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特開2023-159348エッチングレシピ探索方法及び半導体装置製造システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023159348
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】エッチングレシピ探索方法及び半導体装置製造システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20231024BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H01L21/302 103
H01L21/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136155
(22)【出願日】2023-08-24
(62)【分割の表示】P 2022097756の分割
【原出願日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】17/370,131
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】土橋 高志
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩之
(72)【発明者】
【氏名】大森 健史
(57)【要約】      (修正有)
【課題】機械学習を利用するプロセスレシピ開発において、予測加工形状の評価を容易にすることで、多様な顧客要求に適したプロセスレシピを容易に選択可能とするエッチングレシピ探索方法及び半導体装置製造システムを提供する。
【解決手段】半導体装置製造システム1300において、試料を所望の形状にエッチングするよう設定されたプラズマ処理装置100のパラメータであるエッチングレシピを探索するプロセスレシピ探索装置1310は、機械学習モデルを用いて予測された候補エッチングレシピによる試料の予測加工形状を表示装置1322に表示させるにあたり、予測加工形状とターゲット形状との差異を強調して表示する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を所望の形状にエッチングするよう設定されたプラズマ処理装置のパラメータであるエッチングレシピを探索するプロセスレシピ探索装置を用いたエッチングレシピ探索方法において、
複数の形状要素により前記所望の形状を定義するターゲット形状を決定し、
前記プラズマ処理装置のパラメータから前記プラズマ処理装置による前記試料の加工形状を予測する機械学習モデルを作成し、
前記機械学習モデルを用いて前記エッチングレシピの候補となる候補エッチングレシピを探索し、
前記機械学習モデルを用いて予測された前記候補エッチングレシピによる前記試料の予測加工形状を表示装置に表示し、
前記予測加工形状は、前記予測加工形状と前記ターゲット形状との差異を強調して前記表示装置に表示されるエッチングレシピ探索方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記予測加工形状は、前記ターゲット形状と前記予測加工形状との差異を前記形状要素ごとに定められる強調倍率で拡大して前記表示装置に表示されるエッチングレシピ探索方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記機械学習モデルを用いて、前記候補エッチングレシピに含まれる少なくとも1つのパラメータを変化させた感度評価エッチングレシピによる前記試料の加工形状を予測し、
前記候補エッチングレシピによる予測加工形状及び前記感度評価エッチングレシピによる予測加工形状を、それぞれ前記ターゲット形状との差異を強調した状態で重畳して前記表示装置に表示するエッチングレシピ探索方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記プラズマ処理装置の前記候補エッチングレシピがとりうるパラメータの範囲を前記表示装置に表示し、前記プラズマ処理装置のパラメータ間の制約が指定された場合には、制約されたパラメータ空間で前記候補エッチングレシピの探索を行うエッチングレシピ探索方法。
【請求項5】
請求項1において、
前記表示装置に表示された前記候補エッチングレシピから選択された複数の候補エッチングレシピを、前記プラズマ処理装置に設定して前記試料をエッチングさせる加工レシピとして決定し、
決定された前記加工レシピを前記プラズマ処理装置に設定し、前記試料をエッチングして得られた加工形状のうち、第1の加工レシピによる加工形状を基準画像、第2の加工レシピによる加工形状を比較画像とするとき、前記比較画像は、前記比較画像と前記基準画像との差異を前記形状要素ごとに定められる強調倍率で拡大して前記表示装置に表示されるエッチングレシピ探索方法。
【請求項6】
請求項5において、
決定された前記加工レシピを前記プラズマ処理装置に設定し、前記試料をエッチングして得られた加工形状が前記ターゲット形状に一致しない場合に、前記ターゲット形状を修正し、
前記機械学習モデルを更新し、
更新された前記機械学習モデルを用いて前記エッチングレシピの候補となる候補エッチングレシピを探索するエッチングレシピ探索方法。
【請求項7】
端末と、プラズマ処理装置と、ネットワークを介して前記端末及び前記プラズマ処理装置に接続され、試料を所望の形状にエッチングするよう設定された前記プラズマ処理装置のパラメータであるエッチングレシピを探索するプロセスレシピ探索アプリケーションが実装されたプラットフォームとを備える半導体装置製造システムにおいて、
前記プロセスレシピ探索アプリケーションは、
複数の形状要素により前記所望の形状を定義するターゲット形状を決定するステップと、
前記プラズマ処理装置のパラメータから前記プラズマ処理装置による前記試料の加工形状を予測する機械学習モデルを作成するステップと、
前記機械学習モデルを用いて前記エッチングレシピの候補となる候補エッチングレシピを探索するステップと、
前記機械学習モデルを用いて予測された前記候補エッチングレシピによる前記試料の予測加工形状を前記端末に表示させるステップとを実行し、
前記端末に表示される前記予測加工形状は、前記予測加工形状と前記ターゲット形状との差異が強調されている半導体装置製造システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記予測加工形状は、前記ターゲット形状と前記予測加工形状との差異を前記形状要素ごとに定められる強調倍率で拡大して前記端末に表示される半導体装置製造システム。
