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特開2023-157939液晶硬化膜形成用組成物及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157939
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】液晶硬化膜形成用組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20231019BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20231019BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20231019BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20231019BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20231019BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/86
H10K59/10
G09F9/00 313
G02F1/1335 510
G02F1/13363
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130661
(22)【出願日】2023-08-10
(62)【分割の表示】P 2019085699の分割
【原出願日】2019-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】葛西 辰昌
(72)【発明者】
【氏名】幡中 伸行
(57)【要約】
【課題】
本発明は、膜厚ムラが少ない液晶硬化膜を製造するための液晶硬化膜形成用組成物を提供することである。
【解決手段】
本発明は、シリコン系またはフッ素系レベリング剤を少なくとも1種と、アクリル系レベリング剤を少なくとも1種と、及び重合性液晶化合物を少なくとも1種とを含み、レベリング剤の合計量が重合性液晶化合物の総量に対して3.0重量%以下である液晶硬化膜形成用組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン系またはフッ素系レベリング剤を少なくとも1種と、アクリル系レベリング剤を少なくとも1種と、重合性液晶化合物を少なくとも1種とを含み、
レベリング剤の合計量が重合性液晶化合物の総量に対して3.0質量%以下である液晶硬化膜形成用組成物。
【請求項2】
シリコン系レベリング剤を少なくとも1種と、アクリル系レベリング剤を少なくとも1種、さらに重合性液晶化合物を1種以上含む請求項1に記載の液晶硬化膜形成用組成物。
【請求項3】
さらに、二色性色素を含む請求項1または請求項2のいずれかに記載の液晶硬化膜形成用組成物。
【請求項4】
重合性液晶化合物がスメクチック相を示す重合性液晶化合物である、請求項1~3のいずれかに記載の液晶硬化膜形成用組成物。
【請求項5】
重合性液晶化合物がT字構造を有する液晶化合物である、請求項1~4のいずれかに記載の液晶硬化膜形成用組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の液晶硬化膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物が配向した状態で硬化した液晶硬化膜。
【請求項7】
液晶硬化膜の膜厚が0.3μm以上5.0μm以下である、請求項6に記載の液晶硬化膜。
【請求項8】
重合性液晶化合物が面内に対して平行な方向に配向した状態で硬化した水平配向液晶硬化膜である、請求項6または請求項7のいずれかに記載の液晶硬化膜。
【請求項9】
さらに下記式(S1)を満たす請求項6~8のいずれかに記載の液晶硬化膜。
100nm≦ReA(550)≦180nm ・・・(S1)
(式中、ReA(550)は波長550nmにおける面内位相差値を表わす。)
【請求項10】
さらに下記式(S2)を満たす請求項6~9のいずれかに記載の液晶硬化膜。
ReA(450)/ReA(550)<1.0 ・・・(S2)
(式中、ReA(450)は波長450nmにおける面内位相差値を表わす。)
【請求項11】
液晶硬化膜が水平配向液晶硬化膜であって、X線回折測定においてブラッグピークを示す請求項6~10のいずれかに記載の水平配向液晶硬化膜。
【請求項12】
重合性液晶化合物が面内に対して垂直な方向に配向した状態で硬化した垂直配向液晶硬化膜である、請求項6または請求項7のいずれかに記載の液晶硬化膜。
【請求項13】
さらに下記関係式(S3)を満たす請求項12に記載の液晶硬化膜。
-150≦RthC(550)≦-30・・・(S3)
[関係式(S3)中、RthC(550)は液晶硬化膜の波長550nmにおける厚み方向の位相差値を示す]
【請求項14】
さらに下記関係式(S4)を満たす、請求項12または請求項13のいずれかに記載の液晶硬化膜。
RthC(450)/RthC(550)≦1.0 ・・・(S4)
[関係式(S4)中、RthC(450)は液晶硬化膜の波長450nmにおける厚み方向の位相差値を示し、RthC(550)は液晶硬化膜の波長550nmにおける厚み方向の位相差値を示す]
【請求項15】
水平配向位相差フィルム、及び偏光フィルムを含む楕円偏光板であって、
水平配向フィルムまたは偏光フィルムの少なくとも一つが請求項6~11のいずれかに記載の液晶硬化膜である、楕円偏光板。
【請求項16】
水平配向位相差フィルム、垂直配向液晶硬化膜、及び偏光フィルムを含む楕円偏光板であって、
水平配向フィルム、垂直配向液晶硬化膜、偏光フィルムの内少なくとも一つが請求項6~14のいずれかに記載の液晶硬化膜である、楕円偏光板。
【請求項17】
水平配向位相差フィルムの遅相軸と、偏光板の吸収軸とのなす角が45±5°である、請求項15または請求項16のいずれかに記載の楕円偏光板。
【請求項18】
請求項15~17のいずれかに記載の楕円偏光板を含む、有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶硬化膜形成用組成物、液晶硬化膜、楕円偏光板及び有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
楕円偏光板は、偏光板と位相差板とが積層された光学部材であり、例えば平面状態で画像を表示する装置(たとえば、有機EL表示装置)において、装置を構成する電極での光反射を防止するために用いられている。この楕円偏光板において、位相差板としては、いわゆるλ/4板が用いられる。
【0003】
かかる楕円偏光板に用いられる位相差板としては、逆波長分散性を示すものが、可視光の広い波長範囲で同等の位相差性能を発揮する点で好適である。逆波長分散性を示す位相差板として、逆波長分散性を示す重合性液晶化合物を水平方向に配向させた状態で重合し硬化させた水平配向液晶硬化膜からなる位相差板が知られている。
【0004】
また、垂直配向液晶硬化膜を形成し、該垂直配向液晶硬化膜を前記楕円偏光板と組み合わせることにより、有機EL表示装置と組み合わせた際に黒表示時の斜方色相変化を抑制可能であることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-163935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、水平配向硬化膜や垂直配向液晶硬化膜などの液晶硬化膜は一般に重合性液晶化合物を含む組成物を製造後、該組成物を基材や配向膜などに塗布、硬化することによって液晶硬化膜を形成するが、形成される液晶硬化膜は一般に5μm以下の薄膜であって、膜厚ムラによって製品外観が大きく悪化するということが問題となっていた。また、重合性液晶化合物を含む組成物中に添加剤を加える場合、添加剤によっては重合性液晶化合物の配向性を悪化させるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記状況を鑑みて実施されたものであり、膜厚ムラが少ない液晶硬化膜を製造するための組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の好適な態様を提供するものである。
【0009】
[1]シリコン系またはフッ素系レベリング剤を少なくとも1種と、アクリル系レベリング剤を少なくとも1種と、重合性液晶化合物を少なくとも1種とを含み、
レベリング剤の合計量が重合性液晶化合物の総量に対して3.0質量%以下である液晶硬化膜形成用組成物。
[2]シリコン系レベリング剤を少なくとも1種と、アクリル系レベリング剤を少なくとも1種、さらに重合性液晶化合物を1種以上含む[1]に記載の液晶硬化膜形成用組成物。
[3]さらに、二色性色素を含む[1]または[2]のいずれかに記載の液晶硬化膜形成用組成物。
[4]重合性液晶化合物がスメクチック相を示す重合性液晶化合物である、[1]~[3]のいずれかに記載の液晶硬化膜形成用組成物。
[5]重合性液晶化合物がT字構造を有する液晶化合物である、[1]~[4]のいずれかに記載の液晶硬化膜形成用組成物。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の液晶硬化膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物が配向した状態で硬化した液晶硬化膜。
[7]液晶硬化膜の膜厚が0.3μm以上5.0μm以下である、[6]に記載の液晶硬化膜。
[8]重合性液晶化合物が面内に対して平行な方向に配向した状態で硬化した水平配向液晶硬化膜である、[6]または[7]のいずれかに記載の液晶硬化膜。
[9]さらに下記式(S1)を満たす[6]~[8]のいずれかに記載の液晶硬化膜。
100nm≦ReA(550)≦180nm ・・・(S1)
(式中、ReA(550)は波長550nmにおける面内位相差値を表わす。)
[10]さらに下記式(S2)を満たす[6]~[9]のいずれかに記載の液晶硬化膜。
ReA(450)/ReA(550)<1.0 ・・・(S2)
(式中、ReA(450)は波長450nmにおける面内位相差値を表わす。)
[11]液晶硬化膜が水平配向液晶硬化膜であって、X線回折測定においてブラッグピークを示す[6]~[10]のいずれかに記載の水平配向液晶硬化膜。
[12]重合性液晶化合物が面内に対して垂直な方向に配向した状態で硬化した垂直配向液晶硬化膜である、[6]または[7]のいずれかに記載の液晶硬化膜。
[13]さらに下記関係式(S3)を満たす[12]に記載の液晶硬化膜。
-150≦RthC(550)≦-30・・・(S3)
[関係式(S3)中、RthC(550)は液晶硬化膜の波長550nmにおける厚み方向の位相差値を示す]
[14] さらに下記関係式(S4)を満たす、[12]または[13]のいずれかに記載の液晶硬化膜。
RthC(450)/RthC(550)≦1.0 ・・・(S4)
[関係式(S4)中、RthC(450)は液晶硬化膜の波長450nmにおける厚み方向の位相差値を示し、RthC(550)は液晶硬化膜の波長550nmにおける厚み方向の位相差値を示す]
[15]水平配向位相差フィルム、及び偏光フィルムを含む楕円偏光板であって、
水平配向フィルムまたは偏光フィルムの少なくとも一つが[6]~[11]のいずれかに記載の液晶硬化膜である、楕円偏光板。
[16]水平配向位相差フィルム、垂直配向液晶硬化膜、及び偏光フィルムを含む楕円偏光板であって、
水平配向フィルム、垂直配向液晶硬化膜、偏光フィルムの内少なくとも一つが[6]~[14]のいずれかに記載の液晶硬化膜である、楕円偏光板。
[17]水平配向位相差フィルムの遅相軸と、偏光板の吸収軸とのなす角が45±5°である、[15]または[16]のいずれかに記載の楕円偏光板。
[18]
[15]~[17]のいずれかに記載の楕円偏光板を含む、有機EL表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2種類のレベリング剤(即ち、シリコン系又はフッ素系レベリング剤とアクリル系レベリング剤)をレベリング剤の合計量が重合性液晶化合物の総量に対して3.0質量%以下の配合量で重合性液晶組成物中に配合する。これらの2種類のレベリング剤は、液晶組成物中で働きが異なる。シリコン系又はフッ素系レベリング剤は表面自由エネルギーが低いため液晶組成物の表層に偏析する傾向があり、組成物の表面張力を低下させることにより塗膜表層での平坦化に効果があり、一方でアクリル系レベリング剤は液晶組成物の膜中での液物性の局所的なムラを均一化する効果があり、両者の組合せを特定の配合量で含むことにより、膜厚ムラが少ない液晶硬化膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0012】
<レベリング剤>
本発明では、前述のように、シリコン系またはフッ素系レベリング剤を少なくとも1種と、アクリル系レベリング剤を少なくとも1種とを、レベリング剤の合計量が重合性液晶化合物の総量に対して3.0質量%以下の量で重合性液晶組成物に配合することを特徴としている。
【0013】
シリコン系レベリング剤としては、ポリオルガノシロキサン骨格を有するレベリング剤等が挙げられる。ポリオルガノシロキサン中のケイ素原子(シロキサン結合を形成するケイ素原子)に結合した基としては、炭化水素基等が挙げられる。中でも、炭素数1~10のアルキル基、アリール基が好ましく、より好ましくはメチル基、フェニル基、さらに好ましくはメチル基である。上記ケイ素原子に結合した基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。また、シロキサン単位の繰り返し数(重合度)は、特に限定されないが、2~10000が好ましく、より好ましくは3~5000、さらに好ましくは5~1000である。
【0014】
シリコン系レベリング剤は、市販品を使用することができ、例えばBYK-300、BYK-302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-313、BYK-315N、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-337、BYK-342、BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-370、BYK-377、BYK-378、BYK-3455、BYK-UV3510(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、KF-945、KF-6015、KF-6020(以上、信越化学工業(株)製)、TEGORad2300、TEGORad2200N、TEGORad2011(デグサ社製)、ポリエーテル鎖中に(メタ)アクリロイル基等のラジカル重合性基が付加しているものとして、BYK-UV3500、BYK-UV3505、BYK-3510、BYK-UV3530、BYK-UV3570、BYK-UV3575、BYK-UV3576(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、KP-422、KP-416、KP-418、KP-410、KP-411、KP-412、KP-413、KP-423、KP-414、KP-415、KP-420、KP-983(以上、信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0015】
重合性液晶組成物中のシリコン系レベリング剤の含有量は、上記重合性の液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.001質量部~2質量部、より好ましくは0.01質量部~1.5質量部、さらに好ましくは0.1質量部~1.5質量部である。
【0016】
上記フッ素系レベリング剤としては、特に限定されないが、フルオロ脂肪族炭化水素骨格を有するレベリング剤等が挙げられる。上記フルオロ脂肪族炭化水素骨格としては、特に限定されないが、例えば、フルオロメタン、フルオロエタン、フルオロプロパン、フルオロイソプロパン、フルオロブタン、フルオロイソブタン、フルオロt-ブタン、フルオロペンタン、フルオロヘキサン等の炭素数1~10のフルオロアルカン等が挙げられる。フルオロ脂肪族炭化水素骨格は、少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されていればよいが、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロ脂肪族炭化水素骨格であることが好ましい。
【0017】
また、上記フルオロ脂肪族炭化水素骨格は、エーテル結合を介した繰り返し単位であるポリフルオロアルキレンエーテル骨格を形成していてもよい。繰り返し単位としてのフルオロ脂肪族炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、フルオロメチレン、フルオロエチレン、フルオロプロピレン、フルオロイソプロピレン等のフルオロC1-4アルキレン基が挙げられる。上記フルオロ脂肪族炭化水素基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。フルオロアルキレンエーテル単位の繰り返し数(重合度)は、特に限定されないが、10~10000が好ましく、より好ましくは30~5000、さらに好ましくは50~1000である。
【0018】
フッ素系レベリング剤の例としては、市販品を使用することができ、例えば“メガファック(登録商標)R-08”、同“R-30”、同“R-90”、同“F-410”、同“F-411”、同“F-443”、同“F-445”、同“F-470”、同“F-471”、同“F-477”、同“F-479”、同“F-482”、同“F-483”、 同“F-281” 、同“F-253” 、同“F-251” 、同“F-114” 、同“F-510”、 同“F-551” 、 同“F-552” 、同“F-553” 、同“F-554” 、同“F-555” 、同“F-556” 、同“F-557” 、同“F-558” 、同“F-559” 、同“F-560” 、同“F-561” 、同“F-562” 、同“F-563” 、同“F-565” 、同“F-568” 、同“F-569” 、同“F-570” 、同“F-572” 、同“F-574” 、同“F-575” 、同“F-576” 、同“R-40” 、同“R-41” 、同“R-94” 、同“RS-56” 、同“RS-72-K” 、同“RS-75” 、同“RS-76-E” 、同“RS-76-NS” 、同“RS-78” 、同“RS-90” 、同“DS-21”(DIC(株));“サーフロン(登録商標)S-381”、同“S-382”、同“S-383”、同“S-393”、同“SC-101”、同“SC-105”、“KH-40”および“SA-100”(AGCセイミケミカル(株));“E1830”、“E5844”((株)ダイキンファインケミカル研究所);“エフトップEF301”、“エフトップEF303”、“エフトップEF351”および“エフトップEF352”(三菱マテリアル電子化成(株))が挙げられる。
【0019】
重合性液晶組成物中のフッ素系レベリング剤の含有量は、上記重合性の液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.001質量部~2質量部、より好ましくは0.01質量部~1.5質量部、さらに好ましくは0.1質量部~1.5質量部である。
【0020】
アクリル系レベリング剤は、例えば(メタ)アクリロイル基を有する単量体を共重合して製造される。アクリル系レベリング剤は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体として、水酸基を有する(メタ)アクリレート並びにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドに代表されるアルキレンオキサイドを有する(メタ)アクリレート等の親水性基を有する単量体を共重合して製造することができる。
【0021】
アクリル系レベリング剤は、市販品を使用しても良く、例えば“BYK-350”、“BYK-352”、“BYK-353”、“BYK-354”、“BYK-355”、“BYK-356”、“BYK-358N”、“BYK-361N”、“BYK-380”、“BYK-381”、“BYK-392”、“BYK-394”、“BYK-3441”(ビックケミー・ジャパン(株)社)が挙げられる。
【0022】
重合性液晶組成物中のアクリル系レベリング剤の含有量は、上記重合性の液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.001質量部~3質量量部、より好ましくは0.01質量部~2質量部、さらに好ましくは0.1質量部~1.5質量部である。
【0023】
前記の通り、アクリル系レベリング剤は液晶硬化膜において、膜厚方向での偏析が起きにくいことから、液晶硬化膜の配向性を悪化させやすい傾向にある。アクリル系レベリング剤としては、分子量が小さいほど重合性液晶化合物の配向を阻害しにくい傾向があるため、アクリル系レベリング剤の分子量(重量平均分子量)は好ましくは100~100000、より好ましくは500~50000、更に好ましくは500~10000、特に好ましくは500~5000である。
【0024】
本発明では、シリコン系またはフッ素系レベリング剤を少なくとも1種と、アクリル系レベリング剤を少なくとも1種とを、レベリング剤の合計量が重合性液晶化合物の総量に対して3.0重量%以下の量で配合するのが好ましい。前述のように、シリコン系又はフッ素系レベリング剤の重合性液晶組成物中での作用とアクリル系レベリング剤の重合性液晶組成物中での作用が異なるので、両方のレベリング剤を配合するのが好ましい。シリコン系又はフッ素系レベリング剤としては、シリコン系レベリング剤の方が好ましい。レベリング剤の合計量が、重合性液晶組成物の総量に対して3.0重量%を超えると、液晶の配向性を悪化させる傾向にある。レベリング剤の合計量は、好ましくは0.001~3質量%、より好ましくは0.01~2.5質量%である。上記範囲よりもレベリング剤添加量が少ないと、レベリング剤添加の効果が発揮されにくい傾向にある。シリコン系又はフッ素系レベリング剤とアクリル系レベリング剤との重量比は、シリコン系又はフッ素系レベリング剤/アクリル系レベリング剤の重量比で、0.01~30、より好ましくは0.05~10である。どちらかのレベリング剤の量が多くなっても作用のバランスが崩れて、膜厚ムラが発生する。
