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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158109
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/53 20060101AFI20231019BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20231019BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
A61F13/53 300
A61F13/533 100
A61F13/511 110
A61F13/53 100
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144311
(22)【出願日】2023-09-06
(62)【分割の表示】P 2019212873の分割
【原出願日】2019-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 瑶介
(72)【発明者】
【氏名】チャテゥラパターノン カナポン
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴史
(72)【発明者】
【氏名】黒田 賢一郎
(57)【要約】
【課題】快適な装着感が実現された吸収性物品(1)を提供することである。
【解決手段】吸収性コア(10)は、粉砕された繊維を有しており、粉砕された繊維には、広葉樹からなる保水性繊維(50L)が含まれており、吸収性コア(10)には、吸収性コア(10)の密度がその周囲の密度よりも高い圧搾部(40)が設けられており、圧搾部(40)は、第1寸法と、第1寸法と直交し第1寸法以上の長さを有する第2寸法と、を有しており、圧搾部(40)の第1寸法の最大値が、広葉樹からなる保水性繊維(50L)の平均繊維長よりも、大きいことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を有し、
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に設けられた吸収性コアと、を備えた吸収性物品であって、
前記吸収性コアは、粉砕された繊維を有しており、
前記粉砕された繊維には、広葉樹からなる保水性繊維が含まれており、
前記吸収性コアには、前記吸収性コアの密度がその周囲の密度よりも高い圧搾部が設けられており、
前記圧搾部は、第1寸法と、前記第1寸法と直交し前記第1寸法以上の長さを有する第2寸法と、を有しており、
前記圧搾部の前記第1寸法の最大値が、前記広葉樹からなる前記保水性繊維の平均繊維長よりも、大きいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記圧搾部は、前記吸収性コアと、前記吸収性コアの肌側にあるシートと、が一体的に圧搾されたヒンジ部を有していることを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項2に記載の吸収性物品であって、
前記ヒンジ部は、前記トップシートと前記吸収性コアが一体的に圧搾されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、着用者の下着の股下部に前記吸収性物品を固定するためのウイング部を有しており、
前記ヒンジ部は、前記ウイング部が前記幅方向の外側へ延出する前記長手方向における前側の延出開始点と後側の延出開始点との間の領域に、前記長手方向に前記第2寸法を有した中央ヒンジ部を備えており、
前記中央ヒンジ部の前記第1寸法の最大値が、前記広葉樹からなる前記保水性繊維の平均繊維長よりも、大きいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記ヒンジ部は、ベース圧搾部と、前記ベース圧搾部において前記ベース圧搾部よりも高密度に圧搾された高密度圧搾部と、を備えており、
前記高密度圧搾部の前記長手方向における寸法の最大値が、前記広葉樹からなる前記保水性繊維の平均繊維長よりも、大きいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項2~請求項7のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記ヒンジ部の形状が、前記厚さ方向から見たときに波形状であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記圧搾部は、前記吸収性物品の外周縁に沿って圧搾された周縁圧搾部を備えており、 前記周縁圧搾部の前記第1寸法の最大値が、前記広葉樹からなる前記保水性繊維の平均繊維長よりも、大きいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、繊維からなるセカンドシートを備えており、
前記セカンドシートは、前記吸収性コアの肌側面に隣接して設けられており、
前記粉砕された繊維の少なくとも一部が、前記吸収性コアの肌側の表面から突出して、前記セカンドシートの内部まで延出しており、
前記セカンドシートの内部において、前記粉砕された繊維の少なくとも一部が、前記セカンドシートの繊維と接触していることを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアの密度が、0.04g/cm以上0.3g/cm未満であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記圧搾部の密度が、0.2g/cm以上0.8g/cm未満であり、
前記吸収性コアと前記圧搾部の接合部分が引張によって破断する際の最大引張力である引張強度が、0.5N/25mm以上1.0N/25mm未満であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性物品のトルク値が、4mN・m以上10N・m未満であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項12】
請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、繊維からなるセカンドシートを備えており、
前記吸収性コアにおいては、複数の前記粉砕された繊維が互いに絡み合っており、
前記トップシート及び前記セカンドシートの平均繊維間距離が、前記粉砕された繊維の平均繊維間距離よりも大きく、
前記粉砕された繊維の平均繊維間距離が、5μm以上40μm未満であることを特徴とする吸収性物品。
【請求項13】
請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアには、前記吸収性コアの坪量がその周囲の坪量よりも低い低坪量部が設けられており、
前記低坪量部は、前記吸収性コアの表面に窪み形状を形成しており、
前記低坪量部の前記第1寸法の最大値が、前記広葉樹からなる前記保水性繊維の平均繊維長よりも、大きいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項14】
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記バックシートの非肌側には、第1方向に延びるズレ止めが、前記第1方向と直交する第2方向に間隔を置いて複数設けられており、
前記ズレ止めの前記第2方向における前記間隔の最小値が、前記広葉樹からなる前記保水性繊維の平均繊維長よりも、大きいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項15】
請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、前記吸収性コアの外周面を被覆するコアラップシートを有しており、
前記コアラップシートは、前記幅方向に間隔を置いて設けられた前記長手方向に延びるコアラップ接合剤により前記吸収性コアと接合されており、
前記コアラップ接合剤の前記幅方向における前記間隔の最小値が、前記広葉樹からなる前記保水性繊維の平均繊維長よりも、大きいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項16】
請求項1~請求項15に記載の吸収性物品であって、
前記広葉樹からなる保水性繊維の平均繊維幅は15μm以下であり、
前記吸収性コアの単位面積当たりに含まれる前記広葉樹からなる保水性繊維の本数は、300本/mm2以上、2500本/mm2未満であり、
複数の前記広葉樹からなる保水性繊維の間に高吸収性ポリマーを有している、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項17】
請求項1~請求項16に記載の吸収性物品であって、
前記広葉樹からなる保水性繊維の繊維長の標準偏差は0.27以下であり、
前記広葉樹からなる保水性繊維の繊維幅の標準偏差は7.55以下である、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項18】
請求項17に記載の吸収性物品であって、
前記広葉樹からなる保水性繊維の平均繊維長に前記広葉樹からなる保水性繊維の繊維長の標準偏差を加えた値は、前記広葉樹からなる保水性繊維の前記平均繊維長の2倍の値よりも小さく、
前記広葉樹からなる保水性繊維の前記平均繊維長から前記広葉樹からなる保水性繊維の繊維長の前記標準偏差を引いた値は、前記広葉樹からなる保水性繊維の前記平均繊維長の1/2の値よりも大きい、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項19】
請求項1~請求項18に記載の吸収性物品であって、
前記吸収性コアは、複数の熱可塑性繊維を含み、且つ前記吸収性コアを前記厚さ方向に一体的に圧搾する圧搾部を有しており、
