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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156155
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】真空処理装置及び真空処理方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/35 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
C23C14/35 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065848
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】氏原 祐輔
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029DA03
4K029DC13
4K029DC16
4K029DC42
4K029DC43
4K029DC45
(57)【要約】
【課題】スパッタリング成膜の歩留向上。
【解決手段】真空処理装置は、ロータリターゲットと、磁場発生機構と、基板ホルダと、防着板と、複数の第1センサと、複数の第2センサとを具備する。上記磁場発生機構は、上記第2主面に対向し、上記一軸方向に並設され、上記中心軸の周りに回転可能な複数の磁気回路部と、上記複数の磁気回路部のそれぞれと上記ロータリターゲットとの間の距離を変更する移動機構とを有する。上記複数の第1センサは、上記第1主面から上記スパッタリング粒子が放出した後の上記ロータリターゲットの厚みの減少量を計測する。上記複数の第2センサは、上記複数の磁気回路部のいずれかが上記防着板に対向した際に、上記複数の磁気回路部のいずれかから上記ロータリターゲットの上記第1主面を介して漏洩する磁力を計測する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリング粒子を放出する第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面とを含み、一軸方向に延在する中心軸を有し、前記中心軸の周りに回転する筒状のロータリターゲットと、
前記第2主面に対向し、前記一軸方向に並設され、前記中心軸の周りに回転可能な複数の磁気回路部と、前記複数の磁気回路部のそれぞれと前記ロータリターゲットとの間の距離を変更する移動機構とを有する磁場発生機構と、
前記第1主面に対向し前記スパッタリング粒子を堆積させる基板を支持することが可能な基板ホルダと、
前記基板ホルダとは前記ロータリターゲットを介して反対側に配置された防着板と、
前記防着板に前記ロータリターゲットの前記第1主面に対向するように設けられ、前記第1主面から前記スパッタリング粒子が放出した後の前記ロータリターゲットの厚みの減少量を計測する複数の第1センサと、
前記防着板に前記ロータリターゲットの前記第1主面に対向するように設けられ、前記複数の磁気回路部のいずれかが前記防着板に対向した際に、前記複数の磁気回路部のいずれかから前記ロータリターゲットの前記第1主面を介して漏洩する磁力を計測する複数の第2センサと
を具備する真空処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載された真空処理装置であって、
前記ロータリターゲット、前記磁場発生機構、前記第1センサ、及び前記第2センサのそれぞれの動作を制御する制御部をさらに具備し、
前記制御部には、
前記複数の第1センサのいずれかと前記第1主面との間の距離と、前記複数の第1センサのいずれかが対向する前記ロータリターゲットの厚みの前記減少量との関係と、
前記複数の第2センサのいずれかが検出した磁場強度と、前記複数の第2センサのいずれかと前記磁気回路部との間の距離との関係と
が格納され、
前記制御部は、前記複数の磁気回路部のいずれかから前記第1主面に形成される磁場強度が目的値となるように、前記複数の第2センサのいずれかと前記複数の第2センサのいずれかが対向する前記磁気回路部との間の前記距離を調整する
真空処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された真空処理装置であって、
前記ロータリターゲットが前記一軸方向と交差する方向に複数並設された
真空処理装置。
【請求項4】
スパッタリング粒子を放出する第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面とを含み、一軸方向に延在する中心軸を有し、前記中心軸の周りに回転する筒状のロータリターゲットと、
前記第2主面に対向し、前記一軸方向に並設され、前記中心軸の周りに回転可能な複数の磁気回路部と、前記複数の磁気回路部のそれぞれと前記ロータリターゲットとの間の距離を変更する移動機構とを有する磁場発生機構と、
前記第1主面に対向し前記スパッタリング粒子を堆積させる基板を支持することが可能な基板ホルダと、
前記基板ホルダとは前記ロータリターゲットを介して反対側に配置された防着板と、
前記防着板に前記ロータリターゲットの前記第1主面に対向するように設けられ、前記第1主面から前記スパッタリング粒子が放出した後の前記ロータリターゲットの厚みの減少量を計測する複数の第1センサと、
前記防着板に前記ロータリターゲットの前記第1主面に対向するように設けられ、前記複数の磁気回路部のいずれかが前記防着板に対向した際に、前記複数の磁気回路部のいずれかから前記ロータリターゲットの前記第1主面を介して漏洩する磁力を計測する複数の第2センサと
を準備して、前記基板に前記スパッタリング粒子を堆積する
真空処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載された真空処理方法であって、
前記複数の第1センサのいずれかと前記第1主面との間の距離と、前記複数の第1センサのいずれかが対向する前記ロータリターゲットの厚みの前記減少量との関係と、
前記複数の第2センサのいずれかが検出した磁場強度と、前記複数の第2センサのいずれかと前記複数の第2センサのそれぞれが対向する前記磁気回路部との間の距離との関係と
を取得し、
前記複数の磁気回路部のいずれかから前記第1主面に形成される磁場強度が目的値となるように、前記複数の第2センサのいずれかと前記複数の第2センサのいずれかが対向する前記磁気回路部との間の前記距離を調整する
真空処理方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載された真空処理方法であって、
前記ロータリターゲットを前記一軸方向と交差する方向に複数並設させて、前記基板に前記スパッタリング粒子を堆積する
真空処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理装置及び真空処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング成膜の中に、スパッタリングターゲットの裏面に磁石を配置してスパッタリング成膜を行うマグネトロンスパッタリング法がある。マグネトロンスパッタリングでは、基板に形成されるスパッタリング膜の膜質(例えば、膜厚)が基板面内で、より均一であることが望まれる。
【0003】
このような状況のなか、膜質が均一であるスパッタリング膜を得るために、スパッタリングターゲットとしてロータリターゲットを利用し、スパッタリング成膜の際、ロータリターゲット内に配置された磁石の向きを定期的に変える技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6385487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しなしながら、スパッタリング膜を量産するため、スパッタリング成膜を長時間にわたり連続して行うと、スパッタリングターゲットが部分的に掘れたりするほか、磁石がプラズマから熱を受けて、磁石を支持する支持台が変形して、成膜速度が経時的に変化するという現象に陥る。この結果、スパッタリング成膜の歩留まりが向上しないという状況に至る。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、スパッタリング成膜の歩留まりを向上させた真空処理装置及び真空処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る真空処理装置は、筒状のロータリターゲットと、磁場発生機構と、基板ホルダと、防着板と、複数の第1センサと、複数の第2センサとを具備する。
