(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015760
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド取付構造、液体吐出ユニット及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230125BHJP
【FI】
B41J2/01 307
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119720
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】菊地 徹平
(72)【発明者】
【氏名】中村 涼真
(72)【発明者】
【氏名】石山 良之
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA23
2C056EB16
2C056EB34
2C056FA04
2C056FA10
2C056FA13
2C056HA05
2C056HA08
2C056HA11
2C056KB16
(57)【要約】
【課題】液体吐出ヘッド取付構造の省スペース化を図る。
【解決手段】液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッド100を取り付ける液体吐出ヘッド取付構造40であって、液体吐出ヘッド取付構造40は、液体吐出ヘッド100が取り付けられる取付部材41と、液体吐出ヘッド100のノズル面と交差する側面110bに接触して取付部材41に対する液体吐出ヘッド100の位置を調整する位置調整部材42を備え、ノズル面と直交する方向から見て、位置調整部材42の少なくとも一部は、液体吐出ヘッド100のノズル以外の部分に重なるように配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドを取り付ける液体吐出ヘッド取付構造であって、
前記液体吐出ヘッドが取り付けられる取付部材と、
前記液体吐出ヘッドのノズル面と交差する側面に接触して前記取付部材に対する前記液体吐出ヘッドの位置を調整する位置調整部材を備え、
前記ノズル面と直交する方向から見て、前記位置調整部材の少なくとも一部は、前記液体吐出ヘッドの前記ノズル以外の部分に重なるように配置されることを特徴とする液体吐出ヘッド取付構造。
【請求項2】
前記位置調整部材は、前記液体吐出ヘッドの側面に接触し支点を中心に回転可能に設けられた位置調整アームを有し、
前記ノズル面と直交する方向から見て、前記位置調整アームの少なくとも一部は、前記ノズル以外の前記液体吐出ヘッドの部分に重なるように配置される請求項1に記載の液体吐出ヘッド取付構造。
【請求項3】
前記ノズル面と直交する方向から見て、前記位置調整アームが前記前記液体吐出ヘッドの側面から液体吐出ヘッド領域外へ突出する突出量は、1mm以下である請求項2に記載の液体吐出ヘッド取付構造。
【請求項4】
前記位置調整部材は、前記位置調整アームと、前記位置調整アームに接触し前記位置調整アームの回転方向の位置を変更するアーム位置調整部材を含み、
前記液体吐出ヘッドの側面に対して接触する前記位置調整アームの接触部は、前記アーム位置調整部材が前記位置調整アームに対して接触する接触部よりも前記支点に近い位置にある請求項2又は3に記載の液体吐出ヘッド取付構造。
【請求項5】
前記アーム位置調整部材は、回転中心から外周面までの半径が回転方向に変化するカム又は偏心部材、あるいは外周面が回転軸方向に向かって縮径するテーパねじである請求項4に記載の液体吐出ヘッド取付構造。
【請求項6】
前記アーム位置調整部材は、複数の前記ノズルが直線状に配列されるノズル配列方向に沿って伸びる前記液体吐出ヘッドの側面に対向して配置される請求項4又は5に記載の液体吐出ヘッド取付構造。
【請求項7】
前記アーム位置調整部材は、複数の前記ノズルが直線状に配列されたノズル配列方向に対して交差する前記液体吐出ヘッドの側面に対向して配置される請求項4から6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド取付構造。
【請求項8】
前記アーム位置調整部材は、前記ノズルが配置される前記取付部材のノズル面側とは反対側の面に設けられる請求項4から7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド取付構造。
【請求項9】
前記液体吐出ヘッドの側面に凹部が設けられ、
前記凹部に対して前記位置調整アームに設けられた凸部が接触する請求項2から8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド取付構造。
【請求項10】
前記位置調整アームは、前記ノズル面よりも液体吐出方向へ突出しないように配置される請求項2から9のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド取付構造。
【請求項11】
前記取付部材及び前記位置調整部材は、前記液体吐出ヘッドごとに設けられる請求項1から10のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド取付構造。
【請求項12】
前記位置調整部材は、前記液体吐出ヘッドの所定方向の位置を調整する第1の位置調整部材と、前記液体吐出ヘッドの前記所定方向とは異なる方向の位置を調整する第2の位置調整部材を有する請求項1から11のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド取付構造。
【請求項13】
前記第2の位置調整部材は、前記液体吐出ヘッドに対して直接接触して前記液体吐出ヘッドの位置を調整する請求項12に記載の液体吐出ヘッド取付構造。
【請求項14】
前記液体吐出ヘッドの側面は、複数の前記ノズルが直線状に配列されたノズル配列方向に対して傾斜する傾斜面を有し、
前記傾斜面に接触し前記液体吐出ヘッドを前記第1の位置調整部材及び第2の位置調整部材に対して接触するように押圧する押圧部材を備える請求項12又は13に記載の液体吐出ヘッド取付構造。
【請求項15】
液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを取り付ける液体吐出ヘッド取付構造を備える液体吐出ユニットにおいて、
前記液体吐出ヘッド取付構造として、請求項1から14のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド取付構造を用いたことを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項16】
請求項15に記載の液体吐出ユニットを備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド取付構造、液体吐出ユニット及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出装置の一例として、紙などのシートにインクを吐出して画像を形成するインクジェット式の画像形成装置が知られている。
