(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158940
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】フレキシブル光学積層体
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20231024BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231024BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231024BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20231024BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231024BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231024BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20231024BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
G06F3/041 400
G02B5/30
H01L27/32
H05B33/02
H05B33/14 A
G09F9/00 313
G09F9/00 366A
B32B7/023
G06F3/044 122
G06F3/041 640
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069012
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 恩瑛
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4F100
5G435
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】光学フィルムとタッチセンサ層とを備えるフレキシブルな光学積層体であって、タッチセンサ性能及び耐屈曲性が良好である光学積層体を提供する。
【解決手段】前面板、光学フィルム及びタッチセンサ層を含むフレキシブル光学積層体であって、タッチセンサ層が電極層を含み、該電極層がメッシュ構造を有するフレキシブル光学積層体が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面板、光学フィルム及びタッチセンサ層を含むフレキシブル光学積層体であって、
前記タッチセンサ層は、電極層を含み、
前記電極層は、メッシュ構造を有する、フレキシブル光学積層体。
【請求項2】
前記電極層は、金属酸化物層と、金属単体層とを含む、請求項1に記載のフレキシブル光学積層体。
【請求項3】
前記電極層は、前記前面板から順に、前記金属酸化物層と、前記金属単体層とを含む、請求項2に記載のフレキシブル光学積層体。
【請求項4】
前記金属酸化物層が多層構造を有する、請求項2に記載のフレキシブル光学積層体。
【請求項5】
前記メッシュ構造の線幅が1μm以上7μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のフレキシブル光学積層体。
【請求項6】
前記タッチセンサ層の面抵抗が10Ω/□以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のフレキシブル光学積層体。
【請求項7】
前記光学フィルムが円偏光板である、請求項1~4のいずれか1項に記載のフレキシブル光学積層体。
【請求項8】
前記光学フィルムの厚みが50μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のフレキシブル光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置に代表される表示装置では、屈曲等を可能にしたフレキシブルディスプレイが知られている。特許文献1には、複数の粘着剤層と、少なくとも偏光膜を含む光学フィルムとを含むフレキシブル画像表示装置用積層体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フレキシブル表示装置に用いることができるフレキシブルな光学部材としては、所定の光学機能を有する光学フィルムとタッチセンサ層とを備える積層体が挙げられる。
【0005】
本発明の目的は、光学フィルムとタッチセンサ層とを備えるフレキシブルな光学積層体であって、タッチセンサ性能及び耐屈曲性が良好である光学積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示されるフレキシブル光学積層体を提供する。
[1] 前面板、光学フィルム及びタッチセンサ層を含むフレキシブル光学積層体であって、
前記タッチセンサ層は、電極層を含み、
前記電極層は、メッシュ構造を有する、フレキシブル光学積層体。
[2] 前記電極層は、金属酸化物層と、金属単体層とを含む、[1]に記載のフレキシブル光学積層体。
[3] 前記電極層は、前記前面板から順に、前記金属酸化物層と、前記金属単体層とを含む、[2]に記載のフレキシブル光学積層体。
[4] 前記金属酸化物層が多層構造を有する、[2]又は[3]に記載のフレキシブル光学積層体。
[5] 前記メッシュ構造の線幅が1μm以上7μm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のフレキシブル光学積層体。
[6] 前記タッチセンサ層の面抵抗が10Ω/□以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のフレキシブル光学積層体。
[7] 前記光学フィルムが円偏光板である、[1]~[6]のいずれかに記載のフレキシブル光学積層体。
[8] 前記光学フィルムの厚みが50μm以下である、[1]~[7]のいずれかに記載のフレキシブル光学積層体。
【発明の効果】
【0007】
光学フィルムとタッチセンサ層とを備えるフレキシブルな光学積層体であって、タッチセンサ性能及び耐屈曲性が良好である光学積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るフレキシブル光学積層体の一例を模式的に示す概略断面図である。
【
図2】本発明に係るフレキシブル光学積層体の他の一例を模式的に示す概略断面図である。
【
図3】円偏光板の一例を模式的に示す概略断面図である。
【
図4】電極層の一例を模式的に示す概略断面図である。
【
図5】タッチセンサ層の一例を模式的に示す概略断面図である。
【
図6】屈曲性評価試験の方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下のすべての図面は、本発明の理解を助けるために示すものであり、図面に示される各構成要素のサイズや形状は、実際の構成要素のサイズや形状とは必ずしも一致しない。
【0010】
<フレキシブル光学積層体>
(1)フレキシブル光学積層体の構成
本発明に係るフレキシブル光学積層体(以下、単に「光学積層体」ともいう。)は、前面板、光学フィルム及びタッチセンサ層を含む。光学積層体における光学フィルム及びタッチセンサ層の積層位置は特に限定されない。
【0011】
図1は、光学積層体の一例を模式的に示す概略断面図である。
図1に示される光学積層体は、前面板10、第1貼合層15、光学フィルム20、第2貼合層25及びタッチセンサ層30をこの順に含む。
【0012】
図2は、光学積層体の他の一例を模式的に示す概略断面図である。
図2に示される光学積層体は、前面板10、第1貼合層15、タッチセンサ層30、第2貼合層25及び光学フィルム20をこの順に含む。
【0013】
本明細書において、フレキシブル光学積層体における「フレキシブル」とは、後述する[実施例]の項に示す屈曲性の評価試験において、光学積層体を構成するいずれかの層に最初にクラックが生じるまでの屈曲回数が10万回以上であることを意味し、該屈曲回数は、好ましくは15万回以上、より好ましくは20万回以上である。
【0014】
