(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158801
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】魚介類プロファイリングシステム、その方法、プログラム及び学習済みモデル
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20120101AFI20231024BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231024BHJP
【FI】
G06Q50/02
G06T7/00 350B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068803
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】591079487
【氏名又は名称】広島県
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】友國 慶子
(72)【発明者】
【氏名】横山 詔常
(72)【発明者】
【氏名】後藤 孝文
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 泰範
【テーマコード(参考)】
5L049
5L096
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L096AA02
5L096AA06
5L096CA02
5L096CA08
5L096DA01
5L096EA39
5L096FA64
5L096GA40
5L096GA41
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】水産業者が魚介類から直接的に取得データを取得し入力すると、魚介類に対する客観的な商品評価値を推定できる魚介類プロファイリングシステムを提供することを課題とする。
【解決手段】過去において取得した、魚介類の画像・重さを含む参照用取得データから、魚介類の特徴量を抽出し、前記魚介類の特徴量と前記魚介類に対する商品評価値とを連関づけて得られた推定モデルを構築する推定モデル構築手段と、データ取得手段により取得した、商品評価値推定対象の魚介類の取得データを受け付ける魚介類情報受付手段と、前記魚介類情報受付手段から受け付けた前記取得データから、前記魚介類の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、前記特徴量抽出手段により得られた推定対象の魚介類の特徴量を推定モデルに入力し、推定対象の魚介類の商品評価値を出力する評価手段と、を備えた魚介類プロファイリングシステムにより解決ができた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚介類から取得可能な、カラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データから、前記魚介類に対する商品評価値を推定する魚介類プロファイリングシステムであって、
魚介類プロファイリングプログラムをインストールされた管理者情報端末が、
データ取得手段により取得した、商品評価値推定対象の魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データを受け付ける魚介類情報受付手段と、
前記魚介類情報受付手段から受け付けた前記取得データから、前記魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
前記特徴量抽出手段により得られた商品評価値推定対象の魚介類の特徴量を、前記特徴量に対応する商品評価値を推定する推定モデルに入力し、商品評価値推定対象の魚介類の商品評価値を出力する評価手段と、を備え、
さらに、前記評価手段から出力された複数の前記商品評価値を一覧にさせたい場合には、前記商品評価値推定対象の魚介類の前記商品評価値を所定の順に一覧にする魚介類プロファイル一覧を作成する魚介類プロファイル一覧作成手段を備えることを特徴とする魚介類プロファイリングシステム。
【請求項2】
魚介類から取得可能な、カラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データから、前記魚介類に対する商品評価値を推定する魚介類プロファイリングシステムであって、
水産業者側アプリケーションと管理者側アプリケーションとからなる魚介類プロファイリングプログラムのうちの水産業者側アプリケーションをインストールした複数の水産業者情報端末と、管理者側アプリケーションをインストールした管理者情報端末とがネットワークを介して接続され、
前記水産業者情報端末が、データ取得手段により取得した、商品評価値推定対象の魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データを受け付ける魚介類情報受付手段を備え、
前記水産業者情報端末又は前記管理者情報端末が、
前記魚介類情報受付手段から受け付けた前記取得データから、前記魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
前記特徴量抽出手段により得られた商品評価値推定対象の魚介類の特徴量を、前記特徴量に対応する商品評価値を推定する推定モデルに入力し、商品評価値推定対象の魚介類の商品評価値を出力する評価手段と、を備えた第一形態、
あるいは、
前記水産業者情報端末が前記魚介類情報受付手段後における前記特徴量抽出手段を、かつ前記管理者情報端末が前記特徴量抽出手段後における前記評価手段を備えた第二形態を、備え、
前記管理者情報端末が、前記評価手段後において、前記商品評価値推定対象の魚介類の商品評価値を所定の順に一覧にする魚介類プロファイル一覧を作成する魚介類プロファイル一覧作成手段を備えたことを特徴とする魚介類プロファイリングシステム。
【請求項3】
前記推定モデルが、過去において取得した、魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む参照用取得データから、魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量を抽出し、前記魚介類の特徴量と前記魚介類に対する商品評価値とを連関づける推定モデル構築手段により生成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の魚介類プロファイリングシステム。
【請求項4】
前記推定モデル構築手段は、魚介類に対する新たに取得した前記参照用取得データから抽出した特徴量、及び人による官能評価のデータセットに基づいて、前記推定モデルを更新することを特徴とする請求項3に記載の魚介類プロファイリングシステム。
【請求項5】
前記魚介類プロファイル一覧作成手段が、前記評価手段が新たな商品評価値を出力するごとに前記魚介類プロファイル一覧を自動的にアップデートすることを特徴とする請求項1又は2に記載の魚介類プロファイリングシステム。
【請求項6】