【請求項9】
請求項7において、
前記プロセスレシピ探索アプリケーションは、
前記機械学習モデルを用いて、前記候補エッチングレシピに含まれる少なくとも1つのパラメータを変化させた感度評価エッチングレシピによる前記試料の加工形状を予測するステップと、
前記候補エッチングレシピによる予測加工形状及び前記感度評価エッチングレシピによる予測加工形状を、それぞれ前記ターゲット形状との差異を強調した状態で重畳して前記端末に表示させるステップとを実行する半導体装置製造システム。
【請求項10】
請求項7において、
前記プロセスレシピ探索アプリケーションは、前記プラズマ処理装置の前記候補エッチングレシピがとりうるパラメータの範囲を前記端末に表示させるステップを実行し、
前記端末から前記プラズマ処理装置のパラメータ間の制約が指定された場合には、前記候補エッチングレシピを探索するステップにおいて、制約されたパラメータ空間で前記候補エッチングレシピの探索を行う半導体装置製造システム。
【請求項11】
請求項7において、
前記プロセスレシピ探索アプリケーションは、前記端末に表示された前記候補エッチングレシピから選択された候補エッチングレシピを、前記プラズマ処理装置に設定して前記試料をエッチングさせる加工レシピとして決定するステップと、
前記加工レシピを前記プラズマ処理装置に設定するステップとを実行する半導体装置製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチングレシピ探索方法及び半導体装置製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスでは、低消費電力化や記憶容量増大の要求のため、微細化及びデバイス構造の3次元化(複雑化)が進んでいる。微細化されたデバイスの製造では、単純にパターン寸法が縮小されるだけでなく、従来の半導体デバイスに比べて複雑な加工形状の実現が求められている。目標とする加工形状(ターゲット形状という)をドライエッチングで実現するため、エッチング装置が備える多くのガス系や電源系、高周波系を制御するパラメータを設定する必要がある。複雑な加工形状を実現するには、多くのパラメータを複数のステップで調整しながら、秒単位の時間で加工を行う必要があるため、1つのパターンの加工に対し膨大なパラメータの設定が必要になる。このため、このようなエッチング装置に加工を実行させるためのパラメータの設定は熟練者であっても多くの時間が必要となる。エッチングを行う加工条件または加工条件を実行するために設定されるパラメータをエッチングレシピと呼ぶ。
【0003】
エッチング処理における膨大なパラメータを高精度かつ高速に求める方法として、機械学習を利用する方法が知られている。複数の加工条件で加工した半導体デバイスの構造を電子顕微鏡観察し、得られた画像を計測することで加工結果を数値化する。複数の加工に用いたエッチングレシピと数値化した加工結果から機械学習モデルを作成する。機械学習モデルに候補となりそうなエッチングレシピを入力することで仮想的にエッチング後の加工形状を予測することができる。多くの予測結果からターゲット形状に近いエッチングレシピを探索することで、複雑なエッチング条件を効率的に見つけることが可能になる。特許文献1はその一例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開2018/0082873号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
機械学習モデルを利用したエッチングレシピの探索には、いくつかの課題がある。
【0006】
第1の課題は候補エッチングレシピの良否の選択である。機械学習モデルの複雑さのために、一般に複数の候補エッチングレシピが得られる。すべての候補エッチングレシピで実際に加工することは稀であり、複数の候補エッチングレシピから実際に加工する候補エッチングレシピを絞り込む必要がある。このために、ユーザは候補エッチングレシピによる予測加工形状を利用する。例えば、半導体プロセスで一般的なトレンチ加工を例とすると、深さ100nm、幅30nmのトレンチ形状(ターゲット形状)に対し、求められる形状精度が深さと幅に対し、それぞれ0.5nmということがある。なお、ターゲット形状はトレンチ構造のトップから底まで数か所にわたって寸法が決められていることが一般的である。
【0007】
このようなターゲット形状に対する複数の候補エッチングレシピの予想加工形状を画像化して可視化する場合、0.1nm/pixの解像度であるとすると、深さ方向1000pix、幅300pixのトレンチ形状に対し加工精度は5pix程度の違いでしかない。およそ5pixの範囲に予測加工形状が重なってしまうと、予測加工形状それぞれの特徴を把握して候補エッチングレシピの良否を判定し、絞り込みを行うことは困難である。
【0008】
第2の課題は、予測加工形状から複数の候補エッチングレシピを絞り込む場合において、単純に予測加工形状がターゲット形状に最も近似しているという理由で選択した候補エッチングレシピは最適解とは限らないことである。例えば、加工条件に対する感度が高すぎる候補エッチングレシピは望ましくない。感度とは、加工条件の一つ(例えばガス流量や電極に印加する電圧など)を少し変えたときに予測加工形状がどれだけ影響を受けるかについての指標である。エッチング加工の再現性の観点からは、例えば、ガス流量や電極に印加する電圧や電流がわずかに変化することで予測加工形状が大幅に変動するような候補エッチングレシピは望ましくない。しかしながら、候補エッチングレシピの加工条件と機械学習モデルから求められる予測加工形状から感度を推測することは熟練のプロセスエンジニアでも難しい。
【0009】
