(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158765
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】ウエーハの処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20231024BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H01L21/78 L
H01L21/304 622N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068739
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 良信
(72)【発明者】
【氏名】生島 充
(72)【発明者】
【氏名】右山 芳国
【テーマコード(参考)】
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
5F057AA04
5F057BA11
5F057CA14
5F057DA01
5F057EC15
5F063AA05
5F063CB05
5F063CB06
5F063CB24
5F063DF12
5F063DG24
(57)【要約】
【課題】保護シートがウエーハの外周からが剥がれたり、ウエーハの外周が切削手段によって傷ついたりする等の問題が解消されるウエーハの処理方法を提供する。
【解決手段】複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハの処理方法であって、ウエーハの表面全面を覆う大きさの保護シートを配設するシート配設工程と、ウエーハの外周からはみ出した保護シートを切断するシート切断工程と、ウエーハの裏面を処理するウエーハ処理工程と、を含み、該シート切断工程は、ウエーハの外周に対応する領域の保護シートにレーザー光線を照射してウエーハの外周からはみ出した保護シートを切断する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハの処理方法であって、
ウエーハの表面全面を覆う大きさの保護シートを配設するシート配設工程と、
ウエーハの外周からはみ出した保護シートを切断するシート切断工程と、
ウエーハの裏面を処理するウエーハ処理工程と、
を含み、
該シート切断工程は、ウエーハの外周に対応する領域の保護シートにレーザー光線を照射してウエーハの外周からはみ出した保護シートを切断するウエーハの処理方法。
【請求項2】
該保護シートは、加熱によって圧着する熱圧着シートである請求項1に記載のウエーハの処理方法。
【請求項3】
該保護シートは、ウエーハの外周余剰領域に対応して粘着層が形成された粘着シートである請求項1に記載のウエーハの処理方法。
【請求項4】
該シート配設工程は、ウエーハの表面に加熱によって圧着する熱圧着シート、又はウエーハの外周余剰領域に対応して粘着層が形成された粘着シートを配設し、熱圧着シート又は粘着シートの凹凸を吸収する柔軟層を配設し、更に該柔軟層を平坦化する平坦化シートを配設して該保護シートを形成する請求項1に記載のウエーハの処理方法。
【請求項5】
ウエーハの処理工程は、ウエーハの裏面を研削又は研磨する加工を実行する工程である請求項1に記載のウエーハの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハは、裏面が研削されて所望の厚みに形成された後、ダイシング装置、レーザー加工装置によって分割予定ラインに加工が施され、個々のデバイスチップに分割され携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、ウエーハの表面に形成された分割予定ラインにウエーハの仕上がり厚さに相当する深さのハーフ溝を形成し、その後、ウエーハの表面に保護シートを配設してウエーハの裏面を研削し、該ハーフ溝をウエーハの裏面に露出させることで、ウエーハを個々のデバイスチップに分割する先ダイシングと称する技術が提案されている。
【0004】
