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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157075
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】軟質ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20231019BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20231019BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20231019BHJP
   C08L 27/08 20060101ALI20231019BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20231019BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20231019BHJP
【FI】
C08G18/00 L
C08G18/08 038
C08L75/04
C08L27/08
C08K5/521
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066740
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 勇太
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002BD042
4J002CK021
4J002EW046
4J002FD136
4J002GC00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF12
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF22
4J034DG03
4J034DG04
4J034DQ05
4J034DQ16
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KD12
4J034KE02
4J034MA16
4J034MA24
4J034NA03
4J034QA01
4J034QB01
4J034QB14
4J034QB15
4J034QB17
4J034QC01
4J034RA03
4J034RA10
4J034RA12
4J034RA14
(57)【要約】
【課題】 塩化ビニル系ポリマー粒子及びリン酸エステル系難燃剤を含むことにより難燃性と圧縮硬度のバランスに優れ、寝具や自動車、自動二輪等の各種内燃機関等のシート、クッション材として適した軟質ポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】 少なくとも塩素濃度0.5~5.0重量%に相当する塩化ビニル系ポリマー粒子及びリン濃度0.1~1.5重量%に相当するリン酸エステル系難燃剤を含み、JIS K6400-2 D法を準拠した25%圧縮硬度が105~250N/314cmであり、更に好ましくはFMVSSNo.302燃焼試験に準拠した判定が着火しない又は自消、及び/又は、見掛け密度が15~40kg/m、である軟質ポリウレタンフォーム。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも塩素濃度0.5~5.0重量%に相当する塩化ビニル系ポリマー粒子及びリン濃度0.1~1.5重量%に相当するリン酸エステル系難燃剤を含み、JIS K6400-2 D法を準拠した25%圧縮硬度が105~250N/314cm、であることを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
塩化ビニル系ポリマー粒子が、体積平均粒子径0.1~10μmの塩化ビニル系ポリマー粒子、であることを特徴とする請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
FMVSSNo.302燃焼試験に準拠した判定が着火しない又は自消で、あることを特徴とする請求項1又は2に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
