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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159232
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物及びレンズ
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20231024BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20231024BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20231024BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20231024BHJP
   H10K 50/858 20230101ALI20231024BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20231024BHJP
   H10K 59/00 20230101ALI20231024BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20231024BHJP
【FI】
G03F7/023
G03F7/004 503A
G03F7/004 531
G02B1/04
H10K50/00
H10K50/858
H10K85/10
H10K59/00
H01L33/58
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131503
(22)【出願日】2023-08-10
(62)【分割の表示】P 2019567000の分割
【原出願日】2019-01-15
(31)【優先権主張番号】P 2018012057
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 隆覚
(72)【発明者】
【氏名】藤村 誠
(57)【要約】      (修正有)
【課題】透明性及び耐熱形状保持性を高いレベルで両立することができるポジ型レジスト膜を形成可能な感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】単量体単位(I)を有する重合体と、分岐型構造を有するポリアミドイミドと、ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物とを含む、感光性樹脂組成物。Rは、単結合、又は置換基を有していてもよい炭素数1~6の2価の炭化水素基であり、Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~6の1価の炭化水素基である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される単量体単位を有する重合体と、分岐型構造を有するポリアミドイミドと、光酸発生剤としてのナフチルイミド基含有スルホン酸化合物とを含み、
前記重合体と前記分岐型構造を有するポリアミドイミドとの含有量比(重合体:分岐型構造を有するポリアミドイミド)が質量基準で90:10~70:30であり、
前記ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物を、前記重合体と前記分岐型構造を有するポリアミドイミドとの合計100質量部当たり、0.1質量部以上2.0質量部以下の割合で含有し、
前記重合体中における構造式(I)で表される構造単位の含有量が、30質量%以上80質量%以下である、
感光性樹脂組成物。
【化1】
(一般式(I)中、Rは、化学的な単結合、又は置換基を有していてもよい炭素数1~6の2価の炭化水素基であり、Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~6の1価の炭化水素基である。)
【請求項2】
前記分岐型構造を有するポリアミドイミドの数平均分子量が2000以上30000以下である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記重合体が(メタ)アクリレート単量体単位をさらに有する共重合体である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
感光剤と、架橋剤とをさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
レンズ形成用である、請求項1から4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物から形成されるレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物及びレンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種センサ等の受光素子、及び発光素子、並びにこれらの双方を備え得るタッチパネル等の電子部品には、種々の機能性を有する樹脂膜が設けられうる。発光素子の一例としてのマイクロLED(Light Emitting Diode)、マイクロOLED(Organic Light Emitting Diode)、及び有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」とも称する。)には、目的に応じて様々な樹脂膜が設けられうる。そのような樹脂膜としては、例えば、素子の劣化や損傷を防止するための保護膜、電気絶縁性を保つための電気絶縁膜、及び外部からの水分や金属イオンから内部を保護するためのパッシベーション膜などが挙げられる。なお、樹脂膜は、発揮する機能に応じて種々の名称にて表されうる。例えば、保護機能及び電気絶縁機能を奏する樹脂膜は、「保護絶縁膜」等と称されうる。
【0003】
従来、これらの樹脂膜を形成するための樹脂材料としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂材料が一般的に用いられてきた。なお、保護膜、電気絶縁膜、及びパッシベーション膜を形成するにあたり、樹脂材料ではなく、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及び窒化ケイ素などの無機材料を用いることも一般的に行われてきた。近年、配線の高密度化、及び発光素子の高輝度化への要求が高まってきていることに伴い、樹脂膜を形成するための樹脂材料については、高い透明性を有することが求められてきた。
【0004】
このような要求に応えるべく、各種樹脂材料を用いた感光性樹脂組成物が提案されてきた。例えば、特許文献1では、特定のビニル化合物からなる重合体、重合性化合物、光重合開始剤、及び溶剤を含有する感光性組成物が開示されている。かかる感光性組成物によれば、屈折率、可視領域での透明性、及び耐熱性に優れるマイクロレンズを形成することができる。また、特許文献2では、ビニルフェノール系共重合体の一部を水素添加した樹脂、感光剤としての1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、加熱処理によりレンズを形成する際に耐熱性及び耐溶剤性を付与できる熱硬化剤、並びに溶剤からなる感光材料が開示されている。かかる感光材料によれば、屈折率が大きく、可視光域での透明性、耐熱性、耐光性、耐溶剤性に優れるレンズを形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-216727号公報
【特許文献2】特開平7-168359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述した各種電子部品に設けられる樹脂膜は、パターンを有してなることがある。ここで、樹脂膜が「パターンを有してなる」場合には、例えば、上記したような受光素子及び発光素子等に備えられたレンズのレンズ形状に相当する形状、即ち「パターン」を、樹脂膜により形成した状態となっていることがある。換言すれば、パターンを有してなる樹脂膜では、樹脂膜自体の形状が、レンズとして機能し得るような形状となっている場合がある。なお、一般的に、「パターンを有してなる樹脂膜(以下、「パターン化樹脂膜」とも称する)」は、樹脂組成物を用いて形成した樹脂組成物よりなる塗膜を、任意で、パターン化工程等に供した後に、加熱工程(以下、「ポストベーク工程」)に供することで、形成することができる。以下、塗膜及び樹脂膜を併せて「レジスト膜」と称することがある。なお、ポストベーク工程を経て得られたパターン化樹脂膜は、配線等の周辺構造の形成工程においても更なる加熱処理に曝されうる。ここで、ポストベーク工程及びその他の加熱工程において、パターン化工程により得られた形状が、過度に変形してしまえば、樹脂膜に所望の機能を付与することができなくなる虞がある。従って、塗膜や樹脂膜等のレジスト膜には、透明性に優れていることに加えて、耐熱形状保持性に優れていることが求められている。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された感光性組成物、及び特許文献2に記載された感光材料によりマイクロレンズ又はレンズ等を製造する際に形成する塗膜又はレジスト膜には、透明性及び耐熱形状保持性を高いレベルで両立するという点で改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、透明性及び耐熱形状保持性を高いレベルで両立することができるポジ型レジスト膜を形成可能な感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、透明性及び耐熱形状保持性に優れるレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、ビニルフェノール系単量体単位を有する重合体と、分岐型構造を有するポリアミドイミドと、ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物とを含む感光性樹脂組成物を使用すると、透明性及び耐熱形状保持性に優れるポジ型レジスト膜を形成することができることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の感光性樹脂組成物は、下記一般式(I)で表される単量体単位を有する重合体と、分岐型構造を有するポリアミドイミドと、ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物とを含むことを特徴とする。このような特定の組成の感光性樹脂組成物によれば、透明性及び耐熱形状保持性に優れるポジ型レジスト膜を形成することができる。
【化1】
