(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157721
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】鉱物の分離方法
(51)【国際特許分類】
B03C 1/005 20060101AFI20231019BHJP
C22B 34/24 20060101ALI20231019BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20231019BHJP
B03C 1/02 20060101ALI20231019BHJP
B03C 1/025 20060101ALI20231019BHJP
B03C 1/18 20060101ALI20231019BHJP
B03C 1/247 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B03C1/005
C22B34/24
B03C1/00 B
B03C1/02 B
B03C1/02 C
B03C1/025
B03C1/18
B03C1/247
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067802
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】得田 敦博
(72)【発明者】
【氏名】サンバルフンデウ デルゲルマー
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA18
4K001AA25
4K001BA02
4K001CA04
4K001CA49
(57)【要約】
【課題】磁力選鉱で得られる磁着物中のタンタル及び/又はニオブの品位を向上させることができる鉱物の分離方法を提供する。
【解決手段】鉱石から、タンタル及び/又はニオブを含有する鉱物を分離する方法であって、前記鉱石に磨鉱処理を施す磨鉱工程と、磨鉱工程後の鉱石に対して磁力選鉱を行い、当該鉱石から前記鉱物を磁着物として分離する磁選工程とを含み、前記磨鉱工程で、前記鉱石を磨り潰す磨鉱材として、少なくとも表面が非磁性材料からなる磨鉱材を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱石から、タンタル及び/又はニオブを含有する鉱物を分離する方法であって、
前記鉱石に磨鉱処理を施す磨鉱工程と、磨鉱工程後の鉱石に対して磁力選鉱を行い、当該鉱石から前記鉱物を磁着物として分離する磁選工程とを含み、
前記磨鉱工程で、前記鉱石を磨り潰す磨鉱材として、少なくとも表面が非磁性材料からなる磨鉱材を用いる、鉱物の分離方法。
【請求項2】
前記非磁性材料のロックウェル硬さ(HRC)が50以上である、請求項1に記載の鉱物の分離方法。
【請求項3】
前記磨鉱材の全体が前記非磁性材料からなる、請求項1又は2に記載の鉱物の分離方法。
【請求項4】
前記非磁性材料が酸化アルミニウムを含む、請求項1又は2に記載の鉱物の分離方法。
【請求項5】
前記磨鉱工程で使用する磨鉱機の、前記鉱石が接触する内面が、前記非磁性材料からなる、請求項1又は2に記載の鉱物の分離方法。
【請求項6】
前記磨鉱工程で、磨鉱機としてボールミルを使用し、前記磨鉱材が前記ボールミルのボールである、請求項1又は2に記載の鉱物の分離方法。
【請求項7】
前記鉱石が、正長石、玻璃長石、微斜長石、曹微斜長石、曹長石、灰長石、黒雲母、白雲母、普通輝石及びリシア輝石からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載の鉱物の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書は、鉱石から、タンタル及び/又はニオブを含有する鉱物を分離する方法を開示するものである。
【背景技術】
【0002】
タンタルやニオブは化学的性質が類似しており、天然にはタンタライト(Tantalite)やコロンバイト(Columbite)、いわゆるコルタン(Coltan)その他の鉱物に、いずれか一方又は両方が含まれて存在する。