見掛け密度が15~40kg/m、であることを特徴とする請求項1又は2に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル系ポリマー粒子を含むポリウレタンフォームに関するものであり、特に塩化ビニル系ポリマー粒子及びリン酸エステル系難燃剤を含むことにより難燃性と圧縮硬度のバランスに優れた軟質ポリウレタンフォームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは主にイソシアネートとポリオールとの反応により製造され、連通気泡を有し柔軟性、回復性を特性とする軟質ポリウレタンフォームは車両・家具のクッション材等の緩衝材として、独立気泡を有し軽量性、断熱性を特性とする硬質ポリウレタンフォームは建築、貯蔵タンク、船舶等における断熱材や構造材等の幅広い用途に使用されている。従来、ポリウレタンフォームを難燃化するために、樹脂自体の難燃性能を高めるために、難燃剤が使用されており、その際の難燃剤としては、リン酸エステルモノマーに代表される常温で液状の難燃剤や、赤燐やポリリン酸塩類、膨張黒鉛といった固形の難燃剤が用いられてきた。
【0003】
しかしながら、一般的に常温で液状のリン酸エステルモノマーを難燃剤として使用した場合、このような難燃剤はポリウレタンの可塑化作用を有することから、ポリウレタンフォームの圧縮硬度の低下を誘引しやすい、また、固形の難燃剤を使用した際にはフォームとした際の柔軟性が低下しやすい、という特に軟質ポリウレタンフォームの特性低下を著しく誘引する課題があり、リン酸エステル系難燃剤の使用量低減や、物性に悪影響を及ぼさない他の難燃剤への代替が検討されている。
【0004】
そして、リン酸エステル系難燃剤を用いないでポリウレタンフォームを難燃化する方法として、ポリ塩化ビニル粒子を含有するポリオールをその原料として用いる方法が提案されており、例えば、ポリオール中で塩化ビニル単量体を重合してポリ塩化ビニル粒子を分散させたポリオールの調製法(例えば特許文献1参照。)、ポリ塩化ビニル粒子と安定剤としてカルボニル基含有化合物を用いる方法(例えば特許文献2参照。)、0.05μm~1μmのポリ塩化ビニル粒子及び/又は塩化ビニル-不飽和ビニル共重合体粒子を分散させたポリオール組成物を用いる方法(例えば特許文献3参照。)、等が提案され、また、塩化ビニルポリマーとリン酸エステル系難燃剤とを併用するものとして有機ポリイソシアネート、ポリオール、触媒、発泡剤、整泡剤並びに難燃剤として塩化ビニルポリマー粒子及びリン酸エステル系難燃剤を含む硬質ポリウレタンフォーム用組成物、それより得られる硬質ポリウレタンフォーム(例えば特許文献4参照。)、等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平03-097715号公報
【特許文献2】特開平09-059341号公報
【特許文献3】特開2010-31169号公報
【特許文献4】特開2017-171760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1~3の提案は、ポリウレタン、更にはポリウレタンフォームの難燃性について、また、特許文献4の提案は独立した気泡を有する硬質ポリウレタンフォームについて、それぞれ検討されたものであり、圧縮硬度と難燃性のバランスに優れる軟質ポリウレタンフォームに関してはなんら検討されていないものである。
【0007】
そこで、難燃性と圧縮硬度のバランスに優れた軟質ポリウレタンフォームが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討を重ねた結果、特定量のリン酸エステル系難燃剤及び塩化ビニル系ポリマー粒子を含む軟質ウレタンフォームが、軟質ポリウレタンフォームとしての特性を維持したまま圧縮硬度及び難燃性のバランスに優れるものとなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、少なくとも塩素濃度0.5~5.0重量%に相当する塩化ビニル系ポリマー粒子及びリン濃度0.1~1.5重量%に相当するリン酸エステル系難燃剤を含み、JIS K6400-2 D法を準拠した25%圧縮硬度が105~250N/314cm、である軟質ポリウレタンフォームに関するものである。
【0010】
以下、本発明に関し詳細に説明する。
【0011】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、少なくとも塩素濃度0.5~5.0重量%に相当する塩化ビニル系ポリマー粒子及びリン濃度0.1~1.5重量%に相当するリン酸エステル系難燃剤を含む軟質ポリウレタンフォームであり、該軟質ポリウレタンフォームを構成するポリウレタンフォームとしては、一般的なイソシアネート成分(A)、ポリオール成分(B)、触媒(C)、発泡剤(D)及び難燃剤(E)、更に場合によっては少なくとも整泡剤(F)等を含むポリウレタンフォーム用組成物を発泡成形してなるポリウレタンフォームを挙げることができる。なお、ポリウレタンフォームは、軟質ポリウレタンフォームと硬質ポリウレタンフォームとに大別されており、軟質ポリウレタンフォームは柔軟性、回復性を特性とするものであり、構造的には気泡が連通した構造を有するものである。一方、硬質ポリウレタンフォームは硬度を有し軽量性、断熱性を特性とするものであり、構造的には気泡が独立した構造を有するものである。
【0012】