前記魚介類が牡蠣である場合に、魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データが、殻付き状態の平面視及び側面視のカラー又はグレースケール画像、前記牡蠣のむき身の平面視及び側面視のカラー又はグレースケール画像、前記むき身の断面のカラー又はグレースケール画像、殻付きの重さ、前記むき身の重さ・硬さ、殻付き牡蠣の香りの内の少なくとも一つ以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の魚介類プロファイリングシステム。
【請求項7】
前記魚介類が牡蠣である場合に、商品評価値が、旨味・濃厚さ、食感、サイズ、身のボリューム、香り、甘味の内の少なくとも二以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の魚介類プロファイリングシステム。
【請求項8】
前記魚介類が牡蠣である場合に、前記魚介類の色相・サイズ・重さを含む複数の特徴量として、前記カラー又はグレースケール画像の色から所定の部位ごとに色相・明度・彩度を算定し、前記カラー又はグレースケール画像の牡蠣全体又はむき身の輪郭線から牡蠣殻・むき身の所定の部位ごとにサイズ・体積・厚みを算定することを特徴とする請求項1又は2に記載の魚介類プロファイリングシステム。
【請求項9】
魚介類から取得可能な、カラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データから、前記魚介類に対する商品評価値を推定する魚介類プロファイリング方法であって、
測定データ取得工程により取得した、商品評価値推定対象の魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データを受け付ける魚介類情報受付工程と、
商品評価値推定対象の魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データから、魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量を抽出する特徴量抽出工程と、
前記推定対象の魚介類の特徴量を、前記特徴量に対応する商品評価値を推定する推定モデルに入力し、入力された前記特徴量に対応する商品評価値を推定し出力する評価工程と、を備え、
さらに、前記評価工程から出力された複数の前記商品評価値を一覧にさせたい場合には、前記商品評価値推定対象の魚介類の前記商品評価値を所定の順に一覧にする魚介類プロファイル一覧を作成する魚介類プロファイル一覧作成工程を備えることを特徴とする魚介類プロファイリング方法。
【請求項10】
請求項9における推定モデルが、過去において取得した、魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む参照用取得データから、魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量を抽出し、前記特徴量と、前記魚介類に対する商品評価値とを連関づける推定モデル構築工程で生成されることを特徴とする魚介類プロファイリング方法。
【請求項11】
前記管理者情報端末及び前記水産業者情報端末のそれぞれのコンピュータを、請求項1又は2に記載の魚介類プロファイリングプログラムの各手段として機能させることを特徴とする魚介類プロファイリングプログラム。
【請求項12】
魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データと、前記魚介類に対する商品評価値とが複数の魚介類サンプルの各々について対応付けられた学習情報に基づいて機械学習により生成され、評価対象となる魚介類の前記取得データが入力された場合に、前記魚介類の商品評価値を予測するための学習済みモデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚介類から直接的に取得可能な取得データから、魚介類に対する商品評価値を推定する魚介類プロファイリングシステム、その方法、プログラム及び学習済みモデルに関する。
【背景技術】
【0002】
魚介類を店頭ではなく通販サイトで購入するときに利用する、魚介類のインターネット通販サイトには、魚介類のカラー写真、価格、魚介類の種類などが記載され、味に関しては、例えばぷりぷり等主観的な表現で記載されている。
【0003】
特許文献1には、貝類の身入りの程度により前記貝類の品質を評価する品質評価装置であって、前記貝類のX線画像を取得して当該X線画像を解析することにより、前記貝類の身入りの程度を示す第1画像パラメータを複数種類取得する画像パラメータ取得部と、前記画像パラメータ取得部が取得した複数種類の前記第1画像パラメータを所定の推定式に代入することにより、前記貝類の身入りの程度の指標となる品質情報のスコアを算出するスコア算出部と、前記スコア算出部が算出した前記スコアに基づいて前記貝類の品質を評価する品質評価部と、を備えている品質評価装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、食品のおいしさを推定するおいしさ推定システムであって、食品の画像データ、当該食品に対するおいしさの評価情報、および当該食品を評価したユーザーのユーザー情報を含むデータを取得する取得部と、前記データに含まれるユーザー情報に基づき、当該データに対する重みを決定する決定手段と、前記決定手段にて決定した重みに応じて、前記データに含まれる画像データから1または複数の学習用の画像データを生成する生成手段と、前記生成手段にて生成された1または複数の学習用の画像データを入力データとし、前記データに含まれる評価情報を連関モデルとして学習処理を行うことで、食品のおいしさを推定するための学習済みモデルを生成する学習手段とを備えるおいしさ推定システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-163278号公報
【特許文献2】特開2021-86215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
魚介類のインターネット通販サイトには、魚介類のカラー写真、価格、魚介類の種類の他に味に関してはぷりぷり等の主観的表現が記載されていることがあるが、主観的表現は人によって異なるので、購入しようとする消費者にとって味を客観的に判断することは困難であるという問題があった。また、魚介類の味は産地・採取海域で異なるが、異なる産地・採取海域の魚介類にいずれも味に関して例えばぷりぷりという表現が表示されていたら、消費者には産地・採取海域での味の違いが理解できず、一方、産地・採取海域側にとっても他の産地・採取海域との違いを明確に表現することが困難であるという問題があった。このため、産地・採取海域が異なる他の魚介類との差別化を明確にして魚介類のブランド化を図ることが困難であるという問題もあった。
【0007】
特許文献1の発明は、貝類を生産者側の評価である、不良品、通常品、良品の3区分に分けることを目的にしており、需要者が貝類を選ぶときの需要者側の評価である、旨味やクリーミーさ等の官能的な評価には適用できないという問題があった。
【0008】