【0025】
<重合性液晶組成物>
重合性液晶化合物としては、一般に正波長分散性を示す重合性液晶化合物と逆波長分散性を示す重合性液晶化合物が挙げられ、どちらか一方の種類の重合性液晶化合物のみを使用することもできるし、両方の種類の重合性液晶化合物を混合して用いることもできる。垂直配向液晶硬化膜に使用する場合には、該垂直配向液晶硬化膜を表示装置に適用する際、黒表示時の斜方反射色相の向上効果が大きい観点において、逆波長分散性を示す重合性液晶化合物を含むことが好ましい。また、水平配向液晶硬化膜に使用する場合には、該水平配向液晶硬化膜を表示装置に適用する際、黒表示時の正面方向反射色相が向上する点から逆波長分散性を示す重合性液晶化合物を含むことが好ましい。
【0026】
逆波長分散性を示す重合性液晶化合物としては、下記(A)~(D)の特徴を有する化合物であることが好ましい。
(A)ネマチック相またはスメクチック相を形成し得る化合物である。
(B)該重合性液晶化合物の長軸方向(a)上にπ電子を有する。
(C)長軸方向(a)に対して交差する方向〔交差方向(b)〕上にπ電子を有する。
(D)長軸方向(a)に存在するπ電子の合計をN(πa)、長軸方向に存在する分子量の合計をN(Aa)として下記式(i)で定義される重合性液晶化合物の長軸方向(a)のπ電子密度:
D(πa)=N(πa)/N(Aa) (i)
と、交差方向(b)に存在するπ電子の合計をN(πb)、交差方向(b)に存在する分子量の合計をN(Ab)として下記式(ii)で定義される重合性液晶化合物の交差方向(b)のπ電子密度:
D(πb)=N(πb)/N(Ab) (ii)
とが、式(iii)
0≦〔D(πa)/D(πb)〕<1 (iii)
の関係にある〔すなわち、交差方向(b)のπ電子密度が、長軸方向(a)のπ電子密度よりも大きい〕。また、上記記載のように長軸およびそれに対して交差方向上にπ電子を有する重合性液晶化合物は、例えばT字構造となる。
【0027】
上記(A)~(D)の特徴において、長軸方向(a)およびπ電子数Nは以下のように定義される。
・長軸方向(a)は、例えば棒状構造を有する化合物であれば、その棒状の長軸方向である。
・長軸方向(a)上に存在するπ電子数N(πa)には、重合反応により消失するπ電子は含まない。
・長軸方向(a)上に存在するπ電子数N(πa)には、長軸上のπ電子およびこれと共役するπ電子の合計数であり、例えば長軸方向(a)上に存在する環であって、ヒュッケル則を満たす環に存在するπ電子の数が含まれる。
・交差方向(b)に存在するπ電子数N(πb)には、重合反応により消失するπ電子は含まない。
上記を満たす重合性液晶化合物は、長軸方向にメソゲン構造を有している。このメソゲン構造によって、液晶相(ネマチック相、スメクチック相)を発現する。
【0028】
上記(A)~(D)を満たす重合性液晶化合物は、基材または配向膜上に塗布し、相転移温度以上に加熱することにより、ネマチック相やスメクチック相を形成することが可能である。この重合性液晶化合物が配向して形成されたネマチック相またはスメクチック相では通常、重合性液晶化合物の長軸方向が互いに平行になるように配向しており、この長軸方向がネマチック相の配向方向となる。このような重合性液晶化合物を膜状とし、ネマチック相またはスメクチック相の状態で重合させると、長軸方向(a)に配向した状態で重合した重合体からなる重合体膜を形成することができる。この重合体膜は、長軸方向(a)上のπ電子と交差方向(b)上のπ電子により紫外線を吸収する。ここで、交差方向(b)上のπ電子により吸収される紫外線の吸収極大波長をλbmaxとする。λbmaxは通常300nm~400nmである。π電子の密度は、上記式(iii)を満足していて、交差方向(b)のπ電子密度が長軸方向(a)のπ電子密度よりも大きいので、交差方向(b)に振動面を有する直線偏光紫外線(波長はλbmax)の吸収が、長軸方向(a)に振動面を有する直線偏光紫外線(波長はλbmax)の吸収よりも大きな重合体膜となる。その比(直線偏光紫外線の交差方向(b)の吸光度/長軸方向(a)の吸光度の比)は、例えば1.0超、好ましくは1.2以上、通常30以下であり、例えば10以下である。
【0029】
上記特性を有する重合性液晶化合物は、一般に逆波長分散性を示すものであることが多い。具体的には、例えば、下記式(X)で表される化合物が挙げられる。尚、本発明において下記式(X)で示される重合性液晶化合物をT字構造を有する重合性液晶化合物を呼ぶことがある。
【化1】
【0030】
式(X)中、Arは置換基を有していてもよい芳香族基を有する二価の基を表す。ここでいう芳香族基とは、該環構造が有するπ電子数がヒュッケル則に従い[4n+2]個であるものをさし、例えば後述する(Ar-1)~(Ar-23)で例示されるようなAr基を、二価の連結基を介して2個以上有していてもよい。ここでnは整数を表す。-N=や-S-等のヘテロ原子を含んで環構造を形成している場合、これらヘテロ原子上の非共有結合電子対を含めてヒュッケル則を満たし、芳香族性を有する場合も含む。該芳香族基中には窒素原子、酸素原子、硫黄原子のうち少なくとも1つ以上が含まれることが好ましい。二価の基Arに含まれる芳香族基は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。芳香族基が1つである場合、二価の基Arは置換基を有していてもよい二価の芳香族基であってもよい。二価の基Arに含まれる芳香族基が2つ以上である場合、2つ以上の芳香族基は互いに単結合、-CO-O-、-O-などの二価の結合基で結合していてもよい。
およびGはそれぞれ独立に、二価の芳香族基または二価の脂環式炭化水素基を表す。ここで、該二価の芳香族基または二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基に置換されていてもよく、該二価の芳香族基または二価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子、硫黄原子または窒素原子に置換されていてもよい。
、L、BおよびBはそれぞれ独立に、単結合または二価の連結基である。
k、lは、それぞれ独立に0~3の整数を表し、1≦k+lの関係を満たす。ここで、2≦k+lである場合、BおよびB、GおよびGは、それぞれ互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
およびEはそれぞれ独立に、炭素数1~17のアルカンジイル基を表し、ここで、炭素数4~12のアルカンジイル基がより好ましい。また、アルカンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる-CH-は、-O-、-S-、-SiH-、-C(=O)-で置換されていてもよい。
およびPは互いに独立に、重合性基または水素原子を表し、少なくとも1つは重合性基である。
【0031】
およびGは、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子および炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-フェニレンジイル基、ハロゲン原子および炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-シクロヘキサンジイル基であり、より好ましくはメチル基で置換された1,4-フェニレンジイル基、無置換の1,4-フェニレンジイル基、または無置換の1,4-trans-シクロヘキサンジイル基であり、特に好ましくは無置換の1,4-フェニレンジイル基、または無置換の1,4-trans-シクロへキサンジイル基である。
また、複数存在するGおよびGのうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、また、LまたはLに結合するGおよびGのうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることがより好ましい。
【0032】
およびLはそれぞれ独立に、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra1ORa2-、-Ra3COORa4-、-Ra5OCORa6-、Ra7OC=OORa8-、-N=N-、-CR=CR-、またはC≡C-である。ここで、Ra1~Ra8はそれぞれ独立に単結合、または炭素数1~4のアルキレン基を表し、RおよびRは炭素数1~4のアルキル基または水素原子を表す。LおよびLはそれぞれ独立に、より好ましくは単結合、-ORa2-1-、-CH-、-CHCH-、-COORa4-1-、またはOCORa6-1-である。ここで、Ra2-1、Ra4-1、Ra6-1はそれぞれ独立に単結合、-CH-、-CHCH-のいずれかを表す。LおよびLはそれぞれ独立に、さらに好ましくは単結合、-O-、-CHCH-、-COO-、-COOCHCH-、またはOCO-である。
【0033】
およびBはそれぞれ独立に、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra9ORa10-、-Ra11COORa12-、-Ra13OCORa14-、またはRa15OC=OORa16-である。ここで、Ra9~Ra16はそれぞれ独立に単結合、または炭素数1~4のアルキレン基を表す。BおよびBはそれぞれ独立に、より好ましくは単結合、-ORa10-1-、-CH-、-CHCH-、-COORa12-1-、またはOCORa14-1-である。ここで、Ra10-1、Ra12-1、Ra14-1はそれぞれ独立に単結合、-CH-、-CHCH-のいずれかを表す。BおよびBはそれぞれ独立に、さらに好ましくは単結合、-O-、-CHCH-、-COO-、-COOCHCH-、-OCO-、またはOCOCHCH-である。
【0034】
kおよびlは、逆波長分散性発現の観点から2≦k+l≦6の範囲が好ましく、k+l=4であることが好ましく、k=2かつl=2であることがより好ましい。k=2かつl=2であると対称構造となるため好ましい。
【0035】
またはPで表される重合性基としては、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、およびオキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基およびオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0036】
Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族複素環、および電子吸引性基から選ばれる少なくとも一つを有することが好ましい。当該芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましい。当該芳香族複素環としては、フラン環、ベンゾフラン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアゾール環、トリアジン環、ピロリン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、およびフェナンスロリン環等が挙げられる。なかでも、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、またはベンゾフラン環を有することが好ましく、ベンゾチアゾール基を有することがさらに好ましい。また、Arに窒素原子が含まれる場合、当該窒素原子はπ電子を有することが好ましい。
【0037】
式(X)中、Arで表される2価の芳香族基に含まれるπ電子の合計数Nπは8以上が好ましく、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは14以上であり、特に好ましくは16以上である。また、好ましくは30以下であり、より好ましくは26以下であり、さらに好ましくは24以下である。
【0038】
Arで表される芳香族基としては、例えば以下の基が挙げられる。
【0039】
【化2】
【0040】
式(Ar-1)~式(Ar-23)中、*印は連結部を表し、Z、ZおよびZは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルキルスルフィニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1~12のフルオロアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数1~12のアルキルチオ基、炭素数1~12のN-アルキルアミノ基、炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素数1~12のN-アルキルスルファモイル基または炭素数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基を表す。また、Z、ZおよびZは、重合性基を含んでいてもよい。
【0041】
およびQは、それぞれ独立に、-CR2’3’-、-S-、-NH-、-NR2’-、-CO-またはO-を表し、R2’およびR3’は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0042】
、およびJは、それぞれ独立に、炭素原子、または窒素原子を表す。
【0043】
、YおよびYは、それぞれ独立に、置換されていてもよい芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
【0044】
およびWは、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、メチル基またはハロゲン原子を表し、mは0~6の整数を表す。
【0045】
、YおよびYにおける芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等の炭素数6~20の芳香族炭化水素基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。芳香族複素環基としては、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む炭素数4~20の芳香族複素環基が挙げられ、フリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基が好ましい。
【0046】
、YおよびYは、それぞれ独立に、置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基または多環系芳香族複素環基であってもよい。多環系芳香族炭化水素基は、縮合多環系芳香族炭化水素基、または芳香環集合に由来する基をいう。多環系芳香族複素環基は、縮合多環系芳香族複素環基、または芳香環集合に由来する基をいう。
【0047】
、ZおよびZは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルコキシ基であることが好ましく、Zは、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基がさらに好ましく、ZおよびZは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、シアノ基がさらに好ましい。また、Z、ZおよびZは重合性基を含んでいてもよい。
【0048】
およびQは、-NH-、-S-、-NR2’-、-O-が好ましく、R2’は水素原子が好ましい。中でも-S-、-O-、-NH-が特に好ましい。
【0049】
式(Ar-1)~(Ar-23)の中でも、式(Ar-6)および式(Ar-7)が分子の安定性の観点から好ましい。
【0050】
式(Ar-16)~(Ar-23)において、Yは、これが結合する窒素原子およびZと共に、芳香族複素環基を形成していてもよい。芳香族複素環基としては、Arが有していてもよい芳香族複素環として前記したものが挙げられるが、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピロリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、インドール環、キノリン環、イソキノリン環、プリン環、ピロリジン環等が挙げられる。この芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。また、Yは、これが結合する窒素原子およびZと共に、前述した置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基または多環系芳香族複素環基であってもよい。例えば、ベンゾフラン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環等が挙げられる。
【0051】
また、本発明において液晶硬化膜を形成する重合性液晶化合物として、例えば、下記式(Y)で表される基を含む化合物(以下、「重合性液晶化合物(Y)」ともいう)を用いてもよい。重合性液晶化合物(Y)は一般に正波長分散性を示す傾向にある。重合性液晶化合物は単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
P11-B11-E11-B12-A11-B13- (Y)
[式(Y)中、P11は、重合性基を表わす。
A11は、2価の脂環式炭化水素基または2価の芳香族炭化水素基を表わす。該2価の脂環式炭化水素基および2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6アルコキシ基、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよく、該炭素数1~6のアルキル基および該炭素数1~6アルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
B11は、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CO-NR16-、-NR16-CO-、-CO-、-CS-または単結合を表わす。R16は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表わす。
B12およびB13は、それぞれ独立に、-C≡C-、-CH=CH-、-CH-CH-、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-C(=O)-NR16-、-NR16-C(=O)-、-OCH-、-OCF-、-CHO-、-CFO-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-または単結合を表わす。
E11は、炭素数1~12のアルカンジイル基を表わし、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、炭素数1~5のアルコキシ基で置換されていてもよく、該アルコキシ基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。また、該アルカンジイル基を構成する-CH-は、-O-または-CO-に置き換わっていてもよい。]
【0053】
A11の芳香族炭化水素基および脂環式炭化水素基の炭素数は、3~18の範囲であることが好ましく、5~12の範囲であることがより好ましく、5または6であることが特に好ましい。A11としては、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、1,4-フェニレン基が好ましい。
【0054】
E11としては、直鎖状の炭素数1~12のアルカンジイル基が好ましい。該アルカンジイル基を構成する-CH-は、-O-に置き換っていてもよい。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、へキサン-1,6-ジイル基、へプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基およびドデカン-1,12-ジイル基等の炭素数1~12の直鎖状アルカンジイル基;-CH-CH-O-CH-CH-、-CH-CH-O-CH-CH-O-CH-CH-および-CH-CH-O-CH-CH-O-CH-CH-O-CH-CH-等が挙げられる。
B11としては、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-が好ましく、中でも、-CO-O-がより好ましい。
B12およびB13としては、それぞれ独立に、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-が好ましく、中でも、-O-または-O-C(=O)-O-がより好ましい。
【0055】
P11で示される重合性基としては、重合反応性、特に光重合反応性が高いという点で、ラジカル重合性基またはカチオン重合性基が好ましく、取り扱いが容易な上、液晶化合物の製造自体も容易であることから、重合性基は、下記の式(P-11)~式(P-15)で表わされる基であることが好ましい。
【化3】
[式(P-11)~(P-15)中、
17~R21はそれぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基または水素原子を表わす。]
【0056】
式(P-11)~式(P-15)で表わされる基の具体例としては、下記式(P-16)~式(P-20)で表わされる基が挙げられる。
【化4】
【0057】
P11は、式(P-14)~式(P-20)で表わされる基であることが好ましく、ビニル基、p-スチルベン基、エポキシ基またはオキセタニル基がより好ましい。
P11-B11-で表わされる基が、アクリロイルオキシ基またはメタアクリロイルオキシ基であることがさらに好ましい。