また、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、JIS K6400-2 D法を準拠した25%圧縮硬度が105~250N/314cmのものであり、特に軟質フォームとしての柔軟性に優れ、適度な硬度を有することから難燃性を有する緩衝材、クッション材として優れるものとなることから、105~135N/314cmのものであることが好ましい。ここで、25%圧縮硬度が105N/314cm未満のものである場合、硬度が低く緩衝材としての適正に劣るものとなる。一方、25%圧縮硬度が250N/314cmを超えるものである場合、硬度が高くクッション材としての適正に劣るものとなる。なお、硬質ポリウレタンフォームは独立した気泡を有することから柔軟性に乏しく硬度が高いため圧縮した際に陥没等が発生し、25%圧縮硬度自体の測定が困難となる。
【0013】
本発明の軟質ポリウレタンフォームを構成する塩化ビニル系ポリマー粒子としては、塩化ビニル系ポリマー粒子と称される範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、例えばペースト加工用塩化ビニル系ポリマー、SUS-塩化ビニル系ポリマー等の塩化ビニル系ポリマーより構成される粒子を挙げることができ、特に取扱い性に優れることからペースト加工用塩化ビニル系ポリマー(以下、ペースト塩ビと称する場合がある。)の粒子であることが好ましい。そして、該塩化ビニル系ポリマー粒子としては、その取扱い性に優れ、特に圧縮硬度と難燃性のバランスに優れる軟質ポリウレタンフォームを提供することを可能とすることから、体積平均粒子径(以下、[MV]値と書する場合もある。)が0.1~10μmのものが好ましく、特に0.1~5μmのもの、さらに0.1~2μmのものが好ましい。その際の塩化ビニルポリマー粒子の[MV]値は、一般に知られているレーザー回折法及び動的光散乱法を原理とした粒度分布測定装置であればどのような装置を使用しても測定可能であり、例えば、ディスク遠心式粒子径分布測定装置(CPSInstruments製、(商品名)CPSDiscCentrifuge)等の粒度分布測定装置で測定することが可能である。
【0014】
このような塩化ビニル系ポリマー粒子は、塩化ビニル単量体を単独又は塩化ビニル単量体と共重合可能な不飽和ビニル単量体と塩化ビニル単量体とを共重合することにより調製することができ、塩化ビニル系ポリマー粒子の製造方法として一般に知られているどのような方法でも用いることができ、以下にペースト塩ビ粒子の製造方法として知られている方法を例示として示す。
【0015】
例えば、塩化ビニル単量体を単独で又は塩化ビニル単量体と共重合可能な不飽和ビニル単量体と塩化ビニル単量体の混合物を、脱イオン水、界面活性剤、水溶性重合開始剤と共に緩やかな撹拌下で重合を行う乳化重合法、乳化重合法で得られた粒子をシードとして用い乳化重合を行うシード乳化重合法、塩化ビニル単量体を単独で又は塩化ビニル単量体と共重合可能なビニル単量体と塩化ビニル単量体の混合物を、脱イオン水、界面活性剤、必要に応じて高級アルコール等の乳化補助剤、油溶性重合開始剤をホモジナイザー等で混合分散した後、緩やかな撹拌下で重合を行うミクロ懸濁重合法、ミクロ懸濁重合法で得られた油溶性重合開始剤を含有するシードを用い重合を行うシードミクロ懸濁重合法等を挙げることができる。その際の不飽和ビニル単量体としては、塩化ビニルと共重合体を形成するものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、酢酸ビニルモノマーや、スチレンモノマー、α-メチルスチレンモノマー、ヒドロキシスチレンモノマー、クロルスチレンモノマー等のスチレンモノマー類;アクリロニトリルモノマー、メタアクリロニトリルモノマー等のアクリロニトリルモノマー類;メチル(メタ)アクリル酸エステルモノマー、エチル(メタ)アクリル酸エステルモノマー、ブチル(メタ)アクリル酸エステルモノマー等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー類;(メタ)アクリル酸モノマー、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩、(メタ)アクリルアミド、エチレンモノマー、プロピレンモノマー、塩化ビニリデンモノマー等を例示でき、これらの不飽和ビニル単量体を単独又は二種以上を併用してもよい。また、ペースト塩ビの市販品として、例えば(商品名)リューロンペースト(東ソー(株)製)、(商品名)カネビニルペースト((株)カネカ製)、(商品名)ZEST(新第一塩ビ(株)製)等を挙げることができる。
【0016】
該塩化ビニル系ポリマー粒子の含有量は、塩素濃度として0.5~5.0重量%に相当する量であり、特に取扱い性に優れ製品外観に優れる軟質ポリウレタンフォームとなることから0.5~3.0重量%に相当する量であることが好ましい。ここで0.5重量%未満に相当するものである場合、フォームの硬度物性や難燃性能が低下したものとなる。一方、5.0重量%を超える量に相当するものである場合、フォームとする際の連通した発泡が困難となる、硬度が高くなる、等の軟質フォームとしての適正を有さないものとなる。