【0003】
斯かる画像形成装置においては、良好な画像形成を行うために、インクを吐出する液体吐出ヘッドの位置決めを高精度に行う必要がある。
【0004】
そのため、例えば、特許文献1(特開2011-201322号公報)においては、液体吐出ヘッドの側面にカムを接触させ、そのカムを回転させることにより、液体吐出ヘッドの位置を調整する構成が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成の場合、位置調整部材としてのカムが、液体吐出ヘッドの側面よりも外側(液体吐出ヘッド領域外)に配置されているため、設置スペースが余分に必要になり、省スペース化を図り難いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドを取り付ける液体吐出ヘッド取付構造であって、前記液体吐出ヘッドが取り付けられる取付部材と、前記液体吐出ヘッドのノズル面と交差する側面に接触して前記取付部材に対する前記液体吐出ヘッドの位置を調整する位置調整部材を備え、前記ノズル面と直交する方向から見て、前記位置調整部材の少なくとも一部は、前記液体吐出ヘッドの前記ノズル以外の部分に重なるように配置されることを特徴とする
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体吐出ヘッド取付構造の省スペース化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(圧力室長手方向)に沿う断面説明図である。
【
図2】
図2の液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【
図3】本実施形態に係る液体吐出ヘッド取付構造の上面図である。
【
図4】本実施形態に係る液体吐出ヘッド取付構造の下面図である。
【
図5】本実施形態に係る液体吐出ヘッド取付構造を
図3における矢印A方向から見た側面図である。
【
図6】本実施形態に係る液体吐出ヘッド取付構造を
図3における矢印B方向から見た側面図である。
【
図7】押圧アームによって付与される押圧力を説明するための図である。
【
図8】複数の液体吐出ヘッドをノズル配列方向に並べて配置した状態を示す図である。
【
図9】第1の調整カム及び第2の調整カムの他の配置例を示す図である。
【
図10】位置調整アームの力点と作用点における変位量を説明するための図である。
【
図11】押圧アームに代えて2つの押圧ばねが設けられた例を示す図である。
【
図12】1つの押圧ばねが設けられた例を示す図である。
【
図13】凹部をU字状に形成した例を示す図である。
【
図14】第1の調整カム及び第2の調整カムに代えて2つの偏心部材が設けられた例を示す図である。
【
図15】第1の調整カム及び第2の調整カムに代えて2つのテーパねじが設けられた例を示す図である。
【
図16】テーパねじの作用を説明するための図である。
【
図17】本発明に係る液体吐出ヘッドの他の例を示す外観斜視図である。
【
図18】
図17に示される液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面図である。
【
図20】液体吐出装置のヘッドユニットの一例を示す平面図である。
【
図21】液体循環装置の一例を示すブロック図である。
【
図22】本発明に係る液体吐出装置としての印刷装置の要部を示す平面図である。
【
図24】本発明に係る液体吐出ユニットの他の例の要部を示す平面図である。
【
図25】本発明に係る液体吐出ユニットのさらに他の例を示す正面図である。
【
図26】比較例に係る液体吐出ヘッド取付構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向とは直交する方向(圧力室長手方向)に沿う断面説明図、
図2は、同じくノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【0011】
本実施形態の液体吐出ヘッド100は、ノズル板1と、個別流路部材である流路板2と、壁面部材としての振動板部材3とを積層接合している。そして、振動板部材3の振動領域(振動板)30を変位させる圧電アクチュエータ11と、ヘッドのフレーム部材を兼ねている共通流路部材20とを備えている。
【0012】
ノズル板1は、液体を吐出する複数のノズル4を有している。
【0013】
流路板2は、複数のノズル4に通じる複数の圧力室6と、各圧力室6にそれぞれ通じる個別流路である個別供給流路7と、1又は複数(本実施形態では1つ)の個別供給流路7に通じる液導入部となる中間供給流路8を形成している。
【0014】
個別供給流路7は、圧力室6よりも流体抵抗が高い2つの第1流路部7A及び第2流路部7Bと、第1流路部7Aと第2流路部7Bとの間に配置され、第1流路部7A及び第2流路部7Bよりも流体抵抗が低い第3流路部7Cとを含む。
【0015】
なお、流路板2は、複数枚の板状部材2A,2Bを積層して構成しているが、これに限るものではない。
【0016】
振動板部材3は、流路板2の圧力室6の壁面を形成する変位可能な複数の振動板(振動領域)30を有する。ここでは、振動板部材3は2層構造(限定されない)とし、流路板2側から薄肉部を形成する第1層3Aと、厚肉部を形成する第2層3Bで構成されている。
【0017】
そして、薄肉部である第1層3Aで圧力室6に対応する部分に変形可能な振動領域30を形成している。振動領域30内には、第2層3Bで圧電アクチュエータ11と接合する厚肉部である凸部30aを形成している。
【0018】
そして、振動板部材3の圧力室6とは反対側に、振動板部材3の振動領域30を変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ11を配置している。
【0019】
この圧電アクチュエータ11は、ベース部材13上に接合した圧電部材にハーフカットダイシングによって溝加工をして、ノズル配列方向において、所要数の柱状の圧電素子12を所定の間隔で櫛歯状に形成している。そして、圧電素子12は、振動板部材3の振動領域30に形成した厚肉部である凸部30aに接合している。
【0020】
この圧電素子12は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極(端面電極)に接続され、外部電極にフレキシブル配線部材15が接続されている。
【0021】
共通流路部材20は、複数の圧力室6に通じる共通供給流路10を形成している。共通供給流路10は、振動板部材3に設けた開口部9を介して液導入部となる中間供給流路8に連通し、中間供給流路8を介して個別供給流路7に通じている。
【0022】
