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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158753
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】ポンプ及び軸受マウント
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/046 20060101AFI20231024BHJP
   F16C 35/077 20060101ALI20231024BHJP
   F16C 25/08 20060101ALI20231024BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20231024BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
F04D29/046 D
F16C35/077
F16C25/08 Z
F16F15/02 E
F16F15/04 A
F16F15/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068718
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100207561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳元 八大
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】中村 慎策
【テーマコード(参考)】
3H130
3J012
3J048
3J117
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB22
3H130AB42
3H130AC30
3H130BA13E
3H130DA02Z
3H130DB01X
3H130DB15X
3H130EA01A
3H130EA01E
3H130EA03A
3H130EA03E
3H130EA07A
3H130EA07E
3H130EB01A
3J012AB03
3J012BB01
3J012CB03
3J012DB07
3J012FB10
3J048AA01
3J048AC01
3J048EA08
3J117AA01
3J117CA04
3J117DA02
3J117DB10
(57)【要約】
【課題】高耐久性の防振機能を有するポンプ及び軸受マウントを提供することを目的とする。
【解決手段】ポンプ100は、シャフト10を回転自在に支持する軸受20と、インペラ11を収容するインペラケーシング30と、回転電動機Mを収容し、軸受20を支持するモータケーシング40と、を備えている。モータケーシング40は、インナーハウジング41とアウターハウジング42との間に形成される空間Sを、第1圧力を作用させる低圧室S1と、第1圧力より高い第2圧力を作用させる高圧室S2とに区画した状態で空間S内を移動自在なラム44と、を含んでいる。ラム44は、第1圧力と第2圧力との差圧ΔPにより、減衰部材43を付勢する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電動機のロータと供に回転し、インペラを有するシャフトと、
前記シャフトを回転自在に支持する軸受と、
前記インペラを収容するインペラケーシングと、
前記回転電動機を収容し、前記軸受を支持するモータケーシングと、を備え、
前記モータケーシングは、
前記軸受を支持するインナーハウジングと、
前記インナーハウジングの外方に配置されるアウターハウジングと、
前記インナーハウジングと前記アウターハウジングとの間に配置される減衰部材と、
前記インナーハウジングと前記アウターハウジングとの間に形成される空間を、第1圧力を作用させる低圧室と、前記第1圧力より高い第2圧力を作用させる高圧室とに区画した状態で前記空間内を移動自在なラムと、を含み、
前記ラムは、前記第1圧力と前記第2圧力との差圧により、前記減衰部材を付勢する
ポンプ。
【請求項2】
前記高圧室は、前記インペラケーシングに設けられる高圧取出口に連通する
請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記低圧室は、前記モータケーシングに設けられる低圧取出口に連通する
請求項1又は請求項2に記載のポンプ。
【請求項4】
前記ラムを付勢する補助ばねを備える
