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特開2023-157311濾板移送装置及びこれを用いたフィルタプレス装置並びにその運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157311
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】濾板移送装置及びこれを用いたフィルタプレス装置並びにその運転方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 25/172 20060101AFI20231019BHJP
   B01D 25/12 20060101ALI20231019BHJP
   B01D 25/19 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B01D25/15
B01D25/12 A
B01D25/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067132
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095223
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 章三
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】近藤 千果
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA11
4D116CC02
4D116CC13
4D116CC22
4D116CC34
4D116CC44
4D116CC45
4D116CC46
4D116CC47
4D116RR01
4D116RR02
4D116RR14
4D116RR28
4D116VV11
4D116VV12
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、重合配置された濾板群を一枚ずつ引き離して開放する濾板開放処理を連続的に実施可能とする。
【解決手段】複数の濾板1群の移送方向に沿って往復移動可能に移送される移送体5と、予め決められた初期待機位置Psと完了待機位置Peとの間を移送体5の移動範囲とし、移送体5を順次往復移動させるように制御する移送制御手段12とを備え、移送体5は、凹所6aが形成された移送筐体6と、凹所6aに対し出没可能に設けられ、凹所6aから突出した起立姿勢で濾板1に設けられた被係合部に係合し、凹所6a内に没入した姿勢では被係合部に係合しない一つの係合爪7と、引き離し対象の各濾板1の被係合部に係合爪7を係合させる第1のモードと、完了待機位置Peにて係合爪7を凹所6a内に没入した状態に保持する第2のモードとのいずれかに、係合爪7の挙動を規制する挙動規制手段8とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合配置された複数の濾板群の隣接する空間部に夫々濾過室を形成し、各濾過室に投入された被濾過物を圧搾して脱水濾過するフィルタプレス装置に用いられ、重合配置された前記複数の濾板群を一枚ずつ移送して隣接する濾板から引き離す濾板移送装置において、
前記複数の濾板群の移送方向に沿って往復移動可能に移送される移送体と、予め決められた初期待機位置と当該初期待機位置とは反対側にある完了待機位置との間を前記移送体の移動範囲とし、前記移送体を前記移動範囲内の予め決められた位置に順次往復移動させるように制御する移送制御手段とを備え、
前記移送体は、凹所が形成された移送筐体と、前記移送筐体の凹所に対し出没可能に設けられ、前記凹所から突出した起立姿勢で前記濾板に設けられた被係合部に係合し、前記凹所内に没入した姿勢では前記被係合部に係合しない一つの係合爪と、前記初期待機位置にて前記係合爪を起立姿勢に保持し、前記移送体が前記初期待機位置から前記完了待機位置に向かう往方向に移動するときには引き離し対象となる濾板の被係合部に対して前記係合爪を没入方向に退避させながら当該被係合部の背面側で起立姿勢に復帰させ、前記移送体が前記往方向とは反対側の復方向に移動するときには前記被係合部に前記係合爪を係合させる第1のモードと、前記完了待機位置にて前記係合爪を前記凹所内に没入した状態に保持する第2のモードとのいずれかに、前記係合爪の挙動を規制する挙動規制手段とを有することを特徴とする濾板移送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の濾板移送装置において、
前記挙動規制手段は、前記係合爪を前記凹所から突出する方向へと付勢する付勢手段と、前記移送筐体の凹所の上部に設けられ、前記移送体の移動方向が前記濾板を引き離す方向と反対側の往方向である場合には、前記付勢手段の付勢力に抗して係合対象となる前記濾板の被係合部を乗り越えて当該被係合部の背面側に係合する前記係合爪を起立した起立姿勢に保持する姿勢保持手段と、前記移送筐体の凹所の上部に設けられ、前記係合爪が出没可能な開口を選択的に開閉し、開放時には前記係合爪を前記凹所に対して出没可能とする一方、閉鎖時には前記係合爪を前記凹所内に没入した状態にする開閉蓋と、を有することを特徴とする濾板移送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の濾板移送装置において、
前記開閉蓋は、前記移送筐体の凹所の上部に前記移送筐体の移送方向に沿って往復移動可能に設けられ、前記係合爪が出没可能な開口を塞ぐ閉位置では前記係合爪を凹所内で没入状態に保ち、前記開口を開いた開位置では前記係合爪を凹所から出没可能な状態に保つことを特徴とする濾板移送装置。
【請求項4】
請求項3に記載の濾板移送装置において、
前記姿勢保持手段は、前記開閉蓋が前記開位置に位置するときの当該開閉蓋の縁部にて構成され、前記開閉蓋の縁部に前記係合爪を当接させることで前記係合爪の起立姿勢を保つことを特徴とする濾板移送装置。
【請求項5】
請求項1に記載の濾板移送装置において、
前記移送制御手段はサーボモータを含んで構成されており、前記サーボモータの回転を制御することにより前記移送体を往復移動させ、予め決められた位置に順次移送させることを特徴とする濾板移送装置。
【請求項6】
被濾過物を圧搾して脱水濾過するフィルタプレス装置であって、
予め決められた方向に延びる一対の案内部材間に掛け渡され、前記案内部材に沿って移動可能に支持されると共に、前記案内部材に沿って重合配置されたときに隣接する空間部に前記被濾過物を濾過可能な濾過室が形成される複数の濾板群と、
前記複数の濾板群を重合配置した状態になるように加圧する加圧手段と、
前記加圧手段による加圧を解除した後に重合配置された前記複数の濾板群を一枚ずつ移送して隣接する濾板から引き離す濾板移送装置と、
を備え、
前記濾板移送装置として請求項1乃至5のいずれかに記載の濾板移送装置を用いることを特徴とするフィルタプレス装置。
【請求項7】
請求項6に記載のフィルタプレス装置の運転方法であって、
前記濾板の移送方向に沿った前記移送体の移動範囲において、前記移送体が前記初期待機位置にあるときに前記挙動規制手段にて前記係合爪の挙動を第1のモードに規制することで前記凹所に対して前記係合爪を出没可能にした後に、重合配置された前記複数の濾板群を一枚ずつ引き離して開放する濾板開放処理を実施し、全て又は予定された数の濾板群に対する濾板開放処理が完了した段階で前記移送体を前記完了待機位置に移動させる一方、前記移送体が完了待機位置にあるときに前記挙動規制手段にて前記係合爪の挙動を第2のモードに規制することで前記凹所に対して前記係合爪を没入状態にした後に、前記移送体を初期待機位置に戻す次工程準備処理を実施することを特徴とするフィルタプレス装置の運転方法。
