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特開2023-157895顕微鏡検査システムにおける干渉補償
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157895
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】顕微鏡検査システムにおける干渉補償
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20231019BHJP
   H01J 37/26 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
H01J37/22 502H
H01J37/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】35
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023066548
(22)【出願日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】22168589
(32)【優先日】2022-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ルカス マリー
(72)【発明者】
【氏名】ヤロスラウ パヴリス
(72)【発明者】
【氏名】ヤン クルサーチェク
(72)【発明者】
【氏名】ルカス ブリネク
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101GG19
5C101HH03
5C101HH35
5C101HH42
5C101HH55
5C101JJ04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、荷電粒子ビーム顕微鏡検査システムにおける干渉を補償するための方法及びシステムに関する。
【解決手段】サンプリング持続時間の間、試料の照射から取得されるデータを捕捉する工程が、実装され得る。このシステムでは、それぞれのデータストレージは、このデータを捕捉及び/又は記憶するために、提供される。サンプリング持続時間の少なくとも代表的な部分を時間窓に分割し、時間窓の各々に対して、中間画像を構築する更なる工程が、実装され得る。中間画像間のシフトを検出し、中間画像間のシフトに対する補償関数を決定することが、同様に実現される。システムにおいて、後者の工程は、それぞれの処理構成要素によって自動化される。中間画像間のシフトは、二次元シフトであり得、補償関数は、経時的な二次元の中間画像のシフトを表す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ処理ユニット上で動作するとき、荷電粒子ビーム顕微鏡検査システムにおいて干渉を補償するための方法の実施を引き起こす命令を含む、コンピュータプログラムであって、前記方法が、
サンプリング持続時間の間、試料の照射から取得されたデータを捕捉することと、
前記サンプリング持続時間の少なくとも代表的な部分を時間窓に分割することと、
前記代表的な部分の前記時間窓に関して中間画像を構築することと、
前記中間画像間のシフトを検出することと、
前記中間画像間の前記シフトの補償を決定することと、を含む、コンピュータプログラム。
【請求項2】
中間画像間の前記シフトが、二次元シフトであり、前記補償が、経時的に、二次元の前記中間画像の前記シフトを表す、補償関数を含む、請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項3】
前記サンプリング持続時間の少なくとも代表的な部分を複数の等しい長さの時間窓(N)に分割する、請求項1又は2に記載のコンピュータプログラム。
【請求項4】
前記関数が、周期関数、好ましくは、三角関数である、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
前記周期関数が、振幅及び位相データを有する正弦関数である、請求項4に記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
前記補償関数により前記干渉の補償を伴って捕捉された前記データに基づいて、補償された画像データを生成する工程を更に含む、請求項2~5のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
捕捉された前記データが、前記荷電粒子ビーム顕微鏡検査システム内の荷電粒子ビーム及び/又は試料ホルダの位置データを含み、この位置データが、経時的に前記補償関数によって補償される、請求項2~6のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記補償関数により前記干渉の補償を伴って捕捉された前記データに基づいて、補償された画像データを生成する工程を更に含む、請求項2~7のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
捕捉された前記データが、前記荷電粒子ビーム顕微鏡検査システム内の荷電粒子ビーム及び/又は試料ホルダの位置データを含み、この位置データが、経時的に前記補償関数によって補償される、請求項2~8のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
任意の定義された時間窓に関して、前記中間画像が、前記定義された時間窓と同じ長さの時間間隔のいずれかにおいて捕捉され、前記周期関数の周期の整数倍だけ前記定義された窓から分離されたデータからも構築される、請求項9に記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
機械学習によって、前記中間画像間の前記シフトに対する補償関数を決定することを更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
干渉を補償するための顕微鏡検査システムであって、
サンプリング持続時間の間、試料の照射から取得されたデータを捕捉するように構成されたデータストレージと、
処理構成要素と、を備え、前記処理構成要素が、
前記サンプリング持続時間の少なくとも代表的な部分を時間窓に分割し、
前記時間窓の各々について、中間画像を構築し、かつ
前記中間画像間のシフトを検出するように構成されている、顕微鏡検査システム。
【請求項13】
前記処理構成要素が、荷電粒子ビーム顕微鏡検査システムにおける前記干渉を更に補償するように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記処理構成要素が、前記中間画像間の前記シフトに対する補償関数を更に決定するように構成されている、請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項15】
前記処理構成要素が、前記補償関数により前記干渉の補償を伴って捕捉された前記データに基づいて、補償された画像データを更に生成するように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
