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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156152
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】成膜方法及び処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/318 20060101AFI20231017BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20231017BHJP
   C23C 16/38 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
H01L21/318 B
H01L21/31 C
C23C16/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065844
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 究
(72)【発明者】
【氏名】戸根川 大和
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA07
4K030AA13
4K030AA18
4K030BA39
4K030DA08
4K030DA09
4K030EA04
4K030FA10
4K030GA06
4K030HA01
4K030JA10
5F045AA06
5F045AA15
5F045AB31
5F045AC01
5F045AC12
5F045AC15
5F045AC16
5F045AD06
5F045AD09
5F045AE01
5F045AF12
5F045BB19
5F045DP19
5F045DP28
5F045DQ05
5F045EE17
5F045EF03
5F045EF09
5F045EH18
5F045EK06
5F058BA09
5F058BC09
5F058BD12
5F058BF04
5F058BF22
5F058BF30
5F058BF36
5F058BF37
5F058BG01
5F058BH01
5F058BH02
5F058BH07
5F058BH16
5F058BJ06
(57)【要約】
【課題】凹部に対する窒化ホウ素膜の埋め込み特性を改善できる技術を提供する。
【解決手段】本開示の一態様による成膜方法は、凹部を有する基板を準備する工程と、前記基板にホウ素含有ガスと窒素含有ガスとを含む第1ガスを供給し、前記凹部に窒化ホウ素膜を成膜する工程と、前記基板にホウ素含有ガスを含まず窒素含有ガスを含む第2ガスを供給し、前記窒化ホウ素膜を熱処理する工程と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する基板を準備する工程と、
前記基板にホウ素含有ガスと窒素含有ガスとを含む第1ガスを供給し、前記凹部に窒化ホウ素膜を成膜する工程と、
前記基板にホウ素含有ガスを含まず窒素含有ガスを含む第2ガスを供給し、前記窒化ホウ素膜を熱処理する工程と、
を有する、成膜方法。
【請求項2】
前記窒化ホウ素膜を成膜する工程は、前記基板を第1温度に保持することを含み、
前記窒化ホウ素膜を熱処理する工程は、前記基板を前記第1温度より高い第2温度に保持することを含む、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記第1温度は、300℃以下であり、
前記第2温度は、550℃以上である、
請求項2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記窒化ホウ素膜を熱処理する工程は、前記基板を前記第2ガスから生成されるプラズマに晒すことを含む、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記窒化ホウ素膜を熱処理する工程は、前記窒化ホウ素膜の体積を増加させることを含む、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記窒化ホウ素膜を成膜する工程と前記窒化ホウ素膜を熱処理する工程とを複数回繰り返す、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記ホウ素含有ガスは、ジボランガスであり、