【請求項8】
請求項7に記載のフィルタプレス装置の運転方法において、
前記初期待機位置に設けられ、前記移送体が前記初期待機位置にあるときに前記係合爪の挙動を第1のモードに規制するように前記挙動規制手段を設定する第1のモード設定部と、前記完了待機位置に設けられ、前記移送体が前記完了待機位置にあるときに前記係合爪の挙動を第2のモードに規制するように前記挙動規制手段を設定する第2のモード設定部と、を有することを特徴とするフィルタプレス装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合配置された濾板群を一枚ずつ引き離して開放する濾板移送装置及びこれを用いたフィルタプレス装置並びにその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種のフィルタプレス装置は、被濾過物を多数の濾板間でケーキ状態となるべく圧搾して脱水濾過するものであり、例えば特許文献1,2に記載のものが既に知られている。
特許文献1には、移送体に各々回転自在に軸着されると共に互いに内向きにバネ付勢される一対の送り爪(正送り爪、逆送り爪)と、各々回転自在とされた腕部と脚部を有し、両者は同心軸の回りに互いに180度の角度を持つようにバネ付勢されると共に腕部は一対の送り爪間に介在させ、脚部は移送体の移動路に沿って設けられた支承面によって傾斜姿勢に支承させるようにした遊動子と、遊動子の両移動端近くの支承面に形成した遊動子脚部の垂直姿勢を許容する凹部ないし落し穴と、正送り爪の背後に回転自在に支持され、起立姿勢にある正送り爪に対して背後から当接支持する水平姿勢と正送り爪の起立姿勢から更に後方移送体内への伏倒を許容する下方傾斜姿勢とに姿勢変換できるストッパー杆と、逆送り爪の背後にあって起立姿勢にある逆送り爪を背後から当接支持するストッパーとを有するフイルタープレスの濾板送り装置が開示されている。
また、特許文献2には、前後のスタンド間に渡した一対の機枠の夫々に、前後一対のスプロケットに懸張したチェーンにより一対の送り爪と停止爪とを有するキャリッジを走行自在とし、該キャリッジの往復駆動で機枠間に支持した濾板を順次送るようにしたフイルタプレスにおいて、上記スプロケットを駆動する正逆回転可能な油圧モータを設けるとともに、該油圧モータに供給源から切換弁を介して圧油を供給する供給路の油圧モータの前後に一対の油圧検知スイッチを配し、前後キャリッジの往位置、復位置で作用する負荷で一対の油圧検知スイッチを交互に作動させ、上記切換弁を交互に切換えることにより油圧モータを正逆回転させるようにしたフイルタプレスの濾板送り装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭59-1365号公報(発明の詳細な説明,第4図)
【特許文献2】特開昭52-1571号公報(発明の詳細な説明,第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従前の濾板送り装置にあっては、特許文献1,2に示すように、移送体(特許文献2では「キャリッジ」)には複数の爪(一対の送り爪)が収納されており、各爪の出没を適宜使い分けることによって濾板の移送を実現しているが、移送体には各爪を出没させるための多数のばねが内蔵されており、その出没機構は複雑である。このため、1つでもばねが破損すると、濾板を移送することができなくなる懸念があるほか、内蔵された多数のばねの状態を日常的に維持管理することは難しかった。
また、従前の濾板送り装置にあっては、例えば特許文献1に示すように、濾板の位置制御として、接触圧検知方式(爪と濾板の把手との接触圧の上昇をリミットスイッチにて検知し、移送体の移動方向を切り換える方式)を採用しているが、爪と濾板の把手とをある程度強く接触させることが必要になるため、爪や濾板の把手が破損し易くなり、その分、濾板の位置制御が不安定になり易い。
【0005】
更に、特許文献2では、濾板の位置制御として油圧検知方式(油圧系にかかる負荷を油圧検知スイッチにて検知して切換弁を作動させ、移送体(キャリッジ)の移動方向を切り換える方式)を採用しているが、油圧検知方式による移送体(キャリッジ)の移動方向の切り換えに時間を要し、その分、複数の濾板群に対する濾板開放処理時間を短縮することが困難になり易い。更にまた、特定の濾板に対して点検整備を行うときなど、全ての濾板に濾板開放処理を施す必要がない場合であっても、点検整備後に移送体(キャリッジ)を初期位置に復帰させる次工程準備処理を行うときは、全ての濾板に濾板開放処理を施す必要があった。
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、簡単な構成で、重合配置された濾板群を一枚ずつ引き離して開放する濾板開放処理を連続的に実施可能とする濾板移送装置及びこれを用いたフィルタプレス装置並びにその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の技術的特徴は、重合配置された複数の濾板群の隣接する空間部に夫々濾過室を形成し、各濾過室に投入された被濾過物を圧搾して脱水濾過するフィルタプレス装置に用いられ、重合配置された前記複数の濾板群を一枚ずつ移送して隣接する濾板から引き離す濾板移送装置において、前記複数の濾板群の移送方向に沿って往復移動可能に移送される移送体と、予め決められた初期待機位置と当該初期待機位置とは反対側にある完了待機位置との間を前記移送体の移動範囲とし、前記移送体を前記移動範囲内の予め決められた位置に順次往復移動させるように制御する移送制御手段とを備え、前記移送体は、凹所が形成された移送筐体と、前記移送筐体の凹所に対し出没可能に設けられ、前記凹所から突出した起立姿勢で前記濾板に設けられた被係合部に係合し、前記凹所内に没入した姿勢では前記被係合部に係合しない一つの係合爪と、前記初期待機位置にて前記係合爪を起立姿勢に保持し、前記移送体が前記初期待機位置から前記完了待機位置に向かう往方向に移動するときには引き離し対象となる濾板の被係合部に対して前記係合爪を没入方向に退避させながら当該被係合部の背面側で起立姿勢に復帰させ、前記移送体が前記往方向とは反対側の復方向に移動するときには前記被係合部に前記係合爪を係合させる第1のモードと、前記完了待機位置にて前記係合爪を前記凹所内に没入した状態に保持する第2のモードとのいずれかに、前記係合爪の挙動を規制する挙動規制手段と有することを特徴とする濾板移送装置である。
【0008】
本発明の第2の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた濾板移送装置において、前記挙動規制手段は、前記係合爪を前記凹所から突出する方向へと付勢する付勢手段と、前記移送筐体の凹所の上部に設けられ、前記移送体の移動方向が前記濾板を引き離す方向と反対側の往方向である場合には、前記付勢手段の付勢力に抗して係合対象となる前記濾板の被係合部を乗り越えて当該被係合部の背面側に係合する前記係合爪を起立した起立姿勢に保持する姿勢保持手段と、前記移送筐体の凹所の上部に設けられ、前記係合爪が出没可能な開口を選択的に開閉し、開放時には前記係合爪を前記凹所に対して出没可能とする一方、閉鎖時には前記係合爪を前記凹所内に没入した状態にする開閉蓋と、を有することを特徴とする濾板移送装置である。