上記ロータリターゲットは、スパッタリング粒子を放出する第1主面と、上記第1主面とは反対側の第2主面とを含み、一軸方向に延在する中心軸を有し、上記中心軸の周りに回転する。
上記磁場発生機構は、上記第2主面に対向し、上記一軸方向に並設され、上記中心軸の周りに回転可能な複数の磁気回路部と、上記複数の磁気回路部のそれぞれと上記ロータリターゲットとの間の距離を変更する移動機構とを有する。
上記基板ホルダは、上記第1主面に対向し上記スパッタリング粒子を堆積させる基板を支持することができる。
上記防着板は、上記基板ホルダとは上記ロータリターゲットを介して反対側に配置される。
上記複数の第1センサは、上記防着板に上記ロータリターゲットの上記第1主面に対向するように設けられ、上記第1主面から上記スパッタリング粒子が放出した後の上記ロータリターゲットの厚みの減少量を計測する。
上記複数の第2センサは、上記防着板に上記ロータリターゲットの上記第1主面に対向するように設けられ、上記複数の磁気回路部のいずれかが上記防着板に対向した際に、上記複数の磁気回路部のいずれかから上記ロータリターゲットの上記第1主面を介して漏洩する磁力を計測する。
【0008】
このような真空処理装置によれば、スパッタリング成膜の歩留まりを向上する。
【0009】
上記真空処理装置においては、上記ロータリターゲット、上記磁場発生機構、上記第1センサ、及び上記第2センサのそれぞれの動作を制御する制御部をさらに具備してもよい。
上記制御部には、
上記複数の第1センサのいずれかと上記第1主面との間の距離と、上記複数の第1センサのいずれかが対向する上記ロータリターゲットの厚みの上記減少量との関係と、
上記複数の第2センサのいずれかが検出した磁場強度と、上記複数の第2センサのいずれかと上記磁気回路部との間の距離との関係と
が格納されてもよい。
上記制御部は、上記複数の磁気回路部のいずれかから上記第1主面に形成される磁場強度が目的値となるように、上記複数の第2センサのいずれかと上記複数の第2センサのいずれかが対向する上記磁気回路部との間の上記距離を調整してもよい。
【0010】
このような真空処理装置によれば、スパッタリング成膜の歩留まりを向上する。
【0011】
上記真空処理装置においては、上記ロータリターゲットが上記一軸方向と交差する方向に複数並設されてもよい。
【0012】
このような真空処理装置によれば、スパッタリング成膜の歩留まりを向上する。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る真空処理方法では、
スパッタリング粒子を放出する第1主面と、上記第1主面とは反対側の第2主面とを含み、一軸方向に延在する中心軸を有し、上記中心軸の周りに回転する筒状のロータリターゲットと、
上記第2主面に対向し、上記一軸方向に並設され、上記中心軸の周りに回転可能な複数の磁気回路部と、上記複数の磁気回路部のそれぞれと上記ロータリターゲットとの間の距離を変更する移動機構とを有する磁場発生機構と、
上記第1主面に対向し上記スパッタリング粒子を堆積させる基板を支持することが可能な基板ホルダと、
上記基板ホルダとは上記ロータリターゲットを介して反対側に配置された防着板と、
上記防着板に上記ロータリターゲットの上記第1主面に対向するように設けられ、上記第1主面から上記スパッタリング粒子が放出した後の上記ロータリターゲットの厚みの減少量を計測する複数の第1センサと、
上記防着板に上記ロータリターゲットの上記第1主面に対向するように設けられ、上記複数の磁気回路部のいずれかが上記防着板に対向した際に、上記複数の磁気回路部のいずれかから上記ロータリターゲットの上記第1主面を介して漏洩する磁力を計測する複数の第2センサと
が準備され、上記基板に上記スパッタリング粒子を堆積させる。
【0014】
このような真空処理方法によれば、スパッタリング成膜の歩留まりを向上する。
【0015】
上記真空処理方法においては、
上記複数の第1センサのいずれかと上記第1主面との間の距離と、上記複数の第1センサのいずれかが対向する上記ロータリターゲットの厚みの上記減少量との関係と、
上記複数の第2センサのいずれかが検出した磁場強度と、上記複数の第2センサのいずれかと上記複数の第2センサのそれぞれが対向する上記磁気回路部との間の距離との関係と
が取得されてもよい。
上記複数の磁気回路部のいずれかから上記第1主面に形成される磁場強度が目的値となるように、上記複数の第2センサのいずれかと上記複数の第2センサのいずれかが対向する上記磁気回路部との間の上記距離が調整されてもよい。
【0016】
このような真空処理方法によれば、スパッタリング成膜の歩留まりを向上する。
【0017】
上記真空処理方法においては、上記ロータリターゲットを上記一軸方向と交差する方向に複数並設させて、上記基板に上記スパッタリング粒子を堆積させてもよい。
【0018】
このような真空処理方法によれば、スパッタリング成膜の歩留まりを向上する。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、本発明によれば、スパッタリング成膜の歩留まりを向上させた真空処理装置及び真空処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態の真空処理装置の一例を示す模式的断面図である。
図2図1のA1-A2断面を示す模式的断面図である。
図3】スパッタリング成膜の一例を示す模式的断面図である。
図4】スパッタリング成膜の一例を示す模式的断面図である。
図5】スパッタリング成膜の一例を示す模式的断面図である。
図6】部材間同士の距離の定義を示す模式的断面図である。
図7】表1~表3に掲げられた磁気回路部の動作手順を総括的に表したフロー図である。
図8】本実施形態の真空処理装置の別の一例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。また、以下に示す数値は例示であり、この例に限らない。
【0022】
図1は、本実施形態の真空処理装置の一例を示す模式的断面図である。図1に例示される真空処理装置1として、スパッタリング成膜装置が示される。
【0023】
真空処理装置1は、筒状のロータリターゲット20と、磁場発生機構30と、基板ホルダ91と、複数の距離センサ41、42、43、44、45(第1センサ)と、複数の磁気センサ51、52、53、54、55(第1センサ)と、防着板60とを具備する。ロータリターゲット20、磁場発生機構30、基板ホルダ91、複数の距離センサ41~45、複数の磁気センサ51~55、及び防着板60は、減圧維持可能な真空槽(不図示)に収容される。真空槽は、排気機構(不図示)に接続される。真空槽には、ガス供給機構(不図示)からAr等の放電ガスが供給される。また、真空処理装置1は、ロータリターゲット20と、磁場発生機構30とを回転させる回転機構(不図示)を備える。また、真空処理装置1は、ロータリターゲット20、磁場発生機構30、距離センサ41~45、及び磁気センサ51~55、排気機構、ガス供給機構、回転機構のそれぞれの動作を制御する制御部70を具備する。
【0024】
ロータリターゲット20は、例えば、円筒状のスパッタリングターゲットである。ロータリターゲット20には、電源(不図示)から所定の電力(DC電力、AC電力等)が供給される。ロータリターゲット20は、円筒状のターゲット材21と、円筒状であってターゲット材21を支持するバッキングチューブ22とを有する。また、ロータリターゲット20は、一軸方向(X軸方向)に延在する中心軸20cを有する。ロータリターゲット20は、中心軸20cの周りに回転する。ロータリターゲット20は、スパッタリング粒子を放出するスパッタリング面201(第1主面)と、スパッタリング面201とは反対側の裏面202(第2主面)とを含む。
【0025】
磁場発生機構30は、ロータリターゲット20の内部に設けられる。磁場発生機構30は、複数の磁気回路部311、312、313、314、315と、複数の移動機構331、332、333、334、335と、支持板32とを有する。
【0026】
複数の磁気回路部311~315のそれぞれは、ロータリターゲット20の裏面202に対向する。複数の磁気回路部311~315のそれぞれは、一軸方向(中心軸20c方向)に並設される。複数の磁気回路部311~315のそれぞれは、例えば、永久磁石を含む。これにより、スパッタリング面201には、磁気回路部311~315のそれぞれからの漏洩磁場が形成される。複数の磁気回路部311~315のそれぞれは、中心軸20cの周りに回転可能に構成される。