(一般式(I)中、Rは、化学的な単結合、又は置換基を有していてもよい炭素数1~6の2価の炭化水素基であり、Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~6の1価の炭化水素基である。)
なお、本明細書において、「感光性樹脂組成物」が感受性を呈し得る「光」には、所謂可視光等に限定されるものではなく、例えば、一般的に「放射線」と称されうる幅広い波長域の活性エネルギー線が含まれうる。
【0011】
ここで、本発明の感光性樹脂組成物では、前記分岐型構造を有するポリアミドイミドの数平均分子量が2000以上30000以下であることが好ましい。分岐型構造を有するポリアミドイミドの数平均分子量が2000以上であれば、ポジ型レジスト膜の耐熱形状保持性を一層向上することができるとともに、感光性樹脂組成物を用いたポジ型レジスト膜の形成容易性を高めることができる。また、分岐型構造を有するポリアミドイミドの数平均分子量が30000以下であれば、一般式(I)で表される単量体単位を有する重合体との相溶性を向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物では、前記重合体が(メタ)アクリレート単量体単位をさらに有する共重合体であることが好ましい。重合体が(メタ)アクリレート単量体単位をさらに有する共重合体であれば、感光性樹脂組成物の感度を向上させることができると共に、透明性に優れるポジ型レジスト膜を形成することができる。
なお、本明細書中において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート、及び/又は、メタクリレート」を意味する。
【0013】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物では、前記重合体と前記分岐型構造を有するポリアミドイミドとの含有量比(重合体:分岐型構造を有するポリアミドイミド)が質量基準で90:10~70:30であることが好ましい。重合体と分岐型構造を有するポリアミドイミドとの含有量比(重合体:分岐型構造を有するポリアミドイミド)が質量基準で90:10~70:30であれば、得られるポジ型レジスト膜の透明性が低下するのを抑制し、現像後の残膜率が低下するのを防止し、耐熱形状保持性を改善し、且つ、感度が低下するのを防止することができる。
【0014】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物では、前記ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物を、前記重合体と前記分岐型構造を有するポリアミドイミドとの合計100質量部当たり、0.1質量部以上2.0質量部以下の割合で含有することが好ましい。ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物の含有量が上記範囲内であれば、得られるポジ型レジスト膜について、耐薬品性、耐熱形状保持性、感度、及び厚膜での解像性を一層高めることができる。
【0015】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物が、感光剤と、架橋剤とをさらに含むことが好ましい。感光性樹脂組成物が、感光剤と、架橋剤とをさらに含んでいれば、ポジ型レジスト膜を容易に形成することができる。
【0016】
また、本発明によれば、上記いずれかの感光性樹脂組成物から形成されるレンズが提供される。かかるレンズは、透明性及び耐熱形状保持性に優れる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物によれば、透明性及び耐熱形状保持性に優れるポジ型レジスト膜及びレンズを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に従う感光性樹脂組成物を用いて形成した、保護絶縁膜及びレンズを備えるマイクロLEDの一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の一実施形態に従う感光性樹脂組成物を用いて形成したドットパターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、マイクロLED、マイクロOLED、有機EL素子、及びタッチパネル用の保護膜、電気絶縁膜、及びパッシベーション膜などに用いることができる。また、本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、マイクロLEDアレイなどの製造プロセスにおいてレジストパターンを形成する際に用いることができる。
【0020】
(感光性樹脂組成物)
本発明の感光性樹脂組成物は、所定の重合体と、分岐型構造を有するポリアミドイミドと、ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物とを含み、任意に、感光剤と、架橋剤と、溶剤と、感光性樹脂組成物に配合され得る既知の添加剤とを更に含有する。そして、本発明の感光性樹脂組成物は、所定の重合体に加えて、分岐型構造を有するポリアミドイミドと、ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物とを含有しているので、透明性及び耐熱形状保持性に優れるポジ型レジスト膜(以下、単に「レジスト膜」とも称する。)を形成することができる。
【0021】
レジスト膜の透明性及び耐熱形状保持性が高ければ、レジスト膜を用いて各種発光素子及び受光素子等に備えられた樹脂膜を形成する際に好適である。レジスト膜の透明性が高ければ、かかるレジスト膜を用いて発光素子又は受光素子を形成した場合に、樹脂膜における光の減衰量を低減することができる。
特に、発光素子に備えられた樹脂膜をレンズとして機能させる場合がある。より具体的には、発光素子の樹脂膜を形成するにあたり、樹脂組成物を用いて形成した塗膜を、パターン化工程に供して、例えば、円柱形状等の断面形状が角ばった形状であるパターンが所定間隔で複数配置してなるドットパターンを有するパターン化塗膜を得た後に、円柱形状の各パターンを含むパターン化塗膜を加熱して流動状態として、表面張力により、各パターンの断面形状をなだらかな形状とする「メルトフロー工程」と称されうる工程が行われることがある。断面形状がなだらかな形状となったパターンは、所謂「レンズ」として機能し、集光機能及び/又は光拡散機能等を発揮し得る。このような場合にも、レジスト膜の透明性及び耐熱形状保持性が高ければ、レンズとして機能し得る樹脂膜を良好に形成することができる。特に、レジスト膜の耐熱形状保持性が高ければ、パターン化塗膜における各パターン間の間隙が、メルトフロー工程や、塗膜から樹脂膜を形成する際のポストベーク工程、さらには、配線等の周辺構造の形成工程等において実施されうる加熱処理によって、過度に変化することを抑制することができる。従って、基板上に、相互に離隔している、あたかも「島状」に分散した、ドーム状(半球状)パターンを良好に形成することができる。このため、透明性及び耐熱形状保持性に優れる本発明の感光性樹脂組成物によれば、所望の間隔で形成された透明度の高いパターン又はレンズを良好に提供することができる。
【0022】
<重合体>
ここで、本発明の感光性樹脂組成物に用いられる重合体は、所定の単量体単位を有する。
【0023】
[単量体単位〕
前記所定の単量体単位としては、下記一般式(I)で表される単量体単位、好ましくは、ビニルフェノール単量体単位が挙げられる。さらに、前記所定の単量体単位としては、任意に、(メタ)アクリレート単量体単位、芳香族ビニル単量体単位(ビニルフェノール単量体単位を除く)、及びその他の単量体単位が挙げられる。
【化2】
(一般式(I)中、Rは、化学的な単結合、又は置換基を有していてもよい炭素数1~6の2価の炭化水素基であり、Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~6の1価の炭化水素基である。)
【0024】
-一般式(I)で表される単量体単位-
前記一般式(I)で表される単量体単位は、下記一般式(I)で表される構造単位である。
【化3】
上記一般式(I)中、Rは、化学的な単結合、又は置換基を有していてもよい炭素数1~6の2価の炭化水素基であり、好ましくは、化学的な単結合、又は炭素数1~4のアルキレン基(分岐型又は直鎖型)であり、より好ましくは、化学的な単結合、又は炭素数1~2のアルキレン基である。また、上記一般式(I)中、Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~6の1価の炭化水素基であり、好ましくは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、より好ましくは、水素原子、炭素1~2のアルキル基である。
【0025】
前記置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~10のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、2-クロロフェニル基などの置換基を有していてもよいフェニル基;ヒドロキシル基;などが挙げられる。
【0026】
前記一般式(I)で表される単量体単位としては、例えば、(i)後述するビニルフェノール単量体単位、(ii)α-メチル-4-ヒドロキシスチレン、α-メチル-3-ヒドロキシスチレン、α-メチル-2-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシアリルベンゼン、3-ヒドロキシアリルベンゼン、2-ヒドロキシアリルベンゼン、などの単量体に由来する単量体単位、などが挙げられる。これらの中でも後述するビニルフェノール単量体単位が好ましい。
【0027】
-ビニルフェノール単量体単位-
前記ビニルフェノール単量体単位は、下記構造式(I)で表される構造単位である。
【化4】
ここで、上記構造式(I)で表される構造単位は、ビニルフェノール単量体に由来する構造単位のみならず、例えば、後述する合成例1で示すように、任意の保護基でフェノール性水酸基が保護された化合物(例えば、p‐tert‐ブトキシスチレン)に由来する構造単位を脱保護して得られた構造単位をも含む。
前記ビニルフェノール単量体の具体例としては、例えば、4-ヒドロキシスチレン(p-ビニルフェノール)、3-ヒドロキシスチレン(m-ビニルフェノール)、p-イソプロペニルフェノール、などを挙げることができる。これらの中でも、入手容易性及びコストの観点で、4-ヒドロキシスチレン(p-ビニルフェノール)が、好ましい。
これらのビニルフェノール単量体、及び任意の保護基でフェノール性水酸基が保護された化合物は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0028】