本発明の第3の技術的特徴は、第2の技術的特徴を備えた濾板移送装置において、前記開閉蓋は、前記移送筐体の凹所の上部に前記移送筐体の移送方向に沿って往復移動可能に設けられ、前記係合爪が出没可能な開口を塞ぐ閉位置では前記係合爪を凹所内で没入状態に保ち、前記開口を開いた開位置では前記係合爪を凹所から出没可能な状態に保つことを特徴とする濾板移送装置である。
本発明の第4の技術的特徴は、第3の技術的特徴を備えた濾板移送装置において、前記姿勢保持手段は、前記開閉蓋が前記開位置に位置するときの当該開閉蓋の縁部にて構成され、前記開閉蓋の縁部に前記係合爪を当接させることで前記係合爪の起立姿勢を保つことを特徴とする濾板移送装置である。
本発明の第5の技術的特徴は、第1の技術的特徴を備えた濾板移送装置において、前記移送制御手段はサーボモータを含んで構成されており、前記サーボモータの回転を制御することにより前記移送体を往復移動させ、予め決められた位置に順次移送させることを特徴とする濾板移送装置である。
【0009】
本発明の第6の技術的特徴は、被濾過物を圧搾して脱水濾過するフィルタプレス装置であって、予め決められた方向に延びる一対の案内部材間に掛け渡され、前記案内部材に沿って移動可能に支持されると共に、前記案内部材に沿って重合配置されたときに隣接する空間部に前記被濾過物を濾過可能な濾過室が形成される複数の濾板群と、前記複数の濾板群を重合配置した状態になるように加圧する加圧手段と、前記加圧手段による加圧を解除した後に重合配置された前記複数の濾板群を一枚ずつ移送して隣接する濾板から引き離す濾板移送装置と、を備え、前記濾板移送装置として第1乃至第5の技術的特徴のいずれかを備えた濾板移送装置を用いることを特徴とするフィルタプレス装置である。
【0010】
本発明の第7の技術的特徴は、第6の技術的特徴を備えたフィルタプレス装置の運転方法であって、前記濾板の移送方向に沿った前記移送体の移動範囲において、前記移送体が前記初期待機位置にあるときに前記挙動規制手段にて前記係合爪の挙動を第1のモードに規制することで前記凹所に対して前記係合爪を出没可能にした後に、重合配置された前記複数の濾板群を一枚ずつ引き離して開放する濾板開放処理を実施し、全て又は予定された数の濾板群に対する濾板開放処理が完了した段階で前記移送体を前記完了待機位置に移動させる一方、前記移送体が完了待機位置にあるときに前記挙動規制手段にて前記係合爪の挙動を第2のモードに規制することで前記凹所に対して前記係合爪を没入状態にした後に、前記移送体を初期待機位置に戻す次工程準備処理を実施することを特徴とするフィルタプレス装置の運転方法である。
本発明の第8の技術的特徴は、第7の技術的特徴を備えたフィルタプレス装置の運転方法において、前記初期待機位置に設けられ、前記移送体が前記初期待機位置にあるときに前記係合爪の挙動を第1のモードに規制するように前記挙動規制手段を設定する第1のモード設定部と、前記完了待機位置に設けられ、前記移送体が前記完了待機位置にあるときに前記係合爪の挙動を第2のモードに規制するように前記挙動規制手段を設定する第2のモード設定部と、を有することを特徴とするフィルタプレス装置の運転方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の技術的特徴によれば、簡単な構成で、重合配置された濾板群を一枚ずつ引き離して開放する濾板開放処理を連続的に実施することができる。
本発明の第2の技術的特徴によれば、移送体の構成要素である挙動規制手段を簡単に構築することができる。
本発明の第3の技術的特徴によれば、往復移動型の開閉蓋の開閉動作によって、移送体の係合爪の挙動を、第1のモード又は第2のモードのいずれかに簡単に規制することができる。
本発明の第4の技術的特徴によれば、移送体の開閉蓋を兼用し、係合爪の起立姿勢を保つ姿勢保持手段を簡単に構成することができる。
本発明の第5の技術的特徴によれば、移送制御手段としてサーボモータを使用しない場合に比べて、連続的な濾板開放処理を安定的に実施することができる。
本発明の第6の技術的特徴によれば、簡単な構成で、重合配置された濾板群を一枚ずつ引き離して開放する濾板開放処理を連続的に実施することが可能な濾板移送装置を含むフィルタプレス装置を提供することができる。
本発明の第7の技術的特徴によれば、簡単な構成で、重合配置された濾板群に対し濾板開放処理を連続的に実施することが可能な濾板移送装置を含むフィルタプレス装置を運転するに際し、全ての濾板群に対し濾板開放処理を実施した後に次工程準備処理を実施するほか、全ての濾板群に対し濾板開放処理を実施することなく次工程準備処理を実施することも可能とし、その分、フィルタプレス装置を効率的に運転することができる。
本発明の第8の技術的特徴によれば、濾板移送装置の移送体における係合爪の挙動規制をも自動化されたフィルタプレス装置の運転方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は本発明に係る濾板移送装置を含むフィルタプレス装置の実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)に示すフィルタプレス装置をB方向から見た側方説明図、(c)は濾板移送装置の移送体の要部を示す説明図である。
図2】実施の形態1に係るフィルタプレス装置の正面方向から見た説明図である。
図3】実施の形態1に係るフィルタプレス装置の要部を示す斜視説明図である。
図4】実施の形態1に係るフィルタプレス装置の濾板移送装置及びその制御系を示す説明図である。
図5】(a)は実施の形態1で用いられる濾板移送装置の移送体の一例を示す説明図、(b)は(a)に示す移送体の開閉蓋構造を矢印B方向から見た要部斜視図、(c)は(a)に示す移送体のうち開閉蓋閉鎖時の挙動を示す説明図である。
図6】実施の形態1で用いられる移送体と濾板との関係を示す説明図である。
図7】実施の形態1で用いられる濾板移送装置の濾板開放処理過程を示すフローチャートである。
図8】(a)は濾板移送装置による濾板開放処理開始直後の動作状態を示す説明図、(b)は濾板移送装置による濾板開放処理動作の完了間際の動作状態を示す説明図である。
図9】(a)乃至(c)は濾板移送装置の移送体の係合爪と濾板との係わり合いの挙動を示す説明図である。
図10】(a)は濾板移送装置の移送体の係合爪の起立動作を初期待機位置で自動的に実施する一例を示す説明図、(b)は濾板移送装置の移送体の係合爪の没入動作を完了待機位置で自動的に実施する一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明に係る濾板移送装置を含むフィルタプレス装置の実施の形態の概要を示す説明図、図1(b)は(a)中B方向から見た説明図である。
同図において、フィルタプレス装置は、被濾過物を圧搾して脱水濾過するものであって、予め決められた方向に延びる一対の案内部材2間に掛け渡され、案内部材2に沿って移動可能に支持されると共に、案内部材2に沿って重合配置されたときに隣接する空間部に被濾過物を濾過可能な濾過室が形成される複数の濾板1群と、複数の濾板1群を重合配置した状態になるように加圧する加圧手段3と、加圧手段3による加圧を解除した後に重合配置された複数の濾板1群を一枚ずつ移送して隣接する濾板1から引き離す濾板移送装置4と、を備えている。
【0014】