前記窒素含有ガスは、アンモニアガスである、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項8】
処理容器と、ガス供給部と、制御部とを備える処理装置であって、
前記制御部は、
凹部を有する基板を前記処理容器内に収容する工程と、
前記処理容器内にホウ素含有ガスと窒素含有ガスとを含む第1ガスを供給し、前記凹部に窒化ホウ素膜を成膜する工程と、
前記処理容器内にホウ素含有ガスを含まず窒素含有ガスを含む第2ガスを供給し、前記窒化ホウ素膜を熱処理する工程と、
を実行するように前記ガス供給部を制御するよう構成される、
処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成膜ステップとエッチングステップとを交互に繰り返し、基板の表面に形成された凹部に膜を埋め込む技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-33230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、凹部に対する窒化ホウ素膜の埋め込み特性を改善できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による成膜方法は、凹部を有する基板を準備する工程と、前記基板にホウ素含有ガスと窒素含有ガスとを含む第1ガスを供給し、前記凹部に窒化ホウ素膜を成膜する工程と、前記基板にホウ素含有ガスを含まず窒素含有ガスを含む第2ガスを供給し、前記窒化ホウ素膜を熱処理する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、凹部に対する窒化ホウ素膜の埋め込み特性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る成膜方法を示すフローチャート
図2】実施形態に係る成膜方法を示す断面図
図3】実施形態に係る処理装置を示す概略図
図4】熱処理の前後における窒化ホウ素膜の膜厚変化率を示す図
図5】熱処理の前後における窒化ホウ素膜のB/N比率を示す図
図6】熱処理の前後における窒化ホウ素膜の表面粗さ(RMS)を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔成膜方法〕
図1及び図2を参照し、実施形態に係る成膜方法について説明する。図1に示されるように、実施形態に係る成膜方法は、準備工程S10と、窒化ホウ素膜成膜工程S20と、熱処理工程S30とを有する。
【0010】
準備工程S10では、図2(a)に示されるように、表面に凹部102を有する基板101を準備する。基板101は、例えばシリコン基板等の半導体基板であってよい。凹部102は、例えばトレンチ、ホールであってよい。凹部102の表面には、例えば酸化シリコン膜、窒化シリコン膜等の絶縁膜が形成されていてもよい。
【0011】
窒化ホウ素膜成膜工程S20は、準備工程S10の後に行われる。窒化ホウ素膜成膜工程S20では、図2(b)に示されるように、基板101にホウ素含有ガスと窒素含有ガスとを含む第1ガスを供給し、凹部102に窒化ホウ素膜103を成膜する。窒化ホウ素膜成膜工程S20では、ホウ素リッチな窒化ホウ素膜103を成膜する。ホウ素リッチな窒化ホウ素膜103とは、膜中に窒化の余地が残された窒化ホウ素膜103を意味する。ホウ素リッチな窒化ホウ素膜103は、膜中に未結合手(ダングリングボンド)を有するホウ素を含む。凹部102に窒化ホウ素膜103を成膜すると、凹部102に隙間104が生じる場合がある。隙間104は、例えば空隙(ボイド)、シーム(継目)である。
【0012】
