(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001590
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】送風装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20221226BHJP
G03G 21/20 20060101ALI20221226BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
G03G15/20 505
G03G21/20
B41J2/01 125
B41J2/01 121
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102401
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】岡本 潤
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 聖治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 良州
(72)【発明者】
【氏名】池田 保
(72)【発明者】
【氏名】高木 啓正
(72)【発明者】
【氏名】今田 高広
【テーマコード(参考)】
2C056
2H033
2H270
【Fターム(参考)】
2C056EA24
2C056EB14
2C056EB30
2C056EC14
2C056EC29
2C056EC40
2C056HA44
2C056HA45
2C056HA46
2H033AA24
2H033BA02
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA25
2H033BA29
2H033BA31
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB29
2H033BB30
2H033BE00
2H033BE06
2H033CA17
2H033CA30
2H033CA53
2H270KA35
2H270MA35
2H270MH09
2H270SA09
2H270SB12
2H270SB18
2H270SB28
2H270SC08
2H270ZC06
(57)【要約】
【課題】回転体の回転軸方向又は長手方向への送風範囲の変更を、簡易な構成により実現する。
【解決手段】画像が形成された記録媒体を加熱する加熱装置20が備える回転体22に対して送風する送風装置30であって、回転体22の外周面に送風される気流を発生させる気流発生部材31と、回転体22の外周面に送風される範囲を回転体22の長手方向Xへ変更する送風範囲変更機構33を備え、送風範囲変更機構33は、回転体22の外周面に対向し、回転体22の外周面に対して接近離間する方向に移動可能な第1仕切り部材34と、回転体22の外周面に対向し、回転体22の長手方向Xに移動可能な第2仕切り部材35を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像が形成された記録媒体を加熱する加熱装置が備える回転体に対して送風する送風装置であって、
前記回転体の外周面に送風される気流を発生させる気流発生部材と、
前記回転体の外周面に送風される範囲を前記回転体の回転軸方向又は長手方向へ変更する送風範囲変更機構を備え、
前記送風範囲変更機構は、
前記回転体の外周面に対向し、前記回転体の外周面に対して接近離間する方向に移動可能な第1仕切り部材と、
前記回転体の外周面に対向し、前記回転体の回転軸方向又は長手方向に移動可能な第2仕切り部材を備えることを特徴とする送風装置。
【請求項2】
前記第2仕切り部材は、前記第1仕切り部材が前記回転体の外周面に対して接近した状態において前記第1仕切り部材の内側に収容され、前記第1仕切り部材が前記回転体の外周面に対して離間した状態において前記第1仕切り部材の外側に露出する請求項1に記載の送風装置。
【請求項3】
前記第1仕切り部材及び前記第2仕切り部材は、前記回転体の回転軸方向又は長手方向の中央側に配置され、
前記気流は、前記第1仕切り部材及び前記第2仕切り部材よりも前記回転体の回転軸方向又は長手方向の両端側へ送風される請求項1又は2に記載の送風装置。
【請求項4】
前記第2仕切り部材は、2つ配置され、
前記2つの第2仕切り部材は、前記回転体の回転軸方向又は長手方向に互いに接近離間可能である請求項3に記載の送風装置。
【請求項5】
前記第1仕切り部材及び前記第2仕切り部材のそれぞれの位置は、前記記録媒体の幅に応じて変更される請求項1から4のいずれか1項に記載の送風装置。
【請求項6】
前記気流発生部材は、前記回転体の回転軸方向又は長手方向の中央側及び端側の温度差に基づいて風量を変更可能である請求項1から5のいずれか1項に記載の送風装置。
【請求項7】
前記気流発生部材は、前記回転体の回転軸方向又は長手方向に対して直交する方向、斜め方向、平行な方向のいずれかの方向に送風するように配置される請求項1から6のいずれか1項に記載の送風装置。