【0058】
重合性液晶化合物(Y)としては、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)で表わされる化合物が挙げられる。
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-B16-E12-B17-P12 (I)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-F11 (II)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-E12-B17-P12 (III)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-F11 (IV)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-E12-B17-P12 (V)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-F11 (VI)
(式中、
A12~A14はそれぞれ独立に、A11と同義であり、B14~B16はそれぞれ独立に、B12と同義であり、B17は、B11と同義であり、E12は、E11と同義である。
F11は、水素原子、炭素数1~13のアルキル基、炭素数1~13のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基、メチロール基、ホルミル基、スルホ基(-SOH)、カルボキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基またはハロゲン原子を表わし、該アルキル基およびアルコキシ基を構成する-CH-は、-O-に置き換っていてもよい。)
【0059】
重合性液晶化合物(Y)の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の「3.8.6 ネットワーク(完全架橋型)」、「6.5.1 液晶材料 b.重合性ネマチック液晶材料」に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物、特開2010-31223号公報、特開2010-270108号公報、特開2011-6360号公報および特開2011-207765号公報記載の重合性液晶が挙げられる。
【0060】
重合性液晶化合物(Y)の具体例としては、下記式(I-1)~式(I-4)、式(II-1)~式(II-4)、式(III-1)~式(III-26)、式(IV-1)~式(IV-26)、式(V-1)~式(V-2)および式(VI-1)~式(VI-6)で表わされる化合物が挙げられる。なお、下記式中、k1およびk2は、それぞれ独立して、2~12の整数を表わす。これらの重合性液晶化合物(Y)は、その合成の容易さ、または、入手の容易さの点で、好ましい。
【0061】
【化5】
【0062】
【化6】
【0063】
【化7】
【0064】
【化8】
【0065】
【化9】
【0066】
【化10】
【0067】
【化11】
【0068】
【化12】
【0069】
【化13】
【0070】
スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物を用いることにより、配向秩序度の高い水平配向液晶硬化膜、または垂直配向液晶硬化膜を形成することができる点で好ましい。本発明において液晶硬化膜を形成する重合性液晶化合物として、スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物を用いる場合、より高い配向秩序度を実現し得る観点から、該重合性液晶化合物は高次スメクチック相(高次スメクチック液晶状態)であることがより好ましい。ここで、高次スメクチック相とは、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相及びスメクチックL相を意味し、これらの中でも、スメクチックB相、スメクチックF相及びスメクチックI相がより好ましい。液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよいが、緻密な膜厚制御が可能な点でサーモトロピック性液晶が好ましい。また、スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物はモノマーであってもよいが、重合性基が重合したオリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0071】
スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物は、少なくとも1つの重合性基を有する液晶化合物であり、液晶硬化膜の耐熱性向上の観点から、2つ以上の重合性基を有する液晶化合物であることが好ましい。重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられるが、中でも製造が容易であること、液晶硬化膜の耐熱性が向上しやすいこと、液晶硬化膜と基材との密着性を調整しやすいことから、(メタ)アクリロイルオキシ基を含むことが好ましい。
【0072】
スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物としては、例えば、下記式(Z)で表される化合物(以下、「重合性液晶化合物(Z)」ということがある)が挙げられる。
1z-V1z-W1z-(X1z-Y1z-)nz-X2z-W2z-V2z-U2z (Z)
[式(Z)中、X1z及びX2zは、互いに独立して、2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基を表し、ここで、該2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよく、該2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子又は硫黄原子又は窒素原子に置換されていてもよい。ただし、X1z及びX2zのうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基又は置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基である。
1zは、単結合又は二価の連結基である。
nzは1~3であり、nzが2以上の場合、複数のX1zは互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。X2zは、複数のX1zのうちのいずれか又は全てと同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、nzが2以上の場合、複数のY1zは互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。液晶性の観点からnzは2以上が好ましい。
1zは、水素原子又は(メタ)アクリロイルオキシ基を表わす。
2zは、重合性基を表わす。
1z及びW2zは、互いに独立して、単結合又は二価の連結基である。
1z及びV2zは、互いに独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する-CH-は、-O-、-CO-、-S-又はNH-に置き換わっていてもよい。]
【0073】
重合性液晶化合物(Z)において、X1z及びX2zは、互いに独立して、好ましくは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、X1z及びX2zのうちの少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、トランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であることが好ましい。置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は、置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基が任意に有する置換基としては、メチル基、エチル基及びブチル基などの炭素数1~4のアルキル基、シアノ基及び塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子が挙げられる。好ましくは無置換である。
【0074】
また、重合性液晶化合物(Z)は、式(Z)中、式(Z1):
-(X1z-Y1z-)nz-X2z- (Z1)
〔式中、X1z、Y1z、X2z及びnzはそれぞれ上記と同じ意味を示す。〕
で示される部分〔以下、部分構造(Z1)と称する。〕が非対称構造であることが、スメクチック液晶性を発現し易い点で、好ましい。
部分構造(Z1)が非対称構造である重合性液晶化合物(Z)としては、例えば、nzが1であり、1つのX1zとX2zとが互いに異なる構造である重合性液晶化合物(Z)が挙げられる。また、nzが2であり、2つのY1zが互いに同じ構造である化合物であって、2つのX1zが互いに同じ構造であり、1つのX2zはこれら2つのX1zとは異なる構造である重合性液晶化合物(Z)、2つのX1zのうちのW1zに結合するX1zが、他方のX1z及びX2zとは異なる構造であり、他方のX1zとX2zとは互いに同じ構造である重合性液晶化合物(Z)も挙げられる。さらに、nzが3であり、3つのY1zが互いに同じ構造である化合物であって、3つのX1z及び1つのX2zのうちのいずれか1つが他の3つの全てと異なる構造である重合性液晶化合物(Z)が挙げられる。
【0075】
1zは、-CHCH-、-CHO-、-CHCHO-、-COO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CRaz=CRbz-、-C≡C-、-CRaz=N-又はCO-NRaz-が好ましい。Raz及びRbzは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表わす。Y1zは、-CHCH-、-COO-又は単結合であることがより好ましく、複数のY1zが存在する場合、X2zと結合するY1zは、-CHCH-又はCHO-であることがより好ましい。X1z及びX2zが全て同一構造である場合、互いに異なる結合方式である2以上のY1zが存在することが好ましい。互いに異なる結合方式である複数のY1zが存在する場合には、非対称構造となるため、スメクチック液晶性が発現しやすい傾向にある。
【0076】
2zは、前述の重合性基である。U1zは、水素原子又は重合性基である。製造が容易であること、液晶硬化膜の耐熱性が向上しやすいこと、液晶硬化膜と基材との密着性を調整しやすいことから、重合性基は(メタ)アクリロイルオキシ基であることが好ましい。重合性基は重合している状態であってもよいし、未重合の状態であってもよいが、好ましくは未重合の状態である。
【0077】
1z及びV2zで表されるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基及びイコサン-1,20-ジイル基等が挙げられる。V1z及びV2zは、好ましくは炭素数2~12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6~12のアルカンジイル基である。
【0078】
該アルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基及びハロゲン原子等が挙げられるが、該アルカンジイル基は、無置換であることが好ましく、無置換の直鎖状アルカンジイル基であることがより好ましい。
【0079】
1z及びW2zは、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-又はOCOO-が好ましく、単結合又はO-がより好ましい。
【0080】
重合性液晶化合物(Z)は、分子構造中に非対称性の分子構造を有することが好ましく、具体的には以下(A-a)~(A-i)の部分構造を有する重合性液晶化合物であることがより好ましい。高次スメクチック液晶性を示しやすいという観点から(A-a)、(A-b)又は(A-c)の部分構造を有することがより好ましい。なお、下記(A-a)~(A-i)において、*は結合手(単結合)を表す。
【0081】
【化14】
【0082】
重合性液晶化合物(Z)としては、具体的には例えば、式(A-1)~式(A-25)で表される化合物が挙げられる。重合性液晶化合物(Z)がシクロヘキサン-1,4-ジイル基を有する場合、そのシクロヘキサン-1,4-ジイル基は、トランス体であることが好ましい。
【0083】
【化15】
【0084】
【化16】
【0085】
【化17】
【0086】
【化18】
【0087】
【化19】
【0088】
これらの中でも、式(A-2)、式(A-3)、式(A-4)、式(A-5)、式(A-6)、式(A-7)、式(A-8)、式(A-13)、式(A-14)、式(A-15)、式(A-16)及び式(A-17)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。重合性液晶化合物(Z)として、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0089】
重合性液晶化合物(Z)は、例えば、Lub等、Recl.Trav.Chim.Pays-Bas、115、321-328(1996)、又は特許第4719156号などに記載の公知の方法で製造できる。
【0090】
液晶硬化膜を形成する重合性液晶化合物は、波長300~400nmの間に極大吸収波長を有する重合性液晶化合物であることが好ましい。重合性液晶組成物に光重合開始剤が含まれる場合、長期保管時に重合性液晶化合物の重合反応およびゲル化が進行するおそれがある。しかし、重合性液晶化合物の極大吸収波長が300~400nmであれば保管中に紫外光が曝露されても、光重合開始剤からの反応活性種の発生および該反応活性種による重合性液晶化合物の重合反応およびゲル化の進行を有効に抑制できる。従って、重合性液晶組成物の長期安定性の点で有利となり、得られる液晶硬化膜の配向性および膜厚の均一性を向上できる。なお、重合性液晶化合物の極大吸収波長は、溶媒中で紫外可視分光光度計を用いて測定できる。該溶媒は重合性液晶化合物を溶解し得る溶媒であり、例えばテトラヒドロフランやクロロホルム等が挙げられる。
【0091】
液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物の含有量は、重合性液晶組成物の固形分100質量部に対して、例えば70~99.5質量部であり、好ましくは80~99質量部であり、より好ましくは85~98質量部であり、さらに好ましくは90~95質量部である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であると、得られる液晶硬化膜の配向性の観点から有利である。なお、本明細書において、重合性液晶組成物の固形分とは、重合性液晶組成物から有機溶媒等の揮発性成分を除いた全ての成分を意味する。
【0092】
<重合性液晶組成物>
液晶硬化膜の形成に用いる重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物、シリコン系又はフッ素系のレベリング剤、アクリル系レベリング剤を含む。さらに、溶媒、光重合開始剤、レベリング剤、酸化防止剤、光増感剤、二色性色素などの添加剤を含んでいてもよい。これらの成分は、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
重合性液晶組成物は、上記成分を所定温度で撹拌等することにより得ることができる。
【0094】
液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物は、通常、溶媒に溶解した状態で基材等に塗布されるため、溶媒を含むことが好ましい。溶媒としては、重合性液晶化合物を溶解し得る溶媒が好ましく、また、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶媒であることが好ましい。溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシエタノールおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートおよび乳酸エチル等のエステル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;ペンタン、ヘキサンおよびヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶媒;トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル溶媒;テトラヒドロフランおよびジメトキシエタン等のエーテル溶媒;クロロホルムおよびクロロベンゼン等の塩素含有溶媒;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルミアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独または二種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、アルコール溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒、塩素含有溶媒、アミド系溶媒および芳香族炭化水素溶媒が好ましい。
【0095】
重合性液晶組成物中の溶媒の含有量は、重合性液晶組成物100質量部に対して、好ましくは50~98質量部、より好ましくは70~95重量部である。従って、重合性液晶組成物100質量部に占める固形分は、2~50質量部が好ましい。固形分が50質量部以下であると、重合性液晶組成物の粘度が低くなることから、膜の厚みが略均一になり、ムラが生じ難くなる傾向がある。上記固形分は、製造しようとする液晶硬化膜の厚みを考慮して適宜定めることができる。
【0096】
重合開始剤は、熱または光の寄与によって反応活性種を生成し、重合性液晶化合物等の重合反応を開始し得る化合物である。反応活性種としては、ラジカルまたはカチオンまたはアニオン等の活性種が挙げられる。中でも反応制御が容易であるという観点から、光照射によってラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0097】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンジルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、オキシム化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩が挙げられる。具体的には、イルガキュア(Irgacure、登録商標)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア127、イルガキュア2959、イルガキュア754、イルガキュア379EG(以上、BASFジャパン株式会社製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、精工化学株式会社製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬株式会社製)、カヤキュアーUVI-6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP-152、アデカオプトマーSP-170、アデカオプトマーN-1717、アデカオプトマーN-1919、アデカアークルズNCI-831、アデカアークルズNCI-930(以上、株式会社ADEKA製)、TAZ-A、TAZ-PP(以上、日本シイベルヘグナー社製)およびTAZ-104(三和ケミカル社製)が挙げられる。
【0098】
光重合開始剤は、光源から発せられるエネルギーを十分に活用でき、生産性に優れるため、極大吸収波長が300nm~400nmであると好ましく、300nm~380nmであるとより好ましく、中でも、α-アセトフェノン系重合開始剤、オキシム系光重合開始剤が好ましい。
【0099】
α-アセトフェノン系重合開始剤としては、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オンおよび2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-(4-メチルフェニルメチル)ブタン-1-オン等が挙げられ、より好ましくは2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オンおよび2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オンが挙げられる。α-アセトフェノン化合物の市販品としては、イルガキュア369、379EG、907(以上、BASFジャパン(株)製)およびセイクオールBEE(精工化学社製)等が挙げられる。
【0100】
オキシム系光重合開始剤は、光が照射されることによってフェニルラジカルやメチルラジカル等のラジカルを生成させる。このラジカルにより重合性液晶化合物の重合が好適に進行するが、中でもメチルラジカルを発生させるオキシム系光重合開始剤は重合反応の開始効率が高い点で好ましい。また、重合反応をより効率的に進行させるという観点から、波長350nm以上の紫外線を効率的に利用可能な光重合開始剤を使用することが好ましい。波長350nm以上の紫外線を効率的に利用可能な光重合開始剤としては、オキシム構造を含むトリアジン化合物やカルバゾール化合物が好ましく、感度の観点からはオキシムエステル構造を含むカルバゾール化合物がより好ましい。オキシム系光重合開始剤としては、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤の市販品としては、イルガキュアOXE-01、イルガキュアOXE-02、イルガキュアOXE-03(以上、BASFジャパン株式会社製)、アデカオプトマーN-1919、アデカアークルズNCI-831(以上、株式会社ADEKA製)等が挙げられる。