この液体吐出ヘッド100においては、例えば圧電素子12に与える電圧を基準電位(中間電位)から下げることによって圧電素子12が収縮し、振動板部材3の振動領域30が引かれて圧力室6の容積が膨張することで、圧力室6内に液体が流入する。
【0023】
その後、圧電素子12に印加する電圧を上げて圧電素子12を積層方向に伸長させ、振動板部材3の振動領域30をノズル4に向かう方向に変形させて圧力室6の容積を収縮させることにより、圧力室6内の液体が加圧され、ノズル4から液体が吐出される。
【0024】
次に、本実施形態に係る液体吐出ヘッド100の取付構造(液体吐出ヘッド取付構造)及び液体吐出ヘッド100の位置調整機構について説明する。
【0025】
図3は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド取付構造の上面図、
図4は、同液体吐出ヘッド取付構造の下面図、
図5は、同液体吐出ヘッド取付構造を
図3における矢印A方向から見た側面図、
図6は、同液体吐出ヘッド取付構造を
図3における矢印B方向から見た側面図である。
【0026】
図3~
図6に示されるように、本実施形態に係る液体吐出ヘッド取付構造40は、液体吐出ヘッド100が取り付けられる取付部材としての取付プレート41を備えている。取付プレート41は、中央部に略矩形の挿通孔41aが形成された枠状部材である。
【0027】
液体吐出ヘッド100は、取付プレート41の挿通孔41aに挿通されるようにして取り付けられる。詳しくは、液体吐出ヘッド100のノズル面100aが取付プレート41の挿通孔41aを通過するように、液体吐出ヘッド100を取付プレート41に挿通させる。そして、液体吐出ヘッド100に設けられたフランジ部100bの下面が、取付プレート41の上面に突き当たることにより、液体吐出ヘッド100が取付プレート41上で保持される。
【0028】
ここで、挿通孔41aは、液体吐出ヘッド100の位置調整を行えるように、液体吐出ヘッド100の挿通される部分よりも大きく形成されている。すなわち、上記のように、液体吐出ヘッド100が取付プレート41に挿通されて取付プレート41上で保持されただけの状態においては、液体吐出ヘッド100が、取付プレート41に対して平面状のノズル面100aと平行な面に沿って変位可能となっている。そのため、本実施形態においては、取付プレート41に対する液体吐出ヘッド100の位置調整と位置決めを行うための機構が設けられている。
【0029】
具体的に、本実施形態においては、液体吐出ヘッド100の位置調整及び位置決めを行う機構として、主にノズル配列方向Xの位置調整及び位置決めを行う第1の位置調整部材21と、主にノズル面100aと平行な面内における回転方向(
図3におけるθ方向)の位置調整及び位置決めを行う第2の位置調整部材22と、液体吐出ヘッド100を押圧する押圧部材23が、取付プレート41に設けられている。なお、ここでいう「ノズル配列方向」とは、ノズル面100aに設けられた複数のノズル4(
図4参照)が直線状に並ぶ方向を意味する。
【0030】
第1の位置調整部材21は、一端側の支点を中心に他端側が回転する長手状の位置調整アーム42と、位置調整アーム42の回転方向の位置を変更するアーム位置調整部材としての第1の調整カム43を有している。
図3に示されるように、位置調整アーム42は、その長手方向中央よりも一端側において、取付プレート41に設けられた支軸45に取り付けられている。位置調整アーム42は、支軸(支点)45を中心に図の矢印方向に回転することにより、ノズル面100aに平行な面内において回転可能に構成されている。
【0031】
第1の調整カム43は、位置調整アーム42の長手方向中央を挟んで支点側とは反対側に接触するように配置されている。第1の調整カム43は、回転中心からの距離(半径)が回転方向に変化する外周面(カム面)を有しており、その外周面が位置調整アーム42に接触するように配置されている。
【0032】
第2の位置調整部材22は、第2の調整カム44を有している。第2の調整カム44は、回転中心からの距離(半径)が回転方向に変化する外周面(カム面)を有し、その外周面において液体吐出ヘッド100に直接接触するように配置されている。
【0033】
押圧部材23は、一端側の支点を中心に他端側が回転する長手状の押圧アーム46と、押圧アーム46を加圧する加圧ばね47を有している。押圧アーム46は、取付プレート41に設けられた支軸(支点)48を中心に、ノズル面100aに平行な面内において回転可能に取り付けられている。また、押圧アーム46は、加圧ばね47によって加圧されることにより、液体吐出ヘッド100を押圧する。これにより、液体吐出ヘッド100は、位置調整アーム42と第2の調整カム44の両方に接触するように押圧される。
【0034】
具体的に、押圧アーム46は、液体吐出ヘッド100のフランジ部100bを構成する4つの側面、すなわち、ノズル面100aと交差(「直交」も含む。)する各側面110a~110dのうち、
図3に示される左側の側面110aに対して接触することにより、液体吐出ヘッド100を押圧する。本実施形態においては、フランジ部100bの左側の側面110aに、V字状の凹部111が設けられており、この凹部111に対して押圧アーム46に設けられた凸部46aが接触する。
【0035】
このとき、
図7に示されるように、凸部46aは、押圧アーム46の回転軌道に沿って移動することにより、V字状の凹部111を構成する2つの傾斜面111a,111bのうち、特に図の下側の傾斜面111bを押圧する。これにより、押圧アーム46の押圧力Fは、下側の傾斜面111bを介してノズル配列方向Xの分力f1とこれに直交する方向Yの分力f2に分けられる。従って、液体吐出ヘッド100は、これらの分力f1,f2によってノズル配列方向Xとこれに直交する方向Yに押圧される。
【0036】
液体吐出ヘッド100は、ノズル配列方向Xに押圧されることにより、
図3に示される右側の側面110bが、位置調整アーム42に設けられた凸部42aに接触する。また、本実施形態においては、右側の側面110bにV字状の凹部112が設けられており、この凹部112が位置調整アーム42の凸部42aに接触する。この凹部112と凸部42aとの接触により、位置調整アーム42が液体吐出ヘッド100によって押圧され、位置調整アーム42がその回転方向に移動しようとする。しかしながら、位置調整アーム42は、支点側とは反対の端部側において第1の調整カム43に接触するため、位置調整アーム42の回転が規制される。そして、これに伴いノズル配列方向Xへの液体吐出ヘッド100の移動も規制される。
【0037】
また、液体吐出ヘッド100は、上記押圧アーム46の押圧によってノズル配列方向とは直交する方向Yにも押圧される。このため、
図3に示される液体吐出ヘッド100の下側の側面110cが、第2の調整カム44に押圧されるが、このときの第2の調整カム44との接触により、ノズル配列方向とは直交する方向Yへの液体吐出ヘッド100の移動が規制される。これにより、位置調整アーム42の凸部42aを中心とする回転方向θの位置(向き)が決定される。