そして、ウエーハの裏面を研削する際に、ウエーハの表面が研削装置のチャックテーブルに保持されて傷が付くこと、又は先ダイシングによってデバイスチップがバラバラになることを防止すべく、予めウエーハの表面を保護するために、保護シートが配設される(例えば特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-246098号公報
【特許文献2】特開2010-027780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1、2に記載された技術において使用される保護シートは、一般的にウエーハの表面よりも若干大きく設定されてウエーハを覆うように配設される。したがって、該保護シートをウエーハの表面に配設した後に、ウエーハの外周に沿って、該保護シートの外周領域を、カッター等の切削手段により切断するようにしている。しかし、該切削手段の切り刃に該保護シートが巻き込まれてウエーハの外周からが剥がれたり、該切り刃がウエーハの外周を傷つけたりする等の問題が発生することから、改善が求められている。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、保護シートがウエーハの外周からが剥がれたり、ウエーハの外周が切削手段によって傷ついたりする等の問題が解消されるウエーハの処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハの処理方法であって、ウエーハの表面全面を覆う大きさの保護シートを配設するシート配設工程と、ウエーハの外周からはみ出した保護シートを切断するシート切断工程と、ウエーハの裏面を処理するウエーハ処理工程と、を含み、該シート切断工程は、ウエーハの外周に対応する領域の保護シートにレーザー光線を照射してウエーハの外周からはみ出した保護シートを切断するウエーハの処理方法が提供される。
【0009】
該保護シートは、加熱によって圧着する熱圧着シートであってもよく、ウエーハの外周余剰領域に対応して粘着層が形成された粘着シートであってもよい。また、該シート配設工程は、ウエーハの表面に加熱によって圧着する熱圧着シート、又はウエーハの外周余剰領域に対応して粘着層が形成された粘着シートを配設し、熱圧着シート又は粘着シートの凹凸を吸収する柔軟層を配設し、更に該柔軟層を平坦化する平坦化シートを配設して該保護シートを形成するようにしてもよい。さらに、ウエーハの処理工程は、ウエーハの裏面を研削又は研磨する加工を実行する工程であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のウエーハの処理方法は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハの処理方法であって、ウエーハの表面全面を覆う大きさの保護シートを配設するシート配設工程と、ウエーハの外周からはみ出した保護シートを切断するシート切断工程と、ウエーハの裏面を処理するウエーハ処理工程と、を含み、該シート切断工程は、ウエーハの外周に対応する領域の保護シートにレーザー光線を照射してウエーハの外周からはみ出した保護シートを切断するものであることから、ウエーハの外周から保護シートが剥がれたり、ウエーハの外周に傷が付いたりするという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)シート配設工程の実施態様を示す斜視図、(b)シート配設工程において熱圧着する態様を示す斜視図、(c)シート配設工程により形成されたウエーハの外周部を拡大した断面図である。
【
図2】(a)シート配設工程の別の実施態様を示す斜視図、(b)(a)により粘着シートが配設されたウエーハの斜視図、(c)シート配設工程により形成されたウエーハの外周部の一部拡大断面図である。
【
図3】(a)シート配設工程のさらに別の実施態様において柔軟層を形成する態様を示す斜視図、(b)(a)に示す柔軟層に平坦化シートを配設する態様を示す斜視図、(c)平坦化シートが配設されたウエーハの斜視図、(d)(c)により形成されたウエーハの外周部の一部拡大断面図である。
【
図5】(a)
図4に示すレーザー加工装置に配設されるレーザー光線照射手段の光学系を示すブロック図、(b)(a)に示すレーザー光線照射手段によりシート切断工程を実施する態様を示す斜視図である。
【