光学積層体はフレキシブルであることから、前面板10側を内側にして屈曲すること(以下、「インフォールド」ともいう。)ができ、あるいは、前面板10側を外側にして屈曲すること(以下、「アウトフォールド」ともいう。)ができる。屈曲には、曲げ部分に曲面が形成される折り曲げの形態が含まれる。折り曲げの形態において、折り曲げた内面の屈曲半径は特に限定されない。また、屈曲には、内面の屈折角が0°より大きく180°未満である屈折の形態、及び、内面の屈曲半径がゼロに近似、又は内面の屈折角が0°である折り畳みの形態が含まれる。インフォールドとは、光学積層体の厚み方向において中心となる層に対し前面板が内側になるように屈曲することをいい、アウトフォールドとは、光学積層体の厚み方向において中心となる層に対し前面板が外側になるように屈曲することをいう。光学積層体はフレキシブルであることから、フレキシブルディスプレイに好適である。
【0015】
光学積層体は、平面視において、例えば方形形状であってよく、好ましくは長辺と短辺とを有する方形形状であり、より好ましくは長方形である。光学積層体を構成する各層は、角部がR加工されたり、端部が切り欠き加工されたり、穴あき加工されたりしていてもよい。
【0016】
光学積層体の平面視サイズは特に制限されないが、該サイズが比較的大きい場合であっても、光学積層体は、良好なタッチセンサ性能を示すことができる。光学積層体の平面視サイズは、画面サイズで、例えば8インチ(20.32cm)以上、好ましくは10インチ(25.4cm)以上、より好ましくは12インチ(30.48cm)以上である。光学積層体の平面視サイズが画面サイズで16インチ(40.64cm)以上であっても、光学積層体は、良好なタッチセンサ性能を示すことができる。
【0017】
光学積層体は、例えば画像表示装置等に用いることができる。画像表示装置は特に限定されず、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)表示装置、液晶表示装置、電界発光表示装置等が挙げられる。
【0018】
(2)前面板
前面板10は、光を透過可能な板状体である。前面板は、1層のみから構成されてもよく、2層以上から構成されてもよい。前面板としては、樹脂製の板状体(例えば樹脂板、樹脂シート、樹脂フィルム等)、ガラス製の板状体(例えばガラス板、ガラスフィルム等)が挙げられる。前面板は、表示装置の最表面を構成することができる。また、前面板は、樹脂フィルム、又は、樹脂フィルムの少なくとも一方の面にハードコート層を設けて硬度をより向上させたハードコート層付き樹脂フィルムであってもよい。ハードコート層付き樹脂フィルムを用いる場合、ハードコート層は表示装置の最表面に配置されるように設けることが好ましい。前面板は、ブルーライトカット機能、視野角調整機能等を有するものであってもよい。中でも、光学積層体のフレキシブル性の観点から、前面板は、ガラスフィルム又はハードコート層を有していてもよい樹脂フィルムであることが好ましい。
【0019】
前面板が樹脂フィルムを含む場合、光学積層体における第1貼合層は樹脂フィルムに接して設けられていることが好ましい。例えば、前面板が、樹脂フィルムの一方の面にハードコート層を有するハードコート層付き樹脂フィルムを含む場合、光学積層体における第1貼合層は、前面板の樹脂フィルムに接して設けられることが好ましい。
【0020】
前面板である樹脂フィルムとしては、光を透過可能な樹脂フィルムであれば限定されない。例えば、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリ(メタ)アクリル、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアミドイミド等の高分子で形成されたフィルムが挙げられる。これらの高分子は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。中でも、優れた可撓性を有し、高い強度及び高い透明性を有するように構成可能な、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の高分子で形成された樹脂フィルムが好適に用いられる。
【0021】
前面板は、硬度の観点からハードコート層を備えた樹脂フィルムであってもよい。ハードコート層は、樹脂フィルムの一方の面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。ハードコート層を設けることにより、硬度及び耐スクラッチ性を向上させることができる。ハードコート層は、例えば紫外線硬化型樹脂の硬化層である。紫外線硬化型樹脂としては、例えば単官能(メタ)アクリル系樹脂、多官能(メタ)アクリル系樹脂、デンドリマー構造を有する多官能(メタ)アクリル系樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂;シリコーン系樹脂;ポリエステル系樹脂;ウレタン系樹脂;アミド系樹脂;エポキシ系樹脂等が挙げられる。ハードコート層は、強度を向上させるために、添加剤を含んでいてもよい。添加剤は特に限定されることはなく、無機系微粒子、有機系微粒子、又はこれらの混合物が挙げられる。樹脂フィルムの両面にハードコート層を有する場合、各ハードコート層の組成や厚みは、互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルのいずれでもよいことを意味する。(メタ)アクリレート等の「(メタ)」も同様の意味である。
【0022】
前面板の厚みは、例えば10μm以上300μm以下であってよく、好ましくは20μm以上200μm以下、より好ましくは30μm以上100μm以下である。
【0023】
(3)光学フィルム
光学フィルム20は通常、1以上の樹脂フィルム(例えば熱可塑性樹脂フィルム)を含む。光学フィルムは、1層のみから構成されてもよく、2層以上から構成されてもよい。多層構造を有する光学フィルムとしては、直線偏光板、円偏光板が挙げられ、好ましくは円偏光板である。円偏光板は、直線偏光板と位相差板とを備えることができる。
【0024】
光学フィルム20の厚み(多層構造である場合は合計厚み)は、例えば10μm以上150μm以下であり、好ましくは20μm以上100μm以下である。光学積層体の耐屈曲性の観点から、光学フィルム20の厚みは、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、なおさらに好ましくは50μm以下である。
【0025】
円偏光板は、光学積層体を備える画像表示装置の視認側から光学積層体を通って入射する光(外光)を円偏光に変換することができる。直線偏光板の吸収軸と位相差板の遅相軸とが所定の角度となるように直線偏光板と位相差板とが配置された円偏光板は、画像表示装置中の表示素子で反射した外光を吸収することができるため、光学積層体に反射防止フィルムとしての機能を付与することができる。
【0026】
図3は、円偏光板の一例を模式的に示す概略断面図である。
図3に示される円偏光板40は、直線偏光板41と位相差板42とを備える。直線偏光板41は、偏光子層41aを含む。
図3に示される例において、直線偏光板41は、基材フィルム41b、配向膜41c、偏光子層41a及びオーバーコート層(OC層、拡散防止層)41dをこの順に含むが、後述するように、偏光子層41aを含む限り、この構成に限定されるものではない。直線偏光板において、基材フィルム41bの代わりにオーバーコート層が積層されていてもよい。
【0027】
(3-1)直線偏光板
直線偏光板は、偏光子層として、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」ともいう。)系樹脂フィルムを含むものであってもよく、二色性色素及び重合性化合物を含む組成物を配向させ、重合性液晶化合物を重合させた硬化膜を含むものであってもよい。二色性色素及び重合性化合物を含む組成物を塗布し硬化させてなる偏光子層は、延伸工程を含むPVA系樹脂フィルムの偏光子層に比べて、屈曲方向に制限がないため好ましい。
【0028】
直線偏光板は、偏光子層のみを含むものであってもよいし、偏光子層に加えて、保護層(熱可塑性樹脂フィルムである場合を含む。)、基材フィルム、OC層及び配向膜のいずれか1以上をさらに含んでいてもよい。直線偏光板の厚みは、例えば2μm以上50μm以下であり、好ましくは5μm以上30μm以下である。
【0029】
偏光子層としては、例えば、PVA系樹脂フィルム(例えば、PVAフィルム、部分ホルマール化PVAフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等)に、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理、及び延伸処理が施されたもの等が挙げられる。光学特性に優れることから、PVA系樹脂フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子層を用いることが好ましい。
【0030】
偏光子層の厚みは、PVA系樹脂フィルムである場合、例えば2μm以上40μm以下である。該偏光子層の厚さは5μm以上であってもよく、20μm以下、15μm以下、さらには10μm以下であってもよい。
