IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノントッキ株式会社の特許一覧

特開2023-157719基板搬送装置、成膜装置及び計測方法
<>
  • 特開-基板搬送装置、成膜装置及び計測方法 図1
  • 特開-基板搬送装置、成膜装置及び計測方法 図2
  • 特開-基板搬送装置、成膜装置及び計測方法 図3
  • 特開-基板搬送装置、成膜装置及び計測方法 図4
  • 特開-基板搬送装置、成膜装置及び計測方法 図5
  • 特開-基板搬送装置、成膜装置及び計測方法 図6
  • 特開-基板搬送装置、成膜装置及び計測方法 図7
  • 特開-基板搬送装置、成膜装置及び計測方法 図8
  • 特開-基板搬送装置、成膜装置及び計測方法 図9
  • 特開-基板搬送装置、成膜装置及び計測方法 図10
  • 特開-基板搬送装置、成膜装置及び計測方法 図11
  • 特開-基板搬送装置、成膜装置及び計測方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157719
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】基板搬送装置、成膜装置及び計測方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/50 20060101AFI20231019BHJP
   C23C 14/04 20060101ALI20231019BHJP
   C23C 14/54 20060101ALI20231019BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231019BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
C23C14/50 K
C23C14/04 A
C23C14/54 Z
H05B33/14 A
H05B33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067799
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 諭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107GG04
3K107GG32
4K029AA02
4K029AA09
4K029AA11
4K029AA24
4K029BA01
4K029BA31
4K029BA62
4K029BB03
4K029BC07
4K029BD01
4K029CA01
4K029DA03
4K029DB04
4K029DB05
4K029DB06
4K029HA01
4K029JA01
4K029JA06
4K029KA02
4K029KA03
(57)【要約】
【課題】搬送対象物に生じている凹凸を検知可能な技術を提供する。
【解決手段】基板搬送装置は、基板が保持された搬送体の支持面を支持し、該搬送体を搬送する搬送ローラ列と、前記搬送ローラ列によって搬送される前記搬送体の前記支持面の高さの変化を計測する計測手段と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が保持された搬送体の支持面を支持し、該搬送体を搬送する搬送ローラ列と、
前記搬送ローラ列によって搬送される前記搬送体の前記支持面の高さの変化を計測する計測手段と、を備える、
ことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板搬送装置であって、
前記搬送体には、前記基板と重なるマスクが保持され、
前記マスクは、前記支持面を有する、
ことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の基板搬送装置であって、
前記搬送ローラ列及び前記計測手段を収容するチャンバを備える、
ことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項4】
請求項2に記載の基板搬送装置であって、
前記搬送ローラ列は、前記基板と前記マスクとが位置合わせ済みの前記搬送体を搬送する、
ことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項5】
請求項1に記載の基板搬送装置であって、
前記計測手段は、
前記搬送ローラ列の搬送方向である第一の方向と交差する第二の方向に離間した第一の計測手段及び第二の計測手段を備え、
前記第二の方向に離間した二列の前記搬送ローラ列を備え、
前記第一の計測手段の計測位置が、前記第二の方向で前記搬送体の中点から、前記第二の方向にずれた位置に設定され、