【0027】
移動機構331~335のそれぞれは、複数の磁気回路部311~315のいずれかを支持する。例えば、移動機構331は、磁気回路部311を支持する。移動機構332は、磁気回路部312を支持する。移動機構333は、磁気回路部313を支持する。移動機構334は、磁気回路部314を支持する。移動機構335は、磁気回路部315を支持する。
【0028】
移動機構331~335のそれぞれは、複数の磁気回路部311~315のいずれかとロータリターゲット20との間の距離を変更することができる。例えば、移動機構331は、磁気回路部311とロータリターゲット20との間の距離を変更することができる。移動機構332は、磁気回路部312とロータリターゲット20との間の距離を変更することができる。移動機構333は、磁気回路部313とロータリターゲット20との間の距離を変更することができる。移動機構334は、磁気回路部314とロータリターゲット20との間の距離を変更することができる。移動機構335は、磁気回路部315とロータリターゲット20との間の距離を変更することができる。
【0029】
複数の磁気回路部の数は、図示される数に限らずロータリターゲット20の長さに応じて適宜変更される。複数の磁気回路部の数に応じて、移動機構の数も変更される。
【0030】
支持板32は、移動機構331~335のそれぞれを支持する。支持板32は、移動機構331を介して磁気回路部311を支持する。支持板32は、移動機構332を介して磁気回路部312を支持する。支持板32は、移動機構333を介して磁気回路部313を支持する。支持板32は、移動機構334を介して磁気回路部314を支持する。支持板32は、移動機構335を介して磁気回路部315を支持する。また、支持板32は、一軸方向に延在する。支持板32は、中心軸20cの周りに回転することができる。これにより、複数の磁気回路部311~315のそれぞれが中心軸20cの周りに回転できる。
【0031】
防着板60は、基板ホルダ91とはロータリターゲット20を介して反対側に配置される。防着板60と基板ホルダ91との間には、ロータリターゲット20が配置される。防着板60には、ロータリターゲット20に向けて、複数の距離センサ41~45と、複数の磁気センサ51~55とが設けられている。防着板60は、例えば、接地電位に接続される。
【0032】
複数の距離センサ41~45のそれぞれは、ロータリターゲット20のスパッタリング面201に対向するように防着板60に設けられる。複数の距離センサ41~45のそれぞれは、一軸方向に並設される。例えば、距離センサ41は、磁気センサ51と隣り合うように防着板60に設けられる。距離センサ42は、磁気センサ52と隣り合うように防着板60に設けられる。距離センサ43は、磁気センサ53と隣り合うように防着板60に設けられる。距離センサ44は、磁気センサ54と隣り合うように防着板60に設けられる。距離センサ45は、磁気センサ55と隣り合うように防着板60に設けられる。それぞれが隣り合う方向は、一軸方向でもよく、ロータリターゲット20の回転方向でもよい。
【0033】
複数の距離センサ41~45のそれぞれは、例えば、レーザ距離計等の光学的計測手段を備える。複数の距離センサ41~45のそれぞれによって、スパッタリング面201からスパッタリング粒子が放出した後のロータリターゲット20の厚みの減少量が計測される。
【0034】
複数の磁気センサ51~55のそれぞれは、ロータリターゲット20のスパッタリング面201に対向するように防着板60に設けられる。複数の磁気センサ51~55のそれぞれは、一軸方向に並設される。複数の磁気センサ51~55のそれぞれは、複数の磁気回路部311~315のいずれかが中心軸20cを中心とした回転動作によって防着板60に対向した際に、複数の磁気回路部311~315のいずれかからロータリターゲット20のスパッタリング面201を介して漏洩する磁場強度(磁力)を計測する。
【0035】
例えば、磁気センサ51は、磁気回路部311が防着板60に対向した際に、磁気回路部311に対向し、磁気回路部311からロータリターゲット20のスパッタリング面201を介して漏洩する磁力を計測する。磁気センサ52は、磁気回路部312が防着板60に対向した際に、磁気回路部312に対向し、磁気回路部312からロータリターゲット20のスパッタリング面201を介して漏洩する磁力を計測する。磁気センサ53は、磁気回路部313が防着板60に対向した際に、磁気回路部313に対向し、磁気回路部313からロータリターゲット20のスパッタリング面201を介して漏洩する磁力を計測する。磁気センサ54は、磁気回路部314が防着板60に対向した際に、磁気回路部314に対向し、磁気回路部314からロータリターゲット20のスパッタリング面201を介して漏洩する磁力を計測する。磁気センサ55は、磁気回路部315が防着板60に対向した際に、磁気回路部315に対向し、磁気回路部315からロータリターゲット20のスパッタリング面201を介して漏洩する磁力を計測する。
【0036】
基板ホルダ91は、真空処理の対象物である基板90を支持することができる。基板90は、スパッタリング面201に対向する。基板90には、スパッタリング面201から放出されたスパッタリング粒子が堆積する。基板ホルダ91は、スパッタリング成膜時、基板ホルダ91とロータリターゲット20との相対距離が変わらない固定式の基板ホルダでもよく、基板ホルダ91とロータリターゲット20との相対距離が変わるスライド式の基板ホルダでもよい。例えば、基板ホルダ91がスライド式の基板ホルダである場合、スパッタリング成膜時、基板90及び基板ホルダ91は、一軸方向と直交する方向(Y軸方向)に移動する。
【0037】
真空処理装置1の動作、真空処理方法について、図1のA1-A2断面を参照しながら説明する。
【0038】
図2(a)、(b)は、図1のA1-A2断面を示す模式的断面図である。以下では、磁気回路部311~315のうち、磁気回路部311が示され、移動機構331~335のうち、移動機構331が示される。磁気回路部311と移動機構331とを用いて示される断面構造及び動作は、磁気回路部311以外の磁気回路部312~315、移動機構331以外の移動機構332~335、距離センサ41以外の距離センサ42~45、磁気センサ51以外の磁気センサ52~55にも適用される。
【0039】
図2(a)には、真空処理装置1がスパッタリング成膜を行っているときの一例が示される。スパッタリング成膜時、磁気回路部311は、基板90側または基板ホルダ91の側に向けられる。ロータリターゲット20は、スパッタリング成膜時、所定の角速度で回転する。図2(a)では、磁気回路部311(例えば、中央の磁石311a)が基板90に最も近くなる状態が例示される。本実施形態では、この状態での磁気回路部311の回転角θを0度(基準値)とする。また、0度(基準値)から時計回りを正の角度、反時計回りを負の角度とする。スパッタリング成膜時、回転角θは0度に設定される必要はなく、正側または負側にずらしてもよい。この例については後述する。
【0040】
磁気回路部311は、中央に配置された磁石311aと、磁石311aの両側に配置された磁石311b、311cとを有する。磁石311a、311b、311cは、例えば、基材(ヨーク板)311pに支持される。磁気回路部311の極性は、中央の磁石311aからS極と、その両側の磁石311b、311cからN極の構成とされる。このような構成により、磁気回路部311からスパッタリング面201を漏洩してスパッタリング面201に形成される磁場が効率よく電子や電荷粒子を収束する。
【0041】
ロータリターゲット20の中心軸20cの周りに磁気回路部311を回転移動させることにより、マグネトロン放電時においては、磁気回路部311が対向するスパッタリング面201付近にプラズマが集中する。この結果、磁気回路部311が対向するスパッタリング面201から優先的にスパッタリング粒子を放出することができる。また、磁気回路部311の回転角θに応じて、スパッタリング粒子がスパッタリング面201から放出する指向を変えることができる。
【0042】
支持板32に支持された移動機構331は、スライド機構(伸縮ロッド)331rを有する。スライド機構331rがスライド機構331rの長手方向に伸縮することにより、磁気回路部311がロータリターゲット20に近づいたり、離れたりする。これにより、スパッタリング面201に形成される磁場を基板90の側に押し出したり、中心軸20cの側に引き込めたりできる。換言すれば、スライド機構331rの伸縮によって、スパッタリング面201に形成される磁場を強めたり、弱めたりすることができる。