請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項5】
前記アウターハウジングは、前記インナーハウジングを弾性的に支持するピンを備える
請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項6】
前記アウターハウジングと前記ラムとの間に配置されるパッキンを備える
請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項7】
軸受を支持するインナーハウジングと、
前記インナーハウジングの外方に配置されるアウターハウジングと、
前記インナーハウジングと前記アウターハウジングとの間に配置される減衰部材と、
前記インナーハウジングと前記アウターハウジングとの間に形成される空間を、第1圧力を作用させる低圧室と、前記第1圧力より高い第2圧力を作用させる高圧室とに区画した状態で前記空間内を移動自在なラムと、を備え、
前記ラムは、前記第1圧力と前記第2圧力との差圧により、前記減衰部材を付勢する
軸受マウント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ及び軸受マウントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防振機能を有するポンプ及び軸受マウントがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-41211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のポンプ及び軸受マウントに設けられる摩擦ダンパは、ボルトの締め付けにより所望の圧縮状態となっていた。そのため、摩擦ダンパに作用する圧縮力は、振動による摩擦ダンパの摩耗や時間経過による摩擦ダンパのクリープによって弱まり、防振機能が損なわれる場合があった。
【0005】
本発明は、高耐久性の防振機能を有するポンプ及び軸受マウントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
(1)本発明に係る一態様のポンプは、回転電動機のロータと供に回転し、インペラを有するシャフトと、前記シャフトを回転自在に支持する軸受と、前記インペラを収容するインペラケーシングと、前記回転電動機を収容し、前記軸受を支持するモータケーシングと、を備え、前記モータケーシングは、前記軸受を支持するインナーハウジングと、前記インナーハウジングの外方に配置されるアウターハウジングと、前記インナーハウジングと前記アウターハウジングとの間に配置される減衰部材と、前記インナーハウジングと前記アウターハウジングとの間に形成される空間を、第1圧力を作用させる低圧室と、前記第1圧力より高い第2圧力を作用させる高圧室とに区画した状態で前記空間内を移動自在なラムと、を含み、前記ラムは、前記第1圧力と前記第2圧力との差圧により、前記減衰部材を付勢する。
(2)上記(1)において、前記高圧室は、前記インペラケーシングに設けられる高圧取出口に連通してよい。
(3)上記(1)又は(2)において、前記低圧室は、前記モータケーシングに設けられる低圧取出口に連通してよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記ラムを付勢する補助ばねを備えてよい。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記アウターハウジングは、前記インナーハウジングを弾性的に支持するピンを備えてよい。
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記アウターハウジングと前記ラムとの間に配置されるパッキンを備えてよい。
(7)本発明に係る一態様の軸受マウントは、軸受を支持するインナーハウジングと、前記インナーハウジングの外方に配置されるアウターハウジングと、前記インナーハウジングと前記アウターハウジングとの間に配置される減衰部材と、前記インナーハウジングと前記アウターハウジングとの間に形成される空間を、第1圧力を作用させる低圧室と、前記第1圧力より高い第2圧力を作用させる高圧室とに区画した状態で前記空間内を移動自在なラムと、を備え、前記ラムは、前記第1圧力と前記第2圧力との差圧により、前記減衰部材を付勢する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高耐久性の防振機能を有するポンプ及び軸受マウントを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るポンプの説明図である。