前記第二の計測手段の計測位置が、前記搬送体の前記中点から、前記第一の計測手段の前記計測位置とは逆の側で前記第二の方向にずれた位置に設定されている、
ことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項6】
請求項2に記載の基板搬送装置であって、
前記計測手段の計測結果と、予め設定された基準値とに基づいて前記マスクを使用するか否かを判定する判定手段を備える、
ことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項7】
請求項5に記載の基板搬送装置であって、
前記搬送体には、前記基板と重なるマスクが保持され、
前記マスクは、前記支持面を有し、
前記第一の計測手段及び前記第二の計測手段の各計測結果と、予め設定された基準値とに基づいて前記マスクを使用するか否かを判定する判定手段を備える、
ことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の基板搬送装置であって、
前記基準値は、前記搬送ローラ列と同じ搬送ローラ列、及び、前記計測手段と同じ計測手段を用いて設定される、
ことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項9】
請求項1に記載の基板搬送装置であって、
前記搬送ローラ列により搬送される前記搬送体を所定位置で検知する検知手段を備え、
前記計測手段は、前記検知手段により前記搬送体が検知されたことを契機に計測を開始する、
ことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項10】
請求項1に記載の基板搬送装置であって、
前記計測手段は、前記支持面の、前記搬送ローラ列の搬送方向の全範囲に渡って高さの変化を計測する、
ことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項11】
請求項1に記載の基板搬送装置であって、
前記計測手段の計測位置は、前記搬送ローラ列の、隣接する搬送ローラ間に設定されている、
ことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項12】
請求項1に記載の基板搬送装置と、
前記基板搬送装置により搬送される基板に、蒸着物質を蒸着する蒸着手段と、を備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項13】
基板が保持された搬送体の支持面を支持する搬送ローラ列によって該搬送体を搬送する搬送工程と、
前記搬送工程により搬送される前記搬送体の前記支持面の高さの変化を計測する計測工程と、を備える、
ことを特徴とする計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送装置、成膜装置及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイを製造するために、基板上に薄膜を形成する方法として、所定のパターンの開口が形成されたマスクを介して基板上に蒸着物質を成膜する方法が知られている。この方法では、マスクと基板を位置合わせした後に、マスクと基板を密着させた状態で成膜が行われる。この方法によって精度よく成膜するためには、マスクと基板の位置合わせを高い精度で行い、それを維持した状態で、成膜を行う必要があるがマスクの変形により位置合わせの精度が低下する場合がある。
【0003】
例えば、基板とマスクを重ね合わせた状態で搬送しながら成膜するインライン型の装置では、一般に、基板キャリアとマスクが製造ライン内を循環して繰り返し用いられ、基板キャリアやマスクが熱の影響により変形する場合がある。製造条件によっては、周回後に周回前よりも60℃以上温度が高くなった状態で次の成膜がなされる。G8の基板サイズは2200×2500mmのサイズであり、それに対応したマスクや基板キャリアは縦横が約3000mm程度のサイズになる。その際の熱膨張量は材質がSUSの場合は3mm以上、アルミの場合は4mm以上となる場合がある。
【0004】
特許文献1にはマスクに設けたマークを撮影してマスクの変形を検査し、変形が大きいマスクを使用対象から除外する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-209700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、マスクに生じている凹凸を検知することはできない。こうした凹凸は、基板とマスクとの搬送中に両者の位置ずれを生じさせる。
【0007】
本発明は、搬送対象物に生じている凹凸を検知可能な技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
基板が保持された搬送体の支持面を支持し、該搬送体を搬送する搬送ローラ列と、