【0038】
このように、ノズル配列方向X及び回転方向θの液体吐出ヘッド100の位置が決定されることにより、取付プレート41に対する液体吐出ヘッド100の位置決めがなされる。
【0039】
ここで、液体吐出ヘッド100及び取付プレート41などを構成する各種構成部品においては、製造過程により生じる寸法公差があるため、液体吐出ヘッド100を取付プレート41に取り付けた際に、液体吐出ヘッド100の位置が所定の位置からずれることがある。液体吐出ヘッド100の位置が所定の位置からずれると、正確な液体吐出が行えなくなるため、取付プレート41に対する液体吐出ヘッド100の位置調整が必要である。そこで、本実施形態においては、下記のようにして液体吐出ヘッド100の位置調整を行っている。以下、本実施形態における液体吐出ヘッド100の位置調整方法について説明する。
【0040】
まず、液体吐出ヘッド100をノズル配列方向Xに位置調整したい場合は、第1の調整カム43を回転させる。第1の調整カム43を回転させることにより、その外周面(カム面)によって位置調整アーム42が動かされる。例えば、第1の調整カム43を、その回転中心から位置調整アーム42との接触部までの距離(半径)が大きくなるように回転させた場合は、位置調整アーム42が第1の調整カム43によって
図3における左方向へ押し動かされる。これに伴って、液体吐出ヘッド100が位置調整アーム42の凸部42aによって押されるため、液体吐出ヘッド100も
図3における左方向へ押し動かされる。反対に、第1の調整カム43を、その回転中心から位置調整アーム42との接触部までの距離(半径)が小さくなるように回転させた場合は、押圧アーム46の押圧力によって液体吐出ヘッド100は
図3における右方向へ押し動かされる。このように、第1の調整カム43を一方向又はその反対方向に回転させることにより、液体吐出ヘッド100のノズル配列方向Xの位置調整が可能である。
【0041】
次に、液体吐出ヘッド100の回転方向θの位置を調整したい場合は、第2の調整カム44を一方向又はその反対方向に回転させる。第2の調整カム44を回転させると、その外周面(カム面)によって液体吐出ヘッド100が直接押し動かされる。例えば、第2の調整カム44を、その回転中心から液体吐出ヘッド100の側面110cとの接触部までの距離(半径)が大きくなるように回転させた場合は、液体吐出ヘッド100が第2の調整カム44によって
図3における上方向へ押し動かされ、液体吐出ヘッド100の向きが、位置調整アーム42の凸部42aを中心に
図3における時計回りに変化する。反対に、第2の調整カム44を、その回転中心から液体吐出ヘッド100の側面110cとの接触部までの距離(半径)が小さくなるように回転させた場合は、液体吐出ヘッド100は押圧アーム46の押圧力によって
図3における下方向へ押し動かされ、液体吐出ヘッド100の向きが、位置調整アーム42の凸部42aを中心に
図3における反時計回りに変化する。このように、第2の調整カム44を一方向又はその反対方向に回転させることにより、液体吐出ヘッド100の回転方向θ(ノズル面100aと平行な面内における回転方向)の位置調整が可能である。
【0042】
上記のようにして、液体吐出ヘッド100の位置調整を行った後、その位置が正しい位置であるか否かを確認するため、液体吐出ヘッド100を搭載予定の装置に搭載し、液体吐出ヘッド100の液体吐出位置を確認する。液体吐出位置が正しい位置でなかった場合は、再び、第1の調整カム43又は第2の調整カム44を操作して位置調整を行い、液体吐出位置の確認を行う。一方、液体吐出ヘッド100の位置が決定した場合は、各調整カム43,44をねじの締め付けなどにより回転しないように固定する。以上のようにして、液体吐出ヘッド100の位置調整が完了する。
【0043】
なお、上述の位置調整においては、液体吐出ヘッド100のノズル配列方向とは直交する方向Yの位置調整は特段行っていない。この点に関して、例えば、
図8に示される例のように、液体吐出ヘッド100が、液体が吐出されるシートSの搬送方向に対してノズル配列方向Xが直交するように配置されている場合は、ノズル配列方向とは直交する方向Yの位置調整を行わなくてもよい。すなわち、この場合は、シートSの搬送タイミングに対する液体吐出ヘッド100の液体吐出タイミングを調整することにより、ノズル配列方向とは直交する方向Yの位置調整と同様の効果が得られるので、ノズル配列方向Xと回転方向θの位置調整だけで液体吐出位置のずれを解消できる。また、位置調整アーム42の凸部42aを、液体吐出ヘッド100の側面110bに設けられた凹部112ではなく、凹部112の無い側面110b(平面)に接触させてもよい。この場合、第2の調整カム44を回転操作することにより、液体吐出ヘッド100をノズル配列方向とは直交する方向Yに位置調整することも可能である。
【0044】
ここで、本実施形態に係る液体吐出ヘッド取付構造とは異なる比較例について、
図26を参照しつつ説明する。
【0045】
図26に示される比較例においては、液体吐出ヘッド200の位置調整を行う位置調整部材として、2つの調整カム81,82が設けられている。一方の調整カム81は、液体吐出ヘッド200のノズル配列方向Xの位置調整を行う第1の調整カムであり、他方の調整カム82は、液体吐出ヘッド200のノズル面と平行な面内における回転方向θの位置調整を行う第2の調整カムである。第1の調整カム81は、液体吐出ヘッド200のノズル配列方向とは直交する方向Yに伸びる一方の側面210bに接触し、第2の調整カム82は、液体吐出ヘッド100のノズル配列方向Xに伸びる一方の側面210cに接触している。また、比較例においては、液体吐出ヘッド200を各調整カム81,82に向かって押圧する2つの押圧ばね83,84が設けられている。
【0046】
上記のように構成された比較例においては、第1の調整カム81を回転させることにより、液体吐出ヘッド200のノズル配列方向Xの位置を調整でき、第2の調整カム82を回転させることにより、液体吐出ヘッド200の回転方向θの位置を調整できる。しかしながら、比較例においては、各調整カム81,82の全体が、これらが接触する液体吐出ヘッド200の各側面210b,210cよりも外側(液体吐出ヘッド領域外)に配置されているため、各調整カム81,82のサイズ分、設置スペースが大きくなる。
【0047】
これに対して、上記本発明の実施形態においては、
図3に示されるように、液体吐出ヘッド取付構造40をノズル面100aと直交する方向から見て、位置調整部材である位置調整アーム42が液体吐出ヘッド100に重なるように配置されている。すなわち、本実施形態においては、比較例のように、位置調整部材の全体が液体吐出ヘッドの側面よりも外側に配置されるのではなく、位置調整部材の少なくとも一部が液体吐出ヘッドの側面よりも内側に配置されるので、省スペース化が可能である。
【0048】
