(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155765
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】アミド化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 261/08 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
C07D261/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065292
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 祐二
(72)【発明者】
【氏名】中村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】伊場 真志
(57)【要約】 (修正有)
【課題】イソキサゾリン置換ベンズアミド化合物の新規な製造方法を提供する。
【解決手段】式(1):
で表されるイソキサゾリン置換メトキシイミノメチルベンズアミド化合物を、溶媒中、酸又は塩基と反応させることにより、式(2):
で表されるイソキサゾリン置換ベンズアミド化合物を製造する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
で表されるイソキサゾリン置換メトキシイミノメチルベンズアミド化合物を溶媒中、酸又は塩基と反応させることにより、式(2):
【化2】
で表されるイソキサゾリン置換ベンズアミド化合物を製造する方法。
【請求項2】
前記溶媒がトルエン及び水からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記酸がp-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、硫酸及び塩酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記塩基が炭酸カリウムである、請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
添加物として臭化テトラブチルアンモニウムを加える、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記式(1)で表されるイソキサゾリン置換メトキシイミノメチルベンズアミド化合物と前記酸又は塩基との反応が、40℃乃至80℃の反応温度で行われる、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソキサゾリン置換ベンズアミド化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フルキサメタミド(fluxametamide,CAS No.:928783-29-3)は、下記式(1)で表されるイソキサゾリン置換メトキシイミノメチルベンズアミド化合物であり、有害生物防除剤に関わる活性を有する化合物として知られている(特許文献1)。
【化1】
【0003】
従来、フルキサメタミドの製造方法としては、製造中間体として下記式(2)で表されるイソキサゾリン置換ベンズアミド化合物(以下、化合物(2)とも称する)から合成する方法が報告されている(特許文献1)。
【化2】
化合物(2)の製造方法としては、置換ケトン化合物と置換アセチル化合物から合成する方法が報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/026965号
【特許文献2】国際公開第2013/021949号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の製造方法では、晶析工程時にろ液に溶出したフルキサメタミドは回収することができず、廃棄していた。したがって、改善の余地があった。また廃棄することで環境への負荷も懸念されていた。
したがって、晶析工程時にろ液に溶出したフルキサメタミドを回収して再利用する方法が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、晶析工程時にろ液に溶出したフルキサメタミドを回収できる化合物に変換する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題解決を目標に鋭意研究を重ねた結果、ろ液に溶出したフルキサメタミドに酸又は塩基を反応させることで製造中間体である化合物(2)を合成し、中
間体として再利用できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は下記〔1〕~〔6〕に関するものである。
〔1〕
式(1):
【化3】
で表されるイソキサゾリン置換メトキシイミノメチルベンズアミド化合物を溶媒中、酸又は塩基と反応させることにより、式(2):
【化4】
で表されるイソキサゾリン置換ベンズアミド化合物を製造する方法。
〔2〕
前記溶媒がトルエン及び水からなる群から選ばれる少なくとも1種である、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕
前記酸がp-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、硫酸及び塩酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である、〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕
前記塩基が炭酸カリウムである、〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔5〕
添加物として臭化テトラブチルアンモニウムを加える、〔1〕に記載の製造方法。
〔6〕
前記式(1)で表されるイソキサゾリン置換メトキシイミノメチルベンズアミド化合物と前記酸又は塩基との反応が、40℃乃至80℃の反応温度で行われる、〔1〕に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法により、これまで廃棄していたフルキサメタミドを回収して再利用することができ、生産性を向上させることができる。また、廃棄物を削減することができ、環境への負荷を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の化合物(2)の製造方法を更に詳細に説明する。
【0011】
本反応に用いる溶媒としては、本反応に不活性な溶媒であれば使用可能であるが、具体的には、トルエン及び水等が挙げられる。これらは1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0012】
本反応に用いる溶媒の使用量としては、基質のフルキサメタミドに対して1質量部~5
0質量部が好ましく、3質量部~45質量部がより好ましく、5質量部~35質量部が更に好ましい。
【0013】
本反応に用いる酸としては、例えばp-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、硝酸、リン酸及び塩酸等が挙げられ、これらの中でもp-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、硫酸及び塩酸が好ましい。本反応に用いる酸は1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0014】
本反応に用いる酸の使用量としては、基質のフルキサメタミドに対して1当量~50当量が好ましく、2当量~40当量がより好ましい。
【0015】
本反応に用いる塩基としては、例えば炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等が挙げられ、これらの中でも炭酸カリウムが好ましい。本反応に用いる塩基は1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて使用できる。本反応に用いる塩基は、例えば水溶液の形態で添加することができる。
【0016】
本反応に用いる塩基の使用量としては、基質のフルキサメタミドに対して1当量~50当量が好ましく、1.5当量~40当量がより好ましい。
【0017】
本反応には、さらに添加物を加えることができる。そのような添加物としては、例えば臭化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0018】
本反応に用いる添加物の使用量としては、基質のフルキサメタミドに対して0.01当量~20当量が好ましく、0.03当量~10当量がより好ましく、0.05当量~5当量が更に好ましい。
【0019】
本反応の反応温度は、通常、0℃以上の温度範囲で行なうことができる。しかし、反応試剤の使用量を含めて経済的な製造を考慮した場合の温度範囲としては、40℃~80℃が好ましい。
【0020】
本反応の反応時間は、用いる試剤の量、濃度、反応温度等により一定しないが、通常は30分~72時間、好ましくは1時間~48時間、より好ましくは1時間~24時間の範囲で終了するように、条件を設定することが好ましい。
【実施例0021】
以下に、本発明を実施例を挙げて具体的に述べることにより、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと記載する。)を用いた各分析は以下に記載する測定条件を用いて実施した。
[相対面積の分析]
HPLCによる相対面積の分析条件を以下に示す。
機器:高速液体クロマトグラフProminence(島津製作所製)
カラム:Ascentis Express C18、4.6×100mm、2.7 μm(シグマアルドリッチ社製)
流速:1.5 mL/min
溶離液:アセトニトリル:純水=1:1(体積比)
波長:UV 254nm
測定量:1μL
[定量分析]
HPLCを用いた内部標準法による定量分析の分析条件を以下に示す。
機器:高速液体クロマトグラフProminence(島津製作所製)
カラム:Inertsil Ph-3、4.6×50mm、3μm(ジーエルサイエンス社製)
流速:1.0 mL/min
溶離液:アセトニトリル:0.1体積%酢酸水水溶液=35:65(体積比)
波長:UV 220nm
測定量:3μL
標準物質:フタル酸ジ-nブチル
【0022】
[実施例1]
4-[5-(3、5-ジクロロフェニル)-5-トリフルオロメチル-4,5-ジヒドロイソキサゾール-3-イル]-2-メチルベンズアミド(化合物(2))の合成