このような技術的手段において、複数の濾板1群は通常一対の案内部材2に移動可能に架け渡されており、一対の案内部材2に沿って摺動する把手1aを備えている。また、加圧手段3は、例えば、伸縮する部材を介して複数の濾板1群を加圧するように移動する可動部材3aを備えている。
ここで、濾板1は、重合配置されたときに隣接する空間部に濾過室(図示せず)を形成するものであって、濾過室は、例えば濾布吊アーム17で保持された濾布16にて周囲が囲まれ、濾過室を構成する一方の濾板1の内面には圧搾膜(図示せず)を設けるようにしたものである。また、濾板1には、濾過室に原液を投入する原液投入路、濾過室で濾過された濾液を排出する濾液排出路等が形成されている。原液投入路は、濾過室に対する投入位置の違いにより、下部投入方式、上部投入方式、中央部投入方式がある。
更に、濾過工程、圧搾工程は複数の濾板1群を重合配置した状態で、実施される。濾過工程では原液投入路から原液が投入され、濾過室の濾布16にて濾過されて濾液を濾液排出路を通じて排出する。また、圧搾工程は、例えば圧搾膜を膨張させることで濾過工程にて濾過室内に残留した残留物を圧搾し、脱水したケーキとするものである。
【0015】
また、濾板移送装置4は、濾過・圧搾工程を経た後、重合配置された複数の濾板1群を一枚ずつ移送して隣接する濾板1から引き離す濾板開放処理(所謂開枠処理)を実施するものである。これは、主として、濾過室内のケーキを排出するケーキ排出工程、あるいは、濾過室内の濾布16を洗浄する濾布洗浄工程を実施する上で使用されるものである。
本例において、濾板移送装置4は、複数の濾板1群の移送方向に沿って往復移動可能に移送される移送体5と、予め決められた初期待機位置Psと当該初期待機位置Psとは反対側にある完了待機位置Peとの間を移送体5の移動範囲とし、移送体5を移動範囲内の予め決められた位置に順次往復移動させるように制御する移送制御手段12とを備えたものである。
【0016】
ここで、移送体5は、図1(c)に示すように、凹所6aが形成された移送筐体6と、移送筐体6の凹所6aに対し出没可能に設けられ、凹所6aから突出した起立姿勢で濾板1に設けられた被係合部に係合し、凹所6a内に没入した姿勢では被係合部に係合しない一つの係合爪7と、初期待機位置Psにて係合爪7を起立姿勢に保持し、移送体5が初期待機位置Psから完了待機位置Peに向かう往方向に移動するときには引き離し対象となる濾板1の被係合部に対して係合爪7を没入方向に退避させながら当該被係合部の背面側で起立姿勢に復帰させ、移送体5が往方向とは反対側の復方向に移動するときには被係合部に係合爪7を係合させる第1のモードと、完了待機位置Peにて係合爪7を凹所6a内に没入した状態に保持する第2のモードとのいずれかに、係合爪7の挙動を規制する挙動規制手段8とを有するものである。
【0017】
本例において、係合爪7の代表的態様としては、先端側に爪部を有する棒状部材からなり、棒状部材のうち爪部から離れた側を揺動支点とし、凹所6a内に没入する横倒れ姿勢と起立姿勢との間で揺動可能に支持されており、爪部は被係合部の背面側に対向する箇所が平面状の当接面に形成され、その反対側が先端にかけて曲面状に連なる湾曲面に形成されている態様がある。本例は、揺動式の係合爪7の代表的な構成例を示し、濾板1の被係合部を乗り越え易く、かつ、被係合部の背面側に係合し易い態様であり、移送体5に揺動式の一つの係合爪7を搭載することで、濾板開放処理をスムーズに実施することができる。
【0018】
また、複数の濾板1群は、その両側縁から外向きに突出する一対の把手1aを有し、案内部材2上に一対の把手1aを引っ掛けることで案内部材2に沿って移動可能に支持されている態様が代表的であり、このような態様では、一対の把手1aを被係合部として利用することが可能である。本例では、複数の濾板1群の形状をそのまま利用し、濾板開放処理をスムーズに実施することができる。
更に、挙動規制手段8は、係合爪7の挙動を第1のモード(起立姿勢→退避→起立姿勢復帰→係合)又は第2のモード(没入状態に保持)のいずれかに規制するものを広く含む。
【0019】
本例において、移送制御手段12については、サーボモータを用いた位置制御方式を採用するものが代表的であるが、「予め決められた位置に移送体5を順次往復移動させること」が可能であれば適宜選定して差し支えない。この点、従前の濾板1の位置制御には、特許文献1のリミットスイッチ方式や、特許文献2の油圧検知方式が採用されているが、これらは、いずれも爪と濾板の把手との接触圧の変化や、油圧系にかかる負荷の変化に依存する位置制御方式であり、「予め決められた位置に移送体5を順次往復移動させること」を想定したものではない。
【0020】
次に、本実施の形態の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、移送体5の挙動規制手段8の代表的態様としては、係合爪7を凹所6aから突出する方向へと付勢する付勢手段9と、移送筐体6の凹所6aの上部に設けられ、移送体5の移動方向が濾板1を引き離す方向と反対側の往方向である場合には、付勢手段9の付勢力に抗して係合対象となる濾板1の被係合部(本例では把手1aの一部)を乗り越えて当該被係合部の背面側に係合する係合爪7を起立した起立姿勢に保持する姿勢保持手段10と、移送筐体6の凹所6aの上部に設けられ、係合爪7が出没可能な開口を選択的に開閉し、開放時には係合爪7を凹所6aに対して出没可能とする一方、閉鎖時には係合爪7を凹所6a内に没入した状態にする開閉蓋11と、を有する態様が挙げられる。
【0021】
本例において、開閉蓋11の代表的態様としては、移送筐体6の凹所6aの上部に移送筐体6の移送方向に沿って往復移動可能に設けられ、係合爪7が出没可能な開口を塞ぐ閉位置では係合爪7を凹所6a内で没入状態に保ち、開口を開いた開位置では係合爪7を凹所6aから出没可能な状態に保つ態様がある。これは、往復移動型の開閉蓋11によって、移送筐体6の凹所6aの上部に係合爪7が出没可能な開口を開閉する態様である。
また、姿勢保持手段10の好ましい態様としては、開閉蓋11が開位置に位置するときの当該開閉蓋11の縁部にて構成され、開閉蓋11の縁部に係合爪7を当接させることで係合爪7の起立姿勢を保つ態様が挙げられる。本例は、開位置に位置する開閉蓋11を利用し、係合爪7の起立姿勢を保つ態様である。
【0022】
更に、移送制御手段12の代表的態様としては、サーボモータ14を含んで構成されており、サーボモータ14の回転を制御することにより移送体5を往復移動させ、予め決められた位置に順次移送させる態様が挙げられる。本例において、サーボモータ14はステッピングモータに比べて高速域で高い停止精度があり、連続的な濾板開放処理を安定的に実施する上で好ましい。また、サーボモータ14を含む態様では、図1(b)に示すように、サーボモータ14からの駆動力を移送体5に伝達する搬送手段13と、サーボモータ14の回転(回転方向、回転量)を制御する制御部15とを有することが必要である。
【0023】
また、このような濾板移送装置4を組み込んだフィルタプレス装置の運転方法としては、濾板1の移送方向に沿った移送体5の移動範囲において、移送体5が初期待機位置Psにあるときに挙動規制手段8にて係合爪7の挙動を第1のモードに規制することで凹所6aに対して係合爪7を出没可能にした後に、重合配置された複数の濾板1群を一枚ずつ引き離して開放する濾板開放処理を実施し、全ての濾板1群に対する濾板開放処理が完了した段階で移送体5を完了待機位置Peに移動させる一方、移送体5が完了待機位置Peにあるときに挙動規制手段8にて係合爪7の挙動を第2のモードに規制することで凹所6aに対して係合爪7を没入状態にした後に、移送体5を初期待機位置Psに戻す次工程準備処理を実施する態様が挙げられる。本例は、濾板移送装置4を備えたフィルタプレス装置を前提とする運転方法を示し、フィルタプレス装置の移送体5及び移送制御手段12を工夫したことに伴い、全ての濾板1群の濾板開放処理を実施することを可能とする。