【0101】
光重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常、0.1~30質量部であり、好ましくは1~20質量部であり、より好ましくは1~15質量部である。上記範囲内であれば、重合性基の反応が十分に進行し、かつ、重合性液晶化合物の配向を乱し難い。
【0102】
酸化防止剤を配合することにより、重合性液晶化合物の重合反応をコントロールすることができる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、キノン系酸化防止剤、ニトロソ系酸化防止剤から選ばれる一次酸化防止剤であってもよいし、リン系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤から選ばれる二次酸化防止剤であってもよい。重合性液晶化合物の配向を乱すことなく、重合性液晶化合物を重合するためには、酸化防止剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常0.01~10質量部であり、好ましくは0.1~5質量部であり、さらに好ましくは0.1~3質量部である。酸化防止剤は単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0103】
また、光増感剤を用いることにより、光重合開始剤を高感度化することができる。光増感剤としては、例えば、キサントン、チオキサントン等のキサントン類;アントラセンおよびアルキルエーテル等の置換基を有するアントラセン類;フェノチアジン;ルブレンが挙げられる。光増感剤は単独または2種以上を組み合わせて使用できる。光増感剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常0.01~10質量部であり、好ましくは0.05~5質量部であり、さらに好ましくは0.1~3質量部である。
【0104】
<二色性色素>
本発明の重合性液晶組成物は二色性色素を含んでいてもよい。ここで、二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素を意味する。本発明において用い得る二色性色素は、上記性質を有するものであれば特に制限されず、染料であっても、顔料であってもよい。また、2種以上の染料または顔料をそれぞれ組み合わせて用いてもよいし、染料と顔料とを組み合わせて用いてもよい。水平配向液晶硬化膜または垂直配向液晶硬化膜中にこのような二色性色素を含む場合、二色性色素は重合性液晶化合物とともに配向し、吸収異方性を発現し得る。特に、スメクチック液晶相等に代表されるように配向秩序度が高い場合、含有する二色性色素由来の吸収異方性も顕著に向上する傾向にある。
【0105】
二色性色素としては、300~700nmの範囲に極大吸収波長(λMAX)を有するものが好ましい。このような二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素およびアントラキノン色素等が挙げられる。
【0106】
アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素およびスチルベンアゾ色素等が挙げられ、ビスアゾ色素およびトリスアゾ色素が好ましく、例えば、式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」ともいう。)が挙げられる。
(-N=N-K-N=N-K (I)
[式(I)中、KおよびKは、互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基または置換基を有していてもよい1価の複素環基を表わす。Kは、置換基を有していてもよいp-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基または置換基を有していてもよい2価の複素環基を表わす。pは1~4の整数を表わす。pが2以上の整数である場合、複数のKは互いに同一でも異なっていてもよい。可視域に吸収を示す範囲で-N=N-結合が-C=C-、-COO-、-NHCO-、-N=CH-結合に置き換わっていてもよい。]
【0107】
1価の複素環基としては、例えば、キノリン、チアゾール、ベンゾチアゾール、チエノチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾールなどの複素環化合物から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。2価の複素環基としては、前記複素環化合物から2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0108】
およびKにおけるフェニル基、ナフチル基および1価の複素環基、並びにKにおけるp-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基および2価の複素環基が任意に有する置換基としては、炭素数1~4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などの炭素数1~4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基などの炭素数1~4のフッ化アルキル基;シアノ基;ニトロ基;ハロゲン原子;アミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジノ基などの置換または無置換アミノ基(置換アミノ基とは、炭素数1~6のアルキル基を1つまたは2つ有するアミノ基、あるいは2つの置換アルキル基が互いに結合して炭素数2~8のアルカンジイル基を形成しているアミノ基を意味する。無置換アミノ基は-NHである。)等が挙げられる。
【0109】
化合物(I)の中でも、以下の式(I-1)~式(I-6)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【化20】
[式(I-1)~(I-8)中、
~B30は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換または無置換のアミノ基(置換アミノ基および無置換アミノ基の定義は前記のとおり)、塩素原子またはトリフルオロメチル基を表わす。
n1~n4は、互いに独立に0~3の整数を表わす。
n1が2以上である場合、複数のBは互いに同一でも異なっていてもよく、
n2が2以上である場合、複数のBは互いに同一でも異なっていてもよく、
n3が2以上である場合、複数のBは互いに同一でも異なっていてもよく、
n4が2以上である場合、複数のB14は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0110】
前記アントラキノン色素としては、式(I-9)で表される化合物が好ましい。
【化21】
[式(I-9)中、
~Rは、互いに独立して、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SRまたはハロゲン原子を表わす。
は、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0111】
前記オキサゾン色素としては、式(I-10)で表される化合物が好ましい。
【化22】
[式(I-8)中、
~R15は、互いに独立して、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SRまたはハロゲン原子を表わす。
は、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0112】
前記アクリジン色素としては、式(I-11)で表される化合物が好ましい。
【化23】
[式(I-11)中、
16~R23は、互いに独立して、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SRまたはハロゲン原子を表わす。
は、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
式(I-9)、式(I-10)および式(I-11)において、Rの炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基等が挙げられ、炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基およびナフチル基等が挙げられる。
【0113】
前記シアニン色素としては、式(I-12)で表される化合物および式(I-13)で表される化合物が好ましい。
【化24】
[式(I-12)中、
およびDは、互いに独立に、式(I-12a)~式(I-12d)のいずれかで表される基を表わす。
【化25】
n5は1~3の整数を表わす。]
【化26】
[式(I-13)中、
およびDは、互いに独立に、式(I-13a)~式(1-13h)のいずれかで表される基を表わす。
【化27】
n6は1~3の整数を表わす。]
【0114】
これらの二色性色素の中でも、配向性の観点から、垂直配向液晶硬化膜が二色性色素として少なくとも1種のアゾ色素を含むことが好ましい。
本発明において、二色性色素の重量平均分子量は、通常、300~2000であり、好ましくは400~1000である。
【0115】
液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物中の二色性色素の含有量は、用いる二色性色素の種類などに応じて適宜決定し得るが、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部であり、より好ましくは0.1~10質量部であり、さらに好ましくは0.1~5質量部である。二色性色素の含有量が、上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱し難く、高い配向秩序度を有する液晶硬化膜を得ることができる。
【0116】
<垂直配向液晶硬化膜>
垂直配向液晶硬化膜とは、前記重合性液晶組成物を基材や配向膜上に塗布し、重合性液晶化合物は基材または配向膜に対して垂直方向に配向した状態で硬化された液晶硬化膜である。
【0117】
本発明において、水平配向液晶硬化膜の一様として、下記式(S4)を満たすことが好ましい。
RthC(450)/RthC(550)≦1.0 ・・・(S4)
〔式(S4)中、RthC(450)は液晶硬化膜の波長450nmにおける厚み方向の位相差値を示し、RthC(550)は液晶硬化膜の波長550nmにおける厚み方向の位相差値を示す)〕
【0118】
水平配向液晶硬化膜が式(S4)を満たす場合、当該垂直配向液晶硬化膜は、短波長での厚み方向の位相差値が長波長での厚み方向の位相差値よりも小さくなる、いわゆる逆波長分散性を示す。RthC(450)/RthC(550)は、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.78以上であり、また、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.92以下である。
【0119】
上記厚み方向の位相差値は、垂直配向液晶硬化膜の厚みdCによって調整することができる。厚み方向の位相差値は、
RthC(λ)=((nxC(λ)+nyC(λ))/2-nzC(λ))×dC
によって決定されることから、所望の厚み方向の位相差値(RthC(λ):波長λ(nm)における垂直配向液晶硬化膜の厚み方向の位相差値)を得るには、3次元屈折率と膜厚dCとを調整すればよい。
【0120】
また、垂直配向液晶硬化膜が下記式(S3)を満たすことが好ましい。
-150≦RthC(550)≦-30・・・(S3)
〔式(S3)中、RthC(550)は液晶硬化膜の波長550nmにおける厚み方向の位相差値を示す〕
垂直配向液晶硬化膜の厚み方向位相差RthC(550)のさらに好ましい範囲は、-110nm≦RthC(550)≦-45nmである。
【0121】
垂直配向液晶硬化膜は、例えば、
垂直配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物の塗膜を形成する工程、
前記塗膜を乾燥させて乾燥塗膜を形成する工程、および、
乾燥塗膜に活性エネルギー線を照射し、垂直配向液晶硬化膜を形成する工程
を含む方法により製造することができる。
【0122】
重合性液晶組成物の塗膜の形成は、例えば、基材、配向膜または後述する水平配向液晶硬化膜上などに垂直配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物を塗布することにより行うことができる。
基材としては、例えば、ガラス基材やフィルム基材等が挙げられるが、加工性の観点から樹脂フィルム基材が好ましい。フィルム基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびノルボルネン系ポリマーのようなポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、およびセルロースアセテートプロピオネートのようなセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシドのようなプラスチックが挙げられる。このような樹脂を、溶媒キャスト法、溶融押出法等の公知の手段により製膜して基材とすることができる。基材表面には、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等から形成される保護層を有していてもよく、シリコーン処理のような離型処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0123】
基材として市販の製品を用いてもよい。市販のセルロースエステル基材としては、例えば、フジタックフィルムのような富士写真フィルム株式会社製のセルロースエステル基材;「KC8UX2M」、「KC8UY」、および「KC4UY」のようなコニカミノルタオプト株式会社製のセルロースエステル基材などが挙げられる。市販の環状オレフィン系樹脂としては、たとえば、「Topas(登録商標)」のようなTicona社(独)製の環状オレフィン系樹脂;「アートン(登録商標)」のようなJSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂;「ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)」、および「ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)」のような日本ゼオン株式会社製の環状オレフィン系樹脂;「アペル」(登録商標)のような三井化学株式会社製の環状オレフィン系樹脂が挙げられる。市販されている環状オレフィン系樹脂基材を用いることもできる。市販の環状オレフィン系樹脂基材としては、「エスシーナ(登録商標)」および「SCA40(登録商標)」のような積水化学工業株式会社製の環状オレフィン系樹脂基材;「ゼオノアフィルム(登録商標)」のようなオプテス株式会社製の環状オレフィン系樹脂基材;「アートンフィルム(登録商標)」のようなJSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂基材が挙げられる。
【0124】
積層体の薄型化、基材の剥離容易性、基材のハンドリング性等の観点から、基材の厚みは、通常、5~300μmであり、好ましくは10~150μmである。
【0125】
重合性液晶組成物を基材等に塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法等の公知の方法が挙げられる。
【0126】
次いで、溶媒を乾燥等により除去することにより、乾燥塗膜が形成される。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。この際、重合性液晶組成物から得られた塗膜を加熱することにより、塗膜から溶媒を乾燥除去させるとともに、重合性液晶化合物を塗膜平面に対して垂直方向に配向させることができる。塗膜の加熱温度は、用いる重合性液晶化合物および塗膜を形成する基材等の材質などを考慮して、適宜決定し得るが、重合性液晶化合物を液晶層状態へ相転移させるために液晶相転移温度以上の温度であることが必要である。重合性液晶組成物に含まれる溶媒を除去しながら、重合性液晶化合物を垂直配向状態とするため、例えば、前記重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物の液晶相転移温度(スメクチック相転移温度又はネマチック相転移温度)程度以上の温度まで加熱することができる。
【0127】
なお、液晶相転移温度は、例えば、温度調節ステージを備えた偏光顕微鏡や、示差走査熱量計(DSC)、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)等を用いて測定することができる。また、重合性液晶化合物として2種以上を組み合わせて用いる場合、上記相転移温度は、重合性液晶組成物を構成する全重合性液晶化合物を重合性液晶組成物における組成と同じ比率で混合した重合性液晶化合物の混合物を用いて、1種の重合性液晶化合物を用いる場合と同様にして測定される温度を意味する。なお、一般に前記重合性液晶組成物中における重合性液晶化合物の液晶相転移温度は、重合性液晶化合物単体としての液晶相転移温度よりも下がる場合もあることが知られている。
【0128】
加熱時間は、加熱温度、用いる重合性液晶化合物の種類、溶媒の種類やその沸点およびその量等に応じて適宜決定し得るが、通常、15秒~10分であり、好ましくは0.5~5分である。
【0129】
塗膜からの溶媒の除去は、重合性液晶化合物の液晶相転移温度以上への加熱と同時に行ってもよいし、別途で行ってもよいが、生産性向上の観点から同時に行うことが好ましい。重合性液晶化合物の液晶相転移温度以上への加熱を行う前に、重合性液晶組成物から得られた塗膜中に含まれる重合性液晶化合物が重合しない条件で塗膜中の溶媒を適度に除去させるための予備乾燥工程を設けてもよい。かかる予備乾燥工程における乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられ、該乾燥工程における乾燥温度(加熱温度)は、用いる重合性液晶化合物の種類、溶媒の種類やその沸点およびその量等に応じて適宜決定し得る。
【0130】
次いで、得られた乾燥塗膜において、重合性液晶化合物の垂直配向状態を保持したまま、重合性液晶化合物を重合させることにより、垂直配向液晶硬化膜が形成される。重合方法としては、熱重合法や光重合法が挙げられるが、重合反応を制御しやすい観点から光重合法が好ましい。光重合において、乾燥塗膜に照射する光としては、当該乾燥塗膜に含まれる光重合開始剤の種類、重合性液晶化合物の種類(特に、該重合性液晶化合物が有する重合性基の種類)およびその量に応じて適宜選択される。その具体例としては、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線およびγ線からなる群より選択される1種以上の光や活性電子線が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点や、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって、光重合可能なように、重合性液晶組成物に含有される重合性液晶化合物や光重合開始剤の種類を選択しておくことが好ましい。また、重合時に、適切な冷却手段により乾燥塗膜を冷却しながら光照射することで、重合温度を制御することもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で重合性液晶化合物の重合を実施すれば、基材が比較的耐熱性が低いものを用いたとしても、適切に垂直配向液晶硬化膜を形成できる。また、光照射時の熱による不具合(基材の熱による変形等)が発生しない範囲で重合温度を高くすることにより重合反応を促進することも可能である。光重合の際、マスキングや現像を行うなどによって、パターニングされた硬化膜を得ることもできる。
【0131】
前記活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0132】
紫外線照射強度は、通常、10~3,000mW/cmである。紫外線照射強度は、好ましくは光重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒~10分であり、好ましくは0.1秒~5分、より好ましくは0.1秒~3分、さらに好ましくは0.1秒~1分である。このような紫外線照射強度で1回または複数回照射すると、その積算光量は、10~3,000mJ/cm、好ましくは50~2,000mJ/cm、より好ましくは100~1,000mJ/cmである。
【0133】
垂直配向液晶硬化膜の厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択でき、好ましくは0.2~3μm、より好ましくは0.2~2μmである。垂直配向液晶硬化膜が正波長分散性の場合には、0.2~1μmがさらに好ましく、逆波長分散性の場合には、0.4~2μmがさらに好ましい。垂直配向液晶硬化膜が逆波長分散性の場合には、垂直配向液晶硬化膜が正波長分散性の場合と比較して、同一の色素濃度に対して斜め方向の光吸収が増加するため、より好ましい。
【0134】
<二色性色素を含む垂直配向液晶硬化膜>
本発明における垂直配向液晶硬化膜の一様として、垂直配向液晶硬化膜は二色性色素を含んでいてもよい。特に二色性色素を含む垂直配向液晶硬化膜の場合、液晶の配向秩序度が高いほど、二色性色素に由来する吸収選択性が向上するため、前述のスメクチック相、特に高次スメクチック相を示す重合性液晶化合物を使用することが好ましく、スメクチック相、好ましくは高次のスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合し、二色性色素を含む垂直配向液晶硬化膜を形成することが好ましい。