捕捉された前記データが、前記顕微鏡検査システム内の荷電粒子ビーム及び/又は試料ホルダの位置データを含み、この位置データが、経時的に前記補償関数によって補償される、請求項14又は15に記載のシステム。
【請求項17】
前記処理構成要素が、前記補償関数により前記干渉の補償を伴って捕捉された前記データに基づいて、補償された画像データを更に生成するように構成されている、請求項14~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
捕捉された前記データが、前記顕微鏡検査システム内の荷電粒子ビーム及び/又は試料ホルダの位置データを含み、この位置データが、経時的に前記補償関数によって補償される、請求項14~17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
任意の定義された時間窓に関して、前記中間画像が、前記定義された時間窓と同じ長さの時間間隔のいずれかにおいて捕捉され、前記周期関数の周期の整数倍だけ前記定義された窓から分離されたデータからも構築される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記処理構成要素が、機械学習によって前記中間画像間の前記シフトに対する補償関数を決定するように構成されている、請求項12~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
荷電粒子ビーム顕微鏡検査システムにおいて干渉を補償するための方法であって、前記方法が、
サンプリング持続時間の間、試料の照射から取得されたデータを捕捉することと、
前記サンプリング持続時間の少なくとも代表的な部分を時間窓に分割することと、
前記代表的な部分の前記時間窓に関して中間画像を構築することと、
前記中間画像間のシフトを検出することと、
前記中間画像間の前記シフトの補償を決定することと、を含む、方法。
【請求項22】
中間画像間の前記シフトが、二次元シフトであり、前記補償が、経時的に、二次元の前記中間画像の前記シフトを表す補償関数を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記サンプリング持続時間の少なくとも代表的な部分をいくつかの等しい長さの時間窓(N)に分割する、請求項21~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記関数が、周期関数、好ましくは、三角関数である、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記周期関数が、振幅及び位相データを有する正弦関数である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記補償関数により前記干渉の補償を伴って捕捉された前記データに基づいて、補償された画像データを生成する工程を更に含む、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
捕捉された前記データが、前記荷電粒子ビーム顕微鏡検査システム内の荷電粒子ビーム及び/又は試料ホルダの位置データを含み、この位置データが、経時的に前記補償関数によって補償される、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記補償関数により前記干渉の補償を伴って捕捉された前記データに基づいて、補償された画像データを生成する工程を更に含む、請求項21~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
捕捉された前記データが、前記荷電粒子ビーム顕微鏡検査システム内の荷電粒子ビーム及び/又は試料ホルダの位置データを含み、この位置データが、経時的に前記補償関数によって補償される、請求項21~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
任意の定義された時間窓に関して、前記中間画像が、前記定義された時間窓と同じ長さの時間間隔のいずれかにおいて捕捉され、前記周期関数の周期の整数倍だけ前記定義された窓から分離されたデータからも構築される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
中間画像間のシフトに対する補償関数を遠隔的に及び/又は機械学習によって決定する、請求項21~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
干渉を補償するための顕微鏡検査システムであって、
サンプリング持続時間の間、試料の照射から取得されたデータを捕捉するように構成されたデータストレージと、
処理構成要素と、を備え、前記処理構成要素が、
前記サンプリング持続時間の少なくとも代表的な部分を時間窓に分割し、
前記時間窓の各々について、中間画像を構築し、かつ
前記中間画像間のシフトを検出するように構成されている、顕微鏡検査システム。
【請求項33】
荷電粒子ビーム顕微鏡検査システムにおける干渉を補償するように更に構成された、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記処理構成要素が、前記中間画像間の前記シフトに対する補償関数を更に決定するように構成されている、請求項32~33のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項35】
データ処理ユニット上で動作するとき、請求項21~31のいずれか一項に記載の方法を実施するための命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、顕微鏡検査システムの分野に関する。より具体的には、荷電粒子ビーム顕微鏡検査システムにおける干渉の補正に関する。
【背景技術】
【0002】
電子又はイオンビーム顕微鏡などの荷電粒子ビーム顕微鏡検査システムは、マイクロ/ナノスコピックシステムの撮像及び/又は製作のために広く使用される。光学顕微鏡検査システムに対するそれらの重要な利点は、撮像ビーム内の粒子の非ゼロ質量に由来するそれらのより高い解像度である。しかしながら、荷電粒子顕微鏡検査システムの場合であっても、解像度限界は、典型的には、塊状粒子のより短い波長から予想されるよりもはるかに高い。これは、他の要因の中でも、顕微鏡検査システムの収差のため、又は顕微鏡検査システムに影響を及ぼす外部擾乱のためであり得る。例えば、顕微鏡検査システムが走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)を備える場合、約1nmの解像度を有し得る。かかる顕微鏡検査システムに関し、数十nmの変位をもたらす外部擾乱であっても関連し得る。電子顕微鏡の典型的な外部擾乱は、例えば、電力供給網を通して供給される電磁エネルギーの振動であり得る。グリッドを介して供給される電流の振動は、電子ビームの偏向を引き起こす可能性があり、それゆえ画像の品質に悪影響を及ぼす可能性がある。同様に、試料は、かかる顕微鏡検査システム内ステージ上で保持される。顕微鏡検査システムの機械的擾乱は、ステージの変位につながり得、それゆえ、取得された画像の品質にも影響を及ぼし得る。