【0017】
本発明の軟質ポリウレタンフォームを構成するリン酸エステル系難燃剤としては、特に制限はなく、例えばトリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、テトラキス(2-クロロエチル)エチレンジホスフェート、2,2-ビス(クロロメチル)-1,3-プロパンビス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、2,2-ビス(クロロメチル)トリメチレンビス(ビス(2-クロロエチル)ホスフェート)、ポリオキシアルキレンビスジクロロアルキルホスフェート、含ハロゲン系ホスフェートホスホネートオリゴマーエステル(大八化学工業社製、(商品名)CR-504L、CR-530、CR-570、CR-509等)、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリ-2-エチルヘキシルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、ジメチルメチルホスフォネート、ジエチルフェニルホスフォネート、ジメチルフェニルホスフォネート、レゾルシノールジフェニルホスフェート、亜リン酸エチル、亜リン酸ジエチル、エチルエチレンフォスフェートオリゴマー(ICL製、(商品名)FR-PNX等)、芳香族系リン酸オリゴマーエステル(レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジキシレニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート、大八化学工業社製、(商品名)CR-735等)、リン酸化合物に水酸基を有するいわゆる含リンポリオール(アデカ製、(商品名)FC-450;ICL製、(商品名)ファイロール6、クラリアント製、(商品名)OP-550等)等の、ハロゲン系リン酸エステル又は非ハロゲン系リン酸エステル及びそのオリゴマーが挙げられる。中でも耐加水分解性に優れ、加工性に優れることからトリス(2-クロロプロピル)ホスフェート及び含ハロゲン系ホスフェートホスホネートオリゴマーエステルが好ましい。
【0018】
該リン酸エステル系難燃剤の含有量は、リン濃度0.1~1.5重量%に相当する量であり、特に難燃性と圧縮硬度物性のバランスに優れる軟質ポリウレタンフォームとなることからリン濃度0.3~1.2重量%に相当する量であることが好ましい。ここでリン濃度0.1重量%未満に相当する量である場合、フォームは難燃性に劣るものとなる。一方、リン濃度1.5重量%を超える量に相当する場合、可塑化作用によりフォームの圧縮硬度物性が低下し、フォームの圧縮硬度低下や収縮を引き起こす。
【0019】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、特に自動車、二輪車等の内燃機関搭載車両用のシートクッション材等として優れるものとなることから、FMVSSNo.302燃焼試験に準拠した判定が着火しない又は自消であるものが好ましい。なお、ここでの自消とは、単に自然と消化されることを意味するものではなく、燃焼距離51mm以内かつ60秒以内で自然と自消されることを意味するものである。
【0020】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、特に難燃性と硬度とのバランスに優れる軟質フォームとなることから、見掛け密度が15~40kg/mの範囲にあることが好ましく、特に25~35kg/mのものであることが好ましい。
【0021】
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法としては、ポリウレタンフォームの製造方法として知られている方法を用いることができ、例えばイソシアネート成分(A)、ポリオール成分(B)、触媒(C)、発泡剤(D)及び難燃剤(E)、更に場合によっては少なくとも整泡剤(F)等を含むポリウレタンフォーム用組成物を調製し、イソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)とを重付加してポリウレタンを形成しながら発泡を行う発泡成形により軟質ポリウレタンフォームとする方法を挙げることができる。
【0022】