【0135】
前記二色性色素を含む垂直配向液晶硬化膜は下記式(11)および(12)を満たす。
0.001≦AxC≦0.3 (11)
AxC(z=60)/AxC>2 (12)
【0136】
式(11)および(12)中、AxC、AxC(z=60)は、いずれも垂直配向液晶硬化膜の波長400~750nmの吸収極大波長における吸光度を表す。また、AxCは、x軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表し、AxC(z=60)は、y軸を回転軸として前記垂直配向液晶硬化膜を60°回転させたときのx軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。なお、x軸は垂直配向液晶硬化膜の面内における任意の方向、y軸は膜面内においてx軸に垂直な方向、z軸は垂直配向液晶硬化膜の厚み方向を意味する。また、本明細書中の吸光度は、すべて測定時の界面反射の影響を除いた状態で測定した際の吸光度を示す。界面反射の影響を取り除く方法としては、例えば分光光度計を用いて波長800nm等の長波長で化合物の吸収が無視できる波長における吸光度を0とし、その状態で化合物の吸収が存在する領域の波長の吸光度を測定する、等の方法が挙げられる。
【0137】
上記AxCは、z軸方向から液晶硬化膜の膜面に向かってx軸方向に振動する直線偏光を入射して測定することができる。上記式(11)は、垂直配向液晶硬化膜面内の正面方向の吸光度が0.001以上0.3以下であることを意味し、AxCの値が小さいほど得られる液晶硬化膜の平面に対して二色性色素が垂直方向に精度よく配向しているといえる。AxCの値が0.3を超える場合には垂直配向液晶硬化膜の正面方向における着色が強くなるため、水平配向位相差フィルムと組み合わせて表示装置に適用した際の正面色相が劣る傾向にあることから、AxCの値は、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.05以下である。また、AxCの値の下限値は通常0.001以上、好ましくは0.003以上、さらに好ましくは0.005以上である。
【0138】
上記AxC(z=60)は、y軸を回転軸として垂直配向液晶硬化膜を60°回転させた状態で、Axを測定した直線偏光と同一の直線偏向を入射して測定することができる。ここで、膜の回転はAxを測定した状態の膜を、y軸を回転軸として直線偏光の入射方向に60°回転させて行う。上記AxC(z=60)/AxCの値は、その数値が2以下であると良好な光吸収異方性を得難くなるため、AxC(z=60)/AxCの値は、好ましくは2.5以上、より好ましくは3以上である。一方で、AxC(z=60)/AxCの値が大きすぎると斜方の色相のみで大きく色相が変化し、正面色相と斜方色相の差が大きくなることがあるため、AxC(z=60)/AxCの値は、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下である。また、AxC(z=60)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.05以上であり、また、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.3以下である。
【0139】
なお、y軸方向に振動する直線偏光の吸光度はAyCと表されるが、本発明に記載の垂直配向液晶硬化膜においては、通常AxCとAyCはほぼ等しい値となる。AxCとAyCが異なる場合、面内で二色性を有することとなり、この場合該垂直配向液晶硬化膜の正面色相への着色が大きくなる傾向にある。
【0140】
垂直液晶硬化膜が、上記式(11)および(12)を満たす場合、垂直液晶配向膜が優れた偏光性能(吸収異方性)を有するといえ、これにより正面方向からの光を効果的に透過し、かつ、斜め方向からの光を効果的に吸収することができる。
【0141】
前記二色性色素を含む垂直配向液晶硬化膜におけるAxCおよびAxC(Z=60)は、例えば、膜厚、製造工程の条件、垂直配向液晶硬化膜を構成する重合性液晶化合物および二色性色素の種類や配合量等を調整することにより制御することができる。また、一般にAxC(z=60)/AxCの値は、重合性液晶化合物がネマチック液晶の場合には2~10程度、スメクチック液晶の場合には5~30程度となり、目的の光学特性に合わせて適宜選択することが可能である。
【0142】
<配向膜>
本発明の一態様において、重合性液晶組成物の塗膜は配向膜上に形成される。配向膜は、重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。この中でも、重合性液晶化合物を水平方向に配向させる配向規制力を有する配向膜を水平配向膜、垂直方向に配向させる配向規制力を有する配向膜を垂直配向膜と呼ぶことがある。配向規制力は、配向膜の種類、表面状態やラビング条件等によって任意に調整することが可能であり、配向膜が光配向性ポリマーから形成されている場合は、偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。
【0143】
配向膜としては、重合性液晶組成物の塗布等により溶解しない溶媒耐性を有し、また、溶媒の除去や後述する重合性液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光配向膜および表面に凹凸パターンや複数の溝を有するグルブ配向膜、配向方向に延伸してある延伸フィルム等が挙げられ、配向角の精度および品質の観点から光配向膜が好ましい。
【0144】
配向性ポリマーとしては、例えば、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミドおよびその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸エステル類が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。配向性ポリマーは単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0145】
配向性ポリマーを含む配向膜は、通常、配向性ポリマーが溶媒に溶解した組成物(以下、「配向性ポリマー組成物」ということがある)を基材に塗布し、溶媒を除去する、または、配向性ポリマー組成物を基材に塗布し、溶媒を除去し、ラビングする(ラビング法)ことで得られる。溶媒としては、重合性液晶組成物に用い得る溶媒として先に例示した溶媒と同様のものが挙げられる。
【0146】
配向性ポリマー組成物中の配向性ポリマーの濃度は、配向性ポリマー材料が、溶媒に完溶できる範囲であればよいが、溶液に対して固形分換算で0.1~20%が好ましく、0.1~10%程度がさらに好ましい。
【0147】
配向性ポリマー組成物として、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業(株)製)、オプトマー(登録商標、JSR(株)製)などが挙げられる。
【0148】
配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法としては、重合性液晶組成物を基材へ塗布する方法として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0149】
配向性ポリマー組成物に含まれる溶媒を除去する方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0150】
配向膜に配向規制力を付与するために、必要に応じてラビング処理を行うことができる(ラビング法)。ラビング法により配向規制力を付与する方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を基材に塗布しアニールすることで基材表面に形成された配向性ポリマーの膜を接触させる方法が挙げられる。ラビング処理を行う時に、マスキングを行えば、配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を配向膜に形成することもできる。
【0151】
光配向膜は、通常、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーと溶媒とを含む組成物(以下、「光配向膜形成用組成物」ともいう)を基材に塗布し、溶媒を除去後に偏光(好ましくは、偏光UV)を照射することで得られる。光配向膜は、照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御することができる点でも有利である。
【0152】
光反応性基とは、光照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光照射により生じる分子の配向誘起または異性化反応、二量化反応、光架橋反応もしくは光分解反応等の液晶配向能の起源となる光反応に関与する基が挙げられる。中でも、二量化反応または光架橋反応に関与する基が、配向性に優れる点で好ましい。光反応性基として、不飽和結合、特に二重結合を有する基が好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)および炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する基が特に好ましい。
【0153】
C=C結合を有する光反応性基としては、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基およびシンナモイル基等が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、および、アゾキシベンゼン構造を有する基等が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基およびマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリ-ル基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、ハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0154】
中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向膜が得られやすいという点で、シンナモイル基およびカルコン基が好ましい。光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。
【0155】
光配向膜形成用組成物を基材上に塗布することにより、基材上に光配向誘起層を形成することができる。該組成物に含まれる溶媒としては、重合性液晶組成物に用い得る溶媒として先に例示した溶媒と同様のものが挙げられ、光反応性基を有するポリマーあるいはモノマーの溶解性に応じて適宜選択することができる。
【0156】
光配向膜形成用組成物中の光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの含有量は、ポリマーまたはモノマーの種類や目的とする光配向膜の厚みによって適宜調節できるが、光配向膜形成用組成物の質量に対して、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲がより好ましい。光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、光配向膜形成用組成物は、ポリビニルアルコ-ルやポリイミドなどの高分子材料や光増感剤を含んでいてもよい。
【0157】
光配向膜形成用組成物を基材に塗布する方法としては、配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法と同様の方法が挙げられる。塗布された光配向膜形成用組成物から、溶媒を除去する方法としては例えば、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0158】
偏光を照射するには、基板上に塗布された光配向膜形成用組成物から、溶媒を除去したものに直接、偏光UVを照射する形式でも、基材側から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する形式でもよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であると特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外線)が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レ-ザ-などが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプがより好ましい。これらの中でも、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプが、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため好ましい。前記光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光UVを照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテ-ラ-などの偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
【0159】
なお、ラビングまたは偏光照射を行う時に、マスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0160】
グルブ(groove)配向膜は、膜表面に凹凸パターンまたは複数のグルブ(溝)を有する膜である。等間隔に並んだ複数の直線状のグルブを有する膜に重合性液晶化合物を塗布した場合、その溝に沿った方向に液晶分子が配向する。
【0161】
グルブ配向膜を得る方法としては、感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光後、現像およびリンス処理を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に、硬化前のUV硬化樹脂の層を形成し、形成された樹脂層を基材へ移してから硬化する方法、および、基材に形成した硬化前のUV硬化樹脂の膜に、複数の溝を有するロール状の原盤を押し当てて凹凸を形成し、その後硬化する方法等が挙げられる。
【0162】
重合性液晶化合物を塗膜平面に対して垂直方向に配向させる配向規制力を示す材料としては、上述した配向性ポリマー等の他にパーフルオロアルキル等のフッ素系ポリマーおよびシラン化合物並びにそれらの縮合反応により得られるポリシロキサン化合物などを用いてもよい。
【0163】
配向膜を形成する材料としてシラン化合物を使用する場合には、表面張力を低下させやすく、配向膜に隣接する層との密着性を高めやすい観点から、構成元素にSi元素とC元素とを含む化合物が好ましく、シラン化合物を好適に使用することができる。シラン化合物としては、後述する非イオン性シラン化合物や、イオン性化合物の項に例示されるようなシラン含有イオン性化合物等が使用可能であり、これらのシラン化合物を使用することにより垂直配向規制力を高めることができる。これらのシラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その他材料と混合して使用してもよい。シラン化合物が非イオン性シラン化合物である場合には、垂直配向規制力を高めやすい観点から分子末端にアルキル基を有するシラン化合物が好ましく、炭素数3~30のアルキル基を有するシラン化合物がより好ましい。
【0164】
配向膜(配向性ポリマーを含む配向膜または光配向膜)の厚みは、通常10~10000nmの範囲であり、好ましくは10~1000nmの範囲であり、より好ましくは10~500nm以下であり、さらに好ましくは10~300nm、特に好ましい50~250nmの範囲である。
【0165】
<配向促進剤>
本発明における垂直配向液晶硬化膜の別の一態様において、重合性液晶組成物の塗膜は配向膜を必要とせず、基材上に直接形成し得る。かかる態様において、垂直配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物は、通常、配向促進剤を含む。本発明において、配向促進剤とは所望の方向への重合性液晶化合物の液晶配向を促進させる材料を意味する。重合性液晶化合物の垂直方向への配向を促進させる配向促進剤としては、非金属原子からなるイオン性化合物および非イオン性シラン化合物等が挙げられる。垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物が、非金属原子からなるイオン性化合物および非イオン性シラン化合物のうちの少なくとも1種を含むことが好ましく、非金属原子からなるイオン性化合物および非イオン性シラン化合物をともに含むことがより好ましい。
【0166】
垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物が、非金属原子からなるイオン性化合物を含む場合、基材上に垂直配向液晶硬化膜形成用組成物から形成された乾燥塗膜においては、静電相互作用によって重合性液晶化合物に対する垂直配向規制力が発現し、乾燥塗膜内において重合性液晶化合物が基材表面に対して垂直方向に配向する傾向にある。これにより、重合性液晶化合物が垂直配向した状態を保持して液晶硬化膜を形成することができる。
【0167】
非金属原子からなるイオン性化合物としては、たとえば、オニウム塩(より具体的には、窒素原子がプラスの電荷を有する第四級アンモニウム塩、第三級スルホニウム塩、およびリン原子がプラスの電荷を有する第四級ホスホニウム塩等)が挙げられる。これらのオニウム塩のうち、重合性液晶化合物の垂直配向性をより向上させ得る観点から第四級オニウム塩が好ましく、入手性および量産性を向上させる観点から、第四級ホスホニウム塩または第四級アンモニウム塩がより好ましい。オニウム塩は分子内に2つ以上の第四級オニウム塩部位を有していてもよく、オリゴマーやポリマーであってもよい。
【0168】
イオン性化合物の分子量は、100以上10,000以下であることが好ましい。分子量が上記範囲内であると、重合性組成物の塗布性を確保したまま重合性液晶化合物の垂直配向性を向上させやすい。イオン性化合物の分子量は、より好ましくは5000以下、さらに好ましくは3000以下である。
【0169】
イオン性化合物のカチオン成分としては、例えば、無機のカチオンおよび有機のカチオンが挙げられる。中でも、重合性液晶化合物の配向欠陥を生じ難いことから、有機のカチオンが好ましい。有機のカチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオンおよびホスホニウムカチオン等が挙げられる。
【0170】
イオン性化合物は一般的に対アニオンを有する。上記カチオン成分の対イオンとなるアニオン成分としては、例えば、無機のアニオンおよび有機のアニオンが挙げられる。中でも、重合性液晶化合物の配向欠陥を生じ難いことから、有機のアニオンが好ましい。なお、カチオンとアニオンとは、必ずしも一対一の対応となっている必要があるわけではない。
【0171】
アニオン成分としては、具体的に例えば、以下のようなものが挙げられる。
クロライドアニオン〔Cl〕、
ブロマイドアニオン〔Br〕、
ヨーダイドアニオン〔I〕、
テトラクロロアルミネートアニオン〔AlCl 〕、
ヘプタクロロジアルミネートアニオン〔AlCl 〕、
テトラフルオロボレートアニオン〔BF 〕、
ヘキサフルオロホスフェートアニオン〔PF 〕、
パークロレートアニオン〔ClO 〕、
ナイトレートアニオン〔NO 〕、
アセテートアニオン〔CHCOO〕、
トリフルオロアセテートアニオン〔CFCOO〕、
フルオロスルホネートアニオン〔FSO 〕、
メタンスルホネートアニオン〔CHSO 〕、
トリフルオロメタンスルホネートアニオン〔CFSO 〕、
p-トルエンスルホネートアニオン〔p-CHSO 〕、
ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン〔(FSO〕、
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン〔(CFSO〕、
トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドアニオン〔(CFSO〕、
ヘキサフルオロアーセネートアニオン〔AsF 〕、
ヘキサフルオロアンチモネートアニオン〔SbF 〕、
ヘキサフルオロニオベートアニオン〔NbF 〕、
ヘキサフルオロタンタレートアニオン〔TaF 〕、
ジメチルホスフィネートアニオン〔(CHPOO〕、
(ポリ)ハイドロフルオロフルオライドアニオン〔F(HF) 〕(たとえば、nは1~3の整数を表す)、
ジシアナミドアニオン〔(CN)〕、
チオシアンアニオン〔SCN〕、
パーフルオロブタンスルホネートアニオン〔CSO 〕、
ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン〔(CSO〕、
パーフルオロブタノエートアニオン〔CCOO〕、および
(トリフルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンカルボニル)イミドアニオン
〔(CFSO)(CFCO)N〕。
【0172】
イオン性化合物の具体例は、上記カチオン成分とアニオン成分との組合せから適宜選択することができる。具体的なカチオン成分とアニオン成分の組合せである化合物としては、以下のようなものが挙げられる。
【0173】
(ピリジニウム塩)
N-ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-オクチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-ヘキシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-オクチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-オクチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-ヘキシルピリジニウム p-トルエンスルホネート、