前記重合体中における構造式(I)で表される構造単位の含有量は、特に限定されないが、30質量%以上であることが好ましく、80質量%以下であることが好ましい。
前記重合体中における構造式(I)で表される構造単位の含有量が、30質量%以上であることにより、アルカリ現像液に対する溶解性を高めることができる。一方、前記重合体中におけるビニルフェノール単量体単位の含有量が、80質量%以下であることにより、得られるレジスト膜の透明性を一層高めることができる。
【0029】
-(メタ)アクリレート単量体単位-
前記(メタ)アクリレート単量体単位は、(メタ)アクリレート単量体に由来する構造単位である。前記重合体が(メタ)アクリレート単量体単位をさらに有する共重合体であることが好ましい。重合体が(メタ)アクリレート単量体単位をさらに有する共重合体であれば、感光性樹脂組成物の感度を向上させることができると共に、レジスト膜の透明性を一層高めることができる。
【0030】
前記(メタ)アクリレート単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸n-ヘプチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸n-デシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸3-メトキシプロピル、アクリル酸3-メトキシブチル、アクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸2-メトキシエチル、メタクリル酸3-メトキシプロピル、メタクリル酸3-メトキシブチル、メタクリル酸エトキシメチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;などを挙げることができる。これらの中でも、得られるレジスト膜の感度及び透明性を高めるという観点で、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルが、さらに好ましい。
これらの(メタ)アクリレート単量体は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0031】
前記共重合体中における(メタ)アクリレート単量体単位の含有量は、特に限定されないが、20質量%以上であることが好ましく、70質量%以下であることが好ましい。
前記共重合体中における(メタ)アクリレート単量体単位の含有量が、20質量%以上であることにより、得られるレジスト膜の透明性を一層高めることができる。一方、前記共重合体中における(メタ)アクリレート単量体単位の含有量が、70質量%以下であることにより、アルカリ現像液に対する溶解性を高めることができる。
【0032】
-芳香族ビニル単量体単位(ビニルフェノール単量体単位を除く)-
前記芳香族ビニル単量体単位は、芳香族ビニル単量体単位に由来する構造単位である。芳香族ビニル単量体単位としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、o,m,p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、α-メチルスチレン、などを挙げることができる。これらの中でも、入手容易性及びコストの観点で、スチレンが、好ましい。これらの芳香族ビニル単量体単位は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0033】
前記共重合体中における芳香族ビニル単量体単位の含有量は、特に限定されないが、30質量%以上であることが好ましく、80質量%以下であることが好ましい。前記共重合体中における芳香族ビニル単量体単位の含有量が、30質量%以上であることにより、アルカリ現像液に対する溶解性を高めることができる。一方、前記共重合体中における芳香族ビニル単量体単位の含有量が、80質量%以下であることにより、得られるレジスト膜の透明性を一層高めることができる。
【0034】
-その他の単量体単位-
前記その他の単量体単位は、上述した単量体と共重合可能なその他の単量体に由来する構造単位であり、例えば、N-フェニルマレイミド、アクリロニトリル、などが挙げられる。その他の単量体は、本願発明の効果を阻害しないものであれば、特に限定されない。
【0035】
そして、本発明の感光性樹脂組成物に含有されうる重合体の具体例としては、ビニルフェノール/メタクリル酸メチル共重合体、ビニルフェノール/スチレン共重合体、ビニルフェノール単独重合体、などを挙げることができる。これらの中でも、ビニルフェノール/メタクリル酸メチル共重合体が、好ましい。
なお、これらの重合体は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0036】
〔重合体の性状〕
-重量平均分子量-
前記重合体がビニルフェノール/メタクリル酸メチル共重合体である場合、重量平均分子量(Mw)は、12000以下であることが好ましく、8000以上であることが好ましい。ビニルフェノール/メタクリル酸メチル共重合体の重量平均分子量(Mw)が12000以下であれば、溶剤に対する溶解性を向上させることができる。また、ビニルフェノール/メタクリル酸メチル共重合体の重量平均分子量(Mw)が8000以上であれば、塗膜の形成、硬化後の硬化性、及び機械強度の観点で好ましい。
なお、上記値は、ポリスチレン換算である。
【0037】
<分岐型構造を有するポリアミドイミド>
本発明の感光性樹脂組成物は分岐型構造を有するポリアミドイミドを含有しているので、透明性に優れるレジスト膜を形成することができる。また、本発明の感光性樹脂組成物に用いられる分岐型構造を有するポリアミドイミドは、感光性樹脂組成物の溶剤に対する溶解性及び感度を高めることができる。さらに、感光性樹脂組成物が分岐型構造を有するポリアミドイミドを含有することで、例えば、厚さ10μmと厚いレジスト膜を形成した場合であっても、露光量を過剰に高めることなく、解像度良くパターニングを行うことができる。即ち、感光性樹脂組成物が分岐型構造を有するポリアミドイミドを含有することで、「厚膜での解像性」の高いレジスト膜を形成することができる。「厚膜での解像性」が高いレジスト膜(塗膜)によれば、パターン化塗膜を得て、メルトフロー工程を行ってレンズ形状を得る場合のレンズ形成能に優れる。さらにまた、感光性樹脂組成物が上記一般式(I)で表される単量体単位を有する重合体と、分岐型構造を有するポリアミドイミドとを共に含有することで、得られるレジスト膜のレジスト剥離液等の薬品に対する耐性、即ち、耐薬品性を高めることができる。
【0038】
前記分岐型構造を有するポリアミドイミドとしては、例えば、下記一般式(1)で表される構造単位と下記一般式(2)で表される構造単位を有し、且つ、下記構造式(1)、(2)及び(3)で表される末端構造のいずれか1個以上を有する化合物、下記一般式(3)で表される化合物、分岐型構造を有するポリアミドイミド樹脂(DIC社製、ユニディックEMG‐793)、分岐型構造を有するポリアミドイミド樹脂(DIC社製、ユニディックEMG‐1015)、などが挙げられる。
【0039】
【化5】
・・・一般式(1)
但し、前記一般式(1)中、R11は炭素数6~13の環式脂肪族構造を有する有機基を表す。
【0040】
【化6】
・・・一般式(2)
但し、前記一般式(2)中、R12は炭素数6~13の環式脂肪族構造を有する有機基を表し、R13は数平均分子量が700~4500の線状炭化水素構造を表す。
【0041】
【化7】
・・・構造式(1)
【0042】
【化8】
・・・構造式(2)
【0043】
【化9】
・・・構造式(3)
【0044】
【化10】
・・・一般式(3)
但し、前記一般式(3)中、nは、2以上200以下である。
【0045】
前記一般式(3)で表される化合物は、イソホロンジイソシアネートイソシアヌレート体と無水トリメット酸とを反応させることにより得られる(下記反応式(1)参照)。
【0046】
【化11】
・・・反応式(1)
但し、前記反応式(1)中、nは2以上200以下である。
【0047】
上記反応式(1)に示す反応において、水酸基を2個以上含有する多官能ポリオールを連鎖移動剤として添加して、上記一般式(3)の一部構造にウレタン構造を有する部位を導入してもよい。前記ウレタン構造を有する部位を上記一般式(3)の一部構造に導入することにより、分岐型構造を有するポリアミドイミドの物性をコントロールすることができる。前記ウレタン構造を有する部位としては、例えば、下記一般式(4)で表される部位が挙げられる。
【0048】
【化12】
・・・一般式(4)
但し、前記一般式(4)中、R14は炭素数6~13の環式脂肪族構造を有する有機基を表し、R15は数平均分子量が700~4500の線状炭化水素構造を表す。
〔分岐型構造を有するポリアミドイミドの性状〕
-数平均分子量-
ここで、上述した分岐型構造を有するポリアミドイミドの数平均分子量(Mn)は、30000以下であることが好ましく、2000以上であることが好ましい。分岐型構造を有するポリアミドイミドの数平均分子量(Mn)が30000以下であれば、ビニルフェノール単量体単位を有する重合体との相溶性を向上させることができるとともに、溶剤に対する溶解性を向上させることができる。また、分岐型構造を有するポリアミドイミドの数平均分子量(Mn)が2000以上であれば、得られるレジスト膜の耐熱形状保持性を一層向上させることができるとともに、感光性樹脂組成物を用いたポジ型レジスト膜の形成容易性を高めることができる。さらに、分岐型構造を有するポリアミドイミドの数平均分子量(Mn)が2000以上であれば、得られるレジスト膜の耐熱性、及び硬化後の機械強度を高めることができる。なお、ポリアミドイミドの数平均分子量(Mn)の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法に従って、ポリスチレン換算量として求めることができる。
また、前記分岐型構造を有するポリアミドイミドの重量平均分子量(Mw)は、100000以下であることが好ましく、3000以上であることが好ましい。分岐型構造を有するポリアミドイミドの重量平均分子量(Mw)が100000以下であれば、ビニルフェノール単量体単位を有する重合体との相溶性を一層向上させることができるとともに、溶剤に対する溶解性を一層向上させることができる。また、分岐型構造を有するポリアミドイミドの重量平均分子量(Mw)が3000以上であれば、得られるレジスト膜の耐熱性、及び硬化後の機械強度を一層高めることができる。
【0049】
前記重合体と前記分岐型構造を有するポリアミドイミドとの合計(100質量%)中に占める前記重合体の割合は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。重合体と分岐型構造を有するポリアミドイミドとの合計(100質量%)中に占める重合体の割合が70質量%以上90質量%以下であれば、得られるレジスト膜の透明性及び耐熱形状保持性を一層高めることができるとともに、現像後の残膜率及び感度が低下するのを防止することができる。
