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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157141
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】ガス流調節器、及び、往復動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/08 20060101AFI20231019BHJP
   F04B 39/12 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
F04B39/08 A
F04B39/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066850
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】冨山 靖司
【テーマコード(参考)】
3H003
【Fターム(参考)】
3H003AA02
3H003AB07
3H003AC03
3H003BD12
3H003BD13
3H003CC02
3H003CD03
3H003CD04
3H003CE05
(57)【要約】
【課題】往復動圧縮機における油上がりを抑制できるガス流調節器、及び、往復動圧縮機を提供する。
【解決手段】ガス流調節器は、吸入室および吸入室の下方に位置するクランク室を有する往復動圧縮機のためのガス流調節器である。ガス流調節器は、クランク室またはクランク室と連通可能な第1空間のいずれかである第1チャンバと、吸入室または吸入室と連通可能な第2空間のいずれかである第2チャンバとを隔てる隔壁に取り付けられ、隔壁に設けられた油戻し孔を第1チャンバと第2チャンバとの圧力差によって第1チャンバ側から塞ぐように構成された板バネを備える。板バネは、油戻し孔よりも小径のバネ孔を有する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入室および前記吸入室の下方に位置するクランク室を有する往復動圧縮機のためのガス流調節器であって、
前記クランク室または前記クランク室と連通可能な第1空間のいずれかである第1チャンバと、前記吸入室または前記吸入室と連通可能な第2空間のいずれかである第2チャンバとを隔てる隔壁に取り付けられ、前記隔壁に設けられた油戻し孔を前記第1チャンバと前記第2チャンバとの圧力差によって前記第1チャンバ側から塞ぐように構成された板バネを備え、
前記板バネは、前記油戻し孔よりも小径のバネ孔を有する
ガス流調節器。
【請求項2】
前記板バネは、前記クランク室である前記第1チャンバと、前記吸入室である前記第2チャンバとを隔てる前記隔壁に取り付けられ、
前記板バネを収容するように前記隔壁に設けられ、前記板バネを収容する空間である前記第1空間と前記クランク室とを連通可能な開口孔を含むカバーを備える請求項1に記載のガス流調節器。
【請求項3】
前記カバーは、前記開口孔が設けられるカバー本体を含み、
前記カバー本体は、前記油戻し孔の軸方向に前記油戻し孔と並ぶように配置される
請求項2に記載のガス流調節器。
【請求項4】
前記隔壁は、前記吸入室及び前記クランク室を収容するハウジングの一部を構成すると共に、前記第1空間である前記第1チャンバと前記吸入室である前記第2チャンバとを隔て、
前記ガス流調節器は、前記隔壁の外表面に取り付けられる前記板バネを収容するように前記隔壁に設けられる外側カバーを備え、
前記隔壁は、前記隔壁と前記外側カバーとによって規定される前記第1空間である前記第1チャンバと、前記吸入室である前記第2チャンバとを隔てる
請求項1に記載のガス流調節器。
【請求項5】
前記吸入室及び前記クランク室を収容するハウジングから離れた位置に設けられる前記隔壁と、
前記隔壁に取り付けられる前記板バネを収容するように設けられると共に、前記隔壁と協働して前記第1空間を規定する隔壁カバーと、
前記クランク室と前記隔壁とに接続される第1連通管と、
前記吸入室と前記隔壁とに接続され、内側に前記第2空間を規定する第2連通管と、
を備え、
前記隔壁は、前記第1空間と前記第1連通管とに連通可能な前記油戻し孔と、前記第2空間と連通可能な連通孔とを含み、前記第1空間である前記第1チャンバと前記第2空間である前記第2チャンバとを隔てる、
を備える請求項1に記載のガス流調節器。
【請求項6】
前記油戻し孔の内径は、15mm以上である
請求項1乃至5の何れか1項に記載のガス流調節器。
【請求項7】
吸入室と、
前記吸入室の下方に位置するクランク室と、
前記クランク室内にある油の前記吸入室への流入を調整するためのガス流調節器と、
前記クランク室または前記クランク室と連通可能な第1空間のいずれかである第1チャンバと、前記吸入室または前記吸入室と連通可能な第2空間のいずれかである第2チャンバとを隔てる隔壁と