さらに、エッチングレシピの探索において、候補エッチングレシピが、加工を行うエッチング装置では設定できない加工条件を含んでいることを見逃されたまま、予測加工形状がターゲット形状に近似していることにより選択され、そのまま実行不能なエッチングレシピの探索を続けてしまうことがある。第3の課題は、このような無意味な探索を回避することである。回避方法としては、エッチングレシピを自動探索するコンピュータプログラムに制約条件を追加し、設定不能な加工条件を避けた探索を行うことが考えられる。しかしながら、ガス系や高周波系の制御等を含むエッチング装置の条件は頻繁に変わることが多く、またレシピ探索の方向性は、ユーザ自身が入力する必要がある。このため、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を用いてユーザがインタラクティブに探索の方向性を設定できるようにすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施の形態であるエッチングレシピ探索方法は、試料を所望の形状にエッチングするよう設定されたプラズマ処理装置のパラメータであるエッチングレシピを探索するプロセスレシピ探索装置を用いたエッチングレシピ探索方法であって、複数の形状要素により所望の形状を定義するターゲット形状を決定し、プラズマ処理装置のパラメータからプラズマ処理装置による試料の加工形状を予測する機械学習モデルを作成し、機械学習モデルを用いてエッチングレシピの候補となる候補エッチングレシピを探索し、機械学習モデルを用いて予測された候補エッチングレシピによる試料の予測加工形状を表示装置に表示し、予測加工形状は、予測加工形状とターゲット形状との差異を強調して表示装置に表示される。
【発明の効果】
【0011】
機械学習を利用するプロセスレシピ開発において、予測加工形状の評価を容易にすることで、多様な顧客要求に適したプロセスレシピを容易に選択可能とする。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】予測加工形状の例である。
図1B】強調表示された予測加工形状の例である。
図2】プラズマ処理装置の概略構成図である。
図3】エッチングレシピを探索するフローチャートである。
図4A】強調表示方法について説明するための図である。
図4B】強調表示方法について説明するための図である。
図5】強調倍率の設定方法を説明するための図である。
図6】強調表示を行う描画フローチャートである。
図7】候補エッチングレシピ群から加工レシピの選択を行うGUIの例である。
図8A】強調表示のその他の例である。
図8B】強調表示のその他の例である。
図8C】強調表示のその他の例である。
図9】候補エッチングレシピの感度を表示するGUIの例である。
図10】エッチングレシピを探索するフローチャートである。
図11】ターゲット形状を再定義するためのGUIの例である。
図12】ターゲット形状の尤度、レシピ探索範囲を指定するGUIの例である。
図13】半導体装置製造システムのシステム構成例である。
図14】半導体装置製造システムのシステム構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図2は、プラズマ処理装置の構成例を示す概略図である。プラズマ処理装置100は、マイクロ波ECRプラズマエッチング装置である。プラズマ処理装置100は、真空処理室104を備え、その内部には加工対象であるウエハ126を設置する電極125が配置されている。ウエハ126は静電吸着部135によって電極125上に設置される。ガス供給機構105からガス配管106、空間107、シャワープレート102を通過して真空処理室104内部にガスが供給され、真空処理室104の外部に配置される電場や磁場の発生装置からの電場及び磁場が作用することによって、プラズマ136が発生する。プラズマ136にはイオン及びラジカルが含まれており、これらがウエハ126の表面と相互作用することによってプラズマエッチング処理がなされる。
【0015】
真空処理室104の下部には可変コンダクタンスバルブ112が配置され、可変コンダクタンスバルブ112を通じて接続されるターボ分子ポンプ113により、真空処理室104のガスが排気される。可変コンダクタンスバルブ112、ターボ分子ポンプ113及び粗引きポンプ114は、それぞれ制御部150と接続しており、制御部150からの信号によって各装置の動作が制御される。
【0016】
プラズマエッチング処理において真空処理室104の真空度の制御は重要である。真空処理室104の内部圧力を測定するため圧力計115が設置されており、圧力計115の値に応じて制御部150は、可変コンダクタンスバルブ112をフィードバック制御し、真空処理室104の圧力を制御する。
【0017】
プラズマ処理装置100の上部には、第一の高周波電源であるマイクロ波電源116が設置されており、このマイクロ波電源116の周波数は例えば2.45GHzである。マイクロ波電源116によって発生したマイクロ波は、自動整合器117、方形導波管118、方形円形導波管変換器119、円形導波管120を通じて、空洞共振器121へと伝搬する。自動整合器117は反射波を自動的に抑制する働きがある。空洞共振器121は、マイクロ波電場分布をプラズマ処理に適した分布に調整する働きを持つ。マイクロ波電源116は制御部150により制御される。
【0018】
真空処理室104及び空洞共振器121の周囲には、電磁石を構成するソレノイドコイル122,123,124が配置されている。制御部150により制御されるコイル電源140により、ソレノイドコイル122,123,124に電流を流すことで、真空処理室104内部に磁場が発生する。
【0019】
真空処理室104の内部に高周波電源及び磁場が形成されると、電場及び磁場の強さが特定の関係となる領域において、電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance:ECR)によるプラズマが形成される。真空処理室104の内部に存在する電子はローレンツ力により、ソレノイドコイル122,123,124によって発生した磁場の磁力線に沿って回転しながら移動する。このときマイクロ波電源116から伝搬したマイクロ波の周波数が電子の回転の周波数と一致すると、電子が共鳴的に加速され、プラズマが効果的に発生する。
【0020】
このECRが発生する領域(ECR面)はソレノイドコイル122,123,124が作る磁場によって制御できる。ソレノイドコイル122,123,124が作る磁場は制御部150によってコイルへ流す電流によって制御することができる。磁場分布制御によりプラズマの拡散を制御することが可能であり、これらの効果によってウエハ126の上方におけるプラズマの分布を制御し、プラズマ処理の均一性を向上することができる。
【0021】
ウエハ126が載る電極125はECR面の下側に位置しており、真空処理室104に固定されている。電極125はウエハ126と同様に円形である。プラズマ処理装置100は図示していないロボットアーム等の搬送装置を有しており、ウエハ126はこの搬送装置を利用して電極125にある静電吸着部135によって電極125上に置かれる。静電吸着部135には静電吸着電源139から静電圧が供給される。
【0022】
