IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

特開2023-156410活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物およびコーティング剤組成物ならびにウレタン(メタ)アクリレート系化合物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156410
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物およびコーティング剤組成物ならびにウレタン(メタ)アクリレート系化合物
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/06 20060101AFI20231017BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20231017BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20231017BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20231017BHJP
   C08G 18/34 20060101ALI20231017BHJP
   C08G 18/66 20060101ALI20231017BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20231017BHJP
   C09D 175/14 20060101ALI20231017BHJP
   C09D 175/08 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C08F299/06
C08G18/67 010
C08G18/48
C08G18/08 019
C08G18/34 080
C08G18/66 092
C09D5/02
C09D175/14
C09D175/08
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128920
(22)【出願日】2023-08-08
(62)【分割の表示】P 2019051251の分割
【原出願日】2019-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】酒谷 修平
(57)【要約】
【課題】溶剤や反応性希釈剤、市販の乳化剤を用いる必要もなく、自己乳化型で水分散性
に優れ、更に塗膜の表面硬度および耐擦傷性に優れた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物
を提供する。
【解決手段】カルボキシ基を含有するポリオール(a1)、ポリイソシアネート系化合物
(a2)、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a3)および下記一般式(1)で
示されるアルキレングリコール誘導体(a4)が反応されてなるウレタン(メタ)アクリ
レート系化合物(A)を含有してなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、上記
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の(メタ)アクリロイル基濃度が1~10mmo
l/gであり、上記アルキレングリコール誘導体(a4)の数平均分子量が100~20
,000である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシ基を含有するポリオール(a1)、ポリイソシアネート系化合物(a2)、
水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a3)および下記一般式(1)で示されるア
ルキレングリコール誘導体(a4)が反応されてなるウレタン(メタ)アクリレート系化
合物(A)を含有してなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、上記ウレタン(
メタ)アクリレート系化合物(A)の(メタ)アクリロイル基濃度が1~10mmol/
gであり、上記アルキレングリコール誘導体(a4)の数平均分子量が100~20,0
00であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【化1】
【請求項2】
水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a3)が、1分子中に2個以上の(メタ)
アクリロイル基を有する化合物であることを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線
硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
上記カルボキシ基を含有するポリオール(a1)、ポリイソシアネート系化合物(a2
)、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a3)および一般式(1)で示されるア
ルキレングリコール誘導体(a4)の合計に対し、上記カルボキシ基を含有するポリオー
ル(a1)の割合が0.1~20重量%であり、上記ポリイソシアネート系化合物(a2
)の割合が1~80重量%であり、上記水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a3
)の割合が10~95重量%であり、上記一般式(1)で示されるアルキレングリコール
誘導体(a4)の割合が1~80重量%であることを特徴とする請求項1または2記載の
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
上記カルボキシ基を含有するポリオール(a1)が、分子量100~200のジオール
モノカルボン酸またはその中和塩であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に
記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の酸価が1~40mgKOH/gで
あることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂
組成物。
【請求項6】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)が、中和されてなることを特徴とす
る請求項1~5のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
上記ポリイソシアネート系化合物(a2)が、脂環式系ポリイソシアネートであること
を特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬硬化型樹脂組成物
【請求項8】
更に、光重合開始剤(B)を含有してなることを特徴とする請求項1~7のいずれか一
項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項9】
更に、エチレン性不飽和モノマー(C)を含有してなることを特徴とする請求項1~8
のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項10】
自己乳化性を有することを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の活性エネル
ギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が水性溶媒
中で分散されてなることを特徴とする活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物からなることを特徴と
するコーティング剤組成物。
【請求項13】
カルボキシ基を含有するポリオール(a1)、ポリイソシアネート系化合物(a2)、
水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a3)および下記一般式(1)で示されるア
ルキレングリコール誘導体(a4)が反応されてなり、(メタ)アクリロイル基濃度が1
~10mmol/gであり、上記アルキレングリコール誘導体(a4)の数平均分子量が
100~20,000であることを特徴とするウレタン(メタ)アクリレート系化合物。
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関し、更に詳しくは、樹脂組成物の水
分散性に優れるとともに基材にコーティングした場合の塗膜の硬度、耐擦傷性に優れた活
性エネルギー線硬化型樹脂組成物、それを用いてなるエマルジョン組成物およびコーティ
ング剤組成物に関するものである。更に新規なウレタン(メタ)アクリレート系化合物に
関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルジオールやポリエーテルジオール等のジオール化合物、イソホロン
ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物およ
びヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させたウレ
タン(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線硬化型樹脂として知られており、木工塗
料やプラスチックコーティング剤等の用途に使用されている。
【0003】
かかるウレタン(メタ)アクリレートは一般的に粘度が高いため、その使用に当たって
は有機溶剤や反応性希釈剤により希釈して粘度調整を行った上で塗工し、その後、紫外線
等の活性エネルギー線を照射することにより硬化して塗膜を形成するものである。
しかし、上記有機溶剤により希釈する場合には、近年の、大気汚染や作業環境、火災の
危険性等に対するVOC規制下において問題となっている。一方、反応性希釈剤により希
釈する場合には、低粘度化のために反応性希釈剤を大量に必要とする場合があり、充分な
塗膜物性を得にくい等の問題がある。
【0004】
このような状況下において、近年では、水分散型等の水系化の要望が高まっている。例
えば、特許文献1では、カルボキシ基含有ウレタン(メタ)アクリレートを、水混和率が
100重量%以上の水溶性反応性希釈剤の存在下で製造するとともに、当該カルボキシ基
含有ウレタン(メタ)アクリレートのカルボキシル基をアミン塩とした後、更に水を加え
、乳化する水性活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートから選ばれる硬
化性オリゴマーの少なくとも1種を反応性乳化剤の存在下に、水溶媒中に分散させてなる
水分散型硬化性樹脂組成物が提案されている。
更に、特許文献3では、ポリイソシアネート化合物(a1)中のイソシアネート基が、
ポリアルキレングリコール誘導体(a2)の水酸基および、水酸基含有(メタ)アクリレ
ート(a3)の水酸基と、それぞれウレタン結合を形成してなるポリイソシアネート系誘
導体が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平11-279242号公報
【特許文献2】特開2000-159847号公報
【特許文献3】特開2003-201331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の開示技術では、カルボキシ基をウレタンアクリレート
の骨格に導入するものであり、水性化はできるが、ウレタンアクリレート自体のアクリロ
イル基濃度については考慮されておらず、塗膜の表面硬度については充分ではない。また
、上記特許文献1の開示技術は、安定に乳化させるためにアクリロイルモルホリン等の水
溶性反応性希釈剤を加えるため、高硬度な塗膜を得ることは困難である。
【0008】
また、上記特許文献2の開示技術では、水分散させるために乳化剤が必要となり、かか
る乳化剤として、重合性不飽和基を1個有する反応性界面活性剤を用いている。かかる反
応性界面活性剤を用いて得られるエマルジョン組成物は、反応性界面活性剤の重合性不飽
和基がアリル基やビニル基のものがほとんどである。これらアリル基やビニル基の反応性
は低く、硬化塗膜中に遊離しているため、温水に浸漬した際に反応性界面活性剤が水に溶
出し、硬化塗膜の目減りが生じることがある等、塗膜硬度や耐温水性の点で不充分である
【0009】
上記特許文献3の開示技術では、ポリアルキレングリコール誘導体由来の親水性構造を
有することにより水性化できるものの、近年の要求性能の高まりに伴って、更なる水性化
と塗膜の表面硬度、耐擦傷性に優れたものが求められている。
【0010】
そこで、本発明ではこのような背景下において、溶剤や反応性希釈剤、市販の乳化剤を
用いる必要もなく、自己乳化型で水分散性に優れ、更に塗膜の表面硬度および耐擦傷性に