また、本実施形態においては、位置調整アーム42及び第1の調整カム43のそれぞれ全体と、第2の調整カム44の一部、さらに押圧アーム46及び加圧ばね47のそれぞれ全体が、ノズル配列方向Xに交差する一対の側面110a,110bよりも内側(
図3に示されるノズル配列方向の領域H内)に配置されている。このため、本実施形態においては、特に、ノズル配列方向Xにおける省スペース化に優れる。
【0049】
また、上記のようなノズル配列方向Xの省スペースを図れる要因として、本実施形態の次のような構成が挙げられる。
【0050】
1つ目は、液体吐出ヘッド100のフランジ部100bに、位置調整アーム42の凸部42aと接触する凹部112が設けられている点である(
図3参照)。このように、本実施形態においては、位置調整アーム42の凸部42aがフランジ部100bの凹部112に接触する構成であるため、凸部42aが凹部112の無い平坦な側面110bに接触する場合に比べて、側面110bから外側への位置調整アーム42の突出量を少なくすることができ、省スペース化を図れる。
【0051】
2つ目は、位置調整部材として長尺状の位置調整アーム42を用いている点である。すなわち、位置調整アーム42の形状を変更すれば、位置調整アーム42を動かす第1の調整カム43の配置を任意に設定できるので、第1の調整カム43を、省スペース化に有利な位置に配置できる。本実施形態においては、
図3に示されるように、第1の調整カム43を液体吐出ヘッド100の図の下側に配置し、第1の調整カム43と第2の調整カム44の配置を液体吐出ヘッド100の同じ側(図の下側)に集約している。これにより、ノズル配列方向Xにおける省スペース化を図れる。
【0052】
また、本実施形態のように、特にノズル配列方向Xの省スペース化に優れる構成においては、
図8に示されるように、複数の液体吐出ヘッド100が並んで配置される場合、各液体吐出ヘッド100をノズル配列方向Xに並べて配置することが好ましい。これにより、ノズル配列方向Xにおける省スペース化の効果を大きく期待できる。また、複数の液体吐出ヘッド100が配置される構成においては、1つの液体吐出ヘッド100に対して、1つ取付プレート41と、これに付随する各位置調整部材21,22及び押圧部材23が取り付けられる構成とすることにより、液体吐出ヘッド100の個数を増やしたい場合などに容易に対応できる。ただし、本発明はそのような構成に限定されるものではなく、複数の液体吐出ヘッド100を1つの取付プレート41にまとめて取り付ける構成であってもよい。
【0053】
また、第1の調整カム43及び第2の調整カム44は、
図3に示される液体吐出ヘッド100の下側に集約して配置されるほか、
図9に示される例のように、液体吐出ヘッド100の右側に集約して配置されてもよい。すなわち、各調整カム43,44は、液体吐出ヘッド100のノズル配列方向Xに沿って伸びる一対の側面110c,110dのいずれかに対向して配置される場合(
図3に示される例)のほか、液体吐出ヘッド100のノズル配列方向Xに対して交差(「直交」も含む。)する一対の側面110a,110bのいずれかに対向して配置される場合(
図9に示される例)であってもよい。
【0054】
ところで、
図3に示される実施形態においては、位置調整アーム42及び押圧アーム46のそれぞれの一部が、液体吐出ヘッド100のノズル配列方向Xに伸びる各側面110c、110dから外側(図の上側又は下側)へ突出するように配置されている。このように、位置調整アーム42及び押圧アーム46の一部が、液体吐出ヘッド100の各側面110c、110dから外側へ突出するように配置されている場合であっても、位置調整アーム42及び押圧アーム46のそれぞれの全体が、液体吐出ヘッド100の側面よりも外側に配置される場合に比べて、省スペース化を図れる。なお、効果的に省スペース化を図るには、各側面110c,110dから外側へ突出する位置調整アーム42及び押圧アーム46の突出量が、1mm以下であることが好ましい。また、可能であれば、位置調整アーム42及び押圧アーム46の全体が、液体吐出ヘッド100に重なるように配置されることが好ましい。
【0055】
さらに、本実施形態に係る構成によれば、上記のような省スペース化の効果が得られるほか、次のような位置調整機能の向上も期待できる。本実施形態においては、位置調整部材として位置調整アーム42を用いているため、微細な位置調整ができ、位置調整機能の向上が図れる。すなわち、本実施形態においては、
図10に示されるように、液体吐出ヘッド100の側面110bに対する位置調整アーム42の接触部(作用点p1)が、位置調整アーム42に対する第1の調整カム43の接触部(力点p2)よりも位置調整アーム42の支点p3に近い位置にあるので、第1の調整カム43を回転させた際の作用点p1の変位量d1が、このときの力点p2の変位量d2よりも小さくなる(d1<d2)。これに対して、
図26に示される第1の調整カム81を液体吐出ヘッド200に直接接触させて位置調整行う比較例においては、第1の調整カム81の回転に伴う外周面(カム面)の半径方向の変位量がそのまま液体吐出ヘッド200の移動量となる。従って、本実施形態においては、位置調整アーム42を用いることにより、第1の調整カム43の半径方向の変位量を小さい変位量に変換して液体吐出ヘッド100へ作用させることができるので、比較例に比べて、微細な位置調整(例えば、10μmごとの調整)が可能であり、位置調整の精度が向上する。
【0056】
また、本実施形態においては、押圧部材23が、液体吐出ヘッド100の側面110aに設けられた傾斜面111b(V字状の凹部111)を押圧することにより、1つの押圧部材23によってノズル配列方向Xとこれに直交する方向Yの二方向へ押圧力を付与できる。このため、本実施形態においては、
図11に示される例のような、ノズル配列方向Xとこれに直交する方向Yへ別々に押圧力を付与する2つの押圧ばね(押圧部材)54,55を備える構成に比べて、省スペース化を図れる。なお、本発明は、2つの押圧ばね54,55を用いる例を排除するものではなく、設置スペースに余裕があれば、
図11に示される構成を採用してもよい。
【0057】
また、
図12に示される例のように、1つの押圧ばね56を用いて、ノズル配列方向Xとこれに直交する方向Yの両方向に押圧力を付与することも可能である。この場合、液体吐出ヘッド100の互いに直交する側面110a,110d同士が隣接する角部に傾斜面113を設け、この傾斜面113を押圧ばね56によって押圧することにより、ノズル配列方向Xとこれに直交する方向Yの両方向に押圧力を付与できる。
【0058】
また、
図3に示される押圧アーム46又は
図12に示される押圧ばね56が押圧する各傾斜面111b,113は、ノズル配列方向Xに対して傾斜する傾斜面であれば、上記のような平面に限らず、
図13に示されるような曲面又はU字状の凹部111であってもよい。
【0059】
また、位置調整アーム42及び押圧アーム46は、ノズル面100aよりも液体吐出方向(
図5、