特許文献2の発明は、食品の画像データから食品のおいしさを例えば5段階で評価する発明であるが、評価者の職業で評価も重みを変えたり、評価者の舌の乳頭中の味蕾の数で重みづけを変えたりして評価する技術であることから、評価者の主観的な評価はできるが、評価者によっては同じ味を旨いと感じるか、甘くも苦くもないと感じるかが異なることもあり、食品を客観的なデータで評価できていないという問題があった。
【0009】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、水産業者が魚介類から直接的に取得データを取得し入力すると、魚介類に対する客観的な商品評価値を推定できる魚介類プロファイリングシステム、その方法、プログラム及び学習済みモデルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の魚介類プロファイリングシステムは、魚介類から取得可能な、カラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データから、前記魚介類に対する商品評価値を推定する魚介類プロファイリングシステムであって、魚介類プロファイリングプログラムをインストールされた管理者情報端末が、データ取得手段により取得した、商品評価値推定対象の魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データを受け付ける魚介類情報受付手段と、前記魚介類情報受付手段から受け付けた前記取得データから、前記魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、前記特徴量抽出手段により得られた商品評価値推定対象の魚介類の特徴量を、前記特徴量に対応する商品評価値を推定する推定モデルに入力し、商品評価値推定対象の魚介類の商品評価値を出力する評価手段と、を備え、さらに、前記評価手段から出力された複数の前記商品評価値を一覧にさせたい場合には、前記商品評価値推定対象の魚介類の前記商品評価値を所定の順に一覧にする魚介類プロファイル一覧を作成する魚介類プロファイル一覧作成手段を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の魚介類プロファイリングシステムは、魚介類から取得可能な、カラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データから、前記魚介類に対する商品評価値を推定する魚介類プロファイリングシステムであって、水産業者側アプリケーションと管理者側アプリケーションとからなる魚介類プロファイリングプログラムのうちの水産業者側アプリケーションをインストールした複数の水産業者情報端末と、管理者側アプリケーションをインストールした管理者情報端末とがネットワークを介して接続され、前記水産業者情報端末が、データ取得手段により取得した、商品評価値推定対象の魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データを受け付ける魚介類情報受付手段を備え、前記水産業者情報端末又は前記管理者情報端末が、前記魚介類情報受付手段から受け付けた前記取得データから、前記魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、前記特徴量抽出手段により得られた商品評価値推定対象の魚介類の特徴量を、前記特徴量に対応する商品評価値を推定する推定モデルに入力し、商品評価値推定対象の魚介類の商品評価値を出力する評価手段と、を備えた第一形態、あるいは、前記水産業者情報端末が前記魚介類情報受付手段後における前記特徴量抽出手段を、かつ前記管理者情報端末が前記特徴量抽出手段後における前記評価手段を備えた第二形態を、備え、前記管理者情報端末が、前記評価手段後において、前記商品評価値推定対象の魚介類の商品評価値を所定の順に一覧にする魚介類プロファイル一覧を作成する魚介類プロファイル一覧作成手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の魚介類プロファイリングシステムは、請求項1又は2において、前記推定モデルが、過去において取得した、魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む参照用取得データから、魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量を抽出し、前記魚介類の特徴量と前記魚介類に対する商品評価値とを連関づける推定モデル構築手段により生成されることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の魚介類プロファイリングシステムは、請求項3において、前記推定モデル構築手段は、魚介類に対する新たに取得した前記参照用取得データから抽出した特徴量、及び人による官能評価のデータセットに基づいて、前記推定モデルを更新することを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の魚介類プロファイリングシステムは、請求項1又は2において、前記魚介類プロファイル一覧作成手段が、前記評価手段が新たな商品評価値を出力するごとに前記魚介類プロファイル一覧を自動的にアップデートすることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の魚介類プロファイリングシステムは、請求項1又は2において、前記魚介類が牡蠣である場合に、魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データが、殻付き状態の平面視及び側面視のカラー又はグレースケール画像、前記牡蠣のむき身の平面視及び側面視のカラー又はグレースケール画像、前記むき身の断面のカラー又はグレースケール画像、殻付きの重さ、前記むき身の重さ・硬さ、殻付き牡蠣の香りの内の少なくとも一つ以上であることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の魚介類プロファイリングシステムは、請求項1又は2において、前記魚介類が牡蠣である場合に、商品評価値が、旨味・濃厚さ、食感、サイズ、身のボリューム、香り、甘味の内の少なくとも二以上であることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の魚介類プロファイリングシステムは、請求項1又は2において、前記魚介類が牡蠣である場合に、前記魚介類の色相・サイズ・重さを含む複数の特徴量として、前記カラー又はグレースケール画像の色から所定の部位ごとに色相・明度・彩度を算定し、前記カラー又はグレースケール画像の牡蠣全体又はむき身の輪郭線から牡蠣殻・むき身の所定の部位ごとにサイズ・体積・厚みを算定することを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の魚介類プロファイリング方法は、魚介類から取得可能な、カラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データから、前記魚介類に対する商品評価値を推定する魚介類プロファイリング方法であって、魚介類プロファイリングプログラムをインストールされた情報端末が、測定データ取得工程により取得した、商品評価値推定対象の魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