前記圧搾部において、前記熱可塑性繊維が互いに融着している、ことを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の一例として、経血等の排泄液を吸収する生理用ナプキンが知られている。このような生理用ナプキンは吸収体(吸収性コア)を備えており、吸収性コアには保水性繊維が含まれている。通常、保水性繊維として、繊維長が長い針葉樹パルプ繊維が用いられている。また、特許文献1には、保水性繊維として、針葉樹パルプ繊維よりも繊維長の短い広葉樹パルプ繊維を用いたものも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004-538024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品には、吸収性能や身体へのフィット性等を高めるために、吸収体に圧搾部が設けられていることが一般的である。そして、一般的に薄型と呼ばれる生理用ナプキンの吸収性コアに、例えば、針葉樹パルプ繊維が保水性繊維として用いられると、吸収体の圧搾部が硬くなりすぎてしまい、着用者が不快感を覚えるおそれがあった。
【0005】
また、特許文献1の吸収性物品では、針葉樹パルプ繊維よりも柔らかい広葉樹パルプ繊維が用いられているが、不織布と同様の製法(エアレイド法)で形成されており、結合材が付与されている。そして、結合材によって剛性が高くなりすぎて、着用者が不快感を覚えるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記のような問題を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、身体に感じる硬さが低減され快適な装着感が実現された吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を有し、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に設けられた吸収性コアと、を備えた吸収性物品であって、前記吸収性コアは、粉砕された繊維を有しており、前記粉砕された繊維には、広葉樹からなる保水性繊維が含まれており、前記吸収性コアには、前記吸収性コアの密度がその周囲の密度よりも高い圧搾部が設けられており、前記圧搾部は、第1寸法と、前記第1寸法と直交し前記第1寸法以上の長さを有する第2寸法と、を有しており、前記圧搾部の前記第1寸法の最大値が、前記広葉樹からなる前記保水性繊維の平均繊維長よりも、大きいことを特徴とする吸収性物品である。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、身体に感じる硬さが低減され快適な装着感が実現された吸収性物品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ナプキン1を厚さ方向の肌側から見た概略平面図である。
図2図1中のA-A矢視で示す概略断面図である。
図3】広葉樹パルプ繊維と針葉樹パルプ繊維の繊維長の分布を示す図である。
図4】吸収体10の製造方法を説明するための図である。
図5】セカンドシート4の繊維と吸収体10の繊維が絡み合う様子を示した説明図である。
図6図1中のB-B矢視で示す圧搾部40の概略断面図である。
図7】圧搾部40の横寸法及び縦寸法を説明するための図である。
図8】広葉樹パルプ50Lと針葉樹パルプ50Nの圧搾部を示した概略断面図である。
図9】広葉樹パルプ50Lの圧搾部の変形を説明するための説明図である。
図10】ナプキン1を厚さ方向の非肌側から見た概略平面図である。
図11】圧搾部40の引張強度の評価方法を説明するための説明図である。
図12】圧搾部40の密度(表1)と引張強度(表2)の評価結果である。
図13】吸収体密度と保水性繊維平均繊維長の評価結果を示す図(表3)である。
図14】繊維の平均繊維間距離Dpを示す図(表4)である。
図15】広葉樹パルプと針葉樹パルプの繊維幅の分布を示す図である。
図16】コアラップシート11を有するナプキン100の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
互いに直交する長手方向、幅方向、及び厚さ方向を有し、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に設けられた吸収性コアと、を備えた吸収性物品であって、前記吸収性コアは、粉砕された繊維を有しており、前記粉砕された繊維には、広葉樹からなる保水性繊維が含まれており、前記吸収性コアには、前記吸収性コアの密度がその周囲の密度よりも高い圧搾部が設けられており、前記圧搾部は、第1寸法と、前記第1寸法と直交し前記第1寸法以上の長さを有する第2寸法と、を有しており、前記圧搾部の前記第1寸法の最大値が、前記広葉樹からなる前記保水性繊維の平均繊維長よりも、大きいことを特徴とする吸収性物品。
【0013】
このような吸収性物品によれば、圧搾部が変形した際に身体に感じる硬さが低減されて快適な装着感が実現された吸収性物品を提供することができる。
【0014】
かかる吸収性物品であって、前記圧搾部は、前記吸収性コアと、前記吸収性コアの肌側にあるシートと、が一体的に圧搾されたヒンジ部を有していることが望ましい。
【0015】
このような吸収性物品によれば、広葉樹の保水性繊維を含んだ吸収性コアはよれやすくなるので、ヒンジ部を設けることにより、吸収性コアのよれを抑制することができる。
【0016】
かかる吸収性物品であって、前記ヒンジ部は、前記トップシートと前記吸収性コアが一体的に圧搾されていることが望ましい。
【0017】
このような吸収性物品によれば、トップシートと吸収性コアの距離を近づけることで吸収体への液移行性を向上させつつ、よれを抑制することができる。
【0018】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性物品は、着用者の下着の股下部に前記吸収性物品を固定するためのウイング部を有しており、前記ヒンジ部は、前記ウイング部が前記幅方向の外側へ延出する前記長手方向における前側の延出開始点と後側の延出開始点との間の領域に、前記長手方向に前記第2寸法を有した中央ヒンジ部を備えており、前記中央ヒンジ部の前記第1寸法の最大値が、前記広葉樹からなる前記保水性繊維の平均繊維長よりも、大きいことが望ましい。
【0019】
このような吸収性物品によれば、中央ヒンジ部において、圧搾部が変形した際に身体に感じる硬さが低減されて快適な装着感が実現された吸収性物品を提供することができる。
【0020】
かかる吸収性物品であって、前記ヒンジ部は、ベース圧搾部と、前記ベース圧搾部において前記ベース圧搾部よりも高密度に圧搾された高密度圧搾部と、を備えており、前記高密度圧搾部の前記長手方向における寸法の最大値が、前記広葉樹からなる前記保水性繊維の平均繊維長よりも、大きいことが望ましい。
【0021】
このような吸収性物品によれば、高密度圧搾部において、ヒンジ部を長手方向に変形しやすくすることができる。
【0022】
かかる吸収性物品であって、前記ヒンジ部の形状が、前記厚さ方向から見たときに波形状であることが望ましい。
【0023】
このような吸収性物品によれば、直線形状に比べて、波形状は力が1点に集中しにくいので、吸収性物品の型崩れを抑制することができる。
【0024】
かかる吸収性物品であって、前記圧搾部は、前記吸収性物品の外周縁に沿って圧搾された周縁圧搾部を備えており、前記周縁圧搾部の前記第1寸法の最大値が、前記広葉樹からなる前記保水性繊維の平均繊維長よりも、大きいことが望ましい。
【0025】
このような吸収性物品によれば、周縁部に吸収体が含まれていても、剛性を低下させることができるため、周縁部の変形(折り癖)を抑制することができる。
【0026】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性物品は、繊維からなるセカンドシートを備えており、前記セカンドシートは、前記吸収性コアの肌側面に隣接して設けられており、前記粉砕された繊維の少なくとも一部が、前記吸収性コアの肌側の表面から突出して、前記セカンドシートの内部まで延出しており、前記セカンドシートの内部において、前記粉砕された繊維の少なくとも一部が、前記セカンドシートの繊維と接触していることが望ましい。
【0027】
このような吸収性物品によれば、経血等が互いの繊維を伝って吸収性コアの内部に入りやすくなり、液吸収速度を高めることができる。
【0028】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性コアの密度が、0.04g/cm以上0.3g/cm未満であることが望ましい。
【0029】
このような吸収性物品によれば、違和感の少ない快適な着用が実現された吸収性物品を提供することができる。
【0030】
かかる吸収性物品であって、前記圧搾部の密度が、0.2g/cm以上0.8g/cm未満であり、前記吸収性コアと前記圧搾部の接合部分が引張によって破断する際の最大引張力である引張強度が、0.5N/25mm以上1.0N/25mm未満であることが望ましい。
【0031】
このような吸収性物品によれば、違和感の少ない快適な着用が実現された吸収性物品を提供することができる。
【0032】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性物品のトルク値が、4mN・m以上10N・m未満であることが望ましい。
【0033】
このような吸収性物品によれば、違和感の少ない快適な着用が実現された吸収性物品を提供することができる。
【0034】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性物品は、繊維からなるセカンドシートを備えており、前記吸収性コアにおいては、複数の前記粉砕された繊維が互いに絡み合っており、前記トップシート及び前記セカンドシートの平均繊維間距離が、前記粉砕された繊維の平均繊維間距離よりも大きく、前記粉砕された繊維の平均繊維間距離が、5μm以上40μm未満であることが望ましい。
【0035】
このような吸収性物品によれば、排泄液が速やかに吸収性コアまで到達し、毛細管効果が作用しやすく、吸収性が良い吸収性物品を提供することができる。
【0036】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性コアには、前記吸収性コアの坪量がその周囲の坪量よりも低い低坪量部が設けられており、前記低坪量部は、前記吸収性コアの表面に窪み形状を形成しており、前記低坪量部の前記第1寸法の最大値が、前記広葉樹からなる前記保水性繊維の平均繊維長よりも、大きいことが望ましい。