を備え、
前記ガス流調節器は、
前記隔壁に取り付けられ、前記隔壁に設けられた油戻し孔を前記第1チャンバと前記第2チャンバとの圧力差によって前記第1チャンバ側から塞ぐように構成された板バネを含み、
前記板バネは、前記油戻し孔よりも小径のバネ孔を有する
往復動圧縮機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス流調節器、及び、往復動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
往復動圧縮機は、例えば冷凍サイクルに適用され、冷媒ガスの圧縮に用いられる。例えば特許文献1に記載されているように、往復動圧縮機のハウジング内には、吸入室、吐出室、シリンダ及びクランク室が区画され、クランク室の下部が潤滑油を貯留する油貯留室として利用される。シリンダ内には、ピストンが往復動可能に配置され、クランク室には軸受を介して回転可能にクランク軸が配置される。ピストンはクランク軸と連接棒を介して連結され、クランク軸の回転運動がピストンの往復運動に変換される。シリンダと吸入室及び吐出室は、吸入弁及び吐出弁を介して互いに連通可能である。往復動圧縮機の運転中、クランク軸に外部から動力が供給されてピストンが往復運動すると、圧縮対象の冷媒ガスは、吸入室から吸入弁を通じてシリンダ内に吸入されてから圧縮され、そして、吐出弁を通じて吐出室に吐出される。
【0003】
シリンダ内での冷媒ガスの圧縮中に、シリンダの内壁面とピストンリングの隙間から、圧縮対象の冷媒ガスが漏れてクランク室内に流入する。この冷媒ガスによってクランク室の圧力が高くなることを防止するために、クランク室と吸入室を連通する均圧路が設けられている。従って、圧縮機の通常運転(負荷運転)時には、均圧路を通じて、クランク室内の冷媒ガスが吸入室に返戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4887514号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記往復動圧縮機では、以下に示す課題の少なくとも1つが生じ得る。
例えば、上記往復動圧縮機の始動時または冷媒ガスの蒸発圧力の低下時など、吸入室における圧力が低下する場合がある。この場合、クランク室と吸入室との圧力差が大きくなり、クランク室から吸入室に流れる冷媒ガスが増大し、クランク室が急激に減圧するおそれがある。結果、油貯留室の潤滑油に溶け込んでいた冷媒がガス化してオイルフォーミングが起こり、微粒化した潤滑油が冷媒ガスと共に吸入室へ流れ、往復動圧縮機の油上がりが発生するおそれがある。
また、往復動圧縮機の運転中、クランク室内では各軸受の潤滑後の潤滑油が油滴となり飛散する。この飛散している潤滑油の油滴は、冷媒ガスの流れとともに均圧路および油戻し孔を通じて吸入室に流入する。吸入室に溜まった潤滑油は、シリンダに吸入されてから吐出される。吸入室に流入する潤滑油の量は、冷媒ガスの吸入室への返戻速度に応じて増大するため、返戻速度が大であると、往復動圧縮機から吐出される潤滑油の量が多くなり、往復動圧縮機内の潤滑油の量が減少し、油上がりを生ずるおそれがある。
【0006】
本開示の目的は、往復動圧縮機における油上がりを抑制できるガス流調節器、及び、往復動圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係るガス流調節器は、
吸入室および前記吸入室の下方に位置するクランク室を有する往復動圧縮機のためのガス流調節器であって、
前記クランク室または前記クランク室と連通可能な第1空間のいずれかである第1チャンバと、前記吸入室または前記吸入室と連通可能な第2空間のいずれかである第2チャンバとを隔てる隔壁に取り付けられ、前記隔壁に設けられた油戻し孔を前記第1チャンバと前記第2チャンバとの圧力差によって前記第1チャンバ側から塞ぐように構成された板バネを備え、
前記板バネは、前記油戻し孔よりも小径のバネ孔を有する。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係る往復動圧縮機は、
吸入室と、
前記吸入室の下方に位置するクランク室と、
前記クランク室内にある油の前記吸入室への流入を調整するためのガス流調節器と、
前記クランク室または前記クランク室と連通可能な第1空間のいずれかである第1チャンバと、前記吸入室または前記吸入室と連通可能な第2空間のいずれかである第2チャンバとを隔てる隔壁と
を備え、
前記ガス流調節器は、
前記隔壁に取り付けられ、前記隔壁に設けられた油戻し孔を前記第1チャンバと前記第2チャンバとの圧力差によって前記第1チャンバ側から塞ぐように構成された板バネを含み、
前記板バネは、前記油戻し孔よりも小径のバネ孔を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、往復動圧縮機における油上がりを抑制できるガス流調節器、及び、往復動圧縮機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る往復動圧縮機の概略的な縦断面図である。