【0031】
二色性色素及び重合性化合物を含む組成物を配向させ、重合性液晶化合物を重合させた硬化膜である偏光子層の製造方法としては、基材フィルムの上に配向膜を介して重合性液晶化合物及び二色性色素を含む偏光子層形成用組成物を塗布し、重合性液晶化合物を液晶状態を保持したまま重合して硬化させて偏光子層を形成する方法、あるいは、基材フィルム上に形成した後述の保護層上に、配向膜を介して重合性液晶化合物及び二色性色素を含む偏光子層形成用組成物を塗布し、重合性液晶化合物を液晶状態を保持したまま重合して硬化させて偏光子層を形成する方法を挙げることができる。このようにして得られた偏光子層は、基材フィルム及び/又は保護層を有したまま光学積層体に組み込まれてもよい。基材フィルムとしては、後述する熱可塑性樹脂フィルムと同様のフィルムを用いることができ、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム等を用いることができる。基材フィルムは剥離されてもよい。
【0032】
二色性色素及び重合性化合物を含む組成物を塗布し硬化させてなる偏光子層の厚みは、通常10μm以下であり、好ましくは0.5μm以上8μm以下であり、より好ましくは1μm以上5μm以下であり、4μm以下であってもよい。
【0033】
直線偏光板が有していてもよいOC層は、偏光子層の表面に設けることができる。OC層を構成する材料としては、例えば光硬化性樹脂や水溶性ポリマー等が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリルアミド系ポリマー;ポリビニルアルコール、及びエチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル酸又はその無水物-ビニルアルコール共重合体等のビニルアルコール系ポリマー;カルボキシビニル系ポリマー;ポリビニルピロリドン;デンプン類;アルギン酸ナトリウム;ポリエチレンオキシド系ポリマー等が挙げられる。
【0034】
OC層の厚みは、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下であり、5μm以下であってもよく、また、0.05μm以上であり、0.5μm以上であってもよい。
【0035】
直線偏光板が有していてもよい保護層は、偏光子層の表面を保護する機能を有する。光学積層体において、1つの保護層を有する直線偏光板は、例えば、保護層が偏光子層より前面板側となるように配置される。偏光子層の両面に保護層が積層されている場合、2つの保護層は同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0036】
保護層は、有機物層又は無機物層であることができる。有機物層又は無機物層は、例えば、コーティングにより形成される層である。有機物層は、保護層形成用組成物、例えば(メタ)アクリル系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ポリイミド系樹脂組成物等を用いて形成することができる。保護層形成用組成物は、活性エネルギー線硬化型であってもよいし、熱硬化型であってもよい。無機物層は、例えばシリコン酸化物等から形成することができる。保護層が有機物層である場合、保護層はハードコート層と呼ばれるものであってもよい。
【0037】
保護層が有機物層である場合、例えば、活性エネルギー線硬化型の保護層形成用組成物を基材フィルム上に塗布し、活性エネルギーを照射して硬化させることにより保護層を作製することができる。基材フィルムは、上述の基材フィルムの説明が適用される。基材フィルムは通常、剥離して除去される。保護層形成用組成物を塗布する方法としては、例えばスピンコート法等が挙げられる。保護層が無機物層である場合、例えばスパッタリング法、蒸着法等によって保護層を形成することができる。保護層の厚みは、例えば0.1μm以上10μm以下であり、好ましくは0.5μm以上5μm以下である。
【0038】
保護層として、熱可塑性樹脂フィルムを用いることもできる。熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;シクロ系及びノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂ともいう。);(メタ)アクリル樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、並びにこれらの混合物を挙げることができる。熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、例えば3μm以上60μm以下であり、好ましくは5μm以上50μm以下であり、30μm以下であってもよい。
【0039】
(3-2)円偏光板
円偏光板は、直線偏光板と位相差板とを備えることができる。直線偏光板については上記のとおりである。位相差板は、好ましくは、重合性液晶化合物の硬化物からなる位相差層を含む。位相差板は、1層又は2層以上の位相差層を含むことができる。位相差板が2層の位相差層を含む場合、直線偏光板側から順に第1位相差層と第2位相差層ということがある。光学フィルム20が円偏光板である場合、光学積層体は、通常、前面板、直線偏光板及び位相差板をこの順に含む。
【0040】
位相差層としては、例えばλ/4の位相差を与える位相差層(λ/4層)、λ/2の位相差を与える位相差層(λ/2層)及びポジティブC層等が挙げられる。
図3を参照して、位相差板42は、好ましくは、第1位相差層42aを含み、より好ましくは、第1位相差層42a及び第2位相差層42bを含む。位相差板が2層の位相差層を含む場合、これらの位相差層は、好ましくはλ/4層とλ/2層、又は、λ/4層とポジティブC層である。位相差板がλ/2層を含む場合、直線偏光板側から順にλ/2層及びλ/4層を積層する。位相差板がポジティブC層を含む場合、直線偏光板側から順にλ/4層及びポジティブC層を積層してもよく、直線偏光板側から順にポジティブC層及びλ/4層を積層してもよい。位相差板の厚みは、例えば0.1μm以上10μm以下であり、好ましくは0.5μm以上8μm以下である。
【0041】
位相差板は、上述した熱可塑性樹脂フィルムの材料として例示した熱可塑性樹脂から構成されるフィルムから形成した位相差層を含んでもよい。位相差板は、配向膜、位相差層を支持する基材フィルム、位相差層の表面を保護するオーバーコート層を含んでいてもよい。
図3を参照して、第1位相差層42aと第2位相差層42bとは、第3貼合層35を介して積層することができる。
【0042】
重合性液晶化合物の硬化物からなる位相差層は、重合性液晶化合物を含む組成物を、基材フィルムに塗布し硬化させることにより形成することができる。基材フィルムと塗布層との間に配向膜を形成してもよい。基材フィルムの材料及び厚みは、上記熱可塑性樹脂フィルムの材料及び厚みと同じであってよい。位相差層は、重合性液晶化合物を硬化してなる層から形成する場合、配向膜及び基材フィルムを有する形態又は有さない形態で光学積層体に組み込まれてもよい。
【0043】
直線偏光板の吸収軸と位相差層の遅相軸とが所定の角度となるように、直線偏光板と位相差板とが配置された円偏光板は、反射防止機能を有することができる。位相差板がλ/4層を含む場合、直線偏光板の吸収軸とλ/4層の遅相軸とのなす角度は、45°±10°であることができる。位相差層は正波長分散性を有していてもよく、逆波長分散性を有していてもよい。λ/4層は、好ましくは逆波長分散性を有する。
図3を参照して、直線偏光板41と位相差板42とは、第4貼合層45を介して積層することができる。
【0044】
(4)タッチセンサ層
光学積層体は、タッチセンサ層30を含む。タッチセンサ層は、光学積層体、ひいてはこれを搭載する画像表示装置にタッチセンサ機能を付与するための光学層である。タッチセンサ層は電極層を含み、該電極層はメッシュ構造を有する。「メッシュ構造」とは、網目構造(格子形状)を意味する。タッチセンサ層は、複数の電極層を含むことができる。この場合、複数の電極層がそれぞれメッシュ構造を有することが好ましい。網目構造は、規則的なパターン形状であることが好ましい。
【0045】
メッシュ構造の電極層を含むタッチセンサ層を備える光学積層体によれば、光学積層体の曲げ耐性、伸縮性及び柔軟性を向上させることができる。これにより、光学積層体の耐屈曲性を高めることができ、小さい屈曲半径で屈曲させてもクラックを生じにくい。例えば、本発明に係る光学積層体は、後述する[実施例]の項に示す屈曲性の評価試験の下でタッチセンサ層にクラックが生じにくく、好ましくは、屈曲回数が20万回以上となってもタッチセンサ層にクラックを生じない。