【0003】
撮像プロセスにおけるかかる外部擾乱の影響を回避するための典型的な方法は、例えば、外部擾乱の影響をキャンセルする補償電場/磁場を生成するために使用され得る、専用装置を備え得る。かかるシステムは、広く使用されており、例えば、Spicer(登録商標)による製品を参照されたい。それらは外部擾乱を補償する問題を解決するが、かかる装置は、複雑であり、操作するために専用の専門知識を必要とし得る。更に、それらは、動作するために追加のエネルギー及び時間を必要とし、全体的な撮像プロセスを非効率的にし得る。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、外部擾乱又は干渉によって引き起こされる影響を補正するか又は補償するための代替的な方法及びデバイスを提供することである。
【0005】
この目的は、特許請求の範囲及び実施形態による主題によって達成される。
【0006】
本発明は、先行技術の欠点及び不都合な点を克服するか、又は少なくとも軽減することを試みる。より具体的には、本発明の目的は、外部擾乱からの影響を補正することによって、顕微鏡検査システムの解像度を改善することを可能にする方法及びシステムを提供することである。それは、単純かつ容易な使用及び効率的な使用を提供することができる。
【0007】
本技術の実施形態は、特に、上で説明されたものなどの周期的な外部擾乱又は干渉を対象とすることができる。本技術の実施形態は、アナログデータ又は最終画像ではなく生データのレベルで動作する、周期的外部干渉の信頼性のある補正を確実にし得る方法を提供することを更に目的とする。補正は、リアルタイムで、オンザフライで、又は準リアルタイムで行うことができる。
【0008】
本発明は、荷電粒子ビーム顕微鏡検査又は顕微鏡検査システムなどの顕微鏡検査における1つ以上の外部干渉などの干渉を補償するか又は補正するように構成された方法、システム、及びコンピュータプログラム製品に関する。方法工程が言及されるときはいつでも、これらの工程を可能にするそれぞれのシステム特徴もまた、本開示によって包含されるか又は開示され、逆もまた同様である。
【0009】
補償という用語は、干渉を少なくとも部分的に補償する不完全な補正、又はその完全な補正、及びその間の任意のものを含むことが意図される。これは、投資された計算能力及び/又は時間、並びにユーザのニーズに依存し得る。補償の程度は、予め定義され、及び/又は可変であり、及び/又は予め設定され得る。
【0010】
干渉は、交流電流/ACトリガ干渉などの外部干渉、若しくは顕微鏡内の内部干渉、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0011】
本発明によれば、データは、サンプリング持続時間にわたって、試料又はその表面を照射することに基づいて、取得及び捕捉される。捕捉することは、データの記憶、予備記憶、獲得であり得る。この捕捉されたデータは、通常生データと呼ばれるものを含むことができる。しかしながら、生データはまた、圧縮されるか又は事前計算することができるが、検体画像又は最終検体画像ストリームを生成するための最終データではない。この捕捉されたデータはまた、1つ以上のビームの位置及び/又は試料を保持するテーブル若しくはホルダの位置など、好ましくは補正することができる位置/場所関連情報を含む。
【0012】
サンプリング持続時間の少なくとも代表的な1つ以上の部分は、部分スライス、セクション又は時間窓に分割される。時間窓は、連続的である必要はない。サンプリング持続時間全体は、部分、スライス、セクション、若しくは時間窓、例えば、合計してサンプリング持続時間全体になるN個の時間窓、又は時間窓の代表的な数若しくは選択肢に分割することができる。後者は、正弦波関数がかかる干渉を表すことができ、位相及び振幅だけを検出する必要があることが既知である、既知の周波数とのACトリガされた干渉など、干渉が既に既知である場合に可能である。これを非限定的な例として用いると、ACトリガされた干渉の1つの周期(既知の周波数の逆数として取得される)内に2つ又は3つの時間窓を取ることで十分である。十分な計算能力及び/又は時間を用いて、サンプリング持続時間全体も同様に、前述されたように分析することができる。より複雑な周期関数において、より多くの時間窓が、必要であり得る。アルゴリズムは、必要な代表的な時間窓を事前定義するように構成することができ、それにもかかわらず、サンプリング持続時間全体を処理することを強制されないことにより、時間及び/又は計算労力は、最小限に抑えることができる。
【0013】
少なくとも代表的な時間窓の各々について捕捉されたデータからの中間画像が、構築されるか又は作成され得、これらの中間画像間のシフトが、検出され得る。
【0014】
中間画像という用語は、異なる時間窓の中間画像間のシフト又はシフトの数を検出、決定、分析及び/又は測定するのに少なくとも十分な情報を有する画像を含むことを意図する。これは、低解像度画像、又は画像のシフトの決定を可能にする画像内のインデックス付けされた点さえも含み得る。二次元画像の場合、二次元のシフトもまた検出される。二次元試料が分析され、それぞれのデータが二次元上で捕捉されたにもかかわらず、一次元シフトのみが検出されることも起こり得る。
【0015】
改善された静止画像を提供するために、中間画像は、解像度を向上させるために位置合わせされ、統合されるか又は集約され得る。そのため、中間画像は、改善された画像に統合されるために、特定の照明に対して、それらの完全な解像度、低減された解像度、高解像度で計算することができる。改善は、向上した解像度、より高いダイナミックレンジ、改善された鮮明さ、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0016】
本発明はまた、干渉を補償するためのそれぞれの顕微鏡検査システムであって、サンプリング持続時間の間、試料の照射から取得されたデータを捕捉及び/又は記憶するように構成されたデータストレージと、処理構成要素と、を備えることができ、処理構成要素が、サンプリング持続時間の少なくとも代表的な部分を時間窓に分割し、時間窓の各々について、捕捉されたデータから中間画像を構築し、かつ中間画像間のシフトを検出するように構成されている、顕微鏡検査システムを対象とする。
【0017】
前、及び以下に説明された全てのこれらの工程は、自動化された様式で実施される。
【0018】
システムにおいて、処理構成要素は、特に、上記及び下記で言及される方法工程のいずれかを実施するように構成される。
【0019】
この経時的なシフトの検出は、次いで、荷電粒子ビーム顕微鏡検査システムにおける干渉を補償するために使用することができる。これはまた、中間画像間のシフトに対する補償関数を決定することを含み得る。前述及び後述するように、これは通常、時間窓間のシフトの一次元、通常、二次元又は三次元の関数であり、関数のそれぞれのフィッティング又は経時的な外挿である。サンプリング持続時間全体及び/又は次のサンプリング持続時間にわたるそれぞれのシフト値は、干渉を補償するために捕捉されたデータを用いて計算することができる。したがって、補償関数によって表される経時的なシフトは、捕捉されたデータから、又は干渉を補償することができる任意の方式で、減算、推定、又は控除することができる。この捕捉されたデータは、顕微鏡検査システム内のビーム及び/又は試料ホルダ若しくはテーブルの位置及び/又は場所データを含むことができる。最後に、後続の補償又は補正を伴う生データに基づいて、安定化された画像が提供される。