データを受け付ける魚介類情報受付工程と、商品評価値推定対象の魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データから、魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量を抽出する特徴量抽出工程と、前記推定対象の魚介類の特徴量を前記特徴量に対応する商品評価値を推定する推定モデルに入力し、入力された前記特徴量に対応する商品評価値を推定し出力する評価工程と、を備え、さらに、前記評価工程から出力された複数の前記商品評価値を一覧にさせたい場合には、前記商品評価値推定対象の魚介類の前記商品評価値を所定の順に一覧にする魚介類プロファイル一覧を作成する魚介類プロファイル一覧作成工程を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項10に記載の魚介類プロファイリング方法は、請求項9における推定モデルが、過去において取得した、魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む参照用取得データから、魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量を抽出し、前記特徴量と、前記魚介類に対する商品評価値とを連関づける推定モデル構築工程で生成されることを特徴とする。
【0020】
請求項11に記載の魚介類プロファイリングプログラムは、前記管理者情報端末及び前記水産業者情報端末のそれぞれのコンピュータを、請求項1又は2に記載の魚介類プロファイリングプログラムの各手段として機能させることを特徴とする。
【0021】
請求項12に記載の学習済みモデルは、魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データと、前記魚介類に対する商品評価値とが複数の魚介類サンプルの各々について対応付けられた学習情報に基づいて機械学習により生成され、評価対象となる魚介類の前記取得データが入力された場合に、前記魚介類の商品評価値を予測するためのモデルである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、水産業者が商品評価値推定対象の魚介類から直接的に取得した取得データから、その魚介類の特徴量を抽出し、その特徴量に対応する客観的な商品評価値を推定することができるという効果を奏するので、需要者は味覚に対する、水産業者の主観的な表現ではなく客観的な商品評価値を知って購入するか否かの判断をすることができるという効果を奏する。
【0023】
また、従来ならば商品の特徴が異なっても同じような主観的表現が使用されており商品間の差別化が困難であったが、客観的な商品評価値の表示ができるようになったことにより商品間の差別化が可能になり、ブランドを構築しやすくなったという効果を奏する。
【0024】
請求項12に記載の発明は、生成された学習済みモデルにより、より精度よく商品評価値を推定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の魚介類プロファイリングシステムを構成する各手段の構成説明図である。
【
図2】本発明の魚介類プロファイリングシステムを構成する各手段の構成説明図で、(a)はインターネットに接続していない場合の構成説明図で、(b)はインターネットに接続した場合の構成説明図である。
【
図3】本発明の魚介類プロファイリング方法を構成する各工程の構成説明図である。
【
図5】特徴量と商品評価項目との連関説明図である。
【
図6】本発明の魚介類プロファイリングシステムを構成する情報端末の説明図である。
【
図7】魚介類プロファイル一覧のうちの1つの魚介類についての説明図である。
【
図8】魚介類プロファイル一覧の一例の説明図である。
【
図9】従来の魚介類のネット販売の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の魚介類プロファイリングシステム1は、魚介類の外観又は写真からは需要者が把握することが困難な商品評価値43を表示することができるので、例えば、従来のネット掲載61は、
図9に示すようにお刺身可とか、ぷりぷりといういかなる産地・採取海域でも当てはまり、産地・採取海域ごとの差別化が困難であった主観的な表現の説明であったのを、本発明のネット掲載60は、
図7又は
図8に示すように、甘味などの6つの商品評価値43を例えば1~5ランクで客観的な評価を掲載できるようになったので、例えばスーパーマーケットの魚売り場の棚に置かれた魚介類に価格のみでなく味等の客観的な商品評価値43を表示でき、インターネットのネット販売に掲載された魚介類に写真と価格に新たに味等の客観的な商品評価値43を表示できるシステムである。
【0027】
客観的な商品評価値43を表現可能とすることにより、魚介類の産地・採取海域が異なったり、季節が変わったりすると魚介類の味などが異なるが、異なる表現が可能になるので、魚介類の産地・採取海域別の差別化ができ魚介類のブランド化を促進させることができる。
【0028】
本発明の魚介類プロファイリングシステム1は、
図1に示すように、魚介類から取得可能な、カラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データ40から、前記魚介類に対する商品評価値43を推定する魚介類プロファイリングシステム1であって、魚介類プロファイリングプログラムをインストールされた管理者情報端末7が、データ取得手段10により取得した、商品評価値推定対象の魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データ40を受け付ける魚介類情報受付手段11と、前記魚介類情報受付手段11から受け付けた前記取得データ40から、前記魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量41を抽出する特徴量抽出手段3と、前記特徴量抽出手段3により得られた商品評価値推定対象の魚介類の特徴量41を、前記特徴量41に対応する商品評価値43を推定する推定モデル45に入力し、商品評価値推定対象の魚介類の商品評価値43を出力する評価手段4と、を備え、さらに、前記評価手段4から出力された複数の前記商品評価値43を一覧にさせたい場合には、前記商品評価値推定対象の魚介類の前記商品評価値43を所定の順に一覧にする魚介類プロファイル一覧30を作成する魚介類プロファイル一覧作成手段5を備える。
【0029】
また、本発明の魚介類プロファイリングシステム1は、
図2、
図4~
