(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158472
(43)【公開日】2023-10-30
(54)【発明の名称】加熱方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/30 20060101AFI20231023BHJP
F23G 7/00 20060101ALI20231023BHJP
B01J 23/745 20060101ALI20231023BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
F23G5/30 R
F23G5/30 F
F23G7/00 103A
B01J23/745 M
C04B18/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068337
(22)【出願日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】出口 巧
(72)【発明者】
【氏名】大村 昂平
(72)【発明者】
【氏名】関 卓哉
【テーマコード(参考)】
3K161
4G169
【Fターム(参考)】
3K161DA52
3K161EA08
3K161GA07
3K161GA12
3K161HB01
4G169AA03
4G169AA09
4G169BA31C
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169CD04
4G169DA08
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169FB39
4G169FC02
(57)【要約】
【課題】 流動層炉による加熱対象物の加熱において、炉の温度を維持するために必要な燃料および加熱対象物中の炭素をより効率的に燃焼させる方法を提供する。
【解決手段】 酸化第二鉄を含有する粒子状物質、例として銅スラグの酸化処理物を流動層炉の流動媒体2に用いる。酸化第二鉄を含有する粒子状物質を流動層炉の流動媒体2に用いることで、燃料13および加熱対象物11が炭素を含有している場合には加熱対象物11中の炭素をより効率的に燃焼させることができる。また、加熱対象物11と酸化第二鉄を含有する粒状物質からなる流動媒体2との分離操作なしで加熱後の加熱対象物11を得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動層炉による加熱対象物の加熱方法であって、
酸化第二鉄を含有する粒子状物質を流動媒体として用い、炭素を含有する燃料を燃焼して炉体温度を維持する前記加熱方法。
【請求項2】
前記燃料がLPGまたは重油である請求項1に記載の加熱方法。
【請求項3】
前記流動媒体が銅スラグの酸化処理物である請求項1または2に記載の加熱方法。
【請求項4】
前記加熱対象物がフライアッシュである請求項1または2に記載の加熱方法。
【請求項5】
前記加熱対象物がフライアッシュである請求項3に記載の加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流動層炉による加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物を加熱する方法として流動層炉が広く用いられている。その用途は多岐にわたり、火力発電や廃棄物処理における焼却工程、パーライトやシラスバルーン製造における発泡化工程等があげられる。
【0003】
また、流動層炉は、フライアッシュ中の未燃炭素を燃焼し、セメント原料として再利用する工程でも用いられる(特許文献1)。
【0004】
流動層炉は、ロータリーキルン等の他の炉に比べ、加熱工程にかかる燃料の消費が少ないといった利点がある。ただし、このような炉を用いる場合においても、CO2排出量削減や化石燃料の節約の観点から燃焼の効率化が求められている。
【0005】
特にCO2排出量削減について、2050年までのカーボンニュートラル達成に向け、さまざまな業界からできる限りの工夫をする必要がある。
【0006】
また、廃棄物焼却用の流動層炉などの、原料中に含まれる炭素の燃焼を目的とする流動層炉においては、その原料がより燃焼されることが望ましい。