図2】実施形態に係る軸受マウントを示す説明図である。
図3図2におけるA矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態]
以下、実施形態に係るポンプ100を説明する。
図1は、実施形態に係るポンプ100の説明図である。図2は、実施形態に係る軸受マウント1を示す説明図である。図3は、図2におけるA矢視断面図である。
【0010】
(ポンプ)
図1に示すように、実施形態に係るポンプ100は、インペラ11によって発生させた遠心力でインペラケーシング30内を通る液体にエネルギを与えるターボ型ポンプであってよい。ポンプ100は、例えば、産業用ポンプのように、比較的長期で運転される用途に適している。ポンプ100は、例えば、シャフト10の長手方向に沿って互いに間隔を空けて並んで配置された5段のインペラ11を有している。
【0011】
ポンプ100は、回転電動機MのロータMrと供に回転し、インペラ11を有するシャフト10を備えている。ポンプ100は、シャフト10を回転自在に支持する軸受20を備えている。ポンプ100は、インペラ11を収容するインペラケーシング30を備えている。ポンプ100は、回転電動機Mを収容し、軸受20を支持するモータケーシング40を備えている。
図1において、ポンプ100の運転による液体の流れの向きは、矢印によって示されている。インペラケーシング30内の液体は、適宜の数のインペラ11から与えられるエネルギによって昇圧される。すると、液体が吸込口Vから更に吸い込まれる。そして、インペラケーシング30内の液体は、ポンプ100内の流路を伝ってモータケーシング40の吐出口Eから吐出される。
【0012】
(インペラケーシング)
インペラケーシング30は、筒状体である。インペラケーシング30は、モータケーシング40に接続されている。インペラケーシング30は、液体の吸込口Vを有している。
【0013】
(モータケーシング)
モータケーシング40は、軸受20を支持するインナーハウジング41と、インナーハウジング41の外方に配置されるアウターハウジング42と、インナーハウジング41とアウターハウジング42との間に配置される減衰部材43と、インナーハウジング41とアウターハウジング42との間に形成される空間Sを、第1圧力P1を作用させる低圧室S1と、第1圧力P1より高い第2圧力P2を作用させる高圧室S2とに区画した状態で空間S内を移動自在なラム44と、を備えている。
なお、モータケーシング40は、液体の吐出口Eを有している。なお、吐出口Eは、インペラケーシング30に設けられてもよい。なお、図1は、吐出口Eをモータケーシング40に設けた例を示している。
【0014】
モータケーシング40は、軸受マウント1を含んでいる。
図1に示すように、軸受マウント1は、シャフト10の延在方向における回転電動機Mの両側に配置されている。一方の軸受マウント1は、シャフト10の縁端(吐出口E側の端部)を支持する位置に配置されている。他方の軸受マウント1は、インペラケーシング30内を通る液体から回転電動機Mをシールするためのモータケーシング40のシール部50の近傍に配置されている。
一方の軸受マウント1の構造と他方の軸受マウント1の構造とは、共通していてよい。
【0015】
(軸受マウント)
軸受マウント1は、軸受20を支持するインナーハウジング41と、インナーハウジング41の外方に配置されるアウターハウジング42と、インナーハウジング41とアウターハウジング42との間に配置される減衰部材43と、インナーハウジング41とアウターハウジング42との間に形成される空間Sを、第1圧力P1を作用させる低圧室S1と、第1圧力P1より高い第2圧力P2を作用させる高圧室S2とに区画した状態で空間S内を移動自在なラム44と、を備えている。
【0016】
(軸受)
軸受20は、シャフト10を回転自在に支持する環状体である。軸受20は、シャフト10の外周に設けられる環状の内輪と、インナーハウジング41の内周面に設けられる環状の外輪と、内輪と外輪との間に転動自在に設けられるボールと、を含んでいてよい。軸受20は、いわゆる、ボールベアリングであってよい。
【0017】
(インナーハウジング)
インナーハウジング41は、シャフト10を通し、シャフト10を支持する軸受20を内周面で支持する筒状体である。
インナーハウジング41は、ピン70によってアウターハウジング42に対して弾性的に支持されていてよい。
【0018】
インナーハウジング41は、外周面に、環状のラム44が付勢方向Dに沿って移動自在に嵌っている。
インナーハウジング41は、外周面に、環状のアウターハウジング42が嵌っている。