電極125にはバイアス電圧発生部127が接続されており、バイアス電圧発生部127を通じてウエハ126にバイアス電圧が印加される。プラズマ136内のイオンがウエハ126の側に引き込まれる程度はバイアス電圧に依存するため、バイアス電圧発生部127を制御部150で制御することによって、ウエハ126の加工形状を制御することができる。また、電極125は温度制御装置128も接続されており、温度を制御することによってウエハ126表面における加工中の化学反応過程の調整を行い、ウエハ126の加工形状の制御を行う。温度制御装置128も制御部150から制御を行う。
【0023】
制御部150はコンピュータであり、ウエハ126の加工に必要な複数ステップから構成されるエッチングレシピが適切なシーケンスとして動作するよう、そのタイミング及び動作量が制御されている。エッチングレシピは予め設定されたレシピに基づいて行われる。
【0024】
図13に、エッチングレシピを探索する半導体装置製造システムのシステム構成例を示す。半導体装置製造システム1300は、プロセスレシピ探索装置1310と、入力装置1321と、表示装置1322と、プラズマ処理装置100と、評価装置1330と、寸法計測装置1340と、入出力装置1341とを有する。ユーザは、ターゲット形状データ1325やレシピ探索範囲データ1326などの情報を入力装置1321から入力し、表示装置1322に表示されるGUIによって提示される候補エッチングレシピの情報からインタラクティブにエッチングレシピの探索を実行する。
【0025】
プロセスレシピ探索装置1310は、入力装置1321からターゲット形状データ1325を受け付け、プラズマ処理装置100が最適にターゲット形状を得ることが可能なエッチングレシピを探索する。レシピ探索範囲データ1326の入力があった場合には、レシピ探索範囲データ1326の探索条件に応じたパラメータ空間でのエッチングレシピの探索を実行する。
【0026】
入力装置1321は、ユーザからの入力データまたは入出力装置1341からの測長値データ1342を受け付け、プロセスレシピ探索装置1310に入力する。例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、記憶媒体読み出し装置などを含む。
【0027】
表示装置1322は、プロセスレシピ探索装置1310からのエッチングレシピ探索にかかわる情報をユーザに表示するディスプレイである。その他の出力装置としてプリンタや記憶媒体書き出し装置などを備えていてもよい。
【0028】
プラズマ処理装置100は、図2に一例を示した処理装置である。プラズマ処理装置100は、プロセスレシピ探索装置1310から入力されるエッチングレシピに基づき半導体または半導体デバイスに対する処理を行い、処理された半導体または半導体デバイスを評価装置1330に渡す。
【0029】
評価装置1330は、プラズマ処理装置100で処理された半導体または半導体デバイスの断面を撮影して、処理結果である断面画像を取得する。評価装置1330は、SEM(Scanning Electron Microscope)、TEM(Transmission Electron Microscope)などの荷電粒子線応用計測装置を含む。プラズマ処理装置100で処理された半導体または半導体デバイスの一部を断片として取り出して、その断片を評価装置1330へ運搬して計測してもよい。取得された断面画像は倍率などの撮像条件等とともに画像・撮像条件データ1331として、入出力装置1341へ渡される。
【0030】
寸法計測装置1340は、入出力装置1341を介してプロセスレシピ探索装置1310から入力されるターゲット形状の定義、評価装置1330からの画像・撮像条件データ1331を受け付け、断面画像からターゲット形状の定義に基づく所定の寸法を計測し、測長値データ1342として入出力装置1341へ出力する。入出力装置1341は測長値データ1342を入力装置1321に出力する。
【0031】
プロセスレシピ探索装置1310は、中央処理部1311と、データベース1312と、ターゲット形状決定部1313と、機械学習モデル作成部1314と、レシピ探索部1315と、加工レシピ決定部1316と、装置制御部1317と、表示形状強調処理部1318とを備える。
【0032】
図3は、プロセスレシピ探索装置1310が機械学習モデルを利用してプラズマ処理装置100のエッチングレシピを探索するフローチャートである。中央処理部1311はプロセスレシピ探索装置1310へのデータの入出力及びフロー全体の制御を実行する。まず、プロセスエンジニアは加工後の目標形状からターゲット形状決定202を行う。中央処理部1311は入力装置1321から受け付けたターゲット形状データ1325をデータベース1312に格納する。ターゲット形状の定義は探索過程において更新されることがあり、ターゲット形状の管理はターゲット形状決定部1313によって行われる。続いて、ウエハに配置されているパターンの物理的な寸法やその材料等の情報から加工レシピ決定203を行う。探索の初期では加工レシピについての情報が乏しいため、ユーザは入力装置1321に初期エッチングレシピを入力し、中央処理部1311は入力装置1321から受け付けた初期エッチングレシピを加工レシピ決定部1316に転送し、加工レシピ決定部1316は装置制御部1317を通じて初期エッチングレシピによるエッチング204と加工結果の計測205とを実行させる。
【0033】
プラズマ処理装置100によるエッチング204を行った後、評価装置1330によって加工結果が画像化され、寸法計測装置1340により加工結果が計測205され、測長値データ1342が入出力装置1341を介してプロセスレシピ探索装置1310に入力される。中央処理部1311は、測長値データ1342をそのエッチングレシピ(加工条件)とともにデータベース1312に格納するとともに、計測値とターゲット形状を比較するため、加工寸法の判定206を行う。計測結果とターゲット寸法に差がみられる場合は、再度加工レシピ203の検討を進める。
【0034】
一般に機械学習モデルを作成する場合、複数個の加工レシピによる計測結果が必要である。このため、中央処理部1311は計測結果のデータ数の判定209を行い、データ数が十分にない場合には上述したような手動レシピ検討208を経て加工レシピ決定203~加工寸法判定206を行う。一方、データ数判定209にて機械学習モデルの作成に十分な計測結果のデータ数があると判断される場合には、機械学習モデル作成部1314を起動し、データベース1312に格納された測長値と加工条件(プラズマ処理装置のパラメータ)との組み合わせを学習データとして機械学習モデル作成211を行い、レシピ探索部1315は、作成した機械学習モデルを利用して自動レシピ探索210を行う。加工レシピ決定部1316では、レシピ探索部1315が機械学習モデルに基づいて抽出した複数の候補エッチングレシピを表示装置1322に表示し、ターゲット形状を実現すると考えられる複数の加工レシピ決定203をユーザに促す。複数の加工レシピ決定203後、エッチング204~加工寸法判定206を行う。加工寸法判定206にて計測値とターゲット形状が一致したところでエッチングレシピの開発は終了207となる。