【0037】
このような吸収性物品によれば、違和感が低減されて快適な装着感が実現された吸収性物品を提供することができる。
【0038】
かかる吸収性物品であって、前記バックシートの非肌側には、第1方向に延びるズレ止めが、前記第1方向と直交する第2方向に間隔を置いて複数設けられており、前記ズレ止めの前記第2方向における前記間隔の最小値が、前記広葉樹からなる前記保水性繊維の平均繊維長よりも、大きいことが望ましい。
【0039】
このような吸収性物品によれば、吸収性コアがズレ止めの間で曲がり易くなるので、吸収性物品が身体の動きと連動しやすくフィット性が向上する。
【0040】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性物品は、前記吸収性コアの外周面を被覆するコアラップシートを有しており、前記コアラップシートは、前記幅方向に間隔を置いて設けられた前記長手方向に延びるコアラップ接合剤により前記吸収性コアと接合されており、前記コアラップ接合剤の前記幅方向における前記間隔の最小値が、前記広葉樹からなる前記保水性繊維の平均繊維長よりも、大きいことが望ましい。
【0041】
このような吸収性物品によれば、コアラップ接合剤が塗布されていない部分が変形しやすくなるので、吸収性コアの型崩れ防止と追従性が両立した吸収性物品を提供することができる。
【0042】
かかる吸収性物品であって、前記広葉樹からなる保水性繊維の平均繊維幅は15μm以下であり、前記吸収性コアの単位面積当たりに含まれる前記広葉樹からなる保水性繊維の本数は、300本/mm2以上、2500本/mm2未満であり、複数の前記広葉樹からなる保水性繊維の間に高吸収性ポリマーを有していることが望ましい。
【0043】
このような吸収性物品によれば、広葉樹パルプに含まれた排泄液は広葉樹パルプの間にある高吸収性ポリマーに引き込まれやすいので、複数回の排泄液の吸収においても液戻りを低減することができる。
【0044】
かかる吸収性物品であって、前記広葉樹からなる保水性繊維の繊維長の標準偏差は0.27以下であり、前記広葉樹からなる保水性繊維の繊維幅の標準偏差は7.55以下であることが望ましい。
【0045】
このような吸収性物品によれば、吸収体において均一な繊維密度を保持しやすいので、平面方向において偏りが少なく同心円状に拡散しやすくなる。
【0046】
かかる吸収性物品であって、前記広葉樹からなる保水性繊維の平均繊維長に前記広葉樹からなる保水性繊維の繊維長の標準偏差を加えた値は、前記広葉樹からなる保水性繊維の前記平均繊維長の2倍の値よりも小さく、前記広葉樹からなる保水性繊維の前記平均繊維長から前記広葉樹からなる保水性繊維の繊維長の前記標準偏差を引いた値は、前記広葉樹からなる保水性繊維の前記平均繊維長の1/2の値よりも大きいことが望ましい。
【0047】
このような吸収性物品によれば、吸収体において均一な繊維密度を保持しやすいので、平面方向において偏りが少なく同心円状に拡散しやすくなる。
【0048】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性コアは、複数の熱可塑性繊維を含み、且つ前記吸収性コアを前記厚さ方向に一体的に圧搾する圧搾部を有しており、前記圧搾部において、前記熱可塑性繊維が互いに融着していることが望ましい。
【0049】
このような吸収性物品によれば、着用者が身体を大きく動かした場合であっても、吸収体10が型崩れを生じたり吸水性が悪化したりすることを抑制しやすくすることができる。
【0050】
===実施形態===
<<生理用ナプキンの基本的構成>>
本実施形態に係る吸収性物品の一例として生理用ナプキン1(以下、単にナプキン1とも呼ぶ)について説明する。なお、以下の説明では吸収性物品の例として生理用ナプキンについて説明するが、本実施形態の吸収性物品には、所謂おりものシート(例えばパンティライナー)、軽失禁パッド、尿取りパッド 等も含まれており、生理用ナプキンに限定されるものではない。
【0051】
図1は、ナプキン1を厚さ方向の肌側から見た概略平面図である。図2は、図1中のA-A矢視で示す概略断面図である。また、以下の説明では、図1図2に示すように、各方向を定義する。すなわち、ナプキン1の製品長手方向に沿った「長手方向」と、ナプキン1の製品短手方向に沿って長手方向と直交する「幅方向」と、長手方向及び幅方向とそれぞれ直交する「厚さ方向」と、を定義する。長手方向のうち、ナプキン1の使用時において着用者の腹側となる方向を「前側」とし、着用者の背側となる方向を「後側」とする。厚さ方向のうち、ナプキン1の着用時に着用者の肌と当接する側を「肌側(上側)」とし、その逆側を「非肌側(下側)」とする。
【0052】
ナプキン1は、平面視縦長形状のシート状部材であり、一対のサイドシート2と、トップシート3と、セカンドシート4と、吸収体10と、カバーシート6と、バックシート5とが厚さ方向の肌側から非肌側へと順に積層されて形成されている(図2参照)。そして、これら各部材は、それぞれ、厚さ方向に隣接する部材とホットメルト接着剤(HMA)等の接着剤で接合されている。なお、接着剤の塗布パターンとしては、Ωパターンやスパイラルパターン、ストライプパターン等を例示できる。
【0053】
また、ナプキン1は、吸収体10が設けられたナプキン本体部20と、ナプキン本体部20の長手方向中央領域から幅方向の両外側に延出した一対のウイング部30とを有する。このウイング部30が設けられる長手方向中央領域(ウイング域WAともいう。より詳しくは、ウイング部30が幅方向の外側へ延出する長手方向の前側の延出開始点t1と後側の延出開始点t2との間の領域。図1参照)は、ナプキン1の使用時において着用者の排泄口(股下部)と当接する領域である。
【0054】
トップシート3は、ナプキン1の使用時において着用者の肌と当接する部材であり、経血等の液体を厚さ方向の肌側から非肌側に透過させ、吸収体10に移動させる。このため、トップシート3には、エアスルー不織布などの適宜な液透過性の柔軟なシートが用いられる。
【0055】
セカンドシート4は、液透過性の繊維からなるシートであり、トップシート3と同じエアスルー不織布等を例示できる。セカンドシート4は、吸収体10の肌側面上に(肌側面に隣接して)設けられ、経血等の排泄物の逆戻り防止、排泄物の拡散向上、及びクッション性の向上等の役割を果たす。但し、ナプキン1がセカンドシート4を有さなくても良い(例えば、トップシート3が代替してもよい)。
【0056】
カバーシート6は、液透過性のシートであっても液不透過性のシートであっても良く、ティッシュペーパーやSMS(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド)不織布等を例示できる。カバーシート6は吸収体10とバックシート5の間に設けられている。つまり、ナプキン1は、カバーシート6を備えており、カバーシート6は、吸収体10の非肌側に隣接して吸収体10に接合されており、バックシート5は、カバーシートの6非肌側に隣接してカバーシート6に接合されている。但し、ナプキン1がカバーシート6を有さなくても良い(例えば、バックシート5が代替してもよい)。
【0057】
バックシート5は、ナプキン1の使用時においてトップシート3を透過して吸収体10によって吸収された液体が下着等の着衣側(非肌側)に染み出すことを抑制する。バックシート5には、ポリエチレン(PE)の樹脂フィルムなど適宜な液不透過性の柔軟なシートが用いられる。なお、トップシート3及びバックシート5は、平面サイズが吸収体10よりも大きくされている。
【0058】
サイドシート2は、液透過性のシートであっても液不透過性のシートであっても良く、SMS不織布やトップシート3と同じエアスルー不織布等を例示できる。
【0059】
そして、図1及び図2に示されるように、サイドシート2及びトップシート3と、バックシート5との外周縁部同士が接着又は溶着で接合されることにより、これらのシート同士の間に吸収体10が保持されている。また、一対のサイドシート2は、トップシート3の幅方向の両側部から幅方向の外側に延出しており、バックシート5と共に一対のウイング部30を形成している。
【0060】
ナプキン本体部20の厚さ方向における非肌側面(つまりバックシート5の非肌側面)には、長手方向に沿った複数の帯状の領域に適宜な接着剤(例えばホットメルト接着剤)を塗布することにより形成された本体部用粘着部21(ズレ止めに相当)が設けられている(図2図10参照)。つまり、バックシート5の非肌側には、長手方向に延びるズレ止めが、幅方向に間隔を置いて複数設けられている。ナプキン1の使用時に本体部用粘着部21は下着等の肌側面に貼り付けられ、これによりナプキン1は下着等に固定される。
【0061】
同様に各ウイング部30の厚さ方向における非肌側面(つまりバックシート5の非肌側面)には、ウイング部用粘着部31が設けられている(図2参照)。ナプキン1の使用時にウイング部30は非肌側に折り曲げられ、ウイング部用粘着部31は下着等の非肌側面に貼り付けられ、これによりナプキン1は下着等に固定される。つまり、ウイング部30は、着用者の下着の股下部にナプキン1を固定するための部位である。
【0062】
吸収体10(吸収性コアに相当)は、長手方向に沿って長い縦長の部材であり、経血等の液体(排泄物)を吸収して内部に保持する。吸収体10の詳細については後述する。セカンドシート4、吸収体10、カバーシート6は、平面形状が同じであり、厚さ方向に積層されている。なお、本実施形態ではこれらの各部材がホットメルト接着剤(HMA)によって互いに接合されているが、接合されていなくても良い。
【0063】
また、ナプキン1には、圧搾部40(凹部)が複数設けられている(図1参照)。圧搾部40は、厚さ方向の肌側から非肌側に向かって凹んだ部位であり、吸収体10の密度がその周辺の密度よりも高い部位である。圧搾部40の詳細については後述する。
【0064】
<<吸収体10について>>
吸収体10は、液体を吸収する保水性繊維を有し、平面視縦長形状に成形されている。また、吸収体10に保水性繊維以外の素材(例えば、熱可塑性樹脂繊維)が含まれても良い。保水性繊維と熱可塑性樹脂繊維とを有する場合、吸収体10は、これらの繊維同士が互いに混合した状態で形成される。
【0065】