【請求項8】
回転体を有し、画像が形成された記録媒体を加熱する加熱装置と、
前記加熱装置に送風する請求項1から7のいずれか1項に記載の送風装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記回転体は、加圧ローラ又は定着ベルトである請求項8に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機又はプリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱装置の一例として、無端状ベルト又はローラなどの一対の回転体によって用紙を挟みながら加熱し、用紙上の画像を定着させる定着装置が知られている。
【0003】
定着装置においては、用紙が通過しない非通紙領域の熱が用紙によって奪われにくい傾向にあるため、複数枚の用紙を連続通紙した場合に、非通紙領域における回転体の熱が次第に蓄積し、温度上昇が顕著となる問題がある。このような問題に対して、従来の定着装置においては、ファンなどを用いて回転体の非通紙領域へ送風することにより、非通紙領域の温度上昇を抑制することが行われている。
【0004】
また、上記のような非通紙領域における温度上昇の範囲は、通紙される用紙のサイズに応じて異なる。このため、下記特許文献1(特開2006-119259号公報)においては、ダクト内に設けられた一対の板状体を開閉することより、用紙のサイズに応じて冷却風の風路を定着ローラの長手方向に変更する構成が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1によって提案される構成の場合、一対の板状体を開閉させるために、ナット及びシャフトなどから成る駆動機構のほか、各板状体をガイドするガイドを設ける必要がある。このため、構成が複雑化し、構成の簡素化を図りにくいといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、画像が形成された記録媒体を加熱する加熱装置が備える回転体に対して送風する送風装置であって、前記回転体の外周面に送風される気流を発生させる気流発生部材と、前記回転体の外周面に送風される範囲を前記回転体の回転軸方向又は長手方向へ変更する送風範囲変更機構を備え、前記送風範囲変更機構は、前記回転体の外周面に対向し、前記回転体の外周面に対して接近離間する方向に移動可能な第1仕切り部材と、前記回転体の外周面に対向し、前記回転体の回転軸方向又は長手方向に移動可能な第2仕切り部材を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な構成により、回転体の回転軸方向又は長手方向に送風範囲を変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
【
図3】前記定着装置における通紙領域及び非通紙領域を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る送風装置の構成を示す図である。
【
図5】第1仕切り部材が加圧ローラに対して離間した状態を示す図である。
【
図6】第2仕切り部材が加圧ローラの長手方向中央側へ移動した状態を示す図である。
【
図8】ファンの風量を変更するタイミングチャートを示す図である。
【
図9】ファンの向き及び配置が異なる他の例を示す図である。
【
図10】ファンの向き及び配置が異なるさらに別の例を示す図である。
【
図11】定着ローラ側に送風装置を配置した例を示す図である。
【
図12】定着ローラ側と加圧ローラ側の両方に送風装置を配置した例を示す図である。
【
図13】端部基準搬送方式の画像形成装置の例を示す図である。
【
図14】本発明を端部基準搬送方式の画像形成装置に適用した例を示す図である。
【
図15】本発明を適用可能な他の定着装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。ここで、本明細書中における「画像形成装置」には、プリンタ、複写機、ファクシミリ、印刷機、又は、これらのうちの二つ以上を組み合わせた複合機などが含まれる。また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字及び図形などの意味を持つ画像を形成するだけでなく、パターンなどの意味を持たない画像を形成することも意味する。まず、
図1を参照して、本実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
【0011】
図1に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置100は、用紙などのシート状の記録媒体に画像を形成する画像形成部200と、記録媒体に画像を定着させる定着部300と、記録媒体を画像形成部200へ供給する記録媒体供給部400と、記録媒体を装置外へ排出する記録媒体排出部500を備えている。