該イソシアネート成分(A)としては、少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物を挙げることができ、例えば2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、それらとポリオールとの反応によるイソシアネート含有プレポリマー、及びこれらの二種以上の混合物等が挙げられる。さらに、これらのイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、アミド基、イミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基又はオキサゾリドン基含有変性物)やポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等の縮合体(多核体と称されることもある)をも挙げることができる。中でも特に柔軟性、圧縮硬度に優れる軟質ポリウレタンフォームとなることから、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、その変性物であることが好ましい。
【0023】
該ポリオール成分(B)としては、イソシアネート成分(A)と重付加してポリウレタンを形成するものであればよく、ポリオールと称される範疇に属するものであり、例えば、従来公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール等を挙げることができ、中でも特に柔軟性、圧縮硬度に優れる軟質ポリウレタンフォームとなることからポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが望ましい。さらに、硬度、耐久性の指標である圧縮残留歪みに優れるフォームとなることから数平均分子量1000~10000で、公称官能基数2以上のものがより望ましい。なお。公称官能基数とは、ポリオールの重合反応中に副反応が生じないと仮定した場合の理論平均官能基数(分子当たりの活性水素原子の数)を示す。
【0024】
ポリエーテルポリオールとしては、特に限定するものではなく、例えば、少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類;エチレンジアミン等のアミン類;エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等が例示される。)を出発原料として、これとアルキレンオキサイド(エチレンオキシドやプロピレンオキシド等が例示される。)との付加反応により製造されたもの等が挙げられる(例えば、Gunter Oertel,’’Polyurethane Handbook’’(1985) Hanser Publishers社(ドイツ),p.42-53に記載の方法参照)。
【0025】
ポリエステルポリオールとしては、特に限定するものではなく、例えば、重縮合型ポリエステル系ポリオールであるアジピン酸とエチレングリコールからなるポリエステルポリオール等の二塩基酸とグリコールの反応から得られるものや、ラクトン系ポリエステルポリオールのポリカプロラクトンポリオール等、更にはナイロン製造時の廃物、トリメチロールプロパン、ペンタエリストールの廃物、フタル酸系ポリエステルの廃物、廃品を処理し誘導したポリエステルポリオール等が挙げられる(例えば、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987)日刊工業新聞社 p.117の記載参照)。
【0026】
ポリマーポリオールとしては、特に限定するものではなく、例えば、前記ポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等)をラジカル重合触媒の存在下に反応させた重合体ポリオール等が挙げられる。
【0027】
これらのポリオールの市販品としては、例えば、サンニックス(商品名、三洋化成工業株式会社製)、エクセノール(商品名、旭硝子株式会社製)、アクトコール(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製)、VORANOL(商品名、DOW社製)等を挙げることができる。
【0028】
なお、本発明の軟質ポリウレタンフォームを調製する際にその取扱い性に優れることから、塩化ビニル系ポリマー粒子はポリオール成分(B)に分散したものとして取り扱うことが好ましく、さらに触媒(C)、発泡剤(D)、難燃剤(E)、整泡剤(F)等を分散したものであってもよい。
【0029】
該触媒(C)としては、各種のウレタン化触媒として知られているものを挙げることができ、例えばトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモリホリン、N-エチルモリホリン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザ-ビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、さらにこれらの有機酸塩;スタナスオクトエート、ナフテン酸亜鉛等の有機金属化合物;ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチル-N-ヘキサノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、ヒドロキシメチルトリエチレンジアミン、N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシエチル-ビスアミノエチルエーテル等の活性水素を有すアミン触媒;等を挙げることができ、その中でもウレタン化の反応性と発泡性に優れるものとなることからトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミンであることが好ましい。また、その際の触媒(C)の量としては、発泡性に優れる軟質ポリウレタンフォームを効率的に得ることができることからポリオール成分(B)100重量部に対して、0.01~10重量部が好ましい。