【0003】
かかるタンタルやニオブは、合金材料の他、コンデンサや表面弾性波フィルター(SAWフィルター)等の電子部品にも用いられており、今後もその需要量の増加が見込まれる。それ故に、鉱石からタンタルやニオブを有効に取り出すことのできる手法を確立することが望まれる。
【0004】
タンタル及び/又はニオブを含有する鉱物は磁性を示すことから、それを鉱石から分離するには磁力選鉱が用いられる。たとえば特許文献1には、「磁性の近似するチタン鉱物とタンタル・ニオブ鉱物を含む鉱石の処理法」として、「磁性の近似するチタン鉱物とタンタル・ニオブ鉱物を含む鉱石を、非酸化雰囲気中で500~800℃に加熱したのち、磁力選別法によってチタン鉱物とタンタル・ニオブ鉱物を分離することを特徴とする鉱石の処理法」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タンタル及び/又はニオブを含有する鉱物を含む鉱石は、磁力選鉱を行うに先立って、磨鉱処理を施すことがある。磨鉱処理の実施により、鉱石がある程度細かい粒径に微細化されるので、その後の磁力選鉱での上記鉱物の分離を促進させることができる。
【0007】
磨鉱処理で鉱石を磨り潰す磨鉱材としては、鉄製のものを用いることが多い。但し、鉄製の磨鉱材を用いた場合、磁力選鉱での磁着物におけるタンタルやニオブの品位がそれほど高くならないことがわかった。
【0008】
この明細書では、磁力選鉱で得られる磁着物中のタンタル及び/又はニオブの品位を向上させることができる鉱物の分離方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この明細書で開示する鉱物の分離方法は、鉱石から、タンタル及び/又はニオブを含有する鉱物を分離する方法であって、前記鉱石に磨鉱処理を施す磨鉱工程と、磨鉱工程後の鉱石に対して磁力選鉱を行い、当該鉱石から前記鉱物を磁着物として分離する磁選工程とを含み、前記磨鉱工程で、前記鉱石を磨り潰す磨鉱材として、少なくとも表面が非磁性材料からなる磨鉱材を用いるというものである。
【発明の効果】
【0010】
上述した鉱物の分離方法によれば、磁力選鉱で得られる磁着物中のタンタル及び/又はニオブの品位を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例で用いた鉱石の鉱物組成を示すグラフである。
【
図2】実施例で得られた磁着物への配分率を示すグラフである。
【
図3】実施例で得られた磁着物及び非磁着物の鉱物組成を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、鉱物の分離方法の実施の形態について詳細に説明する。
一の実施形態に係る鉱物の分離方法は、タンタル及び/又はニオブを含有する鉱物を含む鉱石から、当該鉱物を分離する方法である。この方法には、鉱石に磨鉱処理を施す磨鉱工程と、磨鉱工程後の鉱石に対して磁力選鉱を行い、その鉱石から上記の鉱物を磁着物として分離する磁選工程とが含まれる。
【0013】
ここで、磨鉱工程にて、磨鉱材として、表面が磁性材料からなる鉄製等のものを用いると、磨鉱処理の際に磨鉱材のその表面が削れること等により、上記の磁性材料の粒子が鉱石中に混入し得る。そのような磁性粒子は、鉱石に含まれ得る脈石鉱物等に付着すると考えられる。これにより、その後の磁選工程の磁力選鉱では、通常は磁石に吸着しない脈石鉱物が、磁性粒子の付着に起因して磁着物に多く含まれると推察される。その結果として、磁着物中のタンタル及び/又はニオブの品位の低下を招く。このような推測は、実施例の項目にて後述するが、磁着物の成分として、鉄製の磨鉱材に由来すると考えられる鉄の単体が検出されたことに基づくものである。
【0014】
これに対し、この実施形態では、磨鉱工程で、少なくとも表面が非磁性材料からなる磨鉱材を用いる。そのような磨鉱材を用いることにより、磨鉱処理で仮にその表面が削れたとしても、鉱石には非磁性材料の粒子が混入するだけであり、磁選工程での磁着物への多量の脈石鉱物の移行を招くことがない。それにより、磁着物中のタンタル及び/又はニオブの品位を向上させることができる。但し、このような理論に限定されず、磨鉱工程で少なくとも表面が非磁性材料からなる磨鉱材を用いることにより、磁着物中のタンタル及び/又はニオブの品位の向上を実現することができる。