図6に示すように、魚介類から取得可能な、カラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データ40から、前記魚介類に対する商品評価値43を推定する魚介類プロファイリングシステム1であって、水産業者側アプリケーションと管理者側アプリケーションとからなる魚介類プロファイリングプログラムのうちの水産業者側アプリケーションをインストールした複数の水産業者情報端末8と、管理者側アプリケーションをインストールした管理者情報端末7とがネットワーク6を介して接続され、前記水産業者情報端末8が、データ取得手段10により取得した、商品評価値推定対象の魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データ40を受け付ける魚介類情報受付手段11を備え、前記水産業者情報端末8又は前記管理者情報端末7が、前記魚介類情報受付手段11から受け付けた前記取得データ40から、前記魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量41を抽出する特徴量抽出手段3と、前記特徴量抽出手段3により得られた商品評価値推定対象の魚介類の特徴量41を、前記特徴量41に対応する商品評価値43を推定する推定モデル45に入力し、商品評価値推定対象の魚介類の商品評価値43を出力する評価手段4と、を備えた第一形態、あるいは、 前記水産業者情報端末8が前記魚介類情報受付手段11後における前記特徴量抽出手段3を、かつ前記管理者情報端末7が前記特徴量抽出手段3後における前記評価手段4を備えた第二形態を、備え、前記管理者情報端末7が、前記評価手段4後において、前記商品評価値推定対象の魚介類の商品評価値43を所定の順に一覧にする魚介類プロファイル一覧30を作成する魚介類プロファイル一覧作成手段5を備える。
【0030】
また、前記推定モデル45は、過去において取得した、魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む参照用取得データ40aから、魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量41を抽出し、前記魚介類の特徴量41と前記魚介類に対する、甘味を含む商品評価値43とを連関づける推定モデル構築手段2により生成される。
【0031】
本発明の魚介類プロファイリングシステム1の実施形態には、
図2(a)に示すようにインターネットには接続せず、管理者情報端末7と測定データ取得手段10を備えた第一実施形態の魚介類プロファイリングシステム1a、
図2(b)に示すように、管理者側に設置された管理者情報端末7と、測定データ取得手段10と接続又は接続されていない、水産業者側に設置された水産業者情報端末8a、8b、8cと、がネットワーク6を介して接続された第二実施形態の魚介類プロファイリングシステム1bがある。
【0032】
そして、魚介類プロファイリングプログラムは、分割可能であり、表1に示すように、前記管理者情報端末7及び前記水産業者情報端末8のコンピュータを、魚介類情報受付手段11、特徴量抽出手段3、推定モデル構築手段2、評価手段4、及び、魚介類プロファイル一覧作成手段5のいずれかの手段として機能させる。前記管理者情報端末7と前記水産業者情報端末8とはネットワーク6で相互に送受信可能であるので、魚介類プロファイリングプログラムが分割されても目的の機能は達せられる。
【0033】
分割された魚介類プロファイリングプログラムは、表1に示すように、前記管理者情報端末7に管理者側アプリケーションとしてインストールされ、前記水産業者情報端末8に水産業者側アプリケーションとしてインストールされる。表1において、〇印箇所が前記管理者側アプリケーション又は前記水産業者側アプリケーションをインストールする情報端末であることを示している。
【0034】
前記魚介類プロファイリングプログラムの形態は、前記水産業者情報端末8又は前記管理者情報端末7が、前記魚介類情報受付手段11が受け付け記録した前記取得データ40から、前記魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量41を抽出する特徴量抽出手段3と、前記特徴量抽出手段3により得られた商品評価値推定対象の魚介類の特徴量41を、前記特徴量41に対応する商品評価値43を推定する推定モデル45に入力し、商品評価値推定対象の魚介類の商品評価値43を出力する評価手段4と、を備えた第一形態、あるいは、前記水産業者情報端末8が前記魚介類情報受付手段11後における前記特徴量抽出手段3を、かつ前記管理者情報端末7が前記特徴量抽出手段3後における前記評価手段4を備えた第二形態がある。
【0035】
【0036】
表1に示すように、第一形態の場合は、さらに、魚介類情報受付手段を除く魚介類プロファイリングプログラムが前記管理者情報端末7にインストールされた第一形態(A)と、魚介類プロファイル一覧作成手段を除く魚介類プロファイリングプログラムが前記水産業者情報端末8にインストールされた第一形態(B)がある。
【0037】
次に、
図6に示すように、前記管理者情報端末7は、制御部50a、情報処理部51a、表示部52a、記憶部53a、送受信部54a、表示画面56aを備え、前記水産業者情報端末8は、制御部50b、情報処理部51b、表示部52b、記憶部53b、送受信部54b、表示画面56bを備えている。いずれの情報端末とも制御部50a又は50bにより制御される。
【0038】
次に、魚介類プロファイリングシステム1について説明する。魚介類プロファイリングシステム1は、
図1に示すように各手段から構成されている。前記各手段の機能は、事前に推定モデル構築手段2により推定モデル45を生成し、その後に、商品評価値推定対象の魚介類に対して、測定データ取得手段10により取得データ40を取得し、前記取得データ40を魚介類情報受付手段11により入力して記憶し、次に特徴量抽出手段3により前記取得データ40から魚介類の特徴量41を抽出し、次に評価手段4により、前記推定モデル45に前記特徴量41を入力し推定される商品評価値43を出力するシステムである。さらに、魚介類プロファイル一覧作成手段5により前記商品評価値43を所定の順に一覧にする魚介類プロファイル一覧30を作成する。
【0039】
魚介類は、魚類、貝類、エビ、カニ、ウニなどの養殖も含めた水産物であるので、魚介類の種類は多岐にわたることから、本発明の魚介類プロファイリングシステム1については、事例として牡蠣について以下に説明する。
【0040】
まず、データ測定手段10について説明する。魚介類から直接的に取得できる、魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データ40を取得するデータ測定手段10としては、例えば、魚介類の外観の平面視や側面視からのカラー又はグレースケール画像を撮影可能なスキャナ又はカメラ、魚介類を逆光からのカラー又はグレースケール画像を撮影可能なスキャナ又はカメラ、魚介類の重さを測定可能な秤、魚介類の硬さを測定可能な硬さ計、魚介類の香りを測定可能な匂い測定器などがある。なお、魚介類の商品評価項目によって必要な取得データ40が異なるため、取得データ40の取得に適する測定器を選択する。
【0041】
なお、本発明において、取得データ40には、スキャナやカメラで撮像した画像、秤で測定した重さ、硬さ計で測定した硬さ、匂い測定器で測定した香りなどが含まれる。魚介類が牡蠣である場合に牡蠣から直接的に取得する取得データ40の一例を表2に示す。
【0042】
【0043】