優れた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
しかるに本発明者は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、ポリイソシアネート、
水酸基含有(メタ)アクリレートおよびポリアルキレングリコール誘導体に、更にカルボ
キシ基を含有するポリオールを加えて反応されてなるウレタン(メタ)アクリレート系化
合物を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用い、上記ウレタン(メタ)アクリ
レート系化合物の(メタ)アクリロイル基濃度を比較的高めにし、上記ポリアルキレング
リコール誘導体の数平均分子量を比較的小さめにすることにより、良好な自己乳化性およ
び乳化後安定性を有するエマルジョンが得られ、表面硬度および耐擦傷性に優れた硬化塗
膜が形成できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明は、カルボキシ基を含有するポリオール(a1)、ポリイソシアネート系
化合物(a2)、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a3)および下記一般式(
1)で示されるアルキレングリコール誘導体(a4)が反応されてなるウレタン(メタ)
アクリレート系化合物(A)を含有してなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって
、上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の(メタ)アクリロイル基濃度が1
~10mmol/gであり、上記アルキレングリコール誘導体(a4)の数平均分子量が
100~20,000である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を第1の要旨とするもの
である。
【化1】
【0013】
更に、本発明は、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が水性溶媒中で分散されてな
る活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物を第2の要旨とし、更に、上記活性エネル
ギー線硬化型エマルジョン組成物からなるコーティング剤組成物を第3の要旨とする。
また、本発明は、カルボキシ基を含有するポリオール(a1)、ポリイソシアネート系
化合物(a2)、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a3)および上記一般式(
1)で示されるアルキレングリコール誘導体(a4)が反応されてなり、(メタ)アクリ
ロイル基濃度が1~10mmol/gであり、上記アルキレングリコール誘導体(a4)
の数平均分子量が100~20,000であるウレタン(メタ)アクリレート系化合物を
第4の要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、カルボキシ基を含有するポリオール(
a1)、ポリイソシアネート系化合物(a2)、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合
物(a3)および上記一般式(1)で示されるアルキレングリコール誘導体(a4)が反
応されてなるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)を含有してなる活性エネルギ
ー線硬化型樹脂組成物であって、上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の(
メタ)アクリロイル基濃度が1~10mmol/gであり、上記アルキレングリコール誘
導体(a4)の数平均分子量が100~20,000である。そのため、自己乳化型で水
分散性に優れ、更に塗膜の表面硬度および耐擦傷性に優れた効果を有するものであり、塗
料、保護コーティング剤、アンカーコーティング剤、ハードコート用コーティング剤、イ
ンク、磁性粉コーティングバインダー、サンドブラスト用被膜、粘着剤、接着剤、粘接着
剤、版材等、各種の被膜形成材料として非常に有用である。
通常、耐擦傷性や硬度を上げるためにはウレタン(メタ)アクリレート系化合物の(メ
タ)アクリロイル基濃度を高めようとするが、逆に乳化適正が低下してしまうものである
ところ、本発明において、カルボキシ基を含有するポリオール由来の構造部位と特定のア
ルキレングリコール誘導体由来の構造部位の両方を含有させることにより、相反する物性
を良好に満足する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得ることができたものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限
定されるものではない。
本発明において、「(メタ)アクリル」とはアクリルあるいはメタクリルを、「(メタ
)アクリロイル」とはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート
」とはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
【0016】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、水性溶媒に分散することができる特定
のウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)を含むものである。以下、各構成成分に
ついて説明する。
【0017】
〔ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)〕
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)は、通常の水分散性ウレタン(メタ
)アクリレートよりも高い(メタ)アクリロイル基濃度を有し、また、その分子構造に含
まれる親水基の鎖長が比較的短いものである。
上記のウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)は、カルボキシ基を含有するポリ
オール(a1)、ポリイソシアネート系化合物(a2)、水酸基含有(メタ)アクリレー
ト系化合物(a3)および特定の数平均分子量を有するアルキレングリコール誘導体(a
4)を反応させて得られるものである。
【0018】
[カルボキシ基を含有するポリオール(a1)]
上記カルボキシ基を含有するポリオール〔以下、単に「カルボキシ基含有ポリオール」
と称する場合がある〕(a1)の分子量は、好ましくは100~200であり、より好ま
しくは110~180、特に好ましくは120~160である。
【0019】
また、上記カルボキシ基含有ポリオール(a1)としては、例えば、脂肪族のポリヒド
ロキシカルボン酸、芳香族のポリヒドロキシカルボン酸等が挙げられ、好ましくは、脂肪
族のポリヒドロキシカルボン酸である。
【0020】
上記脂肪族のポリヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ジメチロールブタン酸、ジ
メチロールプロピオン酸、グリセリン酸、メバロン酸、パントイン酸等のジオールモノカ
ルボン酸、酒石酸等のジオールジカルボン酸、シキミ酸等のトリオールモノカルボン酸、
キナ酸等のテトラオールモノカルボン酸等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以
上併せて用いることができる。なお、カルボキシ基含有ポリオール(a1)としては、上
記ポリヒドロキシカルボン酸の中和物、特には脂肪族のポリヒドロキシカルボン酸の中和
物であってもよい。
【0021】
上記カルボキシ基含有ポリオール(a1)としては、自己乳化性の点から、脂肪族のポ
リヒドロキシカルボン酸が好ましく、より好ましくは、分子量100~200のジオール
モノカルボン酸またはその中和塩であり、特に好ましくはジメチロールブタン酸、ジメチ
ロールプロピオン酸である。更には、製造時の反応に要する時間と、硬化塗膜の鉛筆硬度
とのバランスの点から、2種以上のジオールモノカルボン酸を併用することが好ましく、
とりわけジメチロールブタン酸とジメチロールプロピオン酸を併用することが好ましい。
【0022】
[ポリイソシアネート系化合物(a2)]
上記ポリイソシアネート系化合物(a2)としては、例えば、トリレンジイソシアネー
ト、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性
ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリ
レンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の
芳香族系ポリイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソ
シアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リ
ジントリイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイ
ソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノル
ボルネンジイソシアネート等の脂環式系ポリイソシアネート、あるいはこれらポリイソシ
アネートの3量体化合物または多量体化合物、アロファネート型ポリイソシアネート、ビ
ュレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート等が挙げられる。これらポ
リイソシアネート系化合物(a2)は1種もしくは2種以上併せて用いることができる。
【0023】
また、上記ポリイソシアネート系化合物(a2)は、各種ポリオール、例えば、低分子
量のポリオールや高分子量のポリオール、なかでもポリエーテル系ポリオール、ポリエス
テル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリ
ブタジエン系ポリオール、(メタ)アクリル系ポリオール等のポリオールとポリイソシア
ネート系化合物との反応物であってもよい。
【0024】
これらのなかでも、反応性および汎用性に優れる点で、ヘキサメチレンジイソシアネー
ト、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族系
ジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソ
シアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式系
ジイソシアネートが好ましく、特に好ましくは脂環式系ジイソシアネートであり、更に好
ましくは、イソホロンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネートであり、殊
に好ましくはイソホロンジイソシアネートである。
【0025】
[水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a3)]
上記水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a3)としては、例えば、2-ヒドロ
キシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-
ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、
6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1~16(好ま
しくは1~12)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルア
クリロイルホスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピ
ルフタレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、脂肪酸
変性-グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物
(ただし後述する下記一般式(1)のYが(メタ)アクリロイル基であるポリアルキレン
グリコール誘導体(a4)を除く);グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキ
シ-3-アクリロイル-オキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル
基を2個有する化合物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクト
ン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタ
エリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アク
リレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エ
チレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、コハク酸変
性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を3個以
上有する化合物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることがで
きる。
【0026】
これらのなかでも、高硬度な硬化塗膜が得られる点から、分子中に(メタ)アクリロイ
ル基を2個以上有する水酸基含有(メタ)アクリレートが好ましく、より好ましくは分子
中に(メタ)アクリロイル基を3個以上有する水酸基含有(メタ)アクリレートであり、
特に好ましくはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトー
ルペンタ(メタ)アクリレートであり、更に好ましくはジペンタエリスリトールペンタ(
メタ)アクリレートである。
【0027】
[アルキレングリコール誘導体(a4)]
アルキレングリコール誘導体(a4)としては、下記一般式(1)で示される構造のも
のであればよく、両末端が水酸基、または片末端の水酸基の水素がアルキル基、アルキル
フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、アシル基のいずれかで置換されたもの
が挙げられる。
【化2】
【0028】
上記一般式(1)のYが水素であるアルキレングリコール誘導体(a4)の具体例とし
ては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレ
ングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のオキシアル
キレン構造を有するポリアルキレングリコールやこれらポリアルキレングリコールのラン
ダム或いはブロック共重合体等の直鎖構造のポリエーテル系ポリオール等が挙げられる。
【0029】
上記一般式(1)のYがアルキル基、アルキルフェニル基であるアルキレングリコール
誘導体(a4)の具体例としては、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル
、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールセチルエーテル、
ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエ
ーテル、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル、ポリエチレングリコールオレイル
エーテル、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレ
イルセチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0030】
上記一般式(1)のYが(メタ)アクリロイル基であるアルキレングリコール誘導体(
a4)の具体例としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、
ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-プロ
ピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-テトラメチ
レングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール-テトラメチ
レングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
上記一般式(1)のYがアリル基であるアルキレングリコール誘導体(a4)の具体例
としては、例えば、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコ
ールモノアリルエーテル、ポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノアリ
ルエーテル等が挙げられる。
【0032】
上記一般式(1)のYがアシル基であるアルキレングリコール誘導体(a4)の具体例
としては、例えば、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリプロピレングリコール
モノラウレート、ポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノラウレート、
ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等が
挙げられる。
【0033】
上記のなかでも親水性の点からポリエチレングリコール誘導体が好ましく、エチレンオ
キサイド付加の繰り返し数nが2~300、特には4~100、更には6~50であるこ
とがより好ましい。更には、乳化性の点で、Yが水素であることが特に好ましい。
また、アルキレングリコール誘導体(a4)は、単独でもしくは2種以上併せて用いて
もよい。
【0034】
上記アルキレングリコール誘導体(a4)の数平均分子量は100~20,000であ
る。好ましくは150~5,000であり、より好ましくは200~2,000であり、
殊に好ましくは300~950である。かかる数平均分子量が小さすぎると自己乳化が難
しくなり、数平均分子量が大きすぎると硬化塗膜の耐水性や硬度が低下する。
【0035】
更に、アルキレングリコール誘導体(a4)の水酸基価は20~500mgKOH/g
が好ましく、特には50~400mgKOH/g、更には100~300mgKOH/g
が好ましい。かかる水酸基価が低すぎると硬化塗膜の耐水性や硬度が低下する傾向があり
、高すぎすると自己乳化が難しくなる傾向がある。
【0036】
[ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の製造方法]
本発明で用いるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)は、カルボキシ基含有ポ
リオール(a1)、ポリイソシアネート系化合物(a2)、水酸基含有(メタ)アクリレ
ート系化合物(a3)、および特定の数平均分子量を有するアルキレングリコール誘導体
(a4)を反応させることにより得られる。
【0037】
上記(a1)~(a4)成分を反応させる際の割合は、カルボキシ基含有ポリオール(
a1)、ポリイソシアネート系化合物(a2)、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合
物(a3)、およびアルキレングリコール誘導体(a4)の合計に対し、上記カルボキシ
基含有ポリオール(a1)の割合が、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは0
.5~10重量%、特に好ましくは1~5重量%であり、上記ポリイソシアネート系化合
物(a2)の割合が、好ましくは1~80重量%、より好ましくは5~40重量%、特に
好ましくは7~25重量%であり、上記水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a3
)の割合が、好ましくは10~95重量%、より好ましくは30~90重量%、特に好ま
しくは50~85重量%であり、上記アルキレングリコール誘導体(a4)の割合が、好
ましくは1~80重量%であり、より好ましくは3~50重量%、特に好ましくは5~2
0重量%である。(a1)~(a4)成分の割合が、上記範囲外であると、得られるウレ
タン(メタ)アクリレート系化合物(A)の乳化性や、硬化塗膜の硬度が低下する傾向が
ある。
【0038】
本発明においては、ポリオール成分となる上記カルボキシ基含有ポリオール(a1)と
アルキレングリコール誘導体(a4)の割合(重量比)については、乳化性の点で特に1
/99~95/5であることが好ましく、更には3/97~50/50、特には5/95
~30/70であることが好ましい。
【0039】
上記(a1)~(a4)を用いてウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)を得る
方法は、特に限定されず、例えば、
(i)カルボキシ基含有ポリオール(a1)、ポリイソシアネート系化合物(a2)、水
酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a3)およびアルキレングリコール誘導体(a
4)を一括に仕込み反応させる方法、
(ii)ポリイソシアネート系化合物(a2)、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物
(a3)、カルボキシ基含有ポリオール(a1)およびアルキレングリコール誘導体(a
4)を順次仕込み反応させる方法、
(iii)ポリイソシアネート系化合物(a2)、カルボキシ基含有ポリオール(a1)、
水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a3)およびアルキレングリコール誘導体(
a4)を順次仕込み反応させる方法、
(iv)ポリイソシアネート系化合物(a2)、アルキレングリコール誘導体(a4)、カ
ルボキシ基含有ポリオール(a1)および水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a
3)を順次仕込み反応させる方法、
等が挙げられる。
なかでも、反応制御の安定性の点から(ii)および(iii)の方法が好ましく、特に好
ましくは(ii)の方法である。
【0040】
また、上記反応においては、反応を促進する目的で触媒を用いることも好ましく、かか
る触媒としては、例えばジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、トリメチル
錫ヒドロキシド、テトラ-n-ブチル錫、ビスアセチルアセトナート亜鉛、ジルコニウム
トリス(アセチルアセトネート)エチルアセトアセテート、ジルコニウムテトラアセチル
アセトネート等の有機金属化合物、オクチル酸錫、オクテン酸錫、ヘキサン酸亜鉛、オク
テン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム、ナフテン酸コバル
ト、塩化第1錫、塩化第2錫、酢酸カリウム等の金属塩、トリエチルアミン、トリエチレ
ンジアミン、ベンジルジエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン
、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン、N,N,N’,N’-テトラメチ
ル-1,3-ブタンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等のアミン
系触媒、硝酸ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス、硫化ビスマス等の他、ジブチル
ビスマスジラウレート、ジオクチルビスマスジラウレート等の有機ビスマス化合物や、2
-エチルヘキサン酸ビスマス塩、ナフテン酸ビスマス塩、イソデカン酸ビスマス塩、ネオ
デカン酸ビスマス塩、ラウリル酸ビスマス塩、マレイン酸ビスマス塩、ステアリン酸ビス
マス塩、オレイン酸ビスマス塩、リノール酸ビスマス塩、酢酸ビスマス塩、ビスマスリビ
スネオデカノエート、ジサリチル酸ビスマス塩、ジ没食子酸ビスマス塩等の有機酸ビスマ
ス塩等のビスマス系触媒等が挙げられる。なかでも、ジブチル錫ジラウレート、1,8-
ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセンが好適である。これらは単独でもしくは2種以
上併せて用いることができる。
【0041】
更に、上記反応においては、重合禁止剤を用いることが好ましい。
上記重合禁止剤としては、重合禁止剤として使われている公知一般のものを使用するこ
とができ、例えば、p-ベンゾキノン、ナフトキノン、トルキノン、2,5-ジフェニル
-p-ベンゾキノン等のキノン類、ハイドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキ
ノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノ-t-ブチルハ
イドロキノン、2,6-ジ-t-ブチルクレゾール、p-t-ブチルカテコール等のフェ
ノール類を挙げることができる。なかでもフェノール類が好ましく、特に好ましくは、2
,6-ジ-t-ブチルクレゾールである。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用い