【0024】
また、挙動規制手段8によるモード規制については手動操作でもよいし、自動操作でもよい。
更に、本運転方法においては、挙動規制手段8にて第1のモードに規制し、全ての濾板1群について濾板開放処理を実施した後に、移送体5を完了待機位置Peに移動させ、挙動規制手段8にて第2のモードに規制することで凹所6aに係合爪7を没入状態にし、移送体5を初期待機位置Psに戻すようにすればよい。
【0025】
また、フィルタプレス装置の運転方法の好ましい態様としては、初期待機位置Psに設けられ、移送体5が初期待機位置Psにあるときに係合爪7の挙動を第1のモードに規制するように挙動規制手段8を設定する第1のモード設定部と、完了待機位置Peに設けられ、移送体5が完了待機位置Peにあるときに係合爪7の挙動を第2のモードに規制するように挙動規制手段8を設定する第2のモード設定部と、を有する態様が挙げられる。本例は、挙動規制手段8によるモード規制を自動的に行う態様であり、手動で行う態様に比べて利便性を更に高めることが可能である。
【0026】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
-フィルタプレス装置の全体構成-
図2は実施の形態1に係るフィルタプレス装置の全体構成を示す説明図、図3はフィルタプレス装置の要部を示す斜視説明図である。
同図において、フィルタプレス装置20は、予め決められた方向に延びる一対の案内側板22間に掛け渡され、案内側板22の延びる方向に沿って移動可能に支持される複数の濾板1群と、案内側板22の延びる方向の一方側に設けられ、複数の濾板1群を重合配置した状態に加圧するプレス機構23と、案内側板22の延びる方向の他方側に設けられ、プレス機構23による加圧に伴う複数の濾板1群の移動をせき止めるストッパ24と、プレス機構23による加圧を解除したときに、重合配置された複数の濾板1群を一枚ずつ移送して隣接する濾板1から引き離す濾板移送装置4と、を備えたものである。
【0027】
<濾板>
本実施の形態において、濾板1は、図2及び図3に示すように、略矩形状の板材からなる濾板本体1bを有し、濾板本体1bの幅方向の両側には一対の案内側板22の上縁に接するように突出する一対の把手1aを有し、一対の案内側板22に沿って把手1aを介して摺動可能に支持されている。各濾板1は、重合配置されたときに隣接する空間部に被濾過物(原液)が濾過可能な濾過室を形成する構造になっており、この濾過室には図示外の原液投入路及び図示外の濾液排出路が連通接続されている。そして、本例では、濾過室は濾布吊アーム17に保持された濾布(図示せず)によって周囲が囲まれ、更に、隣接する濾板1の一方の内面には膨張可能な圧搾膜が設けられている。
【0028】
<プレス機構及びストッパ>
また、本実施の形態では、プレス機構23は、図1(a)に示す加圧手段3を具現化したものであって、複数の濾板1群の配列方向に沿って伸縮する部材であるピストンロッド23bを有し、ピストンロッド23bの先端部に複数の濾板1群のプレス機構23側に位置する1段目の濾板1に接触して複数の濾板1群全体を加圧する図1(a)に示す可動部材3aに相当する可動板23aを備えている。
更に、本例では、ストッパ24は、一対の案内側板22の長手方向端部の内側に取り付けられ、複数の濾板1群のうち最終段に位置する濾板1の幅方向両側縁部に接触して複数の濾板1群の移動をせき止めるものである。
本例においては、フィルタプレス装置20は、プレス機構23による加圧動作及びストッパ24によるせき止め作用により複数の濾板1群を加圧して重合配置し、この状態で、各濾板1間の濾過室で被濾過物を濾過する濾過工程と、濾過室内に残留した残留物を圧搾してケーキとする圧搾工程とを実施するものである。
【0029】
<その他の構成要素>
更に、図2に示すフィルタプレス装置20は、濾過工程、圧搾工程後に濾過室内に残留したケーキを排出するケーキ排出工程を実施するものであるが、ケーキ排出工程は、プレス機構23による加圧を解除した後、濾板移送装置4にて重合配置された複数の濾板1群を一枚ずつ移送して隣接する濾板1から引き離すことで、濾過室内に残留したケーキを下方に排出するものである。ここで、ケーキの排出動作をスムーズにする上で濾布吊アーム17に濾布16を振動させるための振動機構(図示せず)等を付加するようにしてもよい。
本例では、複数の濾板1群の下方にはケーキ搬送機構25が設けられている。このケーキ搬送機構25は、例えばケーキ搬送ベルト25aの上方をゲート25bで開閉可能に覆い、ケーキ排出工程を実施するときゲート25bを開いてケーキ搬送ベルト25a上に排出されたケーキを受け止め、例えば収容容器25cまで搬送するものである。
【0030】
更にまた、フィルタプレス装置20は、ケーキ排出工程が終了した後必要に応じて濾布洗浄工程を実施する。本例では、濾布洗浄工程は、プレス機構23による加圧を解除した後、濾板移送装置4にて重合配置された複数の濾板1群を一枚ずつ移送して隣接する濾板1から引き離し、引き離された濾板1間に位置する濾過室内の濾布(図示せず)を濾布洗浄機構26にて洗浄するようにしたものである。
本例では、濾布洗浄機構26は、濾板移送装置4による濾板1の移送動作に連動して移動するように構成されている。
【0031】
-濾板移送装置-
本実施の形態では、濾板移送装置4は、図3に示すように、一対の案内側板22の外側に配置され、複数の濾板1群の移送方向に沿って往復移動可能に移送される一対の移送体5と、予め決められた初期待機位置Psと当該初期待機位置Psとは反対側にある完了待機位置Peとの間を移送体5の移動範囲とし、移送体5を移動範囲内の予め決められた位置に順次往復移動させるように制御する移送制御装置30とを備えたものである。
ここで、初期待機位置Psとは濾板開放処理を開始するときに移送体5が初期的に待機する位置を指し、完了待機位置Peは全ての濾板1群に対する濾板開放処理が完了した後に移送体5が一時的に待機する位置を指し、移送体5の移動範囲の両側に予め選定されている。
【0032】
-移送体-
<移送筐体>
本例において、移送体5は、図5(a)乃至(c)に示すように、凹所6aが形成された移送筐体6を備えている。ここで、移送筐体6は、筐体底部を構成する長方形状のベースプレート61と、このベースプレート61の幅方向(移送体5の移動方向に交差する幅方向に相当)両側に立設される筐体側部を構成する一対のサイドプレート62と、この一対のサイドプレート62の上端部間に架設された筐体頂部を構成するトッププレート63とを含んで構成されている。尚、符号64はベースプレート61上にサイドプレート62を立設するための取付用ブロックである。
【0033】
本例において、ベースプレート61は、後述する移送制御装置30の一要素である移送体移動機構としての無端チェーン80のリンク枠81に取り付けるための板状材であって、長手方向の両端部でリンク枠81上に設けられたフランジ82に取り付けられている。
また、凹所6aはベースプレート61及び一対のサイドプレート62で囲まれる空間部にて構成されており、凹所6aの上部はトッププレート63で覆われているが、トッププレート63の幅方向の略中央部にはベースプレート61の長手方向、即ち、移送体5の移動方向に沿ってスリット65が形成されている。ここで、スリット65の長さ寸法は適宜選定して差し支えないが、本例では、スリット65は、トッププレート63の長手方向の略半分の領域に設けられている。