保水性繊維としては、パルプ、例えば、針葉樹(例えば、サザンイエローパイン)又は広葉樹(例えば、ユーカリ)を原料として得られる木材パルプ、バガス、ケナフ、竹、麻、綿(例えば、コットンリンター)等の非木材パルプ;レーヨン繊維等の再生セルロース繊維;アセテート繊維等の半合成繊維等が挙げられる。通常、保水性繊維として繊維長が長い針葉樹パルプが用いられることが多い。
【0066】
図3は広葉樹パルプ繊維(以下、広葉樹パルプともいう。広葉樹からなる保水性繊維に相当)と針葉樹パルプ繊維(以下、針葉樹パルプともいう)の繊維長の分布を示す図である。横軸は繊維長(mm)を示し、縦軸は頻度(%)を示している。図に示すように、針葉樹パルプの平均繊維長は2.5mmであり、繊維長の分布幅が広い(3mm以上の繊維が含まれる。標準偏差は1.6)。これに対し、広葉樹パルプの平均繊維長は0.79mmであり、繊維長の分布幅が狭い(標準偏差は0.27)。なお、平均繊維長の定義、測定方法等については後述する。このように、広葉樹パルプは、針葉樹パルプと比べて繊維長が短い。本実施形態のナプキン1では、吸収体10に広葉樹パルプを用いている。これにより、保水性繊維の平均繊維長が短くなっている(図13参照)。
【0067】
また、吸収体10の密度は0.04g/cm以上0.3g/cm未満である(後述)。これにより、体液を滞りなく拡散させることができ、吸収性を確保することができる。
【0068】
熱可塑性樹脂繊維としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を素材とする単独繊維や、PPとPEとを重合してなる繊維、又は、PPとPEとからなる芯鞘構造の複合繊維等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂繊維では捲縮の程度を調整することが可能である。例えば、熱可塑性樹脂繊維として、融点の異なる2つの合成繊維成分からなる芯鞘型、偏心型の複合繊維を用いることで繊維を捲縮させることができる。
【0069】
本実施形態では、熱可塑性樹脂繊維の平均繊維長は30mm程度である。また、熱可塑性樹脂繊維の単位長さ当たりの平均捲縮数を、保水性繊維の単位長さ当たりの平均捲縮数よりも少なくなるように定めている。これにより、熱可塑性樹脂繊維と保水性繊維との交絡が少なくなるので、柔らかく仕上げることができる。よって、熱可塑性樹脂繊維を含む場合においても、装着感を向上でき、漏れ防止性を高めることができる。
【0070】
なお、平均捲縮数の測定方法としては、例えば、幅方向に複数個の試験片(例えば5cm角の試験片)をサンプリングし、キーエンス製マイクロスコープVH-Z450などを用いて、試験片中の繊維に荷重がかからない状態で、1インチ(2.54cm)当たりの捲縮数を数回測定すればよい。その平均値より捲縮数(単位長さ当たりの平均捲縮数)を算出することができる。
【0071】
また、熱可塑性樹脂繊維に追加する繊維又は代わりの繊維として、保水性繊維であるレーヨン繊維等を用いてもよい。すなわち、吸収体10は、レーヨン繊維及び合成繊維(熱可塑性樹脂繊維)の少なくとも一方を有する。そうすると、吸収性コアの剛性が向上するので、吸収性コアの型崩れが抑制され、フィット性の低下を抑制することができる。また、レーヨン繊維を用いると吸収体10の吸収性をさらに高めることができる。
【0072】
また、吸収体10が上記以外の繊維を含んでいても良く、例えばセルロース等の天然繊維等を含んでいても良い。
【0073】
また、高吸収性ポリマー(所謂SAP)等の液体吸収性粒状物を加えても良い。
【0074】
吸収体10の製造方法としては、粉砕パルプや高吸収性ポリマー等を集積させる方法が知られている。
【0075】
図4は、吸収体10の製造方法を説明するための図である。なお、ここでは、吸収体10として、保水性繊維と熱可塑性樹脂繊維と高吸収性ポリマー(SAP)を含むものを製造する場合について説明する。
【0076】
回転ドラム70は、中空円筒形のドラムであり、周面には吸収体材料を詰める型として、複数の凹部71が所定のピッチで形成されている。回転ドラム70が回転して凹部71が材料供給部80へ進入すると、吸引部72の吸引により、材料供給部80から供給された吸収体材料が、凹部71に堆積(集積)する。
【0077】
フード80a付きの材料供給部80は、回転ドラム70の上部を覆うように形成されており、材料供給部80は、パルプシートを粉砕機(不図示)で粉砕した粉砕パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプであり、粉砕された繊維に相当)と熱可塑性樹脂との混合物を空気搬送により凹部71に供給する。また、材料供給部80は、高吸水性ポリマー粒子を供給する粒子供給部81を備えており、凹部71に対して高吸水性ポリマー粒子を供給する。吸水性繊維と熱可塑性樹脂繊維との混合物及び高吸水性ポリマー粒子は、混合状態で凹部71に堆積され、凹部71に吸収体10が形成される。
【0078】
回転ドラム70の更なる回転により、吸収体10を収容した凹部71がドラムの最下部に到達すると、吸収体10が凹部71から外れ、コンベアにて搬送される基材(カバーシート6など)の上に配置され、次の工程に引き渡されることになる。
【0079】
なお、以後の工程において、例えば、セカンドシート4と吸収体10をホットメルト接着剤(HMA)等で接合する際に、セカンドシート4を吸収体10へ押し付ける。つまり、吸収体10は、以後の工程において厚さ方向にプレスされるので、厚さ方向の両側端部において中央部よりも繊維密度が高くなる。
【0080】
そうすると、吸収体10の肌側においては、例えば、セカンドシート4を接合するために肌側に塗布されたホットメルト接着剤が吸収体10の中央へ浸透することを抑制することができ、吸収体10を柔らかく仕上げることができる。また、吸収体10の非肌側においては、厚さ方向の中心から非肌側へ毛細管効果が発生して排泄液の拡散性が向上するので、毛細管効果が発生しない場合に比べて、吸収体10の全体を使って排泄液を保持することができる。
【0081】
また、セカンドシート4と吸収体10を厚さ方向にプレスすることにより、吸収体10の保水性繊維がセカンドシート4の繊維と絡み合う。図5は、セカンドシート4の繊維と吸収体10の繊維が絡み合う様子を示した説明図である。なお、後述するが、広葉樹パルプは細いので繊維間に入り込みかかる絡み合いが発生するが、針葉樹パルプは太いので繊維間に入り込みにくくかかる絡み合いが発生しにくい(又は発生しない)。つまり、図5の保水性繊維は広葉樹パルプを表している。
【0082】
図5をみると、セカンドシート4の内部において、セカンドシート4の繊維4f(拡大図に白抜き線で表示)に吸収体10の保水性繊維10f(拡大図に黒線で表示)が接触している。つまり、広葉樹からなる保水性繊維10f(粉砕された繊維)の少なくとも一部が、吸収体10の肌側の表面から突出して、セカンドシート4の内部まで延出しており、セカンドシート4の内部において、広葉樹からなる保水性繊維10f(粉砕された繊維)の少なくとも一部が、セカンドシート4の繊維と接触している。
【0083】
そして、この繊維同士の接触により、排泄液がセカンドシート4の繊維4fから保水性繊維を10f伝って吸収体10の内部に入りやすくなるので、液吸収速度を高めることができる。また、保水性繊維が肌側シートに引っ掛かったような状態となるので、吸収体10のよれを抑制することができ、吸収体10の型崩れを抑制することができる。
【0084】
なお、吸収体10の比較例(後述)として、特許文献1に記載のパルプ繊維や熱可塑性樹脂繊維や紛体などを不織布と同様の製法(エアレイド法)によってシート状に形成したもの(エアレイド)を用いている。エアレイドには結合材が付与されており、かかる結合材を用いることにより、図4の製造方法で製造したものよりも吸収体10の剛性が高くなり、排泄液の液拡散性や液吸収性が低減する。つまり、図4で示す製造方法を用いて吸収体10を製造すると、エアレイド法により製造した吸収体と比べて、剛性が低くて(柔らかくて)液拡散性及び液吸収性が高いものを製造することができる。
【0085】
換言すると、エアレイド法により製造された吸収体は、排泄液の吸収及び拡散が、結合材により阻害されて液吸収性、液拡散性が低減するが、図4で示す製造方法の吸収体10は、粉砕されたパルプ繊維(広葉樹パルプ及び針葉樹パルプ)が絡み合って形成されているので、排泄液がスムーズに吸収及び拡散される(液吸収性及び液拡散性が高い)。
【0086】
また、吸収体10の厚さは、2mm以上10mm以下であることが望ましい。吸収体10の厚さが2mm未満だと薄すぎてよれてしまい、10mmを超えると硬すぎて着用者が違和感を覚えるおそれがある。
【0087】
また、広葉樹パルプは針葉樹パルプよりも細くて繊維間距離が短いので、同密度の条件下で比較した場合、広葉樹パルプの繊維本数密度は、針葉樹パルプの繊維本数密度よりも大きい。なお、繊維本数密度は、単位面積当たりの平均繊維本数に相当し、繊維太さ+平均繊維間距離にて、細密充填構造の場合に単位面積当たりに含まれる繊維の本数を試算した値である。かかる試算値をみると、広葉樹パルプの繊維本数密度は、1182.2本/mmであり、針葉樹パルプの繊維本数密度(200.3本/mm)の約6倍である。
よって、広葉樹パルプを使用すると、針葉樹パルプを使用した場合と比べて高密度化が可能である。
【0088】
繊維本数密度は300本/mm以上2500本/mm未満であることが望ましい。繊維本数密度が300本/mm未満だと吸収体10がすかすかになってしまい、使用中によれてしまい、結果吸収体面積が減少し、漏れやすくなってしまう。繊維本数密度が2500本/mm以上だと吸収体10がかたく仕上がりすぎてしまい、使用中の違和感が増大してしまう。繊維本数密度が300本/mm以上2500本/mm未満であれば、毛細管効果を高めることができ、また、薄膜化及び柔軟化が可能になり、吸収性を高めることができる。
【0089】
また、繊維本数密度は広葉樹パルプが針葉樹パルプよりも大きいことが好ましい。そうすると、吸収体10の柔らかさを維持しつつも、毛細管効果を増やすことができる。
【0090】
また、熱可塑性樹脂繊維を含む吸収体10は、吸収体10を厚さ方向に一体的に圧搾する圧搾部40において、熱可塑性樹脂繊維同士が融着していることが望ましい。つまり、吸収体10は、複数の熱可塑性繊維を含み、且つ吸収体10を厚さ方向に一体的に圧搾する圧搾部40を有しており、圧搾部40において、熱可塑性繊維が互いに融着していることが望ましい。