図2】第1の実施形態に係る往復動圧縮機の概略図である。
図3】第1の実施形態に係るガス流調節器の概略図である。
図4】板バネの構成を示す概略図である。
図5】第1の実施形態に係るガス流調節器の別の概略図である。
図6】第2の実施形態に係るガス流調節器の概略図である。
図7】第3の実施形態に係る往復動圧縮機の一部を示す概略図である。
図8】第3の実施形態に係るガス流調節器の概略図である。
図9】第4の実施形態に係る往復動圧縮機を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0012】
<1.往復動圧縮機1の概要>
図1は、本開示の一実施形態に係る往復動圧縮機1の概略的な縦断面図である。往復動圧縮機1は、冷凍サイクル(図示外)に組み込まれ、冷媒ガスGを圧縮するように構成される。冷媒ガスGは、フロン、アンモニアまたは二酸化炭素などが用いられるが、特に限定されない。冷凍サイクルは、例えば1次冷媒回路と2次冷媒回路とによって構成されており、往復動圧縮機1は1次冷媒回路に組み込まれてもよい。他の例として、冷凍サイクルは高元冷凍サイクルと低元冷凍サイクルとによって構成され、両サイクルのそれぞれに往復動圧縮機1が組み込まれてもよい。以下では、往復動圧縮機1が、複数のピストン36及び複数のシリンダ32を有する多気筒往復動圧縮機を例示するが、本開示の往復動圧縮機1は単気筒往復動圧縮機であってもよい。
【0013】
往復動圧縮機1はハウジング22を備え、ハウジング22には冷媒ガスGの吸入ポート24及び吐出ポート26が設けられている。さらにハウジング22の内部には、吸入ポート24と連通する吸入室28、吐出ポート26と連通する吐出室30、吸入弁と吐出弁が設けられるシリンダ32、及び、シリンダ32の下方に位置するクランク室34が設けられている。シリンダ32内にはピストン36が往復動可能に配置され、シリンダ32の内壁面とピストン36とによって圧縮室が区画される。圧縮室は、吸入弁を介して吸入室28と連通可能であり、また吐出弁を介して吐出室30と連通可能である。
【0014】
シリンダ32の一端はクランク室34に連通しており、ピストン36に連結された連接棒38がクランク室34内まで延びている。クランク室34は、吸入室28の下方に位置しており、両室は、ハウジング22の一部を構成する仕切壁29によって互いに隔てられている。クランク室34内には、クランク軸40が回転可能に配置され、連接棒38がクランク軸40に連結されている。より詳細には、クランク軸40は、ラジアル軸受としてのすべり軸受を介してハウジング22によって回転可能に支持されている。また、連接棒38とピストン36及びクランク軸40との間にも、ラジアル軸受としてのすべり軸受が介装されている。
【0015】
クランク軸40の一端部は、ハウジング22を気密に貫通しており、ハウジング22の外側に設けられる駆動源に連結される。駆動源から付与される動力によってクランク軸40が回転すると、シリンダ32内をピストン36が往復動する。これにより、冷媒ガスGの吸入行程、圧縮行程、及び吐出行程が順に繰り返し実行される。
【0016】
往復動圧縮機1は、運転中、ラジアル軸受やピストン36等の摺動部に潤滑油を供給するように構成される。具体的には、クランク室34の底部に、潤滑油の油貯留室が形成されている(図1図2では、貯留される潤滑油が符号Lによって示されている)。往復動圧縮機1は、クランク軸40と連動して動作するオイルポンプ42を備え、オイルポンプ42によって油貯留室から吸い上げられた潤滑油が、ハウジング22の内部又は外部に設けられた油路を通じて、各摺動部に供給される。油路は、例えば、図1中に点線で示したように、クランク軸40の内部にも形成されている。なお、本実施形態では、潤滑油を浄化するためのオイルフィルタ46,48が油貯留室内及びハウジング22の外にそれぞれ設置されている。
【0017】
<2.油粒子の吸入室28への流入>
図1で例示される往復動圧縮機1の運転中、ピストン36とシリンダ32の内壁面の間から、冷媒ガスGが漏れ出し、クランク室34に流入する。冷媒ガスGの流入に伴ってクランク室34の圧力が吸入室28の圧力よりも高くなると、クランク室34内の冷媒ガスGは、油戻し孔39(図2参照)を通過して吸入室28に流れる。この冷媒ガスGには、クランク室34内で浮遊する潤滑油の油粒子が混入しているため、吸入室28の内部に潤滑油が流れる。この潤滑油は油戻し孔39を介してクランク室34に戻り、油貯留室に流入する。すなわち、本発明における油戻し孔39は、後述する孔径の特徴を備えることで、吸入室28に滞留する潤滑油をクランク室34に戻す役割を有すると共に、吸入室28とクランク室34に生じる圧力差を低減させる均圧孔としての役割も有する。両室の圧力を均等化させることを専らの目的として仕切壁29の頂上部(図2の二点鎖線Mで示す領域)に設けられる従来型の均圧孔をなくし、その機能を油戻し孔39が担うことで、ハウジング22の構成を簡易化できる。