【0015】
(鉱石)
鉱石は、タンタル及びニオブのうちの少なくとも一方を含有する鉱物を含むものであれば、種々のものを対象とすることができる。タンタル及び/又はニオブを含有する鉱物は、典型的にはタンタル鉱物やニオブ鉱物、タンタル・ニオブ鉱物であり、より詳細には、たとえば、タンタライト(Tantalite)や、コロンバイト(Columbite)、コルタン(Coltan)、ウォッジナイト(Wodginite)等が挙げられる。
【0016】
鉱石中、タンタル及び/又はニオブを含有する鉱物の含有量は、たとえば0.02質量%~0.5質量%であることがある。鉱石中の元素の品位として、たとえば、タンタルの含有量は0.008質量%~0.050質量%であり、ニオブの含有量は0.008質量%~0.050質量%である場合がある。かかる鉱物には、鉄やマンガンも含まれることが多い。鉱石中の鉱物組成や化学組成は、鉱物解析システム(Mineral Liberation Analyzer、MLA)により確認することができる。
【0017】
その他、鉱石は、正長石、玻璃長石、微斜長石、曹微斜長石、曹長石、灰長石、黒雲母、白雲母、普通輝石及びリシア輝石からなる群から選択される少なくとも一種の鉱物が含まれることがある。磨鉱工程で表面が磁性材料からなる鉄製等の磨鉱材を用いた場合、磨鉱材から削れた磁性粒子(鉄粒子等)は、そのような脈石鉱物に付着しやすい傾向があると考えられる。
【0018】
(磨鉱工程)
磨鉱工程では、後の磁選工程の磁力選鉱で鉱石からタンタル及び/又はニオブを含有する鉱物を分離しやすくするため、磨鉱機内に上記の鉱石を投入して鉱石に磨鉱処理を施し、鉱石を微細化する。磨鉱処理の間、鉱石は磨鉱機内で、鉱石どうしの衝突や磨鉱材との衝突により摩擦されて粉砕され得る。
【0019】
ここでは、磨鉱機内で鉱石を磨り潰す磨鉱材として、少なくとも表面が非磁性材料からなる磨鉱材を用いる。それにより、磁選工程では、磁力選鉱で得られる磁着物に脈石鉱物が含まれにくくなり、タンタル及び/又はニオブを含有する鉱物が磁着物として脈石鉱物等から良好に分離するので、磁着物中のタンタル及び/又はニオブの品位を高めることができる。これは、磨鉱処理で磨鉱材の表面が削れて、その粒子が鉱石に混入したとしても、当該粒子が非磁性材料であることから、磁選工程で悪影響を及ぼさないことによるものと推測される。
【0020】
磨鉱材は、ある程度高い硬度の鉱石を有効に磨り潰すため、その少なくとも表面を構成する非磁性材料がある程度硬いものであることが好ましい。非磁性材料であっても硬くなければ、鉱石の磨鉱が不十分になることが懸念される。なお、硬すぎるものであっても特に不都合はないが、過度に高硬度の非磁性材料を用いることは、不必要なコストの増大を招く。磨鉱材の少なくとも表面を構成する非磁性材料のロックウェル硬さ(HRC)は、たとえば50以上、好ましくは60以上とすることができる。ロックウェル硬さ(HRC)は、JIS Z2245(2021)に準拠して測定することができる。
【0021】
磨鉱材は、鉱石と接触し得る少なくとも表面が非磁性材料からなるものであれば、上述したような、当該表面から削れた粒子の混入による磁着物中のタンタル及び/又はニオブの品位の低下を抑制することができる。表面が非磁性材料からなる磨鉱材としては、たとえば、磁性を示す鉄製等の芯材の周囲を非磁性材料で覆った磨鉱材を使用することも可能である。但し、多くの場合、表面及びその内部を含む全体が非磁性材料からなる磨鉱材のほうが、安価かつ容易に入手可能である。それ故に、磨鉱材の全体が非磁性材料であることが好ましい。
【0022】
磁性を示さず(強磁性体ではなく)、ある程度高い硬度を有する非磁性材料には、具体的には、酸化アルミニウム(Al2O3、アルミナ)や、二酸化ジルコニウム(ZrO2、ジルコニア)、窒化珪素(Si3N4)等がある。なかでも、酸化アルミニウムは、比較的安価であって、磨鉱材の少なくとも表面を構成する非磁性材料に必要な硬さ等の特性を備えることから好適である。一例として、Al2O3を主成分(たとえば93質量%程度)とし、残部にSiO2が5質量%程度で含まれる非磁性材料が挙げられる。