窒化ホウ素膜成膜工程S20は、基板101を第1温度に保持することを含んでよい。第1温度は、300℃以下が好ましい。この場合、膜中に未結合手を有するホウ素を多く含む窒化ホウ素膜103を成膜できる。また、表面粗さが小さい窒化ホウ素膜103を成膜しやすい。第1温度は、235℃以下がより好ましい。この場合、膜中に未結合手を有するホウ素を特に多く含む窒化ホウ素膜103を成膜できる。
【0013】
第1ガスに含まれるホウ素含有ガスとしては、例えばジボラン(B)ガスが挙げられる。第1ガスに含まれる窒素含有ガスとしては、例えばアンモニア(NH)ガスが挙げられる。窒化ホウ素膜103を成膜する方法は、特に限定されない。例えば、原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)、化学気相堆積(Chemical Vapor Deposition:CVD)により窒化ホウ素膜103を成膜できる。なお、第1ガスは、ホウ素含有ガス及び窒素含有ガスとは別のガス、例えば不活性ガスを含んでもよい。不活性ガスとしては、例えば窒素(N)ガス、アルゴン(Ar)ガスが挙げられる。
【0014】
熱処理工程S30は、窒化ホウ素膜成膜工程S20の後に行われる。熱処理工程S30では、基板101にホウ素含有ガスを含まず窒素含有ガスを含む第2ガスを供給し、窒化ホウ素膜103を熱処理する。これにより、ホウ素の未結合手が第2ガスに含まれる窒素含有ガスの窒素と結合して窒化される。このため、窒化ホウ素膜103の体積が増加して膨張する。その結果、窒化ホウ素膜103によって隙間104が埋め込まれ、隙間104が消失する。すなわち、凹部102に対する窒化ホウ素膜103の埋め込み特性を改善できる。図2(c)においては、窒化ホウ素膜103のうち、体積が増加する前の部分を符号103aで示し、膨張した部分を符号103bで示す。また、ホウ素の未結合手の数が減少するので、窒化ホウ素膜103の膜質が向上する。
【0015】
熱処理工程S30は、基板101を第2温度に保持することを含んでよい。第2温度は、第1温度より高い温度である。第2温度は、550℃以上が好ましい。この場合、ホウ素の未結合手と窒素含有ガスの窒素との結合が促進される。
【0016】
熱処理工程S30は、基板101を第2ガスから生成されるプラズマに晒すことを含んでもよい。この場合、プラズマを用いない場合より低温でホウ素の未結合手が窒素含有ガスの窒素と結合して窒化される。例えば、窒化ホウ素膜成膜工程S20と同じ温度で熱処理工程S30を行うことができる。
【0017】
熱処理工程S30は、窒化ホウ素膜成膜工程S20と同じ処理容器内で行ってもよく、窒化ホウ素膜成膜工程S20と異なる処理容器内で行ってもよい。
【0018】
第2ガスに含まれる窒素含有ガスとしては、例えばアンモニアガスが挙げられる。なお、第2ガスは、窒素含有ガスとは別のガス、例えば不活性ガスを含んでもよい。不活性ガスとしては、例えば窒素ガス、アルゴンガスが挙げられる。
【0019】
以上により、凹部102に窒化ホウ素膜103を埋め込むことができる。
【0020】
実施形態に係る成膜方法によれば、まず窒化ホウ素膜成膜工程S20において、基板101にホウ素含有ガスと窒素含有ガスとを含む第1ガスを供給し、凹部102に窒化ホウ素膜103を形成する。次いで、熱処理工程S30において、基板101にホウ素含有ガスを含まず窒素含有ガスを含む第2ガスを供給し、窒化ホウ素膜103を熱処理する。これにより、窒化ホウ素膜成膜工程S20において成膜された窒化ホウ素膜103中の未結合手を有するホウ素が、熱処理工程S30において供給される第2ガスに含まれる窒素含有ガスの窒素と結合して窒化される。このため、窒化ホウ素膜103の体積が増加して膨張する。その結果、窒化ホウ素膜103によって隙間104が埋め込まれ、隙間104が消失する。すなわち、凹部102に対する窒化ホウ素膜103の埋め込み特性を改善できる。また、ホウ素の未結合手の数が減少するので、窒化ホウ素膜103の膜質が向上する。
【0021】