【0020】
補償関数は、通常、干渉が同様に周期現象であり得るので、周期関数であり得る。周期関数の周期が、決定され得る。定義された時間窓に対する中間画像は、次いで、定義された時間窓と同じ持続時間の時間間隔で捕捉され、周期の整数倍で定義された時間窓から分離されたデータを使用して構築され得る。これらの後の時間間隔からのデータを使用するとき、データは、例えば、平均化によって集約され得る。理解され得るように、データ集約の他の適切な手段もまた、その手段が一貫して用いられる限り、用いられ得る。
【0021】
補償関数は、振幅及び位相データを有する正弦波関数などの三角関数である。上述したように、かかる正弦関数は、捕捉された時間又はサンプリング持続時間にわたるそれぞれの顕微鏡における荷電粒子ビームの位置又は場所データなど、捕捉されたデータにおける位置又は場所情報を補正するための補償関数としての役割を果たし得る。
【0022】
補償関数はまた、2つ以上の干渉から構成されて、より複雑な関数をもたらすこともできる。
【0023】
本方法はまた、補償関数に従って、干渉の補償を伴って捕捉されたデータに基づいて補償された画像データを生成する工程と、次いで、干渉が補償された状態の画像を生成及び/又は表示する工程と、を含むことができる。
【0024】
干渉の補償を連続的に追跡し、その品質を評価する更なる工程がまた実装され得る。ベンチマークは、干渉の適切な補償の品質に関する任意の指標又は値であり得る。最適には、干渉は、完全に補償することができ、更なる画像データ又は画像において現れない。この品質又はベンチマークは、間隔をおいて又は連続的に監視することができ、閾値を超えて負にスリップするか、又は移動するか、又はまたぐ場合、再調整又は再補償をトリガすることができる。
【0025】
補償品質又はそのベンチマーク閾値が、事前設定され得、又は精度が、必要とされるか、若しくは適切であるとみなされる実験の精度に従って事前設定され得る。ベンチマークは、代わりに又は追加的に、捕捉されたデータの値対決定されたシフトの値の比に依存する、動的又は相対的な値を含むことができる。
【0026】
中間画像の少なくとも2つを畳み込む工程がまた追加され得る。
【0027】
基準時間窓を定義し、更に基準窓に対する時間差の関数としてシフトの各々を表にする工程を実現することができる。
【0028】
機械学習方法はまた、任意の干渉補償を最適化するために実装することができ、この干渉補償はまた、クラウドなどにおいて遠隔的に計算することもでき、結果は顕微鏡に供給(フィードバック)される。
【0029】
荷電粒子ビーム顕微鏡である顕微鏡は、最大で50keV、好ましくは、最大で40keV、更に好ましくは、最大で30keVを有するビーム内の粒子のためのエネルギーを提供するように構成され得る。粒子ビームは、15keVのビームエネルギーに対して最大19pAの電流を含み、30keVのビームエネルギーに対して最大350pAの電流を含むことができる。
【0030】
顕微鏡検査システムは、走査点における粒子のビームを試料に方向付けて、それを撮像するように構成することができる。試料に衝突する粒子ビームのもたらすものは、試料からの粒子の放出に対応する。システム内の検出器は、試料からの放出を検出するように構成することができる。粒子は電子を含むことができる。検出器は、粒子束を検出するように構成することができる。
【0031】
データストレージは、粒子束に関するデータを記憶するように構成することができる。前述の実施形態による顕微鏡検査システムであって、粒子束に関するデータは、走査点の二次元座標を含む。
【0032】
粒子束に関するデータは、粒子束の検出時間に関するデータを含むことができる。データ処理ユニットは、データストレージ又はメモリユニットとデータを交換するように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の更なる潜在的な、それゆえ非限定的な特徴、詳細、及び利点は、以下の図面において考察される。
図1】本発明による走査型顕微鏡検査システムの一実施形態を示す。
図2】本発明による例示的な走査プロセスを描写する。
図3a】試料の各走査からのカウントを平均した結果を描写する。
図3b】本技術の実施形態を用いて、外部干渉を補正した後の結果を示す。
図4】本発明による方法の例示的な実施形態を描写する。
図5a】生データが捕捉された写真を例示する。
図5b】外部干渉信号を描写する正弦波の2つの時間周期を例示する。
図5c】本発明によって構築される中間画像の例を描写する。
図5d】中間画像を互いに畳み込むことによって決定されたシフトを例示する。
図5e図5dに描写されたフィッティングされた正弦関数を減算した後に取得された再構築画像を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
わかりやすくするために、いくつかの特徴はいくつかの図にのみ示され、他の特徴は、省略されていることがある。しかしながら、省略された特徴が存在し得、描写及び考察された特徴は全ての実施形態に存在する必要はない。
【0035】
図1は、走査型顕微鏡検査システム100の構成要素を示す。走査型顕微鏡検査システム100は、荷電粒子(例えば、電子又はイオン)の一次ビーム107を生成するように構成され得る。走査型顕微鏡検査システム100は、荷電粒子の一次ビーム107を試料108上に方向付けるように更に構成され得る。走査型顕微鏡検査システム100は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)101を備え得る。
【0036】
この例では、一次ビームは、電子ビーム107を含む。電子ビーム107は、電子ビームを放出するように構成された電子源102によって生成され得、電圧は、電子源102とアノード103との間に印加され得る。印加電圧は、好ましくは、少なくとも0.1kV~最大30kVの範囲であり得る。走査型顕微鏡検査システム100は、例えば、電磁レンズを備え得る、方向付け及び/又は集束アセンブリを更に備え得る。電磁レンズは、電子ビーム107の経路を制御するように構成され得る。少なくとも1つの集光レンズ104は、電磁レンズによって構成され得る。集光レンズ104は、ビーム107のサイズを制御するように構成され得る。更に、少なくとも1つの対物レンズ106は、電磁レンズによって構成され得る。対物レンズ106は、電子ビーム107を試料108上の走査点に集束させるように構成され得る。走査点は、試料108上の電子スポットに対応し得る。更に、走査点の寸法及び形状は、電磁レンズの集束特性(例えば、印加電流)及びSEM101と試料108との間の作動距離に依存し得る。走査コイル105は、一次元又は二次元の複数の走査場所にわたってイオンビーム107を偏向させるように構成され得る。それゆえ、任意選択的に有利には、試料の二次元走査が可能になり得る。走査コイル105は、磁気的及び/又は静電的であり得る。