N-オクチルピリジニウム p-トルエンスルホネート、
N-メチル-4-ヘキシルピリジニウム p-トルエンスルホネート、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム p-トルエンスルホネート、および
N-オクチル-4-メチルピリジニウム p-トルエンスルホネート。
【0174】
(イミダゾリウム塩)
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム p-トルエンスルホネート、
1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム メタンスルホネートなど。
【0175】
(ピロリジニウム塩)
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム p-トルエンスルホネートなど。
【0176】
(アンモニウム塩)
テトラブチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、
テトラブチルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
テトラヘキシルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
トリオクチルメチルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
テトラブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
テトラヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリオクチルメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
テトラブチルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
テトラヘキシルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
トリオクチルメチルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ジメチルホスフィネート
1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,1,1-トリブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,1,1-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-(3-トリメトキシシリルブチル)-1,1,1-トリブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-(3-トリメトキシシリルブチル)-1,1,1-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-{(3-トリエトキシシリルプロピル)カルバモイルオキシエチル)}-N,N,N-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、および
N-[2-{3-(3-トリメトキシシリルプロピルアミノ)-1-オキソプロポキシ}エチル]-N,N,N-トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
【0177】
(ホスホニウム塩)
トリブチル(2-メトキシエチル)ホスホニウム ビス (トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
トリブチルメチルホスホニウムビス (トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[(トリメトキシシリル)メチル]ホスホニウム ビス (トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[2-(トリメトキシシリル)エチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリメチル-1-[4-(トリメトキシシリル)ブチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリブチル-1-[(トリメトキシシリル)メチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1,1,1-トリブチル-1-[2-(トリメトキシシリル)エチル]ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、および
1,1,1-トリブチル-1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ホスホニウ ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
これらのイオン性化合物はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0178】
重合性液晶化合物の垂直配向性をより向上させ得る観点から、イオン性化合物はカチオン部位の分子構造中にSi元素および/またはF元素を有していることが好ましい。イオン性化合物がカチオン部位の分子構造中にSi元素および/またはF元素を有していると、イオン性化合物を垂直配向液晶硬化膜の表面に偏析させやすくなる。中でも、構成する元素が全て非金属元素であるイオン性化合物として、下記イオン性化合物(i)~(iii)等が好ましい。
【0179】
(イオン性化合物(i))
【化28】
(イオン性化合物(ii))
【化29】
(イオン性化合物(iii))
【化30】
【0180】
重合性液晶化合物の垂直配向性を向上させる方法として、例えば、ある程度鎖長の長いアルキル基を有する界面活性剤を用いて基材表面を処理する方法が知られている(例えば、「液晶便覧」の第2章 液晶の配向と物性(丸善株式会社発行)等を参照)。このような界面活性剤により液晶化合物の垂直配向性を向上させる方法はイオン性化合物にも適用することができる。すなわち、ある程度鎖長の長いアルキル基を有するイオン性化合物を用いて基材表面を処理することにより、重合性液晶化合物の垂直配向性を効果的に向上させることができる。
【0181】
具体的には、イオン性化合物が下記式(8)を満たすことが好ましい。
5<M<16 (8)
式(8)中、Mは下記式(9)で表される。
M=(プラスの電荷を有する原子上に直接結合される置換基の内、分子鎖末端までの共有結合数が最も多い置換基の、プラスの電荷を有する原子から分子鎖末端までの共有結合数)÷(プラスの電荷を有する原子の数) (9)
イオン性化合物が上記(8)を満たすことにより、重合性液晶化合物の垂直配向性を効果的に向上させることができる。
【0182】
なお、イオン性化合物の分子中にプラスの電荷を有する原子が2つ以上存在する場合、プラスの電荷を有する原子を2つ以上有する置換基については、基点として考えるプラスの電荷を有する原子から数えて最も近い別のプラスの電荷を有する原子までの共有結合数を、上記Mの定義に記載の「プラスの電荷を有する原子から分子鎖末端までの共有結合数」とする。また、イオン性化合物が繰返し単位を2つ以上有するオリゴマーやポリマーである場合には、構成単位を一分子として考え、上記Mを算出する。プラスの電荷を有する原子が環構造に組み込まれている場合、環構造を経由して同プラスの電荷を有する原子に至るまでの共有結合数、または環構造に結合している置換基の末端までの共有結合数のうち、共有結合数が多い方を上記Mの定義に記載の「プラスの電荷を有する原子から分子鎖末端までの共有結合数」とする。
【0183】
垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物がイオン性化合物を含む場合、その含有量は、通常、重合性液晶組成物の固形分に対して0.01~5質量%であることが好ましく、0.05~4質量%であることがより好ましく、0.1~3質量%であることがさらに好ましい。イオン性化合物の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶組成物の良好な塗布性を維持しながら、重合性液晶化合物の垂直配向性を効果的に促進させることができる。
【0184】
垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物が非イオン性シラン化合物を含む場合、非イオン性シラン化合物が重合性液晶組成物の表面張力を低下させ、基材上に垂直配向液晶硬化膜形成用組成物から形成された乾燥塗膜においては、乾燥塗膜の基材とは反対側の面に非イオン性シラン化合物が存在し、重合性液晶化合物に対する垂直配向規制力を高め、乾燥塗膜内において重合性液晶化合物が基材表面に対して垂直方向に配向する傾向にある。これにより、重合性液晶化合物が垂直配向した状態を保持して液晶硬化膜を形成することができる。
【0185】
非イオン性シラン化合物は、非イオン性であってSi元素を含む化合物である。非イオン性シラン化合物としては、例えば、ポリシランのようなケイ素ポリマー、シリコーンオイルおよびシリコーンレジンのようなシリコーン樹脂、並びにシリコーンオリゴマー、シルセスシロキサンおよびアルコキシシランのような有機無機シラン化合物(より具体的には、シランカップリング剤等)、レベリング剤の項に記載のシラン含有化合物等が挙げられる。
【0186】
非イオン性シラン化合物は、シリコーンモノマータイプのものであってもよく、シリコーンオリゴマー(ポリマー)タイプのものであってもよい。シリコーンオリゴマーを(単量体)-(単量体)コポリマーの形式で示すと、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマーおよび3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなメルカプトプロピル基含有のコポリマー;メルカプトメチルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、メルカプトメチルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマーおよびメルカプトメチルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなメルカプトメチル基含有のコポリマー;3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマーおよび3-メタクリロキシイルオプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなメタクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマーおよび3-アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなアクリロイルオキシプロピル基含有のコポリマー;ビニルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、ビニルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、ビニルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマーおよびビニルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなビニル基含有のコポリマー;3-アミノプロピルトリメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルトリメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルトリエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルトリエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマー、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン-テトラメトキシシランコポリマーおよび3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン-テトラエトキシシランコポリマーのようなアミノ基含有のコポリマー等が挙げられる。これらの非イオン性シラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、または2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、隣接する層との密着性をより向上させる観点から、シランカップリング剤が好ましい。
【0187】
シランカップリング剤は、末端にビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、イソシアヌレート基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、カルボキシ基、およびヒドロキシ基からなる群から選択される少なくとも1種のような官能基と、少なくとも1つのアルコキシシリル基またはシラノール基とを有するSi元素を含む化合物である。これらの官能基を適宜選定することにより、垂直配向液晶硬化膜の機械的強度の向上、垂直配向液晶硬化膜の表面改質、垂直配向液晶硬化膜と隣接する層(たとえば、基材)との密着性向上などの特異な効果を付与することが可能となる。密着性の観点からは、シランカップリング剤がアルコキシシリル基ともう1つの異なる反応基(たとえば、上記官能基)とを有するシランカップリング剤であることが好ましい。さらに、シランカップリング剤が、アルコキシシリル基と極性基とを有するシランカップリング剤であることが好ましい。シランカップリング剤がその分子内に少なくとも1つのアルコキシシリル基と、少なくとも1つの極性基とを有すると、重合性液晶化合物の垂直配向性がより向上しやすく、垂直配向促進効果が顕著に得られる傾向にある。極性基としては、例えば、エポキシ基、アミノ基、イソシアヌレート基、メルカプト基、カルボキシ基およびヒドロキシ基が挙げられる。なお、極性基はシランカップリング剤の反応性を制御するために適宜置換基または保護基を有していてもよい。
【0188】
シランカップリング剤としては、具体的に例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、および3-グリシドキシプロピルエトキシジメチルシランが挙げられる。
【0189】
また、市販のシランカップリング剤としては、たとえば、KP321、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341、X22-161A、KF6001、KBM-1003、KBE-1003、KBM-303、KBM-402、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-1403、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-602、KBM-603、KBM-903、KBE-903、KBE-9103、KBM-573、KBM-575、KBM-9659、KBE-585、KBM-802、KBM-803、KBE-846、およびKBE-9007のような信越化学工業(株)製のシランカップリング剤が挙げられる。
【0190】
垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物が非イオン性シラン化合物を含む場合、その含有量は、通常、重合性液晶組成物の固形分に対して0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.05質量%~4質量%であることがより好ましく、0.1質量%~3質量%であることがさらに好ましい。非イオン性シラン化合物の含有量が前記範囲内であると、重合性液晶組成物の良好な塗布性を維持しながら、重合性液晶化合物の垂直配向性を効果的に促進させることができる。
【0191】
垂直配向液晶硬化膜を形成する重合性液晶組成物が、イオン性化合物および非イオン性シラン化合物の両方を含むことにより、基材上に垂直配向液晶硬化膜形成用組成物から形成された乾燥塗膜においては、イオン性化合物に由来する静電相互作用と、非イオン性シラン化合物に由来する表面張力低下効果により、重合性液晶化合物の垂直配向がより促進されやすくなる。これにより、重合性液晶化合物がより精度よく垂直配向した状態を保持して液晶硬化膜を形成することができる。
【0192】
<水平配向液晶硬化膜>
本発明における水平配向液晶硬化膜とは、基材または配向膜上に前述の重合性液晶組成物を塗布し、基材球は配向膜面内方向に重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物が配向した状態で硬化された液晶硬化膜を示す。
【0193】
本発明において、水平配向液晶硬化膜の一様として、下記式(S2)を満たすことが好ましい。
ReA(450)/ReA(550)<1.00 (S2)
〔式(S2)中、ReA(λ)は波長λnmにおける水平配向位相差フィルムの面内位相差値を表し、ReA(λ)=(nxA(λ)-nyA(λ))×dAである(式中、nxA(λ)は水平配向位相差フィルム面内における波長λnmでの主屈折率を表し、nyA(λ)はnxAと同一面内でnxAの方向に対して直交する方向の波長λnmでの屈折率を表し、dAは水平配向位相差フィルムの膜厚を示す)〕
【0194】
水平配向液晶硬化膜が式(S2)を満たす場合、当該水平配向液晶硬化膜は、短波長での面内位相差値が長波長での面内位相差値よりも小さくなる、いわゆる逆波長分散性を示す。このような水平配向液晶硬化膜を、有機EL表示装置に組み込んだ場合の黒表示時の正面反射色相を向上させることができある。正面方向の反射色相の向上効果をより高めることができるため、ReA(450)/ReA(550)は、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.78以上であり、また、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.92以下である。
【0195】
上記面内位相差値は、水平配向液晶硬化膜の厚みdAによって調整することができる。面内位相差値は、上記式ReA(λ)=(nxA(λ)-nyA(λ))×dAによって決定されることから、所望の面内位相差値(ReA(λ):波長λ(nm)における水平配向液晶硬化膜の面内位相差値)を得るには、3次元屈折率と膜厚dAとを調整すればよい。
【0196】
また、水平配向液晶硬化膜が下記式(S1)を満たすことが好ましい。
100nm≦ReA(550)≦180nm (S1)
〔式(S1)中、ReA(λ)は上記と同じ意味である〕
水平配向液晶硬化膜の面内位相差ReA(550)が式(S1)の範囲内であると、有機EL表示装置に適用した場合の黒表示時の正面反射色相を向上させる効果(着色を抑制させる効果)が顕著になる。面内位相差値のより好ましい範囲は120nm≦ReA≦170nm、さらに好ましい範囲は130nm≦ReA(550)≦150nmである。
【0197】
水平配向液晶硬化膜の分野において従来公知の重合性液晶化合物を用いることができる。中でも、いわゆる逆波長分散性を示す重合性液晶化合物が好ましく、そのような重合性液晶化合物としては、例えば、上記式(X)で示される重合性液晶化合物を好適に用いることができる。重合性液晶化合物は単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0198】
水平配向液晶硬化膜の形成に用いる重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物の含有量は、重合性液晶組成物の固形分100質量部に対して、例えば70~99.5質量部であり、好ましくは80~99質量部であり、より好ましくは85~98質量部であり、さらに好ましくは90~95質量部である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であれば、得られる液晶硬化膜の配向性の観点から有利である。
【0199】
水平配向液晶硬化膜の形成に用いる重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物に加えて、溶媒、光重合開始剤、レベリング剤、酸化防止剤、光増感剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。これらの成分としては、垂直配向液晶硬化膜で用い得る成分として先に例示したものと同様のものが挙げられ、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0200】
水平配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物と、溶媒や光重合開始剤などの重合性液晶化合物以外の成分とを所定温度で撹拌等することにより得ることができる。
【0201】
水平配向液晶硬化膜は、例えば、
水平配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物を基材または配向膜上に塗布して塗膜を得る工程、
前記塗膜を乾燥させて乾燥塗膜を形成する工程、および、
乾燥塗膜に活性エネルギー線を照射し、水平配向液晶硬化膜を形成する工程
を含む方法により製造することができる。
【0202】