【0007】
フライアッシュをセメント原料等に再利用するためには、フライアッシュに含まれる未燃炭素を燃焼し、フライアッシュI種(JIS A 6201)に指定する強熱減量3質量%以下とすることが望まれる。しかし、上記の理由からその工程をより効率化する必要がある。
【0008】
酸化第二鉄は、炭素含有物の燃焼触媒として用いられている。例として、特許文献2には、薪等のストーブの焚き付け時に使用される植物性燃焼材料について、あらかじめ酸化第二鉄粉末を植物性燃焼材料に被覆しておくことで、着火がし易く、煤、煙、タールを発生せずに完全燃焼することができることが記載されている。
【0009】
特許文献3には、酸化第二鉄粉末を含む組成物が成形された燃焼触媒成形体を用いることで、各種プラスチック製品等を含むごみの焼却処理時の重油、ガス、灯油等の助燃エネルギー削減に繋がることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000-213709号公報
【特許文献2】特開2019-108991号公報
【特許文献3】特開2020-163313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献2に記載のように酸化第二鉄粉末を加熱対象物に被覆して用いた場合、加熱終了後の加熱対象物と酸化第二鉄粉末が同時に炉から排出されることになり、加熱対象物を利用するためには酸化第二鉄粉末と分離する必要がある。また、加熱対象物が粉末の場合、その分離は非常に困難である。
【0012】
また、特許文献3に記載のような酸化第二鉄粉末を含む組成物が成形された燃焼触媒成形体を用いると加熱終了後の加熱対象物との分離が容易になるが、やはり加熱対象物と分離する必要がある。そのうえ、酸化第二鉄粉末を含む組成物の事前の成形を必要とし大幅なコストアップにつながる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは流動層炉の加熱効率をより高めるための検討を鋭意行い、酸化第二鉄含有物質の触媒作用に着目し、酸化第二鉄含有物質を流動層炉の流動媒体として使用することに思い至り、その結果、本発明を完成した。
【0014】
即ち本発明は、流動層炉における加熱工程を効率化する流動層炉による加熱対象物の加熱方法であって、酸化第二鉄を含有する粒子状物質を流動媒体として用い、炭素を含有する燃料を燃焼して炉体温度を維持する加熱方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、酸化第二鉄を含有する粒子状物質を流動層炉の流動媒体として用いることで、炉の温度を維持するために必要な助燃エネルギー、すなわち燃料の使用量、およびCO2排出量を削減できる。また、酸化第二鉄を含有する物質を粒子状で流動媒体として使用するため、加熱対象物は酸化第二鉄を含有する物質と分離されて炉から排出されるので、分離操作が不要である。さらにこのとき、事前の成形を必要としない粒子状の物質を用いると成形にかかるコストが抑えられる。
【0016】
加えて、加熱対象物が炭素を含有している場合、炉内に投入した加熱対象物を触媒作用によってより効率よく燃焼させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】銅スラグの加熱前後におけるX線結晶回折スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明で用いる流動層炉の概略図である。
図1に示す流動層炉は、気泡流動層式の流動層炉である。但し、本発明において流動層炉の形式に制約はなく、気泡流動層式の他に、高速流動層式、および循環流動層式などの公知の各種形式の流動層炉に本発明を適用できる。
【0020】
図1の流動層炉は、炉本体1、流動媒体2、燃焼室3、および炉本体1と燃焼室3との間に設けられた分散盤5によって構成される。
【0021】
流動媒体2としては酸化第二鉄を含有する粒子状物質を用いる。
【0022】
燃焼室3には、バーナー4が設けられており、バーナー4には流入エア21の投入口31および燃料(1)12の投入口32が設けられている。燃料(1)12の燃焼によって昇温された流入エア21は、バーナー4および分散盤5を通して炉本体1に流入する。