図6における下方)へ突出しないように配置されることが好ましい。これらのアーム42,46がノズル面100aよりも液体吐出方向へ突出しないことにより、ノズル面100aの下方を通過する用紙などの搬送物に対して各アーム42,46が接触するのを確実に回避できると共に、液体吐出方向の省スペース化も図れる。なお、位置調整アーム42及び押圧アーム46は、ノズル4からの液体吐出を妨げないようにするため、ノズル4には重ならないように配置されている(
図4参照)。
【0060】
また、本実施形態においては、第1の調整カム43及び第2の調整カム44が、取付プレート41のノズル面100a側とは反対側の面(
図5又は
図6における上面)に設けられているため、液体吐出ヘッド100の位置調整を行うときは、ユーザー又はサービスマンなどの作業者がノズル面a側とは反対側から各調整カム43,44の操作できる。これにより、作業者がノズル面100aに触れる虞が無く、容易に位置調整が可能である。また、各調整カム43,44が、ノズル面100a側とは反対側に設けられていることにより、これらの調整カム43,44が用紙などの搬送物に接触することがなく、液体吐出方向の省スペース化も図れる。
【0061】
また、第1の調整カム43及び第2の調整カム44の各位置調整部材は、カム形状ではなく、他の形状の部材であってもよい。
【0062】
例えば、
図14に示される例のように、各位置調整部材は、回転中心に対して偏心した円形の外周面を有する偏心部材51,52であってもよい。この場合、各偏心部材51,52を回転させることにより、上記調整カム43,44と同様に、液体吐出ヘッド100のノズル配列方向X及び回転方向θの位置調整が可能である。
【0063】
また、
図15に示される例のように、各位置調整部材は、外周面が回転軸方向に向かって縮径するテーパねじ61,62であってもよい。この場合、
図16に示されるように、各テーパねじ61,62を回転させると、各テーパねじ61,62のテーパ面が軸方向(上方向又は下方向)へ移動するため、そのテーパ面によって位置調整アーム42を動かしたり、液体吐出ヘッド100を直接動かしたりすることができる。これにより、液体吐出ヘッド100のノズル配列方向X及び回転方向θの位置調整が可能である。
【0064】
続いて、本発明に係る液体吐出ヘッドの他の例について、
図17及び
図18を参照して説明する。
図17は、同ヘッドの外観斜視説明図、
図18は、同ヘッドのノズル配列方向とは直交する方向に沿う断面説明図である。なお、ここでは、圧電素子1列分だけ図示している。
【0065】
図17及び
図18に示される液体吐出ヘッド100は、循環型液体吐出ヘッドであり、ノズル板1と、流路板2と、壁面部材としての振動板部材3とを積層接合している。そして、振動板部材3の振動領域(振動板)30を変位させる圧電アクチュエータ11と、ヘッドのフレーム部材を兼ねている共通流路部材20と、カバー29とを備えている。
【0066】
そして、流路板2は、複数のノズル4に各々ノズル連通路5を介して通じる複数の圧力室6と、複数の圧力室6に各々通じる複数の流体抵抗部を兼ねる個別供給流路7と、2以上の個別供給流路7に通じる1又は複数の液導入部となる中間供給流路8などを形成している。
【0067】
個別供給流路7は、前記実施形態と同様に、個別供給流路7は、圧力室6よりも流体抵抗が高い2つの第1流路部7A及び第2流路部7Bと、第1流路部7Aと第2流路部7Bとの間に配置され、第1流路部7A及び第2流路部7Bよりも流体抵抗が低い第3流路部7Cとを含む。
【0068】
なお、流路板2は、複数枚の板状部材2A~2Eを積層して構成しているが、これに限るものではない。
【0069】
また、流路板2は、複数の圧力室6にノズル連通路5を介して各々通じる流路板2の面方向に沿う複数の個別回収流路57と、2以上の個別回収流路57に通じる1又は複数の液導出部となる中間回収流路58を形成している。
【0070】
個別回収流路57は、圧力室6よりも流体抵抗が高い2つの第1流路部57A及び第2流路部57Bと、第1流路部57Aと第2流路部57Bとの間に配置され、第1流路部57A及び第2流路部57Bよりも流体抵抗が低い第3流路部57Cとを含む。個別回収流路57は、第2流路部57Bよりも循環方向において下流側となる流路部57Dは第3流路部57Cと同じ流路幅にしている。
【0071】
共通流路部材20は、共通供給流路10と共通回収流路50とを形成している。なお、本実施形態においては、共通供給流路10は、ノズル配列方向において共通回収流路50と並ぶ流路部分10Aと、共通回収流路50と並ばない流路部分10Bとで構成している。
【0072】
共通供給流路10は、振動板部材3に設けた開口部9を介して液導入部となる中間供給流路8に連通し、中間供給流路8を介して個別供給流路7に通じている。共通回収流路50は、振動板部材3に設けた開口部59を介して液導出部となる中間回収流路58に連通し、中間回収流路58を介して個別回収流路57に通じている。
【0073】
また、共通供給流路10は供給ポート71に通じ、共通回収流路50は回収ポート72に通じている(
図17参照)。
【0074】
なお、その他の振動板部材3の層構成、圧電アクチュエータ11の構成などは、前記第1実施形態と同様である。
【0075】
この液体吐出ヘッド100においても、前記第1実施形態と同様にして、圧電素子12を積層方向に伸長させ、振動板部材3の振動領域30をノズル4に向かう方向に変形させて圧力室6の容積を収縮させることにより、圧力室6内の液体が加圧され、ノズル4から液体が吐出される。
【0076】
また、ノズル4から吐出されない液体はノズル4を通過して個別回収流路57から共通回収流路50に回収され、共通回収流路50から外部の循環経路を通じて共通供給流路10に再度供給される。また、ノズル4から液体吐出を行っていないときも、共通供給流路10から圧力室6を経て共通回収流路50に液体が循環し、外部の循環経路を通じて共通供給流路10に再度供給される。
【0077】
本実施形態においても、簡単な構成で、液体吐出に伴う圧力変動を減衰して、共通供給流路10、共通回収流路50に対する伝搬を抑制することができる。
【0078】
次に、本発明に係る液体を吐出装置の一例について
図19及び
図20を参照して説明する。
図19は、同装置の概略説明図、
図20は、同装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
【0079】
この液体吐出装置である印刷装置500は、連続体510を搬入する搬入手段501と、搬入手段501から搬入された連帳紙、シート材などの連続体510を印刷手段505に案内搬送する案内搬送手段503と、連続体510に対して液体を吐出して画像を形成する印刷を行う印刷手段505と、連続体510を乾燥する乾燥手段507と、連続体510を搬出する搬出手段509などを備えている。
【0080】
連続体510は搬入手段501の元巻きローラ511から送り出され、搬入手段501、案内搬送手段503、乾燥手段507、搬出手段509の各ローラによって案内、搬送されて、搬出手段509の巻取りローラ591にて巻き取られる。