【0023】
磨鉱機としては、ボールミル、SAGミル(Semi-Autogenous Mill)、ロッドミル、ビーズミル、アトリションミル又はチューブミル等が使用可能である。そのような磨鉱機では、ボールミルのボールや、ビーズミルのビーズその他のメディアが、磨鉱材に相当する。鉱石を磁選工程に適した所定の大きさに効率的に磨り潰すとの観点からは、磨鉱機にボールミルを使用することが好ましい。この場合、ボールが磨鉱材として、鉱石とともにボールミル内に投入される。ボールミルのボールは、ある程度大きな比表面積を有するので、ここで対象とする鉱石の磨鉱に適している。但し、その反面、ボールミルでは、ボールは比表面積が大きいことから表面が削れて、その粒子が鉱石に混入しやすい傾向がある。このため、磨鉱機としてボールミルを使用する場合に特に、この実施形態を適用することが有効である。
【0024】
また、磨鉱工程で使用する磨鉱機の内面は、鉱石が接触することから、その内面も前記非磁性材料で構成することがより一層好ましい。たとえば、磨鉱機としてボールミルを使用する場合、ボールミルのボールの少なくとも表面だけでなく、内部に鉱石及びボールが投入されるポッドないしドラムの内面も、非磁性材料からなるものとすることが好適である。そのような磨鉱機の内面も、鉱石の磨鉱時に削れて鉱石中への粒子の混入の原因になる可能性があるからである。但し、磁着物中のタンタルやニオブの品位は、磨鉱機のなかでも特に磨鉱材の表面の材質に大きく影響される傾向がある。そのため、少なくとも、磨鉱材の表面が非磁性材料で構成されていれば、タンタルやニオブの品位を有効に高めることができる。
【0025】
なお、磨鉱工程では、たとえば空気中で鉱石を粉砕する乾式磨鉱処理、又は、鉱石を混合させたスラリー中で鉱石を粉砕する湿式磨鉱処理のいずれを採用してもよい。磨鉱工程を経ることにより、鉱石の粒径を、38μm~2000μmにすることが好ましい。そのような微細な鉱石であれば、次に述べる磁選工程で当該鉱石から、タンタル及び/又はニオブを含有する鉱物を有効に分離することができる。ここでいう粒径は、円相当径を意味する。
【0026】
(磁選工程)
タンタル及び/又はニオブを含有する鉱物は一般に、磁性を示す。これを利用し、磁選工程では、上記の磨鉱工程後の鉱石から当該鉱物を磁石で吸引して磁着物として分離する磁力選鉱を行う。
【0027】
この実施形態では、先述したように、磨鉱工程で少なくとも表面が非磁性材料からなる磨鉱材を用いたことにより、鉱石中のタンタル及び/又はニオブを含有する鉱物以外の脈石鉱物等の他の鉱物の、磁石による吸引が抑えられる。
【0028】
磁力選鉱は、タンタル及び/又はニオブを含有する鉱物に対する磁気的吸引力を利用するものであれば、その具体的な手法や方式は特に問わない。たとえば、単純なマグネットチューブないし棒磁石を用いて、そこに鉱物を吸着させてもよい。あるいは、マグネットプーリーにベルトを巻き掛けたプーリー型の磁選機や、マグネットドラムを有するドラム型の磁選機、メッシュ状の電磁石を有するマグネティックフィルター、互いに対向して対をなすマグネットローターを有するローター型の磁選機等を用いて、鉱石に対して連続的に磁力選鉱を行うことも可能である。
【0029】
磁力選鉱では、磁束密度が10000ガウス以上の磁力を用いることが好ましい。磁束密度が低すぎる場合は、タンタル及び/又はニオブを含有する鉱物が有効に吸引されないことが懸念される。一方、磁束密度を高くし過ぎることは、不必要に高価な機材を使用することになる他、消費電力が増加し、処理コストの増加となるおそれがある。
【0030】
磁選工程で磁力選鉱を行うことにより、鉱石のうち、磁石に吸着された物として、磁着物が得られる。ここでは、タンタル及び/又はニオブを含有する鉱物以外の脈石鉱物等の他の鉱物の吸引が抑制された結果、磁着物には、タンタル及び/又はニオブを含有する鉱物が比較的多く含まれる一方で、磁着物に占める脈石鉱物等の他の鉱物の割合は有効に低減される。つまり、タンタル及び/又はニオブの品位の高い磁着物を得ることができる。