前記搬送ローラ列によって搬送される前記搬送体の前記支持面の高さの変化を計測する計測手段と、を備える、
ことを特徴とする基板搬送装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、搬送対象物に生じている凹凸を検知可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る成膜装置のレイアウト図。
図2】蒸着装置の説明図。
図3】搬送装置の平面図。
図4図3のA-A線断面図。
図5】制御ユニットの処理例を示すフローチャート。
図6】(A)及び(B)は計測例を示す図。
図7】(A)及び(B)は計測例を示す図。
図8】(A)及び(B)は計測例を示す図。
図9】(A)及び(B)は計測例を示す図。
図10】(A)~(C)はアライメント誤差の例を示す図。
図11】(A)及び(B)は変形したマスクの搬送態様示す図。
図12】(A)は有機EL表示装置の全体図、(B)は1画素の断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<成膜装置の概要>
図1は本発明の一実施形態に係る成膜装置100のレイアウト図である。なお、各図において矢印Zは上下方向(重力方向)を示し、矢印X及び矢印Yは互いに交差する水平方向を示し、本実施形態の場合、X方向とY方向は直交している。成膜装置100は、基板Sに蒸着物質を成膜する装置であり、マスクMを用いて所定のパターンの蒸着物質の薄膜を形成する。特に本実施形態の成膜装置100は、基板Sを搬送しながら、蒸着装置により基板Sに蒸着物質を蒸着する成膜方法を実行可能な、インライン型の成膜装置である。
【0013】
成膜装置100で成膜が行われる基板Sの材質は、ガラス、樹脂、金属等の材料を適宜選択可能であり、ガラス上にポリイミド等の樹脂層が形成されたものが好適に用いられる。蒸着物質としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質である。成膜装置100は、例えば表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する製造装置に適用可能であり、特に、有機ELパネルを製造する製造装置に適用可能である。
【0014】
基板Sのサイズとしては、例えば、第八世代と呼ばれる基板のサイズであれば、2500mm×2200mm×0.5mmである。対応するマスクMのサイズとしては、例えば、2900mm×2500mm×50mmである。
【0015】
基板S及びマスクMはキャリアCに保持されて搬送される。成膜装置100において搬送される搬送対象を搬送体200と呼ぶ。本実施形態の場合、搬送体200は、基板S、マスクM及びキャリアCで構成される。キャリアCは、例えば、基板Sを保持する機構及びマスクMを保持する機構を備える。基板Sを保持する機構は例えば静電チャックであり、マスクMを保持する機構は例えば磁気吸着チャックである。マスクMは基板Sと重なるようにキャリアCに保持され、基板SはキャリアCとマスクMとの間に保持される。キャリアC、基板S及びマスクMは板状の形態であり、水平姿勢で搬送される。マスクMは、図1の矢印で示す方向に循環的に搬送され、複数の基板Sに対して繰り返し利用される。
【0016】
成膜装置100では減圧下において基板Sが搬送される。処理対象となる基板Sは、成膜面を下面に向けて投入部101に搬入され、キャリアCに保持される。搬送部102には多関節型の真空搬送用ロボットが配置されている。真空搬送用搬送ロボットは、投入部101から基板Sを保持したキャリアCを搬送部102へ搬送し、アライメント部103へ搬送する。
【0017】
アライメント部103には、マスクMが供給される。アライメント部103にはアライメント装置が配置されている。アライメント装置は、基板SとマスクMの位置合わせを行う。位置合わせ後にマスクMはキャリアCに保持され、搬送体200が形成される。マスクMは基板Sに密着した状態で保持されてもよいし、基板Sに隙間を置いて保持されてもよい。
【0018】
搬送体200は、アライメント部103から搬送部104、成膜部105、搬送部106の順にローラコンベアによりX方向に搬送される。搬送部104においては、先行する搬送体200に対する後続の搬送体200の搬送速度が調整される。例えば、先行する搬送体200が成膜部105において成膜速度で搬送されている状態において、成膜速度以上の速度で後続の搬送体200が搬送され、両者の間隔を狭めることができる。連続する搬送体200の間隔を狭めることで、成膜部105において蒸着物質の無駄を減らすことができる。
【0019】
成膜部105において基板Sの成膜が行われた後、搬送体200は搬送部106へ搬送される。搬送部106においては、後続の搬送体200に対して先行する搬送体200の搬送速度が調整される。例えば、先行する搬送体200と後続の搬送体200の間隔が広がるように先行する搬送体200の搬送速度を上げる。