【0091】
つまり、圧搾部40を形成する際に、熱可塑性繊維同士が互いに融着することにより、トップシート3と吸収体10との一体性が強くなるとともに、吸収体10の形状が安定しやすくなる。これにより、例えばナプキン1を着用した状態で着用者が身体を大きく動かした場合であっても、吸収体10が型崩れを生じたり吸水性が悪化したりすることを抑制しやすくすることができる。
【0092】
なお、吸収体10のうち圧搾部40以外の部分で熱可塑性繊維同士が熱融着していると、当該熱融着が発生している箇所において、吸収体10が硬くなったり、フィルム化して液拡散性が低下したりするといった問題が生じるおそれがある。一方、吸収体10のうち圧搾部40は、圧搾して硬くすることによって吸収体10の変形を即す部位であることから、当該部位において熱可塑性繊維同士が熱融着して硬くなったり、液拡散性が低下したりすることによる影響は小さい。したがって、ナプキン1の圧搾部40において熱可塑性繊維が互いに融着していたとしても問題は生じ難い。
【0093】
<<圧搾部40について>>
次に、圧搾部40について説明する。図1に示すように、本実施形態にかかるナプキン1においては、複数種類の圧搾部40を有している(以下では説明を解り易くするため代表的な圧搾部40を用いて説明する)。ナプキン1のウイング域WAにおいては、円形状に圧搾されている第1圧搾部40a、長手方向に延びる所定の寸法(後述する縦寸法に相当)を有した第2圧搾部40b(中央ヒンジ部に相当)が設けられている。
【0094】
第2圧搾部40bの前側と後側には、幅方向に延びる第3圧搾部40cが設けられている。また、ナプキン1の外周縁には、外周縁に沿ってサイドシート2とバックシート5等が圧搾されている第4圧搾部40d(周縁圧搾部に相当)が設けられている。そして、第2圧搾部40bの幅方向における外側には、厚さ方向に見たときに波形状に圧搾されている第5圧搾部40e(低密度圧搾部に相当)が設けられている。
【0095】
図6は、図1中のB-B矢視で示す圧搾部40の概略断面図である。図6に示すように、第6圧搾部40fは、厚さ方向の両側から中心へ向けて吸収体10のみが圧搾されている。
【0096】
つまり、第1圧搾部40a乃至第6圧搾部40fは、圧搾している部材が異なっており、第1圧搾部40a乃至第3圧搾部40c、及び第5圧搾部40eは、トップシート3、セカンドシート4、及び吸収体10が一体的に圧搾されており(ヒンジ部に相当)、第4圧搾部40dは、サイドシート2とバックシート5等(吸収体10は含まれない)が一体的に圧搾されており、第6圧搾部40fは、吸収体10のみが圧搾されている。
【0097】
すなわち、圧搾部は、吸収体10と、吸収体10の肌側にあるシート(トップシート3及びセカンドシート4)と、が一体的に圧搾されたヒンジ部を有している。広葉樹の保水性繊維は繊維の交絡は、針葉樹の保水性繊維の交絡より少なく、広葉樹の保水性繊維を含んだ吸収体10はよれやすくなるので、ヒンジ部を設ける(吸収体10がトップシート3及びセカンドシート4と一体化する)ことにより、吸収体10のよれを抑制することができる。また、トップシート3と吸収体10が一体的に圧搾されていることにより、トップシート3と吸収体10の距離を近づけることで吸収体10への液移行性を向上させつつ、よれを抑制することができる。
【0098】
なお、圧搾する部材は図6に示すものに限らず、バックシート5から吸収体10までを一体的に圧搾しても良い。また、圧搾部の配置パターンも図1に示すものに限るものではない。
【0099】
また、図1のC拡大図に示すように、ヒンジ部の一部(ここでは一例として第2圧搾部40bを示している)は、圧搾部40の密度が2段階になるように圧搾されている。すなわち、ヒンジ部は、ベース圧搾部Lpと、ベース圧搾部Lpにおいてベース圧搾部Lpよりも高密度に圧搾された高密度圧搾部Hpとを備えている。
【0100】
また、図6に示すように、圧搾部40(ヒンジ部)の一部である第5圧搾部40eは、例えば、第2圧搾部40bのベース圧搾部Lpと同じ又はベース圧搾部Lpよりも圧搾された密度が低くなっている(厚さ方向における溝深さが深い)。すなわち、ヒンジ部は、ベース圧搾部Lpと同じ又はベース圧搾部Lpよりも吸収体10が低密度に圧搾された低密度圧搾部を備えている。
【0101】
また、第5圧搾部40e(低密度圧搾部)が波形状をしていることは既に述べたが、波形状は直線形状に比べて力が1点に集中しにくいので、直線形状の圧搾部に比べてナプキン1の型崩れを抑制することができる(特に、着用者が両脚を前後に激しく動かすような状況(スポーツをしているような状況))。なお、図1において波形状で示しているヒンジ部は、第5圧搾部40eの低密度圧搾部に限るものではなく、例えば、ベース圧搾部Lp程度の圧搾密度であってもよい。つまり、ヒンジ部の形状が、前記厚さ方向から見たときに波形状であれば、同じ作用効果が得られる。
【0102】
<圧搾部の横寸法及び縦寸法について>
次に、圧搾部40の横寸及(第1寸法に相当)及び縦寸法(第2寸法に相当)について説明する。図7は、圧搾部の横寸法及び縦寸法を説明するための説明図であり、上図は第2圧搾部40b、中央図は前側の第3圧搾部40c、下図は第1圧搾部40aと一例として三角形状の圧搾部をそれぞれ示している。そして、図7においては、横寸法を実線の矢印で、縦寸法を破線の矢印で表している。
【0103】
第2圧搾部40bが長手方向に延びていることは既に述べたが、その延びているより正確な方向は、図7上図に示す破線の方向である。つまり、第2圧搾部40bは、長手方向に曲線状に延びており、かかる曲線状の寸法(第2圧搾部40bを直線状にした際の寸法)が第2圧搾部40bの縦寸法である。そして、縦寸法(縦寸法の接線)と直交する寸法が第2圧搾部40bの横寸法である。つまり、第2圧搾部40bは、複数の横寸法を有しており、図7上図に示す横寸法(実線矢印)は、第2圧搾部40bの横寸法における最大値である(図7においては以下同様とする)。
【0104】
第3圧搾部40cについてその延びている方向を見てみると、例えば、図7中央図に示すように、紙面の左斜め上方向及び右斜め上方向に曲線状に延びる第3圧搾部上側40caと、紙面の上方向に突出した幅方向に曲線状に延びる第3圧搾部下側40cbと、の2つの圧搾部に分解することができる。すなわち、第3圧搾部40cは、複数の圧搾部が組み合わされて構成された1つの圧搾部と言える。そして、第3圧搾部40cのような複数の圧搾部から構成される圧搾部は、分解した圧搾部の各々がそれぞれの縦寸法と横寸法を有している。
【0105】
つまり、第3圧搾部上側40caは、紙面の左斜め上方向に曲線状に延びる縦寸法と、かかる縦寸法と直交する横寸法、及び、紙面の右斜め上方向に曲線状に延びる縦寸法と、かかる縦寸法と直交する横寸法を有し、第3圧搾部下側40cbは、紙面の上方向に突出した幅方向に曲線状に延びる縦寸法と、かかる縦寸法と直交する横寸法を有している。
【0106】
なお、第2圧搾部40bと第3圧搾部40cは、どちらとも曲線状に延びる圧搾部40であったが、これに限るものではなく、例えば、直線状に延びていても良いし、直線状と曲線状に延びる圧搾部が組み合わされて1つの圧搾部を構成していてもよい。
【0107】
次に、図7下図に示す円形状の第1圧搾部40aや三角形状の圧搾部のような、圧搾部がどちらの方向にも延びていない又は延びている方向が不明瞭(横寸法に対して縦寸法が十分に大きくなく延びている方向が不明瞭)な圧搾部(以下、ドット状圧搾部ともいう)における横寸法と縦寸法を説明する。
【0108】
ドット状圧搾部においては、或る平面方向(長手方向と幅方向の成分で表される方向)に沿ったドット状圧搾部を跨ぐ直線を引いたときに、ドット状圧延部の外縁と直線との交点間距離が最大となる寸法を、かかるドット状圧搾部の或る平面方向における跨ぎ寸法とする。つまり、例えば、図7下図において、或る平面方向として、紙面の上下方向に沿った直線の引いた場合、第1圧搾部40aでは円の中心を通過する直線(破線矢印で示す直線)、三角形状では三角形の垂線(実線矢印で示す直線)がそれぞれのドット状圧搾部の上下方向における跨ぎ寸法となる。
【0109】
そして、ドット状圧搾部の跨ぎ寸法を平面方向の全方向で見たときに、跨ぎ寸法が最も短くなる寸法が横寸法である。つまり、ドット状圧搾部の横寸法は、ドット状圧搾部の跨ぎ寸法のうちの最も短い跨ぎ寸法である。そうすると、第1圧搾部40aでは円の中心を通る全方向の直線(直径)が同じ長さとなり、全ての跨ぎ寸法が最も短い跨ぎ寸法と言える。図7下図の第1圧搾部40aでは、説明を解り易くするため、紙面の左右方向を横寸法とした。また、三角形状の圧搾部では最も内角が大きい頂点からの垂線が最も短い跨ぎ寸法(横寸法)となる。図7下図では、紙面の上下方向の跨ぎ寸法となる。そして、ドット状圧搾部における縦寸法は、横寸法と直交する寸法である。つまり、第1圧搾部40aでは紙面の上下方向の跨ぎ寸法が縦寸法であり、三角形状の圧搾部では紙面の左右方向の跨ぎ寸法が縦寸法である。
【0110】
また、圧搾部40の横寸法と縦寸法の長さの関係を見てみると、円形状の第1圧搾部40aにおいては、横寸法と縦寸法の長さが同じであり、その他の圧搾部40においては、縦寸法が横寸法よりも長い。つまり、圧搾部40は、横寸法(第1寸法)と、横寸法(第1寸法)と直交し横寸法(第1寸法)以上の長さを有する縦寸法(第2寸法)と、を有している。
【0111】
<<保水性繊維の平均繊維長について>>
次に、保水性繊維の平均繊維長について、圧搾部40及び本体部用粘着部21との関係を説明する。先に圧搾部40との関係について説明し、その後に本体部用粘着部21との関係を説明する。上述したように、吸収体10には、保水性繊維として一般的な針葉樹パルプと平均繊維長が短くて柔らかい広葉樹パルプが用いられている。そして、図3に示すように、それぞれの平均繊維長は、広葉樹パルプが0.79mmであり、針葉樹パルプが2.5mmである。
【0112】
そして、本実施形態に係る圧搾部40の横寸法(第1寸法)の最大値(1.0~2.0mm程度)は、広葉樹パルプの平均繊維長(0.8mm)よりも大きく、針葉樹パルプの平均繊維長(2.5mm)よりも小さい。
【0113】