【0043】
図2(b)には、真空処理装置1がスパッタリング成膜を停止しているときの一例が示される。スパッタリング成膜を停止している際には、磁気回路部311が基板90または基板ホルダ91とは反対側に回転移動し、磁気回路部311(例えば、中央の磁石311a)が防着板60に最も近くなるように位置する。この際、磁気センサ51によって、磁気センサ51が対向するスパッタリング面201から漏洩する磁場強度(例えば、水平磁場強度(gauss))が測定される。
【0044】
磁気センサ51が検出した磁場強度は、磁気センサ51と磁気センサ51が対向する磁気回路部311との間の距離に応じて変化する。例えば、磁気センサ51と磁気センサ51が対向する磁気回路部311との間の距離が長くなるほど、磁気センサ51が検出した磁場強度は弱く検出される。
【0045】
例えば、制御部70には、複数の磁気センサ51~55のいずれかが検出した磁場強度と、複数の磁気センサ51~55のいずれかと複数の磁気センサ51~55のいずれかが対向する磁気回路部311~315との間の距離との関係とが格納されている。例えば、複数の磁気センサ51~55のいずれかが検出した磁場強度と、前記いずれかの磁気センサと、前記いずれかの磁気センサが対向する磁気回路部との間の距離との関係とが格納されている。この相関関係は、予め実験、シミュレーション等で求められている。例えば、複数の磁気センサ51~55のいずれかが検出した磁場強度と、前記いずれかの磁気センサが対向する磁気回路部との間の距離との関係は、(磁場強度)=A×exp(-B×(距離))の関係式(1)で示される(A、Bは係数)。換言すれば、磁気センサ51が磁気センサ51が対向する磁気回路部311の磁場強度を検出することで、磁気センサ51と磁気回路部311との間の距離を算出することができる。
【0046】
また、スパッタリング成膜を停止している際には、距離センサ41によって、距離センサ41と、距離センサ41が対向するスパッタリング面201との間の距離(mm)が測定される。距離センサ41とスパッタリング面201との間の距離(mm)と、ターゲット材21の厚さ(mm)との相関関係は、予め実験、シミュレーション等で求められている。その相関関係は、制御部70に格納されている。
【0047】
例えば、ターゲット材21の初期(スパッタリング成膜を開始する前の状態)の厚さがT(mm)で、距離センサ41とスパッタリング面201との間の初期の距離がD(mm)の場合、スパッタリング成膜によって、ターゲット材21がt(mm)だけ減少したとすれば、ターゲット材21の厚みは、T-t(mm)となり(t≦T)、距離センサ41とスパッタリング面201との間の距離は、D+t(mm)となる。すなわち、距離センサ41とスパッタリング面201との間の距離を計測することによって、スパッタリング成膜開始後のターゲット材21の厚みT-t(mm)を求めることができる。
【0048】
制御部70には、複数の距離センサ41~45のいずれかとスパッタリング面201との間の距離(D+t(mm))と、距離センサ41~45のいずれかが対向するロータリターゲット20(ターゲット材21)の厚みの減少量(-t(mm))との関係が格納されている。例えば、複数の距離センサ41~45のいずれかとスパッタリング面201との間の距離と、前記いずれかの距離センサが対向するターゲット材21の厚みの減少量との関係が格納されている。制御部70は、距離(D+t(mm))から減少量(-t(mm))を求め、さらにターゲット材21の厚み(T-t(mm))を算出する。
【0049】
磁気センサ51によって、スパッタリング面201から漏洩する磁場強度を計測する際、または、距離センサ41によって、ターゲット材21の厚みを検出する際には、ロータリターゲット20を回転させてもよく、ロータリターゲット20の回転を停止してもよい。但し、距離センサ41によってターゲット材21の外周の一周分の平均的な厚みを検出する場合には、ロータリターゲット20を回転しながらターゲット材21の厚みを検出することが望ましい。
【0050】
図3(a)~図5(b)は、スパッタリング成膜の一例を示す模式的断面図である。図3(a)~図5(b)では、防着板60、距離センサ41、及び磁気センサ51が略されたり、基板90、基板ホルダ91が略されたりしている。
【0051】
まず、スパッタリング成膜を開始する前に、図3(a)に示すように、磁気回路部311を防着板60に対向させる。磁気センサ51は、磁気回路部311を防着板60に対向させた状態での磁場強度を測定する。ここで、制御部70には、磁気センサ51が検出した磁場強度と、磁気センサ51と磁気センサ51が対向する磁気回路部311との間の距離との関係とが格納されている。従って、磁気センサ51が検出した磁場強度から、スパッタリング成膜開始前における、磁気センサ51と磁気回路部311との間の距離が判明する。なお、次回に行うスパッタリング成膜では、図3(a)に示す検出は適宜省略してもよい。
【0052】
次に、図3(b)に示すように、磁気回路部311の回転角θが基準値から所定の回転角にずらされた状態でロータリターゲット20に所定の電力が供給され、スパッタリング成膜が開始される。ここで、スパッタリング面201に形成される磁場には、電子や電荷粒子が収束されるため、スパッタリング面201に形成される磁場付近には、プラズマ密度の濃いプラズマが形成される。このため、基板90に形成されるスパッタリング膜がプラズマによってダメージを受ける場合がある。これを回避するため、例えば、回転角θを時計回りにずらして(例えば、+20~+40度)、スパッタリング成膜を行う。回転角θを時計回りに所定の角度でずらすことにより、基板90とプラズマとの距離が回転角θが0度のときよりも離れ、スパッタリング膜がプラズマによってダメージを受けにくくなる。
【0053】
但し、この状態でスパッタリング成膜を続けていくと、支持板32がプラズマから熱を受ける。これにより、支持板32、基材311pが変形する場合がある。例えば、支持板32、基材311pが反ったり、支持板32、基材311pが部分的に曲がったりする場合がある。以下、変形は、反りを例に説明する。
【0054】
例えば、図1に示す支持板32がプラズマから受ける熱履歴によって全体的に下に凸に反った場合、支持板32は、熱を受ける前の状態(例えば、一軸方向にストレート状態)であるときよりも支持板32の両端部が防着板60の側に移動し、支持板32の中央部は基板90の側に移動することになる。これにより、例えば、支持板32の両端部付近に配置された磁気回路部311は、ロータリターゲット20の裏面202から離れることになる。この状態を図4(a)に示す。
【0055】
図4(a)に示すように、磁気回路部311がロータリターゲット20の裏面202から離れてしまうと、スパッタリング面201における磁場強度が減少して、スパッタリング面201から放出するスパッタリング粒子の放出量が変化する。これにより、成膜速度が経時的に安定しないという現象が起き得る。
【0056】
この現象を回避するために、本実施形態では、磁気回路部311がロータリターゲット20の裏面202から離れたたり、あるいは近づいたりした場合の距離の変動分を移動機構331によって修正する。この修正によって、スパッタリング成膜時、磁気センサ51と磁気回路部311との間の距離が一定になるように維持される。換言すれば、磁気回路部311がロータリターゲット20の裏面202から離れたたり、近づいたりしても、移動機構331によってスパッタリング面201に形成される磁場強度が同じになるように調整される。以下に、その方法を説明する。
【0057】
例えば、スパッタリング成膜時には、定期的にロータリターゲット20への電力の投入を停止して、図4(b)に示すように、磁気回路部311を防着板60に対向させる。磁気回路部311を防着板60に対向させた後においては、支持板32がスパッタリング成膜時に反った状態を暫定的に維持する。磁気センサ51は、磁気回路部311を防着板60に対向させた状態での磁場強度を測定する。ここで、制御部70には、磁気センサ51が検出した磁場強度と、磁気センサ51と磁気センサ51が対向する磁気回路部311との間の距離との関係とが格納されている。このため、磁気センサ51が検出した磁場強度から、支持板32が反った状態での磁気センサ51と磁気回路部311との間の距離が判明する。
【0058】
この後、移動機構331のスライド機構331rによって、磁気センサ51と磁気回路部311との間の距離が支持板32が反る前の磁気センサ51と磁気回路部311との間の距離に戻される。この状態を図5(a)示す。