反応容器にトルエン21.08gを入れ、次いで(Z)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-トリフルオロメチル-4,5-ジヒドロイソキサゾール-3-イル]-N-(メトキシイミノメチル)-2-メチルベンズアミド(フルキサメタミド)1.00gを加えて溶解させた。得られた溶液を撹拌しながら、60℃に加熱した。そこへ、p-トルエンスルホン酸一水和物1.37gを添加し、同温度にて6時間撹拌した。加熱撹拌終了後、反応液の一部を抜き出しHPLCにて分析したところ、トルエンに相当する面積を削除した化合物(2)の相対面積百分率は87.1%であった。
【0023】
[実施例2]
化合物(2)の合成
反応容器にトルエン21.08gを入れ、次いでフルキサメタミド1.00gを加えて溶解させた。得られた溶液を撹拌しながら、80℃に加熱した。そこへ、トリフルオロ酢酸1.20g及び水0.13gを添加し、同温度にて7時間撹拌した。加熱撹拌終了後、反応液の一部を抜き出しHPLCにて分析したところ、トルエンに相当する面積を削除した化合物(2)の相対面積百分率は18.3%であった。
【0024】
[実施例3]
化合物(2)の合成
反応容器にトルエン21.08gを入れ、次いでフルキサメタミド1.00gを加えて溶解させた。得られた溶液を撹拌しながら、40℃に加熱した。そこへ、95質量%硫酸水溶液0.47g、臭化テトラブチルアンモニウム0.04g及び水0.09gを添加し、同温度にて6時間撹拌した。加熱撹拌終了後、反応液の一部を抜き出しHPLCにて分析したところ、トルエンに相当する面積を削除した化合物(2)の相対面積百分率は46.5%であった。
【0025】
[実施例4]
化合物(2)の合成
反応容器にトルエン21.08gを入れ、次いでフルキサメタミド1.00gを加えて溶解させた。得られた溶液を攪拌しながら80℃に加熱した。そこへ、95質量%硫酸水溶液1.03g、p-トルエンスルホン酸一水和物0.02g及び水0.13gを添加し、同温度にて2時間撹拌した。加熱撹拌終了後、反応液の一部を抜き出しHPLCにて分析したところ、トルエンに相当する面積を削除した化合物(2)の相対面積百分率は87.9%であった。
【0026】
[実施例5]
化合物(2)の合成
反応容器にトルエン238.68gを入れ、次いでフルキサメタミド11.33gを加
えて溶解させた。得られた溶液を撹拌しながら、60℃に加熱した。そこへ、95質量%硫酸水溶液12.33g、p-トルエンスルホン酸一水和物0.023g及び水1.50gを添加し、同温度にて5時間撹拌した。加熱撹拌終了後、反応液の一部を抜き出しHPLCにて分析したところ、トルエンに相当する面積を削除した化合物(2)の相対面積百分率は89.7%であった。
【0027】
[実施例6]
化合物(2)の合成
反応容器にトルエン238.68gを入れ、次いでフルキサメタミド11.33gを加えて溶解させた。得られた溶液を撹拌しながら、75℃に加熱した。そこへ、35質量%塩酸12.44g、p-トルエンスルホン酸一水和物0.091g及び水1.50gを添加し、同温度にて16時間撹拌した。加熱撹拌終了後、反応液の一部を抜き出しHPLCにて分析したところ、トルエンに相当する面積を削除した化合物(2)の相対面積百分率は90.7%であった。
【0028】
[実施例7]
化合物(2)の合成
反応容器にトルエン95.40gを入れ、次いでフルキサメタミド4.60gを加えて溶解させた。得られた溶液を撹拌しながら65℃で20kPaで減圧留去し、78.86gを留去した。そこへ、トルエン6.46g、35質量%塩酸3.03gを滴下し、75℃に加熱し4時間撹拌した。加熱撹拌終了後、50℃へ冷却し、有機層を水23.00g及びイソプロピルアルコール16.10gで洗浄し、目的物である化合物(2)を含むトルエン溶液を35.90g得た。このトルエン溶液を定量分析した結果、化合物(2)が3.89g(収率96.2%)含まれることを確認した。
【0029】
[実施例8]
化合物(2)の合成
反応容器にトルエン174.64gを入れ、次いでフルキサメタミド5.36gを加えて溶解させた。得られた溶液を攪拌しながら、70℃に加熱した。そこへ、35質量%塩酸36.30gを滴下し、同温度にて6時間撹拌した。加熱撹拌終了後、得られた有機層を抜き出し、アセトニトリル83.17gを追加し、目的物である化合物(2)を含む溶液を262.55g得た。このトルエン溶液を定量分析した結果、化合物(2)が4.74g(収率100%)含まれることを確認した。
【0030】
[実施例9]
化合物(2)の合成
反応容器にトルエン174.64gを入れ、次いでフルキサメタミド5.36gを加えて溶解させた。得られた溶液を撹拌しながら、80℃に加熱した。そこへ、化合物(2)4.50g及び35質量%塩酸36.30gを添加し、同温度にて1時間撹拌した。加熱撹拌終了後、反応液の一部を抜き出しHPLCにて分析したところ、トルエンに相当する面積を削除した化合物(2)の相対面積百分率は95.8%であった。
【0031】
[実施例10]
化合物(2)の合成
反応容器にトルエン10.00gを入れ、次いでフルキサメタミド1.00gを加えて溶解させた。得られた溶液を撹拌しながら、40℃に加熱した。そこへ、30質量%炭酸カリウム水溶液1.46gを添加し、同温度にて4時間撹拌した。加熱撹拌終了後、反応液の一部を抜き出しHPLCにて分析したところ、トルエンに相当する面積を削除した化合物(2)の相対面積百分率は66.7%であった。