なお、油戻し孔39は、仕切壁29のうちで、頂上部よりも下にある部位に設けられることが好ましい。より具体的な一例として、油戻し孔39は、吸入室28の最下部に配置される。また、本開示は、油戻し孔39と共に、油戻孔が仕切壁29の頂上部に設けられる実施形態を除外しない。
【0018】
<3.ガス流調節器50の概要>
図1で例示される往復動圧縮機1が始動するとき、あるいは、冷凍サイクルの熱負荷の低下に伴って冷媒ガスGの蒸発圧力が低下するとき、あるいは冷凍サイクルの熱負荷の増加に伴って往復動圧縮機の容量制御を上げたとき、吸入室28における圧力はその前の状態よりも低くなる。この場合、クランク室34から吸入室28への冷媒ガスGの流れが急になる結果、クランク室34内で浮遊する潤滑油の微粒子が冷媒ガスGとともに吸入室28へ通常運転時よりも多く流出する。また、クランク室34の急激な減圧は規定条件下においてはオイルフォーミングを発生させることもある。この場合、油貯留室の油面で泡となった潤滑油が微粒子となって冷媒ガスGの流れの増大とともに飛散しやすくなり、微粒化した潤滑油が通常時よりもさらに多く吸入室28に流出する。本発明者は、これらの場合におけるクランク室34から吸入室28への冷媒ガスGの流れを緩やかにすれば、油粒子の流出による油上りが抑制されるという着想のもと、本開示のガス流調節器50を想到するに至った。ガス流調節器50は、クランク室34の圧力が吸入室28の圧力と比較してある程度高くなった場合に油戻し孔39を部分的に塞ぎ、クランク室34から吸入室28への冷媒ガスGの流れを緩やかにする。そして、ガス流調節器50は、クランク室圧力と吸入室圧力との圧力差が規定値を下回ると、油戻し孔39を開放する。往復動圧縮機1に搭載されるガス流調節器50の個数は、1個であってもよいし、2個以上であってもよい。
【0019】
以下では、第1の実施形態に係るガス流調節器50A、第2の実施形態に係るガス流調節器50B、第3の実施形態に係るガス流調節器50C、および、第4の実施形態に係るガス流調節器50Dを順に説明する。
【0020】
<4.第1の実施形態に係るガス流調節器50A(50)>
図2は、第1の実施形態に係る往復動圧縮機1A(1)の概略図である。図3は、第1の実施形態に係るガス流調節器50A(50)の概略図である。図4は、板バネ90の構成を示す概略図である。なお、図2では、連接棒38およびオイルフィルタ46など図1で例示した往復動圧縮機1の幾つかの構成要素の図示を省略する。
【0021】
図2で例示されるように、往復動圧縮機1A(1)の構成要素であるガス流調節器50A(50)は、第1チャンバ61A(61)と第2チャンバ62A(62)とを隔てる隔壁99A(99)の第1チャンバ61A(61)側に設けられる。第1実施形態においては、第1チャンバ61Aはクランク室34であり、第2チャンバ62Aは吸入室28であり、隔壁99Aは仕切壁29の一部を構成する。
【0022】
図3図4に示すように、ガス流調節器50Aは、複数の締結部材98と、複数の締結部材98によって隔壁99Aに取り付けられる板バネ90とを備える。板バネ90は、一例としてネジであってもよい締結部材98によって隔壁99Aに取付けられる取付部91と、取付部91に接続される一端を有する湾曲部92と、取付部91から遠ざかる方向へ湾曲部92の他端から延在する開閉部93とを含む。取付部91は、隔壁99Aを構成する第1チャンバ61A側の壁面と当接する。油戻し孔39と対向する開閉部93は、油戻し孔39よりも小径のバネ孔95を有する。
【0023】
図5は、第1の実施形態に係るガス流調節器50Aの作動状態を示す概略図である。吸入室28の圧力低下に伴って、第1チャンバ61Aと第2チャンバ62Aとの圧力差が増大するにつれて、板バネ90は弾性変形を開始する。開閉部93は隔壁99Aに徐々に近づき、やがて隔壁99Aに当接して油戻し孔39を第1チャンバ61A側から塞ぐ。第1チャンバ61A内の油粒子を含んだ冷媒ガスGは、バネ孔95と油戻し孔39を順に通過しないと、第2チャンバ62Aに到達できなくなる。油戻し孔39が塞がれてから所定時間(例えば30分から2時間程度の時間)が経過すると、第1チャンバ61Aの圧力は十分に小さくなり、弾性変形していた板バネ90は自然状態に復帰する(図3参照)。これにより、油戻し孔39は開放される。
【0024】
上記構成によれば、吸入室28の圧力低下に伴って、第1チャンバ61Aと第2チャンバ62Aの圧力差が増大すると、板バネ90が弾性変形し、油戻し孔39が塞がれる。クランク室34内の冷媒ガスGは、バネ孔95を通過しないと吸入室28に到達できない。油戻し孔39よりも小径なバネ孔95における冷媒ガスGの流れの圧損は大きいので(つまり、バネ孔95における流路抵抗が大きいので)、クランク室34から吸入室28へ冷媒ガスGが急激に流れるのを抑制でき、クランク室34における急激な減圧が抑制される。これにより、往復動圧縮機1における油粒子の流出による油上がりを抑制することができる。