なお、本実施形態に係る圧搾部40の寸法とは、平面方向において、圧搾部40が厚さ方向に窪み始める圧搾開始点の間の寸法を意味する。第1圧搾部40aの横寸法を例に挙げると、図6の拡大図に示すように、第1圧搾部40aが窪み始める圧搾開始点La1と圧搾開始点La2の間の横寸法Laである。
【0114】
図8は、広葉樹パルプ50Lと針葉樹パルプ50Nの圧搾部を示した概略断面図であり、図8aが広葉樹パルプ50L(100%)の圧搾部、図8bが針葉樹パルプ50N(100%)の圧搾部、図8cが広葉樹パルプ50L(50%)と針葉樹パルプ50N(50%)が混合された吸収体10の圧搾部を表している。図中の寸法Lは圧搾部の横寸法の最大値(1.0~2.0mm程度)、寸法LLは広葉樹パルプ50Lの平均繊維長0.8mm、寸法LNは針葉樹パルプ50Nの平均繊維長2.5mmをそれぞれ表している。なお、図8においては、左右を用いて説明を解り易くするため、横寸法は幅方向における寸法とする。
【0115】
図8に示すように、広葉樹パルプ50Lか針葉樹パルプ50Nかによって、圧搾部の幅方向における左右の境界EDを跨ぐ保水性繊維の数量が異なる。広葉樹パルプ50Lの場合(図8a)、圧搾部の寸法Lが広葉樹パルプ50Lの繊維長の寸法LLより大きいので、厚さ方向に圧搾部と広葉樹パルプ50Lが重複した場合、圧搾部の境界EDにおいて繊維の跨ぎが生じたり生じなかったりする。例えば、図8aでは左上境界部P1及び左下境界部P2の2箇所で保水性繊維の跨ぎが生じる。一方、針葉樹パルプ50Nの場合(図8b)、圧搾部の寸法Lが針葉樹パルプ50Nの繊維長の寸法LNより小さいので、厚さ方向に圧搾部と針葉樹パルプ50Nが重複した場合、圧搾部の境界EDにおいて繊維の跨ぎが生ずる。例えば、図8bのように左右どちらの境界EDでも保水性繊維の跨ぎが生じ、10箇所ほどで保水性繊維の跨ぎが生じる。そして、圧搾部の境界EDで保水性繊維の跨ぎが生じると、跨ぎが生じない場合に比べて、圧搾部の境界EDが硬くなる。
【0116】
本実施形態にかかる吸収体10のように圧搾部40の横寸法の最大値以下の平均繊維長を有する広葉樹パルプ50Lを含む場合は、一般的な針葉樹パルプ50Nのみの保水性繊維と比較して、あるいは、圧搾部40の横寸法の最大値より大きい平均繊維長を有する広葉樹パルプ50Lを含む場合と比較して、保水性繊維の跨ぎが少なくなる効果がある。例えば、図8cでは、保水性繊維の跨ぎが生じる箇所が6カ所となり、図8bに示す針葉樹パルプ50N(100%)の10箇所よりも少なくなる。つまり、圧搾部40の横寸法の最大値以下の平均繊維長を有する広葉樹パルプ50Nを含む保水性繊維(図8a、図8c)においては、圧搾部の境界EDの硬い部分が少なくなり、着用者が硬く感じる部分が少なくなるので、快適な装着感を実現することができる。
【0117】
また、圧搾部の境界EDで保水性繊維の跨ぎが生じると、跨ぎが生じない場合に比べて、圧搾部の境界EDが変形しにくくなる。図9は、広葉樹パルプ50Lの圧搾部の変形を説明するための説明図であって、左図は圧搾部の左側境界部が内側へ変形した際の説明図であり、中央図は圧搾部の右側境界部が内側へ変形した際の説明図であり、右図は、圧搾部が広葉樹パルプ50Lの端部50Leを起点として変形した際の説明図である。
【0118】
図9の左図と中央図を比べると、左図の変形の際には、左上境界部P1を跨いている広葉樹パルプ50Lと左下境界部P2を跨いでいる広葉樹パルプ50Lを変形させる必要があるのに対し、中央図の変形の際には、右上境界部P3及び右下境界部P4を跨いでいる広葉樹パルプ50Lが無いので、左図に比べて変形しやすい。
【0119】
また、保水性繊維の平均繊維長が短くなると、保水性繊維の跨ぎが少なくなり図9の右図に示すような保水性繊維の端部50Leを起点とした変形が多く生じる。つまり、吸収体10において、針葉樹パルプ50Nよりも広葉樹パルプ50Lのほうが、端部50Leを起点とするような変形が多く生じる。
【0120】
そして、着用者は、中央図に示すように圧搾部が変形しやすく、右図に示すように圧搾部の変形が多く生じる吸収性物品の方が、左図に示すように左上境界部P1が硬く、変形しにくい吸収性物品よりも、快適な装着感を得ることができる。
【0121】
すなわち、広葉樹パルプ50Lを含んだ吸収体10の場合、上述したように圧搾部における保水性繊維の跨ぎが少なくなる効果があるので、平均繊維長が長い針葉樹パルプ50Nのみで構成された一般的な吸収体に比べて、圧搾部40と非圧搾部(吸収体10)の境界ED(圧搾部40の端)を跨ぐ保水性繊維を低減させることができ、圧搾部40が変形した際に身体に感じる硬さが低減されて快適な装着感が実現されたナプキン1を提供することができる。
【0122】
また、第2圧搾部40bの横寸法Lb(ベース圧搾部Lp部の寸法)の最大値(約2.0mm)と広葉樹パルプ50Lの平均繊維長LLを比べると、第2圧搾部40b(中央ヒンジ部)の横寸法Lb(第1寸法)の最大値が、広葉樹パルプの平均繊維長LLよりも大きい。
【0123】
したがって、第2圧搾部40b(中央ヒンジ部)において、圧搾部40と非圧搾部(吸収体10)の境界EDを跨ぐ保水性繊維を低減させることができるので、圧搾部40が変形した際に身体に感じる硬さが低減されて快適な装着感が実現されたナプキン1を提供することができる。さらに、広葉樹は繊維幅が細いため、跨いでいる繊維が針葉樹と比べて曲がりやすい。これにより快適な装着感がさらに実現されるといえる。
【0124】
なお、上記では図6の拡大図に示すように、第1圧搾部40aが窪み始める圧搾開始点La1と圧搾開始点La2の間の横寸法Laとしたが、図8aに示す圧搾部の左下境界部部P2及び右下境界部P4の底部が曲がり始める圧搾開始点の間の寸法としてもよい。この場合、左下境界部P2及び右下境界部P4がさらに曲がりやすくなるので、圧搾部が変形した際に身体に感じる硬さ低減されて快適な装着感が実現されたナプキン1を提供することができる。
【0125】
また、図1の拡大図Cに示す高密度圧搾部Hpの長手方向における寸法Wの最大値(約1.0mm)と広葉樹パルプ50Lの平均繊維長LLを比べると、高密度圧搾部Hpの長手方向における寸法Wの最大値が、広葉樹パルプの平均繊維長LLよりも大きい。
【0126】
したがって、高密度圧搾部Hpにおいて、高密度圧搾部Hpと低圧搾部(ベース圧搾部Lp)の境界EDを跨ぐ保水性繊維を低減させることができるので、ヒンジ部を長手方向に変形しやすくすることができる。つまり、着用者の身体の丸みに対して、ヒンジ部が追従しやすくなるので、身体にフィットしやすくなる。 また、排泄液の平面方向への拡散よりも厚さ方向に液を引き込みやすくなるので、モレを軽減する事ができる(圧搾部を繊維が跨ぐことによって、一度吸収した排泄液が繊維を伝って逆移動しやすくなり、排泄液の引き込み性が悪くなる)。
【0127】
また、第5圧搾部40eの横寸法Leの最大値(約1.0mm)と広葉樹パルプ50Lの平均繊維長LLを比べると、第5圧搾部40e(低密度圧搾部)の横寸法Leの最大値が、広葉樹パルプの平均繊維長LLよりも大きい。
【0128】
したがって、第5圧搾部40e(低密度圧搾部)において、圧搾部40と非圧搾部(吸収体10)の境界EDを跨ぐ保水性繊維を低減させることができるので、圧搾部40が変形した際に身体に感じる硬さが低減されて快適な装着感が実現されたナプキン1を提供することができる。
【0129】
また、第1圧搾部40a(円形状圧搾部)の横寸法Laの最大値(約1.0mm)と広葉樹パルプ50Lの平均繊維長LLを比べると、第1圧搾部40a(円形状圧搾部)の横寸法Laの最大値が、広葉樹パルプの平均繊維長LLよりも大きい。
【0130】
したがって、第1圧搾部40a(円形状圧搾部)において、圧搾部40と非圧搾部(吸収体10)の境界EDを跨ぐ保水性繊維を低減させることができるので、圧搾部40が変形した際に身体に感じる硬さが低減されて快適な装着感が実現されたナプキン1を提供することができる。
【0131】
また、厚さ方向において、保水性繊維の平均繊維長は、吸収体10の厚さよりは短く、高密度圧搾部Hpの厚さ(高密度圧搾部Hpの底面から吸収体10の非肌側の面までの距離)よりは長い。そうすると、高密度圧搾部Hpの非肌側において、広葉樹パルプが平面方向に沿うように位置するので、厚さ方向に柔軟性を有することができる(広葉樹パルプが立って(厚さ方向に沿うように)位置していると、高密度圧搾部Hpを押さえ付けた際(例えば、着用の際)に高密度圧搾部Hpを支えるように広葉樹パルプが機能して柔軟性を損ねる)。すなわち、かかる吸収体10によると、さらに違和感が低減されたナプキン1を提供することができる。
【0132】
次に、保水性繊維の平均繊維長と本体部用粘着部21の関係を説明する。図10は、ナプキン1を厚さ方向の非肌側から見た概略平面図である。図10に示すように、バックシート5の非肌側には、長手方向(第1方向に相当)に延びる本体部用粘着部21が、長手方向(第1方向)に直交する幅方向(第2方向に相当)に間隔21gを置いて複数設けられており、かかる幅方向(第2方向)の間隔21gの最小値は、広葉樹からなる保水性繊維の平均繊維長よりも大きい。
【0133】
そのため、下着から変形する力を受けた場合に、本体部用粘着部21の外縁を跨ぐ保水性繊維を低減することができ、吸収体10が本体部用粘着部21の間で曲がり易くなるので、ナプキン1が身体の動きと連動しやすくフィット性が向上する。
【0134】
なお、図10に示す本体部用粘着部21は、長手方向に延びて、幅方向に間隔21gを置いて複数設けられているが、これに限るものではなく、例えば、幅方向に延びて、長手方向に間隔を置いて設けられていてもよい。
【0135】
===吸収体10の評価について==
吸収体10の繊維の成分や製造方法の異なるサンプルを作製し、圧搾部40の密度、引張強度等の以下の項目について評価を行った。
【0136】
<<圧搾部40の密度、引張強度評価>>
圧搾する条件を変えて圧搾部40の密度と引張強度を評価した。なお、圧搾する条件は、圧搾深さが異なる3種類のエンボスロールにて圧搾部を形成し、各々を圧搾条件1~圧搾条件3とした。
【0137】
サンプルは、広葉樹パルプと針葉樹パルプのサンプルを圧搾条件ごとに5つ用意した。サンプルは、それぞれを重量で直示天秤(例えば、研精工業株式会社製 電子天秤HF-
300)で0.2g準備し、長さ38mm×幅25mmに広げてから同じ形状のトップシート3とセカンドシート4を重ねて、上記条件でそれぞれを一体的に圧搾して測定サンプルとした。そして、以下の方法で測定サンプルの厚さを評価(測定)して、重量(0.2g)を体積(厚さ×サンプル面積)で割って密度を算出した。