【0059】
次に、図5(b)に示すように、磁気回路部311の回転角θが図3(b)に示された状態と同じ回転角θに設定される。そして、ロータリターゲット20に電力が投入されて、スパッタリング成膜が開始される。この際、スパッタリング面201における磁場強度は、図3(b)に示された状態と同程度になっているため、スパッタリング面201から放出するスパッタリング粒子の放出量は、図3(b)に示された状態と同程度になる。これにより、長時間にわたりスパッタリング成膜を行っても、スパッタリング成膜の成膜速度が安定する。
【0060】
なお、長時間にわたりスパッタリング成膜を行った場合、支持板32が反るほかに、ロータリターゲット20のターゲット材21にエロージョンが形成される場合がある。この場合、上述した方法で距離センサ41によってターゲット材21の厚みが算出される。この計測によって、ターゲット材21の厚みが(T-t(mm))と算出されれば、スパッタリング面201がロータリターゲット20の厚みの減少量のt(mm)分、磁気回路部311の側に近づいたと判断できる。換言すれば、スパッタリング面201では、磁気回路部311からスパッタリング面201に漏れ出る磁場がより強くなっており、磁気センサ51が検出する磁場強度が不変であったとしても、スパッタリング面201における磁場強度は、減少量のt(mm)分、強くなっている。
【0061】
従って、エロージョンによって、スパッタリング面201がt(mm)分、掘れた場合は、磁気回路部311を磁気センサ51(または、ロータリターゲット20)からt(mm)分、離すことで、スパッタリング面201に形成する磁場強度をエロージョンが形成される前の状態と同程度に設定できる。
【0062】
このように、真空処理装置1の制御部70は、磁気センサのほか、距離センサを用いて、複数の磁気回路部311~315のいずれかからスパッタリング面201に形成される磁場強度が目的値となるように、複数の磁気センサ51~55のいずれかと複数の磁気センサ51~55のいずれかが対向する磁気回路部との間の距離を調整する。例えば、制御部70は、磁気センサと、距離センサとを用いて、複数の磁気回路部311~315のいずれかからスパッタリング面201に形成される磁場強度が目的値となるように、前記いずれかの磁気センサと前記いずれかの磁気センサが対向する磁気回路部との間の距離を調整する。
【0063】
これにより、長時間にわたりスパッタリング成膜を行った結果、支持板32が熱履歴によって反ったり、あるいはターゲット材21にエロージョンが形成されたりしても、スパッタリング面201に形成される磁場強度が支持板32が熱履歴によって反る前の状態、または、ターゲット材21にエロージョンが形成される前の状態と同程度に設定できる。この結果、長時間にわたりスパッタリング成膜を行っても安定した成膜速度が得られ、基板90に形成されるスパッタリング膜の膜厚変動が起きにくくなる。すなわち、スパッタリング成膜の歩留まりが向上する。
【0064】
次に、磁気回路部311~315を動作する手順の一例について説明する。この手順は、制御部70によって自動的に行われる。図6には、部材間同士の距離の定義を示す模式的断面図が示される。図6では、磁気回路部311~315のうち、磁気回路部311が示されている。図6に示される定義は、磁気回路部312~315にも適用される。
【0065】
例えば、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離は、磁気回路部311の磁石311aの先端部と中心軸20cとの間の距離L(mm)で定義される。磁気センサ51と磁気回路部311との間の距離は、磁気センサ51と磁気回路部311の磁石311aの先端部との間の距離M(mm)で定義される。ターゲット部材21と磁気回路部311との間の距離は、ターゲット部材21のスパッタリング面201と磁気回路部311の磁石311aの先端部との間の距離N(mm)で定義される。ターゲット材21の厚みは、ターゲット材21のスパッタリング面201と裏面202との間の厚みTで定義される。厚みTは、上述した(T-t(mm))に対応する。また、距離L+距離Mは、磁気センサ51と、中心軸20cとの間の距離に対応するため固定値になる。
【0066】
(動作1)
【0067】
【表1】
【0068】
表では、距離センサ41と磁気センサ51との組、距離センサ42と磁気センサ52との組、距離センサ43と磁気センサ53との組、距離センサ44と磁気センサ54との組、距離センサ45と磁気センサ55との組における(図1参照)、それぞれのセンサの測定値、各組の位置における部材間同士の初期設定値、各組の位置における部材間同士の距離計算値が示されている。なお、初期の状態(スパッタリング成膜開始前)での部材間同士の距離、厚みは予め実測済である。
【0069】
例えば、距離センサ41と磁気センサ51との検出によって、磁気回路部311がどのように動作するのか以下に説明する。
【0070】
例えば、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離L(mm)が初期設定値Lとして、48.5(mm)に設定される(ステップ1a)。
【0071】
次に、磁気センサ51と磁気回路部311との間の距離M(mm)が初期設定値Mとして、59.0(mm)に設定される(ステップ2a)。
【0072】
このときの磁気センサ51の位置での目標磁場強度は、初期設定値Bとして38(Gauss)に設定される(ステップ3a)。換言すれば、距離L(mm)と距離M(mm)とが初期値として上記の値に設定された場合、磁気センサ51の位置で磁場強度が38(Gauss)となる磁気回路部311が用いられる。
【0073】
次に、磁気センサ51によって磁場強度が測定される(ステップ4a)。ここでの測定値Bは、当然に、38(Gauss)となる。
【0074】
次に、磁気センサ51が検出した磁場強度の測定値から、磁気センサ51と磁気回路部311との間の距離M(mm)として、計算値Mが算出される(ステップ5a)。例えば、磁場強度38(Gauss)から、計算値Mは、59.0(mm)に算出される。これは、制御部70に格納されている、磁気センサ51が検出した磁場強度と、磁気センサ51と磁気回路部311との間の距離との関係式(1)から算出される。
【0075】
次に、支持板32の反り等によって磁場強度の減少を考慮した、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が算出される(ステップ6a)。ここでは、ステップ5aで、計算値Mが初期設定値Mと一致したため、支持板32は反ってなく、ストレート状であると判断できる。従って、距離Lを変更する必要はなく、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)は、0.0(mm)になる。
【0076】
一方、本実施形態では、磁場強度の変動のほか、ターゲット材21の減りも考慮される。例えば、ターゲット材21の初期の厚み(mm)が設定される(ステップ7a)。厚みの初期設定値(T)は、例えば、20.0(mm)である。
【0077】
次に、ターゲット材21と磁気回路部311との間の距離N(mm)として、初期設定値(N)が設定される(ステップ8a)。初期設定値Nは、初期設定値Mから、距離センサ41とスパッタリング面201との間の距離を差し引いた値に該当する。初期設定値Nは、39.0(mm)である。
【0078】
次に、距離センサ41によって、ターゲット材21の厚みT(mm)が測定される(ステップ9a)。ターゲット材21の厚みの測定値Tは、初期設定値Tのままで、20.0(mm)になる。
【0079】
次に、ターゲット材21と磁気回路部311との間の距離N(mm)として、ターゲット材21の厚みの測定値Tから、ターゲット材21と磁気回路部311との間の距離の計算値Nが算出される(ステップ10a)。ここでは、ターゲット材21の厚みの測定値Tが初期設定値Tのままなので、計算値Nは、39.0(mm)である。
【0080】
次に、ターゲット材の厚みの減少を考慮した、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が算出される(ステップ11a)。ここで、ステップ9aで、ターゲット材21の測定値Tが初期設定値Tと一致したので、ターゲット材21と磁気回路部311との間の距離N(mm)を変える必要はなく、従って、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)を変える必要はない。従って、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)は、0.0(mm)となる。