上記の実施形態では、窒化ホウ素膜成膜工程S20と熱処理工程S30とを1回ずつ行う場合を説明したが、これに限定されない。例えば、窒化ホウ素膜成膜工程S20と熱処理工程S30とを複数回繰り返すことにより、凹部102を埋め込んでもよい。この場合、比較的薄い窒化ホウ素膜103を成膜するごとに窒化ホウ素膜103の窒化が行われるので、ホウ素の未結合手が残りにくい。このため、窒化ホウ素膜103の膜質が向上する。
【0022】
〔処理装置〕
図3を参照し、実施形態に係る成膜方法を実施可能な処理装置の一例について説明する。図3に示されるように、処理装置1は、複数枚の基板Wに対して一度に処理を行うバッチ式の装置である。基板Wは、例えば半導体ウエハである。
【0023】
処理装置1は、処理容器10と、ガス供給部30と、排気部40と、加熱部50と、制御部90とを備える。
【0024】
処理容器10は、内部を減圧可能である。処理容器10は、内部に基板Wを収容する。処理容器10は、下端が開放された有天井の円筒形状の内管11と、下端が開放されて内管11の外側を覆う有天井の円筒形状の外管12とを有する。内管11及び外管12は、石英等の耐熱材料により形成されており、同軸状に配置されて2重管構造となっている。
【0025】
内管11の天井は、例えば平坦になっている。内管11の一側には、その長手方向(上下方向)に沿ってガスノズルを収容する収容部13が形成されている。例えば、内管11の側壁の一部を外側へ向けて突出させて凸部14を形成し、凸部14内を収容部13として形成している。
【0026】
収容部13に対向させて内管11の反対側の側壁には、その長手方向(上下方向)に沿って矩形状の開口15が形成されている。
【0027】
開口15は、内管11内のガスを排気できるように形成されたガス排気口である。開口15の長さは、ボート16の長さと同じであるか、又は、ボート16の長さより長く上下方向へそれぞれ延びるようにして形成されている。
【0028】
処理容器10の下端は、例えばステンレス鋼により形成される円筒形状のマニホールド17によって支持されている。マニホールド17の上端にはフランジ18が形成されており、フランジ18上に外管12の下端を設置して支持するようになっている。フランジ18と外管12との下端との間にはOリング等のシール部材19を介在させて外管12内を気密状態にしている。
【0029】
マニホールド17の上部の内壁には、円環状の支持部20が設けられており、支持部20上に内管11の下端を設置して支持するようになっている。マニホールド17の下端の開口には、蓋体21がOリング等のシール部材22を介して気密に取り付けられており、処理容器10の下端の開口、すなわち、マニホールド17の開口を気密に塞ぐようになっている。蓋体21は、例えばステンレス鋼により形成される。
【0030】
蓋体21の中央部には、磁性流体シール23を介してボート16を回転可能に支持する回転軸24が貫通させて設けられている。回転軸24の下部は、ボートエレベータよりなる昇降機構25のアーム25Aに回転自在に支持されている。
【0031】
回転軸24の上端には回転プレート26が設けられており、回転プレート26上に石英製の保温台27を介して基板Wを保持するボート16が載置されるようになっている。従って、昇降機構25を昇降させることによって蓋体21とボート16とは一体として上下動し、ボート16を処理容器10内に対して挿脱できるようになっている。ボート16は、処理容器10内に収容可能であり、複数枚(例えば50枚~150枚)の基板Wを上下方向に間隔を有して略水平に保持する。
【0032】
ガス供給部30は、前述した成膜方法で用いられる各種の処理ガスを処理容器10内に導入可能に構成される。ガス供給部30は、ホウ素含有ガス供給部31と、窒素含有ガス供給部32とを有する。
【0033】
ホウ素含有ガス供給部31は、処理容器10内にホウ素含有ガス供給管31aを備えると共に、処理容器10の外部にホウ素含有ガス供給経路31bを備える。ホウ素含有ガス供給経路31bには、ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって順に、ホウ素含有ガス源31c、マスフローコントローラ31d、ホウ素含有ガス用バルブ31eが設けられている。これにより、ホウ素含有ガス源31cのホウ素含有ガスは、ホウ素含有ガス用バルブ31eにより供給タイミングが制御されると共に、マスフローコントローラ31dにより所定の流量に調整される。ホウ素含有ガスは、ホウ素含有ガス供給経路31bからホウ素含有ガス供給管31aに流入して、ホウ素含有ガス供給管31aから処理容器10内に吐出される。
