物、並びにそのプレポリマーを開示している。これらのポリアルキレンオキシドを用いることで不飽和モノオールを多量に含むポリアルキレンオキシドが抱える硬化性の課題が改善し、再剥離時の耐汚染性が向上する。しかしながら、塗工性の面で一定の粘度を確保し、また低VOC化のために高固形分化したいという要望もあった。
【0008】
特許文献2では、不飽和度がある程度低いポリアルキレンオキシド等のポリオールとイソシアネートからなる固形分濃度が80質量%以上で800~8000mPa・sと一定の粘度を有する水酸基末端のウレタンプレポリマー溶液が開示されている。しかしながら、NCO基末端のウレタンプレポリマーを形成後に2段目に分子量600以下の水酸基量の多い低分子量のポリオール等を付加する2段重合法等により凝集力を付与するため、得られるウレタン硬化物のウレタン基が多くなって粘着剤が硬くなりやすい場合や低分子量のポリオール等の影響でガラス転移点が高くなりやすい場合があり、被着体の形状変化や段差への追従性、ならびに高分子量のポリエーテル骨格の顕著に低いガラス転移点に由来した顕著に良好な低温特性が期待できない設計であり、得られるウレタン粘着剤の粘着力も低いものであった。また、可塑剤を多く含むとともに、低分子量ポリオールが未反応で残存した場合、ブリードする懸念があった。
【0009】
そのため、一定の粘度を有し高固形分化が可能であって、不飽和モノオールが少ないポリアルキレンオキシドを用い、ウレタン硬化物が凝集力、顕著に良好な柔軟性と耐寒性の発現に資するウレタンプレポリマー組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第6891412号公報
【特許文献2】WO2020-230648
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一態様は、凝集力が高く、且つ柔軟性と耐寒性が顕著に良好なポリウレタンの形成に資するウレタンプレポリマー組成物を提供することに向けられている。
【0012】
本発明の他の態様は、該ウレタンプレポリマー組成物を用いて得られるウレタン硬化物を提供することに向けられている。
【0013】
本発明の更に他の態様は、該ポリウレタンからなるポリウレタン粘着剤を提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の組成のプレポリマーと特定のポリオールを特定比率で組み合わせることによって、驚くべきことに適度な粘度で高固形分化が可能であって、顕著に高い柔軟性と耐寒性を発現し、且つ高い凝集力を発現が可能なウレタン硬化物の形成に資するウレタンプレポリマー組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明の各態様は以下に示す[1]~[14]である。
[1]水酸基末端のウレタンプレポリマー(E)とポリアルキレンオキシド(B)を含むウレタンプレポリマー組成物(G)であって、
ウレタンプレポリマー(E)が、ポリオールとポリイソシアネート(C)の反応物であり、1分子中に少なくとも一つのウレタン基と少なくとも一つの水酸基を有し、
ポリアルキレンオキシド(B)が3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)を含み、
ウレタンプレポリマー組成物(G)の不飽和度が0.020meq/g未満で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により算出した数平均分子量が7万未満、且つウレタンプレポリマー組成物中のポリアルキレンオキシド(B)の含有量が1~79重量%の範囲である、ウレタンプレポリマー組成物(G)。
[2]ウレタンプレポリマー(E)がゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により算出した分子量分布が1.50未満である、上記[1]に記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
[3]ポリアルキレンオキシド(B)が、水酸基価より算出した分子量が700以上30000以下である、上記[1]又は[2]に記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
[4]ポリアルキレンオキシド(B)が、不飽和度0.070meq/g未満である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
[5]不揮発分濃度が80~100重量%の範囲であり、25℃における粘度が0.1~30Pa・sの範囲である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
[6]ウレタンプレポリマー(E)中に、アルキレンオキシド残基を90~99.9重量%の範囲、且つポリイソシアネート残基を0.1~10重量%の範囲、且つ不飽和基を0.03重量%以下の範囲で含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
[7]ウレタンプレポリマー(E)を形成するポリオールが、不飽和度0.010meq/g未満で且つ水酸基価より算出した数平均分子量が3000~10000の範囲である2官能のポリアルキレンオキシド(A)を含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
[8]ウレタンプレポリマー(E)を形成する、全ポリオールの平均官能基数faveが1.85~2.20の範囲である、上記[1]~[7]のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
[9]ウレタンプレポリマー(E)を形成するポリアルキレンオキシド(A)が1級の水酸基を含む、上記[7]に記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
[10]
ポリイソシアネート(C)が脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、それらの変性体のいずれかを含み、ウレタンプレポリマー(E)を形成する、全ポリイソシアネートの平均官能基数faveが1.90~2.79の範囲である、上記[1]~[9]のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
[11]ケトエノール互変異性化合物(D)を0.01~1.0重量%の範囲で含む、上記[1]~[10]のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物(G)。
[12]
上記[1]乃至[11]のいずれかに記載のウレタンプレポリマー組成物(G)とイソシアネート化合物(F)とを含むウレタン形成性組成物(H)。
[13]
上記[12]に記載のウレタン形成性組成物(H)の反応物を含むウレタン硬化物(I)。
[14]
上記[13]に記載のウレタン硬化物(I)を含むウレタン粘着剤。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様であるウレタンプレポリマー組成物は、一定の粘度で高固形分化できるため低VOC化が可能であり、ポリウレタンを得るために、塗工機などで塗工、乾燥・硬化する際に液流れがしにくく塗工性に優れ、ウレタン化触媒を多量に用いることなく、イソシアネート化合物との反応に伴う硬化(固化)を進めることでの良好な成形性を有し、更に、高透明で凝集力が大きい粘着性のウレタン硬化物を得ることができる。
【0017】
本発明の一態様であるウレタン硬化物は、凝集力や強度に優れ再剥離時における被着体の耐汚染性向上が期待でき、顕著に良好な柔軟性と低温特性を発現するため被着体の動きや形状変化への追従性や顕著に良好な低温特性が期待でき、シーリング材、塗料、粘着剤、接着剤など幅広い用途に好適に使用できる。
【0018】
なかでも、本発明の一態様であるウレタン硬化物を用いたウレタン粘着剤は、適度な粘着力を有し再剥離性、良好なタック性を発現するため、被着体への濡れ性を特長とする再剥離粘着剤として好適に使用することができる。さらには、高透明であり、凝集力と高い柔軟性、低温特性を発現するため、折り曲げや変形、動きへの追従性や印刷段差追従性、低温環境での応用に期待でき、光学用粘着剤や生体用粘着剤として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を実施するための例示的な態様を詳細に説明する。
<ウレタンプレポリマー組成物(G)>
本発明の一態様であるウレタンプレポリマー組成物(G)は、水酸基末端のウレタンプレポリマー(E)とポリアルキレンオキシド(B)を含むウレタンプレポリマー組成物(G)であって、
ポリアルキレンオキシド(B)が3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)を含み、
ウレタンプレポリマー組成物(G)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により算出した数平均分子量が7万未満、且つ不飽和度が0.020meq/g未満で、ウレタンプレポリマー組成物中のポリアルキレンオキシド(B)の含有量が1~79重量%の範囲である。
【0020】
ウレタンプレポリマー組成物(G)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により算出した数平均分子量が7万以上の場合、ウレタン硬化物の凝集力を高めやすいがウレタンプレポリマー合成時にゲル化や不溶分の生成が発生しやすくなって安定的な製造には溶剤での希釈や濃縮が必要となりやすくなるとともに高粘度化やチキソトロピーインデックスが上昇しやすく、一定の粘度やハンドリング性での高固形分化が困難であるため、高固形分化に伴う低VOC化が困難となる。
【0021】
また、ウレタンプレポリマー組成物(G)の不飽和度が0.020meq/g以上である場合、ウレタンプレポリマー(E)やポリアルキレンオキシド(B)中に不飽和基を多量に含むため、ウレタン硬化物の形成時に末端を封止し、低分子量物を形成しやすいため、硬化性が悪く、凝集力が低下して耐汚染性や再剥離性が悪化して使用が困難である。また、それを補うためにウレタン基量や架橋成分を増量した場合には、ウレタン硬化物が硬くなって顕著な柔軟性の発現が困難であるとともに低温特性が悪化しやすくなるため、そのような特性が必要な用途への適応が困難である。
【0022】
また、ウレタンプレポリマー組成物(G)中のポリアルキレンオキシド(B)の重量比率が1重量%を下回る場合やポリアルキレンオキシド(B)に3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)を含まない場合、得られるウレタン硬化物の凝集力が不足して再剥離性が悪化するため使用が困難であり、重量比率が79重量%を上回る場合、得られるウレタン硬化物が安定的に所望の柔軟性を発現せず、またウレタンを硬化する際に不均一に反応が進行しやすく、塗膜外観が悪化しやすくなる場合があるため使用が困難である。
【0023】
ウレタンプレポリマー組成物(G)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により算出した数平均分子量は7万未満であれば特に限定されないが、よりウレタンプレポリマー合成時にゲル化や不溶分の生成が発生しにくく、より製造時の溶剤量や濃縮量を削減でき、低VOC化効果が高いため、数平均分子量は6万未満であることが好ましい。
なかでも、高固形分化しても一定の粘度を保持しやすく液流れによる成形不良をより抑制でき、且つ得られるウレタン硬化物がより安定的に高い凝集力を発現しやすいため、数平均分子量が6千以上5万未満であることが好ましく、最も好ましくは8千以上4万未満であることが好ましい。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により算出したウレタンプレポリマー組成物(G)の数平均分子量は後述するポリアルキレンオキシドと同様の方法にて測定し、本態様ではウレタンプレポリマー組成物(G)の数平均分子量は、溶剤やケトエノール互変異性化合物、フェノール系酸化防止剤、その他分子量600以下の添加剤等の分子量600以下の成分は除外して算出した。
【0024】
また、ウレタンプレポリマー組成物(G)の分子量分布は、重量平均分子(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)で表され、通常10未満であることが好ましいが、更に好ましくはチキソトロピーインデックスが低下しやすく、粘度によらず液の弾性が低く流動性に優れやすくなって成形性がより優れやすいため、1.1~3.0未満の範囲であり、最も好ましくは1.3~2.0未満の範囲である。なかでも、適度な粘度を発現させやすい比較的高分子量のウレタンプレポリマー成分とより良好な硬化性を発現させやすい3官能以上のポリアルキレンオキシド(B1)を含む比較的低分子量のウレタン基を含まないポリアルキレンオキシド成分からなる2峰性以上を示すことが好ましく、さらに好ましくは更にウレタンプレポリマーを形成する際のウレタン基を含まないポリオール成分の残渣を含み2~3峰性を示すことが好ましい。比較的高分子量のウレタンプレポリマー成分と3官能以上のポリアルキレンオキシド(B1)を含むポリアルキレンオキシド成分によって2~3峰性とすることで、適度な粘度でより低いチキソトロピーインデックスとなってハンドリング性に優れ、且つ高い硬化性を発現して、より良好な生産性でウレタン硬化物を形成しやすく好ましい。
【0025】
なお、ウレタンプレポリマー組成物(G)の分子量分布は、数平均分子量の算出と同様に、溶剤やケトエノール互変異性化合物、フェノール系酸化防止剤、その他分子量600以下の添加剤等の分子量600以下の成分は除外して算出した。
【0026】
ウレタンプレポリマー組成物(G)中の不飽和基の含有量としては0.020meq/g未満であれば特に限定されないが、得られるウレタン硬化物の強度や凝集力が高くなりやすいため0.015meq/g以下であることが好ましく、0.010meq/g以下であることが更に好ましく、0.0001~0.009meq/gの範囲であることが最も好ましい。本態様では不飽和基の含有量は後述するポリアルキレンオキシド(A)と同様の方法にて測定した。
【0027】
ウレタンプレポリマー組成物(G)中のポリアルキレンオキシド(B)の含有量としては、1~79重量%の範囲であれば特に限定されないが、より高凝集力と高柔軟性を両立しやすいため、5~70重量%の範囲であることが好ましく、更に好ましくは適度な粘度で架橋条件によらずより安定的に塗工性が優れやすく、高凝集力と高柔軟性を両立しやすいため、10~60重量%の範囲であり、最も好ましくは20~55重量%の範囲である。当該比率は、ウレタンプレポリマー組成物(G)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法による解析により、ポリアルキレンオキシド(B)に由来するピークとウレタンプレポリマー(E)に由来する比較的高分子量のピークの面積比より算出できる場合があり、当該重量比率として代替してもよい。
【0028】
また、ウレタンプレポリマー(E)形成時に残存したポリオール成分等のウレタン基を含まないポリオール単独成分を含む場合があり、ポリアルキレンオキシド(B)に含まれるが、より高凝集力と高柔軟性を両立しやすいため、ウレタンプレポリマー組成物(G)中の3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)の割合が、1~50重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.5~45重量%の範囲である。なかでも、架橋条件によらずより安定的に塗工性が優れやすく、高凝集力と高柔軟性を両立しやすいため、2~35重量%の範囲であることが更に好ましく、最も好ましくは2~30重量%の範囲である。なお当該比率は、分取成分のNMR等の各種構造解析とポリアルキレンオキシド(B)中の割合を求めることで算出できる場合がある。
【0029】
なかでも、ポリアルキレンオキシド(B)の分子量が低い場合、ポリアルキレンオキシド(B)の重量比率が低いほうがより高凝集力と高柔軟性を両立しやすく、ポリアルキレンオキシド(B)の分子量が高い場合、ポリアルキレンオキシド(B)の重量比率が高いほうがより高凝集力と高柔軟性を両立しやすいため、ポリアルキレンオキシド(B)の水酸基価より算出した数平均分子量と重量比率が、下記一般式を満たすことが好ましい。
(B)の数平均分子量/2000<(B)の重量比率<(B)の数平均分子量/50
(1≦(B)の重量比率≦79)
なかでも、より高凝集力と高柔軟性を両立しやすいため、下記一般式を満たすことがより好ましい。
(B)の数平均分子量/1000<(B)の重量比率<(B)の数平均分子量/100
(1≦(B)の重量比率≦79)
更に、より均一に架橋反応が進行して綺麗な塗膜外観で成形しやすく、柔軟性を維持しつつ環境条件によらず安定的に耐久性等の物性を発現しやすいため、下記一般式を満たすことがより好ましい。
(B)の数平均分子量/750<(B)の重量比率<(B)の数平均分子量/200
(10≦(B)の重量比率≦60)
ウレタンプレポリマー組成物(G)中の3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)の比率と数平均分子量の関係も上記の範囲であることが、ポリアルキレンオキシド(B)の好ましい重量比率と同様の理由により好ましく、下記一般式を満たすことが好ましい。
(B1)の数平均分子量/2000<(B1)の重量比率<(B1)の数平均分子量/50
(1≦(B1)の重量比率≦50)
なかでも、より高凝集力と高柔軟性を両立しやすいため、下記一般式を満たすことがより好ましい。
(B1)の数平均分子量/1000<(B1)の重量比率<(B1)の数平均分子量/100
(1≦(B1)の重量比率≦50)
更に、より均一に架橋反応が進行して綺麗な塗膜外観で成形しやすく、柔軟性を維持しつつ環境条件によらず安定的に耐久性等の物性を発現しやすいため、下記一般式を満たすことがより好ましい。
(B1)の数平均分子量/750<(B1)の重量比率<(B1)の数平均分子量/200
(2≦(B1)の重量比率≦35)
ウレタンプレポリマー組成物(G)中のウレタンプレポリマー(E)の含有量としては、特に限定されないが、より高凝集力と高柔軟性を両立しやすいため、10~90重量%の範囲であることが好ましく、更に好ましくは適度な粘度で架橋条件によらずより安定的に塗工性が優れやすく、高凝集力と高柔軟性を両立しやすいため、20~85重量%の範囲であり、最も好ましくは40~80重量%の範囲である。当該比率は、ウレタンプレポリマー組成物(G)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法による解析により、ポリアルキレンオキシド(B)に由来するピークとウレタンプレポリマー(E)に由来する比較的高分子量のピークの面積比より算出できる場合があり、当該重量比率として代替してもよい。
【0030】