図6】(a)レーザー光線照射手段の別の実施形態の光学系を示すブロック図、(b)(a)に示すレーザー光線照射手段によりシート切断工程を実施する態様を示す斜視図である。
【
図7】シート切断工程により切断された保護シートの外周を除去する態様を示す斜視図である。
【
図8】(a)ウエーハ処理工程の実施態様を示す斜視図、(b)ウエーハ処理工程によりウエーハが個々のデバイスチップに分割された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に基づいて構成されるウエーハの処理方法に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0013】
図1には、本実施形態のウエーハの処理方法によって加工されるウエーハ10が示されている。ウエーハ10は、複数のデバイス12が分割予定ライン14によって区画されたデバイス領域16aと、このデバイス領域16aを囲繞する外周余剰領域16bとが表面10aに形成された半導体(例えばシリコン(Si))の円形のウエーハである。なお、
図1では、説明の都合上、デバイス領域16aと外周余剰領域16bとを区分する境界Lが2点鎖線で示されているが、ウエーハ10の表面10aに実際に形成されているものではない。
【0014】
本発明のウエーハの処理方法を実施するに際し、上記したウエーハ10を用意し、ウエーハ10の表面10a全面を覆う大きさの保護シートを配設するシート配設工程を実施する。該保護シートは、例えばウエーハ10の直径300mmよりも大きい寸法に設定されており、例えば、直径310mmの円形のシートである。保護シートとしては、例えば、加熱によって圧着することができる熱圧着シートT1を採用することができる。
【0015】
上記のウエーハ10を、
図1(a)に示すように、表面10aを上方に向けて作業テーブル2の上面2aに載置してワックス等により固定したならば、熱圧着シートT1をウエーハ10の表面10aに載置する。
【0016】
熱圧着シートT1としては、例えば、ポリオレフィン系シート、又はポリエステル系シートから選択することができる。該ポリオレフィン系シートとしては、例えば、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかから選択でき、該ポリエステル系シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシート、のいずれかから選択できる。
【0017】
熱圧着シートT1をウエーハ10の表面10aに載置したならば、
図1(b)に示す円柱状の加熱ローラ3を保護シートT1が載置されたウエーハ10の上方に位置付ける。加熱ローラ3は、矢印R1で示す方向に回転可能であり、且つ矢印R2で示す方向に移動自在に構成されている。加熱ローラ3には、電気ヒータおよび温度センサ(いずれも図示していない。)が内蔵されており、適宜の制御装置によって加熱ローラ3の外周面3aの温度が調整される。加熱ローラ3の外周面3aにはフッ素樹脂がコーティングされている。
【0018】
上記したように、加熱ローラ3を位置付けたならば、加熱ローラ3の電気ヒータを作動して、外周面3aの温度を、熱圧着シートT1が軟化すると共に粘着力を発揮する温度に調整する。熱圧着シートT1として、ポリオレフィン系シートのポリエチレン(PE)シートを選択した場合、該加熱時の温度は120~140℃の範囲で調整される。なお、熱圧着シートT1を熱圧着する加熱時の温度は、採用するシートの材料によって適宜調整されるものであり、加熱により軟化して粘着力を発揮する温度に設定される。
【0019】
次いで、加熱ローラ3で熱圧着シートT1を下方に押圧しながら加熱ローラ3を矢印R1で示す方向に回転すると共に、矢印R2で示す方向に移動して、熱圧着シートT1がウエーハ10の表面10aに密着して、ウエーハ10の表面10aに圧着する。なお、加熱ローラ3の外周面3aにはフッ素樹脂がコーティングされていることから、熱圧着シートT1に粘着力が生じても熱圧着シートT1が加熱ローラ3に巻き込まれることはない。以上によりシート配設工程が完了する。なお、熱圧着シートT1は、ウエーハ10に対して大きい寸法であることから、
図1(c)に示すように、熱圧着シートT1の外周T1aは、ウエーハ10の外周10cから外方向にはみ出している。
【0020】