【0081】
この連続体510は、印刷手段505において、搬送ガイド部材559上をヘッドユニット550及びヘッドユニット555に対向して搬送され、ヘッドユニット550から吐出される液体によって画像が形成され、ヘッドユニット555から吐出される処理液で後処理が行われる。
【0082】
ここで、
図20に示されるように、ヘッドユニット550には、例えば、搬送方向上流側から、4色分のフルライン型ヘッドアレイ551A、551B、551C、551D(以下、色の区別しないときは「ヘッドアレイ551」という。)が配置されている。
【0083】
各ヘッドアレイ551は、液体吐出手段であり、それぞれ、搬送される連続体510に対してブラックK,シアンC、マゼンタM、イエローYの液体を吐出する。なお、色の種類及び数はこれに限るものではない。
【0084】
ヘッドアレイ551は、例えば、本発明に係る液体吐出ヘッド(これを、単に「ヘッド」ともいう。)100をベース部材552上に千鳥状に並べて配置したものであるが、これに限らない。
【0085】
続いて、液体循環装置の一例について
図21を参照して説明する。
図21は、同循環装置のブロック説明図である。なお、ここでは1つのヘッドのみ図示しているが、複数のヘッドを配列する場合には、マニホールドなどを介して複数のヘッドの供給側、回収側にそれぞれ供給側液体経路、回収側液体経路を接続することになる。
【0086】
液体循環装置600は、供給タンク601、回収タンク602、メインタンク603、第1送液ポンプ604、第2送液ポンプ605、コンプレッサ611、レギュレータ612、真空ポンプ621、レギュレータ622、供給側圧力センサ631、回収側圧力センサ632などで構成されている。
【0087】
ここで、コンプレッサ611及び真空ポンプ621は、供給タンク601内の圧力と回収タンク602内の圧力とに差圧を生じさせる手段を構成している。
【0088】
供給側圧力センサ631は、供給タンク601とヘッド100との間であって、ヘッド100の供給ポート71に繋がった供給側液体経路に接続されている。回収側圧力センサ632は、ヘッド1と回収タンク602との間であって、ヘッド100の回収ポート72に繋がった回収側液体経路に接続されている。
【0089】
回収タンク602の一方は、第1送液ポンプ604を介して供給タンク601と接続されており、回収タンク602の他方は第2送液ポンプ605を介してメインタンク603と接続されている。
【0090】
これにより、供給タンク601から供給ポート71を通ってヘッド100内に液体が流入し、回収ポート72から回収タンク602へ回収され、第1送液ポンプ604によって回収タンク602から供給タンク601へ液体が送られることによって、液体が循環する循環経路が構成される。
【0091】
ここで、供給タンク601にはコンプレッサ611がつなげられており、供給側圧力センサ631で所定の正圧が検知されるように制御される。一方、回収タンク602には真空ポンプ621がつなげられており、回収側圧力センサ632で所定の負圧が検知されるよう制御される。
【0092】
これにより、ヘッド100内を通って液体を循環させつつ、メニスカスの負圧を一定に保つことができる。
【0093】
また、ヘッド100のノズル4から液体を吐出すると、供給タンク601及び回収タンク602内の液体量が減少していく。そのため、適宜、第2送液ポンプ605を用いて、メインタンク603から回収タンク602に液体を補充する。
【0094】
なお、メインタンク603から回収タンク602への液体補充のタイミングは、回収タンク602内の液体の液面高さが所定高さよりも下がったときに液体補充を行うなど、回収タンク602内に設けた液面センサなどの検知結果によって制御することができる。
【0095】
次に、本発明に係る液体吐出装置としての印刷装置の他の例について
図22及び
図23を参照して説明する。
図22は、同装置の要部平面説明図、
図23は、同装置の要部側面説明図である。
【0096】
この印刷装置500は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408などを含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0097】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド100及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド100は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド100は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向とは直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0098】
液体吐出ヘッド100は、前述した液体循環装置600と接続されて、所要の色の液体が循環供給される。
【0099】
この印刷装置500は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0100】
搬送ベルト412は、用紙410を吸着して液体吐出ヘッド100に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0101】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0102】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド100の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0103】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド100のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0104】
主走査移動機構493、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0105】
このように構成したこの印刷装置500においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0106】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド100を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。また、この場合、上記本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッド100を、キャリッジ403の移動方向(主走査方向)に対してノズル配列方向Xが直交するように配置することにより、ノズル配列方向とは直交する方向Yの位置調整を行わなくてもよくなる。すなわち、この場合、キャリッジ403の移動タイミングに対する液体吐出ヘッド100の液体吐出タイミングを調整することにより、ノズル配列方向とは直交する方向Yの位置調整と同様の効果が得られるので、ノズル配列方向Xと回転方向θの位置調整だけで液体吐出位置のずれを解消できる。