【0035】
図13の半導体装置製造システムに対して、エッチングレシピの探索や寸法計測をプラットフォームにおけるアプリケーションとして実装する半導体装置製造システムが考えられる。このような実装例を図14に示す。プラットフォーム1400はクラウド上に構築されており、OS1402,ミドルウェア1403上で処理を実行するアプリケーションが稼働する。プラットフォーム1400において、プロセスレシピ探索装置1310に相当する処理を実行するプロセスレシピ探索アプリケーション1405、寸法計測装置1340に相当する処理を実行する寸法計測アプリケーション1406が備えられている。ユーザは端末1410からネットワークを介してプラットフォームにアクセスして、プラットフォーム1400に構築されたアプリケーションの機能を利用することができる。プラットフォーム1400はデータベース1401を備え、アプリケーションの実行に必要なデータが格納される。さらにプラズマ処理装置100、評価装置1330もプラットフォーム1400とネットワークによりデータのやり取りが可能となるように接続されている。
【実施例0036】
一般にエッチングレシピ開発の初期では、ターゲット形状に対して計測値が大きく離れており、複数のエッチングレシピを試すうちに徐々に加工形状がターゲット形状に近づく。ターゲット形状に実際の計測結果が近づくにつれ、自動レシピ探索によって機械学習モデルから提案されるエッチングレシピの予測加工形状もターゲット形状に近い形状となる。数値データのみでは実際の形状の違いを視覚的に理解が難しい一方で、第1の課題として説明したように、画像化して表示しても予測加工形状とターゲット形状との形状が近似するにつれて、それぞれの予測加工形状のターゲット形状からの差異がユーザに視認可能に描画されない。プロセスレシピ探索装置1310は、表示形状強調処理部1318を備え、予測加工形状とターゲット形状との形状の差異を強調して表示装置1322に表示することができる。
【0037】
図1Aに機械学習モデルから提案されたエッチングレシピ(候補エッチングレシピ)による予測加工形状の1つを模式的に図示する。図1Aに例示する予測加工形状はトレンチ構造の断面形状(以下、トレンチ形状と表記する)の例である。トレンチ形状の幅はマスク8によって決まり、マスク8の開口部から基板9がエッチングされることより、基板9にトレンチ形状が形成される。図1Aには太線によりターゲット形状60もあわせて示している。トレンチ形状の幅20,30,40は、測定するトレンチ内での深さが異なる幅として定義されている。プロセスエンジニアは、例えば、ターゲット形状をトレンチ形状の幅20,30,40とトレンチ形状の深さ50とによって定義する。図1Aの予測加工形状の場合、トレンチ形状の幅20,30がターゲット形状の幅より大きく、トレンチ形状の幅40がターゲット形状の幅より小さい。また、トレンチ形状の深さ50はターゲット形状の深さよりも深い。予測加工形状のターゲット形状からの乖離が小さくなるにつれ、このような予測加工形状の問題点が視覚的に把握しにくくなっていく。
【0038】
本実施例では、図1Bの描画方法により、図1Aと同じ予測加工形状であってもターゲット形状に対する予測加工形状の違いを強調表示することが可能となる。
【0039】
図4A図4Bを用いて、本実施例のターゲット形状からの誤差を強調する強調表示方法について説明する。図4Aは強調表示をしていない場合のトレンチ外形である。トレンチ外形408の予測深さpD、予測幅pW、ターゲット形状のターゲット深さD、ターゲット幅Wとするとき、予測深さpDとターゲット深さDとの差分dDと予測幅pWとターゲット幅Wとの差分dWは、それぞれ、
dD=D-pD
dW=(W-pW)/2
で表される。
【0040】
ここで、深さと幅について強調表示に利用する拡大率(強調倍率という)をa、bとするとき、ターゲット形状との誤差をそれぞれdD1、dW1として次のように定義する。
dD1=a×dD
dW1=b×dW
強調倍率a,bは、予測加工形状とターゲット形状との差分から自動で求めてもよいし、ユーザがGUI上で指定してもよい。
【0041】
図4Bは強調表示した場合のトレンチ外形であり、トレンチ外形409では、以上のように定義された誤差dD1とdW1とを用いて、予測深さeDと予測幅eWをそれぞれ、
eD=D+dD1
eW=W+2×dW1
とする。図4Aに示す通常表示と比べると、ターゲット形状からの差異を視覚的にはっきりと描画することが可能な上に、ターゲット形状を基準にトレンチ幅や深さといった異なる部分の形状の変化を同時に見ることが可能となる。
【0042】
図5を用いて強調倍率a,bの設定方法を説明する。GUIにおいて予測加工形状を表示する表示ウィンドウ501は縦長T、横幅Yであるとする。このとき、表示ウィンドウ501からはみ出さないよう、深さに対する倍率a、幅に対する倍率bは、それぞれ
a<(T-D)/dD
b<(Y-W)/(2×dW)
の関係を満たす必要がある。ウィンドウの表示方法によっては余白部分をオフセットとして考慮することもある。
【0043】
また、図5に示すように、予測加工形状を強調表示する場合には、必要に応じて3つのスケールを表示するとよい。1つはターゲット形状の表示を示す外形スケール504、残りは誤差が強調表示された予測加工形状を示す強調表示スケール505である。この例では、トレンチ形状の幅と深さとがそれぞれの強調倍率で強調表示されているために、直交する2つのスケールを示している。
【0044】
ここではエッチングにおける最も基本的な加工形状であるトレンチの幅とトレンチの深さを強調して表示する方法を説明した。エッチング加工ではこのような単純なターゲット以外にも、トレンチ側壁が徐々に狭くなるテーパ構造の制御や、トレンチ側壁がエッチングによって表面荒れを抑えるラフネスの抑制、側壁が途中で広がるボーイングといった形状の制御が必要となることが多い。これらの中で表面荒れを評価するラフネスは一般に評価値が小さく、数倍程度の倍率では形状の特徴を強調することはできない。このため、表面荒れの程度を示すRA値を基準にRA値に対し強調倍率を数倍ないし数百倍として設定して表示することが効果的である。
【0045】