ウレタンプレポリマー組成物(G)中には、得られるウレタン硬化物の濡れ性が顕著に良好となりやすく、且つ特長的に低いガラス転移点を発現しやすく低温特性に優れやすいため、アルキレンオキシド残基を60重量%以上含むことが好ましく、更に好ましくは80~99.9重量%であり、最も好ましくは95~99.8重量%の範囲である。なお、NMR法等により各残基の含有量を算出することができるが、必要に応じ各成分の分離やアルカリ分解等を行って各留分を分析して算出してもよい。また組成物中の各原料が分かっている場合、各原料の仕込み比率と各原料のアルキレンオキシド残基の含有率より算出してもよい。例えば、ウレタンプレポリマー(E)を形成する際のポリアルキレンオキシド(A)、並びに混合するポリアルキレンオキシド(B)や(B1)の水酸基価より算出した数平均分子量より各開始剤残基、不飽和基分を除算して算出したアルキレンオキシド残基含有率と各原料の仕込み比率等より、計算してもよい。
【0031】
更に、アルキレンオキシド残基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数2~20のアルキレンオキシド残基等が挙げられ使用できるが、ウレタンプレポリマー組成物(G)が液状で高透明となりやすく、良好な機械物性のウレタン硬化物が得られやすいため炭素数2~3のアルキレンオキシド残基を含むことが好ましく、例えばプロピレンオキシド残基、エチレンオキシド残基等がより好ましいアルキレンオキシド残基として挙げられ、最も好ましくはプロピレンオキシド残基である。
【0032】
なかでもウレタン硬化物の機械物性を向上しやすいため、ウレタンプレポリマー組成物(G)中にプロピレンオキシド残基を70重量%以上含むことが好ましく、更に好ましくは90~99.9重量%であり、最も好ましくは95~99.8重量%の範囲である。また、耐湿熱性が向上しやすいためエチレンオキシド残基を含んでもよく、含む場合の含有量としては0.1重量%以上含むことが好ましく、更に好ましくは湿熱条件後の凝集力と湿熱条件保持後の粘着力を維持しやすいため0.5~15重量%であり、最も好ましくは1~13重量%の範囲である。
【0033】
なかでも、得られるウレタン硬化物がより顕著に良好な濡れ性や低温特性を発現しやすいため、ウレタンプレポリマー組成物(G)中には、数平均分子量3000以上のポリアルキレンオキシド構造を含むことが好ましく、特に2官能の数平均分子量3000以上のポリアルキレンオキシド構造を含むことが好ましい。数平均分子量3000以上のポリアルキレンオキシド構造の含有量としては特に限定されないが、ウレタンプレポリマー組成物(G)中に50重量%以上含むことが好ましく、更に好ましくは70~99.9重量%であり、最も好ましくは95~99.8重量%の範囲である。
【0034】
また、得られるウレタン硬化物がより顕著に良好な低温特性と柔軟性を発現しやすいため、分子量600以下の低分子量ポリオールに由来する残基としては、25重量%以下の範囲であることが好ましく、更に好ましくは4重量%以下であり、最も好ましくは意図的に含まないことである。
【0035】
更に、ウレタン硬化物形成の際に残存した場合、ブリードによる汚染が発生しやすいため、分子量300以下の低分子量ポリオールに由来する残基としては、10重量%以下の範囲であることが好ましく、更に好ましくは1.5重量%以下であり、最も好ましくは意図的に含まないことである。
【0036】
また、特に限定されないが、より顕著に高いボールタック性、濡れ性を発現しやすいため、芳香族アミン残基等の芳香族構造や炭素数6以上の糖残基、ポリエステル残基、ポリオキシテトラメチレン残基、ポリカーボネート残基としては20重量%以下の範囲であることが好ましく、更に好ましくは5重量%以下であり、最も好ましくは意図的に含まないことである。なお、上記構造の好適な含有量の範囲としては、ベンゼンやトルエン等の揮発して除去される溶剤やエステル系可塑剤等のイソシアネートと非反応性の添加剤中の上記構造は含まない。また脂環族構造としては、特に限定されないが、より高い柔軟性を安定的に発現しやすいため、20重量%以下の範囲であることが好ましく、更に好ましくは5重量%以下であり、最も好ましくは意図的に含まないことである。
【0037】
特に限定されないが、得られるウレタン硬化物の濡れ性と凝集力のバランスに優れ、顕著に高いボールタック性と再剥離性をより両立しやすいため、ウレタンプレポリマー組成物(G)中には、ポリイソシアネート残基を0.1~20重量%の範囲で含むことが好ましく、より好ましくは0.3~10重量%の範囲である。なかでも、得られるウレタン硬化物の凝集力を維持しつつ、ケトエノール互変異性化合物が1.0重量%以下の少量でも架橋剤との混合時に粘度が上昇しにくく、特徴的に長いポットライフを発現しやすいため、更に好ましくは0.5~5重量%の範囲であり、最も好ましくは0.7~3重量%の範囲である。
【0038】
更に、ポリイソシアネート残基としては、2官能以上のポリイソシアネート残基を含むことが好ましく、脂肪族ポリイソシアネート残基、脂環族ポリイソシアネート残基、芳香族ポリイソシアネート残基、またはこれらの変性体の残基等が挙げられ、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の残基、またはこれらの変性体の残基等が挙げられる。なかでも、ウレタンプレポリマー組成物(G)の着色が小さくなりやすく、より良好な柔軟性のウレタン硬化物が得られやすいため、脂肪族ポリイソシアネート残基、脂環族ポリイソシアネート残基、またはこれらの変性体の残基を含むことが好ましく、更に好ましくは高い凝集力を維持しつつ、顕著に柔軟なウレタン硬化物を得やすいため、脂肪族ポリイソシアネート残基、またはこれらの変性体であることがより好ましい。また、ポリイソシアネートの変性体の残基としては、特に限定されないが、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、アミド基、イミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基又はオキサゾリドン基を含む変性物の残基やポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等の縮合体の残基が挙げられる。ウレタン/ヌレート変性やヌレート/アロファネート変性等のこれらの2種以上の変性構造を含む変性体残基も好適に使用できる。なかでも、顕著に良好な濡れ性を発現しやすいため、変性体を用いる場合、ウレタン変性、アロファネート変性構造の1種以上を含むことが好ましい。
【0039】
ウレタンプレポリマー組成物(G)中の各残基の含有量としては、必要に応じてコリッシュ分解やアルカリ分解等により、各原料に分解して組成比を求めてもよく、各原料の仕込み比が分かっている場合、仕込み比と各原料の化学構造中の割合より算出してもよい。
【0040】
ウレタンプレポリマー組成物(G)の25℃における粘度は特に限定されないが、より液流れがしにくく均一に薄膜~厚膜まで成形がしやすいため、0.1~30Pa・sの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは1.5~20Pa・sの範囲であり、最も好ましくは3~15Pa・sの範囲である。なかでも、乾燥工程などで揮発分の揮発や加温されても一定の粘度を有することで、塗工、硬化工程で液流れやボイドの発生、塗工末端の厚み増加等の成形不良がより発生しにくいため、特に限定されないが、不揮発分が80%以上で0.1~30Pa・sの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは不揮発分が99%以上で1.5~20Pa・sの範囲であり、最も好ましくは不揮発分が99%以上で3~15Pa・sの範囲である。また、同様の理由で、80℃における粘度が0.05~20Pa・sの範囲であることが好ましく、更に好ましくは、0.1~15Pa・sの範囲であり、最も好ましくは0.5~10Pa・sの範囲である。また、0~25℃で均一な液状であり、静置により分離がないことが好ましい。
【0041】
また、特に限定されないが、常時液の流動性が高いと実塗工がよりしやすくなるため好ましく、チキソトロピーインデックス(TI値)が1.5以下であることが好ましく、更に好ましくは1.3以下であり、最も好ましくは1.0~1.2の範囲である。なおチキソトロピーインデックス(TI)は、25℃条件でB型粘度計、スピンドルNo.21を用いて測定し、以下の式に沿って算出した。
TI=1.2rpm粘度/12rpm粘度
粘度やチキソトロピーインデックスがこの範囲であると、ウレタンプレポリマー組成物(G)をイソシアネート化合物(F)と混合し、ウレタン形成性組成物(H)を形成する際に均一に混合しやすく、また脱泡操作も容易となりやすくハンドリング性に優れ、塗工機などで塗工する際に良好な塗工性が得られるなど取り扱いを容易なものにすることができる。
【0042】
ウレタンプレポリマー組成物(G)は視認性が良好で異物等を発見しやすく、得られるウレタン硬化物も透明となりやすいため、目視上透明であることが好ましい。なかでも、100μm幅でのHaze値が5%以下であることが好ましく、更に好ましくは3%以下であり、最も好ましくは1%以下である。なおPET基材等に塗工し、基材分のHaze値を除算してウレタンプレポリマー組成物(G)のHaze値を算出してもよい。
【0043】
ウレタンプレポリマー組成物(G)は、ウレタンプレポリマー(E)とポリアルキレンオキシド(B)に加えて、その他活性水素化合物を含むことができ、特に限定されない。例えば、よりウレタン硬化物の濡れ性等を改善するため、2つの水酸基を有するポリアルキレンオキシドや1つの水酸基を有するポリアルキレンオキシドを含んでもよく、また凝集力を付与するため、ポリオキシテトラメチレングリコールやポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリアルキレンオキシドと異なるポリオールや、アミン開始ポリオール、炭素数4以上の糖開始ポリオール、アミノアルコール、ポリアミン等のポリオールを含むことができる。また耐湿熱性を付与するため1つまたは2つ以上の水酸基とエチレンオキシド残基を有するポリアルキレンオキシドを含むことができる。なかでも、低温特性や再剥離性を維持しつつより濡れ性等を改善するため、2つの水酸基を有する分子量3000以上のポリアルキレンオキシドを併用してもよく、好ましい。
【0044】
ウレタンプレポリマー(E)とポリアルキレンオキシド(B)に加えて、その他活性水素化合物を含む場合、より良好な濡れ性と再剥離性を維持・向上しやすいため、45重量%以下の範囲であることが好ましい。なかでも、ウレタンプレポリマー(E)を形成するポリオールの残渣を除き、25重量%以下の範囲であることが好ましく、更に好ましくは8重量%以下であり、最も好ましくは0.01~4重量%の範囲である。
【0045】
一方、ウレタン硬化物形成の際に残存した場合、ブリードによる汚染が発生しやすいことがあるため、分子量300以下の低分子量ポリオールは、10重量%以下の範囲であることが好ましく、更に好ましくは1.5重量%以下であり、最も好ましくは意図的に含まないことである。
【0046】
ウレタンプレポリマー組成物(G)は、添加剤としてケトエノール互変異性化合物、酸遅延剤、その他遅延剤、ウレタン化触媒、帯電防止剤、可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤、溶剤、鎖延長剤、充填剤、安定剤、その他の添加剤等、種々の公知の添加剤を含んでもよい。
【0047】
なかでも、特に限定されないが、環境上の負荷が大きいことから、ウレタン化触媒等として、スズ化合物を1000ppm以上含まないことが好ましく、更に好ましくは50ppm以上含まないことであり、最も好ましくは意図的に含まないことである。また、同様に特に限定されないが、環境への負荷が大きいことから、溶剤を30重量%以上含まないことが好ましく、より好ましくは10重量%以上含まないことである。なかでも、顕著に環境への負荷が小さいことに加え、更に作業環境が顕著に向上しやすいため、5重量%以上含まないことが好ましく、更に好ましくは1重量%以上含まないことである。なお、本態様では沸点200℃以下のケトエノール互変異性化合物等の揮発性の添加剤は溶剤に含まないものとするが、揮発性の添加剤を含めて、揮発性の化合物は1重量%以上含まないことが最も好ましく、本発明のウレタンプレポリマー組成物(G)はそのような性状で得られやすい。
【0048】
ウレタンプレポリマー組成物(G)の製造方法は特に限定されないが、例えば、水酸基末端のウレタンプレポリマー(E)を事前に常温から150℃の範囲の温度で形成し、任意の温度でポリアルキレンオキシド(B)や必要に応じて添加剤を混合する方法、あらかじめ添加剤と混合した状態で水酸基末端のウレタンプレポリマー(E)を常温から150℃の範囲の温度で形成し、任意の温度でポリアルキレンオキシド(B)や必要に応じてその他添加剤を混合する方法等により調整することができる。また、固形分濃度や粘度、チキソトロピーインデックスを調整するため、ウレタンプレポリマー(E)形成前または形成中、形成後等の任意のタイミングで希釈や濃縮、脱水等を行ってもよい。また、水酸基末端のウレタンプレポリマー(E)を形成する前や形成中にポリアルキレンオキシド(B)を加える場合、ウレタンプレポリマー組成物(G)のチキソトロピーインデックスが上昇して塗工がしにくくなる場合や、ゲル状物や不溶分が生成しやすくなる場合があるため、ポリアルキレンオキシド(B)はウレタンプレポリマー(E)を形成後に加えることが好ましいが、反応中盤から終盤で添加する方法や一部を事前添加して協奏的に反応をさせてもよく、特に限定されない。
【0049】
ウレタンプレポリマー組成物(G)の不揮発分濃度は、特に限定されないが、塗工機などで塗工する際に良好な塗工性が得られやすいため、通常10~100重量%の範囲であり、好ましくは50~100重量%の範囲である。
【0050】
なかでも、本発明のウレタンプレポリマー組成物(G)は、ウレタンプレポリマー(E)の分子量が低いため高固形分でも粘度が高くなりすぎず塗工性に優れ、また多官能成分であるポリアルキレンオキシド(B)を分子内ではなく混合物として主に含んでいるため、高固形分でも長い可使時間を発現しやすく、少量のケトエノール互変異性化合物の使用量でも顕著に長い可使時間となりやすい特徴があることから、より高固形分化が可能で低VOCの特長を発現しやすいため、ウレタンプレポリマー組成物(G)の不揮発分濃度は80~100重量%の範囲でより好適に使用でき、更に好ましくはより長い可使時間の特長が活かしやすい95~100重量%の範囲であり、最も好ましくは99~99.9重量%の範囲である。
【0051】
また、特に限定されないが、添加剤を多く用いることなく顕著に高固形分化しやすい特徴があるため、本発明のウレタンプレポリマー組成物(G)中に、ウレタンプレポリマー(E)とポリアルキレンオキシド(B)、その他ポリオールを併せた成分が70~100重量%の範囲で含むことが好ましく、更に好ましくは80~100重量%の範囲である。
<ウレタンプレポリマー(E)>
ウレタンプレポリマー(E)はポリオールとポリイソシアネート(C)の反応物であり、1分子中に少なくとも一つのウレタン基と少なくとも一つの水酸基を有する化合物を指し、アミンやチオール等を併用し、ウレア基やチオウレタン基等を含んでいてもよい。なかでも、ウレタンプレポリマー(E)は、少なくともポリアルキレンオキシド(A)と、イソシアネート化合物(C)を含む成分の反応物であることが好ましい。
ウレタンプレポリマー(E)が1分子中に水酸基を一つも有さない場合、ポリイソシアネート等の架橋剤等を用いても凝集力が上昇せず所望のウレタン硬化物が得られないため使用が困難であり、また水酸基の代わりにイソシアネート基を有する場合、空気中の水分等により反応が進行しやすく安定的な製造が困難であるため使用が困難である。また1分子中にウレタン基を一つも有さない場合、所望の粘度の発現が困難であり成形性に劣るとともに、得られるウレタン硬化物の凝集力も低下しやすいため使用が困難である。
【0052】
ウレタンプレポリマー(E)を形成する、ポリオールの有する水酸基の総和(MOH)に対する前記ポリイソシアネートの有するNCO基の総和(MNCO)のモル比率(MNCO/MOH)は1.0未満であることが好ましく、水酸基末端として得られやすく、ウレタンプレポリマー組成物(G)の保存安定性が良く安定的に塗膜外観に優れるウレタンを形成しやすい。なかでも、低いチキソトロピーインデックス(TI値)を示しやすく、更にゲル状物や不溶分が生成しにくく且つ一定の粘度を有しやすく、条件によらず良好な塗工性のウレタン形成性組成物(H)を得やすいため、ポリオールの有する水酸基の総和(MOH)に対する前記ポリイソシアネートの有するNCO基の総和(MNCO)のモル比率(MNCO/MOH)は、0.05以上0.69以下であることが好ましく、さらに好ましくは、0.10以上0.49以下であり、最も好ましくは0.15以上0.45以下である。
【0053】
ウレタンプレポリマー(E)は、アルキレンオキシド残基、ポリイソシアネート残基、0.010meq/g以下の不飽和基、を構成成分として含むことが好ましい。
【0054】
ウレタンプレポリマー(E)中の不飽和基の含有量としては、特に限定されないが、0.010meq/g以下であれば、得られるポリウレタンの強度や凝集力が高くなりやすいため好ましく、更に好ましくは0.007meq/g以下であり、より好ましくは0.003meq/g以下であり、最も好ましくは0.0001~0.0018meq/gの範囲である。本態様では不飽和基の含有量は後述するポリアルキレンオキシド(A)と同様の方法にて測定できる。
【0055】
ウレタンプレポリマー(E)中のアルキレンオキシド残基の含有量としては、得られるウレタン硬化物の濡れ性が顕著に良好となりやすく、且つ特長的に低いガラス転移点を発現しやすいため、アルキレンオキシド残基を70重量%以上含むことが好ましく、更に好ましくは90~99.9重量%であり、最も好ましくは95~99.8重量%の範囲である。更に、アルキレンオキシド残基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数2~20のアルキレンオキシド残基等が挙げられ使用できるが、ウレタンプレポリマー組成物が液状で高透明となりやすく、良好な機械物性のウレタン硬化物が得られやすいため炭素数2~3のアルキレンオキシド残基を含むことが好ましく、例えばプロピレンオキシド残基、エチレンオキシド残基がより好ましいアルキレンオキシド残基として挙げられる。
なかでもウレタン硬化物の機械物性を向上しやすいため、ウレタンプレポリマー(E)中にプロピレンオキシド残基を70重量%以上含むことが好ましく、更に好ましくは90~99.9重量%であり、最も好ましくは95~99.8重量%の範囲である。また、耐湿熱性が向上しやすいため、エチレンオキシド残基を含んでもよく、含む場合の含有量としては0.1重量%以上含むことが好ましく、更に好ましくは1~20重量%であり、最も好ましくは5~18重量%の範囲である。
【0056】
なかでも、得られるウレタン硬化物がより顕著に良好な濡れ性や低温特性を発現しやすいため、ウレタンプレポリマー(E)中には、数平均分子量3000以上のポリアルキレンオキシド構造を含むことが好ましく、数平均分子量3000以上のポリアルキレンオキシド構造の含有量としては特に限定されないが、ウレタンプレポリマー(E)中に60重量%以上含むことが好ましく、更に好ましくは80~99.9重量%であり、最も好ましくは95~99.8重量%の範囲である。なかでも、上記数平均分子量3000以上のポリアルキレンオキシド構造は2つの水酸基を有するポリオールの残基であることが好ましい。