【0138】
<厚さ評価方法>
厚さの評価は、液体窒素にて測定サンプルを凍結させ、対象部を横断するように切断し、かかる切断面を株式会社キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX-100(レンズVH-Z20R+可変照明アタッチメントVH-K20)を使用して、測定面積:縦20mm×横20mmにて、測定サンプルの対象部における断面の画像を撮影して測定した。
【0139】
<引張強度評価方法>
図11は、引張強度の評価方法を説明するための説明図であり、左図に通常の圧搾部40の概略断面図、右図に引張試験時の圧搾部40の概略断面図を示している。引張強度試験は、右図に示すように、圧搾部40の左側境界よりも左側のトップシート3とセカンドシート4を吸収体10から取り外し、右側のほうへ折りたたんで行う(製品がコアラップシートを含む場合は、肌側と非肌側のコアラップシートも同様に右側へ折りたたみ、バックシート5も右側へ折りたたむ)。
【0140】
つまり、右図の白抜き矢印に示すように、右側へ折りたたんだトップシート3及びセカンドシート4を右側へ引っ張り、トップシート3とセカンドシート4が取り外された吸収体10を左側へ引っ張る。そして、右図のXに示すように、トップシート3及びセカンドシート4と吸収体10が破断した際の、引張力の最大値を引張強度として測定する。なお、図11において、紙面を貫く方向が幅方向となっており、幅25mm分の圧搾部40の引張強度を評価している(圧搾部40の幅を25mm基準としているので、単位の分母が25mmとなっている)。
【0141】
図12は、圧搾部40の密度(表1)と引張強度(表2)の評価結果である。一般的に圧搾部40の密度は0.2g/cm以上0.8g/cm未満が望ましく、吸収体10と圧搾部40の接合部分(本実施形態ではセカンドシート4との溶着部)が引っ張りによって破断する際の最大引張力である引張強度が、0.5N/25mm以上1.0N/25mm未満であることが望ましい。つまり、圧搾部40の密度が0.2g/cm未満であると強度が不足し破損しやすくなり(よれやすくなり)、0.8g/cm以上だと硬くて着用時に違和感を覚えやすくなる。また、引張強度が0.5N/25mm未満だと強度が不足し破損しやすくなり、1.0N/25mm以上だと硬くて着用時に違和感を覚えやすくなる。
【0142】
図12をみると、圧搾部40の密度が0.2g/cm以上0.8g/cm未満であって、引張強度が0.5N/25mm以上1.0N/25mm未満であるのは、広葉樹パルプの圧搾条件2及び圧搾条件3である。つまり、一般的に用いられる針葉樹パルプの吸収体10においては、繊維交絡が多く引張強度が高いので上記の条件が当てはまらなく、広葉樹パルプを用いる(針葉樹パルプと併用する)ことにより、よれが抑制され着用時の違和感の少ない快適なナプキン1を提供することができる。
【0143】
<<吸収体密度、平均繊維長の評価>>
吸収体密度、平均繊維長を評価した。サンプルの条件については図13参照。
【0144】
実施例としては、吸収体に広葉樹パルプが含まれ、かつ、図4の製造方法で製造された吸収体をサンプルとした。ここでは広葉樹パルプと6~70mmの平均繊維長の熱可塑性樹脂繊維とを所定割合で混合したもの(実施例1、2)、広葉樹パルプと針葉樹パルプとを所定割合で混合したもの(実施例3、4)、及び広葉樹パルプのみのもの(実施例5)を評価した。
【0145】
比較例としては、吸収体に広葉樹パルプが含まれないサンプル(比較例1、2,4)、及び、吸収体がエアレイド法で製造されたサンプル(比較例3、4)とした。なお、比較例3には広葉樹パルプが含まれているが、エアレイド法で製造されているので、吸収体に結合材が付与されている。
【0146】
<吸収体密度評価方法>
実施例及び比較例の各条件の吸収体サンプルとして、長さ10mm×幅40mmのサイズの吸収体サンプルを複数用意し、上述した厚さ評価方法で吸収体サンプル厚さを測定した。また、吸収体サンプル目付(g/cm)として重量を直示天秤(例えば、研精工業株式会社製 電子天秤HF-300)で測定して算出した。そして、吸収体サンプル目付と吸収体サンプル厚さから、吸収体サンプル密度(g/cm)を計算して求めた。なお、サンプル数N=5程度測定し、平均値をサンプル密度とした。また、長さ10mm×幅40mmのサイズが取れない場合には、最大幅、最大面積で採取するとともに、サンプル数Nを倍以上測定する。
【0147】
<繊維長評価方法>
吸収体密度評価と同じ部分で繊維長を測定した。
【0148】
なお、平均繊維長は、中心繊維長(Cont)による測定で長さ加重平均繊維長を意味する。長さ加重平均繊維長は、メッツォオートメーション(metso automation)社製のカヤーニファイバーラボファイバープロパティーズ(オフライン)[kajaaniFiberLab fiber properties(off-line)
]により、L(l)値として測定される。なお、これはJIS P 8226-2(パルプ-工学的自動分析法による繊維長測定方法 非偏光法に準ずる)で推奨されている方法でもある。また、JISの評価法に記載あるように、平均繊維長及び後述する繊維幅は繊維塊を除いて測定された結果である。
【0149】
また、パルプ繊維以外の繊維の平均繊維長は、JIS L 1015:2010の附属書Aの「A7.1 繊維長の測定」の「A7.1.1 A法(標準法)目盛りが付いたガラス板上で個々の繊維の長さを測定する方法」に従って測定する。上記方法は、1981年に発行されたISO 6989に相当する試験方法である。
【0150】
図13は、吸収体密度と保水性繊維平均繊維長の評価結果を示す図(表3)である。吸収体に含まれる保水性繊維の平均繊維長が長いと、上述したように吸収体の圧搾部において、吸収体の剛性が高くなり硬く仕上がってしまう。例えば、一般的に薄型と呼ばれる生理用ナプキンの吸収体に、針葉樹パルプ繊維が保水性繊維として用いられると、吸収体の圧搾部が硬くなりすぎてしまい、着用者が不快感を覚えるおそれがある。
【0151】
これに対し、実施例1~5においては、広葉樹パルプが含まれることにより、保水性繊維平均繊維長が短くなっている。つまり実施例1~5の吸収体を有するナプキンは、身体に感じる硬さが低減され快適な装着感が実現されたナプキンである。
【0152】
比較例1、比較例2、及び比較例4では、広葉樹パルプが用いられていないため、平均繊維長2.5mmと実施例1~5よりも長いので、上述した圧搾部40を跨ぐ保水性繊維が多くなり、圧搾部40が変形した際に着用者が違和感(硬さ)を感じやすくなることは既に述べたが、例えば、吸収体目付を小さくすることで、硬さを低減させることは可能である。ただし、この場合、吸収性が低下してしまうため吸収性物品として機能しなくなるおそれがある。
【0153】
また、比較例3は、広葉樹パルプと針葉樹パルプの比率が実施例3と同じであり、平均繊維長も2mm未満であるが、エアレイドであり結合材が付与されている。結合剤が付与されると、柔らかい広葉樹パルプを用いても吸収体10の剛性が高くなるおそれがある。また、結合材により吸収体10の液拡散性や液吸収性が低減するので、液拡散性や液吸収性を向上させる広葉樹パルプの効果が発現しにくくなる。
【0154】
また、実施例1~5では、吸収体密度が0.04~0.3(g/cm)である。ナプキンにおいては、吸収体密度が0.04g/cm未満だと柔らかすぎて型崩れが発生しやすく、0.3g/cm以上だと硬すぎて肌触りが悪くなる。つまり、吸収体密度が0.04~0.3g/cmであると、型崩れしにくく快適な装着感が実現された液拡散性の高いナプキンを提供することができる。
【0155】
<<平均繊維間距離評価>>
保水性繊維の平均繊維間距離を以下の方法で評価した。
【0156】
測定対象のサンプルに該当する部位を四角形形状に切り出した(厚さ方向に切断した)ものを試料とし、マイクロスコープ(KEYENCE製 VHX-2000、レンズ VH-Z20W絞り開放)の3D画像連結機能を用いて、試料の表面から深度100μmまで焦点が一致している拡大画像(例えば、広葉樹は500倍、針葉樹は100倍の画像)を得て、その拡大画像を基に焦点が一致している繊維の外側を抽出した。そこに形成された面を繊維空間とする。その繊維空間の最大内接円の直径を繊維空間距離とし、繊維空間100カ所分の平均値を平均繊維間距離(Dp)とした。
【0157】
図14は、繊維の平均繊維間距離Dpを示す図である。図において繊維の割合(%)は吸収体10を構成する繊維の重量割合であり、吸収体10がコアラップシートを有する場合はコアラッシートを除く部分の重量割合、コアラップシートが無い場合はそのままの重量割合である。本実施形態においては、コアラップシートを有していない。
【0158】
図14に示すように、広葉樹パルプは、針葉樹パルプよりも平均繊維間距離が小さい(広葉樹100%が18.7μm、針葉樹100%が50.0μm)。また、互いを混合することで広葉樹パルプと針葉樹パルプの間の平均繊維間距離となる(広葉樹50%、針葉樹50%で27.7μm)。
【0159】
また、6~70mmの平均繊維長の熱可塑性樹脂繊維を針葉樹パルプと混合した場合、熱可塑性樹脂繊維が混合されることで平均繊維間距離が小さくなっている(針葉樹と熱可塑性樹脂繊維が混合したものは、32.3μm、36.7μmであり針葉樹100%の50.0μmより小さい)。また、同様の熱可塑性繊維樹脂を広葉樹パルプと混合した場合、熱可塑性樹脂繊維が混合されることにより平均繊維間距離が大きくなっている(広葉樹と熱可塑性樹脂繊維が混合したものは、19.0μm、32.3μm、36.7μmであり広葉樹100%の18.7μmより大きい)。
【0160】
平均繊維間距離Dpは、5μm以上40μm未満であることが望ましい。さらには、トップシート3及びセカンドシート4の平均繊維間距離Dpが、粉砕された繊維の平均繊維間距離よりも大きいことが望ましい(本実施形態においては50μm以上)。トップシート3及びセカンドシート4の平均繊維間距離を大きくすることにより、排泄液が直接的に吸収体10まで到達し、粉砕された繊維の平均繊維間距離が5μm未満であると液体が通過するのに要する時間が長くなってしまい、平均繊維間距離が40μm以上であると毛細管現象が発生しにくく吸収性が低下する。つまり、平均繊維間距離をかかる範囲とすることにより、排泄液が速やかに吸収性コアまで到達し、毛細管効果が作用しやすく、吸収性が良い吸収性物品を提供することができる。