【0023】
炉本体1には、加熱対象物11の投入口33、および燃料(2)13の投入口34が設けられている。また、炉本体1には流動媒体2が充填されており、分散盤5を通して炉本体1に流入する昇温された流入エア21により流動化されている。炉本体1では、加熱対象物11および燃料(2)13の加熱及び燃焼が行われる。流入エア21は、炉本体1での燃焼に必要な酸素の供給源でもある。
【0024】
燃料(2)13を燃焼させるためには、燃料(2)13が発火するまで昇温された流入エア21によって十分に余熱する必要がある。燃料(2)13の燃焼開始後において、炉体温度の昇温・維持は、主に燃料(2)13の燃焼によって行われる。このとき、燃料(1)12は炉本体1の底部の昇温の補助に使用される。
【0025】
炉本体1の下部には、炉体温度を測定するための熱電対6が設けられている。熱電対6により測定された炉体温度を参考にして、炉体温度を維持するために必要に応じて加熱対象物11、燃料(1)12、および燃料(2)13の流量を調整することができる。
【0026】
加熱終了後の加熱対象物及び燃焼ガスは、排出物22として炉本体1の上部より排出される。排出された加熱対象物は、バグフィルター、サイクロンなどを用いて補足される。
【0027】
炉体温度は、燃料および加熱対象物が燃焼する温度以上あればよく、一般的には500℃以上であり、好ましくは700℃以上である。一方、粒子状物質中の酸化第二鉄などの溶融を避けるため、1000℃以下であることが望ましい。
【0028】
加熱対象物を前記加熱温度で加熱し続ける、すなわち炉体温度を維持するためには、前記加熱対象物の燃焼・発熱のみによって所定の炉体温度に達する場合を除き、絶えず燃料(1)12および燃料(2)13を供給し続ける必要がある。
【0029】
流動層炉内における流速は、流動化しうるのに十分な速度であればよく、特に制限されない。気泡流動層炉において、一般に、0.8m/sから1.2m/sの間であればよい。前記流速は炉径や炉内の温度、および流入エア21の流量から導出することができる。
【0030】
本発明において流動媒体は酸化第二鉄を含有する粒子状物質(以下、単に酸化第二鉄含有粒子状物質ともいう)である。流動媒体は、加熱対象物を加熱する際に酸化第二鉄含有粒子状物質であればよく、酸化処理により酸化第二鉄が生じ、酸化第二鉄を含有することになる粒子状物質であれば該粒子状物質を流動媒体としてもよい。酸化第二鉄を含有しているか否かは、X線結晶回折により酸化第二鉄のピークを検出できるか否かで判別できる。酸化第二鉄含有物質は、質量基準で酸化第二鉄が50%以上であるものが好ましく、80%以上であるものがより好ましく、90%以上のものがさらに好ましく、実質的に酸化第二鉄のみからなるもの(純酸化第二鉄)が最も好ましい。
【0031】
前記酸化第二鉄含有粒子状物質が酸化第二鉄以外の成分を含有する場合、含有する成分について特に制限されない。ただし、700℃から1000℃程度の加熱に対し安定な成分であることが望ましい。一般に、酸化珪素や酸化アルミニウムなどの成分は700℃から1000℃程度の加熱に対して安定であり、含有していても問題はない。
【0032】
粒子状物質の製造方法は特に制限されない、試薬として使用される純酸化鉄粉や廃棄物の酸化鉄粉を粒子状に成形してもよく、スラグなどの元々粒子状で得られる酸化鉄を含有する副産物をそのまま使用してもよい。好ましくは元々粒子状で得られる副産物などであり、事前の成形を必要としないため成形にかかるコストが抑えられる。なお、酸化鉄の種類は特に制限されない。酸化鉄は酸化第一鉄、四酸化三鉄、酸化第二鉄、および含水酸化鉄などのいずれでもよく、また2種以上の酸化鉄が混在していても構わない。
【0033】
粒子状物質としては、好ましくは酸化第二鉄を含有する粒子状の廃棄物である。例として銅スラグ、高炉ダスト、中和滓等が挙げられる。これらは酸化鉄を主成分とすることが多い廃棄物である。
【0034】
成形して粒子状とした粒子状物質又は元々粒子状である粒子状物質が酸化鉄として酸化第二鉄を含有する場合、粒子状物質はそのまま流動媒体として用いることができる。また、酸化鉄が酸化第二鉄以外のその他の酸化鉄である場合、その他の酸化鉄を酸化第二鉄とするために酸化処理して酸化第二鉄を含有する粒子状物質とすることが好ましい。上記したように銅スラグ等は酸化鉄を比較的多く含有するが、酸化状態が十分ではない場合がある。そのため、X線結晶回折において酸化第二鉄を含むことを十分に確認できるまで酸化処理をすることが好ましい。