【0030】
該発泡剤(D)としては、各種発泡剤として知られているものを用いることができ、中でもポリウレタンフォームの発泡剤としては、イソシアネート基との反応により炭酸ガスを発生し、該炭酸ガスにより炭酸ガス発泡を可能とすることから水を挙げることができる。また、水と付加的に任意の発泡剤を使用してもよく、例えばシクロペンタンやイソペンタン等の低沸点有機化合物を挙げることができる。さらに、ガスローディング装置を用いて原液中に空気や窒素ガスや液化二酸化炭素を混入溶解させて発泡することもできる。発泡剤(D)として水を使用する際のその量は、低見掛け密度の発泡体を安定し提供することが容易となることからポリオール成分(B)100重量部に対して0.5~10重量部であることが好ましく、特に4.0~8.0重量部、更に5.0~8.0重量部であること好ましい。
【0031】
また、該難燃剤(F)として、上記した塩化ビニル系ポリマー粒子及びリン酸エステル系難燃剤を用いるものであり、場合によって他の難燃剤を更に併用することもできる。そして、その際の塩化ビニル系ポリマー粒子の量としては、難燃性、発泡性、柔軟性に優れる軟質ポリウレタンフォームを効率的に得ることができることからポリオール成分(B)100重量部に対して、1~10重量部が好ましい。また、リン酸エステル難燃剤の量としては、難燃性、発泡性、柔軟性に優れる軟質ポリウレタンフォームを効率的に得ることができることからポリオール成分(B)100重量部に対して、3~25重量部が好ましい。
【0032】
場合によっては用いてもよい整泡剤(F)としては、通常の界面活性剤が使用され、有機珪素系の界面活性剤が好適に使用でき、例えば、(商品名)SRX-280A、SZ-1327、SZ-1325、SZ-1336、SZ-3601(東レ・ダウコーニング社製);(商品名)Y-10366、L-5309(モメンティブ社製)、(商品名)B-8724LF2、B-8715LF2(エボニック社製);(商品名)F-122(信越化学社製)等が挙げられ、これら整泡剤(F)の量としては、ポリオール成分(B)100重量部に対し0.1~3重量部であることが好ましい。
【0033】
さらに、沈降防止剤や、必要に応じて、添加剤として、破泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料・染料、抗菌剤・抗カビ剤等の公知の各種添加剤等を用いることができる。
【0034】
該軟質ポリウレタンフォーム用組成物を調製する際のイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)の割合としては、気泡が連通した軟質フォームを効率的に得ることができることから全イソシアネート基と水を含む全活性水素基とのモル比(NCO/活性水素)として、0.7~1.4(イソシアネートインデックス(NCOINDEX)=70~140)であることが好ましく、フォームの耐久性や成形サイクルの良好な範囲として0.7~1.2(NCOINDEX=70~120)がより好ましい。
【0035】
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法としては、該軟質ポリウレタンフォーム用組成物をスラブ発泡、注入モールド発泡、スプレー発泡、連続生産パネル発泡等の公知発泡方法に供する製造方法を挙げることができ、一般な種々の用途、例えば建築、土木関係の断熱材や構造材;電気機器関係では、冷凍庫、冷蔵庫、冷凍ショーケース等の断熱材;プラントや船舶関係では、LPG、LNGタンカーやパイプラインの断熱材;車両関係では、保冷庫や保冷車の断熱材等、また寝具や自動車等のシート、クッション材、吸音材、制振材、工事用床材等に使用でき、なかでも、寝具や自動車等のシート、クッション材に使用される。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、特に塩化ビニル系ポリマー粒子及びリン酸系エステル難燃剤を含むことにより難燃性と圧縮硬度のバランスに優れた軟質ポリウレタンフォームとなり、寝具や自動車等のシート、クッション材に代表される用途に用いられるものとなる。
【実施例0037】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0038】
<発泡評価>