ることができる。
【0042】
反応温度は、通常30~100℃、好ましくは40~90℃であり、反応時間は、通常
2~30時間、好ましくは3~20時間である。
【0043】
かくして、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)が得られる。
【0044】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の(メタ)アクリロイル基濃度は、
1~10mmol/gである。好ましくは、3~9mmol/gであり、特に好ましくは
5~8mmol/gである。(メタ)アクリロイル基濃度が低すぎると、硬化塗膜の硬度
が低下し、(メタ)アクリロイル基濃度が高すぎると、乳化性が低下する。
【0045】
また、上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の重量平均分子量は通常、1
,500~30,000であり、好ましくは1,700~10,000、特に好ましくは
2,000~5,000である。
かかる重量平均分子量が小さすぎると乳化性が低下する傾向があり、大きすぎると高粘
度となり取り扱いにくくなる傾向がある。
【0046】
なお、本発明において重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均
分子量であり、高速液体クロマトグラフ(Waters社製、「ACQUITY APC
システム」)に、カラム:ACQUITY APC XT 450×1本、ACQUIT
Y APC XT 200×1本、ACQUITY APC XT 45×2本の4本を
直列にして用いることにより測定される。
【0047】
また、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の60℃における粘度は、通常1
,000~300,000mPa・sであり、好ましくは1,200~100,000m
Pa・s、特に好ましくは1,500~50,000mPa・sであることが好ましい。
かかる粘度が上記範囲外では塗工性が低下する傾向がある。
なお、粘度の測定法はE型粘度計による。
【0048】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の酸価は、1~40mgKOH/g
が好ましく、より好ましくは3~30mgKOH/gであり、特に好ましくは5~20m
gKOH/gである。上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の酸価が低すぎ
る場合は、乳化性が低下し、酸価が高すぎる場合は、高粘度となって取り扱いにくくなっ
たり、硬化塗膜の硬度が低下する。
なお、上記酸価は、JIS K 0070に準じた方法で求めることができる。
【0049】
また、乳化性の点から、上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)を、中和し
たウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の中和物を用いることも好ましい。
【0050】
上記中和に用いる塩基としては、例えば、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチル
アミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールア
ミン、トリエタノールアミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられ、通常、
これらの塩基は水溶液として用いられる。なかでも乾燥性や汎用性の点からアンモニア水
溶液が好ましい。
【0051】
また、上記塩基の使用量としては、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)が有
するカルボン酸1モル当量に対して、塩基が通常0.5~2モル当量、好ましくは0.8
~1.5モル当量である。塩基の使用量が上記範囲外であると、ウレタン(メタ)アクリ
レート系化合物(A)の中和物の乳化性が低下する傾向がある。
【0052】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の中和物のpHは、通常7~14で
あり、好ましくは8~12である。pHが上記範囲外であると、ウレタン(メタ)アクリ
レート系化合物(A)の中和物の乳化性および乳化安定性が低下する傾向がある。
【0053】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記ウレタン(メタ)アクリレート系
化合物(A)またはその中和物、好ましくは、光重合開始剤(B)、エチレン性不飽和モ
ノマー(C)、必要に応じて、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)以外のウレ
タン(メタ)アクリレート系化合物やその他の成分を含有してなるものである。
【0054】
〔光重合開始剤(B)〕
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、活性エネルギー線を照射した際の硬化
を促進する点から、光重合開始剤(B)を含有することが好ましい。また、光重合開始剤
(B)は単独でもしくは2種以上併せて用いてもよい。
【0055】
上記光重合開始剤(B)としては、光の作用によりラジカルを発生するものであれば特
に限定されず、例えば、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジク
ロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フ
ェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピレンフェニル)-2-ヒドロキシ-2
-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メ
チルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ
-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-
1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1、ベンゾイン、ベン
ゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、
ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイ
ル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベン
ゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチ
ル-4-メトキシベンゾフェノン、チオキサンソン、2-クロルチオキサンソン、2-メ
チルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、
カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2-エチルアンスラキノン、4’,4’’-ジエ
チルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニ
ル)ベンゾフェノン、α-アシロキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、メチル
フェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、4-(2-ヒ
ドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン等が挙げられ、
なかでもベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベ
ンゾインイソプロピルエーテル、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒド
ロキシ-2-プロピル)ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-
1-オンが好ましく、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが特に好ましい。
【0056】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、水性溶媒に分散させた活性エネ
ルギー線硬化型エマルジョン組成物とした場合に、その機能をより発揮させる点から、水
溶性または水分散性を有する光重合開始剤を使用してもよい。
上記水溶性または水分散性をもつ光重合開始剤としては、例えば、2-(3-ジメチル
アミノ-2-ヒドロキシプロポキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-
オンメトクロライド(オクテルケミカルズ社製、「Quantacure QTX」)や
、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-
1-プロパン-1-オン(IGM Resins社製、「オムニラッド2959」)等が
挙げられる。なかでも1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル〕-2-ヒドロ
キシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンが好ましい。
【0057】
かかる光重合開始剤(B)の配合量は、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)
100重量部に対して(後述するエチレン性不飽和モノマー(C)を含有する場合は、ウ
レタン(メタ)アクリレート系化合物(A)とエチレン性不飽和モノマー(C)との合計
100重量部に対して)、0.01~10重量部であることが好ましく、特に好ましくは
0.1~5重量部である。かかる配合量が少なすぎると硬化速度が低下したり、硬化が不
充分となる傾向があり、多すぎても硬化性は向上せず経済性が低下する傾向がある。
【0058】
更に、光重合開始剤(B)の助剤として、例えばトリエタノールアミン、トリイソプロ
パノールアミン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4
’-ジエチルアミノベンゾフェノン、2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチル
アミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメ
チルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2,
4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等を併用してもよ
い。
【0059】
〔エチレン性不飽和モノマー(C)〕
上記エチレン性不飽和モノマー(C)としては、1分子中に1個以上のエチレン性不飽
和基を有するものであればよく、単官能モノマー、2官能モノマー、3官能以上のモノマ
ーが挙げられる。上記のエチレン性不飽和モノマー(C)は単独で用いてもよいし、2種
以上を併用してもよい。
【0060】
上記単官能モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、
α-メチルスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アク
リロニトリル、酢酸ビニル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキ
シプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノ
キシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)ア
クリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロ
ロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレー
ト、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル
(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ
)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリ
レート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メ