インナーハウジング41の外周面の一部は、高圧室S2に露出している。
【0019】
インナーハウジング41は、外方に突出する環状のフランジ41Fを有している。フランジ41Fには、貫通するピン70の数に対応する数の挿通孔が形成されている。
フランジ41Fの付勢方向Dには、減衰部材43が配置されている。減衰部材43は、フランジ41Fの両側に配置されていることが好ましい。
フランジ41Fは、軸受20が配置される位置の外周面から外方に突出するように設けられている。これにより、シャフト10から軸受20を経て伝達される振動を、軸受マウント1で効果的に減衰させることができる。
フランジ41Fには、ピン70が貫通している。
【0020】
(アウターハウジング)
アウターハウジング42は、筒状体である。
アウターハウジング42は、インナーハウジング41の外方に設けられる。アウターハウジング42は、インナーハウジング41の外周面を囲むように設けられる。
アウターハウジング42は、ラム44の外方に設けられる。アウターハウジング42の内周面の一部は、ラム44の外周面に嵌っている。
アウターハウジング42は、インナーハウジング41との間に、空間Sを形成している。空間Sは、一辺が付勢方向Dと平行な長方形断面を有する環状の形状である。
アウターハウジング42は、内周面の一部を、空間Sに露出している。
アウターハウジング42は、空間Sに連通する供給孔46を有している。供給孔46は、適宜の管を介して、インペラケーシング30に設けられる高圧取出口31に連通している。供給孔46は、図3に示すように、シャフト10の回転軸を中心として外方に向けて放射状に、複数、周方向に均等間隔で設けられていてよい。
【0021】
(減衰部材)
減衰部材43は、環状体である。減衰部材43は、適宜、ピン70を貫通する孔を、ピン70の配置に対応する位置に有している。
【0022】
減衰部材43は、インナーハウジング41とアウターハウジング42との間に配置される。減衰部材43は、インナーハウジング41とラム44との間に配置されてもよい。
【0023】
減衰部材43は、摩擦減衰を有する材質であってよい。減衰部材43は、例えば、ワイヤメッシュ、積層板、ブレーキ材(レジンモールド材、焼結材)等を使用したものであってよい。減衰部材43は、摩擦により振動エネルギを散逸するので、インナーハウジング41とアウターハウジング42との相対振動を減衰できる。
なお、減衰部材43は、ヒステリシスロスを有する材質であってもよい。例えば、天然ゴムにカーボンブラックを添加された高減衰ゴムであってよい。
【0024】
減衰部材43は、ポンプ100の運転中に、差圧ΔPによるラム44からの付勢力により、圧縮力が加わっている状態となっている。この圧縮力を変えることで、ばね定数減衰定数を設計でき、材料が摩耗しても差圧ΔPが変わらない限り一定の圧縮力を与えることができる。
【0025】
(ラム)
ラム44は、環状体である。ラム44は、空間Sに対応する形状を有している。ラム44は、その内周面を、インナーハウジング41の外周面に対して摺動自在となる状態で、インナーハウジング41の外方に嵌っている。ラム44は、その外周面を、アウターハウジング42の内周面に対して摺動自在となる状態で、アウターハウジング42の内方に嵌っている。ラム44の内径は、インナーハウジング41における空間Sに露出する部分の外径(空間Sの内径)よりわずかに大きい。ラム44の外径は、アウターハウジング42における空間Sに露出する部分の内径(空間Sの外径)よりわずかに小さい。ラム44は、付勢方向Dに沿って移動自在に空間Sに収容されている。
ラム44は、低圧室S1に露出する低圧面と、高圧室S2に露出する高圧面と、を備えている。
高圧面には、補助ばね60が直接的に接していてよい。
ラム44の一部は、減衰部材43に直接的に接していてもよい。
【0026】
ラム44は、適宜、ピン70が、適宜のギャップを介して挿入されている。ラム44は、ピン70によりシャフト10の回転軸を中心とする回転移動を規制されており、ピン70をガイドにして並進自在となっている。
【0027】
ラム44は、第1圧力P1と第2圧力P2との差圧ΔPにより、減衰部材43を付勢している。これにより、ポンプ100の運転中に、ポンプ100によって昇圧された液圧を、差圧ΔPを発生させるための第2圧力P2として、高圧室S2に供給できる。したがって、減衰部材43に作用する圧縮力の経時的な低下に関係なく、ポンプ100の運転中であれば常に、ラム44で区画される低圧室S1と高圧室S2との間に差圧ΔPを発生させて、減衰部材43をピストン機構のように押すことができる。そして、ポンプ100の運転中に減衰部材43に作用する付勢力を維持できる。よって、高耐久性の防振機能を有するポンプ100及び軸受マウント1を提供できる。