実施例により得られた軟質ポリウレタンフォームの目視観察により発泡評価を行った。評価基準は以下の通りとした。
〇;ウレタンフォームが収縮せず、内部に亀裂がない状態。
×;ウレタンフォームの収縮や内部亀裂が発生した状態。
【0039】
<フォームの見掛け密度>
実施例により得られた軟質ポリウレタンフォームを一日保管してからコア部を100mm×100mm×50mmの寸法にカットし、寸法、重量を測定して見掛け密度を測定した。
【0040】
<寸法安定性の評価>
実施例により得られた軟質ポリウレタンフォームを一日保管してからコア部を50(縦)×50(横)×30(厚み)mmの直方体に切り出し、縦、横、厚み、各方向の寸法(T1)を測定し、高温条件(70℃)で20時間経過した後の各方向の寸法(T2)を測定。寸法変化(T2-T1)を測定した。評価基準は以下の通りとした。
〇;いずれの方向も3.5%以下。
×;3.5%以上の方向がある。
【0041】
<難燃性の評価>
実施例により得られた軟質ポリウレタンフォームを一日保管してから100×200×10mmサイズのサンプルを切り出し、FMVSSNo.302燃焼試験に従い難燃性を測定した。
【0042】
評価基準は以下の通りとした。
〇;試験片に着火しない又は燃焼距離51mm以内かつ60秒以内で自消する。
×;燃焼距離が51mmを越える、又は、60秒を越えて燃焼する。
【0043】
<25%圧縮硬度>
実施例により得られた軟質ポリウレタンフォームにより、JIS K6400-2 D法を準拠し25%圧縮硬度を測定した。
【0044】
実施例及び比較例で用いた原料としては、それぞれ以下のものを使用した。
ポリオールA:ポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製、(商品名)GP-3050V:官能基数3、水酸基価56.4mgKOH/g)。
難燃剤A:塩化ビニルポリマー粒子(東ソー社製、(商品名)リューロンペースト860)。
難燃剤B:含ハロゲン縮合リン酸エステル(大八化学工業社製、(商品名)CR-504L:リン濃度10.8wt%)。
発泡剤A:水。
整泡剤A:シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製、(商品名)SRX280A)。
触媒A:トリエチレンジアミンのジプロピレングリコール溶液(東ソー社製、(商品名)TEDA-L33)。
触媒B:オクタン酸第一スズ(EVONIK社製、(商品名)DABCOT-9)。
イソシアネート:トリレンジイソシアネート(東ソー社製、(商品名)コロネートT-80、NCO含量=48.2%)。
【0045】
実施例1
室温下(20~25℃)にて、ポリオールA100重量部に対し、触媒A0.24重量部、触媒B0.23重量部、整泡剤A1重量部、発泡剤A4.1重量部、難燃剤A2.5重量部及び難燃剤B18.5重量部を混合しポリオール組成物を調製し20℃に調温した。そして、ポリオールA100重量部に対して20℃に調温したイソシアネート48.7重量部を加え、攪拌速度3500rpmで10秒間攪拌混合することにより軟質ポリウレタンフォーム用組成物を得た。
【0046】
軟質ポリウレタンフォーム用組成物を240×240×240mmの上部開放容器に注ぎ、フリー発泡成形を行い、気泡が連通した軟質ポリウレタンフォームを得た。
【0047】
軟質ウレタンフォームの評価結果を表1に示す。いずれも圧縮硬度、寸法安定性及び難燃性は良好であった。
【0048】
実施例2~4
軟質ポリウレタンフォーム用組成物の配合割合を表1に示すものとした以外は、実施例1と同様の方法により、軟質ポリウレタンフォームを製造し、評価を行った。
【0049】
軟質ウレタンフォームの評価結果を表1に示す。いずれも圧縮硬度、寸法安定性及び難燃性は良好であった。
【0050】
比較例1~3
ポリウレタンフォーム用組成物の配合割合を表1に示すものとした以外は、実施例1と同様の方法により、ポリウレタンフォームを製造し、評価を行った。
【0051】
ウレタンフォームの評価結果を表1に示す。
【0052】
ポリウレタンフォーム用組成物の配合割合を表1に示すものとした以外は、実施例1と同様の方法により、ポリウレタンフォームを製造し、評価を行った。
【0053】
ウレタンフォームの評価結果を表1に示す。
【0054】
比較例1のポリウレタンフォームは、自消性がなく難燃性に劣るものであった。比較例2のポリウレタンフォームは、塩化ビニル系ポリマー粒子の配合量が少なく、圧縮硬度、寸法安定性に劣るものであった。比較例3により得られたポリウレタンフォームは、リン酸エステル系難燃剤の配合量が少なく、60秒を越えて燃焼し難燃性に劣るものであった。
【0055】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、圧縮硬度と難燃性に優れる軟質ポリウレタンフォームを提供するものであり、該軟質ポリウレタンフォームは、ポリウレタン樹脂の製造工業、更にはその製品として好適な使用が期待されるものである。