【0081】
次に、磁場強度の減少及びターゲット材21の厚みの減少を考慮した、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が算出される(ステップ12a)。ここでは、磁場強度の減少を考慮した、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)と、ターゲット材の厚みの減少を考慮した、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)とがともに、0.0(mm)のため、磁場強度の減少及びターゲット材21の厚みの減少を考慮した、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)は、0.0(mm)となる。
【0082】
次に、距離センサ42と磁気センサ52との検出によって、磁気回路部312がどのように動作するのか以下に説明する。
【0083】
例えば、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離L(mm)が初期設定値Lとして、47.5(mm)に設定される(ステップ1a)。
【0084】
次に、磁気センサ52と磁気回路部312との間の距離M(mm)が初期設定値Mとして、60.0(mm)に設定される(ステップ2a)。
【0085】
このときの磁気センサ52の位置での目標磁場強度は、初期設定値Bとして35(Gauss)に設定される(ステップ3a)。
【0086】
次に、磁気センサ52によって磁場強度が測定される(ステップ4a)。ここでの測定値Bは、当然に、35(Gauss)となる。
【0087】
次に、磁気センサ52が検出した磁場強度の測定値から、磁気センサ52と磁気回路部312との間の距離M(mm)として、計算値Mである60.0(mm)が算出される。
【0088】
次に、支持板32の反り等によって磁場強度の減少を考慮した、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が算出される(ステップ6a)。ここでは、ステップ5aで、計算値Mが初期設定値Mと一致したため、支持板32は反ってなく、ストレート状であると判断できる。従って、距離Lを変更する必要はなく、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)は、0.0(mm)になる。
【0089】
次に、ターゲット材21の初期の厚み(mm)が設定される(ステップ7a)。厚みの初期設定値(T)は、例えば、20.0(mm)である。
【0090】
次に、ターゲット材21と磁気回路部312との間の距離N(mm)として、初期設定値(N)が設定される(ステップ8a)。初期設定値Nは、40.0(mm)である。
【0091】
次に、距離センサ42によって、ターゲット材21の厚みT(mm)が測定される(ステップ9a)。ターゲット材21の厚みの測定値Tは、初期設定値Tのままで、20.0(mm)になる。
【0092】
次に、ターゲット材21と磁気回路部312との間の距離N(mm)として、ターゲット材21の厚みの測定値Tから、ターゲット材21と磁気回路部312との間の距離の計算値Nが算出される(ステップ10a)。ここでは、ターゲット材21の厚みの測定値Tが初期設定値Tのままなので、計算値Nは、40.0(mm)である。
【0093】
次に、ターゲット材の厚みの減少を考慮した、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が算出される(ステップ11a)。ここで、ステップ9aで、ターゲット材21の測定値Tが初期設定値Tと一致したので、ターゲット材21と磁気回路部312との間の距離N(mm)を変える必要はなく、従って、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)を変える必要はない。従って、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)は、0.0(mm)となる。
【0094】
次に、磁場強度の減少及びターゲット材21の厚みの減少を考慮した、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が算出される(ステップ12a)。ここでは、磁場強度の減少を考慮した、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)と、ターゲット材の厚みの減少を考慮した、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)とがともに、0.0(mm)のため、磁場強度の減少及びターゲット材21の厚みの減少を考慮した、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)は、0.0(mm)となる。
【0095】
このように、支持板32が熱履歴によって反ってもなく、ターゲット材21の減りが生じていない場合には、磁気回路部と中心軸との間の距離を初期状態から変更することなく、スパッタリング成膜を実行する。
【0096】
(動作2)
【0097】
次に、スパッタリング成膜を開始した後、支持板32が熱履歴によって反った場合に、例えば、距離センサ41と磁気センサ51との検出によって、磁気回路部311がどのように動作するのか表2を用いて説明する。
【0098】
【表2】
【0099】
まず、ステップ1b~ステップ3bまでは、ステップ1a~ステップ3aまでと同じ処理が行われる。
【0100】
次に、磁気センサ51によって磁場強度が測定される(ステップ4b)。ここで、測定値Bが初期値の38(Gauss)でなく、20(Gauss)であったとする。
【0101】
次に、磁気センサ51が検出した磁場強度の測定値から、磁気センサ51と磁気回路部311との間の距離M(mm)として、関係式(1)から計算値Mが算出される(ステップ5b)。例えば、磁場強度20(Gauss)から、計算値Mは、67.1(mm)に算出される。
【0102】
次に、支持板32の反り等によって磁場強度の減少を考慮した、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が算出される(ステップ6b)。ここでは、計算値Mが初期設定値Mと一致しないため、支持板32は反っていると判断できる。従って、距離Lの変更量は、計算値Mが初期設定値Mとの差の8.1(mm)になる。すなわち、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lが初期状態より遠ざかったとしても、8.1(mm)分の距離を中心軸20cからロータリターゲット20に向かう方向に戻すことで、磁気回路部311によってスパッタリング面201に形成される磁場強度が初期状態と同程度になる。
【0103】
次に、ターゲット材21の減りが考慮される。ここでは、ターゲット材21の減りは起きないことを想定しているため、ステップ7b~ステップ11bの処理は、ステップ7a~ステップ11aの処理と同じになる。
【0104】
次に、磁場強度の減少及びターゲット材21の厚みの減少を考慮した、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が算出される(ステップ12b)。ここでは、磁場強度の減少を考慮した、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が8.1(mm)で、ターゲット材の厚みの減少を考慮した、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が0.0(mm)のため、磁場強度の減少及びターゲット材21の厚みの減少を考慮した、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)は、8.1(mm)となる。
【0105】
次に、距離センサ42と磁気センサ52との検出によって、磁気回路部312がどのように動作するのか以下に説明する。
【0106】
まず、ステップ1b~ステップ3bまでは、ステップ1a~ステップ3aまでと同じ処理が行われる。
【0107】
次に、磁気センサ52によって磁場強度が測定される(ステップ4b)。ここで、測定値Bが初期値の35(Gauss)でなく、20(Gauss)であったとする。
【0108】