【0046】
タッチセンサ層が有する電極層は、タッチ感知電極として機能することができる。タッチセンサ層は、離間して積層される複数の電極層を含むことができ、通常、離間して積層される2層の電極層を含む。各電極層は、タッチ点の座標情報を提供する。例えば、人の手や物体が画面に接触すると、その位置のパターン及び該パターンに接続された位置検出ラインを介して接触位置における静電容量の変化が伝達され、その静電容量の変化が電気的信号に変換されることにより、接触位置が把握される。
【0047】
タッチセンサ層が2層の電極層である第1電極層及び第2電極層を含む場合、第1電極層及び第2電極層はそれぞれ、タッチ点のX座標及びY座標の情報を提供する。X座標とY座標とは、例えば互いに直交する。例えば、人の手や物体が画面に接触すると、第1電極層、第2電極層及び位置検出ラインを解して接触位置における静電容量の変化が駆動回路側に伝達される。また、X及びYの入力処理回路等により静電容量の変化が電気的信号に変換されることにより、接触位置が把握される。
【0048】
電極層は、金属酸化物層と金属単体層とを含むことができる。金属酸化物層は、多層構造を有していてもよい。
図4は、電極層の一例を模式的に示す概略断面図である。
図4に示される電極層は、第1金属酸化物層51、第2金属酸化物層52及び金属単体層53をこの順に含む。第1金属酸化物層51、第2金属酸化物層52及び金属単体層53は、いずれもメッシュ構造を有する。電極層の層構成は、
図4に示されるものに限定されず、電極層は、第1金属酸化物層51及び/又は第2金属酸化物層52を有していなくてもよい。以下、第1金属酸化物層及び第2金属酸化物層を総称して金属酸化物層ともいう。
【0049】
電極層は、金属単体層53を含むことが好ましい。金属単体層とは、金属単体からなる層をいう。電極層が金属単体層を含むことにより、光学積層体の平面視サイズが大きい場合(例えば16インチ以上)であっても、十分に高いタッチセンサ性能を得ることが可能になる。
【0050】
金属単体層を構成する金属単体としては、電気伝導度を高める観点及びタッチセンサ層の面抵抗を小さくする観点から、例えば、銀、金、銅、アルミニウム、白金、プラチナ、パラジウム、クロム、チタン、タングステン、ニオブ、タンタル、バナジウム、カルシウム、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛等が挙げられ、光学積層体の耐屈曲性をさらに考慮して、好ましくは、銀、金、銅、パラジウム、アルミニウムであり、より好ましくは銅である。
【0051】
金属単体層の厚みは、光学積層体の耐屈曲性とタッチセンサ性能とを両立させる観点から、好ましくは2nm以上200nm以下、より好ましくは5nm以上150nm以下、さらに好ましくは10nm以上100nm以下、なおさらに好ましくは20nm以上80nm以下である。
【0052】
電極層は、1層以上の金属酸化物層をさらに含んでいてもよい。金属酸化物層をさらに積層することにより、光学積層体の反射防止機能を高めたり、電極層の酸化防止性を高めたりすることができる。
図4に示される例のように、金属単体層上に2層以上の金属酸化物層を積層してもよい。複数の金属酸化物層はそれぞれ異なる機能を有していてもよい。
【0053】
第1金属酸化物層51及び第2金属酸化物層52を構成する金属酸化物としては、それぞれ独立して、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)、インジウムスズ亜鉛酸化物(ITZO)、亜鉛スズ酸化物(ZTO)、インジウムガリウム酸化物(IGO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)等が挙げられる。酸化防止性を高める観点から、第1金属酸化物層51を構成する金属酸化物は、ITO又はIZOであることが好ましく、IZOであることがより好ましい。
【0054】
第1金属酸化物層の厚みは、酸化防止性を高める観点及び光学積層体の耐屈曲性の観点から、好ましくは20nm以上1000nm以下、より好ましくは50nm以上800nm以下、さらに好ましくは80nm以上600nm以下、なおさらに好ましくは100nm以上400nm以下である。
【0055】
第2金属酸化物層52を構成する金属酸化物は、光学積層体の反射防止機能を高める観点から、金属単体層を構成する金属単体の酸化物であることが好ましい。例えば、金属単体層が銅から構成される場合、第2金属酸化物層52を構成する金属酸化物は、好ましくは、酸化銅(CuO)である。
【0056】
第2金属酸化物層の厚みは、光学積層体の反射防止機能を高める観点及び光学積層体の耐屈曲性の観点から、好ましくは1nm以上100nm以下、より好ましくは2nm以上80nm以下、さらに好ましくは5nm以上50nm以下、なおさらに好ましくは10nm以上40nm以下である。
【0057】
メッシュ構造(網目構造)の具体的な形状は特に制限されないが、網目の開口部分の形状は、例えば、正方形、長方形、菱形、六角形等の方形形状が挙げられる。各開口部分の形状における一辺の長さ又は該開口部分の最大径は、例えば0.01μm以上500μm以下、好ましくは0.05μm以上300μm以下、より好ましくは0.1μm以上100μm以下である。上記一辺の長さ又は最大径は、電極層の電気伝導度、並びにタッチセンサ層の面抵抗及び全光線透過率を考慮して適切に調整することが好ましい。
【0058】
メッシュ構造(網目構造)の線幅(電極層が存在する部分の線幅)は、例えば0.5μm以上7μm以下であり、電極層の電気伝導度、タッチセンサ層の面抵抗及び全光線透過率、並びに、光学積層体の耐屈曲性の観点から、好ましくは1μm以上7μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下である。
【0059】
タッチセンサ層の面抵抗は、光学積層体のタッチセンサ性能を高める観点から、好ましくは10Ω/□以下、より好ましくは5Ω/□以下、さらに好ましくは3Ω/□以下、なおさらに好ましくは1Ω/□以下、特に好ましくは0.5Ω/□以下である。タッチセンサ層の面抵抗は、通常0.01Ω/□以上である。タッチセンサ層の面抵抗は、後述する[実施例]の項に示す方法で測定することができる。
【0060】
タッチセンサ層の全光線透過率は、光学積層体を搭載する画像表示装置の輝度を高める観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、なおさらに好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0061】
メッシュ構造を有する電極層は、特に限定されないが、例えば、フォトリソグラフィを利用して形成することができる。電極層の形成方法の例を挙げると例えば次のとおりである。まず、金属単体層に対応する層、第2金属酸化物層に対応する層及び第1金属酸化物層に対応する層を順次、積層形成する。これらの層は、物理的蒸着法、化学的蒸着法等の蒸着法などにより形成することができる。次いで、フォトリソグラフィにより、積層した上記の層を同時にエッチングすることでメッシュ構造を形成して、タッチセンサ層を得る。層毎にエッチングして、各層のメッシュ構造を形成してもよい。
【0062】
電極層が金属酸化物層と金属単体層とを備える場合、光学積層体おいて電極層は、その金属酸化物層が前面板により近くなるように配置されてもよいし、その金属単体層が前面板により近くなるように配置されてもよいが、金属酸化物層が前面板により近くなるように配置されることが好ましい。この場合、電極層は、前面板から順に、金属酸化物層と金属単体層とを含む。
【0063】
図5は、タッチセンサ層の一例を模式的に示す概略断面図である。タッチセンサ層は、電極層以外の他の層を含むことができる。
図5に示されるタッチセンサ層は、第1絶縁層61a、第1電極層62a、第2絶縁層61b、第2電極層62b、保護層63及び分離層64をこの順に備える。第1電極層62a及び第2電極層62bは、メッシュ構造を有する。タッチセンサ層は、上記した層のうちいずれかの層を有していなくてもよい。例えば、タッチセンサ層は、保護層63及び/又は分離層64を有していなくてもよい。また、タッチセンサ層は、保護層63の機能と分離層64の機能とを兼ねた一つの層を有していてもよい。
【0064】
第1絶縁層61aは、タッチセンサ層の酸化防止等を担う被覆層である。第1絶縁層61aとしては、硬化性樹脂組成物の硬化物層等が挙げられる。硬化性樹脂組成物としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂と(メタ)アクリル系モノマー等の重合性化合物と光重合開始剤とを含む組成物が挙げられる。第1絶縁層61aの厚みは、例えば0.2μm以上10μm以下であり、好ましくは0.5μm以上8μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下である。