【0057】
また、ウレタンプレポリマーの形成時に反応初期の誘導期を短縮・抑制しやすく、発熱によるオーバーシュートを抑制しやすくなって品質が安定するとともに、生産性が向上することで環境への負荷が小さくなりやすいため、ウレタンプレポリマー(E)中に1級の水酸基の残基を有することが好ましい。なかでも、より開始反応を速めやすく誘導期を短縮・抑制しやすいため、反応性が比較的低い数平均分子量3000以上のポリアルキレンオキシドの末端に1級水酸基の残基を含むことが好ましく、好ましくはウレタンプレポリマー(E)の水酸基残基中に0.1%以上1級水酸基の残基を含むことであり、更に好ましくは0.5%以上の1級水酸基の残基を含むことである。水酸基残基中の1級水酸基比率の上限は特に限定されないが、原料の入手が容易であり、結晶性が低くなりやすくハンドリング性に優れやすいことから、92%以下であることが好ましく、さらに好ましくは86%以下である。このような残基を形成する末端に1級水酸基をごく少量以上含むポリアルキレンオキシドとしては、特に限定されないが、例えばイミノホスファゼニウム塩触媒とルイス酸触媒を用いて得たポリアルキレンオキシド、ホウ素系ルイス酸触媒を用いて得たポリアルキレンオキシド等が挙げられ、上記したポリアルキレンオキシドを用いることで当該ウレタンプレポリマー(E)が得られやすく、好ましい。なお、当該1級水酸基の残基の比率は、ウレタンプレポリマーを分解し、ポリオール留分を分析して求めてもよい。
【0058】
得られるウレタン硬化物がより顕著に良好な低温特性と柔軟性を発現しやすいため、分子量600以下の低分子量ポリオールに由来する残基としては、25重量%以下の範囲であることが好ましく、更に好ましくは4重量%以下であり、最も好ましくは意図的に含まないことである。なかでも、ウレタン硬化物がより顕著に良好な柔軟性を発現しやすいため、分子量200以下の低分子量ポリオールに由来する残基としては、10重量%以下の範囲であることが好ましく、更に好ましくは1.5重量%以下であり、最も好ましくは意図的に含まないことである。
【0059】
また、得られるウレタン硬化物がより顕著に良好な濡れ性や低温特性を発現しやすいため、特に限定されないが、ウレタンプレポリマー(E)中の芳香族アミン残基等の芳香族構造や炭素数6以上の糖残基、ポリエステル残基、ポリオキシテトラメチレン残基、ポリカーボネート残基としては20重量%以下の範囲であることが好ましく、更に好ましくは5重量%以下であり、最も好ましくは意図的に含まないことである。また脂環族構造としては、特に限定されないが、より高い柔軟性を安定的に発現しやすいため、20重量%以下の範囲であることが好ましく、更に好ましくは5重量%以下であり、最も好ましくは意図的に含まないことである。
【0060】
また、ウレタンプレポリマー(E)中に、3つ以上の活性水素基を有するポリオール残基を含んでもよく、特に限定されないが、低いチキソトロピーインデックス(TI値)を示しやすく、更にゲル状物や不溶分が生成しにくく、高固形分化でき、条件によらず良好な塗工性のウレタン形成性組成物(H)を得やすいため、プレポリマー形成に用いる原料ポリオールの平均官能基数が2.5未満となる範囲で含むことが好ましく、更に好ましくはより安定的に高固形分で適度な粘度で塗工性・生産性に優れ、得られるウレタン硬化物が凝集力を維持しつつ柔軟となってより優れる追従性を発現しやすいため1.90~2.20の範囲であり、最も好ましくは1.97~2.10の範囲である。なお本態様での上記原料ポリオールの平均官能基数は、ポリアルキレンオキシド製造時に副生する不飽和モノオールによる実質の官能基数の低減を加味した値である。また、ウレタンプレポリマー(E)中の3つ以上の活性水素基を有するポリオール残基の含有重量としてはプレポリマー形成に用いる原料ポリオールの好ましい平均官能基数の範囲における効果と同様の理由から、20重量%以下の範囲であることが好ましく、更に好ましくは0~10重量%の範囲である。なかでも、ウレタンプレポリマー(E)中の3つ以上の活性水素基を有するポリオールの開始剤残基の含有重量としては、0~3重量%の範囲であることが好ましく、最も好ましくは0~0.3重量%の範囲であり、そのような開始剤残基としてはトリメチロールプロパン残基やグリセリン残基、ペンタエリスリトール残基等が挙げられる。
特に限定されないが、得られるウレタン硬化物の濡れ性と凝集力のバランスに優れ、顕著に高いボールタック性と再剥離性を両立しやすいため、ウレタンプレポリマー(E)中には、ポリイソシアネート残基を0.01~20重量%の範囲で含むことが好ましく、より好ましくは0.1~10重量%の範囲であり、なかでも、凝集力を維持しつつより顕著に柔軟となりやすく、追従性が良好となりやすいため0.5~3重量%の範囲であることが最も好ましい。
【0061】
更に、ポリイソシアネート残基としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリイソシアネート残基、脂環族ポリイソシアネート残基、芳香族ポリイソシアネート残基、またはこれらの変性体等が挙げられ使用できるが、ウレタンプレポリマー組成物(G)の着色が小さくなりやすく、より高い柔軟性のウレタン硬化物が得られやすいため、脂肪族ポリイソシアネート残基、脂環族ポリイソシアネート残基、またはこれらの変性体の残基を含むことが好ましく、更に好ましくは高い凝集力を維持しつつ、顕著に柔軟なウレタン硬化物を得やすいため、脂肪族ポリイソシアネート残基、またはこれらの変性体であることがより好ましい。また、ポリイソシアネートの変性体の残基としては、特に限定されないが、アダクトタイプ等のウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、アミド基、イミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基又はオキサゾリドン基を含む変性物の残基やポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等の縮合体の残基が挙げられる。ウレタン/ヌレート変性やヌレート/アロファネート変性等のこれらの2種以上の変性構造を含む変性体残基も好適に使用できる。なかでも、顕著に良好な濡れ性を発現しやすいため、変性体を用いる場合、ウレタン変性、アロファネート変性構造の1種以上を含むことが好ましい。
【0062】
ウレタンプレポリマー(E)中の各残基の含有量としては、必要に応じてコリッシュ分解やアルカリ分解等により、各原料に分解して組成比を求めてもよく、各原料の仕込み比が分かっている場合、仕込み比と各原料の組成より算出してもよい。
ウレタンプレポリマー(E)は、適度な粘度を有し成形性が良好となりやすく、塗膜外観が良好となるため重量平均分子量が3000以上であることが好ましい。なかでも流動性が良好で成形性に優れやすい重量平均分子量が5000~200000の範囲であることが好ましく、更に好ましくは重量平均分子量が8000~50000の範囲であり、最も好ましくは15000~40000の範囲である。
【0063】
ウレタンプレポリマー(E)の分子量分布は通常6.0未満であることが好ましいが、より好ましくはウレタンプレポリマー組成物(G)のチキソトロピーインデックスがより低下しやすく、粘度によらず液のハンドリング性に優れ、流動性も顕著に優れやすくなって成形性がより優れやすいため1.50未満であり、更に好ましくは1.35未満であり、最も好ましくは1.05~1.35未満の範囲である。上記の液の流動性が顕著に向上しやすい狭い分子量分布を示すウレタンプレポリマー(E)は、2官能で不飽和度が低いポリアルキレンオキシド、特に2官能で不飽和度が0.004meq/g以下と顕著に低く、分子量分布が1.039未満と顕著に狭い分子量分布を有するポリアルキレンオキシドを用いることで得られやすく、例えばイミノホスファゼニウム塩触媒とルイス酸触媒を用いて得たポリアルキレンオキシドが挙げられ、上記したポリアルキレンオキシドを用いることで当該ウレタンプレポリマー(E)が得られやすく、好ましい。
【0064】
なお、ウレタンプレポリマー(E)の重量平均分子量、分子量分布は、ポリスチレンを標準物質、テトラヒドロフランを溶離液にゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法を用い、常法に従って測定することができる。また、ウレタンプレポリマー組成物(G)をゲルパーミエッションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて測定し、ポリアルキレンオキシド(B)等のピークを除して、ウレタンプレポリマー(E)の重量平均分子量、分子量分布を算出してもよい。
【0065】
ウレタンプレポリマー(E)の製造方法は、特に限定されないが、ポリオールとポリイソシアネートを含む原料を種々の方法で反応することで製造できる。例えば常温から150℃の温度で反応し、ウレタン化反応を進行することで製造できる。また公知の溶剤や触媒、各種添加剤等を使用して製造してもよく、そのままウレタンプレポリマー組成物を調製して残存していてもよく、各成分を除去してもよい。
【0066】
また、ポリオール等の活性水素化合物とポリイソシアネートを水酸基過剰で重合し、直接水酸基末端のウレタンプレポリマーを形成する方法や、ポリオール等の活性水素化合物とポリイソシアネートをNCO基過剰で重合してNCO基末端のウレタンプレポリマーを形成後、ポリオールを追加添加して反応し2段で水酸基末端のウレタンプレポリマーを形成する2段重合法等が挙げられ何れも使用できる。
特に限定されないが、NCO基末端のウレタンプレポリマーを形成後、ポリオールを追加添加して反応し2段で水酸基末端のウレタンプレポリマーを形成する方法では、NCO基末端から水酸基末端に変換する際に水酸基価が高い低分子量のポリオール等が必要となる場合があり、1段重合で製造した場合と比較して顕著に良好な柔軟性の特長や顕著に低いガラス転移点の特長がマイルドになりやすいが、特性を損なわない範囲で適応することができる。
【0067】
最も好ましくは、ウレタン基量を低減しやすく、より顕著に良好な柔軟性や低温特性が発現しやすいため、ポリオール等の活性水素化合物とポリイソシアネートを水酸基過剰で1段で重合し、直接水酸基末端のウレタンプレポリマーを形成することである。また、少量のポリオール等の活性水素化合物やポリイソシアネートを分割して添加し、2段以上での重合とすることも好適にできる。
ウレタンプレポリマー(E)を製造する際のポリオール、及び、ポリイソシアネート化合物は、真空加熱等で脱水して使用することが好ましいが、作業が煩雑となる場合は脱水せずに使用してもよい。
(ウレタンプレポリマー原料)
ウレタンプレポリマー(E)は、特に限定されないが、ウレタンプレポリマー(E)は、少なくともポリアルキレンオキシド(A)と、ポリイソシアネート化合物(C)の反応物であることが好ましい。
【0068】
ウレタンプレポリマー(E)の形成に用いることが好ましいポリアルキレンオキシド(A)としては、特に限定されないが、再剥離性と濡れ性、柔軟性、低温特性、が良好となりやすいため、不飽和度が0.010meq/g未満で且つ水酸基価より算出した分子量が3000~10000の範囲である2つの水酸基を有するポリアルキレンオキシドを含むことが好ましい。
【0069】
ポリアルキレンオキシド(A)の不飽和度は、0.010meq/g以下であれば、、それを用いて得られるウレタンプレポリマー(E)と、イソシアネート架橋剤等との反応に伴う硬化(固化)がより速くなりやすく、得られるウレタン硬化物の強度や凝集力がより向上しやすいため好ましいが、より好ましくは0.007meq/g以下であり、最も好ましくは低分子量成分が顕著に少なく特長的に耐汚染・再剥離性が向上しやすいため、0.004meq/g以下である。
【0070】
ここで、ポリアルキレンオキシド(A)の「不飽和度(meq/g)」とは、ポリアルキレンオキシド1g当たりに含まれる不飽和基の量であり、ポリアルキレンオキシドに含まれる不飽和モノオールの数に対応する。すなわち、不飽和度が高ければ不飽和モノオールが多く、不飽和度が低ければ不飽和モノオールは少ない。
【0071】
なお、本態様では、高分子論文集1993,50,2,121-126に記載のNMR法に準拠してポリアルキレンオキシド(A)の不飽和度を測定した。本態様では、不飽和モノオールが顕著に少ないポリアルキレンオキシド(A)を測定の対象とするので、測定精度を高めるために、NMR測定における積算回数は500回以上とした。
ウレタンプレポリマー(E)の形成に用いることが好ましいポリアルキレンオキシド(A)は、特に限定されないが、水酸基価より算出した数平均分子量が3000~10000の範囲であれば、得られるウレタンプレポリマー組成物(G)が一定の粘度で高固形分化しやすく且つウレタン硬化物の濡れ性や柔軟性、低温特性がより向上しやすいため好ましいが、より好ましくは4000以上9000以下であり、最も好ましくは4500以上7000以下である。
【0072】
なお、ポリアルキレンオキシド(A)の数平均分子量は、JIS K-1557-1に記載の方法により算出したポリアルキレンオキシド(A)の水酸基価と、ポリアルキレンオキシド(A)1分子中の水酸基数と、から算出することができる。
【0073】
ポリアルキレンオキシド(A)は、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn);Mw/Mn)が1.1以下であることが好ましく、更に好ましくは1.06以下であり、最も好ましくは1.005~1.039の範囲である。Mw/Mnが上記範囲内であると、汚染の原因となる低分子量物がより少なくなることでより優れた耐汚染性を発現しやすいため好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography+;GPC)法より測定することができる。
【0074】
ウレタンプレポリマー(E)の形成に用いることが好ましいポリアルキレンオキシド(A)は、2つの水酸基を有する2官能のポリアルキレンオキシドを含むことが好ましい。2官能のポリアルキレンオキシド(A)を含むことで、得られるウレタンプレポリマー(E)が直鎖状に高分子量化して低いチキソトロピーインデックス(TI値)を示し、且つゲル状物や不溶分が生成しにくく、条件によらず良好な塗工性のウレタンプレポリマー組成物(G)、ウレタン形成性組成物(H)を得やすい。
【0075】
なかでも、ウレタンプレポリマー(E)の形成に用いることが好ましいポリアルキレンオキシド(A)は、1級水酸基を含むことが好ましい。ごく少量でも1級水酸基を有することで、ウレタンプレポリマーの形成時に開始反応の速度を速め反応初期の誘導期を短縮・抑制しやすく、発熱のオーバーシュートを抑制しやすくなって品質が安定するとともに、生産性が向上しやすく環境への負荷が小さくなりやすい。
【0076】
なかでも、より開始反応を速めやすく誘導期を短縮・抑制しやすいため、反応性が比較的低い数平均分子量3000以上のポリアルキレンオキシドの末端に1級水酸基を含むことが好ましく、ポリアルキレンオキシド(A)の水酸基の1級比率が0.1%以上であることがより好ましく、更に好ましくは0.5%以上である。
【0077】
このような分子末端に1級水酸基をごく少量以上含むポリアルキレンオキシドとしては、特に限定されないが、例えばイミノホスファゼニウム塩触媒とルイス酸触媒を用いて得たポリアルキレンオキシドが挙げられ、上記したポリアルキレンオキシドを用いることで当該ウレタンプレポリマー(E)が得られやすく、好ましい。また1級水酸基の比率の上限は特に限定されないが、生産がしやすく入手が容易となりやすく、また結晶性も低くハンドリング性に優れやすいことから、92%以下であることが好ましく、さらに好ましくは86%以下である。なおポリアルキレンオキシドの水酸基の1級比率は、トリフルオロ無水酢酸等のフッ素化合物を水酸基に付加してNMRを測定する等の公知の方法によって測定できる場合があり、ウレタンプレポリマー分解後のポリオール成分を分析してもよい。
【0078】
ウレタンプレポリマー(E)の形成に用いることが好ましいポリアルキレンオキシド(A)は、1分子中に炭素数が3以上のアルキレンオキシド残基を含むことが好ましい。炭素数が3以上のアルキレンオキシド残基として特に限定されず、例えば、炭素数3~20のアルキレンオキシド残基を挙げることができる。具体的には、プロピレンオキシド残基、1,2-ブチレンオキシド残基、2,3-ブチレンオキシド残基、イソブチレンオキシド残基、ブタジエンモノオキシド残基、ペンテンオキシド残基、スチレンオキシド残基、シクロヘキセンオキシド残基等が挙げられる。これらのアルキレンオキシド残基の中でも、ポリアルキレンオキシド(A)を得るための原料の入手が容易で、得られるポリアルキレンオキシド(A)の工業的価値が高いことから、プロピレンオキシド残基が好ましい。
【0079】
また、ポリアルキレンオキシド(A)は、炭素数が3以上のアルキレンオキシド残基として、単一のアルキレンオキシド残基のみを含んでいてもよく、2種類以上のアルキレンオキシド残基を含んでいてもよい。なお、2種以上をアルキレンオキシド残基が含まれる場合は、例えば、1種のアルキレンオキシド残基が連鎖的に繋がったものに、それ以外のアルキレンオキシド残基が連鎖的に繋がったものであってもよく、2種以上のアルキレンオキシド残基がランダムに繋がったものでもよい。さらに、ポリアルキレンオキシド(A)は、炭素数が3以上のアルキレンオキシド残基を含んでいればよく、これに加えて、炭素数2のエチレンオキシド残基を含んでいてもよい。ポリアルキレンオキシド(A)中のエチレンオキシド残基の含有率としては結晶性が低く、低温で固化しにくく成形性に優れやすいため50重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは30重量%以下であり、最も好ましくは含まないことである。
【0080】
ウレタンプレポリマー(E)の形成に用いることが好ましいイソシアネート化合物(C)としては、イソシアネート基の平均官能基数が2.0以上であれば好ましいが、特に限定されるものではない。イソシアネート化合物(C)としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、および、これらとポリアルキレンオキシドとが反応することで得られる変性イソシアネート、ならびに、これらの2種以上の混合物が挙げられる。更に、これらのイソシアネートにウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、アミド基、イミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基又はオキサゾリドン基を含む変性物やポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等の縮合体が挙げられる。
【0081】
これらの中でも、高透明で着色の少ないウレタンプレポリマー組成物(G)を得やすいために、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、または、これらの変性体が好ましい。1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、脂肪族イソシアネート含有のプレポリマー、脂環式イソシアネートの含有プレポリマー、または、これらのイソシアネートのウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、アミド基、イミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基もしくはオキサゾリドン基含有変性物がより好ましい。これらのイソシアネートは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