【0012】
画像形成部200には、作像ユニットとしての4つのプロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkと、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkが備える感光体2に静電潜像を形成する露光装置6と、記録媒体に画像を転写する転写装置8が設けられている。
【0013】
各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色のトナー(現像剤)を収容している以外、基本的に同じ構成である。具体的に、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkは、表面に画像を担持する像担持体としての感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電部材3と、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する現像装置4と、感光体2の表面を清掃するクリーニング部材5を備えている。
【0014】
転写装置8は、中間転写ベルト11と、一次転写ローラ12と、二次転写ローラ13を備えている。中間転写ベルト11は、無端状のベルト部材であり、複数の支持ローラによって張架されている。一次転写ローラ12は、中間転写ベルト11の内側に4つ設けられている。各一次転写ローラ12が中間転写ベルト11を介して各感光体2に接触することにより、中間転写ベルト11と各感光体2との間に一次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11の外周面に接触し、二次転写ニップを形成している。
【0015】
定着部300においては、定着装置20が設けられている。定着装置20は、定着部材としての定着ローラ21と、加圧部材としての加圧ローラ22などを備えている。定着ローラ21と加圧ローラ22は互いに圧接し、これらのローラ21,22の間にニップ部(定着ニップ)が形成されている。
【0016】
記録媒体供給部400には、記録媒体としての用紙Pを収容する給紙カセット14と、給紙カセット14から用紙Pを送り出す給紙ローラ15が設けられている。以下、「記録媒体」を「用紙」として説明するが、「記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「記録媒体」は、紙(用紙)だけでなくOHPシート又は布帛、金属シート、プラスチックフィルム、あるいは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含む。また、「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙及びアート紙など)、トレーシングペーパなども含まれる。
【0017】
記録媒体排出部500には、用紙Pを画像形成装置外に排出する一対の排紙ローラ17と、排紙ローラ17によって排出された用紙Pを載置する排紙トレイ18が設けられている。
【0018】
次に、
図1を参照しつつ本実施形態に係る画像形成装置100の印刷動作について説明する。
【0019】
画像形成装置100において印刷動作が開始されると、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkの感光体2及び転写装置8の中間転写ベルト11が回転を開始する。また、給紙ローラ15が、回転を開始し、給紙カセット14から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ16に接触することにより静止し、用紙Pに転写される画像が形成されるまで用紙Pの搬送が一旦停止される。
【0020】
各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、まず、帯電部材3によって、感光体2の表面を均一な高電位に帯電させる。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント画像情報に基づいて、露光装置6が、各感光体2の表面(帯電面)に露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して各感光体2の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4がトナーを供給し、各感光体2上にトナー画像が形成される。各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、回転する中間転写ベルト11上に順次重なり合うように転写される。かくして、中間転写ベルト11上にフルカラーのトナー画像が形成される。なお、画像形成装置100は、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkのいずれか一つを使用して単色画像を形成したり、いずれか2つ又は3つのプロセスユニットを用いて2色又は3色の画像を形成したりすることもできる。また、感光体2から中間転写ベルト11へトナー画像が転写された後は、クリーニング部材5によって各感光体2上の残留トナーなどが除去される。