なお、他の実施形態に係る板バネ90は湾曲部92を備えなくてもよく、この場合、開閉部93が取付部91の一端に接続されてもよい。この場合であっても、往復動圧縮機1における油上がりを抑制できるという利点は得られる。
【0025】
本開示の一実施形態に係るバネ孔95は1.4mm以下の内径を有する。バネ孔95は円形孔であることが好ましいが、多角形状であってもよい。バネ孔95が多角形状の孔である場合には、最大内径が1.4mm以下となる。上記構成によれば、バネ孔95が1.4mm以下であることで、吸入室28への冷媒ガスGの流れがさらに抑制される。これにより、油上がりをさらに抑制することができる。
【0026】
本開示の一実施形態に係るバネ孔95は0.6mm以上の内径を有する。バネ孔95は円形孔であることが好ましいが、多角形状であってもよい。バネ孔95が多角形状の孔である場合には、最大内径が0.6mm以上である。上記構成によれば、クランク室34から吸入室28に冷媒ガスGが流れる場合において、一定程度の冷媒ガスGのバネ孔95での流れを確保できる。これにより、クランク室34の圧力が吸入室28の圧力に近くなるまでに要する時間を短縮化できる。
【0027】
本開示の一実施形態に係る油戻し孔39の内径は15mm以上である。油戻し孔39は一例として円形状である。上記構成によれば、冷媒ガスGと潤滑油との境界におけるテイラー不安定波長(テイラー臨界波長)以上の内径が油戻し孔39において確保されやすくなるので、油戻し孔39における吸入室28に向けた冷媒ガスGの流れと、油戻し孔39におけるクランク室34に向けた潤滑油の流れとの双方が同時に起こることができる。従って、潤滑油が油戻し孔39を閉塞して冷媒ガスGが流れることができない不具合を抑制することができる。
また、油戻し孔39の内径が15mm以上であることで、ガス流調節器50Aが油戻し孔39を塞いでいないとき、油戻し孔39は、吸入室圧力とクランク室圧力を均等化させる均圧孔としての機能を十分に発揮することができる。従って、本開示では仕切壁29の頂部に、特許文献1で開示されるような均圧穴を設ける必要がなく、仕切壁29の構成を簡易化できる。なお、均圧穴は、油粒子を含む冷媒ガスGがクランク室34から吸入室28に流れることはできても、潤滑油がクランク室34に向けて流れることはない穴であると了解される。
【0028】
<5.第2の実施形態に係るガス流調節器50B(50)>
図6は、第2の実施形態に係るガス流調節器50B(50)の概略図である。往復動圧縮機1B(1)の構成要素であるガス流調節器50B(50)は、第1チャンバ61B(61)と第2チャンバ62B(62)とを隔てる隔壁99B(99)に設けられる。第2実施形態においては、第1チャンバ61Bはクランク室34と連通可能な後述の第1空間11B(11)であり、第2チャンバ62Bは吸入室28である。また、本例の隔壁99Bは仕切壁29の一部を構成する。
【0029】
往復動圧縮機1Bのガス流調節器50Bは、ガス流調節器50Aの構成要素に加えて、カバー70を備える。カバー70は板バネ90を収容するように隔壁99Bの外表面に取り付けられる。そして、カバー70の内側空間は、隔壁99Bの外表面に取付けられる板バネ90を収容すると共にクランク室34と連通可能な第1空間11B(11)である。カバー70は、第1空間11Bと、カバー70の外側空間であるクランク室34とを連通可能な開口孔74を含む。なお、本稿における「連通可能な」は、2つの空間の常時連通、および、バルブなどの機器の作動状態に応じた2つの空間の連通のいずれをも含む概念である(例えば、バルブが閉状態から開状態になることに伴って2つの空間が連通するようになるのであれば、これら2つの空間は連通可能であると了解される)。
開口孔74は油戻し孔39よりも大きな内径を有する。より詳細には一例として、開口孔74は、油戻し孔39の1.5倍以上且つ2.0倍以下の内径を有する。開口孔74の個数は1つであってもよいし、2以上であってもよい。
【0030】
図6では作動状態にあるガス流調節器50Bが示される。第1チャンバ61Bと第2チャンバ62Bとの圧力差によって板バネ90が弾性変形し、開閉部93が油戻し孔39を塞ぐと、クランク室34内の冷媒ガスGは、開口孔74、第1チャンバ61B、バネ孔95を順に通過しないと第2チャンバ62Bに到達できない。バネ孔95の近くを流れる冷媒ガスGは、バネ孔95の絞り作用によって、増速してバネ孔95に吸い込まれる。この点、上記構成によれば、バネ孔95よりも大きな開口孔74においては冷媒ガスGの流れが遅いので、油粒子がカバー70内側の第1チャンバ61B(第1空間11B)に到達しづらくなる。これにより、クランク室34で浮遊する潤滑油の油粒子が冷媒ガスGと共にバネ孔95に吸い込まれるのを抑制できる。また本例では、クランク室34と吸入室28との圧力差に起因する冷媒ガスGの流動を、バネ孔95における圧力損失によって十分に抑えることもできる。これにより、油上がりをさらに抑制できる。