タ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデ
シル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)ア
クリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ
)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2
-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体
のハーフエステル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、カルビトー
ル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アク
リレート、アリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、2-ヒドロキシエ
チルアクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、
2-ビニルピリジン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートモノ
エステル等が挙げられる。
【0061】
また、上記単官能モノマーとして、上記の他にアクリル酸のミカエル付加物あるいは2
-アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルも挙げられ、アクリル酸のミカエ
ル付加物としては、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸ダイマー、アクリル酸トリマー、
メタクリル酸トリマー、アクリル酸テトラマー、メタクリル酸テトラマー等が挙げられる
。また、特定の置換基をもつカルボン酸である2-アクリロイルオキシエチルジカルボン
酸モノエステルとしては、例えば2-アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、
2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2-アクリロイルオキシエチル
フタル酸モノエステル、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2-ア
クリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、2-メタクリロイルオキシ
エチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル等が挙げられる。更に、オリゴエステルアクリ
レートも挙げられる。
【0062】
上記2官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)ア
クリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ
(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレ
ングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネ
オペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノール
A型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)
アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジ
オールエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレ
ート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジル
エーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ
)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピ
バリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレン
オキサイド変性ジアクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフ
ェートジエステル等が挙げられる。
【0063】
上記3官能以上のモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)ア
クリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテ
トラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペ
ンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエト
キシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレ
ート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、エチレンオキサイド変
性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペン
タエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリ
トールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ
(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等
が挙げられる。
【0064】
また、本発明では、乳化安定性や樹脂との相溶性の点で水溶性または水分散性を有する
エチレン性不飽和モノマーを使用してもよい。
上記水溶性または水分散性を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アク
リロイルモルフォリン、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトール
トリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性
ペンタエリスリトールテトラアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジア
クリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、エチレンオキサ
イド変性エポキシアクリレート、ポリエチレングリコールを主成分とするポリエステルア
クリレート等が挙げられる。なかでもアクリロイルモルフォリン、ポリエチレングリコー
ルジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、イソシアヌ
ル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート等が好ましい。
【0065】
上記エチレン性不飽和モノマー(C)の配合量は、ウレタン(メタ)アクリレート系化
合物(A)100重量部に対して500重量部以下であることが好ましく、より好ましく
は300重量部以下、特に好ましくは100重量部以下である。かかる使用量が多すぎる
と硬化塗膜の硬度が低くなる傾向があり、また乳化性が低下する傾向がある。
【0066】
〔その他の成分〕
また、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、必要に応じて、乳化剤(界面活
性剤)、フィラー、染顔料、油、可塑剤、ワックス類、乾燥剤、分散剤、湿潤剤、ゲル化
剤、安定剤、消泡剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤、酸化防止剤、難燃剤、帯
電防止剤、充填剤、補強剤、艶消し剤、架橋剤、シリカ、水分散されたシリカ、防腐剤等
を配合してもよい。
【0067】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート系化合
物(A)またはその中和物を含むものである。上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合
物(A)またはその中和物は、疎水性であるポリイソシアネート系化合物(a2)、水酸
基含有(メタ)アクリレート系化合物(a3)由来の構造部位、および親水性であるカル
ボキシ基含有ポリオール(a1)、アルキレングリコール誘導体(a4)由来の構造部位
を有することから、自己乳化性を有する。そのため、水性溶媒中に分散することができ、
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を水性溶媒中に分散させることにより、活性
エネルギー線硬化型エマルジョン組成物とすることができる。
【0068】
本発明において、「自己乳化性」とは、乳化させる際にせん断力等を必要とせず、水性
溶媒と接触することにより、自ら乳化する性質を意味する。
【0069】
本発明の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物は、例えば、上記活性エネルギー
線硬化型樹脂組成物を、濃度30重量%の水分散液とし、室温(23℃)で2週間静置し
た後であっても、沈殿は見られず、均一な分散状態を維持することができる。
【0070】
以下、活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物について説明する。
【0071】
本発明の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物は、以下の乳化方法によって得る
ことができる。
上記乳化方法としては、例えば、
(1)ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)またはその中和物と、水性溶媒を一
括で仕込み、通常30~80℃、好ましくは45~65℃で撹拌する方法、
(2)ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)またはその中和物を通常30~80
℃、好ましくは45~65℃で撹拌しながら、水性溶媒を滴下する方法、
(3)水性溶媒を通常30~80℃、好ましくは45~65℃で撹拌しながら、ウレタン
(メタ)アクリレート系化合物(A)またはその中和物を滴下する方法、
等が挙げられる。
なかでも、均一なエマルジョンとすることができる点で、(2)の方法が好ましい。
【0072】
また、光重合開始剤(B)、エチレン性不飽和モノマー(C)、その他の成分を配合す
る場合には、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)またはその中和物と、光重合
開始剤(B)、エチレン性不飽和モノマー(C)、その他の成分を予め配合してから撹拌
し乳化させてもよいし、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)またはその中和物
と水性溶媒とを乳化させた後、光重合開始剤(B)、エチレン性不飽和モノマー(C)、
その他の成分を配合してもよい。但し、光重合開始剤(B)、エチレン性不飽和モノマー
(C)、その他の成分の配合方法は、これらの方法に限定されるものではない。
【0073】
上記水性溶媒としては、水に限らず、乳化の状態を損なわない範囲で、水に炭素数1~
5の低級アルコール等を混合した溶媒であってもよい。
【0074】
水性溶媒の使用量については、活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物全体の5~
95重量%となる量であることが好ましく、特に好ましくは10~80重量%、更に好ま
しくは20~60重量%である。水性溶媒の使用量が少なすぎると粘度が高くなりすぎる
傾向があり、多すぎると塗工時の乾燥負荷が大きくなる傾向がある。
【0075】
得られた活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物の不揮発分濃度は5~80重量%
であることが塗工の作業性の点で好ましく、特には10~70重量%、更には20~60
重量%が好ましい。かかる不揮発分濃度が低すぎると塗工時に基材に対してハジキが生じ
やすく、また乾燥負荷が大きくなる傾向があり、高すぎると流動性が低くなり、塗工が困
難となる傾向がある。
【0076】
また、得られた活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物中のウレタン(メタ)アク
リレート系化合物(A)またはその中和物の粒子については、その平均粒子径が1~1,