【0161】
<<曲げ剛性評価方法>>
ナプキン1の曲げ剛性を、以下の方法でトルク値を測定することにより評価した。
【0162】
<トルク値測定方法>
ナプキン1の長手方向のトルク値を測定した。測定方法は、日本電産シンポ株式会社製、電動トルク試験機(DSP-10)の機器にチャックサイズ25mm×25mmを上下に取り付け、チャック間距離50mm、右回転の角速度30rpm、回転角度50度、左回転の角速度30rpm、回転角度50度、繰り返し回数1回、右から左回転へ切り替わる際の停止時間3秒、計測角度を45度までとした。
【0163】
サンプルは、複数のサンプル(例えば、圧搾部の形状やサイズが異なる)を作製してサンプルの膣口当接域よりも長手方向の後方で吸収体のある範囲を測定領域として、長手方向の前方の不要領域を切り捨てた。そして、幅方向における中心部が回転の中心となるようにサンプルをチャックに取り付け上記測定方法にて測定を行った。
【0164】
測定結果(トルク値)は、右回転時の最大トルク値とし、サンプル数N=5の平均値とした。そして、ナプキン1のトルク値は、4mN・m以上10N・m未満であることが望ましい。ナプキン1のトルク値が4mN・m未満であると曲げ剛性が不足しよれやすくなり、10mN・m以上だと曲げ剛性が高くて着用時に違和感を覚えやすくなる。つまり、よれが抑制され違和感の少ない快適な着用が実現されたナプキン1を提供することができる。
【0165】
<<保水性繊維の平均繊維幅について>>
次に、保水性繊維の平均繊維幅について説明する。なお、測定は、上記した平均繊維長と同様の方法で行い、FiberWidthとして測定される。
【0166】
図15は、広葉樹パルプと針葉樹パルプの平均繊維幅の分布を示した図である。横軸は繊維幅(μm)を示し、縦軸は頻度(%)を示している。図15に示すように、針葉樹パルプの平均繊維幅は30μmm程度であり(上図)、繊維幅の分布幅が広い(標準偏差は11.9)。これに対し、広葉樹パルプの平均繊維幅は15μm程度であり(下図)、繊維幅の分布幅が狭い(標準偏差は7.55)。本実施形態のナプキン1では、吸収体10に広葉樹パルプを用いていることにより、針葉樹パルプのみを用いている場合と比較して、保水性繊維の平均繊維幅が短くなっている。
【0167】
そして、広葉樹パルプの平均繊維幅が15μm以下であって、上述したように繊維本数密度が300本/mm以上2500本/mm未満であって、広葉樹パルプの間に高吸収性ポリマーを有するのが望ましい。そうすると、繊維が短く、繊維が細いため、絶対的な繊維面積が小さいから繊維が交絡しにくく、かつ、繊維幅が短いという特徴がある広葉樹パルプが密集するので、繊維に排泄液が含まれやすくなり、広葉樹パルプに含まれた排泄液は広葉樹パルプの間にある高吸収性ポリマーに引き込まれやすいので、複数回の排泄液の吸収においても液戻りを低減することができる。
【0168】
また、分布幅を見てみると、広葉樹パルプは、針葉樹パルプよりも繊維長(図3)と繊維幅の分布幅が狭い。つまり、広葉樹パルプの繊維長の標準偏差は0.27以下であり、広葉樹パルプの繊維幅の標準偏差は7.55以下である。さらに、広葉樹パルプの平均繊維長に広葉樹パルプの繊維長の標準偏差を加えた値(0.79+0.27=1.06)は、広葉樹パルプの平均繊維長の2倍の値(1.58)よりも小さく、広葉樹パルプの平均繊維長から広葉樹パルプの繊維長の標準偏差を引いた値(0.79-0.27=0.52)は、広葉樹パルプの平均繊維長の1/2の値(0.395)よりも大きい。
【0169】
このように分布幅が狭くて標準偏差が小さいと、吸収体において均一な繊維密度を保持しやすいので、平面方向において偏りが少なく同心円状に拡散しやすくなる。
【0170】
このように、保水性繊維の平均繊維長、平均繊維幅を見てみると、広葉樹パルプと比較して、針葉樹パルプは太くて、長いので、パルプ同士が交絡しやすく、しっかりした骨格を形成する。一方、広葉樹パルプは細くて、短いので、パルプ同士の交絡はしにくいが、針葉樹パルプの間に入り込みやすいので、針葉樹パルプで作られた骨格内に広葉樹パルプが充填されることにより、ヨレ耐性が高く、液拡散性とリウエット性が高いナプキン1を提供することができる。
【0171】
===その他の実施形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【0172】
また、上記実施の形態においては、第4圧搾部40dが吸収体10を一体的に圧搾していないが、これに限るものではない。例えば、パンティライナーのように外周縁を圧搾する周縁圧搾部が吸収体10を一体的に圧搾してもよい。そして、かかる場合において、周縁圧搾部の横寸法の最大値が広葉樹パルプ(広葉樹からなる保水性繊維)の平均繊維長よりも大きい。すなわち、圧搾部40は、ナプキン1の外周縁に沿って圧搾された周縁圧搾部を備えており、周縁圧搾部の横寸法(第1寸法)の最大値が、広葉樹パルプの平均繊維長よりも大きい。
【0173】
そうすると、パンティライナー(トップシート3やバックシート5等が吸収体10と一体的に圧搾される場合)のような周縁圧搾部において、圧搾部と非圧搾部の界面を跨ぐ保水性繊維を低減させることができ、周縁部の硬さが低減するので、周縁部が変形した際に元の形状に復帰しやすくなり、周縁部の変形(折り癖)を抑制することができる。
【0174】
また、上記実施の形態においては、吸収体10の表面に凹凸を形成する際に、圧搾して凹凸を形成していたが、これに限るものではない。例えば、図6に示す第6圧搾部40fを低目付として、低坪量部としてもよい。すなわち、吸収体10には、吸収体10の坪量がその周囲の坪量よりも低い低坪量部が設けられており、低坪量部は、吸収体10の表面に窪み形状を形成しており、低坪量部の横寸法(第1寸法)の最大値が、広葉樹パルプの平均繊維長よりも大きい。
【0175】
そうすると、低坪量部(低目付部等)の端を跨ぐ保水性繊維を低減させることができ、低坪量部を幅方向に変形しやすくすることができる。
【0176】
また、図6に示す第6圧搾部40fのような低坪量部とすると、厚さ方向において、低坪量部の肌側面は、吸収体10の最も肌側の面よりも非肌側に位置し、低坪量部の非肌側面は、吸収体10の最も非肌側の面よりも肌側に位置することとなる。
【0177】
そうすると、低坪量部の厚さ方向における両側に窪みが生じるので、低坪量部を起点として肌側と非肌側の両側に変形しやすくすることができる。
【0178】
また、上述では低坪量部として第6圧搾部40fのような形状を例示したが、これに限るものではなく、肌側又は非肌側の一方が凹んだような形状でもよい。低坪雨量部が肌側に設けられていると液引き込み性が向上し、非肌側にあると肌側に沿うように変形しやすくすることができる。
【0179】
また、上記実施の形態においては、ナプキン1はコアラップシートを有していないが、これに限るものではなく、コアラップシートを有していてもよい。図16は、コアラップシート11を有するナプキン100の概略断面図であり、上記実施形態の図2に相当する図である。
【0180】
コアラップシート11は、図16に示すように、吸収体10の外周面を被覆するように設けられている。コアラップシート11としては、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性シートを例示でき、吸収体10とは長手方向に延びるコアラップ接合剤(拡大図Dに示すHMA)で接合されている。つまり、ナプキン100は、吸収体10の外周面を被覆するコアラップシート11を有しており、コアラップシート11は、幅方向に間隔11gを置いて設けられた長手方向に延びるコアラップ接合剤により吸収体10と接合されている。
【0181】
そして、コアラップ接合剤の幅方向における間隔11gの最小値が、広葉樹からなる保水性繊維の平均繊維長よりも大きい。そのため、コアラップ接合剤の外縁を跨ぐ保水性繊維を低減することができ、コアラップ接合剤が塗布された部分が吸収性コア全体を固めつつ、コアラップ接合剤が塗布されていない部分が変形しやすくなるので、吸収体10の型崩れ防止と追従性が両立したナプキン100を提供することができる。
【0182】
なお、図16に示すコアラップ接合剤は、長手方向に延びて、幅方向に間隔11gを置いて複数設けられているが、これに限るものではなく、例えば、幅方向に延びて、長手方向に間隔を置いて設けられていてもよい。
【0183】
また、コアラップシート11が設けられることで吸収体10の崩れを抑制することができる。図16においては、1枚のコアラップシート11を用いて、かかるコアラップシート11が吸収体10を包むようにした例を示したが、肌側又は非肌面側の一方のみ設けられていてもよいし、肌側及び非肌側のシートが吸収体10の外縁よりも外側で接合されていてもよい。
【符号の説明】
【0184】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 サイドシート
3 トップシート
4 セカンドシート
4f セカンドシートの繊維
5 バックシート
6 カバーシート
10 吸収体(吸収性コア)
10f 保水性繊維
11 コアラップシート
20 ナプキン本体部
21 本体部用粘着部
30 ウイング部
31 ウイング部用粘着部
40 圧搾部
40a 第1圧搾部(ヒンジ部)
40b 第2圧搾部(中央ヒンジ部)
40c 第3圧搾部(ヒンジ部)
40ca 第3圧搾部上側
40cb 第3圧搾部下側
40d 第4圧搾部(周縁圧搾部)
40e 第5圧搾部(低密度圧搾部。ヒンジ部)
40f 第6圧搾部
50L 広葉樹パルプ(広葉樹からなる保水性繊維)
50N 針葉樹パルプ
50Le 端部
70 回転ドラム
71 凹部
72 吸引部、
80 材料供給部
80a フード、
81 粒子供給部
100 ナプキン(吸収性物品)
ED 境界
Lp ベース圧搾部
Hp 高密度圧搾部
P1 左上境界部
P2 左下境界部
P3 右上境界部
P4 右下境界部
WA ウイング域
t1 前側の延出開始点
t2 後側の延出開始点
図1
図2
図3
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図16