【0035】
酸化鉄が酸化第二鉄以外のその他の酸化鉄を含有する粒子状物質の酸化処理の方法は、酸化第二鉄を生じる酸化方法であれば特に制限されるものではないが、空気等の酸素含有雰囲気下に600~900℃程度で加熱する方法が簡単である。例えば、酸化第二鉄以外のその他の酸化鉄を含有する粒子状物質を酸化処理して酸化第二鉄含有粒子状物質とした後に、流動媒体として流動層炉に充填してもよく、酸化第二鉄以外のその他の酸化鉄を含有する粒子状物質を流動層炉に充填した後に、流動層炉内で流入エアを投入し燃料を燃焼して前記酸化鉄を酸化第二鉄へ酸化し、そのまま流動媒体として用いてもよい。また、酸化第二鉄以外のその他の酸化鉄を含有する粒子状物質を流動媒体として流動層炉に充填した後に、加熱対象物の加熱を開始し、加熱対象物の加熱と共に酸化第二鉄以外のその他の酸化鉄を含有する粒子状物質の酸化処理を行ってもよい。酸化第二鉄以外のその他の酸化鉄は、流動層炉内で加熱され続けることで酸化および脱水され、最終的に酸化第二鉄となる。酸化第二鉄は触媒作用によって炭素の燃焼を促進するため、前記酸化鉄の種類にかかわらず、流動層炉内で加熱対象物や燃料中の炭素を十分に燃焼させることが可能である。
【0036】
本発明において流動媒体の使用量、すなわち静止層の高さは、流動層炉での使用に差し支えなければ特に制限されない。好ましくは0.6mから1mである。
【0037】
前記粒子状物質の粒度は、流動層炉での流動媒体としての使用に差し支えなければ特に制限されない。気泡流動層炉において、一般に、500μmから2000μmの粒度であれば、前記粒子状物質は正常に流動し流動媒体として特に問題なく使用することができる。ただし、前記流動媒体が加熱対象物とより接触できることが望まれ、より好ましくは500μmから1000μmである。銅スラグ、高炉ダストおよび中和滓は、500μmから1000μmの粒子を多く含み、前記粒子は分級によって容易に得ることができる。1000μmより大きい粒子も一定数含まれるが、これらは容易に粉砕でき、500μmから1000μmの粒子とすることができる。
【0038】
本発明において燃料は炭素を含有する燃料であり、燃焼によって発熱する物質であれば制限されない。炭素を含有する燃料としてはアルカリ金属を含まないものが好ましい。好ましい炭素を含有する燃料としては、液化石油ガス(LPG)、重油、天然ガス、灯油などの公知の燃料を例示することができる。
【0039】
前記燃料は、酸化第二鉄を含有する粒子状物質との接触下で燃焼する。このとき、前記燃料は酸化第二鉄の触媒作用によって効率的に燃焼するため、炉体に熱を伝えやすくなる。そのため、炉体温度を維持するために必要な燃料の消費量が少なくなる。
【0040】
例えば
図1に示す構成の流動層炉においては、燃料(1)12は、燃焼室3で着火および燃焼しやすく、炉本体1へ容易に熱を伝えられる燃料であることが望まれる。好ましくはLPGである。燃焼室3に供給される燃料(1)12の一部が未燃焼のまま流入エア21と共に炉本体1に流入しても、酸化第二鉄を含有する粒子状物質と接触して燃焼し、効率的に燃焼するという効果を奏する。
【0041】
燃料(2)13は、含有炭素量および総発熱量が大きく流動媒体2へより効果的に熱を伝えられる燃料であることが望まれる。好ましくは重油である。
【0042】
本発明において加熱対象物は特に制限されない。パーライトを製造するためのパーライト原石、シラスバルーンを製造するためのシラス灰など、焼成を目的とした対象物でもよく、未燃炭素を低減・除去するためのフライアッシュなど、不要な残存炭素の燃焼除去を目的とした対象物、廃棄物などの炭素の燃焼による焼却を目的とした対象物であってもよい。好ましくは炭素の燃焼を目的とするフライアッシュ、廃棄物などであり、媒体粒子である酸化第二鉄含有物質との触媒作用によってより効率的に燃焼させることができる。
【0043】
本発明の加熱対象物においてフライアッシュは、石炭火力発電所などの石炭を燃焼する設備において発生する一般的なフライアッシュを指す。また、石炭と併せて、石炭以外の燃料や可燃系廃棄物が混焼され発生したフライアッシュも含む。