【0034】
窒素含有ガス供給部32は、処理容器10内に窒素含有ガス供給管32aを備えると共に、処理容器10の外部に窒素含有ガス供給経路32bを備える。窒素含有ガス供給経路32bには、ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって順に、窒素含有ガス源32c、マスフローコントローラ32d、窒素含有ガス用バルブ32eが設けられている。これにより、窒素含有ガス源32cの窒素含有ガスは、窒素含有ガス用バルブ32eにより供給タイミングが制御されると共に、マスフローコントローラ32dにより所定の流量に調整される。窒素含有ガスは、窒素含有ガス供給経路32bから窒素含有ガス供給管32aに流入して、窒素含有ガス供給管32aから処理容器10内に吐出される。
【0035】
ホウ素含有ガス供給部31及び窒素含有ガス供給部32は、それぞれホウ素含有ガス供給管31a及び窒素含有ガス供給管32aに不活性ガスを導入する図示しない不活性ガス供給経路を備えていてもよい。不活性ガス供給経路には、ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって順に、いずれも図示しない不活性ガス源、マスフローコントローラ、不活性ガス用バルブが設けられていてもよい。
【0036】
各ガス供給管(ホウ素含有ガス供給管31a、窒素含有ガス供給管32a)は、例えば石英により形成される。各ガス供給管は、マニホールド17に固定される。各ガス供給管は、内管11の近傍位置を鉛直方向に沿って直線状に延在すると共に、マニホールド17内においてL字状に屈曲して水平方向に延在することで、マニホールド17を貫通している。各ガス供給管同士は、内管11の周方向に沿って並んで設けられ、互いに同じ高さに形成されている。
【0037】
ホウ素含有ガス供給管31aにおいて内管11に位置する部位には、複数のホウ素含有ガス吐出口31fが設けられる。窒素含有ガス供給管32aにおいて内管11に位置する部位には、複数の窒素含有ガス吐出口32fが設けられる。各吐出口(ホウ素含有ガス吐出口31f、窒素含有ガス吐出口32f)は、それぞれのガス供給管の延在方向に沿って所定の間隔ごとに形成される。各吐出口は、水平方向に向けてガスを放出する。各吐出口同士の間隔は、例えばボート16に保持される基板Wの間隔と同じに設定される。各吐出口の高さ方向の位置は、上下方向に隣り合う基板W間の中間位置に設定されている。これにより、各吐出口は隣り合う基板W間の対向面にガスを効率的に供給できる。
【0038】
ガス供給部30は、複数種類のガスを混合して1つの供給管から混合したガスを吐出してもよい。各ガス供給管(ホウ素含有ガス供給管31a、窒素含有ガス供給管32a)は、互いに異なる形状や配置であってもよい。ガス供給部30は、ホウ素含有ガス、窒素含有ガス、不活性ガスの他に、別のガスを供給する構成でもよい。
【0039】
排気部40は、内管11内から開口15を介して排出され、内管11と外管12との間の空間P1を介して排気ポート41から排出されるガスを排気する。排気ポート41は、マニホールド17の上部の側壁であって、支持部20の上方に形成されている。排気ポート41には、排気通路42が接続されている。排気通路42には、ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって順に、圧力調整弁43及び真空ポンプ44が設けられている。排気部40は、制御部90の動作に基づき圧力調整弁43及び真空ポンプ44を動作して、真空ポンプ44により処理容器10内のガスを吸引しながら、圧力調整弁43により処理容器10内の圧力を調整する。
【0040】
加熱部50は、外管12の径方向外側において外管12を囲む円筒形状のヒータ51を有する。ヒータ51は、処理容器10の側周囲全体を加熱することで、処理容器10内に収容された各基板Wを加熱する。