【0050】
<ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物>
ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物は、放射線が照射されると分解してスルホン酸を生成する化合物である。本発明の感光性樹脂組成物は、ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物を含むため、耐熱形状保持性に優れる。さらに、ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物は、感光性樹脂組成物を用いて得られるレジスト膜の感度、耐薬品性、及び厚膜での解像性を向上させ得る。
【0051】
ここで、放射線としては、特に限定されることなく、例えば、可視光線;紫外線;X線;g線、h線、i線等の単一波長の光線;KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光等のレーザー光線;電子線等の粒子線;などが挙げられる。なお、これらの放射線は、一種単独で、或いは、2種以上を混合して用いることができる。
【0052】
そして、ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物としては、特に限定されることなく、例えば、1,8-ナフタルイミジルトリフレート(みどり化学社製、製品名「NAI-105」)、1,8-ナフタルイミジルブタンスルホネート(みどり化学社製、製品名「NAI-1004」)、1,8-ナフタルイミジルトシレート(みどり化学社製、製品名「NAI-101」)、1,8-ナフタルイミジルノナフルオロブタンスルホネート(みどり化学社製、製品名「NAI-109」)、1,8-ナフタルイミジル9-カンファースルホネート(みどり化学社製、製品名「NAI-106」)、1,8-ナフタルイミジルエタンスルホネート(みどり化学社製、製品名「NAI-1002」)、及び1,8-ナフタルイミジルプロパンスルホネート(みどり化学社製、製品名「NAI-1003」)などを用いることができる。中でも、溶剤への溶解性、耐薬品性等の観点から、ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物としては、1,8-ナフタルイミジルトリフレート(みどり化学社製、製品名「NAI-105」)が好ましい。
ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物の含有量は、重合体と分岐型構造を有するポリアミドイミドとの合計100質量部当たり、0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましく、2.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以下であることがより好ましい。ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物の含有量が上記範囲内であれば、得られるレジスト膜について、耐熱形状保持性を十分に高めることができる。特に、ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物の含有量を上記下限値以上とすることによって、得られるレジスト膜の耐熱形状保持性、及び耐薬品性を高めることができる。また、特に、ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物の含有量を上記上限値以下とすることによって、得られるレジスト膜の厚膜での解像性及び感光性樹脂組成物の保存安定性を高めることができる。さらにまた、ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物の含有量を上記範囲内とすることによって、得られるレジスト膜の感度を高めることができる。なお、ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物は、一種単独で、或いは、2種以上を混合して用いることができる。
【0053】
<感光剤>
感光剤とは、放射線が照射された場合に化学反応を引き起こすことのできる化合物である。感光剤としては、上述したナフチルイミド基含有スルホン酸化合物を除く、感光性樹脂組成物により形成されるレジスト膜のアルカリ溶解性を制御しうる化合物を用いることができる。特に、感光剤としては、放射線が照射されると分解してカルボン酸を生成する化合物を用いることが好ましい。感光性樹脂組成物が感光剤をさらに含むことで、レジスト膜の形成容易性を高めることができる。
ここで、本発明の感光性樹脂組成物に用いられる感光剤としては、例えば、4,4’‐[1‐[4‐[1‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐1‐メチルエチル]フェニル]エチリデンビスフェノールと6‐ジアゾ‐5,6‐ジヒドロ‐5‐オキソ‐ナフタレン‐1‐スルホン酸とのエステル体、4,4’‐[1‐[4‐[1‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐1‐メチルエチル]フェニル]エチリデンビスフェノール(下記構造式(4)で表される化合物)と6‐ジアゾ‐5,6‐ジヒドロ‐5‐オキソ‐ナフタレン‐1‐スルホン酸とのエステル体、1,1,1‐トリス(4‐ヒドロキシフェニル)エタン(下記構造式(5)で表される化合物)と6‐ジアゾ‐5,6‐ジヒドロ‐5‐オキソ‐ナフタレン‐1‐スルホン酸とのエステル体、2‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐2‐(2’,3’,4’‐トリヒドロキシフェニル)プロパンと6‐ジアゾ‐5,6‐ジヒドロ‐5‐オキソ‐ナフタレン‐1‐スルホン酸とのエステル体、特開2014-29766号公報に「感放射線化合物(B)」として記載された公知の化合物、などが挙げられる。これらの中でも、4,4’‐[1‐[4‐[1‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐1‐メチルエチル]フェニル]エチリデンビスフェノールと6‐ジアゾ‐5,6‐ジヒドロ‐5‐オキソ‐ナフタレン‐1‐スルホン酸とのエステル体、及び1,1,1‐トリス(4‐ヒドロキシフェニル)エタンと6‐ジアゾ‐5,6‐ジヒドロ‐5‐オキソ‐ナフタレン‐1‐スルホン酸とのエステル体が、好ましい。
これらの感光剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0054】
【化13】
・・・構造式(4)
【0055】
【化14】
・・・構造式(5)
【0056】
なお、感光剤の含有量は、例えば、重合体と分岐型構造を有するポリアミドイミドとの合計100質量部当たり、30質量部未満であることが好ましい。感光剤の含有量が30質量部未満であれば、得られるレジスト膜の感度及び厚膜における解像性を一層高めるとともに、ブリーチング工程等におけるレジスト膜の露光時に塗膜内バブルが発生することを効果的に抑制することができる。特に、上記したような各種エステル体等の、放射線が照射されると分解してカルボン酸を生成する化合物を感光剤として用いる場合には、ビニルフェノール単量体単位を含む重合体の溶剤に対する溶解性よりも、カルボン酸の溶剤に対する溶解性の方が高くなる傾向がある。現像工程において溶剤に対してカルボン酸が優先的に溶解してしまい、重合体の溶解性が不十分となることがある。このため、感光剤の含有量を上記上限値未満とすることで、レジスト膜の感度及び厚膜における解像性を一層高めることができる。
【0057】
<架橋剤>
ここで、本発明の感光性樹脂組成物に用いられる架橋剤としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(ダイセル社製、エポリードGT401)等の多官能エポキシ化合物、メラミン・ホルムアルデヒド・アルキルモノアルコール重縮合物(三和ケミカル社製、ニカラックMw‐100LM)等のメチロール系化合物、トリグリシジルイソシアヌレート(日産化学社製、TEPIC-VL)等のトリグリシジルイソシアヌレート化合物、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製、セロキサイド2021P)等の脂環式エポキシ樹脂、特開2014-29766号公報に「架橋剤(C)」として記載された公知の化合物、などが挙げられる。これらの中でも、硬化後の膜の柔軟性、及び耐薬品性の観点で、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(ダイセル社製、エポリードGT401)等の多官能エポキシ化合物を用いることが好ましい。
これらの架橋剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
特に、多官能エポキシ化合物に、メチロール系化合物を併用することで、得られるレジスト膜の耐薬品性を高めることができる。また、特に、多官能エポキシ化合物に、トリグリシジルイソシアヌレート及び/又は脂環式エポキシ樹脂を併用することで、得られるレジスト膜の耐熱形状保持性を維持しつつ、厚膜での解像性及び感度を一層向上させることができる。
なお、架橋剤の含有量は、一般的な範囲とすることができる。
【0058】
<溶剤>
ここで、本発明の感光性樹脂組成物に用いられる溶剤としては、通常、エーテル系溶剤、アミド系溶剤、及びそれらの混合物が用いられる。前記エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(東邦化学工業社製、ハイソルブEDM)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、及びγ―ブチルラクトンなどが挙げられ、前記アミド系溶剤としては、1‐メチル‐2‐ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)などが挙げられる。
上述したように、溶剤は、混合物でもよいが、溶剤の回収及び再利用の容易性の観点から、単一の物質からなる単一溶剤であることが好ましい。
【0059】
<添加剤>
ここで、本発明の感光性樹脂組成物に用いられる添加剤としては、例えば、溶解促進剤、老化防止剤、シランカップリング剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、色素、及び増感剤などが挙げられる。これらの添加剤は、所望の属性に応じた一般的な配合量にて、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0060】