表2から、スキャナ又はカメラで撮像して取得する取得データ40は、殻付き牡蠣の外観の平面視のカラー又はグレースケール画像、殻付き牡蠣の外観の側面視のカラー又はグレースケール画像、逆光での外套膜のカラー又はグレースケール画像、むき身の平面視のカラー又はグレースケール画像、むき身の側面視のカラー又はグレースケール画像、むき身の断面のカラー又はグレースケール画像、消化管の断面のカラー又はグレースケール画像があり、秤で取得する取得データ40は、殻付き牡蠣の重さ、むき身の重さがあり、硬さ計で取得する取得データ40は、むき身の硬さがあり、匂い測定器で取得する取得データ40は、殻付き牡蠣の香りがある。取得データ40は、魚介類の特徴量41が抽出可能なものであればよいので、魚介類の特徴量41が抽出できるならば、前記取得データ40は、前記種々のカラー又はグレースケール画像、前記殻付き牡蠣の重さ、前記むき身の重さ、前記むき身の硬さ、及び、前記殻付き牡蠣の香りの中から一つ以上でよい。
【0044】
前記取得データ40は、牡蠣に関してもこれらの項目に限定されるものではなく、商品評価項目の変更や商品評価値43の見直しによって必要な特徴量41を変更しなければならない場合には、前記取得データ40の取得対象部位も追加や削除などの変更がある。
【0045】
カラースケール画像の場合は被写体である魚介類の色相などRGB値が抽出され、サイズや体積も前記カラースケール画像から所定の部位の長さを読み取って抽出することができ、グレースケール画像の場合も白から黒までの灰色の明暗で表現されているので被写体である魚介類の色相などRGB値が抽出され、サイズや体積も前記グレースケール画像から所定の部位の長さを読み取って抽出することができる。例えば、被写体である魚介類の部位の色が赤系の場合はカラースケールの方が商品評価値43に差が出やすいので適し、黒系の場合はカラースケールでもグレースケールでも商品評価値43に差が出にくいのでいずれでもよく、被写体の魚介類の部位の色によって選択すればよい。
【0046】
また、前記スキャナやカメラで撮像した画像で魚介類のサイズを測定するため、例えば全国各地の水産業者がそれぞれ異なる場所で撮像した画像であっても、画像上の長さの目盛は同一で画像のRGB値を同じ条件下で比較できるようにする。
【0047】
例えば、被写体である魚介類をガラス板の上に載置して撮像する場合、前記ガラス板上に載置する被写体である魚介類の位置、被写体と照明器具との間隔、被写体に対する下方からの照明角度、被写体に対する上方からの照明角度、被写体の下のガラス板とカメラ又はスキャナのレンズとの間隔、被写体の周囲を外からの光の入射を防ぐ遮光壁、囲われた空間の内壁面の反射板、カメラ又はスキャナの型式などを、どの水産業者間においても同一とする撮影手段・方法で撮像する。
【0048】
さらに、画像上で遠近感のある画像の場合には正確な長さの測定ができないので、ガラス板に対して撮影手段が平行移動をするスキャナで撮影することや、カメラで撮影した画像に遠近の補正を実施することなど、遠近感を解消させた画像を取得する。
【0049】
次に、魚介類情報受付手段11について説明する。前記測定データ取得手段10で取得された魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データ40は、魚介類情報受付手段11により、
図2(a)に示すようにインターネットに接続しない場合は前記管理者情報端末7の記憶部53aに記憶され、
図2(b)に示すようにインターネットに接続させた場合は、水産業者側に設置した前記水産業者情報端末8の記憶部53bに記憶される。
【0050】
次に、特徴量抽出手段3について説明する。前記特徴量抽出手段3は、前記魚介類情報受付手段11により受け付けた前記取得データ40から、前記魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量41を抽出する。
【0051】
前記特徴量41は、一種類の魚介類間の産地、ブランド、又は、季節による相違点を顕在化させるように特徴を浮き彫りにするものである。そのため、前記特徴量41は魚介類の種類によって異なるものであるので、前記魚介類の種類ごとに設定する。
【0052】
例として、魚介類が牡蠣の場合の前記特徴量41としては、
図4に示すように、例えば、殻付き牡蠣の外観の色相・明度・彩度、殻付き牡蠣のサイズ・体積、外套膜の光の透過率、むき身の外観の色相・明度・彩度、むき身の断面の色相・明度・彩度、むき身のサイズ・体積、むき身の厚み、消化管の色相・明度・彩度、殻付き牡蠣の重さ、むき身の重さ、むき身の硬さ、殻付き牡蠣の香り指数などがある。前記特徴量41はこれらの項目に限定されるものではなく、商品評価項目の変更や商品評価値43の見直しによって新たな特徴量41の項目の追加等の変更がある。
【0053】
前記特徴量41は、同一種類の魚介類間の差別化・相違点を顕在化させるものであるから、数値で表せるようにする。例えば、前記特徴量41を数値で表現するために、重さ、硬さ、香り指数に関する取得データ40は取得時点で数値になっているが、前記色相・明度・彩度に対してはRGB法により、R値、G値、B値、明度値、彩度値での数値で表現し、サイズや体積は、取得データ40であるカラー又はグレースケール画像から所定の部位のサイズを検出して所定の式で算出する。
【0054】
よって、前記取得データ40から抽出する前記特徴量41としては、例えば、殻付き牡蠣のサイズは縦×横×高さ、むき身の体積、むき身の重さ、むき身の硬さ、殻付き牡蠣の香り指数、R値、G値、B値、明度値、彩度値という数値を、牡蠣の部位を決め、部位ごとに抽出する。
【0055】
例えば、
図4に示すように、取得データ40のむき身の平面視のカラー又はグレースケール画像α及びむき身の側面視のカラー又はグレースケール画像βから特徴量41としてむき身の外観の色相・明度・彩度aであるR値、G値、B値、明度値、彩度値を抽出する。
【0056】
また、前記抽出した特徴量41は産地・採取海域又は採取時期で異なるので、魚介類の特徴を採取時期ごとに産地・採取海域別に差別化できるように抽出する。
【0057】
次に、前記推定モデル構築手段2について説明する。前記推定モデル構築手段2は前記推定モデル45を生成する手段である。前記推定モデル45は、
図10に示すように、過去において取得した、魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む参照用取得データ40aから、魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量41を抽出し、前記魚介類の特徴量41と前記魚介類に対する商品評価値43とを連関づける推定モデル構築手段2により生成される。
【0058】
まず、商品評価値43について説明する。商品評価値43は魚介類に対する客観的評価値である。前記商品評価値43の項目は、
図5に示すように、例えば、前記魚介類が牡蠣である場合に、旨味・濃厚さ、食感、サイズ、身のボリューム、香り、甘味を設定する。前記商品評価値43は、インターネットに掲載された牡蠣の数多くの評価の語句群から上位の語句を選択したものであるが、これらに限定されず、市場動向やなどの新たな情報に基づいて、他の商品評価値43を追加してもよく、又は商品評価値43の一部を削除してもよい。また、魚介類の差別化が表現できればよいので前記商品評価値43の項目数が二項目で差別化ができることもあるので、前記商品評価値43の項目数は二以上でよい。なお、商品評価項目である前記旨味・濃厚さについて、牡蠣業界では一般的に濃厚さという言葉が使われ濃厚さは旨味のことを意味しているが、旨味のみでは牡蠣業界に通用する濃厚さの意味が伝わず、濃厚さのみでは何の味かが一般消費者にはわかりにくいことから、あえて旨味・濃厚さという語句を商品評価の項目とした。