【0031】
カバー70は、開口孔74が設けられる壁部であるカバー本体72を含む。カバー本体72は、油戻し孔39の軸方向(油戻し孔39の開口方向)に油戻し孔39と並ぶように配置される。換言すると、開口孔74は、上記の軸方向において油戻し孔39からずれた位置に配置される。上記構成によれば、クランク室34内の冷媒ガスGがバネ孔95に向かうのをカバー本体72が阻害する。これにより、冷媒ガスGに混入する油粒子がバネ孔95に到達するのも抑制される。よって、油上がりをさらに抑制できる。
【0032】
<6.第3の実施形態に係るガス流調節器50C(50)>
図7は、第3の実施形態に係る往復動圧縮機1C(1)の一部を示す概略図である。図8は、第3の実施形態に係るガス流調節器50C(50)の概略図である。往復動圧縮機1C(1)の構成要素であるガス流調節器50C(50)はハウジング22の外表面に設けられる。そして、ガス流調節器50Cの板バネ90は、第1チャンバ61C(61)と第2チャンバ62C(62)を隔てる隔壁99C(99)に設けられる。第1チャンバ61Cはクランク室34と連通する後述の第1空間11C(11)であり、第2チャンバ62Cは吸入室28である。また、本例の隔壁99Cはハウジング22の一部を構成すると共に、仕切壁29とは異なる壁である。
【0033】
ガス流調節器50Cは、隔壁99Cの外表面に取り付けられる板バネ90を収容するように隔壁99Cに設けられる外側カバー110を備える。外側カバー110によって板バネ90が収容される空間は、クランク室34と連通可能な第1空間11C(11)である。第1空間11Cは、外側カバー110と隔壁99Cとによって規定される板バネ90の収容空間である。本例の第1空間11Cは、隔壁99Cに設けられた貫通孔21を介してクランク室34と連通可能である。貫通孔21を規定する隔壁99Cの内周面の下端は、外側カバー110の内周面の下端と同じ高さ、又は、外側カバー110の内周面の下端よりも低い位置に配置される。また、本例の隔壁99Cは、第1空間11Cをクランク室34から隔てるのみならず吸入室28からも隔てており、吸入室28からクランク室34へ向けて潤滑油が流れるように構成された油戻し孔39が隔壁99Cに設けられている。第1空間11Cは、この油戻し孔39を介して吸入室28と連通可能である。なお、貫通孔21は油戻し孔39よりも大きい。
【0034】
図8で例示される往復動圧縮機1Cの油戻し機能は、図5で例示される往復動圧縮機1Aと同様である。即ち、図8で示されるクランク室34の圧力が吸入室28の圧力よりも高い場合、クランク室34内の油粒子を含む冷媒ガスGは、貫通孔21、第1空間11C、および、油戻し孔39を順に通過して吸入室28に流れる。貫通孔21が油戻し孔39よりも大きいことで、クランク室34から第1空間11Cに向かう冷媒ガスGの流速は増大しにくい。従って、潤滑油の吸入室28への流出量を低減できる。
吸入室28内の潤滑油は、油戻し孔39、第1空間11C、および、貫通孔21を順に通過してクランク室34に戻る。貫通孔21を規定する隔壁99Cの内周面の下端が、外側カバー110の内周面の下端と同じ高さ、又は、該下端よりも低い位置に配置されるので、潤滑油は外側カバー110にて滞留することなく、クランク室34に戻ることができる。
【0035】
また、ガス流調節器50Cの作動原理も、ガス流調節器50Aと同様である。即ち、吸入室28の圧力低下に伴って、第1チャンバ61C(第1空間11C)と第2チャンバ62C(吸入室28)との圧力差が増大するにつれて、板バネ90は弾性変形する。結果、開閉部93は隔壁99Cに当接して油戻し孔39を第1チャンバ61C側から塞ぐ。これにより、第1チャンバ61C内の油粒子を含んだ冷媒ガスGは、バネ孔95と油戻し孔39を順に通過しないと、クランク室34に到達できなくなり、第1チャンバ61Cから第2チャンバ62Cへの冷媒ガスGの流れを緩やかにできる。上記構成によれば、ハウジング22の外側にガス流調節器50Cを設けることができるので、ガス流調節器50Cの形状または配置など設計の自由度を向上することができる。
【0036】
<6.第4の実施形態に係るガス流調節器50D(50)>
図9は、第4の実施形態に係る往復動圧縮機1D(1)を示す概略図である。往復動圧縮機1D(1)の構成要素であるガス流調節器50D(50)は、隔壁99D(99)を備え、隔壁99Dは、第1チャンバ61D(61)と第2チャンバ62D(62)とを隔てる。第1チャンバ61Dはクランク室34と連通可能な後述の第1空間11D(11)であり、第2チャンバ62Dは吸入室28と連通可能な後述の第2空間12である。
【0037】