【0037】
走査型顕微鏡検査システム100は、第1及び第2の放出109、111、113を検出するように構成され得る。電子ビーム107は、試料108の粒子(原子など)と相互作用し得る。この相互作用は、第1及び第2の放出物をもたらし得る。第1の放出物は、二次電子及び/又は二次イオンなどの荷電粒子の放出物を含み得る。第1の放出物はまた、後方散乱電子、透過電子、及び/又はオージェ電子の放出物を含み得る。更に、第2の放出物は、X線及び/又は光(例えば、可視光)などの波長の範囲にわたる光子の放出物を含み得る。
【0038】
図1の例では、走査型顕微鏡検査システム100は、第1の検出器110を備え得、第1の検出器110は、走査場所から順次放出される後方散乱電子109を検出するように構成され得る。したがって、第1の検出器110は、セグメント化されたシリコンドリフト検出器などの後方散乱電子検出器を含み得る。しかしながら、後方散乱電子検出器は、他のタイプの固体検出器にも対応し得る。更に、走査型顕微鏡検査システム100は、第2の検出器112を備え得、第2の検出器112は、走査場所から放出された二次電子及び/又は二次イオン111を順次検出するように構成され得る。したがって、第2の検出器は、Everhart-Thornley検出器などの二次電子検出器を含み得る。第2の検出器は、代替として、又は追加として、荷電粒子増倍管などの二次イオン検出器を含んでもよい。
【0039】
更に、走査型顕微鏡検査システムは、第3の検出器114を備え得、第3の検出器114は、走査場所から放出された光子を順次検出するように構成され得る。したがって、第3の検出器114は、例えば、X線検出器を含んでもよく、X線検出器は、例えば、シリコンドリフト検出器を含んでもよい。しかしながら、第3の検出器114はまた、他のタイプの光子検出器(例えば、シンチレーション検出器)を備えてもよい。第2及び第3の検出器112、114は、試料108の表面に対して傾斜していてもよい。
【0040】
第3の検出器114は、エネルギー分散型分光計(energy-dispersive
spectrometer、EDS)によって構成することができる。EDSのエネルギー帯域幅は、0~17keVの範囲であり得る。別のモダリティでは、第3の検出器114は、波長分散型分光計(wavelength-dispersive spectrometer、WDS)によって構成されてもよい。更に、第3の検出器114は、電子エネルギー損失分光計又はカソードルミネッセンス分光計によって構成されてもよい。
【0041】
試料108は、可動ステージ115の上部に位置決めされ得る。可動ステージ115は、試料108の平面に対して、2つの水平移動、垂直移動、傾斜移動、及び/又は回転移動を実行するように構成され得る。2つの水平方向の運動は、視野を選択することを含み得る。垂直方向の運動は、試料108の高さ、それゆえ焦点の深度及び/又は画像解像度を変更することを含み得る。
【0042】
走査型顕微鏡検査システム100は、制御ユニット116を更に備え得る。制御ユニット116は、集光レンズ104、対物レンズ106、走査コイル105、及び可動ステージ115の電力供給及び動作を制御するように構成され得る。更に、走査型顕微鏡検査システム100は、真空システムを含み得る。真空システムは、真空コントローラ117、機械的ポンピングシステム118、超高真空ポンプ119(イオンポンプなど)、及び真空チャンバ120を備え得る。真空コントローラ117は、機械的ポンピングシステム118及び超高真空ポンプ119の動作を制御するように構成され得る。機械的ポンピングシステム118及び超高真空ポンプ119は、真空チャンバ120内に超高真空を提供するように構成され得る。真空チャンバ120は、試料108、可動ステージ115、第1の検出器110又はその一部、第2の検出器112又はその一部、第3の検出器114又はその一部、及びSEM101又はその一部を収容するように構成され得る。
【0043】
走査型顕微鏡検査システム100は、試料108上で画定された走査点(ピクセル)の上にビーム107を位置付けるように構成され得る。この画定されたピクセルは、顕微鏡検査システム100に供給され得、ビーム107は、電磁レンズによって適切に位置決めされ得る。ビーム107は、定義された滞留時間にわたって定義されたピクセルに留まるように構成され得、これはまたシステム100に供給され得る。より長い滞留時間は、試料108を撮像するために必要とされるより長い全体時間を費やして、より高い信号対雑音比をもたらし得る。サンプリング周期と呼ばれ得る、試料108上の走査点を撮像するために顕微鏡検査システム100に必要とされる時間は、滞留時間より短くなり得、そのため試料点の複数の試料は、滞留時間の過程にわたって取得され得る。理解され得るように、かかる試料の数が多いほど、信号対雑音比は高くなる。概して、合計N個の試料が、定義されたピクセルにおいて作成され得る。
【0044】
図2は、滞留時間が200nsであり、サンプリング周期が25ns(40MHzのサンプリング周波数に対応する)であり、そのためN=8個の試料(=200/25)が定義されたピクセルにおいて取得される、例示的な走査プロセスを描写する。滞留時間及びサンプリング周期の同じ構成で、N=8の試料が、試料108全体に対して作製されることに留意されたい。図2は、8個の試料の結果R、R、...、Rを(8ビット精度で)更に描写する。例えば、R~Rは、試料108によって放出され、検出器110において検出される二次電子及び/又は後方散乱電子などの荷電粒子のカウントを表現し得る。次いで、定義されたピクセルに対して最終的に捕捉された画像内で使用するために捕捉されたカウントは、描写された実施例において168である、Rを取得するために、N(=8)個の試料を平均化することによって取得され得る。
【0045】
滞留時間の結果は、外部干渉が撮像プロセスに影響を及ぼし得ることであり得る。例えば、外部干渉は、家庭にエネルギーを供給する、50Hzの周波数を含む電力網からの干渉を含み得る。又は、かかる外部干渉は、ステージ115の変位を介して試料108の位置に影響を及ぼす機械的擾乱を含み得る。この外部干渉の結果として、走査点(又はビーム107が試料108に当たる場所)の実際の位置は、顕微鏡システム100によって報告されたピクセルとは異なり得、顕微鏡検査システム100は、その中に供給された定義済みピクセルを依然として報告する可能性がある。これは、撮像プロセスに悪影響を及ぼし、定義されたピクセルに対して不正確なカウントが測定される可能性がある。例えば、外部干渉が周期的である場合、カウントの平均値Rは、定義されたピクセルの周りの試料108の異なる点にわたるカウントの平均を表し得る。この結果は、試料108の各走査からのカウントを平均化した結果を描写する図3内に例解される。
【0046】