【0028】
図1及び図2に示すように、高圧室S2は、インペラケーシング30に設けられる高圧取出口31に連通していることが好ましい。なお、高圧室S2と高圧取出口31とは、不図示の管で連通している。
これにより、ポンプ100の内部を通過する液体に作用する液圧のなかでも、昇圧されて比較的高圧となる部分から第2圧力P2を取り出すことができ、差圧ΔPをできるだけ大きくできる。よって、ポンプ100の運転中に減衰部材43に作用するラム44による付勢力を高く維持できる。
【0029】
図2に示すように、低圧室S1は、モータケーシング40に設けられる低圧取出口45に連通していることが好ましい。なお、低圧室S1と低圧取出口45とは、適宜、管で連通している。
これにより、ポンプ100の内部を通過する液体に作用する液圧のなかでも、モータケーシング40とシャフト10との間のシール部50より回転電動機M側にある、比較的低圧となる部分から第1圧力P1を取り出すことができ、差圧ΔPをできるだけ大きくできる。よって、ポンプ100の運転中に減衰部材43に作用するラム44による付勢力を高く維持できる。
【0030】
なお、モータケーシング40における、回転電動機Mを収容しているシール部50によって閉じられた空間は、比較的低圧になっている。低圧取出口45は、シール部50が設けられる空間に連通していてよい。低圧取出口45は、回転電動機Mを収容しているシール部50によって閉じられた空間に連通していてもよい。特に、インペラケーシング30側の軸受マウント1の高圧室S2は、その軸受マウント1の近傍のシール部50が設けられている空間に連通していることが好ましい。特に、吐出口E側の軸受マウント1の高圧室S2は、回転電動機Mを収容しているシール部50によって閉じられた空間に連通していることが好ましい。
【0031】
なお、低圧取出口45が設けられる場所は、第2圧力P2より低い第1圧力P1が得られる場所であれば、モータケーシング40に限られない。低圧取出口45は、例えば、インペラケーシング30において、高圧取出口31が設けられている場所より吸込口V側に設けられていてもよい。低圧取出口45は、吸込口Vに接続される配管(不図示)又はその配管に連通するタンク(不図示)に設けられていてもよい。
【0032】
(補助ばね)
図2及び図3に示すように、ポンプ100の軸受マウント1は、ラム44を付勢する補助ばね60を備えていてよい。これにより、差圧ΔPによってラム44に与えられる付勢力に、補助ばね60の反発力によってラム44に与えられる付勢力を加えることができる。よって、差圧ΔPと補助ばね60による反発力とのバランスを調整して、適切な付勢力を安定的にラム44に与えることができる。
補助ばね60は、シャフト10の回転軸を中心として、複数、周方向に均等間隔で設けられていてよい。
【0033】
(ピン)
図2に示すように、アウターハウジング42は、インナーハウジング41を弾性的に支持するピン70を備えていることが好ましい。
ピン70は、直線状に延びる棒状体である。ピン70は、円形断面を有する円柱状態であってよい。ピン70は、頭部のないボルトであってよい。ピン70の一端は、アウターハウジング42にねじで固定されている。
このように、ピン70は、アウターハウジング42に固定されており、インナーハウジング41を弾性的に支持する。これにより、アウターハウジング42でインナーハウジング41を弾性支持した状態にでき、アウターハウジング42に対してインナーハウジングを相対変位可能にできる。よって、減衰部材43による減衰の付与の効果を高めることができる。
【0034】
ピン70の中央は、インナーハウジング41を貫通している。ピン70の中央は、インナーハウジング41に嵌め合わされている。ピン70の他端は、ラム44に対して挿通されている。ピン70の他端は、ラム44の回転を規制することで、ラム44の付勢方向Dに沿う並進移動を案内できるようになっている。ピン70の延在方向は、ラム44の付勢方向Dに沿っている。
ピン70は、インナーハウジング41及び減衰部材43をラム44の付勢方向Dに沿って並進可能に案内する。
ピン70は、ラム44をラム44の付勢方向Dに沿って並進可能に案内する。
【0035】
なお、ピン70は、頭部を有していてもよい。この場合、頭部を有するピン70で減衰部材43に圧縮力を与えた状態にしてもよい。なお、この際、さらに、ラム44による差圧ΔPを減衰部材43に付加してよく、さらに、補助ばね60による付勢力を減衰部材43に付加してもよい。