000nmであることが好ましく、特には10~500nm、更には20~200nmで
あることが好ましい。かかる平均粒子径が小さすぎるとエマルション粘度が大きくなり取
り扱いにくくなる傾向があり、大きすぎると凝集が起こりやすく、乳化安定性が低下する
傾向がある。なお、ここでいう平均粒子径は、散乱強度分布の粒径値平均を指す。
【0077】
更に、活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物の粘度は、5~20,000mPa
・s(20℃)であることが好ましく、特には10~10,000mPa・s(20℃)
、更には20~5,000mPa・s(20℃)であることが好ましい。かかる粘度が低
すぎると膜厚の制御が困難となる傾向があり、高すぎると取り扱いが困難となり塗工作業
性が低下する傾向がある。なお、粘度の測定法はE型粘度計による。
【0078】
上記活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲
で、更に、エチレングリコール等の凍結融解安定剤、その他のエマルジョン、ブチルセロ
ソルブ等の造膜剤、N-メチルピロリドンや3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオン
アミド等の水分散補助のための極性溶剤等を配合してもよい。これらは単独でもしくは2
種以上併せて用いてもよい。
【0079】
上記活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物は、基材に塗工した後、乾燥させ、そ
の後、活性エネルギー線を照射することにより硬化される。
【0080】
本発明の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物を塗工する対象である基材として
は、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ア
クリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン系樹脂、アク
リル系樹脂等やそれらの成型品(フィルム、シート、カップ等)等のプラスチック基材、
また、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロ
オレフィンフィルム等の光学フィルム、それらの複合基材、またはガラス繊維や無機物を
混合した上記材料の複合基材等、金属(アルミニウム、銅、鉄、SUS、亜鉛、マグネシ
ウム、これらの合金等)やガラス、木材、紙または、これらの基材上にプライマー層を設
けた基材等が挙げられる。
【0081】
本発明の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物の塗工方法としては、例えば、ス
プレー、シャワー、グラビア、ディッピング、ロール、スピン、スクリーン印刷等のよう
なウェットコーティング法が挙げられ、通常は常温(特に加熱しない温度範囲)の条件下
で、基材に塗工すればよい。
【0082】
また、上記乾燥条件としては、温度が、通常40~120℃、好ましくは50~100
℃で、乾燥時間が、通常1~20分間、好ましくは2~10分間であればよい。
【0083】
基材上に塗工された活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物を硬化させる際に使用
する活性エネルギー線としては、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線
、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速
度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線または電子線、とりわけ紫外線が好まし
い。
なお、電子線の照射により硬化を行う場合は、光重合開始剤(B)を用いなくても硬化
し得る。
【0084】
紫外線の照射により硬化させる際には、150~450nm波長域の光を発する高圧水
銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミ
カルランプ、無電極放電ランプ、LEDランプ等を用いて、通常30~3,000mJ/
cm2、好ましくは100~1,500mJ/cm2の紫外線を照射すればよい。
紫外線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の完全を図ることもできる。
【0085】
塗工膜厚(硬化後の膜厚)としては、通常、活性エネルギー線硬化型の塗膜として光重
合開始剤が均一に反応するように光線を透過させるという点から、1~1,000μmで
あればよく、好ましくは2~500μmであり、特に好ましくは3~200μmである。
【0086】
本発明の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物は、塗料、保護コーティング剤、
アンカーコーティング剤、ハードコート用コーティング剤、インク、磁性粉コーティング
バインダー、サンドブラスト用被膜、粘着剤、接着剤、粘接着剤、版材等、各種の被膜形
成材料として有用に用いられるものである。
【実施例0087】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない
限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは
、重量基準を意味する。
【0088】
実施例に先立って、以下のウレタン(メタ)アクリレート系化合物を調製した。
【0089】
〔ウレタンアクリレート系化合物(A-1)の調製〕
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート103g(
0.465モル)、ジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物〔水酸基価:48.0m
gKOH/g〕653g(0.558モル)、重合禁止剤として2,6-ジ-t-ブチル
クレゾール1.65g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを加え、70℃
で反応させた。残存イソシアネート基が2.1%以下となった時点で、ジメチロールブタ
ン酸3.45g(0.023モル)、ジメチロールプロピオン酸9.36g(0.070
モル)を加え、90℃で反応させた。残存イソシアネート基が1.0%以下となった時点
で60℃まで冷却し、ポリエチレングリコール〔水酸基価:113.0mgKOH/g、
水酸基価から計算される数平均分子量993〕231g(0.233モル)を加え、60
℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%以下となった時点で反応を終了し、ウレ
タンアクリレート系化合物(A-1)を得た(重量平均分子量:2,600、粘度:1,
400mPa・s/60℃、酸価:5.2mgKOH/g、アクリロイル基濃度:6.5
3mmol/g)。
【0090】
〔ウレタンアクリレート系化合物(A-2)の調製〕
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート137g(
0.617モル)、ジメチロールブタン酸4.57g(0.031モル)、ジメチロール
プロピオン酸12.4g(0.093モル)を加え、反応触媒としてジブチル錫ジラウレ
ート0.1gを加え、90℃で反応させた。残存イソシアネート基が26.9%以下とな
った時点で、ジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物〔水酸基価:52.0mgKO
H/g〕666g(0.617モル)、重合禁止剤として2,6-ジ-t-ブチルクレゾ
ール1.65gを加え、70℃で反応させた。残存イソシアネート基が1.9%以下とな
った時点で60℃まで冷却し、ポリエチレングリコール〔水酸基価:193.0mgKO
H/g、水酸基価から計算される数平均分子量581〕180g(0.309モル)を加
え、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%以下となった時点で反応を終了
し、ウレタンアクリレート系化合物(A-2)を得た(重量平均分子量:3,100、粘
度:3,400mPa・s/60℃、酸価:6.9mgKOH/g、アクリロイル基濃度
:6.66mmol/g)。
【0091】
〔ウレタンアクリレート系化合物(A-3)の調製〕
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート137g(
0.617モル)、ジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物〔水酸基価:52.0m
gKOH/g〕666g(0.617モル)、重合禁止剤として2,6-ジ-t-ブチル
クレゾール1.65g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを加え、70℃
で反応させた。残存イソシアネート基が3.2%以下となった時点で、ジメチロールブタ
ン酸4.57g(0.031モル)、ジメチロールプロピオン酸12.4g(0.093
モル)を加え、90℃で反応させた。残存イソシアネート基が1.9%以下となった時点
で60℃まで冷却し、ポリエチレングリコール〔水酸基価:193.0mgKOH/g、
水酸基価から計算される数平均分子量581〕180g(0.309モル)を加え、60
℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%以下となった時点で反応を終了し、ウレ
タンアクリレート系化合物(A-3)を得た(重量平均分子量:2,700、粘度:3,
000mPa・s/60℃、酸価:6.9mgKOH/g、アクリロイル基濃度:6.6
6mmol/g)。
【0092】
〔ウレタンアクリレート系化合物(A-4)の調製〕
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート133g(
0.599モル)、ジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物〔水酸基価:52.0m
gKOH/g〕(本発明の(a3)に該当)710g(0.658モル)、重合禁止剤と
して2,6-ジ-t-ブチルクレゾール1.65g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレ
ート0.1gを加え、70℃で反応させた。残存イソシアネート基が2.7%以下となっ
た時点で、ジメチロールブタン酸5.32g(0.036モル)、ジメチロールプロピオ
ン酸11.2g(0.084モル)を加え、90℃で反応させた。残存イソシアネート基
が1.5%以下となった時点で60℃まで冷却し、ポリエチレングリコール〔水酸基価:
193.0mgKOH/g、水酸基価から計算される数平均分子量581〕140g(0
.239モル)を加え、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%以下となっ
た時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系化合物(A-4)を得た(重量平均分子
量:2,500、粘度:3,400mPa・s/60℃、酸価:6.7mgKOH/g、
アクリロイル基濃度:7.10mmol/g)。
【0093】
〔ウレタンアクリレート系化合物(A-5)の調製〕
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート135g(
0.608モル)、ジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物〔水酸基価:52.0m
gKOH/g〕754g(0.699モル)、重合禁止剤として2,6-ジ-t-ブチル
クレゾール1.65g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを加え、70℃
で反応させた。残存イソシアネート基が2.4%以下となった時点で、ジメチロールブタ
ン酸4.95g(0.033モル)、ジメチロールプロピオン酸11.0g(0.082
モル)を加え、90℃で反応させた。残存イソシアネート基が1.3%以下となった時点
で60℃まで冷却し、ポリエチレングリコール〔水酸基価:288.0mgKOH/g、
水酸基価から計算される数平均分子量390〕94.7g(0.239モル)を加え、6
0℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%以下となった時点で反応を終了し、ウ
レタンアクリレート系化合物(A-5)を得た(重量平均分子量:2,500、粘度:5
,300mPa・s/60℃、酸価:6.5mgKOH/g、アクリロイル基濃度:7.