【0065】
第2絶縁層61bは、第1電極層62aと第2電極層62bとを絶縁する機能を有する層である。第2絶縁層61bとしては、材質において、第1絶縁層61aと同様のものを用いることができる。第2絶縁層61bの厚みは、例えば0.2μm以上10μm以下であり、好ましくは0.5μm以上8μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下である。
【0066】
保護層63は、電極層を被覆してこれを保護し、タッチセンサ層の製造工程中に分離層64が電極層形成のためのエッチャントに露出しないようにする役割を果たす。保護層63は、高分子膜であってよい。高分子膜としては、ポリオール及びメラミン硬化剤を含む硬化性組成物の硬化物層、有機無機ハイブリッド硬化性組成物の硬化物層、米国特許公開公報第2019/0022977号に記載の保護層(硬化物層)等が挙げられ、これらは、保護層の機能と分離層の機能とを兼ねた層として用いることもできる。保護層63の厚みは、例えば0.2μm以上15μm以下であり、好ましくは0.5μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下である。
【0067】
分離層64は、タッチセンサ層を形成する基板からタッチセンサ層を剥離可能とするために設けられる層である。分離層64は、高分子膜であってよい。高分子膜としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミック酸系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、フェニルマレイミド共重合体系樹脂、ポリアゾベンゼン系樹脂、ポリフェニレンフタルアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ケイ皮酸エステル系樹脂、クマリン系樹脂、フタルイミジン系樹脂、カルコン系樹脂、芳香族アセチレン系樹脂等の高分子から形成される膜が挙げられる。また、分離層64の他の例として、米国特許公開公報第2021/0277156号に記載の分離層が挙げられる。これらの分離層は、保護層の機能と分離層の機能とを兼ねた層として用いることもできる。
【0068】
タッチセンサ層は、上記基板に分離層形成用組成物を塗布して分離層を形成し、該分離層上にタッチセンサ層を構成する上記各層を設け、その後、基板を剥離除去する方法により製造することができる。基板としては、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。上記各層を設けてタッチセンサ層の層構成を構築した後、例えば150℃以上250℃以下の温度で熱処理を実施することが好ましい。この熱処理により、各層間の密着化を図ることができる。
【0069】
基板を剥離除去した後、その露出面に粘着剤層を積層してもよい。この粘着剤層は、例えば画像表示素子等との貼合に用いることができる。
【0070】
(5)貼合層
第1~第4貼合層は、粘着剤層又は接着剤硬化層である。光学積層体は、タッチセンサ層30側に、表示装置の画像表示素子等に貼合するための第5貼合層をさらに有していてもよい。第5貼合層は、好ましくは粘着剤層である。粘着剤層は、公知の粘着剤組成物を用いて形成することができる。接着剤硬化層は、公知の接着剤組成物を用いて形成することができる。画像表示素子としては、例えば液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示素子、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)表示素子、プラズマ表示素子、電界放射型表示素子等が挙げられる。
【0071】
粘着剤組成物としては、(メタ)アクリル系、ゴム系、ウレタン系、エステル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系のような樹脂を主成分とする粘着剤組成物が挙げられる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型、熱硬化型であってもよい。
【0072】
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(ベースポリマー)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上をモノマーとする重合体又は共重合体が好適に用いられる。ベースポリマーには、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーを挙げることができる。
【0073】
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含有する。架橋剤としては、2価以上の金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成するもの;ポリアミン化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するもの;ポリエポキシ化合物やポリオールであって、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するもの;ポリイソシアネート化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するものが例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0074】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、活性エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルム等の被着体に密着させることができ、活性エネルギー線の照射によって硬化して密着力の調整ができる性質を有する粘着剤組成物である。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線硬化型であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、ベースポリマー、架橋剤に加えて、活性エネルギー線重合性化合物をさらに含有する。さらに必要に応じて、光重合開始剤や光増感剤等を含有させることもある。
【0075】
粘着剤組成物は、光散乱性を付与するための微粒子、ビーズ(樹脂ビーズ、ガラスビーズ等)、ガラス繊維、ベースポリマー以外の樹脂、粘着性付与剤、充填剤(金属粉やその他の無機粉末等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、着色剤、消泡剤、腐食防止剤、光重合開始剤等の添加剤を含むことができる。
【0076】
粘着剤層は、上記粘着剤組成物の有機溶剤希釈液を基材上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を用いた場合は、形成された粘着剤層に、活性エネルギー線を照射することにより所望の硬化度を有する硬化物とすることができる。
【0077】
接着剤組成物としては、例えば、水系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤、天然ゴム接着剤、α-オレフィン系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エチレン-酢酸ビニル樹脂エマルション接着剤、エチレン-酢酸ビニル樹脂系ホットメルト接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、塩化ビニル樹脂溶剤系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、シリコーン系接着剤、スチレン-ブタジエンゴム溶剤系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、ニトロセルロース系接着剤、反応性ホットメルト接着剤、フェノール樹脂系接着剤、変性シリコーン系接着剤、ポリエステル系ホットメルト接着剤、ポリアミド樹脂ホットメルト接着剤、ポリイミド系接着剤、ポリウレタン樹脂ホットルト接着剤、ポリオレフィン樹脂ホットメルト接着剤、ポリ酢酸ビニル樹脂溶剤系接着剤、ポリスチレン樹脂溶剤系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリビニルピロリドン樹脂系接着剤、ポリビニルブチラール系接着剤、ポリベンズイミダゾール接着剤、ポリメタクリレート樹脂溶剤系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、ユリア樹脂系接着剤、レゾルシノール系接着剤等が挙げられる。このような接着剤は、1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0078】