【0020】
搬送体200が分離部107に搬送されると、マスクMがキャリアCから分離される。分離されたマスクMはリターン部110へ搬送される。搬送部108には多関節型の真空搬送用ロボットが配置されている。真空搬送用搬送ロボットは、分離部107から基板Sを保持したキャリアCを排出部109へ搬送する。排出部109において基板SとキャリアCとは分離される。
【0021】
リターン部110へ搬送されるマスクMのうち、変形等によって規定範囲外となったマスクMは排出部112に排出され、投入部111からマスクMが補充される。規定範囲外となったマスクMは修正可能であれば修正後に再利用され、修正困難であれば廃棄される。規定範囲内のマスクMはリターン部110からアライメント部103へ搬送され、再び利用される。
【0022】
成膜装置100は制御ユニット120により制御される。制御ユニット120は処理部121、記憶部122及びI/O(入出力インタフェース)123を含む。処理部121はCPUに代表されるプロセッサであり、記憶部122に記憶されたプログラムを実行して成膜装置100を制御する。記憶部122は、RAM、ROM等の半導体メモリ、ハードディスクなどの1又は複数の記憶デバイスで構成される。I/O123は外部デバイスと処理部121との間でデータの入出力を中継する。
【0023】
<成膜部>
図2は成膜部105の模式図である。本実施形態の成膜部105は、上側の基板搬送装置1と、下側の蒸着ユニット130とを備えた真空蒸着装置である。基板搬送装置1は、搬送体200の搬送空間2aを形成するチャンバ2を備える。搬送空間2aは使用時に真空に維持される。後述するようにチャンバ2内には搬送ローラCRの列がX方向に設けられており、搬送ローラCRによって搬送体200をX方向に搬送する。
【0024】
複数の蒸着ユニット130がX方向に配置されている。各蒸着ユニット130は、ソースチャンバ130a内に蒸着源130bを有している。各ソースチャンバ130aは、使用時に真空に維持される内部空間を形成する。ソースチャンバ130aは、上部に開口部が形成された箱型を有しており、開口部を介して、搬送空間2aとソースチャンバ130aの内部空間とが連通している。各ソースチャンバ130aには上方に蒸着物質を放出する蒸着源130bが設けられている。本実施形態の蒸着源130bはいわゆるラインソースであり、Y方向に延設されている。蒸着源130bは蒸着物質の原材料を収容する坩堝や、坩堝を加熱するヒータ等を備え、原材料を加熱してその蒸気である蒸着物質を搬送空間2aへ放出する。
【0025】
成膜部105では、チャンバ2内で搬送体200を搬送しながら、蒸着源130bから蒸着物質を搬送体200の基板SへマスクMを介して放出することで、基板Sに膜が成膜される。蒸着源130bにより基板Sに蒸着物質を蒸着する。3つの蒸着ユニット130から異なる種類の蒸着物質を放出する場合、基板Sに異なる蒸着物質を連続的に蒸着することができる。なお、蒸着ユニット130の数は3つに限られず、1つあるいは2つでもよいし、4つ以上であってもよい。また、成膜部105はスパッタリングやCVDによる成膜を行ってもよい。
【0026】
<基板搬送装置>
基板搬送装置1の構成について図3及び図4を参照して説明する。図3は基板搬送装置1の平面図であり、図4図3のA-A線断面図である。搬送空間2aには、Y方向に離間した二列の搬送ローラ列3R、3Lが設けられている。搬送ローラ列3R、3Lは、X方向に配列された複数の搬送ローラCRによって構成されている。各搬送ローラCRの回転軸方向はY方向である。搬送体200は、マスクMが搬送ローラ列3R、3Lに支持されて搬送される。マスクMは、その底面を支持面201とし、支持面201のY方向の一方端部が搬送ローラ列3Rに、他方端部が搬送ローラ列3Lに支持される。
【0027】
各搬送ローラCRは、チャンバ2の外部に設けられたモータ30により駆動される。モータ30の回転駆動力は、磁気シール31を介して、チャンバ2の内部の回転軸32に伝達される。搬送ローラCRは回転軸32の端部に固定されており、回転軸32の回転によって回転する。各モータ30は制御ユニット120によって同期的に回転するように制御される。本実施形態では、一つの搬送ローラCRに一つのモータ30を割り当てられているが、一つのモータ30から駆動伝達機構を介して複数の搬送ローラCRに回転駆動力を伝達するようにしてもよい。
【0028】
搬送空間2aには、また、Y方向に離間した二列の案内ローラ列4R、4Lが設けられている。案内ローラ列4R、4Lは、X方向に配列された複数のサイドローラSRによって構成されている。各サイドローラSRの回転軸方向はZ方向である。搬送体200は、マスクMの側面が案内ローラ列4R、4Lに案内される。各サイドローラSRは、サイドローラSRを自由回転自在に支持する支持部材42、シール部41、及び、チャンバ2の外部に設けられた支持台40により支持される。