次に、磁気センサ52が検出した磁場強度の測定値から、磁気センサ52と磁気回路部312との間の距離M(mm)として、関係式(1)から計算値Mが算出される(ステップ5b)。例えば、磁場強度20(Gauss)から、計算値Mは、67.1(mm)に算出される。
【0109】
次に、支持板32の反り等によって磁場強度の減少を考慮した、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が算出される(ステップ6b)。距離Lの変更量は、計算値Mが初期設定値Mとの差の7.1(mm)になる。すなわち、7.1(mm)分の距離を中心軸20cからロータリターゲット20に向かう方向に戻すことで、磁気回路部312によってスパッタリング面201に形成される磁場強度が初期状態と同程度になる。
【0110】
次に、ターゲット材21の減りが考慮される。ここでは、ターゲット材21の減りは起きないことを想定しているため、ステップ7b~ステップ11bの処理は、ステップ7a~ステップ11aの処理と同じになる。
【0111】
次に、磁場強度の減少及びターゲット材21の厚みの減少を考慮した、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が算出される(ステップ12b)。ここでは、磁場強度の減少を考慮した、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が8.1(mm)で、ターゲット材の厚みの減少を考慮した、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が0.0(mm)のため、磁場強度の減少及びターゲット材21の厚みの減少を考慮した、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)は、7.1(mm)となる。
【0112】
このように、支持板32が熱履歴によって反った場合、磁気回路部と中心軸との間の距離を初期状態から所定の距離だけ中心軸20cからロータリターゲット20に向かう方向に戻してスパッタリング成膜を実行する。
【0113】
(動作3)
【0114】
次に、スパッタリング成膜を開始した後、支持板32が熱履歴によって反り、ターゲット材21の厚みが減少した場合に、例えば、距離センサ41と磁気センサ51との検出によって、磁気回路部311がどのように動作するのか表3を用いて説明する。
【0115】
【表3】
【0116】
まず、ステップ1c~ステップ6cまでは、ステップ1b~ステップ6bまでと同じ処理が行われる。すなわち、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lとして、8.1(mm)分の距離を中心軸20cからロータリターゲット20に向かう方向に戻す処理が行われる。
【0117】
次に、ターゲット材21の減りが考慮される。まず、ステップ7c~ステップ8cは、ステップ7a~ステップ8aと同じ処理がなされる。
【0118】
次に、距離センサ41によって、ターゲット材21の厚みT(mm)が測定される(ステップ9c)。ここでは、ターゲット材21の厚みの測定値Tが18.0(mm)とされる。すなわち、スパッタリング成膜によって、ターゲット材21の厚みが2.0(mm)、減少したとする。
【0119】
次に、ターゲット材21と磁気回路部311との間の距離N(mm)として、ターゲット材21の厚みの測定値Tから、ターゲット材21と磁気回路部311との間の距離の計算値Nが算出される(ステップ10c)。ここでは、計算値Nは、37.0(mm)である。
【0120】
次に、ターゲット材の厚みの減少を考慮した、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が算出される(ステップ11c)。ここで、ステップ9cで、ターゲット材21の測定値Tが初期設定値Tから2.0(mm)減少している。従って、スパッタリング面201が、この2.0(mm)分、磁気回路部311に近づいたことになるので、ターゲット材21と磁気回路部311との間の距離N(mm)を変える必要があり、従って、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)は、-2.0(mm)となる。すなわち、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lとして、2.0(mm)分の距離を中心軸20cからロータリターゲット20に向かう方向とは逆方向に戻す処理が行われる。
【0121】
次に、磁場強度の減少及びターゲット材21の厚みの減少を考慮した、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が算出される(ステップ12a)。ここでは、磁場強度の減少を考慮した、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が8.1(mm)で、ターゲット材の厚みの減少を考慮した、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)とが-2.0(mm)のため、磁場強度の減少及びターゲット材21の厚みの減少を考慮した、磁気回路部311と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)は、6.1(mm)となる。
【0122】
次に、距離センサ42と磁気センサ52との検出によって、磁気回路部312がどのように動作するのか以下に説明する。
【0123】
まず、ステップ1c~ステップ6cまでは、ステップ1b~ステップ6bまでと同じ処理が行われる。
【0124】
次に、ターゲット材21の減りが考慮される。まず、ステップ7c~ステップ8cは、ステップ7a~ステップ8aと同じ処理がなされる。
【0125】
次に、距離センサ42によって、ターゲット材21の厚みT(mm)が測定される(ステップ9c)。ここでは、ターゲット材21の厚みの測定値Tが19.0(mm)とされる。すなわち、スパッタリング成膜によって、ターゲット材21の厚みが1.0(mm)、減少したとする。
【0126】
次に、ターゲット材21と磁気回路部312との間の距離N(mm)として、ターゲット材21の厚みの測定値Tから、ターゲット材21と磁気回路部312との間の距離の計算値Nが算出される(ステップ10c)。ここでは、計算値Nは、39.0(mm)である。
【0127】
次に、ターゲット材の厚みの減少を考慮した、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が算出される(ステップ11c)。ここで、ステップ9cで、ターゲット材21の測定値Tが初期設定値Tから1.0(mm)減少している。従って、スパッタリング面201が、この1.0(mm)分、磁気回路部312に近づいたことになるので、ターゲット材21と磁気回路部312との間の距離N(mm)を変える必要があり、従って、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)は、-1.0(mm)となる。すなわち、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lとして、1.0(mm)分の距離を中心軸20cからロータリターゲット20に向かう方向とは逆方向に戻す処理が行われる。
【0128】
次に、磁場強度の減少及びターゲット材21の厚みの減少を考慮した、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が算出される(ステップ12a)。ここでは、磁場強度の減少を考慮した、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)が7.1(mm)で、ターゲット材の厚みの減少を考慮した、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)とが-1.0(mm)のため、磁場強度の減少及びターゲット材21の厚みの減少を考慮した、磁気回路部312と中心軸20cとの間の距離Lの変更量(mm)は、6.1(mm)となる。
【0129】
なお、距離センサ43と磁気センサ53との検出によって、磁気回路部313がどのように動作させるか、または、距離センサ44と磁気センサ54との検出によって、磁気回路部314がどのように動作させるかは、距離センサ42と磁気センサ52との検出によって、磁気回路部312を動作させる手順と同様に行う。また、距離センサ45と磁気センサ55との検出によって、磁気回路部315がどのように動作させるかは、距離センサ41と磁気センサ51との検出によって、磁気回路部311を動作させる手順と同様に行う。