水系接着剤としては、例えばポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルション接着剤等を挙げることができる。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、紫外線等の活性エネルギー線を照射することによって硬化する接着剤であり、例えば重合性化合物及び光重合性開始剤を含むもの、光反応性樹脂を含むもの、バインダー樹脂及び光反応性架橋剤を含むもの等を挙げることができる。上記重合性化合物としては、光硬化性エポキシ系モノマー、光硬化性(メタ)アクリル系モノマー、光硬化性ウレタン系モノマー等の光重合性モノマーや、これらモノマーに由来するオリゴマー等を挙げることができる。上記光重合開始剤としては、紫外線等の活性エネルギー線を照射して中性ラジカル、アニオンラジカル、カチオンラジカルといった活性種を発生する物質を含むものを挙げることができる。
【0079】
前面板10と光学フィルム20との間に介在する第1貼合層15は、好ましくは粘着剤層である。粘着剤層である第1貼合層15の厚みは、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。粘着剤層である第1貼合層15の厚みは、光学積層体の耐屈曲性を高める観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、なおさらに好ましくは25μm以下である。
【0080】
光学フィルム20とタッチセンサ層30との間に介在する第2貼合層25は、粘着剤層又は接着剤硬化層である。粘着剤層である第2貼合層25の厚みは、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。粘着剤層である第2貼合層25の厚みは、光学積層体の耐屈曲性を高める観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、なおさらに好ましくは25μm以下である。接着剤硬化層である第2貼合層25の厚みは、例えば0.01μm以上、0.1μm以上、0.5μm以上又は1μm以上であり、また、例えば20μm以下、15μm以下、10μm以下又は5μm以下である。
【0081】
第1位相差層42aと第2位相差層42bとの間に介在する第3貼合層35、及び、直線偏光板41と位相差板42との間に介在する第4貼合層45は、粘着剤層又は接着剤硬化層である。第3貼合層35及び第4貼合層45の厚みについては、第2貼合層25の厚みについての上記記述が引用される。
【0082】
<画像表示装置>
本発明に係る画像表示装置は、本発明に係るフレキシブル光学積層体を含む。画像表示装置は特に限定されず、例えば有機EL表示装置、無機EL表示装置、液晶表示装置、電界発光表示装置等が挙げられる。画像表示装置はタッチパネル機能を有する。画像表示装置において、光学積層体は、前面板を外側(すなわち視認側)に向けて、画像表示装置の視認側に配置される。
【0083】
本発明に係る画像表示装置は、スマートフォン、タブレット等のモバイル機器、テレビ、デジタルフォトフレーム、電子看板、測定器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器等として用いることができる。本発明に係る画像表示装置は、優れた耐屈曲性を有する光学積層体を備えることから、フレキシブルディスプレイであることが好ましい。
【0084】
画像表示装置の画面サイズは、例えば8インチ(20.32cm)以上であり、好ましくは10インチ(25.4cm)以上、より好ましくは12インチ(30.48cm)以上であり、16インチ(40.64cm)以上であってもよい。
【実施例0085】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記のない限り、質量%及び質量部である。
【0086】
[厚みの測定]
特記しない限り、光学積層体を構成する各層の厚みは、次の手順で行った。光学積層体をミクロトームを用いてカットし、カットした光学積層体の断面について、透過型電子顕微鏡(SU8010、株式会社堀場製作所製)を用いて観察し、得られた観察像から各層の厚みを測定した。
【0087】
[タッチセンサ層のの面抵抗の測定]
ガラス基板上に形成したタッチセンサ層のを測定サンプルとして、面抵抗測定器「RG-80」(Napson社製)を用いて、25℃におけるタッチセンサ層のの面抵抗を測定した。
【0088】
[タッチセンサ層の全光線透過率の測定]
ガラス基板上に形成したタッチセンサ層を測定サンプルとして、ヘイズメータ「HM-150型」((株)村上色彩技術研究所製)を用いて、タッチセンサ層のの全光線透過率を測定した。
【0089】
[屈曲性の評価]
屈曲評価設備(Science Town社製、STS-VRT-500)を用いて、25℃の温度において、屈曲性(屈曲に対する耐性)を確認する評価試験を行った。
図6は、本評価試験の方法を模式的に示す図である。
図6に示されるように、個別に移動可能な二つの載置台501,502を、間隙C1を設けて配置し、間隙C1の中心に幅方向の中心が位置するように光学積層体500を固定して配置した(
図6(a))。このとき、前面板側が上向きになるように光学積層体500を配置した。この載置台501,502は揺動可能であり、初期は2つの載置台501,502が同一平面を構成する。2つの載置台501,502を位置P1及び位置P2を回転軸の中心として上方に90度回転させて、対向する光学積層体500の面同士の間隔C2がXmmとなるように2つの載置台501,502を閉じ(
図6(b))、再び載置台501,502を開く動作を1回の屈曲と定義する。この動作を繰り返し、光学積層体500のタッチセンサ層へ最初にクラックが生じるまでの屈曲回数を数えて屈曲性を評価した。評価の基準は次のとおりである。
A:最初にクラックが生じるまでの屈曲回数が20万回以上
B:最初にクラックが生じるまでの屈曲回数が20万回未満
【0090】
屈曲性試験としては、間隔C2である上記Xが6mmである(光学積層体500の屈曲部分の曲率半径(屈曲半径)が3Rである)場合と、上記Xが3mmである(光学積層体500の屈曲半径が1.5Rである)場合との2種類を実施した。
【0091】
[タッチセンサ(TS)性能の評価]
光学積層体を画面16インチのサイズに切り出した。この光学積層体の前面板とは反対側にアクリル系粘着剤層(厚み25μm)を介して有機ELパネルを積層して、タッチパネル方式の有機EL表示装置を組み立てた。有機EL表示装置の電源をONにして画面上でタッチセンサが正常に動作しているかどうかを確認し、タッチセンサ性能を下記の基準に従って評価した。
A:画面上のすべての領域で正常に動作した。
B:正常に動作しない領域が存在した。
【0092】
光学積層体を作製するために以下のものを作製、調製又は準備した。
(1)前面板
前面板として、厚み50μmのポリイミド(PI)系樹脂フィルムの片面に、厚み10μmのハードコート(HC)層が形成されたHC層付きフィルムを用いた。HC層は、末端に多官能アクリル基を有するデンドリマー化合物を含む組成物から形成された層であった。
【0093】
(2)粘着剤層
下記に従って粘着剤層P1~P3を作製した。
(2-1)粘着剤層P1
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌機を備えた反応器に、アセトン 81.8部、アクリル酸ブチル 98.8部、アクリル酸 0.2部、及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル 1.0部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素不含としながら、内温を55℃に上げた。その後、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤) 0.14部をアセトン 10部に溶かした溶液を全量添加した。重合開始剤を添加した1時間後に、単量体を除くアクリル系樹脂1の濃度が35%になるよう、添加速度17.3部/hrでアセトンを連続的に反応器に添加しながら、内温54~56℃で12時間保温し、最後に酢酸エチルを添加して、アクリル系樹脂1の濃度が20%となるように調節した。このようにして、アクリル系樹脂1の溶液を得た。