【実施例0031】
次に、上述したような鉱物の分離方法を試験的に実施したので、以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、これに限定されることを意図するものではない。
【0032】
試験には、表1に示す化学組成及び、
図1に示す鉱物組成を有する鉱石を用いた。各組成の分析は、MLAを用いて行った。なお、
図1(b)は、
図1(a)から一部の鉱物を取り出して拡大して示したものである。
【0033】
表1より、鉱石の主成分はSiO
2であり、Ta
2O
5、Nb
2O
5がそれぞれ80質量ppm、100質量ppm程度含まれることがわかる。この鉱石は、
図1に示すように、主要なタンタル・ニオブ鉱物がColtan[(Fe,Mn)(Ta,Nb)
2O
6]であり、その他にタンタル鉱物としてWodginiteが含まれる。主要な脈石鉱物としては、Quartz(SiO
2)、Albite(NaAlSi
3O
8)、Orthoclase(KAlSi
3O
8)、Spodumene(LiAlSi
2O
6)が検出された。
【0034】
【0035】
上記の鉱石に対し、ボールミルで全体が鉄製又はアルミナ製のボールである磨鉱材を用いた磨鉱及び、磁選を順次に行った。より詳細には、鉱石に磨鉱処理を施してP80=100μmとし、その後、容器内にて鉱石を撹拌しながらマグネットチューブ(11000ガウス)を挿入し、磁着物が回収できなくなるまで磁力選鉱を行った。なお、鉄製の磨鉱材は、材質がFeを97質量%、Crを1.3~1.6質量%で含むものであり、ロックウェル硬さ(HRC)が60前後であった。アルミナ製の磨鉱材は、材質がAl2O3を93質量%、SiO2を5質量%で含むものであり、ロックウェル硬さ(HRC)が60以上であった。
【0036】
磨鉱処理後の鉱石のうち、磁力選鉱により得られた磁着物に移行した各金属の質量基準の割合(磁着物への配分率)を、
図2に示す。また、磁着物中の酸化物換算の品位を表2に示す。
【0037】
【0038】
図2から解かるように、鉄製の磨鉱材を用いた場合、磁着物へのTa、Nbの配分率はそれぞれ58質量%、52質量%程度であったが、アルミナ製の磨鉱材を用いた場合は、上記の配分率が61質量%、69質量%程度に増大した。このことから、アルミナ製の磨鉱材を用いることで、Ta及びNbの回収率が向上することが確認された。また、Siの配分率は、鉄製からアルミナ製の磨鉱材に変更したことにより、2.1質量%から0.2質量%に低下している。それにより、Siを含む脈石鉱物の磁着物への移行が抑制されたことで、Ta、Nb鉱物の回収が促進したと推察される。なお、
図2中、Massは、磨鉱処理後の鉱石の質量に対する磁着物の質量の割合を表している。鉄製からアルミナ製の磨鉱材に変更したことでMassも低下しており、このことからも脈石鉱物の磁着物への移行が抑えられたことがわかる。
【0039】
表2より、アルミナ製の磨鉱材を用いた場合は、鉄製の磨鉱材を用いた場合と比較して、Ta2O5及びNb2O5の品位が高くなり、SiO2の品位が低くなっていることが確認できる。このことは、先述したように、脈石鉱物の磁着物への移行の抑制と、それによるTa、Nb鉱物の回収の促進が要因と推察される。
【0040】
また、上記の磁力選鉱で得られた磁着物及び非磁着物の鉱物組成を確認したところ、
図3に示すグラフを得た。
図3(c)及び(d)はそれぞれ、
図3(a)及び(b)から一部の鉱物を取り出して拡大して示したものである。
【0041】
図3に示すように、鉄製の磨鉱材を用いた場合は、鉄の単体(Iron)が検出されている。これは、磨鉱処理時に磨鉱材の表面が削れて、その粒子が混入したことに由来するものであると考えられる。一方、アルミナ製の磨鉱材を用いた場合は、そのような鉄の単体が検出されなかった。
【0042】
以上より、上述した鉱物の分離方法によれば、磁力選鉱で得られる磁着物中のタンタル及び/又はニオブの品位を向上できることがわかった。