【0021】
中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、タイミングローラ16によって搬送されてきた用紙P上に転写される。その後、用紙Pは、定着装置20へと搬送され、定着ローラ21と加圧ローラ22によって用紙P上のトナー画像が加熱及び加圧されることにより、トナー画像が用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、記録媒体排出部500へ搬送され、排紙ローラ17によって排紙トレイ18へ排出される。これにより、一連の印刷動作が終了する。
【0022】
続いて、
図2に基づき、本実施形態に係る定着装置20の構成について説明する。
【0023】
図2に示されように、定着装置20は、定着ローラ21及び加圧ローラ22のほか、加熱源としてのハロゲンヒータ23と、温度検知部材としての温度センサ24を備えている。
【0024】
定着ローラ21は、用紙Pに未定着トナーTを定着させる定着部材として機能する回転体(第1回転体)である。定着ローラ21は、例えば、外径が30mmで厚みが0.7mmのアルミニウム製の基体を有している。基体の材料は、アルミニウム以外に、鉄などの他の金属材料であってもよい。基体の外周面には、耐久性及び離型性を確保するために、例えば、厚みが5~50μmで、PFA又はPTFEなどのフッ素系樹脂から成る離型層が設けられている。また、基体と離型層との間に、ゴムなどから成る弾性層が設けられていてもよい。
【0025】
加圧ローラ22は、定着ローラ21に対向して配置される回転体(第2回転体)である。また、加圧ローラ22は、定着ローラ21に加圧されてニップ部Nを形成する加圧部材でもある。加圧ローラ22は、バネなどの付勢部材によって定着ローラ21の外周面に加圧される。これにより、定着ローラ21と加圧ローラ22との間(接触箇所)に、ニップ部Nが形成される。加圧ローラ22は、例えば、外径が30mmであり、中実の鉄製芯金と、芯金の外周面に設けられた弾性層と、弾性層の外周面に設けられた離型層を有している。弾性層は、例えば、厚みが10mmで、シリコーンゴムなどにより形成されている。離型層は、例えば、厚みが30μm程度で、PFA又はPTFEなどのフッ素系樹脂により形成されている。
【0026】
定着ローラ21の内側には、ハロゲンヒータ23が配置されている。ハロゲンヒータ23が発熱することにより、定着ローラ21が内側から加熱される。また、定着ローラ21を加熱する加熱源として、ハロゲンヒータ23以外に、カーボンヒータ、セラミックヒータ、あるいは、IH(電磁誘導加熱)方式の加熱源を用いることも可能である。
【0027】
ハロゲンヒータ23の出力(発熱量)は、温度センサ24によって検知された定着ローラ21の表面温度に基づいて制御される。温度センサ24が、定着ローラ21に対して非接触に配置される非接触式センサである場合は、温度センサ24によって定着ローラ21近傍の雰囲気温度が定着ローラ21の温度として検知される。また、温度センサ24は、定着ローラ21の外周面に接触する接触式センサであってもよい。温度センサ24としては、サーモパイル、サーモスタット、サーミスタ又はNCセンサなどの公知の温度センサを適用可能である。
【0028】
上記温度センサ24の検知温度に基づいてハロゲンヒータ23の出力が制御されることにより、定着ローラ21の温度が所定の温度となるように維持される。この状態で、
図2に示されるように、未定着トナーTを担持する用紙Pが、定着ローラ21と加圧ローラ22との間(ニップ部N)に進入すると、定着ローラ21と加圧ローラ22によって未定着トナーTが加圧及び加熱されることにより、用紙Pにトナー画像が定着される。
【0029】
ここで、
図3に示されるように、本実施形態に係る定着装置20は、各種幅サイズの用紙P1~P4を通紙可能に構成されている。また、ハロゲンヒータ23は、いずれの用紙であっても加熱できるように、最大幅W4の用紙P4が通過する領域である最大通紙領域(最大記録媒体通過領域)A全体に渡って配置されている。
【0030】
しかしながら、 ハロゲンヒータ23が最大通紙領域A全体に渡って配置されていると、最大幅の用紙P4よりも小さい幅の各種用紙P1~P3が通紙された場合に、これらの用紙P1~P3が通過しない非通紙領域(記録媒体非通過領域)B1~B3においては熱の消費がされにくいため、蓄熱される。従って、非通紙領域B1~B3においては、通紙領域に比べて温度上昇しやすい。特に、小さい幅の各種用紙P1~P3が複数枚連続して通紙された場合は、各非通紙領域B1~B3における温度上昇が顕著となるため、定着ローラ21又は加圧ローラ22の温度が耐熱温度を超える虞がある。
【0031】