重合性液晶組成物の塗膜の形成は、例えば、基材上や配向膜上などに水平配向液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物を塗布することにより行うことができる。ここで用い得る基材としては、垂直配向液晶硬化膜の製造に用い得る基材として先に例示したものと同様のものを用いることができる。
【0203】
配向膜は、重合性液晶化合物を塗膜平面に対して水平方向に配向させる水平配向規制力を有する材料から適宜選択することができる。配向規制力は、配向層の種類、表面状態やラビング条件等によって任意に調整することが可能であり、光配向性ポリマーから形成されている場合は、偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。このような材料としては、例えば、垂直配向液晶硬化膜の製造に用い得る配向膜として上述した配向性ポリマーなどが挙げられる。水平配向膜は、このような材料と溶媒、例えば垂直配向液晶硬化膜において例示した溶媒とを含む組成物を基材に塗布し、溶媒除去後、塗布膜に加熱等を施すことで得ることができる。水平配向膜としては、品質の観点から光配向膜を用いることが好ましい。
【0204】
次いで、溶媒を乾燥等により除去することにより、乾燥塗膜が形成される。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。生産性の面からは加熱乾燥が好ましく、その場合の加熱温度は、溶媒を除去でき、かつ、重合性液晶化合物の相転移温度以上であることが好ましい。かかる工程における手順や条件は、垂直配向液晶硬化膜の製造方法で採用し得るのと同様のものが挙げられる。
【0205】
得られた乾燥塗膜に活性エネルギー線(より具体的には、紫外線等)を照射し、重合性液晶化合物が塗膜平面に対して水平方向に配向した状態を保持したまま、重合性液晶化合物を重合させることにより、水平配向液晶硬化膜が形成される。重合方法としては、垂直配向液晶硬化膜の製造方法で採用し得る方法と同様の方法が挙げられる。
【0206】
<二色性色素を含む水平配向液晶硬化膜>
本発明において、二色性色素を含む水平配向液晶硬化膜の中でも偏光機能を有する膜を偏光膜と呼ぶことがある。特に二色性色素を含む水平配向液晶硬化膜の場合、液晶の配向秩序度が高いほど、二色性色素に由来する吸収選択性が向上するため、前述のスメクチック相、特に高次スメクチック相を示す重合性液晶化合物を使用することが好ましく、スメクチック相、好ましくは高次のスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合し、偏光膜が形成することが好ましい。重合性液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合して得られる偏光膜は、前記二色性色素の作用にも伴い、従来のホストゲスト型偏光フィルム、すなわち、ネマチック相の液晶状態からなる偏光膜と比較して、偏光性能が高いという利点がある。さらに、二色性色素やリオトロピック液晶のみを塗布したものと比較して、強度に優れるという利点もある。
【0207】
配向秩序度の高い偏光膜は、X線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られる。ブラッグピークとは、分子配向の面周期構造に由来するピークを意味する。したがって、本発明の重合性液晶組成物から形成される偏光膜において、重合性液晶化合物またはその重合体が、X線回折測定において該偏光膜がブラッグピークを示すように配向していることが好ましく、光を吸収する方向に重合性液晶化合物の分子が配向する「水平配向」であることがより好ましい。本発明においては分子配向の面周期間隔が3.0~6.0Åである偏光膜が好ましい。ブラッグピークを示すような高い配向秩序度は、用いる重合性液晶化合物の種類、酸化防止剤の種類やその量、二色性色素の種類やその量等を制御することにより実現し得る。
【0208】
水平配向液晶硬化膜の厚みは、適宜選択でき、好ましくは0.1~5μm、より好ましくは0.3~4μm、さらに好ましくは0.4~3μmである。
【0209】
<楕円偏光板>
本発明は、本発明の液晶硬化膜を含む楕円偏光板を包含する。楕円偏光板とは少なくとも位相差フィルムと偏光フィルムとを含む積層体である。
【0210】
偏光フィルムは、偏光機能を有するフィルムであり、例えば前述の偏光膜や、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムや吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムを偏光子として含むフィルム等が挙げられる。吸収異方性を有する色素としては、例えば、二色性色素が挙げられる。
【0211】
吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムを偏光子として含むフィルムは通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造された偏光子の少なくとも一方の面に接着剤を介して透明保護フィルムで挟み込むことで作製される。
【0212】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が用いられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
【0213】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールも使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000~10,000程度であり、好ましくは1,500~5,000の範囲である。
【0214】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は、例えば、10~150μm程度とすることができる。
【0215】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、または染色の後で行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶媒を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3~8倍程度である。
【0216】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法によって行われる。
【0217】
二色性色素として、具体的には、ヨウ素や二色性の有機染料が用いられる。二色性の有機染料としては、C.I.DIRECT RED 39などのジスアゾ化合物からなる二色性直接染料および、トリスアゾ、テトラキスアゾなどの化合物からなる二色性直接染料等が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理前に、水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0218】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100質量部あたり、通常、0.01~1質量部程度である。またヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常、0.5~20質量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20~40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20~1,800秒程度である。
【0219】
一方、二色性色素として二色性の有機染料を用いる場合は通常、水溶性二色性染料を含む水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100質量部あたり、通常、1×10-4~10質量部程度であり、好ましくは1×10-3~1質量部であり、さらに好ましくは1×10-3~1×10-2質量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含んでいてもよい。染色に用いる二色性染料水溶液の温度は、通常、20~80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常、10~1,800秒程度である。
【0220】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬する方法により行うことができる。このホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100質量部あたり、通常2~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましく、その場合のヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常0.1~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常60~1,200秒程度であり、好ましくは150~600秒、さらに好ましくは200~400秒である。ホウ酸処理の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃、さらに好ましくは60~80℃である。
【0221】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬する方法により行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5~40℃程度である。また浸漬時間は、通常1~120秒程度である。
【0222】
水洗後に乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。乾燥処理は例えば、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30~100℃程度であり、好ましくは50~80℃である。乾燥処理の時間は、通常60~600秒程度であり、好ましくは120~600秒である。乾燥処理により、偏光子の水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、通常5~20質量%程度であり、好ましくは8~15質量%である。水分率が5質量%を下回ると、偏光子の可撓性が失われ、偏光子がその乾燥後に損傷したり、破断したりすることがある。また、水分率が20質量%を上回ると、偏光子の熱安定性が悪くなる可能性がある。
【0223】
こうしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、ホウ酸処理、水洗および乾燥をして得られる偏光子の厚さは好ましくは5~40μmである。
【0224】
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、液晶性を有する二色性色素を含む組成物または、二色性色素と重合性液晶とを含む組成物を塗布して得られるフィルム等が挙げられる。当該フィルムは、好ましくは、その片面または両面に保護フィルムを有する。当該保護フィルムとしては、水平配向液晶硬化膜の製造に用い得る基材として先に例示した樹脂フィルムと同一のものが挙げられる。
【0225】
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムは薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。当該フィルムの厚さは、通常20μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5~3μmである。
【0226】
前記吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、具体的には、特開2012-33249号公報等に記載のフィルムが挙げられる。
【0227】
このようにして得られた偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤を介して透明保護フィルムを積層することにより偏光フィルムが得られる。透明保護フィルムとしては、水平配向液晶硬化膜の製造に用い得る基材として先に例示した樹脂フィルムと同様の透明フィルムを好ましく用いることができる。
【0228】
本発明の楕円偏光板は、本発明の液晶硬化膜を含んで構成されるものであり、例えば、本発明の液晶硬化膜を偏光フィルム等と接着剤層等を介して積層させることにより本発明の楕円偏光板を得ることができる。
【0229】
本発明の一実施態様においては、本発明の積層体と偏光フィルムとが積層される場合、積層体を構成する水平配向位相差フィルムの遅相軸(光軸)と偏光フィルムの吸収軸との成す角が45±5°となるように積層することが好ましい。
【0230】
本発明の楕円偏光板は、従来の一般的な楕円偏光板、または偏光フィルムおよび位相差フィルムが備えるような構成を有していてよい。そのような構成としては、例えば、楕円偏光板を有機EL等の表示素子に貼合するための粘着剤層(シート)、偏光フィルムや位相差フィルムの表面を傷や汚れから保護する目的で用いられるプロテクトフィルム等が挙げられる。
【0231】
本発明の積層体および楕円偏光板は、さまざまな表示装置に用いることができる。
表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子または発光装置を含む。表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、タッチパネル表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)および圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置および投写型液晶表示装置などのいずれをも含む。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。特に本発明の楕円偏光板は、その効果が顕著に発揮されやすいことから有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置に好適に用いることができ、本発明の積層体は液晶表示装置およびタッチパネル表示装置に好適に用いることができる。これらの表示装置は、黒表示時の正面反射色相および斜方反射色相に優れるとともに、白表示時の正面色相および斜方色相にも優れ、良好な画像表示特性を発現することができる。
【実施例0232】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。尚、例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、それぞれ質量%及び質量部を意味する。
【0233】
<実施例1>
[液晶化合物の調製]
液晶化合物Aは特開2010-31223号公報に記載の方法に準じて製造した。また、液晶化合物Bは、特開2009-173893号公報に記載の方法に準じて製造した。以下に、液晶化合物A及び液晶化合物Bの分子構造をそれぞれ示す。
【0234】
(液晶化合物A)
【化31】
【0235】
(液晶化合物B)
【化32】
【0236】
〔垂直配向液晶硬化膜形成用組成物の調製〕
液晶化合物A及び液晶化合物Bを質量比90:10で混合し、混合物を得た。得られた混合物100質量部に対して、レベリング剤「BYK-361N」(BYK-Chemie社製)0.10質量部、レベリング剤「F-556」(DIC社製)0.25質量部、特願2016-514802号公報を参考にして調整したイオン性化合物Aを2.0質量部、信越化学工業株式会社製のKBE-9103を0.5質量部、光重合開始剤としての2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6質量部とを添加した。更に、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。80℃で1時間攪拌することにより、垂直配向液晶硬化膜形成用組成物を得た。
【0237】
イオン性化合物A:
【化33】
尚、アクリル系レベリング剤「BYK-361N」をGPC(東ソー社製、HLC-8220GPC、溶媒テトラヒドロフラン、検出器:RI)にて分子量を測定したところ、数平均分子量は4800であった。
【0238】
〔垂直配向液晶硬化膜の作製方法〕
日本ゼオン株式会社製のシクロオレフィンフィルム(ZF-14-50)上にコロナ処理を実施し、バーコーターを用いて垂直配向液晶硬化膜形成用組成物を塗布し、120℃で60秒間過熱した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、水平配向液晶硬化膜形成用組成物を塗布した面から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm)することにより、垂直配向液晶硬化膜を形成した。得られた垂直配向液晶硬化膜の膜厚をエリプソメータ(日本分光株式会社製M-220)で測定したところ、1.2μmであった。
【0239】
〔垂直配向液晶硬化膜のRth測定〕
王子計測機器株式会社製KOBRA-WPRを使用した場合には可視光に異方的な吸収を有するフィルムの位相差を測定することができないため、前記垂直配向液晶硬化膜形成用組成物中から二色性色素Aのみを除いた垂直配向液晶硬化形成用組成物を調製した後、該組成物を用いて同様に垂直配向液晶硬化を形成し、シクロオレフィンフィルムに位相差が無いことを確認したうえで王子計測社製「KOBRA-WPR」を用いて、光学特性測定用サンプルへの光の入射角を変化させて垂直配向液晶硬化膜の正面位相差値(面内位相差値)、及び進相軸中心に40°傾斜させた時の位相差値を測定した。各波長における平均屈折率は日本分光株式会社製のエリプソメータ M-220を用いて測定した。また、膜厚は浜松ホトニクス株式会社製のOptical NanoGauge膜厚計C12562-01を使用して測定した。前述の正面位相差値(面内位相差値)、進相軸中心に40°傾斜させた時の位相差値、平均屈折率、膜厚の値から、王子計測機器技術資料(http://www.oji-keisoku.co.jp/products/kobra/reference.html)を参考に3次元屈折率を算出した。得られた3次元屈折率から、以下式に従って垂直配向液晶硬化膜それぞれの光学特性を計算した結果を表1に示す。
RthC(λ)=((nxC(λ)+nyC(λ))/2-nzC(λ))×dC
αthC=RthC(450)/RthC(550)
【0240】
[偏光フィルムの製造]
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬してヨウ素染色を行った(ヨウ素染色工程)。ヨウ素染色工程を経たポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に、56.5℃で浸漬してホウ酸処理を行った(ホウ酸処理工程)。ホウ酸処理工程を経たポリビニルアルコールフィルムを8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している偏光子(延伸後の厚さ27μm)を得た。この際、ヨウ素染色工程とホウ酸処理工程において延伸を行った。かかる延伸におけるトータル延伸倍率は5.3倍であった。得られた偏光子と、ケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ製 KC4UYTAC 40μm)とを水系接着剤を介してニップロールで貼り合わせた。得られた貼合物の張力を430N/mの保ちながら、60℃で2分間乾燥して、片面に保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを有する偏光フィルムを得た。尚、前記水系接着剤は水100部に、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(クラレ製 クラレポバール KL318)3部と、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(住化ケムテックス製 スミレーズレジン650 固形分濃度30%の水溶液〕1.5部を添加して調製した。
【0241】
得られた偏光フィルムについてムラの確認と配向性の評価を行った。測定は上記で得られた偏光板の偏光子面を入射面として分光光度計(V7100、日本分光製)にて実施した。得られた視感度補正単体透過率は42.1%、視感度補正偏光度は99.996%、単体色相aは-1.1、単体色相bは3.7であった。
【0242】
〔ムラの確認〕
暗室内において、トライテック社製バックライトA4-500の輝度を4700ルクスに設定した状態で、バックライト上に前記方法で製造した偏光フィルム2枚をクロスニコルとなるように設置した。続いて、前記方法にて作製した垂直配向液晶硬化膜を2枚の偏光フィルムの間に設置し、バックライト面とのなす角が60°となるように傾けた状態で垂直配向液晶硬化膜を回転させて、偏光フィルム面側から視認した際に垂直配向液晶硬化膜の位相差による光抜けが最も大きくなるようにした。前記状態において、以下の基準で垂直配向液晶硬化膜のムラを確認した。
◎:ムラは視認されない。
〇:少しムラが視認される。
△:ムラが視認される。
×:強くムラが視認される。
【0243】
〔配向性評価〕
まず、垂直配向液晶硬化膜をリンテック社製感圧式粘着剤(25μm)を介して5×5cm×厚み0.7mmのガラスに貼合した。得られたサンプルに対して、偏光顕微鏡(オリンパス株式会社製「BX-51」)を用いて、倍率200倍の条件で観察し、視野480μm×320μmにおける配向欠陥数をカウントした。ここで、測定用サンプルに起因する配向欠陥数のみをカウントし、サンプル以外の環境異物等に起因する欠陥数は除外しカウントしなかった。偏光顕微鏡での観察結果から、以下の評価基準に基づいて垂直配向液晶硬化膜の配向性を評価した。尚、〇及び△を配向性が優れると判断した。