本発明のシート配設工程は、上記した実施形態に限定されない。例えば、ウエーハ10の表面10aを保護する保護シートとして、上記した熱圧着シートT1に替えて、
図2に示す粘着シートT2を採用してもよい。図示の粘着シートT2は、例えばポリオレフィンのシートであり、貼着面となる下面T2a側であって、ウエーハ10の外周余剰領域16bに対応する領域に、糊剤が塗布された環状の粘着層T2cが形成されている。粘着シートT2の下面T2aにおいてウエーハ10のデバイス領域16aに対応する中央の領域(粘着層T2cの内側)と、粘着シートT2の上面T2bには粘着層は形成されない。
図2(b)に示すように、このような粘着シートT2をウエーハ10の表面10aに載置して貼着することによっても、シート配設工程が実現される。上記した実施形態と同様に、粘着シートT2は、ウエーハ10よりも大きい例えば直径310mmで形成されており、
図2(c)に示すように、粘着シートT2の粘着層T2cの外周側は、ウエーハ10の外周10cから外方向にはみ出すようになっている。
【0021】
さらに、本発明のシート配設工程は、保護シートとして、熱圧着シートT1、粘着シートT2のみを採用することに限定されない。例えば、上記したようにウエーハ10の表面10aに熱圧着シートT1、又は粘着シートT2を配設した場合、
図3(a)に例示するように(
図3(a)は保護シートとして熱圧着シートT1を配設した例を示している)、ウエーハ10の表面10aの凹凸に起因する凹凸T1bが発生する場合がある。そこで、
図3に示す実施形態では、上記の熱圧着シートT1を貼着した後、熱圧着シートT1の上面に対して、図示の凹凸T1bを吸収する柔軟層を形成すべく、例えば、粘度を有する液状樹脂22を供給する。該液状樹脂22は、図示の液状樹脂供給手段20のノズル21から規定量が滴下される。該液状樹脂22が滴下されたならば、
図3(b)に示すように、該柔軟層の表面を平坦化すべく、該柔軟層の上面に、平坦化シートT3を敷設する。該平坦化シートT3の材質は特に限定されないが、上記の熱圧着シートT1と比較して硬質で、均一な厚みの透明な樹脂のシートであり、例えばポリプロピレン(PP)シートである。該柔軟層を形成する液状樹脂22が紫外線により硬化する樹脂の場合は、上記の平坦化シートT3を配設した後、平坦化シートT3を介して液状樹脂22に紫外線を照射して硬化させる。この結果、
図3(c)、(d)に示すように、ウエーハ10の表面10aに熱圧着シートT1、柔軟層としての液状樹脂22、及び平坦化シートT3の3層からなる保護シートが形成され、シート配設工程が完了する。このように柔軟層と平坦化シートT3を含む保護シートも、
図3(d)に示すように、熱圧着シートT1の外周T1a、それに積層される液状樹脂22、平坦化シートT3の外周領域が、ウエーハ10の外周10cから外方向にはみ出すようになっている。
【0022】
なお、上記した説明では、加熱によって圧着する熱圧着シートT1をウエーハ10の表面10aに貼着し、その上に柔軟層(液状樹脂22)と平坦化シートT3とを配設する例を説明したが、本発明はこれに限定されず、熱圧着シートT1に替えて上記した粘着シートT2を配設した後に、同様に柔軟層としての液状樹脂22、平坦化シートT3を配設して保護シートとするようにしてもよい。また、上記した実施形態では、柔軟層として、紫外線により硬化する液状樹脂22を供給する例を示したが、凹凸T1bを吸収できる樹脂であればこれに限定されず、例えば時間経過や温度の低下により硬化する液状樹脂であってもよい。
【0023】
上記したように、ウエーハ10の表面10aに貼着された熱圧着シートT1又は粘着シートT2上に、柔軟層を介して平坦化シートT3を備えていることで、ウエーハ10の表面10aに熱圧着シートT1又は粘着シートT2等の柔らかいシートを貼着した場合に凹凸が生じる場合であっても、ウエーハ10の表面10a側を安定的に支持することができ、後述するウエーハ処理工程における該凹凸の影響を回避することができる。
【0024】
上記したようにシート配設工程を実施したならば、ウエーハ10に対して、以下に説明するシート切断工程、ウエーハ処理工程を実施する。なお、以下に説明する工程では、保護シートとして熱圧着シートT1を選択し、熱圧着によるシート配設工程が施されたウエーハ10(
図1(b)を参照)を処理するものとして説明する。
【0025】