【0094】
上記アクリル系樹脂1の溶液 100部(不揮発分量)、コロネートL(商品名、ポリイソシアネート系硬化剤、東ソー株式会社) 0.25部、及びKBM-403(商品名、シランカップリング剤、信越シリコーン株式会社) 0.5部を混合した。固形分濃度が10%になるように酢酸エチルを添加して、粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物を離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)の離型処理面に、アプリケータを利用して乾燥後の厚みが25μmになるように塗布した。塗布層を100℃で1分間乾燥して、粘着剤層を備えるフィルムを得た。その後、粘着剤層上に、離型処理された別のPETフィルム(厚み38μm)を貼合し、温度23℃、相対湿度50%RHの条件で7日間養生させて、厚み25μmの粘着剤層P1を得た。
【0095】
(2-2)粘着剤層P2
単量体の組成を、アクリル酸ブチル 94.0部、及びアクリル酸 6.0部に変更したこと以外は、アクリル系樹脂1の溶液の製造方法と同様にして、アクリル系樹脂2の溶液を得た。
【0096】
上記アクリル系樹脂2の溶液 100部(不揮発分量)、コロネートL 1.0部、及びKBM-403 0.5部を混合した。固形分濃度が10%になるように酢酸エチルを添加して、粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物から、粘着剤層P1の作製と同様にして、厚み15μmの粘着剤層P2を得た。
【0097】
(2-3)粘着剤層P3
単量体の組成を、アクリル酸ブチル 68.0部、メタクリル酸メチル 29.0部、アクリル酸2.0部、及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル1.0部に変更したこと以外は、アクリル系樹脂1の溶液の製造方法と同様にして、アクリル系樹脂3の溶液を得た。
【0098】
上記アクリル系樹脂3の溶液 100部(不揮発分量)、コロネートL 3.0部、及びKBM-403 0.5部を混合した。固形分濃度が10%になるように酢酸エチルを添加して、粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物から、粘着剤層P1の作製と同様にして、厚み5μmの粘着剤層P3を得た。
【0099】
(3)接着剤
下記に従って紫外線硬化型接着剤S1を調製した。
光カチオン硬化性樹脂である3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:CEL2021P、株式会社ダイセル製) 70部、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(商品名:EX-211、ナガセケムテックス株式会社製) 20部、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル(商品名:EX-121、ナガセケムテックス株式会社製) 10部、光カチオン重合開始剤(商品名:CPI-100、サンアプロ株式会社製) 2.25部、及び光カチオン重合増感剤である1,4-ジエトキシナフタレン 2部を混合した後、脱気して、紫外線硬化型接着剤S1を調製した。光カチオン重合開始剤は50%炭酸プロピレン溶液として混合した。
【0100】
(4)円偏光板
次の手順で円偏光板を作製した。
(4-1)オーバーコート層1用組成物の調製
18官能のアクリル基を有するデンドリマーアクリレート(商品名:Miramer SP1106,Miwon社製) 2.8部、6官能のアクリル基を有するウレタンアクリレート(商品名:Miramer PU-620D、Miwon社製) 6.6部、光重合開始剤(商品名:Irgacure-184、BASF社製) 0.5部、レベリング剤(商品名:BYK-3530、BYK社製) 0.1部、及びメチルエチルケトン(MEK) 90部を混合して、オーバーコート層1用組成物を調製した。
【0101】
(4-2)オーバーコート層2用組成物の調製
水 100部、ポリビニルアルコール樹脂粉末(株式会社クラレ製、平均重合度18000、商品名:KL-318) 3部、及びポリアミドエポキシ樹脂(架橋剤、住化ケムテックス株式会社製、商品名:SR650(30)) 1.5部を混合して、オーバーコート層2用組成物を調製した。
【0102】
(4-3)オーバーコート層1を有する積層体の作製
基材として厚み100μmのPETフィルムを準備した。PETフィルム上にオーバーコート層1用組成物をバーコート法により塗布し、80℃の乾燥オーブン中で3分間加熱乾燥した。得られた被膜にUV照射装置(SPOT CURE SP-7、ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量500mJ/cm2(365nm基準)のUV光を照射して、オーバーコート層1を形成した。オーバーコート層1の厚みをレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製OLS3000)により測定したところ、2.0μmであった。このようにして、オーバーコート層1/基材(PETフィルム)からなる積層体を得た。
【0103】
(4-4)直線偏光板の作製
オーバーコート層1/基材(PETフィルム)からなる積層体のオーバーコート層1にコロナ処理を施した。コロナ処理の条件は、出力0.3kW、処理速度3m/分とした。その後、オーバーコート層1上に、配向膜形成用組成物をバーコート法により塗布し、80℃の乾燥オーブン中で1分間加熱乾燥した。得られた被膜に偏光UV照射処理を施して配向膜を形成した。偏光UV処理は、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)から照射される光を、ワイヤーグリッド(UIS-27132##、ウシオ電機株式会社製)を透過させて、波長365nmで測定した積算光量が100mJ/cm2となる条件で行った。配向膜の厚みは100nmであった。
【0104】
形成した配向膜上に、重合性液晶化合物及びアゾ色素を含む偏光子層形成用組成物をバーコート法により塗布し、120℃の乾燥オーブンにて1分間加熱乾燥した後、室温まで冷却した。上記UV照射装置を用いて、積算光量1200mJ/cm2(365nm基準)となるように紫外線を被膜に照射することにより、偏光子層を形成した。得られた偏光子層の厚みは1.8μmであった。
【0105】
形成した偏光子層上に、オーバーコート層2用組成物を、乾燥後の厚みが1.0μmになるようにバーコート法により塗布し、温度80℃で3分間乾燥した。このようにして、基材(PETフィルム)/オーバーコート層1/配向膜/偏光子層/オーバーコート層2からなる偏光板を得た。
【0106】
(4-5)円偏光板の作製
λ/4層(厚み2μm)とポジティブC層(厚み4μm)とが接着剤層(厚み2μm)により貼合された位相差板を準備した。λ/4板及びポジティブC層は、それぞれ重合性液晶化合物が硬化した層からなる。接着剤層は、紫外線硬化型接着剤から形成された層である。
【0107】
直線偏光板のオーバーコート層2と、位相差板のλ/4層とを、厚み5μmのアクリル系粘着剤層により積層した。位相差板は、偏光子層の吸収軸とλ/4層の遅相軸とのなす角が45°になるように積層した。その後、基材(PETフィルム)を剥離した。このようにして、オーバーコート層1/配向膜/偏光子層/オーバーコート層2、アクリル系粘着剤層、及び位相差板からなる円偏光板を作製した。
【0108】
(5)タッチセンサ層
(5-1)タッチセンサ層T1
次の手順でタッチセンサ層T1を作製した。まず、ガラス基板にアクリル系樹脂を含む塗布液を塗布し、乾燥させることにより、ガラス基板上に分離層(厚み0.25μm)を形成した。次いで、分離層上に、保護層(厚み3.0μm)、第2電極層(厚み0.35μm)、第2絶縁層(厚み2.0μm)、第1電極層(厚み0.35μm)、第1絶縁層(厚み2.0μm)をこの順に形成し、得られた積層体を200℃で熱処理した。その後、ガラス基板を剥離除去して、分離層を含むタッチセンサ層T1を作製した。タッチセンサ層T1の厚みは8μmであった。また、上記測定方法に従うタッチセンサ層T1の面抵抗は0.15Ω/□、全光線透過率は88%であった。
【0109】
保護層は、米国特許公開公報第2019/0022977号の実施例1に記載の材料を用いて形成した。第1絶縁層及び第2絶縁層はそれぞれ、アルカリ可溶性樹脂と(メタ)アクリル系モノマーと光重合開始剤とを含む硬化性組成物を塗布し、UV照射により塗布層を硬化させることにより形成した。