ウレタンプレポリマー(E)は、求められる特性や粘度に合わせて、ポリアルキレンオキシド(A)と異なる活性水素化合物やポリイソシアネート化合物(C)と異なるイソシアネート化合物を原料として用いてもよく、特に限定されない。
【0082】
たとえば、凝集力を高める等の理由で、ポリアルキレンオキシド(A)とポリイソシアネート化合物(C)に加えて、3官能以上のポリアルキレンオキシドや分子量3000未満の2官能ポリアルキレンオキシド等のその他ポリオールを併用して反応し、ウレタンプレポリマー(E)を形成してもよいが、低いチキソトロピーインデックス(TI値)を示しやすく、更にゲル状物や不溶分が生成しにくくなって、条件によらず良好な塗工性のウレタン形成性組成物(H)を得やすいため、ウレタンプレポリマー(E)の形成に用いる全ポリオールの平均官能基数faveが2.5未満となる範囲で含むことが好ましく、更に好ましくは1.85~2.20の範囲であり、最も好ましくは1.95~2.10の範囲である。なお本態様での上記原料ポリオールの平均官能基数は、ポリアルキレンオキシド製造時に副生する不飽和モノオールによる実質の官能基数の低減を加味しない値である。また、得られるウレタン硬化物の良好な柔軟性と、低温特性が維持しやすいため、使用する場合、ウレタンプレポリマー(E)中の30重量%以下の範囲であることが好ましく、更に好ましくは10重量%以下であり、最も好ましくは0.01~4重量%の範囲である。
凝集力を高める等の理由で、ポリオキシテトラメチレングリコールやポリエステルポリオール、芳香族アミン開始ポリオールや脂肪族アミンポリオール、炭素数6以上の糖残基開始ポリオール、ポリカーボネートポリオール等の比較的剛直な構造を有するポリオールも含んでもよいが、得られるウレタン硬化物の良好な柔軟性と低温特性が維持しやすいため使用する場合、20重量%以下の範囲であることが好ましく、更に好ましくは5重量%以下であり、最も好ましくは0.001~1重量%の範囲である。
【0083】
塗工性を高める等の理由でポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル等の1官能のポリオールを用いてもよいが、凝集力が低下しやすいため、使用する場合、ウレタンプレポリマー(E)中の5重量%以下の範囲であることが好ましく、更に好ましくは2重量%以下であり、最も好ましくは0.001~0.5重量%の範囲である。
【0084】
また、凝集力や成形性を高める等の理由で、ポリアルキレンオキシド(A)とイソシアネート化合物(C)に加えて、3官能以上のイソシアネート化合物や1官能イソシアネート化合物等のその他ポリイソシアネートを併用して反応し、ウレタンプレポリマー(E)を形成してもよいが、低いチキソトロピーインデックス(TI値)を示しやすく、更にゲル状物や不溶分が生成しにくく、条件によらず良好な塗工性のウレタン形成性組成物(H)を得やすいため、ウレタンプレポリマー(E)の形成に用いる全ポリイソシアネートの平均官能基数faveが2.8未満であることが好ましく、なかでも不純物等に含まれる1官能イソシアネート等で末端を封止する成分が少なくなってプレポリマーが鎖延長して凝集力を高めやすく、高固形分で一定の粘度となって成形性を高めやすいため、1.90~2.79となる範囲で含むことが好ましく、更に好ましくは1.98~2.49の範囲であり、最も好ましくは2.0~2.09の範囲である。
<ポリアルキレンオキシド(B)>
本発明のウレタンプレポリマー組成物(G)は、ポリアルキレンオキシド(B)を必須成分として含有する。またポリアルキレンオキシド(B)中に3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)を必須成分として含有する。
【0085】
ウレタンプレポリマー組成物中にポリアルキレンオキシド(B)を含まない場合、ウレタン基量が少なくなって凝集力が不足して糊残りが発生する場合や粘着力が高くなりすぎて被着体を破損しやすくなるため、安定的な再剥離が困難となり使用が困難である。また、ポリアルキレンオキシド(B)中に水酸基を3つ以上有するポリアルキレンオキシド(B1)を含まない場合、凝集力が不足して糊残りが発生する場合や粘着力が高くなりすぎて被着体を破損しやすくなるため、安定的な再剥離性の発現が困難となり使用が困難である。
【0086】
ポリアルキレンオキシド(B)は、1分子中に3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)を含んでいれば、水酸基数の上限は特に限定されないが、1分子中の水酸基数が6以下であることが好ましく、更に好ましくは1分子中の水酸基数が4以下であり、最も好ましくは平均水酸基数が2.1~3の範囲である。ポリアルキレンオキシド(B)の1分子中の水酸基数が6以下であると、ポリアルキレンオキシド(B)の分子量が低い場合であっても、それを用いて得られるウレタンプレポリマー(E)と、イソシアネート架橋剤等との反応によって得られるポリウレタンの架橋構造が密になり難く、より良好な濡れ性や適度な粘着性を発現しやすいため、好ましい。
【0087】
ここで、1分子中に3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)は、例えば、アルキレンオキシド重合触媒の存在下で、3つ以上の活性水素含有化合物を開始剤として、アルキレンオキシドを開環重合することによって得られる。したがって、ポリアルキレンオキシド(B)はアルキレンオキシド残基を有することになる。
【0088】
ポリアルキレンオキシド(B)の不飽和度は、好ましくは0.070meq/g以下であり、更に好ましくは0.050meq/g以下であり、最も好ましくは0.001~0.010meq/g以下である。ポリアルキレンオキシド(B)の不飽和度が0.070meq/g以下であれば、それを用いて得られるウレタンプレポリマー(E)と、イソシアネート架橋剤等との反応に伴う硬化(固化)が速くなりやすく、得られるポリウレタンは強度や凝集力が大きくなりやすいため、好ましい。
【0089】
ここで、ポリアルキレンオキシド(B)の「不飽和度(meq/g)」とは、ポリアルキレンオキシド1g当たりに含まれる不飽和基の量であり、ポリアルキレンオキシドに含まれる不飽和モノオールの数に対応する。すなわち、不飽和度が高ければ不飽和モノオールが多く、不飽和度が低ければ不飽和モノオールは少ない。なお、本態様では、JIS-K1557-6の方法に従い、測定した。
【0090】
ポリアルキレンオキシド(B)は、1分子中に3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)を含んでいれば特に限定されないが、良好な硬化性に加えてより良好な濡れ性を発現しやすいため、ポリアルキレンオキシド(B1)の平均官能基数は2.40~4.99の範囲であることが好ましく、2.55~3.99の範囲であることが更に好ましい。
【0091】
また、ウレタンプレポリマー(E)中のポりオールには、不飽和モノオールが多いとウレタンプレポリマー形成時に末端を封止しやすく、長いダングリング鎖となって物性を悪化しやすいため不飽和モノオールが少ないほうが望ましいが、ポリアルキレンオキシド(B)は、1分子中に3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)を含み、不飽和モノオールによって平均官能基数が下がる場合にもボールタック等での濡れ性も向上しやすく、良好な硬化性に加えてより良好な濡れ性を発現しやすいため、ポリアルキレンオキシド(B1)の平均官能基数は2.65~2.98の範囲であることが最も好ましい。このようなポリアルキレンオキシドとしては、水酸化セシウム触媒やイミノホスファゼニウム触媒、ホスファゼン触媒、複合金属シアン化物錯体触媒(DMC触媒)等により得たポリアルキレンオキシドが挙げられ、上記したポリアルキレンオキシドを用いることで上記平均官能基数のポリアルキレンオキシド(B)が得られやすく好ましいが、数平均分子量が1900以下と低い場合、水酸化カリウム等の汎用触媒を用いることもできる。
【0092】
ポリアルキレンオキシド(B)は、特に限定されないが、ウレタンプレポリマー(E)とイソシアネート架橋剤等との反応の際に成形性と硬化性を両立しやすく、得られるポリウレタンは、強度や凝集力が大きくなりやすいため、水酸基価より算出した数平均分子量が700以上30000以下であることが好ましく、より好ましくは800以上12000以下である。
【0093】
なかでも、3官能以上と水酸基を多く有して、且つ更に高い反応性を示しやすく、得られるウレタン硬化物中に残存しにくいため、水酸基価より算出した数平均分子量が900以上4500以下であることが好ましく、より好ましくは1000以上1900以下である。
【0094】
一方、反応性は低下しやすいが、得られるウレタン硬化物がより顕著な柔軟性と濡れ性を示しやすくなるため、そのような特性が必要な用途においては水酸基価より算出した数平均分子量が4500以上12000以下であることが好ましく、更に好ましくは6500以上10000以下である。また、ポリアルキレンオキシド(B)中のポリアルキレンオキシド(B1)も同様の理由で上記範囲の数平均分子量であることが好ましい。
【0095】
なお、ポリアルキレンオキシド(B)の数平均分子量は、JIS K-1557-1に記載の方法により算出したポリアルキレンオキシド(B)の水酸基価と、ポリアルキレンオキシド(B)1分子中の水酸基数と、から算出することができる。また当該数平均分子量は不飽和モノオールに由来した平均水酸基数の実質の低下は加味せず算出した。
ポリアルキレンオキシド(B)は、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn);Mw/Mn)が1.1以下であることが好ましく、更に好ましくは1.06以下である。Mw/Mnが上記範囲であると、汚染の原因となる低分子量物が少なくなることでより優れた耐汚染性を発現しやすいため、好ましい。また、ポリアルキレンオキシド(B)中のポリアルキレンオキシド(B1)も同様の理由で上記範囲の分子量分布であることが好ましい。
【0096】
分子量分布(Mw/Mn)は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography+;GPC)法より測定することができる。
【0097】
ポリアルキレンオキシド(B)は、1分子中に炭素数が3以上のアルキレンオキシド残基を含むことが好ましい。炭素数が3以上のアルキレンオキシド残基として特に限定されず、例えば、炭素数3~20のアルキレンオキシド残基を挙げることができる。具体的には、プロピレンオキシド残基、1,2-ブチレンオキシド残基、2,3-ブチレンオキシド残基、イソブチレンオキシド残基、ブタジエンモノオキシド残基、ペンテンオキシド残基、スチレンオキシド残基、シクロヘキセンオキシド残基等が挙げられる。これらのアルキレンオキシド残基の中でも、ポリアルキレンオキシド(B)を得るための原料の入手が容易で、得られるポリアルキレンオキシド(B)の工業的価値が高いことから、プロピレンオキシド残基が好ましい。
【0098】
また、ポリアルキレンオキシド(B)は、炭素数が3以上のアルキレンオキシド残基として、単一のアルキレンオキシド残基のみを含んでいてもよく、2種類以上のアルキレンオキシド残基を含んでいてもよい。なお、2種以上をアルキレンオキシド残基が含まれる場合は、例えば、1種のアルキレンオキシド残基が連鎖的に繋がったものに、それ以外のアルキレンオキシド残基が連鎖的に繋がったものであってもよく、2種以上のアルキレンオキシド残基がランダムに繋がったものでもよい。さらに、ポリアルキレンオキシド(B)は、炭素数が3以上のアルキレンオキシド残基を含んでいればよく、これに加えて、炭素数2のエチレンオキシド残基を含んでいてもよい。ポリアルキレンオキシド(B)中のエチレンオキシド残基の含有率としては低温で固化しにくく成形性に優れやすいため50重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは30重量%以下である。
【0099】
ポリアルキレンオキシド(B)の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の製造方法で製造することができる。例えば、3官能以上の多価開始剤を用い、開環重合触媒の存在下、アルキレンオキシドを開環重合することで製造することができる。
【0100】
3官能以上の多価開始剤としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、三洋化成社製サンニックスGP-250、GP-400、GP-600、GP-1000等の分子量1000以下の3官能の低分子量ポリオール等のトリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等のテトラオール、ヘキソール、アンモニア、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類等の3個以上の活性水素を有する化合物を一種または二種以上用いることができる。なかでも、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、分子量1000以下の3官能の低分子量ポリオール等のトリオールの残基を含むことが好ましい。
<添加剤>
ウレタンプレポリマー組成物(G)は、添加剤としてケトエノール互変異性化合物、酸遅延剤、その他遅延剤、ウレタン化触媒、帯電防止剤、可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤、溶剤、鎖延長剤、充填剤、安定剤、その他の添加剤等、種々の公知の添加剤を含んでもよい。
【0101】
なかでも、本発明のウレタンプレポリマー組成物(G)は、金属成分を含むウレタン化触媒、ケトエノール互変異性化合物を含むことが好ましく、さらに好ましくは金属成分を含むウレタン化触媒、ケトエノール互変異性化合物を共に含有することが好ましい。
【0102】
金属成分を含むウレタン化触媒を含むことで、アミン触媒など金属成分を含まないウレタン化触媒のみを用いた場合や無触媒系などと比較して、プレポリマー形成時の反応性が向上して生産性が向上するとともに、イソシアネート架橋剤等を用いてウレタン硬化物を形成する際に空気中の水分とイソシアネート架橋剤の反応より優先して、ウレタンプレポリマー(E)並びにポリアルキレンオキシド(B)とイソシアネート架橋剤の反応が進行するため、顕著に硬化性が向上しやすい。
【0103】
ウレタンプレポリマー組成物(G)中の金属成分を含むウレタン化触媒を含む場合の含有量は、特に限定されないが適度な硬化性と成形性を発現し、可使時間を延長しやすいため、ウレタンプレポリマー(E)100重量部に対して0.001~0.5重量部の範囲であることが好ましい。なかでも、硬化性と顕著に長い可使時間を両立しやすいため、金属成分を含むウレタン化触媒の含有量は0.001~0.1重量部の範囲であることが更に好ましく、最も好ましくは0.005~0.07重量部の範囲である。
【0104】
金属成分を含むウレタン化触媒としては、金属成分を含みウレタン化活性を示す化合物であれば特に限定されないが、各種添加剤により触媒活性を調整し成形可能時間を延長しやすいため、、Fe、Zr、Ti、Alのいずれか一つ以上の金属を含む有機金属化合物であることが好ましい。なかでも、可使時間を延長しやすく硬化性を両立しやすく成形性が良好となりやすいため、Feキレート触媒、Zrキレート触媒、Tiキレート触媒、Alキレート触媒等の金属キレート触媒の1種または2種以上であることが好ましく、更に好ましくは顕著に長い可使時間を発現しやすいFeキレート触媒である。
【0105】
特に限定されないが、例えば、Feキレート触媒としてはトリスアセチルアセトネート鉄等、Zrキレート触媒としてはジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート等、Tiキレート触媒としては、チタンアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート等、Alキレート触媒としてはアルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0106】
ウレタンプレポリマー組成物(G)は、液中での金属成分を含むウレタン化触媒の触媒活性を低減し、相乗的に可使時間を延長しやすいため、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンのいずれか1種以上のケトエノール互変異性化合物を含むことが好ましく、最も好ましくは乾燥工程で除去可能で触媒活性を再賦活化しやすいため、アセチルアセトンを含むことが好ましく、ウレタンプレポリマー組成物(G)中の含有量としては、0.001~20重量部の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.005~10重量部の範囲である。
【0107】
なかでも、特に限定されないが、本発明のウレタンプレポリマー組成物(G)は、ウレタンプレポリマー(E)の分子量が低く、多官能成分を含むポリアルキレンオキシド(B)を分子内ではなく混合物として主に含んでおり少量のケトエノール互変異性化合物の使用量でも顕著に長い可使時間を発現しやすく、より高固形分化が可能で低VOCの特長を発現しやすいため、ウレタンプレポリマー組成物(G)中のケトエノール互変異性化合物の含有量が0.01~1.0重量%の範囲で含むことがより好ましく、更に好ましくは0.01~0.7重量%の範囲であり、最も好ましくは0.01~0.3重量%の範囲である。また、ケトエノール互変異性化合物を含む場合の含有量としては、より可使時間が長くなりやすいため金属成分を含むウレタン化触媒に対するモル比率(ケトエノール互変異性化合物/金属触媒)が3~1000倍の範囲であることが好ましく、更に好ましくは5倍~100倍の範囲である。
【0108】
なかでも、ウレタンプレポリマー組成物(G)中のケトエノール互変異性化合物の含有量が0.01~1.0重量%の範囲であって、且つイソシアネート架橋剤C2770をウレタンプレポリマー組成物(G)中の全水酸基量に対して1.3当量のNCO基量となるように混合した際の20%の粘度上昇に要する時間が10時間以上となることが好ましく、そのような性状で得られやすい。更に好ましくは、ケトエノール互変異性化合物の含有量が0.01~0.7重量%の範囲であって、且つイソシアネート架橋剤C2770をウレタンプレポリマー組成物(G)中の全水酸基量に対して1.3当量のNCO基量となるように混合した際の20%の粘度上昇に要する時間が24時間以上となることが好ましく、最も好ましくは、ケトエノール互変異性化合物の含有量が0.01~0.3重量%の範囲であって、且つイソシアネート架橋剤C2770をウレタンプレポリマー組成物(G)中の全水酸基量に対して1.3当量のNCO基量となるように混合した際の20%の粘度上昇に要する時間が48時間以上であることが好ましく、そのような性状で得られやすい。
【0109】