図3aは、試料108の各走査からのカウントを平均した結果を描写する。結果は、試料108の不鮮明な画像である。図3bは、本技術の一実施形態を用いて外部干渉を補正した後の結果を描写する。理解され得るように、試料108の画像は、はるかに鮮明であり、それゆえ画像の全体解像度が、改善される。このため本技術の実施形態は、顕微鏡検査システム100の改善された解像度を可能にし得る、外部擾乱を補正する方法を提供することを目的とする。それらは、特に、干渉周波数と呼ばれ得る、定義された周波数の正弦波外部擾乱などの周期的に生じる干渉を補正及び/又は補償することを対象とする。本技術の実施形態では、この干渉周波数は、追加的に決定され得る。以下の説明では、干渉周波数が既知であると仮定する。
【0047】
図4は、本発明による方法の例示的な実施形態を描写する。実施形態は、本発明による方法を含み得る、複数の工程を描写する。第1の工程201は、試料108の撮像から生データを捕捉することを含み得る。生データは、上述したように、N個の試料の各々から捕捉されたデータを含み得る。典型的には、N個の試料からの値の平均のみが捕捉され得る。しかしながら、本発明による方法を実行するために、N個の試料の各々からの全ての値が保存され得るか、又は実際に保存される。
【0048】
次の工程202において、干渉信号の既知の周期、Tは、(干渉周波数から)M個の部分/窓に分割され、そのため各部分は、持続時間ΔT=T/Mを有する。Mは、Nと異なり得ることに留意されたい。更に、試料108を撮像している間にデータが捕捉される、サンプリング持続時間と呼ばれ得る総持続時間Dは、時間周期Tよりも大きいことも仮定される。それゆえ、データ取得は、干渉信号の複数の時間周期にわたって起こり得る。上述したように、干渉信号のD/T周期(Kと等しくなるように定義され得る)の各々は、M個の部分に分割される。
【0049】
次の工程203は、K個の周期の対応する部分から中間画像を構築することを含む。例えば、中間画像は、最初のΔT時間に捕捉されたデータ、T後のΔT時間に捕捉されたデータ、(2×T)後のΔT時間に捕捉されたデータなどから構築され得る。換言すると、対応する時間窓は、K個の周期の各々において識別され、対応する窓の各々において捕捉されたデータは、中間画像を構築するために使用される。各窓に対するK個のデータ要素は、例えば、それらを平均化することによって、中間画像を構築するために組み合わされ得る。代替的に、それらは、単にともに合計されてもよい。中間画像は、試料108の異なる領域からのデータを含み得、対応する時間窓におけるビーム107の位置に依存し得る。それゆえ、工程203の終わりに、M個の中間画像が取得され得る。
【0050】
工程204は、中間画像に基づいて、外部干渉の影響を検出することを含む。これは、例えば、中間画像をそれらの間で畳み込むことによって達成され得る。例えば、第1の窓から構築された中間画像は、第2の窓などから構築された中間画像で畳み込まれ得る。この畳み込みに基づいて、中間画像のシフトが取得され得る。シフトは、x方向及びy方向の値を有する二次元ベクトルを含み得る。x方向及びy方向は、ステージ115の並進軸に沿った方向に対応し得る。
【0051】
M個の時間窓のうちの1つ(M個の時間窓が使用される場合)が、基準窓として選択され得る。次いで、x及びy方向に沿ったシフトが、基準窓からの時間差の関数として描画され得る。例えば、第1の窓からの中間画像を第2の窓からの中間画像で畳み込むことから取得されるシフトは、ΔTに対応して捕捉され得る。同様に、第1の窓からの中間画像を第3の窓からの中間画像で畳み込むことから取得されるシフトは、2×ΔTに対応して捕捉され得る。更に、第2の窓からの中間画像を第3の窓からの中間画像で畳み込むことから取得されるシフトは、第1の窓からの中間画像を第2の窓からの中間画像で畳み込むことからのシフトに(ベクトル的に)加えられ、2×ΔTに対応して捕捉され得る。複数のシフトが同じ時間差に対して捕捉されるとき、上述のように、値は平均化され得る。工程4の最終結果は、基準窓からの時間差の関数としてx及びy方向におけるシフトを描写するグラフであり得る。
【0052】
次の工程205は、工程204において取得されたシフトデータを周期関数に当てはめて、干渉モデルのパラメータを取得することを含み得る。干渉モデルがこのように決定されると、工程206において、干渉信号は、ビーム107の報告された位置から減算されて、試料108上の実際の位置に対応するデータを取得することができる。最後の工程207では、このデータは、画像を再構築するために使用され得る。それにより、図3aに示される例示的な試料108のぼやけた画像から図3bに示される鮮明な画像に移行することができる。
【0053】
図5は、例示的な試料108についての上記工程201~207を例解する。図5aは、捕捉され得る生データを描写する、工程201を示す。図5bは、外部干渉信号を描写する例示的な正弦波の2つの周期を含む走査を示し各周期は、A~Hとラベル付けされた8つの部分/時間窓に分割される。このため、M=8、K=2、及びD=2×Tである。図5cは、8つの窓の各々を使用して構築され得る、8つの中間画像を描写する。図5dは、8つの中間画像を互いに畳み込むことによって決定されたX(301)及びY(302)シフトを描写する。それはまた、位相及び振幅についての対応する値を有するシフトの各々に適合された正弦関数を描写する。最後に、図5eは、図5dに描写されたフィッティングされた正弦関数を減算した後に取得された再構築画像を描写する。特に、各時点について、Xシフト及びYシフトは、フィッティングされた正弦関数から推定され得、次いで、走査点の捕捉されたx座標及びy座標から減算され得る。
【0054】
上記の開示は、正弦波周期擾乱に焦点を当てているが、本発明による方法はまた、関数形式が既知であるか、又は決定することができる限り、任意の関数形式の擾乱を補正するために適用され得ることも留意されたい。更に、関数の推定は、一度だけ実行され、更なる撮像用途に使用され得る。それはまた、撮像中により多くのデータが獲得されるにつれて、連続的に追跡及び精緻化され得る。本発明による方法の重要な利点は、典型的に、使用され、複雑であり、置き換えるために精巧な操作を必要とし得るハードウェアソリューションを、携帯可能で使用が容易であり得るソフトウェアソリューションによって置き換えられることを可能にすることであり得る。
【0055】
このため、全体として、本技術の実施形態は、顕微鏡検査システムの解像度に影響を及ぼす可能性があり、顕微鏡検査システムの解像度を更に改善することに役立ち得る、周期的な外部擾乱を補正するための方法を提供することを目的とする。
【0056】
「約(about)」、「実質的に(substantially)」又は「およそ(approximately)」などの相対的用語が本明細書で使用されるときはいつでも、そのような用語はまた、正確な用語も含むと解釈されるべきである。すなわち、例えば、「実質的にまっすぐ(substantially straight)」は、「(厳密に)まっすぐ((exactly)straight)」も含むと解釈されるべきである。
【0057】