[溶解促進剤]
前記溶解促進剤としては、例えば、5,5’-[2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス[2-ヒドロキシ-1,3-ベンゼンジメタノール](本州化学工業社製、TML-BPAF-MF)、3,3’,5,5’-テトラメトキシメチル-4,4’-ビスフェノール(本州化学工業社製、TMOM‐BP)、及びその他の公知の溶解促進剤、などが挙げられる。これらの中でも、耐薬品性、及び硬化膜の機械強度の観点で、5,5’ -[2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス[2-ヒドロキシ-1,3-ベンゼンジメタノール](本州化学工業社製、TML-BPAF-MF)を用いることが、好ましい。
これらの溶解促進剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0061】
[老化防止剤]
前記老化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトール‐テトラキス[3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオナート](下記構造式(6)で表される化合物、BASF社製、Irganox1010)等のヒンダードフェノール系老化防止剤、2,4‐ビス[(ドデシルチオ)メチル]‐6‐メチルフェノール(下記構造式(7)で表される化合物、BASF社製、Irganox1726)等のイオウ系老化防止剤、その他の公知の老化防止剤、などが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点で、ペンタエリスリトール‐テトラキス[3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASF社製、Irganox1010)が、好ましい。
これらの老化防止剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0062】
【化15】
・・・構造式(6)
【0063】
【化16】
・・・構造式(7)
【0064】
[シランカップリング剤]
シランカップリング剤としては、特に限定されることなく、公知のものを用いることができる(例えば、特開第2015‐94910号参照)。これらの中でも、本発明の感光性樹脂組成物を用いて得られる塗膜又は樹脂膜と、塗膜又は樹脂膜が形成された基材との間の密着性の観点で、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-573)、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(XIAMETER社製、OFS-6040)が、好ましい。これらのシランカップリング剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0065】
[界面活性剤]
前記界面活性剤としては、例えば、オルガノシロキサンポリマー(信越化学工業社製、KP341)、その他の公知の界面活性剤、などが挙げられる。これらの中でも、基板への塗工性の観点で、オルガノシロキサンポリマーが、好ましい。
これらの界面活性剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0066】
<感光性樹脂組成物の製造方法>
本発明の感光性樹脂組成物は、上述した成分を既知の方法により混合し、任意にろ過することで、調製することができる。ここで、混合には、スターラー、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、フィルミックスなどの既知の混合機を用いることができる。また、混合物のろ過には、フィルター等のろ材を用いた一般的なろ過方法を採用することができる。
【0067】
<塗膜及び(レンズ状)樹脂膜の形成方法>
本発明の感光性樹脂組成物を用いた樹脂膜は、特に限定されることなく、例えば、樹脂膜を形成する基板上に本発明の感光性樹脂組成物を使用して塗膜を設けた後、塗膜に放射線を照射し、更に放射線照射後の塗膜を加熱することにより、形成することができる。なお、基板上に設ける塗膜は、パターニングされていてもよい。さらに、必要に応じて、塗膜は、ブリーチング工程に供されていても良い。
また、樹脂膜を形成する基板上への塗膜の配設は、特に限定されることなく、塗布法やフィルム積層法等の方法を用いて基板上に塗膜を形成した後、任意に塗膜をパターニングすることにより行うことができる。
【0068】
[塗膜の形成]
ここで、塗布法による塗膜の形成は、感光性樹脂組成物を基板上に塗布した後、加熱乾燥(プリベーク)することにより行うことができる。なお、感光性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ドクターブレード法、バー塗布法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の各種の方法を採用することができる。加熱乾燥条件は、感光性樹脂組成物に含まれている成分の種類や配合割合に応じて異なるが、加熱温度は、通常、30~150℃、好ましくは60~130℃であり、加熱時間は、通常、0.5~90分間、好ましくは1~60分間、より好ましくは1~30分間である。
【0069】
また、フィルム積層法による塗膜の形成は、感光性樹脂組成物を樹脂フィルムや金属フィルム等のBステージフィルム形成用基材上に塗布した後、加熱乾燥(プリベーク工程)することによりBステージフィルムを得た後、次いで、このBステージフィルムを基板上に積層することにより行うことができる。なお、Bステージフィルム形成用基材上への感光性樹脂組成物の塗布及び感光性樹脂組成物の加熱乾燥は、上述した塗布法における感光性樹脂組成物の塗布及び加熱乾燥と同様にして行うことができる。また、積層は、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータ等の圧着機を用いて行なうことができる。
【0070】
基板上に設けた塗膜に対して施されうる任意のパターン化工程は、例えば、パターニング前の塗膜に対して、上記したような放射線を照射して潜像パターンを形成した後、潜像パターンを有する塗膜に現像液を接触させてパターンを顕在化させるフォトリソグラフィー法などの公知のパターニング方法を用いて行うことができる。
【0071】
また、放射線をパターン状に照射して潜像パターンを形成する方法としては、縮小投影露光装置を使用し、所望のマスクパターンを介して放射線を照射する方法などの公知の方法を用いることができる。
そして、放射線の照射条件は、使用する放射線に応じて適宜選択されるが、例えば、放射線の波長は365nm以上436nm以下の範囲内とすることができ、また、照射量は例えば900mJ/cm以下とすることができる。
【0072】
また、現像液としては、特に限定されることなく、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液等の既知のアルカリ現像液を用いることができる。そして、塗膜に現像液を接触させる方法及び現像条件としては、特に限定されることなく、所望の品質のレジストパターンを得るように適宜設定することができる。なお、現像時間は、上述した現像条件の決定方法により適宜決定することができる。
【0073】
なお、上述したようにして得られたパターン化塗膜は、必要に応じて、現像残渣を除去するために、リンス液でリンスすることができる。リンス処理の後、残存しているリンス液を圧縮空気や圧縮窒素により更に除去してもよい。
【0074】
そして、上述の方法で、パターン化塗膜を得た後に、かかるパターン化塗膜をメルトフロー工程に供して、パターン化塗膜に含まれていた各パターンの断面形状をなだらかな形状に変化させたパターン化塗膜を得てもよい。この変化により、例えば、断面形状が角張った形状のパターンを角のないなだらかな形状のパターンに形状変化させる。具体的には、例えば、パターン化塗膜にドットパターンが形成されていた場合、このパターン化塗膜を所定温度範囲にて所定時間保持するメルトフロー工程に供して、パターンを円柱状又は略円柱状のドット形状から半球体形状に形状変化させることで、直径2~20μm程度のレンズパターンを形成することができる。なお、メルトフロー工程における加熱方法としては、特に限定されることなく、例えば、ホットプレートやオーブン内で加熱する方法が挙げられる。また、メルトフロー工程における加熱温度は、塗膜の融点以上の任意の温度であり、例えば、100~170℃、好ましくは120~150℃であり、加熱時間は、通常、2~15分、好ましくは5~10分である。
【0075】
さらに、任意で、パターン化工程に供した塗膜に対して、メルトフロー工程に先立って、ブリーチング工程を施すことができる。ブリーチング工程では、塗膜に対して、上記したような放射線を照射して、ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物を分解させてスルホン酸を生成させることにより、塗膜の耐薬品性及び透明度を高めることができる。そして、放射線の照射条件は、使用する放射線に応じて適宜選択されるが、例えば、放射線の波長は365nm以上436nm以下の範囲内とすることができ、また、照射量は、例えば750mJ/cm以上であって、パターン化工程よりも大きい照射量とすることができる。
【0076】
[(レンズ状)樹脂膜の形成]
レンズ状の樹脂膜(即ち、本発明の感光性樹脂組成物よりなるレンズ)は、上記のようにして得られた塗膜を加熱(ポストベーク)して硬化させることにより形成することができる。
【0077】
ポストベーク工程における塗膜の加熱は、特に限定されることなく、例えば、ホットプレート、オーブン等を用いて行なうことができる。なお、加熱は、必要に応じて不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、クリプトン等が挙げられる。これらの中でも窒素とアルゴンが好ましく、特に窒素が好ましい。
【0078】
ここで、塗膜を加熱する際の温度は、例えば、100~300℃とすることができる。なお、塗膜を加熱する時間は、塗膜の面積や厚さ、使用機器等により適宜選択することができ、例えば10~60分間とすることができる。
【0079】
(マイクロLED)
図1は、本発明の一実施形態に従う感光性樹脂組成物を用いて形成した、保護絶縁膜及びレンズを備えるマイクロLEDの一例を示す概略断面図である。
図1において、マイクロLED10は、エピタキシャルウエハ20と、このエピタキシャルウエハ20の一方の主面に形成された複数のnドット電極30と、エピタキシャルウエハ20の他方の主面に形成されたpパッド電極40とを、備える。さらに、マイクロLED10は、pパッド電極40が形成されている側の主面上に、保護絶縁膜50、及び保護絶縁膜50上に形成されたレンズ60を備えるものである。