54mmol/g)。
【0094】
〔ウレタンアクリレート系化合物(A-6)の調製〕
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート141g(
0.635モル)、ジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物〔水酸基価:52.0m
gKOH/g〕686g(0.635モル)、重合禁止剤として2,6-ジ-t-ブチル
クレゾール1.65g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを加え、70℃
で反応させた。残存イソシアネート基が3.2%以下となった時点で、ジメチロールブタ
ン酸12.2g(0.083モル)、ジメチロールプロピオン酸12.4g(0.092
モル)を加え、90℃で反応させた。残存イソシアネート基が1.4%以下となった時点
で60℃まで冷却し、ポリエチレングリコール〔水酸基価:192.0mgKOH/g、
水酸基価から計算される数平均分子量584〕149g(0.254モル)を加え、60
℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%以下となった時点で反応を終了し、ウレ
タンアクリレート系化合物(A-6)を得た(重量平均分子量:2,800、粘度:4,
500mPa・s/60℃、酸価:9.8mgKOH/g、アクリロイル基濃度:6.8
6mmol/g)。
【0095】
〔ウレタンアクリレート系化合物(A-7)の調製〕
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート141g(
0.635モル)、ジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物〔水酸基価:52.0m
gKOH/g〕343g(0.318モル)、重合禁止剤として2,6-ジ-t-ブチル
クレゾール1.65g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを加え、70℃
で反応させた。残存イソシアネート基が8.2%以下となった時点で、ジメチロールブタ
ン酸12.2g(0.083モル)、ジメチロールプロピオン酸12.4g(0.092
モル)を加え、90℃で反応させた。残存イソシアネート基が5.0%以下となった時点
で70℃まで冷却し、ジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物〔水酸基価:52.0
mgKOH/g〕343g(0.318モル)を加え、70℃で反応させた。残存イソシ
アネート基が1.4%以下となった時点で60℃まで冷却し、ポリエチレングリコール〔
水酸基価:192.0mgKOH/g、水酸基価から計算される数平均分子量584〕1
49g(0.254モル)を加え、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%
以下となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系化合物(A-7)を得た(重
量平均分子量:2,800、粘度:4,800mPa・s/60℃、酸価:9.8mgK
OH/g、アクリロイル基濃度:6.86mmol/g)。
【0096】
〔ウレタンアクリレート系化合物(A-8)の調製〕
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート136g(
0.613モル)、ジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物〔水酸基価:52.0m
gKOH/g〕661g(0.613モル)、重合禁止剤として2,6-ジ-t-ブチル
クレゾール1.65g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを加え、70℃
で反応させた。残存イソシアネート基が3.2%以下となった時点で、ジメチロールブタ
ン酸11.8g(0.080モル)、ジメチロールプロピオン酸11.9g(0.089
モル)を加え、90℃で反応させた。残存イソシアネート基が1.4%以下となった時点
で60℃まで冷却し、ポリエチレングリコール〔水酸基価:192.0mgKOH/g、
水酸基価から計算される数平均分子量584〕179g(0.306モル)を加え、60
℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%以下となった時点で反応を終了し、ウレ
タンアクリレート系化合物(A-8)を得た(重量平均分子量:2,600、粘度:3,
200mPa・s/60℃、酸価:9.5mgKOH/g、アクリロイル基濃度:6.6
1mmol/g)。
【0097】
〔ウレタンアクリレート系化合物(A-9)の調製〕
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート130g(
0.586モル)、ジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物〔水酸基価:52.0m
gKOH/g〕728g(0.674モル)、重合禁止剤として2,6-ジ-t-ブチル
クレゾール1.65g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを加え、70℃
で反応させた。残存イソシアネート基が2.4%以下となった時点で、ジメチロールブタ
ン酸11.8g(0.080モル)、ジメチロールプロピオン酸11.8g(0.088
モル)を加え、90℃で反応させた。残存イソシアネート基が0.8%以下となった時点
で60℃まで冷却し、ポリエチレングリコール〔水酸基価:192.0mgKOH/g、
水酸基価から計算される数平均分子量584〕118g(0.202モル)を加え、60
℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%以下となった時点で反応を終了し、ウレ
タンアクリレート系化合物(A-9)を得た(重量平均分子量:2,600、粘度:5,
000mPa・s/60℃、酸価:9.4、アクリロイル基濃度:7.28mmol/g
)。
【0098】
〔ウレタンアクリレート系化合物(A-10)の調製〕
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート141g(
0.636モル)、ジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物〔水酸基価:52.0m
gKOH/g〕686g(0.636モル)、重合禁止剤として2,6-ジ-t-ブチル
クレゾール1.65g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを加え、70℃
で反応させた。残存イソシアネート基が3.2%以下となった時点で、ジメチロールプロ
ピオン酸23.9g(0.178モル)を加え、90℃で反応させた。残存イソシアネー
ト基が1.4%以下となった時点で60℃まで冷却し、ポリエチレングリコール〔水酸基
価:192.0mgKOH/g、水酸基価から計算される数平均分子量584〕149g
(0.254モル)を加え、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%以下と
なった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系化合物(A-10)を得た(重量平
均分子量:2,500、粘度:4,900mPa・s/60℃、酸価:10.0mgKO
H/g、アクリロイル基濃度:6.86mmol/g)。
【0099】
〔ウレタンアクリレート系化合物(A-11)の調製〕
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート141g(
0.634モル)、ジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物〔水酸基価:52.0m
gKOH/g〕684g(0.634モル)、重合禁止剤として2,6-ジ-t-ブチル
クレゾール1.65g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを加え、70℃
で反応させた。残存イソシアネート基が3.2%以下となった時点で、ジメチロールブタ
ン酸26.3g(0.178モル)を加え、90℃で反応させた。残存イソシアネート基
が1.4%以下となった時点で60℃まで冷却し、ポリエチレングリコール〔水酸基価:
192.0mgKOH/g、水酸基価から計算される数平均分子量584〕148g(0
.254モル)を加え、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%以下となっ
た時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系化合物(A-11)を得た(重量平均分
子量:2,500、樹脂粘度:5,400mPa・s/60℃、酸価:10.0mgKO
H/g、アクリロイル基濃度:6.84mmol/g)。
【0100】
〔ウレタンアクリレート系化合物(A’-1)の調製〕
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート96.1g
(0.432モル)、ジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物〔水酸基価:48.0
mgKOH/g〕606g(0.519モル)、重合禁止剤として2,6-ジ-t-ブチ
ルクレゾール1.65g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを加え、70
℃で反応させた。残存イソシアネート基が2.1%以下となった時点で60℃まで冷却し