工程が上記又は更に添付の特許請求の範囲に列挙されるときはいつでも、本文で工程が列挙される順序は偶発的であり得ることに留意されるべきである。すなわち、別段の指定がない限り、又は当業者に明らかでない限り、工程が列挙される順序は、偶発的なものであり得る。すなわち、本明細書が、例えば、方法が工程(A)及び(B)を含むことを記載している場合、これは、工程(A)が工程(B)に先行することを必ずしも意味するものではなく、工程(A)が工程(B)と(少なくとも部分的に)同時に実施されるか又は工程(B)が工程(A)に先行することも可能である。更に、工程(X)が別の工程(Z)に先行すると記載されている場合、これは、工程(X)と工程(Z)の間に工程がないことを意味するものではない。すなわち、工程(Z)に先行する工程(X)は、工程(Z)の直前に工程(X)が実施される状況を包含するが、工程(Z)が続く1つ以上の工程(Y1)、...、の前に工程(X)が実施される状況も包含する。対応する考慮事項は、「後」又は「前」などの用語が使用される場合に適用される。
【0058】
上記において、好ましい実施形態が、添付の図面を参照して説明されてきたが、当業者は、この実施形態が、例示目的のためのみとして提供されたものであり、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものと決して解釈されるべきではないことを理解するであろう。
【0059】
本発明による顕微鏡検査システムは、特に、前述又は後述の方法の実施形態のいずれかによる方法を実施するために構成することができる。
【0060】
以下は、方法の実施形態のリストである。これらは、文字「M」で示される。かかる実施形態が参照されるときはいつでも、「M」の実施形態を参照することによって行われる。
M1.顕微鏡検査システムにおいて干渉を補償するための方法であって、
サンプリング持続時間の間、試料の照射から取得されたデータを捕捉することと、
サンプリング持続時間の少なくとも代表的な部分を関連する時間窓に分割することと、
関連する時間窓の各々について、中間画像を構築することと、
中間画像間のシフトを検出することと、を含む、方法。
M2.中間画像が、解像度、ダイナミックレンジ、鮮明度、又はこれらの任意の組み合わせを向上させるために、位置合わせされ、統合されるか又は集約される、M1の方法に記載の方法。
M3.中間画像が、対応する時間窓において捕捉されたデータを使用して構築される、M1又はM2の方法の実施形態に記載の方法。
M4.荷電粒子ビーム顕微鏡検査システムにおいて干渉を補償することを更に含む、M1~M3の方法の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
M5.補償の程度が、予め定義されるか、又は変更され得る、M1~M4の方法の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
M6.中間画像間のシフトに対する補償関数を更に決定する、M1~M5の方法の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
M7.中間画像間のシフトが、二次元シフトであり、補償関数が、経時的な二次元の中間画像のシフトを表す、M6の方法の実施形態に記載の方法。
M8.サンプリング持続時間の少なくとも代表的な部分をいくつかの等しい長さの時間窓(N)に分割する、M1~M7の方法の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
M9.関数が、周期関数である、3つのM1~M8の方法の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
M10.方法が、周期関数の周期を決定することを含む、M1~M9の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
M11.任意の定義された時間窓に関して、中間画像が、定義された時間窓と同じ長さの時間間隔のうちのいずれかにおいて捕捉され、周期関数の周期の整数倍によって定義された窓から分離されたデータからも構築される、M1~M10の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
M12.関数が、三角関数である、3つのM1~M11の方法の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
M13.三角関数が、振幅及び位相データを有する正弦関数である、M12の方法の実施形態に記載の方法。
M14.補償関数に従って干渉の補償を伴って捕捉されたデータに基づいて、補償された画像データを生成する工程を更に含む、M1~M13の方法の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
M15.捕捉されたデータが、顕微鏡検査システム内の荷電粒子ビーム及び/又は試料ホルダの位置データを含み、この位置データが、経時的に補償関数によって補償される、M1~M14の方法の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
M16.補償された画像データに基づいて、画像を生成する工程を更に含む、M15の方法の実施形態に記載の方法。
M17.干渉の補償を連続的に追跡し、その品質を評価する工程を更に有する、M1~M16の方法の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
M18.干渉補償ベンチマークが閾値を超えるとき、補償を精緻化する更なる工程を有する、M17の方法の実施形態に記載の方法。
M19.ベンチマーク閾値が、予め設定される、M18の方法の実施形態に記載の方法。
M20.ベンチマークが、捕捉されたデータの値対決定されたシフトの値の比に依存する動的な値を含む、2つのM1~M19の方法の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
M21.中間画像のうちの少なくとも2つを畳み込む工程を有する、M1~M20の方法の実施形態のいずれかに1つ記載の方法。
M22.基準窓に対するシフトを、基準窓に対する時間差の関数として表にすることを更に含む、M1~M21の方法の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
M23.基準時間窓を定義し、シフトの各々を、基準窓に対する時間差の関数として更に表にする工程を更に含む、M1~M22の方法の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
M24.中間画像間のシフトに対する補償関数を決定し、機械学習方法を使用して補償関数を決定する更なる工程を有する、M1~M23の方法の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
M25.顕微鏡検査システムが、試料又はその一部を撮像及び/又は処理するように構成される、M1~M24の方法の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
M26.顕微鏡が、荷電粒子ビーム顕微鏡であり、粒子のビーム内の粒子のエネルギーが、最大50keV、好ましくは、最大40keV、更に好ましくは、最大30keVで生成される、M1~M25の方法の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