【0110】
第1電極層及び第2電極層はそれぞれ以下のようにして作製した。まず公知のスパッタリング法によりCu層、CuO層及びIZO層を順に形成し、次いでIZO層上に公知のフォトリソグラフィ法によりフォトレジスト膜パターンを形成した。さらに公知のエッチング法によりCu層、CuO層及びIZO層をパターン化(メッシュ化)した後、フォトレジスト膜パターンを除去した。得られた第1電極層及び第2電極層は、それぞれ、Cu層(厚み50nm)と、CuO層(厚み20nm)と、IZO層(厚み280nm)から構成され、下記メッシュ構造を有する層であった。
開口部分の形状:一辺0.2μmの菱形
線幅:2μm
【0111】
第1電極層及び第2電極層を構成するCu層、CuO層及びIZO層はいずれも、タッチセンサ層T1において、分離層側からCu層、CuO層及びIZO層の順で積層されている。
【0112】
(5-2)タッチセンサ層T2
第1電極層及び第2電極層のメッシュ構造の線幅を1μmとしたこと以外はタッチセンサ層T1と同様にして、タッチセンサ層T2を作製した。上記測定方法に従うタッチセンサ層T2の面抵抗は0.19Ω/□、全光線透過率は90%であった。
【0113】
(5-3)タッチセンサ層T3
第1電極層及び第2電極層のメッシュ構造の線幅を3μmとしたこと以外はタッチセンサ層T1と同様にして、タッチセンサ層T3を作製した。上記測定方法に従うタッチセンサ層T3の面抵抗は0.12Ω/□、全光線透過率は86%であった。
【0114】
(5-4)タッチセンサ層T4
次の手順でタッチセンサ層T4を作製した。まず、ガラス基板にアクリル系樹脂を含む塗布液を塗布し、乾燥させることにより、ガラス基板上に分離層(厚み0.25μm)を形成した。次いで、分離層上に、保護層(厚み3.0μm)、所定のパターンを有する第2電極層(厚み3.68μm)、第2絶縁層(厚み2.0μm)、上記第2電極層のパターン同士を繋ぐブリッジ状パターンを有する第1電極層(厚み0.07μm)、第1絶縁層(厚み2.0μm)をこの順に形成し、得られた積層体を200℃で熱処理した。その後、ガラス基板を剥離除去して、分離層を含むタッチセンサ層T4を作製した。タッチセンサ層T4の厚みは8μmであった。また、上記測定方法に従うタッチセンサ層T4の面抵抗は10Ω/□、全光線透過率は90%であった。
【0115】
第1絶縁層及び第2絶縁層は、タッチセンサ層T1で用いたものと同じ材料を用い、同じ方法で形成した。第1電極層は、銅合金からなる層であり、公知のスパッタリング法及びフォトリソグラフィ法によりパターン化して作製した。
【0116】
第2電極層は以下のようにして作製した。まず公知のスパッタリング法によりIZO層、銀-パラジウム-銅合金(APC)からなる層及びIZO層を順に形成し、次いでIZO層上に公知のフォトリソグラフィ法によりフォトレジスト膜パターンを形成した。さらに公知のエッチング法によりブリッジ状パターンを形成した後、フォトレジスト膜パターンを除去した。得られた第2電極層は、IZO層(厚み30nm)と、銀-パラジウム-銅合金(APC)からなる層(厚み10nm)と、IZO層(厚み30nm)とから構成される層であった。
【0117】
<実施例1>
前面板のPI系樹脂フィルム(HC層を有していない側の表面)と円偏光板のオーバーコート層1とを、粘着剤層P1により貼合した。次に、円偏光板の位相差板とタッチセンサ層T1の第1絶縁層とを、粘着剤層P1により貼合して光学積層体A1を得た。
光学積層体A1の層構成は、前面板/粘着剤層P1/円偏光板/粘着剤層P1/タッチセンサ層T1である。
【0118】
<実施例2>
円偏光板の位相差板とタッチセンサ層T1の第1絶縁層とを、粘着剤層P2により貼合したこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体A2を得た。
光学積層体A1の層構成は、前面板/粘着剤層P1/円偏光板/粘着剤層P2/タッチセンサ層T1である。
【0119】
<実施例3>
円偏光板の位相差板とタッチセンサ層T1の第1絶縁層とを、粘着剤層P3により貼合したこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体A3を得た。
光学積層体A3の層構成は、前面板/粘着剤層P1/円偏光板/粘着剤層P3/タッチセンサ層T1である。
【0120】
<実施例4>
円偏光板の位相差板とタッチセンサ層T1の第1絶縁層とを、紫外線硬化型接着剤S1を介して貼合し、その後、紫外線を照射して接着剤層を硬化させたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体A4を得た。紫外線硬化型接着剤S1から形成される接着剤硬化層S1の厚みは、2μmであった。
光学積層体A4の層構成は、前面板/粘着剤層P1/円偏光板/接着剤硬化層S1/タッチセンサ層T1である。
【0121】
<実施例5>
この実施例では、光学フィルムとして、円偏光板の代わりに厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。前面板のPI系樹脂フィルム(HC層を有していない側の表面)とPETフィルムとを、粘着剤層P1により貼合した。次に、PETフィルムの表面(前面板とは反対側の表面)とタッチセンサ層T1の第1絶縁層とを、紫外線硬化型接着剤S1を介して貼合し、その後、紫外線を照射して接着剤層を硬化させて、光学積層体A5を得た。紫外線硬化型接着剤S1から形成される接着剤硬化層S1の厚みは、2μmであった。
光学積層体A5の層構成は、前面板/粘着剤層P1/PETフィルム/接着剤硬化層S1/タッチセンサ層T1である。
【0122】
<実施例6>
タッチセンサ層T1の代わりにタッチセンサ層T2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体A6を得た。
光学積層体A6の層構成は、前面板/粘着剤層P1/円偏光板/粘着剤層P1/タッチセンサ層T2である。
【0123】
<実施例7>
タッチセンサ層T1の代わりにタッチセンサ層T3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体A7を得た。
光学積層体A7の層構成は、前面板/粘着剤層P1/円偏光板/粘着剤層P1/タッチセンサ層T3である。
【0124】
<実施例8>
前面板のPI系樹脂フィルム(HC層を有していない側の表面)とタッチセンサ層T2の第1絶縁層とを、粘着剤層P1により貼合した。次に、タッチセンサ層T2の分離層と円偏光板のオーバーコート層1とを、粘着剤層P1により貼合して光学積層体A8を得た。
光学積層体A8の層構成は、前面板/粘着剤層P1/タッチセンサ層T2/粘着剤層P1/円偏光板である。
【0125】
<比較例1>
タッチセンサ層T1の代わりにタッチセンサ層T4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学積層体H1を得た。円偏光板とタッチセンサ層T4との貼合は、円偏光板の位相差板とタッチセンサ層T4の第1絶縁層とを粘着剤層P1により貼合することにより行った。
光学積層体H1の層構成は、前面板/粘着剤層P1/円偏光板/粘着剤層P1/タッチセンサ層T4である。
【0126】
<比較例2>
前面板と円偏光板との貼合、及び、円偏光板とタッチセンサ層T4との貼合に粘着剤層P3を用いたこと以外は比較例1と同様にして、光学積層体H2を得た。
光学積層体H2の層構成は、前面板/粘着剤層P3/円偏光板/粘着剤層P3/タッチセンサ層T4である。
【0127】
<比較例3>
円偏光板の位相差板とタッチセンサ層T4の第1絶縁層とを、紫外線硬化型接着剤S1を介して貼合し、その後、紫外線を照射して接着剤層を硬化させたこと以外は比較例1と同様にして、光学積層体H3を得た。紫外線硬化型接着剤S1から形成される接着剤硬化層S1の厚みは、2μmであった。
光学積層体H3の層構成は、前面板/粘着剤層P1/円偏光板/接着剤硬化層S1/タッチセンサ層T4である。
【0128】
得られた光学積層体について、屈曲性及びタッチセンサ(TS)性能を評価した。結果を表1に示す。
【0129】
10 前面板、15 第1貼合層、20 光学フィルム、25 第2貼合層、30 タッチセンサ層、35 第3貼合層、40 円偏光板、41 直線偏光板、41a 偏光子層、41b 基材フィルム、41c 配向膜、41d オーバーコート層、42 位相差板、42a 第1位相差層、42b 第2位相差層、45 第4貼合層、51 第1金属酸化物層、52 第2金属酸化物層、53 金属単体層、61a 第1絶縁層、61b 第2絶縁層、62a 第1電極層、62b 第2電極層、63 保護層、64 分離層、500 光学積層体、501,502 載置台。