【0059】
前記商品評価値43は、客観性を有するようにするため可能な限り測定器を使用する。例えば、食感にはテクスチャー試験機、旨味・濃厚さや甘味には味覚センサ、香りには匂い測定器、身のボリュームには秤、サイズ及び身のボリュームには長さ測定器を使用する。
【0060】
そして、商品評価項目ごとに商品を測定した真値の最大値と最小値との範囲を所定の幅で分けて表現したものを商品評価値43という。前記真値は測定器による測定データを基本とするが、前記測定データに差が出にくい場合などの場合には、人による官能評価も代替可能とする。前記商品評価値43は、例えば5段階評価であり、甘味ランク1とか甘味ランク5とかの評価の表示である。これにより、商品評価値43の相違を明確に表示でき、
図7又は
図8に示すように、レーダーチャート等でわかりやすく表示できる。
【0061】
前記推定モデル45は、魚介類の種類によっても異なり、同じ種類の魚介類であっても商品評価項目で異なる。よって、前記推定モデル45は、魚介類の種類ごとに、かつ、商品評価項目ごとに生成する。
【0062】
前記魚介類のサイズ縦×横×高さ、体積、重さ、硬さ、香り指数、R値、G値、B値、明度値、彩度値を含む特徴量41と、前記旨味・濃厚さ、食感、サイズ、身のボリューム、香り、甘味のランクとの連関付けは、前記商品評価値43の項目ごとに最大値と最小値との範囲で決めたランクと、前記特徴量41の各構成部分の連関がとれるように、前記特徴量41の各構成部分にそれぞれ重み付け係数をかけたものを加減乗除させた数式を生成する。前記数式が推定モデル45であり、前記旨味・濃厚さ、食感、サイズ、身のボリューム、香り、甘味などの商品評価値43の評価項目ごとに生成する。
【0063】
例えば、サイズ縦×横×高さ×重み付け係数A、体積×重み付け係数B、重さ×重み付け係数C、硬さ×重み付け係数D、香り指数×重み付け係数E、R値×重み付け係数F、G値×重み付け係数G、B値×重み付け係数H、明度値×重み付け係数I、彩度値×重み付け係数Jを加減乗除させた推定式を生成する。その結果得られた数値が当てはまる前記商品評価値43のランクに前記商品評価値43が推定される。
【0064】
求めたい商品評価値43の評価項目を選択して、前記推定モデル45に前記特徴量41を入力すると、商品評価値43を推定した魚介類に対して、選択した商品評価項目についての商品評価値43を推定させることができる。
【0065】
例えば、
図5に示すように、商品評価値43のうちの甘味についてのランクを推定させたい場合は、特徴量41のむき身の外観の色相(R値、G値、B値)・明度(明度値)・彩度(彩度値)a、むき身の断面の色相(R値、G値、B値)・明度(明度値)・彩度(彩度値)b、外套膜の光の透過率cの各特徴量41を、前記特徴量41それぞれに重み付け係数を乗じたものを加減乗除させた数式である推定モデル45に入力させて、出力として商品評価値43を求めることができ、前記商品評価値43に該当するランクが得られる。
【0066】
そして、前記推定モデル構築手段2は、魚介類に対する新たに取得した前記参照用取得データ40aから抽出した特徴量41、及び人による官能評価のデータセットに基づいて、前記推定モデル45を更新する。前記データセットとは、測定された特徴量41と、これに対応する商品評価値43とをセットしたものをいう。
【0067】
したがって、前記データセットを増強することは前記推定モデル45の推定精度を高めることにつながる。
【0068】
そして、前記推定モデル45を管理者情報端末7の記憶部53a又は水産業者情報端末8の記憶部53bに記憶する。
【0069】
次に、商品評価値推定対象の魚介類についての商品評価値43を推定するときの、本発明の魚介類プロファイリングシステム1におけるコンピュータの制御について説明する。
【0070】
まず、前段階である前記測定データ取得手段10である。前記測定データ取得手段10は、魚介類から直接的に取得できる、魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データ40を取得する。
【0071】
次に、前記魚介類情報受付手段11である。前記魚介類情報受付手段11は、前記測定データ取得手段10により、表1に示すような、商品評価値推定対象の魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データ40を取得する。
【0072】
コンピュータを魚介類情報受付手段11として機能させる魚介類プロファイリングプログラムがインストールされている管理者情報端末7の制御部50a又は水産業者情報端末8の制御部50bが、情報処理部51a又は51bに、前記取得データ40を受付させ、前記管理者情報端末7の記憶部53a又は前記水産業者情報端末8の記憶部53bに記憶させる。なお、前記管理者情報端末7の場合は、送受信部54aで前記水産業者情報端末8から送信された前記取得データ40を受信させた後に受付させ記憶させる。
【0073】
次に、特徴量抽出手段3である。前記特徴量抽出手段3は、前記魚介類情報受付手段11から受け付けた前記取得データ40から、前記魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量41を抽出する。すなわち、魚介類が牡蠣の場合、前記カラー又はグレースケール画像の色から所定の部位ごとに色相・明度・彩度を算定し、前記カラー又はグレースケール画像の牡蠣全体又はむき身の輪郭線から牡蠣殻・むき身の所定の部位ごとにサイズ・体積・厚みを算定する。
【0074】
コンピュータを特徴量抽出手段3として機能させる魚介類プロファイリングプログラムがインストールされている管理者情報端末7の制御部50a又は水産業者情報端末8の制御部50bが、情報処理部51a又は51bに、
図4に示すように、記憶されている前記取得データ40から魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量41を抽出させる。この抽出された特徴量41によって商品評価値推定対象の魚介類の特徴が浮き彫りになる。
【0075】
次に、評価手段4である。前記評価手段4は、前記特徴量抽出手段3により得られた商品評価値推定対象の魚介類の特徴量41を、前記特徴量41に対応する商品評価値43を推定する推定モデル45に入力し、商品評価値推定対象の魚介類の商品評価値43を出力する。
【0076】
コンピュータを評価手段4として機能させる魚介類プロファイリングプログラムがインストールされている管理者情報端末7の制御部50a又は水産業者情報端末8の制御部50bが、情報処理部51a又は51bに、記憶部53a又は53bに記憶されている前記推定モデル45に前記特徴量41を入力させて、
図5に示すように、商品評価値43を出力させ、前記商品評価値43を記憶部53a又は53bに記憶させる。
【0077】
次に、魚介類プロファイル一覧作成手段5である。前記魚介類プロファイル一覧作成手段5は、前記評価手段4から出力された複数の前記商品評価値43を一覧にさせたい場合に、前記商品評価値推定対象の魚介類の前記商品評価値43を所定の順に一覧にする魚介類プロファイル一覧30を作成する。
【0078】