図4には、シート切断工程を実施するのに好適なレーザー加工装置30が示されている。レーザー加工装置30は、基台30aと、該基台30a上に配設され被加工物を保持するための保持手段31と、該保持手段31をX軸方向、及び該X軸方向と直交するY軸方向に移動させる移動手段36と、レーザー光線照射手段40と、アライメントを実行するための撮像手段5と、を含み構成されている。
【0026】
保持手段31は、
図4に示すように、X軸方向において移動自在に基台30aに搭載された矩形状のX軸方向可動板32と、Y軸方向において移動自在にX軸方向可動板32に搭載された矩形状のY軸方向可動板33と、Y軸方向可動板33上に配設され、内部にパルスモータを備えることにより回転可能に構成された保持テーブル34とを備えている。保持テーブル34の上面34aは、通気性を有する部材により構成され、図示を省略する吸引手段に接続されている。
【0027】
移動手段36は、保持テーブル34をX軸方向に移動するX軸移動手段37と、保持テーブル34をY軸方向に移動するY軸移動手段38と、を備えている。X軸移動手段37は、モータ37aの回転運動を、ボールねじ37bを介して直線運動に変換してX軸方向可動板32に伝達し、基台30a上にX軸方向に沿って配設された一対の案内レール30b、30bに沿ってX軸方向可動板32をX軸方向に移動させる。Y軸移動手段38は、モータ38aの回転運動を、ボールねじ38bを介して直線運動に変換し、Y軸方向可動板33に伝達し、X軸方向可動板32上においてY軸方向に沿って配設された一対の案内レール35、35に沿ってY軸方向可動板33をY軸方向に移動させる。
【0028】
レーザー加工装置30は、基台30a上のX軸移動手段37、及びY軸移動手段38の側方に立設される垂直壁部39a及び垂直壁部39aの上端部から水平方向に延びる水平壁部39bからなる枠体39を備えている。該枠体39の水平壁部39bの内部には、上記のレーザー光線照射手段40を構成する光学系、及び撮像手段5が収容されている。
【0029】
図5(a)に、レーザー光線照射手段40の光学系の概略を示すブロック図を示す。レーザー光線照射手段40は、所望のレーザー加工条件に応じたパルスレーザー光線LBを発振する発振器43と、発振器43が発振したパルスレーザー光線LBをX軸方向に揺動するX軸ガルバノスキャナー44と、パルスレーザー光線LBをY軸方向に揺動するY軸ガルバノスキャナー45と、X軸方向およびY軸方向に揺動したパルスレーザー光線LBを保持テーブル34に保持される被加工物の所望の位置に照射するfθレンズ42を含む集光器41と、を備えている。
【0030】
X軸ガルバノスキャナー44およびY軸ガルバノスキャナー45は、図示を省略するミラー及び該ミラーの反射角度を調整する角度調整アクチュエータを有する公知の構成である。fθレンズ42は、ウエーハ10に対応する寸法で構成され、X軸ガルバノスキャナー44およびY軸ガルバノスキャナー45を制御することによりX軸方向およびY軸方向に揺動したパルスレーザー光線LBを、保持テーブル34の保持面34aの所望の位置に対して垂直に照射する。X軸ガルバノスキャナー44、Y軸ガルバノスキャナー45は、制御手段46によって制御される。
【0031】
上記した制御手段は、コンピュータにより構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央演算処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、検出した検出値、演算結果等を一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース及び出力インターフェースとを備えている(詳細についての図示は省略する)。該制御手段には上記のレーザー光線照射手段40の他、撮像手段5、表示手段6、X軸移動手段37、Y軸移動手段38等が接続されており、各作動部が制御される。
【0032】
本実施形態のレーザー加工装置30は、概ね上記したとおりの構成を備えており、このレーザー加工装置30を使用して実施されるシート切断工程について、以下に説明する。
【0033】