このような非通紙領域における温度上昇の問題に対しては、ファンなどの送風装置を用いて非通紙領域へ送風することにより改善できる。しかしながら、非通紙領域における温度上昇の範囲は、通紙される用紙のサイズに応じて異なる。このため、非通紙領域の温度上昇を効果的に抑制するには、用紙サイズに応じて送風範囲を変更する必要がある。そこで、本実施形態においては、下記の構成を採用することにより送風範囲を変更可能にしている。
【0032】
以下、
図4~
図7に基づいて、本実施形態に係る送風装置の構成について説明する。
【0033】
図4に示されるように、本実施形態に係る送風装置30は、気流を発生させる気流発生部材としてのファン31と、ファン31により生じる気流を加圧ローラ22へ案内するための流路を形成する流路形成部材としてのダクト32と、加圧ローラ22へ送風される範囲を変更する送風範囲変更機構33を備えている。
【0034】
本実施形態において、ファン31は、加圧ローラ22の長手方向両端側にそれぞれ1つずつ配置されている。ここで、本明細書において、加圧ローラの「長手方向」とは、
図4に示される矢印X方向のことであり、加圧ローラの回転軸方向、定着ローラの長手方向又は回転軸方向、あるいは、用紙がニップ部を通過する通紙方向に対して交差する用紙幅方向と同じ方向を意味する。また、以下の説明における定着ベルトの「長手方向」も同じ方向を意味する。また、本明細書において「長手方向中央側」とは、「長手方向両端側」又は「長手方向端部側」よりも加圧ローラ又は定着ローラなどの回転体の長手方向の中央に近い位置を意味する。ただし、「長手方向中央側」は、必ずしも中央を含む領域を意味するものではなく、中央を除く中央近傍であってもよい。また同様に、「長手方向両端側」及び「長手方向端部側」も、「両端」又は「端部」を含む領域であってもよいし、「両端」又は「端部」を含まない領域であってもよい。
【0035】
ダクト32は、各ファン31から加圧ローラ22の外周面付近まで伸びるように配置されている。ダクト32の加圧ローラ22側の端には、加圧ローラ22の外周面に対向する送風口32aが設けられている。また、ダクト32内には、送風範囲変更機構33が設けられている。送風範囲変更機構33は、第1仕切り部材34と、第2仕切り部材35を備えている。
【0036】
第1仕切り部材34は、ダクト状の部材であり、加圧ローラ22の長手方向中央側の外周面に対向するように配置されている。また、第1仕切り部材34は、一対のファン31の間から加圧ローラ22の外周面に向かって連続的に伸びるように配置されている。このため、第1仕切り部材34とダクト32によって、各ファン31から加圧ローラ22の長手方向両端側に向かう流路が形成されている。
【0037】
本実施形態においては、第1仕切り部材34が、ファン31の送風方向の上流側から順に、加圧ローラ22の長手方向Xに対して直交する上流側直交面34aと、加圧ローラ22の長手方向Xに対して傾斜する傾斜面34bと、加圧ローラ22の長手方向Xに対して直交する下流側直交面34cを有している。傾斜面34bは、送風方向の下流へ向かって加圧ローラ22の長手方向両端側へ傾斜しているため、ダクト32と第1仕切り部材34によって形成される流路の幅が下流へ向かって徐々に狭くなっている。
【0038】
また、第1仕切り部材34は、加圧ローラ22の長手方向Xに対して交差又は直交する方向に往復移動可能に構成されている。すなわち、第1仕切り部材34は、
図5に示されるように、加圧ローラ22の外周面に対して離間したり、反対に加圧ローラ22の外周面に対して接近したりできるように構成されている。なお、第1仕切り部材34は、加圧ローラ22の回転を妨げたり、加圧ローラ22の摩耗を生じさせたりしないように、加圧ローラ22に接近した状態において、加圧ローラ22の外周面に対して非接触に配置される。
【0039】
第2仕切り部材35は、加圧ローラ22の長手方向中央側の外周面に対向して配置される板状又はブロック状の部材である。第2仕切り部材35は、加圧ローラ22の長手方向Xに間隔をあけて2つ配置されている。また、第2仕切り部材35は、第1仕切り部材34と同様に、加圧ローラ22の外周面に対して接触しないように配置されている。
図4に示されるように、第1仕切り部材34が加圧ローラ22に対して接近して配置されている状態においては、第2仕切り部材35が第1仕切り部材34内部に収容されている。一方、
図5に示されるように、第1仕切り部材34が加圧ローラ22に対して離間すると、第2仕切り部材35が第1仕切り部材34の外側に露出した状態となる。
【0040】
また、第2仕切り部材35は、
図6に示されるように、加圧ローラ22の長手方向Xに往復移動可能に構成されており、互いに接近したり、離間したりできる。第2仕切り部材35を移動させる機構としては、例えば、
図7に示されるように、第2仕切り部材35に設けられたラック36と、各ラック36のギヤ部に噛み合うピニオンギヤ37とを有するラックアンドピニオン機構を採用できる。ピニオンギヤ37が正方向又は逆方向に回転することにより、一対のラック36が直線運動し、各第2仕切り部材35が加圧ローラ22の長手方向Xへ互いに接近又は離間する。