M27.顕微鏡が、荷電粒子ビーム顕微鏡であり、粒子のビームが、15keVのビームエネルギーに対して最大19pAの電流、及び30keVのビームエネルギーに対して最大350pAの電流を含む、M1~M26の方法の実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0061】
以下は、システム実施形態のリストである。これらは、文字「S」で示される。かかる実施形態が参照されるときはいつでも、「S」の実施形態を参照することによって行われる。
S1.干渉を補償するための顕微鏡検査システムであって、
サンプリング持続時間の間、試料の照射から取得されたデータを捕捉するように構成されたデータストレージと、
処理構成要素と、を備え、処理構成要素が、
サンプリング持続時間の少なくとも代表的な部分を関連する時間窓に分割し、
関連する時間窓の各々について、中間画像を構築し、かつ
中間画像間のシフトを検出するように構成された、処理構成要素と、を備える、顕微鏡検査システム。
S2.荷電粒子ビーム顕微鏡検査システムにおいて干渉を補償することを更に含む、S1のシステムの実施形態に記載のシステム。
S3.中間画像が、解像度、ダイナミックレンジ、鮮明度、又はこれらの任意の組み合わせを向上させるために、位置合わせされるか、統合されるか、又は集約される、S1又はS2のシステムに記載のシステム。
S4.処理構成要素が、対応する時間窓において捕捉されたデータを使用して中間画像を構築するように構成される、S1~S3のシステムの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
S5.補償の程度が、予め定義されるか、又は変更されるように構成される、S1~S4のシステムの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
S6.処理構成要素が、中間画像間のシフトに対する補償関数を更に決定するように構成される、S1~S5のシステムの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
S7.中間画像間のシフトが、二次元シフトであり、補償関数が、経時的な二次元の中間画像のシフトを表す、S6のシステムに記載のシステム。
S8.処理構成要素が、サンプリング持続時間の少なくとも代表的な部分をいくつかの等しい長さの時間窓(N)に分割するように構成される、S1~S7のシステムの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
S9.関数が、周期関数である、3つのS1~S8のシステムの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
S10.関数が、三角関数である、S9のシステムの実施形態に記載のシステム。
S11.三角関数が、振幅及び位相データを有する正弦関数である、S10のシステムの実施形態に記載のシステム。
S12.処理構成要素が、補償関数に従って干渉の補償を伴って捕捉されたデータに基づいて、補償された画像データを更に生成するように構成される、S1~M11のシステムの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
S13.捕捉されたデータが、顕微鏡検査システム内の荷電粒子ビーム及び/又は試料ホルダの位置データを含み、この位置データが、経時的に補償関数によって補償される、S1~S12のシステムの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
S14.処理構成要素が、補償された画像データに基づいて画像を更に生成するように構成される、S13のシステムの実施形態に記載のシステム。
S15.処理構成要素が、干渉の補償を連続的に更に追跡し、その品質を評価するように構成される、S1~S14のシステムの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
S16.処理構成要素が、干渉補償ベンチマークが閾値を超えて移動するときに補償を精緻化するように構成される、S15のシステムの実施形態に記載のシステム。
S17.ベンチマーク閾値が、予め設定される、S16のシステムの実施形態に記載のシステム。
S18.ベンチマークが、捕捉されたデータの値対決定されたシフトの値の比に依存する動的な値を含む、2つのS1~S17のシステムの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
S19.走査点における粒子のビームを試料上に方向付けて、それを撮像するように構成されている、S1~S18のシステムの実施形態のいずれか1つに記載の顕微鏡検査システム。
S20.粒子のビームが試料に衝突してもたらされるものは、試料からの粒子の放出である、S19の実施形態に記載の顕微鏡検査システム。
S21.試料からの発光を検出するように構成された検出器を備える、S20の実施形態による顕微鏡検査システム。
S22.粒子が、電子を含む、2つのS1~S21の実施形態のいずれか1つに記載の顕微鏡検査システム。
S23.検出器が、粒子束を検出するように構成される、S22の実施形態に記載の顕微鏡検査システム。
S24.データストレージが、粒子束に関するデータを記憶するように構成されている、S23の実施形態に記載の顕微鏡検査システム。
S25.二次元座標システムをビームに曝露される試料の表面と関連付けるように構成されている、S1~S24のシステムの実施形態のいずれか1つに記載の顕微鏡検査システム。
S26.走査点の二次元座標を報告するように構成されている、S25のシステムの実施形態に記載の顕微鏡検査システム。
S27.粒子束に関するデータが、走査点の二次元座標を含む、S26の実施形態に記載の顕微鏡検査システム。
S28.粒子束に関するデータが、粒子束の検出時間に関するデータを含む、S1~S27のシステムの実施形態のいずれか1つに記載の顕微鏡検査システム。
S29.データ処理ユニットが、メモリユニットとデータを交換するように構成される、S1~S28のシステムの実施形態のいずれか1つに記載の顕微鏡検査システム。
S30.S1~S29の方法の実施形態のいずれか1つに記載の方法を実施するように構成される、S1~S29の方法実施形態のいずれか1つに記載の顕微鏡検査システム。
【0062】
以下は、方法の実施形態のリストである。これらは、文字「P」で示され得る。かかる実施形態が参照されるときはいつでも、「P」の実施形態を参照することによって行われる。
P1.データ処理ユニット上で動作するとき、先行する方法の実施形態のいずれか1つに記載の方法を実施するための命令を含む、コンピュータプログラム製品。
P2.先行するシステムの実施形態のいずれか1つに記載の顕微鏡検査システムのデータ処理ユニット上で動作するとき、先行する方法の実施形態のいずれか1つに記載の方法を実施するための命令を含む、コンピュータプログラム製品。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
【外国語明細書】