シート切断工程を実施するに際し、上記したウエーハ10の裏面10bを上方に、熱圧着シートT1側を下方に向け、保持テーブル34の上面34aに載置して、上記の吸引手段を作動して上面34aに負圧を生成して吸引保持する。次いで、移動手段36を作動して、保持テーブル34と共にウエーハ10を撮像手段5の下方に位置付けて撮像して、ウエーハ10、熱圧着シートT1の位置を検出し、上記の制御手段に記憶する。
【0034】
次いで、移動手段36を作動して、ウエーハ10をレーザー光線照射手段40の集光器41の下方に位置付ける。撮像手段5によって検出したウエーハ10、熱圧着シートT1の形状の情報に基づき、レーザー光線照射手段40の発振器43、X軸ガルバノスキャナー44、Y軸ガルバノスキャナー45を作動して、
図5(b)に示すように、集光器41から照射するレーザー光線LBの集光点を熱圧着シートT1に位置づけると共に、ウエーハ10の外周10cに対応する熱圧着シートT1上の環状の領域で、熱圧着シートT1に対して吸収性を有する波長のレーザー光線LBを矢印R3で示す方向に移動させながら照射して、ウエーハ10の外周10cからはみ出した熱圧着シートT1の外周T1aを環状に切断する。
【0035】
なお、レーザー光線照射手段40の発振器43から照射されるレーザー光線LBは、例えば以下の通りのレーザー加工条件に設定される。
波長 :355nm
繰り返し周波数 :10kHz
平均出力 :3W
スポット径 :10μm
加工送り速度 :100mm/s
【0036】
なお、上記した実施形態では、fθレンズ42を備えたレーザー光線照射手段40を使用して、シート切断工程を実施する例を示したが、本発明は、これに限定されない。例えば、上記のレーザー光線照射手段40に替えて、
図6(a)に示す、レーザー光線照射手段40’を備えるようにしてもよい。該レーザー光線照射手段40’は、上記したレーザー光線照射手段40が備える発振器43と同様の機能を備える発振器43’を備え、該発振器43’から照射されるレーザー光線LBは、光路を変換する反射ミラー47により反射され、集光レンズ42’を備える集光器41’に導かれて、保持テーブル34上に照射することが可能である。上記の撮像手段5によって検出されたウエーハ10の外周10c、熱圧着シートT1の形状に関する情報に基づき、移動手段36のX軸移動手段37及びY軸移動手段38を作動して、
図6(b)に示すように、ウエーハ10の外周10cに対応する熱圧着シートT1の環状の領域に集光器41’を位置付ける。そして、レーザー光線照射手段40’から照射するレーザー光線LBの集光点を熱圧着シートT1に位置付けて照射しながら、保持テーブル34を、図示を照射する回転駆動手段により矢印R4で示す方向に回転させて、ウエーハ10の外周10cから外方にはみ出した熱圧着シートT1の外周T1aを切断して、シート切断工程が完了する。
【0037】
なお、上記した実施形態では、シート切断工程を実施するに際し、ウエーハ10の裏面10bを上方に、熱圧着シートT1側を下方に向けて、保持テーブル34に載置して吸引保持してレーザー加工を実施するように説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ウエーハ10の裏面10b側を下方に、熱圧着シートT1側を上方に向けて保持テーブル34に載置して吸引保持し、熱圧着シートT1側から、ウエーハ10の外周10cに対応する領域の熱圧着シートT1にレーザー光線LBを照射して、熱圧着シートT1の外周T1aを切断するようにしてもよい。
【0038】
上記したシート切断工程を実施することにより、熱圧着シートT1の外周T1aが切断されて、
図7に示すように、矢印R5の方向に該外周T1aを引き上げることにより容易に除去することができ、熱圧着シートT1は、ウエーハ10の外周10cに沿った形状に加工される。
【0039】
なお、上記したシート切断工程は、保護シートとして熱圧着シートT1を選択した例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、保護シートとして粘着シートT2を選択した場合、保護シートとして熱圧着シートT1又は粘着シートT2の凹凸を吸収する柔軟層(液状樹脂22)を配設し、該柔軟層を平坦化する平坦化シートT3を配設して保護シートを形成した場合であっても、上記と同様の手順によりシート切断工程を実施することが可能である。
【0040】