ガス流調節器50Dは、隔壁カバー150、第1連通管131、および、第2連通管132を備える。隔壁カバー150は、隔壁99Dに取り付けられる板バネ90を収容するように設けられると共に、クランク室34と連通可能な第1空間11Dを隔壁99Dと協働して規定する。第1連通管131は、クランク室34と、隔壁99Dに設けられる油戻し孔39とに接続される水平管である。第2連通管132は、吸入室28と、隔壁99Dに設けられる連通孔94に接続される水平管である。隔壁99Dの油戻し孔39は、第1空間11Dである第1チャンバ61Dと第1連通管131とを連通可能であり、隔壁99Dの連通孔94は、第2空間12である第2チャンバ62Dと第1空間11D(第1チャンバ61D)とを連通可能である。連通孔94を規定する隔壁99Dの内周面の下端は、隔壁カバー150の内周面の下端と同じ高さ、又は、外側カバー110の内周面の下端よりも低い位置に配置される。また、連通孔94は油戻し孔39よりも大きい。第1連通管131と第2連通管132がいずれも水平管であることで潤滑油のトラップ(滞留)を抑制することができる。
さらに本例のガス流調節器50Dは、第1連通管131に設けられる第1バルブ121と、第2連通管132に設けられる第2バルブ122とを備える。第1バルブ121と第2バルブ122がいずれも開状態となることで、クランク室34と吸入室28はガス流調節器50Dを介して連通するようになり、ガス流調節器50Dは作動可能となる。本例では、第1バルブ121と第2バルブ122のいずれにもボールバルブ(より好ましくはフルボア型のボールバルブ)が適用されている。これにより、第1バルブ121と第2バルブ122の内部構造が簡易になるので、潤滑油のトラップを抑制することができる。
【0038】
往復動圧縮機1Dの油戻し機能は往復動圧縮機1Cと同様であり、且つ、ガス流調節器50Dの作動原理はガス流調節器50Cと同様であるので、詳説を割愛する。上記構成によれば、吸入室28およびクランク室34が内側に形成されるハウジング22から離れた場所で板バネ90と隔壁99Dとを配置することができるので、ガス流調節器50Dの形状または配置など設計の自由度を向上することができる。
【0039】
なお、第1連通管131と第2連通管132は水平管であることに限定されない。例えば、第1空間11Dである第1チャンバ61Dが、貫通孔21よりも高い位置、且つ、ハウジング22に形成される油戻し孔39よりも低い位置に配置されるのであれば、第1連通管131と第2連通管132が折れ曲がっていても、潤滑油は自重によってクランク室34に滞りなく流れることができる。第1バルブ121と第2バルブ122は、レデュースドボア型のボールバルブであってもよい。
【0040】
<7.まとめ>
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0041】
1)本開示の一実施形態に係るガス流調節器(50)は、
吸入室(28)および前記吸入室の下方に位置するクランク室(34)を有する往復動圧縮機(1)のためのガス流調節器であって、
前記クランク室または前記クランク室と連通可能な第1空間(11)のいずれかである第1チャンバ(61)と、前記吸入室または前記吸入室と連通可能な第2空間(12)のいずれかである第2チャンバ(62)とを隔てる隔壁(99)に取り付けられ、前記隔壁に設けられた油戻し孔(39)を前記第1チャンバと前記第2チャンバとの圧力差によって前記第1チャンバ側から塞ぐように構成された板バネ(90)を備え、
前記板バネは、前記油戻し孔よりも小径のバネ孔(95)を有する。
【0042】
上記1)の構成によれば、吸入室の圧力低下に伴って第1チャンバと第2チャンバとの圧力差が大きくなると、板バネが弾性変形し、油戻し孔が塞がれる。クランク室内の冷媒ガス(S)は、バネ孔を通過しないと吸入室に到達できない。油戻し孔よりも小径なバネ孔における冷媒ガスの流れの圧損は大きいので、クランク室から吸入室へ冷媒ガスが急激に流れるのを抑制でき、クランク室における急激な減圧が抑制される。これにより、往復動圧縮機における油粒子の流出による油上がりを抑制することができる。
【0043】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のガス流調節器であって、
前記板バネは、前記クランク室である前記第1チャンバと、前記吸入室である前記第2チャンバとを隔てる前記隔壁に取り付けられ、
前記板バネを収容するように前記隔壁に設けられ、前記板バネを収容する空間である前記第1空間と前記クランク室とを連通可能な開口孔を含むカバー(70)を備える。
【0044】
上記2)の構成によれば、油粒子が混入される冷媒ガスは、開口孔と第1空間とを順に通過しないとバネ孔に到達できない。開口孔においては冷媒ガス流れが遅いので、油粒子がカバー内側の第1空間に到達しづらくなる。これにより、油上がりをさらに抑制できる。
【0045】
3)幾つかの実施形態では、上記2)に記載のガス流調節器であって、
前記カバーは、前記開口孔が設けられるカバー本体(72)を含み、
前記カバー本体は、前記油戻し孔の軸方向に前記油戻し孔と並ぶように配置される。