【0029】
マスクMは、成膜部105での熱の影響等により、繰り返し使用されることで変形する。変形量が大きいマスクMを使用すると、基板Sとの位置ずれの要因となる。本実施形態では、チャンバ2内に計測ユニット5R、5Lを設けてマスクMの形状(変形量)を計測し、規定範囲に適合するか否かを判定する。規定範囲外のマスクMは上記の通り、排出部112で装置外へ排出する。
【0030】
ここで、図11(A)及び図11(B)を参照してマスクMの形状変化が、マスクMの搬送、すなわちマスクMの位置精度に及ぼす影響について説明する。マスクMが平坦であれば、各搬送ローラCRに対するマスクMの荷重も一様であり、マスクMと搬送ローラCR間の摩擦力も一定である。したがって、マスクMは、搬送方向に位置ずれを生じることなく安定して搬送されるが、左右形状に差異があるマスクMについては、搬送に伴って位置ズレを生じることがある。
【0031】
図11(A)及び図11(B)はマスクMの搬送方向に対して左右形状に差異があるマスクが搬送によってどのような力を受けるかを説明するものである。図11(A)に示すように、マスクMが、搬送ローラ列3Rの側に下に凸となる変形があり、搬送ローラ列3Lの側に上に凸となる変形がある場合を想定している。
【0032】
図11(B)は図11(A)の状態からマスクMの搬送が進んだ状態を示している。マスクMのうち、搬送ローラCRから浮き上がっている部分では、搬送ローラCRにかかる荷重が小さく、摩擦力も小さくなる。一方、マスクMのうち、搬送ローラCRへと押し付けられる状態となる部分では、荷重も摩擦力も大きくなる。例えば、図11(A)でマスクMのうち、下向きに凸となる変形がある部分は、搬送ローラCRに乗り上げる際、搬送ローラCRに対する荷重や摩擦力が増大する一方、上向きに凸となる変形がある部分は、荷重及び摩擦力が設計値よりも減少した状態となる。このため、例えば矢印Rで示すように、マスクMにZ軸周りのトルクが生じることになる。この回転力がマスクMに位置ズレを生じさせ、成膜時の位置精度を低下させる原因となる。
【0033】
図11(A)及び図11(B)では、マスクMの左右で上下の凹凸が逆向きの場合を例示したが、マスクMの左右で上下に同じ方向に凹凸が生じている場合にも、搬送速度ムラを生じたり、振動を生じる場合がある。これらは成膜の質を低下させる原因となる。
【0034】
以上のような問題を生じさせないために、本実施形態では、計測ユニット5R、5Lを設けてマスクMの形状(変形量)を計測し、規定範囲に適合するか否かを判定する。本実施形態によれば、マスクMの変形をプロセスごとに検査することができ、変形量が許容誤差範囲を越えるマスクMは排出し、程度に応じてメンテナンスを行ったり、廃棄する等、品質を維持することを可能とする。
【0035】
図3及び図4に戻る。計測ユニット5R、5Lは、本実施形態の場合、レーザ変位センサであり、支持面201の高さを計測するように配置されている。しかし、計測ユニット5R、5Lは他の形式のセンサ(渦電流変位センサやイメージセンサ等)であってもよい。計測ユニット5R、5Lは、成膜部105の下流側の端部(成膜部105から搬送体200が搬送部106へ移動する手前の位置)に配置されており、搬送ローラ列3R、3Lによって搬送されるマスクMの支持面201を計測対象とする。マスクMの移動中に計測するため、計測ユニット5R、5Lによって支持面201のX方向の高さの変化、つまり、支持面201の凹凸等の形状を検知することができる。また、搬送体200の搬送途中でマスクMの適合確認を行うことができ、一連の基板Sの成膜処理の過程で適合確認を行える。
【0036】
計測ユニット5R、5Lの計測位置50R、50Lは、搬送体200のY方向の中点210からY方向に互いに反対側にずれた位置に設定されている。特に本実施形態では、計測位置50R、50Lの各Y方向の位置は、搬送ローラCRのY方向位置に設定されている。また、計測位置50R、50Lの各X方向の位置は、隣接する搬送ローラCRの間の位置に設定されている。マスクMの変形に起因する支持面201の高さ変動は搬送ローラCR付近で確認し易く、また、基準値に対する変形度合いの比較をしやすい。搬送ローラCRの近傍に計測位置50R、50Lを設定することで、マスクMの変形をより正確に評価できる。また、減圧下にあるチャンバ2内でマスクMを計測することで、搬送時に実際に生じているマスクMの変形をより正確に用かできる。
【0037】