酸遅延剤としては、特に限定されないがpKa5.0以下の酸を含むことが好ましい。そのようなpKa5.0以下の酸としては、塩酸、硝酸、リン酸やエチルアシッドホスフェートや2-エチルヘキシルアシッドホスフェート等の炭素数2~20の酸性リン酸エステル等のリン系酸遅延剤などが挙げられ、なかでも、反応性と物性のバランスが良好となりやすいためリン系酸遅延剤を用いることが好ましい。
【0110】
帯電防止剤としては、特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩やイオン液体等が挙げられ、例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド等のリチウム塩や4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ホスホニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0111】
可塑剤としては、特に限定されるものではないが、脂肪酸エステルや脂環式エステル、ポリエーテルエステル等が挙げられ、例えばエポキシ化脂肪酸エステル、ミリスチン酸エステル、ポリアルキレングリコールの末端エステル変性化合物等が挙げられる。
【0112】
有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ベンゼン、ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジメチルホルミアミド、トリエチレングリコールジメチルエーテルやジエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。溶解性、有機溶媒の沸点等の点から、特に、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、グリコールエーテル系溶媒またはこれらの混合溶媒が好ましい。なお、これらの溶媒は、任意の段階で添加することができる。
<ウレタン形成性組成物(H)>
ウレタン形成性組成物(H)は、上記ウレタンプレポリマー組成物(G)とイソシアネート化合物(F)を含む、組成物である。
【0113】
イソシアネート化合物(F)としては、特に限定されるものではないが、前記イソシアネート化合物(C)と同じものを挙げることができ、好ましいイソシアネートも同じものが挙げられる。イソシアネート化合物(F)と、イソシアネート化合物(C)とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0114】
なかでも、相溶性が向上してより高透明なウレタン形成性組成物(H)となって、より顕著に柔軟で且つ濡れ性に優れ、高透明なウレタン硬化物を得られやすいため、イソシアネート化合物(F)中にアロファネート構造を含むことが好ましい。
【0115】
アロファネート構造としては、特に限定されないが、例えば、下記化学式(1)に示される構造が挙げられ、好適に含まれる。
【0116】
【化1】
【0117】
[前記化学式(1)中のR1は、モノオール残基またはポリオール残基である。]
また、前記化学式(1)中のR1がポリオール残基の場合、特に限定されないが、例えば、下記化学式(2)に示される構造が挙げられ、好適に含まれる。
【0118】
【化2】
【0119】
[前記化学式(2)中のR1はポリオール残基であり、通常ポリオールからn価の水酸基を除いた構造で、前記nは通常2~100の範囲である。]
化学式(2)中のR1は、より相溶性に優れやすいことから、炭素数1~50のモノオール残基またはポリオール残基であることが好ましい。
【0120】
化学式(2)中のnは、運動性が高くなってより濡れ性に優れやすいことから、1~2の範囲の整数(R1がモノオール残基、又はジオール残基)であることが好ましい。
【0121】
また、イソシアネート化合物(F)は、汎用性が高く良好な物性を発現しやすいことから、芳香族イソシアネート残基、脂肪族イソシアネート残基、脂環族イソシアネート残基、またはこれらのイソシアネートの変性体の残基、の何れか1種以上であることがより好ましく、更に好ましくは透明性に優れやすいことから脂肪族イソシアネート残基、脂環族イソシアネート残基、またはこれらのイソシアネートの変性体の残基の何れか1種以上であり、最も好ましくは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、これらのイソシアネートのアロファネート変性体及び/又はイソシアヌレート変性体の残基の何れか1種以上である。
【0122】
なかでも、反応性が高く、ウレタン硬化物の生産性が良好であり、得られるウレタン硬化物がより顕著に柔軟で且つ濡れ性に優れやすくなるため、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート変性体を含むことが好ましい。
【0123】
ポリイソシアネート(F)のゲルパーミエーションクロマトフラフィー(GPC)法により算出した平均のイソシアネート官能基数は、凝集力を保持しつつ、より柔軟性と濡れ性を発現しやすいことから1.90~2.99の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.95~2.79の範囲であり、更に好ましくは1.98~2.49の範囲であり、最も好ましくは2.00~2.19の範囲である。
ポリイソシアネート(F)の平均のイソシアネート官能基数の算出方法としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により算出したポリイソシアネートの数平均分子量とイソシアネート含量(イソシアネート基濃度)を用い、下記の式により算出した。
イソシアネート官能基数=(ポリイソシアネート数平均分子量×イソシアネート基濃度)/(42×100)
また複数のポリイソシアネートを用いる場合、各原料の使用量と各原料の平均のイソシアネート官能基数、ポリイソシアネート数平均分子量よりポリイソシアネート(F)全体の平均のイソシアネート官能基数を求めてもよい。
ウレタン形成性組成物(H)中のイソシアネート化合物(F)の含有率については、特に限定されないが、ウレタンプレポリマー組成物(G)中の全水酸基に対するイソシアネート化合物(F)に由来するイソシアネート基の量(MNCO)の比(MNCO/MOH)が、モル比率で0.5以上4.0未満であることが好ましく、更に好ましくは、より硬化性が良好で、得られるウレタン硬化物中に過剰のNCO基と空気中の水分等の反応による炭酸ガス発泡痕がより発生しにくいため0.9以上2.5未満の範囲であり、最も好ましくは1.0以上1.7未満である。
【0124】
またウレタン形成性組成物(H)中のウレタンプレポリマー組成物(G)とイソシアネート化合物(F)の重量比((G)の重量/(F)の重量)は、特に限定されないが、通常99/1~20/80の範囲であり、好ましくは98/2~50/50の範囲である。
なかでも、本発明のウレタンプレポリマー組成物(G)は、水酸基価が高い低分子量のポリオール多く混合することなく良好な凝集力で再剥離性を発現するウレタン硬化物を形成しやすいため、少量のイソシアネート化合物(F)で硬化することがより好適であり、ウレタンプレポリマー組成物(G)とイソシアネート化合物(F)の重量比((G)の重量/(F)の重量)は97/3~85/15の範囲であることが好ましく、最も好ましくは96/4~90/10の範囲である。上記比率で含むことで、凝集力を保持しつつより顕著に柔軟なウレタン硬化物が得られやすい。また、水酸基価が高い低分子量のポリオール多く混合することなく、少量のイソシアネート化合物(F)で硬化することが可能なため、架橋剤混合後の増粘が緩やかであり、可使時間が長くなってハンドリング性がより向上しやすい。
【0125】
ウレタン形成性組成物(H)には、ウレタンプレポリマー組成物(G)にて例示した添加剤等を含んでもよく、必要に応じて追加してもよい。好ましい添加剤の種類や含有量の範囲もウレタンプレポリマー組成物(G)の好ましい添加剤の種類や含有量の範囲と同等である。添加剤の種類や含有量がこの範囲であると、ウレタン形成性組成物(H)を塗工機などで塗工する際に良好な塗工性が得られ、良好な可使時間、硬化性を示すなど取り扱いを容易なものにすることができ、得られるウレタン硬化物もより顕著な柔軟性を発現しやすい。
【0126】
ウレタン形成性組成物(H)の調製には、プレポリマーや原料を均一に分散することができる方法であれば特に限定されるものではなく、従来公知の様々な撹拌方法を用いて撹拌する方法が挙げられる。撹拌機としては、例えば、汎用撹拌機、自転公転ミキサー、ディスパー分散機、ディゾルバー、ニーダー、ミキサー、ラボプラストミル、プラネタリーミキサー等を挙げることができる。ウレタン形成性組成物(H)が撹拌する温度で液状の場合は、汎用撹拌機、自転公転ミキサー、ディスパー分散機、ディゾルバーが好適に用いられる。
【0127】
ウレタン形成性組成物(H)の25℃における粘度は特に限定されないが、より液流れがしにくく均一に薄膜~厚膜まで成形がしやすいため、0.1~30Pa・sの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは1~20Pa・sの範囲であり、最も好ましくは3~15Pa・sの範囲である。また、特に限定されないが、乾燥工程などの高温条件でも、液流れやボイドの発生、塗工末端の厚み増加等の成形不良が発生しにくいため、80℃における粘度が0.05~20Pa・sの範囲であることが好ましく、更に好ましくは、0.1~15Pa・sの範囲であり、最も好ましくは0.5~10Pa・sの範囲である。また、0~25℃で均一な液状であり、静置により分離がないことが好ましい。
【0128】
また、ウレタン形成性組成物(H)に有機溶媒を用いる場合の有機溶剤としては特に限定されず、ウレタンプレポリマー組成物(G)に含んでもよい有機溶媒にて例示した有機溶媒等が挙げられる。好ましい濃度範囲や溶液粘度もウレタンプレポリマー組成物(G)の好ましい濃度範囲や溶液粘度と同等である。濃度範囲や溶液粘度がこの範囲であると、ウレタン形成性組成物(H)を塗工機などで塗工する際に良好な塗工性が得られるなど取り扱いを容易なものにすることができる。
【0129】
ウレタン形成性組成物(H)は、ウレタンプレポリマー(E)の分子量が10万未満と低く、多官能成分であるポリアルキレンオキシド(B)を分子内ではなく混合物として主に含んでいるため、イソシアネート化合物(F)と混合後の増粘が緩やかであり、可使時間が長くハンドリング性が優れやすく、不揮発分濃度が80重量%以上であって、20%の粘度上昇に要する時間が4時間以上であることが好ましく、そのような性状で得られやすい。
【0130】
なかでも、ウレタン形成性組成物(H)の不揮発分濃度が80重量%以上で且つケトエノール互変異性化合物の含有量が0.01~1.0重量%の範囲であって、20%の粘度上昇に要する時間が15時間以上となることが好ましく、そのような性状で得られやすい。
更に好ましくは、不揮発分濃度が90重量%以上で且つケトエノール互変異性化合物の含有量が0.01~0.7重量%の範囲であり、20%の粘度上昇に要する時間が24時間以上となることが好ましく、最も好ましくは、不揮発分濃度が95重量%以上で且つケトエノール互変異性化合物の含有量が0.01~0.3重量%の範囲であり、20%の粘度上昇に要する時間が48時間以上であることが好ましく、そのような性状で得られやすい。
【0131】
<ウレタン硬化物(I)>
ウレタン硬化物(I)は、ウレタン形成性組成物(H)の反応物であって、ウレタン形成性組成物(H)中のウレタンプレポリマー(E)やポリアルキレンオキシド(B)等の活性水素化合物とイソシアネート化合物(F)の反応物を含む。
【0132】
ウレタン硬化物(I)は、ウレタン形成性組成物(H)を種々の方法によって反応させ、硬化(固化)することで得られる。それらのウレタン硬化物(I)の製造方法としては特に限定されない。例えば、ウレタン形成性組成物(H)を、必要に応じて、ウレタン化触媒、酸化防止剤、安定剤、充填剤、架橋剤、その他添加剤等の存在下、常温または150℃以下の高温でウレタン化反応、ウレア化反応を進めることによって製造することができる。
【0133】
また、良好な硬化性を発現するため、必要に応じて高温で賦活化する工程や溶剤を除去する工程を含んでもよい。
ウレタン硬化物(I)の用途は、特に限定されるものでなく、通常のポリウレタンが使用される何れの用途にも使用できるが、機械物性や粘・接着特性などが要求される用途に特に好適に使用できる。具体的には、建築・土木用シーリング材、建築用弾性接着剤等の接着剤、ガムテープや表面保護フィルム、光学用に代表される各種粘着剤、剥離材、制振材、塗料、エラストマー、塗膜防水材、床材、可塑剤、軟質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム等の用途が例示され、好適に使用できる。
【0134】
その中でも、ポリウレタンに対して、粘接着特性、耐汚染性、低VOC、耐寒性や柔軟性等への要求が強く、環境適応性や施工性、塗工性、下地への追従性が求められることから、シーリング材、塗料、粘着剤、接着剤として用いることが特に好ましい。
【0135】
<ウレタンシート>
ウレタン形成性組成物(H)は、塗工機等で塗工する際の塗工性が顕著に優れることから、薄膜~高厚みまで均一な厚みのウレタン硬化物(I)のシートが得られる。
【0136】
ウレタンシートにおいては、その厚みは特に制限されないが、塗膜の外観が特に良好になることから、塗膜の厚みは0.1~3000μmの範囲であることが好ましく、5~1000μmの範囲であることが更に好ましい。なかでも、高固形分で適度な粘度を有するウレタン形成性組成物(H)となりやすいため高厚みまで均一な厚みのウレタン硬化物(I)のシートが得やすく、45~300μmの範囲であることが好ましい。
【0137】
また、種々の用途に適用しやすくするため、少なくとも1種の基材とその基材上に設けられたウレタン硬化物(I)層を有する2層以上の構成のウレタンシートとしてもよく、少なくとも1種の基材とその基材上に設けられたウレタン硬化物(I)層に加えて離型フィルム層等を含む3層以上の構成や、基材の両面にウレタン硬化物(I)層を有する3層構成、更に当該ウレタン硬化物(I)層に加えて離型フィルム層等を含む5層以上の構成のウレタンシートとしてもよい。また粘着剤層に芯材を含包してシート化してもよい。
【0138】
<ウレタン粘着剤>
ウレタン硬化物(I)は、再剥離性に優れ、顕著に良好な柔軟性、低温特性を示すため、ウレタン硬化物(I)を含むことでウレタン粘着剤として特に好適に用いることができる。また高固形分の原料由来で形成しやすく、環境への負荷が小さい低VOC製品となりやすく好ましい。
【0139】
本発明のウレタン粘着剤は、不飽和度が低いポリアルキレンオキシドを用いており高分子量化しても架橋点を保持しやすく、良好な柔軟性と粘着特性、低温~高温までの耐衝撃性を発現しやすい。また、粘着剤形成性組成物が適度な粘度を有し、均一な組成で得られやすいため透明性が優れやすい。
【0140】
本発明のウレタン粘着剤は、周波数1Hz、25℃での弾性率が2×10Pa~3×10Pa以下であることが好ましく、さらに好ましくは3×10Pa~2×10Paの範囲であり、最も好ましくは、5×10Pa~1.5×10Paの範囲である。周波数1Hz、25℃での弾性率が2×10Pa~3×10Paの範囲内であれば、凝集力を保持しつつ粘着剤が変形しやすいため、保持力や粘着力等の粘着特性を発現しつつ被着体の段差へ追従して気泡が発生を抑制しやすいため好ましい。
【0141】
本発明において、25℃での弾性率は、動的粘弾性測定装置UBM社製RheogelE-4000を用いて、測定温度-100℃~200℃、昇温速度2℃/min、周波数1Hz、せん断モード条件にて測定を行い、それぞれの温度における貯蔵弾性率G‘の値を意味する。
【0142】
ウレタン粘着剤のガラス転移温度は、特に限定されないが-30℃以下の範囲が好ましい。さらに好ましくは、-80℃~-50℃の範囲である。ガラス転移温度-30℃以下の範囲であれば、糊残りや耐熱性が低下せず、低温下でも落下した際に剥離や割れが抑制でき低温での高い密着性が期待できるため好ましい。
【0143】
本発明において、ガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置、UBM社製Rheogel E-4000を用いて、測定温度-100℃~200℃、昇温速度2℃/min、周波数1Hz、せん断モード条件にて測定を行い、貯蔵弾性率G‘に対する損失弾性率G“の比であるtanδのピーク値を取る温度をガラス転移温度として評価した。
【0144】
ウレタン粘着剤のJIS Z0237の方法で測定した無アルカリガラスとの粘着力は、特に限定されないが、0.1N/25mm~30N/25mm未満の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは適度な粘着力を発現しつつ再剥離性に顕著に優れやすいため、0.5N/25mm~10N/25mm未満の範囲である。また特に限定されないが、再剥離性の観点から剥離形態が界面剥離であることが好ましい。
【0145】
ウレタン粘着剤の粘着力は、無アルカリガラスとして0.7mm厚みのコーニング社製イーグルXGを用いてJIS Z0237に準じて測定した値である。具体的には、粘着面に厚さ25μmのPETフィルム東レ社製ルミラーS-10を裏打ちし、幅25mmにカットしてJIS Z0237に準じてロール圧着して試験片を作製。引張試験機オリエンテック社製RTG-1210を用いて、JIS Z0237に準拠して23℃、50%RHの雰囲気下、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で行った、180°引き剥がし粘着力(N/25mm)を粘着力とした。
【0146】
ウレタン粘着剤のJIS Z0237の方法で測定したボールタックは、特に限定されないが、6以上であることが好ましい。なかでも、瞬間的に接着して段差へ追従しやすいため21以上の範囲が好ましく、さらに好ましくは25以上であり、最も好ましくは32以上である。ボールタックが21以上であれば濡れ性に顕著に優れるため、張り合わせ時間の短縮が期待でき、さらには位置ズレ等が抑制されるため生産性が向上しやすい。
【0147】
本発明のウレタン粘着剤のボールタックはJIS Z0237に準じて評価した値であり、具体的には、傾斜角度30度、助走距離10cmの条件で粘着剤距離10cmの間で停止した鋼球のボールNo.である。
【0148】
本発明に用いるウレタン粘着剤のJIS Z0237の方法で測定した保持力は、特に限定されないが、40℃条件で100分以上であることが好ましく、更に好ましくは24時間以上であり、最も好ましくは24時間以上であり且つズレが1mm未満で実質ノンクリープである。
【0149】
ウレタン粘着剤の保持力はJIS Z0237に準じて評価した値であり、具体的には、SUS基材に25mm×25mmの接着面で張り合わせ、40℃、静荷重1kgの条件で重りが落下するまでの時間を評価した。保持力が40℃条件で100分以上であれば、移行成分が少なく、高い凝集力により再剥離性が期待できる。
【0150】