【0034】
<係合爪>
更に、移送体5は、移送筐体6の凹所6aに対して出没可能な一つの係合爪7を備えている。本例では、一対のサイドプレート62の略中央部には、係合爪7を揺動可能に支持する軸72がサイドプレート62間を貫くように設けられている。一方、係合爪7は、基端部から先端部にかけて棒状に延び且つスリット65の幅寸法よりも薄肉に形成された棒状部材71と、その基端部に取り付けられた軸72とから構成されている。そして、この軸72には図1(c)の付勢手段9に相当する付勢バネとしてねじりコイルバネ73が取り付けられ、係合爪7はねじりコイルバネ73によって図5(a)中時計回り方向に付勢され、トッププレート63のスリット65から出没可能に突出して配置されている。
【0035】
また、本例では、係合爪7は、棒状部材71の先端側に爪部74を有しており、当該爪部74は初期待機位置Ps側(図5(a)中左側に相当)が平面からなる当接面741として形成されると共に、完了待機位置Pe側(図5(a)中右側に相当)が当接面741の先端部から略放物線を描いて湾曲する曲面状の被押圧面742として形成されている。
また、本例では、係合爪7は、図5(a)及び図6に示すように、凹所6aから突出した起立姿勢で濾板1に設けられた被係合部75に係合し、図5(c)及び図6に示すように、凹所6a内に没入した姿勢では被係合部75に係合しないようになっている。
ここで、被係合部75は、濾板1の把手1aの下端部に一体的に形成されたものであり、濾板1の厚み寸法よりも薄肉の断面矩形状の突出壁として構成されている。
【0036】
そして、図6において、移送筐体6のトッププレート63の位置をh1、起立姿勢のときの係合爪7の先端位置をh2、被係合部75の下端位置をh3とすると、係合爪7の起立姿勢のときの移送筐体6からの突出寸法はh2-h1であり、また、係合爪7の爪部74の被押圧面742の下端位置が被係合部75の下端位置h3に略対応して配置されている。尚、被係合部75の下端位置h3は、移送体5の移動時の上下方向ばらつきを考慮して移送筐体6の頂部(トッププレート63)と干渉しないように選定されている。
【0037】
更に、係合爪7の爪部74の幅寸法(移送体5の移動方向に沿う方向の幅寸法に相当)をw1、複数の濾板1の把手1aに形成された被係合部75間の隙間寸法をw2とすると、w1<w2を満たすように選定されている。尚、本例では、w1は被係合部75の厚み寸法に略対応して選定されているが、これに限定されるものではない。
【0038】
<開閉蓋>
また、移送体5は、移送筐体6の凹所6aの上部に、トッププレート63に形成されたスリット65を選択的に開閉する開閉蓋11を備えている。この開閉蓋11は、図1(c)に示す挙動規制手段8の一要素に相当するものである。本例では、一対のサイドプレート62のうち係合爪7の軸72位置よりも上側の領域には、開閉蓋11の幅方向両側部を摺動可能に保持する長孔66が開設されている。ここで、長孔66はベースプレート61の長手方向、即ち、移送体5の移動方向に沿って形成されており、開閉蓋11は長孔66に沿って摺動可能に移動するようになっている。
【0039】
そして、本例では、開閉蓋11は、図5(b)に示すように、一対のサイドプレート62の長孔66を挿通する略矩形状の板状材であって、開閉蓋11の移動方向寸法はスリット65の長手方向寸法に選定されている。また、開閉蓋11の幅方向寸法がトッププレート63の幅寸法(一対のサイドプレート62の外側面間の幅寸法に相当)よりも長く設定されており、その両端部が一対のサイドプレート62の外側面から外方に突出して配置されている。更に、開閉蓋11の幅方向両端部上には一対の保持スライダ110が取り付けられ、この保持スライダ110はその内側面がトッププレート63の長手方向に沿った側縁部に摺動可能に保持されている。
【0040】
<係合爪と開閉蓋との関係>
更に、本例では、トッププレート63のスリット65は、トッププレート63の長手方向の略半分の領域に設けられている。このため、開閉蓋11は、長孔66の完了待機位置Pe側の終端位置寄りに位置するときには、開閉蓋11の初期待機位置Ps側の縁部がスリット65の完了待機位置Pe側の終端位置に面して配置され、スリット65を開放状態に保つ。一方、開閉蓋11は、長孔66の初期待機位置Ps寄りに位置するときには、スリット65を閉鎖状態に保つ。
本例では、開閉蓋11でスリット65を開放する場合には、図5(a)に示すように、係合爪7はねじりコイルバネ73によって付勢され、スリット65から突出して起立する。このとき、付勢された係合爪7は開閉蓋11の初期待機位置Ps側の縁部に当接して回転動作が規制されることから、この縁部は姿勢保持手段10(図1(c)参照)として機能し、係合爪7は略直立した状態の起立姿勢で保持される。
【0041】
これに対し、開閉蓋11でスリット65を閉鎖する場合には、図5(c)に示すように、係合爪7はねじりコイルバネ73によって付勢されるが、開閉蓋11でスリット65を閉鎖するときに、係合爪7はねじりコイルバネ73の付勢力に抗して起立姿勢から次第に横倒姿勢へと押し倒され、ついには、凹所6a内に没入した状態に保持される。
尚、本例では、係合爪7の起立姿勢は、開閉蓋11の初期待機位置Ps側の縁部で保持される態様であるが、これに限られるものではなく、例えば開閉蓋11ではなく、付勢された係合爪7をスリット65の完了待機位置Pe側の終端位置に当接させ、係合爪7の起立姿勢を保持するようにしてもよい。つまり、スリット65の完了待機位置Pe側の終端位置を姿勢保持手段10(図1(c)参照)として機能させるようにしても構わない。
【0042】
-移送制御装置-
本実施の形態において、移送制御装置30は、図1(a)に示す移送制御手段12を具現化したもので、図3及び図4に示すように、夫々の案内側板22の外側に当該案内側板22が延びる方向に沿って配設され、一対の移送体5を往復移動可能に移送する図1(b)の搬送手段13に相当する無端チェーン80と、夫々の無端チェーン80を回転させるためのサーボモータ14と、サーボモータ14の回転を制御する図1(b)の制御部15に相当する制御装置100とを含んで構成されている。尚、図4中、符号90はサーボモータ14のモータ制御基板を示す。
【0043】
<無端チェーン及びサーボモータ>
本例において、無端チェーン80は、構成要素である複数のリンク枠81が連結されたエンドレスチェーンであって、一端部においてストッパ24の外側に設けられる従動スプロケット83と噛合し、他端部においてプレス機構23の外側に設けられる駆動スプロケット84が噛合している。ここで、駆動スプロケット84と同軸に連結された伝達スプロケット85は、更に、駆動チェーン86の一端部が噛合しているが、駆動チェーン86の他端部にはサーボモータ14と同軸の伝達スプロケット91が噛合しているため、サーボモータ14を回転させることによって、その回転を無端チェーン80に伝達することができる。
【0044】
更に、無端チェーン80を構成する一部のリンク枠81上には、移送体5を搭載して固定するためのフランジ82が設けられている。このため、サーボモータ14を回転させた場合に、その回転に伴ってフランジ82を移動することが可能になり、フランジ82上に搭載した移送体5を移動することが可能である。
【0045】
<制御装置>