チャンバ2内には、また、計測ユニット5R、5Lの計測開始タイミングを特定するための通過検知センサ6a及び6bが設けられている。本実施形態の通過検知センサ6a及び6bは、Y方向に離間して配置された光学センサであり、一方が発光部、他方が受光部である。発光部から発光される光のライン6cはマスクMの搬送経路を横断して受光部に到達する。マスクMの先端200aがライン6cを通過すると、後端200bがライン6cを通過するまで、発光部から発光される光が受光部で受光されないのでマスクMの到達を検知できる。ライン6cは、計測ユニット5R、5Lの計測位置50R、50LよりもX方向で上流側の位置に設定されている。マスクMの到達検知のために、通過検知センサ6a及び6bに代えて、反射型の光学センサやイメージセンサを用いてもよい。
【0038】
計測ユニット5R、5Lの計測結果や通過検知センサ6a及び6bの検知結果は制御ユニット120によって取得される。計測ユニット5R、5Lの時系列の計測結果は、記憶部122に保存される。
【0039】
<処理例>
マスクMの変形計測に関する制御ユニット120の処理例について説明する。図5は処理部121が実行するフローチャートである。この処理は、成膜装置100の稼働中(成膜プロセス中)に行ってもよいし、稼働停止中に行ってもよい。
【0040】
S1では通過検知センサ6a及び6bの検知結果を取得して、搬送体200が検知されたか否か(マスクMの先端がライン6cの通過が検知されたか否か)を判定する。検知された場合は、これを契機としてS2において計測ユニット5R、5Lの計測を開始する。計測結果は記憶部122に保存される。
【0041】
S3では終了条件が成立したか否かを判定する。本実施形態では、終了条件は、通過検知センサ6a及び6bによって搬送体200が検知されなくなったことである。これにより、計測対象であるマスクMのX方向の全範囲について、計測ユニット5R、5Lによって支持面201の高さの変化が計測される。終了条件は所定時間の経過であってもよい。終了条件が成立した場合はS4で計測ユニット5R、5Lの計測を終了する。マスクMの搬送速度を50mm/sec、計測ユニット5R、5Lのサンプリング周期を20msecとすると、マスクMのX方向の全長が2500mmである場合、計測データ数は1mピッチで、2500データとなる。
【0042】
S5では、計測ユニット5R、5Lの計測結果と、予め設定された基準値とに基づいて計測対象であるマスクMを使用するか否かを判定する。換言すると、計測対象であるマスクMの変形量が規定範囲内か否かを判定する。規定範囲外であればS8へ進み、計測対象であるマスクMをその後、排出部112から排出する。規定範囲内であればS7へ進み、計測対象であるマスクMの使用を継続する。マスクMはリターン部110を経由してアライメント部103へ搬送される。
【0043】
<基準値>
S5の判定で用いる基準値の例について説明する。基準値は予め実験等により求められ、記憶部122に記憶される。基準値は、変形等のないマスクMを搬送ローラ列3R、3Lで搬送し、計測ユニット5R、5Lで支持面201を計測して得た計測値から設定することができる。基準値測定用マスクは、マスク形状が規定範囲内で形状が保証されているマスクである。
【0044】
マスクMの基準値は、使用可否を判定するための基準とするデータであり、規定範囲は使用するマスクMや製造物に求められる精度によって変化する。したがって、基準値と規定範囲は、変形等のないマスクMを、実際の製造時と同じ条件で基板搬送装置1を用いて搬送し、計測した結果から特定してもよい。
【0045】
マスクMの基準値は、チャンバ2外で行った実験から設定してもよい。すなわち、基板搬送装置1と同じ装置を、実験用に準備し、成膜装置100外でマスクMの搬送と、計測とを行って得た計測結果から、基準値を設定してもよい。成膜プロセスとは無関係に計測を行うことで、基準値設定の自由度が向上する。
【0046】
図6(A)は、基準値測定用マスクの計測結果の例を示しており、データ10Rが計測ユニット5Rの計測結果、データ10Lが計測ユニット5Lの計測結果を示している。横軸はマスクMの位置を示しており、X0はマスクMの先端200aの位置を意味し、X1は後端200bの位置を意味する。縦軸はマスクMの支持面201の高さである。X0~X1に渡って、高さの変化が少ないほど、支持面201が、変形の無い平坦面に近いことを意味する。図6(B)は、データ10R、10LをX-Y-Zの3次元空間で表示したものであり、基準値測定用マスクの形状を視覚的に分かり易くしたものである。
【0047】
ここで重要なことは、データ10R、10Lの個別の変化度合いと、両者の差である。基準値測定用マスクは、個別の変化度合いが小さく、両者の差もほとんど無いことが読み取れる。すなわち、基準値測定用マスクは平坦度が高いマスクである。
【0048】
データ10R、10Lを基準値とし、更に、計測ユニット5R、5Lの計測結果の個別の変化度合いの許容範囲と、計測ユニット5R、5Lの計測結果の差の許容範囲を、規定範囲として定める。これら基準値、規定範囲は記憶部122に保存される。
【0049】
<左右同方向に変形したマスクの計測例>