また、図3図4Bでは予測加工形状のターゲット形状からの誤差を強調して表示する例を説明したが、本実施例の強調表示の対象はターゲット形状と予測加工形状に限定するものではなく、任意の形状間の差異を強調して表示する場合にも適用可能である。以下に、その例を説明する。画像Bを画像Aに対して強調表示するものとして、Aを基準画像、Bを比較画像と呼ぶ。例えば、二つの加工レシピによる加工結果をそのターゲット形状の定義にしたがって計測し、二つの加工結果についての計測値から得られる加工形状同士を比較する、といった利用方法が想定される。
【0046】
基準画像のトレンチ深さDA、基準画像のトレンチ幅WA、比較画像のトレンチ深さDB、比較画像のトレンチ幅WBとすると、基準画像Aのトレンチ深さと比較画像Bのトレンチ深さの差分dD3、基準画像Aのトレンチ幅と比較画像Bのトレンチ幅の差分dW3は、それぞれ、
dD3=DA-DB
dW3=(WA-WB)/2
で表される。
【0047】
ここで、深さと幅について強調表示に利用する強調倍率をc、dとするとき、基準画像との誤差をそれぞれdD4、dW4として次のように定義する。
dD4=c×dD3
dW4=d×dW3
強調倍率c,dは基準画像Aと比較画像Bとの差分から自動で求めてもよいし、ユーザがGUI上で指定してもよい。以上のように定義された誤差dD4とdW4を用いて、強調表示する比較画像Bのトレンチ形状の深さfDと幅fWをそれぞれ、
fD=D+dD4
fW=W+2×dW4
とする。
【0048】
このように、ターゲット形状に限らず、任意の基準画像に対して差異を視覚的にはっきりと描画することが可能な上に、良好なエッチングレシピによる加工形状同士を比較することによって、より良いエッチングレシピの選定が容易となる。
【0049】
図6は表示形状強調処理部1318が強調表示を行う描画フローチャートである。強調表示を行うため、まず表示形状の選択602を行う。例えばトレンチの幅やトレンチの深さ等といったターゲット形状を定義する要素を選択する。次に表示強調倍率の指定・算出603にて強調倍率を指定する。これはトレンチ形状などから自動的に計算を行ってもよい。次に強調形状の計算604を行い、表示装置1322に表示605する。表示結果からユーザは表示内容の良否を判定606し、強調倍率を見直す必要があれば強調倍率の検討607によって強調倍率の調整を行って再度、表示強調倍率の指定・算出603~表示結果の判定606を実施する。
【0050】
図7に、加工レシピ決定203においてエンジニアが機械学習モデルから求められた候補エッチングレシピの中から加工レシピの選定を行うため、加工レシピ決定部1316が表示装置1322に表示させるグラフィカルユーザインターフェース(GUI)の例を示す。GUI701の上段は、トレンチ形状が通常表示と強調表示にて表示される表示ウィンドウ711である。その下に選択領域707があり、表示ウィンドウ711に表示させるトレンチ形状は選択領域707から選択される。選択領域707には、機械学習モデルによって選ばれた候補エッチングレシピ(予測レシピ)とターゲット形状とが表示され、それぞれに対して、表示/非表示を選択するための選択チェックボックス708が配置されている。図7の場合、候補エッチングレシピのうち、予測レシピNo.1、No.4による予想加工形状とターゲット形状とを表示ウィンドウ711に表示している。選択領域707におけるチェックを付け替えることで、別の予測レシピの予想加工形状を表示することができる。
【0051】
選択領域707の下には候補エッチングレシピの加工条件表示テーブル709がある。加工条件表示テーブル709には、表示ウィンドウ711に予想加工形状が表示された予測レシピの加工条件が表示される。この加工条件は、機械学習モデルにより推薦された加工条件である。予測レシピの加工条件と予想加工形状を見比べることによって、ユーザは個々の課題に応じた観点から加工条件の選定を進めることができる。
【0052】
加工条件表示テーブル709の下には表示ウィンドウ711に表示された予測加工形状の要素(この例では幅W1,W2,W3と深さD1)の大きさを示す予測測長値テーブル710が配置される。予測測長値は、機械学習モデルに予測レシピの加工条件を入力することによって算出される値である。予測測長値テーブル710はレシピ選定には役に立ち難いが、ユーザはターゲット形状の入力間違えや機械学習モデルから推薦されている形状等に明らかな異常がみられる場合、予測測長値テーブル710を確認することでそのような状況に容易に気づくことが可能となる。
【0053】
ユーザが予測加工形状をターゲット形状からの差異を強調して認識するには、ここまで説明してきた強調表示以外の表示方法も考えられる。そのような表示方法について図8A~Cを用いて説明する。図8Aは色によってターゲット形状との差を表示する方法である。例えば、ターゲット形状との差が大きな場合を赤、差が小さな場合を緑として表示するものとし、図8Aの例であればトレンチ底803を赤、トレンチ側壁802を緑で表示する。これにより、ユーザの優先度が高い形状要素(この場合は深さ等)を、色により視覚的に選ぶことができる。図8Bに示すのはターゲット形状との差を線の太さで示す例である。この場合、線幅が太い方がターゲット形状からの差が大きく、トレンチ底806をトレンチ側壁805よりも太い線で表示している。図8Cは、外れ量を矢印としてベクトル表示する方法である。この場合、該当する計測点が2次元的にどの程度ターゲット形状から外れているのか理解しやすい。図8Cでは形状要素が幅と深さであるため、ベクトル808は横方向と縦方向に向いたベクトルとなる。これに対して、形状要素として側壁のテーパや底面の傾きが定義されている場合には、テーパの誤差や傾きの誤差は、側壁や底面の法線方向に向いたベクトルとして表現されるようにする。このような2次元的なベクトル表記を行うことで予測加工形状の理解が容易になる。
【実施例0054】
実施例2として、第2の課題として説明した、機械学習モデルを利用した候補エッチングレシピの感度を評価する方法とGUIについて説明する。以下で説明するGUIは、機械学習モデルを利用して探索した候補エッチングレシピから加工レシピ決定203を行うときに加工レシピ決定部1316が表示装置1322に表示する。
【0055】