本例において、サーボモータ14は、図4に示すように、制御装置100と電気的に接続されており、この制御装置100は汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、プログラマブル論理デバイス、等)を含み、メモリ101には各種情報や濾板開放処理に必要なプログラム等が予め格納されている。
【0046】
ここで、メモリ101に格納されている位置情報としては、図4に示すように、例えば以下のものが挙げられる。
・ai:プレス機構による加圧時の各濾板位置
・bi:濾板開放処理時の各濾板の移送位置
・Ps:初期待機位置
・Pe:完了待機位置
【0047】
より具体的に述べると、aiは移送対象濾板がプレス機構23側からi番目の濾板1の位置であることを示すもので、本例では、重合配置された濾板1の把手1aに形成された被係合部75の背面側に位置する当接面751(図6参照)の位置が選定されている。このため、移送対象濾板1となる当接面751の位置情報に基づいてサーボモータ14の回転数を制御することにより、移送体5の係合爪7をその当接面751の位置に移動することができる。
また、biは濾板開放処理時にi番目の移送対象濾板1の移送先の位置を示すもので、本例では、濾板1の把手1aに形成された被係合部75の当接面751の位置がどこにあるべきかが選定されている。このため、移送対象濾板1となる当接面751の位置情報に基づいてサーボモータ14の回転数を制御することにより、移送体5の係合爪7を介して移送対象濾板1を移送先位置に移動することができる。
【0048】
更に、メモリ101には、初期待機位置Ps及び完了待機位置Peが格納されている。このため、サーボモータ14の回転を制御することによって、重合配置されている濾板1群を一枚ずつ開放処理するときには、移送体5を予め決められた初期待機位置Psから移動させることができ、重合配置されていた濾板1群に対する濾板開放処理が全て完了したときには、移送体5を完了待機位置Peに一時的に移動させることができる。しかも、特定の濾板1に対して点検整備を行うときなど、全ての濾板1に濾板開放処理を実施する必要がない場合には、特定の濾板1の移送先の位置から直接、完了待機位置Peに移送体5を一時的に移動させることができるため、従前のように、濾板1群を構成する全ての濾板1に対する濾板開放処理が不要であり、よって、濾板1の点検整備を終えて通常の操業に復帰する際も、その復帰がスムーズである。
【0049】
ここで、初期待機位置Psとしては、プレス機構23による加圧解除時の可動板23aの初期位置よりも無端チェーン80の他端部側(駆動スプロケット84側)の位置であることが好ましく、完了待機位置Peとしては、ストッパ24に最も近接する濾板1よりも無端チェーン80の一端部側(従動スプロケット83側)の位置であることが好ましい。これにより、移送体5の係合爪7が、可動板23a及び複数の濾板1群との間で不必要に接触するのを防止できる。つまり、プレス機構23による加圧動作及びストッパ24によるせき止め作用により複数の濾板1群を加圧して重合配置する際に、仮に、移送体5が初期待機位置Ps又は完了待機位置Pe以外の途中に残っているとすると、係合爪7が誤って起立状態にあることによって、可動板23a及び複数の濾板1群に係合爪7が干渉し、移送体5が上記の加圧動作によって破損してしまう懸念があるが、移送体5の待機位置を適切に選定することで移送体5が破損する懸念は有効に防止できる。
【0050】
-濾板開放処理-
本実施の形態では、フィルタプレス装置20は、図8(a)(b)に示すように、ケーキ排出工程又は濾布洗浄工程において、重合配置された複数の濾板1群を一枚ずつ移送して隣接する濾板1から引き離す濾板開放処理を実施する。
本例において、濾板開放処理は、例えば図7に示すように、制御装置100によりプレス機構23の加圧動作及びサーボモータ14の回転を制御することで実施される。
【0051】
<ステップ1(ST1)>
先ず、プレス機構23による加圧動作を停止する。この場合、図2及び図8(a)に示すように、プレス機構23の可動板23aは、重合配置された複数の濾板1群から離間する方向に後退し、加圧位置P1から初期位置P0に戻る。この状態において、重合配置された複数の濾板1群と可動板23aとの間には各濾板1が移動可能な間隙が確保されている。
【0052】
<ステップ2(ST2)>
次に、移送体5が初期待機位置Psに位置していることを確認し、移送体5の係合爪7を起立姿勢に設定する。このとき、移送体5の位置確認については作業者による目視確認でもよいし、あるいは、図示外の位置センサによって移送体5の位置確認を行うようにしてもよい。また、移送体5の係合爪7の起立姿勢設定については、例えば以下のように手作業で行うことが可能である。
具体的には、初期待機位置Psに移送体5を待機させた状態で、移送体5の開閉蓋11を閉鎖位置から開放位置へと摺動させ、サイドプレート62に開設された長孔66のストッパ24側の終端位置に開閉蓋11を寄せる。すると、トッププレート63のスリット65が開放され、ねじりコイルバネ73によって付勢された係合爪7がスリット65から突出して起立し、係合爪7のストッパ24側の縁部が開閉蓋11のプレス機構23側の縁部に当接し、スリット65から突出した係合爪7が略直立状態の起立姿勢に保持される。
【0053】
<ステップ3(ST3)>
この後、制御装置100は、図8(a)に示すように、プレス機構23に近い側からi番目(i=1)の移送対象濾板1を選定し、濾板位置ai(i=1)、移送位置bi(i=1)を認識した後に、先ず、サーボモータ14を正回転方向に駆動し、初期待機位置Psから完了待機位置Peに向かう往方向に移送体5を移動させる。このとき、移送体5の係合爪7が起立姿勢に設定されているか否かを図示外の光学センサで確認する等してもよい。
【0054】
そして、移送体5の係合爪7が移送対象濾板1の目標位置ai(i=1)に到達する過程では、図9(a)に示すように、移送体5の係合爪7が濾板1の把手1aに形成された被係合部75に到着すると、係合爪7の爪部74の被押圧面742が被係合部75の対向する当接面752に接触することにより押圧されるが、更に、移送体5が被係合部75側に向かって移動すると、図9(b)に示すように、爪部74の被押圧面742と被係合部75の当接面752との接触位置が被押圧面742の先端側に移動し、係合爪7がねじりコイルバネ73の付勢力に抗して一時的に倒れ、爪部74の被押圧面742が被係合部75の突出端面753を摺動する。そして、係合爪7の爪部74の当接面741が被係合部75の背面側の当接面751を超えたところでサーボモータ14の回転を停止させる。すると、図9(c)に示すように、係合爪7の爪部74の被押圧面742の押圧状態が解除され、係合爪7がスリット65から再び突出して起立姿勢となる。
【0055】
<ステップ4(ST4)>
次に、この状態からサーボモータ14を逆回転方向に駆動し、移送体5をプレス機構23側へ移動させる。すると、移送体5の係合爪7に着目すると、爪部74の当接面741が把手1aの被係合部75の背面側の当接面751に当接する。このように当接した状態を保持したまま係合爪7は移送体5によってプレス機構23側へ移動する。これにより、移送対象濾板1は、重合配置された濾板1群から引き離される。続いて、サーボモータ14の逆回転駆動を継続して、濾板1を移送先である移送位置bi(i=1)まで移送する。この段階において、1枚目の濾板1に対する濾板開放処理が終了する。
【0056】
<ステップ5(ST5)>