コンピュータを魚介類プロファイル一覧作成手段5として機能させる魚介類プロファイリングプログラムがインストールされている管理者情報端末7の制御部50aが、情報処理部51aに、
図8に示すように、前記商品評価値推定対象の魚介類の前記商品評価値43を所定の順に一覧にする魚介類プロファイル一覧30を作成させる。前記魚介類プロファイル一覧30を、制御部50aが表示部52aに表示画面56aに表示させる。この後、前記水産業者情報端末8の制御部50bは前記魚介類プロファイル一覧30を送受信部54bで受信させて表示部52に表示画面56bに表示させることができる。前記所定の順とは、前記評価手段4から新たな魚介類の前記商品評価値43の情報が出力される順を意味する。
【0079】
そして、前記魚介類プロファイル一覧作成手段5として機能する前記制御部50aは、情報処理部51aに、前記評価手段4が新たな商品評価値43を出力するごとに前記魚介類プロファイル一覧30を自動的にアップデートさせる。魚介類は季節が変わると味なども変わるので、季節の変わるごとにアップデートさせることが必要である。
【0080】
本発明の魚介類プロファイリングシステム1は、
図9に示すような従来のネット掲載61に比較して、
図7又は
図8に示すように、客観的な6つの商品評価値43がレーダーチャートを用いて5段階で表示される。前記レーダーチャートを含む魚介類の画面は、管理者情報端末7の制御部50aにより所定のウェブサイトに掲載可能である。
【0081】
次に、魚介類プロファイリング方法20について説明する。魚介類プロファイリング方法20は、
図3に示すように、魚介類から取得可能な、カラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データ40から、前記魚介類に対する商品評価値43を推定する魚介類プロファイリング方法20であって、測定データ取得工程25により取得した、商品評価値推定対象の魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データ40を受け付ける魚介類情報受付工程26と、商品評価値推定対象の魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データ40から、魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量41を抽出する特徴量抽出工程22と、前記推定対象の魚介類の特徴量41を、前記特徴量41に対応する商品評価値43を推定する推定モデル45に入力し、入力された前記特徴量41に対応する商品評価値43を推定し出力する評価工程23と、を備え、さらに、前記評価工程23から出力された複数の前記商品評価値43を一覧にさせたい場合には、前記商品評価値推定対象の魚介類の前記商品評価値43を所定の順に一覧にする魚介類プロファイル一覧30を作成する魚介類プロファイル一覧作成工程24を備える。
【0082】
前記推定モデル45は、過去において取得した、魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む参照用取得データ40aから、魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量41を抽出し、前記特徴量41と、前記魚介類に対する商品評価値43とを連関づける推定モデル構築工程21で生成される。前記推定モデル45を記憶する。
【0083】
次に、前記魚介類情報受付工程26である。前記前記魚介類情報受付工程26は、測定データ取得工程25で取得した商品評価値推定対象の魚介類の取得データ40を受付、管理者情報端末7の記憶部53a又は水産業者情報端末8の記憶部53bに記憶する。
【0084】
前記取得データ40は、魚介類が牡蠣の場合、魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データ40が、殻付き状態の平面視及び側面視のカラー又はグレースケール画像、前記牡蠣のむき身の平面視及び側面視のカラー又はグレースケール画像、前記むき身の断面のカラー又はグレースケール画像、殻付きの重さ、前記むき身の重さ・硬さ、殻付き牡蠣の香りの内の少なくとも一つ以上である。
【0085】
次に、特徴量抽出工程22である。前記特徴量抽出工程22は、商品評価値推定対象の魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データ40から、
図4に示すように、魚介類の色相・サイズ・重さを含む特徴量41を抽出する。
【0086】
次に、評価工程23である。前記評価工程23は、前記特徴量41に対応する商品評価値43を推定する推定モデル45に、前記特徴量41を入力し、入力された前記特徴量41に対応する商品評価値43を推定し出力し、記憶部53a又は53bに記憶する。
【0087】
前記商品評価値43は、前記魚介類が牡蠣である場合に、商品評価値43が、旨味・濃厚さ、食感、サイズ、身のボリューム、香り、甘味の内の少なくとも二以上である。
【0088】
次に、前記魚介類プロファイル一覧作成工程24である。前記魚介類プロファイル一覧作成工程24は、前記評価工程23から出力された複数の前記商品評価値43を一覧にさせたい場合に、前記商品評価値推定対象の魚介類の前記商品評価値43を所定の順に一覧にする魚介類プロファイル一覧30を作成する。
【0089】
そして、インターネットに掲載する場合のように複数の魚介類の一覧を作成するときは、魚介類プロファイル一覧作成工程24において、
図8に示すような複数の魚介類の商品評価値43が記載された魚介類プロファイル一覧30が作成される。例えば
図8に示すような魚介類の写真とともに商品評価値43のレーダーチャートや採取海域や採取時期が表示された魚介類の紹介の一覧を表示することができる。
【0090】
次に、魚介類プロファイリングプログラムについて説明する。前記魚介類プロファイリングプログラムは、前記管理者情報端末7及び前記水産業者情報端末8のそれぞれのコンピュータを、魚介類プロファイリングプログラムの各手段として機能させる。
【0091】
次に、学習済みモデルについて説明する。前記学習済みモデルは、魚介類のカラー又はグレースケール画像・重さを含む取得データ40と、前記魚介類に対する商品評価値43とが複数の魚介類サンプルの各々について対応付けられた学習情報に基づいて機械学習により生成され、評価対象となる魚介類の前記取得データ40が入力された場合に、前記魚介類の商品評価値43を予測するためのモデルである。
【符号の説明】
【0092】
1 魚介類プロファイリングシステム
2 推定モデル構築手段
3 特徴量抽出手段
4 評価手段
5 魚介類プロファイル一覧作成手段
6 ネットワーク
7 管理者情報端末
8 水産業者情報端末
10 データ取得手段
11 魚介類情報受付手段
20 魚介類プロファイリング方法
21 推定モデル構築工程
22 特徴量抽出工程
23 評価工程
24 魚介類プロファイル一覧作成工程
25 測定データ取得工程
26 魚介類情報受付工程
30 魚介類プロファイル一覧
40 取得データ
40a 参照用取得データ
41 特徴量
43 商品評価値
45 推定モデル
50 制御部
51 情報処理部
52 表示部
53 記憶部
54 送受信部
56 表示画面
60 ネット掲載
61 ネット掲載