【0044】
前記フライアッシュには炭素分の燃え残りとされる未燃炭素が含有されており、含有量は多いもので15質量%ほどである。この未燃炭素が多いと、フライアッシュをセメントまたはコンクリートの混合材として使用した場合に問題を生じる。具体的には、未燃炭素含有量が多いと、モルタルやコンクリートの表面に未燃炭素が浮き出し、黒色部が発生するといった問題が生じる可能性が高い。さらに、化学混和剤などの薬剤が未燃炭素に吸着し、その効果が減少すると言った問題も生じる可能性がある。
【0045】
前記フライアッシュを加熱することにより、フライアッシュに含まれる未燃炭素を燃焼し、上記の問題を抑えることができる。また、フライアッシュI種(JIS A 6201)に指定する強熱減量3質量%以下とすることで、商用価値を高めることができる。
【0046】
フライアッシュを流動層炉で加熱する場合、フライアッシュ中の未燃炭素を燃焼除去するためには炉体温度600℃以上であることが好ましい。一方、粒子状物質およびフライアッシュの溶融を避けるため、上限は1000℃以下であることが好ましい。800℃以上では前記未燃炭素の燃焼がより促進されるため、800℃以上950℃以下であることがより好ましい。フライアッシュの加熱においては、フライアッシュ中の未燃炭素の燃焼のみでは必要な温度が維持できないのが通常であるため、上記燃料を絶えず供給し続ける必要がある。
また、その他の条件は上記した諸条件を適用できる。
【実施例0047】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0048】
フライアッシュとして強熱減量が6.7質量%のフライアッシュ(体積基準累計50%径13μm)を用いた。加熱前後のフライアッシュの強熱減量は、JIS A 6201に記載の強熱減量試験法で測定した。
【0049】
燃料(1)12として発熱量24000kcal/m3のLPGを、燃料(2)13として発熱量9300kcal/LのA重油を使用した。
【0050】
実施例1
蛍光X線分析装置(ZSX Primus II、株式会社リガク)を用いて求めた成分が酸化物換算で表1に示す化学組成であり、粒子の大きさが表2に示す分布である、銅スラグ(三井金属鉱山株式会社)を流動媒体とした。
【0051】
【0052】
【0053】
銅スラグは、フライアッシュの投入前に下記条件にて10時間程度酸化処理を行い、銅スラグ中に酸化第二鉄が含まれることが分析から十分確認できるようにして用いた。X線結晶回折装置(D8 ADVANCE、ブルカージャパン株式会社、CuKα、40kV-40mA)から得られたスペクトルを
図2に示す。
図2では、銅スラグの加熱後において、加熱前にはない酸化第二鉄由来のピークが2θ=33°に生じており、加熱酸化によって銅スラグ中に酸化第二鉄が生成されていることが確認できる。
【0054】
図1に示す、静止層の高さを1mとした、内径40cm、高さ4.5mの流動層炉を持つベンチプラントを用いて、フライアッシュ中の未燃炭素を減少させるためフライアッシュを加熱した。熱電対6が900℃を示し、また投入口31の手前にある流量計が95Nm
3/hを示す、すなわち炉内の流速が計算上0.9m/sとなるように、燃料(1)12、燃料(2)13、および流入エア21の流量を調整した。
【0055】
このような流動層炉に、強熱減量が6.7質量%のフライアッシュを流量85kg/hで2時間投入し、加熱した。投入後90分、105分、および120分後の排出物22を回収し、それぞれの強熱減量の平均を加熱後のフライアッシュの強熱減量とした。
【0056】
比較例1
流動媒体を珪砂(鹿島珪砂4号A)とした以外は、実施例1と同様の方法でフライアッシュを加熱した。
【0057】
評価
流動層炉を900℃に保つために必要な燃料使用量と加熱されたフライアッシュの強熱減量について表3に示す。
【0058】
【0059】
表3に示されるように、酸化鉄を主成分とする銅スラグの酸化処理物を媒体粒子として用いた実施例1の方が、珪砂を媒体粒子として用いた比較例1に比べ、A重油の使用量が少なくなり、燃料の総発熱量が10%程度低くなることが確認できた。また、実施例1の方が、フライアッシュの強熱減量がより減少し、未燃炭素がより燃焼していることが確認できた。