ウレタン粘着剤のJISK7136の方法で測定したHazeは、特に限定されないが、好ましくは80μm厚みでのHazeが2%未満であり、さらに好ましくはHazeが0.4%未満であり、もっとも好ましくはHazeが0.2%未満である。80μm厚みでのHazeが1%未満であれば、透明性が高く視認性に優れ、良好な外観が期待できるため好ましい。特に限定されないが、光学用粘着シート等の光学用途で用いる場合、80μm厚みでのHazeが1%未満であることが好ましい。このような80μm厚みでのHazeが1%未満の粘着剤は、粘着剤形成性組成物を構成するNCO基総量と活性水素基総量のモル比率([NCO基総量]/[OH基総量])が0.9~1.3未満となる範囲の条件で製造することが好ましい。
【0151】
本発明において、Hazeは測定に用いる基材を除いた値である。具体的には、PMMA基材のHazeが0.2%、PMMAと粘着剤の2層構造でのHazeが0.5%の場合、粘着剤のHazeは0.5-0.2=0.3%とした。
【0152】
ウレタン粘着剤は耐湿熱条件保持して取り出し後に白化しにくく、耐湿熱白化性が良好である。具体的には、85℃、85%RH条件で5日間保持後に取り出し、25℃、50%RHの恒温室に静置後のHaze値変化が1%未満となりやすい。
ウレタン粘着剤は、室温で柔軟性を有し高温でも弾性を保持でき、振動吸収性、粘着性、低温特性、タック性に優れ、印刷段差への追従性や耐衝撃性、低温から高温までの密着性が期待できる。
【0153】
ウレタン粘着剤は、フィルム状やシート状、板状、ブロック状等任意の形状で提供することができる。
【0154】
<ウレタン粘着剤シート>
本発明のウレタン粘着剤シートは、少なくとも1種の基材とその基材上に設けられた粘着剤層を有し、粘着剤層が本発明のウレタン硬化物(I)を含むことをその特徴とする。
【0155】
本発明のウレタン粘着剤シートに用いる基材としては、例えば、離型フィルム、芯材等が挙げられる。このような離型フィルムとしては、例えば、PET、PP、TPX、これらのシリコーン、フッ素等の離型処理したフィルム等が挙げられる。市販品としては、例えば、東洋紡社製ピューレックスA31、A33、A35、A43等の離型PETが挙げられる。芯材としては、不織布やPETフィルム、PPフィルム等が挙げられる。
【0156】
本発明のウレタン粘着剤シートの積層構成としては、特に限定されないが、例えば、離型PETで両面を挟み込んだ3層構造の基材レス型粘着シート、粘着剤層に芯材を用いた5層構成の両面粘着シート等が挙げられる。
【0157】
本発明のウレタン粘着剤シート中の粘着剤層の厚みとしては、特に限定されないが、好ましくは10μm~1000μmの範囲であり、さらに好ましくは15μm~500μmの範囲であり、最も好ましくは45μm~300μmである。特にフィルムセンサー用の光学用粘着シートの場合、15μm~150μmの範囲が好ましく、タッチパネルとカバーパネル間用ガラスセンサー向け光学用粘着シートの場合、50μm~300μmの範囲が好ましい。
【0158】
ウレタン粘着剤を用いたウレタン粘着剤シートの形状としては、所望の形状としてよい。特に限定されないが、ロール状としてもよく、裁断してシート状としてもよい。
【0159】
ウレタン粘着剤シートの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、本発明のウレタンプレポリマー組成物(G)を含む成分と、架橋剤を含む成分とを所定の比率で混合してウレタン形成性組成物とした後、例えば、ロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、リバースコーター、エアナイフコーター、コンマコーター、ダイコーター等による塗工する方法を挙げることができる。これらの塗工方式を用いる場合、基材の片面又は両面にウレタン形成性組成物を塗布した後、必要に応じて脱泡、加熱、乾燥することが望ましい。
【0160】
加熱する方法としては、例えば、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、一般に使用される方法を用いることができる。乾燥温度は特に制限されないが、好ましくは50~200℃、より好ましくは70~180℃、さらに好ましくは80~150℃の範囲である。基材として熱可塑性樹脂を使用する場合、乾燥温度はその融点以下であることが望ましい。乾燥温度50~200℃の範囲では、基材の劣化や色調の変化が生じにくいため好ましい。
【0161】
ウレタン粘着剤、ウレタン粘着剤シートの用途としては、特に限定されず、例えば、テープ、ラベル、シール、化粧用シート、滑り止めシート、両面粘着テープ等が挙げられる。具体的には、包装テープ、ラベル用テープ、マスキングテープ、クラフトテープ等の包装・事務・家庭用粘着テープ、絆創膏等の医療用テープ、皮膚貼付用等の生体用テープ、壁紙用テープ、フォームテープ、建築用弾性粘着剤等の建築用テープ、パソコン、テレビ、携帯電話、自動車、太陽電池、その他家電等に用いる電子材料用テープ、液晶ディスプレイ、タッチパネルの密着等に用いる光学用粘着シート、製造工程における表面保護テープ、防水テープ、導電性テープ、放熱性テープ等が例示され、好適に使用できる。
【0162】
本発明のウレタン粘着剤、粘着シートは、特に柔軟性が必要な用途、例えば、ガラス等の割れやすい基材の密着や飛散防止、電子機器等、振動や衝撃に弱い機器の密着、フォルダブル材料等の折り曲げに対しての追従やタッチパネル等の印刷段差への追従が必要な用途、動きがある生体の追従性等が必要な用途に好適に使用することができ、具体的には、タッチパネル用途等の光学用途や電気電子部品用途、生体用テープ等に使用することができる。具体的な用途としては、特に限定するものではないが、スマートフォン、タブレットPC、ノートパソコン等の電子機器に用いられる光学用粘着シート、電子部品の保護テープが例示される。これらのなかでも、上記電子機器内部の各種フィルムの密着に好適に用いることができる。
【0163】
光学用粘着シートの具体的な光学用途としては、特に限定されないが、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット、フォルダブル端末、カーナビゲーション、パーソナルコンピューター、券売機等のタッチパネルやディスプレイ、ITOフィルムや銀メッシュ、銅メッシュ、偏光板といったその周辺の機能性フィルムの密着等に用いる粘着シートが挙げられる。タッチパネルの動作方式としては、特に限定されず、抵抗膜式、静電容量式、光学式、超音波式、電磁誘導式等に好適に用いることができる。
【実施例0164】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例により限定して解釈されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例で使用した原料、及び評価方法は以下に示すとおりである。
(原料1)実施例及び比較例に用いたポリアルキレンオキシド(A1またはAC1)
実施例及び比較例に用いたポリアルキレンオキシド等の性状は、以下の方法で求めた。
<ポリアルキレンオキシドの水酸基価と数平均分子量>
ポリアルキレンオキシドの水酸基価は、JIS-K1557-1に記載の方法に準拠して測定した。また、ポリアルキレンオキシドの水酸基価とポリアルキレンオキシド1分子中の水酸基数から、ポリアルキレンオキシドの数平均分子量を算出した。
<GPC数平均分子量、重量平均分子量、分子量分布>
ポリアルキレンオキシド、又はウレタンプレポリマー、又はウレタン形成性組成物を、溶媒としてTHFを用いた標準条件によりGPC測定を行い、標準ポリスチレン換算の数平均分子量、重量平均分子量を評価した。
【0165】
サンプル瓶へ固形分が10mgとなる量とTHF10mlを添加し、1終夜静置することで溶解し、PTFEカードリッジフィルター(0.5μm)でろ過することでサンプルを得た。検出器としてRI検出器RI8020、測定用カラムとしてTSKgelGMR-HHRL×2本直列を用いた(いずれも東ソー社製)。
測定条件は、カラム温度40℃、流速1.0ml/min、溶媒THFの条件で測定を行い、東ソー社製標準ポリスチレンを用いた3次近似曲線検量線として数平均分子量、重量平均分子量の解析を行った。また、それらの比率Mw/Mnを分子量分布とした。測定装置には東ソー製HLC-8320GPC、解析には東ソー製HLC-8320GPC-ECOSEC-WorkStationを用いた。
<ポリアルキレンオキシドの不飽和度、平均官能基数>
ポリアルキレンオキシドの不飽和度は、高分子論文集1993,50,2,121-126に記載のNMR法に準拠し、スキャン回数800回で測定した。更に当該不飽和度を片末端に不飽和基を有するモノオール量に換算し、実質の水酸基の平均官能基数を算出した。また、ウレタンプレポリマー、ウレタン形成性組成物中の不飽和度は、原料が分かっているため、用いたそれぞれのポリアルキレンオキシドの不飽和度と量比より算出した。
<エチレンオキシド含量(wt%)>
核磁気共鳴装置(NMR)を用い、重溶媒にテトラメチルシラン含有重クロロホルムを使用して1HNMRを測定した。0.8~1.5ppmの範囲の積分値(プロピレンオキシド鎖)、3.2~3.9ppmの範囲の積分値(プロピレンオキシド鎖およびエチレンオキシド鎖)からポリオール中のエチレンオキシド含量を算出した。
<水酸基の1級比率>
核磁気共鳴装置(NMR)を用い、重溶媒にテトラメチルシラン含有重クロロホルムを使用して、トリフルオロ無水酢酸で処理したサンプルの1HNMRを測定した。トリフルオロ無水酢酸で処理したサンプルの4.3ppm付近の積分値(1級OH基由来のエステルが結合したメチレン)、5.2ppm付近の積分値(2級OH基由来のエステルが結合したメチン)からポリオール水酸基の1級比率を算出した。
(原料1-1)実施例に用いたポリアルキレンオキシド(A1)、比較例に用いたポリアルキレンオキシド(AC1)
ポリアルキレンオキシド(A1)、(A3)、(AC2):イミノ基含有フォスファゼニウム塩(IPZ)触媒とトリイソプロポキシアルミニウムを併用し、脱水・脱溶媒を十分に行い、2官能分子量400のポリオキシプロピレングリコールに十分に脱水したプロピレンオキシドを付加したポリオキシプロピレングリコールであり、少量の1級水酸基を有するポリアルキレンオキシドであった。
ポリアルキレンオキシド(A2):イミノ基含有フォスファゼニウム塩(IPZ)触媒とトリイソプロポキシアルミニウムを併用し、脱水・脱溶媒を十分に行い、2官能分子量400のポリオキシプロピレングリコールに十分に脱水したプロピレンオキシド、エチレンオキシドを付加したポリオキシエチレン・プロピレングリコールであり、高い1級水酸基比率のポリアルキレンオキシドであった。
ポリアルキレンオキシド(AC1)、(AC3):水酸化カリウム触媒を用いて常法によりプロピレンオキシドを付加し製造したポリアルキレンオキシド。
ポリアルキレンオキシド(A1)と(A2)と(A3)と(AC2)の性状を表1に示すが、いずれも不飽和モノオール量が極めて少なく(不飽和度が極めて低く)、分子量分布が狭いものであり、少量以上の1級水酸基を有し、誘導期の短縮・抑制が期待できるポリアルキレンオキシドであった。また(AC2)は分子量が高いため、比較的高粘調のポリアルキレンオキシドであり、それを主に用いて得られるウレタンプレポリマー組成物の一定の粘度、低いチキソトロピー性での高固形分化が期待できないポリアルキレンオキシドであった。
【0166】
ポリアルキレンオキシド(AC1)の性状を表1に示すが、不飽和モノオール量が多く(不飽和度が高く)、分子量分布が広いものであり、それを主に用いて得られるウレタンプレポリマー組成物は0.020meq/g未満の不飽和度、並びに分子量分布1.50未満の達成が期待できないポリアルキレンオキシドであった。
【0167】
【表1】
【0168】
(原料1-2)実施例に用いた3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)
ポリアルキレンオキシド(B1-1):市販の3官能のポリアルキレンオキシドであり、不飽和度がやや低く少量のモノオールを有するポリオキシエチレン・プロピレンオキシドである。
【0169】
ポリアルキレンオキシド(B1-2)、(B1-3):市販の3官能のポリアルキレンオキシドであり、分子量が低めのため不飽和度がやや低いポリプロピレンオキシドである。
ポリアルキレンオキシド(B1-4):イミノ基含有フォスファゼニウム塩(IPZ)触媒とトリイソプロポキシアルミニウムを併用し、脱水・脱溶媒を十分に行い、3官能分子量400のグリセリン開始ポリオキシプロピレングリコールに十分に脱水したプロピレンオキシドを付加したポリオキシプロピレングリコールであり、不飽和モノオールが顕著に少なく、実質の平均官能基数がほぼ3と高いポリプロピレンオキシドである。
【0170】
ポリアルキレンオキシド(BC1-1):市販のポリアルキレンオキシドであり、分子量が高めのため不飽和度が高く、3つの水酸基を有するポリアルキレンオキシドを含むが実質の平均官能基数が2に近いポリプロピレンオキシドである。
【0171】
【表2】
【0172】
なお、実施例、比較例に用いたポリアルキレンオキシド(A)、(AC)、(B1)、(BC-1)は、いずれも、加熱・真空脱水した後に使用した。また、IPZ触媒を使用、または併用して作製したポリアルキレンオキシドについては、触媒を除去した上で使用した。
(原料2)実施例及び比較例に用いたイソシアネート化合物(C)、(I)
イソシアネート(C1):1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)
イソシアネート(C2):イソホロンジイソシアネート(IPDI)
イソシアネート(I):アロファネート変性2官能HDI系架橋剤(東ソー社製コロネート2770)
(原料3)実施例及び比較例に用いたケトエノール互変異性化合物(D)
ケトエノール互変異性化合物(D1):アセチルアセトン
(原料4)添加剤
ウレタン化触媒:トリスアセチルアセトネート鉄(Fe(acac)3)
(ウレタンプレポリマー(E)、ウレタンプレポリマー組成物(G)の作製)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた四つ口ナスフラスコに、ポリアルキレンオキシド(A)等のポリオール、ウレタン化触媒としてトリスアセチルアセトネート鉄(Fe(acac)3)の10%MEKマスターバッチを固形分換算で表記載の使用量となる量加え、100℃条件にて2時間真空脱水、脱溶媒を行った。
【0173】
冷却後、イソシアネート化合物(C)を所定量加え、実質無溶剤、無可塑剤で70℃まで昇温して反応を行った。反応器内容物のNCO基量を赤外分光光度計を用いて追跡、NCO基の消失により反応完結を確認しウレタンプレポリマー(E)の形成を確認した。冷却後、ポリアルキレンオキシド(B1)を加え、必要に応じてケトエノール互変異性化合物(D)の添加を行い、混合してウレタンプレポリマー組成物(G)とした。
【0174】
ウレタンプレポリマー(E)の分子量分布は溶媒にテトラヒドロフラン、標準物質にポリスチレンを用い、ポリアルキレンオキシド(B1)投入前にGPC法による測定を行い、残存したポリアルキレンオキシドを除いたピークより算出した。残存したポリアルキレンオキシド(A)とウレタンプレポリマー(E)の含有量は上記測定によるポリアルキレンオキシド成分とプレポリマー成分の面積比より算出した。
ウレタンプレポリマー組成物(G)の数平均分子量は溶媒にテトラヒドロフラン、標準物質にポリスチレンを用い、ポリアルキレンオキシド(B1)投入後、ケトエノール互変異性化合物(D1)投入前にGPC法により算出した。
【0175】
ウレタンプレポリマー組成物(G)のチキソトロピーインデックス(TI値)は、ポリアルキレンオキシド(B1)、ケトエノール互変異性化合物(D1)投入後にB型粘度計を用いて測定した。
【0176】
ウレタンプレポリマー組成物(G)中の各成分の含有量は、ウレタンプレポリマー(E)と残存したポリアルキレンオキシド成分の含有量、添加したポリアルキレンオキシドとケトエノール互変異性化合物(D1)の重量より計算した。なお、ウレタンプレポリマー形成時に使用する場合があるウレタン化触媒や吸湿した水分はごく少量のため、加味せず組成比を算出した。
(ウレタン形成性組成物(H)、ウレタン硬化物(I)の作製)
実施例及び比較例では、所定量の各原料(ウレタンプレポリマー組成物(G)、イソシアネート(F))を30mlのサンプル瓶にいれ、ペンシルミキサーを用いて、常温で撹拌、脱泡することでウレタン形成性組成物(H)を得た。
(性能評価)
ウレタン形成性組成物(H)を、厚さ38μmのPETフィルム上に、乾燥後の厚みが80μmとなるようにベーカー式アプリケーターを用いて塗工した。その後、オーブン内温度が130℃になるよう設定した防爆オーブンに5分間保持して揮発分を除去と硬化反応を進行させ、PETフィルム上にウレタン硬化物(I)を形成し、離型PETを張り合わせて3層のシート構造とした。その後23℃、相対湿度50%の環境で1週間静置することでポリウレタンシートを得た。
【0177】
その工程においてウレタンプレポリマー組成物(G)、並びにウレタン形成性組成物(H)、の性能の指標として、以下の評価基準にて評価した。
<高固形分化>
◎(低VOC合格):不揮発分99%以上、且つ25℃における粘度が1.5~20Pa・sの範囲
○(低VOC合格):◎判定を除く、不揮発分80%以上、且つ25℃における粘度が0.1~30Pa・sの範囲
×(低VOC不合格):不揮発分80%未満、又は80%以上で25℃における粘度が0.1~30Pa・sの範囲外。高固形分で一定の粘度を有さないため、低VOC化困難と判断。
<硬化性>
◎(硬化性合格):130℃、5分硬化直後に高い凝集力を発現し、指触時に指に粘着剤が残らない。
○(硬化性合格):130℃、5分硬化直後の指触時、指に粘着剤が残るが、離型PET張り合わせ後の23℃、相対湿度50%の環境で1週間のエージングにより粘着剤が拡がらず指触時に指に粘着剤が残らない。
×(硬化性不合格):130℃、5分硬化し、離型PET張り合わせ後の23℃、相対湿度50%の環境で1週間のエージングで粘着剤が拡がるが指触時に指に粘着剤が残らない。硬化が遅いと判断。
××(硬化性不合格): 130℃、5分硬化し、離型PET張り合わせ後の23℃、相対湿度50%の環境で1週間のエージングした後も指触時に指に粘着剤が残る。硬化が不十分と判断。
<成形性>
◎(成形性合格):硬化性の評価が◎、且つ塗工、硬化時にハジキがなく流動による厚みムラが5%以内。
○(成形性合格):硬化性の評価が○、且つ塗工、硬化時にハジキがなく流動による厚みムラが5%以内。
×(成形性不合格):硬化性の評価が○以上で、且つ流動による厚みムラが5%超。塗工不良や硬化時の高温で液流れしやすいと判断。
××(成形性不合格):上記以外(硬化性の評価が×以下、チキソトロピーインデックスが高く塗工性が悪い、等)。
<可使時間>
◎(可使時間:顕著に良好):硬化剤を混合し、48時間後の粘度上昇率が20%以下。
○(可使時間:良好):硬化剤を混合し、24時間後の粘度上昇率が20%以下、48時間後の粘度上昇率が20%超。
△(可使時間:通常):硬化剤を混合し、10時間後の粘度上昇率が20%以下、24時間後の粘度上昇率が20%超。
×(可使時間不合格):硬化剤を混合し、10時間後の粘度上昇率が20%超。
なお、混合・静置は23℃条件で行い、粘度はB型粘度計にて25℃で測定した。
【0178】
高固形分化、硬化性、成形性何れも合格のものを、一定の粘度で高固形分化でき、良好な硬化性を示して、環境負荷が小さく、凝集力の高いウレタン硬化物の形成に資するウレタンプレポリマー組成物(G)、ウレタン形成性組成物(H)と判断した。