、ポリエチレングリコール〔水酸基価:114.0mgKOH/g、水酸基価から計算さ
れる数平均分子量984〕298g(0.302モル)を加え、60℃で反応させ、残存
イソシアネート基が0.1%以下となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系
化合物(A’-1)を得た(重量平均分子量:3,500、粘度:1,200mPa・s
/60℃、酸価:0mgKOH/g、アクリロイル基濃度:6.08mmol/g)。
【0101】
〔ウレタンアクリレート系化合物(A’-2)の調製〕
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート125g(
0.562モル)、ジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物〔水酸基価:52.0m
gKOH/g〕728g(0.675モル)、重合禁止剤として2,6-ジ-t-ブチル
クレゾール1.65g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを加え、70℃
で反応させた。残存イソシアネート基が2.2%以下となった時点で60℃まで冷却し、
ポリエチレングリコール〔水酸基価:193.0mgKOH/g、水酸基価から計算され
る数平均分子量581〕147g(0.253モル)を加え、60℃で反応させ、残存イ
ソシアネート基が0.1%以下となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系化
合物(A’-2)を得た(重量平均分子量:3,800、粘度:4,500mPa・s/
60℃、酸価:0mgKOH/g、アクリロイル基濃度:7.28mmol/g)。
【0102】
〔ウレタンアクリレート系化合物(A’-3)の調製〕
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート157g(
0.707モル)、ジペンタエリスリトールのアクリル酸付加物〔水酸基価:52.0m
gKOH/g〕763g(0.707モル)、重合禁止剤として2,6-ジ-t-ブチル
クレゾール1.65g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1gを加え、70℃
で反応させた。残存イソシアネート基が3.2%以下となった時点で、ジメチロールブタ
ン酸41.9g(0.283モル)、ジメチロールプロピオン酸37.9g(0.283
モル)を加え、90℃で反応させた。残存イソシアネート基が0.1%以下となった時点
で反応を終了し、ウレタンアクリレート系化合物(A’-3)を得た(重量平均分子量:
2,200、粘度:67,000mPa・s/60℃、酸価:31.7mgKOH/g、
アクリロイル基濃度:7.63mmol/g)。
【0103】
上記で得られたウレタンアクリレート系化合物の組成を下記表1および表2に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
上記で得られたウレタンアクリレート系化合物を、下記のように水性溶媒に分散させて
乳化を行い、活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物を調製した。
【0107】
〔実施例1〕
内温計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、製造例1で作製したウレタンアクリレー
ト系化合物(A-1)300gを加え、50℃で予備撹拌を行い、25%アンモニア水溶
液を2.4g(酸1モル当量に対し、アンモニア1.25モル当量)加え中和を行った。
その後、室温のイオン交換水697.6gを20分間以上の間隔を空けながら5回に分け
て加え、その間50℃で撹拌を続けた。加温を止めてから更に1時間撹拌を行い、ウレタ
ンアクリレート系化合物(A-1)の樹脂分30%の活性エネルギー線硬化型エマルジョ
ン組成物(粘度:22mPa・s/20℃、pH:9.1)を得た。
【0108】
〔実施例2~11〕
ウレタンアクリレート系化合物(A-1)の代わりにウレタンアクリレート系化合物(
A-2)~(A-11)をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ウレタン
アクリレート系化合物(A-2)~(A-11)の樹脂分30%の活性エネルギー線硬化
型エマルジョン組成物をそれぞれ得た。
【0109】
〔比較例1〕
ウレタンアクリレート系化合物(A-1)の代わりにウレタンアクリレート系化合物(
A’-1)を用い、中和を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、ウレタンア
クリレート系化合物(A’-1)の樹脂分30%の活性エネルギー線硬化型エマルジョン
組成物を得た。
【0110】
〔比較例2〕
ウレタンアクリレート系化合物(A’-1)の代わりにウレタンアクリレート系化合物
(A’-2)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型エマ
ルジョン組成物を得ようとしたが、水に分散させることができなかった。
【0111】
〔比較例3〕
ウレタンアクリレート系化合物(A-1)の代わりにウレタンアクリレート系化合物(
A’-3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型エマル
ジョン組成物を得ようとしたが、水に分散させることができなかった。
【0112】
〔活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物の外観〕
実施例1~11、および比較例1~3で調製した樹脂分30%の活性エネルギー線硬化
型エマルジョン組成物の外観を、目視にて下記の通り評価した。結果を後記の表3、4に
示す。
(評価基準)
○・・・沈殿なく均一に分散
×・・・沈殿あり
【0113】
〔活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物の安定性〕
実施例1~11、および比較例1で得られた樹脂分30%の活性エネルギー線硬化型エ
マルジョン組成物を、23℃下で2週間静置した後の外観を、目視にて下記の通り評価し
た。結果を後記の表3、4に示す。
(評価基準)
○・・・沈殿なく均一に分散
×・・・沈殿あり
【0114】
<<評価用塗膜サンプルの作製>>
実施例1~11、および比較例1で得られた樹脂分30%の活性エネルギー線硬化型エ
マルジョン組成物100部(樹脂分30%)に対し、光重合開始剤として1-ヒドロキシ
シクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンとの共融混合物(IGM Resins
社製、「オムニラッド500」)を1.2部配合し、撹拌混合した。これを、易接着ポリ
エチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製;コスモシャインA4300、
厚み125μm)上に、バーコーターによって塗布し、90℃で3分間乾燥させた後、高
圧水銀灯にて積算光量450mJ/cm2となるように紫外線照射し、活性エネルギー線
硬化型エマルジョン組成物を硬化させ、膜厚10μmの評価用塗膜サンプルを作製した。
得られた評価用塗膜サンプルを用いて、以下の評価を行った。
実施例1~11、および比較例1の評価の結果を後記の表3、4に示す。
【0115】
〔鉛筆硬度〕
上記の評価用塗膜サンプルを用いて、JIS K 5600-5-4に準じて鉛筆硬度
を測定し、下記の通り評価した。
実施例1~11、および比較例1の評価の結果を後記の表3、4に示す。
(評価基準)
◎・・・3H以上
○・・・2H
×・・・H以下
【0116】
〔耐擦傷性〕
上記の評価用塗膜サンプルを用いて、真鍮ブラシにて荷重1kgで10往復回塗膜表面
を擦り、傷の有無を目視で確認し、下記の通り評価した。
実施例1~11、および比較例1の評価の結果を後記の表3、4に示す。
(評価基準)
○・・・傷がなかった
△・・・少し傷があった
×・・・多数の傷があった
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
【0119】
上記表3、4から明らかなように、(a1)~(a4)成分を反応させて得られたウレ
タンアクリレート系化合物(A)の中和物を含む、実施例1~11の活性エネルギー線硬
化型エマルジョン組成物は、水分散液の外観および安定性に優れるものであり、更には、
硬化塗膜の鉛筆硬度、耐擦傷性にも優れるものであった。
一方、(a1)成分を用いず、(a2)~(a4)成分を反応させて得られたウレタン
アクリレート系化合物(A’-1)を含む、比較例1の活性エネルギー線硬化型エマルジ
ョン組成物は、水分散液の外観および安定性、硬化塗膜の耐擦傷性に優れるものの、硬化
塗膜の鉛筆硬度に劣るものであった。
また、同じく(a1)成分を用いず、(a2)~(a4)成分を反応させて得られたウ
レタンアクリレート系化合物(A’-2)含む、比較例2は、水に分散させることができ
ず、硬化塗膜も得られなかった。
また、(a4)成分を用いず、(a1)~(a3)成分を反応させて得られたウレタン
アクリレート系化合物(A’-3)を含む、比較例3の活性エネルギー線硬化型エマルジ
ョン組成物は、水に分散させることができず、硬化塗膜も得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、上記ウレタン(メタ)アクリレート系
化合物(A)を含有するため、自己乳化型で水分散性に優れ、更に塗膜の表面硬度および
耐擦傷性に優れたものであり、塗料、保護コーティング剤、アンカーコーティング剤、ハ
ードコート用コーティング剤、インク、磁性粉コーティングバインダー、サンドブラスト
用被膜、粘着剤、接着剤、粘接着剤、版材等、各種の被膜形成材料として非常に有用であ
る。