【0046】
上記3)の構成によれば、クランク室内の冷媒ガスがバネ孔に向かうのをカバー本体が阻害する。これにより、冷媒ガスに混入する油粒子がバネ孔に到達するのも阻害されるので、油上がりをさらに抑制できる。
【0047】
4)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のガス流調節器であって、
前記隔壁は、前記吸入室及び前記クランク室を収容するハウジングの一部を構成すると共に、前記第1空間である前記第1チャンバと前記吸入室である前記第2チャンバとを隔て、
前記ガス流調節器は、前記隔壁の外表面に取り付けられる前記板バネを収容するように前記隔壁に設けられる外側カバー(110)を備え、
前記隔壁は、前記隔壁と前記外側カバーとによって規定される前記第1空間である前記第1チャンバと、前記吸入室である前記第2チャンバとを隔てる。
【0048】
上記4)の構成によれば、ハウジングの外側にガス流調節器を設けることができるので、ガス流調節器の形状または配置など設計の自由度を向上することができる。
【0049】
5)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のガス流調節器であって、
前記吸入室及び前記クランク室を収容するハウジングから離れた位置に設けられる前記隔壁と、
前記隔壁に取り付けられる前記板バネを収容するように設けられると共に、前記隔壁と協働して前記第1空間を規定する隔壁カバー(150)と、
前記クランク室と前記隔壁とに接続される第1連通管(131)と、
前記吸入室と前記隔壁とに接続され、内側に前記第2空間を規定する第2連通管(132)と、
を備え、
前記隔壁は、前記第1空間と前記第1連通管とに連通可能な前記油戻し孔と、前記第2空間と連通可能な連通孔(94)とを含み、前記第1空間である前記第1チャンバと前記第2空間である前記第2チャンバとを隔てる。
【0050】
上記5)の構成によれば、吸入室およびクランク室が内側に形成されるハウジングから離れた場所で板バネと隔壁とを配置することができるので、ガス流調節器の形状または配置など設計の自由度を向上することができる。
【0051】
6)幾つかの実施形態では、上記1)から5)のいずれかに記載のガス流調節器であって、
前記油戻し孔の内径は、15mm以上である。
【0052】
上記6)の構成によれば、テイラー不安定波長以上の油戻し孔の内径が確保されやすくなるので、油戻し孔における吸入室に向けた冷媒ガスの流れと、油戻し孔におけるクランク室に向けた油の流れとの双方が同時に起こることができる。従って、油が油戻し孔を閉塞して冷媒ガスが流れることができない不具合を抑制することができる。
【0053】
7)本開示の少なくとも一実施形態に係る往復動圧縮機は、
吸入室と、
前記吸入室の下方に位置するクランク室と、
前記クランク室内にある油の前記吸入室への流入を調整するためのガス流調節器と、
前記クランク室または前記クランク室と連通可能な第1空間のいずれかである第1チャンバと、前記吸入室または前記吸入室と連通可能な第2空間のいずれかである第2チャンバとを隔てる隔壁と
を備え、
前記ガス流調節器は、
前記隔壁に取り付けられ、前記隔壁に設けられた油戻し孔を前記第1チャンバと前記第2チャンバとの圧力差によって前記第1チャンバ側から塞ぐように構成された板バネを含み、
前記板バネは、前記油戻し孔よりも小径のバネ孔を有する。
【0054】
上記7)の構成によれば、上記1)と同様の理由によって、油上がりを抑制できる往復動圧縮機が実現される。
【0055】
8)幾つかの実施形態では、上記1)から7)のいずれかに記載のガス流調節器であって、
前記バネ孔は、1.4mm以下の内径を有する。
【0056】
上記8)の構成によれば、バネ孔が1.4mm以下であることで、吸入室への冷媒ガスの流れがさらに抑制される。これにより、油上がりをさらに抑制することができる。
【0057】
9)幾つかの実施形態では、上記1)から8)のいずれかに記載のガス流調節器であって、
前記バネ孔は、0.6mm以上の内径を有する。
【0058】
上記9)の構成によれば、クランク室から吸入室に流体が流れる場合において、一定程度の冷媒ガスの流れを確保できる。これにより、クランク室圧力が吸入室圧力に近くなるまでに要する時間が長くなり過ぎるのを抑制できる。
【符号の説明】
【0059】
1 :往復動圧縮機
11 :第1空間
12 :第2空間
22 :ハウジング
28 :吸入室
34 :クランク室
39 :油戻し孔
50 :ガス流調節器
61 :第1チャンバ
62 :第2チャンバ
70 :カバー
72 :カバー本体
74 :開口孔
90 :板バネ
94 :連通孔
95 :バネ孔
99 :隔壁
110 :外側カバー
131 :第1連通管
132 :第2連通管
150 :隔壁カバー


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9