上記したように、シート切断工程を実施したならば、ウエーハ10の裏面10bを処理するウエーハ処理工程を実施する。ウエーハ処理工程を実施するに際しては、ウエーハ10を、例えば
図8(a)に示す研削装置50(一部のみを示している)に搬送する。
図8(a)に示すように、研削装置50は、チャックテーブル51と、研削手段52を備えている。チャックテーブル51は、図示を省略する回転駆動手段を備え、上面が通気性を有する部材で形成されると共に図示を省略する吸引手段に接続されている。研削手段52は、図示しない回転駆動機構により回転させられる回転スピンドル52aと、回転スピンドル52aの下端に装着されたホイールマウント52bと、ホイールマウント52bに取り付けられ、下面に複数の研削砥石52dが環状に配設された研削ホイール52cとを備えている。
【0041】
研削装置50にウエーハ10を搬送したならば、ウエーハ10の裏面10bを上方に向けて、チャックテーブル51に載置して吸引保持する。次いで、研削手段52の回転スピンドル52aを
図8(a)において矢印R6で示す方向に、例えば6000rpmで回転させつつ、チャックテーブル51を矢印R7で示す方向に、例えば300rpmで回転させる。そして、図示を省略する研削水供給手段により、研削水をウエーハ10の裏面10b上に供給しつつ、研削砥石52dをウエーハ10の裏面10bに接触させ、研削ホイール52cを、例えば1μm/秒の研削送り速度で、矢印R8で示す方向(下方)に向けて研削送りする。この際、図示しない接触式の測定ゲージによりウエーハ10の研削量を測定しながら研削を進めることができ、ウエーハ10を仕上がり厚さになるまで研削する。そして、ウエーハ10が所定の仕上がり厚さになったならば、研削装置50の作動を停止して、ウエーハ10の裏面10bを研削するウエーハ処理工程が完了し、本実施形態におけるウエーハの処理方法が完了する。
【0042】
なお、上記したウエーハの処理方法におけるシート配設工程を実施する前に、ウエーハ10を、図示を省略する切削装置に搬送し、ウエーハ10の表面10aに形成された分割予定ライン14に、ウエーハ10の仕上がり厚さに相当する深さのハーフ溝100を形成しておくと、上記したウエーハ処理工程においてウエーハ10の裏面10bを研削することで、
図8(b)に示すように、ハーフ溝100をウエーハ10の裏面10bに露出させて、ウエーハ10を個々のデバイスチップ12’に分割することができる。
【0043】
上記した実施形態では、ウエーハ処理工程において、ウエーハ10を研削装置50に搬送して、ウエーハ10の裏面10bを研削する実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、図示を省略する研磨装置に搬送し、ウエーハ10の裏面10bを研磨する工程であってもよい。
【0044】
本実施形態のウエーハの処理方法によれば、シート切断工程では、ウエーハ10の外周10cに対応する領域の保護シートにレーザー光線LBを照射してウエーハ10の外周10cからはみ出した保護シートを切断しており、これにより、ウエーハ10の外周10cから該保護シートが剥がれたり、ウエーハの外周10cが傷つけられたりするという問題が解消される。
【符号の説明】
【0045】
2:作業テーブル
2a:上面
3:加熱ローラ
3a:外周面
5:撮像手段
6:表示手段
10:ウエーハ
10a:表面
10b:裏面
10c:外周
12:デバイス
12’:デバイスチップ
14:分割予定ライン
16a:デバイス領域
16b:外周余剰領域
20:液状樹脂供給手段
21:ノズル
22:液状樹脂(柔軟層)
30:レーザー加工装置
30a:基台
31:保持手段
32:X軸方向可動板
33:Y軸方向可動板
34:保持テーブル
36:移動手段
37:X軸移動手段
38:Y軸移動手段
39:枠体
40:レーザー光線照射手段
41:集光器
42:fθレンズ
43:発振器
44:X軸ガルバノスキャナー
45:Y軸ガルバノスキャナー
40’:レーザー光線照射手段
41’:集光器
42’:集光レンズ
43’:発振器
47:反射ミラー
50:研削装置
51:チャックテーブル
52:研削手段
52a:回転スピンドル
52c:研削ホイール
52d:研削砥石
T1:熱圧着シート
T1a:外周
T1b:凹凸
T2:粘着シート
T2a:下面
T2b:上面
T2c:粘着層
T3:平坦化シート