【0080】
例えば、以下のようにして、本発明の感光性樹脂組成物を用いて、上記のような構造のマイクロLEDを製造することができる。まず、所定の組成の本発明の感光性樹脂組成物を用いて、塗布、プリベーク工程、及びポストベーク工程等を行うことで、保護絶縁膜50に相当する樹脂膜を得る。そして、得られた保護絶縁膜50上に、保護絶縁膜50を形成する際に用いて感光性樹脂組成物と同一の、或いは異なる組成の本発明の感光性樹脂組成物を用いて、塗布、プリベーク工程、パターン化工程、メルトフロー工程、及びポストベーク工程等を行うことで、レンズ60に相当する樹脂膜を得る。なお、保護絶縁膜50及びレンズ60の形成箇所は、必要に応じて任意に決定することができる。本発明の感光性樹脂組成物を用いてレンズ60を形成する際に行われうるパターン化工程は、上述したように既知のフォトリソグラフィー法に従って実施することができるため、パターン精度が高く、得られるレンズ60を微細な構造とすることが容易である。
【0081】
なお、通常、図1に示すような構造のマイクロLEDを製造する際には、かかる構造のマイクロLEDを一つのみ製造するのではなく、マイクロLEDがウエハ上に複数配列されてなるアレイシートを得てから、かかるアレイシートをダイシングすることで、図1に示すような、一つのマイクロLEDを得ることが一般的である。そのため、パターン化塗膜を得てレンズを形成する際には、アレイシートに含まれる複数のマイクロLEDのそれぞれに対応する、ドットパターンをパターン化工程にて形成してから、メルトフロー工程を行って各パターンの形状をレンズ形状に変化させることとなる。
【実施例0082】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各例中の「部」は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0083】
以下、合成例1~2に(共)重合体の調製例を示す。
(合成例1)
<p-ビニルフェノール単量体単位とメタクリル酸メチル単量体単位とを有する共重合体(A‐1)の調製>
フェノール性水酸基が保護基により保護されてなる化合物としてのp‐tert‐ブトキシスチレン50部、(メタ)アクリレート単量体としてのメタクリル酸メチル50部、及び重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル4部を、溶剤としてのプロピレングリコールモノメチルエーテル150部を溶解させ、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、10時間重合させた。そして、反応溶液に硫酸を加えて反応温度を90℃に保持して10時間反応させ、p‐tert‐ブトキシスチレン単量体単位を脱保護して、p‐ビニルフェノール単量体単位に変換した。そして、得られた共重合体に酢酸エチルを加え、水洗を5回繰り返し、酢酸エチル相を分取し、溶剤を除去することで、p-ビニルフェノール単量体単位とメタクリル酸メチル単量体単位とを有する共重合体(A‐1)を得た。得られた共重合体(A‐1)における、各単量体単位の比率は、p‐ビニルフェノール単量体単位:メタクリル酸メチル単量体単位=50:50(質量比)であった。重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算で9600であった。
【0084】
(合成例2)
<環状オレフィン重合体(A-2)の調製>
N-フェニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド(NBPI)40モル%、及び4-ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン(TCDC)60モル%からなる単量体混合物100部、1,5-ヘキサジエン2.0部、(1,3-ジメシチルイミダゾリン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド(Org.Lett.,第1巻,953頁,1999年 に記載された方法で合成した)0.02部、及びジエチレングリコールエチルメチルエーテル200部を、窒素置換したガラス製耐圧反応器に仕込み、攪拌しつつ80℃にて4時間反応させて重合反応液を得た。得られた重合反応液をオートクレーブに入れて、150℃、水素圧4MPaで、5時間攪拌して水素化反応を行い、酸性基としてのカルボキシル基を有する環状オレフィン重合体(A-2)を含む重合体溶液を得た。得られた環状オレフィン重合体(A-2)の重合転化率は99.7%、重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算で7150であった。
【0085】
(実施例1)
(i)重合体として、合成例1で得られたp‐ビニルフェノール単量体単位とメタクリル酸メチル単量体単位とを有する共重合体(A‐1)85部、(ii)分岐型構造を有するポリアミドイミド樹脂(DIC社製、ユニディックEMG‐793、固形分43.7%(溶剤はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、酸価65.6mg(KOH)/g、粘度(25℃,E型粘度計)1.04Pa・s、数平均分子量(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法に従うポリスチレン換算量)2000以上30000以下)15部、(iii)ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物として、1,8-ナフタルイミジルトリフレート(みどり化学社製、製品名「NAI-105」)0.5部、(iv)感光剤(感放射線性化合物)として、4,4’‐[1‐[4‐[1‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐1‐メチルエチル]フェニル]エチリデンビスフェノールと6‐ジアゾ‐5,6‐ジヒドロ‐5‐オキソ‐ナフタレン‐1‐スルホン酸とのエステル体(2.5モル体)(美源商事社製、TPA‐525)10部、及び1,1,1‐トリス(4‐ヒドロキシフェニル)エタンと6‐ジアゾ‐5,6‐ジヒドロ‐5‐オキソ‐ナフタレン‐1‐スルホン酸とのエステル体(2モル体)(東洋合成社製、HP‐200)10部、(v)架橋剤として、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(ダイセル社製、エポリードGT401)40部、及びメラミン・ホルムアルデヒド・アルキルモノアルコール重縮合物(三和ケミカル社製、ニカラックMw‐100LM)10部、(vi)溶解促進剤として、5,5′‐[2,2,2‐トリフルオロ‐1‐(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス[2‐ヒドロキシ‐1,3‐ベンゼンジメタノール](本州化学工業社製、TML‐BPAF‐MF)10部、(vii)老化防止剤(酸化防止剤)として、ペンタエリスリトール‐テトラキス[3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASF社製、Irganox1010)2.5部、(viii)シランカップリング剤として、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、製品名「KBM-573」)3部、及びグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(XIAMETER社製、OFS-6040)3部、(ix)界面活性剤として、オルガノシロキサンポリマー(信越化学工業社製、KP341)300ppm(ろ過前の混合物の全質量基準)、及び(x)溶剤として、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(東邦化学工業社製、ハイソルブEDM)100部を混合し、溶解させた後、孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過して感光性樹脂組成物を調製した。調製した感光性樹脂組成物について、後述する各評価(露光感度、厚膜での解像性、現像残膜率、光線透過率、耐薬品性、耐熱形状保持性、露光時のバブル)を行った。結果を表1に示す。
【0086】
<露光感度>
シリコンウエハ基板上に、感光性樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、ホットプレートを用いて120℃で2分間加熱乾燥(プリベーク)して、膜厚10μmの塗膜を形成した。次いで、パターン化工程にて塗膜をパターニングするために、図2に示すような直径20μm、ドット間距離10μmのドットパターンが形成可能なマスクを用いて、所定面積の照射部分ごとに、g-h-i混合線(波長:i線=365nm、h線=405nm、g線=436nm)を、露光量が500mJ/cm~1300mJ/cmの範囲の異なる値となるように照射し、露光工程を行った。次いで、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、25℃で90秒間現像処理を行い、超純水で20秒間リンスをすることにより、異なる露光量で得られた複数の部分にわたって延在するドットパターンを有する塗膜とシリコンウエハ基板とからなる積層体を得た。
得られた積層体のドットパターン形成部分を、光学顕微鏡を用いて観察し、各露光量で露光された部分に含まれるドットパターンの直径をそれぞれ測定した。そして各露光量と、対応する露光量において形成されたドットパターンの直径の関係から近似曲線を作成し、ドットパターンの直径が20μmとなる時の露光量を算出し、その露光量を露光感度(単に「感度」とも称する)として決定した。ドットパターンの直径が20μmとなる時の露光量が低いほど、低いエネルギーで、又は短時間でパターンを形成できるため、露光感度が高いことを意味する。
【0087】
<厚膜での解像性>
パターン化工程にて、<露光感度>の測定により得られた露光感度に相当する露光量でg-h-i混合線を照射した以外は、上述した<露光感度>の測定時と同様にして、ドットパターンを有する塗膜とシリコンウエハとからなる積層体を得た。得られた積層体のドットパターン形成部分と、ドットパターン間部分を、光学顕微鏡を用いて観察し、解像性を以下の評価基準に従って評価した。なお、10μmの膜厚は、比較的厚膜であるため、評価結果は、「厚膜」での解像性を示す。
〔評価基準〕
A:露光量800mJ/cm未満でパターンが解像でき、ドットパターン形成部分及びドットパターン間部分に裾引きや残渣が観察されない。