【0041】
続いて、送風範囲変更機構33の動作と送風範囲の関係について説明する。
【0042】
まず、
図4に示されるように、第1仕切り部材34が加圧ローラ22の外周面に対して接近している状態においては、各ファン31から送風された気流は、第1仕切り部材34の外面(上流側直交面34a、傾斜面34b、下流側直交面34c)とダクト32の内面に沿って案内される。このため、気流は、第1仕切り部材34とダクト32の間から吹き出され、
図4に示される範囲L1において加圧ローラ22の外周面に送風される。
【0043】
次に、
図5に示されるように、第1仕切り部材34が加圧ローラ22の外周面に対して離間すると、加圧ローラ22の外周面に対して送風される範囲がL1からL2へ広がる。すなわち、送風方向下流側の加圧ローラ22の外周面近傍においては、第1仕切り部材34による壁がなくなり、代わりに第1仕切り部材34よりも長手方向Xの中央寄りに配置される第2仕切り部材35が露出するので、気流は第2仕切り部材35の位置まで流入することができ、送風範囲が長手方向Xにおける中央側へ広がる。
【0044】
また、
図6に示されるように、第1仕切り部材34が離間した状態において、各第2仕切り部材35が長手方向Xの中央側へ移動すると、送風範囲がさらに中央側へ広がり、L2からL3となる。
【0045】
以上のように、本実施形態においては、第1仕切り部材34及び第2仕切り部材35を適宜移動させることにより、加圧ローラ22に対する送風範囲を長手方向Xへ変更できる。このため、用紙の幅サイズに応じて非通紙領域が変化しても、それに対応して送風範囲を変更でき、非通紙領域における温度上昇を効果的に抑制できる。
【0046】
例えば、
図3に示される最大幅の用紙P4よりも小さい各幅の用紙P1~P3のうち、1番大きい幅の用紙P3が通紙される場合は、その非通紙領域B3に対応すべく、送風範囲を
図4に示される範囲L1に設定する。また、その用紙P3よりも小さい幅の用紙P2が通紙される場合は、非通紙領域がB3からB2へ大きくなるので、その非通紙領域B2に対応すべく、送風範囲を
図5に示される範囲L2に広げる。そして、さらに小さい幅の用紙P1が通紙される場合は、送風範囲をさらに広げて
図6に示される範囲L3にすることにより、それぞれの非通紙領域B1~B3に対応した送風範囲に設定できる。なお、送風範囲の変更は、3段階の変更に限らず、通紙される用紙サイズに対応して2段階あるいは4段階以上であってもよい。
【0047】
このように、本実施形態においては、用紙サイズに対応して送風範囲を変更できる。しかも、送風範囲の変更を簡易な構成により実現できる。このため、送風範囲を変更するための複雑な構成が不要となり、製造コストの削減及び省スペース化を図れるようになる。
【0048】
また、
図5及び
図6に示されるように、第1仕切り部材34が加圧ローラ22に対して離間し、第2仕切り部材35が露出している状態においては、気流が第1仕切り部材34と第2仕切り部材35と間から長手方向中央側へ流入するのを抑制するため、第1仕切り部材34と第2仕切り部材35との間に送風方向の間隔がないことが好ましい。すなわち、送風方向(
図5及び
図6の上方向)における第2仕切り部材35の上流端は、第1仕切り部材34の下流端の位置か、それよりも第1仕切り部材34内へ進入するように配置されることが好ましい。これにより、気流が第1仕切り部材34と第2仕切り部材35との間から長手方向Xの中央側へ流入するのを抑制でき、加圧ローラ22の長手方向Xの両端側へ効果的に送風できる。
【0049】
また、上記のような送風範囲の変更に加え、ファンの風量を変更してもよい。ここで、「風量」とは、送風装置(ファン)が単位時間当たりに移動させる空気量のことであり、風量Q(m3/h)は、通過風速V(m/s)と通過面積A(m2)の乗数で表される。具体的に、風量は、熱線式風速計又はベーン式風速計などを用いて計測できる。
【0050】
以下、
図8に示されるタイミングチャートを参照しつつ、風量を変更する例について説明する。
【0051】
図8において、TH1は、定着ローラの長手方向中央側(通紙領域)の温度であり、TH2は、定着ローラの長手方向端部側(非通紙領域)の温度である。
図8に示されるように、定着ローラの中央側温度TH1が所定の温度tまで上昇すると、感光体への作像動作及び給紙動作などの印刷動作が開示される。このとき、加圧ローラに送風するファンの回転数は、最も低いR1に設定されている。
【0052】