図9に加工レシピ決定部1316が機械学習モデルから求められた候補エッチングレシピの感度を表示するGUI901の例を示す。GUI901の上段には予測形状の変化の大きさを表示する形状表示ウィンドウがある。形状表示ウィンドウには候補エッチングレシピから得られる予測加工形状902が実線で表示されるのに加えて、エッチングレシピの加工条件の1つであるパラメータAを+10%変えた感度評価エッチングレシピの予測加工形状903とエッチングレシピのパラメータAを-10%変えた感度評価エッチングレシピの予測加工形状904とが点線で表示されている。予測加工形状の変化量を示す矢印905は、パラメータAを変化させることによる予測加工形状の変化量を示す矢印であり、矢印が小さな方が予測加工形状の変化量が小さいものとして表示する。図9に示される予測レシピNo.1の場合では、トレンチ深さについて、パラメータAを+10%変えることによる変化量は少なく、-10%変えることによる変化量が大きいことが分かる。逆に、トレンチ幅について、パラメータAを-10%変えることによる変化量は少なく、+10%変えることによる変化量が大きいことが分かる。
【0056】
図9ではエッチングレシピのパラメータAのみを変えたときの形状変化の表示を例示しているが、GUI901には感度評価するパラメータの選択領域909があり、選択ドロップボックス911により複数のパラメータを同時に変えることもできる。評価に用いるパラメータの変化量は指定領域910に表示され、パラメータごとに変化量設定スクロールバー912により変化量を設定可能である。
【0057】
GUI901の中段には選択領域707があり感度評価を行いたい候補エッチングレシピを選択して感度評価することが可能である。これらの候補エッチングレシピの評価では、機械学習モデルにその都度パラメータを変化させた感度評価エッチングレシピを入力して予測加工形状を求めてもよいし、予め予測加工形状の周辺のエッチングレシピの予測加工条件を計算しておき、パラメータの変化量が指定されたときに相当する予測加工形状をコンピュータの記憶装置から呼び出すようにしてもよい。
【0058】
GUI901の下段にはエッチングレシピの表示テーブル908がある。表示テーブル908には感度評価対象としたエッチングレシピ(ここではNo.1、Original欄)及び感度を評価するためにパラメータAを±10%変えたときの感度評価エッチングレシピと、各々の予測加工形状を表示している。表示テーブル908にターゲット形状を併記してもよい。
【実施例0059】
図10は、プロセスレシピ探索装置1310が機械学習モデルを利用してプラズマ処理装置100のエッチングレシピを開発するフローチャートである。機械学習モデルを利用した加工レシピの探索において、点線で示した、ターゲット形状を変更してのレシピ探索フロー1001を追加している点が図3に示したフローチャートとの違いである。一般にエッチングレシピの開発が進む中で、プロセスエンジニアはレシピ開発の課題を見出し、課題解決のため新たな形状要素を追加してターゲット形状を再定義する。追加した形状要素について実施例1に説明した強調表示を行うことによってターゲット形状との差を強調することができ、新たな課題を見出しやすくなる。
【0060】
図3のフローチャートと同じ処理については同じ符号を付して重複する説明は省略する。加工寸法判定206にてターゲット形状と計測結果との間に差があった場合、ターゲット形状の判定1002を行う。ターゲット形状が良好であれば前回の計測205で得られた加工形状とエッチング204を行ったエッチングレシピとを新たな学習データとして追加して機械学習モデルの作成211へ進む。一方、ターゲット形状の判定1002にてターゲット形状に課題が見つかった場合、ターゲット形状決定部1313は、ターゲット形状の修正1003を実施し、修正したターゲット形状の計測1004を実施することで新しいデータセットを作り、機械学習モデルの作成211へ進む。このように、ターゲット形状に新たな形状要素が追加されるたびに、ターゲット形状決定部1313は、装置制御部1317を通じて寸法計測装置1340に対して膨大な実験済みの画像・撮像条件データ1331から新たな形状要素についての測長を実施し、データセットの作り直しを行い、機械学習モデルを更新する。
【0061】
図11にターゲット形状決定部1313が表示装置1322に表示する、形状要素を追加してターゲット形状を再定義し、データセットを作り直すためのGUIの例を示す。GUI1101の上段にはエッチング204を実施し、計測205にて加工結果が得られているエッチングレシピを選択するための選択領域1102が配置されている。選択領域1102にはチェックボックスがあり、チェックを入れられた予測モデルの加工結果が中段の形状表示領域1103に表示される。形状表示領域1103への表示においては、ターゲット形状に加えて電子顕微鏡像を重ねて表示することも可能である。電子顕微鏡像を重ねることで、プロセスエンジニアが見過ごしていた新たな形状要素に気づきやすくなる。
【0062】
図11の形状表示領域1103には再定義されたターゲット形状に対応する加工形状が表示された例を示している。ここで、再定義前のターゲット形状において開口幅W1、深さD1のみが定義されていたとする。下段には既存測定値テーブル1107が表示されているが、ここから明らかなように、開口幅W1、深さD1はどの予測レシピの加工結果もターゲット形状と等しくなっている。しかし、実際のトレンチ形状はまちまちであり、これは再定義前のターゲット形状の定義が不十分であることを示している。そこでプロセスエンジニアは、形状表示領域1103に表示されているターゲット形状1104に対して、新規の形状要素であるラフネスR、底幅W2を指定する。電子顕微鏡画像から新たに定義された形状要素の寸法を計測し、形状表示領域1103の表示を更新し、下段の新規測定値テーブル1108に表示する。このときの、計測はユーザが手動で行ってもよいし、エッジ検出等の画像処理の基づく自動化測定技術を適用して自動的に計測を行ってもよい。このようなGUIを用意することによって、電子顕微鏡像から正確かつ迅速にデータセットを用意して、修正されたターゲット形状に基づく機械学習モデルの作成211へ進むことが可能となる。
【実施例0063】
実施例4として、エッチングレシピ探索における制約条件を可視化することによって、ユーザが簡便に複雑なターゲット形状を指定したり、第3の課題として説明した、レシピ探索範囲を制限したりする方法とGUIについて説明する。以下に説明するGUIは、実施例3で説明したターゲット形状の修正のためのGUI1101に続いて表示することを想定しているが、ターゲット形状の修正を行わない場合でも、以下に説明するGUIを表示させて探索範囲を調整することが可能である。
【0064】