B:露光量800mJ/cm以上1000mJ/cm未満でパターンが解像でき、ドットパターン形成部分及びドットパターン間部分に裾引きや残渣が観察されない。
C:露光量1000mJ/cm未満でパターンが解像できるが、ドットパターン形成部分及びドットパターン間部分に裾引きや残渣が観察される。
D:露光量1000mJ/cm未満で、パターンが解像できない。
【0088】
<現像残膜率>
上述した<露光感度>の測定時と同様にして、シリコンウエハ基板上に膜厚10μmの塗膜を形成した。次いで、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対して、25℃で90秒間浸漬する、パターン化工程を実施した場合における「現像処理」を模した処理をしてから、超純水で20秒間リンスをすることにより、塗膜とシリコンウエハとからなる積層体を得た。得られた塗膜の膜厚を光干渉式膜厚測定装置(ラムダエースVM-1200、SCREENセミコンダクターソリューション社製)にて測定し、現像処理後の膜厚/現像処理前の膜厚から現像残膜率(%)を算出した。現像残膜率が高い方が、ワニスロス量及び現像時のムラ等が低減できるため好ましい。
【0089】
<光線透過率(耐熱透明性)>
ガラス基板(コーニング社製、コーニング1737)上に感光性樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、ホットプレートを用いて120℃で2分間加熱乾燥(プリベーク)して、膜厚10μmの塗膜を形成した。次いで、塗膜を、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対して25℃で90秒間浸漬する、パターン化工程を実施した場合における「現像処理」を模した処理を行い、超純水で20秒間リンスを行った。次いで、オーブンを用いて、大気雰囲気下、200℃で60分間加熱する酸化性雰囲気下でのポストベークを行うことで、樹脂膜とガラス基板とからなる積層体を得た。
得られた積層体について、分光光度計V‐560(日本分光社製)を用いて400nmから800nmの波長で測定を行った。測定結果から、400~800nmでの平均光線透過率(%)を算出し、耐熱透明性として算出した。なお、樹脂膜の光線透過率(%)は、樹脂膜が付いていないガラス基板をブランクとして、樹脂膜の厚みを10μmとした場合の換算値で算出した。
光線透過率(耐熱透明性)が高いほど、樹脂膜による光の減衰量が少ないことを意味する。また、樹脂膜の光線透過率が高い程、かかる樹脂膜とガラス基板等との積層体に対して光を照射した場合に生じる反射光の輝度が高くなる傾向がある。反射光の輝度が高い積層体は、積層体外観がきれいなため、各種用途にて好適に用いることができる。
【0090】
<耐薬品性>
上述した<露光感度>の測定時と同様にして、シリコンウエハ基板上に膜厚10μmの塗膜を形成した。次いで、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対して、25℃で90秒間浸漬する、パターン化工程を実施した場合における「現像処理」を模した処理をしてから、超純水で20秒間リンスを行った。次いで、オーブンを用いて、大気雰囲気下、130℃又は150℃で60分間加熱する酸化性雰囲気下でのポストベークを行うことで、樹脂膜とシリコンウエハ基板とからなる積層体を得た。
得られた積層体を、恒温槽にて80℃に保持したレジスト剥離液であるNMP(N‐メチル‐2‐ピロリドン)200mLに、15分間浸漬した。浸漬前後での樹脂膜の膜厚を光干渉式膜厚測定装置(ラムダエースVM-1200、SCREENセミコンダクターソリューション社製)にて測定し、式:[浸漬後の樹脂膜の膜厚(TBI)/浸漬前の樹脂膜の膜厚(TAI)×100]から、浸漬後の膜厚が浸漬前の膜厚に対して占める割合(TBI/TAI)[%]を算出し、かかる割合を100%から減じることで、樹脂膜の膜厚変化率[%]を算出し、以下の評価基準に従って耐薬品性を評価した。なお、150℃、及び130℃といった比較的低温度領域の温度でポストベークした場合であってもレジスト剥離液に対する膜厚変化率が低い感光性樹脂組成物によれば、耐熱性の低い材料よりなる基板も、基板として使用可能となるため、好ましい。
〔評価基準〕
A:樹脂膜の膜厚変化率が、130℃でポストベークした場合と150℃でポストベークした場合ともに±10%以内
B:樹脂膜の膜厚変化率が、150℃でポストベークした場合のみ±10%以内
C:樹脂膜の膜厚変化率が、130℃でポストベークした場合と150℃でポストベークした場合ともに+10%超又は-10%未満
【0091】
<耐熱形状保持性>
上述した<露光感度>の測定時と同様にして、シリコンウエハ基板上に膜厚10μmの塗膜を形成した。この塗膜に、<露光感度>の測定時と同じマスクを用いて、パターン化工程にて、<露光感度>の測定により得られた露光感度に相当する露光量で露光した。次いで、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、25℃で90秒間現像処理を行った後、超純水で20秒間リンスを行い、ポジ型の20μmのドットパターン化塗膜を形成した。
そして、得られたパターン化塗膜の断面形状を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、SEM像(倍率:10,000倍)に基づきドットパターン間の幅aを測定した。次にパターン化樹脂膜の全面に、g-h-i混合線を照射量が2000mJ/cmとなるように照射するブリーチング工程を実施した。次いで、ホットプレートを用いてこのパターンが形成された基板に対し、120℃で10分間にわたり加熱処理を施して、メルトフロー工程を実施した。メルトフロー工程では、パターン化塗膜を溶融させて、パターンを略円柱形状から半球体形状(レンズ形状)に変化させた。さらにメルトフロー工程を経た基板についてホットプレートを用いて200℃にて30分間加熱してポストベーク工程を施すことで、頂点部の厚みが10μmである半球体形状部(レンズ)であるパターンを有する樹脂膜を形成した。そして、ポストベーク工程を経て得られたパターンの断面形状を、上記と同様にしてSEMで観察し、SEM像に基づいてパターン間の幅bを測定した。得られた測定結果を用いて、パターン化塗膜形成後のドットパターン間の幅aとポストベーク工程後のパターン間の幅bの差(a-b)を求め、以下の評価基準に従ってパターン化樹脂膜のレンズ形状(耐熱形状保持性)を評価した。なお、差(a-b)の値は10箇所について算出し、10箇所の値の数平均値を評価に用いた。
〔評価基準〕
A:パターンが半球体形状で、差(a-b)の値が2μm以下。
B:パターンが半球体形状で、差(a-b)の値が2μm超4μm以下。
C:差(a-b)の値が4μm超、又は、ポストベーク工程にてパターンが完全に溶融し、隣接パターンと融着している。
【0092】
<露光時のバブル>
上述した<露光感度>の測定時と同様にして、シリコンウエハ基板上に膜厚10μmの塗膜を形成した。次いで、塗膜の全面に、g-h-i混合線を照射量が2000mJ/cmとなるように照射するブリーチング工程を行い、シリコンウエハ基板上にブリーチングされた塗膜を有する積層体を得た。そして、かかる積層体を、ホットプレートを用いて200℃にて30分間加熱してポストベーク工程を実施した。ポストベーク工程を経た積層体を、光学顕微鏡を用いて観察し、積層体内におけるバブルの有無を確認した。バブルが観察されなかったものは「A」、バブルが観察されたものは「B」として評価した。
【0093】
(実施例2)
共重合体(A‐1)、及び分岐型構造を有するポリアミドイミド樹脂(DIC社製、ユニディックEMG‐793)の配合量を表1に示す通りにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物を調製し、調製した感光性樹脂組成物を用いて各評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
(実施例3)
実施例1において、架橋剤としての、(v)メラミン・ホルムアルデヒド・アルキルモノアルコール重縮合物(三和ケミカル社製、ニカラックMw‐100LM)10部を用いる代わりに(v)トリグリシジルイソシアヌレート(日産化学社製、TEPIC-VL)10部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物を調製し、調製した感光性樹脂組成物を用いて各評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
(実施例4)
実施例1において、架橋剤としての、(v)メラミン・ホルムアルデヒド・アルキルモノアルコール重縮合物(三和ケミカル社製、ニカラックMw‐100LM)10部を用いる代わりに(v)3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル社製、セロキサイド2021P)10部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物を調製し、調製した感光性樹脂組成物を用いて各評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
(実施例5)
実施例1において、ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物としての、(iii)1,8-ナフタルイミジルトリフレート(みどり化学社製、製品名「NAI-105」)の配合量を0.5部から1.0部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物を調製し、調製した感光性樹脂組成物を用いて各評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
(実施例6)
実施例1において、ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物としての、(iii)1,8-ナフタルイミジルトリフレート(みどり化学社製、製品名「NAI-105」)の配合量を0.5部から3.0部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物を調製し、調製した感光性樹脂組成物を用いて各評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
(比較例1)
実施例1において、ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物としての、(iii)1,8-ナフタルイミジルトリフレート(みどり化学社製、製品名「NAI-105」)を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物を調製し、調製した感光性樹脂組成物を用いて各評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