次に、ステップ3と略同様に、i番目(i=i+1)の移送対象濾板1を選定し、濾板位置ai(i=i+1)、移送位置bi(i=i+1)を認識した後に、サーボモータ14を正回転方向に駆動し、移送体5をストッパ24側へ移動させる。そして、i番目(ここではi=2)の移送対象濾板1に対して、ステップ3,4と同様の処理を行い、2枚目の濾板1に対する濾板開放処理を終了する。
以降、重合配置された複数の濾板1群について、濾板1群の重合配置状態が解消するまでステップ3,4を繰り返す。
【0057】
<ステップ6(ST6)>
複数の濾板1群の全てについて、図8(b)に示すように、濾板開放処理が完了するときは、完了待機位置Peに移送体5を一時待機させるようにすればよい。
このとき、次の濾板開放処理を実施するには、移送体5を初期待機位置Psに戻すことが必要であるが、移送体5の係合爪7が起立姿勢のままであると、完了待機位置Peから初期待機位置Psの移動範囲内において存在する複数の濾板1群の被係合部75と移送体5の係合爪7とが干渉してしまう懸念がある。
そこで、本例では、完了待機位置Peに待機する移送体5に対して、手作業で起立姿勢の係合爪7を移送筐体6の凹所6a内に没入させるようにし、その後、初期待機位置Psに移動させるようにしたものである。
【0058】
移送体5の係合爪7を起立姿勢から没入姿勢に変更する場合には、移送体5の開閉蓋11を開放位置から閉鎖位置へと摺動させ、サイドプレート62の長孔66のプレス機構23側の終端縁に開閉蓋11を寄せる。すると、スリット65から突出していた係合爪7は、ねじりコイルバネ73の付勢力に抗して開閉蓋11の閉動作に伴って起立姿勢から次第に倒れ込み、開閉蓋11がスリット65を閉鎖した時点で、凹所6a内に没入した状態で横倒姿勢に保持される。
この状態において、移送体5の係合爪7は、濾板開放処理が完了した各濾板1の被係合部75とは係合しない位置関係になるため、サーボモータ14を逆回転駆動し、完了待機位置Peから初期待機位置Psに移送体5を移動させるようにすればよい。これにより、係合爪7を濾板1の被係合部75に接触させることなく移送体5を初期待機位置Psに移動させることが可能である。
【0059】
-係合爪の姿勢自動設定手法-
本実施の形態では、移送体5の係合爪7の起立姿勢設定及び横倒姿勢設定については手作業で行う手法を示したが、これに限られず、いずれも自動的に設定することも可能である。
【0060】
<係合爪の起立姿勢自動設定>
図10(a)は移送体5の係合爪7を自動的に起立姿勢に設定する手法を示す。
本手法は、開閉蓋11の両端部に保持スライダ110を段付きで備えている構成を利用したものである。
同図において、移送体5が初期待機位置Psにおいて待機しているとすると、移送体5の移動方向に沿って初期待機位置Psよりも更に奥まった箇所に、第1のモード設定部として、係合爪7のモードステージMS1を確保し、保持スライダ110に対応する箇所に引っ掛け部材120を配置し、濾板開放処理を開始するときに、サーボモータ14を逆回転方向に駆動することで、モードステージMS1にて引っ掛け部材120に保持スライダ110を当接させることで開閉蓋11を開放位置に移動させ、これにより、スリット65から係合爪7を突出させて起立姿勢に自動設定するようにすればよい。
【0061】
<係合爪の横倒姿勢自動設定>
図10(b)は移送体5の係合爪7を自動的に横倒姿勢に設定する手法を示す。
本手法も、開閉蓋11の両端部に保持スライダ110を段付きで備えている構成を利用したものである。
同図において、移送体5が完了待機位置Peにおいて待機しているとすると、移送体5の移動方向に沿って完了待機位置Peよりも更に奥まった箇所に、第2のモード設定部として、係合爪7のモードステージMS2を確保し、保持スライダ110に対応する箇所に引っ掛け部材121を配置し、濾板開放処理が完了したときにサーボモータ14を正回転駆動することで、モードステージMS2にて引っ掛け部材121に保持スライダ110を当接させ、開閉蓋11を閉鎖位置に移動させ、これにより、開閉蓋11でスリット65を閉鎖しして係合爪7を横倒姿勢に自動設定するようにすればよい。
【0062】
このように、係合爪7を自動的に起立姿勢や横倒姿勢に設定するために、移送体5の通常の移動範囲外に係合爪7のモードステージMS(MS1,MS2)を確保し、保持スライダ110に対応する箇所に引っ掛け部材120,121を配置するようにすれば、引っ掛け部材120,121に保持スライダ110が不必要に接触することにより、開閉蓋11が濾板開放処理中に移動してしまうことを防止することが可能である。したがって、かかる構成を有していれば、複数の濾板1群に対する濾板開放処理を連続して実施しやすくなる。
【0063】
また、前述した係合爪7の姿勢自動設定手法にあっては、初期待機位置Ps、完了待機位置Peに隣接してモードステージMS1、MS2を別途確保し、各モードステージMS1、MS2にて係合爪7の姿勢を自動設定するようにしているが、これに限られるものではなく、移送体5が初期待機位置Ps又は完了待機位置Peに到達した段階にて係合爪7の姿勢を自動設定するようにしてもよいことは勿論である。この態様では、移送体5が完了待機位置Peに到達する段階で係合爪7が横倒姿勢に設定され、また、移送体5が初期待機位置Psに戻った段階で係合爪7が起立姿勢に設定される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の濾板移送装置は、従前の方式に比べて、濾板移送装置の移送体の構成を簡略化でき、しかも、移送体の位置制御を精度よく実現する上で有効である。
よって、このような濾板移送装置を用いたフィルタプレス装置は、ケーキ排出工程や濾布洗浄工程において、効率の良い濾板開放処理を連続的に実施することができる。
更に、特定の濾板に対して点検整備を行う場合であっても、一枚目の濾板から特定の濾板までの濾板開放処理を実施すればよく、全ての濾板に対して濾板開放処理を実施せずに、効率の良い濾板の点検整備が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 濾板
1a 把手
1b 濾板本体
2 案内部材
3 加圧手段
3a 可動部材
4 濾板移送装置
5 移送体
6 移送筐体
6a 凹所
7 係合爪
8 挙動規制手段
9 付勢手段
10 姿勢保持手段
11 開閉蓋
12 移送制御手段
13 搬送手段
14 サーボモータ
15 制御部
16 濾布
17 濾布吊アーム
20 フィルタプレス装置
22 案内側板
23 プレス機構
23a 可動板
23b ピストンロッド
24 ストッパ
25 ケーキ搬送機構
25a ケーキ搬送ベルト
25b ゲート
25c 収容容器
26 濾布洗浄機構
30 移送制御装置
61 ベースプレート
62 サイドプレート
63 トッププレート
64 取付用ブロック
65 スリット
66 長孔
71 棒状部材
72 軸
73 ねじりコイルバネ
74 爪部
741 当接面
742 被押圧面
75 被係合部
751 当接面
752 当接面
753 突出端面
80 無端チェーン
81 リンク枠
82 フランジ
83 従動スプロケット
84 駆動スプロケット
85 伝達スプロケット
86 駆動チェーン
90 モータ制御基板
91 伝達スプロケット
100 制御装置
101 メモリ
110 保持スライダ
120 引っ掛け部材
121 引っ掛け部材
MS(MS1,MS2) モードステージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10