図12にレシピ探索部1315が表示装置1322に表示する、ターゲット形状の尤度、レシピ探索範囲を指定するGUI1201の例を示す。上段の表示領域には再定義前ターゲット形状1220と再定義後ターゲット形状1221とを示す。通常、ターゲット形状決定部1313が管理するターゲット形状には、ターゲット形状を定義する形状要素ごとに尤度が設定されており、例えばトレンチの幅では±1nm、トレンチの底は±10nm等と決まっている。尤度の大きさも調整でき、エッチングレシピ開発の初期には若干広く設定された尤度を、徐々に厳格に狭めることもある。候補エッチングレシピの選択に尤度の情報は必須である一方で、ターゲット形状の複数の形状要素に尤度が設定されていれば、それだけユーザのターゲット管理が難しくなる。
【0065】
GUI1201はターゲット形状の尤度を可視化する。再定義前ターゲット形状1220におけるトレンチ深さの尤度δDとトレンチ幅の尤度δWとを比較するとトレンチ深さの尤度の方が大きい。このように尤度が少ない形状要素は細く、尤度の大きな形状要素は太く表記することで、ターゲット形状に加えて尤度を同時に認識することが可能になる。
【0066】
一方、再定義後ターゲット形状1221では、トレンチ幅の尤度δWが再定義前ターゲット形状1220のトレンチ幅の尤度δWに比べて大きく、トレンチ深さの尤度δDが再定義前ターゲット形状1220のトレンチ深さの尤度δDよりも少ない。このような変化を比較表示することでターゲット形状の変化を、尤度を含めて可視化することで、ユーザの負荷低減を行う。
【0067】
ターゲット形状テーブル1206に、ターゲット形状の大きさ(W,D)と尤度(δW,δD)とを表示する。尤度は、ターゲット形状の形状要素の選択プルダウンボックス1207にて指定し、尤度の選択プルダウンボックス1208を用いて変更することができる。この変更は、形状反映ボタン1209を押下することで確定し、ターゲット形状テーブル1206に反映される。
【0068】
尤度の選択プルダウンボックス1208には数値を選択可能にしてもよく、重要度「上、中、下」のように定性的な大小関係を選択可能にしてもよい。レシピ開発の初期には明確な数値目標が決まっていない場合があることを考慮したものである。
【0069】
また、ターゲット形状や尤度は、レシピ開発時の最も良い条件を参考に値を決めることもあるため、表示画像変更ボタン1211をクリックすることでユーザは背景画像を変更し、マウス動作だけで画像のスケールを意識することなくターゲット形状を入力することもできる。
【0070】
GUI1201の下段は機械学習モデルによるエッチングレシピ探索範囲を可視化する。レシピ探索範囲テーブル1212に示すように、エッチングレシピのパラメータには例えばガス流量の制限や印加可能な電極電圧、制御可能な電極温度などの制約がある。これに加え、装置の制御方法に由来する様々なパラメータ間の関係性や、ユーザが求めるエッチングレシピの方向性(例えば、あるガスは極力利用しないレシピを探索する等)がある場合には、それらの関係性や方向性を満たす範囲でエッチングレシピ探索を行った方が、膨大なパラメータ空間からより効率良くユーザの求めるレシピを得やすい。
【0071】
条件指定ボックス1213には、このようなパラメータ間の関係性や方向性を制約関係式として入力する。制約関係式は、四則演算のような簡単な形だけでなく、シミュレータから示唆された複雑な初等数学の関係式によって表現されるものであってもよい。例えば、条件指定ボックス1213から「A>B」は選択されており、この関係式に基づく探索範囲が探索範囲表示グラフ1214内に、探索範囲1216として示されている。レシピ探索範囲テーブル1212を元に探索範囲1216を可視化することで、ユーザは入力した制約関係式が正しく反映されていることを確認できる。探索範囲決定ボタン1217を押下することで確定し、中央処理部1311は確定したレシピ探索範囲データ1326をレシピ探索部1315に転送し、レシピ探索に反映される。
【符号の説明】
【0072】
8:マスク、9:基板、20,30,40:トレンチ幅、50:トレンチ深さ、60:ターゲット形状、100:プラズマ処理装置、101:容器、102:シャワープレート、103:誘電体窓、104:真空処理室、105:ガス供給機構、106:ガス配管、107:空間、108:細孔、112:可変コンダクタンスバルブ、113:ターボ分子ポンプ、114:粗引きポンプ、115:圧力計、116:マイクロ波電源、117:自動整合器、118:方形導波管、119:方形円形導波管変換器、120:円形導波管、121:空洞共振器、122,123,124:ソレノイドコイル、125:電極、126:ウエハ、127:バイアス電圧発生部、128:温度制御装置、135:静電吸着部、136:プラズマ、137:アース、139:静電吸着電源、140:コイル電源、150:制御部、408,409:トレンチ外形、501:表示ウィンドウ、504:外形スケール、505:強調表示スケール、701,901,1101,1201:GUI、707:選択領域、708:選択チェックボックス、709:加工条件表示テーブル、710:予測測長値テーブル、711:表示ウィンドウ、802,805:トレンチ側壁、803,806:トレンチ底、808:ベクトル、902,903,904:予測加工形状、905:矢印、908:表示テーブル、909:選択領域、910:指定領域、911:選択ドロップボックス、912:変化量設定スクロールバー、1102:選択領域、1103:形状表示領域、1104:ターゲット形状、1107:既存測定値テーブル、1108:新規測定値テーブル、1206:ターゲット形状テーブル、1207,1208:選択プルダウンボックス、1209:形状反映ボタン、1211:表示画像変更ボタン、1212:レシピ探索範囲テーブル、1213:条件指定ボックス、1214:探索範囲表示グラフ、1216:探索範囲、1217:探索範囲決定ボタン、1220:再定義前ターゲット形状、1221:再定義後ターゲット形状、1300:半導体装置製造システム、1310:プロセスレシピ探索装置、1311:中央処理部、1312:データベース、1313:ターゲット形状決定部、1314:機械学習モデル作成部、1315:レシピ探索部、1316:加工レシピ決定部、1317:装置制御部、1318:表示形状強調処理部、1321:入力装置、1322:表示装置、1325:ターゲット形状データ、1326:レシピ探索範囲データ、1330:評価装置、1331:画像・撮像条件データ、1340:寸法計測装置、1341:入出力装置、1342:測長値データ、1400:プラットフォーム、1401:データベース、1402:OS、1403:ミドルウェア、1405:プロセスレシピ探索アプリケーション、1406:寸法計測アプリケーション、1410:端末。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14