図7(A)及び図7(B)は、成膜プロセスに使用したマスクMの計測例を示す。図7(A)及び図7(B)の見方は、図6(A)及び図6(B)と同じであり、データ11R、11Lはそれぞれ計測ユニット5R、5Lの計測結果である。データ11R、11Lでは、マスクMのX方向の位置と高さの変化とが概ね同じように推移している。
【0050】
図10(A)は、計測対象のマスクMをX方向に搬送したときの、Y方向の位置ずれ量を計測した実験結果の例を示している。横軸は搬送時間(T)を示している。縦軸は、Y方向の位置ずれ量を示しており、マスクMのY方向の一方側の最外位置(+)、他端側の最外位置(-)の経時的な変化を示している。マスクMが、そのままの姿勢でまっすぐに搬送されると、最外位置(+)、最外位置(-)は共に0のままである。マスクMが斜行すると最外位置(+)、最外位置(-)の一方が増大する。マスクMが回転しながら搬送されると、最外位置(+)、最外位置(-)の双方が増大する。
【0051】
図10(A)の例では、最外位置(+)、最外位置(-)が略0付近に収まっている。これらのデータは、基板、マスクのサイズ、厚み、重量、及びこれらを用いる製造環境によって異なるため、本実施形態で示すものはその一例に過ぎない。しかし、図10(A)から理解されることは、マスクMの変形があっても、左右同形状でありほぼ高さが揃っている場合は、マスクMのズレ量に対する影響が小さいということであり、規定範囲はこうした特性を考慮して設定される。
【0052】
<左右異方向に変形したマスクの場合>
(例1)
図8(A)及び図8(B)は、成膜プロセスに使用した別のマスクMの計測例を示す。データ12R、12Lはそれぞれ計測ユニット5R、5Lの計測結果である。データ12R、12Lでは、マスクMの先端(X0)から途中部位までは高さの変化が概ね同じように推移しているが、途中部位から後端(X1)にかけて高さの変化が逆方向に生じている。
【0053】
図10(B)は、計測対象のマスクMをX方向に搬送したときの、Y方向の位置ずれ量を計測した実験結果の例を示している。搬送時間の経過に伴って、最外位置(+)、最外位置(-)の双方が微増しているが、それほど大きくはない。ここで言えることは、マスクMが左右で異方向に変形しても、変形部分が局所的であれば(例えば、マスクMのX方向の全長の1/5の範囲内)、マスクMのズレ量に対する影響がそれほど大きくないということであり、規定範囲はこうした特性を考慮して設定される。
【0054】
(例2)
図9(A)及び図9(B)は、成膜プロセスに使用した別のマスクMの計測例を示す。データ13R、13Lはそれぞれ計測ユニット5R、5Lの計測結果である。データ13R、13Lでは、マスクMの先端(X0)から後端(X1)にかけて高さの変化が全体的に反転している。
【0055】
図10(C)は、計測対象のマスクMをX方向に搬送したときの、Y方向の位置ずれ量を計測した実験結果の例を示している。搬送時間の経過に伴って、最外位置(+)、最外位置(-)の双方が大きく増加している。このマスクMは規定範囲外として排出され得る。ここで言えることは、マスクMが全体に渡って、左右で異方向に変形している場合は、搬送時にズレ量が増大されるということであり、規定範囲はこうした特性を考慮して設定される。
【0056】
<電子デバイス>
次に、電子デバイスの一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成を例示する。
【0057】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図12(A)は有機EL表示装置500の全体図、図12(B)は1画素の断面構造を示す図である。
【0058】
図12(A)に示すように、有機EL表示装置500の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。
【0059】
なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。カラー有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの複数の副画素の組み合わせにより画素52が構成されている。画素52は、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子の3種類の副画素の組み合わせで構成されることが多いが、これに限定はされない。画素52は少なくとも1種類の副画素を含めばよく、2種類以上の副画素を含むことが好ましく、3種類以上の副画素を含むことがより好ましい。画素52を構成する副画素としては、例えば、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子と黄色(Y)発光素子の4種類の副画素の組み合わせでもよい。
【0060】