【0041】
制御部90は、1以上のプロセッサ91、メモリ92、図示しない入出力インタフェース及び電子回路を有するコンピュータを適用し得る。プロセッサ91は、CPU、ASIC、FPGA、複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つ又は複数を組み合わせたものである。メモリ92は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ(例えば、コンパクトディスク、DVD、ハードディスク、フラッシュメモリ等)を含み、処理装置1を動作させるプログラム、基板処理のプロセス条件等のレシピを記憶している。プロセッサ91は、メモリ92に記憶されたプログラム及びレシピを実行することで、処理装置1の各構成を制御して前述の成膜方法を実施する。
【0042】
〔処理装置の動作〕
処理装置1において実施形態に係る成膜方法を実施する場合の動作について説明する。
【0043】
まず、制御部90は、昇降機構25を制御して、複数枚の基板Wを保持したボート16を処理容器10内に搬入し、蓋体21により処理容器10の下端の開口を気密に塞ぎ、密閉する。各基板Wは、表面に凹部102を有する基板101である。
【0044】
続いて、制御部90は、窒化ホウ素膜成膜工程S20を実行するように、ガス供給部30、排気部40及び加熱部50を制御する。具体的には、まず、制御部90は、排気部40を制御して処理容器10内を所定の圧力に減圧し、加熱部50を制御して基板温度を所定の温度に調整して維持する。所定の温度は、例えば300℃以下である。次いで、制御部90は、ガス供給部30を制御して処理容器10内にホウ素含有ガスと窒素含有ガスとを含む第1ガスを供給する。これにより、凹部102にホウ素リッチな窒化ホウ素膜103が成膜される。
【0045】
続いて、制御部90は、熱処理工程S30を実行するように、ガス供給部30、排気部40及び加熱部50を制御する。具体的には、まず、制御部90は、排気部40を制御して処理容器10内を所定の圧力に減圧し、加熱部50を制御して基板温度を所定の温度に調整して維持する。所定の温度は、例えば550℃以上である。次いで、制御部90は、ガス供給部30を制御して処理容器10内にホウ素含有ガスを含まず窒素含有ガスを含む第2ガスを供給する。これにより、ホウ素の未結合手が第2ガスに含まれる窒素含有ガスの窒素と結合して窒化される。このため、窒化ホウ素膜103の体積が増加して膨張する。その結果、窒化ホウ素膜103によって隙間104が埋め込まれ、隙間104が消失する。すなわち、凹部102に対する窒化ホウ素膜103の埋め込み特性を改善できる。また、ホウ素の未結合手の数が減少するので、窒化ホウ素膜103の膜質が向上する。
【0046】
続いて、制御部90は、処理容器10内を大気圧に昇圧すると共に、処理容器10内を搬出温度に降温させた後、昇降機構25を制御してボート16を処理容器10内から搬出する。
【0047】
以上により、処理装置1において実施形態に係る成膜方法により、凹部102に窒化ホウ素膜103を埋め込むことができる。
【0048】
〔実験結果〕
まず、実施形態に係る成膜方法における熱処理工程S30により窒化ホウ素膜の体積が増加することを確認するために行った実験A,Bについて説明する。
【0049】
実験Aでは、まず前述の処理装置1において、以下に示す条件A1で窒化ホウ素膜成膜工程S20を実行し、シリコン基板の上に窒化ホウ素膜を成膜した。次いで、分光エリプソメータにより、成膜された(熱処理の前の)窒化ホウ素膜の膜厚を測定した。次いで、前述の処理装置1において、以下に示す条件A2で熱処理工程S30を実行し、窒化ホウ素膜に熱処理を施した。次いで、分光エリプソメータにより、熱処理された後の窒化ホウ素膜の膜厚を測定した。また、熱処理の前後における窒化ホウ素膜の膜厚変化率を算出した。膜厚変化率は、以下の数式により算出した。
【0050】
膜厚変化率=(熱処理の後の膜厚-熱処理の前の膜厚)/熱処理の前の膜厚
【0051】
(条件A1)
成膜方法:CVD
第1ガス:ホウ素含有ガス+窒素含有ガス+不活性ガス