評価基準:
○(非常に良い):配向欠陥数が5個以下である。
△(良い):配向欠陥数が6個以上20個以下である。
×(悪い):配向欠陥数が21個以上であるか、又は全く配向していない。
【0244】
<実施例2~5>
垂直配向液晶硬化膜形成用組成物調製時に、添加するレベリング剤を表1に記載の通りBYK-chemie社製の「BYK-361N」(アクリル系レベリング剤)、同「BYK-UV3500」(シリコン系レベリング剤)、DIC社製の「F-556」(フッ素系レベリング剤)へ変更した事、及び添加量を変更した事以外は、実施例1と同様に垂直配向液晶硬化膜を製造し、そのRthの測定、ムラ及び配向性を確認した。結果を表1に示す。
【0245】
<実施例6>
[水平配向膜形成用組成物の調製]
下記構造の光配向性材料5部(重量平均分子量:30000)とシクロペンタノン(溶剤)95部とを成分として混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、水平配向膜形成用組成物を得た。
【化34】
【0246】
〔水平配向液晶硬化膜形成用組成物の調製〕
液晶化合物A及び液晶化合物Bを質量比90:10で混合し、混合物を得た。得られた混合物100質量部に対して、レベリング剤「BYK-361N」(BYK-Chemie社製)0.1質量部、レベリング剤「F-556」(DIC社製)0.25質量部と、光重合開始剤としての2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6質量部とを添加した。更に、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。80℃で1時間攪拌することにより、水平配向液晶硬化膜形成用組成物を得た。
【0247】
尚、液晶化合物Aの1mg/50mLテトラヒドロフラン溶液を調製し、光路長1cmの測定用セルに測定用試料を入れ、測定用試料を紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製「UV-2450」)にセットして吸収スペクトルを測定し、得られた吸収スペクトルから極大吸収度となる波長を読み取ったところ、波長300~400nmの範囲における極大吸収波長λmaxは350nmであった。
【0248】
〔水平配向液晶硬化膜の作製方法〕
日本ゼオン株式会社製のシクロオレフィンフィルム(ZF-14-50)上に、水平配向膜形成用組成物をバーコーター塗布し、80℃で1分間乾燥し、偏光UV照射装置(SPOT CURE SP-9;ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長313nmにおける積算光量:100mJ/cmで偏光UV露光を実施し、水平配向膜を得た。得られた水平配向膜の膜厚をエリプソメータで測定したところ、200nmであった。
【0249】
続いて、水平配向膜上にバーコーター用いて水平配向液晶硬化膜形成用組成物を塗布し、120℃で60秒間過熱した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、水平配向液晶硬化膜形成用組成物を塗布した面から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm)することにより、水平配向液晶硬化膜を形成した。COPフィルムに位相差が無い事を確認した後、王子計測機器株式会社製のKOBRA-WPRを用いしてRe(450)、Re(550)を測定した。結果を表1に示す。
【0250】
〔ムラの確認〕
暗室内において、トライテック社製バックライトA4-500の輝度を4700ルクスに設定した状態で、バックライト上に前記方法で製造した偏光フィルム2枚をクロスニコルとなるように設置した。続いて、前記方法にて作製した水平配向液晶硬化膜の遅相軸と偏光フィルムの吸収軸の成す角が45°となるように前記2枚の偏光フィルムの間に水平配向位液晶硬化膜を設置し、バックライトと反対側の面から視認して、以下の基準で水平配向液晶硬化膜のムラを確認した。
◎:ムラは視認されない。
〇:少しムラが視認される。
△:ムラが視認される。
×:強くムラが視認される。
【0251】
〔配向性評価〕
まず、水平配向液晶硬化膜をリンテック社製感圧式粘着剤(25μm)を介して5×5cm×厚み0.7mmのガラスに貼合した。得られたサンプルに対して、偏光顕微鏡(オリンパス株式会社製「BX-51」)を用いて、倍率200倍の条件で観察し、視野480μm×320μmにおける配向欠陥数をカウントした。ここで、測定用サンプルに起因する配向欠陥数のみをカウントし、サンプル以外の環境異物等に起因する欠陥数は除外しカウントしなかった。偏光顕微鏡での観察結果から、以下の評価基準に基づいて垂直配向液晶硬化膜の配向性を評価した。尚、〇、及び△を配向性が優れると判断した。
評価基準:
○(非常に良い):配向欠陥数が5個以下である。
△(良い):配向欠陥数が6個以上20個以下である。
×(悪い):配向欠陥数が21個以上であるか、又は全く配向していない。
【0252】
<実施例7>
[水平配向膜形成用組成物の調製]
下記構造の光配向性材料5部(重量平均分子量:30000)とシクロペンタノン(溶剤)95部とを成分として混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、水平配向膜形成用組成物を得た。
【化35】
【0253】
〔水平配向液晶硬化膜組成物の調製〕
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、水平配向液晶硬化膜組成物(偏光層形成用組成物)を得た。二色性色素には、特開2013-101328号公報の実施例に記載のアゾ系色素を用いた。式(1-6)及び(1-7)で示される重合性液晶化合物は、lub et al., Recl.Trav.Chim.Pays-Bas, 115, 321-328(1996)記載の方法に従って製造した。
【0254】
重合性液晶化合物:
【化36】
75部
【化37】
25部
二色性色素1:ポリアゾ色素;化合物(1-8) 2.5部
【化38】
化合物(1-5) 2.5部
【化39】
化合物(1-16) 2.5部
【化40】
重合開始剤;
2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製) 6部
レベリング剤;
「BYK-361N」(BYK-Chemie社製)0.1質量部(アクリル系レベリング剤)
「F-556」(DIC社製)0.25質量部(フッ素系レベリング剤)
溶剤;o-キシレン 250部
【0255】
〔水平配向液晶硬化膜の製造〕
コニカミノルタ株式会社製のトリアセチルセルロースフィルム(KC4UY)を、コロナ処理装置(AGF-B10、春日電機株式会社製)を用いて出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回処理した。コロナ処理を施した表面に、水平配向膜形成用組成物(偏光層形成用組成物)をバーコーター塗布し、80℃で1分間乾燥し、偏光UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、100mJ/cmの積算光量で、軸角度90°で偏光UV露光を実施した。得られた水平配向層の膜厚をエリプソメータで測定したところ、150nmであった。
続いてバーコーターを用いて水平配向液晶硬化膜形成用組成物(偏光層形成用組成物)を塗布した後、120℃に設定した乾燥オーブンで1分間乾燥することで、重合性液晶化合物及び二色性色素が配向した乾燥塗膜を得た。この乾燥塗膜を室温まで自然冷却した後に高圧水銀ランプ(ユニキュアVB―15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより重合性液晶化合物を重合して水平配向液晶硬化膜(偏光膜)を作製した。
【0256】
〔偏光度、単体透過率の測定〕
得られた水平配向液晶硬化膜(偏光膜)の偏光度及び、単体透過率は以下のように測定した。透過軸方向の透過率(T)及び吸収軸方向の透過率(T)を、分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)に偏光子付フォルダーをセットした装置を用いて、ダブルビーム法により2nmステップ380~680nmの波長範囲で測定した。下記式(p)ならびに(q)を用いて、各波長における単体透過率、偏光度を算出し、さらにJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行い、視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)を算出したところ、単体透過率は42%、偏光度は97%であり、偏光フィルムとして有用な値であることを確認した。
単体透過率(%)=(T+T)/2 (p)
偏光度(%)={(T-T)/(T+T)}×100 (q)
【0257】
〔ムラの確認〕
暗室内において、トライテック社製バックライトA4-500の輝度を4700ルクスに設定した状態で、バックライト上に前記方法で製造した偏光フィルム1枚を設置し、更に前記水平配向液晶硬化膜の吸収軸と偏光フィルムの吸収軸の成す角が90°(クロスニコル状態)となるように水平配向液晶硬化膜を設置した。設置したサンプルをバックライトと反対側の面から視認して、以下の基準で水平配向液晶硬化膜のムラを確認した。
◎:ムラは視認されない。
〇:少しムラが視認される。
△:ムラが視認される。
×:強くムラが視認される。
【0258】
〔配向性評価〕
まず、水平配向液晶硬化膜をリンテック社製感圧式粘着剤(25μm)を介して5×5cm×厚み0.7mmのガラスに貼合した。得られたサンプルに対して、偏光顕微鏡(オリンパス株式会社製「BX-51」)を用いて、倍率200倍の条件で観察し、視野480μm×320μmにおける配向欠陥数をカウントした。ここで、測定用サンプルに起因する配向欠陥数のみをカウントし、サンプル以外の環境異物等に起因する欠陥数は除外しカウントしなかった。偏光顕微鏡での観察結果から、以下の評価基準に基づいて垂直配向液晶硬化膜の配向性を評価した。尚、〇及び△を配向性が優れると判断した。
評価基準:
○(非常に良い):配向欠陥数が5個以下である。
△(良い):配向欠陥数が6個以上20個以下である。
×(悪い):配向欠陥数が21個以上であるか、又は全く配向していない。
【0259】
<実施例8>
以下に示す通り垂直配向液晶硬化膜形成用組成物の調製方法を変更した事以外は、実施例1と同様にして垂直配向液晶硬化膜を製造し、ムラと配向性を確認した。結果を表1に示す。尚、二色性式を含むため垂直配向液晶硬化膜の位相差値測定は実施しなかった。また、下記記載の方法にて垂直配向液晶硬化膜の吸光度を則手したところ、λmax=600nm、AxC=0.024、AxC(z=60)=0.175であった。
【0260】
〔垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物の調製〕
液晶化合物(A)および液晶化合物(B)を質量比90:10で混合し、混合物を得た。得られた混合物100質量部に対して、レベリング剤「BYK-361N」(BYK-Chemie社製)0.1質量部、レベリング剤「F-556」(DIC社製)0.25質量部、特開2013-101328に記載の以下に示す二色性色素A1.5質量部、特願2016-514802号公報を参考にして調整したイオン性化合物A(分子量:645)2.0質量部、シランカップリング剤「KBE-9103」(信越化学工業株式会社製)0.5質量部、光重合開始剤として2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア(登録商標)369(Irg369)」)6質量部を添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。この混合物を80℃で1時間攪拌することにより、垂直配向液晶硬化膜形成用重合性液晶組成物を得た。
【0261】
二色性化合物A:
【化41】
【0262】
〔垂直配向液晶硬化膜の吸光度測定〕
前記方法にて作製した垂直配向液晶硬化膜の塗布面を、25μmの感圧式粘着剤(リンテック社製)を介して4×4cm×厚み0.7mmのガラスに貼合し、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製「UV-2450」)にセットして吸光度を測定し、波長400~750nmの吸収極大波長(λmax)、AxCおよびAxC(z=60)を算出した。
なお、x軸は垂直配向液晶硬化膜の面内における任意の方向、y軸は膜面内においてx軸に垂直な方向、z軸は垂直配向液晶硬化膜の厚み方向を意味し、AxCおよびAxC(z=60)は、いずれも前記垂直配向液晶硬化膜の波長400~750nmの吸収極大波長における吸光度であって、AxCは、x軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表し、AxC(z=60)は、y軸を回転軸として前記膜を60°回転させたときのx軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。
【0263】
また、吸光度を測定する際にはサンプルを紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製「UV-2450」)にセットし、800nmの吸光度がゼロとなるように補正した後、AxCを測定した。AxC(z=60)についても、同様にサンプルをセット・傾斜させた後、800nmの吸光度がゼロとなるように補正した後、AxC(z=60)を測定した。
【0264】
<比較例1~4>
垂直配向液晶硬化膜形成用組成物調製時に、添加するレベリング剤を表1に記載の通りBYK-chemie社製の「BYK-361N」、同「BYK-392」、DIC社製の「F-556」へ変更した事、及び添加量を変更した事以外は、実施例1と同様に垂直配向液晶硬化膜を製造し、そのムラ及び配向性を確認した。結果を表1に示す。
【0265】
尚、アクリル系レベリング剤「BYK-392」をGPC(東ソー社製、HLC-8220GPC、溶媒テトラヒドロフラン、検出器:RI)にて分子量を測定したところ、数平均分子量は13100であった。
【0266】
【表1】

なお、表1におけるReは、水平配向膜の面内位相差値又は垂直配向膜の面内位相差値のいずれかを表す。
【0267】
本発明によれば、所定のレベリング剤を使用することにより液晶硬化膜の配向性を阻害することなくムラを改良可能である。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン系レベリング剤を少なくとも1種と、アクリル系レベリング剤を少なくとも1種と、重合性液晶化合物を少なくとも1種とを含み、
シリコン系レベリング剤/アクリル系レベリング剤の重量比が0.01~30であり、
レベリング剤の合計量が重合性液晶化合物の総量に対して3.0質量%以下である液晶硬化膜形成用組成物。
【請求項2】
さらに、二色性色素を含む請求項に記載の液晶硬化膜形成用組成物。
【請求項3】
重合性液晶化合物がスメクチック相を示す重合性液晶化合物である、請求項1または2のいずれかに記載の液晶硬化膜形成用組成物。
【請求項4】
重合性液晶化合物がT字構造を有する液晶化合物である、請求項1~のいずれかに記載の液晶硬化膜形成用組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の液晶硬化膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物が配向した状態で硬化した液晶硬化膜。
【請求項6】
液晶硬化膜の膜厚が0.3μm以上5.0μm以下である、請求項に記載の液晶硬化膜。
【請求項7】
重合性液晶化合物が面内に対して平行な方向に配向した状態で硬化した水平配向液晶硬化膜である、請求項または請求項のいずれかに記載の液晶硬化膜。
【請求項8】
さらに下記式(S1)を満たす請求項5~7のいずれかに記載の液晶硬化膜。
100nm≦ReA(550)≦180nm ・・・(S1)
(式中、ReA(550)は波長550nmにおける面内位相差値を表わす。)
【請求項9】
さらに下記式(S2)を満たす請求項5~8のいずれかに記載の液晶硬化膜。
ReA(450)/ReA(550)<1.0 ・・・(S2)
(式中、ReA(450)は波長450nmにおける面内位相差値を表わす。)
【請求項10】
液晶硬化膜が水平配向液晶硬化膜であって、X線回折測定においてブラッグピークを示す請求項5~9のいずれかに記載の水平配向液晶硬化膜。
【請求項11】
重合性液晶化合物が面内に対して垂直な方向に配向した状態で硬化した垂直配向液晶硬化膜である、請求項または請求項のいずれかに記載の液晶硬化膜。
【請求項12】
さらに下記関係式(S3)を満たす請求項11に記載の液晶硬化膜。
-150≦RthC(550)≦-30・・・(S3)
[関係式(S3)中、RthC(550)は液晶硬化膜の波長550nmにおける厚み方向の位相差値を示す]
【請求項13】
さらに下記関係式(S4)を満たす、請求項11または請求項12のいずれかに記載の液晶硬化膜。
RthC(450)/RthC(550)≦1.0 ・・・(S4)
[関係式(S4)中、RthC(450)は液晶硬化膜の波長450nmにおける厚み方向の位相差値を示し、RthC(550)は液晶硬化膜の波長550nmにおける厚み方向の位相差値を示す]
【請求項14】
水平配向位相差フィルム、及び偏光フィルムを含む楕円偏光板であって、
水平配向位相差フィルムまたは偏光フィルムの少なくとも一つが請求項5~10のいずれかに記載の液晶硬化膜である、楕円偏光板。
【請求項15】
水平配向位相差フィルム、垂直配向液晶硬化膜、及び偏光フィルムを含む楕円偏光板であって、
水平配向フィルム、垂直配向液晶硬化膜、偏光フィルムの内少なくとも一つが請求項5~13のいずれかに記載の液晶硬化膜である、楕円偏光板。
【請求項16】
水平配向位相差フィルムの遅相軸と、偏光板の吸収軸とのなす角が45±5°である、請求項14または請求項15のいずれかに記載の楕円偏光板。
【請求項17】
請求項14~16のいずれかに記載の楕円偏光板を含む、有機EL表示装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0267
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0267】
本発明によれば、所定のレベリング剤を使用することにより液晶硬化膜の配向性を阻害することなくムラを改良可能である。
[1] シリコン系またはフッ素系レベリング剤を少なくとも1種と、アクリル系レベリング剤を少なくとも1種と、重合性液晶化合物を少なくとも1種とを含み、
レベリング剤の合計量が重合性液晶化合物の総量に対して3.0質量%以下である液晶硬化膜形成用組成物。
[2] シリコン系レベリング剤を少なくとも1種と、アクリル系レベリング剤を少なくとも1種、さらに重合性液晶化合物を1種以上含む[1]に記載の液晶硬化膜形成用組成物。
[3] さらに、二色性色素を含む[1]または[2]のいずれかに記載の液晶硬化膜形成用組成物。
[4] 重合性液晶化合物がスメクチック相を示す重合性液晶化合物である、[1]~[3]のいずれかに記載の液晶硬化膜形成用組成物。
[5] 重合性液晶化合物がT字構造を有する液晶化合物である、[1]~[4]のいずれかに記載の液晶硬化膜形成用組成物。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の液晶硬化膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物が配向した状態で硬化した液晶硬化膜。
[7] 液晶硬化膜の膜厚が0.3μm以上5.0μm以下である、[6]に記載の液晶硬化膜。
[8] 重合性液晶化合物が面内に対して平行な方向に配向した状態で硬化した水平配向液晶硬化膜である、[6]または[7]のいずれかに記載の液晶硬化膜。
[9] さらに下記式(S1)を満たす請求項6~8のいずれかに記載の液晶硬化膜。
100nm≦ReA(550)≦180nm ・・・(S1)
(式中、ReA(550)は波長550nmにおける面内位相差値を表わす。)
[10] さらに下記式(S2)を満たす[6]~[9]のいずれかに記載の液晶硬化膜。
ReA(450)/ReA(550)<1.0 ・・・(S2)
(式中、ReA(450)は波長450nmにおける面内位相差値を表わす。)
[11] 液晶硬化膜が水平配向液晶硬化膜であって、X線回折測定においてブラッグピークを示す[6]~[10]のいずれかに記載の水平配向液晶硬化膜。
[12] 重合性液晶化合物が面内に対して垂直な方向に配向した状態で硬化した垂直配向液晶硬化膜である、[6]または[7]のいずれかに記載の液晶硬化膜。
[13] さらに下記関係式(S3)を満たす[12]に記載の液晶硬化膜。
-150≦RthC(550)≦-30・・・(S3)
[関係式(S3)中、RthC(550)は液晶硬化膜の波長550nmにおける厚み方向の位相差値を示す]
[14] さらに下記関係式(S4)を満たす、[12]または[13]のいずれかに記載の液晶硬化膜。
RthC(450)/RthC(550)≦1.0 ・・・(S4)
[関係式(S4)中、RthC(450)は液晶硬化膜の波長450nmにおける厚み方向の位相差値を示し、RthC(550)は液晶硬化膜の波長550nmにおける厚み方向の位相差値を示す]
[15] 水平配向位相差フィルム、及び偏光フィルムを含む楕円偏光板であって、
水平配向フィルムまたは偏光フィルムの少なくとも一つが[6]~[11]のいずれかに記載の液晶硬化膜である、楕円偏光板。
[16] 水平配向位相差フィルム、垂直配向液晶硬化膜、及び偏光フィルムを含む楕円偏光板であって、
水平配向フィルム、垂直配向液晶硬化膜、偏光フィルムの内少なくとも一つが[6]~[14]のいずれかに記載の液晶硬化膜である、楕円偏光板。
[17] 水平配向位相差フィルムの遅相軸と、偏光板の吸収軸とのなす角が45±5°である、[15]または[16]のいずれかに記載の楕円偏光板。
[18] [15]~[17]のいずれかに記載の楕円偏光板を含む、有機EL表示装置。