図12(B)は、図12(A)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、基板53上に、第1の電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、赤色層56R・緑色層56G・青色層56Bのいずれかと、電子輸送層57と、第2の電極(陰極)58と、を備える有機EL素子で構成される複数の副画素を有している。これらのうち、正孔輸送層55、赤色層56R、緑色層56G、青色層56B、電子輸送層57が有機層に当たる。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。
【0061】
また、第1の電極54は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2の電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bにわたって共通で形成されていてもよいし、発光素子ごとに形成されていてもよい。すなわち、図11(B)に示すように正孔輸送層55が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成された上に赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bが副画素領域ごとに分離して形成され、さらにその上に電子輸送層57と第2の電極58が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成されていてもよい。
【0062】
なお、近接した第1の電極54の間でのショートを防ぐために、第1の電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層600が設けられている。
【0063】
図12(B)では正孔輸送層55や電子輸送層57が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を有する複数の層で形成されてもよい。また、第1の電極54と正孔輸送層55との間には第1の電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成してもよい。同様に、第2の電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層を形成してもよい。
【0064】
赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bのそれぞれは、単一の発光層で形成されていてもよいし、複数の層を積層することで形成されていてもよい。例えば、赤色層56Rを2層で構成し、上側の層を赤色の発光層で形成し、下側の層を正孔輸送層又は電子ブロック層で形成してもよい。あるいは、下側の層を赤色の発光層で形成し、上側の層を電子輸送層又は正孔ブロック層で形成してもよい。このように発光層の下側又は上側に層を設けることで、発光層における発光位置を調整し、光路長を調整することによって、発光素子の色純度を向上させる効果がある。
【0065】
なお、ここでは赤色層56Rの例を示したが、緑色層56Gや青色層56Bでも同様の構造を採用してもよい。また、積層数は2層以上としてもよい。さらに、発光層と電子ブロック層のように異なる材料の層が積層されてもよいし、例えば発光層を2層以上積層するなど、同じ材料の層が積層されてもよい。
【0066】
こうした電子デバイスの製造において、上述した成膜装置100が適用可能であり、当該製造方法は、基板Sを搬送する搬送工程と、搬送されている基板Sに蒸着ユニット3によって各層の少なくともいずれか一つの層を蒸着する蒸着工程と、を含むことができる。 <他の実施形態>
上記実施形態では、マスクMのX方向の全範囲を計測ユニット5R、5Lの計測対象としたが、一部の範囲であってもよい。
【0067】
上記実施形態では、Y方向に離間して計測ユニット5R、5Lを設け、マスクMのY方向の各端部を計測対象としたが、計測ユニットを一つとしてマスクMの一部を計測対象としてよい。
【0068】
上記実施形態では、マスクMが搬送ローラCRに支持されて搬送体200が搬送される例を説明したが、キャリアCが搬送ローラCRに支持されて搬送体200が搬送されてもよく、この場合、計測ユニット5R、5Lによる計測対象及び変形の評価対象はキャリアCであってもよい。
【0069】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0070】
100 成膜装置、1 搬送装置、2 チャンバ、3R 搬送ローラ列、3L 搬送ローラ列、5R 計測ユニット、5L 計測ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12