更に、可使時間が◎のものは、硬化性に加えて、特長的に長い可使時間を有するもの、と判断し、前記諸特性を発現しつつ、特にウレタン硬化物の連続生産に適した生産性に優れるウレタンプレポリマー組成物(G)、ウレタン形成性組成物(H)と判断した。
【0179】
また、上記工程にて得られたウレタン硬化物(I)を、以下の評価基準にて塗膜物性を評価し、性能の指標とした。
<再剥離性>
無アルカリガラスに張り付けて20分後に300mm/minで剥離を行い、剥離状態を評価。さらに剥離した被着体ガラスへ日東電工社製31Bテープを5kgローラーで3往復張り合わせて20分間静置後に300mm/minで剥離力を測定し、清潔なガラス面での31Bテープ剥離力との比率を残留接着率(ウレタン硬化物を再剥離後のガラス面での31B剥離力/清潔なガラス面での31B剥離力)として評価した。
◎(再剥離性合格):目視汚染や糊残りがなく、残留接着率が90~110%の範囲。
○(再剥離性合格):目視汚染や糊残りがなく、残留接着率が90%未満、又は110%超。再剥離可能、粘着力を変化する成分がごく僅かに残存するが比較的良好と判断。
×(再剥離性不合格):目視汚染や一部の糊残り、または曇り等の目視汚染が明確に発生する場合。被着体汚染により再剥離付加と判断。
××(硬化性不合格):凝集破壊により糊残りが発生する場合。
<柔軟性>
上記、性能評価の項にて両面離型PETを用いてウレタンシートを作製し、得られたウレタン硬化物のみを取り出してせん断モードにて動的粘弾性を測定し、25℃での弾性率(G’)を以下の基準で評価。段差追従性や折り曲げ追従性の指標とした。
◎(柔軟性合格):3.0×10Pa以上、2.0×10Pa・s以下。
○(柔軟性合格):2.0×10Pa・s超、3.0×10Pa・s以下。
×(柔軟性不合格):3.0×10Pa・s超。
※本評価では上記範囲外の弾性率の試験片はなかった。
<耐寒性>
◎(耐寒性合格):Tg-80℃以上~-50℃以下。
○(耐寒性合格):Tg-50℃超~-30℃以下。
×(耐寒性不合格):Tg-30℃超。
※本評価では上記範囲外のガラス転移点(Tg)の試験片はなかった。
<実用特性>
◎(実用特性合格):粘着力が0.5~10N/25mm、且つ保持力が24時間以上でズレが1mm未満。
○(実用特性合格):粘着力が◎と×の間の値、且つ保持力が100分以上。
×(実用特性不合格):粘着力が0.1N/25mm未満又は30N/25mm、又は保持力が100分未満。
<ボールタック>
◎(凝集力を有し、濡れ性が顕著に良好):21以上
○(良好):6以上20以下
×(通常):5以下
再剥離性、柔軟性、耐寒性、並びに実用特性が何れも合格のものを、凝集力に優れ、顕著に良好な柔軟性と耐寒性を有するウレタン硬化物(I)と判断し、良好な粘着物性と再剥離時の耐汚染性が期待できるウレタンシートへの展開が期待できるウレタン硬化物と判断した。
【0180】
更に、ボールタックが◎のものは、良好な塗膜物性に加えて、凝集力に加えて顕著に良好な濡れ性を有し、特長的に瞬時に高い粘着力を発現するものと判断し、諸物性を発現しつつ特に被着体への濡れ性が良く、折り曲げや変形、印刷段差等の追従性に特に期待できるウレタン硬化物(I)、ウレタンシートと判断した。
<ウレタンプレポリマー合成例1>
合成例1はポリアルキレンオキシド(A1)100重量部とウレタン化触媒としてトリスアセチルアセトナート鉄の10%メチルエチルケトン溶液をマスターバッチとして、トリスアセチルアセトナート鉄成分が0.02重量部となるように混合し、100℃で2時間減圧脱水・脱溶媒したポリオール組成物、及び、イソシアネート化合物(C1)を、(A1)に由来する水酸基の量(MOH)と(C1)に由来するイソシアネート基の量(MNCO)が、モル比率で、(C1)のMNCO/((A1)のMOH)=0.40で70℃まで昇温して反応を行った。
【0181】
反応器内容物のNCO基量を赤外分光光度計を用いて追跡し、NCO基の消失によって反応完結を確認し、ウレタンプレポリマー(E1)を含む組成物を得た。
当該組成物をGPC法により解析を行い、未反応のポリアルキレンオキシド(A1)を32area%、ウレタン基を有するウレタンプレポリマー(E1)を68area%含む組成物であり、ウレタン基を有するウレタンプレポリマー(E1)成分の分子量分布は1.35未満と顕著に狭い分散度であった。
【0182】
原料の脱水、脱溶媒を行った後に反応を行っているため残存溶媒と水分が併せて1000ppm未満と実質無溶剤の組成物であり、また使用原料から算出した不飽和度は0.0018meq/gが顕著に少ないものであった。
<ウレタンプレポリマー組成物、ウレタン形成性組成物の製造例1>
合成例1にて合成したウレタンプレポリマー(E1)を68area%、未反応のポリアルキレンオキシド(A1)を32area%含む組成物を84.7重量%、ケトエノール互変異性化合物(D1)を0.3重量%、3つの水酸基を含むポリアルキレンオキシド(B1-1)を15重量%の比率で混合し、ウレタンプレポリマー組成物(G1)を得た。
【0183】
ウレタンプレポリマー組成物(G1)中には、ポリアルキレンオキシド(A1)と3つの水酸基を含むポリアルキレンオキシド(B1-1)を併せてポリアルキレンオキシド成分として42.1重量%含み、使用原料から算出した不飽和度は0.0056meq/gと末端を封止しうるモノオール成分が顕著に少ないものであった。また揮発性のケトエノール互変異性化合物(D1)を0.3重量%となるように添加しており、本組成物の不揮発濃度は99.7重量%と顕著に高いものであり、低VOCが期待できるものであった。
【0184】
ウレタンプレポリマー組成物(G1)をGPC法により解析を行い、ウレタンプレポリマー(E1)成分およびポリアルキレンオキシド成分2種の2峰性の分布を示し、それらを併せた数平均分子量が14800と8000以上40000未満で高固形分での塗工に適した適度な分子量を有し、高固形分でも高粘調化せず、且つ塗工時の室温~乾燥温度まで一定の粘度が期待できるものであった。ウレタンプレポリマー組成物(G1)の25℃での粘度は9.6Pa・sと高固形分で一定の粘度を有し、更にチキソトロピーインデックスも1.03と十分に低いものであった。
【0185】
得られたウレタンプレポリマー組成物(G1)の水酸基の総量に対して、NCO基量が1.3当量となる比率でアロファネート基を有するイソシアネート化合物(F1)を混合することで、ウレタン形成性組成物(H1)を製造した。ウレタン形成性組成物(H1)の25℃での粘度は8.2Pa・sと高固形分で一定の粘度を有し、高固形分で塗工・硬化する際のハンドリング性に優れるものであった。
【0186】
また、本合成例1、製造例1ではトリスアセチルアセトネート鉄は溶剤を用いたマスターバッチとして添加して溶剤を除去して無溶剤化したが、溶剤を用いず粉体として添加し、脱水・脱溶剤を行うことでも同様に製造でき、同様のウレタンプレポリマー組成物の性状、同様のウレタン硬化物の特性で得られた。
【0187】
(合成例2~16)
合成例2~16も各種原料を変更して、合成例1と同様にウレタンプレポリマーの合成、性状評価を行った。以下、表3に合成したウレタンプレポリマー(E)、(EC)を含む組成物の原料組成と性状を示す。
【0188】
【表3】
【0189】
各種原料を変更して合成した合成例2、4~7、9は、合成例1と同様に使用原料から算出した不飽和度が顕著に低く、末端を封止しうるモノオール成分が顕著に少ないものであり、未反応のポリアルキレンオキシドを含み、ウレタン基を有するウレタンプレポリマー(E)成分の分子量分布は1.35未満と顕著に狭い分散度であった。
合成例1に対して、NCO/OH比が0.60とポリマー鎖をやや延長した合成例3、高分子量の3つの水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1-1)を10部と少量併用し代わりにNCO/OH比が0.15とポリマー鎖を短めにプレポリマー化した合成例8は、合成例1より僅かに分子量分布が広くなったが、1.35~1.50未満の範囲と狭い分散度を保持した。
【0190】
合成例10、11は、不飽和度の高いポリアルキレンオキシド(AC1)を用いて鎖延長した合成例で、使用原料から算出した不飽和度が高く、プレポリマー化時にモノオールにより分子末端を封止した影響と考えられる副生物により広い分散度となった。
合成例12は、更に3つの水酸基を有するポリアルキレンオキシドが主成分で、不飽和モノオールを一定量含むポリアルキレンオキシド(B1-1)のみを用いて鎖延長した、多官能成分の影響とモノオールの影響と考えられる分子量分布の広がりがあった。
合成例14は、従来技術の設計である溶剤を用い、比較的高分子量29000の2官能のポリアルキレンオキシド(AC2)と3官能のポリアルキレンオキシドを併用して高分子量にプレポリマー化し凝集力を高めた設計であり、不飽和度が顕著に低く、高分子量で良好な耐汚染性に期待できる設計であるが、分子量分布が5.5超と広いものであるとともに低固形分であった。
【0191】
合成例15では、合成例14に対してより低VOC化するため、不揮発分濃度を30%から80%まで大きく上昇して合成するとゲル状物となった。
【0192】
合成例16は、比較的高分子量のポリアルキレンオキシド(A1)とポリイソシアネート(C2)をNCO/OH比が2.7として1段目のNCO末端のウレタンプレポリマーを形成後、2段目に分子量400の水酸基量の多い低分子量のポリアルキレンオキシド(AC2)を多く付加する2段重合法によりウレタン基量を大幅に増量して凝集力を付与した設計であり、分子量400の低分子量のポリアルキレンオキシド(AC2)を単独で38area%含む組成物で、ウレタンプレポリマー(EC6)も合成例1より分子量分布が広いものであった。
【0193】
実施例に用いたウレタンプレポリマー(E1)~(E9)は、何れもポリオールの平均官能基数が1.90~2.20の範囲と低めで分子量分布も狭く、且つ重量平均分子量が8000以上であり、ウレタンプレポリマー組成物(G)が良好なチキソトロピー性と一定の粘度を両立しやすく、高固形分での成形性に優れやすいものであった。
【0194】
(製造例1、実施例1)
前記製造例1で得られたウレタンプレポリマー組成物(G1)を含むウレタン形成性組成物(H1)を用いた実施例1は、表5に示すが、不揮発分濃度が99.7%と顕著に高く低VOC化が可能であり、25℃における粘度が8.2Pa・sと一定の粘度を有して、ウレタンプレポリマー(E1)の分子量分布も狭く液のチキソトロピー性も低いため塗工性に優れ、不飽和度が低いため130℃、5分で防爆オーブンにて揮発分除去と硬化反応を行った際の硬化性に優れた。
【0195】
また、ウレタン形成性組成物(H1)は、3つ以上の水酸基を含むポリアルキレンオキシド(B1-1)をプレポリマー中ではなく単独で含み多官能成分の分子量が小さいため、少量のケトエノール互変異性化合物の使用量にも係らず、調整直後からの粘度上昇が顕著に緩やかであり、72時間後の粘度上昇率が20%以下と顕著に可使時間に優れるものであった。
【0196】
更に得られたウレタン硬化物(I1)の塗膜は、3つ以上の水酸基を含むポリアルキレンオキシド(B1-1)をウレタン形成性組成物中に単独で含みウレタン硬化物中の架橋点を離れやすく、且つ末端を封止する不飽和モノオールが少ないため欠陥の少ない緩やかなネットワークを形成しやすく、25℃での貯蔵弾性率が1.0×10Paと顕著に柔軟にも係らず、被着体汚染や糊残りがなく再剥離可能であった。更にガラス転移温度も-56℃と顕著に低く低温特性に優れ、低温での耐衝撃剥離性に期待できる良好な耐寒性が期待できるものであった。
【0197】
また、上記設計により得られたウレタン硬化物はボールタックが32以上と顕著に高い値を示し、凝集力を保持しつつ濡れ性に優れるため、被着体へ瞬時に粘着特性を発現し、特長的に良好な、折り曲げ等の変形や動作、段差等への追従性に期待できるウレタン硬化物(I1)であった。
【0198】
(製造例2~7、実施例2~7)
製造例2~7は、製造例1に対して、同一のウレタンプレポリマー(E1)を含み、3つ以上の水酸基を含むポリアルキレンオキシド(B)の種類や量比を変更して、ウレタンプレポリマー組成物(G2)~(G7)、ウレタン形成性組成物(H2)~(H7)を製造した例である。表4に組成や性状を示すが、ウレタンプレポリマー組成物(G2)~(G7)はいずれも3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)とウレタンプレポリマー(E)を含み、不飽和基量の合算が顕著に低いものであり、本組成物の不揮発分濃度は99.5重量%以上と顕著に高いものであり、低VOCが期待できるものであった。
【0199】
ウレタンプレポリマー組成物(G2)~(G7)をGPC法により解析を行い、ウレタンプレポリマー(E)成分とポリアルキレンオキシド成分2種の2~3峰性の分布を示し、それらを併せた数平均分子量が8000以上40000未満であり、適度な分子量を有し、高固形分でも高粘調化せず、且つ塗工時の室温~乾燥温度まで一定の粘度が期待できるものであった。ウレタンプレポリマー組成物(G2)~(G7)の25℃での粘度はいずれも1~20Pa・sの範囲であり、高固形分で一定の粘度を有し、更にチキソトロピーインデックスも1.2以下と十分に低いものであった。
【0200】
得られたウレタンプレポリマー組成物(G2)~(G7)の水酸基の総量に対して、NCO基量が1.3当量となる比率でイソシアネート化合物(F)を混合することで、ウレタン形成性組成物(H2)~(H7)を製造した。
【0201】
ウレタン形成性組成物(H2)~(H7)を用いた実施例2~7は、表5に示すが、いずれも不揮発分濃度が99.5重量%以上と顕著に高く低VOC化が可能であり、25℃における粘度が1~20Pa・sの範囲であり一定の粘度を有して、ウレタンプレポリマーの分子量分布も狭く液のチキソ性も低いため塗工性に優れ、不飽和度が低いため130℃、5分で防爆オーブンにて揮発分除去と硬化反応を行った際の硬化性に優れた。
【0202】
また、ウレタン形成性組成物(H2)~(H7)は、3つ以上の水酸基を含むポリアルキレンオキシド(B1)をプレポリマー中ではなく単独で含み多官能成分の分子量が小さいため、いずれも少量のケトエノール互変異性化合物の使用量にも係らず、調整直後からの粘度上昇が顕著に緩やかであり、48時間後の粘度上昇率が20%以下と顕著に可使時間に優れるものであった。
【0203】
更に得られたウレタン硬化物(I2)~(I7)の塗膜は、3つ以上の水酸基を含むポリアルキレンオキシド(B1)をウレタン形成性組成物中に単独で含みウレタン硬化物中の架橋点を離れやすく、且つ末端を封止する不飽和モノオールが少ないため欠陥の少ない緩やかなネットワークが形成しやすく、ウレタン形成性組成物(H2)~(H6)はいずれも、2.0×10Pa以下と柔軟で、汚染や糊残りがなく再剥離可能であり、ガラス転移温度も-50℃以下と顕著に低く低温特性に優れた。3つ以上の水酸基を含むポリアルキレンオキシドが50重量部と多めの(H7)は、(H2)~(H6)より僅かに柔軟性が低下したが、3.0×10Pa・s以下と幾分良好な柔軟性を示し、汚染や糊残りがなく再剥離可能であり、ガラス転移温度も-50℃以下と顕著に低く低温特性に優れた。
【0204】
上記設計により得られたウレタン硬化物(I2)~(I7)はいずれも高いボールタック性を示し、凝集力を保持しつつ濡れ性に優れるため、被着体へ瞬時に粘着特性を発現し、特長的に追従性に期待できるウレタン硬化物(I)であった。
【0205】
(製造例8~9、実施例8~9)
製造例8~9は、製造例1に対して、合成例1で得たプレポリマー(E1)からウレタンプレポリマーを形成する際のNCO/OH比が低い合成例2で得たウレタンプレポリマー(E2)に変更して製造した例であり、組成物中の未反応のポリアルキレンオキシド(A1)の量が多めで、ウレタンプレポリマー(E)の量比が低目のウレタンプレポリマー組成物(G8)、(G9)、ウレタン形成性組成物(H8)、(H9)である。表4に組成や性状を示すが、ウレタンプレポリマー組成物(G8)、(G9)はいずれも3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)とウレタンプレポリマー(E)を含み、不飽和基量の合算が顕著に低いものであり、本組成物の不揮発分濃度は99.5重量%以上と顕著に高いものであり、低VOC化が期待できるものであった。
【0206】
ウレタン形成性組成物(H8)、(H9)を用いた実施例8、9は、表5に示すが、いずれも不揮発分濃度が99.5重量%以上と顕著に高く低VOC化が可能であり、組成物中の未反応のポリアルキレンオキシド(A1)の量が多めで、ウレタンプレポリマー(E)の量比が低目のため、(H1)~(H7)より塗工における成形性が僅かに低下したが、25℃における粘度が1~20Pa・sの範囲であり一定の粘度を有して、ウレタンプレポリマーの分子量分布も狭く液のチキソ性も低いため塗工性が概ね良好で、不飽和度が低いため130℃、5分で防爆オーブンにて揮発分除去と硬化反応を行った際の硬化性に優れた。
【0207】
(製造例10~11、実施例10~11)
製造例10~11は、製造例1に対して、合成例1で得たプレポリマー(E1)からウレタンプレポリマーを形成する際のNCO/OH比が高めの合成例3で得た、(E1)より分子量分布が僅かに広めのウレタンプレポリマー(E3)に変更して製造した例であり、ウレタンプレポリマー組成物(G10)、(G11)、ウレタン形成性組成物(H10)、(H11)である。表4に組成や性状を示すが、ウレタンプレポリマー組成物(G10)、(G11)はいずれも3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)とウレタンプレポリマー(E)を含み、不飽和基量の合算が顕著に低いものであり、本組成物の不揮発濃度は99.5重量%以上と顕著に高いものであり、低VOC化が期待できるものであった。
【0208】
ウレタン形成性組成物(H10)、(H11)を用いた実施例10、11は、表5に示すが、いずれも不揮発分濃度が99.5重量%以上と顕著に高く低VOC化が可能であり、ウレタンプレポリマー(E3)の分子量分布が(E1)より僅かに広めのため、(H1)~(H7)より塗工における成形性が僅かに低下したが、25℃における粘度が20~30Pa・sの範囲であり一定の粘度を有して、ウレタンプレポリマーの分子量分布も幾分狭く液のチキソ性も低いため塗工性が概ね良好で、不飽和度が低いため130℃、5分で防爆オーブンにて揮発分除去と硬化反応を行った際の硬化性に優れた。
【0209】
【表4】
【0210】
【表5】
【0211】
(製造例12~19、実施例12~19)
製造例12~19は、製造例1に対して、合成例1で得たプレポリマー(E1)から合成例4~9で得たウレタンプレポリマーへ種類を変更し、ケトエノール互変異性化合物の量、併用するポリアルキレンオキシド(B1)の分子量に合わせてポリアルキレンオキシド(B1)の使用量の比率を調整して得た、ウレタンプレポリマー組成物(G12)~(G19)、ウレタン形成性組成物(H12)~(H19)である。表6に組成や性状を示すが、ウレタンプレポリマー組成物(G12)~(G7)はいずれも3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)とウレタンプレポリマー(E)を含み、不飽和基量の合算が顕著に低いものであり、本組成物の不揮発分濃度は99.5重量%以上と顕著に高いものであり、低VOCが期待できるものであった。
【0212】