(比較例2)
比較例1において、(v)メラミン・ホルムアルデヒド・アルキルモノアルコール重縮合物(三和ケミカル社製、ニカラックMw‐100LM)10部を配合しなかったこと以外は、比較例1と同様にして、感光性樹脂組成物を調製し、調製した感光性樹脂組成物を用いて各評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
(比較例3)
比較例2において、感光剤としての(iv)4,4’‐[1‐[4‐[1‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐1‐メチルエチル]フェニル]エチリデンビスフェノールと6‐ジアゾ‐5,6‐ジヒドロ‐5‐オキソ‐ナフタレン‐1‐スルホン酸とのエステル体(2.5モル体)(美源商事社製、TPA‐525)、及び1,1,1‐トリス(4‐ヒドロキシフェニル)エタンと6‐ジアゾ‐5,6‐ジヒドロ‐5‐オキソ‐ナフタレン‐1‐スルホン酸とのエステル体(2モル体)(東洋合成社製、HP‐200)の配合量をそれぞれ10部から12.5部に変更し、架橋剤としての(v)エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3‐シクロヘキセニルメチル)修飾ε‐カプロラクトン(ダイセル社製、エポリードGT401)の配合量を40部から33部に変更したこと以外は、比較例2と同様にして、感光性樹脂組成物を調製し、調製した感光性樹脂組成物を用いて各評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
(比較例4)
比較例3において、感光剤としての(iv)4,4’‐[1‐[4‐[1‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐1‐メチルエチル]フェニル]エチリデンビスフェノールと6‐ジアゾ‐5,6‐ジヒドロ‐5‐オキソ‐ナフタレン‐1‐スルホン酸とのエステル体(2.5モル体)(美源商事社製、TPA‐525)、及び1,1,1‐トリス(4‐ヒドロキシフェニル)エタンと6‐ジアゾ‐5,6‐ジヒドロ‐5‐オキソ‐ナフタレン‐1‐スルホン酸とのエステル体(2モル体)(東洋合成社製、HP‐200)の配合量をそれぞれ12.5部から15部に変更したこと以外は、比較例3と同様にして、感光性樹脂組成物を調製し、調製した感光性樹脂組成物を用いて各評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
(比較例5)
実施例1において、(i)重合体として、合成例1で得られた共重合体(A-1)に代えて、合成例2で得られた環状オレフィン重合体(A‐2)100部を用い、感光剤としての、(iv)4,4’‐[1‐[4‐[1‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐1‐メチルエチル]フェニル]エチリデンビスフェノールと6‐ジアゾ‐5,6‐ジヒドロ‐5‐オキソ‐ナフタレン‐1‐スルホン酸とのエステル体(2.5モル体)(美源商事社製、TPA‐525)の配合量を10部から36.3部に変更し、同じく感光剤としての(iv)6‐ジアゾ‐5,6‐ジヒドロ‐5‐オキソ‐ナフタレン‐1‐スルホン酸とのエステル体(2モル体)(東洋合成社製、HP‐200)を配合せず、さらに、架橋剤としての(v)エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3‐シクロヘキセニルメチル)修飾ε‐カプロラクトン(ダイセル社製、エポリードGT401)の配合量を40部から60部に変更し、同じく架橋剤としての(v)メラミン・ホルムアルデヒド・アルキルモノアルコール重縮合物(三和ケミカル社製、ニカラックMw‐100LM)を配合せず、溶解促進剤としての(vi)5,5′‐[2,2,2‐トリフルオロ‐1‐(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス[2‐ヒドロキシ‐1,3‐ベンゼンジメタノール](本州化学工業社製、TML‐BPAF‐MF)の配合量を10部から5部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物を調製し、調製した感光性樹脂組成物を用いて各評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
(比較例6)
比較例5おいて、感光剤としての、(iv)4,4’‐[1‐[4‐[1‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐1‐メチルエチル]フェニル]エチリデンビスフェノールと6‐ジアゾ‐5,6‐ジヒドロ‐5‐オキソ‐ナフタレン‐1‐スルホン酸とのエステル体(2.5モル体)(美源商事社製、TPA‐525)の配合量を36.3部から20部に変更したこと以外は、比較例5と同様にして、感光性樹脂組成物を調製し、調製した感光性樹脂組成物を用いて各評価を行おうとしたが、現像工程にて塗膜の大部分が溶出してしまうため、一部の評価(現像残膜率、透過率、露光時のバブル)しか行うことができなかった。結果を表1に示す。
【0104】
(比較例7)
実施例1において、(i)共重合体(A‐1)の配合量を100部に変更し、(ii)分岐型構造を有するポリアミドイミド樹脂を配合せず、架橋剤としての(v)エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3‐シクロヘキセニルメチル)修飾ε‐カプロラクトン(ダイセル社製、エポリードGT401)の配合量を40部から60部に変更し、同じく架橋剤としての(v)メラミン・ホルムアルデヒド・アルキルモノアルコール重縮合物(三和ケミカル社製、ニカラックMw‐100LM)を配合せず、(vi)5,5′‐[2,2,2‐トリフルオロ‐1‐(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス[2‐ヒドロキシ‐1,3‐ベンゼンジメタノール](本州化学工業社製、TML‐BPAF‐MF)の配合量を10部から5部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物を調製し、調製した感光性樹脂組成物を用いて各評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
(比較例8)
比較例7において、(i)合成例1で得られたp‐ビニルフェノール単量体単位とメタクリル酸メチル単量体単位とを有する共重合体(A‐1)100部を用いる代わりに、(ii)分岐型構造を有するポリアミドイミド樹脂(DIC社製、ユニディックEMG‐793)100部を用いたこと以外は、比較例7と同様にして、感光性樹脂組成物を調製し、調製した感光性樹脂組成物を用いて各評価を行おうとしたが、現像工程にて塗膜の大部分が溶出してしまうため、一部の評価(現像残膜率、透過率、露光時のバブル)しか行うことができなかった。結果を表1に示す。
【0106】
表1中、
「CO」は、環状オレフィンを、
「TBI」は、NMP浸漬後の樹脂膜の膜厚を、
「TAI」は、NMP浸漬前の樹脂膜の膜厚を、
「PB」は、プリベークを、
それぞれ意味する。
【0107】
【表1】
【0108】
上述の表1に示すように、合成例1で得られた共重合体(A-1)と、分岐型構造を有するポリアミドイミド樹脂、及びナフチルイミド基含有スルホン酸化合物を含有する実施例1~6の感光性樹脂組成物によれば、高透過率を有し透明性に優れ、且つ耐熱形状保持性に優れるポジ型レジスト膜を形成することができることが分かる。さらに、実施例1~5の感光性樹脂組成物を用いた場合には、得られる塗膜の感度が高く、厚膜での解像率が高く、現像残膜率が高く、耐薬品性に優れ、更に、露光時のバブルの発生も無いことが分かる。特に、実施例1、5、6、及び比較例1より、ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物を、重合体と分岐型構造を有するポリアミドイミドとの合計100質量部当たり、0.1質量部以上2.0質量部以下の割合で含有することで、耐薬品性及び耐熱形状保持性を一層高めることができることが分かる。
一方、ナフチルイミド基含有スルホン酸化合物を含有しない比較例1~4、共重合体(A-1)及び分岐型構造を有するポリアミドイミド樹脂を含有しない比較例5~6、分岐型構造を有するポリアミドイミド樹脂を含有しない比較例7、及び共重合体(A-1)を含有しない比較例8では、透明性及び耐熱形状保持性を両立できないことが分かる。特に、比較例3,4では、厚膜での解像性も不十分であることが分かる。
また、所定の重合体及び分岐構造を有するポリアミドイミド樹脂を配合せず、これらに代えて環状オレフィン重合体(A-2)のみを用いた比較例5では、得られたレジスト膜の、透過率が不十分であり、感度が低く、厚膜での解像性に劣り、更に、露光時のバブルが発生したことが分かる。なお、比較例5では、感光剤の配合量が他の例に比較して多く、その結果、露光時のバブルが発生している。これは、環状オレフィン重合体(A-2)のような、従来からポジ型レジスト組成物に汎用されている、酸性基(カルボキシル基)を含む脂環状式オレフィン重合体のみを重合体として用いる場合には、パターン化塗膜を得るために感光剤の含有量を高める必要があるが、感光剤の含有量が高いことに起因して、露光時のバブルが発生するためである。
さらにまた、比較例6より、従来からポジ型レジスト組成物に汎用されている、酸性基(カルボキシル基)を含む脂環状式オレフィン重合体である環状オレフィン重合体(A-2)を用いた場合に、感光剤の含有量を比較的低くした場合には、現像残膜率が大きく低下しパターン化塗膜を得ることができないことが分かる。
さらにまた、分岐型構造を有するポリアミドイミド樹脂を含有しない比較例7では、得られるレジスト膜の感度、透過率、耐薬品性、及び厚膜での解像性も不十分であったことが分かる。
そして、共重合体(A-1)を含有せず、分岐構造を有するポリアミドイミド樹脂のみを配合した比較例8では、現像液への溶解性が高く、現像残膜率が大きく低下しパターン化塗膜を得ることができないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の感光性樹脂組成物によれば、透明性及び耐熱形状保持性を高いレベルで両立することができるポジ型レジスト膜及びレンズを形成することができる。
なお、本発明の感光性樹脂組成物は、マイクロLED、マイクロOLED、有機EL素子、及びタッチパネルなどを製造する際に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0110】
10 マイクロLED
20 エピタキシャルウエハ
30 nドット電極
40 pパッド電極
50 保護絶縁膜
60 レンズ
図1
図2