【0107】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について
図24を参照して説明する。
図24は、同ユニットの要部平面説明図である。
【0108】
この液体吐出ユニット440は、前記液体吐出装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド100で構成されている。
【0109】
なお、この液体吐出ユニット440の例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420を更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0110】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットのさらに他の例について
図25を参照して説明する。
図25は、同ユニットの正面説明図である。
【0111】
この液体吐出ユニット440は、流路部品444が取り付けられた液体吐出ヘッド100と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0112】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド100と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0113】
本願において、「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出又は噴射する機能部品である。吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度又は表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水又は有機溶媒などの溶媒、染料又は顔料などの着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤などの機能性付与材料、DNA、アミノ酸又はたんぱく質、カルシウムなどの生体適合材料、天然色素などの可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子又は発光素子の構成要素、あるいは電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液などの用途で用いることができる。
【0114】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0115】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0116】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていてもよい。
【0117】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0118】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0119】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0120】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0121】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取り付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0122】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0123】
「液体吐出装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体吐出装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中又は液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0124】
この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0125】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0126】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形などの有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターンなどを形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0127】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0128】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0129】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0130】
また、「液体吐出装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0131】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形などはいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0132】
4 ノズル
21 第1の位置調整部材
22 第2の位置調整部材
23 押圧部材
40 液体吐出ヘッド取付構造
41 取付プレート(取付部材)
42 位置調整アーム
42a 凸部
43 第1の調整カム(アーム位置調整部材)
44 第2の調整カム
45 支軸
46 押圧アーム
47 加圧ばね
51 偏心部材
52 偏心部材
61 テーパねじ
62 テーパねじ
100 液体吐出ヘッド
100a ノズル面
110a~110d 側面
111b 傾斜面
112 凹部
X ノズル配列方向
Y ノズル配列方向とは直交する方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0133】