ウレタンプレポリマー組成物(G12)~(G19)をGPC法により解析を行い、ウレタンプレポリマー(E)成分とポリアルキレンオキシド成分2種の2~3峰性の分布を示し、それらを併せた数平均分子量が8000以上40000未満であり、適度な分子量を有し、高固形分でも高粘調化せず、且つ塗工時の室温~乾燥温度まで一定の粘度が期待できるものであった。ウレタンプレポリマー組成物(G12)~(G19)の25℃での粘度はいずれも1~20Pa・sの範囲であり、高固形分で一定の粘度を有し、更にチキソトロピーインデックスも1.2以下と十分に低いものであった。
【0213】
得られたウレタンプレポリマー組成物(G12)~(G19)の水酸基の総量に対して、NCO基量が1.3当量となる比率でイソシアネート化合物(F1)を混合することで、ウレタン形成性組成物(H12)~(H19)を製造した。
【0214】
ウレタン形成性組成物(H12)~(H19)を用いた実施例12~19は、表7に示すが、いずれも不揮発分濃度が99.5重量%以上と顕著に高く低VOC化が可能であり、25℃における粘度が0.1~30Pa・sの範囲であり一定の粘度を有して、ウレタンプレポリマーの分子量分布も狭く液のチキソ性も低いため塗工性に優れ、不飽和度が低いため130℃、5分で防爆オーブンにて揮発分除去と硬化反応を行った際の硬化性に優れた。
【0215】
また、ウレタン形成性組成物(H12)~(H19)は、3つ以上の水酸基を含むポリアルキレンオキシド(B1)をプレポリマー中ではなく単独で含み多官能成分の分子量が小さいため、いずれも少量のケトエノール互変異性化合物の使用量にも係らず、調整直後からの粘度上昇が顕著に緩やかであり、48時間後の粘度上昇率が20%以下と顕著に可使時間に優れるものであった。
【0216】
更に得られたウレタン硬化物(I12)~(I19)の塗膜は、3つ以上の水酸基を含むポリアルキレンオキシド(B1)をウレタン形成性組成物中に単独で含みウレタン硬化物中の架橋点を離れやすく、且つ末端を封止する不飽和モノオールが少ないため欠陥の少ない緩やかなネットワークが形成しやすく、ウレタン形成性組成物(H12)、(H13)、(H15)~(H19)はいずれも、2.0×10Pa以下と顕著に柔軟であり、汚染や糊残りがなく再剥離可能であり、ガラス転移温度も-50℃以下と顕著に低く低温特性に優れた。
【0217】
3つ以上の水酸基を含むポリアルキレンオキシド(B1)の分子量が1900と短く、かつ20重量部と多めで架橋点が多くなりやすい(H14)では、(H2)~(H6)より僅かに柔軟性が低下したが、3.0×10Pa・s以下と幾分良好な柔軟性を示し、汚染や糊残りがなく再剥離可能であり、ガラス転移温度も-50℃以下と顕著に低く低温特性に優れた。
【0218】
またポリアルキレンオキシド(B1)を含む単独のポリアルキレンオキシド(B)の総量が69.4~75.9重量%と比較的多く、プレポリマー(E)含量が少なめの(H16)~(H19)では、高固形分で一定の粘度を有するが、プレポリマー成分より低分子量のポリアルキレンオキシド成分が多いため、(H2)~(H6)より僅かに塗工・硬化反応時に液が僅かに流れやすく、更に3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)が1重量%と少なめの(H16)では、(H2)~(H6)より僅かに硬化性が低下したが、いずれも良好な成形性、硬化性を示した。
【0219】
上記設計により得られたウレタン硬化物(I12)~(I19)は凝集力を保持しつつ濡れ性に優れるため、いずれも顕著に高いボールタック性を示し、被着体へ瞬時に粘着特性を発現し、特長的に追従性の高いウレタン硬化物であった。
【0220】
また、前記実施例で得たウレタンプレポリマー組成物(G)、ウレタン形成性組成物(H)はいずれも可塑剤を多く含むことなく、高い相溶性を示し液状で分離がなく、ウレタン硬化物はいずれもHazeが2%未満であり、高透明であった。
【0221】
更に、前記実施例で得たウレタンプレポリマー組成物(G)、ウレタン形成性組成物(H)はいずれも、ウレタン化触媒等として意図的に含まず、また製造原料として溶剤を10重量%以上含まず製造でき、顕著に環境への負荷が小さいことに加え、更に作業環境が顕著に良好なものであった。
【0222】
【表6】
【0223】
【表7】
【0224】
(製造例20、比較例1)
製造例20は、製造例1と同様のウレタンプレポリマー(E1)を含むが、3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)を含まず得た製造例であり、ウレタンプレポリマー組成物(GC1)、ウレタン形成性組成物(HC1)である。
ウレタン形成性組成物(HC1)を用いた比較例1は、表9に示すが、製造例1と同様に不飽和度が顕著に低いポリアルキレンオキシドからなるウレタンプレポリマー(E1)を含み、使用原料から算出した不飽和度は0.0018meq/gと末端を封止しうるモノオール成分が顕著に少なく、不揮発分濃度も99.7重量%と顕著に高いものであり、数平均分子量が27600と8000以上40000未満であり、適度な分子量を有し、高固形分でも高粘調化せず、且つ塗工時の室温~乾燥温度まで一定の粘度が期待できるものであったが、3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)を含まないため硬化性に劣り成形性も不十分で、使用が困難であった。
【0225】
また得られるウレタン硬化物(IC1)も3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)を含まないため、柔軟性は高いが凝集力が不足し剥離時に糊残りが発生するため汚染性に劣り使用が困難であり、濡れ性はよいが凝集力が不十分でボールタックも低いため追従性も期待できないものであった。
【0226】
(製造例21、22、比較例2、3)
製造例21,22は、製造例20に対して、凝集力を付与するため、不飽和度が高い3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(BC1-1)を30重量%、15重量%含むよう製造した、ウレタンプレポリマー組成物(GC2)、(GC3)、ウレタン形成性組成物(HC2)、(HC3)である。
【0227】
ウレタン形成性組成物(HC2)、(HC3)を用いた比較例2、比較例3は、表9に示すが、製造例1と同様に不飽和度が顕著に低いポリアルキレンオキシドからなるウレタンプレポリマー(E1)を含むが、不飽和度が高い3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(BC1-1)を多く含むため、使用原料から算出したウレタンプレポリマー組成物(GC2)の不飽和度が0.020meq/gを超える0.027、0.023meq/gと末端を封止しうるモノオール成分が多いものであり、硬化性や成形性も不十分で、使用が困難であった。
【0228】
また得られるウレタン硬化物(IC2)、(IC3)は、ウレタンプレポリマー組成物中の不飽和度が0.020meq/gを超え、末端を封止しうるモノオール成分が多いものであるため、凝集力と汚染性に劣り、再剥離時に被着体へ一部糊残りや汚染が発生し、使用が困難なものであった。
【0229】
(製造例23、比較例4)
製造例23は、製造例1の実施例1に対して、ウレタンプレポリマー(E1)から未反応のポリアルキレンオキシド(A1)が多いウレタンプレポリマー(E2)へ変更し、更に3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1-1)を50重量%と多く含む、ウレタンプレポリマー組成物中のポリアルキレンオキシド(B)の含有量が79重量%を超える、ウレタンプレポリマー組成物(GC4)、ウレタン形成性組成物(HC4)である。
【0230】
ウレタン形成性組成物(HC4)を用いた比較例4は、表9に示すが、製造例1と同様に不飽和度が顕著に低いポリアルキレンオキシドからなるウレタンプレポリマーを含み、使用原料から算出した不飽和度は0.0119meq/gと末端を封止しうるモノオール成分が少なく、不揮発分濃度も99.7重量%と顕著に高いものであるが、希釈剤として作用しやすいポリアルキレンオキシド(B)を79重量%を超える範囲で含み、高温でも一定の粘度を発現しやすいウレタンプレポリマーの含有量が13.4重量%と低くなるため、塗工・硬化反応時に液流れが激しく、成形性が悪く使用が困難であった。
【0231】
また得られるウレタン硬化物(IC4)は、ウレタンプレポリマー組成物(GC4)中の不飽和度が0.020meq/g未満で、3つ以上の水酸基を含むポリアルキレンオキシド(B1)を含むため再剥離性は良好であったが、3つの水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)を多量に含むポリアルキレンオキシド(B)を多量に用いているため、柔軟性の特長は不十分で、追従性が必要な用途への展開は困難なものであり、ボールタック性も不十分であった。
【0232】
(製造例24、25、比較例5、6)
製造例24は、製造例1の実施例1に対して、不飽和度が顕著に低いポリアルキレンオキシドを用いて得たウレタンプレポリマー(E1)から、不飽和度が高いポリアルキレンオキシドを用いて得たウレタンプレポリマー(EC1)へ変更して製造した、ウレタンプレポリマー組成物(GC5)、(GC5)、ウレタン形成性組成物(HC5)、(HC6)である。
【0233】
ウレタン形成性組成物(HC5)、(HC6)を用いた比較例5、比較例6は、表9に示すが、製造例1と同様に不飽和度が低い3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)を含むが、不飽和度が高いポリアルキレンオキシドを用いて得たウレタンプレポリマー(EC1)を多く含むため、使用原料から算出したウレタンプレポリマー組成物(GC5)の不飽和度が0.020meq/gを超える0.1116、0.0452meq/gと架橋時に末端を封止する不飽和モノオール成分が多いものであるため、ポリアルキレンオキシド(B1)の種類や量に係らず、使用する硬化性や成形性も不十分で、使用が困難であった。
【0234】
(製造例26、比較例7)
製造例26は、3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)を含むが、ウレタンプレポリマー(E)を含まない製造例である、組成物(GC7)、ウレタン形成性組成物(HC7)である。使用原料から算出した組成物(GC7)の不飽和度が0.020meq/g未満であるが、ウレタン基を含むウレタンプレポリマー成分を含まず、組成物の数平均分子量が8000未満と低くなって、塗工・硬化反応時に液流れが激しく、成形性が悪く使用が困難であった。
【0235】
得られるウレタン硬化物(IC7)は、ウレタンプレポリマー組成物中の不飽和度が0.020meq/g未満で、3つ以上の水酸基を含むポリアルキレンオキシド(B1)を含むがウレタンプレポリマー成分を含まないため、再剥離性は良好であったが、柔軟性やボールタックが低下し、追従性が必要な用途への展開が困難なものであった。
【0236】
(製造例27、比較例8)
製造例27は、不飽和度が高いポリアルキレンオキシド(AC1)に加えて平均官能基数を上げるため3つの水酸基をポリアルキレンオキシド(B1)を少量併用して得たウレタンプレポリマー(EC2)と3つの水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)を用いて製造した、ウレタンプレポリマー組成物(GC8)、ウレタン形成性組成物(HC8)である。
【0237】
ウレタン形成性組成物(HC8)を用いた比較例8は、表9に示すが、不飽和度が低い3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)をプレポリマー中および単独で含むが、不飽和度が高いポリアルキレンオキシドを多く用いて得たウレタンプレポリマー(EC2)を多く含むため、使用原料から算出したウレタンプレポリマー組成物(GC8)の不飽和度が0.020meq/gを超える0.1115meq/gと架橋時に末端を封止する不飽和モノオール成分が多いものであるため、3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)をプレポリマー中に併用しても、硬化性や成形性も不十分で、使用が困難であり、更に3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)をプレポリマー中に多く含むため分子量分布も広く、顕著に良好な可使時間も発現しなかった。
得られるウレタン硬化物(IC8)も、耐汚染性、柔軟性の特長は不十分で、再剥離性や追従性が必要な用途への展開は困難なものであった。
【0238】
(製造例28、比較例9)
製造例28は、不飽和度がやや低めのポリアルキレンオキシド(B1-1)を用いた平均官能基数が2官能を超えるポリオールからなるウレタンプレポリマー(EC3)と更に不飽和度がやや低めのポリアルキレンオキシド(B1-1)を用いて製造した、ウレタンプレポリマー組成物(GC9)、ウレタン形成性組成物(HC9)である。
【0239】
ウレタン形成性組成物(HC9)を用いた比較例9は、表9に示すが、ウレタンプレポリマー(EC3)、ポリアルキレンオキシド(B1)ともに不飽和度がやや低めであるが、使用原料から算出したウレタンプレポリマー組成物(GC9)全体の不飽和度が0.020meq/gを超える末端を封止する不飽和モノオール成分を含むため成形性も不十分で、使用が困難であり、3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)をプレポリマー中に多く含むため分子量分布も広く、顕著に良好な可使時間も発現しなかった。
得られるウレタン硬化物(IC9)も、ウレタンプレポリマー組成物(GC9)全体の不飽和度が0.020meq/gを超えるため、耐汚染・再剥離性、柔軟性の特長は不十分で、再剥離性や追従性が必要な用途への展開は困難なものであった。
【0240】
(製造例29、比較例10)
製造例29は、不飽和度が顕著に低いポリアルキレンオキシド(A)をプレポリマー化せず、3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)と混合して製造した、組成物(GC10)、ウレタン形成性組成物(HC10)である。
ウレタン形成性組成物(HC10)を用いた比較例10は、表9に示すが、不飽和度が顕著に低いポリアルキレンオキシドを含み、使用原料から算出した全体の不飽和度は0.0031meq/gと末端を封止しうるモノオール成分が顕著に少ないが、ウレタンプレポリマー成分を含まないため、、ウレタン基を含むウレタンプレポリマー成分を含まず、組成物の数平均分子量が8000未満と低くなって、塗工・硬化反応時に液流れが激しく、良好な塗膜外観のウレタン硬化物への成形が困難であった。
【0241】
(製造例30、比較例11)
製造例30は、合成例14の従来技術の設計である、溶剤を用い、比較的高分子量29000の2官能のポリアルキレンオキシド(AC2)と3官能のポリアルキレンオキシドを併用して数平均分子量7万超に高分子量にプレポリマー化し凝集力を高めた設計であり、不飽和度が顕著に低く、高分子量で良好な耐汚染性に期待できる設計であり、分子量分布が5.5超と広いものであるとともに、低不揮発分濃度でウレタンプレポリマー(EC5)を含むウレタンプレポリマー組成物(GC11)、ウレタン形成性組成物(HC11)である。
【0242】
ウレタン形成性組成物(HC11)を用いた比較例9は、表9に示すが、ウレタンプレポリマー(EC5)、ポリアルキレンオキシド(B1)ともに不飽和度が顕著に低めであり、良好な硬化性を有し、高い耐汚染性が期待できるものであったが、ウレタンプレポリマー組成物(GC11)の不揮発分濃度も80%未満で25℃での粘度が0.1Pa・s未満であるため、液流れしやすく高厚みでの成形がしにくい性状であった。また、ウレタンプレポリマー組成物(GC11)を濃縮により不揮発分濃度を80%に調製したが、ウレタンプレポリマー組成物(GC11)が数平均分子量7万超のため25℃での粘度が30Pa・sを超えるものであり、チキソトロピーインデックスも同様に1.5超と高いため成形性に劣る設計であり、良好なハンドリング性を維持し高固形分化が困難なものであった。
【0243】
(製造例31、比較例12)
製造例31は、不飽和度が顕著に低く比較的高分子量のポリアルキレンオキシド(A1)とポリイソシアネート(C2)をNCO/OH比が2.7として1段目のNCO末端のウレタンプレポリマーを形成後、2段目に分子量400の水酸基量の多い低分子量のポリアルキレンオキシド(AC2)を多く付加する2段重合法により得た製造例であり、3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)を含まないが、分子量400の低分子量のポリアルキレンオキシド(AC2)によりウレタン基量を大幅に増量して凝集力を付与したウレタンプレポリマー組成物(GC12)、ウレタン形成性組成物(HC12)である。
【0244】
ウレタン形成性組成物(HC12)を用いた比較例12は、表9に示すが、不飽和度が顕著に低いポリアルキレンオキシドからなるウレタンプレポリマー(EC6)を含み、使用原料から算出した不飽和度は0.0055meq/gと末端を封止しうるモノオール成分が顕著に少なく、不揮発分濃度も99.7重量%と顕著に高いものであり、硬化性も良好であったが、反応性の高い低分子量のポリアルキレンオキシド(AC2)成分が多く、可使時間が24時間未満とやや短いものであり、改善には揮発性のアセチルアセトンの増量や可塑剤等での希釈が必要と考えられるものであった。
【0245】
得られるウレタン硬化物(IC12)も、3つ以上の水酸基を有するポリアルキレンオキシド(B1)を含まず低分子量のポリアルキレンオキシド(AC2)を多く使用するため僅かに残留接着率はやや低下したが良好であり、ウレタンプレポリマー組成物(GC9)全体の不飽和度が0.020meq/g未満で再剥離は可能であったが、低分子量のポリアルキレンオキシド(AC2)成分を多く使用し、ウレタン基が多いため柔軟性に劣り、ガラス転移点も-24℃と-30℃を超えるもので実施例1に対して顕著に良好な耐寒性を示さず、そのような特性が必要な用途で使用が困難なものであった。
【0246】
【表8】
【0247】
【表9】
【0248】
以上、実施例で示したように、本開発におけるウレタンプレポリマー組成物(G)は、一定の粘度を有し高固形分化が可能であって、不飽和モノオールが少ないポリアルキレンオキシドを用い、ウレタン硬化物が高凝集力で耐汚染・再剥離性がよく、顕著に良好な柔軟性と耐寒性の発現に資するウレタンプレポリマー組成物(G)であり、その特徴を活かすことにより、顕著に良好な柔軟性と低温特性を発現する被着体の形状変化への追従性等を特徴として、シーリング材、塗料、粘着剤、接着剤など幅広い用途に好適に使用できることが示された。
【0249】
なかでも、本発明のウレタン硬化物(I)を用いたウレタンシートは、適度な粘着力を有し再剥離性、柔軟性、耐寒性、良好なタック性を発現するため、ウレタン粘着剤として好適に使用できることが示され、さらには、高透明であり、凝集力と顕著に高い柔軟性、耐寒性を発現するため、折り曲げや変形への追従性や印刷段差追従性、低温環境、再剥離用途での応用に期待でき、フォルダブル材料等の光学用粘着剤や生体用粘着剤として好適に使用できることが示された。