ホウ素含有ガス:ジボランガス
窒素含有ガス:アンモニアガス
不活性ガス:窒素ガス
基板温度:235℃
(条件A2)
第2ガス:窒素含有ガス+不活性ガス
窒素含有ガス:アンモニアガス
不活性ガス:窒素ガス
基板温度:600℃
【0052】
実験Bでは、まず前述の処理装置1において、以下に示す条件B1で窒化ホウ素膜成膜工程S20を実行し、シリコン基板の上に窒化ホウ素膜を成膜した。次いで、分光エリプソメータにより、成膜された(熱処理の前の)窒化ホウ素膜の膜厚を測定した。次いで、前述の処理装置1において、以下に示す条件B2で熱処理工程S30を実行し、窒化ホウ素膜に熱処理を施した。次いで、分光エリプソメータにより、熱処理された後の窒化ホウ素膜の膜厚を測定した。また、熱処理の前後における窒化ホウ素膜の膜厚変化率を算出した。膜厚変化率は、以下の数式により算出した。
【0053】
膜厚変化率=(熱処理の後の膜厚-熱処理の前の膜厚)/熱処理の前の膜厚
【0054】
(条件B1)
成膜方法:CVD
第1ガス:ホウ素含有ガス+窒素含有ガス+不活性ガス
ホウ素含有ガス:ジボランガス
窒素含有ガス:アンモニアガス
不活性ガス:窒素ガス
基板温度:300℃
(条件B2)
第2ガス:窒素含有ガス+不活性ガス
窒素含有ガス:アンモニアガス
不活性ガス:窒素ガス
基板温度:700℃
【0055】
図4は、熱処理の前後における窒化ホウ素膜の膜厚変化率を示す図である。図4中、左側の棒グラフは実験Aにおいて成膜された窒化ホウ素膜の熱処理の前後における膜厚変化率[%]を示し、右側の棒グラフは実験Bにおいて成膜された窒化ホウ素膜の熱処理の前後における膜厚変化率[%]を示す。
【0056】
図4に示されるように、実験Aにおいて成膜された窒化ホウ素膜の膜厚変化率は24.3%であり、実験Bにおいて成膜された窒化ホウ素膜の膜厚変化率は12.8%であった。この結果から、窒化ホウ素膜成膜工程S20及び熱処理工程S30をこの順に行うことで、窒化ホウ素膜の体積を大きくできることが示された。また、窒化ホウ素膜の膜厚変化率は、実験Aが実験Bより大きい。この結果から、窒化ホウ素膜成膜工程S20において、基板温度を235℃に設定することで、基板温度を300℃に設定するよりも窒化ホウ素膜の膜厚変化率を大きくできることが示された。
【0057】
次に、実施形態に係る成膜方法における窒化ホウ素膜成膜工程S20における基板温度の違いが、窒化ホウ素膜に含まれるホウ素の窒化の進行度合いに与える影響を確認するために行った実験C,Dについて説明する。
【0058】
実験Cでは、まず前述の処理装置1において、以下に示す条件C1で窒化ホウ素膜成膜工程S20を実行し、シリコン基板の上に窒化ホウ素膜を成膜した。次いで、X線光電子分光(X-ray photoelectron spectroscopy:XPS)により、成膜された(熱処理の前の)窒化ホウ素膜の組成を測定した。次いで、前述の処理装置1において、以下に示す条件C2で熱処理工程S30を実行し、窒化ホウ素膜に熱処理を施した。次いで、XPSにより、熱処理された後の窒化ホウ素膜の組成を測定した。また、熱処理の前と後のそれぞれについて窒化ホウ素膜の膜中の窒素濃度に対するホウ素濃度の比率(以下「B/N比率」という。)を算出した。
【0059】
(条件C1)
成膜方法:CVD
第1ガス:ホウ素含有ガス+窒素含有ガス+不活性ガス
ホウ素含有ガス:ジボランガス
窒素含有ガス:アンモニアガス
不活性ガス:窒素ガス
基板温度:300℃
(条件C2)
第2ガス:窒素含有ガス+不活性ガス
窒素含有ガス:アンモニアガス
不活性ガス:窒素ガス
基板温度:700℃
【0060】
実験Dでは、まず前述の処理装置1において、以下に示す条件D1で窒化ホウ素膜成膜工程S20を実行し、シリコン基板の上に窒化ホウ素膜を成膜した。次いで、XPSにより、成膜された(熱処理の前の)窒化ホウ素膜の組成を測定した。次いで、前述の処理装置1において、以下に示す条件D2で熱処理工程S30を実行し、窒化ホウ素膜に熱処理を施した。次いで、XPSにより、熱処理された後の窒化ホウ素膜の組成を測定した。また、熱処理の前と後のそれぞれについて窒化ホウ素膜のB/N比率を算出した。