【0036】
(パッキン)
図2に示すように、ポンプ100の軸受マウント1は、アウターハウジング42とラム44との間に配置されるパッキン80を備えてよい。パッキン80は、低圧室S1と高圧室S2との間をシールして、液体の移動を抑制する。
パッキン80は、例えば、円形の断面を有する環状の、いわゆる、Oリングであってよい。パッキン80は、図2に示すように、例えば、ラムの外周に沿って設けられる環状溝に嵌っていてよい。
これにより、アウターハウジング42の内周面に沿うラム44の移動を妨げることなく、低圧室S1と高圧室S2との間をシールできる。また、パッキン80の剛性又はパッキン80の寸法又は環状溝の寸法を変えることで、パッキン80とアウターハウジング42の内周面との間に作用する摩擦力を調整でき、ラム44による減衰部材43への付勢力を調整できる。
【0037】
インナーハウジング41とラム44との間に不図示のメカニカルシールを備えてよい。このシールは、シート状体をインナーハウジング41とラム44との間隙に環状に配置されるものであってよい。このシールは、低圧室S1と高圧室S2との間をシールして、液体の移動を抑制する。
【0038】
以上、図面を参照して実施形態について説明したが、本発明は上述のものに限られない。実施形態として挙げられた複数の特徴を、自由に組み合わせてもよい。
【0039】
本実施形態に係るポンプ100は、回転電動機MのロータMrと供に回転し、インペラ11を有するシャフト10と、シャフト10を回転自在に支持する軸受20と、インペラ11を収容するインペラケーシング30と、回転電動機Mを収容し、軸受20を支持するモータケーシング40と、を備えている。モータケーシング40は、軸受20を支持するインナーハウジング41と、インナーハウジング41の外方に配置されるアウターハウジング42と、インナーハウジング41とアウターハウジング42との間に配置される減衰部材43と、インナーハウジング41とアウターハウジング42との間に形成される空間Sを、第1圧力P1を作用させる低圧室S1と、第1圧力P1より高い第2圧力P2を作用させる高圧室S2とに区画した状態で空間S内を移動自在なラム44と、を含んでいる。ラム44は、第1圧力P1と第2圧力P2との差圧ΔPにより、減衰部材43を付勢する。
これにより、ポンプ100の運転中に、ポンプ100によって昇圧された液圧を、差圧ΔPを発生させるための第2圧力P2として、高圧室S2に供給できる。したがって、減衰部材43に作用する圧縮力の経時的な低下に関係なく、ポンプ100の運転中であれば常に、ラム44で区画される低圧室S1と高圧室S2との間に差圧ΔPを発生させて、減衰部材43をピストン機構のように押すことができる。そして、ポンプ100の運転中に減衰部材43に作用する付勢力を維持できる。よって、高耐久性の防振機能を有するポンプ100を提供できる。
【0040】
本実施形態に係る軸受マウント1は、軸受20を支持するインナーハウジング41と、インナーハウジング41の外方に配置されるアウターハウジング42と、インナーハウジング41とアウターハウジング42との間に配置される減衰部材43と、インナーハウジング41とアウターハウジング42との間に形成される空間Sを、第1圧力P1を作用させる低圧室S1と、第1圧力P1より高い第2圧力P2を作用させる高圧室S2とに区画した状態で空間S内を移動自在なラム44と、を備えている。ラム44は、第1圧力P1と第2圧力P2との差圧ΔPにより、減衰部材43を付勢する。
これにより、ポンプ100の運転中に、ポンプ100によって昇圧された液圧を、差圧ΔPを発生させるための第2圧力P2として、高圧室S2に供給できる。したがって、減衰部材43に作用する圧縮力の経時的な低下に関係なく、ポンプ100の運転中であれば常に、ラム44で区画される低圧室S1と高圧室S2との間に差圧ΔPを発生させて、減衰部材43をピストン機構のように押すことができる。そして、ポンプ100の運転中に減衰部材43に作用する付勢力を維持できる。よって、高耐久性の防振機能を有する軸受マウント1を提供できる。
【符号の説明】
【0041】
1 軸受マウント
10 シャフト
11 インペラ
20 軸受
30 インペラケーシング
31 高圧取出口
40 モータケーシング
41 インナーハウジング
41F フランジ
42 アウターハウジング
43 減衰部材
44 ラム
45 低圧取出口
46 供給孔
50 シール部
60 補助ばね
70 ピン
80 パッキン
100 ポンプ
D 付勢方向
E 吐出口
M 回転電動機
Mr ロータ
S 空間
S1 低圧室
S2 高圧室
V 吸込口
図1
図2
図3