ここで、小サイズ用紙が通紙された場合、非通紙領域においては用紙によって熱が奪われにくいため、蓄熱され、定着ローラの端部側温度TH2が中央側温度TH1よりも高くなる。そして、中央側温度TH1と端部側温度TH2との差分がΔT1となった場合、ファンの回転数が回転数R1からそれよりも高い回転数R2に切り換えられる。その後、端部側温度TH2がさらに上昇し、中央側温度TH1と端部側温度TH2との差分がΔT10となった場合は、ファンの回転数が回転数R2よりもさらに高い回転数R3に切り換えられる。その後、端部側温度TH2が低下して、中央側温度TH1と端部側温度TH2との差分がΔT2になるまで、高い回転数R3による送風動作を継続する。そして、中央側温度TH1と端部側温度TH2との差分がΔT2になると、ファンの回転数がR3からそれよりも低い回転数R2に切り換えられる。その後、印刷動作が終了し、画像形成装置が待機状態となると、定着装置におけるハロゲンヒータの発熱も停止するため、端部側温度TH2がさらに低下する。そして、待機状態において、中央側温度TH1と端部側温度TH2との差分がΔT1になると、ファンの回転数がR2よりも低いR1に切り換えられる。
【0053】
このように、非通紙領域である端部側の温度TH2が、通紙領域である中央側の温度TH1に対して相対的に高い場合は、ファンの回転数を高くして風量を多くすることにより、非通紙領域における温度上昇を効果的に抑制できる。従って、上記のような送風範囲の変更に加え、定着ローラの長手方向中央側と長手方向端部側の温度差に基づきファンの風量を変更することにより、より効果的な非通紙領域の冷却が可能となる。
【0054】
上記例においては、定着ローラの温度に基づいて風量を変更しているが、加圧ローラの温度に基づいて風量を変更してもよい。また、印刷動作が行われていない待機状態においては、ファンの回転数を低い回転数R1に設定するほか、ファンの回転を停止してもよい。
【0055】
また、本発明において、ファン31の向き及び配置は、
図4に示される向き及び配置のほか、
図9又は
図10に示される向き及び配置でもよい。すなわち、ファン31は、
図4に示されるような加圧ローラ22の長手方向Xに対して直交する方向に送風する向きのほか、
図9に示されるような加圧ローラ22の長手方向Xに対して斜め方向に送風する向き、又は、
図10に示されるような加圧ローラ22の長手方向Xに対して平行な方向に送風する向きに配置されてもよい。このように、ファンの向き及び配置は、画像形成装置内の部品レイアウトに応じて適宜変更可能であり、ファンの向き及び配置を変更しても上記実施形態と同じ作用及び効果を期待できる。
【0056】
また、本発明に係る送風装置は、加圧ローラ22に対して送風する場合に限らず、
図11に示される例のように、定着ローラ21に送風してもよい。また、
図12に示される例のように、送風装置30を定着ローラ21と加圧ローラ22の両側に配置し、それぞれの送風装置30によって定着ローラ21と加圧ローラ22の両方へ送風してもよい。
【0057】
また、本発明は、
図3に示されるような、各種幅サイズの用紙がそれぞれの幅方向中央を基準に合わせて搬送される、いわゆる中央基準搬送方式の画像形成装置に限らず、
図13に示されるような、異なる幅W1~W4の各用紙P1~P4がそれぞれの幅方向一端を基準に合わせて搬送される、いわゆる端部基準搬送方式の画像形成装置にも適用可能である。
【0058】
具体的には、
図14に示されるように、第1仕切り部材34を、加圧ローラ22の長手方向Xの一端側へ寄せて配置する。また、第2仕切り部材35は、この場合1つで足りる。このように配置された第1仕切り部材34を、加圧ローラ22の外周面に対して接近離間させたり、第2仕切り部材35を加圧ローラ22の長手方向Xへ移動させたりすることにより、通紙される用紙のサイズに応じて送風範囲を変更できる。また、
図14において、定着ローラ21側に送風装置30を配置してもよい。
【0059】
また、定着装置の構成は、上記実施形態の構成に限らない。例えば、定着装置は、
図15に示されような、定着回転体としての無端状の定着ベルト25と、加圧回転体としての加圧ローラ26と、加熱源としてのヒータ27と、ヒータ27を保持する加熱源保持部材としてのヒータホルダ28と、ヒータホルダ28を支持する支持部材としてのステー29を備える構成であってもよい。この場合、加圧ローラ26が定着ベルト25を介してヒータ27に圧接されることにより、定着ベルト25と加圧ローラ26との間にニップ部Nが形成される。このような定着装置20においても、上記実施形態と同じように本発明に係る送風装置を配置することにより、送風範囲を定着ベルト25又は加圧ローラ26の長手方向へ変更でき、しかも、送風範囲の変更を簡易な構成により実現できる。
【0060】
また、本発明に係る送風装置は、定着装置に対して送風する場合に限らない。例えば、本発明に係る送風装置は、インクジェット式の画像形成装置において、用紙に吐出されたインクなどの液体を乾燥させるために用紙を加熱する乾燥装置(加熱装置)に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
20 定着装置(加熱装置)
21 定着ローラ(回転体)
22 加圧ローラ(回転体)
30 送風装置
31 ファン(気流発生部材)
32 ダクト(流路形成部材)
33 送風範囲変更機構
34 第1仕切り部材
35 第2仕切り部材
100 画像形成装置
P 用紙(記録媒体)
X 長手方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】