【0061】
(条件D1)
成膜方法:CVD
第1ガス:ホウ素含有ガス+窒素含有ガス+不活性ガス
ホウ素含有ガス:ジボランガス
窒素含有ガス:アンモニアガス
不活性ガス:窒素ガス
基板温度:550℃
(条件D2)
第2ガス:窒素含有ガス+不活性ガス
窒素含有ガス:アンモニアガス
不活性ガス:窒素ガス
基板温度:700℃
【0062】
図5は、熱処理の前後における窒化ホウ素膜のB/N比率を示す図である。図5中、左側の棒グラフは実験Cにおいて成膜された窒化ホウ素膜の熱処理の前後におけるB/N比率を示し、右側の棒グラフは実験Dにおいて成膜された窒化ホウ素膜の熱処理の前後におけるB/N比率を示す。
【0063】
図5に示されるように、実験Cにおいて成膜された窒化ホウ素膜のB/N比率は、熱処理の前が4.4であり、熱処理の後が1.2であった。また、実験Dにおいて成膜された窒化ホウ素膜のB/N比率は、熱処理の前が1.9であり、熱処理の後が1.3であった。この結果から、窒化ホウ素膜成膜工程S20及び熱処理工程S30をこの順に行うことで、窒化ホウ素膜の膜中のボロンを窒化させることができることが示された。また、熱処理の前後における窒化ホウ素膜のB/N比率の変化率は、実験Cが実験Dより大きい。この結果から、窒化ホウ素膜成膜工程S20において、基板温度を300℃に設定することで、基板温度を550℃に設定するよりも窒化ホウ素膜のB/N比率の変化率を大きくできることが示された。
【0064】
次に、実施形態に係る成膜方法における窒化ホウ素膜成膜工程S20における基板温度の違いが、窒化ホウ素膜の表面粗さに与える影響を確認するために行った実験E,Fについて説明する。
【0065】
実験Eでは、まず前述の処理装置1において、前述した条件C1で窒化ホウ素膜成膜工程S20を実行し、シリコン基板の上に窒化ホウ素膜を成膜した。次いで、成膜された(熱処理の前の)窒化ホウ素膜の表面形状を走査電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)で測定することにより、窒化ホウ素膜の表面粗さ(RMS)の値を算出した。次いで、前述の処理装置1において、前述した条件C2で熱処理工程S30を実行し、窒化ホウ素膜に熱処理を施した。次いで、熱処理された後の窒化ホウ素膜の表面形状をSEMで測定することにより、窒化ホウ素膜の表面粗さ(RMS)の値を算出した。
【0066】
実験Fでは、まず前述の処理装置1において、前述した条件D1で窒化ホウ素膜成膜工程S20を実行し、シリコン基板の上に窒化ホウ素膜を成膜した。成膜された(熱処理の前の)窒化ホウ素膜の表面形状をSEMで測定することにより、窒化ホウ素膜の表面粗さ(RMS)の値を算出した。次いで、前述の処理装置1において、前述した条件D2で熱処理工程S30を実行し、窒化ホウ素膜に熱処理を施した。次いで、熱処理された後の窒化ホウ素膜の表面形状をSEMで測定することにより、窒化ホウ素膜の表面粗さ(RMS)の値を算出した。
【0067】
図6は、熱処理の前後における窒化ホウ素膜の表面粗さ(RMS)を示す図である。図6中、左側の棒グラフは実験Eにおいて成膜された窒化ホウ素膜の熱処理の前後におけるRMS[nm]を示し、右側の棒グラフは実験Fにおいて成膜された窒化ホウ素膜の熱処理の前後におけるRMS[nm]を示す。
【0068】
図6に示されるように、実験Eにおいて成膜された窒化ホウ素膜のRMSは、熱処理の前が0.26であり、熱処理の後が0.64であった。また、実験Fにおいて成膜された窒化ホウ素膜のRMSは、熱処理の前が2.34であり、熱処理の後が2.56であった。この結果から、窒化ホウ素膜成膜工程S20において、基板温度を300℃に設定することで、基板温度を550℃に設定するよりも窒化ホウ素膜の表面粗さを小さくできることが示された。
【0069】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
101 基板
102 凹部
103 窒化ホウ素膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6