【0130】
また、距離センサ41と磁気センサ51との位置に対応する磁気回路部311と、距離センサ45と磁気センサ55との位置に対応する磁気回路部315とは、他の磁気回路部に比べてロータリターゲット20により近づけている。これは、磁気回路部311、315のそれぞれの両側には磁気回路部が配置されていない。磁気回路部311と、磁気回路部315とを他の磁気回路部に比べてロータリターゲット20により近づけることで、スパッタリング面201に形成される磁場強度がより均一になる。これにより、ロータリターゲット20の一軸方向における膜厚分布がより均一になる。
【0131】
図7は、表1~表3に掲げられた磁気回路部の動作手順を総括的に表したフロー図である。
【0132】
まず、磁気センサ51~55のいずれかによって磁場強度が測定される(S100)。次に、磁気センサ51~55のいずれかによって測定された磁場強度の変更が必要か否かが判断される(S200)。ここで、必要と判断された場合は、磁場強度の変動を考慮した、磁気回路部311~315のいずれかと中心軸20cとの間の距離の変更量が算出される(S300)。なお、S200で不要と判断された場合は、S400に進む。
【0133】
次に、距離センサ41~45のいずれかによって、ターゲット材21の厚みが測定される(S400)。次に、ターゲット材21と磁気回路部311~315のいずれかとの間の距離の変更が必要か否かが判断される(S500)。ここで、必要と判断された場合は、ターゲット材21の厚みの変動を考慮した、磁気回路部311~315のいずれかと中心軸20cとの間の距離の変更量が算出される(S600)。なお、S500で不要と判断された場合は、磁気回路部311~315のいずれかと中心軸20cとの間の距離は変更されず、終了となる。
【0134】
次に、磁場強度の変動及びターゲット材厚みの変動を考慮したそれぞれの変更量に基づき、磁気回路部311~315のいずれかと中心軸20cとの間の距離が変更され(S700)、終了となる。
【0135】
例えば、スパッタリング成膜が開始されて、基板90に形成されたスパッタリング膜の一軸方向(X軸方向)における膜厚分布が一時的に6.8%にまで落ち込んだ場合、上記の図7に示す磁気回路部の制御を行うことで、一軸方向における膜厚分布の目標値を5%以下に設定した場合、例えば、4.6%以下にまで回復することが判明している。なお、膜厚分布は、((最大膜厚-最小膜厚)/(最大膜厚+最小膜厚))×100(%)で定義される。
【0136】
図8は、本実施形態の真空処理装置の別の一例を示す模式的断面図である。
【0137】
真空処理装置2では、複数のロータリターゲット20が用いられ、基板90にスパッタリング成膜(マグネトロンスパッタリング)がなされる。複数のロータリターゲットの数は、基板90のサイズに応じて適宜変更される。複数のロータリターゲット20は、減圧維持可能な真空槽10に収容される。
【0138】
真空槽10は、排気機構(不図示)に接続される。真空槽10には、ガス供給機構(不図示)からAr等の放電ガスが供給される。また、真空処理装置2は、複数のロータリターゲット20と、それぞれの磁場発生機構30とを回転させる回転機構(不図示)を備える。また、真空処理装置2は、ロータリターゲット20、磁場発生機構30、距離センサ41~45と磁気センサ51~55とを含むセンサ群S1、排気機構、ガス供給機構、回転機構のそれぞれの動作を制御する制御部70を具備する。なお、センサ群S1に含まれる、距離センサ41~45のそれぞれと、磁気センサ51~55のぞれぞれは、中心軸20cの方向に並設される。
【0139】
複数のロータリターゲット20は、中心軸20cが互いに平行で、中心軸20cが基板90と平行になるように配置される。例えば、複数のロータリターゲット20は、中心軸20cの方向(一軸方向)と交差する方向にスパッタリング面201が互いに対向するように等間隔で並設される。複数のロータリターゲット20が並設された方向は、基板90の長手方向に対応する。図8では、この方向がY軸方向になっている。なお、必要に応じて、複数のロータリターゲット20が並設された方向は、基板90の短手方向としてもよい。
【0140】
基板ホルダ91の電位は、例えば、浮遊電位、接地電位等とする。複数のロータリターゲット20のそれぞれのスパッタリング面201は、基板90に対向している。
【0141】
また、Y軸方向において、両端に配置された一対のロータリターゲット20は、基板90からはみ出すように配置される。例えば、一対のロータリターゲット20のそれぞれの少なくとも一部と、基板90とがZ軸方向(X軸方向及びY軸方向に直交する方向)において重なるように、複数のロータリターゲット20が配置される。
【0142】
Y軸方向において、複数のロータリターゲット20のピッチは、略均等に設定される。また、スパッタリング成膜中における、複数のロータリターゲット20と基板90との相対距離は、固定距離としてもよく、Y軸方向において、その相対距離を変動させてもよい。
【0143】
複数のロータリターゲット20のそれぞれに放電電力が投入され、複数のロータリターゲット20のそれぞれの磁気回路部311~315が中心軸20cの周りに回転移動して回転角θが所定の回転角で固定された後、基板90にスパッタリング成膜がなされる。
【0144】
複数のロータリターゲット20のそれぞれには、例えば、それぞれのロータリターゲットの消耗を略均等にするため、同じ電力が投入される。投入電力は、直流電力でもよく、RF帯、VHF帯等の交流電力でもよい。また、複数のロータリターゲット20のそれぞれは、時計回りまたは反時計回りに回転する。
【0145】
スパッタリング成膜は、磁気回路部311~315の回転角θが正側(例えば、+20~+40度)で少なくとも1回、磁気回路部311~315の回転角θが負側(例えば、-20度~-40度)で少なくとも1回、行われる。このような処理を行うことにより、スパッタリング膜へのダメージが抑制されるとともに、1回のみのスパッタリング成膜よりも、Y軸方向における膜厚斑が複数回のスパッタリング成膜で補われて、Y軸方向における膜厚分布が良好になる。
【0146】
さらに、本実施形態では、上述した手法によって、X軸方向(一軸方向)における膜厚分布が良好になる。この結果、本実施形態では、基板90の全域にわたる膜厚分布がより良好になる。
【0147】
また、本実施形態では、真空処理装置1、2のほか、真空処理装置1、2を用いた処理方法が提供される。例えば、真空処理方法では、ロータリターゲット20と、磁場発生機構30と、基板ホルダ91と、防着板60と、複数の距離センサ41~45と、複数の磁気センサ51~55とを準備して、基板90にスパッタリング粒子が堆積される。
【0148】
ここで、複数の距離センサ41~45のいずれかとスパッタリング面201との間の距離と、複数の距離センサ41~45のいずれかが対向するロータリターゲット20の厚みの減少量との関係が予め取得される。さらに、複数の磁気センサ51~55のいずれかが検出した磁場強度と、複数の磁気センサ51~55のいずれかと複数の磁気センサ51~55のそれぞれが対向する磁気回路部311~315との間の距離との関係が予め取得される。
【0149】
次に、複数の磁気回路部311~315のいずれかからスパッタリング面201に形成される磁場強度が目的値となるように、複数の磁気センサ51~55のいずれかと複数の磁気センサ51~55のそれぞれが対向する磁気回路部311~315との間の距離が調整される。
【0150】
また、ロータリターゲット20を一軸方向と交差する方向に複数並設して、基板90にスパッタリング粒子を堆積してもよい。
【0151】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0152】
1、2…真空処理装置
10…真空槽
20…ロータリターゲット
20c…中心軸
21…ターゲット材
22…バッキングチューブ
30…磁場発生機構
32…支持板
41、42、43、44、45…距離センサ
51、52、53、54、55…磁気センサ
60…防着板
70…制御部
90…基板
91…基板ホルダ
201…スパッタリング面
202…裏面
311a、311b、311c…磁石
311p…基材
331r…スライド機構
311、312、313、314、315…磁気回路部
331、332、333、334、335…移動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8